液体充填装置として、充填弁の開度を2段階(大流量と小流量)に切換可能に構成し、ある程度の量までは、充填弁を大きく開けて大流量で高速に充填し、その後、充填弁の開度を小さくして、小流量で精度良く充填できる構造は既に知られている。
この種の液体充填装置としては、図12に簡略的に示すように、シリンダ51内に互いに押圧可能な2つのピストン(流量切換用ピストン52と開閉用ピストン53)を有する特殊な形状の2段式エアシリンダ装置を用いる構造が一般的である。この方式では、シリンダ51の下部に配置された開閉用ピストン53を、下端位置とこの下端位置よりも上方の位置とに切り換えることで、ノズル部54内に配設した充填弁50を閉姿勢と開姿勢とに切り換えるとともに、シリンダ51の上部に配置された流量切換用ピストン52を上端位置と下端近傍位置との何れかに位置決めすることで開閉用ピストン53を大開度(図12(b)参照)と小開度(図12(c)参照)との2段階に設定できるよう構成している。
ここで、図12における55は、その下端部に充填弁50が取り付けられる駆動ロッド、56は、開閉用ピストン53を下方に付勢する、すなわち、開閉用ピストン53に連結された駆動ロッド55を介して充填弁50を閉方向に付勢する付勢ばね(リターンスプリング)、57はシリンダ51における流量切換用ピストン52の上面部分が臨む領域51bにエアーを流入させる流量切換用上エアー導入路、58は、シリンダ51における開閉用ピストン53の上面部分が臨む領域51cにエアーを流入させる開閉用上エアー導入路、61は、シリンダ51における開閉用ピストン53の下面部分が臨む領域51aにエアーを流入させる開閉用下エアー導入路、59は、流量切換用ピストン52が取り付けられている下規制ロッド、62は規制ロッド59より上方に延びるように取り付けられて、その上部がシリンダ51より上方に突出する上規制ロッド、63は上規制ロッド62の上部に形成されたねじ部に螺合されて、小開度時(小流量時)の開度を調整する規制ストッパである。
そして、図12(a)に示すように、充填口60を充填弁50により閉じる際には、開閉用上エアー導入路58および流量切換用上エアー導入路57からエアー(圧縮空気)を導入して、開閉用ピストン53および流量切換用ピストン52を下端位置まで移動させることで、充填弁50をノズル部54の内壁に押し付けて充填口60を閉じている。また、開閉用下エアー導入路61のみからエアー(圧縮空気)を導入することで、図12(b)に示すように、駆動ロッド55および開閉用ピストン53が上側寄りの大開度位置まで移動して、液体を大流量で導入できる。また、上エアー導入路57からエアーを導入して流量切換用ピストン52を下側位置にした状態で、開閉用下エアー導入路61からエアーを導入することで、図12(c)に示すように、上規制ロッド62の上部に取り付けられた規制ストッパ63がシリンダ51の上面部に当接して、駆動ロッド55および開閉用ピストン53が下側寄りの小開度位置となるまで移動して、液体を小流量で導入できる。なお、この状態では、下規制ロッド59を介して、下方に移動しようとする流量切換用ピストン52と、上方に移動しようとする開閉用ピストン53とが押し合った状態である。
この液体充填装置では、上規制ロッド62に対する規制ストッパ63の位置を調整することで、小流量の開度のみ調整可能である。しかし、原則的に、ピストン52、53のストロークが決まっているので大流量の開度については、調整できない欠点がある。また、これに加えて、小開度の状態では、ピストン52、53同士を押し合わせて位置決めしているので、位置決めの力が小さくなりやすい短所があり、充填対象となる液の圧力が高い場合に、大流量から小流量への切換動作であるピストン52、53の下降動作が行われずに停止したり、小開度(小流量)位置への位置決め動作が不安定となったりする不具合を生じる。
ところで、液体充填装置を各種のユーザーに販売する場合には、そのユーザーによって、液体充填物の性状(粘度や比重など)や供給条件が様々であるので、液体充填の処理能力を落とさずに、精度良く充填作業を行うためには、大開時(大流量時)の開度も調節できることが望ましい。例えば、充填対象となる容器の形状などによっては、大開時(大流量時)の開度が調節できないと、液体充填物を大流量で充填した際に、液体充填物が波立って容器から溢れ出てしまったり、容器も含めた重量によって充填時の制御を行っている場合において測定重量が変動して、良好に制御できなかったりするなどの不具合を生じてしまう。したがって、このような不具合を生じないよう、大開時(大流量時)の開度も調節できることが望ましい。
