JP2009125036A - 熱放散能力が向上した形質転換植物 - Google Patents

熱放散能力が向上した形質転換植物 Download PDF

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美栄子 樋口
Keiko Matsui
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南 松井
Hirohiko Hirochika
洋彦 廣近
Masaki Mori
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Abstract

【課題】植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を解明し、該遺伝子を植物に導入することにより、熱放散能力が向上した形質転換植物を提供する。
【解決手段】以下のいずれかの遺伝子が導入された、形質転換植物。(a)特定の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子。(b)特定の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。(c)特定の塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱放散能力が向上した形質転換植物、ならびにその作出方法および利用に関する。
近年、Fox hunting systemと呼ばれる、総合的に遺伝子機能解析を行うことができる方法が開発された(特許文献1)。この方法は、完全長cDNAを高発現型ベクターにつないでシロイヌナズナに該ベクターを導入し、完全長cDNAを高発現させたシロイヌナズナを作製するというものである。この方法を用いて、DNA配列は決定されているが機能は不明な遺伝子の解析が進められている。
しかしながら、植物の光合成に関与する遺伝子については、未だ全ての遺伝子が明らかになっていない。光合成反応は、どの植物も行っている基本的な反応であるため、光合成の調節に関わる因子は植物種に限らず同様なものが用いられていると思われる。したがって、ある植物において光合成に関与する遺伝子が明らかになれば、他の植物でも応用可能である。
また、従来から光合成の研究では、クロロフィル蛍光の測定がよく用いられる。クロロフィルは光を吸収して光合成を駆動するが、クロロフィルが吸収した光は、全て光合成に使われるわけではなく、一部が熱として放散され、また一部は光として放出される。この放出される光をクロロフィル蛍光と呼び、その測定値は光合成や熱放散の状態を反映する。クロロフィル蛍光測定装置は市販されており、簡便に測定することができる。クロロフィル蛍光については、例えば非特許文献1に解説されている。
再公表2003/018808号公報 http://hostgk3.biology.tohoku.ac.jp/hikosaka/fluorescence.html
本発明の課題は、植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を解明し、該遺伝子を植物に導入することにより、熱放散能力が向上した形質転換植物を提供することである。また、その形質転換植物の作出方法および該植物の利用を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、イネの完全長cDNAを1つずつ高発現させた、イネ完全長cDNA高発現シロイヌナズナライン(イネFOXラインという)を作製し、該シロイヌナズナのクロロフィル蛍光の測定を行い、野生型と比較してクロロフィル蛍光、特に熱放散の大きさを示すパラメーターに変化のあったシロイヌナズナを単離し、導入されたイネ完全長cDNAの塩基配列を決定することにより、熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を同定し、本発明を完成した。
本発明は、要約すると以下の通りである。
[1]以下の(a)〜(g)のいずれかの遺伝子が導入された、形質転換植物。
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAからなる遺伝子
(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
(c)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
(d)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
(e)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(f)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
(g)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
[2]単子葉植物または双子葉植物である、[1]に記載の形質転換植物。
[3]植物体、植物体の一部、植物培養細胞または種子である、[1]または[2]に記載の形質転換植物。
[4]タンパク質が、光合成能を低下させる活性をさらに有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の形質転換植物。
[5]強光耐性をさらに有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の形質転換植物。
[6]野生型と比べて薄緑色である、[1]〜[5]のいずれかに記載の形質転換植物。
[7]以下の(a)〜(g)のいずれかの遺伝子を含む組換えベクター。
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAからなる遺伝子
(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
(c)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
