JP2009163914A - 複合陽イオン交換膜および燃料電池用隔膜 - Google Patents

複合陽イオン交換膜および燃料電池用隔膜 Download PDF

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Abstract

【課題】 メタノール透過抵抗が高く、直接液体型燃料電池用隔膜として好ましく用いられる陽イオン交換膜を提供することを目的とする。
【解決手段】 層状ケイ酸塩の層間に有機カチオンを有する有機粘土複合体を含む膜を積層してなる複合陽イオン交換膜であり、該有機カチオンは、第四級ホスホニウムイオンまたは第四級アンモニウムイオンであることが好ましく、この複合陽イオン交換膜は、メタノール透過抵抗が高く、直接液体型燃料電池用隔膜として好ましく用いられる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、複合陽イオン交換膜および該交換膜を用いた燃料電池用隔膜に関し、メタノール透過抵抗が高く、液体メタノール等を燃料とする直接液体型燃料電池用隔膜に好適に用いられる陽イオン交換膜に関する。
燃料電池は、燃料と酸化剤とを連続的に供給し、これらが反応したときの化学エネルギーを電力として取り出す発電システムである。燃料電池は、これに用いる電解質の種類によって、動作温度が比較的低いアルカリ型、リン酸型、固体高分子電解質型と、高温で動作する溶融炭酸塩型、固体酸化物電解質型とに大別される。
これらの中で、固体高分子電解質型燃料電池は、固体高分子電解質として作用する隔膜の両面に触媒が担持されたガス拡散電極を接合し、一方のガス拡散電極が存在する側の室(燃料室)に燃料である水素やメタノールなどの液体燃料を、他方のガス拡散電極が存在する側の室(酸化剤室)に酸化剤である酸素や空気等の酸素含有ガスをそれぞれ供給し、両ガス拡散電極間に外部負荷回路を接続することにより、燃料電池として作用させる。
こうした固体高分子電解質型燃料電池の基本構造を図1に示す。図中、(1)は電池隔壁、(2)は燃料流通孔、(3)は酸化剤ガス流通孔、(4)は燃料室側拡散電極、(5)は酸化剤室側ガス拡散電極、(6)は固体高分子電解質膜を示す。この固体高分子電解質型燃料電池において、燃料室(7)では、供給された水素ガスからプロトン(水素イオン)と電子が生成し、このプロトンは固体高分子電解質膜(6)内を伝導し、他方の酸化剤室(8)に移動し、空気又は酸素ガス中の酸素と反応して水を生成する。この時、燃料室側ガス拡散電極(4)で生成した電子は、外部負荷回路を通じて酸化剤室側ガス拡散電極(5)へと移動することにより電気エネルギーが得られる。
このような構造の固体高分子電解質型燃料電池において、燃料である水素が常温常圧で気体であり、その取り扱いが容易でないという理由から、燃料として水素に代えてメタノール、エタノール等を用いる直接液体型燃料電池の開発が進められている。
直接液体型燃料電池の隔膜には、通常、陽イオン交換膜が使用される。そして、この陽イオン交換膜には、燃料であるメタノール等の透過性が低いこと、電気抵抗が小さいこと、保水性が高いこと、長期の使用に対して安定であること、物理的な強度が強いことなどが要求される。
従来、固体高分子電解質型燃料電池用隔膜として使用される陽イオン交換膜としては、パーフルオロカーボンスルホン酸膜が主に使用されている。しかし、この膜は、メタノール等の透過性が高く、酸化剤室側ガス拡散電極に達したメタノール等がその表面で酸素または空気と反応するために、出力電圧が低下するという問題があった。この現象は、「メタノールクロスオーバー」と呼ばれている。
メタノールクロスオーバーを解消するため、特許文献1では、陽イオン交換膜表面に、水素イオン伝導性の板状無機物からなる剥離体層を設けた複合電解質膜が開示されている。特許文献1には、板状無機物としては、リン酸ジルコニウム等とともに、層状ケイ酸塩を含む概念である「クレイ」が例示されている。
特開2006−73529号公報
しかし、本発明者らの検討によれば、陽イオン交換膜表面に層状無機ケイ酸塩を含む(剥離体)層を設けても、メタノールクロスオーバーが充分に低減されないことが判明した。一般に汎用されている層状無機ケイ酸塩の層間カチオンは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又は、それらをプロトン(水素イオン)にイオン交換したものであり、このような汎用の層状無機ケイ酸塩は親水性を有する。このため、燃料電池用隔膜として使用した際に、剥離体層中に浸入したメタノール水溶液により膨潤し、メタノール透過を充分に抑制できないと考えられる。なお、厳密に言えば、層状無機ケイ酸塩の層間に水が入り込み、層間が膨潤し、ケイ酸塩の粒子が膨潤・変形するため、剥離体層内の粒子間に隙間が生じ、メタノールが透過しやすくなるのでないかと予想される。
本発明は上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、メタノール透過抵抗が高く、直接液体型燃料電池用隔膜として好ましく用いられる陽イオン交換膜を提供することを目的としている。
かかる課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
即ち、第一の発明は、層状ケイ酸塩の層間に有機カチオンを有する有機粘土複合体を含む膜を積層してなる複合陽イオン交換膜である。
また、第一の発明において、前記有機カチオンは、第四級ホスホニウムイオンまたは第四級アンモニウムイオンであることが好ましい。
さらに、第二の発明は、前記複合陽イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜である。
本発明によれば、メタノール透過抵抗が高く、直接液体型燃料電池用隔膜として好ましく用いられる陽イオン交換膜が提供される。
以下、本発明について、その最良の形態を含めてさらに詳細に説明する。
本発明の複合陽イオン交換膜は、陽イオン交換膜の少なくとも一方の面に、層状ケイ酸塩の層間に有機カチオンを有する有機粘土複合体を含む膜(以下「有機粘土複合体膜」とよぶ場合もある)が積層されてなる。有機粘土複合体膜は、陽イオン交換膜の片面に形成されていてもよく、また両面に形成されていてもよい。有機粘土複合体膜を陽イオン交換膜の片面にのみ形成する場合には、燃料室側の表面に形成することが好ましい。
本発明で用いる陽イオン交換膜としては、種々の汎用の陽イオン交換膜が用いられ、特に燃料電池用隔膜に使用されている各種の陽イオン交換膜が好ましく用いられる。陽イオン交換膜は、陽イオン交換基を有する重合体からなる。陽イオン交換基は、例えばスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、などがあげられるが、これらの中でもイオン伝導性の点でスルホン酸基が最も好適に採用される。
陽イオン交換基を有する重合体としては、陽イオン交換基を有するフッ素系重合体、陽イオン交換基を有する炭化水素系重合体があげられる。
この内、陽イオン交換基を有するフッ素系重合体としては、炭化水素系重合体の水素原子が部分的にフッ素原子で置換された部分フッ素系重合体に、前記陽イオン交換基が結合された重合体でも、また、重合体の主鎖及び側鎖の炭素原子に結合されているフッ素原子の個数と水素原子の個数の合計に対して、フッ素原子の個数が90%以上である高フッ化重合体に、前記陽イオン交換基が結合された、いわゆるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂であっても良い。
これらの、陽イオン交換基を有するフッ素系重合体は、膜状の形態にされたものが燃料電池用隔膜として広く知られており、これらを制限なく使用できる。また、前記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂からなる隔膜として、具体的には、Nafion(登録商標、デュポン社製)、Flemion(登録商標、旭硝子社製)、Aciplex(登録商標、旭化成ケミカルズ社製)として商業的にも入手可能である。