このような点に対処できるものとして、大流量および小流量の何れの開度状態でも、流量(開度)を調整可能に構成した液体充填装置が特許文献1等に開示されている。この液体充填装置は、図13に示すように、大流量制御エアシリンダ73と小流量制御エアシリンダ74を設け、開閉弁71および絞り部材70を昇降させる駆動ロッド72に対して大流量制御エアシリンダ73と小流量制御エアシリンダ74とのピストン75、76に取り付けられた出退ロッド77、78を、中継板79を介して係合または連結している。大流量制御エアシリンダ73の出退ロッド77には、中継板79を固定して上下に一体的に昇降するよう構成し、小流量制御エアシリンダ74の出退ロッド78の上端部には、段部78aを形成して、この段部78aにより、中継板79を上方に押し上げ可能に構成しているが、この出退ロッド78の段部78aよりも上方部分は細径に形成されて、互いに位置規制されることがない。また、各出退ロッド77、78の上端部に対して上方から臨むように、第1、第2位置調整ねじ81、82が、ケース80の上板80aに下方に突出量を調整可能な状態でねじ込まれており、各ピストン75、76が上昇した際には、出退ロッド77、78の上端部が、第1、第2位置調整ねじ81、82の下端部に当接して、位置規制されるよう構成されている。
なお、開閉弁71および絞り部材70を大流量開方向に移動させるべく、駆動ロッド72および中継板79を上昇させる際には、大流量制御エアシリンダ73において、ピストン75より下方の空間に連通するポート83からエアー(圧縮空気)を導入することで、ピストン75を押し上げて、図13(b)に示すように、オリフィス部86やノズル部87において大きく開口するよう構成されている。また、開閉弁71および絞り部材70を大流量の開状態にから小流量の開状態に移動させるべく、駆動ロッド72および中継板79を下降させる際には、小流量制御エアシリンダ74において、ピストン76より下方の空間に連通するポート84からエアー(圧縮空気)を導入した後、大流量制御エアシリンダ73のポート83を大気圧に開放することで、図13(c)に示すように、開閉弁71が取り付けられた駆動ロッド72を閉方向(下方)に引き戻すリターンスプリング85の付勢力と、駆動ロッド72の重量とにより、中継板79が出退ロッド78の上端部の段部78aに当接するまで、下降するよう構成されている。さらに、この小流量開状態から、開閉弁71および絞り部材70を閉鎖する際には、小流量制御エアシリンダ74において、ピストン76より下方の空間に連通するポート84を大気圧に開放することで、リターンスプリング(付勢ばね)85の付勢力と駆動ロッド72の重量とにより、中継板79および駆動ロッド72が下降するように構成されている。
この液体充填装置によれば、第1位置調整ねじ81を調整することで、大流量制御エアシリンダ73のストロークを変更することができて大流量時の流量を変更でき、第2位置調整ねじ82を調整することで、小流量制御エアシリンダ74のストロークを変更することができて小流量時の流量を変更できる。したがって、大開状態の開度も調節できるので、上記した不具合(液体充填物の波立ちや溢れ出し等)を解消することができる。
特開2000−168727号公報
図12に示すような、いわゆる2段式エアシリンダ装置を用いた従来の液体充填装置では、上記のように、大開度時の開度調節をできないことによる不具合に加えて、2段式エアシリンダ装置として、特殊な形状の2段式エアシリンダ装置であるので、製造コストが高価となる短所もある。また、大開度状態から小開度状態へ切り換える際の駆動力や小開度状態での位置決め力が、ピストン52、53同士を押し合った状態での比較的小さい力であるため、充填弁50に作用する液圧が高い場合に、大開度状態から小開度状態への切り換え動作や、小開度状態での位置決め動作が、不安定となるおそれがある。
また、前記特許文献1に開示された液体充填装置では、小開度時の開度調節だけでなく、大開度時の開度調節も可能である利点があるものの、閉鎖時での閉鎖方向への圧力がリターンスプリング(付勢ばね)85の付勢力だけであるので、充填弁としての開閉弁71および絞り部材70に作用する液圧が高い場合に、前記開閉弁71および絞り部材70を閉鎖させる力が不十分となって液漏れを発生する恐れがある。
