JP2009114542A - 第三元素粒子を添加することにより、軽量耐熱金属間化合物の延性と強度を向上させる方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 TiAl金属間化合物の延性と強度を向上させる方法であって、第三元素を多量に添加することにより、TiAlの主組織の基本構造に変化を与えることのない方法を提供することである。
【解決手段】 TiとAlからなる粉末にCr粉末を5質量%添加した後、高温等方加圧処理を施すことにより、Cr添加混合粉末を焼結させる。
【選択図】 なし
【解決手段】 TiとAlからなる粉末にCr粉末を5質量%添加した後、高温等方加圧処理を施すことにより、Cr添加混合粉末を焼結させる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、軽量耐熱金属間化合物の延性と強度を向上させる方法に関する。より詳しくは、本発明は、第三元素としてクロムを添加することにより、軽量耐熱金属間化合物の延性と強度を向上させる方法に関する。
従来、金属間化合物、特にNiAlやTiAlの高温強度等の特性改良には、第三元素を溶融状態で添加する方法が検討されてきた。しかしながら、この方法では、金属組織の基本構造に影響を及ぼさない程度の微量での添加が限界であり、そのため第三元素添加による顕著な効果は期待できなかった。また、添加溶融材は堅く脆いため、鍛造等により金属組織を微細化することができず、機械的性質にすぐれ金属組織が均一化された材料を得ることができなかった。NiAl又はTiAl金属間化合物は、低放射化、耐食・高融点・軽量材料であることから、核融合炉をはじめとした原子炉用材料としての使用や、エンジン機器材など一般工業分野及び宇宙航空分野において高温高圧環境下での使用が期待されており、これらの金属間化合物の更なる構造強化をもたらす方法に対する必要性が存在する。
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、TiAl金属間化合物の延性と強度を向上させる方法であって、第三元素を多量に添加することにより、TiAlの主組織の基本構造に変化を与えることのない方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究した結果、金属間化合物の原料粉末に第三元素としてクロム(Cr)粉末を添加し、これら混合粉末に高温等方加圧処理(HIP)を施すことにより、延性と強度の向上がみられることを発見し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、TiとAlからなる粉末にCr粉末を5質量%添加した後、高温等方加圧処理を施すことにより、Cr添加混合粉末を焼結させることを特徴とする、金属間化合物の延性及び強度を向上させる方法である。
前記TiとAlからなる粉末はTiAl合金粉末とすることが好ましい。
前記高温等方加圧処理は、最高温度が1073〜1473K、最高圧力が200〜350MPa、保持時間が2〜6時間の条件下で行うことが好ましい。
前記高温等方加圧処理を追加の保持時間をかけて多段階処理で行うこともできる。
また、本発明は、金属間化合物の延性及び強度を向上させる方法であって、TiAl粉末にCr粉末を0〜30質量%加えた後、最高温度/最高圧力/保持時間が1073〜1473K/200〜350MPa/2〜4時間の条件下での高温等方加圧処理(HIP)により、Cr添加混合粉末を焼結させることにより、得られる金属間化合物が900Kまでの高温で高い延性及び強度を示すことを特徴とするものである。
また、本発明は、金属間化合物の延性及び強度を向上させる方法であって、TiとAlの混合粉末にCr粉末を0〜30質量%加えた後、最高温度/最高圧力/保持時間が1073〜1473K/200〜350MPa/2〜4時間の条件下での高温等方加圧処理(HIP)により、Cr添加混合粉末を焼結させることにより、得られる金属間化合物が900Kまでの高温で高い延性及び強度を示すことを特徴とするものである。
更に、本発明は、上記のいずれかの方法において、高温等方加圧処理(HIP)を追加の保持時間をかけて多段階処理で行うことを特徴とするものである。
本発明の方法により得られる金属間化合物は、低放射化、耐食・高融点・軽量材料であることから、核融合炉をはじめとした原子炉用材料として利用することができ、また、高温高圧環境下で使用されるエンジン機器材料等として航空宇宙分野並びに関連する工業分野において利用することができる。
本発明の軽量耐熱金属間化合物の延性と強度を向上させる方法を以下に説明する。
本発明において「軽量耐熱金属間化合物」とはNiAl又はTiAl金属間化合物をいう。本発明において使用する原料は、予合金させたNiAl又はTiAl粉末、あるいは単体であるNi、Ti、Al粉末である。予合金は当技術分野において通常の手法により行うことができる。単体粉末を用いる場合は、予合金工程を省略することができ、製造原価を安くできる点で有効である。
