本発明の製造方法で用いる偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光子である。当該偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素、二色性染料などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
ポリビニルアルコール系フィルムとしては、ポリビニルアルコール系樹脂を、水または有機溶媒に溶解した原液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法等の任意の方法で成膜されたものを適宜使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は100〜5000程度が好ましく、1400〜4000がより好ましい。
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素等で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、以下の方法により作成できる。
染色工程においては、ポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素が添加された20〜70℃程度の染色浴に1〜20分間程度浸漬し、ヨウ素を吸着させる。染色浴中のヨウ素濃度は、通常水100重量部あたり0.1〜1重量部程度である。染色浴中には、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を0.02〜20重量部程度、好ましくは2〜10重量部添加してもよい。これら添加物は、染色効率を高める上で特に好ましい。また水溶媒以外に、水と相溶性のある有機溶媒が少量含有されていてもよい。
またポリビニルアルコール系フィルムは、ヨウ素または二色性染料含有水溶液中で染色させる前に、水浴等で20〜60℃程度で0.1〜10分間程度膨潤処理されていてもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。
染色処理したポリビニルアルコール系フィルムは、必要に応じて架橋することができる。架橋処理を行う架橋水溶液の組成は、通常水100重量部あたりホウ酸、ホウ砂、グリオキザール、グルタルアルデヒド等の架橋剤を単独又は混合して1〜10重量部程度である。架橋剤の濃度は、光学特性とポリビニルアルコール系フィルムに発生する延伸力により生じる偏光板収縮のバランスを考慮して決定される。
架橋浴中には、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を0.05〜15重量%、好ましくは0.5〜8重量%添加してもよい。これら添加剤は、偏光子の面内の均一な特性を得る点で特に好ましい。水溶液の温度は通常20〜70℃程度、好ましくは40〜60℃の範囲である。浸漬時間は、特に限定されないが、通常1秒〜15分間程度、好ましくは5秒〜10分間である。水溶媒以外に、水と相溶性のある有機溶媒が少量含有されていてもよい。
ポリビニルアルコール系フィルムの総延伸倍率は元長の3〜7倍程度、好ましくは5〜7倍である。総延伸倍率が7倍を超える場合はフィルムが破断しやすくなる。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色または架橋しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。延伸方法や延伸回数等は、特に制限されるものではなく、いずれか一工程でのみ行ってもよい。また、同一工程で複数回行ってもよい。
またヨウ素吸着配向処理を施したポリビニルアルコール系フィルムには、さらに水温10〜60℃程度、好ましくは30〜40℃程度、濃度0.1〜10質量%のヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液に1秒〜1分間浸漬する工程を設けることができる。ヨウ化物水溶液中には、硫酸亜鉛、塩化亜鉛物等の助剤を添加してもよい。また、ヨウ素吸着配向処理を施したポリビニルアルコール系フィルムには、水洗工程、乾燥工程を設けることができる。
乾燥後の偏光子の水分率は15〜35重量%とすることが好ましく、20〜30重量%とすることがより好ましい。水分率を上記範囲とすることで、接着剤を介して偏光子と保護フィルムとを貼り合わせた後に乾燥する際の光学特性の低下を防止することができる。すなわち、水分率が高すぎると、耐熱性の低下や接着力の低下を招きやすく、水分率が低すぎるとクニックや外観上のムラが発生しやすいという問題があるが、水分率を上記範囲とすることで、このような光学特性の低下を防止することができる。
本発明の製造方法で用いる透明保護フィルムは、透湿度が150g/m2/24h以下の低透湿度の材料を用いる。前記透湿度は0〜140g/m2/24hであることが好ましく、さらには0〜120g/m2/24hであることが好ましい。低透湿度の材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロ系ないしはノルボルネン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。また、ラクトン環含有アクリル系樹脂(特開2005‐146084号公報に記載の樹脂)を用いることができる。
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。透明保護フィルムは、5〜150μmの場合に特に好適である。
なお、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
