JP2009168076A - トルク制限機構 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的簡素な構造でありながら入力軸の回転方向によって異なるトルク制限値を設定することができるトルク制限機構を提供する。
【解決手段】入力されるトルクを所定の負荷により制限する共通のトルクリミッタTと、このトルクリミッタTにトルクを伝達するための入力軸3と、この入力軸3から前記トルクリミッタTにトルクを伝達する二系統のトルク伝達系統A、Bと、前記入力軸3と前記二系統のトルク伝達系統A、Bに介設される切替機構Cとを具備するトルク制限機構Lとした。
【選択図】図2

Description

本発明は、一般産業機械、航空機器等の動力伝達系に用いられ、入力軸の回転方向によってトルク制限値が異なるトルク制限機構に関するものである。
従来から、入力されるトルクを所定の負荷により制限することができるトルク制限機構が周知である(例えば特許文献1参照)。
特開2006−177382
しかしながら、従来のいわゆるスリップタイプのトルク制限機構では、摩擦係数が入力軸の回転方向にかかわらず一定であるため、回転方向別に制限トルク値を設定することができないという問題点がある。
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、比較的簡素な構造でありながら入力軸の回転方向によって異なるトルク制限値を設定することができるトルク制限機構を提供することにある。
すなわち、本発明のトルク制限機構は、入力されるトルクを所定の負荷により制限するトルクリミッタと、このトルクリミッタにトルクを伝達するための入力軸と、この入力軸から前記トルクリミッタにトルクを伝達する二系統のトルク伝達系統と、前記入力軸と前記二系統のトルク伝達系統に介設され、前記入力軸の回転方向別に前記トルク伝達系統を切替可能な切替機構とを具備するトルク制限機構であって、前記トルク伝達系統をそれぞれ異なる増減速比にて構成することにより前記入力軸の回転方向によってトルク制限値が異なることを特徴とする。
このようなものであれば、切替機構により入力軸の回転方向によってトルク伝達系統を切り替えることができるので、共通のトルクリミッタにトルクが伝達される場合であっても、回転方向別にトルク制限値を設定することができる。すなわち、二系統のトルク伝達系統をそれぞれ異なる増減速比にて構成することによって、共通のトルクリミッタに伝達されるトルク値を変えることができ、トルクリミッタの摩擦係数が一定であっても、入力軸の回転方向別に異なるトルク制限値を設定することができる。
なお、異なる増減速比は、例えば一方のトルク伝達系統に差動機構を用いるなどすれば容易に実現することができるため、トルク制限値の設定を比較的簡単に行うことができる。しかも、トルクリミッタを単一の構成にすることができるため、構成品の軽量化、小型化や低コスト化を図ることができる。さらに、入力軸が一方の回転方向にのみ回転するような構成品において使用される場合には、他方の回転方向(非トルク印加側)のねじりに対する強度条件を下げることができるため、構成品の軽量化及び低コスト化を図ることができる。
以上説明したように本発明によれば、比較的簡素な構造のトルク制限機構でありながら、入力軸の回転方向によって異なるトルク制限値を設定することができる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るトルク制限機構Lは、図1に概略を示すように、伝導装置Pに実装されて用いられる。
ここで、伝導装置Pは、例えば、航空機の貨物ドア開閉駆動機構に利用される。図1に示すように、駆動源Mから出力されるトルクが伝導装置入力軸10を介して、伝導装置Pに入力され、この伝導装置Pによって制御されたトルクが伝導装置出力軸30から出力される。そして、正逆方向のトルクが伝導装置出力軸30に種々の態様で接続される駆動対象Dに伝達され、駆動対象Dたる航空機の貨物ドアEを開閉駆動させる。