本発明において「軽量耐熱金属間化合物」とはNiAl又はTiAl金属間化合物をいう。本発明において使用する原料は、予合金させたNiAl又はTiAl粉末、あるいは単体であるNi、Ti、Al粉末である。予合金は当技術分野において通常の手法により行うことができる。単体粉末を用いる場合は、予合金工程を省略することができ、製造原価を安くできる点で有効である。
本発明においては、まず、出発原料であるNiAl若しくはTiAl粉末、又は、Ni、Ti及びAl粉末を微細化し、これらの混合粉末中に、微細化したCr元素を第三元素として添加混合する。Cr元素の添加量は全混合粉末基準で0〜30質量%であればよい。原料粉末の微細化は当技術分野において既知の方法により行うことができるが、微細化による粉末粒径は、組織の微細化による強度向上の観点から小さいほど好ましい。
次いで、混合粉末をキャプセルに封入し、高温等方性加圧処理(HIP)を施す。ここで、HIP処理とは、高温と高圧を同時に加える処理であり、かかるHIP処理により、金属間化合物を形成する元素と第三元素であるCr元素とを焼結させる。HIP処理は、Ni又はTi元素がAl元素と反応し焼結するが、Cr元素が他の元素と反応しない条件で行うことを要する。温度と圧力は時間により変化させることができるが、焼結を促進するため、両条件が最高値に達した状態で一定時間保持することが好ましい。
具体的には、NiAl粉末、又は、Ni及びAl元素の混合粉末にCr元素を添加する場合は、973〜1523Kの最高温度、172〜350MPaの最高圧力、保持時間2〜4時間の条件で処理を行う。NiAl粉末にCr粉末を0〜30質量%添加し、上記のHIP処理を施すことにより、得られる金属間化合物は873Kで引張強度が200〜350MPa、ひずみが最大10%程度、673Kで引張強度が200〜600MPa、ひずみが最大2%程度を示す。また、NiとAlの混合粉末中にCr粉末を0〜30質量%添加し、上記のHIP処理を施すことにより、得られる金属間化合物は873Kで引張強度が最大250MPa、ひずみが最大10%程度を示す。
更に、TiAl粉末にCr元素を添加する場合は、1073〜1473Kの最高温度、200〜350MPaの最高圧力、保持時間2〜4時間の条件で処理を行う。TiAl粉末にCr粉末を0〜25質量%添加し、上記のHIP処理を施すことにより、得られる金属間化合物は900Kまでの高温で高い延性及び強度を示す。
本発明の別の態様において、HIP処理は多段階の処理で行うことができる。ここで「多段階の処理」とは、最高温度、最高圧力を一定時間保持(定常段階)した後、この温度、圧力を変化させて一定時間保持する(定常段階)、複数の段階からなる処理をいう。多段階処理を行う場合は、追加の保持時間を必要とし、全保持時間は通常10時間程度である。
本発明において、Cr元素を添加する理由は、TiAl及びNiAlの主組織の基本構造に変化を与えることなく、HIP処理後の金属間化合物の機械的特性を改良するためである。従来法においてみられた溶融材の形態ではなく、第三元素を元素粉末の形態で主金属に加え、HIP処理を行うことにより、本発明の目的が達成される。
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明する。
実施例1
NiAl金属間化合物に第三元素としてCrを添加しHIP処理を施した試料を調製した。NiAl金属間化合物は、NiAl予合金粉末、又は、Ni及びAlの元素粉末を使用した。Cr添加量を0〜30質量%の範囲で変化させた混合粉末の組成を表1に示す。
NiAl金属間化合物に第三元素としてCrを添加しHIP処理を施した試料を調製した。NiAl金属間化合物は、NiAl予合金粉末、又は、Ni及びAlの元素粉末を使用した。Cr添加量を0〜30質量%の範囲で変化させた混合粉末の組成を表1に示す。
表中、(a)はNiAl予合金粉末であり、(b)はNi及びAl元素粉末である。これらの混合粉末に対して図1に示す種々の処理条件でHIP処理を施した。
得られた焼結材について機械的特性を検討した。試料表面をみがいてビッカース硬度を測定し、さらに高温で引張試験を行った。引張試験は、インストロン型試験機を用いてクロスヘッド速度を制御し、ひずみ速度3×10-4s-1で行った。試料は直径6mm、高さ30mmの円筒形試験片を用い、NiAlを鍛造した試料を比較例とした。引張試験の結果を図2に、引張応力−ひずみ曲線を図3及び図4に、試料の硬さ及びひずみを表2に、それぞれ示す。図3は、Crをx質量%添加したNiAl、図4は、Crをx質量%添加したNi+Alに関する引張応力−ひずみ曲線である。
得られた焼結材について機械的特性を検討した。試料表面をみがいてビッカース硬度を測定し、さらに高温で引張試験を行った。引張試験は、インストロン型試験機を用いてクロスヘッド速度を制御し、ひずみ速度3×10-4s-1で行った。試料は直径6mm、高さ30mmの円筒形試験片を用い、NiAlを鍛造した試料を比較例とした。引張試験の結果を図2に、引張応力−ひずみ曲線を図3及び図4に、試料の硬さ及びひずみを表2に、それぞれ示す。図3は、Crをx質量%添加したNiAl、図4は、Crをx質量%添加したNi+Alに関する引張応力−ひずみ曲線である。
