JP2009149944A - 焼結鋼とその製造方法 - Google Patents

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Srinivasa Rao Bonta
ボンタ スリニバサ ラオ
Keiichiro Oishi
敬一郎 大石
Kazuhiro Takano
和博 宝野
Toshimoto Mukai
敏司 向井
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Abstract

【課題】添加物を必要とせずに強度のみならず、従来困難とされていた延性をも有する焼結鋼を提供する。
【解決手段】純鉄からなるナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトからなる混粒組織であることを特徴とする焼結鋼とし、焼結温度の調整により前記ナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトとの面積割合を調整することを特徴とする焼結鋼の製造方法とする。
【選択図】図10

Description

本発明は、鉄粉末が焼結されたフェライト単相からなる焼結鋼に関する。
従来よりこの種、焼結鋼は、高強度材料として注目されていたが、加工上必要な延性を合わせ保有させることは困難であった。
特許文献1では、高い硬度を得るためにCとNを添加しているが、固溶限界を超えると析出物が形成され、延性が低下する可能性がある。
また、オーステナイトとフェライトの2相組織にするため、他の合金元素の添加を必要とし、合金組成が複雑になる問題があった。
特許文献2では、高い硬度・強度を得るために、高濃度の炭素、あるいは他の合金元素の添加を必要とし、これも合金組成が複雑になる。
特許文献3では、バルク材の製造を容易に行うため、融点もしくはそれに近い温度で固化成形することを提案しており、結晶粒の成長・粗大化をともない強度を低下させる恐れがある。
特許文献4では、炭素を0.1から2.1質量%添加により、フェライト中に炭化物であるセメンタイトが分散した組織になっており、そのセメンタイトが破壊の起点となり延性を低下させる恐れがある。
特開2006−274323 特開2005−281769 特開2004−143596 特開2007−2302(特願2005−184120)
本発明は以上のような問題を解決して、添加物を必要とせずに強度のみならず延性をも有さしめることを課題とする。
発明1の焼結鋼は、純鉄からなるナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトの混粒組織であることを特徴とする。
発明2は、発明1の焼結鋼の製造方法であって、焼結温度の調整により前記ナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトとの面積割合を調整することを特徴とする。
本発明は、ナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトが、強度と延性の両機能に大きく影響するとの新たな知見に基づくものである。
つまり、ナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトからなる混粒組織とすることにより、強度のみならず延性をも有さしめる効果を得るに至ったものであり、さらに、それらが添加物を必要としない純鉄の焼結という極めてシンプルなものとなった。
また、強度−延性バランスは、焼結温度によるナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトの面積割合によって調整しえることが明らかになったので、発明2の方法により、用途等に対応した強度−延性バランスを調整することが出来るようになった。
本発明の実施に当たって、鉄粉末は、純鉄片をボールミリングにより粉砕および強加工したものを用いたが、その外に旋盤やエンドミルによる機械加工時に生じる切り屑などを用いることが可能である。
得られた粉末は、平均粒径2〜30μmの範囲のものを選択し、所望の形状に圧密成形する。
このように成型したものを、実施例では放電プラズマ焼結法により固化した。
焼結方法としては、その外に熱間押出し、熱間圧延や溝ロール圧延などを利用し焼結と成形を同時に行う方法も挙げられる。
焼結温度が高くなるにつれ、マイクロ結晶領域の面積割合が増加していき、それにともない圧縮試験での塑性ひずみが増加する。
例えば、焼結温度600℃(以下、温度は10℃単位で示す)では、0.2%耐力で3GPaを超える値で、著しく高い強度を示したが、塑性ひずみは5%であった。
焼結温度720℃では、0.2%耐力は2GPaと低下したものの、塑性ひずみ40%を示し強度と延性に両方に優れた性質をもつことがわかった。
ナノ結晶領域に対するマイクロ結晶領域の面積割合は600℃で約4%、720℃で約23%であり、マイクロ結晶フェライト領域の割合が塑性ひずみの増加に関係していることがわかる。
このナノ結晶とマイクロ結晶フェライトの割合を調節することで、強度と延性のバランスを制御することが可能である。
