ところが、上記従来の収差補正技術は、以下のような問題点を有していた。すなわち、
(1)第1の従来技術では、光路中のレンズ間隔を制御するための駆動機構を備える必要があるので、光ピックアップ装置が大型化する。
(2)第2および第3の従来技術では、液晶層の厚さが厚くなるため、応答速度が遅い。
具体的には、第1の従来技術(特許文献1)では、球面収差を補正する際に、平凸レンズと平凹レンズとの間隔を変えている。このため、レンズの間隔を調整するためのモータやギア等の駆動機構を配置するスペースが必要である。その結果、光ピックアップ装置の寸法が大型化するという課題があった。特に、各レンズの設置誤差の許容範囲を拡大して経時変化の影響を低減することや、球面収差補正の感度向上を考慮すると、各レンズの可動範囲を大きくとる必要がある。その結果、さらに光ピックアップ装置の寸法が大型化し、駆動時間も低下するという課題があった。
このように、第1の従来技術には、光ピックアップ装置が大型化するという課題があるが、他にも以下に示すような問題がある。
光ピックアップ装置に衝撃や振動が加わると、補正した光学部品の間隔が変化してしまい、球面収差補正誤差が生じるという問題がある。
また、平凸レンズと平凹レンズの間隔を変えているため光学系倍率が変化する。このような光学系倍率の変化があると、対物レンズに入射するレーザ光の光量が変化して、再生パワーや記録パワーが変化してしまうという問題がある。
すなわち、再生パワーが最適な再生パワーよりも低すぎると信号レベルが低下して再生信号品質が劣化するし、逆に高すぎても再生時に記録マークを消去してしまう再生劣化が発生するという問題があった。記録パワーについても、最適パワーから変化すると記録ストラテジーが変化して十分な記録特性が得られなくなるという問題がある。
さらに、この光学系倍率の変化はRIM強度が変化する原因にもなる。RIM強度とは、対物レンズに入射する光ビームの強度分布を表す指標であり、光ビームの強度ピークを1とした時の対物レンズの有効径外縁部の強度比で表される。RIM強度が変化することにより光ディスクに集光される光ビームのスポット径が変化して、再生特性が劣化するという問題が生じる。さらに、トラッキング誤差信号の検出に3ビームを用いる光ピックアップ装置においては、この光学系倍率の変化により光ディスク上での3ビーム間隔が変化して、トラックとサブビームとの配置関係が変化するために、トラッキング誤差信号がゲイン不足となりトラッキング制御の引込み動作が不安定になるという問題があった。
一方、第2の従来技術(特許文献2)および第3の従来技術(特許文献3)では、液晶素子を用いて球面収差を補正している。ところが、一般に、液晶は応答速度が遅く、補正に必要な位相差が大きくなるほど(すなわち液晶層が厚くなるほど)、応答速度が遅くなるという課題がある。
応答速度を向上するためには、球面収差補正量をなるべく小さくして、液晶層の厚みを薄くすることが効果的である。液晶層の厚みを薄くするためには、球面収差補正量がゼロの状態に対して、プラス方向とマイナス方向とで対称に補正するように補正範囲を設定するのが理想である。
しかし、球面収差には、以下のような成分があり、補正範囲は必ずしも対称にはなっていなかった。ディスク基板厚さtの誤差は、標準厚さに対してプラス方向とマイナス方向で対称な誤差範囲を持つように設計される。しかし、対物レンズ等の光学部品で発生する光学系に残存する球面収差(設計波長と使用波長との波長誤差、2要素対物レンズのレンズ間隔誤差やレンズ厚み誤差等で発生)は光学系毎にばらついている。したがって、液晶素子では、光学系に残存する球面収差も考慮して、大きな補正範囲に対応しておく必要があった。その結果、球面収差補正量にオフセットが生じる。このオフセットとは、標準厚さの光ディスクを再生する場合においても、光学系に残存する球面収差を補正するために液晶素子の球面収差補正量がゼロにならないことを意味する。したがって、球面収差の補正方向によってはディスク基板厚さtの誤差による球面収差に上記オフセット分も加えて補正する必要が生じていた。その結果、液晶層の厚みが厚くなり応答速度が低下していた。
このように、第2および第3の従来技術には、応答速度が遅くなるという課題があるが、他にも以下に示すような問題がある。
すなわち、第2の従来技術および第3の従来技術に用いられる液晶素子としては、例えば、光路長を変化させる位相変化を与えることにより球面収差を直接補正するタイプ(第2の従来技術)と、液晶素子に入射する光を球面波に変換する位相変化を与えて対物レンズで球面収差を発生させることにより、発生させた球面収差で補正すべき球面収差を補正するタイプ(第3の従来技術)の2種類がある。前者は球面収差の補正の際に光学系の倍率が変化しないが、対物レンズとの光軸ずれに弱いという問題がある。一方、後者は、ビームエキスパンダと同じ原理(前述の第1の従来技術と同じ原理)で球面収差を補正するので、対物レンズとの光軸ずれには強いが光学系倍率が変化してしまうという問題がある。
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、球面収差の補正を行う際に、光ピックアップ装置内に光学部品を機械的に移動するための駆動機構が不要であって、装置の薄型化および収差補正の応答速度の速い光ピックアップ装置およびその製造方法を提供することにある。
本発明にかかる光ピックアップ装置は、上記の課題を解決するために、光源からの出射光を記録媒体の記録層に集光する集光手段と、光源から記録層に至る光路中で発生した収差を補正する収差補正手段とを備えた光ピックアップ装置において、上記収差補正手段は、収差補正量を調整可能な第1の収差補正手段と、収差補正量が固定された第2の収差補正手段とで構成されることを特徴としている。
上記の構成によれば、光路中の球面収差は、第1の収差補正手段と第2の収差補正手段とで分担して補正される。ここで、第1の収差補正手段は収差補正量を変動することができ、第2の収差補正手段は収差補正量が所定の値に固定されている。
前述のように、特許文献1では、収差補正手段は2つのレンズからなり、このうち一方のレンズを駆動手段によって移動させてレンズ間隔を調節して、光路中に発生する球面収差を補正している。その結果、駆動手段を備える必要があるので、光ピックアップ装置が大型化してしまう。また、駆動手段による振動などによってその間隔がズレてしまうと、収差の補正ができなくなる。