また、リターンスプリング85として大きな付勢力を有するものを用いると、この付勢力に抗することが可能な、非常に大きな圧力を発生できる大型または高圧の大流量制御エアシリンダ73と小流量制御エアシリンダ74やエアー圧力発生装置が必要となり、製造コストが高価となったり、液体充填装置やその他の設備の大型化を招いてしまったりするおそれがある。
本発明は上記課題を解決するもので、製造コストの増加を最小限に抑えることができながら、小開度だけでなく大開度の開度調節もでき、しかも、大開度(大流量)時、小開度(小流量)時、閉鎖時等の位置決め動作および移動動作を安定して行うことができる液体充填装置を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために本発明の液体充填装置は、充填ノズル先端の充填口を開閉する充填弁が先端部に取り付けられた充填弁駆動用の駆動ロッドと、駆動ロッドに一端部が連結された出退ロッドを有する複動両ロッド型の大流量制御用シリンダと、一方に突出する出退ロッドを有する小流量制御用シリンダと、所定位置の支点を中心に片持ち状に揺動自在に支持され、端部側が小流量制御用シリンダの出退ロッドに回動自在に連結されまたは係合され、前記支点と小流量制御用シリンダの出退ロッドの連結点との中間部で、大流量制御用シリンダの出退ロッドの他端部側部分に当接離間自在とされた梃子型リンクとを備えたことを特徴とする。
上記構成において、大流量制御用シリンダの出退ロッドの一端部側がシリンダ内側に後退し、他端部側がシリンダから、より突出するように、大流量制御用シリンダの一方の空間に圧縮空気(エアー)などの作動用流体を導入することで、大流量制御用シリンダの出退ロッドの他端部側部分が大流量調整部材に当接するまで移動し、これに伴い、大流量制御用シリンダの出退ロッドの一端部に連結された駆動ロッドを介して充填弁が大きく開けられる。
また、この状態から、大流量制御用シリンダに対して作動流体を導入する空間を切り換えることで、大流量制御用シリンダの出退ロッドとともに駆動ロッドを介して充填弁が閉じる方向に移動される。また、これと並行して、小流量制御用シリンダにエアーなどの作動流体を導入して小流量制御用シリンダの出退ロッドの端部を、より突出するように移動させることで、梃子型リンクが、支点を中心として揺動される。この結果、梃子型リンクと、大流量制御用シリンダの出退ロッドの他端部側部分とが当接するとともに、梃子型リンクの前記揺動によって、大流量制御用シリンダの出退ロッドの一端部と、この箇所に連結された駆動ロッドを介して充填弁が小開度の状態まで閉じられる。
また、大流量制御用シリンダの他方の空間に作動流体を導入したままの状態で、小流量制御用シリンダ内に導入していたエアーを大気圧に開放させるなどして作動流体をシリンダから排出させることで、梃子型リンクが押戻されながら、大流量制御用シリンダの出退ロッドの一端部に連結された駆動ロッドを介して充填弁が閉じられる。
上記構成によれば、大開度(大流量)時、小開度(小流量)時、閉鎖時の何れの状態および開度切換時でも、作動流体の圧力により押圧された状態で位置決めできるので、位置決め動作および切換動作を安定した大きな力で行うことができる。なお、小開度(小流量)時には、大流量制御用シリンダの出退ロッドと小流量制御用シリンダの出退ロッドとが梃子型リンクを介して、押し合うことになるが、梃子比によって小流量制御用シリンダの出退ロッドの力が、大流量制御用シリンダの出退ロッドに対して勝ることとなり、例え、大流量制御用シリンダと小流量制御用シリンダとを、同じ断面積のピストンを有するものを用いた場合でも、小流量制御用シリンダの出退ロッドを安定して突出方向に移動させることができ、大流量制御用シリンダの出退ロッドを小開度位置となるように強制的かつ確実に位置決めすることができる。
また、本発明の液体充填装置は、大流量制御用シリンダの出退ロッドの他端部側部分に対して当接可能に配設されて、大流量制御用シリンダの出退ストロークを調整する大流量調整部材と、小流量制御用シリンダの出退ロッドの突出端部側部分に対して当接可能に配設されて、小流量制御用シリンダの出退ストロークを調整する小流量調整部材とを備えたことを特徴とし、この構成により、小開度だけでなく大開度の開度調節もできる。
また、本発明は、駆動ロッドと、大流量制御用シリンダの出退ロッドとが、同軸芯で連結されていることを特徴とする。
