JP2009132812A - 活性エネルギー線硬化型インク及びインクカートリッジ - Google Patents

活性エネルギー線硬化型インク及びインクカートリッジ Download PDF

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Hiroe Ishikura
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Shinsuke Tsuji
新祐 辻
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Koji Harada
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Abstract

【課題】活性エネルギー線によって速やかに重合され、形成された硬化物の架橋度が高く、記録媒体に対する接着性に優れ、さらには、吐出安定性や保存安定性に優れた活性エネルギー線硬化型インクの提供。
【解決手段】一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質、活性エネルギー線によってラジカルを生成する重合開始剤、水及び色材を少なくとも含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インク。
Figure 2009132812

【選択図】なし

Description

本発明は、活性エネルギー線硬化型インク及び該インクを液体収容部に収容してなるインクカートリッジに関する。
従来より、活性エネルギー線を含む光照射によって樹脂組成物を硬化させることで樹脂硬化膜を形成し、画像を形成する方法があるが、この際に、活性エネルギー線重合性物質を含有させてなる水性の塗料やインクを用いる技術が知られている。また、水性の塗料やインクの材料構成における活性エネルギー線重合性物質に関しては、次に挙げるような技術がある。例えば、非水性の活性エネルギー線重合性物質を用い、これを水性媒体中にエマルジョン状態にして調製したものを用いる技術や、紫外線硬化型の樹脂や重合開始剤を水性化して用いる技術が知られている。
その一方で、上記したような材料構成の活性エネルギー線重合性物質を含有する液体組成物やインクを、インクジェット記録方法に応用する技術も知られている。そして、活性エネルギー線硬化型液体組成物や活性エネルギー線硬化型インクは、近年では、グラフィックアート、サイン、ディスプレイ、ラベル記録、パッケージ記録、電子回路基板及びディスプレイパネルの作製などに応用されている。これらの多くは、極めて高い画質が要求される用途である。
上記したような用途の画像形成に、活性エネルギー線硬化型のインクを用いるインクジェット記録方法を適用する場合には、インクの構成材料に、非水性又は水性の樹脂組成物を適用することが考えられる。非水性の樹脂組成物の代表的なものは、大別すると2つのタイプに分けられる。そのうちの一つのタイプは、トルエン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤中に顔料を分散した、所謂油性のインクが知られている。また、もう一つのタイプは、有機溶剤を用いず、モノマー、オリゴマー、顔料分散体を含有する、所謂100%硬化型のインク(ノンソルベントインク)が知られている。しかし、前記した油性のインクを用いる場合には、有機溶剤が大気中に揮散することから、環境への十分な配慮が必要になる。また、前記した100%硬化型インクは、有機溶剤を使用しないため、このような問題はないが、下記に挙げる別の問題がある。即ち、前記した100%硬化型インクを用いる場合には、記録媒体で記録部分と非記録部分の凹凸が発生するために画像の光沢感を得ることが難しく、高い画質が要求される用途への展開は難しいのが現状である。
しかしながら、活性エネルギー線硬化技術は、省エネルギー、環境汚染、環境負荷が少ない硬化技術として期待されているのも事実である。さらに、活性エネルギー線硬化技術の利用は、インクジェット記録において、画像の記録に留まらず、記録する基材に記録適性を付与するための前処理、画像を形成した記録媒体の保護や施工のための材料を塗布する後処理などにおいても有用であるとされている。加えて、インクジェット記録において一般的な水性インクの技術を活性エネルギー線硬化技術に応用することで、前記した100%硬化型のインクの課題である画像の凹凸を緩和することができるので、高画質化の観点からも有利である。上記したような事情から、特に、インクジェット用の活性エネルギー線硬化型インクの構成材料としても適用可能な、親水性の樹脂や、多官能モノマーや、単官能モノマーなどの材料の開発が求められている。
ここで、インクジェット記録方法に応用できる材料とするためには、まず、高密度のノズルに対応できる、低粘度で流動特性がよい材料であることを要する。このためには、例えば、インク中の重合性物質の含有量をある程度大きくすることができる材料であることが求められる。また、別の要求として、インクを記録媒体に付与した後の乾燥時間を短縮することが可能な材料が求められる。さらに、硬化後のインク被膜(インク層、即ち、印字部)の物性に優れ、インクの色材との共溶性のよい親水性の樹脂や、多官能モノマー或いは単官能モノマーなどの材料が求められる。これらの材料の中でも、モノマーに関しては、重合速度、重合後の膜物性などの観点から、特に多官能モノマーについて、高性能な材料の開発が求められている。
これまでに知られている水性インクを用いたインクジェット記録に応用できる活性エネルギー線重合性物質の例としては、以下のものがある。一つには、1分子中に1つの重合性官能基を有する化合物として、酸性基及び(メタ)アクリロイル基又はビニル基を共に有する親水性の重合性物質が知られている。このようなものとしては、例えば、無水琥珀酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとのエステル、オルソ無水フタル酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとのエステル、ビニルナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
また、別の例として、水に可溶であり、1分子中に2つ以上の重合性官能基を有し、工業的に生産されている化合物として、ポリエチレンオキシド鎖によって親水性を付与した重合性物質が知られている。このようなものとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
また、特許文献1には、多官能の親水性重合性物質が開示されている。特許文献1に開示されている化合物は、いずれも、分子中における水酸基の数を増やすことを、親水性を付与するための手法として用いたものである。
また、特許文献2及び3には、ポリアルコールから誘導される親水性ポリエポキシドの(メタ)アクリル酸エステルなどが開示されている。これらに開示されている化合物は、活性エネルギー線による重合性や硬化物の物性が、ある程度は得られるものであり、さらに、化合物を水溶液としたときの粘度もインクジェット用インクに要求される水準を満たすものである。
さらに、特許文献4には、スピロ環含有(メタ)アクリレート化合物に加えて、エチレン性不飽和基含有化合物を有するエネルギー線硬化型粉体塗料用組成物が開示されている。
特開平8−165441号公報 特開2000−117960公報 特開2002−187918公報 特開2003−165927公報
しかしながら、下記に述べるように、従来技術で提案されている化合物は、いずれも、水性インクを利用したインクジェット記録方法に適用できる活性エネルギー線硬化型インクの主要材料とするには十分でない場合があった。前記した1分子中に1つの重合性官能基を有する化合物は、1分子中に1つしか重合性官能基を有さないため、重合速度が遅く、硬化物の架橋度が著しく低い。このため、近年の更なる高耐久化の要求を考慮すると、これらの化合物は、活性エネルギー線硬化型インクの主要材料とはなりにくい。
また、本発明者らの検討によれば、水に可溶であり、且つ、1分子中に2つ以上の重合性官能基を有する工業的に生産されている化合物は、水性インクに用いた場合に以下のような課題があることがわかった。即ち、これらの化合物は、エチレンオキシド鎖が短いと親水性が低くなる場合がある。一方、エチレンオキシド鎖が長いと、親水性は得られるものの、重合又は硬化した時の硬化物の硬化膜特性、特に、塗料やインクによって得られる塗膜に求められる硬度や接着性などの性能において、十分でない場合があることを確認した。