本発明の透明保護フィルムとしては、上記のうち、透湿度および光学特性の観点においては、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、を用いることが好ましい。
ポリイミド系樹脂としては、例えば、特開2001−343529号公報(WO01/37007号)に記載されているような樹脂組成物から形成されるポリマーフィルム等が使用可能である。より詳細には、側鎖に置換イミド基または、非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とシアノ基を有する熱可塑性樹脂との混合物である。具体例としては、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合タイトを有する樹脂組成物等が挙げられる。
ノルボルネン系樹脂はノルボルネン、テトラシクロドデセンや、それらの誘導体等の環状オレフィンから得られる樹脂の一般的な総称であり、たとえば、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている。具体的には環状オレフィンの開環重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとのランダム共重合体、またこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体等が例示できる。さらには、これらの水素化物があげられる。商品としては、日本ゼオン社製のゼオネックス、ゼオノア、JSR社製のアートン、TICONA社製のトーパス等があげられる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることにより、偏光板の耐久性に優れたものとなりうる。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定きれないが、成形性当の観点から、好ましくは170℃以下である。(メタ)アクリル系樹脂からは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)がほぼゼロものフィルムを得ることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)があげられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルがあげられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂があげられる。
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系があげられる。
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂があげられる。
また、(メタ)アクリル系樹脂としては、不飽和カルボン酸アルキルエステルの構造単位およびグルタル酸無水物の構造単位を有するアクリル樹脂を用いることができる。前記アクリル樹脂としては、特開2004−70290号公報、特開2004−70296号公報、特開2004−163924号公報、特開2004−292812号公報、特開2005−314534号公報、特開2006−131898号公報、特開2006−206881号公報、特開2006−265532号公報、特開2006−283013号公報、特開2006−299005号公報、特開2006−335902号公報などに記載のものがあげられる。
また、(メタ)アクリル系樹脂としては、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位を有する熱可塑性樹脂を用いることができる。当該熱可塑性樹脂としては、特開2006−309033号公報、特開2006−317560号公報、特開2006−328329号公報、特開2006−328334号公報、特開2006−337491号公報、特開2006−337492号公報、特開2006−337493号公報、特開2006−337569号公報などに記載のものがあげられる。
前記透明保護フィルムは、正面位相差が40nm未満、かつ、厚み方向位相差が80nm未満であるものが、通常、用いられる。正面位相差Reは、Re=(nx−ny)×d、で表わされる。厚み方向位相差Rthは、Rth=(nx−nz)×d、で表される。また、Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、で表される。[ただし、フィルムの遅相軸方向、進相軸方向及び厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、d(nm)はフィルムの厚みとする。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率の最大となる方向とする。]。なお、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
一方、前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、などがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
位相差板は、nx=ny>nz、nx>ny>nz、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz=nx>ny、nz>nx>ny、nz>nx=ny、の関係を満足するものが、各種用途に応じて選択して用いられる。なお、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的にnyとnzが同じ場合も含む。
