JP2009103595A - ベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】走行方向において1つの回転ローラー4がベルト体10に接触する接触位置P0を中心とし1つの回転ローラー4の両側に配置された回転ローラー4′、4″に接触しない範囲でかつ走行方向に沿った所定長Lの範囲に位置するベルト体10の部分を単位ベルト体12として扱い、応力σとひずみεのヒステリシスループの面積から発熱エネルギーを計算し発熱エネルギーの予測を行う。所定長Lは、単位ベルト体12を対象に応力σおよびひずみεを考えた場合に、応力σおよびひずみεの1次成分が示す特徴を十分にあらわすに足る寸法であればよい。
【選択図】図2
Description
上記方法は、下記(1)式、(2)式で示される関係式に基づいて力学的解析または有限要素法(Finite Element Method)に代表される数値解析によりひずみエネルギーを求め、タイヤ発熱を予測し、これを走行距離で除算することで転動抵抗を予測するものである。
タイヤ発熱=ひずみエネルギー×材料の損失係数……(1)
タイヤ転動抵抗=タイヤ発熱÷走行距離 ……(2)
また有限要素法には静解析と動解析があるが、静解析は、解析に要する演算時間が小であるが、材料の粘弾性の効果を考慮することができない不利があり、動解析は、材料の粘弾性を考慮することができるが、解析に要する演算時間が長いため実用性に欠ける不利がある。
また、ゴムなどの粘弾性体に周期的に変化する応力を与えると、発生するひずみとの間に位相差が生じ、応力とのひずみの変化により規定されるヒステリシスループの面積は変形による発熱、すなわち変形により失われる損失エネルギーに相当する。
しかし前記静解析では粘弾性の効果を考慮することができないから、ヒステリシスループの面積から発熱を求めることができないという問題がある。
そこで、前記静解析を用いるにも拘わらず、回転体の発熱エネルギーデータを導出する方法が提案されている(特許文献1参照)。
この方法では、回転体一周分の応力、ひずみの有限次数のフーリエ級数展開の演算を行いフーリエ次数ごとに変化特性の曲線の振幅、位相を演算し、材料の損失係数に応じた位相遅れをひずみ値に与えてのフーリエ次数ごとのヒステリシスループの面積の演算にもとづきフーリエ次数とヒステリシスループ面積の積の総和を導出し、一連の演算過程を応力、ひずみの全成分について反復実行し成分ごとの総和を演算するものである。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベルト体の発熱エネルギーあるいは走行抵抗力を簡単かつ正確に予測する上で有利なベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法を提供することにある。
また本発明は、粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記回転ローラーに対して前記ベルト体から前記走行方向と逆向きに作用する力である走行抵抗力を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行抵抗力予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、前記処理手段が、前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の前記一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーと前記所定長との積によって前記走行抵抗力を生成する走行抵抗力生成ステップと、前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
まず、粘弾性体が回転体であり、この回転体が面上を回転することによって変形することによって生じる発熱エネルギーについて説明する。
図1(A)は位置を横軸座標とした粘弾性体の応力とひずみの特性をあらわし、(B)はひずみを横軸座標、応力を縦軸座標として応力とひずみのヒステリシスループ特性をあらわす。
図1(A)に示すように、粘弾性体では、応力σに対しひずみεの位相がδだけ遅れる(0<δ<π/2)。
図1(B)に示すように、粘弾性体のヒステリシスループは楕円となり、楕円の面積Aは1サイクル(波形の1周期)の変形に際して損失したエネルギーで、この損失したエネルギーは、
A=π・f・g・sinδ……(3)
