JP2009171920A - 抗癌剤のスクリーニング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】抗癌剤の標的としての転写因子Nrf2の意義を解明し、これに基づいて抗癌剤のスクリーニングシステムを構築する。
【解決手段】転写因子Nrf2によって制御されるプロモーター配列と、当該配列と機能的に連結されたレポーター遺伝子とを含む発現ベクターを用意し、前記発現ベクターを、Keap1遺伝子に変異を有するか、又はKeap1タンパク質の発現量が低下したヒト細胞に形質移入し、候補化合物の存在下又は非存在下において前記形質移入細胞を培養して前記レポーター遺伝子の発現量を測定し、そして前記レポーター遺伝子の発現を阻害する候補化合物をヒト肺癌の推定増殖阻害剤として選択する。
【選択図】図5

Description

本発明は、抗癌剤のスクリーニング方法及び当該方法に用いるためのヒト形質転換細胞等に関し、より詳細には、肺癌、特に抗癌剤抵抗性を示すヒト肺癌に効果のある抗癌剤のスクリーニング方法等に関する。
我が国における肺癌の死亡者数は、1998年に胃癌を抜いて第1位となり、現在では年間5万人を超している。早期発見によって手術可能な症例(全体の約30%)は、その半数近くが5年以上の生存を示す。しかし、肺癌の早期発見は難しく、全体の5年生存率は約20%と極めて低い。手術不可能な肺癌の治療方法としては、放射線治療や抗癌剤投与が行われるが、一般的に小細胞肺癌は抗癌剤の効果が比較的高いものの、非小細胞肺癌に対する抗癌剤の効果は低いことが知られている。
肺癌治療に使用される代表的な抗癌剤としては、ゲムシュタビン(代謝拮抗剤)、シスプラチン(プラチナ製剤)、マイトマイシンC(アルキル化剤)、イリノテカン(トポイソメラーゼ阻害剤)及びゲフィチニブ(イレッサ(登録商標)、分子標的剤)等が知られているが、肺癌の場合、これらの抗癌剤の効果はあまり大きくなく、下痢や間質性肺炎等の副作用に苦しむ患者が多いのが特徴である。このように、種々の抗癌剤が効きにくいことから、肺癌では特定の抗癌剤代謝酵素のみが活性化されているのではなく、薬剤代謝酵素群全体が活性化されているのではないかと考えられる。
抗癌剤の代謝に関する多くの遺伝子産物の中で、グルタチオン−S−トランスフェラーゼのような第二相薬剤代謝酵素群及び抗酸化ストレス酵素/タンパク質がある。これらの酵素/タンパク質群は、抗酸化剤/求電子剤応答因子(antioxidant/electrophile-responsive element:ARE/EpRE)と称される塩基配列モチーフによって制御されている一群の遺伝子によってコードされている(例えば、非特許文献1参照)。転写因子であるNrf2は、小さなMafファミリータンパク質の1つとヘテロダイマーを形成し、この複合体がAREに結合して上記の細胞保護的な遺伝子の転写を活性化する(例えば、非特許文献2参照)。Keap1は、このNrf2と相互作用するタンパク質として同定されたものであり、BTB、IVR及びDGRドメインを含む(例えば、非特許文献3参照)。これらのドメインは、Keap1の二重の機能に寄与している。Keap1は、アダプタータンパク質であるキュリン3(Cul3)と特異的に相互作用し、E3ユビキチンリガーゼを形成して基質であるNrf2の迅速な分解を引き起こす。Keap1はまた、求電子的/酸化的ストレスに対するセンサーとしても機能する。ストレス刺激がないとき、Nrf2はKeap1−Cul3E3リガーゼによるユビキチン化を用いるプロテアソーム経路により迅速に分解される。ストレスに曝されたとき、Keap1が修飾され、Nrf2は修飾Keap1から遊離し核内へ移行し、種々の細胞保護的な遺伝子の転写を活性化する。Keap1−Cul3E3リガーゼによるNrf2の迅速な分解が、ストレスに応答した細胞保護的な酵素群の適時誘導を可能にしている。従って、Nrf2を活性化することによって、癌を含む種々の疾患の治療、予防、改善されること、及びそのような機能が付与された食品が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、驚いたことに、本発明者らは日本人肺癌患者及び肺癌細胞株のKEAP1遺伝子に体細胞変異を同定しており、これらのKeap1遺伝子変異はKeap1のNrf2抑制活性に影響を与え、Nrf2の核内への蓄積を刺激して癌細胞における細胞保護的酵素の発現を誘導している。最近、他のグループによって白人の肺癌患者の19%においてKEAP1遺伝子の体細胞変異が検出されている(例えば、非特許文献4参照)。

WO2006/043671A1 Nguyen T, Sherratt PJ, Pickett CB. Regulatory mechanisms controlling gene expression mediated by the antioxidant response element. Annu Rev Pharmacol Toxicol 2003; 43:233-60 Motohashi H, Katsuoka F, Engel JD, Yamamoto M. Small Maf proteins serves as transcriptional cofactors for keratinocyte differentiation in the Keap1-Nrf2 regulatory pathway. Proc Natl Acad Sci USA 2004; 101:6379-84 Adams J, Kelso R, Cooley L. The kelch repeat superfamily of proteins: propellers of cell function. Trends Cell Biol 2000; 10: 17-24 Singh A, Misra V, Thimmulappa RK, et al. Dysfunctional KEAP1-NRF2 interaction in non-small-cell lung cancer. PLos Med 2006; 3: e420