例えば、nx>ny>nz、を満足する位相差板では、正面位相差は40〜100nm、厚み方向位相差は100〜320nm、Nz係数は1.8〜4.5を満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>ny=nz、を満足する位相差板(ポジティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nz=nx>ny、を満足する位相差板(ネガティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>nz>ny、を満足する位相差板では、正面位相差は150〜300nm、Nz係数は0を超え〜0.7を満足するものを用いるのが好ましい。また、上記の通り、例えば、nx=ny>nz、nz>nx>ny、またはnz>nx=ny、を満足する用いることができる。
透明保護フィルムは、適用される液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。例えば、VA(Vertical Alignment,MVA,PVA含む)の場合は、偏光板の少なくとも片方(セル側)の透明保護フィルムが位相差を有している方が望ましい。具体的な位相差として、Re=0〜240nm、Rth=0〜500nmの範囲である事が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、nx=ny>nz(ポジティブAプレート,二軸,ネガティブCプレート)の場合が望ましい。液晶セルの上下に偏光板を使用する際、液晶セルの上下共に、位相差を有している、または上下いずれかの透明保護フィルムが位相差を有していてもよい。
例えば、IPS(In−Plane Switching,FFS含む)の場合、偏光板の片方の透明保護フィルムが位相差を有している場合、有していない場合のいずれも使用できる。例えば、位相差を有していない場合は、液晶セルの上下(セル側)ともに位相差を有していない場合が望ましい。位相差を有している場合は、液晶セルの上下ともに位相差を有している場合、上下のいずれかが位相差を有している場合が望ましい(例えば、上側にnx>nz>nyの関係を満足する二軸フィルム、下側に位相差なしの場合や、上側にポジティブAプレート、下側にポジティブCプレートの場合)。位相差を有している場合、Re=−500〜500nm、Rth=−500〜500nmの範囲が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz>nx=ny、nz>nx>ny(ポジティブAプレート,二軸,ポジティブCプレート)が望ましい。
なお、前記位相差を有するフィルムは、位相差を有しない透明保護フィルムに、別途、貼り合せて上記機能を付与することができる。
透明保護フィルムの偏光子と接着する面には、易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理等のドライ処理、アルカリ処理等の化学処理、易接着剤層を形成するコーティング処理等があげられる。これらのなかでも、易接着剤層を形成するコーティング処理が好適である。易接着剤層の形成には、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、ポリエステル樹脂等の各種の易接着材料を使用することができる。なお、易接着剤層の厚みは、通常、0.01〜10μm程度、さらには0.05〜5μm程度、特に0.1〜1μm程度とするのが好ましい。
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能等)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
前記偏光子と前記透明保護フィルムとの貼り合わせには、水系接着剤が用いられる。水系接着剤としては特に限定されるものではないが、例えば、ビニルポリマー系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系等を例示できる。このような水系接着剤からなる接着剤層は、水溶液の塗布乾燥層などとして形成しうるが、その水溶液の調製に際しては、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒も配合することができる。前記水系接着剤としては、ビニルポリマーを含有する接着剤などを用いることが好ましく、ビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。またポリビニルアルコール系樹脂には、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などの水溶性架橋剤を含有することができる。特に偏光子としてポリビニルアルコール系のポリマーフィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤を用いることが、接着性の点から好ましい。さらには、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤が耐久性を向上させる点からより好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールがあげられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等があげられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独でまたは二種以上を併用することができる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は特に限定されないが、接着性の点からは、平均重合度100〜5000程度、好ましくは1000〜4000、平均ケン化度85〜100モル%程度、好ましくは90〜100モル%である。
