JP2009155738A - マイナスイオン発生材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】トルマリン、半導体物質、放射性物質などの異質物質を混入することなく、素材のもつ特性を利用してマイナスイオンを発生し、従来のものに比べマイナスイオン発生能力が高く、長期間にわたってその能力が低下することなく持続するマイナスイオン発生材料を提供する。
【解決手段】質量平均分子量60万〜300万の超高分子量ポリ‐γ‐グルタミン酸により被覆処理された絹繊維と、ポリ塩化ビニリデン系繊維とを含む混合繊維布からなり、該ポリ塩化ビニリデン系繊維が負に帯電されているマイナスイオン発生材料とする。
【選択図】図5

Description

本発明は、マイナスイオン発生材料、さらに詳しくいえば2種の帯電系列の異なる繊維の一方に負の電荷を帯電させ、両者を接触させてマイナスイオンを発生し得る状態とした混合繊維からなる新規なマイナスイオン発生材料及びその製造方法に関するものである。
マイナスの荷電をもつ空気イオン、いわゆるマイナスイオンは、人間の健康を維持する上で、重要な役割を果し、癒しの効果を奏することから以前より注目され、これまでにも人工的にこれを発生するための多くの材料や方法が提案されている。特に、近年活性電子を用いる治療医学の急速な進展により、マイナスイオンの人体への作用機序が解明された結果、健康阻害の原因となる人体内の活性酸素の消去にマイナスイオンの発生源である電子が有効であることが明らかになり、マイナスイオンについての関心は益々高まりつつある。
このマイナスイオンの利用方法の1つとして、マイナスイオンを発生する機能をもつ繊維で、衣料品や布団カバーを作製する方法が知られており、このような繊維として、これまでに超微粒状トルマリンをアルカリセルロースに混練し、紡糸して製造した帯電性レーヨン繊維(特許文献1参照)、トルマリン微粉末を混入した合繊糸とシルク糸との混紡糸(特許文献2参照)、マイナスイオンを発生する無機物微粒子及びケラチン化した羊毛溶解物質を分散した水溶液と羊毛繊維製品とを接触させたのち、熱処理して得られるマイナスイオンを発生する羊毛繊維製品(特許文献3参照)、ポリアミド合成繊維又は羊毛或いは両者の混紡繊維からなる表地とポリ塩化ビニル繊維からなる裏地との二重構造編成物からなる保温サポータ用マイナスイオン発生布地(特許文献4参照)、溶融粘度の異なる2種のポリエステルが偏心的に複合され、潜在捲縮能をもつポリエステル複合繊維からなる医療用貼付剤基布(特許文献5参照)、導電性成分例えば導電性粉末状金属酸化物を芯部に含有する芯鞘型アクリル系複合導電性繊維と他の繊維との混紡糸からなるマイナスイオンを発生する繊維製品(特許文献6参照)、竹を原料とするセルロース系繊維と2種以上のポリエステル系重合体のサイドバイサイド型又は偏心芯鞘型複合繊維からなるマイナスイオンを発生する複合編成物(特許文献7参照)などが提案されている。
しかしながら、トルマリンのようなマイナスイオンを発生する無機物微粒子を繊維原料中に練り込んで紡糸するには、0.8μm以下の粒径にまで微粉化しなければならないが、これには乾式粉砕と湿式粉砕とを併用するなどの特殊な技術を必要とする上に、微粒子を混入した原料を紡糸すると紡糸ノズルが損傷しやすいなどの不都合を生じる。また、マイナスイオンを発生する無機質微粒子をケラチン化した羊毛溶解物質に分散させる場合、羊毛溶解物質をケラチン化するためには煩雑な処理を必要とする上に、この分散物を羊毛繊維表面に付着させてマイナスイオン発生能力を付与させても安定性が低く、長期間その能力を保持することが困難であるという欠点がある。
