JP2009105435A - 窒化ガリウムウエハ - Google Patents

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哲也 平野
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Abstract


【課題】 これまで実在しなかった窒化ガリウムの自立した円形ウエハを実用的な形にして初めて提供すること。
【解決手段】 1016cm−3〜1020cm−3の濃度で酸素ドープされた六方晶系で{0001}面方位の窒化ガリウム単結晶よりなり透明であって独立し自立した円形のウエハであって方位を指定するフラット部を一つあるいは方位と表裏を示すフラット部を二つ付ける。周辺部を面取りすることも有用である。n型の導電性をしめす。
【選択図】 図3

Description

本発明は、窒化ガリウム単結晶の円形ウエハに関する。窒化ガリウム半導体(GaN)はバンドギャップが広いので青色発光素子として重要である。結晶系は六方晶系(Hexagonal)に属する。結晶構造はウルツ鉱(ZnO)型である。青色発光ダイオード(LED)としてGaN系の素子は既に大量に販売され使用されている。
GaN単結晶は自然には産出しない。GaNは常圧では加熱すると直接に昇華してしまう。かなり高圧にして加熱しないと融液とならない。それで結晶成長法としてよく知られたCzochralski法(引き上げ法)、Bridgman法(ボート法)などでは結晶成長させることができない。
本発明はGaNのウエハであるから、従来の技術としては、ウエハの従来技術とGaNの従来技術の両方がある。従来技術として両方を説明する必要がある。
先述のようにGaN単結晶は通常の結晶成長法では成長させることができない。そこで、GaN系の発光素子はサファイヤ基板の上に薄膜成長させて作製するようになっている。つまりGaN/サファイヤというような積層構造となっている。そのようなバッファ層となるGaN薄膜の上に、n型、p型のGaN、GaInN、AlGaInNなどの薄膜が形成される。ヘテロエピタキシャル成長である。薄膜形成は、気相成長法或いは昇華法による。気相成長法には3つの有力な方法がある。有機金属化学気相成長法(MOCVD法)、塩化物気相成長法(MOC法)、水素化物気相成長法(HVPE法)である。
これらは基板の上に薄膜を形成するための技術である。だから基板が必要であるが、GaNの基板を作る事ができない。そこで、サファイヤを基板とするLEDが大量に製造されている。サファイヤは三方晶系(Trigonal)の結晶構造をとる。6回対称性や、6回反転対称性などがない。六方晶系であるGaNとは晶系が相違する。しかも格子定数も熱膨張率もかなり違う。
しかしサファイヤのc面単結晶基板(0001)面に、GaNのc面(0001)が良好に成長するということが分かっている。サファイヤは堅固な材料であり、GaNも硬く強い材料である。サファイヤを取り除くということはできないからサファイヤはLEDデバイスに貼り付いたままである。
サファイヤは劈開がないので機械的に切断(ダイシング)してサファイヤウエハから個々のGaN−LEDチップを切り出している。またサファイヤは絶縁体であるから電流が通らない。そこでn−GaN層を一部露呈させて、その上へn型電極を付けるようにしている。つまり二つの電極(p電極、n電極)がいずれも上面に露出する構造になる。n電極のために発光面積が削減されるという欠点がある。
格子定数、熱膨張率が違うので、GaN、GaInN膜には多数の欠陥が発生する。しかし多大の欠陥にも拘らずLEDは発光し寿命も長い。異種基板の上に作製した青色発光GaN−LEDは既に多くの実績がある。劈開のないこと、絶縁体であること、欠陥が多いことなどはGaN/サファイヤ−LEDの価値を下げることにはならなかった。小型青色発光素子としてサファイヤ基板LEDは極めて有用であり多大の製造、使用の実績をもっている。GaN/サファイヤ型LEDは厚い使用実績もあり完成したデバイスといえる。
しかしこのようなデバイスでは基板はサファイヤウエハである。GaN基板というものは存在しない。GaNはサファイヤ基板の上に薄く形成された薄膜にすぎない。そこにおいてGaNは幾何学的にも力学的にもサファイヤに依存した薄い層にすぎない。独立したGaN基板ではない。