(ただし、f:応力σの振幅、g:ひずみεの振幅)
であらわされ、エネルギーAは、粘弾性体で生じる発熱エネルギーに相当する。
このように、応力σの振幅fと、ひずみεの振幅gと、位相差δとがわかれば、発熱エネルギーの計算が可能である。
そこで、応力σ、およびひずみεを静的有限要素法による解析により求めるのである。
なお粘弾性材料を含む回転体の発熱エネルギーの特性に関しては、例えば岩柳茂夫「レオロジー」朝倉書店に記載されている。
したがって、ベルト体についても上述と同様の手法によって発熱エネルギーの計算を行うわけであるが、ベルト体は回転体と異なり、1回転の変形という概念を適用することができない。
そこで、本発明においては、ベルト体がその走行方向に間隔をおいて配置された複数の回転ローラーに接触して走行することに着目し、ベルト体を所定長の範囲に区切った単位ベルト体として扱うことにより回転体と同様の手法を用いて発熱エネルギーの予測を行うようにしたものである。
図2はベルト体10の説明図である。
本実施の形態において、ベルト体10は、ベルトコンベア装置2で使用されるコンベアベルトである。
ベルトコンベア装置2は、例えば、図示しない駆動ローラーと、従動ローラーと、それらローラーの間に一定の間隔をおいて設けられた複数の回転ローラー4とを備え、ベルト体10はそれら前記駆動ローラーと複数の回転ローラー4と従動ローラーとにわたって掛け回されて設けられている。
そして、前記駆動ローラーがモータなどの駆動源によって回転駆動されることによりベルト体10は複数の回転ローラー4上を走行する。
ベルト体10は、その厚さ方向に粘弾性材料を含む層を1層以上含む複数の層が積層されて構成されている。
具体的に説明すると、ベルト体10は、例えば、布製芯体層と、芯体層の両面に設けられたスチールコード層と、両スチールコード層の外側を覆うカバーゴム層とを含んで構成され、あるいは、クッションゴム層と、クッションゴム層の両面に設けられたスチールコード層と、両スチールコード層の外側を覆うカバーゴム層とを含んで構成されている。無論、ベルト体10の構成はこれらに限定されるものではない。
カバーゴム層およびクッションゴム層は、天然ゴムや合成ゴムなどからなるポリマーと、カーボンブラックやシリカなどからなる充填材などから構成され、したがって、カバーゴム層およびクッションゴム層は粘弾性材料で構成されている。また、カバーゴム層およびクッションゴム層を構成する粘弾性材料をコンパウンドともいう。
図3(A)、(B)において横軸はベルト体10の長手方向(走行方向)の位置pを示し、P0はベルト体10が1つの回転ローラー4の外周面に接触する位置を示している。
ベルト体10が位置P0で回転ローラー4に接触しているため、図3(A)に示すように、ベルト体10に加わる応力σは、位置P0で最大値となり、位置P0からベルト体10の長手方向に離れるにしたがって次第に減少していき、所定距離以上離れると応力σはほぼゼロとなる。
図3(B)に示すように、ベルト体10に加わるひずみεは、位置P0で最大値となり、位置P0からベルト体10の長手方向に離れるにしたがって次第に減少していき、所定距離以上離れると応力σはほぼゼロとなる。
すなわち、ベルト体10が静止した状態では応力σの位相に対するひずみεの位相は遅れを生じていない。
ここで、ベルト体10が走行すると、前述した回転体の場合と同様に、応力σに対してひずみεの位相が遅延し、したがって、応力σとひずみεのヒステリシスループの面積から発熱エネルギーを計算することができる。
ここで、図2に示すように、走行方向において1つの回転ローラー4がベルト体10に接触する接触位置P0を中心とし1つの回転ローラー4の両側に配置された回転ローラー4′、4″に接触しない範囲でかつ走行方向に沿った所定長Lの範囲に位置するベルト体10の部分を単位ベルト体12として扱うことにする。そして、この単位ベルト体12が所定長L走行することを回転体の1回転(1周期)と同様に考えて発熱エネルギーの予測を行う。
なお、所定長Lは、単位ベルト体12を対象に応力σおよびひずみεを考えた場合に、応力σおよびひずみεの1次成分が示す特徴を十分にあらわすに足る寸法であればよい。
したがって、所定長Lを、回転ローラー間の寸法である1スパン、すなわち、基準位置P0の回転ローラー4と隣接する回転ローラー4′(4″)との距離と同じ寸法としてもよいし、1スパンよりも短い寸法としてもよい。なお、所定長Lを1スパンとすれば、1スパン分の発熱エネルギーを予測することができる。
そして、次数ごとにヒステリシスループの面積を求め、それらの面積の総和に基づいて発熱エネルギーを求める。