本焼結鋼は基本的にフェライト単相からなり、高強度・高延性の優れた性質は添加元素やセメンタイトによるものでなく、単にナノ結晶とマイクロ結晶フェライトの組み合わせに起因したものであることから、圧縮試験だけでなく、引張試験でも優れた機械的特性を示す可能性がある。
本発明において、ナノ結晶とは、その平均結晶粒径が20nm〜200nmのものをいう。
また、マイクロ結晶とはその平均結晶粒径が0.5μm〜5μmのものをいう。
そのナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトの面積割合は、ナノ結晶を1とした場合、マイクロ結晶粒径が0.04〜0.25となるようにするのが望ましく、より好ましくは0.13〜0.25とするのが望ましい。
0.04〜0.13では2GPa以上の0.2%耐力が得られるが、約10%以下の破断ひずみしか得られない。0.13〜0.25では約1.5GPa〜2GPaの0.2%耐力と約20%以上の破断ひずみが得られるようになり、強度と延性の両方に優れた性質を達成できる。
純度99+%の鉄粉末を出発材として用い、遊星ボールミリング装置により回転速度250rpmで100時間のミリング処理を施した。
なお、ボールと粉末の重量比は10対1とした。
粉末の取り扱いはすべてアルゴンガスで置換されたグローブボックス内で行った。
ミリングされた粉末(平均粒径2〜30μm)を直径10mmのタングステンカーバイド製の金型に装填し、放電プラズマ焼結装置により固化成形を実行した。
焼結の際には離型を容易にするため金型にボロンナイトライドをスプレー塗布した。
焼結は10−3Pa以下の真空中で行った。
焼結の詳細な手順を図1に示す。
試料をチャンバーにセットした際、20kNの荷重を負荷した。
そして、120℃/分の昇温速度で600℃まで加熱し2分間保持した。
荷重を30kNに増加し2分間保持した後、荷重をさらに38kNまで増加し、焼結を行った。
38kNの圧力をかけた状態で温度を600、690、700、720℃と変化させ、6分間保持して焼結を行った。
焼結が終わった後、荷重を取り除き温度が350℃まで下がったところで、試料を取り出し水冷した。
固化成形した試料の大きさは直径約10mmで高さ約5mmの円柱状であった。
試料の密度は純水を使用してアルキメデス法で測定した。
直径2mm、高さ4mmの円柱状試料を放電加工機で切り出した後、初期ひずみ速度1×10−4−1の条件下で室温圧縮試験を行った。
X線回折はCuKα線を用いて実行した。
試料の微細組織は集束イオンビーム(FIB)加工装置による二次イオン顕微鏡(SIM)および透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。
図2は初期純鉄粉末、メカニカルミリング処理後、各温度で焼結されたバルク材のX線回折の結果を示している。
メカニカルミリング後、鉄の回折ピークの幅が広がっており、粉末内部の結晶粒径が微細になっていることを示している。
回折ピークから結晶粒径を計算すると約26nmであった。
各温度で焼結されたバルク材では、α鉄(フェライト)から計算される回折ピークだけが現れており、それ以外のピークは観察されていない。
ここで、各温度で焼結されたバルク材の相対密度は98から99%の値であった。
図3から6は600、690、700、720℃で焼結された材料の二次イオン顕微鏡(SIM)像である。
図3において、600℃で焼結された組織は2つの領域からなることがわかる。
主となる組織はグレーの領域であり結晶粒径が数十ナノメートルのナノ結晶フェライトに相当する。
一方、その他の組織は矢印で示された明るいグレーと暗いグレーの領域であり結晶粒径の大きいフェライトに相当する。
ここで、SIM像で現れるコントラストの違いは各結晶粒から生じるチャンネリングコントラストによるもので、つまり結晶方位の差を反映したものである。
したがって、焼結後の組織はナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトからなる混粒組織であることがわかる。
図4から6に示した組織も同様にナノ結晶とマイクロ結晶のフェライトの混在する組織になっており、焼結温度の上昇とともにマイクロ結晶フェライト領域の割合が高くなっている。
図7から9に600、700、720℃で焼結された試料の断面をTEMで観察した組織写真を示す。いずれのTEM像もナノ結晶領域に相当する。
すべての試料の回折パターンにおいて、フェライトの格子面間隔に対応したリングパターンが現れており、ランダムな結晶方位をもつナノ結晶フェライト組織であることがわかった。
表1に各焼結温度におけるマイクロ結晶フェライト領域の面積率を示す。この面積率は図3から6に示した組織から見積もられた。

この結果から焼結温度の増加とともにマイクロ結晶粒フェライト領域の割合が増加していることがわかる。
表2に各焼結温度におけるナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトの平均結晶粒径を示す。
ナノ結晶フェライトの粒径は600℃で約45nmであり、焼結温度とともに増加していく。720℃でナノ結晶の粒径は約85nmになるが、依然として100nm以下の粒径を保持している。