上記従来技術についての本発明者らの分析によれば、肺癌患者のある集団におけるKEAP1遺伝子の欠損が、細胞核内における転写因子Nrf2を活性化して抗酸化剤や生体異物の代謝に関与する酵素及び薬剤排出ポンプの発現を誘導し、これによって癌細胞の薬剤耐性能を高めていることが示唆される。しかしながら、日本人の肺癌患者集団においても同様であるかは明らかではない。さらに、癌細胞においてNrf2機能のみを阻害したときに癌細胞の増殖にどのような影響を与えるのか、すなわち抗癌剤の標的としての転写因子Nrf2の意義を解明する必要がある。本発明はこれらの事実を解明することによりすぐれた抗癌剤のスクリーニングシステムを構築することを目的とする。
本発明者らは、日本人の肺癌患者集団において、高い確率でKEAP1遺伝子に変異が起こり、これによって癌細胞のNrf2が活性化されていること、及びこのようなKEAP1欠損肺癌細胞におけるNrf2の活性化が肺癌細胞自体の増殖を促進していることを見出した。さらにKeap1機能の低下した肺癌細胞株においてNrf2の発現を抑制することでこれらの細胞の増殖を抑制しうることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明の抗癌剤のスクリーニング方法は、転写因子Nrf2によって制御されるプロモーター配列と、当該配列と機能的に連結されたレポーター遺伝子とを含む発現ベクターを用意し、前記発現ベクターを、KEAP1遺伝子に変異を有するか、Keap1タンパク質の発現量が低下しているか、又はNrf2タンパク質が活性化されているヒト細胞に形質移入し、候補化合物の存在下又は非存在下において前記形質移入細胞を培養して前記レポーター遺伝子の発現量を測定し、そして前記レポーター遺伝子の発現を阻害する候補化合物をヒト肺ガンの推定増殖阻害剤として選択することを含む。好ましい実施形態において、前記KEAP1遺伝子の変異は、Keap1タンパク質のIVRドメイン又はDGRドメインに存在し、かつ変異体Keap1タンパク質のNrf2活性抑制機能が低下するような変異である。
本発明の他の観点では、1又は複数のNrf2結合部位を含むプロモーター配列の下流に、分泌型レポーター遺伝子を連結してなる発現ベクター、及び当該発現ベクターを、KEAP1遺伝子に変異を有するか、又はKeap1タンパク質の発現量が低下することによりNrf2タンパク質が活性化されているヒト細胞に形質移入してなる形質転換ヒト細胞が提供される。前記Nrf2結合部位は、配列番号1に示した塩基配列からなることが好ましく、前記レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子であることが好ましい。従って、本発明の特に好ましい実施形態は、候補化合物の存在下又は非存在下において前記形質転換ヒト細胞をインキュベートし、それぞれの条件において培養液中に分泌されたレポーター遺伝子産物量を測定し、及び前記候補化合物の非存在下に比べて、存在下におけるレポーター遺伝子産物量が減少する場合に前記候補化合物がヒト肺ガンの増殖阻害剤であると推定すること、を含む抗癌剤のスクリーニング方法である。
さらに異なる観点において、本発明は、ヒト腫瘍組織より調製された切片を、Nrf2抗体、Keap1抗体、Nqo1抗体、Mrp2抗体、及び/又はMrp3抗体を用いて組織染色し、前記抗体と結合するそれぞれのタンパク質の細胞内局在性を検定し、そしてNrf2タンパク質が細胞核内に蓄積するか、Keap1タンパク質が細胞質で減少するか、又はNqo1タンパク質、Mrp2タンパク質、及びMrp3タンパク質から選択される1つ以上のタンパク質が細胞質若しくは細胞膜に局在するとき、前記腫瘍が抗癌剤に対して抵抗性を有することを示唆することを特徴とする癌細胞を特徴付ける方法を提供する。上記タンパク質の細胞内局在性と、癌細胞の薬剤耐性能との関係は、後述する実施例において詳細に示される(特に、図3参照)。
本発明のスクリーニング方法は、効率的に抗癌剤をスクリーニングすることができ、ハイスループットスクリーニングに適している。特に、本発明の発現ベクターを用いることによって細胞の培養上清中に分泌されたレポーター酵素の活性を検出することで抗癌作用のモニタリングが可能となる。したがって、リード化合物添加後1日又は2日程度で培地交換し、さらに6時間から12時間程度培養後に、細胞の培養上清を測定するという迅速かつ容易や方法で抗癌剤のバイオアッセイ系を構築することができる。
本発明のスクリーニング方法によって得られる抗癌剤は、単独でKEAP1遺伝子に変異を有するか、Keap1タンパク質の発現量が低下しているか、又はNrf2タンパク質が活性化されているヒト肺癌又はその他の癌に対する増殖抑制等の抗腫瘍効果が期待される。さらに、これらの肺癌は転写因子Nrf2の活性化によって抗癌剤の排出や解毒作用が亢進し、既存の抗癌剤に対して抵抗性を示すので、本発明のスクリーニング方法によって得られる抗癌剤を併用することで、既存の抗癌剤の効果を促進し、さらなる抗癌効果が期待される。