これに対して、上記本発明の構成によれば、従来のように収差補正のために駆動手段を設ける必要がない。したがって、光ピックアップ装置を小型化することができる。また、駆動手段による振動が発生しないので、確実に収差を補正できる。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記第1の収差補正手段は、印加される電圧の大きさによって位相変化が制御される位相変化層を備えている構成であってもよい。
上記の構成によれば、第1の収差補正手段によって行う球面収差の補正は、位相変化層に印加する電圧を変えることによって行う。すなわち、第1の収差補正手段で行う収差補正は、電気信号のみによって制御できる。したがって、光ピックアップ装置に機械的な振動が発生することはない。それゆえ、機械的な振動による影響を受けることなく安定した収差補正が可能となる。
なお、第1の収差補正手段の構成としては、例えば、電圧印加電極と前記電圧印加電極に対向するように配置された対向電極と、前記電圧印加電極と前記対向電極との間に配置された位相変化層を含む構成であってもよい。これにより、前記電圧印加電極と前記対向電極との間の電圧を変化させることによって、位相変化層で発生する位相変化が制御できる。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記位相変化層は、印加される電圧の大きさによって屈折率が変化する材料からなる構成であってもよい。
上記の構成によれば、位相変化層に印加される電圧を制御することにより屈折率が変化する。したがって、位相変化層の屈折率を変化させることにより、容易に位相変化層に入射する光の位相が変化する。これにより、容易に収差の補正ができる。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記位相変化層は、液晶からなる構成であってもよい。
前述の特許文献2および特許文献3のように、液晶のみを用いて光路中の収差補正を行うと、液晶層の厚さが厚くなり、応答速度が遅くなっていた。
これに対して、本発明によれば、収差補正は、液晶を含む第1の収差補正手段と第2の収差補正手段とによって分担して行う。したがって、第1の収差補正手段の収差補正量を必要最小限に固定したとしても、第2の収差補正手段によって収差の補正ができる。このため、第1の収差補正手段として、液晶を用いた場合でも、液晶の厚さを薄くすることができる。その結果、収差補正の応答速度を速くすることができる。
また、第1の収差補正手段と第2の収差補正手段との分担で収差補正が行われるので、従来よりも液晶層の消費電力が抑制できる。
本発明の光ピックアップ装置において、上記第1の収差補正手段は、当該第1の収差補正手段に入射する光の光路長を変化させる位相変化を与える構成であってもよい。
上記の構成によれば、第1の収差補正手段に入射光の光路長を変化させる位相変化を与えて、収差を補正している。すなわち、第1の収差補正手段は、収差を直接補正する位相変化を与える。これにより、第1の収差補正手段は、記録媒体の厚さ誤差により発生する球面収差を相殺するように球面収差成分のみを与えるので、集光手段の倍率が変化することなく、収差補正を行うことができる。すなわち、第1の収差補正手段から集光手段に入射される光には球面収差成分しか与えられないので集光手段の倍率が変化することなく、収差補正を行うことができる。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記第1の収差補正手段は、当該第1の収差補正手段に入射する光に、平面波を球面波に変換する位相変化を与える構成であってもよい。
上記の構成によれば、第1の収差補正手段に入射する光には、平面波を球面波に変換するような位相が与えられる。その結果、集光手段にはその球面波が入射されるので、集光手段では球面収差が発生する。上記の構成によれば、この集光手段で発生させた球面収差によって、補正すべき記録媒体の厚さ誤差により発生する球面収差を補正する。したがって、第1の収差補正手段と第2の収差補正手段との間に中心ズレがある場合にも、その影響を少なくして収差を補正できる。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記第1の収差補正手段と上記集光手段とが一体構造であってもよい。
上記の構成によれば、前記第1の収差補正手段と集光手段とが一体で保持される。したがって、第1の収差補正手段と集光手段とが、一体的に駆動させることができる。その結果、たとえ、記録媒体に偏心があったとしても、第1の収差補正手段と集光手段とは一体駆動できるので、中心ズレが発生しない。それゆえ、確実に記録媒体の記録層に集光することができる。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記収差補正手段は、さらに、上記第1の収差補正手段に入射する光の偏光方向とほぼ直交する偏光方向の光に対して収差の補正を行う第3の収差補正手段を備えている構成であってもよい。
上記の構成によれば、第3の収差補正手段は、第1の収差補正手段に入射する光の偏光方向と直交する偏光に対して、収差の補正を行う。記録媒体への入射光と、記録媒体からの反射光とでは、偏光方向がほぼ90度異なる。すなわち、光源からの光は、往路と復路とで偏光方向が90度異なる。
したがって、上記の構成によれば、例えば、第1の収差補正手段によって往路の収差補正を行い、第3の収差補正手段によって復路の収差補正を行うことができる。すなわち、光源から記録媒体までの往路と復路の両方の光路で球面収差が補正できる。したがって、フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号、情報再生信号などを復路の光から正確に検出することができる。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記第1の収差補正手段の収差補正量と、上記第3の収差補正手段の収差補正量とがほぼ一致する構成であってもよい。