これら陽イオン交換基を有するフッ素系重合体の製造方法にも特に制限はない。陽イオン交換基を導入させていない前駆体となるフッ素系重合体を押出し成形などで膜状物とし、これに公知の方法でイオン交換基を導入しても良いし、陽イオン交換基を有するフッ素系重合体を溶媒に溶かして、得られた溶液をキャスト製膜して製造しても良い。また、得られる陽イオン交換基を有するフッ素系重合体からなる陽イオン交換膜の機械的強度を向上させるため、陽イオン交換膜中にフッ素系樹脂の短繊維や、無機フィラーを入れても良く、後述の、陽イオン交換基を有する炭化水素系重合体からなる陽イオン交換膜の詳細な説明にあるような多孔質膜を基材として用いることも可能である。
さらに、前述の陽イオン交換基を有するフッ素系重合体は、通常は、共有結合による架橋部分を有さない重合体であるが、燃料の非透過性を向上させる目的で、公知の方法により適宜架橋構造を導入しても良い。架橋構造の導入方法としては、例えば、電子線照射による架橋などがあげられる。
本発明の燃料電池隔膜では、陽イオン交換基を有する重合体としては、燃料の透過性をより低くすることができる観点から、陽イオン交換基を有する炭化水素系重合体であることがより好ましい。
炭化水素系陽イオン交換膜は、炭化水素系重合体の主鎖及び側鎖に直接、陽イオン交換基が結合しているものであってもよく、また、炭化水素系重合体中に陽イオン交換重合体が分散されたものであってもよい。後者の炭化水素系重合体中に陽イオン交換重合体が分散された炭化水素系陽イオン交換膜は、炭化水素系重合体が補強部分として働くため電気抵抗などを犠牲にすることなく陽イオン交換膜の物理的強度を高めることができるといった点から本発明において好適に用いることができる。
以下には後者の炭化水素系重合体中に陽イオン交換重合体が分散された炭化水素系陽イオン交換膜について説明する。炭化水素系重合体中に陽イオン交換重合体が分散された炭化水素系陽イオン交換膜は、炭化水素系重合体からなる多孔質膜の空隙部分に陽イオン交換重合体が存在するものが特に好適である。
炭化水素系重合体よりなる多孔質膜の形態は特に限定されず、多孔質フィルム、織布、不織布、紙等が制限なく使用でき、材質としても熱可塑性重合体組成物、熱硬化性重合体組成物、又はそれらの混合物でも構わないが、その製造が容易であるばかりでなく炭化水素系陽イオン交換重合体との密着強度が高いという観点から、熱可塑性重合体組成物であることが好ましい。当該熱可塑性重合体組成物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体等のポリオレフィン重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル系重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド重合体、ポリイミド重合体等が例示される。これらのなかでも特に、機械的強度、化学的安定性、耐薬品性に優れ、炭化水素系イオン交換重合体との馴染みがよいことからポリオレフィン重合体を用いるのが好ましい。ポリオレフィン重合体としては、ポリエチレン又はポリプロピレン重合体が特に好ましく、ポリエチレン重合体が最も好ましい。さらに適度な平均孔径を有すものの入手が容易で、かつ強度に優れる点でポリオレフィン重合体製の多孔質フィルムであることが好ましく、ポリエチレン重合体製の多孔質フィルムであることが特に好ましい。
このような多孔質フィルムは、例えば特開平9−216964号公報、特開2002−338721号公報等に記載の方法によって得ることもできるし、あるいは、市販品(例えば、旭化成「ハイポア」、宇部興産「ユーポア」、東燃タピルス「セテラ」、日東電工「エクセポール」、三井化学「ハイレット」等)として入手することも可能である。
炭化水素系重合体からなる多孔質膜が有する孔の平均径は、炭化水素系陽イオン交換膜の電気抵抗や機械的強度を勘案すると、一般には0.005〜5.0μmであることが好適であり、0.01〜1.0μmであることがより好ましく、0.015〜0.4μmであることが最も好ましい。また、炭化水素系重合体よりなる多孔質膜の空隙率は、炭化水素系陽イオン交換膜の電気抵抗や機械的強度を勘案すると、20〜95%であることが好ましく、30〜90%であることがより好ましく、30〜65%であることが最も好ましい。
炭化水素系陽イオン交換膜は、如何なる方法により製造しても良いが、一般には、以下の方法により製造することが好適である。即ち、陽イオン交換基が導入可能な官能基または陽イオン交換基を有する単量体、架橋性単量体および重合開始剤からなる単量体組成物を炭化水素系重合体よりなる多孔質膜の空隙部分に含浸させた後、上記の単量体組成物を重合し、必要に応じて陽イオン交換基を導入する方法が挙げられる。
この製造方法において、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陽イオン交換基を有する単量体としては、従来公知である陽イオン交換重合体の製造において用いられている炭化水素系単量体が特に限定されずに使用される。具体的には、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類等が挙げられる。また、陽イオン交換基を有する単量体としては、α−ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体;メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体;ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体、それらの塩類およびエステル類等が用いられる。
また、架橋性単量体としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジビニルベンゼン類、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタレン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン類等のジビニル化合物が用いられる。
さらに、上記した陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陽イオン交換基を有する単量体や架橋性単量体の他に、必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な他の単量体や可塑剤類を添加しても良い。こうした他の単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等が用いられる。また、可塑剤類としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジブチルアジペート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート等が用いられる。
重合開始剤としては、従来公知のものが特に制限なく使用される。こうした重合開始剤の具体例としては、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物が用いられる。
単量体組成物を構成する各成分の配合割合は、特に限定はされないが、一般には、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陽イオン交換基を有する単量体100重量部に対して、架橋性単量体を0.1〜60重量部、好適には1〜50重量部、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を0〜100重量部、可塑剤類を添加する場合は0〜50重量部使用するのが好適である。また、重合開始剤は、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陽イオン交換基を有する単量体100重量部対して、0.1〜20重量部、好適には0.5〜10重量部配合させるのが好ましい。
母材である炭化水素系重合体の多孔質膜への上記単量体組成物の充填方法は、特に限定されない。例えば、単量体組成物を炭化水素系重合体の多孔質膜に塗布やスプレーしたり、あるいは、多孔質膜を単量体組成物中に浸漬する方法などが例示される。