本発明の実施において、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNA技術等の一般的方法及び従来技術について、実施者は、特に示されなければ、当該分野の標準的な参考書籍を参照し得る。これらには、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版(Sambrook & Russell、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001);Current Protocols in Molecular biology(Ausubelら編、John Wiley & Sons、1987);Methods in Enzymologyシリーズ(Academic Press);PCR Protocols: Methods in Molecular Biology(Bartlett & Striling編、Humana Press、2003);Animal Cell Culture: A Practical Approach 第3版(Masters編、Oxford University Press、2000)を参照のこと。また、本明細書において参照される細胞培養、細胞生物学実験のための試薬及びキット類はSigma社やAldrich社、Invitrogen/GIBCO社、クロンテック社、タカラバイオ株式会社等の市販業者から入手可能である。
[Nrf2の活性化阻害に基づく抗癌剤のスクリーニング方法]
本発明のNrf2活性化阻害に基づく抗癌剤のスクリーニング方法は、転写因子Nrf2によって制御されるプロモーター配列と、当該配列と機能的に連結されたレポーター遺伝子とを含む発現ベクターを用意し、前記発現ベクターを、KEAP1遺伝子に変異を有するか、又はKeap1タンパク質の発現量が低下したヒト細胞に形質移入し、候補化合物の存在下又は非存在下において前記形質移入細胞を培養して前記レポーター遺伝子の発現量を測定し、そして前記レポーター遺伝子の発現を阻害する候補化合物をヒト肺癌の推定増殖阻害剤として選択することを含む。本明細書において、「転写因子Nrf2」とは、nuclear factor E2-related factor 2とも称され、細胞保護的遺伝子の発現を構成的に、又は酸化ストレスシグナルに応答して誘導するために、これらの遺伝子のプロモーター領域にあるARE/EpREと相互作用する。Nrf2は、保存された塩基性領域−ロイシンジッパー構造を含む転写因子のCNCファミリーに属する。ヒトとトリのNrf2のアミノ酸配列を比較すると、6つの相同性の高い領域(Neh1〜Neh6ドメイン)が存在することが知られている。これらのNehドメインの中で、Neh1、Neh3及びNeh6ドメインはNrf2タンパク質のC末端側の半分に局在する。Neh1はCNC型の塩基性ロイシンジッパーDNA結合モチーフを含み、Neh6はセリンリッチ保存領域を含む。N末端側の半分には、2つの酸性トランス活性化ドメインであるNeh4とNeh5が存在し、この領域はトランス活性化のためにCBPのKIX及びCH3ドメインと相互作用する。Neh2はNrf2のN末端に局在し、Keap1と相互作用して細胞ストレス応答のための制御ドメインとして作用する。すなわち、Nrf2は、Keap1−Nrf2複合体として細胞質に存在し、そこに活性化物質が作用すると核内へ移行してsmall-Mafとヘテロ二量体を形成してAREに結合し、第二相酵素の発現を増大させると考えられる。
一方、本明細書において「Keap1」とは、細胞質に存在するタンパク質であって、Kelch-like ECH-associated protein 1とも称される。Keap1は、3つの機能的ドメインを有し、これらはBTB(Broad complex, Tramtrack, and Bric-a-Brac)、IVR(intervening region)、及びDGR(double glycine repeat or Kelch repeat)である。BTBドメインは二量体形成のために働き、Keap1二量体は、その有効な機能にとって重要である。DGRドメインはNrf2のNeh2ドメインと相互作用し、ユビキチン化シグナリング及びプロテアソームによる分解を介してNrf2タンパク質の代謝回転速度を制御する。
従って、本発明のスクリーニング方法は、転写因子Nrf2によって活性化されたレポーター遺伝子の発現を指標として、これを阻害する化合物を選択することによりNrf2の活性化阻害剤をスクリーニングするシステムである。Nrf2の活性化阻害には種々のメカニズムが考えられ、例えば、細胞質内でNrf2と相互作用して核への移行を阻害すること、細胞質内でのNrf2の分解を促進すること、及び核内におけるNrf2の転写促進作用を阻害すること等が含まれる。本発明の方法で選択される化合物は、これらの何れであってもよい。後述する実施例において詳細に示されるように、Nrf2が活性化された肺癌細胞は増殖性が増大し、Nrf2の機能を抑制することによって増殖を抑制することができると考えられる。従って、本発明のスクリーニング方法により得られた化合物は抗癌剤として機能するか、あるいはそのリード化合物として新規な抗癌剤開発に利用できることが期待される。
本発明のスクリーニング方法に用いることのできる候補化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアルケミストリー技術、又は通常の合成技術によって得られた化合物群、あるいは、ファージディスプレイ法などを応用して作成されたランダムペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然物質又は動物組織抽出物などもスクリーニングの候補化合物として用いることができる。さらには、本発明のスクリーニング方法により得られた化合物を化学的又は生物学的に修飾した化合物も用いることができる。
[本発明の組換えベクター]