図5(A1)、(B1)は演算結果から得られた応力の分布(応力の変化特性の曲線)、および、ひずみの分布(ひずみの変化特性の曲線)の例を示す図である。
図5(A2)、(A3)は、(A1)の応力曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図であり、2次までを示す。
図5(B2)、(B3)は、(B1)のひずみ曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図であり、2次までを示す。
図6(A)は1次成分の応力波形、(B)は1次成分のひずみ波形、(C)はそれら1次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく1次成分のヒステリシスループを示す図である。
図7(A)は2次成分の応力波形、(B)は2次成分のひずみ波形、(C)はそれら2次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく2次成分のヒステリシスループを示す図である。
まず、有限要素法により、単位ベルト体12の応力、ひずみの特性の分析を行い、単位ベルト体12の要素ごとに局所座標を参照した応力およびひずみを求める。
この際、各要素について、単位ベルト体12の長さ方向、前記長さと直交する要素幅の方向、および前記長さ方向および幅方向の双方と直交する要素厚さの方向が考慮される。
次いで、単位ベルト体12断面内の一要素の中心における一成分の応力、ひずみを求め、順次、長さ方向に隣接する諸点の応力、ひずみを求め、単位ベルト体12の応力f(p)、およびひずみg(p)を求める。ただし、pは単位ベルト体12の長さ方向の位置を示す。
ここで、単位ベルト体12における位置pと、回転体における位相角θとの関係について説明すると、注目する区間Lは前述した単位ベルト体12の所定長Lであり、この区間Lを1周期とみなすと、以下の関係式によって位置pと位相角θとが関係付けられることになる。
θ=360・(p/L)[°]
なお、前記一成分とは、応力、ひずみの全成分(圧縮引っ張り方向で3成分、せん断方向で3成分の合計6成分)のうちの一つの成分を示す。
そして、図5に示すように、応力f(p)、ひずみg(p)をそれぞれ有限次のフーリエ級数に展開し、次数ごとに振幅An、位相Bnを求める。
この場合、フーリエ級数展開を行う次数は、波形の特徴を失わない程度の高次まで取る必要がある。例えば、モデル長(単位長)Lに対して回転ローラー4の外周の接触部の長さがLrであった場合、この長さLrを10〜100分割しうる程度、すなわち、10L/Lr〜100L/Lrの次数が選ばれる。
すなわち、応力とひずみとをそれぞれN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに応力の変化特性の曲線を表す波形とひずみの変化特性の曲線を表す波形とが求められることになる。
Sn=π・An f・An g・sin(Bn f−Bn g+δ)……(4)
Sc=Σn・Sn ……(5)
次いで、単位ベルト体12全体について以上の過程を反復実行し、単位ベルト体12全体の発熱エネルギーEd、すなわち単位ベルト体12が所定長L走行したときの発熱エネルギーEdを求める。
また、この発熱エネルギーEdから走行抵抗力を算出することができる。走行抵抗力は、ベルト体が複数の回転ローラー4上を走行する際に、回転ローラー4に対してベルト体12から前記走行方向と逆向きに作用する力である。
発熱エネルギーEdは、実際には単位ベルト体12が所定長Lを通過した際に回転ローラー4等によって受ける変形によって起こると考えられ、一方、単位ベルト体12が回転ローラー4上を通過する際に回転ローラー4が受ける走行方向と逆向きの力(反力)が走行抵抗力となる。
この走行抵抗力には、単位ベルト体12と回転ローラー4間の粘着や摩擦、あるいは粘弾性、ローラー上を乗り越える積荷の位置エネルギー変化などの影響が含まれる。
このうち、粘弾性に起因する走行抵抗力をFvとすると、この抵抗力が所定長Lに渡って作用した場合の仕事量は、Fv・Lとなる。
この仕事量は、注目する区間である所定長Lにおいて単位ベルト体12が変形を受けたときの粘弾性によるエネルギー損失(熱として散逸する)と等価と考えられるので、
Fv・L=Ed……(7)
となり、
即ち粘弾性に起因する走行抵抗力Fvは所定長Lにおいて発生する損失エネルギーEd(発熱エネルギー)を所定長Lで割ることにより、
