JP2009100703A - 潅水施肥装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】栽培圃場を複数系統に分割し、各系統圃場単位に点滴チューブを配設して潅水施肥栽培を行う潅水施肥装置であって、原水送水パイプに、フィルターと肥料ポンプ付きの肥料混入部を介して前記各系統圃場のチューブ電磁弁付き点滴チューブを分岐接続し、水分計を設けると共に、これ等を操作する潅水施肥制御装置を設置し、潅水施肥制御装置は潅水施肥パターンの選択・条件設定部、潅水施肥のパターン記憶部、培地の水分計と連動する制御部からなる。
【選択図】図2
Description
この特許文献1には、段落番号0013に「原水タンク8と肥料濃厚液タンク9にそれぞれ供給管10が接続され、これらにそれぞれポンプ11と減圧弁12や電磁弁13などの管路開閉器を備えており、これらを別々に開閉させることにより水と肥料を別々に供給停止させることができるような構成になっている。」の記載がある。
つまりこの潅水施肥装置は、任意の設定時刻に自動的に潅水と施肥をそれぞれ別個に実行する潅水施肥制御方法と、これに加えて、連続的に土壌水分値と日射量を測定するセンサーを有し、そのセンサーによって得た値により、それぞれの設定時刻の潅水のみを実行させないとする手段を備えたものである。
しかしながら、特許文献1には、タイマーと流量センサーを用いて任意の設定時刻に自動的に潅水と施肥をそれぞれ別個に実行する潅水施肥制御方法に加えて、連続的に土壌水分値と日射量を測定するセンサーを有し、そのセンサーによって得た値により、それぞれの設定時刻の潅水のみを実行させないとする手段を備えているが、施肥量を正確に行うことに対する対応はなされていない。また、水分センサーを使って土壌(又は培地ともいう)水分を管理するかん水方法については、特許文献1の出願以前に既に広く利用されている。
潅水施肥制御装置は、
1日を単位に潅水を開始する時刻(潅水時刻)を配置し索引コードを登録した潅水時刻パターンを選択設定可能に複数備えた潅水時刻パターンコード表と、前記潅水時刻パターンの各々に対応して設けられ当該潅水時刻パターンに配置した潅水時刻での潅水と任意の潅水時刻での施肥を記憶し、これ等の潅水と施肥の各々について、前記水分計からの測定値に連動して又はこれによらないで強制的に行うかを記憶すると共に潅水時間、施肥時間、施肥量、潅水時間内の施肥後の点滴チューブの洗浄時間等の関連条件を記憶した潅水施肥パターンを選択可能に複数備えた潅水施肥パターン表とを有するパターン記憶部と、
潅水施肥対象の系統圃場の選定と前記パターン記憶部の潅水時刻パターンコード表と潅水施肥パターン表から牽引コードによる潅水時刻パターンと潅水施肥パターンを選定設定すると共に、潅水施肥パターンの当該潅水と施肥について、施肥する潅水時刻、前記水分計からの測定値に連動して又はこれによらないで強制的に潅水又は潅水と施肥を行うか、潅水時間、施肥時間、施肥量、潅水時間内の施肥後の点滴チューブの洗浄時間等の関連条件をその変更を含んで入力設定する選択・条件設定部と、
前記選択・条件設定部で選択した系統圃場の潅水時刻パターンとそれに対応する潅水施肥パターンに基づき、前記取水源と前記肥料ポンプと当該系統圃場のチューブ電磁弁を操作して、当該点滴チューブから当該系統圃場に潅水のみ又は潅水と施肥或いは潅水と施肥と前記点滴チューブの洗浄をする制御部とを有してなる
ことを特徴とする潅水施肥装置。
水分計の出力による原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる潅水、
水分計の出力によらずに原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる強制潅水、
水分計の出力による原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動のいずれかと肥料ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる潅水と施肥、