さらに、異なった生地からなる表地と裏地で二重構造編成物を形成させたり、偏心的に複合させた複合繊維を形成させるには、特殊な編成技術を使用しなければならないので、コスト高になるのを免れないし、芯部に導電性粉末を含有する芯鞘型アクリル系複合導電性繊維を製造するにも特殊な装置を用いる煩雑な操作を必要とするなどの欠点がある。
そのほか、マイナス静電気を帯びやすい素材を8質量%以上含む材料を、マイナス静電気を帯びにくい材料で摩擦することによりマイナスイオンを発生する方法において、マイナス静電気を帯びやすい素材としてポリ塩化ビニリデンを用いることも知られているが(特許文献8参照)、ポリ塩化ビニリデンは、成形性が低く、摩擦帯電性が大きいため、これを繊維状に成形し、他の繊維と混合して布帛とするのは、非常に困難であった。
本発明者らは、先に、トルマリンのような圧電性物質を混入することなく、素材自体のもつ特性を利用してマイナスイオンを発生させ、かつこの能力を長期間にわたって持続させることのできる新規な繊維材料として、天然タンパク繊維とポリ塩化ビニリデン系繊維からなり、上記ポリ塩化ビニリデン系繊維に負電荷を帯電させたマイナスイオン発生可能な繊維布を提案した(特許文献9参照)。
しかしながら、この繊維布に用いるタンパク質繊維例えば絹繊維は、耐摩耗性を欠く上に、紫外線により変質し黄変するという欠点を有する。
他方、上記のような絹繊維の欠点を克服するために、ポリエチレングリコール水溶液による処理後、エポキシ系樹脂加工する方法(特許文献10参照)、繊維表面にフィブロイン水溶液と高親水性樹脂との混合物を塗布した布帛を乾燥し、湿熱処理する方法(特許文献11参照)、絹繊維製品を、ポリエチレングリコール類、クラウンエーテル類などの水溶液で浸漬処理し、乾燥後、エポキシ樹脂で処理し、さらに熱処理する方法(特許文献12参照)などが提案されているが、これらの処理を行うと、耐摩耗性、耐紫外線性は改善されるが、ポリ塩化ビニリデン繊維との摩擦に基づくマイナスイオン発生能力や親水性が低下するのを免れない。
特開平4−327207号公報(特許請求の範囲その他) 特開平10−331042号公報(特許請求の範囲その他) 特開2001−355182号公報(特許請求の範囲その他) 特開2003−247151号公報(特許請求の範囲その他) 特開2004−43988号公報(特許請求の範囲その他) 特開2004−91984号公報(特許請求の範囲その他) 特開2004−124348号公報(特許請求の範囲その他) 特開2002−95960号公報(特許請求の範囲その他) 特開2007−191834号公報(特許請求の範囲その他) 特開平11−323735号公報(特許請求の範囲その他) 特開平5−71073号公報(特許請求の範囲その他) 特開平5−71072号公報(特許請求の範囲その他)
本発明は、トルマリン、半導体物質、放射性物質などの異質物質を混入することなく、素材のもつ特性を利用してマイナスイオンを発生し、しかも従来のものに比べマイナスイオン発生能力が高く、長期間にわたってその能力が低下することなく持続するマイナスイオン発生材料を提供することを目的としてなされたものである。
本発明者らは、絹繊維とポリ塩化ビニリデン系繊維を含む混合繊維布からなるマイナスイオン発生材料において、絹繊維を超高分子量ポリ‐γ‐グルタミン酸により被覆処理すればマイナスイオン発生能力、親水性などの本来絹繊維がもつ好ましい物性をそこなうことなく、耐摩擦性、耐紫外線性が改善されることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、質量平均分子量60万〜300万の超高分子量ポリ‐γ‐グルタミン酸により被覆処理された絹繊維と、ポリ塩化ビニリデン系繊維とを含む混合繊維布からなり、該ポリ塩化ビニリデン系繊維が負に帯電されていることを特徴とするマイナスイオン発生材料、及びポリ‐γ‐グルタミン酸水溶液中に絹繊維を浸漬したのち、乾燥後、カルボジイミド基をもつ化合物の水性懸濁液又は二官能性エポキシ化合物水溶液中に浸漬し、架橋反応させたのち、乾燥して質量平均分子量60〜300万の超高分子量ポリ‐γ‐グルタミン酸により被覆された絹繊維を形成させ、次いでこの絹繊維とポリ塩化ビニリデン繊維とを混紡し、布状に形成することを特徴とするマイナスイオン発生材料の製造方法を提供するものである。