単量体組成物を炭化水素系重合体の多孔質膜に充填させたのち重合するには、一般にポリエステル等のフィルムに挟んで加圧下で常温から昇温する方法が好ましい。こうした重合条件は、関与する重合開始剤の種類、単量体組成物の組成等によって左右されるものであり、特に限定されるものではなく適宜選択すれば良い。
以上のように重合されて得られる膜状物は、必要に応じてこれを、公知の例えばスルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化、加水分解等の処理により所望の陽イオン交換基を導入して、炭化水素系陽イオン交換膜とすることができる。
本発明で使用する陽イオン交換膜のイオン交換容量は、好ましくは0.2〜5mmol/g、さらに好ましくは0.5〜3mmol/gである。また、陽イオン交換膜は、乾燥によるプロトンの伝導性の低下が生じ難いように含水率は7%以上、好適には10%以上であるのが好ましい。一般には含水率は7〜90%程度で保持される。含水率の制御は、陽イオン交換基の種類、陽イオン交換容量及び架橋度を適宜に設定して行う。さらに陽イオン交換膜は、膜抵抗を低く抑えるという観点及び支持膜として必要な機械的強度を付与するという観点から、通常、5〜150μmの厚みを有するものが好ましく、より好ましくは10〜90μmの厚みを有するものが望ましい。
本発明の複合陽イオン交換膜は、上記のような陽イオン交換膜の片面もしくは両面に、層状ケイ酸塩の層間に有機カチオンを有する有機粘土複合体を含む膜が積層されてなる。
この有機粘土複合体は、下記に詳述するが、層状ケイ酸塩の層間に有機カチオンを有するものであり、有機カチオンを含むことにより、従来の層状無機ケイ酸塩、即ち、層間のカチオンがアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、または水素イオンであるものよりも、水に対する分散性が低下する(親油性が向上する)。本発明の複合陽イオン交換膜においては、このような有機粘土複合体膜を使用することが最大の特徴である。
有機粘土複合体を構成する層状ケイ酸塩は、粘土を構成する代表的な鉱物であって、2:1型層状ケイ酸塩にあっては、2層のシリカ四面体ケイ酸塩層がマグネシウム八面体層又はアルミニウム八面体層を間に挟んだサンドイッチ型の3層構造を有し、これが数〜数十層積層した構造を有している。層状ケイ酸塩のケイ酸塩層は負の電荷を有しているが、その電荷は層間に存在するアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等の層間カチオンによって中和されているため、全体として電荷がバランスしている。これらの層状ケイ酸塩としてはスメクタイト型粘土や膨潤性雲母が知られている。これらは、陽イオン交換能を有する微粒子で、層間が広がりやすく、水中で分散してチクソトロピー性を有するゾルを形成し、濃度を高くするとゲルを形成する性質を有している。
スメクタイト型粘土としては、例えば、ヘクトライト、サポナイト、スチーブンサイト、バイデライト、モンモリロナイト、ノントロナイト又はベントナイト等の天然又は化学的に合成したスメクタイト型粘土、又はこれらの置換体、誘導体あるいは混合物を挙げることができる。また膨潤性雲母としては、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四ケイ素フッ素雲母、Li型四ケイ素フッ素雲母等の天然又は化学的に合成した膨潤性雲母で、層間にLiイオンやNaイオンを有する膨潤性雲母、又はこれらの置換体、誘導体あるいはこれらの混合物が挙げられ、バーミキュライト、フッ素バーミキュライト等も用いることができる。
層状ケイ酸塩の市販品としては、ラポナイトXLG(英国、ラポート社製の合成ヘクトライト類似物質)、ラポナイトRD(英国、ラポート社製の合成ヘクトライト類似物質)、サーマビス(独国、ヘンケル社製の合成ヘクトライト類似物質)、スメクトンSA−1(クニミネ工業(株)製のサポナイト類似物質)、ベンゲル((株)豊順洋行販売の天然モンモリロナイト、クニピアF(クニミネ工業(株)販売の天然モンモリロナイト)、ビーガム(米国、バンダービルト社製の天然ヘクトライト)、ダイモナイト(トピー工業(株)製の合成膨潤性雲母)、ソマシフ(ME−100、コープケミカル(株)製の合成膨潤性雲母)、SWN(コープケミカル(株)製の合成スメクタイト)、SWF(コープケミカル(株)製合成スメクタイト)等が挙げられる。
さらに具体的には、下記の合成スメクタイトや膨潤性合成雲母が挙げられる。
合成スメクタイトは、特公昭61−12848号公報に記載されている製法、あるいはそれと類似の製法により製造される、即ち、ケイ酸とマグネシウム塩の均質混合液にアルカリ溶液を反応させてケイ素・マグネシウム複合体を合成し、副生した電解質を除去した後、該複合体にリチウムイオンと必要に応じてナトリウムイオン及び/又はフッ素イオンを添加して、100〜350℃で水熱反応させ、次いで乾燥して得られ、ヘクトライト型粘土鉱物に類似した構造を有する下記式の合成スメクタイトが挙げられる。
MgLiSi(OHおよび/またはF)
(式中、Xは層間カチオンで、Liイオン及び/又はNaイオンを表し、aは0.1〜1.0であり、bは2.4〜2.9であり、cは0.1〜0.6であり、dは3.5〜4.5であり、eは9.5〜10.5であり、fは1.5〜2.5である。)
膨潤性合成雲母は、タルクとケイフッ化アルカリの混合物を加熱処理して得られる膨潤性合成雲母が挙げられ、タルクとケイフッ化ナトリウム及び/又はケイフッ化リチウムとを混合した微粉末を600〜1200℃に加熱処理して得られるものが好ましい。このような膨潤性合成雲母としては、具体的には、下記式で示される膨潤性合成雲母が挙げられる。
(Na,Li)Mg3.0−hSi10(F2.0−iOH
[式中、(Na,Li)は層間にある配位数12の陽イオン、Mg3.0−hは八面体シートを形成している配位数6の陽イオン、Siは四面体シートを形成している配位数4の陽イオンであり、(F2.0−i,OH,O)中のF、OH、Oは陰イオンとして八面体シートに存在する。なお、「,」は「及び/又は」を表す。また、g〜kの記号は下記の数値を表す。
0.2≦g≦1.0;0≦h≦0.5;i=j+2k≦1.0;0≦j≦1.0;0≦k≦0.5]
層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量は、通常、層状ケイ酸塩100g当り10ミリ当量以上、好ましくは60ミリ当量以上であり、交換容量が大きいほどよい。層状ケイ酸塩は、50質量%以下の非粘土鉱物を含有してもよいが、非粘土鉱物の量は10質量%以下が望ましい。また、本発明に使用する層状ケイ酸塩は、前述したように、シリカ四面体層とマグネシウム八面体層又はアルミニウム八面体層との組み合わせによる積層構造をとっているため、微粉砕した粉末の形状は板状や鱗片状を示している。粉末の粉砕条件にも依存するが、粉末の短径(即ち、厚み)は、好ましくは数nm〜数100nm、さらに好ましくは数nm〜数10nm、長径は、好ましくは10nm〜数10μm、さらに好ましくは20〜1000nmである。したがって、粉末のアスペクト比は、好ましくは10〜1000、さらに好ましくは20〜500である。
ところで、粉末の状態の層状ケイ酸塩は、上記のような性状であるが、水中における性状については特異的な挙動を示す。例えば、層間にはナトリウムなどの陽イオンが存在する、層状ケイ酸の一種である合成スメクタイトは、層間陽イオンが水を配位しやすく、水中で容易に膨潤・分散する。水中での分散状態は、ケイ酸塩層が1枚1枚ばらばらになっており、そのケイ酸塩層の短径(厚み)は約1nmで、長径は数10から数100nmの超微細な鱗片状粒子として分散していると言われている。
本発明においても、層状ケイ酸塩としてのスメクタイト型粘土や膨潤性雲母は、上記の合成スメクタイトと同様な性質がある。そのため、有機粘土複合体膜を形成するために、該有機粘土複合体を粉砕や分散させる過程において、該有機粘土複合体の粉末は、さらに粉砕され、ケイ酸塩層がばらばらにほぐれた超微細な鱗片状粒子として利用される。したがって、本発明の複合イオン交換膜に使用している有機粘土複合体は、形状が鱗片状であり、短径は1nm〜30nm、長径は20nm〜1000nm、アスペクト比は20〜1000の範囲を満足するものと考えられる。
