JP2009148265A - 前立腺癌および結腸癌の診断および治療に有用な腫瘍抗原 - Google Patents

前立腺癌および結腸癌の診断および治療に有用な腫瘍抗原 Download PDF

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Abstract

【課題】新規の前立腺特異性のアンドロゲンで調節された細胞表面セリンプロテアーゼである20P1F12/TMPRSS2に由来するかまたはこれを基にした、前立腺癌および結腸癌の診断および治療のための組成物を提供する。
【解決手段】20P1F12/TMPRSS2遺伝子の全コード配列を含む完全長のcDNA。組成物中の検出マーカーまたは毒物または治療用組成物で標識された抗体を含む、20P1F12/TMPRSS2タンパク質およびそのポリペプチド断片に結合する抗体。20P1F12/TMPRSS2に特異的に反応するモノクローナル抗体。
【選択図】図1−1

Description

[発明の詳細な説明]
発明の背景
前立腺癌は、最も頻繁に診断される癌であり、かつ男性の癌による死因の二番目である。年間およそ45,000人の男性が本疾患で死亡している。肺癌のみがより高い死亡率を示している。男性が生存中に浸潤性前立腺癌を発症する可能性は、6名中1名である。50歳の男性で、前立腺癌を発症する可能性は40%以上であり、本疾患により死亡する割合は約3%である。限局性腫瘍の治療は相当進歩しているにもかかわらず、前立腺癌は一旦転移してしまうと治療が不可能である。転移性前立腺癌患者は、ホルモン途絶療法により治療されるが、これは短期間成功するのみである。実際にこれらの患者は、アンドロゲン治療抵抗性の状態を発現し、これは疾患の進行および死亡につながる。
前立腺癌の管理における継続的かつ根本的な問題点は、正確に病期初期の局在化した腫瘍を検出しおよび/または疾患の易罹病性および進行を予測することが可能な信頼できる診断および予後判定マーカーが存在しないことである。現在、前立腺癌の早期検出および診断は、直腸指診(DRE)、前立腺特異抗原(PSA)の測定、経直腸式超音波検査(TRUS)、および経直腸針生検(TRNB)に頼っている。DREと組合わせた血清PSA測定が、現時点での主な診断法である。しかしこの方法には、大きな制約があり、そのことが本疾患のより良い診断マーカーを探そうとする集中的研究の活力となっている。多くのマーカーが同定され、かつ少なくとも1種であるPSAは広範に臨床において使用されている。しかし理想的な前立腺の腫瘍マーカーは非常に捕らえどころがなく、かつ本疾患の進行を予測する信頼できるマーカーはまだ証明されていない。従って、前立腺癌管理におけるより信頼できかつ情報の多い診断法および予後判定法が必要である。
加えて、再発性疾患を発症している患者または転移性疾患と診断された患者のための有効な治療法はないので、治療標的として適しているであろう前立腺特異タンパク質を同定することに多大な関心が集まっている。ホルモン途絶療法はこれらの患者を緩和することができるが、その大部分は、治癒不可能なアンドロゲン非依存型疾患発症へと必然的に進行する(Lalaniら、Cancer Metastasis Rev.、16:29-66(1997)、非特許文献1)。
PSAは、現時点で、前立腺癌のスクリーニング、診断および経過観察のための腫瘍マーカーとして最も広範に使用さている。特にいくつかの血清PSAの検出用の免疫アッセイ法が、広く臨床で使用されている。最近になって、血清中のPSA mRNAの逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイ法が開発された。しかしPSAは疾患特異的マーカーではないので、上昇したレベルのPSAは、BPHおよび前立腺炎患者の高い割合(25〜86%)で検出され(Gaoら、Prostate、31:264-281(1997)、非特許文献2)、さらにその他の悪性でない疾患および健常な男性の一部においても検出されており、このマーカーの診断特異性を大きく制限する要因となっている。例えば、血清PSAの4〜10ng/ml間の上昇はBPHにおいて認められ、かつより高い値が前立腺炎、特に急性前立腺炎で認められることさえある。BPHは男性において極めて一般的な状態である。混乱に拍車をかけるように、血清PSAの上昇はDREによる疾患のいかなる指標も伴わない場合にも認められることがあり、その逆の場合もありうるという事実がある。さらに現在は、PSAが前立腺特異的でないことが判明している(Gaoら、前掲、検証のために)。
PSAベースの検出の特異性を改善するように設計された様々な方法が開示されており、例えば、PSA密度の測定および遊離PSA対複合PSAの比の測定などがある。しかしこれらの方法はいずれも、悪性前立腺疾患から良性のものを再現性をもって識別することが不可能である。加えてPSA診断の感度は57〜79%であり(CuppおよびOsterling、Mayo Clin Proc、68:297-306(1993)、非特許文献3)、その結果本疾患の男性の有意な割合において前立腺癌の確定が失敗している。
最近になって、前立腺特異的膜抗原(PSMA)が、前立腺癌の細胞表面マーカーであることが示され、その診断用および治療用マーカーとしての使用を評価する様々な研究の対象となっている。PSMA発現は、前立腺組織に大きく制限されているが、検出可能レベルのPSMA mRNAは、脳、唾液腺、小腸および腎細胞癌腫において認められている(Israeliら、Cancer Res、53:227-230(1993)、非特許文献4)。PSMAタンパク質は、ほとんどの原発性および転移性前立腺癌において高度に発現されているが、ほとんどの上皮内新生物標本においても発現されている(Gaoら、前掲)。再発性前立腺癌を造影するためにインジウム-111で標識した抗-PSMAモノクローナル抗体を用いる予備的結果は見込があることを示している(Sodeeら、Clin Nuc Med、21:759-766(1996)、非特許文献5)。PSMAは、機能性アンドロゲン受容体の存在が必要なホルモン依存型抗原である。全ての前立腺癌細胞がアンドロゲン受容体を発現するわけではないので、治療標的としてのPSMAの臨床での有用性は本質的に制限されている。PSMA免疫療法の有効性を試験するようにデザインされた臨床試験も、現在進行中である。
前立腺幹細胞抗原(PSCA)は、ごく最近明らかにされた別の前立腺癌の細胞表面マーカーである(Reiterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95:1735-1740(1998)、非特許文献6)。PSCA発現は、前立腺特異性であり、かつ高度の前立腺上皮内新生物(PIN)、アンドロゲン-依存型およびアンドロゲン-非依存型前立腺腫瘍を含む前立腺癌の全ての病期にわたって広く過剰発現されることがわかっている。PSCA遺伝子は、染色体8q24.2に位置付けられ、対立遺伝子領域は前立腺癌の80%以上において得られている。PSCAの細胞表面局在、前立腺特異性、および前立腺癌細胞における非常にアップレギュレーションされた発現の観点から、これが診断および治療用の標的となる可能性を示している。
特異的マーカーの同定における進展は、臨床疾患を再現する実験動物モデルシステムが無いために遅々としている。この問題を解決するために、前立腺癌細胞株(Horoszewiczら、Cancer Res.、43:1809(1983)、非特許文献7)および前立腺癌異種移植片(Pretlowら、1991、Cancer Res.、51:3814、非特許文献8;van Weerdenら、Am. J. Pathol.、149:1055(1996)、非特許文献9;Kleinら、Nature Med.、3:402(1997)、非特許文献10)の作製が試みられている。しかしこれらの方法の成功は限られたものである。例えば異種移植片は、一般に長期生存率を低い。加えて最も広範に使用されるヒト前立腺癌細胞株であるPC-3、DU-145およびLNCaPはいずれも、前立腺癌に典型的な造骨細胞病巣の再現性のある発生を示さない。DU-145およびPC-3細胞株の別の制約は、これらの細胞株が前立腺特異抗原(PSA)またはアンドロゲン受容体(AR)のいずれも発現しないことであり(Kaighnら、Invest. Urol.、17:16-23(1979)、非特許文献11;Gleaveら、Cancer Res.、52:1598-1605(1992)、非特許文献12)、これらの臨床での前立腺癌との関連は疑問視されている。LNCaP細胞株は、アンドロゲン反応性であり、かつPSAを発現するが、しかしリガンド特異性を変更するアンドロゲン受容体の変異を含んでいる。
しかし最近になって、ヒトの臨床状況に密に対応した遺伝子および表現型の特性を明らかにしている一連の前立腺癌異種移植片(患者の腫瘍に由来する)が示された(Kleinら、Nature Med.、3:402(1997)、非特許文献10)。これらのLAPC(ロスアンジェルス前立腺癌)異種移植片は、重症複合免疫不全症(SCID)マウスにおいて1年以上にわたって生存し継代された。LAPC-4異種移植片モデルシステムは、アンドロゲン依存性からアンドロゲン非依存性への移行を模倣する能力を有する(Kleinら、1997、前掲)。LAPC-4腫瘍は、雄のマウスにおいて去勢後退行するが、2〜3ヶ月後にはアンドロゲン非依存性腫瘍として再発する。アンドロゲン依存性(AD)およびアンドロゲン非依存性(AI)の両方のLAPC-4異種移植片腫瘍が、同レベルの前立腺特異的マーカーPSA、PSMA(前立腺特異膜抗原)およびPSCA(前立腺幹細胞抗原)を発現しており、このことは、LAPC-4異種移植片のADおよびAI変種由来のcDNAの発現量差の分析を用いて同定された。
Lalaniら、Cancer Metastasis Rev.、16:29-66(1997) Gaoら、Prostate、31:264-281(1997) CuppおよびOsterling、Mayo Clin Proc、68:297-306(1993) Israeliら、Cancer Res、53:227-230(1993) Sodeeら、Clin Nuc Med、21:759-766(1996) Reiterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95:1735-1740(1998) Horoszewiczら、Cancer Res.、43:1809(1983) Pretlowら、1991、Cancer Res.、51:3814 van Weerdenら、Am. J. Pathol.、149:1055(1996) Kleinら、Nature Med.、3:402(1997) Kaighnら、Invest. Urol.、17:16-23(1979) Gleaveら、Cancer Res.、52:1598-1605(1992)
発明の概要
本発明は、20P1F12/TMPRSS2と称され本明細書において詳しく説明されている新規の前立腺特異的なアンドロゲンで調節された細胞表面セリンプロテアーゼに由来するかまたはこれを基にした、前立腺癌および結腸癌の診断および治療のための方法および組成物に関する。20P1F12/TMPRSS2遺伝子(本明細書では20P1F12-GTC1とも称す)の全コード配列を含む完全長cDNAを示す(図1)。このcDNAは、最近公表されたTMPRSS2(Paoloni-Glacobinoら、Genomics、44:309-320(1997))と高度に関連しているが、構造的には異なるタンパク質をコードしている。さらにこの20P1F12/TMPRSS2遺伝子は、TMPRSS2の発現プロフィールとは非常に異なる発現パターンを示す。
より詳細に述べると、本発明は、特に単離された形の20P1F12/TMPRSS2遺伝子、mRNA、および/またはコード配列の全てまたは一部に相当するまたはこれと相補的なポリヌクレオチドを提供し、これは20P1F12/TMPRSS2タンパク質およびその断片、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、および関連した分子、20P1F12/TMPRSS2遺伝子もしくはmRNA配列またはその部分に相補的なポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、ならびに20P1F12/TMPRSS2遺伝子、mRNA、または20P1F12/TMPRSS2をコードしているポリヌクレオチドにハイブリダイズしているポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含む。さらに20P1F12/TMPRSS2をコードしているcDNAおよび遺伝子の単離手段も提供される。20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドを含む組換えDNA分子、このような分子で形質転換または形質導入された細胞、ならびに20P1F12/TMPRSS2遺伝子産物発現のための宿主−ベクターシステムも提供されている。さらに本発明は、20P1F12/TMPRSS2タンパク質およびそのポリペプチド断片も提供している。
様々な生体試料中の20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドおよびタンパク質の存在を検出する方法、さらには20P1F12/TMPRSS2を発現している細胞を同定する方法を提供する。前立腺癌および結腸癌の管理のための診断造影法も提供する。本発明はさらに、特に抗体療法および組成物、癌ワクチンおよび小分子(small molecule)療法を含む、前立腺癌治療のための様々な治療用組成物および戦略を提供する。
本発明は、20P1F12/TMPRSS2タンパク質およびそのポリペプチド断片に結合する抗体を提供し、これはポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、マウスまたは他の哺乳類の抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および完全なヒト抗体、ならびに検出マーカーまたは毒素または治療組成物で標識された抗体を含む。20P1F12/TMPRSS2と特異的に反応するいくつかのモノクローナル抗体も、本明細書に記されている。これらおよび他の20P1F12/TMPRSS2抗体は、前立腺および結腸の癌腫およびそれらの転移を検出し、局在化しかつ特徴付ける分子診断アッセイ法および診断造影法において有用である。癌ワクチンも提供する。
詳細な説明