本発明のマイナスイオン発生材料は、ポリ‐γ‐グルタミン酸により被覆処理された絹繊維と、ポリ塩化ビニリデン系繊維との2種類の繊維から構成されている。このように、帯電列の上位にある親水性の絹繊維と、帯電列の最下位にあるポリ塩化ビニリデン系繊維との組み合せにより、効果的にマイナスイオンが発生される。また、ポリ‐γ‐グルタミン酸は高分子中で最高値を示す3000質量倍の水の保持率を有し、これを薄膜状に絹繊維に被覆すると、絹の優れた特性を損なうことなく、ポリ塩化ビニリデン系繊維との摩擦による高いマイナスイオン発生能力を示す。
本発明で用いる絹繊維としては、家蚕の作出に係る生糸を用いることもできるが、繊度の大きいサク蚕が作出したサク蚕糸が好ましい。この絹繊維の繊維径としては、ポリ塩化ビニリデンとの複合状態よりみて、20〜40μmの範囲が適当である。
絹繊維表面を被覆するポリ‐γ‐グルタミン酸としては、納豆の粘性物質中より分離されたバチルス(Bacillus)属の菌を使用し、グルタミン酸を重合して得られる質量平均分子量60万〜300万の超高分子量のものを用いることが必要である。絹の表面に高強度の被覆を施すためには、質量平均分子量が200万以上のものを用いるのが好ましい。
また、工業的に製造する場合には、小麦、大豆などを原料として用いて製造する豆腐、納豆、醤油などの製造工程で生じる廃棄物を原料として用いるのが好ましい。
絹繊維にポリ‐γ‐グルタミン酸を均一かつ強固な薄膜状に被覆するには、架橋剤としてカルボジイミド基をもつ化合物又は二官能性エポキシ化合物を用いる。
カルボジイミド基をもつ化合物としては、例えば分子間架橋反応を行わせるためのカルボジイミド基を2個以上有する化合物、すなわち多価カルボジライトを挙げることができる。このものは、例えば多官能性の有機イソシアネートを脱炭酸縮合して得ることができる。
また、二官能性エポキシ化合物としては、ジグリシジルベンゼン、ジグリシジルシクロヘキサン、ジグリシジル尿素などがある。
このカルボジイミド基をもつ化合物又は二官能性エポキシ化合物の使用量は、絹繊維の質量に基づき0.001〜0.1質量%の範囲内で選ばれる。
また、絹繊維とポリ‐γ‐グルタミン酸の使用割合は、絹繊維100質量部当り、0.001〜0.5質量部、好ましくは0.003〜0.1質量部の範囲で選ばれる。
本発明のマイナスイオン発生材料を製造するには、所定量のポリ‐γ‐グルタミン酸を含む水溶液に絹繊維を浸漬し、ポリ‐γ‐グルタミン酸を絹繊維に十分に吸着させたのち、遠心分離又はろ過により水を除去し、乾燥する。
次いで、このポリ‐γ‐グルタミン酸を吸着した絹繊維を、例えばプラスチックパイプに巻き付けて、架橋剤を含む弱酸性に調整した液中に浸漬し、20〜50℃に保持したのち、80℃まで昇温して架橋反応を行わせる。この反応時間は、通常0.5〜3時間程度である。この際の液性の調整は、例えば、酢酸、プロピオン酸のような有機酸、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸によりpH5〜6に調節することにより行われる。架橋反応終了後、絹繊維を取り出し、水洗したのち、80〜100℃で乾燥する。
このようにして、質量平均分子量60〜300万の超高分子量ポリ‐γ‐グルタミン酸により被覆された絹繊維が形成される。
上記架橋反応において、カルボジイミド基をもつ化合物の場合は、絹フィブロイン分子中の活性基であるセリンのヒドロキシル基との間でイソ尿素のアルキルエーテル結合が、またポリ‐γ‐グルタミン酸の活性基のカルボキシル基との間でアシル尿素結合がそれぞれ形成される。