この構成により、駆動ロッドと、大流量制御用シリンダの出退ロッドとが、同軸芯で一体的に移動するので、大流量制御用シリンダの出退ロッドを駆動ロッドの延長部分として兼用することができ、図13に示すような、充填弁駆動用の駆動ロッドに中継板を取り付け、この中継板に対して、大流量制御用シリンダの出退ロッドと小流量制御用シリンダの出退ロッドとを並行して連結した場合と比較して、部品点数や設置スペースを削減することができる。
以上のように本発明によれば、充填弁が先端部に取り付けられた駆動ロッドを、複動両ロッド型の大流量制御用シリンダにおける出退ロッドの一端部に連結させ、小流量制御用シリンダの出退ロッドの端部に、支点を中心として回動する梃子型リンクを連結または係合させ、この梃子型リンクの中間部に、大流量制御用シリンダの出退ロッドの他端部側部分を当接離間自在に配置したことにより、簡単な構成で、何れの状態(大開度(大流量)時、小開度(小流量)時、閉鎖時)および状態切換時でも、充填弁が先端部に取り付けられた駆動ロッドの位置決め動作および切換動作を安定して行うことができて、信頼性が向上する。
また、大流量制御用の大流量制御用シリンダや小流量制御用の小流量制御用シリンダとして一般的な構造のものを用いることができて、製造コストを低減化できる。
また、駆動ロッドと大流量制御用シリンダの出退ロッドとが、同軸芯となるように配置させて一体的に昇降するよう結合させたことにより、図13に示すような構造を採用した場合と比べて、部品点数を低減することができるとともに、充填弁駆動部の配設空間を少なくすることができ、コンパクト化を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態にかかる液体充填装置を図面に基づき説明する。
図1〜図3は、それぞれ本発明の実施の形態に係る液体充填装置の縦断面図で、図1は閉鎖時、図2は大流量時、図3は小流量時の状態を示す。また、図4(a)は図1のIVa−IVa線矢視側面図、図4(b)は図1のIVb−IVb線矢視側面図、図5は図1のV−V線平面断面図である。
図1〜図5に示すように、液体充填装置は、大まかには、充填対象としての液体が供給されるとともにこの液体の充填流路を開閉する充填弁1などが設けられているノズル部2と、充填弁1を駆動させる充填弁駆動部3とから構成される。ノズル部2は、充填時に液体を充填する容器(図示せず)の上方となる箇所に配置される。また、ノズル部2の上方に、充填弁駆動部3が組みつけられている。
ノズル部2は、液体が供給される流入路4aと充填弁1が内装され上下に延びる本体流路4bとが接続されてなるノズル本体4と、このノズル本体4の下端部に取り付けられて充填口5aが形成された充填口部5と、ノズル本体4の上部に組みつけられたノズル連結筒6と、ノズル連結筒6に内挿されたシール部材10およびシール押さえ部材19と、ノズル連結筒6の上方にさらに接続された接続枠9と、充填口5aを開閉する充填弁1と、シール押さえ部材19内を上下に貫通して昇降自在に配設され、充填弁1が先端部に取り付けられた充填弁駆動用の駆動ロッド7などを備えている。
この実施の形態では、充填弁1の上太径部1aが密着可能な形状の充填口部5の上筒状部5bが、ノズル本体4の内壁面から隙間を有した状態で配設されているとともに、この上筒状部5bの一部に、小開度(小流量)時に液体が流入できる小流量用流入孔8が形成されており、小開度(小流量)時には、充填口部5の上筒状部5bが充填弁1の上太径部1aにより閉鎖された状態で、小流量用流入孔8を通して、小流量の液体が安定して流入されるよう図られている。なお、ノズル本体4と充填口部5との接合部や、ノズル本体4とノズル連結筒6との接合部などにはシール材が配設されているが、図面では省いている。
充填弁駆動部3は、底面部11aに接続枠9の上端部が固定されており、充填弁駆動部3の外枠をなす箱型形状のケース部11と、図1に示すように正面視して、充填弁駆動部3の略中央部に配設され、上下に突出する出退ロッド12aを有する複動両ロッド型の大流量制御用シリンダ12と、右側寄りに配設され、上方に突出する出退ロッド13aを有する単動片ロッド型の小流量制御用シリンダ13と、左側寄り空間において上下に延びる支柱体14と、支柱体14の上下方向中間部において前後方向(奥行方向)に挿通された支点ピン15を中心として、左側に延びる姿勢で、揺動自在に取り付けられた梃子(てこ)型リンク16と、大流量制御用シリンダ12の上方に配設され、大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aの出退ストロークを調整する大流量調整部材17と、小流量制御用シリンダ13の上方に配設され、小流量制御用シリンダ13の出退ロッド13aの出退ストロークを調整する小流量調整部材18などを備えている。