上記の構成によれば、第1の収差補正手段と第3の収差補正手段との収差補正量がほぼ一致している。例えば、第1の収差補正手段と第3の収差補正手段は、互いに偏光方向が90度異なる液晶を適用できる。したがって、第1の収差補正手段および第3の収差補正量を必要最小限に固定したとしても、第2の収差補正手段によって収差の補正ができる。このため、第1の収差補正手段および第3の収差補正手段として、液晶を用いた場合でも、液晶の厚さを薄くすることができる。その結果、収差補正の応答速度を速くすることができる。
本発明の光ピックアップ装置において、上記第2の収差補正手段は、間隔の固定された2枚のレンズからなる構成であってもよい。
上記の構成によれば、第2の収差補正手段の間隔は固定されているので、レンズ間隔を制御するための駆動手段が不要である。したがって、光ピックアップ装置の小型化が可能である。
本発明の光ピックアップ装置において、上記第2の収差補正手段は、1枚のレンズからなる構成であってもよい。
上記の構成によれば、第2の収差補正手段は1枚のレンズから構成されている。第2の収差補正手段の収差補正量は固定されているので、収差補正量の異なるレンズを複数用意し、レンズを交換することにより収差を補正できる。これにより、光ピックアップ装置をより小型化できる。
本発明の光ピックアップ装置の製造方法は、上記の課題を解決するために、上記集光手段によって集光され、所定の厚さの基板を透過した光の収差を測定する工程と、前記工程で測定した収差がゼロに近づくように上記第2の収差補正手段を設置する工程とを含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、所定の厚さの基板、すなわち標準基板を透過した光の収差を干渉計によって測定する。続いて、第2の収差補正手段を移動させてこの収差がゼロに近づいた位置に第2の収差補正手段を固定する。これにより、光ピックアップ装置の光路中の収差が解消される。それゆえ、小型化が可能であり、応答速度の早い光ピックアップ装置を製造することができる。
なお、上記の製造方法は、所定厚さの基板を用いて干渉計により収差を測定する工程と、収差の測定値に基づいて第2の収差補償手段の収差補正量を調整する工程とを含んでいるということもできる。
また、本発明の光ピックアップ装置の製造方法は、上記の課題を解決するために、所定の厚さの基板を透過して記録層に記録された情報信号の再生特性を測定する工程と、前記工程の再生特性に基づいて上記第2の収差補正手段を設置する工程とを含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、まず、所定の厚さの基板、すなわち標準基板を透過し、記録層に記録された情報を再生する。続いて、その再生特性に含まれる収差の影響がゼロに近づいた位置に第2の収差補正手段を固定する。これにより、光ピックアップ装置の光路中の収差が解消される。それゆえ、小型化が可能であり、応答速度の速い光ピックアップ装置を製造することができる。
なお、上記の製造方法は、所定厚さの透明基板を通して記録層に記録された情報信号の再生特性を測定する工程と、再生特性の測定値に基づいて第2の収差補正手段の収差補正量を調整する工程とを含んでいるということもできる。
以上のように、本発明の光ピックアップ装置は、光源からの出射光を記録媒体の記録層に集光する集光手段と、光源から記録層に至る光路中で発生した収差を補正する収差補正手段とを備えた光ピックアップ装置において、上記収差補正手段は、収差補正量を調整可能な第1の収差補正手段と、収差補正量が固定された第2の収差補正手段とで構成されることを特徴としている。
それゆえ、従来のように収差補正のために駆動手段を別途設ける必要がない。したがって、光ピックアップ装置を小型化することができるという効果を奏する。また、駆動手段による振動が発生しないので、確実に収差を補正できるという効果を奏する。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記第1の収差補正手段は、印加される電圧の大きさによって位相変化が制御される位相変化層を備えている構成であってもよい。
それゆえ、機械的な振動による影響を受けることなく安定した収差補正が可能となるという効果を奏する。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記位相変化層は、印加される電圧の大きさによって屈折率が変化する材料からなる構成であってもよい。
それゆえ、位相変化層の屈折率を変化させることにより、容易に位相変化層に入射する光の位相が変化するので、容易に収差の補正ができるという効果を奏する。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記位相変化層は、液晶からなる構成であってもよい。
それゆえ、第1の収差補正手段として、液晶を用いた場合でも、液晶の厚さを薄くすることができるという効果を奏する。その結果、収差補正の応答速度を速くすることができるという効果を奏する。
また、第1の収差補正手段と第2の収差補正手段との分担で収差補正が行われるので、従来よりも液晶層の消費電力が抑制できるという効果を奏する。
本発明の光ピックアップ装置において、上記第1の収差補正手段は、当該第1の収差補正手段に入射する光の光路長を変化させる位相変化を与える構成であってもよい。
それゆえ、第1の収差補正手段は、記録媒体の厚さ誤差により発生する球面収差を相殺するように球面収差成分のみを与えるので、集光手段の倍率が変化することなく、収差補正を行うことができるという効果を奏する。すなわち、第1の収差補正手段から集光手段に入射される光には球面収差成分しか与えられないので集光手段の倍率が変化することなく、収差補正を行うことができるという効果を奏する。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記第1の収差補正手段は、当該第1の収差補正手段に入射する光に、平面波を球面波に変換する位相変化を与える構成であってもよい。
それゆえ、第1の収差補正手段と第2の収差補正手段との間に中心ズレがある場合にも、その影響を少なくして収差を補正できるという効果を奏する。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記第1の収差補正手段と上記集光手段とが一体構造であってもよい。