水分計の出力によらずに原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動のいずれかと肥料ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる強制潅水と施肥、
前記潅水施肥中における施肥後の点滴チューブ洗浄の際の施肥ポンプ制御は、当該潅水時間Ti(分)内に潅水施肥時間(Ti−Tw)とそれに続く点滴チューブ洗浄時間Tw(分)を設定する際、潅水施肥時間(Ti−Tw)中の肥料ポンプの稼動ストローク数Sを圃場面積A(アール)と、施肥量B(CC/アール)と、肥料ポンプの能力である単位時間当たりの最大ストローク数(肥料ポンプ能力定数(K))と肥料ポンプの単位時間当たりの最大吐出能力定数P(CC/分)とその吐出量補正係数Pc(%)とを用いて、数1により演算算出し、この稼動ストローク数Sにより肥料ポンプを制御する。
(3)、前記選択・条件設定部は、潅水時刻パターンコード表から選択した潅水時刻パターンとの関係で示す潅水施肥パターン表において、潅水施肥パターンの潅水時刻列に新たに任意に強制施肥をする時刻(施肥時刻)をN回目の潅水時刻に又はN回目毎の潅水時刻を入力設定することを可能にし、その設定時刻に制御部が肥料ポンプを動作させることを特徴とする前記(1)に記載の潅水施肥装置。
即ち、通常操作は栽培時期、期間中の作物の生育状態や天候に対応して、最適な潅水施肥パターンを任意に選択することにより、その選択潅水施肥パターンの各種設定内容により的確な開始時刻に適量の潅水を設定時間通り自動的に行うと共に、この潅水時刻の任意の時刻に対象圃場の面積当たり設定した肥料の施肥をも同時に正確に自動的に行うことが出来るものである。
例えば低温の時期には、早朝からの潅水によって培地温が低下するため、初回の潅水時刻を遅く配置し、終了回の潅水時刻を早く配置した潅水時刻パターンを選択し、温暖な時期には初回の潅水時刻を早く配置し、終了回の潅水時刻を遅く配置した潅水時刻パターンを選択する。また、初回から最終回までの潅水時刻の数も、初回の潅水時刻に続いて1〜多回数の時刻数にした各種潅水時刻パターンを記憶させる。
これにより潅水管理及び施肥管理を独立して任意に実施できるため、簡便で多様な品目、多様な栽培法に適用対応することができる。
しかもこの施肥をも同時に行う任意の潅水時刻において、点滴チューブの洗浄を適宜実施することも任意に可能とし、点滴チューブの肥料による汚染を防止すると共に水圧の変動の影響を受けずに円滑な潅水施肥を長期に亘って高位に安定実施することを確保するものである。
更に、これらの潅水施肥実績に関しては潅水時刻パターンと潅水施肥パターンと組合わせた成果と共に実績データとして記録しておくことにより、選択した潅水施肥パターンの選択の是非を正確に評価することができ、以後の潅水施肥作業では栽培時期、期間中の作物の生育状態や天候に最適なものとして当該潅水施肥パターンを位置づけたり、或いはそれ用に適切な設定内容に修正設定して有利な潅水施肥パターンに仕上げることが出来るものである。
これにより新規な潅水施肥栽培もリスクを最小にして多数実現することが出来たものである。
本発明の潅水施肥装置において、潅水施肥とは、作物の潅水を行う際に、固形肥料を溶かした液肥を、潅水する水に混入して薄めて施肥を行うものであり、養液土耕といわれるものと同義である。
図1に潅水施肥装置の例を示す。本例の潅水施肥装置は、栽培圃場10を複数系統に分割し、各系統圃場10a〜10d単位に点滴チューブ9a〜9dを配設して潅水と施肥栽培を行う。
潅水施肥装置は、原水が蓄えられた井戸又は貯水槽1などから原水を汲み上げて送水する潅水ポンプ2、潅水ポンプによって、又は、潅水に必要な一定の水圧を有する取水源3には潅水ポンプを用いずに直接的に取水源用電磁弁4によって送水された原水の異物を除去するフィルター5、原水に肥料を混入する肥料混入部6及び複数個のチューブ電磁弁7a〜7dを介して、栽培圃場10に設置した複数の点滴チューブ9a〜9dに送液し、果菜類の栽培圃場10に水又は水と肥料を給液する。更に栽培圃場10bと10dには、水分計8a,8bを設けると共に、これ等を操作する潅水施肥制御装置13を設置してなる。