また、本発明者らの検討によれば、前記した特許文献1に記載の化合物は、活性エネルギー線による重合性に優れ、また、得られる硬化物の硬化膜特性にも優れるものの、以下のような課題がある。即ち、これらの化合物を含有させると、インクの粘度が、インクジェット用インクに要求される水準に対して、やや高いという問題を生じることがある。
また、本発明者らの検討によれば、前記した特許文献2及び3に記載されたポリアルコールから誘導される親水性ポリエポキシドの(メタ)アクリル酸エステルなどの化合物については、以下のような課題がある。即ち、(メタ)アクリル酸エステル基を有する水性重合性物質を、水性インクの材料に用いた場合には、下記のようなことが起こることがあった。ここで、水性インクの色材には、一般に、アニオン性基によって水性媒体中に溶解する染料や、アニオン性基によって水性媒体中に顔料が分散された顔料分散体が用いられている。このような色材に対して、上記のような水性重合性物質を水性インク中に含有させると、(メタ)アクリル酸エステル基の加水分解によるアクリル酸の生成に伴って、水性インクのpHが酸性領域まで低下することが生じる場合がある。インクのpHが、酸性領域まで低下すると、アルカリ〜中性領域で安定に存在していた染料が析出したり、顔料分散体の凝集が生じることが懸念される。このため、上記した特許文献2及び3に記載された化合物の適用は、水性インクの保存安定性の観点において問題を生じる場合がある。
また、前記した特許文献4に記載された化合物の用途は、粉体塗料用組成物であり、その化合物が、親水性であるか否かについても、水性インクに適用できるものであるか否かも不明である。さらに、1官能性マレイミド化合物などが好ましいと記載されていることから、十分な硬化性が得られるかも不明である。
また、熱エネルギーの作用によりインクを吐出させる方式のインクジェット記録方法において、活性エネルギー線硬化型の水性インクを適用する場合には、特に以下のような課題を生じる恐れがある。即ち、この場合には、インク中の重合性物質が熱エネルギーによって熱重合を起こして、ノズル内に、水に不溶な重合物が生成し、インクの吐出安定性の観点において問題を生じる恐れがある。
したがって、本発明の第一の目的は、活性エネルギー線によって速やかに重合され、形成される硬化物の架橋度が高く、記録媒体に対する接着性に優れる活性エネルギー線硬化型インクを提供することにある。また、インクジェット記録方式に適用するインクに要求される粘度の水準を満たし、熱や保存に対する安定性にも優れた活性エネルギー線硬化型インクを提供することにある。また、本発明の第二の目的は、上記した活性エネルギー線硬化型インクを用いることで、上記効果を有する実用価値の高いカートリッジを提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、下記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質、活性エネルギー線によってラジカルを生成する重合開始剤、水及び色材を少なくとも含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクである。
Figure 2009132812
(一般式(1)中、Rは下記一般式(2)で表される構造を示し、Xは下記一般式(3)又は一般式(4)で表される構造を示す。また、mは1以上4以下の整数を示す。)
Figure 2009132812
(一般式(2)中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1乃至6のアルキレン基、又は置換基を有していてもよい炭素数2乃至6のアルキレンオキシド基を示す。また、Rnはカルボニル基と、該カルボニル基の炭素原子に隣接した不飽和炭素−炭素結合を有する環状連結基を示す。)
Figure 2009132812
(一般式(3)及び一般式(4)中、Mは、それぞれ、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。)
さらに、本発明の別の実施形態は、上記の活性エネルギー線硬化型インクを少なくとも収容してなる液体収容部を具備することを特徴とするインクカートリッジである。
本発明によれば、活性エネルギー線によって速やかに重合され、形成された硬化物の架橋度が高く、記録媒体に対する接着性に優れ、さらには、保存中に加水分解を起こすことのない保存安定性に優れた活性エネルギー線硬化型インクが提供される。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。勿論、本発明の範囲は、この例示に限られるものではない。本発明者らは、前記した目的に鑑み、様々な検討を重ねた結果、水性インクの構成材料として有用な、充分な重合速度を有する前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質を見出した。そして、該重合性物質、活性エネルギー線によってラジカルを生成する重合開始剤、水及び色材を含有してなる活性エネルギー線硬化型インク(以下、本発明のインクとも呼ぶ)が、下記のようにインク特性に優れるものであることを見出して本発明に至った。即ち、上記構成を有する本発明の活性エネルギー線硬化型インクを用いることで、硬化物の架橋度や、記録媒体に対する硬化物の接着性などの硬化性能の点で(以下、硬化性能と呼ぶ)、優れる硬化物(画像)を得ることができる。また、本発明を特徴づける活性エネルギー線重合性物質は、インクジェット用インクに要求される低粘度の水準を満たす材料であり、さらに、熱や保存に対するインクの安定性や吐出安定性にも優れるため、水性インクの構成材料として有用である。前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質を水性インクの構成材料として用いた場合に、上記したような優れた性能が発現する理由は定かではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
上記優れた硬化性能が得られることに関しては、以下のように考えている。先ず、本発明のインクに含有させる前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、下記に挙げるような構造的な特徴を持つため、このことが要因となって、優れた硬化性能が発現したのではないかと推測される。前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、ラジカル重合性が高い、カルボニル基と該カルボニル基の炭素原子に隣接した不飽和炭素−炭素結合を有する環状連結基を持つとともに、親水性に優れたアミド結合を有している。また、該重合性物質は、親水性に優れたアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩構造を有することもできる。このため、前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、コンパクトで重合性官能基密度が高い構造と、充分な水溶性とを両立することができる。したがって、この重合性物質を含有したインクは、活性エネルギー線による重合により、架橋度が高く、しかも、高硬度の硬化物を与えたものと考えられる。
一方、前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、重合性官能基と直接結合していないアミド結合を持つ。このようなアミド結合は、強い水素結合性を有しているため、基材への密着性を高めることができる。また、この高い密着性が、重合に伴う硬化収縮の影響を緩和していると考えられる。該重合性物質を含有してなる塗料やインクにおいて、記録媒体などの基材に対して強い接着性の付与が実現されたのは、上記に挙げた理由によると考えられる。さらに、前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、高い分子間水素結合を有する。このため、該重合性物質によって得られる硬化物は、エチレンオキシドや水酸基などによって親水性を付与させた従来の重合性物質によって得られる硬化物に比べて、耐水性に優れたものとなると考えられる。上記に挙げた種々の理由から、前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質を使用することで、形成される硬化物は、硬化性能に優れるものとなったと推測される。
