JP2009115817A - 膠芽腫の進行に関連する経路を試験するための方法及び材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】PTENポリペプチド(配列番号5)を発現する哺乳動物の神経膠腫の腫瘍であって、EGFRポリペプチド(配列番号7)活性の阻害剤に応答する可能性がない又は非応答性である哺乳動物の神経膠腫の腫瘍を同定する方法を提供する。
【解決手段】腫瘍から得られた試料を腫瘍又は試料を阻害剤に接触させた後に、EGFR(配列番号7)の存在及びリン酸化されたAKTポリペプチド(配列番号4)の存在又はリン酸化されたERKポリペプチド(配列番号8)の存在について試験することを包含し、そこで、EGFRポリペプチドのレベル及びリン酸化されたAKTポリペプチド又はリン酸化されたERKポリペプチドのレベルにおける増加が、神経膠腫の腫瘍を阻害剤に応答する可能性がない又は非応答性であると同定する、方法。
【選択図】図2

Description

(政府の援助に関する記述)
本発明は、米国国立癌研究所/NIH(米国国立衛生研究所)のグラントU01 CA88127号及びNIHの神経疾患卒中研究部門(National Institute of Neurological Disorders and Stroke)のグラントK08NS43147−01号に基づいてなされた。政府は本発明について特定の権利を有するものである。
(関連出願)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2002年11月5日に出願された米国仮特許出願第60/423,777号の利益を主張するものであり、その内容は参照として本明細書に取り込まれる。
本発明は、癌等の病理において、制御されていないことが示される生化学的な経路を試験するための方法及びこれらの方法を実行するのに適応した試薬を提供する。
癌は米国における主な死因の2番目にあたり、年間450,000人もの死者を出している。米国人の3人に1人は癌になり、5人に1人は癌で死ぬことになる。癌が起こりうる環境的及び遺伝的な原因のいくつかの同定が実質的に進行している一方で、癌及びそれに関連する疾患や障害を標的とした更なる診断や治療の様相が必要とされている。とりわけ、制御されていない増殖等に関連する病理学的な一連の徴候を同定し治療するための改良された診断及び治療方法の開発を可能にする、癌等の制御されていない細胞増殖に関与する様々な生化学的経路のより深い理解が必要とされる。
癌等の病理で特に興味が持たれている生化学的な経路はPI3K/Akt及びRas/MAPK経路である。特に、PI3K/Akt及びRas/MAPK経路の調節不全(deregulation)は、膠芽腫(GBM)を含む(例えばVivancoら、Nat Rev Cancer.2:489−501,2002、Feldkamp et al.,Journal of Neurooncology 35:223−248,1997、Mischelら、Brain Pathology,Jan;13(1):52−61 2003参照)多くの種類の癌で起こるものである(例えばVivancoら、Nat Rev Cancer.2:489−501.,2002参照)。構造的に活性化された情報伝達カスケードは生物学的挙動を直接調節するので、癌治療への分子からの新たなアプローチがこれらの経路の阻害に向けられており(例えばSawyersら、Curr Opin Genet Dev.12:111−5,2002、Druker et al.,Cancer Cell.1:31−6., 2002、Kilic et al.,Cancer Res.60:5143−50,2000、Neshatら、Proc Natl Acad Sci USA. 98:10314−9,2001参照)、患者の生検でこれらを検出することは重大なことである。従来、ウエスタンブロット及びインビトロでのキナーゼアッセイ等の生化学的なアプローチがこれらの経路の活性化を評価するのに必要とされてきた(例えばNeshatら、Proc Natl Acad Sci USA.98:10314−9,2001、Ermoianら、Clin Cancer Res.8:1100−6.,2002参照)。しかしながら、これらの手法はホルマリン固定されパラフィン包埋された患者生検試料等の通常の手順で処理された組織には適していない。これまでのところ、患者の生検材料で経路の活性化を同定するための手段は十分に開発されていなかった。このようなの手段の開発は、これらの経路の活性化が予後兆候の有意性を示すのかの決定、及び、分子を標的とした治療のために患者を分類する上で重要である。
多形性膠芽腫(GBM)は、成人において最も一般的な悪性脳腫瘍であり(あらゆる癌のなかで最も致死的な癌の1つ)、本発明のアプローチに非常に適合している。GBMsは、結果として生じる情報伝達経路の崩壊を伴う一連の特徴付けられた分子の病変を有している。腫瘍抑制遺伝子PTENはGBMsの30−40%で改変されている(例えばLiuら、Cancer Res.57:5254−7.,1997、Schmidtら、J Neuropathol Exp Neurol.58:1170−83.,1999、Smithら、J Natl Cancer Inst.93:1246−56.,2001参照)。PTEN脂質ホスファターゼの活性はAkt経路及びその下流の作用因子であるmTOR、FKHR、及びS6を抑制的に調節するので(例えばVivancoら、Nat Rev Cancer.2:489−501.,2002参照)、PTENタンパク質欠失GBMsはこの経路の調和された活性化を示す可能性がある。初期のGBMs(新たに生じた悪性度IVの腫瘍)は同様に、RAS/MAPK及びPI3K/Akt経路の両者を経由して情報伝達を活性化する腫瘍遺伝子EGFR及びその変異体EGFRvIIIを一般に過剰発現する。それ故に、EGFR及びEGFRvIIIを発現しているGBMsはERK及びAkt経路の調和された活性化を示す可能性がある。しかしながら現在までのところ、このような多様な経路間の関係は詳細に示されていない。
研究者らが癌等の病理に関与する多様な遺伝子や経路を同定してきた一方で、制御されていない細胞増殖に必要とされる調節過程の解析を容易にする更なる手段が当該技術分野で求められている。さらに、制御されていない細胞増殖に関与する遺伝子産物がより広範な状況下でどのように相互作用しているのか理解することは、制御されていない増殖に関連する病理学的な一連の徴候を同定し治療するための改良された診断及び治療方法の開発に必要とされる。とりわけ、多形性膠芽腫(GBM)を制御している情報伝達で起こる事象を同定する必要性、及び、GBMの進行又は阻害を評価するために有用なマーカーを同定する必要性は残されたままである。本明細書で開示する方法及び試薬はこの必要性を満足させるものである。
(発明の要約)
PI3K/Akt経路の制御されていない活性化は多形性膠芽腫(GBM)を含む癌で一般に見られる。従って、この経路を評価することは標的とされたキナーゼ阻害剤治療について患者を分類するのに重要である。本明細書の開示は、PI3K/Akt経路の活性化異常(deregulated activation)に関連する一連のバイオマーカーを同定すると同時に、これらのマーカーを試験するために最適化された方法を提供する。従って、本明細書が提供する開示は、多形性膠芽腫等の癌においてこの経路の試験を可能にする。さらに重要なことには、これらのマーカーを試験するための開示された方法は、ホルマリン固定されパラフィン包埋された生検試料を含む幅広い種類の組織サンプルにおいて有用である。この開示の多様な側面はChoeら、Cancer Res.2003 Jun 1;63(11):2742−6に記載されている。
本明細書に開示されるように、多形性膠芽腫等の癌に関連する一連のPI3K/Akt経路のバイオマーカーが、例えばリン酸特異的な抗体等の一連の抗体を用いて試験することが可能である。一般的な方法では、ホルマリン固定されパラフィン包埋された多形性膠芽腫の生検試料に由来する細胞等の哺乳類細胞が、リン酸化されたS6(配列番号1)、リン酸化されたmTORポリペプチド(配列番号2)、リン酸化されたFKHRポリペプチド(配列番号3)、リン酸化されたAKTポリペプチド(配列番号4)、リン酸化されたERKポリペプチド(配列番号8)の存在又はPTENポリペプチド(配列番号5)発現レベルの減少について、この細胞を含む組織試料を試験することによって、PI3K/Akt経路の活性化の証拠について試験可能である。ここで、リン酸化されたS6、mTOR、FKHR、AKT或いはERKポリペプチドの存在又はPTENポリペプチド発現レベルの減少は膠芽腫の細胞内でAkt経路が活性化した証拠を提供する。必要に応じて、細胞は、リン酸化されたS6ポリペプチド(配列番号1)及びPTENポリペプチド(配列番号5)発現レベルの減少等の複数の特徴の存在について試験可能である。本発明の態様は更なる方法の工程、すなわち、ラパマイシン或いはその類似化合物等のmTOR阻害剤又はZD−1839或いはその類似化合物等のEGFR阻害剤の膠芽腫の癌細胞に対する効果を評価するために試験の結果を用いる工程等の膠芽腫を治療するのに使用される可能性のある治療薬を同定及び/又は評価するために試験の結果を用いる工程を包含する。
本発明の好ましい態様は、EGFRポリペプチド(配列番号7)阻害剤又はmTORポリペプチド(配列番号2)阻害剤に対して応答する可能性がある又は応答性である哺乳類の神経膠腫を同定するための方法であり、その方法はPTENポリペプチド(配列番号5)の発現、及び、リン酸化されたS6リリボソームポリペプチド(配列番号1)、EGFRポリペプチド(配列番号7)、リン酸化されたAKTポリペプチド(配列番号4)及びリン酸化されたERKポリペプチド(配列番号8)のうち少なくとも1つの発現について腫瘍から得られた試料を試験することを包含する。ここで、対照と比較して試料中でS6リリボソームポリペプチドのリン酸化の減少と共にPTENポリペプチドの発現の減少は神経膠腫をmTOR阻害剤に対して応答する可能性がある又は応答性である腫瘍として同定し、対照と比較して試料中でS6リリボソームポリペプチドの正常なリン酸化と共にPTENポリペプチドの発現の減少は神経膠腫をmTOR阻害剤に対して応答する可能性がない又は非応答性である腫瘍として同定し、AKTのリン酸化及び/又はERKのリン酸化の増加と共にPTENの正常な発現又は発現の増加及びEGFRの発現及び/又は活性化の増加は神経膠腫をEGFR阻害剤に対して応答する可能性がない及び/又は非応答性である腫瘍として同定する。
本発明の別の態様は哺乳類の神経膠腫又はその細胞を特徴付けるためのキットであり、そのキットはPTEN(配列番号5)に結合する抗体及び/又はリン酸化されたS6リリボソームポリペプチド(配列番号1)に結合する抗体及び/又はEGFR(配列番号7)に結合する抗体及び/又はリン酸化されたAKT(配列番号4)に結合する抗体及び/又はリン酸化されたERK(配列番号8)に結合する抗体を包含する。必要に応じて、当該キットは更にKi−67ポリペプチド(配列番号9)及び/又はp−H3ヒストンポリペプチド(配列番号10)及び/又はカスパーゼ−3ポリペプチド(配列番号11)に結合する抗体を含む。一般的にキットは更に、これらのポリペプチドに対する一次抗体の1つに結合する二次抗体を包含する。必要に応じて、キットは様々なポリペプチドに結合する複数の抗体を包含する。
本発明をより詳細に説明すれば、以下のとおりとなる。
(1)EGFRポリペプチド(配列番号7)阻害剤又はmTORポリペプチド(配列番号2)阻害剤に応答する可能性がある、又は応答性である哺乳動物の神経膠腫の腫瘍を同定する方法であって、当該方法は腫瘍から得られた試料を
(a)PTENポリペプチド(配列番号5)の発現
及び以下のうち少なくとも1つの存在、
(b)リン酸化されたS6リボソームポリペプチド(配列番号1)
(c)EGFRポリペプチド(配列番号7)
(d)リン酸化されたAKTポリペプチド(配列番号4)、及び
(e)リン酸化されたERKポリペプチド(配列番号8)
について試験することを包含し、
そこで、対照と比較して、試料中でS6リリボソームポリペプチドの減少したリン酸化と共にPTENポリペプチドの減少した発現は、神経膠腫の腫瘍をmTOR阻害剤にに応答する可能性がある又は応答性であると同定し、
そこで、対照と比較して、試料中でS6リリボソームポリペプチドの正常なリン酸化と共にPTENの減少した発現は、神経膠腫の腫瘍をmTOR阻害剤に応答する可能性がない又は非応答性であると同定し、
そこで、増加したAKTのリン酸化及び/又はERKのリン酸化と共にPTENの正常又は増加した発現及びEGFRの増加した発現及び/又は活性化は、神経膠腫の腫瘍をEGFR阻害剤に応答する可能性がない及び/又は非応答性であると同定する、方法。
(2)S6リリボソームポリペプチドのリン酸化が、腫瘍又は試料をmTOR阻害剤に接触させた後に測定される、(1)に記載の方法。
(3)AKT及び/又はERKのリン酸化が、腫瘍又は試料をEGFR阻害剤に接触させた後に測定される、(1)に記載の方法。
(4)mTOR阻害剤がラパマイシン、SDZ−RAD、CCI−779、RAD001又はAP23573である、(1)に記載の方法。
(5)EGFR阻害剤がZD−1839、OSI−774、PD−153053、PD−168393、IMC−C225又はCI−1033である、(1)に記載の方法。
(6)(a)−(e)の1又はそれ以上の発現が抗体を使用して試験される、(1)に記載の方法。
(7)リン酸化されたS6リリボソームポリペプチド(配列番号1)の存在が、配列番号1の235位でリン酸化されたセリン残基を含むエピトープに結合する抗体を使用して試験される、(6)に記載の方法。
(8)EGFR及びPTENの存在が、それぞれEGFR特異的抗体及びPTEN特異的抗体を使用して試験される、(6)に記載の方法。
(9)リン酸化されたAKT(配列番号4)の存在が、配列番号4の473位でリン酸化されたセリン残基を含むエピトープに結合する抗体を使用して試験される、(6)に記載の方法。
(10)リン酸化されたERKの存在が、配列番号8の202位でリン酸化されたスレオニン残基又は204位でリン酸化されたチロシン残基を含むエピトープに結合する抗体を使用して試験される、(6)に記載の方法。
(11)神経膠腫の腫瘍が、多形性膠芽腫の腫瘍である、(1)に記載の方法。
(12)試料が、パラフィン包埋された生検試料である、(1)に記載の方法。
(13)PTENポリペプチド(配列番号5)を発現しない哺乳動物の神経膠腫の腫瘍であって、mTORポリペプチド(配列番号2)活性の阻害剤にに応答する可能性がある又は応答性である哺乳動物の神経膠腫の腫瘍を同定する方法であって、当該方法は腫瘍から得られた試料を、腫瘍又は試料を阻害剤に接触させた後に、リン酸化されたS6リリボソームポリペプチド(配列番号1)の存在について試験することを包含し、
そこで、阻害剤と接触していない対照と比較して、試料中のリン酸化されたS6リリボソームポリペプチドにおいて観察できる減少は、神経膠腫の腫瘍を阻害剤にに応答する可能性がある又は応答性であると同定し、
そこで、対照と比較して、試料中のリン酸化されたS6リリボソームポリペプチドにおいて観察できる減少がないことは、神経膠腫の腫瘍を阻害剤に応答する可能性がない又は非応答性であると同定する、方法。
(14)神経膠腫の腫瘍が、多形性膠芽腫である、(13)に記載の方法。