取水源が潅水に必要な一定の水圧を有する場合で、畑地潅漑用のダムから圃場に定置配管された施設を利用する場合には、先ず取水源用電磁弁4を開き、続いて潅水用の電磁弁7a〜7dを潅水施肥制御装置13の制御に従って開閉し、潅水施肥の最後に取水源用電磁弁4を閉じる。
肥料ポンプ12は、1台12a又は2台12bの電磁式ポンプやパルスポンプ等からなり、潅水施肥制御装置13の制御により、肥料タンク11から一定の濃度の液体の肥料を吸水し、一定時間の範囲内で原水に肥料を注入する。1台の場合は、作物に必要な総合養分を含む肥料を一定濃度に溶かした1種類(1液11a)を使用し、2台の場合は、肥料の混合により沈殿を招く複数の成分を含む肥料を互いに別々に一定濃度に溶かした2種類(2液11b)を使用する。
2台のポンプは潅水施肥制御装置13にそれぞれ独立して結線され、潅水施肥制御装置13で肥料ポンプ12a、12bの作動又は停止を制御する。
潅水ポンプ2を使用する場合は、潅水ポンプ2、電磁弁7、肥料ポンプ12、水分計8及び潅水ポンプ起動装置14それぞれを潅水施肥制御盤13との間で電気的に結線している。この潅水施肥制御盤は、電磁弁、肥料ポンプを制御し、潅水ポンプ起動装置14を制御し潅水ポンプを駆動する。
潅水ポンプ2を使用しない場合は、潅水施肥制御装置13は、電磁弁4、肥料ポンプ12a,12bを制御する。潅水施肥制御装置13の制御で潅水が行われる場合は、潅水ポンプを使用するときは潅水ポンプを駆動し、井戸又は貯水槽から送水し、使用しないときは潅水ポンプを駆動せずに取水源から直接に送水される。
前記水分計8a〜8bは、栽培圃場10の培地に潅水し浸潤した水分を測定し、得られたデータに基づいて潅水施肥制御装置13を動作させる。たとえば、水分がポーラスカップに作用し、真空度が下がることによって培地水分の変化を電気的に出力する水分計8を土壌に挿入している。
水分計8a〜8bはそれぞれのチューブ電磁弁7a〜7dと連動している。複数個の水分計により複数系統の潅水を制御する。各系統の水分状態を同じ水分管理で行う場合には、1個の水分計8aの出力を複数個のチューブ電磁弁に連動させることで、全ての系統について同一の水分管理ができる。
また水分計8a、8bのデータに基づいて潅水施肥制御装置13が働いて、潅水ポンプ起動装置14を作動して潅水する。肥料タンク11a、11bの肥料を肥料ポンプ12a、12bで吸い上げ、所定量の肥料を肥料混入部6において原水に混入する。
また、本例は栽培圃場10を4系統10a〜10dに分割し,これを2区分にグルーピングしこの区分ごとに1個の水分計8a、8bを配置して水分管理を行う場合には、1個の水分計により当該区分内の全電磁弁を連動させることで、2分割した水分管理ができるようにしてある。
潅水施肥制御装置13の構成を図2に示す。
図3において潅水施肥制御装置13は、パターン記憶部300と選択・条件設定部200と
制御部400とから構成する。
これにより、1日の中で、作物の光合成が盛んで、養分の要求量が多い時間帯にも施肥が可能となる。また、潅水時刻パターンの索引コード及び潅水施肥パターン索引コード、強制潅水や強制潅水施肥の初回からの繰返し回数(R)や、前記N値を記録しておけば栽培成果と共に翌年の同様な季節や気候などの条件の栽培に利用できる。
これらの画面により、作物・栽培時期・栽培法に基づいて潅水施肥対象の系統圃場10a〜10dの選定と前記パターン記憶部300の潅水時刻パターンの牽引コードナンバー設定値、潅水時刻パターン変更値、潅水施肥パターンナンバーの設定、潅水施肥パターン番号の設定値を入力する。選定した潅水施肥パターンの当該潅水と施肥について、間隔数値(N)設定値、潅水時間設定値、潅水面積(1個の電磁弁を介してつながっている点滴チューブが散水する面積であって、複数系統の面積をそれぞれ、アール(a)単位である)設定値、潅水時間内の施肥後の点滴チューブの洗浄時間設定値、施肥量設定値、前記水分計からの測定値に連動して又はこれによらないで強制的に潅水又は潅水と施肥を行うかの設定及びこれらの関連条件をその変更を含んで入力設定する。