本発明は、20P1F12/TMPRSS2遺伝子、20P1F12/TMPRSS2遺伝子でコードされたタンパク質およびその断片に対応する単離されたポリヌクレオチド、ならびに20P1F12/TMPRSS2タンパク質を特異的に認識しかつ結合することが可能な抗体を利用する、前立腺癌の診断および治療のための方法および組成物に関する。20P1F12/TMPRSS2遺伝子は、TMPRSS2と記される(Paoloni-Giacobinoら、Genomics、44:309-320(1997)セリンプロテアーゼドメイン、スカベンジャー受容体システインリッチドメイン、LDL受容体クラスAドメイン、および推定される膜貫通ドメインを含む推定492個のアミノ酸多量体タンパク質をコードしている。Paoloni-Giacobinoらは、TMPRSS2遺伝子が、小腸において強力に発現され、かつ他のいくつかの組織においては単に弱く発現され、かつTMPRSS2遺伝子は染色体21番に位置付けられることを発見した。TMPRSS2の生理的役割は不明である。本出願者らは、20P1F12/TMPRSS2遺伝子の全コード領域を含む完全長のcDNAをクローニングしたが、これは公表されたTMPRSS2配列とは異なるいくつかのヌクレオチド配列を含んでいる。これらの配列の5つの違いにより、アミノ酸に差異が生じる。これらの変化の性質および意義は現時点では不明である。加えて本出願者らの新規20P1F12/TMPRSS2は、先に報告されたTMPRSS2に関する公知のものと比べると、完全に異なる発現パターンを有している。
20P1F12/TMPRSS2は前立腺に特異的なプロテアーゼであるので、これは前立腺癌の発症および/または進行、特に転移性疾患の発症に直接機能することが可能である。これに関して、プロテアーゼは、癌細胞の浸潤および転移に関連していることがわかっている(Henrietら、APMIS、107(1):111-9(1999);Rochefortら、APMIS、107(1):86-95(1999);Webberら、Clin Cancer Res、1(1O):1089-94(1995);Duffy、Clin Cancer Res、2(4):613-8(1996);WebberおよびWaghray、Clin Cancer Res、1(7):755-61(1995))。例えば、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(u-PA)、カテプシンDおよびPSAは、前立腺癌細胞の転移能に寄与していると考えられている。前立腺癌、特に転移期の癌における、20P1F12/TMPRSS2機能に直接関連する可能性は、実施例5に示したように評価することができる。
興味深いことに、20P1F12/TMPRSS2およびTMPRSS2の一次構造は、タンパク質−タンパク質相互作用ドメインおよび細胞外プロテアーゼドメインを含んでいる。20P1F12/TMPRSS2およびTMPRSS2の機能は不明である。20P1F12/TMPRSS2およびTMPRSS2の機能は、そのSRCRおよび/またはLDLAドメインを介しての細胞外環境における基質タンパク質への結合に関連していると考えられる。SRCRドメインを示しているタンパク質の例には以下のものが含まれる:CD6、ALCAM(活性化された白血球細胞接着分子)に結合しかつ胸腺細胞−胸腺上皮細胞結合を媒介する接着分子(Whitneyら、J Biol Chem、270:18187(1995));B細胞上のCD72に結合しかつT細胞-B細胞連絡(communication)に関連し得るT細胞タンパク質であるCD5(Ly-l)(Luoら、J Immunol、148:1630(1992));クリングル様構造および3種のスカベンジャー受容体システイン−リッチなモチーフを持つ、脳特異的セリンプロテアーゼである、BSSP-3(Yamamuraら、Biochem Biophys Res Commun、239:386(1997))。
20P1F12/TMPRSS2のプロテアーゼドメインは、肝臓において高度に発現されかつ卵巣癌においてアップレギュレーションされる膜貫通セリンプロテアーゼであるヘプシン(hepsin)のプロテアーゼドメイン(TMPRSS1)とほとんど相同である(Leyusら、Biochemistry、27:1067-74(1988);Tanimotoら、Cancer Res.、57:2884-2887(1997))。
本発明は、サプレッション・サブトラクション・ハイブリダイゼーション(Suppression Subtraction Hybridization)クローニングによる20P1F12/TMPRSS2遺伝子に対応するcDNA断片の単離物を一部基にし、かつ実施例に示された詳細な分子および生化学特性試験を基にしている。最初に単離されたcDNA断片である、クローン20P1F12は、最近明らかにされたTMPRSS2をコードしている完全長のcDNAの3'未翻訳配列の重複部分と同一であることが示された。その後20P1F12に対応する遺伝子を特異的に増幅するように設計されたプライマーを用いて、前立腺癌異種移植片、正常な前立腺、および他の様々な正常組織における20P1F12/TMPRSS2発現を特徴づけた。20P1F12/TMPRSS2遺伝子の全コード配列を含む完全長のcDNAが単離され、かつ配列決定され、これは本明細書において提供されている。
新規20P1F12/TMPRSS2遺伝子(本明細書においては20P1F12-GTC1とも称す)のヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列を図1に示した。20P1F12-GTC1/TMPRSS2遺伝子にコードされるアミノ酸配列には、先に報告されたTMPRSS2の配列と比べて有意差がある(アミノ酸のアラインメントは図3を参照のこと)。例えば、4種のアミノ酸の変化はプロテアーゼドメインにあり、その中の3種は非保存的アミノ酸変化であり、かつこれはプロテアーゼ機能および/または特異性に影響し得る。本出願者らの新規20P1F12/TMPRSS2タンパク質は、広範囲に特徴づけられており、本明細書の実施例にさらに説明されている。20P1F12/TMPRSS2タンパク質は、細胞外C-末端プロテアーゼドメインを伴うグリコシル化されたII型膜貫通タンパク質である。20P1F12/TMPRSS2遺伝子はアンドロゲンで調節される。20P1F12/TMPRSS2タンパク質は細胞表面に発現される。正常組織における20P1F12/TMPRSS2遺伝子の発現は、前立腺特異性である。20P1F12/TMPRSS2の発現は、さらに前立腺癌においても認められ、進行したおよび転移性疾患において高い発現レベルを示す。加えて20P1F12は、結腸癌において過剰発現され、かつ他の癌においても発現されるように思われる。
本出願者らの20P1F12-GTC1/TMPRSS2遺伝子(図1)と先に報告された配列(図2)の間の構造の差に加え、本出願者らの発現分析の結果は、Paoloni-Giacobinoらが報告したものとは対照的である。特に本出願者らのRT-PCRによる16種の正常組織における20P1F12/TMPRSS2遺伝子発現の分析は、前立腺において最高レベルで発現し、結腸、膵臓、腎臓、肝臓および肺において実質的に低いレベルで検出され、かつ小腸において発現が検出されないことを示している(図5、パネルBおよびC)。同様の結果がノーザンブロット分析において得られるが、ノーザンブロットによる前立腺において検出された発現レベルは、非常に低レベルの発現のみが検出されるこれらの他の組織に比べ非常に高い(図6、パネルAおよびB)。
発現分析も、試験した全ての前立腺癌異種移植片において20P1F12/TMPRSS2の高レベルの発現を示し、正常な前立腺においてほぼ同じレベルを示す(図5、パネルA)。ノーザンブロット分析は同様の結果を示し、LAPC-9異種移植片においてLAPC-4異種移植片および正常な前立腺に比べ若干低いレベルの発現が示され;発現は、分析された前立腺癌細胞株の一部においても検出される(図6、パネルC)。20P1F12/TMPRSS2遺伝子も、多くの前立腺癌細胞株において発現される(図7)。これらの結果は、20P1F12/TMPRSS2遺伝子は、主に前立腺癌の発症および/または進行に関連し得る前立腺特異性遺伝子であることを示している。加えて、20P1F12/TMPRSS2の高レベルの発現が、多くの結腸癌腫細胞株においてノーザンブロットにより検出された(図6、パネルC;図7)。結腸癌における20P1F12/TMPRSS2の発現は、結腸癌の検出、診断、予後判定および/または治療のための分子的基礎を提供すると考えられる。
従って本発明は、図1に示されたヌクレオチド配列およびコードされたアミノ酸配列を有する、独自かつ有用な20P1F12/TMPRSS2遺伝子(およびタンパク質)を提供する。本明細書に明らかにした20P1F12/TMPRSS2 cDNAの全てまたは一部に対応するヌクレオチドプローブ(図1および4)を提供し、かつこれを使用して、20P1F12/TMPRSS2遺伝子配列の全てまたは一部をコードしている他のcDNAを単離または同定することができる。本発明はさらに、20P1F12/TMPRSS2遺伝子またはそのRNA転写物を特異的に増幅することが可能なプライマーを提供した。本発明はさらに、20P1F12/TMPRSS2遺伝子産物(複数)のコード配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。このようなポリヌクレオチドを使用し、多くの更なる用途を有する20P1F12/TMPRSS2がコードしたタンパク質およびペプチドを発現することができる。20P1F12/TMPRSS2を発現している前立腺癌細胞および他の細胞を検出するため、腫瘍ワクチンの作製のために、ならびに前立腺癌の分子診断および予後判定アッセイ法において、さらに20P1F12/TMPRSS2遺伝子プローブおよびプライマーを用いて、様々な生体試料中の20P1F12/TMPRSS2 mRNAの有無を検出することもできる。20P1F12/TMPRSS2遺伝子に対応するかまたは相補的なポリヌクレオチドは、例えば20P1F12/TMPRSS2活性の変調または阻害のような、前立腺癌の治療法において有用である。
より詳細に述べると、本発明の実践において有用な20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドは、図1)に示されたヒト20P1F12/TMPRSS2のヌクレオチド配列(配列番号:XXもしくは図2に示された先に報告されたTMPRSS2のヌクレオチド配列(配列番号:XX)、前述のいずれかと相補的な配列を有するポリヌクレオチド、または前述のいずれかのポリヌクレオチド断片を含むことができる。別の態様は、図1に示された20P1F12/TMPRSS2タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:XX)、その相補配列をコードしているポリヌクレオチド、またはそれらのポリヌクレオチド断片を含む。 別の態様は、図1に示された20P1F12/TMPRSS2 cDNA(配列番号:XX)とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチド、またはそれらのポリヌクレオチド断片を含む。
本発明のこの局面の範囲に含まれるものは、天然起源または合成のいずれかの、ゲノムDNA、cDNA、リボザイム、およびアンチセンス分子、さらには別の骨格を基にしたまたは別の塩基を含む核酸分子がある。例えばアンチセンス分子は、RNAまたは他の分子であることができ、これは塩基対に依存した方式でDNAまたはRNAに特異的に結合する、ペプチド核酸(PNA)またはホスホロチオエート誘導体のような非核酸分子を含む。当業者は、20PIF12/TMPRSS2ポリヌクレオチドおよび本明細書に記されたポリヌクレオチド配列を用い、こうした種類の核酸分子を容易に得ることができると考えられる。
本発明のこの局面の別の特定の態様は、本発明のポリヌクレオチドまたはその特定部分の特異的増幅を可能にするプライマーおよびプライマー対、ならびに本発明の核酸分子またはそのいずれかの部分に選択的または特異的にハイブリダイズするプローブを含む。プローブは、例えば放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素のような検出マーカーで標識することができる。このようなプローブおよびプライマーは、試料中の20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドの存在を検出するため、および20P1F12/TMPRSS2タンパク質を発現している細胞を検出する手段として使用することができる。このようなプローブの例は、図1に示されたヒト20P1F12/TMPRSS2 cDNA配列(配列番号:XX)の全てまたは一部を含むポリペプチドである。20P1F12/TMPRSS2 mRNAを特異的に増幅することが可能なプライマー対の例は、さらに下記実施例において説明される。当業者に理解されるように、非常に多くの様々なプライマーおよびプローブを、本明細書に提供された配列を基に調製し、かつ20P1F12/TMPRSS2 mRNAを効果的に増幅および/または検出するために使用することができる。
本発明の20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドは、様々な目的のために有用であり、これは20P1F12/TMPRSS2遺伝子、mRNAまたはその断片の増幅および/または検出のためのプローブおよびプライマーとして;前立腺癌および結腸癌の診断および/または予後判定のための試薬として;20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドの発現の検出が可能なコード配列として;20P1F12/TMPRSS2遺伝子の発現および/または20P1F12/TMPRSS2転写物の翻訳を変調または阻害する道具として;および、治療薬としてのこれらの使用を含むが、これらに限定されるものではない。
本発明はさらに、例えば抗体の作製または癌ワクチンとしての用途のために使用することができる20P1F12/TMPRSS2タンパク質およびポリペプチドも提供する。20P1F12/TMPRSS2タンパク質またはポリペプチドに特異的に結合しかつ同定することが可能な抗体を用いて、20P1F12/TMPRSS2の発現を検出し、その細胞内での位置を決定し、前立腺癌細胞および前立腺腫瘍を検出および造影し、かつ20P1F12/TMPRSS2の生体活性を変調または阻害することができる。さらに抗体は、以下に説明するように治療のために使用することができる。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の作製法は当技術分野において周知である。
本発明はさらに、20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドを含む組換えDNAまたはRNA分子を提供し、これはファージ、プラスミド、ファージミド、コスミド、YAC、BAC、さらには当技術分野において周知の様々なウイルスおよび非ウイルスのベクター、ならびにこのような組換えDNAまたはRNA分子で形質転換またはトランスフェクションされた細胞を含むが、これらに限定されるものではない。本明細書において使用される組換えDNAまたはRNA分子は、インビトロにおける分子操作を受けたDNAまたはRNA分子である。このような分子の作製法は周知である(例えばSambrookら、1989、前掲を参照のこと)。