また、保存安定性に優れたインクが得られることに関しては、以下のように考えている。前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、例えば、特許文献2及び3に記載されているようなアクリルエステル構造を有する従来の重合性物質に比べて、水溶液中で加水分解の影響を受けにくいと考えられる。このため、加水分解に起因して生じていた、インクのpHが極端な酸性領域にまで低下することを抑制できると考えられる。したがって、例えば、アニオン性基によって水性媒体中に溶解する染料又はアニオン性基によって水性媒体中に顔料が分散された顔料分散体は、安定して溶解又は分散する状態を保つことができる。この結果、本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、保存安定性に優れたものになったと推測される。
さらに、熱エネルギーの作用によりインクを吐出させた場合においても吐出安定性に優れたインクとなる理由に関しては、以下のように考えている。前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、例えば、特許文献2及び3に記載されているようなアクリルエステル構造を有する従来の重合性物質に比べて、熱重合に対する耐性が高く、また、加水分解により生じる酸の生成量が極めて少ない。また、前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、親水性や耐熱性が高いアミド結合を有しているため、熱による析出や分解が少ない。これらいずれかの理由から、前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質自身の熱重合や分解によるコゲの発生が抑えられたものと考えられる。そして、結果として、前記一般式(1)で示される重合性物質を含有してなる本発明のインクは、吐出安定性に優れるものとなったと推測される。
以下に、本発明の活性エネルギー線硬化型インクを用いた主たる適用例であるインクジェット記録における本発明のインクの作用・効果について説明する。なお、本発明の活性エネルギー線硬化型インクを用いたインクジェット記録方式による画像形成においては、活性エネルギー線として紫外線や電子線などを用いることができる。以下の説明においては、本発明のインクの中でも、インクジェット記録による画像形成において特に好適な、紫外線によってラジカル重合して硬化する紫外線硬化型インクを例に挙げて説明を進める。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、インクの硬化に用いる活性エネルギー線は、紫外線に限られるものではないことは勿論である。
インクジェット記録方法に適用するインクとして、本発明の活性エネルギー線硬化型インクを用いる主な目的は、例えば、下記に挙げる点にある。
(1)インクの乾燥性を高めて、記録速度の向上に対応すること。
(2)重合性物質に色材の分散剤としての機能を持たせて、多様な記録媒体に対して耐擦過性に優れた画像を形成すること。
(3)顔料粒子の光散乱を低減し、透明なインク層を形成すること。
(4)プロセスカラーの色再現範囲を拡大し、光学濃度が高く、彩度、明度に優れたインクとすること。
(5)活性な光、空気中のガス成分、水分などから、色材を保護すること。
本発明のインクによれば、とりわけ、普通紙のようにインク吸収性がある一方で、顔料の色彩や耐擦過性を向上することが難しい記録媒体において、これらの課題を改善するという顕著な効果を得ることができる。勿論、このような効果は普通紙だけに限定されず、本発明のインクによれば、例えば、オフセット紙、フォーム紙、段ボール紙などのインクの吸収性のより小さい記録媒体に対しても、普通紙におけると同様な効果を得ることができる。さらに、本発明のインクは、非吸収性の記録媒体に対する記録をも可能とする。
ここで、活性エネルギー線による硬化法は、強制乾燥法のひとつであり、紙などの記録媒体に付与したインクが、記録媒体中に完全に浸透しきる前、即ち、インクが自由表面を形成している時間内に、その状態を凍結する方法であるといえる。本発明のインクにおいて、水などの水性媒体の浸透、蒸発は、固体化したインク層から徐々に進行することになる。しかし、上記したように、見かけの乾燥は素早く起こるので、記録媒体の搬送、積載などが可能という意味での定着時間は短くなったものとして扱うことができる。しかし、水性媒体を用いている以上、有機溶剤を用いたインクよりも、真の乾燥が遅くなるのはやむをえない。そこで、本発明のインクを用いる場合に、用途によっては、最終の強制熱乾燥機を備えることもできる。
本発明のインクのように、水分が存在している中で、活性エネルギー線によってラジカル重合する重合性物質(以下、単に重合性物質とも呼ぶ)の硬化がいかにして進行するかは、純粋に、ラジカル反応速度の問題として重要である。本発明者らの検討によれば、色材を含有しない無色のインクでは、水中での重合性物質の重合が無溶剤系の場合と比べて特別に反応が遅いということは、観察されていない。勿論、重合物が水を含んでいるので、硬化物の固体物性は無溶剤系の場合のものとは異なる。
次に、前記した優れた作用・効果を有する本発明の活性エネルギー線硬化型インクについて、その構成要素に関して詳細に述べる。
<活性エネルギー線重合性物質>
先ず、本発明のインクを特徴づける下記一般式(1)で示される化合物である、活性エネルギー線重合性物質について説明する。
Figure 2009132812
(一般式(1)中、Rは下記一般式(2)で表される構造を示し、Xは下記一般式(3)又は一般式(4)で表される構造を示す。また、mは1以上4以下の整数を示す。)
Figure 2009132812
(一般式(2)中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1乃至6のアルキレン基、又は置換基を有していてもよい炭素数2乃至6のアルキレンオキシド基を示す。また、Rnはカルボニル基と、該カルボニル基の炭素原子に隣接した不飽和炭素−炭素結合を有する環状連結基を示す。)
Figure 2009132812
(一般式(3)及び一般式(4)中、Mは、それぞれ、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。)
本発明においては、前記一般式(2)中のRnが、下記一般式(5)〜(7)のいずれかで示される重合性官能基を有する構造であることが好ましい。
Figure 2009132812
本発明を特徴づける上記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、親水性であることが好ましい。本発明において、その化合物が親水性であるということは、その化合物が、以下の(1)〜(3)のいずれかの状態であることを意味する。
(1)化合物が水と混和し得る有機溶剤に可溶であり、前記有機溶剤が水溶性である。
(2)化合物が非水溶性であっても、水に乳化可能となるように処理が施されている。
(3)化合物が水溶性である。
本発明において好適な上記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質としては、特に、該活性エネルギー線重合性物質の水溶性が、25℃・1気圧下の純水に対して1質量%以上完全溶解するものが挙げられる。
本発明で用いる上記した一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、下記のようにして得ることができる。例えば、ジアミノ安息香酸又はジアミノベンゼンスルホン酸などの比較的親水性の高い芳香族ジアミン化合物と、カルボン酸を有するマレイミド化合物とを反応させることにより得られる。本発明においては、さらに、該反応物を中和することによって得られる塩を好適に用いることもできる。上記で使用するカルボン酸を有するマレイミド化合物は、例えば、特開2002−317022公報に記載されているように、無水マレイン酸と一級アミノカルボン酸を用いて、既知の方法により得ることができる。また、上記の方法に限らず、上記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、上記マレイミド化合物に代えて、カルボン酸を有するイタコンイミド化合物又はカルボン酸を有するシトラコンイミド化合物を用いて得ることもできる。
上記のようにして得られる一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質は、芳香族マレイミド化合物の一つである。芳香族マレイミド化合物は、優れた光重合性を有することから、レジストなどのパターン形成材料として用いられる場合がある。例えば、特開平11−217414号公報や特開平11−282155号公報などには、ソルダーレジストの光硬化成分として用いる例が記載されている。しかしながら、これらの特許文献において開示されている芳香族マレイミド化合物の用途は、本発明における活性エネルギー線硬化型インクとはまったく異なるものである。即ち、これらの特許文献における芳香族マレイミド化合物は、感光性ポリイミドを得る目的において、その感光性を付与するための添加物として用いており、本発明とは目的及び使用形態がまったく異なる。