これらの構成により、各系統毎に潅水時刻パターン、潅水施肥パターンに設定された時刻において、潅水のみと潅水と施肥とをそれぞれ別個に実行するとともに、一日の1〜数回の肥料施用、潅水を行い、培地(土壌)の水分量が設定値より上回り、潅水の信号が出た場合は、潅水時刻パターンの設定時刻において、潅水ポンプを駆動し、また、関係電磁弁を開閉し、潅水や施肥が行われる。また、肥料ポンプのストローク数が演算され、肥料ポンプを駆動処理し設定された潅水施肥時間内に正確に肥料を注入する。
水分計の出力による原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる潅水、
水分計の出力によらずに原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる強制潅水、
水分計の出力による原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動のいずれかと肥料ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる潅水と施肥、
水分計の出力によらずに原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動のいずれかと肥料ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる強制潅水と施肥、
前記潅水施肥中における施肥後の点滴チューブ洗浄の際の施肥ポンプ制御は、当該潅水時間Ti(分)内に潅水施肥時間(Ti−Tw)とそれに続く点滴チューブ洗浄時間Tw(分)を設定する際、潅水施肥時間(Ti−Tw)中の肥料ポンプの稼動ストローク数Sを圃場面積A(アール)と、施肥量B(CC/アール)と、肥料ポンプの能力である単位時間当たりの最大ストローク数(肥料ポンプ能力定数(K))と肥料ポンプの単位時間当たりの最大吐出能力定数P(CC/分)とその吐出量補正係数Pc(%)とを用いて、数1により演算算出し、この稼動ストローク数Sにより肥料ポンプを制御する。
L:選択した時刻パターンの各設定時刻に到達毎に当該時刻迄の時刻の数−1
R:既に初回のみに設定された、または初回から連続繰り返し設定された強制潅水又は強制施肥の数
また、1回の潅水時間と、肥料によって汚染した点滴チューブを水で洗浄する任意に設定される洗浄時間と、圃場の面積を入力する方法と、施肥量(a)を入力する方法と、肥料ポンプの能力を組合せ、潅水時間と洗浄時間の差の肥料施用時間内に潅水施肥を行おうとする面積に必要な肥料を注入する。
本実施例の潅水施肥装置を、果菜類栽培圃場に適用し、そこでの栽培果菜はピーマンとトマトの栽培を例にとってその成果を説明する。
開発した方法では、同一の電磁弁を潅水と施肥に用い、一定時間の潅水や一定量の施肥を行うことのできる高い機能を備えたたままで、電子式流量計を使用せずに潅水や施肥を行う。この場合、潅水時間、肥料ポンプの動作速度を一定にすると、複数系統が対応する基準面積当たりの潅水量は、同じ潅水時間で同じ潅水量となり、培地(土壌)の水分状態を複数系統ともそれぞれ同じ状態とすることができるが、複数系統が対応する面積が異なる場合は、潅水時間の中で肥料ポンプが同じ速度で動作するため、面積の大きい系統が対応する圃場では基準面積当たりの肥料が少なく、面積の小さい系統が対応する圃場では基準面積当たりの肥料が多くなる。
この方法により、夏秋期に栽培されるトマトでの、梅雨時期での少ない潅水量での必要な肥料の施用による草勢の維持、初秋期の少ない潅水量での必要な肥料の施用による品質向上が可能となる。