本発明においては、上記のような性状の有機粘土複合体を用いて、陽イオン交換膜の表面にアスペクト比の大きな層状ケイ酸塩の膜を形成するため、メタノール透過の経路を長くすることができ、メタノール透過抵抗を顕著に高めることができるものと考えられる。加えて、前記層状ケイ酸塩の層間カチオンは、有機カチオンを有するため親油性が増しており、かかる効果がより発揮できるものと考えられる。
本発明においては、上記のような層状ケイ酸塩の層間カチオンを、有機カチオン、好ましくは、比較的嵩高い炭化水素基を有する有機カチオンでイオン交換した有機粘土複合体を含む膜を使用する。
有機カチオンとしては、たとえば、第四級ホスホニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、第四級ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン等があげられ、有機粘土複合体の合成のし易さ、得られる複合陽イオン交換膜の性能等を考慮すると、特に、第四級ホスホニウムイオンまたは第四級アンモニウムイオンが好ましい。中でも、これらの有機カチオンは、好ましくは炭素数1以上、さらに好ましくは2〜40の比較的嵩高い炭化水素基を、少なくとも一つ以上有することが好ましい。このような層間カチオンを有機カチオンでイオン交換した層状ケイ酸塩が、本発明で使用する有機粘土複合体である。
本発明で用いる有機粘土複合体は、層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量の50%以上の層間カチオンを、有機カチオン、特に、第四級ホスホニウムイオン、または第四級アンモニウムイオンとイオン交換させて得られるものであることが好ましい。前記のイオン交換の程度は、60%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは70%以上で、最も好ましくは80%以上である。
また、好ましい有機カチオンである第四級ホスホニウムイオンは、
次式:
Figure 2009163914
で示されるようにリン原子のまわりに4個の官能基(R基)がついたイオンであり、本発明で使用する第四級ホスホニウムイオンは、前記式において、R、R、R及びRが、同一又は異なり、それぞれ炭化水素基、−A−OH又は−A−COOHを表すものである。
前記式において、R、R、R又はRで表される炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜40、好ましく1〜25の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数2〜40、好ましく2〜25の直鎖状又は分岐状のアルケニル基、炭素数6〜22、好ましく6〜10のアリール基、炭素数7〜22、好ましく7〜12のアラルキル基が挙げられる。
前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、2−メチルアリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基(クロチル基)、3−ブテニル基が挙げられる。
前記アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、トリル基が挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、ビニルベンジル基、ナフチルメチル基が挙げられる。
前記式において、R、R、R又はRで表される−A−OH又は−A−COOHにおけるAは結合基であり、特に制限はないが、例えば鎖員1〜35のもの、好ましくは鎖員2〜21のものが挙げられる。前記結合基としては、通常、芳香族基、脂肪族基及びエーテル結合のうち少なくとも一種の構造を有するものが挙げられ、直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましく、特に炭素数2〜30の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましい。
前記−A−OHとしては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基が挙げられる。
前記−A−COOHとしては、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基、カルボキシヘキシル基、カルボキシヘプチル基、カルボキシオクチル基、カルボキシノニル基、カルボキシデシル基が挙げられる。
また、好ましい第四級アンモニウムイオンは、下記式(1)または(2)で示される。
Figure 2009163914
(式中、Rはメチル基又はベンジル基、Rはメチル基、Rはメチル基又は炭素数1〜25のアルキル基、Rは炭素数1〜25のアルキル基を表し、好ましくはRとRは炭素数16のアルキル基又は炭素数18のアルキル基を表す。)
Figure 2009163914
(式中、R9は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又はベンジル基を表し、R10及びR11は(CH2CH(CH3)O)nH基、(CH2CH2CH2O)nH基、又は炭素数1〜30のアルキル基を表し、R12は(CH2CH(CH3)O)nH基又は(CH2CH2CH2O)nH基を表し、nは1〜50である。好ましくはR9はメチル基、R10及びR11はエチル基、R12は(CH2CH(CH3)O)nH基を表し、nは9〜40である。)
前記式で示される第四級ホスホニウムイオンおよび第四級アンモニウムイオンを層状ケイ酸塩の層間に導入するには、該イオンを含む第四級ホスホニウム塩、第四級アンモニウム塩が用いられるが、そのような塩としては、例えばCl、Br、I、NO 、OH、CHCOO等の陰イオンとの塩を挙げることができる。
第四級ホスホニウム塩の具体例としては、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、トリブチルオクチルホスホニウムクロライド、トリブチルドデシルホスホニウムクロライド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムクロライド、トリエチルベンジルホスホニウムクロライド、トリブチルメチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチルベンジルホスホニウムクロライド、トリオクチルビニルベンジルホスホニウムクロライド、トリブチル2−メチルアリルホスホニウムクロライド、トリオクチル2−メチルアリルホスホニウムクロライド、ジメチルジオクタデシルホスホニウムクロライド、ジメチルオクタデシルベンジルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルメチルホスホニウムクロライド、トリフェニルブチルホスホニウムクロライド、ビス(ヒドロキシプロピル)オクタデシルイソブチルホスホニウムクロライド、トリフェニルカルボキシエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルカルボキシペンチルホスホニウムクロライド、ポリオキシエチレンメチルジエチルホスホニウムクロライド、ポリオキシプロピレンメチルジエチルホスホニウムクロライド等が挙げられ、さらに上記の第四級ホスホニウム塩のClをBrやI等の陰イオンで置き換えた塩が挙げられる。