本発明者らは鋭意検討の結果、前記一般式(1)で示される芳香族マレイミド化合物が、活性エネルギー線硬化型インクの材料として、特に、インクジェット記録用インクの材料として極めて有効であることを見出し、本発明に至ったものである。
<重合開始剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、上述した活性エネルギー線重合性物質に加え、活性エネルギー線の照射によりラジカルを生成(発生)する重合開始剤を含有する。本発明において使用する重合開始剤は、親水性であることが好ましい。また、本発明において、化合物が親水性であるということは、先に述べた3通りの形態を含む。
本発明に用いることができる親水性の重合開始剤は、活性エネルギー線によってラジカルを生成する化合物であればいずれのものでもよい。特に本発明においては、下記一般式(8)及び(10)〜(13)で表される化合物からなる群より選択される少なくともひとつの化合物を用いることが好ましい。
Figure 2009132812
上記一般式(8)中、R2はアルキル基、又はアリール基であり、R3は、アルキルオキシ基、フェニル基、又はOMであり、Mは、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、R4は下記一般式(9)で表される基である。
Figure 2009132812
上記一般式(9)中、R5は、−[CH2x2−(x2は0乃至1)、又はフェニレン基であり、m2は0乃至10であり、n2は0乃至1であり、R6は、水素原子、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はこれらの塩である。
Figure 2009132812
上記一般式(10)中、m3は1以上であり、n3は0以上であり、m3+n3は1乃至8である。
Figure 2009132812
上記一般式(11)中、R10及びR11はそれぞれ独立に、水素原子、又はアルキル基であり、m4は5乃至10である。
Figure 2009132812
上記一般式(12)中、R10及びR11はそれぞれ独立に、水素原子、又はアルキル基であり、R12は、−(CH2)x−(xは0乃至1)、−O−(CH2)y−(yは1乃至2)、又はフェニレン基である。Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。
Figure 2009132812
前記一般式(13)中、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、又はアルキル基であり、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。
これらの中では、一般式(8)、(10)及び(11)で表される化合物を用いることが好ましく、さらには、一般式(8)及び(10)で表される化合物を用いることが特に好ましい。
また、前記一般式(8)におけるR2のアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、以下のものが挙げられる。ハロゲン、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のアルキルオキシ基、前記一般式(9)で表される基、スルホン酸基又はその塩、カルボキシル基又はその塩、ヒドロキシル基又はその塩などが挙げられる。本発明に用いるものとしては、R2が炭素数1乃至5のアルキル基を置換基として有するアリール基であることが特に好ましい。また、上記に挙げたスルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の塩を形成する対イオンは、以下に挙げるものであることが好ましい。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はHNR789で表されるアンモニウムである。上記において、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のモノヒドロキシル置換アルキル基、又はフェニル基である。
また、前記一般式(9)におけるR5がフェニレン基の場合、該フェニレン基は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、以下のものが挙げられる。ハロゲン、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のアルキルオキシ基、スルホン酸基又はその塩、カルボキシル基又はその塩、ヒドロキシル基又はその塩などが挙げられる。また、前記したスルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の塩を形成する対イオンは、以下に挙げるものであることが好ましい。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はHNR789で表されるアンモニウムである。上記において、R7、R8、及びR9はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のモノヒドロキシル置換アルキル基、又はフェニル基である。
前記一般式(9)におけるR6は、水素原子、スルホン酸基又はその塩、カルボキシル基又はその塩、ヒドロキシル基又はその塩などである。また、上記スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の塩を形成する対イオンは、以下に挙げるものであることが好ましい。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はHNR789で表されるアンモニウムである。上記において、R7、R8、及びR9はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のモノヒドロキシル置換アルキル基、又はフェニル基である。
前記一般式(8)におけるR3のアルキルオキシ基及びフェニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基は、以下のものが挙げられる。例えば、ハロゲン、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のアルキルオキシ基が挙げられる。特に好ましいR3は、アルキルオキシ基であり、中でも−OC25及び−OC(CH3)3である。
前記一般式(11)〜(13)におけるR10及びR11のアルキル基は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、以下のものが挙げられる。例えば、ハロゲン、スルホン酸基又はその塩、カルボキシル基又はその塩、ヒドロキシル基又はその塩などが挙げられる。また、前記したスルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の塩を形成する対イオンは以下に挙げるものであることが好ましい。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はHNR789で表されるアンモニウムである。上記において、R7、R8、及びR9はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のモノヒドロキシル置換アルキル基、又はフェニル基である。
なお、一般式(8)乃至(13)中、アルキル基は、直鎖又は分枝の炭素数1乃至5のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。アルキルオキシ基は、直鎖又は分枝の炭素数1乃至5のアルキルオキシ基であることが好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基などのアルキルオキシ基が挙げられる。アルカリ金属の具体例は、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属の具体例は、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。HNR789で表されるアンモニウムの具体例は、アンモニウム、ジメチルエタノールアンモニウム、メチルジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、アニリニウムなどが挙げられる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