1回当たりの潅水量は、栽培時期や作物の生育量を元に、潅水時間で設定し、一定の水圧条件での1分間の単位長当たりの点滴チューブからの水の吐出量を元に、一回の潅水に必要な潅水時間を入力する。潅水は、設定された1回当たりの潅水時間及び選定した索引コードの潅水時刻パターン及び潅水施肥パターン及び水分計の出力に基づいて、潅水動作を繰り返す。
洗浄時間は、点滴チューブが肥料の析出によって汚染するのを防止するため、1回の潅水時間の範囲内で任意の洗浄時間(分)を入力する。これにより、点滴チューブの肥料の析出等による目詰まりを防ぎ、点滴チューブの使用期間中の散水能力の維持や使用年数を伸ばすことができる。洗浄時間の設定は、各系統の点滴チューブの長さにより適宜変更するが、この変更によって、後述の肥料の設定を変更する必要はない。
施肥量の入力は、1回の潅水中に施肥を行う、基準面積(a)当たりの肥料の量であり、表4に示すピーマンの事例のように、栽培法や栽培時期によって施肥量を変更する。各系統毎の圃場の土壌の養分状態、地力、栽培方法が異なる場合にも施肥量を変更する。
選択された潅水時刻パターンの時刻表において、任意の数値Nを入力し潅水施肥時刻を算出する。Nを入力すると前記数2により、初回及び繰り返し回数及び任意の設定時刻での潅水又は潅水施肥の時刻を設定し、潅水時刻パターンと潅水施肥パターンの設定により、最適な潅水施肥のパターンでの動作を行うことができる。また、各時刻での潅水又は潅水施肥の実施方法を対人画面に設定する。
1回の潅水時間と、肥料によって汚染した点滴チューブを水で洗浄する任意の設定される洗浄時間と、圃場の面積の入力と、施肥量(a)の入力と、肥料ポンプの能力である最大ストローク数(肥料ポンプ定数K)と肥料ポンプ最大能力定数(P)とその吐出量補正係数Pc(%)とを組合せ、前記数1に基づいて、潅水時間と洗浄時間の差の肥料施用時間内に肥料ポンプのストローク数を演算し、潅水施肥を行おうとする面積に必要な肥料を注入する。ここで、ポンプの能力によってストローク当たりの容量が定まっており、数5により得られたストローク数Sに施肥時間を乗ずることで肥料の容量が定まる。
潅水や施肥の日と量の履歴をコンピュータに最大3週間保存することができることにより、潅水や施肥の動作確認とともに、栽培履歴をまとめて書き留めることで、肥料の施用量の証明等に用いることができる。この肥料の施用量の証明は、前述の減化学肥料栽培、減肥栽培を証明するのに有効である。
潅水と施肥の方法は、各系統毎の面積、潅水時刻パターンの選択、潅水施肥パターンの選択、洗浄時間、潅水時間、施肥量を設定する。設定した潅水時刻パターンにあって、潅水時刻パターンで、施肥の繰り返し1回で、その後、水分計による潅水をするパターンを選択したときは、タイマーが最初の時刻に達したとき、強制的に各系統毎の面積に対し、1回潅水と施肥を行い、その後、水分計の出力によって潅水を行う。また、施肥の繰り返し2回とすると、潅水時刻パターンの時刻の最初の2回強制的に潅水と施肥を行い、その後、動作は前述と同じとなる。また、N回を入力すると、潅水時刻パターンのN回目に又はN回毎に潅水又は施肥を繰り返す。これにより、作物の生育量や栽培時期に適応した、適正な施肥や水管理ができる。
表1の潅水時刻パターン16の例では、8:00から毎時毎に18:00までの潅水時刻が設定されているが、表2の潅水施肥パターン番号1と組合わせると、一回目8:00に強制的に潅水と施肥を行い、その他の時刻では水分計の出力に基づいて潅水が実施される。これにより、毎日の必要な肥料が確実に施用され、培地水分は適正に維持された。
〔電子式流量計を備えた従来の機種〕
図3に示すように、同一の電磁弁を潅水と施肥に用い、一定時間の潅水や一定量の施肥を行うことのできる高い機能を備えた潅水施肥装置では、潅水制御盤と電子式流量計が結線されており、電子式流量計の信号を電圧で出力し、それを元に流量を制御し必要な潅水量を流量で設定する。制御盤上の流量、肥料の濃度の設定で、電子式流量計を流れる潅水の流速に比例して肥料濃度が一定となるように、肥料ポンプが肥料を注入する。この方法は、電子式流量計やそれを制御する装置の価格が高いこと等から、生産規模が小さい果菜類生産者での導入が困難である。