1つの実施形態において、本発明の発現ベクターは、1又は複数の転写因子Nrf2結合部位を含むプロモーター配列の下流に、分泌型レポーター遺伝子を連結して調製される。本明細書において、「Nrf2結合部位」とは、転写因子Nrf2が結合するDNA上の保存配列であって、上述のARE配列(5’-RTGAG/CNNNGC-3’(配列番号1))、その相補配列、又はそれらの類似配列をいう。Nrf2結合部位とコアプロモーター(TATA配列)との連結方法は特に限定されないが、これらのプロモーター配列の下流に連結されたレポーター遺伝子がNrf2依存的に転写されるように構成されていればよい。
本発明の好ましい実施形態において、上記Nrf2結合部位は、配列番号1に記載の塩基配列からなるか、又は当該配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ転写因子Nrf2と結合して下流に連結された遺伝子の転写を活性化する配列である。「ストリンジェントな条件でハイブリダイズする」とは当業者において周知のハイブリダイゼーションの実験条件である。具体的には、「ストリンジェントな条件」とは約45℃にて6.0×SSC(クエン酸ナトリウムと塩化ナトリウムとの塩溶液)でハイブリダイゼーションを行った後に、50℃で2.0×SSCで洗浄することを指す。ストリンジェンシーの選択のため、洗浄工程における塩濃度を、例えば低ストリンジェンシーとしての約2.0×SSC、50℃から、高ストリンジェンシーとしての約0.2×SSC、50℃まで選択すること、ができる。さらに、洗浄工程の温度を低ストリンジェエンシー条件の室温、約22℃から、高ストリンジェンシー条件の約65℃まで増大させることができる。なお、当業者であれば、SSCの希釈率、ホルムアミド濃度、温度などの諸条件を適宜選択することで、上記の条件と同様のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を実現することができる。
本発明において用いられるレポーター遺伝子は、細胞内で発現し検出が容易なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、β−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びエクオリン等を挙げることができる。大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)は種々の細胞の形質転換におけるレポーター遺伝子としてよく使用されている。この酵素の生体内での基質はラクトースであるが、ほぼあらゆるβガラクトシドを加水分解することができ、例えば無色の基質であるONPGを加水分解して420nmの光を吸収する黄色のo-nitrophenolを生成する。また、x−galはこの酵素により分解されてインディゴブルーの呈色反応を示す。
アルカリフォスファターゼは、分子触媒活性の極めて高い酵素であり、種々の蛍光及び発光基質も開発されているため高感度測定に好適である。ホタルルシフェラーゼはATPの存在下でルシフェリンの酸化を触媒し、光子を生成する化学ルミネッセンス反応を触媒する。ルシフェラーゼは単量体のタンパク質で翻訳後の修飾を必要としないから、遺伝子発現のレポーター遺伝子として適している。遺伝子発現の速度変化を迅速に検出し、感度を向上させるためにルシフェラーゼタンパク質の安定性を低下させたり、また、測定再現性を上げるために内部標準酵素とのデュアルレポーターシステム等が開発されている。GFPはオワンクラゲ(Aequorea victoria)等から発見された蛍光タンパク質であり、共存する発光タンパク質であるエクオリンの青色化学発光をエネルギー変換して緑色にすることが知られている(Prasher, D., et al., Gene 11, 229-233, 1992)。このGFPは上記エクオリンやルシフェラーゼのように特殊な蛍光団を必要とせず、自らのアポタンパク質上で自動的に蛍光団を形成する。このため、クローン化されたGFPのcDNAを用いてこれまでに細菌、酵母、カビ、植物、昆虫及び動物細胞等で発現されて、遺伝子発現の指標として用いられている。また、GFP遺伝子に種々の方法により変異を導入して多くのGFP誘導体が作製され、これらの中には野生型GFPよりも強い蛍光強度を示したり、異なる波長の蛍光を発する誘導体があることが報告されている(Ehrig,T., O'Kane,D., and Prendergast,F. FEBS Lett. 367, 163-166, 1995及びCrameri,A., Whitehom, E., Tate,E., and Stemmer,W. Nature Biotech. 14, 315-319, 1996参照)。
また、本発明の発現ベクターは、前記レポーター遺伝子を発現させるための発現調節領域を含む。このような発現調節領域には、コアプロモーターのほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、シグナル配列、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカーなどを含有するものを連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。コアプロモーターとしては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)やNAD(P)H:キノン酸化還元酵素1(NQO1)等の第二相酵素のコアプロモーターの他、SV40プロモーター、LTRプロモーター、PGKプロモーター、CMVプロモーター等を用いてもよい。