本発明において用いることができる重合開始剤の特に好ましい具体例は、例えば、以下に示す構造のものが挙げられる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
Figure 2009132812
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また、本発明の活性エネルギー線硬化型インクにおいては、重合開始剤のラジカル発生効率を向上させるために、トリエタノールアミンやモノエタノールアミンなどの水素供与剤を重合性物質と併用してもよい。特に、重合開始剤としてチオキサントン系重合開始剤などを用いる場合は、トリエタノールアミンやモノエタノールアミンのような水素供与剤を組み合わせて用いることが好ましい。インク中の水素供与剤の含有量は、活性エネルギー線重合性物質の含有量に対して、質量比で、0.5質量%以上30質量%以下とすることが好ましい。勿論、本発明において用いることができる水素供与剤や電子供与剤はこれらに限られるものではない。
また、本発明においては、2種類以上の重合開始剤を組み合わせて用いることができる。2種類以上の重合開始剤を組み合わせて用いることで、1種類の重合開始剤では有効に利用できない波長の光を利用でき、さらなるラジカルの発生を期待することができる。
<色材>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、さらに色材を必須成分として含有してなる。用いる色材としては、顔料を水性媒体に均一に分散した顔料分散体を用いることが好ましい。中でも特に、アニオン性基により水性媒体中に顔料が安定に分散した顔料分散体を用いることが好ましい。また、顔料分散体としては、ノニオン性やアニオン性で安定である、水性グラビアインク、水性の筆記具用の顔料分散液や、従来から知られているインクジェット用インクに用いられる顔料分散体などを用いることもできる。
アニオン性基を持ち、アルカリ可溶性の水溶性高分子を用いて顔料を分散した顔料分散体は、例えば、特開平5−247392号公報、特開平8−143802号公報に開示されている。また、アニオン性基を持つ界面活性剤によって顔料を分散した顔料分散体は、特開平8−209048号公報に開示されている。また、高分子によってカプセル化され、その表面にアニオン性基を付与することによって顔料を分散した顔料分散体は、以下の公報に開示がある。例えば、特開平10−140065号公報、特開平9−316353号公報、特開平9−151342号公報、特開平9−104834号公報、特開平9−031360号公報に開示されている。さらに、顔料粒子の表面に化学反応によってアニオン性基を結合することで顔料を分散した顔料分散体は、米国特許第5,837,045号明細書及び米国特許第5,851,280号明細書に開示されている。本発明のインクにおいては、上記したような種々の顔料分散体をインクの色材として用いることができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、上記したような顔料に限らず、色材として染料を用い、水溶性染料を溶解状態で含有する態様のインクであっても、活性エネルギー線照射による退色が実用上問題にならない範囲であれば可能である。また、分散染料、油溶性染料などを分散状態で含有した色材分散体も、前記した顔料分散体と同様に適用可能である。これらは、用途にしたがって適宜に選択することができる。
本発明のインクの色材として顔料を用いる場合には、顔料が微粒子状態で分散する顔料分散体を用いることが好ましい。特に、インクに好適に用いることのできる顔料分散体は、以下の基本的な要素を備えていることが好ましい。具体的には、顔料が水性媒体に分散され、顔料分散体としての粒度分布が平均粒子径で25nm以上350nm以下の範囲にあり、かかる顔料分散体を含有するインクの粘度が、インクジェット方式による吐出に影響を与えない範囲に調節可能であることが好ましい。さらに、インクを活性エネルギー線により硬化可能とするために必須となる、前述の活性エネルギー線重合性物質との相溶性を満足できるものが好ましい。
[顔料]
本発明のインクに用いることができる顔料は、カーボンブラックや有機顔料などが挙げられる。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.3質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましい。
カーボンブラックは、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどが挙げられ、これらの中でも以下の特性を有するものが好ましい。一次粒子径が15nm以上40nm以下であること。BET法による比表面積が50m2/g以上300m2/g以下であること。DBP吸油量が40ml/100g以上150ml/100g以下であること。揮発分が0.5%以上10%以下、pH値が2から9のものであることである。本発明においては、上記したような特性を有する市販品として、以下のカーボンブラックを用いることができる。
レイヴァン:7000、5750、5250、5000、3500、2000、1500、1250、1200、1190ULTRA−II、1170、1255(以上コロンビア製)。ブラックパールズL、リーガル:400R、330R、660R、モウグルL、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、ヴァルカンXC−72R(以上キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学製)。勿論、これら以外にも、従来公知のカーボンブラックを用いることができる。また、マグネタイト、フェライトなどの磁性体微粒子やチタンブラックなどを顔料として用いてもよい。
有機顔料は、具体的には、以下のものを用いることができる。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの水不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッドなどのイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系顔料。インジゴ系顔料。チオインジゴ系顔料。縮合アゾ系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレットなど。
また、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、以下のものを用いることができる。C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、55、74、83、86、93、97、98、109、110、117、120、125、128、137、138、139など。また、C.I.ピグメントイエロー:147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185など。C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61、71など。C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、202、209、215、216、217など。また、C.I.ピグメントレッド:220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272など。C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50など。C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64など。C.I.ピグメントグリーン:7、36など。C.I.ピグメントブラウン:23、25、26など。
(樹脂分散型顔料)