〔電子式流量計を備えていない従来の機種〕
図3に示すように、電子式流量計15を備えていない従来の機種では、フィルター5と肥料混入器16からなるユニットと電磁弁がつながっており、電磁弁を一定時間開閉する間に水圧で肥料を吸い上げる肥料混入器によって肥料が注入される。電磁弁には常に肥料が残り、汚染により目詰まりを起こし易い。また、肥料混入器は潅水量に対して一定の肥料希釈率となるように、肥料混入器の肥料ダイアル16aを手動で回して設定するが、施肥精度は肥料ポンプに比べて劣る。また、原水の水圧変動が起きる条件での使用では、水圧が変動すると肥料注入量も変動するため正確な量の肥料を施用することができない。購入価格は低いものの、細かい潅水や肥料の施用が必要な栽培法には利用できない。
また、表1の潅水時刻パターン牽引番号16と、表2の潅水施肥パターン番号4でNを3とし、これを組合わせると、一回目の8:00に強制的に潅水と施肥を行い、その後、潅水時刻パターンの設定時刻の初回の14:00とその後の3回目の20:00に、強制的に潅水施肥が行われる。また、その他の時刻では水分計の出力に基づいて潅水が実施される。また、表1潅水時刻パターン牽引番号16と表2潅水施肥パターン番号9の組合せでは8:00と10:00の2回に強制的に潅水施肥が繰返される。その他の時刻には水分計の出力に基づいて潅水が行われる。これらを時期により組合わせることで、作物の盛んな生育に対して水分や養分の供給を円滑に行うことができた。
最大注入量が750(CC/分)、最大ストローク数が360の能力を有する肥料ポンプの使用例で、表3のピーマンの施肥例1の7月の施肥を実施する場合、10aの面積に対し1日1回の潅水施肥を行うに当たり、肥料の原体を水で10倍に薄めた肥料の量を1250(CC/アール)に設定し、潅水時間を12分、洗浄時間を2分と設定し潅水施肥を行うと、肥料ポンプのストロークは数3により300となる。これを1日2回に分けて施肥を行う場合に肥料の量を625(CC/アール)に設定すると、ストローク数が150となる。1回の潅水時間を長くすると、施肥時間(潅水時間−洗浄時間)が長くなり、ストローク数は小さくなる。これにより、設定された施肥時間の範囲で正確に施肥ができ、水圧が低下する等により潅水量が低下しても設定された量の施肥が正確に行われた。
表3のピーマンの施肥例1で、7月に最大注入量が450(CC/分)、最大ストローク数が360の能力を有する肥料ポンプで、肥料の量を1250(CC/アール)に設定し、潅水時間を12分、洗浄時間を2分と設定し潅水施肥を行う場合、肥料ポンプのストロークは数3により500となり、肥料ポンプの能力を超える。この時期は潅水量も多く必要とする時期であるため、1日に2回に分けて潅水施肥を行う場合には、肥料の量を625(CC/アール)に設定すると、ストローク数が260となって肥料ポンプの許容範囲となり、適正な潅水と正確な施肥が行われた。
点滴チューブの洗浄時間は必要に応じて任意に設定できるため、点滴チューブ長等を考慮して適宜に洗浄時間を変えても、コンピュータが潅水時間−洗浄時間により施肥時間を求め、施肥時間と施肥量と面積から自動的に肥料ポンプの注入量(ストローク数)を演算するため、肥料の希釈倍率等を変更する等の煩わしい操作を行うことなく、設定した肥料を施用できた。
山間地の狭隘な地形に近傍に点在する複数カ所の系統の圃場に対し、それぞれの圃場が蓄えている養分量である、いわゆる地力の違い等を考慮して、各系統毎に面積を入力し、施肥量を変えて栽培を行うと、各圃場の作物の生育を整えることができた。