本発明はさらに、適当な原核または真核宿主細胞中に20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドを有する組換えDNA分子を含む宿主-ベクターシステムを提供する。適当な真核宿主細胞の例は、酵母細胞、植物細胞、または動物細胞、例えば哺乳類細胞または昆虫細胞である(例えば、Sf9細胞のようなバキュロウイルス感染細胞)。適当な哺乳類細胞の例は、様々な前立腺癌細胞株、例えばLnCaP、PC-3、DU145、LAPC-4、TsuPrl、他のトランスフェクション可能なまたは形質導入可能な前立腺癌細胞株、さらには日常的に組換えタンパク質の発現に使用される多くの哺乳類細胞(例えば、COS、CHO、293、293T細胞)である。より詳細に述べると、20P1F12/TMPRSS2のコード配列を含むポリヌクレオチドを使用し、当技術分野において日常的に使用されかつ広く知られているいくつかの宿主−ベクターシステムを用いて20P1F12/TMPRSS2タンパク質またはその断片を作製することができる。
20P1F12/TMPRSS2タンパク質またはその断片の発現に適している広範な宿主−ベクターシステムについては、例えばSambrookら、1989、前掲(「分子生物学最新プロトコール」、1995、前掲)を参照のこと。哺乳類の発現に好ましいベクターは、pcDNA 3.1 myc-His-タグ(インビトロゲン社)およびレトロウイルスベクターpSRαtkneo(Mullerら、MCB、11:1785(1991))を含むが、これらに限定されるものではない。これらの発現ベクターを用いて、20P1F12/TMPRSS2は、例えば3T3、293、293TPC-3、LNCaPおよびTsuPr1を含む、いくつかの前立腺および前立腺以外の癌細胞株で発現されることが好ましい。本発明の宿主−ベクターシステムは、20P1F12/TMPRSS2タンパク質またはその断片を作製するために有用である。このような宿主−ベクターシステムを用いて、20P1F12/TMPRSS2および20P1F12/TMPRSS2変異の機能的特性を検証することができる。
20P1F12/TMPRSS2遺伝子またはその断片によってコードされたタンパク質は、様々な用途を有し、これは抗体の作製、ならびに20P1F12/TMPRSS2遺伝子産物に結合するリガンドおよび他の物質および細胞構築物の同定法を含むが、これらに限定されるものではない。このようなタンパク質は、さらに癌ワクチンとして使用することもできる。20P1F12/TMPRSS2タンパク質またはその断片に対する抗体は、診断および予後判定アッセイ法、造影法(特に癌造影を含む)、および20P1F12/TMPRSS2タンパク質を発現することを特徴とするヒト癌、例えば前立腺癌および結腸癌の管理における治療法において有用である。20P1F12/TMPRSS2タンパク質の検出に有用な様々な免疫アッセイ法が考案され、これはラジオイムノアッセイ法、固相酵素免疫検定法(ELISA)、蛍光固相酵素免疫検定法(ELIFA)、免疫細胞化学的方法などを含むが、これらに限定されるものではない。このような抗体は標識することができ、かつ前立腺細胞を検出することが可能な免疫造影剤として使用することができる(例えば、ラジオシンチグラフィー造影法において)。
特定の態様において、ヒト20P1F12/TMPRSS2のアミノ酸配列を有する新規20P1F12/TMPRSS2タンパク質を図1に示した(配列番号:XX)。20P1F12/TMPRSS2の全部または一部と異種ポリペプチドを結合する融合タンパク質も考察されている。本発明の20P1F12/TMPRSS2タンパク質は、多くの形、好ましくは単離された形で具体化することができる。本明細書において用いられるように、タンパク質は、生理的、力学的または化学的方法を使い、20P1F12/TMPRSS2タンパク質が通常結合している細胞構築物からこのタンパク質が取り除かれた場合に、「単離された」と称する。当業者は、単離された20P1F12/TMPRSS2タンパク質を得るために標準の精製法を容易に使用することができる。精製された20P1F12/TMPRSS2タンパク質分子は、20P1F12/TMPRSS2の抗体または他のリガンドへの結合を損なうような他のタンパク質または分子を実質的に含まない。単離および精製の性質および程度は、目的とする用途に応じて決まる。20P1F12/TMPRSS2タンパク質の態様は、精製された20P1F12/TMPRSS2タンパク質および機能的可溶性20P1F12/TMPRSS2タンパク質を含む。ある形において、このような機能的可溶性20P1F12/TMPRSS2タンパク質またはその断片は、抗体または他のリガンドに結合する能力を保持しつづけている。
組換え法は、20P1F12/TMPRSS2タンパク質をコードしている核酸分子を作製するために使用することができる。これに関して、本明細書に記されている20P1F12/TMPRSS2をコードしている核酸分子は、20P1F12/TMPRSS2タンパク質の限定された断片を作製する手段を提供する。このような20P1F12/TMPRSS2ポリペプチドは、ドメインに特異的な抗体(例えば20P1F12/TMPRSS2タンパク質の細胞外エピトープを認識する抗体)の作製、特定の20P1F12/TMPRSS2ドメインに結合する物質または細胞因子の同定、および癌ワクチンを含むがこれに限定されない様々な治療上の状況において特に有用である。特に興味深い構造を有する20P1F12/TMPRSS2ポリペプチドは、当技術分野において周知のさまざまな分析法、例えばチョウ・ファスマン法、Garnler-Robson、Kyte-Doolittle、Eisenberg、Karplus-SchultzもしくはJameson-Woif分析法、または免疫原性を基にした方法などを用いて予測および/または同定することができる。
本発明の別の局面は、20P1F12/TMPRSS2タンパク質およびそのポリペプチド断片に免疫特異的に結合する抗体を提供する。最も好ましい抗体は、20P1F12/TMPRSS2タンパク質に選択的に結合し、かつ非−20P1F12/TMPRSS2タンパク質およびポリペプチドには結合しない(または弱く結合する)。特に考察された抗-20P1F12/TMPRSS2抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、さらには抗原結合ドメインを含む断片、および/またはこれらの抗体の1個以上の相補性決定領域を含む。本明細書において使用される抗体断片とは、その標的、すなわち抗原結合領域に結合する免疫グロブリン分子の様々な領域の少なくとも一部と定義される。
いくつかの用途において、特定の構造ドメイン内において、特定の20P1F12/TMPRSS2タンパク質および/またはエピトープと特異的に反応する抗体を作製することが望ましい。例えば癌の診断造影目的で有用な好ましい抗体は、癌細胞が発現された場合に、20P1F12/TMPRSS2タンパク質の細胞外領域においてエピトープと反応するものである。このような抗体は、20P1F12/TMPRSS2タンパク質を用い、20P1F12/TMPRSS2の予想される細胞外または他のドメインに由来するペプチドを用い作製することができ、かつ免疫原として使用した。
本発明の20P1F12/TMPRSS2抗体は、前立腺癌および結腸癌の診断および予後判定アッセイ法、造影法、および治療方針決定において特に有用である。本発明は、20P1F12/TMPRSS2の検出および定量に有用な様々な免疫アッセイ法を提供する。このようなアッセイ法は、一般に20P1F12/TMPRSS2の認識および結合が可能な1種以上の20P1F12/TMPRSS2抗体を含み、かつ当技術分野において周知の様々な免疫学的アッセイ法方式において実行することができ、これはラジオイムノアッセイ法、固相酵素免疫検定法(ELISA)、蛍光固相酵素免疫検定法(ELIFA)などを含むが、これらに限定されるものではない。加えて、前立腺癌を検出することが可能な免疫学的造影法も、本発明において提供されており、これは標識された20P1F12/TMPRSS2抗体を用いるラジオシンチグラフィー造影法を含むが、これに限定されるものではない。このようなアッセイ法は、臨床において、前立腺癌、特に進行した前立腺癌の検出、経過観察および予後判定で有用である。
20P1F12/TMPRSS2抗体は、20P1F12/TMPRSS2タンパク質およびポリペプチドの精製法、ならびに20P1F12/TMPRSS2相同体および関連分子の単離法に用いることもできる。例えばある態様において、20P1F12/TMPRSS2タンパク質の精製法は、固相マトリックスに結合している20P1F12/TMPRSS2抗体を、20P1F12/TMPRSS2を含有する溶解液または他の溶液を用いて、20P1F12/TMPRSS2抗体が20P1F12/TMPRSS2へ結合可能な条件下でインキュベーションする段階;不純物を取り除くため固相マトリックスを洗浄する段階;および結合した抗体から20P1F12/TMPRSS2を溶離する段階を含む。他の本発明の20P1F12/TMPRSS2抗体の使用は、20P1F12/TMPRSS2タンパク質を模倣する抗イディオタイプ抗体の作製を含む。
20P1F12/TMPRSS2抗体は、例えば20P1F12/TMPRSS2タンパク質の生体活性の変調または阻害、もしくは20P1F12/TMPRSS2タンパク質を発現している前立腺癌細胞の標的化および破壊により、治療のために使用することもできる。前立腺癌および結腸癌の抗体療法は、以下にさらに詳細に説明されている。
抗体の様々な調製法は当技術分野において周知である。例えば抗体は、単離されたまたは免疫複合化された形の20P1F12/TMPRSS2タンパク質、ペプチド、または断片を用い、適当な哺乳類宿主において免疫処置することによって調製することができる(「抗体:実験マニュアル」、CSH Press、HarlowおよびLane編集(1988);Harlow、「抗体」、Cold Spring Harbor Press、NY(1989))。さらに20P1F12/TMPRSS2の融合タンパク質、例えば20P1F12/TMPRSS2 GST-融合タンパク質も使用することができる。特定の態様において、図1のアミノ酸配列のオープンリーティングフレームを全てまたはほとんど含むGST融合タンパク質を作製し、かつ免疫原として使用し適当な抗体を作製することができる。実施例5に示したように、このようなGST融合物を用いて、20P1F12/TMPRSS2と免疫特異的に反応するいくつかのモノクローナル抗体を作製することができる。20P1F12/TMPRSS2を発現または過剰発現している細胞も、免疫処置において使用することができる。同様に、20P1F12/TMPRSS2を発現するように操作されたいずれかの細胞を使用することができる。この方策は、内因性20P1F12/TMPRSS2の増強された認識能を有するモノクローナル抗体の作製をもたらすことができる。20P1F12/TMPRSS2抗体を作製するための別の方策は、本明細書の実施例5に示されている。
図1に示した20P1F12/TMPRSS2のアミノ酸配列(配列番号:XX)は、抗体産生に関する20P1F12/TMPRSS2タンパク質の特異的領域の選択に使用することができる。例えば、20P1F12/TMPRSS2アミノ酸配列の疎水性および親水性の分析を用いて、20P1F12/TMPRSS2構造における親水性領域を同定することができる。免疫原性構造を示している20P1F12/TMPRSS2タンパク質の領域、さらには他の領域およびドメインは、チョウ・ファスマン法、Garnier-Robson、Kyte-Doolittle、Eisenberg、Karplus-SchultzまたはJameson-Wolf分析のような当技術分野において公知の様々な他の方法を用いて、容易に同定することができる。
免疫原として使用するためのタンパク質またはポリペプチドの調製法、およびタンパク質のBSA、KLHのような担体または他の担体タンパク質との免疫原性複合体の調製法は、当技術分野において周知である。いくつかの状況において、例えばカルボジイミド試薬を使用する直接的結合を用いることができ;別の状況においては、ピアース・ケミカル(Pierce Chemical)社(ロックフォード、IL)から供給されるような結合試薬が有効である。20P1F12/TMPRSS2免疫原の投与は、当技術分野において一般に理解されるように、概して適当な期間をかけた注射および適当なアジュバントの使用により行われる。免疫処置スケジュールの期間に、抗体の力価決定を、抗体形成の妥当性を決定するために行うことができる。
抗-20P1F12/TMPRSS2モノクローナル抗体が好ましく、かつこれは当技術分野において周知の様々な手段により作製することができる。例えば、所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株は、リンパ球または脾細胞の不死化に作用するような、一般に公知のKohlerおよびMilsteinの常法または変法を用いて調製することができる。所望の抗体を分泌している不死化された細胞株は、抗原が20P1F12/TMPRSS2タンパク質または20P1F12/TMPRSS2断片であるような免疫アッセイ法によりスクリーニングされる。所望の抗体を分泌している適当な不死化培養細胞が同定されたら、この細胞を増殖させ、抗体をインビトロ培養物または腹水液のいずれかから生産させる。
これらの抗体または断片も、現在の技術を用い組換え手段により作製することができる。20P1F12/TMPRSS2タンパク質の所望の領域に特異的に結合する領域は、複数の種を起源とするキメラまたはCDR移植された抗体において生産することができる。ヒト化されたまたはヒト20P1F12/TMPRSS2抗体も産生することができ好ましい。このようなヒト化抗体を作製する様々な方法は公知であり、キメラおよびCDR移植法を含み;完全なヒトモノクローナル抗体の作製法は、ファージ展示および導入法を含む(検証のために、Vaughanら、Nature Biotechnology、16:535-539(1998)を参照のこと)。