この伝導装置Pを具体的に説明すると、駆動源Mから出力されるトルクが伝導装置入力軸10及び歯車列11を介して差動機構Sに伝達され、この差動機構Sの出力端a、bからそれぞれトルク伝達する。出力端aからは、歯車列12を介して伝導装置出力軸30に伝達され、出力端bであるリング歯車23は、歯車列13を介してトルク制限機構Lの入力軸3に伝達される。
なお、歯車列11、12及び13は、歯車に限定されるものではなくベルト等を利用した種々の動力伝達手段を用いることができる。
トルク制限機構Lの入力軸3は、前記差動機構Sの出力端bであるリング歯車23に歯車列13を介して接続される。リング歯車23はトルク制限機構Lの所定のトルク制限を受け、所定値以上の過大な負荷が伝達されない限り回転駆動が制限される。即ち、リング歯車23は伝導装置Pの正常作動時には回転動作が制限される。このため、太陽ギア21が回転駆動し、これを受けて遊星ギア22が回転駆動及び公転駆動し、トルクが出力端aから歯車列12を介して伝導装置出力軸30に伝達される。
これに対して、伝導装置Pの何れかの箇所において不具合等が生じ、差動機構Sに所定値以上の過大なトルクが作用した場合は、トルク制限機構Lの入力軸3が回転することにより出力端bであるリング歯車23の回転駆動を許容させる。
本実施形態におけるトルク制限機構Lは、図1及び図2に示すように、入力されるトルクを所定の負荷により制限する共通のトルクリミッタTと、このトルクリミッタTにトルクを伝達するための入力軸3と、この入力軸3から前記トルクリミッタTにトルクを伝達する二系統のトルク伝達系統A、Bと、前記入力軸3と前記二系統のトルク伝達系統A、Bに介設され、前記入力軸3の回転方向別に前記トルク伝達系統A、Bを切替可能な切替機構Cとを具備する。
前記共通のトルクリミッタTは、図2に示すように、シャフト40の外周囲に設けられ、静止部材であるケーシングR1に固定位置調整可能に設けた固定リングJと、シャフト40の外周にスプライン結合する摩擦プレートF1及びシャフト40の外周囲に位置し、公転リング7の内周にスプライン結合する摩擦プレートF2を備え、これら複数の摩擦プレートF1、F2が交互に摺動可能に重合して接続する摩擦機構Fと、固定リングJと摩擦機構Fの間に介設され、軸方向に押圧力を与えるスプリングSPと、シャフト40の外周に設けられ、摩擦機構Fの移動を制限する係止鍔Kとを具備してなる。
なお、本実施形態におけるこの係止鍔Kは、シャフト40に一体的に接続されているが、嵌合して接続されても、ねじ等を用いて接続されてもよく、どのような接続態様でも構わない。また、固定リングJは、静止部材であるケーシングR1に、例えば、螺合進退可能に取着されており、その固定位置を調整することによってスプリングSPの押圧力を調整することが可能である。
前記切替機構Cは、入力軸3とシャフト40の間に介設された一方向クラッチC1と、シャフト40の外周と静止部材であるケーシングR2、R3の間に介設された一方向クラッチC2、C3と、静止部材であるケーシングR4、R5と公転リング7の間に介設された一方向クラッチC4、C5と、静止部材であるケーシングR6と差動機構S1を構成するリング歯車6の間に介設された一方向クラッチC6とを具備してなる。
前記トルク伝達系統Aは、入力軸3の入力トルクを伝達するためのシャフト40により構成される。
なお、このシャフト40と接続する一方向クラッチC1は、入力軸3が第二の回転方向2に回転された場合に、シャフト40を回転させることができる。また、前記シャフト40と静止部材であるケーシングR2、R3の間に介設された一方向クラッチC2、C3は、入力軸がを第二の回転方向2に回転された場合に、前記シャフト40が回転することを許容する。
前記トルク伝達系統Bは、入力軸3の入力トルクを伝達するための差動機構S1と、この差動機構S1の出力端d、eである第一、第二の分岐系統B1、B2によって構成される。第一の分岐系統B1は、出力端dである公転リング7により構成されている。一方、第二の分岐系統B2は、出力端eであるリング歯車6により構成されている。