以上は青色LED(発光ダイオード)の場合である。青色レーザ(LD)となると少し事情が異なる。LDは共振器が必要でありサファイヤ基板では作りにくいからである。サファイヤ基板上のGaN−LDが試作されている。その場合もGaNは薄膜であって基板として存在しない。サファイヤの難点は劈開面がないということである。
図12は六方最密(Hexagonal Closest Packed;HCP)格子構造を示す。遷移金属単体がこの構造を取ることがある。六角柱をなす格子である。同等の6個の原子が底面6隅部、上面6隅部に存在する。底面、上面中心に1個の原子がある。1/2の高さにおいて3つの部分正三角形の中心に3つの原子がある。これは6原子を含む格子である。6回反転対称性、3回対称性、鏡映などがある。この構造から単原子のものなら(0001)が劈開面であろうということが容易にわかる。2種類原子を含むものなら(0001)の他に{1−100}が劈開面になる可能性もありそうだということがわかろう。
図13はサファイヤの格子構造である。最密構造の原子位置に酸素(O)原子が入り、4つのAl原子は4つの酸素原子によって形成される正四面体の中心にある。二つのAl原子がc軸方向に重なっており他の2つのAl原子は2つ離れた正三角形の中心にある。三回対称性も三回反転対称性もない。だから六方晶でなくて、三方晶系(Trigonal)である。結合力はAl−O結合に局在する。O−O、Al−Al結合は微弱であるか、あるいは反結合性である。Alの存在によって上下結合が強化され(0001)が劈開面ではなくなる。Al原子の非対称存在のために{1−100}面も劈開面ではありえない。そのような訳でサファイヤに劈開が存在しないのである。
だからサファイヤ基板LDの場合、共振器を自然劈開によって形成できない。ダイシング、エッチング、研磨などで、手間と時間を掛けて平坦なミラー面を作成しなくてはならず高コスト、低歩留まりである。青色LDでは、劈開のあるZnSe系のLDの方がサファイヤ基板GaN系LDよりも優勢である。それはGaN系の半導体がLDに不適だということではない。
そうではなくて劈開のないサファイヤ基板を用いるからそのような欠点があるだけである。単結晶GaN基板がもし存在すれば、ZnSe系LDに匹敵するGaN系LDができよう。
GaNは低温相では閃亜鉛鉱型(ZnS;zinc-blende)をとる。これはGaAsと同じで立方晶系(cubic)に属し、4回反転性、3回対称性、鏡映がある(−43m)。より高温では、立方晶と六方晶の混合になる。
常温を含む、より高温では六方晶(Hexagonal)を取る。ウルツ鉱型(ZnO)だと言われる。図14は六方晶GaNの格子構造を示す。本発明で以後GaNというのは六方晶のものを指す。HCPの原子位置にガリウム原子が存在する。六角柱の6本の縦稜線の3/8の高さに6つの窒素(N)原子がある。1/2の高さに一つおきにとった3つの正三角形の中心位置にガリウム原子が3つ存在する。そのGa原子の直上に、7/8の高さで3つのN原子がある。これは5Ga、5Nを含む構造である。GaはNが作る正四面体の中心にある。NはGaが作る正四面体の中心にある。GaNの共有結合が結晶を形成している。Ga−Gaや、N−Nは結合力を持たない。GaNの縦結合は長さが3/8で合計3本もあるから(0001)は劈開しない。2本切るだけで済む{1−100}が劈開面となる。そのようにGaNには明確な自然劈開があるという利点もある。
しかしながらGaNの単独結晶を作るのは長らく不可能であった。
ところが本発明者の努力によって気相成長法を使って、ある基板の上にGaNの膜を厚く積層して基板を除去することによりGaNの独立結晶が得られるようになった。透明の薄い板状の結晶である。独立の単結晶基板であるからウエハと呼ぶこともできようが、未だ寸法が小さくて10〜18mm角程度の矩形の基板である。
これを円形ウエハにしたいものである。下地基板の上に薄膜成長させるから形状は、下地基板の形状によって決まる。下地基板と全く同じ形状にはならず少し小さいものになる。下地基板を除去するときに力学的な力がかかるので基板から除去した場合、薄い不定形のGaN結晶が得られる。これを削って八角形状のウエハとしたこともある。しかし現在のところ得られているのは先述のように10mm〜18mm角程度の角型の基板であり、それも月に数枚といった程度である。
それらはGaN−LDの基板として実験的に用いられる。LDの基板としては、サファイヤ基板よりGaN基板の方が適している。それでGaN基板の上にGaN系層をエピタキシャル成長させたLDが試作されている。しかし未だに実用的レベルでの2インチ以上の径の円形GaNウエハというものは存在しない。