果菜類の中で夏秋期に栽培されるトマトでは、曇天の続く梅雨時期になると果実が数段果房に連続して着果し肥大するため、株の着果負担が急増し草勢が低下し易い。この時期の日射量は少なく作物体の水分の吸収も減少するため、1日の潅水量を少なくし培地(土壌)が過湿とならないように管理する必要がある。潅水量と比例して肥料を注入する吸引式肥料混入装置での肥料の施用では、潅水量を減らすと肥料の施用量も少なくなるため、作物体が栄養不足に陥り易く草勢が低下する原因となる。また、初秋期には、日射量が次第に低下し、潅水量を減らすと肥料の施用量も少なくなって培地の肥料濃度が低下するため、糖度が高まらずに品質低下の原因となる。このような場合でも、本装置では、表4ように、曇天が続く梅雨期の6月の施肥では1回の潅水時間10分で1244cc/aを、日射量の低下する初秋期の9月の施肥では1回の潅水時間10分で1000cc/aを施肥すると、草勢を低下することなく、また、果実品質を低下することなく生育を確保できた。
潅水量が少ない時期には、培地(土壌)の水分が減少するため、水分計の指示値が高くなり易い。使用する水分計は長時間にわたって、少ない水分状態(乾燥状態)に置かれると、水分計の真空度が高まって水分計に詰められている水がポーラスカップから培地に浸み出て、真空度が次第に高まり、水分計の水が無くなると正常な作動ができなくなった。この場合は、水分計を使用せずに、潅水時刻パターンや潅水施肥パターンに設定した任意のパターンで潅水と施肥を行う必要があった。
果菜類の栽培で、表4の施肥例2のように、生育期間中に緩やかに肥効が現れる肥料を基肥に施用する方法で、全量を液肥とする表4の施肥例1に対し、その施肥量の1/2量を、生育の状況に応じて、当潅水施肥装置の機能を利用した潅水施肥栽培により安定した生育が確保できた。
果菜類の栽培で、表4の施肥例3のように、有機物を基肥に施用して有機物の分解によって供給される養分で栽培初期の養分供給を行い、水分計に基づく自動潅水のみで生育を調整する。その後、生育の状況に応じて、時刻パターンの初回に潅水施肥を必ず行い、水分計に基づく自動潅水で培地の水分調整を行い、さらに生育が進むと初回と2回に潅水施肥を必ず行うなどで年間の潅水施肥を完全に自動化できた。これにより、表4の潅水施肥例3のように特別栽培農産物の認証基準である慣行施肥量の1/2を有機物で施用し、残りの1/2を肥料の原体を水で希釈し施用した栽培が可能であった。
培地が周辺の土壌から隔離され、人の腰の高さに少量の培地が重点され高設されているイチゴの高設栽培では、培地の水分保持量には限界があり、タイマーを使用した潅水では培地の水分状態にかかわらず一定量の潅水が行われるため。保水量を上回る水分が培地の肥料過養分を排液として圃場外に流出させて環境汚染を招き易い。そこで、時刻パターンに基づく初回又は2回目に必ず潅水液肥を行い、その後水分計で潅水を行うことで、排液量を著しく削減できた。
土壌から隔離されたトマトの隔離栽培にあって、培地の容積が制限された条件では、培地の保水量が制限されるため、保水量を超える潅水が行われると培地中に潅水による水が停滞し作物の根の障害(湿害)を招いた。よって、前述の潅水や施肥を行うことで培地中での停滞水がなくなり、健全な生育を維持できた。
チューブの散水穴から水が滴下する散水方式の点滴チューブを施用せずに、チューブの両側又は片側に空いた散水穴から水を吐出する潅水チューブを使った潅水法でも、チューブの単位長当たりの水の吐出量を元に潅水時間を設定することで、点滴チューブ使った潅水施肥栽培と同様の栽培ができた。
コンピュータに記憶された2週間の潅水や施肥の履歴を、第3者が確認することで、使用した肥料の量を確認ができ、前述の特別栽培農産物での1/2化学肥料の削減の実施状況を認証する方法として利用できた。
2 潅水ポンプ
3 水圧を有する取水源
4 取水源用電磁弁
5 フィルター
6 肥料混入部
7a〜7d 電磁弁
8a、8b 水分計
9 点滴チューブ
10 栽培圃場
11a、11b 肥料タンク
12a、12b 肥料ポンプ
13 潅水施肥制装置
14 潅水ポンプ起動装置
15 電子式流量計
16 吸引式肥料混入装置
17a 潅水制御盤
17b 肥料制御盤
Claims (3)
- 栽培圃場を複数系統に分割し、各系統圃場単位に点滴チューブを配設して潅水施肥栽培を行う潅水施肥装置であって、取水源に連通する送水パイプに、原水の異物を除去するフィルターと肥料を混入する肥料ポンプ付きの肥料混入部とを順次に介設すると共にその肥料混入部の介設の下流パイプ部に前記各系統圃場の点滴チューブを分岐接続し、前記各系統圃場の点滴チューブの上流部にチューブ電磁弁を設置し、各系統圃場単