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを公知の方法で反応して得られる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を酢酸等の溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコール系樹脂をジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法等があげられる。またポリビニルアルコールにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法があげられる。
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、0.1モル%以上であれば特に制限はなない。0.1モル%未満では接着剤層の耐水性が不充分であり不適当である。アセトアセチル基変性度は、好ましくは0.1〜40モル%程度、さらに好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは2〜7モル%である。アセトアセチル基変性度が40モル%を超えると、耐水性の向上効果が小さい。アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
架橋剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤に用いられているものを特に制限なく使用できる。前記ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂、;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物があげられる。これらのなかでもアミノ−ホルムアルデヒド樹脂やジアルデヒド類が好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としてはメチロール基を有する化合物が好ましく、ジアルデヒド類としてはグリオキザールが好適である。なかでもメチロール基を有する化合物である、メチロールメラミンが特に好適である。また、架橋剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を用いることができる。
前記架橋剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂の種類等に応じて適宜設計できるが、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常、4〜60重量部程度、好ましくは10〜55重量部程度、さらに好ましくは20〜50重量部である。かかる範囲において、良好な接着性が得られる。
耐久性を向上させるには、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いる。この場合にも、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、前記同様、架橋剤を4〜60重量部程度、好ましくは10〜55重量部程度、さらに好ましくは20〜50重量部の範囲で用いるのが好ましい。架橋剤の配合量が多くなりすぎると、架橋剤の反応が短時間で進行し、接着剤がゲル化する傾向がある。その結果、接着剤としての可使時間(ポットライフ)が極端に短くなり、工業的な使用が困難になる。かかる観点からは、架橋剤の配合量は、上記配合量で用いられるが、本発明の樹脂溶液は、金属化合物コロイドを含有しているため、前記のように架橋剤の配合量が多い場合であっても、安定性よく用いることができる。
本発明の水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤および平均粒子径が1〜100nmの金属化合物コロイドを含有してなる樹脂溶液が好ましく用いられる。当該樹脂溶液は、通常、水溶液として用いられる。樹脂溶液濃度は特に制限はないが、塗工性や放置安定性等を考慮すれば、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
金属化合物コロイドは、微粒子が分散媒中に分散しているものであり、微粒子の同種電荷の相互反発に起因して静電的安定化し、永続的に安定性を有するものである。金属化合物コロイド(微粒子)の平均粒子径は1〜100nmである。前記コロイドの平均粒子径が前記範囲であれば、接着剤層中において、金属化合物を略均一に分散させることができ、接着性を確保し、かつクニックを抑えることができる。前記平均粒子径の範囲は、可視光線の波長領域よりもかなり小さく、形成される接着剤層中において、金属化合物によって透過光が散乱したとしても、偏光特性には悪影響を及ぼさない。金属化合物コロイドの平均粒子径は、1〜100nm、さらには1〜50nmであるのが好ましい。
金属化合物コロイドとしては、各種のものを用いることができる。例えば、金属化合物コロイドとしては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化スズ、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の金属酸化物のコロイド;炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウム等の金属塩のコロイド;セライト、タルク、クレイ、カオリン等の鉱物のコロイドがあげられる。