サファイヤ、GaNを概観したので、次にウエハの研削、OFについての従来技術を振り返ってみよう。これらはいずれもSiウエハかGaAsウエハに関するものである。いずれも不透明であって、金属光沢をもちGaNより柔らかい材料である。いずれも立方晶であって、Siはダイヤモンド型、GaAsは閃亜鉛鉱型(zinc-blende)である。
特許文献1は、Siウエハにおいて、表面裏面を区別するために、OF(オリエンテーションフラット)とCF(カートリッジフラット)を付けるが、アライメント装置がOFとCFを間違って検出することがある、という問題を指摘している。そこでSiウエハの外周縁に、表面と裏面において角度の異なる面取りをしたというものを提案している。面取りをしたあと両面を鏡面に研磨するといっている。これは表裏の面取り角度を変えて表裏を区別したものである。肉眼では分からないがアライメント装置が面取り角度を検出するのであるから表裏を間違えることがない。
特許文献2は、Siウエハにおいて、従来は劈開面にOFを設けて結晶方位を示していたが、OFには熱ストレスが集中し、スリップなどの欠陥が発生しやすい、という問題を指摘している。Siウエハが大口径化するのでOF部位での材料損失が大きくなる、といっている。そこでOFの代わりにレーザビームで直径1mm、深さ数百μmの溶融穴を特定方位に形成するといっている。OFのないウエハである。穴の部分に形成した素子チップは無駄になるがOFによって無駄になる素子チップより数が少ない。それにスリップなども起こらない、といっている。
特許文献3は、OFをウエハの1箇所に設ける従来のウエハや、OFとIF(インデックスフラット)を2箇所に設ける従来のウエハは、その部分だけ質量が減少するから、レジストをスピンコートする場合に偏荷重のためにウエハがロータから離脱するという危険を指摘する。ウエハが大口径化するとそのような重心の偏奇が問題になる。
そこで弓形に切り取るのではなくてウエハの特定方位の周縁にノッチ(切欠き)を設けるウエハである。ノッチは小さいから偏荷重の問題は起こらない。しかしノッチは結晶方位はわかるが表裏面が分からない、と述べている。GaAsウエハでも両面研磨するとどちらが表であるか見ただけではわからない。そこで円形ウエハの周縁を表裏で幅が異なるように丸く面取りしたものを提案している。面取り寸法によって表裏を区別するので特許文献1と共通する。ノッチと表裏不等面取りとによってウエハの方位と表裏を示している。
特許文献4は、SiウエハにOFを設けると円周部と直線部の交点が尖り、搬送時にウエハが何ものかと衝突したとき、尖点が欠けて(チッピング)、チッピング片がウエハ面に付いて傷を付けたり膜厚を不均等にしたりするという問題がある、と述べている。OFに代えてノッチによって方位を示すウエハにおいてもノッチ端が尖っているからこれが欠けることがある、と問題を説明している。そこで尖りの部分を滑らかな円弧に置き換えたウエハを提案する。OF端やノッチ端が尖点でなくて滑らかな曲線となるから破損しにくい、と述べている。
特許文献5は、Siウエハの表裏を分かりやすくするために片面だけを面取りするなどして、表裏非対称に加工するということを提案している。表面側だけを面取りし、裏面をそのままとすれば、目で見ただけで表裏が判別できる。
特許文献6は、オリフラやレーザマークを付けたウエハはその分だけ有効な面積が減少し製造コストを押し上げるので望ましくないと述べている。そこでウエハの周縁に小さいノッチを付けて方位を示し、周縁全体を表裏非対称に面取りして表裏の区別を与えている。非対称面取りによって表裏を示すという点で、特許文献1、3、5などのウエハと同様である。
特許文献7は、酸化物基板(例えばサファイヤ)の上に気相成長法によってGaNをヘテロエピタキシャル成長させ薄い膜を作り、炉から取り出してサファイヤ基板を削り、再び炉に入れてGaN薄膜を成長させる、それからサンプルを取り出してサファイヤ基板を削り炉に入れてGaN薄膜を50〜100μm増やし、それを取り出しサファイヤ基板を削る…、という複雑な工程の繰り返しによって、300μm程度の厚みのGaN単結晶を作ったと述べている。サファイヤ基板を何度も削るのは、格子定数、熱膨張率の違いによるひずみを除去するためである。最終的にはサファイヤ基板のないGaN基板を得られるが、極めて複雑な工程であって、実用的ではない。