大流量制御用シリンダ12は、出退ロッド12aが上下方向に沿って移動自在に配置され、この大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aと、弁駆動ロッド7と、大流量調整部材17に設けられたストッパ軸17aとが上下方向に沿って同一軸芯となる姿勢に配設されている。大流量制御用シリンダ12は、その出退ロッド12aの下端部(一端部)に、連結継手20を介して、弁駆動ロッド7の上端部が取り付けられている。大流量制御用シリンダ12は、その下バルブ(第1バルブ:図4(a)参照)12bから、ピストン12dの下面に臨むシリンダ内下空間12fに作動流体としてのエアー(圧縮空気)が導入され、上バルブ(第2バルブ:図4(a)参照)12cから、ピストン12dの上面に臨むシリンダ内上空間12gのエアーが大気圧に開放されることで、ピストン12dとともに出退ロッド12aが上昇する。また、上バルブ12cからシリンダ内上空間12gにエアーが導入され、下バルブ12bからシリンダ内下空間12fのエアーが開放されることで、ピストン12dとともに出退ロッド12aが一体的に下降する。大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aの上端部(他端部)には第1ブラケット21が取り付けられている。この第1ブラケット21は、大流量調整部材17のストッパ軸17aに下方から当接可能とされているとともに、奥行方向に貫通する第1昇降ピン22が連結されている。第1昇降ピン22は、梃子型リンク16の左右方向略中央部で、下方に窪むように形成された凹形状部16aの底部に上方から当接可能に配設されている。
小流量制御用シリンダ13は、出退ロッド13aが上方に突出した姿勢で上下に移動自在に配置され、この出退ロッド13aの上端部には第2ブラケット23が取り付けられている。この第2ブラケット23は、小流量調整部材18のストッパ軸18aに下方から当接可能とされているとともに、奥行方向に貫通する第2昇降ピン24が連結されている。そして、この第2昇降ピン24が梃子型リンク16の右寄り箇所に連結されており、小流量制御用シリンダ13の出退ロッド13aの昇降に伴って、梃子型リンク16が支点ピン15を中心として揺動する。小流量制御用シリンダ13は、下バルブ13bからピストン13dの下面に臨むシリンダ内下空間13fにエアー(圧縮空気)が導入されることで、ピストン13dとともに出退ロッド13aが上昇する。なお、小流量制御用シリンダ13におけるピストン13dの上面に臨むシリンダ内上空間13gには、この空間を大気圧に連通させる通気孔が形成されている。また、下バルブ13bからシリンダ内下空間13fのエアーが開放されることで、ピストン13dとともに出退ロッド13aが一体的に下降可能な状態となる。また、この実施の形態では、梃子型リンク16における支点ピン15から第1昇降ピン22までの距離に対して、支点ピン15から第2昇降ピン24までの距離の比(いわゆる梃子比)が約2倍とされているが、これに限るものではない。なお、大流量制御用シリンダ12と、小流量制御用シリンダ13とは、シリンダやピストン12d、13dの断面積が同じ形状の、入手し易い比較的安価な一般的な規格のものが用いられている。
大流量調整部材17および小流量調整部材18は、それぞれケース部11の上面部11bに形成されたねじ孔を通して、上下にねじ移動可能なストッパ軸17a、18aと、ストッパ軸17a、18aの上端部に固定されたつまみ17b、18bと、ストッパ軸17a、18aのねじ部に螺合されるとともに、ケース部11の上面部11bに接触した姿勢で、ストッパ軸17a、18aの位置決めをする位置決めねじ17c、18cとから構成されている。なお、この実施の形態では、ストッパ軸17a、18aの先端に当接板17d、18dが取り付けられており、この当接板17d、18dが大流量制御用シリンダ12の第1ブラケット21または小流量制御用シリンダ13の第2ブラケット23に当接するようになっているが、これに限るものではない。