金属化合物コロイドは、分散媒に分散してコロイド溶液の状態で存在している。分散媒は、主として水である。水の他に、アルコール類等の他の分散媒を用いることもできる。コロイド溶液中の金属化合物コロイドの固形分濃度は、特に制限されないが、通常、1〜50重量%程度、さらには、1〜30重量%のものが一般的である。また、金属化合物コロイドは、安定剤として硝酸、塩酸、酢酸などの酸を含有するものを用いることができる。
金属化合物コロイドは、静電的に安定化しており、正電荷を有するものと、負電荷を有するものに分けられるが、金属化合物コロイドは非導電性の材料である。正電荷と負電荷とは、接着剤調製後の溶液におけるコロイド表面電荷の電荷状態により、区別される。金属化合物コロイドの電荷は、例えば、ゼータ電位測定機により、ゼータ電位を測定することにより確認できる。金属化合物コロイドの表面電荷は、一般に、pHにより変化する。従って、本願のコロイド溶液の状態の電荷は、調整された接着剤溶液のpHにより影響される。接着剤溶液のpHは、通常、2〜6、好ましくは2.5〜5、さらに好ましくは3〜5、さらには3.5〜4.5の範囲に設定される。本発明では、正電荷を有する金属化合物コロイドが、負電荷を有する金属化合物コロイドに比べて、クニックの発生を抑える効果が大きい。正電荷を有する金属化合物コロイドとしては、アルミナコロイド、ジルコニアコロイド、チタニアコロイド、酸化スズコロイド等があげられる。これらのなかでも、特に、アルミナコロイドが好適である。
金属化合物コロイドは、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、200重量部以下の割合(固形分の換算値)で配合される。また金属化合物コロイドの配合割合を前記範囲とすることで、偏光子と透明保護フィルムとの接着性を確保しながら、クニックの発生を抑えることができる。金属化合物コロイドの配合割合は、10〜200重量部であるのが好ましく、さらには20〜175重量部、さらには30〜150重量部であるのが好ましい。金属化合物コロイドの配合割合が、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、200重量部を超えると、接着剤中における、ポリビニルアルコール系樹脂の割合が小さくなり、接着性の点から好ましくない。なお、金属化合物コロイドの配合割合は、特に制限されないが、有効にクニックを抑えるには、前記範囲の下限値とするのが好ましい。
水系接着剤である樹脂溶液の粘度は特に制限されないが、1〜50mPa・sの範囲のものが用いられる。偏光板の作成にあたって生じるクニックは、樹脂溶液の粘度が下がるに従って、クニックの発生も多くなる傾向があるが、本発明の水系接着剤によれば、1〜20mPa・sの範囲のような低粘度の範囲においても、クニックの発生を抑えることができ、樹脂溶液の粘度に拘らず、クニックの発生を抑えることができる。アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、一般的なポリビニルアルコール樹脂に比べて、重合度を高くすることができず、前記のような低粘度で用いられていたが、本発明では、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合にも、樹脂溶液の低粘度によって生じるクニックの発生を抑えられる。
水系接着剤である樹脂溶液の調製法は特に制限されない。通常は、ポリビニルアルコール系樹脂および架橋剤を混合し、適宜に濃度を調製したものに、金属化合物コロイドを配合することで、樹脂溶液が調製される。また、ポリビニルアルコール系樹脂として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いたり、架橋剤の配合量が多いような場合には、溶液の安定性を考慮して、ポリビニルアルコール系樹脂と金属化合物コロイドを混合した後に、架橋剤を、得られる樹脂溶液の使用時期等を考慮しながら、混合することができる。なお、水系接着剤である樹脂溶液の濃度は、樹脂溶液を調製した後に適宜に調整することもできる。
なお、水系接着剤には、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、可塑剤、レベリング剤、発泡抑制剤、帯電防止割、耐加水分解安定剤等の安定剤などの安定剤等を配合することもできる。また、本願における、金属化合物コロイド、金属化合物フィラーは非導電性の材料であるが、導電性物質の微粒子を含有することもできる。その他、添加剤の例としては、カルボニル化合物などで代表される電子線による硬化速度や感度を上がる増感剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤、エチレンオキシドで代表される接着促進剤、透明保護フィルムとの濡れ性を向上させる添加剤、アクリロキシ基化合物や炭化水素系(天然、合成樹脂)などがあげられる。
本発明の偏光板は、前記ポリビニルアルコール系偏光子と前記透明保護フィルムを前記水系接着剤により貼り合せることにより製造する。
接着剤の塗布は、前記偏光子、透明保護フィルムのいずれの側に行ってもよく、また両者に行ってもよい。塗布操作は特に制限されず、ロール法、噴霧法、浸漬法等の各種手段を採用できる。
前記偏光板は、偏光子の両面に透明保護フィルムを接着剤層を介して貼り合せることにより得られるが、接着剤層と、透明保護フィルムまたは偏光子との間には前述の下塗り層や易接着処理層等を設けても良い。