特開平02−144908号「半導体装置の製造方法」 特開昭60−167426号「半導体結晶ウエハ−」 特開2000−331898号「ノッチ付半導体ウエハ」 特開平07−211603号「ウエハの加工方法」 特開昭58−071616号「半導体装置の製造方法」 特開平08−316112号「ノッチ付き半導体ウエーハ」 アメリカ特許第6177292号 ”Method For Forming GaN Semiconductor And GaN Diode with TheSubstrate” 特願平10-78333号(特開平10−316498、特許3899652) 特願平10−183446号(特開2000−22212) 特願平10−171276号(特開2000−12900) 特願平09−298300号(WO99/23693) 特願平10−009008号(WO99/23693) 特願平11−273882号(特開2001−102307) 特願平11−144151号(特開2000−44400) 特願2001−113872号(特願2002−103723の優先権主張出願の基礎(特開2002−373864))
本出願人の努力によって2インチ系の自立したGaN単結晶基板を製造することができるようになってきた。矩形ウエハであってもよいのであるが、搬送や薄膜成長などの点で円形ウエハの方が便利だということもある。GaNの2インチ自立円形ウエハができたとして、問題点を予め考える。まずウエハの表面と裏面が区別されなければならない。それと結晶方位が分かるということが必要である。さらに搬送工程やウエハプロセスにおいて欠けにくいということも重要である。
Siウエハ、GaAsウエハの場合は表面を鏡面研磨し、裏面は鏡面にしない事が多い。その場合粗面と鏡面は肉眼で見て容易にわかる。金属光沢があって不透明で反射が強いので、面粗度の違う鏡面、非鏡面は容易に区別できる。
ところがGaNは薄いし透明であるから、それ自身見えにくい。下地が白地、透明などであるとウエハの存在自体が分かりにくくなる。表面と裏面の面粗度が違っていても目視によって表裏の区別が難しい。暗い色調の下地の上に置くと透明板の存在が分かるが表裏の区別まではできない。この点がSi、GaAsウエハと違うところである。そこで透明なGaNの表裏を容易に区別できるようにしたGaNウエハを提案することが一つの目的になる。
GaNは、金属や半導体というよりもセラミックに近い感触をもち、剛性はSi、GaAsよりも高く、硬質の材料である。薄くても高硬度堅牢であるが衝撃によって破損しやすいから円形ウエハを破損から守る必要もある。
本発明の課題はこれまで実在しなかった窒化ガリウムの円形ウエハを実用的な形にして初めて提供することである。
本発明の窒化ガリウムウエハは、1016cm−3〜1020cm−3の濃度で酸素あるいはシリコンドープされた六方晶系で{0001}面方位の窒化ガリウム単結晶よりなり透明であって独立した円形のウエハであって表面側と裏面側から外周部を5゜〜30゜の傾斜角で面取り(C面取り)したものである。あるいはC面取りの代わりに外周部全体を半径0.1mm〜0.5mmの円弧断面となるように面取り(R面取り)することもできる。GaNは透明で見えにくいが周縁を面取りすると乱反射のため輪郭がくっきりと見えるようになる。可視化できるので取扱容易になる。
或いは窒化ガリウムウエハ1016cm−3〜1020cm−3の濃度で酸素ドープされた六方晶系で{0001}面方位の窒化ガリウム単結晶よりなり透明であって独立した円形のウエハであって外周部の一部において弓形部分を切り取り面と直交する特定の結晶方位{hkm0}を示すためのフラット部を設ける。
特定の結晶方位としてたとえば劈開面{1−100}を選ぶことができる。あるいは劈開面に直交する{11−20}面を特定の結晶方位として選択し表示することができる。
或いはウエハ外周部の一部において弓形部分を切り取り面と直交する特定の結晶方位{hkm0}を示すための第1フラット部を設け、第1フラット部に直交する方位の長さの相違する第2フラット部を設けて、表裏を区別するようにすることもできる。
従来GaN−LEDの基板はサファイヤが用いられていた。GaN−LDもサファイヤを基板としたものが開発されている。本発明は、GaN−LD用の基板としてサファイヤ基板より有用なGaNの円形ウエハを初めて与える。GaN単結晶基板がGaN系のLDの基板として最適であろうということは分かっていたが、これまで適当な製造方法がないこともあり10mm〜18mm角程度の矩形ウエハが実験室的に作られていただけであった。大型の円形GaNウエハを作る事ができないという状況であった。