それゆえ、たとえ、記録媒体に偏心があったとしても、第1の収差補正手段と集光手段とは一体駆動できるので、中心ズレが発生しない。これにより、確実に記録媒体の記録層に集光することができるという効果を奏する。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記収差補正手段は、さらに、上記第1の収差補正手段に入射する光の偏光方向とほぼ直交する偏光方向の光に対して収差の補正を行う第3の収差補正手段を備えている構成であってもよい。
それゆえ、第1の収差補正手段によって往路の収差補正を行い、第3の収差補正手段によって復路の収差補正を行うことができるという効果を奏する。すなわち、光源から記録媒体までの往路と復路の両方の光路で球面収差が補正できるという効果を奏する。したがって、フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号、情報再生信号などを復路の光から正確に検出するこができるという効果を奏する。
本発明にかかる光ピックアップ装置において、上記第1の収差補正手段の収差補正量と、上記第3の収差補正手段の収差補正量とがほぼ一致する構成であってもよい。
それゆえ、第1の収差補正手段および第3の収差補正量を必要最小限に固定したとしても、第2の収差補正手段によって収差の補正ができる。このため、第1の収差補正手段として、液晶を用いた場合でも、液晶の厚さを薄くすることができるという効果を奏する。その結果、収差補正の応答速度を速くすることができるという効果を奏する。
本発明の光ピックアップ装置において、上記第2の収差補正手段は、間隔の固定された2枚のレンズからなる構成であってもよい。
それゆえ、光ピックアップ装置の小型化が可能であるという効果を奏する。
本発明の光ピックアップ装置において、上記第2の収差補正手段は、1枚のレンズからなる構成であってもよい。
それゆえ、収差補正量の異なるレンズを複数用意し、レンズを交換することにより収差を補正できる。これにより、光ピックアップ装置をより小型化できるという効果を奏する。
本発明の光ピックアップ装置の製造方法は、上記集光手段によって集光され、所定の厚さの基板を透過した光の収差を測定する工程と、前記工程で測定した収差がゼロに近づくように上記第2の収差補正手段を設置する工程とを含むことを特徴としている。
それゆえ、光ピックアップ装置の光路中の収差が解消される。これにより、小型化が可能であり、応答速度の速い光ピックアップ装置を製造することができるという効果を奏する。
また、本発明の光ピックアップ装置の製造方法は、所定の厚さの基板を透過して記録層に記録された情報信号の再生特性を測定する工程と、前記工程の再生特性に基づいて上記第2の収差補正手段を設置する工程とを含むことを特徴としている。
それゆえ、光ピックアップ装置の光路中の収差が解消される。これにより、小型化が可能であり、応答速度の速い光ピックアップ装置を製造することができるという効果を奏する。
本発明の実施形態について図1ないし図12に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
〔実施の形態1〕
本発明の第1の実施形態に係る光ピックアップ装置を図1ないし図5に基づいて説明する。図1は、本実施の形態に用いられる光ピックアップ装置の構成を説明する図である。
図1の光ピックアップ装置は、光ディスク(光記録媒体)11に光ビームを集光させることにより情報の記録・再生を行うものである。
光ディスク11は、保護層となるディスク基板厚さtの透明基板11aと、補強のためのダミー基板11bとが接合されている。透明基板11aとダミー基板11bとを合わせた光ディスク11のトータル厚みが、例えば1.2mmとなっている。また、透明基板11aの厚さtとしては100μmを目標として製造されるが、どうしても厚み誤差が発生する。したがって、一枚の光ディスク内でも周方向や半径位置によって厚さtが変化してしまう。光ディスク11を交換すると、さらに大きな厚み誤差が生じる。
図2は、光ディスク11上での光スポットの配置関係を示したものである。光ディスク11上には、グルーブ4とランド5とが半径方向に交互に形成されている。本実施の形態ではグルーブ4aに信号の記録再生を行うようになっており、グルーブ4aと隣接するグルーブ4b・4cとの間隔が0.32μmとなっている。メインビームMBが目的とするグルーブ4aの中心に位置する時に、トラッキング用の2つのサブビームSB1、SB2は隣接するランド5a・5bの中心に位置するように配置される。メインビームMBとサブビームSB1の間隔は、トラック横断方向(X方向)が0.16μm、トラック接線方向(Y方向)が15μm程度に設定される。
次に、図1の光ピックアップ装置の構成について説明する。この光ピックアップ装置は、対物レンズ12、半導体レーザ16、コリメータレンズ17、回折格子18、1/2波長板19、ビームスプリッタ20、集光レンズ21・24、光検出器22・27、円柱レンズ25、ビームエキスパンダ28、液晶素子駆動回路29、液晶素子30、および1/4波長板23を備えている。
半導体レーザ(光源)16は、光ディスク11の記録層に対して記録・再生用の光をレーザビームを出力する。半導体レーザ16は、例えば、波長λ=405nmの光を放射する。
コリメータレンズ17は、半導体レーザ16から放射された光ビームを平行光ビームとする。この平行光ビームは、次段の回折格子18によりメインビームとトラッキング用の2つのサブビームの3つのビームに分割される。
1/2波長板19は、回折格子18から出射されたレーザ光の偏光方向を回転する。ビームスプリッタ20は、1/2波長板19から出射されたレーザ光をビームエキスパンダ28と液晶素子30とからなる収差補正部に導くよう反射する。
ビームエキスパンダ(第2の球面収差補正手段)28は、第1のレンズ28aと第2のレンズ28bで構成されている。具体的には、第1のレンズ28aが凹レンズ、第2のレンズ28bが凸レンズで構成され、標準状態で光ビームの径を1.5倍拡大するように設計されている。第1のレンズ28aと第2のレンズ28bとの間隔を調整して出射波面を制御することにより、光ディスク11の透明基板11aの厚み誤差で発生する球面収差を補正するようになっている。第1のレンズ28aと第2のレンズ28bとの間隔は、後述する光ピックアップ装置の製造方法を用いて固定されている。対物レンズ12の色収差の影響を補正するために、第1のレンズ28aまたは第2のレンズ28bを異なる2つの材質の部材を接合したダブレットレンズとすることも可能である。