(15)神経膠腫が、PTENポリペプチド(配列番号5)に結合する抗体を使用してPTENポリペプチド(配列番号5)を発現しない腫瘍であると同定される、(13)に記載の方法。
(16)PTENポリペプチド(配列番号5)を発現する哺乳動物の神経膠腫の腫瘍であって、EGFRポリペプチド(配列番号7)活性の阻害剤に応答する可能性がない又は非応答性である哺乳動物の神経膠腫の腫瘍を同定する方法であって、当該方法は腫瘍から得られた試料を腫瘍又は試料を阻害剤に接触させた後に、EGFR(配列番号7)の存在及びリン酸化されたAKTポリペプチド(配列番号4)の存在又はリン酸化されたERKポリペプチド(配列番号8)の存在について試験することを包含し、
そこで、EGFRポリペプチドのレベル及びリン酸化されたAKTポリペプチド又はリン酸化されたERKポリペプチドのレベルにおける増加が、神経膠腫の腫瘍を阻害剤に応答する可能性がない又は非応答性であると同定する、方法。
(17)腫瘍から得られた試料が、リン酸化されたAKTポリペプチド(配列番号4)の存在及びリン酸化されたERKポリペプチド(配列番号8)の存在について試験される、(16)に記載の方法。
(18)神経膠腫の腫瘍が、多形性膠芽腫である、(16)に記載の方法。
(19)神経膠腫が、PTENポリペプチド(配列番号5)に結合する抗体を使用してPTENポリペプチド(配列番号5)を発現する腫瘍であると同定される、(16)に記載の方法。
(20)哺乳動物の神経膠腫の腫瘍又は細胞を特徴付けるためのキットであって、
(a)PTEN(配列番号5)に結合する抗体
及び以下のうち1つ又はそれ以上、
(b)リン酸化されたS6リリボソームポリペプチド(配列番号1)に結合する抗体
(c)EGFR(配列番号7)に結合する抗体
(d)リン酸化されたAKT(配列番号4)に結合する抗体、及び
(e)リン酸化されたERK(配列番号8)に結合する抗体
を包含するキット。
(21)キットが、(b)−(e)からなるグループから選択される多数の抗体を包含する、(20)に記載のキット。
(22)(b)の抗体が、配列番号1の235位でリン酸化されたセリン残基を有するS6リリボソームポリペプチド(配列番号1)に特異的であり、(d)の抗体が、配列番号4の473位でリン酸化されたセリン残基を有するAKT(配列番号4)に特異的であり、及び(e)の抗体が、配列番号8の202位でリン酸化されたスレオニン残基及び204位のチロシンを有するERKに特異的である、(20)に記載のキット。
(23)キットが、さらにKi−67ポリペプチド(配列番号9)、p−H3ヒストンポリペプチド(配列番号10)又はカスパーゼ−3ポリペプチド(配列番号11)に結合する抗体を含む、(20)に記載のキット。
(24)キットが、さらに抗体(a)−(e)に結合する少なくとも1つの二次抗体を含む、(20)に記載のキット。
(発明の詳細な説明)
別の方法で定義されない限り、本明細書で用いられる技術、表記及びその他科学用語の全ての専門用語は本発明が属する分野の当業者に一般に理解される意味を有することを意図する。いくつかの例では一般に理解される意味を持つ専門用語が、明確に及び/又は用意された参照文献によって本明細書で定義される。本明細書にこのような定義を含むことは、当該技術分野で一般的に理解されるものとは必ずしも実質的に相違するものだとは解釈されるべきではない。本明細書で記載されている又は参照されている技術や手順は、一般的によく理解され共通に使用されており、例えばAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers,(1995)に記載の幅広く利用される分子クローニング方法論のように当業者に従来からの方法論として使用されている。適切に、商業的に入手できるキット及び試薬の使用を含む手順は、特に記載がない限り、製造者の定義するプロトコール及び/又はパラメーターに従って一般的に実施した。
処理又は治療の目的である「哺乳動物」は、ヒト、及び、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等の家庭及び農園の動物及び動物園、競技用又はペットの動物を含む、哺乳動物に分類される如何なる動物も指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
「癌」「癌の」又は「悪性の」という用語は、異常な(unregulated)細胞増殖によって一般的に特徴付けられている哺乳動物の病理学的状態を示す又は記述する。癌の例は星状細胞腫、芽細胞腫、癌腫、膠芽腫、白血病、リンパ腫及び肉腫を含むがそれに制限されない。このような癌のより具体的な例は、乳癌、卵巣癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、睾丸癌、食道癌、胃腸癌、腎癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、神経膠腫、肝臓癌(hepatoma)、膀胱癌、肝細胞癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌(liver cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)及び様々なタイプの頭部及び頚部の癌を包含する。
本明細書で用いられる、「増殖阻害」はインビトロ及び/又はインビボでの細胞の増殖阻害を示す。細胞増殖の阻害は当該技術分野で公知の広範な方法によって測定できる。本明細書で用いられる、「増殖阻害剤」とはインビトロ及び/又はインビボで細胞の増殖を阻害する化合物又は組成物を示す。このように、増殖阻害剤はS期にある細胞の割合を顕著に減少させる薬剤であってもよい。増殖阻害剤の例は、G1阻止及びM期阻止を誘導する薬剤等の細胞周期の進行を(S期以外の部位で)遮る薬剤を含む。一般的なM期遮断薬は、ツルニチニチソウ(ビンクリスチン及びビンブラスチン )、TAXOL(登録商標)及びドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド及びブレオマイシン等のトポII阻害剤を含む。G1を阻止する薬剤はまたS期阻止、例えばタモキシフェン、プレドニゾン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル及びアラ−C等のDNAアルキル化剤へと広がる。さらにこのような薬剤は、PI3K/Akt経路等の制御されていない細胞増殖に関連する細胞内経路の阻害剤を含む。更なる情報をThe Molecular Basis of Cancer,Mendelsohn and Israel,eds.,Chapter 1,entitled“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”by Murakami et al(WB Saunders: Philadelphia,1995) に見出すことができる。
「処理」又は「治療」は治療上の処理及び予防又は防止的な手段の両者を示す。「治療上効果的な量」という用語は、哺乳動物で疾患又は障害を処理するのに効果的な薬の量を示す。癌の場合、薬の治療上効果的な量とは、癌細胞数の減少、腫瘍サイズの減少、癌細胞の周辺臓器への浸潤の阻害(すなわちある程度遅らせること及び好ましくは停止)、腫瘍転移の阻害(すなわちある程度遅らせること及び好ましくは停止)、ある程度の腫瘍増殖の阻害及び/又は1つ又はそれ以上の障害に関連する症状の緩和を起こし得る。薬は、存在する癌細胞の増殖を妨げる及び/又は殺す可能性のある量で、細胞増殖抑制及び/又は細胞毒性を示すかもしれない。癌の治療にとって、例えば、インビボでの効力は腫瘍の負担や容積の評価、疾患の進行にかかる時間(TTP)及び/又は応答割合(RR)の測定によって測ることができる。
「抗体」という用語は、最も広い意味で用いられ、単一のモノクローナル抗体及び多数のエピトープ特異性を有する抗体混合物(例えば、ポリクローナル抗体)だけでなく、標的となるポリペプチドのエピトープを免疫学的特異性により認識する能力を維持する限り抗体フラグメントも本質的に包含する。
本明細書で用いられる、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、集団を形成する個々の抗体が、少数存在するかもしれない自然に起こる可能性のある突然変異体を除き、同一であることを示す。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位を認識する。さらに、異なる決定基(エピトープ)を認識する異なる抗体を一般的に含む従来の(ポリクローナルな)抗体調製物に対して、それぞれのモノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基を認識する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンで汚染されることなく、ハイブリドーマの培養によって合成されるという利点を有する。修正された「モノクローナル」は、実質的に均質な(homogenous)抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示すもので、特別な方法での抗体の産生を必要とするものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature,256:495(1975)によって初めて記述されたハイブリドーマ法で生産されてもよく、又組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)で生産されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら、Nature,352:624−628(1991)及びMarks et also Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載されている技術を用いてファージ抗体ライブラリーから分離されてもよい。
本明細書で用いられるように、「ポリヌクレオチド」という用語は、少なくとも10塩基又は塩基対の長さの、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド又はいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾体からなるヌクレオチドの重合体を意味し、一本鎖及び二本鎖のDNA及び/又はRNAを包含しなければならない。当該技術分野では、この用語はしばしば「オリゴヌクレオチド」と互換性をもって使用される。ポリヌクレオチドは、本明細書で開示されるヌクレオチド配列を包含できる。そこでは、チミジン(T)はまたウラシル(U)でもよく、この定義はDNAとRNAの化学構造の相違、とりわけRNAの主要な4つの塩基のうちの1つがチミジン(T)の代わりにウラシル(U)であるという観察によるものである。
本明細書で用いられるように、「ポリペプチド」という用語は、少なくとも10アミノ酸のポリマーを意味する。明細書を通して、標準の3文字又は1文字表記が使用される。当該技術分野では、この用語はしばしば「タンパク質」と互換性をもって使用される。
本明細書で用いられるように、「阻害剤」という用語は、mTOR及び/又はEGFRポリペプチド等の標的分子の生物学的活性の1つ又はそれ以上を阻害できる分子を包含する。実例となる阻害剤は、アンチセンスポリヌクレオチド及びsiRNA等の当該技術分野で公知の他の阻害剤と同様に、本明細書で開示される標的とされた小分子阻害剤及び抗体阻害剤を包含する。従って、当業者は、これらの阻害剤が、ポリペプチドの合成及び/又は機能を阻害する分子(例えばmTOR等の標的ポリペプチドのリン酸化及びそれによる活性化を遮る分子)と同様に、ポリヌクレオチドの合成及び/又は機能の両者を阻害する分子(例えばアンチセンスポリヌクレオチド分子)を包含することを正しく認識する。
本発明に関連する生理学的な処理
本明細書で提供される開示は、神経膠腫等の癌に共通して見られるPI3K/Akt経路の異常な活性化に関連した一連のバイオマーカーを同定する。本明細書で提供される開示はさらに、これらのバイオマーカーを試験するための最適化された方法も提供する。従って、開示は、多形性膠芽腫等の癌で、これらのバイオマーカーの活性化状態を試験することを可能にする。さらに重要なことに、これらのバイオマーカーを試験するための開示された方法は、ホルマリン固定されパラフィン包埋された生検試料を含む幅広い種類の組織試料に有用である。本明細書で開示されるように、これらのマーカーはリン酸特異的抗体等のパネル抗体を用いて試験され得る。これらの方法で、ホルマリン固定されパラフィン包埋された多形性膠芽腫の生検試料に由来する細胞等の哺乳動物の細胞を、リン酸化ポリペプチドを含む本明細書で開示される多様な標的分子の存在について、この細胞を含む組織試料を試験することによって、Akt経路の活性化の証拠について調べることができる。本発明の特定の態様では、ラパマイシン或いはその類似物又はZD−1839等のEGFR阻害剤或いはその類似物等の膠芽腫を処理するのに用いることができる治療剤を同定及び/又は評価する。
上記のように、本明細書で開示される本発明は、膠芽腫生検試料等の臨床試料でPI3K/Akt情報伝達経路の活性化状態を同定するのに使用し得る方法及び免疫組織化学の試薬を提供する。これらの方法と試薬は、PTEN癌抑制遺伝子の消失に応答してAkt/mTOR情報伝達経路の調和した制御を同定する。この経路を標的とする特異的なキナーゼ阻害剤が現在開発され(例えばNeshatら、Proc Natl Acad Sci USA.98:10314−9,2001参照)、さらにこの変異体が膠芽腫及び前立腺癌で共通しているので、この開示は、治療に適した患者を選択するのに臨床上重要な手段を提供する。これに関連して、通常の手順で処理された患者生検試料の免疫組織化学的な解析を行うことによって、本発明は実施され得る。これらの解析の結果は、臨床試験に含まれる基準として、及び、この経路が異常である患者で結果として生じる相違を評価するために使用できる。
本明細書に開示される方法及び試薬は、通常の手順で処理された患者の生検試料(例えば膠芽腫の試料)上にAkt及びmTOR、ERK、Forkhead、S6−キナーゼ等の下流の作用因子のようなバイオマーカーポリペプチドの活性化状態を決定するのに使用でき、この情報は、標的とされた経路の阻害剤を用いた治療について患者を選択するのに使用できる。本明細書で開示されるように、本発明は膠芽腫の患者48人から得られた生検由来の組織マイクロアレイで試験された。その結果は、Akt、mTOR、forkhead及びS6−キナーゼの明らかに調和した制御と、それらとPTEN消失との関連を示している。本発明に直接関係のあるバイオマーカーと病理学的過程の詳細な考察は以下に提供される。
成長因子の伝達によるPI3Kの活性化は、ホスファチジルイノシトール2リン酸(PIP2)にリン酸基が付加することによりホスファチジルイノシトール3リン酸(PIP3)の形成を引き起こす。PIP3はAktキナーゼ(そしてその下流の作用因子mTOR、forkhead及びS6−キナーゼ)の活性化を引き起し、その活性化は細胞増殖と生存を促進する。PTEN癌抑制遺伝子はPIP3からリン酸基を取り去るホスファターゼをコードし、それによってこの経路の活性化状態を制御している。PTENの消失はPIP3を介した構造性の情報伝達を生じ、それ故にAkt経路の無秩序な(unregulated)活性化を導く。