第四級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラn−プロピルアンモニウムクロライド、テトラi−プロピルアンモニウムクロライド、テトラn−ブチルアンモニウムクロライド、テトラn−ペンチルアンモニウムクロライド、テトラネオペンチルアンモニウムクロライド、テトラヘプチルアンモニウムクロライド、テトラオクチルアンモニウムクロライド、トリメチルエチルアンモニウムクロライド、ジメチルジエチルアンモニウムクロライド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド、ジメチルオクタデシルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルプロピルアンモニウムクロライド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、トリ(n−プロピル)メチルアンモニウムクロライド、トリ(i−プロピル)メチルアンモニウムクロライド、トリ(n−ブチル)メチルアンモニウムクロライド、トリ(n−ペンチル)メチルアンモニウムクロライド、トリネオペンチルメチルアンモニウムクロライド、トリメチルシクロプロピルアンモニウムクロライド、トリエチルシクロプロピルアンモニウムクロライド、トリ(n−プロピル)シクロプロピルアンモニウムクロライド、トリ(i−プロピル)シクロプロピルアンモニウムクロライド、トリ(n−ブチル)シクロプロピルアンモニウムクロライド、トリ(n−ペンチル)シクロプロピルアンモニウムクロライド、トリネオペンチルシクロプロピルアンモニウムクロライド、トリメチルフェニルアンモニウムクロライド、トリエチルフェニルアンモニウムクロライド、トリ(n−プロピル)フェニルアンモニウムクロライド、トリ(i−プロピル)フェニルアンモニウムクロライド、トリ(n−ブチル)フェニルアンモニウムクロライド、トリ(n−ペンチル)フェニルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリ(n−プロピル)ベンジルアンモニウムクロライド、トリ(i−プロピル)ベンジルアンモニウムクロライド、トリ(n−ブチル)ベンジルアンモニウムクロライド、トリ(n−ペンチル)ベンジルアンモニウムクロライド、ジメチルヘキサデシルフェニルアンモニウムクロライド、ジエチルヘキサデシルフェニルアンモニウムクロライド、ジ(n−プロピル)ヘキサデシルフェニルアンモニウムクロライド、ジ(i−プロピル)ヘキサデシルフェニルアンモニウムクロライド、ジ(n−ブチル)ヘキサデシルフェニルアンモニウムクロライド、ジ(n−ペンチル)ヘキサデシルフェニルアンモニウムクロライド、ジメチルヘキサデシルベンジルアンモニウムクロライド、ジエチルヘキサデシルベンジルアンモニウムクロライド、ジ(n−プロピル)ヘキサデシルベンジルアンモニウムクロライド、ジ(i−プロピル)ヘキサデシルベンジルアンモニウムクロライド、ジ(n−ブチル)ヘキサデシルベンジルアンモニウムクロライド、ジ(n−ペンチル)ヘキサデシルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルビニルアンモニウムクロライド、トリエチルビニルアンモニウムクロライド、トリ(n−プロピル)ビニルアンモニウムクロライド、トリ(i−プロピル)ビニルアンモニウムクロライド、トリ(n−ブチル)ビニルアンモニウムクロライド、トリ(n−ペンチル)ビニルアンモニウムクロライド、トリネオペンチルアンモニウムクロライド、モノヒドロキシポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシポリオキシエチレンジメチルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシポリオキシエチレンドデシルメチルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシポリオキシエチレンオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、トリヒドロキシポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、トリヒドロキシポリオキシエチレンドデシルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンメチルジエチルアンモニウムクロライド、ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウムクロライド等が挙げられ、さらに上記の第四級アンモニウム塩のClをBr、I、NO 、OH、CHCOO等の陰イオンで置き換えた塩が挙げられる。
有機粘土複合体のさらに具体的な例は、たとえば特開平11−131047号公報、特開2006−52136号公報に記載されている。
上記の有機粘土複合体は、有機溶媒に分散した分散液とされ、前記陽イオン交換膜表面に塗工され、陽イオン交換膜表面に有機粘土複合体を含む膜(有機粘土複合体膜)を形成し、本発明の複合陽イオン交換膜とされる。また、本発明の複合陽イオン交換膜を製造するには、陽イオン交換膜を前記分散液中に浸漬することもできる。有機溶媒としては、高極性、低極性或いは無極性の各種有機溶媒が選択でき、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類;ヘキサノール、デカノールのような高級アルコール類;MIBK(メチルイソブチルケトン)、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミドのようなアミド類;テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、パークロロエチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類及びジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、酢酸エチル等が挙げられる。
また、有機粘土複合体膜と陽イオン交換膜との密着性を向上するため、前記分散液にさらに結着剤を配合してもよい。
結着剤としては、後述する電極層の形成に用いられる各種熱可塑性重合体が一般的に用いられるが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等が挙げられる。また、各種の陽イオン交換重合体、陰イオン交換重合体を用いることもできる。これら結着剤は、陽イオン交換膜を構成する重合体との密着性を勘案して適宜に選択される。特に、本発明では、有機粘土複合体膜と陽イオン交換膜との密着性を向上するため、有機粘土複合体膜に含まれる結着剤は、陽イオン交換膜とは逆極性の荷電基を有する重合体が好ましく用いられる。陽イオン交換膜は、たとえば−SOH基のようなイオン交換基を有する。−SOHは、−SO とHとに電離し、イオン交換能、イオン伝導性を発現する。したがって、陽イオン交換膜には、−SO 等のアニオン性荷電基が結合している。このため、有機粘土複合体膜に含まれる結着剤として、逆極性のカチオン性荷電基を有する陰イオン交換重合体を用いることで、有機粘土複合体膜と陽イオン交換膜との密着性を向上できる。
有機粘土複合体膜に含まれる結着剤として陰イオン交換重合体を使用する場合、この陰イオン交換重合体は、前記有機粘土複合体の分散液に使用される溶媒に分散可能なものであれば、特に制限されるものではなく、公知の陰イオン交換重合体が使用される。具体的に例示すれば、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアニリン、ポリジエチルアミノエチルスチレン、ポリビニルイミダゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、クロルメチル化ポリスチレンのアルキル化物、さらにこれらの誘導体や、これらの完全または部分N−4級化物が挙げられる。また、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリオキサゾール、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフィドなどのエンジニアリングプラスチック、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体などのスチレン系エラストマーに、公知のアミノ化などの手法で陰イオン交換基を導入した重合体であっても良い。ここで、陰イオン交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム塩基、4級イミダゾリウム塩基等が例示されるが、外部に他のイオン性物質が存在しても有機粘土複合体膜と陽イオン交換膜との強固な密着性が得られることから、1〜3級アミノ基、ピリジル基が好ましく、ピリジル基が最も好ましい。密着性を強固にできる観点から、これら陰イオン交換重合体の中では、前記の1〜3級アミノ基、ピリジル基を陰イオン交換基として有する陰イオン交換重合体が好ましく、特に、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)などのポリビニルピリジン類が最も好ましい。