液晶素子30(第1の収差補正手段)は、液晶駆動回路29とFPC等により電気配線されている。液晶素子30は、液晶層(位相変化層)と液晶層に電圧を印加する電極とを備えている。また、この液晶層は、半導体レーザ16から入射するビーム光の偏光方向に配向方向を一致させて設けられたパラレルタイプの液晶である。
具体的には、例えば、液晶素子30は、電圧印加電極と前記電圧印加電極に対向するように配置された対向電極と、前記電圧印加電極と前記対向電極との間に配置された液晶層(位相変化層)を備えている。そして、前記電圧印加電極と前記対向電極との間の電圧を変化させることによって液晶層で発生する位相変化が制御される。液晶素子30に印加される電圧は、液晶駆動回路29によって制御される。つまり、液晶駆動回路29は、光ディスク11の透明基板11aの厚み誤差によって生じる球面収差を補正するための信号を液晶素子30に出力している。これにより、液晶素子30が、光ディスク11の透明基板11aの厚み誤差で発生する球面収差を補正するようになっている。
1/4波長板23は、収差補正部から出射されたレーザ光を直線偏光から円偏光に変化させる。
このようにして半導体レーザ16から1/4波長板23までを透過したレーザー光は、対物レンズ12によって光ディスク11上に集光される。
対物レンズ(集光手段)12は、第1の対物レンズ12aと第2の対物レンズ12bとで構成されており、これらの組合せとして開口数NAが0.85となる。もちろん、一枚のレンズで開口数NAが0.85となる対物レンズでも使用可能である。
このように、半導体レーザ16から放射された光ビームはコリメータレンズ17により平行光ビームとされる。続いて、この平行光ビームは回折格子18でメインビームとトラッキング用の2つのサブビームの3つのビームに分割される。さらに、1/2波長板19、ビームスプリッタ20、ビームエキスパンダ28、液晶素子30、1/4波長板23をそれぞれ通過して、対物レンズ12によって光ディスク11上に集光される。
半導体レーザ16から放射された光ビームの一部は、ビームスプリッタ20にて反射された後、集光レンズ21によって光検出器22に集光される。光検出器22の出力は、光ディスク11上でのレーザ出力を制御する目的に使用される。光検出器22への入射光量は、1/2波長板19を回転することによって調整する。
以上、光ディスク11に入射されるレーザ光の経路について説明したが、光ディスク11からの反射光は、入射する場合と逆の経路をたどる。すなわち、光ディスク11からの反射光は、再び対物レンズ12に入射して、1/4波長板23、液晶素子30、ビームエキスパンダ28を通過し、ビームスプリッタ20で反射されて、集光レンズ24、円柱レンズ25を通過して光検出器27に集光される。ただし、この反射光は、1/4波長板23によって入射光に対して90度向きが異なる直線偏光とされる。
光検出器27ではフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号、情報再生信号が検出される。光検出器27は、低ノイズ化のためにアンプが内蔵されており、入射光は光電変換後に電流電圧変換がなされて出力される。本実施の形態では、フォーカス誤差信号は、非点収差法、トラッキング誤差信号は差動プッシュプル法を用いて検出するようになっている。
図3は、光検出器27の構成を示した図である。図3に示すように、光検出器27は、3つの分割素子32・33・34を備え、各分割素子は8個の受光部27a〜27hを有している。中央の4分割素子32は、トラック横断方向(X方向)とトラック接線方向(Y方向)との2つの分割線で分割されておりメインビームMBに対応するスポットSP1が入射する。4分割素子32は、受光部27a〜27dを有している。上側の2分割素子33は、トラック横断方向(X方向)の分割線で分割されており、サブビームSB1に対応するスポットSP2が入射する。2分割素子33は、受光部27e・27fを有している。下側の2分割素子34は、トラック横断方向の分割線で分割されており、サブビームSB2に対応するスポットSP3が入射する。2分割素子34は、受光部27g・27hを有している。
円柱レンズ25の母線方向は、トラック横断方向(X方向)およびトラック接線方向(Y方向)と45度の角度をなすように配置されている。そのため、受光部上の回折パターンが90度回転するので、受光部27ではトラック横断方向の分割線で分割された2つの領域からの差信号でプッシュプル信号が検出される。ここで、受光部27a〜27hの出力信号をそれぞれA〜Hとすると、フォーカス誤差信号FE、トラッキング誤差信号TE、情報再生信号RFはそれぞれ次式(1)〜(3)の演算で求められる。
FE=(A+D)−(B+C) (1)
TE={(A+B)−(C+D)}−α{(E−F)+β(G−H)} (2)
RF=A+B+C+D (3)
ここで、αとβは回折格子18の分光比で決まる定数であり、光ディスク11の偏心等により対物レンズ12が光軸中心から位置ずれしても、トラッキング誤差信号にオフセットが発生しないように設定する。
次に、本実施形態の光ピックアップ装置における球面収差の補正について説明する。前述のように、光ディスク11の厚み誤差が生じると、球面収差が発生する。また、対物レンズ12などの光学系に残存する球面収差もある。このため、光ピックアップ装置では、この球面収差を補正することが必須となる。
本実施形態の光ピックアップ装置では、ビームエキスパンダ28と、液晶素子30とによって球面収差を補正する。本実施形態では、液晶素子30の収差補正量の収差補正量は調節でき、球面収差の程度によって変動可能である。これに対して、ビームエキスパンダ28の収差補正量は、固定された一定の量である。
ビームエキスパンダ28は、第1のレンズ28aおよび第2のレンズ28bから形成されている。そして、このレンズ間の間隔を調節して、ビームエキスパンダ28からの出射波面を制御することにより、球面収差を補正できる。