完全なヒト20P1F12/TMPRSS2モノクローナル抗体は、ラージヒトIg遺伝子のコンビナトリアルライブラリー(すなわちファージディスプレイ)を利用するクローン技術を用いて作製することができる(GriffithsおよびHoogenboom、「ヒトにおける予防および治療のための抗体分子のタンパク質操作」の「インビトロ免疫系の構築:ファージディスプレイライブラリーからのヒト抗体」、Clark, M.編集、Nottingham Academic、45-64頁(1993);BurtonおよびBarbas、同上の「コンビナトリアルライブラリーからのヒト抗体」、65-82頁)。同じく、1997年12月3日に公開された、JakobovitsらのPCT特許出願国際公開公報第98/24893号に開示された方法を用いて、完全なヒト20P1F12/TMPRSS2モノクローナル抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されたトランスジェニックマウスを用いて作製することができる(同じくKucherlapatiおよびJakobovits、Exp. Opin. Invest. Drugs、7(4):607-614(1998)を参照のこと)。この方法は、ファージディスプレイ技術で必要なインビトロ操作を避け、高親和性の真のヒト抗体を効率的に生産する。
20P1F12/TMPRSS2抗体の20P1F12/TMPRSS2タンパク質との反応性は、適宜20P1F12/TMPRSS2タンパク質、ペプチド、20P1F12/TMPRSS2-発現細胞またはその抽出物を用いる、ウェスタンブロット、免疫沈降法、ELISA、およびFACS分析を含む多くの周知の方法で確立することができる。
本発明の20P1F12/TMPRSS2抗体またはそれらの断片を、検出マーカーで標識するか、または細胞傷害性物質もしくは治療薬などの第二分子と複合し、かつ20P1F12/TMPRSS2陽性細胞を標的化するために使用することができる(Vitetta, E.S.ら、1993年、Immunotoxin therapy、DeVita, Jr., VT.ら編集、Cancer: Principles and Practice of Oncology、第4版、J.B. Lippincoit Co.、フィラデルフィア、2624-2636頁)。適当な検出マーカーは、放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素を含むが、これらに限定されるものではない。
20P1F12/TMPRSS2タンパク質は、前立腺癌および結腸癌の浸潤および転移に関与していると思われる細胞表面セリンプロテアーゼである。従って、20P1F12/TMPRSS2は、治療的介入にとって理想的な標的である。その細胞外プロテアーゼドメインは、薬物の標的となる可能性があり、他方細胞外ドメイン全体は、治療用の抗体の標的となる可能性がある。その結果、本発明は、前立腺癌および結腸癌の治療のための様々な免疫療法の組成物および方法であって、20P1F12/TMPRSS2および抗-20P1F12/TMPRSS2抗体に対応するポリヌクレオチドおよびポリペプチドを使用する、抗体療法、インビボワクチン、およびエクスビボ免疫療法を含むものを提供する。
ある方法において、抗-20P1F12/TMPRSS2抗体を用いて、前立腺癌および結腸癌を治療することができる。例えば、結合していない抗-20P1F12/TMPRSS2抗体を患者に導入し、その結果この抗体は、前立腺または結腸の癌細胞上の20P1F12/TMPRSS2に結合し、かつこの細胞および腫瘍の破壊を媒介することができる。治療の作用機序は、補体が媒介した細胞溶解、抗体依存性細胞傷害、20P1F12/TMPRSS2の生理的機能の変化、および/またはリガンド結合またはシグナル伝達経路の阻害である。リシンのような毒物または治療薬に結合された抗-20P1F12/TMPRSS2抗体を使用し、毒物または治療薬を20P1F12/TMPRSS2を生じている前立腺腫瘍細胞に直接送達し、かつこれにより腫瘍を破壊することもできる。
抗-20P1F12/TMPRSS2抗体を使用する前立腺癌の免疫療法は、結腸癌(Arlenら、Crit Rev Immunol、18:133-138(1998))、多発性骨髄腫(Ozakiら、Blood、90:3179-3186(1997);Tsunenariら、Blood、90:2437-2444(1997))、胃癌(Kasprzykら、Cancer Res、52:2771-2776(1992))、B-細胞リンパ腫(Funakoshiら、J. Immunther Emphasis Tumor Immunol、19:93-101(1996))、白血病(Zhongら、Leuk Res、20:581-589(1996))、結腸直腸癌(Mounら、Cancer Res、54:6160-6168(1994);Veldersら、Cancer Res、55:4398-4403(1995))、および乳癌(Shepardら、J Clin Immunol、11:117-127(1991))を含むが、これに限定されるものではないような、他の種類の癌に関して成功のうちに使用されている様々な方法からもたらされた指示に従うことができる。
20P1F12/TMPRSS2抗体は、患者に導入し、その結果この抗体は癌細胞上の20P1F12/TMPRSS2に結合し、かつ細胞および腫瘍の破壊を媒介し、および/または、細胞または腫瘍の増殖を阻害することができる。このような抗体が治療作用を発揮する機序は、補体が媒介した細胞溶解、抗体依存性細胞傷害、20P1F12/TMPRSS2の生理的機能の変化、リガンド結合またはシグナル伝達経路の阻害、腫瘍細胞分化の変調、腫瘍の血管形成因子プロフィールの変更、および/またはアポトーシスの誘導を含むことができる。毒物または治療薬に複合した20P1F12/TMPRSS2抗体を用いて、毒物または治療薬を20P1F12/TMPRSS2を生じている腫瘍細胞に直接送達することもできる。
20P1F12/TMPRSS2抗体療法は前述の癌の全ての病期において有用であるが、抗体療法は、特に進行したまたは転移性の前立腺癌および結腸癌に有用である。特に、20P1F12/TMPRSS2遺伝子はアンドロゲンにより調節を受けないと考えられるため、抗-20P1F12/TMPRSS2抗体療法を用いて、アンドロゲン途絶療法を受けている患者を治療することができる。本発明の抗体療法と化学療法方式の併用は、化学療法による治療を受けていない患者にとって好ましい一方で、本発明の抗体療法による治療は、1種以上の化学療法を受けている患者にとって適応である。加えて、抗体療法はさらに、特に化学療法剤の毒性に対し非常に良好な忍容性を示さない患者において、併用化学療法の用量減量が可能である。
好ましくは腫瘍組織の免疫組織化学的評価、定量的20P1F12/TMPRSS2造影、または発現の存在および程度の信頼できる指標となりうる他の技術を用いて、20P1F12/TMPRSS2の存在およびレベルを評価することが、患者にとって望ましいことがある。腫瘍の生検または手術標本の免疫組織化学的分析は、この目的について好ましいものである。腫瘍組織の免疫組織化学的分析は、当技術分野において周知である。
前立腺およびその他の癌の治療において有用な抗-20P1F12/TMPRSS2モノクローナル抗体は、腫瘍に対して強力な免疫応答を開始することが可能なものおよび直接細胞傷害性であることが可能なものを含む。これに関して、抗-20P1F12/TMPRSS2 mAbは、補体媒介性または抗体依存性細胞傷害(ADCC)機序のいずれかによる腫瘍細胞の溶解を惹起し、これらは両方共、エフェクター細胞のFc受容体部位または補体タンパク質との相互作用のための免疫グロブリン分子の完全なFc部が必要である。加えて、腫瘍増殖に直接生物学的に作用する抗-20P1F12/TMPRSS2 mAbも、本発明の実践において有用である。このような直接細胞傷害性のmAbが作用するような可能性のある機序は、細胞増殖の阻害、細胞分化の変調、腫瘍血管形成因子プロフィールの変更、およびアポトーシスの誘導を含む。特定の抗-2OP1F12/TMPRSS2 mAbが抗-腫瘍作用を発揮するような機序は、ADCCおよび補体媒介型細胞溶解、さらには当技術分野において一般に公知の増殖阻害、アポトーシスの変調および分化の阻害、および/または血管形成の阻害を決定するようにデザインされたいくつかのインビトロアッセイ法を用いて評価することができる。
特定の抗-20P1F12/TMPRSS2 mAb、または抗-20P1F12/TMPRSS2 mAbの組合せの抗-腫瘍活性は、適当な動物モデルを用いてインビボにおいて評価することができる。例えば、ヒト前立腺癌が移植されかつ継代された異種移植片組織が、例えばヌードまたはSCIDマウスなどの免疫寛容動物に導入されているような異種移植片の前立腺癌モデルが、前立腺癌に関して適しており、かつ説明されている(Kleinら、Nature Medicine、3:402-408(1997))。例えば、Sawyersらの1998年4月23日に出願されたPCT特許出願国際公開公報第98/16628号は、原発性腫瘍の発生、微小転移性、および病期後期における造骨細胞転移特性の形成の再現が可能なヒト前立腺癌の様々な異種移植片モデルを説明している。有効性は、腫瘍形成、腫瘍退行、転移などの阻害を用いて予想することができる。
マウスまたはその他のヒト以外のモノクローナル抗体、ヒト/マウスのキメラmAbの使用は、一部の患者において中等度から強度の免疫応答を誘発することがあることに注意しなければならない。最も重篤な場合、このような免疫応答は、免疫複合体の過度の形成をもたらし、これは腎不全を発症する可能性がある。従って、本発明の治療法の実践において使用される好ましいモノクローナル抗体は、標的20P1F12/TMPRSS2抗原に高親和性で特異的に結合するが、患者における抗原性は低いかまたは無いような、完全なヒト抗体またはヒト化抗体のいずれかである。
本発明の方法は、抗-2OP1F12/TMPRSS2 mAbの単独投与に加え、様々なmAbの併用投与、またはカクテル投与を意図している。このようなmAbカクテルは、これらが、様々なエピトープ特異性、様々なエフェクター機序を発揮するmAbを含むか、もしくは、直接細胞傷害性mAbを免疫エフェクター機能性に頼るmAbと組合わせるという限りで、ある種の利点がある。このようなmAbを併用すると、相乗的な治療効果を発揮することができる。加えて、抗-20P1F12/TMPRSS2 mAbの投与は、様々な化学療法剤、アンドロゲン-ブロッカー、および免疫変調剤(immune modulator)(例えばIL-2、GM-CSF)を含むがこれらに限定されない他の治療薬または放射線療法と併用することができる。抗-20P1F12/TMPRSS2 mAbは、「裸の」または複合化されていない形で投与することができ、もしくはこれらに結合した治療薬または毒物を有することができる。
本発明の方法の実践において使用される抗-20P1F12/TMPRSS2モノクローナル抗体は、所望の送達法に適した担体を含む薬学的組成物として処方することができる。適当な担体は、抗-20P1F12/TMFRSS2 mAbと組合わせた場合に、抗体の特異性および抗-腫瘍機能を保持し、かつ対象の免疫系と反応しないようないずれかの物質を含む。例えば、無菌のリン酸緩衝生理食塩水、静菌水などのような、多くの常用の薬学的担体のいずれかを含むが、これらに限定されるものではない。
抗-20P1F12/TMPRSS2抗体製剤は、抗体を腫瘍部位に送達することが可能ないずれかの経路で投与することができる。可能性のある有効な投与経路は、静脈内、経腹腔、筋肉内、腫瘍内、経皮などを含むが、これらに限定されるものではない。好ましい投与経路は、静脈内注射である。静脈内注射用の好ましい製剤は、抗-20P1F12/TMFRSS2 mAbを、保存剤添加の静菌水、無菌の保存剤無添加の水の溶液中に含むか、および/または注射用0.9%無菌塩化ナトリウム(USP)を含有するポリ塩化ビニルまたはポリエチレンバッグ中に希釈している。抗-20P1F12/TMPRSS2 mAb調製物は、凍結乾燥し、かつ好ましくは真空下で無菌粉末として保存することができ、かつ注射前に、例えばベンジルアルコール保存剤を含有する静菌水中、または無菌水中に再構成することができる。
一般に治療は、静脈内注射(IV)のような、許容できる投与経路による抗-20P1F12/TMPRSS2抗体調製物の、典型的には約0.1〜約10mg/体重kgの範囲の用量での反復投与に関する。10〜500mg mAb/週の範囲の用量が有効でありかつ忍容性が良好である。転移性乳癌の治療におけるHerceptin mAbを用いる臨床実験に基づき、抗-20P1F12/TMPRSS2 mAb調製物の初回負荷用量(initial loading dose)約4mg/患者体重kgのIV、それに続く毎週の用量約2mg/kg IVが、許容できる投与方式の代表的なものであり得る。好ましくはこの初回負荷用量は、90分間以上の点滴により投与される。初回用量に対する忍容性が良好であるならば、間欠的維持用量を、30分間以上の点滴により投与することができる。しかし、当業者には理解されるように、様々な要因が、特定の場合の理想的投与方式に影響を及ぼす。このような要因は、例えば使用した1個のmAbまたは複数のmAbの結合親和性および半減期、患者における20P1F12/TMPRSS2過剰発現の程度、20P1F12/TMPRSS2抗原の循環血流(circulating shed)の程度、所望の定常状態の抗体濃度レベル、治療頻度、および本発明の治療法と併用された化学療法剤の影響を含む。
最善には、患者は、最も有効な投与方式および関連因子の決定を補助するために、血清中の20P1F12/TMPRSS2抗原の循環血流のレベルについて評価されなければならない。このような評価は、治療を通じての目的をモニタリングするために使用することもでき、および他のパラメータ評価(前立腺癌療法における血清PSAレベルなど)を組合わせることにより治療の成功を測定するためにも有用であり得る。
本発明はさらに、20P1F12/TMPRSS2タンパク質またはその断片を含有する前立腺癌ワクチンを提供する。抗癌療法において使用するための液性および細胞性免疫成立のためのワクチンにおける腫瘍抗原の使用は、当技術分野において周知であり、ヒトPSMAおよび齧歯類PAP免疫原が、前立腺癌において使用されている(Hodgeら、 Int. J. Cancer、63:231-237(1995);Fangら、J. Immunol.、159:3113-3117(1997))。このような方法は、20P1F12/TMPRSS2タンパク質、その断片、または20P1F12/TMPRSS2をコードしている核酸分子、ならびに20P1F12/TMPRSS2免疫原を発現および適切に提示することが可能な組換えベクターを用いて、容易に実践することができる。