Fv=Ed/L……(8)
として求められる。
なお、実際に回転ローラー4上で検出される抵抗力には、粘弾性以外の要素が考えられるため、上記の式によって求められた走行抵抗力は実際に生じる走行抵抗力よりも低い。
コンピュータ20は、CPU22と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM24、RAM26、ハードディスク装置28、ディスク装置30、キーボード32、マウス34、ディスプレイ36、プリンタ38、入出力インターフェース40などを有している。
ROM24は制御プログラムなどを格納し、RAM26はワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置28は本発明方法を実現するためのプログラムを格納している。
ディスク装置30はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード32およびマウス34は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ36はデータを表示出力するものであり、プリンタ38はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ36およびプリンタ38によってデータを出力する。
入出力インターフェース40は、外部機器との間でデータの授受を行うものである。
本実施の形態では、CPU22、キーボード32、マウス34、ディスク装置30、入出力インターフェース34によって入力手段20A(図9)が構成され、CPU22によって処理手段20B(図9)が構成され、CPU22、ディスプレイ36、プリンタ38、ディスク装置30、入出力インターフェース40などによって特許請求の範囲の出力手段20C(図9)が構成されている。
図9に示すように、コンピュータ20は、機能的には、入力手段20A、処理手段20B、出力手段20Cを含んで構成されている。
入力手段20Aは、単位ベルト体12の応力、ひずみを有限要素法によって求めるために必要なデータを入力するものであり、それらデータについては後述する。
処理手段20Bは、入力手段20Aによって入力されたデータに基づいて有限要素法により応力、ひずみを得るとともに、上述した原理に基づいて発熱エネルギーおよび走行抵抗力を算出するものであり、ハードディスク装置28に格納されているプログラムがRAM26にロードされ、CPU22が前記プログラムに基づいて動作することで実現される。
出力手段20Cは、処理手段10Bによる計算結果から構成されるデータを出力するものである。
まず、単位ベルト体12が静止した状態で、単位ベルト体12が1つの回転ローラー4から受ける応力と、応力に応じて単位ベルト体12に生じるひずみとを、入力手段20Aを介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する(ステップS10)。
具体的には、図9に示すように、前記解析用データとして、単位ベルト体12の形状データD1、材料データD2、境界データD3、および荷重データD4などが入力手段20Aを介して入力され、処理手段20Bは、それら解析用データに基づき、局所座標を参照した応力、ひずみに変換するように演算を行うことにより、単位ベルト体12断面内の一点(前記一要素の中心)における応力、ひずみを求める。
これにより、単位ベルト体12の長手方向に沿って隣接する諸点の応力、ひずみを順次求め、これにより単位長L分の応力、ひずみの変化特性の曲線である応力曲線、ひずみ曲線をそれぞれ求める。
次に、フーリエ次数ごとに応力の波形の位相に対して、ひずみの波形の位相を粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する(ステップS14:遅延ひずみ波形生成ステップ)。
次に、フーリエ次数ごとに応力の波形と遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積Scを求め、該面積Scとフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより面積Scの総和を求める(ステップS16)。
次に、上述したステップS12、S14、S16を応力、ひずみの全成分について実行したか否かを判定する(ステップS18)。この判定結果が否定ならばステップS12に移行し同様の処理を反復して実行する。