ところが本発明者らの努力によって、HVPE法とELO法とを組み合わせ時間を掛けて成長させることによって2インチ(52mm)程度の円形GaNウエハを製造できるようになってきた。GaAs(111)基板上に、気相成長法によってGaNを成長させGaAsを除去することによって独立膜としてGaNウエハを1枚ずつ作製する。GaNウエハは透明であって剛性が高く堅牢であるが器物との接触によって周辺部が破損することもある。本発明のように周面を面取りすると破損する恐れが少なくなる。但しGaAsやSiよりも硬いので砥石は特別のものを使う必要があり加工時間も余分にかかる。
薄い板であって透明であるから下地が白色や淡い色調あるいは透明体の場合、GaNウエハの所在は肉眼で分かりにくいこともある。しかし本発明のように周縁部を面取りするとその部分で光が乱反射されるから輪郭が分かりやすく所在もハッキリする。見えにくい透明のウエハに面取りすると、そのような視覚的効果がある。そのような効果は、SiやGaAsにはない独自のものである。
酸素をドープしているからn型のGaN基板とすることができる。n型基板であるから、その上へGaN−LEDやGaN−LDを形成しn型電極(カソード)を基板の下へ設けることができる。n電極の為の面積を節約することができる。サファイヤ基板のLEDと違いn電極の為の面積が不要になる。小型のLD、LEDとすることができ用途が拡大する。
GaN基板には{1−100}面が明確な劈開を示す。GaN基板上に成長させた、窒化物系半導体薄膜(AlGaN、InGaN、AlInGaNなど)は基板と同じ面方位を取る。GaN単結晶基板の劈開面と、その上に成長した窒化物系半導体の劈開面との方位が全く同一である。
方位が全く同一であるだけでなく格子整合条件を満たすホモエピタキシャル成長であるから基板と薄膜の界面の内部応力が小さい。基板の劈開面で自然劈開すると薄膜もその劈開面で切断されることになる。劈開面で切断されるからきれいな鏡面となる。LDの場合には両端面の共振器を基板の自然劈開によって形成できる。機械的にダイシングして鏡面研磨するというサファイヤ基板LDよりも格段に製造容易になる。
図1は透明でc面成長した六方晶のGaN(窒化ガリウム)ウエハの周縁部の表面側と裏面側で面取りしたC面取りウエハの周縁部だけの断面図。 図2は透明でc面成長した六方晶のGaNウエハの周縁部を断面形状が円弧になるように面取りしたR面取りウエハの周縁部だけの断面図。 図3は透明でc面成長した六方晶のGaNウエハの指定された面方位(klm0)において周縁部の弓形部分を切りとり指定方位のフラット面を形成したGaNウエハの平面図。 図4は透明でc面成長した六方晶のGaNウエハの一つの劈開面(1−100)において周縁部の弓形部分を切りとり劈開面であるフラット面を形成したGaNウエハの平面図。 図5は透明でc面成長した六方晶のGaNウエハの劈開面に直交する一つの面(11−20)において周縁部の弓形部分を切りとり劈開直交面であるフラット面を形成したGaNウエハの平面図。 図6(1)は透明でc面成長した六方晶のGaNウエハの指定された面方位(klm0)において弓形部分を切りとって第1フラット部を設け、それと直交する方位(stu0)において弓形部分を切りとって第2フラット部を形成したGaNウエハの平面図。図6(2)はその一例であり、劈開面(1−100)に第1フラット部を、(11−20)に第2フラット部を形成したGaNウエハの平面図。 図7は円形の(111)GaAs基板の上に、気相成長法によって、円形のGaN単結晶を積層した状態を示す断面図。GaN結晶の周面はギザギザである。 図8はギザギザの周面をもつGaN結晶を、回転砥石によって周縁部を研磨して周縁部を平滑にする工程を示す平面図。 図9は周縁部を研削したので周縁部が平滑になったGaNウエハ断面図。 図10は円形のGaNウエハの周縁部の表面側と裏面側を傾斜面をもつ回転砥石によって研削しC面取りする工程を示す断面図。 図11は円形のGaNウエハの周縁部を、凹曲面を持つ回転砥石によって研削しR面取りする工程を示す断面図。 図12六方最密詰構造の格子構造を示す斜視図。 図13はサファイヤの格子構造を示す斜視図。 図14は窒化ガリウム(GaN)の格子構造を示す斜視図。
[1.周縁部を表裏で面取りした円形GaNウエハ(図1)]