(d)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
(e)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(f)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
(g)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
[8]以下の(a)〜(g)のいずれかの遺伝子を植物細胞に導入し、植物を育成する、形質転換体植物の作出方法。
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAからなる遺伝子
(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
(c)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
(d)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
(e)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(f)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
(g)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
[9][7]に記載の組換えベクターを用いて遺伝子が導入される、[8]に記載の方法。
[10][1]〜[6]のいずれかに記載の形質転換植物を植える、雪解けを促進する方法。
熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物に導入することにより、熱放散能力が人為的に調節された植物を作出することができる。本発明によれば、これらの遺伝子を過剰発現させることができるため、非常に簡便に植物体の熱放散能力を調節することができる。また、形質転換技術が確立されている植物であれば、上記遺伝子を発現させることが可能となり、扱う植物を選ばずに本発明を適用できる。また、本発明の形質転換植物を、例えば積雪地帯に植えておけば、雪解けを早めることができる。熱放散能力が向上したということは、逆に言えば光合成能が低下したということであるので、本発明の形質転換植物は、強光耐性も有し得る。例えば、赤道直下地帯に該形質転換植物を植えても良好に生育し得る。さらに本発明の形質転換植物は、野生型と比較して薄緑色であるので、園芸等の分野での新たな商品価値を有し得る。
(1)熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
本発明に用いる、熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子は、Fox hunting systemとクロロフィル蛍光測定を用いて、イネの光合成に関与する遺伝子を探索するなかで見出された。
Fox hunting system (Full-length cDNA Over-expressor Gene Hunting System)は、完全長cDNAを植物に導入して高発現させることによりもたらされる形質の変化から遺伝子の機能を明らかにする方法である(特許文献1参照)。本発明では、植物に導入する完全長cDNAとして、イネ完全長cDNAを用い、完全長cDNAを導入する植物として、シロイヌナズナを用いた。
具体的には、イネの完全長cDNA約13,000種類をcDNAの等量比のプールとして調製し(標準化という)、このcDNAをプロモーター、エンハンサー、ターミネーター等の制御領域、薬剤耐性遺伝子などの選択マーカーを持ったT−DNAベクターに組み込む。該T−DNAベクターをアグロバクテリウムに導入してイネ完全長cDNA発現ライブラリー(イネFOXライブラリーという)を作製する。該アグロバクテリウムを用いてフローラルディッピング法によりシロイヌナズナの形質転換を行い、シロイヌナズナの形質転換ライン(イネFOXライン)を作製する。Fox hunting systemでは、植物を何億クローンものライブラリーに感染させても、1植物に1〜2クローンしか導入されないので、植物に別々のクローンが導入された形質転換ラインを作製することができる。
上記の形質転換されたシロイヌナズナからT1種子を回収し、T1種子を播種して、さらにT2世代の種子を回収する。T2種子と、対照として野生型の種子を同時に播種し、8〜10日間生育させた後、クロロフィル蛍光測定を行う。クロロフィル蛍光強度の変化、特に熱放散の大きさを示すパラメーターのNPQの変化が見られた個体を単離し、その個体に導入されたイネ完全長cDNAを、PCR法およびDNA塩基配列決定法を用いて同定する。
クロロフィル蛍光測定は、市販のクロロフィル測定装置(PSI社(チェコ)、H. Waltz社(ドイツ)、LI−COR社(米国)等)を用いて行うことができる。クロロフィル蛍光測定で得られる蛍光強度から算出されるクロロフィル蛍光パラメーターにより、光合成電子伝達の活性や熱放散の程度等を評価することができる。
クロロフィル蛍光測定は、クロロフィル蛍光測定装置を用いてサンプルに3種類の光を照射して行う。1つめはmeasuring beam(測定光)であり、蛍光誘導のための微弱な光強度の光である。2つめはflash(閃光)であり、全ての光化学系II電子受容体を還元するための強い強度の光である。3つめはactinic light(照射光)であり、一定強度の光を当てたときの蛍光強度を知りたいとき、その一定強度の光を指す。
光のないところに置かれた葉にMeasuring beamを当てたときの蛍光強度をFという。Flashを照射すると、光化学系IIの電子受容体が還元され、蛍光収率が上がり、このときの蛍光強度をFmという。Fm−FをFvとし、当たった光のうちどれだけを光化学反応に利用できたかを示す割合を量子収率とすると、Fv/Fmは光化学系IIの最大量子収率、すなわち光化学系IIの活性を示す。全てのエネルギーが光化学反応に使われる場合は、Fv/Fmは1になる(実際の植物では0.8〜0.83くらいであるが、これは光のない条件下でも熱放散が若干起こっているためである)。