PTENは膠芽腫及び前立腺癌を含む多くの種類の癌で欠失している。加えて、Akt経路は他の多くの癌で制御不可能となっている。PTEN欠損癌細胞は、非癌細胞を含むPTEN野生型細胞と比べて、mTORレベルでAkt経路の阻害により大きな感受性がある(例えばNeshatら、Proc Natl Acad Sci USA.98:10314−9,2001参照)。それ故に、mTOR阻害剤はPTENを欠失しAkt経路が活性化した腫瘍を有する患者に対して高度に選択的で効果的な治療となり得る。PTEN/PI3K/Akt経路に関する以前の知識は全て生化学的なデータと遺伝的な解析に基づいており、臨床的なスクリーニング手段には適していない。現在のところ、通常の手順で処理されたホルマリン固定されパラフィン包埋された患者生検試料でこの経路の活性化状態の検出方法はない。従って、このような臨床試料でこの経路の活性化状態を同定でき、その阻害剤に対して患者を選択できる能力は、価値のある診断手段である。これはこの経路を標的とした阻害剤の解析についても価値のある手段である。
本明細書で特に開示するように、我々はPI3’K/Akt経路の活性化が通常の手順で処理されたGBM患者生検で検出され得ることを示す。我々はPTENの消失がAkt活性化と有意に相関していること、そのAkt活性化は下流の作用因子mTOR、S6及びFKHRの活性化と有意に関連していることを示す。我々はまたPTEN消失がPI3’K/Akt経路活性化の唯一のメカニズムではないことを明らかにし、EGFR及びEGFRvIIIの共発現がこの経路の活性化と有意に関連していることを示している。最後に、我々は、PI3K/Akt及びErk経路の活性化がGBM患者の進行と生存に重大な影響力を有することを示す。これらのデータは、この一連の手段が標的とされた分子治療に対してGBM患者を分類するのに使用できる証拠を提供する。
上皮成長因子受容体はヒト膠芽腫の悪性表現型に寄与する(例えばThomasら、Int J Cancer.2003 Mar 10;104(1):19−27参照)。SKMG−3細胞、すなわちインビトロでEGFR遺伝子増幅を維持するGBM細胞系での研究によれば、EGF処理は、下流の作用因子Erk、AKT1、stat3及びc−Cblと同様にEGFRのリン酸化を刺激した。最小の成長条件下で、刺激されていないSKMG−3細胞は構造的にリン酸化されたErk及びAKT1を含む。EGFRキナーゼ阻害剤PD158780はその受容体とErkの構造的なリン酸化を減少させるが、AKT1のリン酸化は減少させない。対照的に、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI3K)の阻害はErk及びAKT−1の構造的なリン酸化を遮るがEGFRはそうではない。その結果は、過剰発現したEGFRからのシグナルがErkの構造的なリン酸化に寄与する証拠を提供するが、これらのシグナルはPI3K又はAKT1の構造的活性化には必要とされないかもしれない。例えばThomasら、Int J Cancer.2003 Mar 10;104(1):19−27参照。
さらに、例えば生物学的活性を評価するために一連の生検が処理前後に採取された転移性の結腸直腸癌患者でのEGFRチロシンキナーゼ阻害剤ZD1839の研究によって示されるように(例えばDaneshmand Clin Cancer Res.2003 Jul;9(7):2457−64参照)、結腸直腸癌の病因にEGFRは重要な役割を果たしているように思われる。これらの研究では、対になった生検が処理の前後に直腸結腸癌患者から得られた。処理後の試料は癌細胞の増殖が統計的に有意な減少を示した。全ての処理前試料がEGFRの強い染色を示した一方、処理後の何人かの患者で癌細胞中の活性化したEGFR、リン酸化されたAkt及びリン酸化されたERKに対する免疫組織化学的な染色の消失が観察された。例えばDaneshmand Clin Cancer Res.2003 Jul;9(7):2457−64参照。
PI3’K/Akt経路はGBMsで一般に異常である(deregulated)が、通常の手順で処理された生検でのそれらの同定は課題を提示している。この経路を標的とした新たなキナーゼ阻害剤に直面し、治療について患者を分類するのに使用できるアッセイに対する必要性が重大になってきている。本明細書で開示されるように、我々はPI3’K/Akt経路の活性化はリン酸特異的抗体のパネルを用いて免疫組織化学によって検出され得ることを示す。我々は、未処理の初期GBMsの38%がPTENタンパク質の消失の証拠を示し、これが有意にAkt活性化と関連していることを明らかにする。我々はさらに、Aktのリン酸化が下流の作用因子mTOR、FKHR及びS6のリン酸化と有意に相関していることを示す。我々は、PTENの消失がAkt経路の活性化を引き起こす唯一のメカニズムではないことを示し、Akt、mTOR、S6及びFKHRのリン酸化はEGFR及びその構造的な活性変異体EGFRvIIIの共発現とも関連していることを示す。最後に、我々はPI3’K/Akt及びErk経路の活性化がGBM患者において進行時間をより短くし、生存期間を減少させることに関連していることを示す。
本明細書で提供される開示は、PI3’K/Akt経路の活性化がパラフィン包埋された生検試料で検出され得ることを示し、初期のGBMsでPTENの消失がAkt経路の活性化と高く相関しているという証拠を提供する。これらの結果はまた、EGFRとEGFRvIIIの共発現が正常なPTENの免疫組織化学的な発現を示すGBMsでPI3K経路を活性化できるという証拠を提供する。これらの結果はさらに、これらの情報伝達経路の活性化がGBM患者の進行と生存に少なからぬ影響力を有しているという証拠を提供する。
本明細書で提供される開示は、PI3’K/Akt経路の活性化が通常の手順で処理された患者生検でリン酸特異的抗体を用いて検出できることを、特に示している。我々は、PTEN欠損GBMsがAkt経路及びその下流の作用因子mTOR、FKHR及びS6の協調した活性化を有していることを示す。我々はまた、EGFRとEGFRvIIIを共発現しているGBMsがPI3’K/Akt及びErk情報伝達経路の活性化を有していることを示す。最後に、我々は、これらの情報伝達経路が予後の重要性を有していることを示す。例えば、腫瘍がAktの下流、すなわちERKのレベルで活性化されている初期GBM患者は、有意に短い時間で癌へ進行し、生存期間が有意に減少する。これらの結果は、GBMsの分子上のサブタイプを定義し、標的とされた分子治療について患者を分類するのに使用できるかもしれない。
以下に詳細に開示するように、実例となる分析方法で、我々は45の未処理の初期GBM患者生検から組織マイクロアレイを作製し、p−Erkと同様にp−Akt及び下流の作用因子p−mTOR、p−FKHR及びp−S6の免疫組織化学的な発現を解析した。EGFR、EGFRvIIIの発現及びPTENの消失、それら全てはPI3’K/Akt経路の活性化を促進できるが、それらも解析され、PI3’K/Akt及びErk経路活性化との関連が決定された。PI3’K/Akt及びErk経路活性化の予後との密接な関係も解析された。
我々の解析で、PTENの免疫組織化学上の発現の消失はGBMsの38%で検出された。減少したPTENタンパク質の発現は、Akt(p<0.00001)及びその下流の作用因子mTOR(p=0.04)、FKHR(p=0.006)及びS6(p=0.001)のリン酸化と有意に関連した。PTENタンパク質の消失はErkの活性化、それはPI3’K/Akt情報伝達とは独立しているが、それとは関連しなかった。PTENタンパク質の消失はPI3’K/Akt経路活性化の唯一の道筋ではなく、EGFR及びEGFRvIIIの共発現が、正常にPTENタンパク質を発現しているGBMsでp−Akt(p=0.06)、p−mTOR(p=0.001)、p−FKHR(p=0.002)及びp−S6(p=0.001)の発現と有意に相関した。EGFR及びEGFRvIIIの共発現はまたErkの活性化(p=0.007)とも関連した。mTOR、FKHR及びS6の一致したリン酸化は、Erkの活性化(p=0.04)と同様に、進行時間の短縮(p=0.002)及び生存期間の減少(p=0.02)と有意に関連した。
上記のように、本明細書で開示される方法は免疫組織化学的な解析を一般的に用いる。免疫組織化学的な解析は病理学者による主観的な決定を必要とする。プロテオミクスによるアプローチはより客観的で感度の高い方法である可能性があり、将来臨床的に適した方法となるかもしれない(例えばLiotta et al,Jama.286:2211−4.,2001、Liottaら、Breast Cancer Res.2:13−4,2000、Petricoinら、Lancet.359:572−7.,2002、Petricoinら、Nat Rev DrugDiscov.1:683−95.,2002参照)。しかしながら、標的とされた治療について患者を分類し、実験的に標的とされた薬剤への応答と分子の相関性を評価するための現在の必要性は、我々に現在入手できる方法を用いて通常の手順で処理された生検試料に適用できるアッセイの開発を迫っている。活性化されたAktを患者生検で行われた免疫組織化学により検出することができ、それは生物学的なまたは予後との密接な関係を有している可能性が示唆されてきた(例えばGuptaら、Clin Cancer Res.8:885−92.,2002、Malikら、Clin Cancer Res.8:1168−71.,2002参照)。以前の研究に補足して、我々は本明細書に、PI3’K/Akt経路活性化の全体像を描くために、リン酸特異的抗体のパネルがp−Akt及びその下流の作用因子を検出するのに用いることができることを示す。下流の作用因子の活性化とAktリン酸化の間の高いレベルの関連は、我々がこの経路を的確に評価してきた証拠を提供する。さらにPI3’K/Akt経路活性化がPTENタンパク質の消失(例えばNeshatら、Proc Natl Acad Sci USA.98:10314−9.,2001、Ermoianら、Clin Cancer Res.8:1100−6.,2002参照)又はEGFR/EGFRvIII情報伝達と関連しているという我々のデータは、PTENタンパク質のレベルがGBM患者生検でAkt活性化と逆の相関にある(例えばErmoianら、Clin Cancer Res.8:1100−6.,2002参照)という最近の生化学的な証明を含む、最近のインビトロ及び動物モデルでのデータ(例えばDaviesら、Cancer Res.59:2551−6.,1999、Daviesら、Cancer Res.58:5285−90.,1998、Lorimerら、Biochim Biophys Acta.1538:1−9.,2001、Moscatelloら、J Biol Chem.273:200−6.,1998参照)と高い相関を示している。
ERK及びPI3’K/Akt経路の活性化が進行時間の短縮及び生存期間の減少に関連したという我々の知見は、経路の活性化がGBM患者の予後に影響力持つかもしれないという最初の証明である。本明細書に提示されるデータは経路の活性化状態が重要な予後の情報を示唆しているという証拠を提供する。mTOR、S6及びFKHRレベルの下流での活性化が進行又は生存に有意に相関したのに対して、Aktの活性化が相関しなかったことは驚くべきことである。この結果は2つの可能性を生じる。一つは、p−Akt抗体は下流のリン酸特異的抗体のパネルに比べてPI3’K/Akt経路の活性化を検出するには感受性が劣る手段である。あるいは、Aktによるか又はAktとは独立した様式で下流のmTOR、FKHR及びS6に集中して情報が伝わることが、GBMsの生物学的挙動を調節するのに重要な役割を果たしているかもしれない。後者の立場では、同時に起こるErk及びAktの仲介する情報伝達がp70 S6キナーゼの最適な活性化及びp−S6の形成に必要とされるのかもしれない(例えばIijimaら、J Biol Chem.277:23065−75.,2002、Shiら、J Biol Chem.277:15712−20.,2002参照)。同様に、Aktとは独立したmTOR及びFKHRのリン酸化のメカニズムが示されてきた(例えばGingrasら、Genes and Development.15:807−826.,2001、Burgeringら、Trends Biochem Sci.27:352−60.,2002参照)。本明細書で提供される開示と当該技術分野で一般的に使用される方法を用いて、これらの更なる情報の入力が調節されているGBMの挙動において役割を果たしているか否か決定することができる。EGFR及びAkt活性化とそれらの阻害剤、例えばBiancoら、Oncogene,2003 May 8;22(18):2812−22、Yakesら、Cancer Res.2002 Jul 15;62(14):4132−41及びSheら、Clin Cancer Res.2003 Oct 1;9(12):4340−6参照、に関するさらなる考察のために、それらの内容は参照として本明細書に取り込まれる。
45患者という試料の数はあまり大きくはないが、PTENの消失とPI3’K/Akt経路の活性化の間の確固とした関連を提供するには十分な大きさである。未処理の初期GBM患者のみがこの研究に含まれた。処理自体がErk及びPI3’K/Akt経路の活性化を調節する可能性があるので、この研究計画は我々に経路の活性化と上流の分子で起きたこととの関連についてより良い評価手段を与えた。本明細書で提供される開示と当該技術分野で一般的に使用される方法を用いて、経路の活性化と予後の密接な関係をより定量化し、治療に対する応答と分子の相関関係を同定するために、遡及的及び予測的な(処理及び未処理の)GBM患者の解析を行うことができる。
免疫組織化学的な解析の主観性の問題に取り組むために、全ての免疫染色は2人の神経病理学者によって別の機会に独立して解釈され、全ての染色において評価者間及びそれぞれの評価者で意見がよく一致していた。このことはこれらのリン酸特異的抗体の解釈は独立した病理学者間で再現性があるであろうという証拠を提供する。将来、プロテオミクス解析等のより客観的な方法がこの手段にとってかわり得る(例えばLiottaら、Jama.286:2211−4.,2001、Petricoinら、Nat Rev Drug Discov.1:683−95.,2002参照)。それでもなお、本明細書で提示されるデータは、我々が現在入手できる方法を使ってこれらの経路を正確に評価できるという証拠を提供し、治療について患者を分類できるという証拠を提供する。
GBMsは、以前から示されているように(例えばChengら、J Neuropathol Exp Neurol.58:120−8.,1999、Jungら、J Neuropathol Exp Neurol.58:993−9.,1999参照)最も不均質な癌の一つである。これは、標的にされた阻害剤による治療のために患者を分類することと同様に、GBMs患者において分子の変化を評価するという問題を抱えている。本明細書で提供される開示と当該技術分野で一般的に使用される方法を用いて、腫瘍内でのPTEN、EGFR及びEGFRvIIIといった分子の不均質性の程度を直接決定でき、それが経路の活性化、予後及び治療への応答へ与える影響力を評価できる。