本発明の1つの好ましい実施形態において、細胞を溶解することなくレポーター遺伝子の活性を迅速かつ簡便に検出することができる分泌型レポーター遺伝子を用いることができる。海洋性のカイアシ類からクローン化された分泌型Metridia longaルシフェラーゼ遺伝子は、N末端に分泌に必要なアミノ酸残基17個のシグナルペプチドを含む24kDaのタンパク質をコードしている。この分泌型ルシフェラーゼ遺伝子を用いたレポーターアッセイシステム用のベクターはクロンテック社からpMetLuc−レポーターベクターとして市販されている。このようなレポーター遺伝子を用いた本発明の典型的な発現ベクターの模式図を図5(A)に示す。TATA配列の上流には、1又は複数のNrf2結合部位を連結することができ、その個数は好ましくは2〜10個、最も好ましくは3〜6個である。プロモーター配列とルシフェラーゼ遺伝子の間に挿入したSPはシグナルペプチドを示す。
[形質転換細胞]
本発明の発現ベクターは、宿主細胞を形質転換することができ、得られた形質転換細胞を培養することによって本発明の発現ベクターによってコードされるレポーター遺伝子産物を検出することができる。ここで、宿主としては、KEAP1遺伝子に変異を有するか、又はKeap1タンパク質の発現量が低下しているか、又はNrf2タンパク質が活性化されているヒト細胞であれば特に限定されるものではないが、例えば、以下の実施例において具体的に説明した肺癌患者由来の細胞又は肺癌由来の細胞株を用いることができる。具体的には、H1437、A549、II−18、H2126、EBC1、LK2等の細胞株である。
本発明の発現ベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等がある。得られた形質転換細胞を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地、DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地が用いられる。培養は、通常5%CO存在下、37℃で1〜30日行う。培養中は必要に応じてカナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。また、血清の共存が望ましくない場合には目的に応じた無血清培地を使用してもよい。
[抗癌剤を含む医薬組成物]
本発明のスクリーニング方法により選択することのできる抗癌剤は、Nrf2が活性化されることによって他の化学療法剤に対する抵抗性が増大した癌細胞、特に肺癌細胞の増殖を抑制するための治療及び/又は予防剤の候補物質として有用である。このような抗癌剤は、それ単独で、あるいは、薬剤学的又は獣医学的に許容される通常の担体又は希釈剤と共に、そのような治療の必要な被験者、例えば、動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)に、経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる。
本発明の医薬組成物を経口投与する場合は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の何れのものであってもよく、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬組成物を非経口投与する場合は、静脈内注射(点滴を含む)、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐剤等の製剤形態を選択することができ、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
これらの各種製剤は、製剤上通常用いられる賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等を適宜選択し、常法により製造することができる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[組織サンプル及び細胞株]
肺癌細胞株SQ−19、H2126、H1437、H1395及びA549はアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から、II−18は理研バイオリソースセンター(BRC)から、及びRERF−LC−MSはJCRB細胞バンクから入手した。すべての細胞株は、10%牛血清、10%牛胎児血清(FBS)又はF−12栄養混合物を含む20%FBSと共にダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で培養した。マウス胚線維芽細胞(MEFs)は胎生期13.5日の個体胚から調製した。頭部及び内部器官を除去し、胴体を刻み0.25%トリプシン/EDTAに分散した。MEFsは10%FBSを含むDMEM中で維持した。
[KEAP1の塩基配列決定]
肺癌患者のKEAP1遺伝子における体細胞変異を調べるために、当該遺伝子のタンパク質コード領域及びエキソン−イントロン境界領域のシークエンスを行った。29人の腺癌(adenocarcinoma)、26人の扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)、8人の小細胞癌、及び2人の大細胞癌を含む65人の原発性肺癌組織と、複数の肺癌由来細胞株からDNAを抽出し、正確性の高いDNAポリメラーゼKODプラス(東洋紡)を用いて連結反応介在PCRによってDNAを増幅した。塩基配列の決定に用いたプライマーセットは以下のとおりである。
エキソン2正方向プライマー:5’-TGCAAATGGATTCTGCTTCACCTACTTTGCAGGAA-3’(配列番号2)、エキソン2逆方向プライマー:5’-TGAGCCCAGAACCTCCTTTTTCTCCAGTTTC-3’(配列番号3);