一定強度の光であるactinic lightをしばらく当てて光合成系が定常状態にあるときに、measuring beamを当てると、蛍光収率が上がり、このときの蛍光強度をFという。ここでflashを当てると、蛍光強度は上がるがFmほどには上がらず、このときの蛍光強度をFm’という。flashが消えると蛍光はFに戻り、さらにactinic lightを消すと、蛍光強度は大きく減少し、一瞬Fよりも下がる。このときの値をF’という。
クロロフィル蛍光パラメーターは、以下のように示される。
qPは、qP=(Fm’−F)/(Fm’−F’)という式で表され、photochemical quenching(光合成系のタンパク質が活性化され、光化学反応に流れるエネルギーが多くなることによる蛍光強度の低下)の係数である。
NPQは、NPQ=(Fm−Fm’)/Fm’という式で表され、non-photochemical quenching(熱放散が多くなることによる蛍光強度の低下)の係数であり、熱放散の大きさを示す。
φIIは、φII=(Fm’−F)/Fm’という式で表され、光化学系IIが吸収した光量子あたりの電子伝達量を示す。
Fv/Fm、qP、φIIは、値が高いと、より光合成活性が増加していることを示し、NPQは、値が高いと、熱として放散しているエネルギーが高いことを示す。
本発明では、植物体に光合成を駆動するための連続光を照射し、光照射時に各植物体から放出されるクロロフィル蛍光強度を二次元的にまた経時的に測定できるシステムを用い、イネFOXラインのスクリーニングを行った。スクリーニングでは、特に、熱放散の大きさを示すNPQに注目し、野生型と比べてNPQの値が高かった個体を単離した。NPQの値が高いと判断できたイネFOXラインについて、導入されたイネ完全長cDNAの塩基配列を決定した。さらに、該イネ完全長cDNAをシロイヌナズナに再度形質転換し、得られた再形質転換体において、熱放散能力の向上が見られるかを確認した。このようにして、熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を同定した。
同定された遺伝子は、具体的には、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAである。
本発明に用いる遺伝子は、その遺伝子によりコードされるタンパク質が植物の熱放散能力を向上させる活性を有する限り、上記配列番号に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるDNAでもよい。
本明細書において「配列番号1に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列」とは、例えば、配列番号1に示す塩基配列の1〜10個、好ましくは1〜5個の塩基が欠失してもよく、配列番号1に示す塩基配列に1〜10個、好ましくは1〜5個の塩基が付加してもよく、あるいは配列番号1に示す塩基配列の1〜10個、好ましくは1〜5個の塩基が他の塩基に置換してもよいことを意味する。
また、本発明に用いる遺伝子は、その遺伝子によりコードされるタンパク質が植物の熱放散能力を向上させる活性を有する限り、上記配列番号に示す塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAでもよい。
本明細書において「配列番号1に示す塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列」の「同一性」は、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。
さらに、本発明に用いる遺伝子は、その遺伝子によりコードされるタンパク質が植物の熱放散能力を向上させる活性を有する限り、上記配列番号に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAでもよい。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが実質的に形成されない条件をいう。例えば、同一性が高い核酸、すなわち配列番号1に示す塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより同一性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム塩濃度が15〜750mM、好ましくは50〜750mM、より好ましくは300〜750mM、温度が25〜70℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは55〜65℃、ホルムアミド濃度が0〜50%、好ましくは20〜50%、より好ましくは35〜45%での条件をいう。さらに、ストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件が、通常はナトリウム塩濃度が15〜600mM、好ましくは50〜600mM、より好ましくは300〜600mM、温度が50〜70℃、好ましくは55〜70℃、より好ましくは60〜65℃である。
本発明に用いられる遺伝子は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列からなるタンパク質は、それぞれ、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAにより、コードされる。
また、本発明に用いられる遺伝子は、その遺伝子によりコードされるタンパク質が植物の熱放散能力を向上させる活性を有する限り、上記配列番号に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