ここで、差動機構S1は、太陽歯車4と、この太陽歯車4に噛合させた遊星歯車5と、この遊星歯車5に外接状態で噛合させたリング歯車6と、遊星歯車5の中心軸5aと接続する公転リング7とを具備してなる。
なお、公転リング7と静止部材であるケーシングR4、5の間に介設された一方向クラッチC4、C5は、入力軸3が第一の回転方向1に回転された場合に公転リング7を第一の回転方向1に回転させることを許容する。
また、リング歯車6と静止部材であるケーシング7の間に介設された一方向クラッチC6は、入力軸3が第一の回転方向1に回転された場合には、リング歯車6を第二の回転方向2に回転させることを許容しない。
以下、本実施形態に係るトルク制限機構Lの動作について、入力軸3が第一の回転方向1、及び、第二の回転方向2(なお、この説明における第一の回転方向1、及び、第二の回転方向2は、図2に示す一方向クラッチ及びその他部材の絶対的な回転方向である。)に回転された場合について詳述する。
ここで、本実施形態に係る切替機構Cは、前述の通り所定の箇所に一方向クラッチC1、C2、C3、C4、C5、及びC6を具備してなるが、一方向クラッチC1、C4及びC5は、第一の回転方向1にトルクが及ぶ場合は空回りをし、第二の回転方向2にトルクが及ぶ場合は空回りをしないように設けられている。これに対して、一方向クラッチC2、C3、及びC6は、第二の回転方向2にトルクが及ぶ場合に空回りをし、第一の回転方向1にトルクが及ぶ場合に空回りをしないように設けられている。
まず、入力軸3が、第二の回転方向2に、第二の設定トルク以上の駆動力を受けて回転された場合について詳述する。
入力軸3が第二の回転方向2に回転された場合、一方向クラッチC1は空回りしないが、静止部材であるケーシングR2、R3とシャフト40の間に介設された一方向クラッチC2、C3は空回りをする。このため、入力軸3の回転(第二の回転方向2)は、一方向クラッチC1を介してシャフト40に伝達され、シャフト40は第二の回転方向2に回転駆動する。そして、シャフト40に保持された摩擦プレートF1は、摩擦プレートF2に対して摺動しつつシャフト40とともに回転する。
この際、一方向クラッチC1を介して入力軸3に接続する太陽歯車3は第二の回転方向2に回転する。この太陽歯車3に噛合する遊星歯車5は第一の回転方向1に自転する。しかし、公転リング7と静止部材であるケーシングR4、R5に介設された一方向クラッチC4、C5は第二の回転方向2に空回りせず、遊星歯車5の中心軸5aと接続する公転リング7は、第二の回転方向2に公転駆動することができない。したがって、公転リング7に保持された摩擦プレートF2は公転リング7の停止状態に拘束される。
一方、遊星歯車5と噛合するリング歯車6は遊星歯車5の自転(第一の回転方向1)を受けて第一の回転方向1に回転しようと作用する。そして、リング歯車6に接続された一方向クラッチC6は第一の回転方向1に空回りして、入力軸3の回転を許容する。
このように、入力軸3が第二の回転方向2に回転された場合は、トルクリミッタTを構成する摩擦プレートF1が回転し、摩擦プレートF2が停止状態に置かれるため、摩擦プレートF1が摺動しながらトルクを制限する。
次に、入力軸3が、第一の回転方向1に、第一の設定トルク以上の駆動力を受けて回転された場合について詳述する。
入力軸3が第一の回転方向1に回転された場合、一方向クラッチC1は空回りをする。この場合、一方向クラッチC1を介して入力軸3と接続するシャフト40は第一の回転方向1に回転駆動することができず、しかも静止部材であるケーシングR2、R3とシャフト40の間に介設された一方向クラッチC2、C3も第一の回転方向1に空回りしない。したがって、シャフト40は第一の回転方向1に回転することができない。このため、シャフト40に保持された摩擦プレートF1はシャフト40の停止状態に拘束される。
この際、一方向クラッチC1を介して入力軸3に接続された太陽歯車4は、一方向クラッチC1が空回りをするため第一の回転方向1に回転する。そして、遊星歯車5は第二の回転方向2に自転し、また、公転リング7と静止部材であるケーシングR4、R5の間に介設された一方向クラッチC4、C5は空回りして、遊星歯車5の中心軸5aと接続する公転リング7は、第一の回転方向1に公転駆動する。したがって、公転リング7に保持された摩擦プレートF2は、摩擦プレートF1に対して摺動しつつ、公転リング7とともに回転する。