透明で円形のGaNウエハの周縁の表面側、裏面側を平坦傾斜面によって面取りしたものである。これをC面取りと呼ぶ。GaNはGaAsやSiよりさらに剛性が高くて硬度も高い。それだけに衝撃に脆いということもある。ウエハの尖った周縁部が搬送装置などに衝突すると周縁部が欠けたりする恐れがある。そこで周縁部を面取りする。図1に周縁部のみを示す。面取り角度θは、5゜〜30゜である。ウエハの厚みは350μm〜500μm程度である。図10のような回転する砥石7によってGaNウエハの周縁を研削する。
Si、GaAsよりも硬いから砥石もより硬度の高いものを用いる。研削の時間もより長くかかる。透明であるから面取り部分は肉眼で見ても良く分かる。ウエハは透明であるから下地が白、透明、グレーなどの場合そのままだとウエハの存在が見えにくいが、面取りをすると輪郭が乱反射により白く光るから所在がよく分かるようになる。
さらにGaNには酸素をドープしてn型伝導性を与える。GaN系のLDやLEDのための基板ウエハとした場合に基板の下にn電極を付けカソードを引き出すことができる。酸素ドープ量は1016〜1020cm−3程度とする。
[2.周縁部を表裏にわたって円弧断面をもつよう面取りした円形GaNウエハ(図2)]
透明で円形のGaNウエハの周縁の表面から裏面側にかけて円弧状曲面によって面取りしたものである。これをR面取りという。GaNはGaAsやSiよりさらに硬度も高く周縁部が欠ける恐れがある。図1の面取りは傾斜面で面取りするから稜線が残る。それに2回研削する必要がある。稜線が出るのも好ましくないという場合は、R面によって周縁部を面取りする。図2にR面取りしたウエハの周縁部のみを示す。面取り半径Rは、0.1mm〜0.5mmである。ウエハの厚みは350μm〜500μm(0.5mm)である。
500μmであれば、R=250μmで丁度半円弧の断面図となる。Rが100μm〜250μmのときは上下縁に分離した面取りとなる。Rが250μm〜500μmだと表裏面と交差する稜線が生ずる。図11のような回転する砥石によってGaNウエハの周縁を研削する。
Si、GaAsよりも硬いから砥石も砥粒を固定するボンド材が硬い等の硬質材に適するものを用いる。研削の時間もより長くかかる。前例と同じことでそのままだと透明であるからウエハが見えにくいが面取り部分は白く光るので肉眼で見てもよく分かる。n型とするために酸素を1016〜1020cm−3程度ドープする点も同じである。
[3.劈開面にOFを付けたGaNウエハ(図4)]
c面を表面とする透明で円形のGaNウエハの周縁にある{1−100}面に平行な弓形を切り取りOFとしたものである。GaNは六方晶系の結晶でc面を表裏面とするGaNウエハ(0001)の周縁部には劈開面{1−100}がある。劈開面は互いに60゜の角度をなす3つの面がある。1点の周りには3面があるが、ウエハの周辺には6つの劈開面がある。
これはGaAs(111)基板の上にELO法でGaNを気相成長法で成長させ、GaAs基板を除去したのち円形に研削して、X線によって結晶方位を決め劈開方向を求める。そして円形ウエハの劈開面が露呈するように弓形部を切り取ったものである。劈開というと(1−100)、(01−10)、(−1010)などの面である。2インチ直径のGaNウエハであれば、弦の長さは10〜20mm程度である。例えば16mmとする。
LDの基板とする場合はn型のGaNとするため酸素を1016〜1020cm−3ドープする。方位が明確であるからデバイス製造の場合の位置合わせに便利である。これも酸素ドープしてn型とする。LD、LEDの基板としたときに下側からカソードを引き出すことができる。以下の例でも同じである。
[4.劈開面に直交する方向にOFを付けたGaNウエハ(図5)]
c面を表面とする透明で円形のGaNウエハの周縁にある{11−20}面に平行な弓形を切り取りOFとしたものである。GaNは六方晶系の結晶でc面を表裏面とするGaNウエハ(0001)の周縁部には劈開面{1−100}がある。劈開面に直交する方向が{11−20}である。
{11−20}も互いに60゜の角度をなす3つの面がある。1点の周りには3面があるが、ウエハの周辺には6つの劈開直交面がある。これは劈開に直交する面が露呈するように弓形部を切り取ったものである。(11−20)、(−2110)、(1−210)などの面である。2インチ直径のGaNウエハであれば、弦の長さは10〜20mm程度である。LDの基板とする場合はn型のGaNとするため酸素を1016〜1020cm−3ドープする。シリコンなどもドープに使われる。酸素は原料等からも入る制御しきれないオートドープがある。方位が明確であるからデバイス製造の場合の位置合わせに便利である。