次に、液晶素子30における球面収差補正の動作を図4と図5のフローチャートを用いて説明する。図4は、光ディスク11が記録層を1層備えた場合の球面収差補正の動作を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、ステップS1で透明基板11aに厚み誤差Δtを有する記録層を1層備えた光ディスク11をスピンドルモータ(図示せず)に取り付ける。次に、ステップS2で液晶素子30を初期状態(全体に均一な電圧を印加した非補正状態)にする。そして、ステップS3で記録層にフォーカスサーボとトラッキングサーボをかけて記録信号のジッタ測定を行う。続いて、ステップS4でステップS3において測定したジッタの測定値と、予め設定している許容値とを比較する。ジッタの測定値が許容値より大きい場合は、ステップS5に進み、液晶素子駆動回路29からの液晶素子30への印加電圧を調整して、再度ステップS3でジッタを測定する。一方、ジッタの測定値が許容値より小さい場合はステップS6に進み、液晶素子30への印加電圧をメモリー(図示せず)に記憶する。実際に光ディスク11に記録再生をする場合には、メモリーから読み出した印加電圧を液晶素子駆動回路29から液晶素子30に供給する。
図5は、光ディスク11が記録層を2層備えた場合の球面収差補正の動作を示すフローチャートである。まず、ステップS7で光ディスク11をスピンドルモータ(図示せず)に取り付ける。次に、ステップS8で液晶素子30を初期状態(全体に均一な電圧を印加した非補正状態)にする。そして、ステップS9で第1の記録層にフォーカスサーボとトラッキングサーボをかけて記録信号のジッタ測定を行う。続いて、ステップS10でステップS9において測定したジッタの測定値と、予め設定している許容値とを比較する。ジッタの測定値が許容値より大きい場合はステップS11に進み、液晶素子駆動回路29からの液晶素子30への印加電圧を調整して、再度ステップS9でジッタを測定する。ジッタの測定値が許容値より小さい場合はステップS12に進み、液晶素子30への印加電圧をメモリー(図示せず)に記憶する。引き続きステップS13で層間ジャンプをした後、第2の記録層にフォーカスサーボとトラッキングサーボとをかけてステップS14で記録信号のジッタ測定を行う。続いて、ステップS15でステップS14において測定したジッタの測定値と、予め設定している許容値とを比較する。ジッタの測定値が許容値より大きい場合はステップS16に進み、液晶素子駆動回路29からの液晶素子30への印加電圧を調整して、再度ステップS14でジッタを測定する。ジッタの測定値が許容値より小さい場合はステップS6bに進み、液晶素子30への印加電圧をメモリー(図示せず)に記憶する。実際に光ディスク11に記録再生をする場合には、各記録層に対応する印加電圧をメモリーから読み出して液晶素子駆動回路29により所定の印加電圧を液晶素子30に供給する。
液晶素子30への印加電圧を設定する方法は、特に限定されるものではなく、ジッタの測定値を用いる他にも、例えば、再生信号振幅を用いることも可能である。
本実施の形態の光ピックアップ装置では、ビームエキスパンダ28は、第1および第2のレンズ28aおよび28bから構成されている。第1のレンズ28aと第2のレンズ28bとの間隔は、固定されている。そのため、装置内に光学部品を移動するため機械的な駆動機構を設ける必要が無い。
これに対して、第1の従来技術(特許文献1)では、本実施形態の第1および第2レンズに相当する2つの補正レンズの間隔を移動させて球面収差を補正している。このため、補正レンズを移動するための駆動機構が備えられている。
したがって、本実施形態の光ピックアップ装置は、駆動機構を備える必要がないので、従来よりも小型化が可能になる。また、装置に衝撃や振動が加わった時の影響を受けにくく、安定した球面収差補正が可能になる。
また、本実施形態の光ピックアップ装置は、ビームエキスパンダ28と、液晶素子30とを用いて球面収差を補正する。すなわち、球面収差の補正は、ビームエキスパンダ28と液晶素子30とで分担して行う。ビームエキスパンダ28の収差補正量は固定されているが、光ピックアップ装置の製造時に調整することができる。したがって、液晶素子30による収差補正量を小さくしたとしても、ビームエキスパンダ28による収差補正量を調節することにより、確実に球面収差を補正できる。したがって、液晶素子30の厚さを従来よりも薄くできるので、光ピックアップ装置を小型化できる。さらに、液晶素子30の厚さが薄いので、応答速度を速くできる。
さらに、液晶素子30では印加電圧を調整するだけで球面収差補正量が制御できるので、機械的な振動が発生しない。それゆえ、球面収差補正量を調整する際にフォーカスサーボやトラッキングサーボに影響を与えない。また、対物レンズ12などの光学系に残存する球面収差等による球面収差補正量のオフセット成分は、ビームエキスパンダ28が分担して補正するので、液晶素子30の消費電力が小さくて済む。その上、液晶素子30の球面収差補正範囲をプラス方向とマイナス方向とで対称になるように設定できる。したがって、液晶素子30に必要な球面収差補正量が最小限で済むので、液晶層の厚さを薄くすることができるので応答速度が速くなる。
ところで、液晶素子30を用いて球面収差を補正する方法としては、光路差を制御して液晶素子30によって球面収差成分を直接補正する方法と、液晶素子30によって球面波を発生させ、対物レンズ12で球面収差を発生させることによって球面収差を補正する方法とがある。
液晶素子30として、球面収差成分を直接補正するタイプの素子を用いて補正する場合は、光学系倍率の変化を伴わずに球面収差が補正できる。したがって、再生パワーや記録パワーが変化せずRIM強度も変化しないので、再生特性や記録特性が劣化しない。なお、RIM強度とは、対物レンズに入射する光ビームの強度分布を表す指標であり、光ビームの強度ピークを1とした時の対物レンズの有効径外縁部の強度比で表される。
また、光ディスク11上でメインビームMBとサブビームSB1、SB2との間隔が変化しないので、トラッキング誤差信号のゲインが変化せず、安定したトラッキングサーボが可能になる。ただし、光ディスク11の偏心により対物レンズ12と、ビームエキスパンダ28および液晶素子30との中心ずれが発生した場合に、ビームエキスパンダ28は中心ずれの影響は小さいが、液晶素子30が球面収差成分を直接補正するタイプだと中心ずれの影響が大きく、中心ずれによりコマ収差成分が発生する。このため、球面収差成分を直接補正するタイプの液晶素子30の場合、球面収差補正特性が劣化する場合もある。