本明細書において「配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列」とは、例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号2に示すアミノ酸配列に1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは配列番号2に示すアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよいことを意味する。
さらに、本発明に用いられる遺伝子は、その遺伝子によりコードされるタンパク質が植物の熱放散能力を向上させる活性を有する限り、上記配列番号に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
本明細書において「配列番号2に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列」の「同一性」は、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。
本発明に用いる遺伝子は、配列番号1〜18のいずれかの配列に基づいて設計したプライマーを用いて、cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリー等由来の核酸を鋳型としたPCR増幅を行うことにより、核酸断片として得ることができる。また、該遺伝子は、上記ライブラリー等由来の核酸を鋳型とし、該遺伝子の一部であるDNA断片をプローブとしてハイブリダイゼーションを行うことにより、核酸断片として得ることができる。あるいは該遺伝子は、化学合成法等の当該技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、核酸断片として合成してもよい。
上記DNAまたはアミノ酸の欠失、付加および置換は、上記タンパク質をコードする遺伝子を、当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。遺伝子に変異を導入するには、例えばKunkel法またはGapped duplex法等により行うことができ、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(Mutan-K(タカラバイオ株式会社)、LA PCR in vitro mutagenesis kit(タカラバイオ株式会社))等を用いて変異を導入できる。
(2)組換えベクター
植物形質転換に用いる本発明の組換えベクターは、上記(a)〜(g)のいずれかの遺伝子を適当なベクターに導入することにより構築することができる。ベクターとして、アグロバクテリウムを介して植物に目的遺伝子を導入することができるpBI系、pPZP系、pSMA系のベクター等が好適に用いられる。特にpBI系のバイナリーベクターまたは中間ベクター系が好適に用いられ、例えばpBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3、pBIG2113等が挙げられる。バイナリーベクターとは、大腸菌(Escherichia coli)およびアグロバクテリウムにおいて複製可能なシャトルベクターで、バイナリーベクターを保持するアグロバクテリウムを植物に感染させると、ベクター上にあるLB配列とRB配列よりなるボーダー配列で囲まれた部分のDNAを植物核DNAに組み込むことができる。また、その他のベクターとして、植物に遺伝子を直接導入することができるpUC系のベクター、例えばpUC18、pUC19、pUC9等が挙げられる。さらに、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクターが挙げられる。
バイナリーベクター系プラスミドを用いる場合、上記バイナリーベクターの境界配列(LB、RB間)に、目的遺伝子を挿入し、この組換えベクターを大腸菌中で増殖する。次いで、増幅した組換えベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンスGV3101、C58、LBA4404、EHA101、EHA105あるいはアグロバクテリウム・リゾゲネスLBA1334等に、エレクトロポレーション法等により導入し、該アグロバクテリウムを用いて植物への目的遺伝子の導入を行う。
ベクターに目的遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法等が採用される。
また、目的遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、ベクターには目的遺伝子の上流、内部あるいは下流に、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、バイナリーベクター系を使用するための複製開始点(TiまたはRiプラスミド由来の複製開始点等)、選択マーカー遺伝子等を連結することができる。
プロモーターとしては、植物細胞において機能し、植物の特定の組織内あるいは特定の発育段階において発現を導くことのできるDNAであれば、植物由来のものでなくてもよい。具体的には、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター、トウモロコシ由来ユビキチンプロモーター、イネ由来アクチンプロモーター、タバコ由来PRタンパク質プロモーター等が挙げられる。
エンハンサーとしては、例えば、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ、CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域、転写エンハンサーE12、オメガ配列等が挙げられる。
ターミネーターとしては、プロモーターにより転写された遺伝子の転写を終結できる配列であればよく、例えばノパリン合成酵素(NOS)遺伝子のターミネーター、オクトピン合成酵素(OCS)遺伝子のターミネーター、CaMV 35S RNA遺伝子のターミネーター等が挙げられる。
選択マーカー遺伝子としては、例えばハイグロマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等が挙げられる。