上記構成において、液体を大流量で充填する際には、大流量制御用シリンダ12の下バルブ12bから作動流体としてのエアー(圧縮空気)を導入させて、出退ロッド12aを上昇させる。これにより、図2に示すように、大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aが大流量調整部材17のストッパ軸17aに当接するまで大きく上昇し、これにより、駆動ロッド7を介して充填弁1が大きく引き上げられた大開度状態となり、液体が大流量で充填される。なお、この際に、小流量制御用シリンダ13に対しては、下バルブ13bからエアーを導入させており、出退ロッド13aを上限位置まで上昇させるが、これに限るものではなく、下バルブ13bのエアー圧を大気圧に開放させてもよい。
この大流量充填時において、大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aの上端に結合された第1昇降ピン22は、その上方への移動は梃子型リンク16に対して規制されていないため、大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aは、梃子型リンク16の位置に影響されること無く、大開度(大流量)位置まで移動できる。また、この際の、大開度(大流量)位置は、大流量調整部材17により良好に調節することができる。また、この際は、大流量制御用シリンダ12のエアー圧力により大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aが大流量調整部材17のストッパ軸17aに押し当てられた状態で、駆動ロッド7および充填弁1が良好に位置決めされ、安定した状態で、液体を大流量で充填することができる。
液体の充填を大流量から小流量に切り換える際には、大流量制御用シリンダ12の上バルブ12cからエアーを導入させるととも下バルブ12bからのエアーを開放させて、エアー圧により大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aを下降させる。また、小流量制御用シリンダ13については、バルブ13bからエアーを導入させた状態を維持させ(あるいは、下バルブ13bからのエアーの導入を開始させ)、出退ロッド13aを上限位置とする。これにより、図3に示すように、梃子型リンク16はその右側部分が少し上方に傾斜した姿勢となり、大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aは、梃子型リンク16の凹形状部16aに入り込んで当接した状態で停止する。これにより、駆動ロッド7を介して充填弁1が少し開けられた小開度状態となり、液体が小流量で充填される。
ここで、この大流量から小流量に切り換える際には、大流量制御用シリンダ12のエアー圧により、これに内蔵されたピストンが押し下げられて大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aが下降され、また、この大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aに連結された第1昇降ピン22が梃子型リンク16に当接した状態では、梃子型リンク16を介して、大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aと小流量制御用シリンダ13の出退ロッド13aとが押し合う状態となるが、梃子型リンク16は、支柱体14で支持された支点ピン15を中心として、第1昇降ピン22までの距離に対して、第2昇降ピン24までの距離は約2倍(梃子比による)であるので、梃子型リンク16は、小流量制御用シリンダ13の出退ロッド13aにより押し上げられた状態に良好に維持され、この結果、小開度(小流量)状態が良好に保持される。したがって、大流量から小流量に安定して切り換えられるとともに、小開度(小流量)状態が良好に保持され、充填作業が良好に行われる。なお、上述したように、この実施の形態においては小開度(小流量)状態では、充填口部5の上筒状部5bが充填弁1の上太径部1aにより閉鎖された状態で、小流量用流入孔8を通して、小流量の液体が安定して流入される。