上記したカーボンブラックや有機顔料を用いる場合には、分散剤を併用することが好ましい。用いる分散剤は、アニオン性基などのイオン性基の作用により、カーボンブラックや有機顔料を水性媒体に安定に分散することができるものであることが好ましい。このような分散剤としては、ブロックポリマー、ランダムポリマー、グラフトポリマーなどを用いることができ、具体的には、下記のものが挙げられる。例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、又はこれらの塩など。スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、又はこれらの塩など。スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体、又はこれらの塩など。ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、又はこれらの塩など。
(自己分散型顔料)
上記したカーボンブラックや有機顔料は、顔料粒子の表面にイオン性基(例えば、アニオン性基)を結合させるなどの方法で表面を改質し、所謂、自己分散型顔料として用いることもできる。この場合には、上記に挙げたような分散剤を用いることなく、或いは、少ない分散剤の量で顔料を水性媒体に分散させることができる。
(顔料の粒子径)
顔料の平均粒子径は、25nm以上350nm以下、さらには70nm以上200nm以下とすることが好ましい。顔料の平均粒子径が上記した範囲内であれば、可視光線の波長よりも十分に小さいので、記録物の用途にも依存するが、光散乱が少なければ、十分に透明といえる記録物を得ることができる。
[染料]
本発明のインクは、インクを記録媒体に付与した後に、活性エネルギー線を照射してインク中の活性エネルギー線重合性物質を重合して硬化させることが好ましい。前記したように、色材として染料を用いる場合は、上記の顔料を用いる場合と異なり、活性エネルギー線照射による退色がまったくない状態で用いることは困難であり、画像に多少の退色が起きる。この理由から、インクの色材として染料を用いる場合には、金属イオンで錯体を形成している、所謂、アゾ含金染料を用いることが好ましい。この場合には、通常の染料を用いたインクとしたよりも、活性エネルギー線照射による退色の問題を低減することができる。しかし、退色の水準を問題にしなければ、一般の水溶性染料であっても、本発明のインクの構成材料として用いることができる。
これを前提に、染料カラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、例えば、以下のものを用いることができる。C.I.アシッドイエロー11、17、23、25、29、42、49、61、71など。C.I.ダイレクトイエロー12、24、26、44、86、87、98、100、130、132、142など。C.I.アシッドレッド1、6、8、32、35、37、51、52、80、85、87、92、94、115、180、254、256、289、315、317など。C.I.ダイレクトレッド1、4、13、17、23、28、31、62、79、81、83、89、227、240、242、243など。C.I.アシッドブルー9、22、40、59、93、102、104、113、117、120、167、229、234、254など。C.I.ダイレクトブルー6、22、25、71、78、86、90、106、199など。C.I.ダイレクトブラック:7、19、51、154、174、195など。
染料インク中の染料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。染料の含有量が小さい場合には、例えば、所謂、淡インクに好適に適用される。
<水及びその他の溶剤>
本発明のインクは、溶媒として水を主成分とするが、有機溶剤を添加することもできる。本発明において、有機溶剤は、インクに不揮発性を与えること、粘度を低下すること、また、記録媒体への濡れ性を与えることなどの目的で添加される。非吸収性の記録媒体に記録する用途のインクとする場合には、インク中には有機溶剤を含有させずに、水だけを含有させるようにし、重合性物質の全てが硬化して固体化するような構成とすることが好ましい。
(有機溶剤)
以下に、本発明のインクに用いることのできる比較的容易に蒸発乾燥する有機溶剤を列挙する。本発明のインクにおいては、これらの有機溶剤の中から、任意に選択したものを添加することができる。エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテルなどのグリコールエーテル類など。ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類など。トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類など。メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールなどの1価のアルコール類など。
(反応性の希釈剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクには、重合性の低粘度モノマーを反応性希釈剤として含有することができる。通常の有機溶剤を用いるのではなく、こうした反応性希釈剤を用いる利点は以下の通りである。即ち、これらの反応性希釈剤は、活性エネルギー線で硬化した反応後の硬化物中に可塑剤として残留することがない。このため、本発明のインクにより形成される硬化物の硬化膜特性が、可塑剤に影響されるのを低減できる。このような目的で選択する反応性希釈剤としては、具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミドなど。また、単糖類のモノアクリレート、オリゴエチレンオキシドのモノアクリル酸エステル、及び2塩基酸のモノアクリル酸エステルなど。
また、本発明においては色材の吸収特性に合わせて、インク中における重合開始剤と活性エネルギー線重合性物質の含有量を調節することが好ましい。水性媒体(水若しくは有機溶剤、又は水及び有機溶剤)の含有量の合計(質量%)は、インク全質量を基準として、30質量%以上90質量%以下とすることが好ましい。活性エネルギー線重合性物質の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1質量%以上35質量%以下、さらには10質量%以上25質量%以下とすることが好ましい。重合開始剤の含有量(質量%)は、活性エネルギー線重合性物質の含有量にも依存するが、概ね、インク全質量を基準として、0.1質量%以上7質量%以下、さらには0.3質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
インクの色材として顔料を用いる場合には、インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.3質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。また、顔料の着色力は顔料粒子の分散状態も依存するが、顔料の含有量が0.3質量%以上1質量%未満である場合においては、所謂、淡インクとして利用する範囲となる。また、顔料の含有量が1質量%以上である場合においては、一般のカラー着色用の濃インクとして利用する範囲となる。顔料分散体の含有量は、インクジェット記録装置に適したインクの粘度や流動特性にも依存する。
本発明のインクは、オンデマンド型のインクジェット方法に適用する場合には、25℃における粘度の上限は15mPa・sであることが好ましい。また、本発明のインクを高密度で高駆動周波数のノズルを有するインクジェット記録装置に適用する場合には、25℃における粘度の上限は10mPa・sであることが好ましい。
また、表面張力は、本発明のインクを用いて普通紙などの記録媒体に記録することを鑑み、25℃において35mN/m(dyne/cm)以上であることが好ましい。普通紙への記録においては、カラー間のブリーディングを十分に抑制することが好ましい。そのために、通常のインクジェット用インクにおいては、表面張力を30mN/m程度の低い値に調整して、インクを短時間のうちに記録媒体中に浸透させる必要がある。しかしながら、この場合には画像濃度の低下を伴う。
これに対し本発明のインクでは、活性エネルギー線の照射時にできるだけインクが記録媒体の表面に滞留するように、表面張力を高く設定することが好ましい。このようにすることで、インクは記録媒体の表面近傍において効果的に硬化され、ブリーディングを十分に抑制可能であり、また、同時に高い画像濃度が得られる。この画像濃度の確保のためには、一方で、活性エネルギー線の照射時にある程度インクが記録媒体に対して濡れていることが好ましいので、表面張力の上限は25℃において50mN/m程度であることがより好ましい。
〔インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置〕