他方、二官能性エポキシ化合物の場合は、絹フィブロイン分子中の活性基であるセリンのヒドロキシル基との間でヒドロキシエーテル結合が、またポリ‐γ‐グルタミン酸のカルボキシル基との間でβ‐ヒドロキシエステル結合が形成される。
本発明のマイナスイオン発生材料は、上記のようにして得たポリ‐γ‐グルタミン酸被覆絹繊維とポリ塩化ビニリデン繊維とを混合することにより製造される。そして、これらの繊維成分を接触させ機械的に摩擦を加えると、混合繊維中のポリ塩化ビニリデン系繊維に負電荷が帯電し、マイナスイオンが発生する。
本発明のマイナスイオン発生材料におけるポリ‐γ‐グルタミン酸被覆絹繊維とポリ塩化ビニリデン系繊維との混合割合は、質量比で20:80ないし80:20の範囲である。
そして、本発明の材料において効果的にマイナスイオンを発生させるためには、使用時において人体の動きを効率的に繊維の動きによる繊維間の摩擦に同調できるように、材料中の繊維の自由度の大きな構造をとらせることが望ましい。材料の構造設計がマイナスイオンの発生に重要であり、例えば平面状の繊維構造体では織布、編布、ニードルパンチの密度の少ない不織布、ニードルパンチ密度の大なる不織布、ウォータージェットでウェブを固定した不織布、編布、織布の順に繊維の動きの自由度が低下し、マイナスイオンの発生も減少する。
本発明のマイナスイオン発生材料より発生するマイナスイオンは、例えばゲルディエン法原理に基づいて製作された空気イオン測定装置を用いることにより容易に測定することができる。
図1は、この測定装置の説明図であって、これはたがいに電気的に絶縁された外筒(印加電圧筒)1と内筒(集電極円筒)2から構成されている。そして、この外筒1は直流電源4に、内筒2はエレクトロメーター3にそれぞれ接続している。この外筒1と内筒2の間隙に、軸方向に空気イオンを含む空気を一定流速で通しながら、外筒1に負電流を印加すると、円筒間を通過する空気中のマイナスイオンは内筒2に捕捉され、外筒1への印加電圧を高めていくと、内筒2に流れる電流は次第に増大する。そして、P点を通過するイオンがすべてT点で捕捉可能な印加電圧下では、内筒間に入ってくるイオンはすべて内筒2に捕捉され、印加電圧がこれ以上になると内筒2に流れる電流は一定値となる。
図2は、外筒1への印加電圧と内筒2に流れる電流との関係を示すグラフである。この図2において印加電圧とともに増大する内筒2に流れる電流(オーム電流)は、ある時点で印加電圧を上げても内筒2に流れる電流が一定値を示し飽和する(飽和電流)。
また、すべてのマイナスイオンが捕捉されるイオンの移動度すなわち臨界移動度をkcとすると、このkcは次の式(1)で示される。
kc=[F/(4π・aV)] (1)
ただし、F:空気流の流量(cm3/sec)
V:印加電圧(ボルト)
a:装置定数
また、飽和電流において一定時間に流れた平均電流から、マイナスイオン数密度[D]は次式(2)で与えられる。
[D]=I/(e・F) (2)
上式において、I:飽和電流量域において、一定時間に流れた平均電流(アンペア/秒)
[D]:マイナスイオン数密度(個/cm3
ただし、e:1個の電子の荷電量(1.6×10-17クローン/秒)
式(2)のIの値は、一定時間t秒に内筒2に蓄積される荷電量Q(クーロン)より次式(3)に従って求めることができる。
I=(Q/t) (3)
そして、ゲルディエン法空気イオン測定装置から得られる測定値を代入することにより、上記の式に基づいてマイナスイオン数密度を求めることができる。この測定に際しては、マイナスイオンを測定しようとする試料を40℃で2時間乾燥したのち、12時間デシケーターに保管する。