例えば、ウイルス遺伝子送達システムを用いて、20P1F12/TMPRSS2をコードしている核酸分子を送達することができる。本発明のこの局面の実践において使用することができる様々なウイルス遺伝子送達システムは、ワクシニア、ニワトリポックス、カナリヤポックス、アデノウイルス、インフルエンザ、ポリオウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、およびシンドビスウイルスを含むが、これらに限定されるものではない(Restifo、Curr. Opin. Immunol.、8:658-663(1996))。非ウイルス送達システムは、抗-腫瘍反応を誘導するために患者に導入された(例えば筋肉内)20P1F12/TMPRSS2タンパク質またはその断片をコードしている裸のDNAを用いることによっても使用することができる。ある態様において、完全長のヒト20P1F12/TMPRSS2 cDNAを使用することができる。別の態様において、特異性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のエピトープをコードしている20P1F12/TMPRSS2核酸分子を用いることができる。CTLエピトープは、特定のHLA対立遺伝子に最適に結合することが可能な20P1F12/TMPRSS2タンパク質中のペプチドを同定するために、特定のアルゴリズム(例えば、Epimer、ブラウン大学)を用いて決定することができる。
様々なエクスビボ戦略も使用することができる。ひとつの方法は、患者の免疫系に対し20P1F12/TMPRSS2抗原を提示するための樹状細胞の使用に関する。樹状細胞は、MHCクラスIおよびII、B7副刺激、およびIL-12を発現し、かつその結果高度に特定化された抗原提示細胞である。前立腺癌において、前立腺特異膜抗原(PSMA)ペプチドでパルスされた自家樹状細胞が、前立腺癌患者の免疫系を刺激するために臨床試験第I相において使用されている(Tjoaら、Prostate、28:65-69(1996):Murphyら、Prostate、29:371-380(1996))。樹状細胞を用いて、MHCクラスIおよびII分子に関連してT細胞に対し20P1F12/TMPRSS2ペプチドを提示する。ある態様において、自家樹状細胞は、MHC分子に結合することが可能な20P1F12/TMPRSS2ペプチドでパルスされる。別の態様において、樹状細胞は、完全な20P1F12/TMPRSS2タンパク質でパルスされる。さらに別の態様は、アデノウイルス(Arthurら、Cancer Gene Ther.、4:17-25(1997))、レトロウイルウス(Hendersonら、Cancer Res.、56:3763-3770(1996))、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルスのような、様々な当技術分野において公知の実行されるベクター、DNAトランスフェクション(Ribasら、Cancer Res.、57:2865-2869(1997))、および腫瘍-由来のRNAトランスフェクション(Ashleyら、J. Exp. Med.、186:1177-1182(1997))を用いた、樹状細胞における20P1F12/TMPRSS2遺伝子の過剰発現の操作に関連している。
抗-イディオタイプ抗-20P1F12/TMPRSS2抗体も、20P1F12/TMPRSS2タンパク質を発現している細胞に対する免疫応答を惹起するためのワクチンとして、抗-癌療法において使用することができる。具体的には、抗-イディオタイプ抗体の作製は当技術分野において周知であり、かつこれを、20P1F12/TMPRSS2タンパク質上のエピトープを模倣する抗-イディオタイプ抗-20P1F12/TMPRSS2抗体の作製に容易に適用することができる(例えばWagnerら、Hybridoma、16:33-40(1997);Foonら、J Clin Invest、96:334-342(1995);Herlynら、Cancer Immunol Immunother、43:65-76(1996)を参照のこと)。このような抗-イディオタイプ抗体は、腫瘍抗原に対して示された他の抗-イディオタイプ抗体で現在実施されるような抗-イディオタイプ療法に使用することができる。
遺伝子の免疫処置法を用いて、20P1F12/TMPRSS2を発現している癌細胞、特に結腸および前立腺の癌細胞に対して示された予防的または治療的液性および細胞性免疫応答を成立することができる。20P1F12/TMPRSS2タンパク質/免疫原をコードしているDNAおよび適当な調節配列を含む構築物は、個体の筋肉または皮膚に直接注射することができ、その結果筋肉または皮膚の細胞はこの構築物を取込み、コードされた20P1F12/TMPRSS2タンパク質/免疫原を発現する。この20P1F12/TMPRSS2タンパク質/免疫原は、細胞表面タンパク質として発現されるか、または分泌される。20P1F12/TMPRSS2タンパク質/免疫原の発現は、前立腺癌に対する、予防的または治療的液性および細胞性免疫原性を生じる。当技術分野において公知の様々な予防的または治療的遺伝子による免疫処置技術を使用することができる(検証のために、インターネットアドレスwww.genweb.comに公表された情報および参考文献を参照のこと)。
別の本発明の局面は、本明細書に記された2OP1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドおよび抗体を利用する、分子診断および診断造影法に関する。20P1F12/TMPRSS2の発現プロフィールおよび細胞表面局在は、これを、転移性疾患の可能性のある造影剤としている。20P1F12/TMPRSS2は、様々な前立腺癌異種移植片組織および細胞株において発現され、かつ一部の結腸癌細胞株においても発現されている。20P1F12/TMPRSS2発現の状況は、腫瘍局在化、進行した病期の易罹患性の予想、および/または腫瘍の攻撃性(aggressiveness)の測定に関する有用な情報を提供する。患者検体中の20P1F12/TMPRSS2の発現状況は、例えば以下により分析することができる:(i)免疫組織化学的分析、(ii)インサイチューハイブリダイゼーション、(iii)レーザー捕獲した微小剥離標本(laser capture micro-dissected sample)のRT-PCR分析、(iv)臨床検体および細胞株のウェスタンブロット分析、(v)組織アレイ分析、(vi)インビボ造影。20P1F12/TMPRSS2タンパク質の検出に有用な様々な免疫学的アッセイ法が考察されていて、限定はされないが、様々な種類のラジオイムノアッセイ法、固相酵素免疫検定法(ELISA)、蛍光固相酵素免疫検定法(ELIFA)、免疫細胞化学的方法などを含む。例として、20P1F12/TMPRSS2抗体を標識し、かつ前立腺癌および結腸癌細胞の検出が可能な免疫学的造影剤として使用する(例えばラジオシンチレーション造影法において)。ラジオシンチレーションのインビボ造影に関して、細胞外20P1F12/TMPRSS2エピトープと特異的に反応する放射性標識された20P1F12/TMPRSS2抗体が好ましい。
前立腺、前立腺癌または結腸癌の細胞を確定するためのアッセイ法は、血清、骨、前立腺、結腸および他の組織、尿、精液、細胞調製物などのような生体試料中の20P1F12/TMPRSS2遺伝子に対応するポリヌクレオチドの検出を含む。検出可能な20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドは、例えば20P1F12/TMPRSS2遺伝子またはその断片、20P1F12/TMPRSS2 mRNA、代替的スプライシング(alternative splice)変異体20P1F12/TMPRSS2 mRNA、および20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドを含む組換えDNAまたはRNA分子である。20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドの存在を増幅および/または検出する多くの方法は当技術分野において周知であり、かつ本発明のこの局面の実践において使用することができる。
ある態様において、生体試料中の20P1F12/TMPRSS2 mRNAの検出法は、少なくとも1種のプライマーを用いる逆転写による試料からのcDNAの作製;そのようにして作製されたcDNAの、そこで20P1F12/TMPRSS2 cDNAを増幅するためのセンスおよびアンチセンスプライマーとして20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドを使用する増幅;および、増幅された20P1F12/TMPRSS2 cDNAの存在の検出を含む。別の態様において、生体試料中の20P1F12/TMPRSS2遺伝子の検出法は、試料からのゲノムDNAの最初の単離;単離されたゲノムDNAの、そこで20P1F12/TMPRSS2遺伝子を増幅するためのセンスおよびアンチセンスプライマーとして20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドを使用する増幅;および、増幅された20P1F12/TMPRSS2遺伝子の存在の検出を含む。いくつかの適当なセンスおよびアンチセンスプローブの組合せを、20P1F12/TMPRSS2(図1;配列番号:XX)のために提供されたヌクレオチド配列からデザインすることができ、この目的のために使用することができる。
別の態様において、生体試料中の20P1F12/TMPRSS2タンパク質の存在の検出法は、試料と20P1F12/TMPRSS2抗体、その20P1F12/TMPRSS2−反応性フラグメント、または20P1F12/TMPRSS2抗体の抗原結合領域を含む組換えタンパク質との最初の接触;および、その後のそれへの試料中の20P1F12/TMPRSS2タンパク質の結合の検出を含む。
20P1F12/TMPRSS2を発現している細胞を同定する方法も提供される。ある態様において、20P1F12/TMPRSS2遺伝子を発現している細胞を同定するアッセイ法は、細胞中の20P1F12/TMPRSS2 mRNAの存在の検出を含む。細胞における特定のmRNAの検出法は周知であり、例えば、相補的DNAプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイ法(例えば標識した20P1F12/TMPRSS2リボプローブを用いるインサイチューハイブリダイゼーション、ノーザンブロットおよび関連技術)、および様々な核酸増幅アッセイ法(例えば20P1F12/TMPRSS2に特異的な相補的プライマーを用いるRT-PCR、および他の増幅型検出法、例えば分枝型DNA、SISBA、TMAなど)を含む。あるいは、20P1F12/TMPRSS2遺伝子を発現している細胞を同定するアッセイ法は、細胞中の20P1F12/TMPRSS2タンパク質の存在、または細胞による分泌の検出を含む。タンパク質を検出する様々な方法は当技術分野において周知であり、かつ20P1F12/TMPRSS2タンパク質および20P1F12/TMPRSS2発現細胞の検出に用いることができる。
個体における20P1F12/TMPRSS2発現パターンの状況の決定を、癌診断に使用し、かつ適当な治療の選択肢を決定する際に有用な予後情報を提供することができる。同様に、20P1F12/TMPRSS2の発現状況は、特定の病期の易罹病性、進行および/または腫瘍攻撃性の予測に有用な情報を提供することができる。従って本発明の別の局面は、20P1F12/TMPRSS2の発現状況を決定し、かつ20P1F12/TMPRSS2を発現する癌を診断する方法およびアッセイ法を提供する。
ある態様において、個体における癌の存在を決定するのに有用なアッセイ法は、被験細胞または組織試料中の20P1F12/TMPRSS2 mRNAまたはタンパク質発現の、対応する正常細胞または組織における発現レベルに対する有意な増加を検出することを含む。結腸試料中の20P1F12/TMPRSS2 mRNAの存在は、正常結腸は20P1F12/TMPRSS2を発現しないので、例えば、結腸癌の救急度、存在および/または重症度を示すことができる。関連した態様において、20P1F12/TMPRSS2の発現状況は、核酸レベルよりむしろ、タンパク質レベルで決定することができる。例えばこのような方法またはアッセイ法は、被験組織試料中の細胞によって発現された20P1F12/TMPRSS2タンパク質レベルの決定、およびそのように決定されたレベルの対応する正常試料中で発現された20P1F12/TMPRSS2レベルとの比較を含むと考えられる。20P1F12/TMPRSS2タンパク質の存在は、例えば、免疫組織化学的方法を用いて評価することができる。20P1F12/TMPRSS2タンパク質発現を検出することが可能な20P1F12/TMPRSS2抗体または結合パートナーを、この目的のために、当技術分野において周知の様々なアッセイ方式において使用することができる。
前立腺または結腸癌細胞の存在に関しては、好都合なことに末梢血を、そこでの20P1F12/TMPRSS2発現を検出するためのRT-PCRを用いてアッセイすることができる。RT-PCRで増幅可能な20P1F12/TMPRSS2 mRNAの存在は、これらの癌の1種の存在を示し得る。末梢血中の腫瘍細胞のためのRT-PCR検出アッセイ法を、現在多くのヒト固形腫瘍の診断および管理で使用することについて評価されつつある。前立腺癌の分野において、これらは、PSAおよびPSMを発現している細胞の検出に関するRT-PCRアッセイ法を含む(Verkaikら、Urol. Res.、25:373-384(1997);Ghosseinら、J. Cin. Oncol.、13:1195-2000(1995);Hestonら、Clin. Chem.、41:1687-1688(1995))。RT-PCRアッセイ法は、当技術分野において周知である。
別の方法において、最近説明された血中の癌腫細胞の検出および特徴づけのための感度の良いアッセイ法を使用することができる(Racilaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95:4589-4594(1998))。このアッセイ法は、多パラメーターのサイトフローメトリーによる免疫磁気的(immunomagnetic)増強および免疫組織化学的分析とを組合わせ、かつ血中癌細胞の検出に関して高感度であり、末梢血1ml中1個の上皮細胞の検出が可能であることが報告されている。
20P1F12/TMPRSS2 mRNAまたはタンパク質の発現の検出および定量法が本明細書に説明されており、かつこれは当技術分野において周知の標準の核酸およびタンパク質の検出および定量技術を使用している。20P1F12/TMPRSS2 mRNAの検出および定量のための標準法は、標識した20P1F12/TMPRSS2リボプローブを用いるインサイチューハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、および20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドプローブを用いる関連技術、20P1F12/TMPRSS2に特異的なプライマーを用いるRT-PCR分析、および他の増幅型検出法、例えば分枝型DNA、SISBA、TMAなどを含む。具体的な態様において、半定量的RT-PCRを、下記実施例に記されたような20P1F12/TMPRSS2 mRNAの発現を検出および定量するために使用することができる。20P1F12/TMPRSS2を増幅することが可能ないくつかのプライマーをこの目的のために使用することができ、これは本明細書に具体的に記された様々なプライマーセットを含むが、これらに限定されるものではない。タンパク質の検出および定量の標準法をこの目的のために使用することができる。具体的な態様において、20P1F12/TMPRSS2タンパク質と特異的に反応するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を、生検組織での免疫組織化学的アッセイ法において使用することができる。