本発明のインクは、インクジェット方式の記録ヘッドに用いられることが好ましい。また、本発明のインクは、インクを収容する液体収容部を具備するインクカートリッジや記録ユニットに収容されるインクとしても、又は、前記インクカートリッジの充填用のインクとしても有効である。特に、本発明のインクは、インクジェット記録方式の中でも熱エネルギーの作用によりインクを吐出する方式の記録ヘッド及びインクジェット記録装置においても優れた吐出性能を実現できる、という優れた効果をもたらすものである。
熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録方式の代表的な構成や原理は、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である。特に、オンデマンド型の場合には、インクを保持するシートや液路に対応して配置した電気熱変換体に、記録情報に対応して核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくともひとつの駆動信号を印加する。これにより、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの発熱面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一対応し、インク内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長及び収縮により吐出口を介してインクを吐出して、少なくともひとつの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号は、米国特許第4,463,359号明細書、同第4,345,262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、前記発熱面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4,313,124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
記録ヘッドの構成は、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を有することが好ましい。これらの構成は米国特許第4,558,333号明細書、米国特許第4,459,600号明細書に記載されている。又は特許第2962880号公報、特許第3246949号公報、さらには特開平11−188870号公報に記載されている大気連通方式の吐出方式にも本発明は有効である。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通する吐出口を電気熱変換体の吐出部とする構成(特開昭59−123670号公報など)に対しても、本発明は有効である。
さらに、インクジェット記録装置が記録できる最大の記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドは、以下のものを用いることができる。例えば、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによって、その長さを満たす構成や一体的に形成された一個の記録ヘッドとしての構成でもよい。本発明は、前記したような構成のいずれでも、上述した効果を一層有効に発揮することができる。
また、インクジェット記録装置に装着することで記録装置との電気的な接続や記録装置からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドに対しても、本発明は有効である。また、記録ヘッドに一体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドに対しても、本発明は有効である。
また、インクジェット記録装置の構成として設けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段などを付加することは本発明の効果を一層安定できるので好ましい。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対するキャッピング手段、クリーニング手段、加圧若しくは吸引手段、電気熱変換体若しくはこれとは別の加熱素子、又はこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードである。
ここで、インクジェット記録装置の正面の概略図である図1を用いて具体的に説明する。インクジェット記録装置は、インクを収容するインクカートリッジ部1、記録を行う記録ヘッド部2、硬化のための活性エネルギー線の照射を行うランプ部3、記録ヘッド部及びランプ部を駆動する駆動部4、記録媒体を搬送する排紙部5を備えている。前記記録ヘッド部2は、記録ヘッドを多数並べたマルチヘッドを用いている。なお、これら以外に、不図示のワイピング部、キャッピング部、給紙部、駆動モーター部を備えている。
図1において、記録ヘッド部2はインクの吐出のためのノズル部が各色につき左右対称に配置されている。そして、記録ヘッド部2とランプ部3は一体となって左右に走査し、インクを記録媒体に付与した後、即座に活性エネルギー線が照射される。このため、普通紙に記録を行う際のインクの滲みやカラー間のブリーディングの抑制などが可能で、高品位、高精彩な画像を得ることができる。なお、活性エネルギー線として好ましく用いることができる紫外線照射ランプの詳細は後述する。
また、インクカートリッジ部1は、ここではブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色が配置されているが、より高精細な画像を記録するためにライトシアン(LC)やライトマゼンタ(LM)の6色を配置してもよい。また、ブラックインクの反応性は他のインクに比べて劣るので、シアン、マゼンタ、イエローを組み合わせてプロセスブラックを形成する3色の配置でもよい。なお、本発明においては、インクカートリッジは光を遮光できるものを用いることが好ましい。
なお、本発明においては、前記したインクジェット記録装置の他にも、ランプを排紙部前面に配したものや、給紙・排紙が回転ドラムに巻きつけられて行われるもの、乾燥部を別途設けたものなど適宜選ぶことができる。
<紫外線照射ランプ>
以下、本発明で特に好適な、インクの硬化に用いる紫外線照射ランプについて説明する。紫外線照射ランプは、水銀の蒸気圧が点灯中で1Pa以上10Pa以下であるような、所謂、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、蛍光体を塗布した水銀灯などが好ましい。これらの水銀ランプの紫外線領域における発光スペクトルは、184nm以上450nm以下の範囲であり、黒色又は着色したインク中の重合性物質を効率的に反応させるのに適している。また、電源をインクジェット記録装置に搭載する上でも、小型の電源を用いることができるので、その意味でも適している。水銀ランプには、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、ディープ紫外線ランプ、マイクロ波を用いて外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザーなどが実用されている。これらのランプの発光スペクトルは上記した範囲を含むので、電源サイズ、入力強度、ランプ形状などが許されれば、基本的には適用可能である。光源は、用いる重合開始剤の感度にも合わせて選択する。本発明のインクの硬化に使用し得る紫外線強度は、硬化に有効な波長領域において、500mW/cm2以上5,000mW/cm2以下であることが好ましい。照射強度が弱いと本発明の効果が十分に得られない場合がある。また、照射強度が強すぎると、記録媒体がダメージを受ける場合や、色材の退色を生じる場合がある。
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型インクの実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。勿論、本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。なお、特に指定のない限り、各インク中の成分の量は「質量部」を意味する。
<実施例1〜6及び比較例1、2のインクの調製>
(活性エネルギー線重合性物質、重合開始剤)
活性エネルギー線重合性物質として、以下に示す化合物1〜4、並びに、比較化合物1及び2を用いた。また、重合開始剤として、以下に示す重合開始剤1及び2を用いた。