また、マイクロ結晶フェライトの結晶粒径も焼結温度とともに増加し、720℃では約2.5μmになる。
図10は各温度で焼結されたバルク材に対して初期ひずみ速度10−4−1で圧縮試験したときの真応力−真ひずみ曲線である。
この真応力−真ひずみ曲線より得られた0.2%耐力、最大圧縮応力、破断ひずみを表3に示す。
ここで、0.2%耐力は弾性変形を示す直線から0.2%の塑性ひずみが進行したところの変形応力の値、最大圧縮応力は変形応力の最大値とした。
600℃焼結温度では約3GPaを超える0.2%耐力を示しているが、破断ひずみは5%と小さい。
焼結温度が上昇するにつれ、0.2%耐力は減少するが、破断ひずみは増加している。
720℃焼結温度では0.2%耐力1.6GPa、破断ひずみ40%を示しており、この焼結温度が高強度かつ高塑性ひずみを有する材料を達成するために最適な温度であることがわかる。
これは表1に示すように結晶粒の大きいマイクロ結晶領域の割合が増加していることに起因していると考えられる。
以上をまとめて表3に示す。
焼結の詳細な手順を図11に示す。試料をチャンバーにセットした際、20kNの荷重を負荷した。そして、120℃/分の昇温速度で675℃まで加熱し2分間保持した。
荷重を30kNに増加し8分間保持した後、荷重をさらに38kNまで増加し、焼結を行った。
38kNの圧力をかけた状態で温度を720、あるいは750℃と変化させ、6分間保持して焼結を行った。
750℃においては焼結時間6分のほかに、23分の試料も作製した。
焼結が終わった後、荷重を取り除き温度が350℃まで下がったところで、試料を取り出し水冷した。
図12に引張試験片の形状を示す。直径10mmの焼結体から放電加工機を使って作製した。
ゲージ部分の断面形状は0.5mm×0.5mmの正方形で、ゲージ長さは2mmとした。
図13は各温度で焼結された試料に対して初期ひずみ速度10−4−1で引張試験したときの真応力−真ひずみ曲線である。
720℃−6minの試料は弾性変形領域にあたる直線部分で破断している。
焼結温度を高くした750℃−6minの試料において、約2GPaの0.2%耐力を示しているが、伸びは約2%程度である。
また、同じ焼結温度750℃で焼結時間を長くした750℃−23min試料では、約2GPaの0.2%耐力を示し、伸びも2倍の4%に増加している。
これは実施例1の表1に示すように、焼結時間を長くすることによりマイクロ結晶領域の割合が増加し、その結果として延性の増加につながったと考えられる。
本発明は焼結温度と焼結時間により組織を構成するナノ結晶とマイクロ結晶との比率を調整できるフェライト単相の鋼であり、一般的に構造用鉄鋼材料に含まれる炭素を含有しておらず、なおかつ合金元素を添加していないため、安価でリサイクル性に優れた高強度・高延性鉄鋼材料として期待される。熱間押出しや熱間圧延によりさらなる延性の改善、および棒材や板材への展伸化が図れれば、構造用鉄鋼材料としての用途も広がると考えられる。
実施例1の放電プラズマ焼結の手順を示すフロー 実施例1で得られた焼結鋼のX線回折の結果 実施例1で得られた焼結鋼の内600℃で焼結したもののSIM像写真 実施例1で得られた焼結鋼の内690℃で焼結したもののSIM像写真 実施例1で得られた焼結鋼の内700℃で焼結したもののSIM像写真 実施例1で得られた焼結鋼の内720℃で焼結したもののSIM像写真 実施例1で得られた焼結鋼の内600℃で焼結されたものの拡大TEM像写真 実施例1で得られた焼結鋼の内700℃で焼結された材料の拡大TEM像写真 実施例1で得られた焼結鋼の内720℃で焼結された材料の拡大TEM像写真 実施例1で得られた焼結鋼の室温圧縮試験で得られた真応力−真ひずみ曲線を示すグラフ 実施例2の放電プラズマ焼結の手順を示すフロー 実施例2の引張試験片の形状を示す正面図 実施例2の室温引張試験で得られた真応力−真ひずみ曲線を示すグラフ

Claims (2)

  1. 鉄粉末が焼結されたフェライト単相からなる焼結鋼であって、純鉄からなるナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトの混粒組織であることを特徴とする。
  2. 請求項1に記載の焼結鋼の製造方法であって、焼結温度の調整により前記ナノ結晶フェライトとマイクロ結晶フェライトとの面積割合を調整することを特徴とする。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016186101A (ja) * 2015-03-27 2016-10-27 Ntn株式会社 焼結部材

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