(3)形質転換植物およびその作出方法
本発明の形質転換植物は、上記(a)〜(g)のいずれかの遺伝子または上記組換えベクターを対象植物に導入することによって作出することができる。本発明において「遺伝子の導入」とは、例えば公知の遺伝子工学的方法により、目的遺伝子を上記宿主植物の細胞内に発現可能な形で導入することを意味する。ここで導入された遺伝子は、宿主植物のゲノムDNAに組み込まれてもよいし、外来ベクターに含有されたままで存在していてもよい。
遺伝子または組換えベクターの導入は、公知の方法、例えばアグロバクテリウム法、PEG−リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。アグロバクテリウム法では、プロトプラストを用いる場合、組織片を用いる場合、および植物体そのものを用いる場合(in planta法)がある。プロトプラストを用いる場合は、TiプラスミドまたはRiプラスミドをもつアグロバクテリウム(それぞれAgrobacterium tumefaciensまたはAgrobacterium rhizogenes)と共存培養する方法、スフェロプラスト化したアグロバクテリウムと融合する方法(スフェロプラスト法)、組織片を用いる場合は、対象植物の無菌培養葉片(リーフディスク)に感染させる方法やカルス(未分化培養細胞)に感染させる等により行うことができる。また、種子あるいは植物体を用いるin planta法を適用する場合、吸水種子、幼植物(幼苗)、鉢植え植物等へのアグロバクテリウムの直接処理等にて実施可能である。これらの植物形質転換法は、「新版 モデル植物の実験プロトコール 遺伝学的手法からゲノム解析まで(監修 島本功 岡田清孝、秀潤社、2001年)」等の記載に従って行うことができる。
遺伝子が植物体に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等により行うことができる。例えば、形質転換植物からDNAを調製し、目的遺伝子に特異的なプライマーを設計してPCRを行う。PCRを行った後は、増幅産物についてアガロース電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらにマイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光または酵素反応等により増幅産物を確認する方法でもよい。
あるいは、種々のレポーター遺伝子、例えばベータグルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ(LUC)、Green fluorescent protein(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ベータガラクトシダーゼ(LacZ)等の遺伝子を目的遺伝子の下流域に連結したベクターを作製し、該ベクターを導入したアグロバクテリウムを用いて上記と同様にして植物を形質転換させ、該レポーター遺伝子の発現を測定することによっても確認できる。
本発明において形質転換に用いられる植物としては、単子葉植物または双子葉植物のいずれでもよく、例えばアブラナ科(シロイヌナズナ、キャベツ、ナタネ等)、イネ科(イネ、トウモロコシ、オオムギ、コムギ等)、ナス科(ナス、タバコ、トマト、ジャガイモ等)に属する植物が挙げられるが、これらの植物に限定されるものではない。
本発明において、形質転換の対象とする植物材料としては、茎、葉、種子、胚、胚珠、子房、茎頂、葯、花粉等の植物器官・植物組織、これらの切片、未分化のカルス、これを酵素処理して細胞壁を除いたプロトプラスト等の植物培養細胞のいずれであってもよい。また、in planta法の場合、吸水種子や植物体全体を利用できる。
植物培養細胞を形質転換の対象とする場合において、得られた形質転換細胞から形質転換体を再生させるためには、既知の組織培養法により器官または個体を再生させればよい。このような操作は、植物細胞から植物体への再生方法として一般的に知られている方法により、当業者であれば容易に行うことができる。植物細胞から植物体への再生については、例えば以下のように行うことができる。
まず、形質転換の対象とする植物材料として植物組織またはプロトプラストを用いた場合、これらを無機要素、ビタミン、炭素源、エネルギー源としての糖類、植物生長調節物質(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノステロイド等の植物ホルモン)等を加えて滅菌したカルス形成用培地中で培養し、不定形に増殖する脱分化したカルスを形成させる(以下「カルス誘導」という)。このように形成されたカルスをオーキシン等の植物生長調節物質を含む新しい培地に移しかえて更に増殖(継代培養)させる。
カルス誘導は寒天等の固形培地で行い、継代培養は例えば液体培養で行うと、それぞれの培養を効率よくかつ大量に行うことができる。次に継代培養により増殖したカルスを適当な条件下で培養することにより器官の再分化を誘導し(以下、「再分化誘導」という)、最終的に完全な植物体を再生させる。再分化誘導は、培地におけるオーキシン等の植物生長調節物質、炭素源等の各種成分の種類や量、光、温度等を適切に設定することにより行うことができる。かかる再分化誘導により、不定胚、不定根、不定芽、不定茎葉等が形成され、さらに完全な植物体へと育成させる。あるいは、完全な植物体になる前の状態(たとえばカプセル化された人工種子、乾燥胚、凍結乾燥細胞および組織等)で貯蔵等を行うこともできる。
本発明の形質転換植物は、上記(a)〜(g)のいずれかの遺伝子を導入した植物体全体、植物体の一部(例えば葉、花弁、茎、根、花粉等)、植物培養細胞(例えばカルス、プロトプラスト等)、種子のいずれをも包含するものである。また、該植物体の有性生殖または無性生殖により得られる子孫の植物体、およびその子孫植物体の一部、培養細胞、種子も包含するものとする。本発明の形質転換植物は、形質転換植物から種子、プロトプラスト等の繁殖材料を取得し、それを栽培または培養することによって量産することができる。