図2中、「HIPed NiAl+xCr」はHIP処理を施したCr添加量x質量%のNiAl試料、「RHIPed NiAl+xCr」はHIP処理を施したCr添加量x質量%のNi+Al試料であり、そして「Forged NiAl」は鍛造NiAl試料(出典:G. Wirth, K. J. Grundhoff and W. Smarsly: 17th Sample National Technical Conf. on Materials, Kiamesha Lake (U.S.A.), 22-24 Oct., (1985) 124-134)である。図2に示すとおり、NiAl粉末にCrを添加した場合に673Kで高い強度を有する試料が得られた。NiAl及びNi+Al焼結材はCr添加量20%で高温強度が最高値に達した。
表2中、RHIPは、Ni+Al粉末にCr粉末を加えてHIP処理した試料を示す。
実施例2
TiAl金属間化合物に第三元素としてCrを添加しHIP処理を施した試料を調製し、この試料について高温で引張試験を行った。
実施例2
TiAl金属間化合物に第三元素としてCrを添加しHIP処理を施した試料を調製し、この試料について高温で引張試験を行った。
TiAl予合金粉末を使用し、Cr添加量を0〜30質量%の範囲で変化させた混合粉末の組成を表3に示す。
この混合粉末に対して図5及び図6に示す処理条件でHIP処理を施した。図5は、最高圧力200MPa、最高温度(a)1273K又は(b)1473KでのHIP処理であり、図6(a)は最高温度/最高圧力/保持時間が1273K/200MPa/6時間のHIP処理、(b)は(a)の処理後1073K/250MPa/5時間処理する多段階HIP処理、(c)は(a)の処理後1073K/350MPa/5時間処理する多段階HIP処理である。
これらの処理により、微細で均一な構造を有する焼結体が得られた。1273K、200MPaにおける硬度は、Cr添加量0〜25質量%において添加量の増加とともに増加した(図示せず)。
得られた焼結体の機械的物性を図7〜図9に示す。図7は、Crを5質量%添加したTiAl(TiAl+5Cr)に関する室温(R.T.)〜1073Kにおける引張応力−ひずみ曲線である。引張強度は340〜380MPaであり、873Kより高い温度では、温度が高くなるにつれひずみが大きくなり強度が減少した。図8は、TiAl及びTiAl+5Crの引張強度と温度との関係を示す図である。図中、「HIPed TiAl+5Cr」はHIP処理を施したCr添加量5質量%のTiAl試料、「HIPed TiAl」はHIP処理を施したTiAl試料、「MIMed TiAl」はTiAl粉末を射出成形した試料(出典:S. Terachi, T. Teraoka, T. Shinkuma and T. Sugimoto: J. Japan Society of Powder and Powder Metallurgy, 47 (2000) 1283-1287)であり、そして「Pure Ti」は未処理のTi単体である。これらの図から、本発明の方法により強度が向上していることが分かる。また、図9にひずみと温度との関係を示す。図から、本発明によるHIPed TiAl+5Cr試料のひずみが大きいことが分かる。
以上の実施例から、本発明のHIP処理したNiAl+Cr材及びTiAl材+Cr材の高温強度は、従来材より延性と高温強度が改良されることが示された。
本発明の方法によれば金属間化合物の機械的特性、特に延性と強度が改良される。軽量耐熱性金属間化合物に本発明を適用して得られる材料は、低放射化構造材、軽量化構造材として利用することができる。具体的には、核融合炉などの構造材料や、一般耐熱材料として、例えば、高性能自動車用及び船舶用エンジン材、宇宙航空用高温ガスタービン翼、エンジン機器などに利用される。
Claims (4)
- TiとAlからなる粉末にCr粉末を5質量%添加した後、高温等方加圧処理を施すことにより、Cr添加混合粉末を焼結させることを特徴とする、金属間化合物の延性及び強度を向上させる方法。
- 前記TiとAlからなる粉末がTiAl合金粉末であることを特徴とする、請求項1記載の金属間化合物の延性及び強度を向上させる方法。
- 前記高温等方加圧処理は、最高温度が1073〜1473K、最高圧力が200〜350MPa、保持時間が2〜6時間の条件下で行われることを特徴とする、請求項1記載の金属間化合物の延性及び強度を向上させる方法。
- 前記高温等方加圧処理を追加の保持時間をかけて多段階処理で行うことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項記載の金属間化合物の延性及び強度を向上させる方法。
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