一方、液晶素子30が球面波を発生するタイプだとビームエキスパンダ28と同じ原理で補正するので、中心ずれの影響は小さい。すなわち、球面収差補正特性が劣化することなく、確実に球面収差を補正できる。したがって、本実施の形態では、液晶素子30は球面波を発生するタイプの方が好ましい。
〔実施の形態2〕
本発明の第2の実施形態に係る光ピックアップ装置を図6に基づいて説明する。図6において図1と共通する部分については同じ番号を付して説明を省略する。本実施の形態では、前記実施形態1との相違点について説明するものとする。
図6は、本実施の形態の光ピックアップ装置の構成を説明する図である。
図6の光ピックアップ装置が図1の光ピックアップ装置と異なるのは、対物レンズ(集光手段)12、1/4波長板23、および液晶素子(第1の収差補正手段)30が対物レンズユニット13として一体化されている点である。この対物レンズユニット13は、図示しない駆動機構によりフォーカス方向とトラッキング方向に一体駆動されて、光ディスク11上の集光スポットの位置制御がなされる。
したがって、図6の光ピックアップ装置は、光ディスク11に偏心があっても対物レンズ12と液晶素子30との中心ずれが発生しない。このため、液晶素子30として、球面収差成分を直接補正するタイプのものを採用できる。一般に、液晶素子30は、球面収差成分を直接補正するタイプの方が球面波を発生させるタイプより液晶素子に必要な位相変化が小さくて済む。それゆえ、本実施形態の光ピックアップ装置によれば、より高速での収差補正が可能になる。
〔実施の形態3〕
本発明の第3の実施形態に係る光ピックアップ装置を図7に基づいて説明する。図7において図1と共通する部分については同じ番号を付して説明を省略する。本実施の形態では、前記実施形態1との相違点についてのみ説明するものとする。
図7は、本実施の形態の光ピックアップ装置の構成を説明する図である。
図7の光ピックアップ装置が図1の光ピックアップ装置と異なるのは、ビームエキスパンダ(第2の収差補正手段)28が第3のレンズ(光学部品)28cのみで構成されている点である。具体的には、第3のレンズは、凹レンズから構成されているが、対物レンズの色収差補正を考慮して2つの異なる材質の部材を接合したダブレットレンズとすることも可能である。
前述のように、ビームエキスパンダ28の球面収差補正量は固定されている。したがって、前記実施の形態1および実施の形態2のように、第1のレンズ28aおよび第2のレンズ28bを用いて球面収差補正量を調整可能に構成する必要がない。光ディスク11の個体差には、第3のレンズ28cとして球面収差補正量が異なる部品を幾つか用意しておき、部品交換で対応すればよい。
また、例えば、対物レンズ12の球面収差がほぼ同一傾向でずれていることが明らかな場合には、所定量の球面収差補正量を有する第3のレンズ28cを無調整で組み込むことも可能である。
このように、本実施形態の光ピックアップ装置によれば、完全に球面収差補正量が固定されており、第2の収差補正手段において、経時変化がまったく生じ無い。すなわち、時間経過による光学部品の位置ずれ、角度ずれが生じないので、その影響による光学特性や記録再生信号特性の劣化も発生しない。
〔実施の形態4〕
本発明の第4の実施形態に係る光ピックアップ装置を図8に基づいて説明する。図8において図1と共通する部分については同じ番号を付して説明を省略する。本実施の形態では、前記実施形態1との相違点についてのみ説明するものとする。
図8は、本実施の形態の光ピックアップ装置の構成を説明する図である。
図8の光ピックアップ装置が図1の光ピックアップ装置と異なるのは、液晶素子30(第1の収差補正手段)と液晶の配向方向が、ほぼ直交する別の液晶素子31(第3の収差補正手段)を備えた点である。
光ディスク11の記録層から反射された光は、1/4波長板23によって、光ディスク11の記録層に入射する光とは90度向きが異なる直線偏光とされる。すなわち、半導体レーザ16の光は、往路と復路とでは、偏光方向が90度異なっている。
本実施形態の光ピックアップ装置では、液晶素子31の液晶の配向方向は、液晶素子30のそれとほぼ直交している。したがって、半導体レーザ16から光ディスク11への往路の光の球面収差は液晶素子30によって、また復路の光の球面収差は液晶素子31によって補正することができる。
これに対して、前記実施の形態1〜3では、液晶素子31を備えていないので、往路のみの球面収差を補正することができる。
以上のように、本実施形態の光ピックアップ装置は、往路と復路の両方の光路で球面収差が補正されるので、フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号への球面収差の影響が除去される。その結果、オフセットが発生しなくなる。
また、液晶素子30、31としては球面収差を直接補正するタイプと、球面波を発生するタイプとの両方に適用可能である。しかし、特に球面波を発生するタイプの液晶素子は、球面収差と同時にフォーカス誤差(デフォーカス)が発生する。したがって、本実施の形態の光ピックアップ装置は、そのようなフォーカス誤差信号のオフセット除去に対して効果的である。
〔実施の形態5〕
本発明に係る光ピックアップ装置の製造方法を図9および図10に基づいて説明する。図9において図1と共通する部分については同じ番号を付して説明を省略する。
本実施形態の光ピックアップ装置の製造方法は、以下(a)および(b)の工程を含んでいる。すなわち、
(a)対物レンズ12によって集光され、所定の厚さの調整用光ディスク10を透過した光の収差を測定する工程と、
(b)前記工程で測定した収差がゼロに近づくようにビームエキスパンダ28を設置する工程とを含んでいる。
図9は、本実施形態の光ピックアップ装置の製造装置の構成図であり、図10は、本実施形態の光ピックアップ装置の製造方法のフローチャートである。