本発明の方法は、PI3K/Akt経路が制御されていないことと、同時に起きている細胞増殖が制御されていないこととが関連している、幅広い種類の癌に適用できる。上記のように、本発明の一般的な態様においては「神経膠腫」と呼ばれる系統の腫瘍で、細胞内経路を試験する。簡単に言うと、脳は2つの主な細胞種、ニューロンとグリアを含んでいる。グリア細胞は「神経膠腫」と呼ばれる系統の腫瘍の起源となる。この神経膠腫グループにはいくつかの異なる種類の腫瘍が存在する。これらはきわめて良性で成長の遅い腫瘍から急速に大きくなる非常に悪性の癌の種類まで変化し得る。神経膠腫の系統でもっとも多く発生する腫瘍は星状細胞腫、乏突起細胞腫及び上位細胞腫である。さらに、何人かの患者は雑多な様相を示した腫瘍を有している場合がある。星状細胞腫は最も一般的な種類の神経膠腫である。これらは、脳組織それ自体に起こる腫瘍である。すべての神経膠腫のように、星状細胞腫は脳内の表層部又は深層部に局在し重要な構造に影響を与え得る。それらが(脳の支持要素として働く)星状細胞から生じるので、星状細胞腫は本来は一般的に浸潤性である。
以下に詳細に考察するように、世界保健機関(WHO)の等級付けがこのグループの腫瘍を特徴付けるのに用いられる。簡単に言うと、世界保健機関の格付けシステムでは、グレードIの腫瘍は最も悪性度が低い。これらの腫瘍は成長が遅く、顕微鏡下でもほぼ正常に見え、手術のみが効果的かもしれない。グレードIの腫瘍はしばしば長期の生存に関連する。グレードIIの腫瘍は、グレードIの腫瘍に比べるとわずかに速く成長し、わずかに異常な顕微鏡下での外観を有している。
これらの腫瘍は周囲の正常組織に侵入し、グレードII又はそれ以上の腫瘍として再発するかもしれない。
グレードIIIの腫瘍は悪性である。これらの腫瘍は活発に再生する異常な細胞を含み、
周囲の正常組織へ侵入する。グレードIIIの腫瘍は、グレードIVの腫瘍と同様に頻繁に再発する。グレードIVの腫瘍は、最も悪性でかつ、周辺の正常組織に広範囲に侵潤する。これらの腫瘍は急速に再生し、顕微鏡下で非常に変わった外観を示し、中心部では壊死性(死んだ細胞を有している)である。グレードIVの腫瘍は急速な成長を維持するために新たな血管形成を引き起こす。多形性膠芽腫はグレードIVの腫瘍の最も一般的なものである。さらなる情報は、以下を参照されたい。例えば、Tatter SB,Wilson CB,Harsh GR IV.Neuroepithelial tumors of the adult brain.In Youmans JR,ed.Neurological Surgery,Fourth Edition,Vol.4:Tumors.W.B.Saunders Co.,Philadelphia,pp.2612−2684,1995、Kleihues P,Burger PC,Scheithauer BW.The new WHO classification of brain tumours.Brain Pathology 3:255−68,1993、Lopes MBS,VandenBerg SR,Scheithauer BW;The World Health Organization classification of nervous system tumors in experimental neuro−oncology.In AJ.Levine and H.H.Schmidek,eds.Molecular Genetics of Nervous System Tumors Wiley−Liss,New York,pp.1−36,1993。
低グレードの星状細胞腫(グレードI/IV又はII/IV)は良性と呼ばれ、子供や若い成人で一般的に発生する。これらの腫瘍はより高いグレードの星状細胞腫に比べてより良い予後を示す。これらの低グレードの星状細胞腫の管理は議論のあるところかもしれないが、これらの腫瘍は外科的に接近可能であれば通常切除される。成人の低グレード星状細胞腫で心配されることの1つは、それらが悪性に形質転換し、より高いグレードすなわち悪性腫瘍へと変化し得ることである。本発明の方法は、これらの形質転換をモニターするのに使用することができる。グレードIの星状細胞腫で正常な核型が最も多く観察されるが、異常な核型を伴う場合では、最も多い染色体異常はX及びY性染色体の欠失であり、22qの欠失は星状細胞腫の20−30%で見られ、その他低グレードの腫瘍で観察される異常は8q、10p及び12p染色体上の過剰及び1p、4q、9p、11p、16p、18及び19染色体上の欠失を含む。
未分化の星状細胞腫(グレードIII/IV)はより攻撃的な腫瘍であり、それ自体はより根治的な方法で通常処理される。未分化の星状細胞腫では、染色体の過剰又は欠失はしばしば見られ、トリソミー7(最も高頻度)、染色体10の欠失、染色体22の欠失、9p、13qの欠失、より低い頻度で記載されている他の異常は染色体1q、11q、19、20及びXqの過剰である。
多形性膠芽腫(グレードIV/IV)は星状細胞腫のうち最も悪性の形態である。これらの腫瘍はほぼ全ての年齢で発生し得るが、発生率のピークは50歳から70歳の間である。多形性膠芽腫(GBM)は高グレード神経膠腫とも呼ばれ、グレードIV/IV星状細胞腫として病理学者に格付けされる。これらの腫瘍は主に成人で発生し発生率のピークは50歳から70歳の間である。一般に発症から診断までにかかる時間は比較的短く、通常数週間である。膠芽腫は一般的にいくつかの染色体変化を示し、高頻度の順によれば、染色体7の過剰(膠芽腫の50−80%)、2倍微小染色体、膠芽腫の進行において後期の段階に関連する染色体10の完全又は部分モノソミー(腫瘍の70%)、9pの部分欠失はしばしば見られ(腫瘍の64%)、9pter−23、22q13における22qの部分欠失がしばしば報告され、染色体13の欠失又は消失、13q14−q31がいくつかの膠芽腫で見出され、トリソミー19が細胞遺伝学及び比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)解析によって膠芽腫で報告され、19q13.2−qterにおける19qの欠失がヘテロ接合性の消失(LOH)の研究によって膠芽腫で検出され、4q染色体の欠失、染色体20の完全又は部分的な過剰が記載され、12q14−q21の過剰又は増幅が報告され、他のクローンの異常に加えてそれが発生するとき染色体Yの消失が考えられてきた。
乏突起細胞腫は通常若い成人に発生する良性の成長が遅い腫瘍である。しばしば、これらは安全で完全な手術による切除が可能である前頭葉に局在する。多くの乏突起細胞腫はCTスキャンで最もよく見えるカルシウム(骨の小さな粒)を含んでいる。
本発明の特定の態様においては、ヒトで膠芽腫等の癌を処理するための治療剤を同定するために用いられる情報を得るための方法を含んでいる。例えば、本発明の方法は、癌細胞がラパマイシン又はラパマイシン類似物にどのように応答するかという情報を得るために、あるポリペプチド(例えばPTEN)のレベル及び/又はあるポリペプチド(例えばS6)のリン酸化状態を試験する。ラパマイシン(シロリムス又はrapammuneとしても知られる)は、さまざまなヒト腫瘍細胞系及び腫瘍の異種移植モデルで免疫抑制の性質と抗増殖活性を持つサイクロスポリンに関連のあるマクロライドの1つである。SDZ−RAD、CCI−779、RAD001、エベロリムス(サーティカン)及びAP23573等のより好ましい薬剤特性を持ったラパマイシン又はラパマイシン類似物の両者が特異性の高いmTORの阻害剤である。本明細書に記載するように、ラパマイシン(mTOR)の哺乳動物での標的は、細胞の生存と増殖を仲介するので抗癌治療開発の標的とされる、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)/Akt(プロテインキナーゼB)情報伝達経路の下流作用因子である。重要なことに、ラパマイシン又はラパマイシン類似物はイムノフィリンFK506結合タンパク質12に結合することによって機能を獲得し、結果として生じた複合体がmTORの活性を阻害する。mTORは40Sリボゾーマルタンパク質S6キナーゼ(p70s6k)及び真核生物の開始因子4E−結合タンパク質−1の両者を活性化するので、ラパマイシン様化合物はこれら下流の伝達要素の働きを遮断し、その結果細胞周期はG1期で停止する。ラパマイシンとその類似物はまた、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)活性化を妨げ、網膜芽細胞腫のタンパク質リン酸化を阻害し、サイクリンD1の代謝を促進することにより活性型CDK4/サイクリンD1複合体の欠乏を引き起こすが、それらは全て、細胞周期のG1/S境界線でラパマイシンの顕著な阻害効果に潜在的に寄与している。ラパマイシンとその類似物は、広範囲にわたるヒトの癌で顕著な成長阻害効果が示されてきた。
例えば、本明細書に記載するように、ラパマイシン(mTOR)の哺乳動物での標的は、多形性膠芽腫の制御されていない増殖を促進する重要な情報伝達経路を調節する。
これに関連して、本発明の方法はPI3K/Akt経路の試験、及び、制御されていないPI3K/Akt経路を有する細胞で適した治療剤(例えばラパマイシン)の選択に使用することができる。ラパマイシンとその類似物についての考察は以下を参照されたい。例えば、Mitaら、Clin Breast Cancer 2003 Jun;4(2):126−37、Hosoiら、Mol Pharmacol.1998 Nov;54(5):815−24、Hidalgoら、Oncogene.2000 Dec 27;19(56):6680−6、Alexandreら、Bull Cancer.1999 Oct;86(10):808−11及びEshlemanら、Cancer Res.2002 Dec 15;62(24):7291−7。
上皮成長因子受容体(EGFR)の過剰発現は、神経膠腫等の幅広い種類の癌でも観察され、予後の悪さとしばしば相関しており、そのためEGFRを標的とした新たな癌治療を開発しようという努力を刺激している。EGFRを特異的な標的としたモノクローナル抗体及びチロシンキナーゼ阻害剤が最もよく研究され、実質的な成功が約束されている。EGFRを標的としたモノクローナル抗体及びチロシンキナーゼ阻害剤のいくつかの化合物が研究されてきており、これらの標的化戦略の安全性と効力を確かめるために様々な癌で現在臨床試験が行われている。EGFRの細胞外リガンド結合領域を標的とした化合物はCetuximab(Erbitux又はIMC−C225としても知られる)等の抗体を含んでいる。EGFRの細胞内ドメインを標的としたチロシンキナーゼ等の他の化合物はZD−1839(gefitinib又はIressaとしても知られる)、OSI−774(Erlotinibor又はTarcevaとしても知られる)、PD−153053、PD−168393及びCI−1033を含み、単独で又は放射線又は化学療法と組み合わせて臨床上の設定が研究されてきた。さらに、h−R3、ABX−EGF、EMD−55900及びICR−62等の化合物は単独で又は従来の治療と組み合わせて標的である悪性細胞に効果的であることが証明されてきた。ZD1839(Iressa)の効果は、多形性膠芽腫の患者に対して現在臨床試験で研究されている。これに関連して、本発明の方法はPI3K/Akt経路を試験し、制御されていないPI3K/Akt経路を有しない細胞に適した治療剤(例えばEGFR阻害剤)を選択するために使用することができる。EGFR阻害剤についての考察は以下を参照されたい。例えば、Khalilら、Expert Rev AnticancerTher.2003 Jun;3(3):367−80、Chakravartiら、Int J Radiat Oncol Biol Phys.2003 Oct 1;57 (2 Suppl):S329、Wissnerら、Bioorg Med Chem Lett.2002 Oct 21;12(20):2893−7、Ciardielloら、Expert OpinInvestig Drugs,2002 Jun;11(6):755−68、 De Bonoら、Trends Mol Med.2002;8(4 Suppl):S19−26及びCohen,Clin Colorectal Cancer.2003 Feb;2(4):246−51。
本発明に於ける一般的な方法
本明細書に開示される本発明は多くの態様を有している。本発明の例示的な態様はホルマリン固定されパラフィン包埋された多形性膠芽腫生検試料等の腫瘍試料をPI3K/Akt経路の制御されていない活性化の証拠について試験する方法を含んでいる。これらの方法は、膠芽腫の処理に有用であるかもしれない治療剤を同定及び/又は評価するために、この経路と関連のある開示されたバイオマーカーの存在及び/又はリン酸化状態を試験することを包含する。本明細書の開示のように、開示されたバイオマーカーの存在及び/又はリン酸化状態は経路活性化のマーカー又は代用品として働く。
本発明の方法は一般的に、mTOR阻害剤又はEGFR阻害剤と接触したときに神経膠腫等の腫瘍が応答しそうか(すなわち成長阻害を示しそうか)否かを評価する際に、用いることができる。このような態様では、経路の活性化に関連するバイオマーカーポリペプチド(例えば、リン酸化S6リリボソームポリペプチド(配列番号1))の存在及び/又はリン酸化状態が、経路がその腫瘍において制御されていない状態か、それ故にその経路を標的とすることが知られる阻害剤による阻害の影響を受け易いか否かを決定するために、試験される。このような態様においては、腫瘍は阻害剤にさらされる前に試験される。その他には、方法は、神経膠腫等の腫瘍がmTOR阻害剤又はEGFR阻害剤に応答性であるか(すなわち成長阻害を示すか)否かを評価する。このような態様においては、経路の活性化に関連するバイオマーカーポリペプチド(例えば、リン酸化S6リリボソームポリペプチド(配列番号1))の活性は、経路内のバイオマーカーが阻害剤にさらされたことに応答するかどうかを決定するために、腫瘍が阻害剤にさらされた後に試験される。
本発明のこのような態様の一つに、応答する可能性がある哺乳動物の神経膠腫(例えば、多形性膠芽腫)が、EGFRポリペプチド(配列番号7)阻害剤又はmTORポリペプチド(配列番号2)阻害剤に応答性であるか同定するための方法があり、この方法は腫瘍から得られた試料を、PTENポリペプチド(配列番号5)の発現、及び、リン酸化S6リリボソームポリペプチド(配列番号1)、EGFRポリペプチド(配列番号7)、リン酸化AKTポリペプチド(配列番号4)及びリン酸化ERKポリペプチド(配列番号8)のうち少なくとも1つの存在について試験することを包含し、そこでは、PTENポリペプチドの発現が、対照と比較して、試料中のS6リリボソームポリペプチドのリン酸化の減少を伴って減少している場合は、神経膠腫はmTOR阻害剤に応答しそうか又は応答性であると同定され、PTENの発現が、対照と比較して、試料中のS6リリボソームポリペプチドの正常なリン酸化を伴って減少している場合は、神経膠腫はmTOR阻害剤に応答する可能性がないか又は非応答性であると同定され、AKTリン酸化及び/又はERKリン酸化の増加を伴って、PTENの発現が正常又は増加し、EGFRの発現及び/又は活性化が増加している場合は、神経膠腫はEGFR阻害剤に応答する可能性がないか及び/又は非応答性であると同定される。必要に応じて、S6リリボソームポリペプチドのリン酸化は腫瘍又は試料をmTOR阻害剤に接触させた後に測定され、及び/又は、AKT及び/又はERKのリン酸化は腫瘍又は試料をEGFR阻害剤に接触させた後に測定される。例示的な態様においては、mTOR阻害剤はラパマイシン、SDZ−RAD、CCI−779、RAD001又はAP23573であり、EGFR阻害剤は、ZD−1839、OSI−774、PD−153053、PD−168393、IMC−C225又はCI−1033である。