エキソン3正方向プライマー:5’-TATTTGAATCCCCATTTAGCAGATAAGGAAGCTGA-3’ (配列番号4)、エキソン3逆方向プライマー:5’-TAGAACTCTCCAAGGAGCTTAGCTTCATCCTGAG-3’ (配列番号5);
エキソン4正方向プライマー:5’-ATGAGCCATCGCGCCGGATGAACCTGTCTCTTTAA-3’ (配列番号6)、エキソン4逆方向プライマー:5’-CTCTATCAGAATCCAGGGCTTCTGTGGTTA-3’ (配列番号7);
エキソン5正方向プライマー:5’-TTCTGAGGGTGAGAAGGGAGAGGAGAGAGGAAA-3’ (配列番号8)、エキソン5逆方向プライマー:5’-AGCTGGGCAACAGAGCGAGACCTTGTTTCTAA-3’ (配列番号9);
エキソン6正方向プライマー:5’-TGCCTCAGCCCTGCAAAGTGCTAGGATTATAGG-3’ (配列番号10)、エキソン6逆方向プライマー:5’-CTTTGGACTTCTTTTGAGATGTCATTTTAACACTG-3’ (配列番号11)
その結果、アミノ酸置換を伴う5つの体細胞変異を同定した(表1及び図1参照)。図1(A)に示したKEAP1遺伝子において、数字はコードするアミノ酸の位置を、星印は肺癌患者のKEAP1遺伝子で同定された位置を示す。図1(B)は、肺癌組織及び細胞株のIVR及びDGRドメインにおけるKEAP1変異体の塩基配列を示す。Nは正常組織のKEAP1配列であり、Tは腫瘍組織又は細胞のKEAP1配列である。図1(C)は、ヒト(H)、マウス(M)及びラット(R)のIVR及びDGRドメインにおける変異の位置を示す。配列の上部に赤字で示した文字が肺癌のKEAP1で同定された変異である。これらの結果は、日本人の肺癌患者の約8%(5/65)がKeap1タンパク質に変異を有することを意味する。この結果から得られたすべての変異はKeap1タンパク質のIVRドメインとDGRドメインに局在した。IVRドメインはNrf2のユビキチン化に関与し、DGRドメインはNrf2と相互作用することが知られている。
Figure 2009171920
[KEAP1遺伝子の変異とNrf2活性化]
これらのKEAP1変異が、Keap1のNrf2に対する抑制活性にどのような影響を与えているかを調べるために、レポーター共形質転換−トランス活性化解析を行った。
3コピーのNrf2結合因子を含むルシフェラーゼレポータープラスミドpRBG2と、Nrf2の発現プラスミドと、野生型及び各変異を有するKeap1発現プラスミドとをNIH3T3細胞に共形質転換した。その結果を図2に示す。野性型又はH200P変異を有するKeap1を同時に形質転換した場合はルシフェラーゼ活性が有意に抑制された(図2A、レーン3及び4)。一方、R272C、R415G又はG430C変異を有するKeap1との共形質転換(図2A、レーン5〜7)は、ルシフェラーゼ活性に影響を与えなかった。このことは、後者の3つの変異はKeap1のNrf2抑制活性に何らかの影響を与えることを意味する。R415GとG430Cの2つの変異によるNrf2抑制活性の欠失は、これらのKeap1変異体のNrf2結合能の欠失と相関していた。肺癌患者におけるR415GとG430Cとの変異はヘテロ接合性である(表1参照)ことから、このKeap1変異が野生型Keap1活性に影響を与えるかどうか調べた。上記と同様の実験において、野生型Keap1及び段階的な量のR415G又はG430C変異体Keap1で共形質転換した後に、NIH3T3細胞におけるpRBGP2レポーター活性を調べた。その結果を図2Bに示す。野性型Keap1の抑制活性は、R415G又はG430C変異体の増加と共に低下した(図2B、レーン3〜5及び6〜8参照)。このことは、これらの変異体は野生型Keap1をドミナントネガティブな様式で抑制することを示す。したがって、KEAP1遺伝子のヘテロ接合性変異においても、そのドミナントネガティブな機能によってNrf2を活性化しうることが分かった。
R415G又はG430C変異体とは異なり、R272C変異体Keap1はNrf2への結合能を維持しているが、Nrf2活性の抑制機能を欠失している(図2A参照)。この理由を解明するために、NIH3T3細胞にNrf2と、野生型又はR272C変異体Keap1とを共発現させてNrf2タンパク質の安定性を調べた。その結果、野生型Keap1を発現させた細胞中でのNrf2量が極めて低いのに対し、R272C変異体を共形質転換した細胞内におけるNrf2量は増加していた。Keap1タンパク質のIVRドメインはNrf2のユビキチン化を介する分解に関与していることから、R272C変異体は確かにNrf2の分解を阻害することが分かった。
[肺癌細胞におけるKEAP1遺伝子の発現低下と薬剤耐性能の獲得]
次に、腺癌患者からの原発性肺癌組織と正常組織におけるKEAP1遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにより解析した。細胞から全RNAをトリゾル試薬(Trizol reagent、インビトロジェン)を用いて単離した。5μgの全RNAからスーパースクリプトファーストストランドシステム(インビトロジェン)によりファーストストランドcDNAを合成した。続いて、以下のプライマーセットを用いてABI7000によりリアルタイムPCRを行った。
KEAP1正方向プライマー:5’-TACGATGTGGAAACAGAGACGTGGACTTTCGTA-3’ (配列番号12)、KEAP1逆方向プライマー:5’-TCAACAGGTACAGTTCTGGTCAATCTGCTT-3’ (配列番号13);