本発明はさらに、先に説明されるかまたは示唆された診断および治療の用途のためのキットを提供する。このようなキットは、バイアル、試験管などのような1個以上の容器手段に密封されて受け取るように仕切られた運搬手段を備え、各容器手段は、本方法で使用される個別の要素のひとつを含んでいる。例えば容器手段のひとつは、検出可能なように標識されたまたは標識することができるプローブを含むことができる。このようなプローブは、20P1F12/TMPRSS2タンパク質または遺伝子/mRNAに特異的な、各々、抗体またはポリヌクレオチドであることができる。キットが標的核酸の検出に核酸ハイブリダイゼーションを使用する場合、このキットは、さらに、標的核酸配列の増幅のためのヌクレオチド(複数)を含む容器、および/または、例えばアビジンまたはストレプトアビジンのようなビオチン-結合タンパク質、酵素、蛍光、放射性ヌクレオチドによる標識のような、レポーター分子に結合したもののような、レポーター手段を含む容器を備えることができる。
実施例
実施例1:SSHハイブリダイゼーションクローニングによる20P1F12/TMPRSS2遺伝子に対応するcDNAの単離および発現分析
材料および方法
細胞株およびヒト組織:
本試験において使用した全てのヒト癌細胞株は、ATCCから入手した。全ての細胞株を、10%ウシ胎仔血清を含有するDMEM中で維持した。PrEC(原発性前立腺上皮細胞)を、クローンテック社から得、かつ増殖因子を補充したPrEBM培地(クローンテック社)中で増殖した。
全てのヒト前立腺癌異種移植片は、Charles Sawyers(UCLA)により最初に提供された(Kleinら、1997)。LAPC-4 ADおよびLAPC-9 ADの異種移植片を、常法により継代し、雄のレシピエントSCIDにおいて小さい組織チャンクとした。LAPC-4 AIおよびLAPC-9 AI異種移植片は、先に記したものに由来し(Kleinら、1997)、かつ去勢した雄または雌のSCIDマウスにおいて継代した。
RNAおよびタンパク質分析のためのヒト組織は、UCLA(ロスアンジェルス、CA)のHuman Tissue Resource Center(HTRC)およびクエールテック(QualTek)社(サンタバーバラ、CA)から得た。良性前立腺肥大の組織試料は、患者から得た。
RNAの単離:
腫瘍組織および細胞株を、10ml/組織gまたは10ml/108細胞を用いて、Trizol試薬(Life Technologies、ギブコBRL社)中でホモジナイズし、全RNAを単離した。ポリA RNAを、全RNAから、キアゲン社のOligotex mRNAミニおよびミディキットを用いて精製した。全RNAおよびmRNAを、分光光度測定(O.D. 260/280nm)により定量しかつゲル電気泳動により分析した。
オリゴヌクレオチド:
下記のHPLC精製したオリゴヌクレオチドを用いた。
Figure 2009148265
サプレッション・サブトラクション・ハイブリダイゼーション
サプレッション・サブトラクション・ハイブリダイゼーション(SSH)を用いて、良性前立腺肥大と比べて、アンドロゲン依存型前立腺癌においてアップレギュレーションされた遺伝子に対応するcDNAを同定した。
LAPC-4 AD異種移植片(テスター(tester))およびBPH組織(ドライバー(driver))に対応する二本鎖cDNAは、前述のように、異種移植片およびBPH組織から単離されたポリ(A)+ RNAの2μgから、クローンテック社のPCR-セレクトcDNAサブトラクションキットおよびプライマーとしてオリゴヌクレオチドRSACDN 1ngを用いて合成した。第一および第二鎖の合成は、キットのユーザー用マニュアルプロトコールの説明に従い行った(クローンテック社のプロトコールNo.PT1117-1、カタログ番号No.K1804-1)。得られたcDNAを、Rsa Iで37℃で3時間消化した。消化したcDNAを、フェノール/クロロホルム(1:1)で抽出しかつエタノールで沈殿した。
マウス遺伝子はテスターcDNA(LAPC-4 AD)から差引かれたことを確実にするために、Rsa I消化したBPH cDNAをマウス肝臓由来の消化したcDNAと4:1の比で結合することによって、ドライバーcDNA(BPH)を作製した。
テスターcDNA(LAPC-4 AD)は、水5μl中のRsa I消化したLAPC-4 AD cDNA(400ng)を1μl希釈することによって作製した。その後希釈したcDNA(2μl、160ng)をアダプター1およびアダプター2(10μM)に個別のライゲーション反応において、総容量10μlとし16℃で一晩放置し、T4 DNAリガーゼ(クローンテック社)400μを用い、ライゲーションした。ライゲーションは、0.2M EDTA 1μlで停止させ、72℃で5分間加熱した。
第一のハイブリダイゼーションを、1.5μ1(20ng)のアダプター1およびアダプター2にライゲーションしたcDNAを含有する2本の試験管の各々に、ドライバーcDNAを1.5μl(600ng)を添加することによって行った。最終容量4μ1において、試料を、鉱油で積層し、MJ Researchサーマルサイクラー中で98℃で1.5分間変性し、その後68℃で8時間ハイブリダイズした。その後2回のハイブリダイゼーションを、新鮮な変性したドライバーcDNAの追加1μlと一緒に混合し、かつ一晩68℃でハイブリダイゼーションした。その後第二のハイブリダイゼーションを、20mM Hepes、pH8.3、50mM NaCl、0.2mM EDTAの溶液200μl中に希釈し、かつ70℃で7分間加熱しかつ-20℃で貯蔵した。
SSHで作製された遺伝子断片のPCR増幅、クローニングおよび配列決定
SSH反応によって得られた遺伝子断片を増幅するために、2回のPCR増幅を行った。第一のPCR反応においては、希釈した最終ハイブリダイゼーション混合物1μlを、PCRプライマー1(10μM)1μl、dNTP混合物(10μM)0.5μl、10 x 反応緩衝液(クローンテック社)2.5μlおよび50 x Advantage cDNAポリメラーゼ混合物(クローンテック社)0.5μlを含む最終容量25μlに添加した。PCR 1は、下記の条件を用いて行った:75℃で5分間、94℃で25秒間、その後94℃で10秒間、66℃で30秒間、72℃で1.5分間を27サイクル。5回の個別の第一のPCR反応を、各実験において行った。生成物を一緒にし、かつ水で1:10で希釈した。第二のPCR反応について、混合し希釈した第一のPCR反応液1μlを、PCRプライマー1の代わりにプライマーNP1およびNP2(10μM)を使用した以外は、PCR1において使用したものと同じ反応混合物に添加した。PCR2は、94℃で10秒間、68℃で30秒間、72℃で1.5分間の10〜12サイクルを用いて行った。PCR産物を2%アガロースゲル電気泳動を用いて分析した。
PCR産物を、T/Aベクタークローニングキット(インビトロゲン社)を用いて、pCR2.1に挿入した。形質転換した大腸菌は、青色/白色およびアンピシリン選択を行った。白色コロニーを採取し、96ウェルプレートへ並べ、液体培地中で一晩増殖した。挿入物を同定するために、PCR増幅を、PCR1条件下プライマーとしてNP1およびNP2を用いて、細菌培養物1mlについて行った。PCR産物を2%アガロースゲル電気泳動を用いて分析した。
細菌コロニーを、96ウェルフォーマットで20%グリセロール中で貯蔵した。プラスミドDNAを調製し、配列決定し、かつGenBank、dBest、およびNCI-CGAPデーターベースについて核酸相同性の検索を行った。
RT-PCR発現分析:
第1鎖cDNAを、ギブコBRL社のスーパースクリプト・プレアンプリフィケーション(Superscript Preamplification)システムを用いて、オリゴ(dT)12-18プライミングによりmRNA 1μgから作成した。製造業者のプロトコールを用いて、逆転写酵素と共に42℃で50分間インキュベーションし、その後RNAse Hで37℃で20分間処理した。この反応を完了した後、容量を200μlに水で増大し、その後標準化した(normalization)。16種の正常ヒト組織からの第一鎖cDNAをクローンテック社から得た。
複数の組織からの第一鎖cDNAの標準化を、プライマー5'atatcgccgcgctcgtcgtcgacaa3'および5'agccacacgcagctcattgtagaagg 3'を用いて行い、β-アクチンを増幅した。第一鎖cDNA(5μ1)を、0.4μMプライマー、各0.2μMのdNTP類、1 x PCR緩衝液(クローンテック社、10mM Tris-HCl、1.5mM MgCl2、50mM KCl、pH8.3)および1 x Klentaq DNAポリメラーゼ(クローンテック社)を含有する総容量50μ1中で増幅した。PCR反応液5μlを、18、20、および22サイクルに取り出し、かつアガロースゲル電気泳動に使用した。PCRを、MJ Researchサーマルサイクラーを用いて、下記条件下で行った:最初の変性は、94℃で15秒、その後94℃15秒、65℃で2分間、72℃で5秒間を18、20、および22サイクル。72℃での最後の伸長を2分間行った。アガロースゲル電気泳動後、多組織からの283bp β-アクチンバンドのバンド強度を、目視により比較した。第一鎖cDNAの希釈因子を計算し、PCRの22サイクル後の全ての組織中で等しいβ-アクチン強度を得た。PCRの22サイクル後に全ての組織中で等しいバンド強度を達成するには、3回の標準化が必要であった。
20P1F12遺伝子の発現レベルを決定するために、標準化した第一鎖cDNAの5μlを、(MIT;詳細は、www.genome.wi.mit.eduを参照のこと)の補助のもとでデザインした下記プライマー対を使い、25、30、および35サイクル増幅し、PCR分析した:
Figure 2009148265
明バンド強度を示したサイクル数でのPCR産物を比較することにより、半定量的発現分析を行った。
結果:
いくつかのSSH実験を、前記「材料および方法」に説明したように行い、かつ多くの候補遺伝子断片のクローンを単離した。全ての候補クローンを配列決定し、かつ対応する遺伝子の同一性に関する情報を提供しかつ示差的発現に関する特定の遺伝子を分析するための判断の指針を補助するために、主要な公表された遺伝子およびESTデータベースの全ての配列に対して相同性の分析を行った。
cDNAクローンの一つで20P1F12と称されるものは、最近説明されたセリンプロテアーゼTMPRSS2(Paolonl-Glacoblnoら、Genomics、44:309-320(1997))との同一性を示した。単離された20P1F12 cDNA断片は、長さが388bpであり、図4に示したヌクレオチド配列を有した。RT-PCRによる示差的発現分析は、20P1F12遺伝子が、正常前立腺ならびにLAPC-4およびLAPC-9異種移植片においてほぼ等しいレベルで発現されることを示した(図5、パネルA)。さらに16種の正常組織由来の第一鎖cDNAのRT-PCR発現分析は、前立腺において最大レベルの20P1F12が発現することを示した。実質的に低いレベルの発現が、いくつかの他の正常組織において認められた(すなわち、結腸、膵臓、腎臓、肝臓および肺)(図5、パネルBおよびC)。
実施例2:20P1F12/TMPRSS2遺伝子発現のノーザンブロット分析
16種の正常なヒト組織のパネルについてのノーザンブロット分析を、標識した20P1F12/TMPRSS2プローブ(図4の20P1F12 SSH cDNAに対応)を用いて行い、RT-PCR発現分析により最初に確立された20P1F12/TMPRSS2発現の前立腺特異性を確認した。図6(パネルAおよびB)に示した結果は、RT-PCR分析を確認・拡大し、かつ前立腺での発現が、非常に低い発現のみが検出された肺、腎臓、膵臓または結腸における発現よりも、明らかに何倍も大きいので、20P1F12/TMPRSS2発現が比較的前立腺特異性であることを示した。このパネルで使用した他の11種の正常組織においては何ら発現は検出されなかった。
加えて、LAPC-4およびLAPC-9異種移植片における20P1F12/TMPRSS2の発現レベルもノーザンブロット分析により分析した。この結果は、図6(パネルC)に示したが、これは、異種移植片および正常組織において同様の発現レベルを示し、LAPC-9異種移植片においてのみ低いレベルの発現が認められた。さらに癌細胞の大きいパネルにおける20P1F12/TMPRSS2発現のノーザンブロット分析を下記実施例4に説明した。
実施例3:完全長の20P1F12 cDNAのクローニング
20P1F12/TMPRSS2遺伝子をコードしている完全長のcDNAを、ヒト前立腺ライブラリーから単離し、20P1F12-GTC1と命名した。20P1F12-GTC1のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図1に示した。プラスミドp20P1F12-GTC1(20P1F12-GTC1 cDNAを保持する)は、ATCC(マナサス、VA)に1999年2月12日に登録され、ATCC受入番号207097とされている。およそ35kbの20P1F12-GTC1 cDNAは、492個のアミノ酸であるタンパク質をコードし、これは全てではないがほとんど先に説明された配列(図2)と同一であった。20P1F12-GTC1 cDNAのヌクレオチド配列は先に公表されたTMPRSS2配列と、いくつかの差異があり、その中の5個は図3に並置されたアミノ酸に示されたように、コードされたアミノ酸の差異を生じている。具体的には、異なるアミノ酸の中の4個はプロテアーゼドメインにあり、その中の3個は、プロテアーゼ機能および/または特異性に影響を及ぼすような非保存的なアミノ酸の差である。これらのアミノ酸配列の差異が生体活性に影響を及ぼすかどうかは不明である。しかし、20P1F12/TMPRSS2およびTMPRSS2は、正常ヒト組織における不一致のmRNA発現パターンを示している本出願者らのデータから考えて、異なって発現されている可能性がある。
実施例4:前立腺癌および結腸癌における20P1F12/TMPRSS2の発現