一般的な方法では、バイオマーカーポリペプチドの発現は、配列番号1の235位でリン酸化されたセリン残基を含むエピトープに結合する抗体、配列番号4の473位でリン酸化されたセリン残基を含むエピトープに結合する抗体、又は配列番号8の202位でリン酸化されたスレオニン残基及び204位のチロシンを含むエピトープに結合する抗体等の抗体を用いて試験される。必要に応じて、試料はパラフィン包埋された生検試料である。
本発明の別の態様は、PTENポリペプチド(配列番号5)を発現しておらず、mTORポリペプチド(配列番号2)活性の阻害剤に応答する可能性がないか又は非応答性である哺乳動物の神経膠腫を同定する方法であり、当該方法は腫瘍から得られた試料を、腫瘍又は試料を阻害剤に接触させた後にリン酸化S6リリボソームポリペプチド(配列番号1)の存在について試験することを包含し、そこでは、阻害剤と接触させていない対照と比較して、試料中のリン酸化S6リリボソームポリペプチドの減少が観察された場合には、神経膠腫は阻害剤に応答しそうか又は応答性であると同定され、対照と比較して試料中のリン酸化S6リリボソームポリペプチドの減少が観察されない場合には、神経膠腫は阻害剤に応答する可能性がないか又は非応答性であると同定される。
本発明のさらに別の態様は、PTENポリペプチド(配列番号5)を発現しており、EGFRポリペプチド(配列番号7)活性の阻害剤に応答する可能性がないか又は非応答性である哺乳動物の神経膠腫を同定する方法であり、当該方法は腫瘍から得られた試料を、腫瘍又は試料を阻害剤に接触させた後にEGFR(配列番号7)の存在及びリン酸化AKTポリペプチド(配列番号4)の存在又はリン酸化ERKポリペプチド(配列番号8)の存在について試験することを包含し、そこでEGFRポリペプチドレベル及びリン酸化AKTポリペプチド又はリン酸化ERKポリペプチドのレベルが増加した場合は、神経膠腫は阻害剤に応答する可能性がないか又は非応答性であると同定される。必要に応じて、腫瘍から得られた試料は、リン酸化AKTポリペプチド(配列番号4)の存在及びリン酸化ERKポリペプチド(配列番号8)の存在について試験される。
上記のように、本発明の特定の態様は、ポリペプチドの発現又はポリペプチドのリン酸化についての試験を包含する。当該技術分野で公知であるように、細胞又は組織試料でのこれらのポリペプチド発現及びポリペプチドリン酸化状態の試験は、対照すなわちポリペプチドの発現又はリン酸化のレベルが定義された又はあらかじめ測定された対照細胞及び/又は組織試料と比較して、一般的に評価される。ポリペプチドリン酸化の例では、対照は、ポリペプチドが一般的にリン酸化されていないことが観察されている正常組織(例えば、非癌神経膠細胞)であり得る。ポリペプチド発現の例では、実施例3及び図2が、このような対照、特に対照として血管内皮細胞を用いる分野で知られるPTEN発現の格付けシステムを使用した本発明の方法の実例を提供した。特に(PTENの発現と直接相関している)PTEN免疫組織化学染色は、0−2の確立された単位に従って評価され、そこでは血管内皮細胞(スコアー2)が内部対照として働いている。腫瘍細胞の染色強度が血管内皮細胞のそれと同じであれば腫瘍細胞は2として格付けされ、血管内皮細胞と比べて減少していれば1、腫瘍細胞で検出されず血管内皮細胞に存在していれば0となる。この格付けシステムは、(本明細書で開示されるような)神経膠腫及び乳、卵巣、膵臓及び結腸の癌を含む異なる癌細胞の種類の間で高い相関を示してきており、そのシステムは、ホルマリン固定されパラフィン包埋された生検試料等の試料でPTENポリペプチドの発現レベルを技術者が容易に試験することを可能にする。
本発明のさらなるの態様は、PTENポリペプチド(配列番号5)を発現しておらず、mTORポリペプチド(配列番号2)活性の阻害剤に接触した際に増殖阻害を示しそうな哺乳動物の多形性膠芽腫の癌細胞を同定する方法であり、当該方法は癌細胞を、癌細胞を阻害剤に接触させた後にリン酸化S6リリボソームポリペプチド(配列番号1)の存在について試験することを包含し、そこでは、阻害剤と接触させていない対照となる哺乳動物の多形性膠芽腫の癌細胞と比較して、試料中のリン酸化S6リリボソームポリペプチドの減少が観察された場合には、癌細胞は阻害剤に接触した際に成長阻害を示しそうであると同定され、さらに、対照となる哺乳動物の細胞と比較して、試料中のリン酸化S6リリボソームポリペプチドの減少が観察されない場合には、癌細胞は阻害剤に接触した際に成長阻害を示しそうにないと同定される。これらの方法で、mTORポリペプチド活性の阻害剤は、必要に応じて、ラパマイシン、CCI−779、RAD001又はAP23573である。一般的に、PTENポリペプチドの発現又はリン酸化S6リリボソームポリペプチドの発現はPTENポリペプチド又はリン酸化S6リリボソームポリペプチドに結合する抗体(例えば、配列番号1の235位でリン酸化されたセリン残基を含むエピトープに結合する抗体)を用いて試験される。好ましくは、哺乳動物の多形性膠芽腫の癌細胞はパラフィン包埋された生検試料から得られる。
本発明の別の態様は、PTENポリペプチド(配列番号5)を発現しており、EGFRポリペプチド(配列番号7)活性の阻害剤に接触した際に増殖阻害を示しそうにない哺乳動物の多形性膠芽腫の癌細胞を同定する方法であり、当該方法は癌細胞を、EGFR(配列番号7)の存在、リン酸化AKTポリペプチド(配列番号4)の存在又はリン酸化ERKポリペプチド(配列番号8)の存在について試験することを包含し、そこで、EGFRポリペプチドのレベル及びリン酸化AKTポリペプチド又はリン酸化ERKポリペプチドのレベルが増加した場合は、癌細胞はEGFRポリペプチド阻害剤に接触した際に成長阻害を示しそうにないと同定される。これらの方法で、EGFR活性の阻害剤は、必要に応じて、ZD−1839、OSI−774、PD−153053、PD−168393又はCI−1033である。一般的に、PTENポリペプチドの発現又はEGFRポリペプチドの存在はPTENポリペプチド又はEGFRポリペプチドに結合する抗体を用いて試験される。必要に応じて、リン酸化AKTの存在が配列番号4の473位でリン酸化されたセリン残基を含むエピトープに結合する抗体を用いて試験され、リン酸化ERKの存在が配列番号8の202位でリン酸化されたスレオニン残基又は204位でリン酸化されたチロシン残基を含むエピトープに結合する抗体を用いて試験される。実例となる方法では、哺乳動物の多形性膠芽腫の癌細胞はパラフィン包埋された生検試料から得られる。
本発明の別の態様は、EGFRポリペプチド(配列番号7)阻害剤又はmTORポリペプチド(配列番号2)阻害剤からなるグループから選ばれた増殖阻害剤に対する哺乳動物の神経膠腫細胞の応答を決定するための方法であり、当該方法は、神経膠腫細胞をリン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するS6ポリペプチド(配列番号1)、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するmTORポリペプチド(配列番号2)、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するFKHRポリペプチド(配列番号3)、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するAKTポリペプチド(配列番号4)、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するERKポリペプチド(配列番号8)の存在又はPTENポリペプチド(配列番号5)の発現について試験することを包含し、そこで、対照である哺乳動物の血管内皮細胞と比較して、膠芽腫の細胞でのリン酸化されたS6、mTOR、FKHR、AKT又はERKポリペプチドの存在又はPTENポリペプチドの発現レベルの減少は、増殖阻害剤に対する哺乳動物の膠芽腫細胞の応答を決定する。これらの方法において、必要に応じて、膠芽腫細胞は増殖阻害剤と接触している。あるいは、膠芽腫細胞は増殖阻害剤と接触していない。
本発明のさらに別の態様は、ヒトで膠芽腫を処理するための治療剤を同定するために使用される情報を得る方法であり、当該方法はヒトから得られた膠芽腫細胞をリン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するS6ポリペプチド(配列番号1)、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するmTORポリペプチド(配列番号2)、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するFKHRポリペプチド(配列番号3)、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するAKTポリペプチド(配列番号4)の存在又はPTENポリペプチド(配列番号5)発現レベルの減少について試験することを包含し、そこで、膠芽腫の細胞でリン酸化されたS6、mTOR、FKHR又はAKTポリペプチドの存在又はPTENポリペプチドの発現レベルの減少は、ヒトで膠芽腫を処理するための治療剤を同定するのに用いられる情報を提供する。この方法では、必要に応じて、膠芽腫の細胞は多数のこれら特徴の存在について試験される。このような態様の一つにおいては、膠芽腫の細胞はリン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するS6ポリペプチド(配列番号1)の存在及びPTENポリペプチド(配列番号5)発現レベルの減少について試験される。必要に応じて、膠芽腫の細胞はパラフィン包埋された生検試料である。
上記のように、本発明の態様は一般的に、リン酸化されたポリペプチド、すなわち、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体を利用する。これに関連して、開示はリン酸化残基(例えば、配列番号2で2481位のセリン)を含む特異的なエピトープに結合する抗体を提供する。リン酸化残基を含むエピトープに結合する(すなわちリン酸特異的抗体)が同じポリペプチドのリン酸化されていない形には結合しない抗体を利用することで、これらのリン酸特異的抗体は、活性化が一つかそれ以上の明記された残基のリン酸化に関連している経路において活性化状態を試験するのに使用され得る。本発明の特定の態様においては、情報伝達経路の複数の構成員(例えばS6及びmTOR)のリン酸化状態及び/又は発現レベルが、経路に関連した情報伝達カスケードの確認的な評価として試験される。
本発明の特定の態様においてはホルマリン固定されパラフィン包埋された生検試料で使用される。特に、本明細書で提供される開示によれば、リン酸特異的抗体等の抗体はこの方法で処理された抗原試料で使用され得ることが示される。意味あることに、さらに本明細書で提供される開示によれば、これらの試料を用いた方法はこれらの試料における経路の生理学的な状態の正確な描写を提供する。それゆえに、本明細書で提供される開示は、本発明の方法が広く入手できる臨床試料での使用にどのようによく適合しているのかを示している。
本発明の実例となる態様の1つにおいては、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するS6ポリペプチド(配列番号1)の存在が、配列番号1の235位でリン酸化されたセリン残基を含むエピトープに結合する抗体を用いて試験される。本発明の別の例示的態様においては、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するmTORポリペプチド(配列番号2)の存在が、配列番号2の2481位でリン酸化されたセリン残基を含むエピトープに結合する抗体を用いて試験される。本発明の別の例示的態様においては、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するFKHRポリペプチド(配列番号3)の存在が、配列番号3の24位でリン酸化されたスレオニン残基を含むエピトープに結合する抗体を用いて試験される。本発明の別の例示的態様においては、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するAKTポリペプチド(配列番号4)の存在が、配列番号4の473位でリン酸化されたセリン残基を含むエピトープに結合する抗体を用いて試験される。さらなるポリペプチドマーカーの存在レベル及び/又はリン酸化も同様に試験され得る。これらさらなるマーカーの実例はKi−67(配列番号9)及びp−H3ヒストンH3(配列番号10)を包含する。
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物の細胞を配列番号1の235位でリン酸化されたセリン残基を有するS6ポリペプチド(配列番号1)、配列番号2の2481位でリン酸化されたセリン残基を有するmTORポリペプチド(配列番号2)、配列番号3の24位でリン酸化されたスレオニン残基を有するFKHRポリペプチド(配列番号3)、配列番号4の473位でリン酸化されたセリン残基を有するAKTポリペプチド(配列番号4)の存在、又は、PTENポリペプチド(配列番号5)発現レベルの減少について試験することを含む、哺乳動物の細胞をAkt経路活性化の証拠について試験する方法であり、そこで、リン酸化されたS6、mTOR、FKHR又はAKTポリペプチドの存在、又は、PTENポリペプチドの発現レベルの減少は、哺乳動物の細胞でAkt経路が活性化したことを証明する。必要に応じて、哺乳動物の細胞は配列番号1の235位でリン酸化されたセリン残基を有するS6ポリペプチド(配列番号1)及びPTENポリペプチド(配列番号5)発現レベルの減少等の多数の特徴の存在について試験される。この方法では一般的に哺乳動物の細胞は膠芽腫系統の癌細胞等の癌細胞である。
本発明の特定の態様は、さらに、例えば、腫瘍の進行について予後を決定するのに試験の結果を用いること及び/又は最初の診断から患者の死に至るまでの時間が短いことによって特徴付けられる膠芽腫の存在を同定するために試験の結果を用いること等の方法上の工程を包含する。必要に応じて、さらなる方法上の工程は、膠芽腫細胞に対するラパマイシンの効果を評価するために試験の結果を用いる工程等の膠芽腫を処理するための治療剤を同定するために試験の結果を用いる段階を包含する。必要に応じて、哺乳動物の細胞はパラフィン包埋された生検試料中にある。
本発明の好ましい態様は、mTOR、FKHR又はS6からなるグループから選ばれる哺乳動物細胞中のリン酸化タンパク質の存在について細胞を試験するためにリン酸特異的抗体を用いることを包含する、哺乳動物細胞をAkt経路の活性化の証拠について試験する方法であり、そこでは、哺乳動物細胞中でリン酸化mTOR、FKHR又はS6の存在はAkt経路の活性化の証拠を提供する。より好ましい態様では、細胞はmTOR、FKHR、S6タンパク質の同時リン酸化について試験される。このような方法は一般的に、哺乳動物細胞中でAktタンパク質のリン酸化の証拠について細胞を試験するために、リン酸特異的抗体を使用する任意の工程を包含する。このような方法では、哺乳動物の細胞は一般的にパラフィン包埋された生検試料中に存在する癌細胞である。本発明のより好ましい態様では、癌細胞は膠芽腫系統である。