図3は、マイナスイオン測定装置の全体構造を示す側面略解図であり、これを用いてマイナスイオンを測定する場合には、上記の試料を試料筒6に装入し、吸引機9を作動させ、一定量の空気を装置内に流し、試料上を通過させる。試料上を通過した空気は、外筒1と内筒2の間を通り、排気口10より排出される。空気量が定常状態に達したならば、外筒1に以下に示すサイクルで電圧をt秒間印加する。なお、5は絶縁板、7は空気流入口、8は流量計を示す。3はエレクトロメーター、4は直流電源である。
0→40V→0→60V→0→80V→0→100V→0→120V→0→140V→0→160V
このようにして繰り返し電圧を印加し、このt秒間に蓄積された荷電量Q(クーロン)を測定する。
そして、式(3)により内筒2に流れる電流Iを計算し、あらかじめ作成された電流Iと加電圧との関係グラフより飽和電流値Isを求め、式(2)に従い、マイナスイオン数密度[D]を計算する。
本発明は、このようにして計算されたマイナスイオン数が、従来知られているマイナスイオン発生材料例えばトルマリンを練り込んだビスコース繊維からなる繊維布のマイナスイオン発生量に比べ、著しく大きい発生量を示す上に、長期間にわたって持続するという利点がある。
次に実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
参考例1
中国産サク蚕糸(繊度21デニール以上)100gを、質量平均分子量300万のポリ‐γ‐グルタミン酸(福岡醸造協同組合製)をサク蚕糸の質量に基づき0.0034質量%の割合で含有する水溶液1.5リットル中に40℃において1時間浸漬し、サク蚕糸にポリ‐γ‐グルタミン酸を吸着させたのち、遠心分離して水分を除き、次いで風乾した。
このようにして得たポリ‐γ‐グルタミン酸を吸着したサク蚕糸を外径10mmのプラスチックパイプに巻き付ける。次いで有機ジイソシアネートの脱炭酸縮合により得られたカルボジイミド当量(高分子の分子量/高分子中のカルボジイミド基の数)355〜380のカルボジイミド基をもつ高分子化合物(日清紡製)を濃度40質量%の水懸濁状とし、これによりpH5.5、0.2質量%水溶液3リットルを調製し、この中に上記の試料を巻き付けたプラスチックパイプを浸漬し、温度を80℃に保ち、1時間反応させたのち取り出し、水洗後、90℃で乾操し、51mmにカットしてポリ‐γ‐グルタミン酸0.0034質量%により均一に被覆されたクリンプ付き絹繊維を製造した。
次に、ポリ‐γ‐グルタミン酸のサク蚕糸に対する量を変えて、同様に処理することにより、それぞれ0.03質量%、0.06質量%及び0.09質量%のポリ‐γ‐グルタミン酸で被覆された絹繊維のサンプルを製造した。
参考例2
参考例1と同じ中国産サク蚕糸100gを、このサク蚕糸の質量に基づき0.0034質量%の割合で含有する水溶液1.5リットル中に、40℃において1時間浸漬し、サク蚕糸にポリ‐γ‐グルタミン酸を吸着し、風乾した。このようにして、ポリ‐γ‐グルタミン酸を被覆させたサク蚕糸を外径10mmのプラスチックパイプに巻いて、酢酸によりpH4.5に調節したエチレングリコールジグリシジルエーテル(東京化成工業社製特級試薬)の1質量%水溶液3リットル中に浸漬し、1時間、40℃に加熱したのち、80℃に昇温して2時間反応させた。次いで、処理した絹繊維を取り出し、水洗後、乾燥し、51mmにカットして、ポリ‐γ‐グルタミン酸0.0034質量%で均一に被覆されたクリンプ付き絹繊維のサンプルを製造した。
次に、ポリ‐γ‐グルタミン酸のサク蚕糸に対する量を変えて、同様に処理することにより、それぞれ0.03質量%、0.06質量%及び0.09質量%のポリ‐γ‐グルタミン酸で被覆された絹繊維のサンプルを製造した。