図1と異なる点は、光ディスク11の代わりに透明基板10aの厚みtが標準値(ここではt=100μmとする)であるダミー基板の接合されていない調整用光ディスク10を備える点、調整用光ディスク10を透過した対物レンズ12集光スポットの波面収差を測定するシェアリング干渉計15を備える点、およびビームエキスパンダ28を構成する第1のレンズ28aを移動可能に支持する保持機構14を備えた点である。
以下に図10のフローチャートを説明する。まず、ステップS18で透明基板(基板)10aの厚みtが標準値(ここではt=100μmとする)であるダミー基板10bの接合されていない調整用光ディスク10を対物レンズ12の光軸と垂直になるように取り付ける。
次に、ステップS19で液晶素子30を初期状態にする。初期状態とは電圧を印加しない状態、または全体に均一な電圧を印加した非補正状態を指すが、液晶素子30自体の特性ばらつきを考えると、全体に均一な電圧を印加した非補正状態の方が好ましい。
そして、ステップS20でシェアリング干渉計15を用いて、調整用光ディスク10を透過した光の球面収差を測定する(工程(a))。
続いて、ステップS21はステップS20で測定した球面収差の測定値を予め設定した許容値と比較する。球面収差の測定値が設定値より大きければステップS22に進み、ビームエキスパンダ28を構成する第2のレンズ28bを製造装置に組み込まれた保持機構14で保持して光軸方向に移動させてレンズ間隔を調整し、再度ステップS20で球面収差測定を行う。球面収差の測定値が許容値より小さければステップS23に進み、ビームエキスパンダ28のレンズ間隔を接着固定し保持機構から解放する(工程(b))。
最後に、ステップS24で回折格子18を光軸回りに回転して3ビーム調整を行い、光ピックアップ装置の組み立てを終了する。光ピックアップ装置として1ビームでトラッキング誤差信号を生成する方式を採用する場合には、ステップS24は省略する。
上記手順では球面収差の測定値を予め設定した許容値と比較して、球面収差補正量を設定しているが、球面収差が最小となる位置を探索する方法を用いてもよい。この場合には、所定範囲内でレンズ間隔を変えながら球面収差を測定し、メモリー手段(図示せず)にレンズ間隔と球面収差測定値の対応関係を記憶していき、測定完了後に球面収差測定値が最小値となるレンズ間隔に設定する。
本実施の形態では、球面収差の測定時にフォーカスサーボやトラッキングサーボをかける必要がないので、フォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号の残留誤差の影響を受けずに正確な調整が可能である。また、フォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号を調整する前段階にビームエキスパンダ28の調整しておくことも可能である。
〔実施の形態6〕
本発明に係る光ピックアップ装置の別の製造方法を図11および図12に基づいて説明する。図11において図1と共通する部分については同じ番号を付して説明を省略する。
本実施形態の光ピックアップ装置の製造方法は、以下(c)および(d)の工程を含んでいる。すなわち、
(c)収差調整用の光ディスク10で反射された反射光により記録層に記録された情報信号の再生特性を測定する工程と、
(d)前記工程の再生特性に含まれる収差の影響がゼロに近づくようにビームエキスパンダ28を設置する工程とを含んでいる。
図11は、本実施形態の光ピックアップ装置の製造装置の構成図であり、図12は本実施形態の光ピックアップ装置の製造方法のフローチャートである。
図1と異なる点は、光ディスク11の代わりに、ダミー基板10bと透明基板10aの厚みtが標準値(ここではt=100μmとする)である調整用光ディスク10を用いることと、ビームエキスパンダ28を構成する第1のレンズ28aを移動可能に支持する保持機構14を備えたことである。
以下に図12のフローチャートを説明する。まず、ステップS25で、ピット信号等により予め情報が記録された透明基板10aの厚みtが標準値(ここではt=100μmとする)である調整用光ディスク10を対物レンズ12の光軸に垂直となるように取り付ける。
次に、ステップS26で液晶素子30を初期状態にする。
そして、ステップS27で調整用の光ディスク10にフォーカスサーボとトラッキングサーボをかけて情報再生信号を再生してジッタを測定する(工程(c))。
続いて、ステップS28でステップS27において測定したジッタの測定値を予め設定した許容値と比較する。測定値が許容値より大きければステップS29に進み、ビームエキスパンダ28を構成する第1のレンズ28aを製造装置に組み込まれた保持機構14により光軸方向に移動させてレンズ間隔を調整し、再度ステップS27のジッタ測定を行う。測定値が許容値より小さければステップS30に進み、ビームエキスパンダ28のレンズ間隔を接着固定し保持機構から解放する(工程(d))。
最後に、ステップS31で回折格子18を光軸回りに回転して3ビーム調整を行い、光ピックアップ装置の組み立てを終了する。光ピックアップ装置として1ビームでトラッキング誤差信号を生成する方式を採用する場合には、ステップS31は省略する。
上記手順ではジッタの測定値を予め設定した許容値と比較して、球面収差補正量を設定しているが、ジッタが最小となる位置を探索する方法を用いてもよい。この場合には、所定範囲内でレンズ間隔を変えながらジッタを測定し、メモリー手段(図示せず)にレンズ間隔とジッタ測定値の対応関係を記憶していき、測定完了後にジッタ測定値が最小値となるレンズ間隔に設定する。
また、測定にはジッタに代えて再生信号振幅を用いてもよい。
実施の形態5と実施の形態6で説明した光ピックアップ装置の製造方法では、記録層を1層だけ備えた光ディスク11を対象に説明してきたが、複数の記録層を備えた光ディスク11に対しても適用可能である。例えば、記録層を2層備えた光ディスク11に対しては透明基板10aの厚みtが、t=(t1+t2)/2を満足する調整用の光ディスク10を用いれば、同様の手順で製造できる。ただし、t1は第1記録層の透明基板の標準厚み、t2は第2記録層の透明基板の標準厚みである。その結果、液晶素子30の球面収差補正の範囲が、プラス方向とマイナス方向で対称となるように設定することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。