また、上記の陰イオン交換性重合体には、前記有機粘土複合体の分散液への溶解性や分散性に影響を及ぼさない程度の少量であれば架橋構造が導入されていてもよい。さらに、有機粘土複合体膜に含まれる上記の結着剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
結着剤を使用する場合には、有機粘土複合体と結着剤の重量比(有機粘土複合体/結着剤)を、好ましくは0.1〜50とする。中でも、得られる複合陽イオン交換膜において、結着剤を配合することの効果、良好なメタノール透過抵抗、およびプロトン伝導性、並びに、該複合陽イオン交換膜を燃料電池用隔膜として使用した際の出力密度等を考慮すると、有機粘土複合体と結着剤の重量比は、さらに0.5〜35であることが好ましく、特に1〜30であることが好ましい。
有機粘土複合体膜は、有機粘土複合体、有機溶媒および必要に応じ結着剤を含む分散液(または塗工液ともよぶ)を陽イオン交換膜に塗工、あるいは分散液に陽イオン交換膜を浸漬し、その後、乾燥して形成される。塗工方法としては、バーコート、ディップコート、スピンコート、ロールコート、ナイフコート、スプレーコート、フローコート、グラビアコート、インクジェット法などの公知の手法が採用される。乾燥は、室温から80℃の範囲で、数分〜数時間行えばよい。また、結着剤の配合量が多すぎた場合には、有機粘土複合体膜の形成後、有機溶媒で表面を洗浄し、過剰の結着剤を除去することもできる。
有機粘土複合体膜の厚みは、特に限定はされないが、好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.3〜2μmである。有機粘土複合体膜の厚みが上記範囲を満足することにより、充分なメタノール透過抵抗が得られ、また膜抵抗の増加があまりなく、プロトン伝導性が良好となる。
上記のような有機粘土複合体膜を陽イオン交換膜上に形成することで、メタノール透過抵抗が付与され、メタノールクロスオーバーが防止される。この理由として、何ら理論的に拘束されるものではないが、上記の通り、陽イオン交換膜上に、鱗片状の層状ケイ酸塩を結着することで、メタノールの透過経路が長くなるため、メタノール透過が抑制されるものと考えられる。また、層状ケイ酸塩膜(有機粘土複合体膜)は親油化されているため、メタノール水溶液に対する親和性が低いため、メタノール透過がさらに抑制されるものと考えられる。
本発明は、前記有機粘土複合体膜を表面に有する複合陽イオン交換膜であるが、鱗片状の層状ケイ酸塩が陽イオン交換膜上に水平に且つ緻密に積層した構造となることが望ましい。このように有機粘土複合体膜を陽イオン交換膜上に形成するためには、層状ケイ酸塩の各層が概略一枚毎によく分散していることが望ましい。そのためには、前記有機粘土複合体、有機溶媒および必要に応じ結着剤を含む分散液を、分散機を用いて十分に分散処理することが好ましい。
分散機としては、公知のものが制限なく使用できる。例えば、ボールミル、ビーズミル、超音波分散機、高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。これらの中でも、コンタミが少なく、分散効率も高い高圧ホモジナイザーが好適に採用できる。
高圧ホモジナイザーとは、一般的には、原料の液体(スラリー)を高圧もしくは超高圧に加圧し、スリット(隙間)を抜ける際のせん断力や圧力緩和の際に発生するキャビテーション効果を利用して粉砕・分散・乳化を行う装置である。また、高圧もしくは超高圧に加圧したスラリーを、途中で2流路に分岐させ、再度合流する部分で衝突させて、粉砕・分散・乳化を行う衝突タイプの湿式微粒化装置も好適に使用できる。
このような高圧ホモジナイザーを使用した分散条件は、機種によって各種の装置定数や効率が異なるため、あるいは用いる原料の種類によって分散・粉砕の効率が異なるため、一概にその処理条件を定めることはできない。一般には、分散・粉砕の効率は処理圧力に依存するため、処理圧力が高いほど効率も高くなる。例えば、処理圧力は50Mpa以上、好ましくは100Mpa以上、さらに好ましくは150Mpa以上の場合、分散・粉砕の効率の高い処理が可能である。なお、高圧ホモジナイザーで液を処理する回数は、1〜数十回の範囲から選ぶことができる。このような処理をした分散液は、さらに必要に応じて、上記分散液は、ろ過等により粗大粒子などを取り除いて使用することができる。
このような処理を行うことにより、有機粘土複合体、有機溶媒および必要に応じ結着剤を含む分散液は、ケイ酸塩層が1枚1枚ばらばらになった超微細な鱗片状粒子の状態で分散されてものとなり、かかる分散液を使用して得られる複合陽イオン交換膜は、優れたメタノール透過抵抗を示すものとなる。
本発明の複合陽イオン交換膜を用いた燃料電池用隔膜は、通常、その両面にガス拡散電極を接合させて用いられる。ガス拡散電極は、固体電解質型燃料電池に使用される公知のものを特に制限なく適用可能である。一般的には、触媒の金属粒子及び導電剤が分散する触媒電極層からなり、このものは多孔性材料からなる電極基材により支持されている。
ここで、触媒としては、水素やメタノールなどの燃料の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であれば特に制限されるものではないが、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、バナジウム、あるいはそれらの合金が挙げられる。これらの触媒の中で、触媒活性が優れている白金やルテニウムあるいは白金とルテニウムの合金が多くの場合用いられる。
上記触媒となる金属粒子の粒径は、通常、0.1〜100nm、より好ましくは0.5〜10nmである。粒径が小さいほど触媒性能は高くなるが、0.1nm未満のものは作製が困難であり、100nmより大きいと十分な触媒性能が得にくくなる。
上記触媒の含有量は、触媒電極層をシートとした状態で、通常、0.01〜10mg/cm、より好ましくは0.1〜5.0mg/cmである。触媒の含有量が0.01mg/cm未満では触媒の性能が充分に発揮されず、10mg/cmを超えて担持させても性能は飽和する。なお、これら触媒は、予め導電剤に担持させてから使用しても良い。
導電剤としては、電子導電性物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等を単独または混合して使用するのが一般的である。
また、触媒電極層には、上記触媒、導電剤の他に、結着剤等が含まれていても良い。
上記結着剤としては、プロトン伝導性を担うカチオン交換基が導入された重合体が好ましく採用される。例えば、炭化水素系重合体としては、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキサゾール、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフィドなどのエンジニアリングプラスチック、スチレン系エラストマーなどの樹脂に公知の方法でスルホン酸基などのカチオン交換基を導入したものが挙げられる。また、フルオロカーボン系重合体も好適に採用され、具体的には、パーフルオロカーボンスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(デュポン社製、商品名;ナフィオン分散溶液)なども好適に採用される。上記のカチオン交換基が導入された重合体は、一般的には架橋構造を含まず、水やアルコールなどの溶媒に溶解もしくは分散するものが好ましい。