上記のようにして得られる形質転換植物は、上記(a)〜(g)のいずれかの遺伝子の高発現により、植物の熱放散能力が向上し、光合成能が低下する。植物の向上された熱放散能力という特性を利用して、例えば、豪雪地帯に本発明の形質転換植物を植えておけば、植物の熱放散により雪解けを促進することが可能である。また、低下された光合成能という特性は、植物の強光耐性につながり、例えば、赤道直下の日光の強い地帯に本発明の形質転換植物を植えても、枯死しないで生長することが可能である。さらに、本発明の形質転換植物は、野生型と比べて薄緑色であるという形質を有するので、園芸等の分野での新品種となり得る。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)Fox hunting systemによるイネFOXラインの作製
本実施例では、恒常発現型ベクターpBIG2113N(Taji,T.らPlant J.,2002.24(4):p.p.417-426及びBecker,D.らNucleic Acid Res.,1990.18(1):p.203)にSfiIクローニングサイトを導入したpBIG2113SFを用いて、イネ完全長cDNAのスクリーニングを行った。
(i)標準化イネ完全長cDNAミックスの作製
イネから完全長cDNAをCAPtrapper法によって作製した。このcDNAをLambda ZAP、あるいはLambda pLC−1−BのSfiI制限酵素部位によって挟まれる部位にクローニングした(参考文献:Seki M. et al. Plant J., 15, 707-720 (1998))。ベクター配列を用いてcDNAの5’末端と3’末端の配列を読み、cDNAのグルーピングを行い、独立の20,000種クローンを同定した(参考文献:Seki M. et al. Plant Physiol. Biochem. 39, 211-220 (2001))。次に、50ng/μlに調製した各クローンから0.5μlを分取して1本のチューブに混ぜた。この混合液1μl分取し、20μlのElectric competent cell DH10B(Gibco BRL)に形質転換した。Ampが含まれた寒天培地上で生育した独立のコロニーを約200,000個混合し、そこからプラスミドを回収した。これを標準化イネ完全長cDNAミックスとした。
(ii)イネFOXライブラリーの作製
2μgの標準化イネ完全長cDNAミックスと、700μgのpBIG2113SFを混ぜてから同時にSfiIで完全に切断した。切断後、イソプロパノール沈殿により濃縮し、8μlの水に溶かし1μlの10×バッファーと1μlのT4リガーゼを混ぜ、16℃で1昼夜反応させた。2μlの反応液を40μlのElectric competent cell DH10Bに混ぜて形質転換した。
カナマイシン(Km)が含まれた寒天培地上で生育した独立のコロニーを約150,000個混合し、そこからプラスミド回収をした。回収した2μlのプラスミド液を、40μlのElectric competent Agrobacterium cell GV3101に混ぜて形質転換した。Kmが含まれる寒天培地上で生育した独立のコロニーを約150,000個LB液体培地に懸濁し、15%になるようグリセロールを加え、−80℃にて保存した。このグリセロール溶液をイネFOXライブラリーとした。
(iii)イネFOXラインの作製
上記イネFOXライブラリーを約200,000コロニー生育させ、ディッピング溶液に懸濁させた後、野生型シロイヌナズナ(エコタイプ:コロンビア)のフローラルディッピングを行った。種(T1種子)を収穫し、ハイグロマイシンを含む貧栄養培地BAM上で発芽させ、ハイグロマイシン耐性を示す約20,000ラインの植物のみを土に移植した。
(2)イネFOXラインT2世代のクロロフィル蛍光測定によるスクリーニング
上記(1)(iii)で土に移植した植物から種(T2種子)を収穫し、GM(-suc)培地入りシャーレ1枚につき、イネFOXライン3系統と野生型の種子を、1系統につき8個×2列ずつ、並べて播種した。23℃、70μE/m/secの連続照明の栽培条件下で8〜10日間生育させ、クロロフィル蛍光測定に供した。
クロロフィル蛍光測定装置は、FluorCom700MF(PSI社、チェコ)を用いた。パラメータNPQが野生型と比較して高かった個体を候補株として単離した。クロロフィル蛍光測定装置による画像の例を図1に示す。図中のNPQのスケールは、LowからHighに向かって青、緑、黄、赤と変化することを示し、色によりNPQのレベルがわかるようになっている。図中の点線は、野生型(WT)の個体があることを示す。野生型個体の色はいずれも青であり、NPQレベルが低いことがわかる。図中の白線は、イネFOXラインの個体があることを示し、この白線内には候補株が含まれる。候補株は、青で示されるNPQレベルよりも高いNPQレベルを示す、緑、黄、赤で示される。白線内には、青が1個体、青緑が2個体、緑が3個体、黄が4個体、赤が1個体ある。
クロロフィル蛍光測定によるスクリーニングの結果、クロロフィル蛍光が変化していると判断できたイネFOXライン9系統と、野生型のクロロフィル蛍光測定結果を以下の表に示す。表中の各パラメーターの数値は各系統の全個体の平均値である。
Figure 2009125036
また、候補株の葉のクロロフィル量を測定したところ、単離した多くの候補株は薄緑の葉を持つ植物体となっていることが認められた。
(3)cDNAの再クローニングとイネFOXライン9系統に挿入されたイネ完全長cDNAの塩基配列決定
上記(2)でスクリーニングされたイネFOXライン9系統からロゼッタ葉約2枚(約200mgfw)を回収し、ゲノムDNAを抽出した。このDNAに対してPCR反応を行った。PCR反応液は以下の組成のもの用い、94℃で0.5分、55℃で0.5分及び68℃で3分を1サイクルとして30サイクルの条件で反応させた。
反応液組成:
プライマー(100pM) 2×0.5μl
dNTP(200μl) 5μl
バッファー(×10) 5μl
ポリメラーゼ 1μl
ゲノムDNA 10μl
蒸留水 28μl
合計 50μl
PCRのためのプライマーは以下の通りである。