ステップS18の判定結果が肯定ならば、成分ごとの総和Scの総和を前記一点におけるエネルギー密度とし、このエネルギー密度と前記一点を含む領域の体積Vとの積Ediを求め、この積Ediを前記断面内の一点を含む領域における発熱エネルギーとして前記領域ごとに求める(ステップS20)。すなわち、ステップS16、S18、S20が特許請求の範囲の発熱エネルギー生成ステップに相当する。
次に、単位ベルト体12全体について上述したステップS12乃至S20の演算を行ったか否かを判定し(ステップS22)、この判定結果が否定ならばステップS12に移行して上述の処理を反復して実行する。
ステップS22の判定結果が肯定ならば、ステップS20で求められた発熱エネルギーの総和を単位ベルト体12全体の発熱エネルギー、すなわち、単位ベルト体12が単位長L走行したときの発熱エネルギーEdとして演算する(ステップS24)。すなわち、ステップS22、S24が特許請求の範囲の走行発熱エネルギー生成ステップに相当する。
次に、発熱エネルギーEdから単位ベルト体12が走行する際に受ける走行抵抗力Fvを前述した式(8)に基づいて演算する(ステップS26:走行抵抗力生成ステップ)。
そして、発熱エネルギーEdおよび走行抵抗力Fvを出力手段20Cから出力する(ステップS28)。
また、ベルト体10、すなわち、単位ベルト体12の構造は、前述したように、芯体層やスチールコード層、粘弾性材料で構成されたカバーゴム層およびクッションゴム層を含むものであるが、単位ベルト体10の解析用データ(形状データD1、材料データD2、境界データD3、および荷重データD4)を用いて有限要素法解析によって単位ベルト体12の各位置における応力、ひずみを求め、それら応力、ひずみに基づいて発熱エネルギー、走行抵抗力を演算するので、ベルト体10の構造が反映された走行発熱エネルギー、走行抵抗力を簡単かつ正確に予測することができ有利である。
Claims (6)
- 粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記ベルト体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行発熱予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、
前記処理手段が、
前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするベルト体の走行発熱予測方法。 - 前記所定長は、前記単位ベルト体に作用する前記応力およびひずみの1次成分が示す特徴を十分にあらわすに足る寸法である、
ことを特徴とする請求項1記載のベルト体の走行発熱予測方法。 - 前記応力ひずみ生成ステップによる応力およびひずみの変化特性の曲線の導出は、前記単位ベルトの断面内における一点の応力およびひずみを求め、前記単位ベルト体の走行方向に隣接する諸点の応力およびひずみを順次計算することでなされる、
ことを特徴とする請求項1記載のベルト体の走行発熱予測方法。 - 粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記回転ローラーに対して前記ベルト体から前記走行方向と逆向きに作用する力である走行抵抗力を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行抵抗力予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、
前記処理手段が、
前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーと前記所定長との積によって前記走行抵抗力を生成する走行抵抗力生成ステップと、
前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするベルト体の走行抵抗力予測方法。 - 前記所定長は、前記単位ベルト体に作用する前記応力およびひずみの1次成分が示す特徴を十分にあらわすに足る寸法である、
ことを特徴とする請求項4記載のベルト体の走行抵抗力予測方法。 - 前記応力ひずみ生成ステップによる応力およびひずみの変化特性の曲線の導出は、前記単位ベルトの断面内における一点の応力およびひずみを求め、前記単位ベルト体の走行方向に隣接する諸点の応力およびひずみを順次計算することでなされる、
ことを特徴とする請求項4記載のベルト体の走行抵抗力予測方法。
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