さらに上記結着剤としては、各種熱可塑性重合体も好適に採用される。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等が挙げられる。上記結着剤の含有量は、上記触媒電極層の5〜25質量%であることが好ましい。また、結着剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
これら成分からなる触媒電極層が支持される電極基材は、多孔質のものが使用され、具体的には、カーボン繊維織布、カーボンペーパー等が使用される。その厚みは50〜300μmであることが、その空隙率は50〜90%であることが好ましい。
上記電極基材に対して前記触媒電極層は、その空隙内及び複合陽イオン交換膜との接合側表面に5〜50μmの厚みになるよう充填及び付着され、ガス拡散電極が形成される。その製造方法は、前記各成分と有機溶媒とが混合された触媒電極層ペーストを電極基材に塗布して乾燥させる方法によるのが一般的である。また、上記触媒電極層ペーストには、触媒坦持量の調整や触媒電極層の膜厚を調整するため、暫時前記有機溶媒と同様の有機溶媒を添加して粘度調整を行なうのが一般的である。
複合陽イオン交換膜/ガス拡散電極接合体を製造する際の熱圧着は、加圧、加熱できる装置を用いて実施される。一般的には、ホットプレス機、ロールプレス機等により行われる。プレス温度は、一般的には80℃〜200℃である。プレス圧力は、使用するガス拡散電極の厚み、硬度に依存するが、通常0.5〜20MPaである。
このようにして熱圧着された複合陽イオン交換膜/ガス拡散電極接合体は、前記した図1に示すような基本構造の固体電解質用燃料電池に装着されて使用される。
ところで、本発明の複合陽イオン交換膜は、有機粘土複合体膜を表面に形成することによって、極めて効果的にメタノールなどの燃料の透過を抑制することができるが、それと同時にイオン交換膜の膜方向のプロトン伝導性の低下を招いてしまうという問題がある。すなわち、燃料電池に応用した場合、メタノールの透過を抑制することによって電池出力の増加が見込めるが、同時にプロトン伝導性の低下(膜抵抗の上昇)によって電池出力が低下するのではないかという懸念があった。しかしながら、本発明においては、メタノールの透過を効果的に抑制することによって、イオン伝導性は低下しても、燃料電池の出力はそれほど低下しないことがわかった。
さらに、メタノールなどの燃料の透過を効果的に抑制することによって、燃料の利用効率を大幅に向上させることができる。一般的には、燃料室から酸化剤室に固体高分子電解質膜を通してメタノールが透過すると、酸化剤室側触媒電極層上で酸素と反応して燃焼するか、あるいはそのまま酸化剤ガスと同伴して系外に排出されることになる。また、酸化剤室側触媒電極層上に達したメタノールは、電極近傍の酸素と反応するため、酸素極の電位を下げ、燃料電池の出力低下を引き起こす。すなわち、メタノールなどの燃料の透過を抑制することによって、メタノールなどの燃料の直接的な損失と燃料電池の出力が低下するという間接的な損失の二つの損失に対する改善効果が期待できる。
例えば、メタノール透過抵抗が10[g−1・cm・h]の場合には、メタノールの酸化反応が6電子反応であるので、電流値に換算すると約500[mA/cm]に相当するメタノールが固体高分子電解質膜を通して漏れた(損失した)ことになる。メタノール透過抵抗を100[g−1・cm・h]に向上できれば、メタノールの損失は電流値換算で約50[mA/cm]程度で済むことになる。通常、ダイレクトメタノール型燃料電池の出力は、数10mW/cmから数100mW/cmのものが報告されているが、例えば、10mW/cmと100mW/cmの出力の電池を0.5Vで動かしたときの電流値は、20mAと200mAに相当する。このことからわかるように、現状のダイレクトメタノール型燃料電池においては、イオン交換膜を通してのメタノールの透過を効果的に防止することは、燃料利用効率の上でも極めて大きな意味がある。
(実施例)
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例に示すプロトン伝導性やメタノール透過抵抗などの測定値は、以下の方法により測定した値を示す。
1)膜抵抗(プロトン伝導性)
線幅0.3mm、長さ2cm以上の白金線5本を互いに離して平行に配置した絶縁基板を用い、前記白金線に40℃の純水に湿潤した2.0cm幅の短冊状の陽イオン交換膜を押し当て測定用試料を調製した。この試料を40℃、60%RHの恒温恒湿槽中に保持し、白金線間に1kHzの交流を印加したときの交流インピーダンスを測定した。白金線間距離を0.5〜2.0cmに変化させたときのそれぞれの交流インピーダンスを測定した。
白金線と陽イオン交換膜との間には接触による抵抗が生じるが、白金線間距離と抵抗の勾配から陽イオン交換膜の比抵抗を算出することでこの影響を除外した。白金線間距離と抵抗測定値との間には良い直線関係が得られた。抵抗勾配と膜厚から下式により、40℃での膜抵抗を算出した。
R=2.0×L×S
R :膜抵抗[Ω・cm
L :膜厚[cm]
S :抵抗極間勾配[Ω/cm]
また、膜抵抗の逆数をプロトン伝導性として表記した。
σ=1/R
σ :プロトン伝導性[S・cm−2
2)イオン交換容量と含水率
陽イオン交換膜を1mol/L−HCl水溶液に10時間以上浸漬し、水素イオン型とした後、1mol/L−NaCl水溶液でナトリウムイオン型に置換させ、遊離した水素イオンを、水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。次に、同じイオン交換膜を1mol/L−HCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した後、膜を取り出しティッシュペーパー等で表面の水分を拭き取り湿潤時の重さ(Wg)を測定した。さらに膜を60℃で5時間減圧乾燥させその重量を測定した(Dg)。上記測定値に基づいて、陽イオン交換膜のイオン交換容量および含水率を次式により求めた。
陽イオン交換膜のイオン交換容量=A×1000/D[mmol/g(乾燥重量)]
含水率=100×(W−D)/D[%]
3)メタノール透過抵抗
図1に示す2室構造の燃料電池セル(イオン交換膜の露出面積:5cm)に陽イオン交換膜(複合陽イオン交換膜)を挟み、一方の室に30質量%のメタノールを含む水溶液をポンプで供給し、反対側の室にアルゴンガスを300ml/minで供給した。測定は25℃の恒温槽内で実施し、陽イオン交換膜を透過したメタノール量は、ガス捕集容器で捕集したアルゴンガス中のメタノール濃度をガスクロマトグラフィーで定量した。上記の値を用いてメタノール透過速度[単位:g・cm−2・h−1]を求め、その逆数をメタノール透過抵抗とした。
4)燃料電池の特性試験
ポリテトラフルオロエチレンで撥水化処理した厚さ100μm、空孔率80%のカーボンペーパー上に、白金とルテニウム合金触媒(ルテニウム50mol%)50質量%担持のカーボンブラックと、パーフルオロカーボンスルホン酸のアルコールと水の5%溶液(デュポン社製、商品名;ナフィオン分散溶液)を混合したものを触媒が4mg/cmとなるように塗布し、80℃で4時間減圧乾燥しガス拡散電極とした。次に、測定する陽イオン交換膜(複合陽イオン交換膜)の両面に上記のガス拡散電極をセットし、100℃、圧力5MPaの加圧下で100秒間熱プレスした後、室温で2分間放置した。これを図1に示す構造の燃料電池セルに組み込んで燃料電池のセル温度を50℃に設定し、燃料室側に10質量%メタノール水溶液を1ml/min、酸化剤室側に加湿した大気圧の空気を200ml/minで供給して発電試験を行なった。具体的には、外部回路に電流を流さないときの電圧(開回路電圧)を測定した。さらに、燃料電池の電流―電圧特性を測定し、最大出力密度を求めた。
(実施例1)
まず、炭化水素系陽イオン交換膜を作製した。スチレン90重量部、ジビニルベンゼン10重量部(架橋剤)、t−ブチルパーオキシエチルヘキサノエート5重量部(重合開始剤)からなる重合性単量体組成物を調製した。ポリエチレン製の疎水性多孔質フィルム(膜厚:25μm、平均孔径:0.03μm、空隙率:36%)を準備し、10cm角に切り出した。上記重合性単量体組成物に、前記の疎水性多孔質フィルムを室温(25℃)で1時間、浸漬し、重合性単量体を多孔質フィルムに含浸させた。続いて、上記の含浸多孔質フィルムを単量体組成物中から取り出し、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として前記の含浸多孔質フィルムの両側から挟み込んで、3kg/cmの窒素加圧下、80℃で5時間加熱重合した。