GGAAGTTCATTTATTCGGAGAG(配列番号19)
GGCAACAGGATTCAATCTTAAG(配列番号20)
PCR産物をアガロースゲル上で回収した後に、pBIG2113SFと混ぜ、SfiIによって完全切断した後にイソプロパノールを用いて沈殿させ、T4リガーゼを処理後、大腸菌に形質転換した。PCR断片が挿入されたプラスミドを選抜して、上記プライマーを用いて挿入されているcDNA断片の塩基配列を同定した。
同定したイネ完全長cDNAの配列を、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17に示す。また、これらのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18に示す。
(4)表現型の再確認と遺伝子機能の同定
上記(3)で得られたイネ完全長cDNAをシロイヌナズナに再度形質転換し、得られた再形質転換体において、熱放散能力が向上する形質が再現されているか否かを上記(2)と同様の方法で確認を行ったところ、再現されたことがわかった。
クロロフィル蛍光測定装置による野生型シロイヌナズナおよびイネFOXラインのNPQレベルを示す。

Claims (10)

  1. 以下の(a)〜(g)のいずれかの遺伝子が導入された、形質転換植物。
    (a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAからなる遺伝子
    (b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
    (c)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
    (d)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
    (e)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
    (f)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
    (g)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
  2. 単子葉植物または双子葉植物である、請求項1に記載の形質転換植物。
  3. 植物体、植物体の一部、植物培養細胞または種子である、請求項1または2に記載の形質転換植物。
  4. タンパク質が、光合成能を低下させる活性をさらに有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の形質転換植物。
  5. 強光耐性をさらに有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の形質転換植物。
  6. 野生型と比べて薄緑色である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の形質転換植物。
  7. 以下の(a)〜(g)のいずれかの遺伝子を含む組換えベクター。
    (a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAからなる遺伝子
    (b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
    (c)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
    (d)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
    (e)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
    (f)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
    (g)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
  8. 以下の(a)〜(g)のいずれかの遺伝子を植物細胞に導入し、植物を育成することを特徴とする、形質転換体植物の作出方法。
    (a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAからなる遺伝子
    (b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
    (c)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
    (d)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15または配列番号17に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
    (e)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
    (f)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
    (g)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16または配列番号18に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物の熱放散能力を向上させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
  9. 請求項7に記載の組換えベクターを用いて遺伝子が導入される、請求項8に記載の方法。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載の形質転換植物を植えることを特徴とする、雪解けを促進する方法。
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