本発明のGaNウエハは、初めて実用的な寸法形状標識面取りを備えたものである。(111)GaAs基板の上に窓付きのマスクを付けて(ELO法)窓を通してGaN薄膜をHVPE法によってC面(0001)成長させる。1枚分の厚さまで気相成長できたらHVPE炉から取り出す。図7に示すようなGaAs基板1の上にGaN2が積層された2層構造のものが得られる。
GaAs基板1を王水でエッチング除去する。するとGaN結晶2の自立膜が得られる。これは周面3がギザギザであるから図8のような回転する砥石4によって周面を研削して平滑な周面とする。図9のような円形のGaNウエハ5となる。これらの要素技術は本発明者らが独自に創案したものからなっている。本発明のGaNウエハの製造に必要なそれら要素技術を順に説明する。
サファイヤ上へGaN薄膜を気相成長させる方法としては、HVPE法(ハイドライド気相成長法:Hydride Vapor Phase Epitaxy)、MOC法(有機金属塩化物気相成長法:Metallorganic
Chloride Vapor Phase Epitaxy)、MOCVD法(有機金属化学的気相成長法:Metallorganic Chemical Vapor
Deposition)、昇華法(Sublimation Method)がある。何れもサファイヤ基板の上に数μm厚みのGaNを成長させるために開発された技術である。最もよく使われるのはMOCVD法である。しかしこれは炭素が不純物として含まれるので望ましくない。
本発明者等はHVPE法を選ぶ。薄膜成長の為でなく単体結晶を作るためにHVPE法を用いる。
[HVPE法]
縦長の炉内の上方にGa融液を入れたGaボートを設ける。炉内でGaボートの直下に回転軸によって指示されたサセプタを設ける。サセプタの上に約2インチ径の(111)GaAs単結晶ウエハを置く。炉の上方のガス供給管から、水素+塩化水素ガスをGaボートに向けて吹き付ける。2Ga+2HCl→2GaCl+Hの反応が起こる。塩化ガリウムはガス状となって落下する。もう一つのガス供給管からサセプタの近傍へ水素+アンモニアガスが吹き付けられる。NH+GaCl→GaN+HCl+Hの反応が起こって、GaAs基板上へGaN分子が吸着される。
これは例えば本発明者等の特許文献8、特許文献9、特許文献10などに書いてある。
[ELO法(Epitaxial Lateral Overgrowth)]
GaAs基板の上に成長させるのは本発明者らの独特のものである。たびたび述べているようにGaN薄膜成長に対する基板は独占的にサファイヤが使われる。GaAs基板上にGaNを成長させる実験は30年も前に何度も繰り返され不成功に終わっていた。
GaAs基板の上にGaN薄膜を成長させることができるようになったのは実は窓を多数有するマスク(SiN、SiO)をGaAs基板に付けてから窓を通じてGaN結晶を独立に成長させるというELO法が発明されたからである。ELO法の詳細は上記の特許文献8〜特許文献10の本発明者らの出願に記載される。
あるいは本発明者らの 特許文献11、特許文献12などに説明される。
GaNは六方晶であるから、窓をそれに合わせて配置したマスク構造とする。つまり面を同等の正三角形によって埋め尽くしたとしてその頂点位置に窓(丸、多角、矩形)を配置する。マスク厚みは例えば100nm(0.1μm)である。マスクにはGaNが堆積しない。孤立した窓からGaAsによって方位が規定されたGaN結晶粒子が成長する。
これは比較的低温で成長させる。転位は成長方向に伸びる。温度を高めて続いてGaN成長を持続する。GaN層がマスク厚みを越えると横方向にマスク上を這うように成長する。横方向成長が重要でこれによって転位が横向きになる。正六角形状に横向き成長したGaNが隣接窓から成長したものと相会する。転位は相会面に集積してしまう。以後は縦型成長になるが、転位を引きずらないから低転位のGaNが成長するのである。ELO法はそのような転位や歪を低減させる作用があり、これによって初めてGaAs基板上へのGaN成長が可能になったのである。
しかしそうはいってもGaAs基板を使っているのは本発明者らだけである。それ以外の研究者は依然としてサファイヤを基板としてGaN成長させている。ELO法で低転位になったといっても、それは隣接窓から成長したGaNが会合してしばらくの間だけで僅かな期間である。それ以上に厚くすると再び転位が増加する。これを防ぐ方法は本発明者らによって与えられる。