本発明のさらに別の態様は、細胞中のp−44/42MAPキナーゼタンパク質の存在について細胞を試験するためにリン酸特異的抗体を用いることを包含する、哺乳動物細胞をErk経路の活性化の証拠について試験する方法であり、そこでは、哺乳動物細胞中でリン酸化されたp−44/42MAPキナーゼタンパク質の存在はErk経路の活性化の証拠を提供する。好ましい態様では、哺乳動物細胞は、膠芽腫に罹っていることが疑われる個体から得られたパラフィン包埋された生検試料中に存在する。
本発明の別の態様は、腫瘍へより短い時間で進行することによって特徴付けられる表現型を有する哺乳動物の膠芽腫細胞の存在について組織試料を試験する方法であり、細胞内にリン酸化したmTOR、FKHR及びS6タンパク質が存在するか調べるためにリン酸特異的抗体を使用することを包含し、そこでは、哺乳動物細胞内にリン酸化したmTOR、FKHR及びS6タンパク質が存在することは、その表現型の証拠を提供する。本発明の関連した態様は、最初の診断から患者の死までの時間が短いことによって特徴付けられる表現型を有する哺乳動物の膠芽腫細胞の存在について組織試料を試験する方法であり、細胞内にリン酸化したmTOR、FKHR及びS6タンパク質が存在するか調べるためにリン酸特異的抗体を使用することを包含し、そこでは、哺乳動物細胞内にリン酸化したmTOR、FKHR及びS6タンパク質が存在することは、その表現型の証拠を提供する。
別の態様は、腫瘍へより短い時間で進行することによって特徴付けられる表現型を有する哺乳動物の膠芽腫細胞の存在について組織試料を試験する方法であり、細胞内にリン酸化したErkタンパク質が存在するか調べるためにリン酸特異的抗体を使用することを包含し、そこでは、哺乳動物細胞内にリン酸化したErkタンパク質が存在することは、その表現型の証拠を提供する。本発明の関連した態様は、最初の診断から患者の死までの時間が短いことによって特徴付けられる表現型を有する哺乳動物の膠芽腫細胞の存在について組織試料を試験する方法であり、細胞内にリン酸化したp−44/42MAPキナーゼタンパク質が存在するか調べるためにリン酸特異的抗体を使用することを包含し、そこでは、哺乳動物細胞内にリン酸化したp−44/42MAPキナーゼタンパク質が存在することは、その表現型の証拠を提供する。
本発明のさらに別の態様は、膠芽腫に罹っている個体を処理するために用いられる適当な治療剤を同定するのに有用な情報を得る方法であり、mTOR、FKHR及びS6からなるグループから選択されたリン酸化タンパク質を有する膠芽腫細胞の存在について患者からの組織試料を試験することを包含し、そこでは、哺乳動物細胞内にリン酸化されたmTOR、FKHR又はS6タンパク質が存在することは、膠芽腫に罹っている個体を処理するために用いられる適当な治療剤を同定するのに有用な情報を提供する。本発明のさらに好ましい態様では、哺乳動物細胞はmTOR、FKHR及びS6からなるグループから選択された少なくとも2つ、より好ましくは3つのリン酸化タンパク質の存在について試験される。一般的に治療剤はAkt経路のキナーゼ阻害剤である。
本発明の別の態様は、膠芽腫に罹っている個体を処理するために用いられる適当な治療剤を同定するのに有用な情報を得る方法であり、リン酸化されたErkタンパク質を有する膠芽腫細胞の存在について患者からの組織試料を試験することを包含し、そこでは、哺乳動物細胞内にリン酸化されたErkタンパク質が存在することは、膠芽腫に罹っている個体を処理するために用いられる適当な治療剤を同定するのに使用し得る情報を提供する。
発明の別の態様は、Akt経路活性化の証拠について哺乳動物細胞を試験する方法であり、EGFR及びEGFRvIIIタンパク質の発現について細胞を試験することを包含し、そこでは、細胞内でEGFR及びEGFRvIIIタンパク質の共発現はAkt経路活性化の証拠を提供する。本発明の関連した態様は、Erk経路活性化の証拠について哺乳動物細胞を試験する方法であり、EGFR及びEGFRvIIIタンパク質の発現について細胞を試験することを包含し、そこでは、細胞内でEGFR及びEGFRvIIIタンパク質の共発現はErk経路活性化の証拠を提供する。本発明のさらに別の態様は、Akt経路活性化の証拠について哺乳動物の膠芽腫細胞を試験する方法であり、そこでは、哺乳動物の膠芽腫細胞はパラフィン包埋された生検試料から得られ、当該試験方法は、PTENタンパク質の発現減少について細胞を試験することを包含し、そこでは、PTENタンパク質発現の減少はAkt経路活性化の証拠を提供する。
本発明の製品
本発明の態様は、本発明の方法を容易に実施できるよう設計された製品及び/又はキットも包含する。一般的に、このようなキットはその中に本発明の方法に従った要素の使用についての説明書を含む。このようなキットはバイアル、チューブ等の1又はそれ以上の容器手段を狭い場所に受け入れるために区画分けされている運搬手段を含むことができ、それぞれの容器手段は方法で使用される分離された要素の1つを含んでいる。例えば、容器手段の1つは、検出可能なようにマーカーで標識されているか又はされ得る本明細書で開示された抗体(例えば抗S6抗体)を1つ又はそれ以上包含し得る。キットが、これらの方法のための緩衝液を含む容器及び/又は発色団又は放射性分子等のレポーター手段で標識された抗体を含む容器も有するのは、キットが標的タンパク質を検出するために免疫学的方法(例えば免疫組織化学及びウエスタンブロッティング)を利用するからである。加えて、アポトーシスについてカスパーゼ−3アッセイ又はtunelアッセイ等のさらなる方法を利用するキットについては、これらの手法に関連したさらなる試薬がさらにキットに含まれ得る。
本発明の一般的な態様では、上述された開示の試験に有用である材料を含んだ製品の物品が提供される。製品の物品は容器及びラベルを含む。適当な容器は、例えばボトル、バイアル、シリンジ及びテストチューブを含む。容器はガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成されても良い。容器は哺乳動物の細胞(例えば、膠芽腫細胞)を試験するのに効果的な組成物(例えば、抗体組成物)を保持し得る。容器上の又は容器に関連したラベルは、組成物が細胞のポリペプチドを試験するのに用いられることを指示している。製品中の物品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びブドウ糖溶液等の緩衝液を含んだ第2の容器をさらに含んでいても良い。それはさらに、他の緩衝液、希釈液、フィルター、針、シリンジ及び使用説明が記載されたパッケージ挿入物を含む、商用及び使用者の立場から見て望ましい他の材料を含んでいても良い。
本発明のこのような態様の1つは、以下の抗体、S6ポリペプチド(配列番号1)に結合する抗体、そこでは抗体が結合するS6ポリペプチドエピトープはリン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を含んでおり、mTORポリペプチド(配列番号2)に結合する抗体、そこでは抗体が結合するmTORポリペプチドエピトープはリン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を含んでおり、FKHRポリペプチド(配列番号3)に結合する抗体、そこでは抗体が結合するFKHRポリペプチドエピトープはリン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を含んでおり、AKTポリペプチド(配列番号4)に結合する抗体、そこでは抗体が結合するAKTポリペプチドエピトープはリン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を含んでおり、からなるグループから選ばれる少なくとも1つの抗体を含んだキットであり、そこではキットはさらにAKT経路活性化の証拠について哺乳動物の細胞を試験することに関する抗体の使用説明を含んでいる。必要に応じて、キットはさらに、PTENポリペプチド(配列番号5)に結合する抗体を含んでいる。本発明のキットはさらに、Ki−67(配列番号9)及びp−H3ヒストンH3(配列番号10)等のさらなるポリペプチドに対する抗体を含むこともできる。
本発明の別の態様は、リン酸化されたAkt、mTOR、FKHR及びS6タンパク質からなるグループから選択された哺乳動物細胞中のリン酸化タンパク質に免疫特異的に結合することができる抗体及びAKT経路活性化の証拠について哺乳動物の細胞を試験することに対しての抗体の使用説明を含むキットである。好ましい方法では、キットは異なる抗体を含んでおり、その抗体はそれぞれ、リン酸化されたAkt、mTOR、FKHR及びS6タンパク質からなるグループから選択された哺乳動物細胞中の2、3又は4つのリン酸化タンパク質に免疫特異的に結合することができる。本発明の別の態様は、パラフィン包埋された生検試料に存在する哺乳動物の膠芽腫細胞中のリン酸化p−44/42MAPキナーゼタンパク質に免疫特異的に結合することができる抗体及びErk経路活性化の証拠について哺乳動物の細胞を試験することに関する抗体の使用説明を含むキットである。
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物の膠芽腫(GBM)の腫瘍又は細胞を特徴付けるためのキットであり、当該キットはPTEN(配列番号5)に結合する抗体及び以下の抗体、リン酸化されたS6リボゾーマルタンパク質(配列番号1)に結合する抗体、EFGR(配列番号7)に結合する抗体、リン酸化されたAKT(配列番号4)に結合する抗体及び/又はリン酸化されたERK(配列番号8)に結合する抗体、のうち少なくとも1つ、そして、上記の一次抗体に結合する少なくとも1つの二次抗体を含んでいる。必要に応じて、キットは多数のこれらの抗体を含んでいる。特有の態様では、キットは、配列番号1の235位でリン酸化されたセリン残基を有するS6リボゾーマルタンパク質(配列番号1)に対して特異的な抗体、配列番号4の473位でリン酸化されたセリン残基を有するAKT(配列番号4)に対して特異的な抗体又は配列番号8の202位でリン酸化されたスレオニン残基又は204位でリン酸化されたチロシン残基を有するERK(配列番号8)に対して特異的な抗体を含んでいる。
本発明の別の態様は、哺乳動物の神経膠腫又はその細胞を特徴付けるためのキットであり、当該キットはPTEN(配列番号5)に結合する抗体、リン酸化されたS6リリボソームポリペプチド(配列番号1)に結合する抗体、EFGR(配列番号7)に結合する抗体、リン酸化されたAKT(配列番号4)に結合する抗体、リン酸化されたERK(配列番号8)に結合する抗体を含んでいる。一般的に、キットはさらに、これらのポリペプチドに対する一次抗体の1つに結合する二次抗体を含んでいる。必要に応じて、キットは、配列番号1の235位でリン酸化されたセリン残基を有するS6リリボソームポリペプチド(配列番号1)に対して特異的な抗体、配列番号4の473位でリン酸化されたセリン残基を有するAKT(配列番号4)に対して特異的な抗体又は配列番号8の202位でリン酸化されたスレオニン残基及び204位のチロシン残基を有するERKに対して特異的な抗体等の多数の抗体を含んでいる。必要に応じて、キットはさらに、Ki−67ポリペプチド(配列番号9)、p−H3ヒストンポリペプチド(配列番号10)又はカスパーゼ−3ポリペプチド(配列番号11)に結合する抗体を含んでいる。
本発明の実施に有用な一般的な実験計画
本発明の方法は、一般的にPI3K/Akt経路のポリペプチドに対する抗体を利用する。本発明で有用な実例となる抗体組成物は、PI3K/Akt経路に関連するポリペプチドのリン酸化型に特異的に免疫反応する抗体分子を含んでいることを特徴とする抗リン酸化タンパク質抗体である。ポリペプチドは、例えば、S6、mTOR、FKHR、AKT又はPTENであっても良い。「特異的に免疫反応する」に関して言えば、それは、抗体がポリペプチドのリン酸化型に結合し(すなわちリン酸特異的)、同じポリペプチドの非リン酸化型には結合しないことを意味している。従って、経路の活性化に関連するリン酸化はこれらの抗体で試験し得る。それゆえに、本発明の抗体は、PI3K/Akt経路に関連するポリペプチドのリン酸化型及び非リン酸化型を区別し得る。従って、経路活性化に関連するリン酸化はこれらの抗体で試験し得る。一般的に、本発明のアッセイは本明細書で開示される抗体を使用する免疫組織化学的な手法を包含する。例えば、試料は配列番号8の202位でリン酸化されたスレオニン残基及び204位のチロシン残基を含むエピトープに結合する抗体を使用することによってリン酸化ERK等の生化学的な経路に関連するリン酸化ポリペプチドの存在について試験され得る。
1.抗体
本発明で有用な抗体はポリクローナル抗体、例えばアフィニティー精製されたポリクローナル抗体を包含しても良い。ポリクローナル抗体を調製する方法は熟練した技術者に公知である。ポリクローナル抗体は、例えば免疫原及び望まれるならばアジュバントを1回又はそれ以上注入することによって、哺乳動物で生じさせることができる。一般的に、免疫原及び/又はアジュバントは複数の皮下又は腹腔内注入によって哺乳動物に注入されるであろう。免疫原は適当なポリペプチドエピトープ(例えば、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するS6ポリペプチド(配列番号1)、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するmTORポリペプチド(配列番号2)、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するFKHRポリペプチド(配列番号3)、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するERKポリペプチド(配列番号8)、リン酸化されたセリン、スレオニン又はチロシン残基を有するAKTポリペプチド(配列番号4)又はPTENポリペプチド)又はそれらの融合タンパク質を含んでいても良い。
さらに、免疫原を、免疫されるのに適した哺乳動物で免疫原性があることが知られているタンパク質に結合させることが有用であるかもしれない。このような免疫原性タンパク質の例は、キーホールリンペットヘモシニアン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及びダイズトリプシン阻害因子を含むがそれらに制限されない。使用されるかもしれないアジュバントの例はフロイント完全アジュバント及びMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)を含む。免疫化の実験計画は過度の実験を行うことなしに当業者によって選択される得る。
あるいは、抗体はモノクローナル抗体であっても良い。モノクローナル抗体はKohler and Milstein,Nature256:495(1975)によって記載されるようなハイブリドーマ法を用いて調製されても良い。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適当な宿主動物が、一般的に、免疫原に特異的に結合するはずの抗体を産生するか又は産生できるリンパ球を顕在化するために免疫原で免疫される。あるいは、リンパ球はインビトロで免疫されても良い。