NQO1正方向プライマー:5’-AGGAAGAGCTAATAAATCTCTTCTTTGCTG-3’ (配列番号14)、NQO1逆方向プライマー:5’-TCATATTGCAGATGTACGGTGTGGATTTAT-3’ (配列番号15);
MRP3正方向プライマー:5’-GACCATCGCACACCGGCTTAACACTATCATGGA-3’ (配列番号16)、MRP3逆方向プライマー:5’-TCAGTACTCCCATTTTTAATGGATTCAGGCAGCA-3’ (配列番号17);
PRDX1正方向プライマー:5’-AAGTGATTGGTGCTTCTGTGGATTCTCACT-3’ (配列番号18)、PRDX1逆方向プライマー:5’-TCACTTCTGCTTGGAGAAATATTCTTTGCTC-3’ (配列番号19)
その結果を図3に示す。図3Aは、5人の日本人肺腺癌患者から採取した正常肺組織と肺癌組織におけるKEAP1の発現を示す。それぞれの正常組織における発現量を1.0とした。肺癌組織の中の1つ(P#4)はKeap1の発現が低下していた。図3Bは、6つの肺癌細胞株のKEAP1遺伝子の発現を示す。レーン1はRERF−LC−MS株、レーン2はII−18株、レーン3はSQ−19株、レーン4はA549株、レーン5はH1437株、及びレーン6はH1395株である。6種類の肺癌細胞株の中で、2つの肺腺癌細胞株、H1437及びII−18においてKEAP1遺伝子の発現が低下していた(レーン2及び5)。これらの結果は、KEAP1遺伝子の発現低下が肺癌において頻繁に起こっていることを示唆する。
次に、Keap1の低発現細胞内におけるNrf2の局在性を調べるために、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて内在性Nrf2を染色した。図3Cは、KEAP1の低発現又は変異を有する肺癌細胞におけるNrf2の核局在性を示す。SQ−19(正常KEAP1)、II−18(KEAP1低発現)、H1437(KEAP1低発現)又はA549(KEAP1のG333C変異)の各細胞内のNrf2を抗−Nrf2抗体にて染色した。内在性Nrf2は、H1347及びII−18細胞内では核に局在し、Keap1変異を有するA549細胞(G333C変異)においても核に局在していたが、正常なKeap1を有するSQ−19細胞では局在が認められなかった。この結果とよく一致して、H1347、II−182、及びA549細胞内においてNQO1及びMRP3の2つの遺伝子の高発現がリアルタイムPCR解析により検出されたが、SQ−19細胞内では発現していなかった(データ示さず)。Nqo1及びMrp3の発現量は、野生型Keap1遺伝子をII−18、及びA549細胞へ形質転換することによって低下した。これらの結果は、これらの細胞内におけるKeap1活性の欠失がNrf2の核内蓄積を促進し、細胞保護酵素/タンパク質の発現増加に寄与することが分かった。
Nrf2は解毒酵素や多剤耐性ポンプを誘導することから、Keap1の低発現細胞株が化学療法剤に対する耐性を有することが予想された。そこで、これらの細胞株のシスプラチンに対する感受性を調べた。図3Dは、SQ−19、II−18、H1437及びA549の各細胞を、それぞれ0、3、6及び12μMのシスプラチンで処理した後10日間培養後に生存細胞数を計測したものである。その結果、Keap1の低発現細胞株(H1437及びII−18)とKeap1変異細胞株(A459)は、正常なKeap1を有するSQ−19よりも強いシスプラチン抵抗性を示すことが分かった。このことは、Nrf2の構成的な活性化は化学療法剤に対する抵抗性を誘発することが示された。
[Nrf2の活性化と肺癌細胞の増殖]
上記結果より、癌細胞における構成的なNrf2の活性化が癌細胞の増殖を選択的に有利にしているかもしれないという可能性が示唆された。そこで、KEAP1遺伝子に変異を有するか又はその発現量が低下した癌細胞の増殖に対するNrf2発現ノックダウンの影響を調べるために、低分子干渉RNAを用いた解析を行った。20nMのコントロールsiRNA(キアゲン)とNrf2特異的siRNA(SI03246950;キアゲン)を用いてSQ−19細胞(正常Keap1)、II−18細胞(Keap1低発現)及びA549細胞(Keap1変異)にトランスフェクションを行い、3日後に逆転写PCRと7日後に細胞数を計測した。その結果を図4に示す。図4Aは、コントロールsiRNA(レーン1、3及び5)と、Nrf2特異的siRNA(レーン2、4及び6)とをトランスフェクトして3日後にNRF2、NQO1及びMRP3遺伝子の発現レベルを逆転写PCRで解析した結果である。同じ条件でコントロールsiRNA(レーン1、3及び5)と、Nrf2特異的siRNAトランスフェクトして7日後に増殖した細胞数を測定した結果を図4Bに示す。Nrf2の発現をノックダウンすることによって、II−18細胞及びA549細胞の増殖が抑制されたが(図4B、レーン3〜6参照)、SQ−19細胞の増殖は抑制されなかった(図4B、レーン1、2)。
[Nrf2活性化阻害剤のスクリーニングシステムの構築]
(1)発現ベクターの作成方法:
以下のTRE3配列及びTRE6配列をpMetLuc−レポーターベクター(クロンテック社)の制限酵素BglII−BamHI領域に挿入し、各々TRE3−pMetLuc、及びTRE6−pMetLucと命名した(図5A参照)。
TRE3配列:5’-agatctcgacaggtaccgagctcttacgcgtgctagctcgacccgaaaggagctgactcatgctagccctcgacccgaaaggagctgactcatgctagccctcgacccgaaaggagctgactcatgctagccctcgagatcttgggcataaaaggcagagcactgcagctgctgcttaagcttggatcc-3’ (配列番号20)