塩化ビニリデンと塩化ビニルとの等モル共重合体からなるポリ塩化ビニリデン系繊維(旭化成社製、軟化点150〜165℃)を溶融紡糸して得た繊度7デニールのフィラメントを長さ51mmにカットしたステープルファイバー2.1kgと、参考例1で得たポリ‐γ‐グルタミン酸で被覆された絹繊維0.9kgとを混合し、解繊機により空気中に飛散解繊して、均一な混合状態のわた状物を形成した。次いで、このわた状物を移動する金網状ベルトコンベア上に捕集して層状体としたのち、回転シリンダー上に鋸歯ワイヤーを付したカード機に挿入し、移動方向に櫛削り、目付300g/m2のウェブを形成させた。次いで、これにニードルパンチングを施し、不織布を製造した。
このようにして得た不織布について、測定用の空気流により、繊維相互の摩擦荷電を発生させ、マイナスイオンの数密度を次のように測定した。
不織布より15cm×15cmの方形片を切り取り、40℃で2時間乾操後、12時間デシケーター中に保存する。
次いで試料をゲルディエン法測定装置の試料筒に入れ、外部より試料に2.01リットル/分の空気を流す。この空気は測定装置の二重円筒の間を通過するとき外筒への印加電圧(V)に対応して内筒に流れる電流値(I)を求め、飽和電流値より(1)、(2)式によりマイナスイオン数密度[−D]を得る。
なお、測定値は流過する空気の25℃、関係湿度30%で求めた標準試料を同一日の温度、湿度が近い時刻帯に測定し、この値より補正を行う。
このようにして得た結果を表1に示す。
Figure 2009155738
また、この際のサク蚕糸に対するポリ‐γ‐グルタミン酸の割合[P]とマイナスイオン数密度[−D]との関係をプロットしたグラフとして図4に示す。
実施例1で用いたものと同じポリ塩化ビニリデン系繊維2.1kgと参考例2で得たポリ‐γ‐グルタミン酸で被覆された絹繊維0.9kgとを混合し、解繊機により空気中に飛散解繊して、均一な混合状態のわた状物を形成した。次いで、このわた状物を移動する金網状ベルトコンベア上に捕集して層状体としたのち、回転シリンダー上に鋸歯ワイヤーを付したカード機に挿入し、移動方向に櫛削り、目付300g/m2のウェブを形成させた。次いで、これにニードルパンチングを施し、不織布を製造した。
このようにして得た不織布について、測定用の空気流により、繊維相互の摩擦荷電を発生させ、マイナスイオンの数密度を実施例1と同じ方法で測定した。この結果を表2に示す。
なお、表2には、比較のためにポリ‐γ‐グルタミン酸被覆を行わない試料No.5の測定結果を併記した。
Figure 2009155738
また、この際のサク蚕糸に対するポリ‐γ‐グルタミン酸の割合[P]とマイナスイオン数密度[−D]との関係をプロットしたグラフとして図4に示す。
表1及び表2から分るように、超高分子量のポリ‐γ‐グルタミン酸を架橋反応剤として、カルボジイミド基をもつ高分子又はエチレングリコールジグリシジルエーテルを用い、絹に被覆加工した繊維とポリ塩化ビニリデン系繊維との混合繊維からなる不織布は、ポリ‐γ‐グルタミン酸を全く使用しない絹繊維とポリビニリデンクロライド繊維との混合繊維からなる不織布に比べて、著しく多くのマイナスイオンを発生する。そして、絹に加工するポリ‐γ‐グルタミン酸の割合が0.0034〜0.03と極めて少ない量でこの効果が発現するのはポリ‐γ‐グルタミン酸の薄膜が絹の表面を覆うことにより、絹の水に対する親和性の増大及び帯電系列の変化からポリ塩化ビニリデン系繊維との摩擦帯電性の増加方向への変化によるものと考えられる。
実施例3〜7
ポリ‐γ‐グルタミン酸0.06質量%で被覆したサク蚕糸と、実施例1で用いたものと同じポリ塩化ビニリデン系繊維とを、質量比20:80(実施例3)、30:70(実施例4)、40:60(実施例5)、60:40(実施例6)、80:20(実施例7)の割合で混合した混合繊維を用い、実施例1と同様にして目付300g/m2のウェブを形成し、これに回転シリンドルパンチング処理を施して、不織布を製造した。