免疫原は一般的にリン酸化されたS6、mTOR、FKHR、ERK又はAKTポリペプチド又はPTENポリペプチド、又はそれらの融合タンパク質を含むであろう。一般的に、末梢血リンパ球(PBL)はヒト起源の細胞が望まれる場合に使用され、脾臓細胞又はリンパ節は非ヒト哺乳動物源が望まれる場合に使用される。リンパ球はそれからポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いて不滅化された細胞系と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103)。不滅化された細胞系は、通常、形質転換された哺乳動物細胞、特にネズミ、ウシ及びヒト起源のミエローマ細胞である。通常、ラット又はマウスミエローマ細胞系が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは融合していない不滅化細胞の成長や生存を阻害する物質を1つ又はそれ以上含む適当な培地で培養されても良い。例えば、親の細胞がヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)酵素を欠いているならば、ハイブリドーマ用の培養培地は一般的にヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン、それらの物質はHGPRT欠失細胞の成長を妨げるが、それらを含んでいるだろう(「HAT培地」)。
好ましい不滅化細胞系は、効率よく融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高い発現レベルを維持し、HAT培地等の培地に感受性のある細胞系である。より好ましい不滅化細胞系は、マウスミエローマ系であり、それは例えばthe Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California及びthe American Type Culture Collection,Rockville,Marylandから入手することができる。ヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞系もヒトモノクローナル抗体の産生について記述されている(Kozbor,,Immunol.,133:3001(1984)、Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51−63)。
その後ハイブリドーマが培養される培養培地はリン酸化されたS6、mTOR、FKHR、ERK又はAKTポリペプチド、又は、PTEN及びEGFRポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイされ得る。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって又は放射免疫測定法(RIA)又は酵素免疫抗体法(ELISA)等のインビトロ結合アッセイによって、決定される。これらの手法及びアッセイは当該技術分野で公知である。モノクローナル抗体の結合親和性はMunson and Pollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスキャッチャードアッセイによって決定され得る。
望まれるハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは限界希釈法によってサブクローニングされ標準の方法によって成育される(Goding,上記)。この目的に適した培養培地は例えばダルベッコ改変イーグル培地及びRPMI−1640培地を含む。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物の腹水等のインビボで成育されても良い。サブクローンから分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来から用いられている免疫グロブリン精製法によって培養培地又は腹水から同定又は精製されても良い。
モノクローナル抗体は、また、米国特許第4,816,567号に記述されているような組換えDNA法によって生産されても良い。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは従来法を用いて(例えばマウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に同定され配列決定され得る。本発明のハイブリドーマ細胞はこのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。ひとたび分離されればDNAは発現ベクター中に配置され、それから、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成するために、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は、別の方法では免疫グロブリンタンパク質を産生しないミエローマ細胞等の宿主細胞に形質移入されるかもしれない。DNAは例えば、マウス相同配列の場所をヒトの重鎖及び軽鎖定常ドメインをコードする配列で置換すること(米国特許第4,816,567号、Morrisonら、上記)によって、又は非免疫グロブリンポリペプチドをコードする配列の全て又は部分を免疫グロブリンコード配列に共有結合で結合させることによって、修飾されていても良い。このような非免疫グロブリンポリペプチドは本発明の抗体定常ドメインの代わりとすることもできるし、キメラ二価抗体を造るために本発明の抗体の抗原結合部位の1つである可変ドメインの代わりとすることもできる。
抗体は一価抗体であっても良い。一価抗体の調製法は当該技術分野で周知である。例えば、1つの方法は免疫グロブリン軽鎖及び修飾された重鎖の組換え発現に関する。一般に、重鎖が架橋されるのを防ぐために、Fc領域のいずれかの場所で重鎖は短くされる。あるいは、架橋を防ぐために、関連したシステイン残基が他のアミノ酸残基で置換されるか欠失される。
インビトロ法も一価抗体の調製に適している。抗体フラグメント、特にFabフラグメントを製造するための抗体の消化は、当該技術分野で公知の決まりきった手法を用いて達成することができる。
抗体と同種のタンパク質との反応性は、ウエスタンブロット、免疫沈降、ELISA及びFACS解析を含む多くのよく知られた手段で確立され得る。抗体又はそのフラグメントは検出可能なマーカーで標識されるか第2の分子に結合され得る。適した検出可能なマーカーは放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート化剤又は酵素を含むがそれらに限定されない。
2.アッセイ
本発明は制御されていない細胞増殖に関連する細胞経路を試験するためのアッセイを提供する。本発明の特定の態様は、組織内のリン酸化されたS6、mTOR、FKHR、AKT又はERKポリペプチド、又は、PTEN及びEGFRポリペプチドの存在を検出する工程を包含する。これらのポリペプチドを検出する方法はよく知られ、例えば免疫沈降、免疫組織化学解析、ウエスタンブロット解析、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA等を含む。
一般的に、本発明のアッセイは免疫組織化学的な手法を包含する。本明細書で用いられる免疫組織化学的な手法は細胞特異的なマーカーを検出する試薬の使用を包含し、このような試薬は例えば抗体を含む。モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及びそのフラグメントを含む抗体は、試料中の所定のタンパク質又はポリペプチドを同定するのにしばしば用いられる。多くの手法が、免疫組織化学的な手法に従って所定の対象を標識するのに利用される。このような手法はCurrent Protocols in Molecular Biology,Unit 14 et seq.,eds.Ausubelら、John Wiley & Sons,1995で考察され、その開示は参照として本明細書に取り込まれる。一般的な実験計画は、従来法(例えば米国特許6,631,203号を参照)に従って調製されたパラフィン包埋された組織切片を染色することを包含する。
本発明の特定の態様は、アポトーシスのマーカーであるtunelアッセイを包含する。一般的に、TUNELアッセイは、本質的に以下のように実施される。製造者の指示に従って(例えばPhoenix Flow Systems,Phoenix,AZ参照)、the APO−BRDU terminal deoxynucleotidyl transferase(TdT)−mediated dUTP−biotin nick end−labeling assay(例えばGavrieliら、J.Cell Biol.119:493−501参照)によってアポトーシス細胞の割合を検出する。本発明の方法に有用なTUNELアッセイのさらなる考察についてはProchazkovaら、Biotechniques 2003 Sep;35(3):528−34、Duanら、J Pathol.2003 Feb;199(2):221−8及びWalkerら、J Pathol.2001 Oct;195(3):275−6を参照されたい。
本発明の特定の態様はカスパーゼ−3アッセイを包含する。カスパーゼ−3アッセイで、死を誘導するアポトーシスの初期の重要な兆候であるカスパーゼ−3酵素の活性化(米国特許出願第20020159996及び米国特許第6,346,607号)を測定することは当業者であれば認識しているところである。本発明の方法に有用なTUNELアッセイのさらなる考察については、Duanら、J Pathol.2003 Feb;199(2):221−8及びWalkerら、J Pathol.2001 Oct;195(3):275−6を参照されたい。
当該出願に於いては、様々な刊行物が引用されているが、これらの刊行物における開示は、すべて本明細書に参照として取り込まれる。
(実施例)
患者の選択と組織マイクロアッセイの構成
この研究に参加する全ての患者は、UCLA Institutional Review Board Policiesに従って、手術前にインフォームドコンセントを与えた。ホルマリン固定されパラフィン包埋された組織片を、初期の外科的な切除で膠芽腫と診断され、UCLAの神経腫瘍学者によって治療された45患者から得た。診断は少なくとも2人の神経病理学者によって独立に行われた。腫瘍を切除する前に治療された患者はいなかった。3つの代表的な0.6mmの円筒形標本を、それぞれ初期GBM患者から採取した組織片の診断領域から得た。2つを腫瘍の部位的に異なる領域から得、1つを可能であれば(約2/3の場合が可能)は正常な脳組織の領域から入手した。円筒形標本は組織アレイヤーを用いてパラフィンブロック中に格子状に挿入された。5ミクロンの切片を組織アレイから切り出し免疫組織化学的に分析した。組織アレイからの連続切片を免疫組織化学解析に使用した。4つの腫瘍がPTEN、EGFR及びEGFRvIII解析に対して組織アレイ上に十分な材料を有していたが、p−Akt、p−mTOR、p−S6、p−FKHR及びp−Erkの解析に対しては十分な材料を有してはいなかった。
免疫組織化学染色
組織マイクロアレイからの切片をPTEN(クローン6H2.1,Cascade Bioscience,Winchester MA)、EGFR(クローン31G7,Zymed,San Francisco,CA)、EGFRvIII(クローンL8A4,Dr.Darrell Bignerより分与)それぞれに対するモノクローナル抗体、及び、p−Akt(セリン473)、p−FKHR(スレオニン24)/p−FKHRL1(スレオニン32)、p−mTOR(セリン2481)、p−S6リボゾーマルタンパク質(セリン235/236)及びp−44/42MAPキナーゼ(p−Erk)(スレオニン202/チロシン204)(Cell Signaling Technologies,Beverly,MA)それぞれに対するリン酸化特異的抗体で染色した。切片を60℃で焼き、キシレンで脱パラフィン処理し、エタノールまで徐々に変化させた。熱で誘導される抗原の修正を以下のように用いた。p−Erk、p−Akt、p−mTOR、p−FKHR/FKHRL1及びp−s6に対しては0.01Mクエン酸緩衝液、pH6、圧力釜で25分間、PTENに対しては0.01Mクエン酸緩衝液、pH6、電子レンジでで16分間、EGFR、プロナーゼ(0.03g/ml 0f 0.05M トリス緩衝液、pH7.4)37℃で8分間、EGFRvIIIに対しては0.01Mクエン酸緩衝液、pH6、野菜蒸し器で25分間。内在性のペルオキシダーゼ活性をメタノール中3%過酸化水素で失活させた。一次抗体(PTEN 1:400、EGFR 1:150、EGFRvIII 1:400、p−Akt 1:50、p−mTOR 1:50、p−FKHR/FKHRL1 1:50、pS6 1:50、p−Erk 1:50)を0.1%Tweenトリス緩衝生理食塩水で希釈し、4℃で16時間接触させ、1:100希釈した抗マウス又は抗ウサギビオチン化免疫グロブリン(Vector)でさらに1時間接触させ、最後にアビジン−ビオチン複合体(Elite ABC, Vector)で1時間接触させた。陰性対照スライドは正常マウス血清(DACO)を一次抗体として用いた。PTEN、EGFR及びEGFRvIIIに対する特異的抗体の局在を可視化するために、ジアミノベンジジン四塩酸塩を酵素の基質として使用し、Vector NovaRed(Vector)をリン酸特異的抗体に対して使用した。スライドをハリスヘマトキシリンで対比染色した。
免疫組織化学の評価と解釈
PTEN−PTEN染色をこれまでに確立されている0−2の単位に従って評価したが、その単位では血管内皮細胞(スコアー2)が内部標準として働く(例えばPerrenら、Am J Pathol.157:1097−103.,2000、Perrenら、Am J Pathol.155:1253−60.,1999、Zhouら、Am J Pathol.161:439−47.,2002;Gimmら、Am J Pathol.156:1693−700.,2000参照)。腫瘍細胞の染色強度が血管内皮細胞のそれと同じであれば腫瘍細胞は2として格付けされ、血管内皮細胞と比べて減少していれば1、腫瘍細胞で検出されず血管内皮細胞に存在していれば0となる(例えばZhouら、Am J Pathol.161:439−47.,2002参照)。この格付けシステムは、乳(例えばPerrenら、Am J Pathol.155:1253−60.,1999参照)、卵巣(例えばMutterら、Cancer Res.61:4311−4314.,2001参照)、膵臓(例えばPerrenら、Am J Pathol.157:1097−103.,2000参照)及び結腸(例えばZhouら、Am J Pathol.161:439−47.,2002参照)を含む異なる癌の細胞種間で高い相関を示してきている。2人の神経病理学者がそれぞれ独立して腫瘍を評価した。さらに、神経病理学者の1人が独立した2回の機会に腫瘍を評価した。評価者内及び評価者間の意見は90%以上一致した。