TRE6配列:5’-agatctcgacaggtaccgagctcttacgcgtgctagctcgacccgaaaggagctgactcatgctagccctcgacccgaaaggagctgactcatgctagccctcgacccgaaaggagctgactcatgctagcctcgacaggtaccgagctcttacgcgtgctagctcgacccgaaaggagctgactcatgctagccctcgacccgaaaggagctgactcatgctagccctcgacccgaaaggagctgactcatgctagccctcgagatcttgggcataaaaggcagagcactgcagctgctgcttaagcttggatcc-3’ (配列番号21)
(2)発現ベクターの細胞への形質転換方法:
TRE3−pMetLuc及びTRE6−pMetLucを制限酵素DraIIIで切断して直鎖状DNAとしたものを、それぞれ肺癌由来細胞H1437及びA549細胞にリポフェクトアミン試薬(インビトロジェン社)を用いて導入した。H1437細胞およびA549細胞は400μg/mlあるいは450μg/mlのG148(カルビオケム社)で選択し、形質転換細胞を得た。
(3−1)ルシフェラーゼの検出方法1:
1×10個の形質転換細胞を0.5mlの培養液で培養し48時間後に培地を回収した。回収された培養液50μlをレポーター解析試薬(クロンテック社)と混合し、ルミノメーター(ベルトールド社)により測定した。その結果を図5(B)に示す。レーン1及びレーン4は形質転換前の細胞を用いたコントロールである。TRE3−pMetLuc及びTRE6−pMetLucの何れを形質転換した細胞も培養液中にルシフェラーゼを分泌することが分かった。
(3−2)ルシフェラーゼの検出方法2:
コントロールsiRNA(キアゲン)あるいはNRF2siRNA(キアゲン)をエレクトロポレーション(デジタルバイオ)で導入した1×10個の形質転換細胞を0.5mlの培養液で培養した。48時間後に培養液を交換し、12時間後に培地を回収した。回収された培養液50μlをレポーター解析試薬と混合し、IVISイメージングシステム(ジェノジェン社)により測定した。その結果を図5(C)に示す。NRF2siRNAによって特異的にNrf2の発現が抑制された細胞は培養液中に分泌するルシフェラーゼの量が減少し、マイクロタイタープレートを用いて容易に検出できることが分かった。
肺癌におけるKeap1の構造変化を示した模式図である。 Keap1変異体のNrf2抑制活性を調べた結果である。 Keap1の発現量の低下と癌細胞の薬剤耐性能との関係を調べた結果である。 活性化されたNrf2が肺癌細胞の増殖を促進することを示す結果である。 本発明の1つの実施形態にかかる発現ベクターの構造及びそのレポーター活性を示す。

Claims (8)

  1. 転写因子Nrf2によって制御されるプロモーター配列と、当該配列と機能的に連結されたレポーター遺伝子とを含む発現ベクターを用意し、
    前記発現ベクターを、KEAP1遺伝子に変異を有するか、Keap1タンパク質の発現量が低下しているか、又はNrf2タンパク質が活性化されているヒト細胞に形質移入し、
    候補化合物の存在下又は非存在下において前記形質移入細胞を培養して前記レポーター遺伝子の発現量を測定し、そして
    前記レポーター遺伝子の発現を阻害する候補化合物をヒト肺癌の推定増殖阻害剤として選択することを含む抗癌剤のスクリーニング方法。
  2. 前記KEAP1遺伝子の変異が、Keap1タンパク質のIVRドメイン又はDGRドメインに存在し、かつ変異体Keap1タンパク質のNrf2活性抑制機能が低下するような変異である請求項1に記載の方法。
  3. 1又は複数のNrf2結合部位を含むプロモーター配列の下流に、分泌型レポーター遺伝子を連結してなる発現ベクター。
  4. 前記Nrf2結合部位が、配列番号1に記載の塩基配列からなる請求項3に記載の発現ベクター。
  5. 前記レポーター遺伝子が、ルシフェラーゼ遺伝子である請求項3又は4に記載の発現ベクター。
  6. 請求項3〜5何れか記載の発現ベクターを、KEAP1遺伝子に変異を有するか、又はKeap1タンパク質の発現量が低下することによりNrf2タンパク質が活性化されているヒト細胞に形質移入してなる形質転換ヒト細胞。
  7. 候補化合物の存在下又は非存在下において請求項6に記載の形質転換ヒト細胞をインキュベートし、
    前記それぞれの条件において培養液中に分泌されたレポーター遺伝子産物量を測定し、そして
    前記候補化合物の非存在下に比べて、存在下におけるレポーター遺伝子産物量が減少する場合に前記候補化合物がヒト肺ガンの増殖阻害剤であると推定すること、
    を含む抗癌剤のスクリーニング方法。
  8. ヒト腫瘍組織より調製された切片を、Nrf2抗体、Keap1抗体、Nqo1抗体、Mrp2抗体、及び/又はMrp3抗体を用いて組織染色し、
    前記抗体と結合するそれぞれのタンパク質の細胞内局在性を検定し、そして
    Nrf2タンパク質が細胞核内に蓄積するか、Keap1タンパク質が細胞質で減少するか、又はKeap1、Nqo1、Mrp2、及びMrp3から選択される1つ以上のタンパク質が細胞質若しくは細胞膜に局在するとき、前記腫瘍が抗癌剤に対して抵抗性を有することを示唆することを特徴とする癌細胞を特徴付ける方法。
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