癌組織および細胞株における20P1F12/TMPRSS2の発現を分析するために、LAPC異種移植片ならびに前立腺および前立腺以外の癌細胞株のパネルに由来するRNAについて、ノーザンブロットを行った。結果は、全てのLAPC異種移植片および結腸癌細胞株において高レベルの20P1F12/TMPRSS2発現を示した(図7)。同様の発現レベルが、前立腺、LAPC-4 AD、LAPC-4 AI、LAPC-9 ADおよびLNCaPにおいて認められた。より低レベルの20P1F12/TMPRSS2が、LAPC-9 AIおよびPC-3細胞において認められ、DU145においては発現は認められなかった。高レベルの20P1F12/TMPRSS2発現が、4種の結腸癌細胞株の中の3種においても認められ、これはLoVo、T84およびColo-205を含んだ。
実施例5:20P1F12/TMPRSS2タンパク質の特徴
20P1F12/TMPRSS2モノクローナル抗体の作成
TMPRSS2は、前立腺癌および結腸癌の可能性のある治療標的を代表している。これは、細胞表面抗原として、抗体療法の特に良好な標的であり得る。この可能性を探索しさらに20P1F12/TMPRSS2タンパク質を特徴付けるために、GST-20P1F12/TMPRSS2融合タンパク質に対するモノクローナル抗体を作成した。この免疫原は、プロテアーゼドメイン内のおよそ8kD領域、特にアミノ酸残基362位から440位を含んだ(図1参照のこと)。マウスを、精製したGST-TMPRSS2で免疫処置し、かつハイブリドーマを作成した。ハイブリドーマ上清を、20P1F12/TMPRSS2でトランスフェクションした293T細胞の溶解液を用いてウェスタンブロットを行うことにより、特異的抗体についてスクリーニングした。ウェスタンブロットにより、6種のハイブリドーマの全てが特異的に20P1F12/TMPRSS2を認識することを確定した(図8a)。
LNCaP、LAPC-4およびLAPC-9細胞溶解液のウェスタンブロットは、およそ70および32キロダルトン(kD)の2種の主要タンパク質バンドを確定した(図8b)。20P1F12/TMPRSS2の予想される分子量(MW)は、54kDであり、このことは70kDのアイソフォームが修飾、おそらくグリコシル化されていることを示唆している。32kD型は、該抗体により認識されたエピトープのカルボキシル末端を含むタンパク質分解により切断された断片であると考えられる。
別の20P1F12/TMPRSS2 mAbは、細胞ベースのELISA用のスクリーニング試薬として20P1F12/TMPRSS2を発現しているLAPC-9細胞およびPC-3細胞を用いて、細胞をベースにした免疫処置により作成した。加えて20P1F12/TMPRSS2 mAbを、免疫原として精製された20P1F12/TMPRSS2タンパク質を用いて作成した。例えば、アミノ末端にHis-タグを有する組換え20P1F12/TMPRSS2は、pBlueBac4.5(インビトロゲン社)を用い、バキュロウイルスシステムにおいて発現することができた。次にHis-タグをつけた20P1F12/TMPRSS2を、ニッケルカラムを用いて精製し、定量し免疫原として使用した。モノクローナル性のスクリーニングは、細胞ベースのELISAを用い、例えばLNCaPおよびPC-3/TMPRSS2細胞について行った。
細胞表面局在化
20P1F12/TMPRSS2タンパク質を特徴付けるために、20P1F12 cDNA(図1)を、pcDNA 3.1 Myc-His(インビトロゲン社)にクローニングし、これはカルボキシル末端に6-Hisタグを持っていた。この構築物を、293T細胞にトランスフェクションし、かつ細胞表面のビオチン化について分析した。ビオチン化された細胞表面タンパク質は、ストレプトアビジン−セファロースを用いてアフィニティー精製した。ストレプトアビジンでアフィニティー精製したタンパク質の抗-His抗体を用いるウェスタンブロット分析は、20P1F12/TMPRSS2タンパク質の存在を示した(図9a)。従って、配列分析から予想されたように、20P1F12/TMPRSS2は、トランスフェクションされた細胞の細胞表面に発現されている。
LNCaPおよびPC-3前立腺癌細胞における内因性20P1F12/TMPRSS2の細胞表面発現を調べるために、ビオチン化した細胞表面タンパク質を、ストレプトアビジン−セファロースを用いてアフィニティー精製し、かつ抗-20P1F12/TMPRSS2抗体でプローブした。ストレプトアビジン精製したタンパク質のウェスタンブロットは、32および70kDタンパク質バンドとして示される、LNCaPおよびPC-3細胞の両方における内因性20P1F12/TMPRSS2の明らかな細胞表面でのビオチン化を示した(図9b)。追加の対照においては、ビオチン化されない細胞からのストレプトアビジン沈殿物中に20P1F12/TMPRSS2タンパク質は検出されなかった(図8b)。このデータは、配列分析とともに、20P1F12/TMPRSS2がII型膜貫通タンパク質であることを予想している。
興味深いことに、カルボキシル末端にHis-タグをつけた20P1F12/TMPRSS2でトランスフェクションされた293T細胞は、主に70kDタンパク質を発現している(図9a)。20P1F12/TMPRSS2プロテアーゼドメインはカルボキシル末端に局在しているので、32kD断片は、自己触媒的切断の結果であり、これがHisタグにより阻害されている可能性がある。関連分子であるhepsin(TMPRSS1)は、濃度依存的方法で自己活性化が可能であるように思われる(Vuら、J. Blol. Chem.、272:31315-31320(1997))。この自己触媒的切断は、20P1F12/TMPRSS2活性を阻害する小分子を同定するために利用することができる。細胞は、切断の阻害を特異的に調べるために、小分子インヒビターの存在または非存在下で増殖する。このような小分子は、前立腺癌治療として試験することができる。
20P1F12/TMPRSS2のグリコシル化
20P1F12/TMPRSS2の推定MWは、ウェスタンブロットにより検出される見かけのMWよりも顕著に小さい。このことは、20P1F12/TMPRSS2がグリコシル化されることを示唆している。GTC1配列は、NXS/Tのコンセンサス配列に伴う3個の可能性のあるグリコシル化部位を示している(残基128位、213位、249位)。20P1F12/TMPRSS2のグリコシル化の可能性を調べるために、His-タグをつけた20P1F12/TMPRSS2を、293T細胞にトランスフェクションし、かつニッケル−アガロース(インビトロゲン社)を用いて精製した。アフィニティー精製したタンパク質を、50mM EDTA、pH8.0で溶離し、かつN-グリコシダーゼF(ベーリンガー・マンハイム社)を用い製造業者の指示に従い脱グリコシル化した。未処置および脱グリコシル化したタンパク質を、抗-His抗体を用いるウェスタンブロットにより分析した。結果は、20P1F12/TMPRSS2のN-グリコシダーゼF処理による5〜8kD MWのシフトを示し(図10)、これは20P1F12/TMPRSS2が実際にグリコシル化されたタンパク質であることを示している。脱グリコシル化された20P1F12/TMPRSS2は、依然予想されるサイズよりも少なくとも5〜10kD大きいMWを示しているが、このことは、脱グリコシル化反応は完全ではないか(またはグリコシル化がO-連結したか)、もしくは20P1F12/TMPRSS2が更なる翻訳後修飾を受けているか(リン酸化、硫酸化など)のいずれかを示唆している。
アンドロゲン調節
ノーザンブロットは、20P1F12/TMPRSS2の発現が、アンドロゲン非依存型のLAPC-9異種移植片において、ならびにアンドロゲン非依存型の細胞株PC-3およびDU145において減少するように見えることを示し(図6)、このことは20P1F12/TMPRSS2がアンドロゲンで調節される遺伝子であることを示している。この可能性を調べるために、アンドロゲン依存型でかつ20P1F12/TMPRSS2を顕著なレベルで発現するLNCaP細胞を、これらを2%チャコールでストリップした(stripped)ウシ胎仔血清(FBS)を含有する培地で増殖させることによって、1週間アンドロゲンを枯渇させた。その後細胞を、様々な時点で合成アンドロゲンアナログであるミボレロン(mibolerone)で刺激した。細胞を、RNAおよびノーザンブロットのために収集した。負荷対照として、同じブロットを、β-アクチンでもプローブした。結果(図11)は、アンドロゲン枯渇の間、20P1F12/TMPRSS2発現の明確な減少を示した(図11)。ミボレロンの添加は、20P1F12/TMPRSS2発現を顕著に増加し、これがアンドロゲン反応性遺伝子であることを示している。同じ試料における前立腺特異抗原(PSA)の発現を、アンドロゲン調節の陽性対照としてモニタリングした(図11)。
20P1F12/TMPRSS2誘導の至適時期を決定するために、アンドロゲン飢餓細胞を、様々な時点でミボレロンで刺激した。細胞を、RNAおよびタンパク質単離のために収集し、各々、ノーザンブロットおよびウェスタンブロットを行った。結果(図12)は、刺激の3時間以内の20P1F12/TMPRSS2メッセージの誘導およびホルモン添加後の24時間を通じての増加を示している。
タンパク質レベルを分析するために、1F9 mAbを用い細胞溶解液のウェスタンブロットを行った。20P1F12/TMPRSS2発現の追加対照は、neoまたは20P1F12/TMPRSS2のいずれかをコードしているレトロウイルスで感染されたPC-3細胞を含んだ。感染PC-3細胞を、G418中で2〜3週間選択し、ウェスタンブロットのために収集した。結果は、20P1F12/TMPRSS2ウイルスで感染された細胞において20P1F12/TMPRSS2の強力な発現を示し、かつneo細胞においては20P1F12/TMPRSS2の発現は検出されなかった。
アンドロゲン枯渇したLNCaP細胞を調べたところ、20P1F12/TMPRSS2発現が依然検出されたが、アンドロゲン刺激した細胞と比べると目に見えるほど減少していた。しかし、最初の誘導された発現は、刺激後9時間で出現し、このことは20P1F12/TMPRSS2のタンパク質発現が、RNA誘導より遅れることを示している(図12)。
これらの結果は、20P1F12/TMPRSS2が、他の前立腺特異性プロテアーゼ、例えばPSAおよびhk2(Youngら、J. Androl.、16:97(1995))同様、アンドロゲン調節遺伝子であることを示している。
NIH 3T3の形態に対する20P1F12/TMPRSS2の作用
20P1F12/TMPRSS2は、前立腺特異的な発現を示し、かつアンドロゲンによって調節されるように見える。異種の非-前立腺癌細胞株における20P1F12/TMPRSS2の発現の作用を決定するために、20P1F12/TMPRSS2レトロウイルスを用いて、NIH 3T3細胞を感染した。20P1F12/TMPRSS2レトロウイルスで感染された細胞の形態を、対照(neo)のウイルス感染細胞の形態と比較した。感染細胞群は、対照細胞と比べて明確な空胞(vacuolar)を伴う外観を示し(図13)、これは高レベル発現に相関しているように見える。この感染細胞群を継代したところ、20P1F12/TMPRSS2発現の明らかな減少とともに、空胞−形成細胞が徐々に消失した。
20P1F12/TMPRSS2の機能の評価
20P1F12/TMPRSS2の機能を、20P1F12/TMPRSS2を発現するように操作した哺乳類細胞において評価することができる。この目的のために、20P1F12/TMPRSS2を、pcDNA 3.1 myc-His-タグ(インビトロゲン社)、レトロウイルスベクターpSRαtkneo(Mullerら、MCB、11:1785(1991))、およびpIND(インビトロゲン社)エクデイソン(ecdysone)-誘導性発現システムを含む、いくつかのベクターに都合よくクローニングした。これらの発現ベクターを用いて、20P1F12/TMPRSS2を、PC-3、NIH 3T3、マウスのL細胞の繊維芽細胞および293Tを含むいくつかの細胞株で発現した。20P1F12/TMPRSS2の発現を、抗-20P1F12/TMPRSS2抗体を用い、ウェスタン分析およびFACS分析によりモニタリングした。精製したTMFRSS2を基質を同定するために使用した。
その後このような20P1F12/TMPRSS2を発現している哺乳類細胞株を、細胞増殖、細胞接着、組織培養物中での膜浸潤培養システム(MICS)(Welchら、Int. J. Cancer、43:449-457) を用いる細胞浸潤を含むいくつかのインビトロ試験を行い、およびSCIDマウスの腫瘍形成を含むインビボアッセイ法を行った。20P1F12/TMPRSS2細胞表現型を、20P1F12/TMPRSS2を発現しない細胞の表現型と比較した。
20P1F12/TMPRSS2の異なるドメインの機能的役割を評価するために、下記の欠失変異体および点変異体を作成した:(i)ΔSRCR(93アミノ酸欠失);(ii)ΔLDLRA(35アミノ酸欠失);および(iii)触媒的三つ組変異体:H296Q、D345N、S441A(一箇所の点変異体)。20P1F12/TMPRSS2変異体を、哺乳類細胞で発現するために、レトロウイルスベクターpsRαtkneoにクローニングした。得られる変異体は、異なるドメインおよび残基の重要性を推定するために有用である。加えて、これらの実験は、このような変異体がドミナントネガティブ分子として機能するかどうかを決定するために有用である。ドミナントネガティブ活性は、LNCaPのような、内因性20P1F12/TMPRSS2を発現している細胞において顕在化することができる。ドミナントネガティブ活性は、プロテアーゼドメインによる、またはタンパク質−タンパク質相互作用ドメインによる、基質との相互作用に起因し得る。変異体20P1F12/TMPRSS2分子は、野生型20P1F12/TMPRSS2として同じインビトロおよびインビボアッセイ法において試験した(前記参照)。このようなドミナントネガティブ20P1F12/TMPRSS2分子は、治療において有用である。例えば、ドミナントネガティブ20P1F12/TMPRSS2を、対応するコード配列を前立腺腫瘍細胞に送達しかつ発現することが可能な遺伝子治療用ベクターにより、前立腺癌細胞に導入することができる。同様に、このような方法は、結腸癌の治療においても有用である。
正常マウス組織およびトランスジェニックマウスにおける20P1F12/TMPRSS2発現の特性を決定することは、20P1F12/TMPRSS2の機能に関する更なる情報を提供する。本明細書に記された20P1F12/TMPRSS2配列からデザインされたプローブを用いるノーザンブロット分析を用いて、マウス20P1F12/TMPRSS2の発現パターンを決定することができる。加えて、マウス胚の発生時の20P1F12/TMPRSS2の発現を分析することもできる。得られるデータから、マウス遺伝子のクローニングの組織源が同定され、どの組織がトランスジェニックマウスのノックアウト試験において影響を受けるかが予想される。