一方、遊星歯車5と噛合するリング歯車6は遊星歯車5の第二の回転方向2の回転を受けて第二の回転方向2に回転しようと作用する。しかし、静止部材であるケーシングR6を介してリング歯車6と接続する一方向クラッチC6は、リング歯車6を第二の回転方向2に回転させることができない。このため、リング歯車6が停止状態に置かれ、遊星歯車5及び公転リング7を公転駆動させることができる。
このように、入力軸3が第一の回転方向1に回転された場合は、トルクリミッタTを構成する摩擦プレートF2が回転し、摩擦プレートF1が停止状態に置かれるため、摩擦プレートF2が摺動しながらトルクを制限する。
以上の通り、本実施形態に係るトルク制限機構は、トルクリミッタTを構成する摩擦プレートF1及びF2の摩擦係数が一定であるにも関わらず、入力軸3の回転方向別にトルク伝達系統A、Bに切替可能な構成とし、これらトルク伝達系統A、Bの増減速比を異なるものとすることで、回転方向別に異なるトルク制限値を設定することができる。すなわち、トルク伝達系統A、Bの歯車構成や歯車数等のパラメータを設定することで、入力軸3の回転を制限できる所定のトルク値として異なる値の第一の設定トルク値と第二の設定トルク値を定めることができる。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
例えば、本実施形態では、一方のトルク伝達系統を入力軸から直結した態様で構成させ、他方のトルク伝達系統を減速機構たる差動機構を用いた態様で構成させているが、これら両方の系統に種々の減速機構を介在させたり、これらの一方の系統に種々の増速機構を介在させたりすることも可能である。なお、本実施形態では、一方のトルク伝達系統は直結した態様で構成し、他方のトルク伝達系統は減速機構として遊星歯車機構を用いて構成することによって、構成品のコンパクト化を実現している。
差動機構は、遊星歯車機構の他、差動歯車機構や、かさ歯車等の種々の機構を用いることができる。また、必ずしも差動機構を用いなくともよく、二系統のトルク伝達系統の増減速比が異なるように構成すればよい。
伝導装置は上述したような用途の駆動機構にのみ用いられるものではなく、航空機のフラップの駆動システムや、その他の一般産業機械における種々の動力伝達機構に用いることができる。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明の一実施形態を示すトルク制限機構を利用した伝導装置を示す概略図。 同実施形態におけるトルク制限機構を示す概略図
符号の説明
3…入力軸
A…トルク伝達系統
B…トルク伝達系統
C…切替機構
L…トルク制限機構
T…トルクリミッタ

Claims (1)

  1. 入力されるトルクを所定の負荷により制限するトルクリミッタと、
    このトルクリミッタにトルクを伝達するための入力軸と、
    この入力軸から前記トルクリミッタにトルクを伝達する二系統のトルク伝達系統と、
    前記入力軸と前記二系統のトルク伝達系統に介設され、前記入力軸の回転方向別に前記トルク伝達系統を切替可能な切替機構とを具備するトルク制限機構であって、
    前記トルク伝達系統をそれぞれ異なる増減速比にて構成することにより前記入力軸の回転方向によってトルク制限値が異なることを特徴とするトルク制限機構。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017144960A (ja) * 2016-02-19 2017-08-24 ナブテスコ株式会社 操舵装置
WO2023108390A1 (zh) * 2021-12-14 2023-06-22 舍弗勒技术股份两合公司 牙嵌式离合器

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