Figure 2009132812
Figure 2009132812
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Figure 2009132812
Figure 2009132812
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Figure 2009132812
(インクの調製)
先ず、シアンの顔料分散体を以下のように調製した。顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3を用い、分散剤としてスチレン/アクリル酸/エチルアクリレートのランダムポリマー(平均分子量:3,500、酸価:150)を用いた。これらをビーズミルにて分散し、顔料固形分が10質量%で、顔料(P)とバインダー(B)の質量比率が、P/B比=3/1であるシアン顔料分散体を得た。また、レーザー光散乱型の粒子径測定装置(ELS−8000;大塚電子製)を用いて測定した顔料の平均粒子径は120nmであった。次に、表1に示す組成にて、各成分を混合して十分撹拌した後、ポアサイズ0.50μmのフィルタを用いて加圧濾過を行い、実施例1〜6、比較例1及び2の各シアンインクを調製した。なお、各インクのpHは、最終的に8.5となるように、0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整した。
Figure 2009132812
<実施例1〜6及び比較例1、2のインクの評価>
前記のように調製した実施例及び比較例の各シアンインクの評価を下記の要領で行った。
(評価用のインクジェット記録装置)
記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出するオンデマンド型インクジェット記録装置Pixus550i(キヤノン製)を、図1に示したものと同様の構成を有するように改造した。具体的には、記録ヘッド部に隣接する位置に、マイクロ波を用いて外部から無電極で水銀灯を励起するUVランプを搭載した。このインクジェット記録装置を用いて、下記(1)から(3)に記載する評価方法及び評価基準にしたがって評価した。また、UVランプはDバルブを用いた。照射位置での強度は1,500mW/cm2であった。また、UV照射時における記録媒体の搬送速度は、0.2m/秒であった。
(1)インク硬化性能
(1)−1:定着性
実施例1〜6、比較例1及び2のそれぞれのシアンインク、及び前記で説明した改造したインクジェット記録装置を用いて、オフセット記録用紙OK金藤(三菱製紙製)に100%ベタの画像を形成した。先述の条件で、記録媒体にUV照射装置を用いて紫外線を照射した。そして、記録10秒後に、前記記録媒体にシルボン紙を載せ、記録面に40g/cm2の荷重を載せた状態でシルボン紙を引っ張った。記録媒体の非記録部(白地部)及びシルボン紙に、記録部の擦れによって汚れが生じるか否かを目視で観察して、定着性の評価を行った。定着性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表2に示す。なお、本発明においては、600×600dpiで形成する画像の1画素に約5plのドットで全てを埋め尽くす記録を100%ベタという。
A:擦れによる部分が見られない。
B:擦れによる汚れ部分が殆ど見られない。
C:擦れによる汚れ部分が目立つ。
(1)−2:耐マーカー性
実施例1〜6、比較例1及び2のそれぞれのシアンインク、及び前記で説明した改造したインクジェット記録装置を用いて、上記と同様の条件でもってPPC用紙(キヤノン製)に12ポイントの文字を記録した。そして、記録1分後に、蛍光ペンスポットライターイエロー(パイロット製)を用いて、文字部を通常の筆圧で1度マークし、文字の乱れの有無を目視で観察して、耐マーカー性の評価を行った。耐マーカー性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表2に示す。
A:マーカーによる文字の乱れが生じない。
B:マーカーによる文字の乱れがわずかに生じる。
C:マーカーによる文字の乱れが著しく生じる。
(2)吐出安定性
実施例1〜6、比較例1及び2のそれぞれのシアンインク、及び前記で説明した改造したインクジェット記録装置を用いて、上記と同様の条件でもってPPC用紙(キヤノン製)に横罫線を連続して記録した。その後、得られた画像について、罫線の太さ、ドットの着弾位置を目視で観察して、吐出安定性の評価を行った。吐出安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表2に示す。
A:線の太さに変化がなく、ヨレもまったくない。
B:多少の太りがあるが実用上問題ないレベルである。
C:線の細りがあり、ヨレも多少見られる。
(3)保存安定性
実施例1〜6、比較例1及び2のそれぞれのシアンインクを、テフロン(登録商標)容器に入れ、密封した。これを、暗所60℃のオーブン中で1ヶ月保存した。保存前後の顔料の平均粒子径を比較して、保存安定性の評価を行った。保存安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表2に示す。
A:平均粒子径の変化が保存前後で±10%以内である。
B:平均粒子径の変化が保存前後で±10%を超えて±15%以内である。
C:平均粒子径の変化が保存前後で±15%を超える。
Figure 2009132812
以上、本発明によれば、活性エネルギー線による硬化性が良好であり、吐出安定性や保存安定性に優れる活性エネルギー線硬化型インクを提供することができる。また、本発明によれば、形成した画像(硬化物)が、定着性及び耐マーカー性に優れ、実用的な硬化性能のものとなる活性エネルギー線硬化型インクを提供することができる。なお、上記した実施例は、本発明の基本的構成を説明するために挙げたものであり、例えば、色材として他の色の顔料や染料を用いても、上記実施例と同様の性能のインクを提供することができることは言うまでもない。
本発明に用いられる好適なインクジェット記録装置の正面の概略図である。
符号の説明
1:本発明の活性エネルギー線硬化型インクを収容するインクカートリッジ部
2:インクカートリッジを搭載して記録を行う記録ヘッド部
3:硬化のための紫外線照射を行うランプ部
4:記録ヘッド部及びランプ部を駆動する駆動部
5:記録媒体を搬送する排紙部

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質、活性エネルギー線によってラジカルを生成する重合開始剤、水及び色材を少なくとも含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インク。
    Figure 2009132812
    (一般式(1)中、Rは下記一般式(2)で表される構造を示し、Xは下記一般式(3)又は一般式(4)で表される構造を示す。また、mは1以上4以下の整数を示す。)
    Figure 2009132812
    (一般式(2)中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1乃至6のアルキレン基、又は置換基を有していてもよい炭素数2乃至6のアルキレンオキシド基を示す。また、Rnはカルボニル基と、該カルボニル基の炭素原子に隣接した不飽和炭素−炭素結合を有する環状連結基を示す。)
    Figure 2009132812
    (一般式(3)及び一般式(4)中、Mは、それぞれ、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。)
  2. 前記一般式(2)中のRnが、下記一般式(5)〜(7)のいずれかで示される構造である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク。
    Figure 2009132812
  3. 前記一般式(1)で示される活性エネルギー線重合性物質の水溶性が、25℃・1気圧下の純水に対し1質量%以上完全溶解するものである請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型インク。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクを少なくとも収容してなる液体収容部を具備することを特徴とするインクカートリッジ。
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