トランスジェニックマウスは、インビボ環境(setting)における20P1F12/TMPRSS2の生物学的役割を明らかにするために、作製しかつ使用することができる。ある方法において、ヒトまたはマウスの20P1F12/TMPRSS2遺伝子を用いて、トランスジェニックマウスを作成することができる。マウスにおける自然発生腫瘍形成の過剰発現は、トランスジェニックマウスを用いて研究することができる。別の方法において、20P1F12/TMPRSS2遺伝子のノックアウト体がマウスにおいて作製される。このようなマウスも、TRAMPモデル(Greenbergら、PNAS、92:34-39(1995))のような他の前立腺癌マウスモデルと交配し(cross)、前立腺癌の攻撃性および転移に対する影響を試験し、かつ疾患進行の変化を観察した。
20P1F12/TMPRSS2のセリンプロテアーゼインヒビターとの相互作用の機能を試験する実験も、20P1F12/TMPRSS2機能に関する情報を提供する。この目的のためには、小分子インヒビターまたは生物学的インヒビターを用いて阻害が達成される。
本明細書を通じて、括弧内に様々な文献が参照されている。これらの文献の内容は、その全体が本明細書に参照として組入れられている。
本発明は、本明細書に記された態様による範囲内に限定されるものではなく、これは本発明の個々の局面のひとつの例証であることが意図されており、あらゆる機能的同等物が本発明の範囲内である。本明細書に記されたものに加えて、本発明のモデルおよび方法に関する様々な修飾が、当業者には前述の説明および内容から明らかであり、かつこれらも同様に本発明の範囲内に含まれることが意図されている。このような修飾および他の態様は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく実践することができる。
図1は、cDNAクローン20P1F12-GTC1(実施例3)のヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列である(ATCCへ登録された;受入番号207097)。 図2は、Paoloni-Giacobinoらの論文(Genomics、44:309-320(1997))に発表された、TMPRSS2遺伝子配列のヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列である。 図3は、20P1F12-GTC1 cDNA(実施例3)と、先に発表されたTMPRSS2配列(Paoloni-Giacobinoら、Genomics、44:309-320(1997))を比較する、アミノ酸配列のアラインメントである。アミノ酸の差異は太字で示している。 図4は、最初に単離されたSSHクローン20P1F12のヌクレオチド配列である。 図5は、前立腺癌異種移植片、正常前立腺、ならびに他の組織および細胞株における20P1F12/TMPRSS2遺伝子発現のRT-PCR分析であり、正常前立腺および3種の前立腺癌異種移植片における発現はほぼ等しいレベルであること(パネルA);および、正常ヒト組織において大きい前立腺特異性発現を示し、かつ結腸、膵臓、腎臓および肺において有意に低い発現レベルで検出されることを示している(パネルBおよびC)。 図6は、正常ヒト組織および前立腺癌異種移植片における20P1F12/TMPRSS2遺伝子発現の、標識されたクローン20P1F12 cDNAプローブを用いる、ノーザンブロット分析を示している。パネルAおよびB:16種の正常組織における発現は、前立腺に大きく制限された;腎臓、膵臓および肺は、10倍から20倍低い発現レベルを示している。パネルC:LAPC-4前立腺癌異種移植片および様々な細胞株における発現は、前立腺癌異種移植片、前立腺癌細胞株の一部、および結腸癌腫細胞株において高レベルの発現を示している。LAPC-9 AI以外は、異種移植片における20P1F12/TMPRSS2の発現は、正常な前立腺試料において認められるレベルと同等であった。加えて、類表皮癌腫株A431におけるより低いレベルの発現が認められた。 図7は、前立腺癌および結腸癌細胞株における20P1F12/TMPRSS2の発現を示す。異種移植片および細胞株のフィルターは、全RNA 10μg/レーンで調製した。ブロットを、20P1F12/TMPRSS2由来の遺伝子断片プローブを用いて分析した。全RNA試料は、臭化エチジウム染色を用いて標準化した。キロベース=Kb。 図8は、20P1F12/TMPRSS2に対するモノクローナル抗体の特徴を示す。20P1F12/TMPRSS2に対するモノクローナル抗体は、実施例5に記された精製されたGST-20P1F12/TMPRSS2融合タンパク質を用いて作製した。ハイブリドーマ上清を、GST-融合物から切断した精製20P1F12/TMPRSS2タンパク質に対するELISAにより最初にスクリーニングした。第二のスクリーニングを、20P1F12/TMPRSS2をコードしているレトロウイルスベクターでトランスフェクションした293T細胞由来の溶解液に対するウェスタンブロットにより行った。(A)特異的に20P1F12/TMPRSS2を認識する6種のmAb(1F9、2D10、2F8、6B11、8C6および9G8)をプローブとして用い、20P1F12/TMPRSS2(レーン1)またはneo(対照として、レーン2)のいずれかでトランスフェクションされた293T細胞に由来する細胞溶解液から、ウェスタンブロットを行った。(B)20P1F12/TMPRSS2(レーン1)またはneo(対照として、レーン2)のいずれかでトランスフェクションされた293T細胞、LAPC-9 ADおよびLNCaPに由来する細胞溶解液を、1F9抗-TMPHSS2 mAbでプロービングした。分子量基準は、キロダルトン(kD)で横に記した。 図9は、20P1F12/TMPRSS2の細胞表面ビオチン化を示す。(A)His-タグつけた20P1F12/TMPRSS2またはneo(対照として)を、293T細胞にトランスフェクションした。無傷の細胞を、ビオチンとインキュベーションし、全ての細胞表面タンパク質をビオチン化した。細胞溶解液を、ウェスタンブロットにより直接分析するか(レーン1および2)、またはこれらは、全ての標識した表面タンパク質のアフィニティー精製のために、ストレプトアビジンとともにインキュベーションした。ストレプトアビジンで精製した細胞表面タンパク質は、抗-His抗体を用い、ウェスタンブロットにより分析した(レーン3および4)。ビオチン化されたタンパク質のみが、20P1F12/TMPRSS2でトランスフェクションされた細胞において検出された。(B)ビオチン化したPC-3(レーン2)およびLNCaP(レーン4)、ならびに非標識のPC-3(レーン1)およびLNCaP(レーン3)を、ストレプトアビジンゲルとともにインキュベーションし、その後1F9 mAbを用いてウェスタンブロットにより分析した。ビオチン化された試料においてのみ、20P1F12/TMPRSS2が検出された。分子量基準は、キロダルトン(kD)で横に記した。 図10は、トランスフェクションされた293T細胞における20P1F12/TMPRSS2の脱グリコシル化を示す。293T細胞にトランスフェクションされたHis-タグをつけた20P1F12/TMPRSS2は、ニッケルアガロースを用いて精製した。その後20P1F12/TMPRSS2タンパク質を、N-グリコシダーゼFを用いて脱グリコシル化した。未処理の20P1F12/TMPRSS2(レーン1)および脱-グリコシル化したタンパク質(レーン2)を、抗-His抗体を用いて、ウェスタンブロットで分析した。脱-グリコシル化により、分子量のシフトが検出された。分子量基準は、キロダルトン(kD)で横に記した。 図11は、20P1F12/TMPRSS2細胞表面プロテアーゼのアンドロゲン調節を示す。LNCaP細胞は、2%チャコールでストリップしたウシ胎仔血清中で細胞を、1週間(レーン1)、または24時間(レーン3)増殖することによって、アンドロゲンを枯渇した。アンドロゲン調節は、24時間飢餓状態にした細胞を10nMミボレロン(アンドロゲンアナログ)で9時間刺激することにより決定した(レーン4)。20P1F12/TMPRSS2の発現は、20P1F12/TMPRSS2プローブでプロービングしたRNA 10μg/レーンでのノーザンブロットにより、完全培地中で増殖しているLNCaP細胞(レーン2)における20P1F12/TMPRSS2レベルと比較した。同等のRNA負荷を、臭化エチジウム染色により決定し、引き続きβ-アクチン(acting)プローブでプロービングした。PSAレベルを、アンドロゲン調節に関する対照として測定した。分子量基準は、キロダルトン(kD)で横に記した。 図12は、LNCaPにおける20P1F12/TMPRSS2のアンドロゲン調節を示す。LNCaP細胞は、2%チャコールでストリップしたウシ胎仔血清中で細胞を1週間増殖することによってアンドロゲンを枯渇した。アンドロゲン調節は、様々な時点で、細胞をミボレロン(Mib)で刺激することにより測定した。20P1F12/TMPRSS2の発現は、抗-1F9 mAbを用いる細胞溶解液のウェスタンブロットで測定した。追加の対照として、neo(対照として)または20P1F12/TMPRSS2で感染したPC-3細胞由来の細胞溶解液を用いた。同等のタンパク質負荷を、抗-Grb-2 抗体(トランスダクションラボラトリー社)によるウェスタンブロットでのプロービングにより決定した(データは示さず)。20P1F12/TMPRSS2のタンパク質発現は、20P1F12/TMPRSS2プローブによるRNA 10μg/レーンでプローブしたノーザンブロットにより、RNAレベルと比較した。同等のRNA負荷を、β-アクチンプローブによるノーザンブロットのプロービングにより決定した。 図13は、NIH 3T3細胞における20P1F12/TMPRSS2発現の作用を示す。NIH 3T3細胞を、neo(対照として)または20P1F12/TMPRSS2のいずれかをコードしたレトロウイルスで感染した。感染の48時間後、細胞を、光学顕微鏡により分析した。多くの空胞を蓄積している細胞を、矢印で示した。

Claims (19)

  1. 図1に示すアミノ酸配列(配列番号:XX)を有する単離された20P1F12/TMPRSS2タンパク質。
  2. (a)TがUであってもよい、図1に示す配列(配列番号:XX)を有するポリヌクレオチド;(b)アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)に受入番号207097として登録されたプラスミドp20P1F12-GTC1中に含まれるcDNAによってコードされる20P1F12/TMPRSS2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および(c)請求項1記載の20P1F12/TMPRSS2タンパク質をコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される、単離ポリヌクレオチド。
  3. 請求項2記載のポリヌクレオチドに対して完全に相補的である単離ポリヌクレオチド。
  4. 請求項3記載のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクター。
  5. 請求項4記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
  6. 請求項1記載の20P1F12/TMPRSS2タンパク質に免疫特異的に結合する抗体。
  7. 請求項6記載のモノクローナル抗体。
  8. 請求項7記載の抗体の断片。
  9. 請求項7記載の抗体の抗原結合ドメインを含む組換えタンパク質。
  10. 検出マーカーで標識された請求項7記載の抗体。
  11. 毒物と結合した請求項7記載のモノクローナル抗体。
  12. 治療薬と結合した請求項7記載のモノクローナル抗体。
  13. 検出マーカーで標識された請求項8記載の抗体断片。
  14. 検出マーカーで標識された請求項9記載の組換えタンパク質。
  15. 試料を請求項10、13または14記載の抗体と接触させる段階、およびそれに対する試料中の20P1F12/TMPRSS2タンパク質の結合を検出する段階を含む、生体試料中の20P1F12/TMPRSS2タンパク質の存在を検出するためのアッセイ法。
  16. 下記の段階を含む、生体試料中の20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドの存在を検出するためのアッセイ法:
    (a)試料を、アメリカンタイプカルチャーコレクションに受入番号207097として登録されたプラスミドp20P1F12-GTC1中に含まれる20P1F12/TMPRSS2 cDNA、または図1に示すポリヌクレオチド(配列番号:XX)もしくはその相補物と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブと接触させる段階;および
    (b)ハイブリダイゼーション複合体の存在によって試料中に20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドが存在することが示される、プローブと試料中の20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって形成されるハイブリダイゼーション複合体の存在を検出する段階。
  17. 下記の段階を含む、生体試料中の20P1F12/TMPRSS2 mRNAの存在を検出するためのアッセイ法:
    (a)少なくとも1つのプライマーを用いる逆転写によって試料からcDNAを作製する段階;
    (b)そのようにして作製されたcDNAを、その中の20P1F12/TMPRSS2 cDNAを増幅するために、20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドをセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーとして用いて増幅する段階;
    (c)増幅された20P1F12/TMPRSS2 cDNAの存在を検出する段階を含み、
    センスおよびアンチセンスプローブとして用いる20P1F12/TMPRSS2ポリヌクレオチドが、図1に示すポリヌクレオチド(配列番号:XX)を増幅しうるアッセイ法。
  18. 20P1F12/TMPRSS2の細胞外ドメインと結合する請求項7、11、または12記載の抗体を含む、前立腺癌の治療用組成物。
  19. 20P1F12/TMPRSS2の細胞外ドメインと結合する請求項7、11、または12記載の抗体を含む、結腸癌の治療用組成物。
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