EGFR及びEGFRvIII−腫瘍細胞の20%以上で強いEGFR免疫染色陽性を示す腫瘍を陽性であると見なし(例えばLiottaら、Jama.286.2211−4.,2001参照)、EGFRvIIIへの強い免疫反応に対して少なくとも適度な焦点を示す腫瘍を、以前の報告(例えばChoeら、Clin Cancer Res.8:2894−901.,2002参照)のように陽性と見なした。EGFR及びEGFRvIIIに対する評価者内及び評価者間の意見の一致は>90%であった。
リン酸化特異的抗体−リン酸−Akt、mTOR、S6及びFKHRを0−2の単位で評価した(0は染色なし、1+=弱い強度の細胞質染色及び2+=強い細胞質染色、1+及び2+を陽性と見なした)。独立した評価において同一評価者がそうであったように、評価者間の意見の一致はp−Aktで80%であった。リン酸化mTOR、S6及びFKHRではより高く、mTORの87%からS6の100%の範囲にわたっていた。リン酸−ERKについては、陽性核染色を5%以上集中的に含んでいる腫瘍を以前の報告(例えばChoeら、Clin Cancer Res.8:2894−901.,2002参照)のように陽性と見なした。評価者間及び独立した評価における同じ評価者での意見の一致は>85%であった。
統計的な解析
マーカー間の関連をフィッシャーの正確検定を用いて解析した。ソフトウェアは「home.clara.net」という用語を用いてインターネット検索で同定できるthe Simple Interactive Statistical Websiteで入手できる(http://home.clara.net/sisa/index.htm)。予後要素の解析のために、我々は手術以外の治療を受けていない13患者を除外した。これらの患者は診断の時点で状態が悪く、さらなる治療を受けないので選択された。他の全ての患者は、領域分割放射線治療を含む少なくとも標準的な治療を受けていた。最初の診断から画像処理や臨床像によって進行の証拠が得られるまでの時間(腫瘍進行までの時間)及び最初の診断から死までの時間(全体の生存期間)と変量との関係を評価するために、カプラン−マイヤー曲線を作製した。腫瘍進行までの時間及び全体の生存期間において統計上有意な相違点を同定するために、ウィルコクソン二標本検定を用いた。
IHCによるPTEN/Akt経路の評価
我々は未処理の初期GBM患者45人から得た試料からなる組織マイクロアレイを構築した(表1)。全ての腫瘍はde novoでグレードIV腫瘍(初期GBMs)として存在した(例えばKleihuesら、Neuro−oncol.l:44−51.,1999参照)。いずれの患者も外科的切除の前にいかなる放射線又は化学療法も受けていなかった。我々が初期GBMsに焦点を当てたのは、それらが高い確率でPTEN変異及びEGFR過剰発現を有しており(例えばKleihuesら、Neuro−oncol.l:44−51.,1999参照)、このことが以前に治療されていない状態でのPI3’K/Akt経路の活性化を解析することを可能にしたからである。患者は平均年齢58歳で28歳から88歳まで及んでおり(表1)、全ての患者は少なくとも2人の独立した神経病理学者によって生検でGBMであると診断された。
PTENタンパク質の発現が17/45のGBMs(38%)で減少又は消失した(図1、表2)。このことは30−40%のGBMsでPTENの消失を検出したDNAに基づく方法を用いた以前の研究(例えばLiuら、Cancer Res.57:5254−7.,1997、Schmidtら、J Neuropathol Exp Neurol.58:1170−83.,1999、Smithら、J Natl Cancer Inst.93:1246−56.,2001参照)と一致する。Aktリン酸化はPTENの免疫組織化学的な発現の減少と有意に関連した(p<0.00001)(図1、表2)。PTENの消失は、その活性化がPI3’K/Akt情報伝達から独立しているp−Erkの発現とは有意な相関はなかった(表2)。Akt活性化が下流の作用因子の同時活性化に相関するか否か決定するために、我々はmTOR、FKHR及びS6に対するリン酸化特異的抗体を用いた。mTOR及びFKHRはAktによって直接リン酸化され(例えばVivancoら、Nat Rev Cancer.2:489−501.,2002、Hidalgoら、Oncogene.19:6680−6686.,2000参照)、S6はAktの標的であるp70 S6キナーゼによってリン酸化される(例えばBlume−Jensenら、Nature.411:355−365.,2001参照)。Akt活性化はp−mTOR(p=0.04)及びp−FKHR(p=0.006)の発現に有意に関連する(表3)。より弱いS6リン酸化(1+)もAkt−陰性腫瘍でも検出されるが、Akt活性化は強度のS6リン酸化(2+)(p=0.001)とも相関する(表3)。後者の結果は、S6がPI3’K/Aktとは独立した様式でErkによって活性化され得ることを考慮すれば(例えばIijimaら、J Biol Chem.277:23065−75.,2002、Shiら、J Biol Chem.277:15712−20.,2002参照)、驚くべきことではない。まとめると、これらの結果は、PI3’K/Akt経路の活性化が通常の手順で処理されたパラフィン包埋された生検試料で検出され得るという証拠を提供し、PTENタンパク質の消失がGBMsでPI3’K/Akt経路の活性化に関連することを示している。
PTENタンパク質の消失が見られないGBMsでのAkt経路活性化:EGFR/EGFRvIIIが仲介する情報伝達の評価
PTENの消失はAkt活性化の唯一の経路ではないように思われた。p−Akt及び下流の作用因子p−mTOR、p−FKHR及びp−S6の発現は免疫組織化学的なPTENの消失が見られないGBMsの28%でも検出された(表2)。PI3’K/Akt経路はEGFR情報伝達によって活性化され得るので、我々は正常なPTEN免疫組織化学染色の状況下で、EGFR及びEGFRvIIIの発現を解析し、それらとPI3’K/Akt経路活性化の関連を評価した。以前の報告と調和して(例えばSmithら、J Natl Cancer Inst.93:1246−56.,2001、Watanabeら、Brain Pathol.6.217−23;discussion 23−4.,1996、Ekstrandら、Proc Natl Acad Sci USA.89:4309−13.,1992、Frederickら、Cancer Res.60:1383−7.,2000、Hayashiら、Brain Pathol.7:871−5.,1997、Naganeら、Cancer Lett.162 Suppl: S17−S21.,2001、Nishikawaら、Proc Natl Acad Sci USA.91:7727−31.,1994、Wikstrandら、Cancer Res.57:4130−40.,1997参照)EGFR免疫染色陽性をGBMsの60%で検出した(図2)。構造的に活性な変異体EGFRvIIIの免疫組織化学的な発現をEGFR陽性腫瘍の56%(腫瘍全体の44%)で検出した(図2)(Smithら、J Natl Cancer Inst.93:1246−56.,2001、Naganeら、Cancer Lett.162 Suppl:S17−S21.,2001、Nishikawaら、Proc Natl Acad Sci USA.91:7727−31.,1994、Wikstrandら、Cancer Res.57:4130−40.,1997)。EGFR及びEGFRvIIIの発現を欠いているが正常なPTENの免疫組織化学的な発現を伴っているGBMsでは、強く活性化されたAkt(2+染色)を検出しなかった(表2)。対照的に、EGFR及びEGFRvIIIを共発現し、かつ正常なPTENの免疫組織化学的な発現を伴っているGBMsの36%は活性化されたAktを強く染色した(p=0.06)(表2)。腫瘍のサブセットは小さいが、EGFRを伴うEGFRvIIIの共発現は強いAkt活性化(2+染色)で必要とされているように思われた(表2)。これらの結果は、EGFR及びEGFRvIIIの共発現が正常なPTENタンパク質の発現を伴うGBMsでAkt活性化を促進することができる証拠を提供する。これに一致して、mTOR、FKHR及びS6の下流の活性化も有意に、EGFR及びEGFRvIIIを共発現している時に正常なPTENタンパク質の発現を伴うGBMsで強く活性化(2+染色)しているように思われた(p<0.002)。
Akt経路に加えて、EGFR及びEGFRvIIIはErkも活性化できる。それゆえに、我々は、Erkリン酸化がEGFR及びEGFRvIIIの発現に関連するか調べた。全体的に見て、Erkリン酸化をGBMsの51%で検出した。より重要なことに、リン酸化Erkの発現は有意にEGFRの発現と関連した(p=0.007)(図2、表4)。リン酸化ErkはEGFR+/EGFRvIII陰性GBMsの75%及びEGFR+/EGFRvIII陽性GBMsの88%で発現された。
Akt及びErk経路活性化の予後との密接な関係
以前の研究は、GBMsにおけるPTENの消失、EGFR過剰発現又はEGFRvIIIについて明白な予後との関係を示してきてはいなかった。このことに調和して、我々はPTENの消失、EGFR又はEGFRvIIIの発現と、進行までの時間又は全体の生存期間のいずれかとの間に統計的に有意な関係がないことを見出した。対照的に、協調した経路の活性化が予後と密接な関係を有しているように思われた。p−Aktの発現は生存や進行と有意な関連はなかった。対照的に、mTOR、FKHR及びS6の同時リン酸化によって検出されるような、下流の経路の活性化は進行へのより短い時間(p=0.002)及び減少した全体の生存期間(p=0.02)の両者に有意に関連した。この発見は、Erkが仲介するS6キナーゼの活性化及び栄養分が仲介するmTORの活性化等のAkt下流へのさらなる入力からの寄与を反映しているのかもしれない。あるいは、3つのリン酸特異的抗体のこのパネルは、単独のリン酸−Akt抗体のみに比べてAkt経路活性化を検出するより感受性のある方法であるかもしれない。Erk活性化も、初期のGBM患者のこのサブセットで、より急速な進行及び減少した全体の生存期間と有意に関連した(<0.04)(表5)。これらの発見は経路活性化がGBM患者の腫瘍進行に影響力を有していることを最初に示すものである。
キナーゼ阻害剤Akr及びErk経路活性化
図3A及び3Bは、PI3K/Akt経路の構成員とキナーゼ阻害剤との間の相互作用の実例を提供する。
図3Aはラパマイシンがインビボで膠芽腫のS6リン酸化を阻害することを示す。特に、図3Aはラパマイシンの臨床試験で患者の一団を解析したデータを提供する。このデータは、外科的な切除が行われる前に5日間ラパマイシンで処理された多くの患者の腫瘍で、最初の生検と比較して実質的なS6リン酸化の減少が検出されたことを示している。対照である患者は一様に高いレベルのS6リン酸化を示した。このデータは、ラパマイシンが膠芽腫の患者の大部分でS6リン酸化の段階でmTOR伝達を阻害した証拠を提供する。さらに、このデータは、免疫組織化学(IHC)による経路活性化の検出がウエスタンブロッティングによる検出とどのように相関するかを説明している。
図3Bは、ラパマイシンが仲介するS6リン酸化の阻害が減少した腫瘍の増殖と相関することを示す。この図では、ラパマイシンが仲介するS6の阻害が腫瘍の成長に効果を有するか否かを評価するために、細胞増殖のマーカーであるKi−67を使用した。このデータは、ラパマイシンが仲介するmTOR情報伝達のS6リン酸化レベルでの阻害が、減少した腫瘍細胞の増殖と相関したという証拠を提供する。
本発明は、本明細書に開示される、発明の個々の側面の単なる例示として解釈される態様によって範囲を限定されず、機能的に等価なものはいずれも本発明の範囲内にある。本発明のモデル及び方法に対する様々な修正が、本明細書に記載されるものに加えて、以前の記述や教示から当業者に明らかとなるであろう。そしてそれらは同様に本発明の範囲に含まれるものである。このような修正又は他の態様は本発明の真の範囲及び意図から逸脱することなく実施することができるものである。
(表)
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表6
ポリペプチド配列
表6は、便宜上、本明細書で考察されている周知のポリペプチドの配列、受託番号及び例示となる参考文献を提示するものである。表中の特定の配列において、経路の情報伝達時に通常リン酸化される例示的な残基を欧文体の太字(boldface type)で示す。
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図1はGBM腫瘍試料中でのPTEN、p−Akt、p−mTOR、p−FKHR及びp−S6の免疫組織学的な発現を示す。(A)血管内皮細胞での染色の維持と共に腫瘍細胞でのPTENタンパク質の消失(0)、内皮細胞と比較して減少したPTEN染色(1)及びPTENタンパク質の消失の証拠が見られない(2)を示す代表的な画像。NCは陰性対照。(B)2(強)、1(弱)及び0(陰性)の尺度で評価したp−Akt、p−mTOR、p−FKHR及びp−S6に対する染色。NCは陰性対照を表す。 図2はGBM腫瘍試料中でのEGFR、EGFRvIII及びp−Erkの免疫組織学的な発現を示す。(A)散在するEGFR、EGFRvIII及びp−Erkの陽性を示す代表的な画像(+)。EGFR、EGFRvIII及びp−Erk発現を欠く腫瘍の代表的な画像も示す(−)。NCは陰性対照を表す。 図3はGBM腫瘍試料中でのPI3K/Akt経路の一員とキナーゼ阻害剤の間の相互作用の図示を提供するものであり、図3Aはラパマイシンがインビボで膠芽腫のS6リン酸化を阻害することを示す。 図3はGBM腫瘍試料中でのPI3K/Akt経路の一員とキナーゼ阻害剤の間の相互作用の図示を提供するものであり、図3Bはラパマイシンが仲介するS6リン酸化の阻害が腫瘍増殖の減少と相関することを示す。この図で、Ki−67、すなわち細胞増殖のマーカーは、ラパマイシンが仲介するS6の阻害が腫瘍の増殖に効果があるか否か評価するために用いられた。

Claims (4)

  1. PTENポリペプチド(配列番号5)を発現する哺乳動物の神経膠腫の腫瘍であって、EGFRポリペプチド(配列番号7)活性の阻害剤に応答する可能性がない又は非応答性である哺乳動物の神経膠腫の腫瘍を同定する方法であって、当該方法は腫瘍から得られた試料を腫瘍又は試料を阻害剤に接触させた後に、EGFR(配列番号7)の存在及びリン酸化されたAKTポリペプチド(配列番号4)の存在又はリン酸化されたERKポリペプチド(配列番号8)の存在について試験することを包含し、
    そこで、EGFRポリペプチドのレベル及びリン酸化されたAKTポリペプチド又はリン酸化されたERKポリペプチドのレベルにおける増加が、神経膠腫の腫瘍を阻害剤に応答する可能性がない又は非応答性であると同定する、方法。
  2. 腫瘍から得られた試料が、リン酸化されたAKTポリペプチド(配列番号4)の存在及びリン酸化されたERKポリペプチド(配列番号8)の存在について試験される、請求項1に記載の方法。
  3. 神経膠腫の腫瘍が、多形性膠芽腫である、請求項1に記載の方法。
  4. 神経膠腫が、PTENポリペプチド(配列番号5)に結合する抗体を使用してPTENポリペプチド(配列番号5)を発現する腫瘍であると同定される、請求項1に記載の方法。
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