特許文献13に示されている。
[酸素ドープ(n型基板とするために)]
n型基板GaNというのはこれまで存在しなかったのであるが、n型とするためにはn型のドーパントを添加しなければならない。サファイヤ上GaN−LEDでもn型GaN系薄膜は多用されていたのであるが、そこでn型ドーパントとして採用されたものはSiであった。シランガス(Siの水素化物ガス)を導入してGaN薄膜(0.01μm〜数μm程度の厚み)にn型伝導性を与えている。
シランガスは危険性が高いので代わりに酸素をn型ドーパントとしてもよい。酸素は水、酸素ガスとして炉内へ導けるが、これらは安全な物質である。
特許文献14 は水或いは酸素ガスの形で炉内へ酸素を導入してGaNへ酸素ドープする。しかし実はそれは容易でない。酸素がn型ドーパントとして利用できるということがわからなかったのには理由がある。サファイヤ基板の上にGaN薄膜を成長させるときはサファイヤ基板がc面基板であるから、GaN薄膜もc面で平坦平滑な鏡面成長させることになる。1μm以下の薄膜成長だから当然に平坦面となる。
本発明者等の研究によって分かったことであるが、c面には酸素は入ってゆかないという性質がある。酸素ドープに面選択性があるということである。これまで例外なくサファイヤ上へc面成長させていたから酸素がドープされなかったのである。だから酸素をn型ドーパントとする余地がなかった。ところがc面以外の面、例えばA面{11−20}やM面{1−100}、あるいはこれから傾斜したA面{11−2m}やM面{1−10m}(mは整数)などへは酸素が取り込まれる。そこでc面を維持した鏡面成長をせず、ジグザグの表面をもつような粗面成長させることによって酸素をドープできる。
特許文献15によってそのような方法が提案される。
このようにして2インチ径の透明な(0001)面をもつ六方晶のGaNウエハが得られる。両面あるいは片面研磨して、円形ウエハとする。これ以後は既に述べたように、図8の回転砥石によって周面を平滑にする。図10の装置で、ウエハの表面裏面をC面取りする。あるは図11の装置でR面取りする。
さらに劈開面(M面){1−100}にOFを入れる。あるいはそれと直交する面(A面){11−20}にOFを入れる。さらには表面と裏面を区別するために、図6のように第1OFと第2OFを設けることもできる。また、図6では第一フラット部の長さを第二フラット部の長さより長くして、表裏面の判別を容易にしている。
1 GaAs基板
2 GaN結晶
3 周面
4 砥石
5 GaNウエハ
6 GaNウエハ
7 砥石
8 回転軸
9 GaNウエハ
10 砥石
11 回転軸

Claims (6)

  1. 六方晶系で{0001}面方位の窒化ガリウム単結晶よりなり、透明であって独立した円形のウエハであって外周部の一部において弓形部分を切りとり面と直交する特定の結晶方位{hkm0}を示すためのフラット部を設けたことを特徴とする窒化ガリウムウエハ。
  2. 六方晶系で{0001}面方位の窒化ガリウム単結晶よりなり、透明であって独立した円形のウエハであって外周部の一部において劈開面を弦とする弓形部分を切りとり面と直交する劈開面{1−100}であるフラット部を設けた事を特徴とする窒化ガリウムウエハ。
  3. 六方晶系で{0001}面方位の窒化ガリウム単結晶よりなり、透明であって独立した円形のウエハであって外周部の一部において劈開面に直交する面を弦とする弓形部分を切りとり面と直交する{11−20}面であるフラット部を設けた事を特徴とする窒化ガリウムウエハ。
  4. 六方晶系で{0001}面方位の窒化ガリウム単結晶よりなり、透明であって独立した円形のウエハであって外周部の一部において弓形部分を切りとり面と直交する特定の結晶方位{hkm0}を示すための第1フラット部を設け、表裏面を区別するため第1フラット部に直交する方位の長さの相違する第2フラット部を設けたことを特徴とする窒化ガリウムウエハ。
  5. 1016cm−3〜1020cm−3の濃度でシリコンドープされたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の窒化ガリウムウエハ。
  6. 1016cm−3〜1020cm−3の濃度で酸素ドープされたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の窒化ガリウムウエハ。
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