位に又は複数の系統圃場グループ単位に水分計を設けると共に、これ等を操作する潅水施肥制御装置を設置し、
潅水施肥制御装置は、
1日を単位に潅水を開始する時刻(潅水時刻)を配置し索引コードを登録した潅水時刻パターンを選択設定可能に複数備えた潅水時刻パターンコード表と、前記潅水時刻パターンの各々に対応して設けられ当該潅水時刻パターンに配置した潅水時刻での潅水と任意の潅水時刻での施肥を記憶し、これ等の潅水と施肥の各々について、前記水分計からの測定値に連動して又はこれによらないで強制的に行うかを記憶すると共に潅水時間、施肥時間、施肥量、潅水時間内の施肥後の点滴チューブの洗浄時間等の関連条件を記憶した潅水施肥パターンを選択可能に複数備えた潅水施肥パターン表とを有するパターン記憶部と、
潅水施肥対象の系統圃場の選定と前記パターン記憶部の潅水時刻パターンコード表と潅水施肥パターン表から牽引コードによる潅水時刻パターンと潅水施肥パターンを選定設定すると共に、潅水施肥パターンの当該潅水と施肥について、施肥する潅水時刻、前記水分計からの測定値に連動して又はこれによらないで強制的に潅水又は潅水と施肥を行うか、潅水時間、施肥時間、施肥量、潅水時間内の施肥後の点滴チューブの洗浄時間等の関連条件をその変更を含んで入力設定する選択・条件設定部と、
前記選択・条件設定部で選択した系統圃場の潅水時刻パターンとそれに対応する潅水施肥パターンに基づき、前記取水源と前記肥料ポンプと当該系統圃場のチューブ電磁弁を操作して、当該点滴チューブから当該系統圃場に潅水のみ又は潅水と施肥或いは潅水と施肥と前記点滴チューブの洗浄をする制御部とを有してなる
ことを特徴とする潅水施肥装置。 - 前記潅水施肥制御装置の選択・条件設定部にて選択設定された潅水施肥パターンに基づき制御部においてなされる潅水と施肥は、前記取水源に潅水ポンプ又は原水電磁弁を設け、次の何れかにより制御されることを特徴とする請求項1に記載の潅水施肥装置。
水分計の出力による原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる潅水、
水分計の出力によらずに原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる強制潅水、
水分計の出力による原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動のいずれかと肥料ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる潅水と施肥、
水分計の出力によらずに原水電磁弁の開作動又は潅水ポンプの稼動のいずれかと肥料ポンプの稼動と潅水対象圃場用のチューブ電磁弁を開作動させる強制潅水と施肥、
前記潅水施肥中における施肥後の点滴チューブ洗浄の際の施肥ポンプ制御は、当該潅水時間Ti(分)内に潅水施肥時間(Ti−Tw)とそれに続く点滴チューブ洗浄時間Tw(分)を設定する際、潅水施肥時間(Ti−Tw)中の肥料ポンプの1分毎の稼動ストローク数Sを圃場面積A(アール)と、施肥量B(CC/アール)と、肥料ポンプの能力である単位時間当たりの最大ストローク数(肥料ポンプ能力定数(K))と肥料ポンプの単位時間当たりの最大吐出能力定数P(CC/分)とその吐出量補正係数Pc(%)とを用いて、数1により演算算出し、この稼動ストローク数Sにより肥料ポンプを制御する。
- 前記選択・条件設定部は、潅水時刻パターンコード表から選択した潅水時刻パターンとの関係で示す潅水施肥パターン表において、潅水施肥パターンの潅水時刻列に新たに任意に強制施肥をする時刻(施肥時刻)をN回目の潅水時刻に又はN回目毎の潅水時刻を入力設定することを可能にし、その設定時刻に制御部が肥料ポンプを動作させることを特徴とする請求項1に記載の潅水施肥装置。
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