これらの不織布のマイナスイオン数密度を実施例1と同様にして測定し、その結果を表3に示す。
なお、比較のためにポリ‐γ‐グルタミン酸被覆サク蚕糸単独(比較例1)、ポリ塩化ビニリデン系繊維単独(比較例2)及び市販の粉末トルマリンを混練したビスコース繊維単独(比較例3)についての測定結果も併記した。
Figure 2009155738
この表から分かるように、ポリ‐γ‐グルタミン酸被覆サク蚕糸とポリ塩化ビニリデン系繊維との混合繊維からなる不織布は、それぞれの繊維単独からなる不織布及び市販品よりも多くのマイナスイオンを発生する。また、ポリ‐γ‐グルタミン酸被覆サク蚕糸とポリ塩化ビニリデン系繊維との混合比が広い範囲(20:80ないし80:20)に及んで同等でかつ高いマイナスイオンを発生する特色を有している。このことは最終製品の軽さ、保温性、弾力性などの設計に好都合である。
また、この際の加工サク蚕糸とポリ塩化ビニリデン繊維との割合とマイナスイオン数密度[−D]との関係をプロットしたグラフとして図5に示す。
本発明はサク蚕糸の表面を超高分子量のポリ‐γ‐グルタミン酸で被覆することにより、持続性が向上したポリ塩化ビニリデン系繊維とからなるマイナスイオン発生材料が提供され、人間の健康に重要な働きをするマイナスイオンを通常のサク蚕糸とポリ塩化ビニリデン系繊維とのブレンド繊維より一段と多量に発生する繊維が得られ、健康に役立つ衣料、寝具、インナーとして広く利用することができる。
マイナスイオンを定量するために用いられるケルディエン法に基づく空気イオンの測定装置の原理を説明するための説明図。 図1における外筒1への印加電圧と内筒2に流れる電流との関係を示すグラフ。 測定装置の全体構造を示す側面略解図。 ポリ‐γ‐グルタミン酸の割合を変えたサク蚕糸とポリ塩化ビニリデン系繊維とブレンドで得られた不織布のポリ‐γ‐グルタミン酸の割合とマイナスイオンの発生量の関係を示すグラフ。 ポリ‐γ‐グルタミン酸被覆サク蚕糸とポリ塩化ビニリデン系繊維とのブレンド不織布における両繊維のブレンド比とマイナスイオンの発生量の関係を示すグラフ。
符号の説明
1 外筒
2 内筒
3 エレクトロメーター
4 直流電源
5 絶縁板
6 試料筒
7 空気流入口
8 流量計
9 吸引機
10 空気排気口

Claims (6)

  1. 質量平均分子量60万〜300万の超高分子量ポリ‐γ‐グルタミン酸により被覆処理された絹繊維と、ポリ塩化ビニリデン系繊維とを含む混合繊維布からなり、該ポリ塩化ビニリデン系繊維が負に帯電されていることを特徴とするマイナスイオン発生材料。
  2. 超高分子量ポリ‐γ‐グルタミン酸による絹繊維の被覆処理がカルボジイミド基をもつ化合物又は二官能性エポキシ化合物を架橋剤として用いて行われている請求項1記載のマイナスイオン発生材料。
  3. 超高分子量ポリ‐γ‐グルタミン酸被覆の絹繊維100質量部に対する含有割合が0.001〜0.5質量部の範囲にある請求項1又は2記載のマイナスイオン発生材料。
  4. 混合繊維における絹繊維とポリ塩化ビニリデン系繊維の割合が質量比で80:20ないし20:80の範囲にある請求項1、2又は3記載のマイナスイオン発生材料。
  5. ポリ‐γ‐グルタミン酸水溶液中に絹繊維を浸漬したのち、乾燥後、カルボジイミド基をもつ化合物の水性懸濁液又は二官能性エポキシ化合物水溶液中に浸漬し、架橋反応させたのち、乾燥して質量平均分子量60〜300万の超高分子量ポリ‐γ‐グルタミン酸により被覆された絹繊維を形成させ、次いでこの絹繊維とポリ塩化ビニリデン繊維とを混紡し、布状に形成することを特徴とするマイナスイオン発生材料の製造方法。
  6. 織布状、編布状又は不織布状に形成する請求項5記載のマイナスイオン発生材料の製造方法。
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