この後、充填作業を停止させる際には、大流量制御用シリンダ12の上バルブ12cからエアーを導入させたままの状態で、小流量制御用シリンダ13のバルブ13bを大気圧に開放してエアーを排出させる。これにより、図1に示すように、小流量制御用シリンダ13のピストン13dおよび出退ロッド13aが下限位置まで下降し、これによって、梃子型リンク16が略水平姿勢となり、その分だけ、大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aが下降し、これに伴って、駆動ロッド7を介して充填弁1が閉鎖状態となり、液体の充填が停止される。この際、充填弁1は、大流量制御用シリンダ12のエアー圧によって十分に大きな圧力で押し付けられて閉鎖されるので、良好な状態で閉鎖され、例え、充填対象となる液体の液圧が高い場合でも、液漏れを生じることはない。
このように、上記構成によれば、大開度(大流量)時、小開度(小流量)時、閉鎖時の何れの状態および切換時でも、作動流体の圧力により、位置決めされるので、位置決め動作および切換動作を安定して行うことができる。なお、小開度(小流量)時には、大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aと小流量制御用シリンダ13の出退ロッド13aとが梃子型リンク16を介して、押し合うことになるが、梃子比によって、小流量制御用シリンダ13の出退ロッド13aが安定して突出して、大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aならびに駆動ロッド7を小開度位置となるように強制的かつ確実に位置決めすることができる。
また、上記構成によれば、駆動ロッド7と大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aとが、同軸芯となるように配置させて一体的に昇降するよう結合させているので、図13に示すように、充填弁(開閉弁71および絞り部材70)を駆動させる駆動ロッド(操作ロッド72)の左右にそれぞれシリンダ77、78を配設する場合と比較して、大流量制御用シリンダ12の出退ロッド12aを駆動ロッド7の延長部分として兼用したような構成となって、部品点数を削減することができるとともに、充填弁駆動部の配設空間を少なくすることができる利点もある。
また、上記構成によれば、大流量制御用の大流量制御用シリンダ12として、特殊な形状でない、一般的な構造の複動両ロッド型のもので済ますことができ、かつ、小流量制御用の小流量制御用シリンダ13として、特殊な形状でない、一般的な構造の単動片ロッド型のもので済ますことができる。したがって、これによっても、製造コストを低減化できる利点がある。
なお、上記の実施の形態では、梃子型リンク16に対して小流量制御用シリンダ13の出退ロッド13aを、第2昇降ピン24を介して回転自在に連結させた場合を述べたが、これに限るものではなく、図6〜図8に示すように、梃子型リンク16における、小流量制御用シリンダ13の出退ロッド13aに挿通させた第2昇降ピン24に対応する位置に、下方に開口する凹形状部16bを形成し、この梃子型リンク16の凹形状部16bに、前記第2昇降ピン24が下方から当接して係合するように構成してもよい。この構成によっても、小流量制御用シリンダ13の出退ロッド13aの昇降動作に連動して、梃子型リンク16が揺動し、上記実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、上記の実施の形態では、大流量制御用シリンダ12や小流量制御用シリンダ13にエアー圧を常時作用させたり、保持させたりできる環境で用いられる液体充填装置の場合を述べた。しかし、エアー圧が解除される場合がある環境では、上記構造においては充填弁1を閉鎖した状態でエアー圧が解除されると、充填弁1を閉鎖する方向にエアー圧力が作用しなくなるため、液漏れを生じるおそれがある。したがって、このように、エアー圧が解除される場合がある環境では、図9〜図11に示すように、エアー圧が解除された場合でも、充填弁1を閉鎖した状態に保持できるように、ある程度の付勢力を与えて、充填弁1の閉鎖状態を良好に保持するための、閉鎖状態維持用(液漏れ防止用)の付勢ばね30を付加してもよく、これによれば、エアー圧が解除され他場合でも、液漏れを防止することができる。
また、上記実施の形態では、大流量制御用シリンダ12や小流量制御用シリンダ13の作動用流体として圧縮空気を用いた場合を述べたが、これに限るものではなく、各種の気体や液体を用いることが可能である。