得られた膜状物を98%濃硫酸と純度90%以上のクロロスルホン酸の1:1の混合物中に40℃で45分間浸漬し、次いで0.5mol/L−水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬した。その後、0.5mol/L−塩酸水溶液に10時間以上浸漬してスルホン酸基の対イオンを水素イオンにイオン交換して炭化水素系陽イオン交換膜を得た。
上記で得られた炭化水素系陽イオン交換膜の物性を測定したところ、イオン交換容量は、2.2mmol/g、含水率は、26%、プロトン伝導性は、13S・cm−2であった。
次に、有機粘土複合体としてコープケミカル(株)製合成スメクタイトSPNを10g、溶媒としてメタノールを2000g、結着剤としてアルドリッチ製のポリ(4−ビニルピリジン)(分子量:160,000)0.6gを十分に撹拌することによって懸濁液を調製した。なお、上記の有機粘土複合体は、層状ケイ酸塩の層間カチオン(第四級アンモニウムイオン)として、ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウムカチオンがイオン交換されており、イオン交換の割合は50%以上である。
続いて、前記の懸濁液を、微分散装置として高圧ホモジナイザー(アドバンスト・ナノ・テクノロジィ(株)製の実験用超高圧湿式微粒化装置LSU−2010P14)を用いて、処理圧力100MPaにて3回処理することによって、有機粘土複合体の塗工液を製造した。なお、このときに使用した装置は、高圧のスラリーを、途中で2流路に分岐させ、再度合流する部分で衝突させて、粉砕・分散・乳化を行うタイプの湿式微粒化装置である。上記塗工液は、透明性の高い低粘度の液であった。
次に、炭化水素系陽イオン交換膜に前記の塗工液をディップコーティングし、陽イオン交換膜上に有機粘土複合体膜を形成した。ディップコーティングの方法は、陽イオン交換膜を塗工液に浸漬し、室温にて120cm/minの速度で引き上げることによって行った。引き上げた膜は、室温で2時間乾燥させた後、60℃で2時間乾燥させることによって固定化し、複合陽イオン交換膜を得た。
なお、上記方法により得られた複合陽イオン交換膜において、有機粘土複合体膜を光学顕微鏡で観察したところ、均質で滑らかな表面状態の膜であることがわかった。また、上記の有機粘土複合体膜の厚みは、電子顕微鏡で確認したところ1μmであった。さらに、透過型電子顕微鏡を用いて上記有機粘土複合体膜の膜断面を観察したところ、約1nmの厚みのケイ酸塩層が複合陽イオン交換膜とほぼ水平方向に幾重にも配列した構造であることがわかった。また、上記ケイ酸塩層の長さは、平均すると約80nmであったので、アスペクト比は80と見積もられた。
上記の複合陽イオン交換膜を用いて、プロトン伝導性と燃料電池特性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2〜4)
有機粘土複合体と結着剤の比率を変えて塗工液を調整した以外は実施例1と同様にして複合陽イオン交換膜を得、その特性を評価した。結果を表1に示す。なお、これら複合陽イオン交換膜において、有機粘土複合体膜を顕微鏡で確認したところ、膜厚を含め実施例1の複合陽イオン交換膜と同様の形態であることが確認された。
(比較例1)
有機粘土複合体膜を形成する前の炭化水素系陽イオン交換膜(実施例1で使用したもの)の特性を評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
親水性層状ケイ酸塩であるコープケミカル(株)製合成スメクタイトSWNを1mol/Lの塩酸水溶液に分散させ、一昼夜撹拌することによって層間カチオンを水素イオンにイオン交換した。遠心分離と純水による洗浄を繰り返し、上記上澄み液が中性になるまで洗浄し、層間カチオンが水素イオン型のスメクタイトを得た。
実施例1における有機粘土複合体の代わりに、上記の親水性層状ケイ酸塩(層間カチオンが水素イオンであるもの)を用いた以外は実施例1と同様にして、塗工液を調製し、膜を形成した。なお、上記の塗工液は、実施例1に比べるとやや不透明で、また、上記塗工膜の表面は、光学顕微鏡で観察したところ実施例1と比べるとやや凹凸があり、荒れていることがわかった。得られた複合陽イオン交換膜の特性を評価し、表1に示した。
Figure 2009163914
(実施例5)
親水性層状ケイ酸塩としてコープケミカル(株)製合成スメクタイトSWNを原料に用い、層間に第四級ホスホニウムイオンを挿入した有機粘土複合体を合成した。
まず、前記の合成スメクタイトを1mol/Lの塩酸水溶液に分散させ、一昼夜撹拌することによって層間カチオンを水素イオンにイオン交換した。遠心分離と純水による洗浄を繰り返し、上記上澄み液が中性になるまで洗浄し、水素イオン型のスメクタイトを得た。
上記のスメクタイト30gを純水1.5リットルに分散し、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド10g(合成スメクタイトの陽イオン交換容量の0.9倍量)を溶解させた水溶液500gを添加し、室温で一昼夜撹拌して、層間カチオンを前記のホスホニウムイオンにイオン交換した。遠心分離機を用いて固液分離を行い、純水で数回洗浄した後に乾燥させて、第四級ホスホニウムイオンを有する有機粘土複合体(第四級ホスホニウムイオンのイオン交換の割合は50%以上である)を合成した。
上記の第四級ホスホニウムイオンを有する有機粘土複合体を用いた以外は実施例1と同様にして塗工液を調製し、表面に有機粘土複合体膜を有する複合陽イオン交換膜を得た。なお、上記塗工液は、透明性の高い低粘度の液であった。また、得られた複合陽イオン交換膜において、有機粘土複合体膜を顕微鏡で観察したところ、塗工膜の表面も実施例1と同様に均質で滑らかな表面状態の膜ができおり、膜厚、およびケイ酸塩層の分散状態も実施例1の複合陽イオン交換膜と同様の形態であった。
得られた複合陽イオン交換膜の特性を評価し、表2に示した。
(実施例6および比較例3)
炭化水素系陽イオン交換膜の代わりに、パーフルオロカーボンスルホン酸系の陽イオン交換膜である、デュポン社製のNafion117(登録商標)を用いた以外は実施例1と同様にして複合陽イオン交換膜を作製し、評価した。同時に、有機粘土複合体膜を形成しなかったものを比較例3として評価した。結果を表2に示す。
なお、ここで使ったNafion117の膜厚は200μmであり、実施例1〜5で使用した炭化水素系陽イオン交換膜の膜厚25μmよりもはるかに厚いものであった。比較例1と比較例3を比較すると膜厚の薄い炭化水素系陽イオン交換膜の方が、膜厚あたりで考えるとメタノール透過抵抗が優れていると判断されるが、パーフルオロカーボンスルホン酸系の陽イオン交換膜についても、10μm前後の薄いイオン交換膜に本発明を適用すれば、プロトン伝導性とメタノール透過性が両立した優れた効果が期待できるものと考えられる。
Figure 2009163914
固体高分子電解質型燃料電池の基本構造を示す概念図である。
符号の説明
1;電池隔壁
2;燃料流通孔
3;酸化剤ガス流通孔
4;燃料室側拡散電極
5;酸化剤室側ガス拡散電極
6;固体高分子電解質膜(複合陽イオン交換膜)
7;燃料室
8;酸化剤室

Claims (3)

  1. 層状ケイ酸塩の層間に有機カチオンを有する有機粘土複合体を含む膜を積層してなる複合陽イオン交換膜。
  2. 前記有機カチオンが、第四級ホスホニウムイオンまたは第四級アンモニウムイオンである請求項1に記載の複合陽イオン交換膜。
  3. 請求項1または2に記載の複合陽イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜。
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