水系接着剤等により形成される接着剤層の厚みは10〜300nm程度である。接着剤層の厚みは、均一な面内厚みを得ることと、十分な接着力を得る点から、さらに好ましくは、10〜200nm、さらに好ましくは20〜150nmである。また、前述の通り、接着剤層の厚みは、水系接着剤に含有されている金属化合物コロイドの平均粒子径よりも大きくなるように設計することが好ましい。
接着剤層の厚みを調整する方法としては、特に制限されるものではないないが、例えば、接着剤溶液の固形分濃度や接着剤の塗布装置を調整する方法があげられる。このような接着剤層厚みの測定方法としては、特に制限されるものではないが、SEM(Scanning Electron Microscopy)や、TEM(Transmission Electron Microscopy)による断面観察測定が好ましく用いられる。接着剤の塗布操作は特に制限されず、ロール法、噴霧法、浸漬法等の各種手段を採用できる。
水系接着剤を塗布した後は、偏光子と透明保護フィルムをロールラミネーター等により貼り合わせる。前記接着剤の塗布は、透明保護フィルム、偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。
前記貼り合わせ後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着剤層を形成する。乾燥工程は、乾燥温度は70〜90℃の範囲で行い、かつ、乾燥工程は複数の乾燥ゾーンを有し、前記乾燥ゾーンの乾燥温度は、第1乾燥ゾーンから最終乾燥ゾーンになるに従って、乾燥温度が高くなるように設定されている。乾燥温度が前記範囲外の温度範囲を有する場合には、複数の乾燥ゾーンの乾燥温度を第1乾燥ゾーンから最終乾燥ゾーンになるに従って、乾燥温度が高くなるように設定したとしても、得られる偏光板の光学特性(偏光度等)が十分ではない。また、乾燥工程は複数の乾燥ゾーンを有する。乾燥ゾーンの数は、2〜15ゾーン程度であるのが好ましく、2〜10ゾーンであるのがより好ましい。
また、前記乾燥ゾーンの乾燥温度は、第1乾燥ゾーンから最終乾燥ゾーンになるに従って、乾燥温度が高くなるように設定する。各乾燥ゾーンの乾燥温度は、70〜90℃の範囲内であればよいが、第1乾燥ゾーンの温度は、「蒸し焼」状態の回避の点から、70〜80℃の範囲であることが好ましい。また、各乾燥ゾーンは、徐々に温度を高くするが、各乾燥ゾーン間の温度差が、0.5〜10℃、さらには1〜8℃、さらには1〜7℃の範囲になるように設定するのが好ましい。各乾燥ゾーン間の温度差は、同じであってもよく、異なっていてもよく、また、第1乾燥ゾーンから最終乾燥ゾーンになるに従って、各乾燥ゾーン間の温度差が小さくなるように、または大きくなるように設定することもできるが、高温度かつ高湿度での「蒸し焼」状態の回避の点から、第1乾燥ゾーンから最終乾燥ゾーンになるに従って、各乾燥ゾーン間の温度差が小さくなるように設定するのが好ましい。
乾燥工程における乾燥時間は、接着剤層を形成できるように、乾燥が十分に完了する時間が適宜に設定されるが、各乾燥ゾーンの合計の乾燥時間が、10分間以上になるように、さらには10分間〜40分間、さらには10分間〜20分間、になるように設置するのが好ましい。また、各乾燥ゾーンの乾燥時間は、0.1分間〜10分間、さらには0.2分間〜5分間になるように設置するのが好ましい。また、各乾燥ゾーンの乾燥時間は、同じであってもよく、異なっていてもよく、また、第1乾燥ゾーンから最終乾燥ゾーンになるに従って、各乾燥ゾーンの乾燥時間が短くなるように、または長くなるように設定することもできる。第1乾燥ゾーンは、一般的に、予備乾燥ゾーンとして機能させて、第2乾燥ゾーン以降の乾燥時間よりも短く設定するのが好ましい。第1乾燥ゾーンの乾燥時間は5秒間〜30秒間、さらには5〜25秒間、さらには5秒間〜20秒間になるように設置するのが好ましい。一方、第2乾燥ゾーン以降の乾燥時間は、1分間〜10分間、さらには1分間〜7分間、さらには1分間〜5分間になるように設置するのが好ましい。また、前記製造方法を連続ラインで行う場合、ライン速度は、各乾燥ゾーンの乾燥温度を考慮して設定されるが、5〜40m/min、さらには5〜20m/min、さらには5〜10m/minである。
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行なうことができる。
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
また、偏光板は上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
偏光板や光学フィルムの片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行ないうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗布方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上または光学フィルム上に移着する方式などがあげられる。
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
なお本発明において、上記した偏光板を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学フィルム等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行ないうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。