JP2009077729A - 低酸素誘導因子−1および使用方法 - Google Patents

低酸素誘導因子−1および使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低酸素誘導因子1(HIF-1)の精製およびキャラクタリゼーションの提供。
【解決手段】HIF-1は、HIF-1αおよびHIF-1βのサブユニットから成る。精製されたHIF-1αポリペプチド、そのアミノ酸配列、およびヌクレオチド配列、HIF-1βと二量体を形成して非機能性HIF-1複合体を生成するHIF-1αについて、また、HIF−1に対する抗体ならびに、低酸素関連疾患の防止および治療の方法。
【選択図】なし

Description

本発明の一部分は、連邦政府からの助成金(PHS承認RO1-DK39869)を使用して行われた。従って、政府は、本発明に対する所定の権利を有する。
本発明は、低酸素関連タンパク質に関し、特に、低酸素状態により誘導される新規なDNA結合タンパク質に関する。
哺乳動物は、ATP形成時にO2が電子受容体として働く酸化的リン酸化などの必須の代謝過程のために酸素分子(O2)を必要とする。低酸素状態(O2の必要量が供給量を上回る状態)により誘発される全身的、局所的、および細胞内ホメオスタシス応答としては、貧血の人または高地に住む人に見られる赤血球形成(非特許文献1);虚血性心筋における血管新生(非特許文献2);および低O2圧下で培養される細胞における解糖(非特許文献3)が挙げられる。これらの適応応答により、O2送達量の増大またはO2を必要としない代謝経路の活性化が起こる。こうした応答に関与する低酸素誘導遺伝子産物としては、エリトロポイエチン(EPO)(非特許文献4に総説が記載されている);血管内皮成長因子(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7);および解糖酵素(非特許文献8;非特許文献9)が挙げられる。
低酸素状態に対する遺伝子的応答を仲介する分子機構に関する研究が、赤血球形成の制御つまり血液O2運搬能の制御を行う成長因子をコードするEPO遺伝子に対して広範に行われてきた(Jelkmann (1992)上記; Semenza (1994)上記)。低酸素状態に対応した転写の活性化に必要なシス作用性DNA配列は、EPO 3'末端領域中で同定され、エンハンサーに結合するトランス作用性因子である低酸素誘導因子1(HIF-1)は、EPO転写の生理的調節物質としての判定条件を満たした:EPO発現のインデューサー(1%O2、塩化コバルト[CoCl2]、およびデスフェリオキサミン[DFX])もまたHIF-1DNA結合活性を誘発し、類似の動態を示した;EPO発現の抑制物質(アクチノマイシンD、シクロヘキシミド、および2-アミノプリン)はHIF-1活性の誘発を阻害した;更に、HIF-1結合を形成しないEPO 3'末端領域の突然変異もまたエンハンサー機能を消失させた(Semenza (1994)上記)。これらの結果もまた、O2圧がヘムタンパク質によって検知されるという仮説(非特許文献10)、ならびに転写、翻訳、およびタンパク質リン酸化の開始に必要なシグナル導入経路が低酸素細胞中におけるHIF-1のDNA結合活性やEPO転写の誘発に関与するという仮説(Semenza (1994)上記)を支持する。
EPO発現は細胞タイプ特異性を示すが、多くの哺乳類細胞系統において、1%O2、CoCl2、およびDFXによるHIF-1活性の誘発が検出され(非特許文献11)、更に、EPOエンハンサーは、非EPO産生細胞中に移入されたリポーター遺伝子の低酸素誘発転写を誘導した(Wang & Semenza (1993a)上記;非特許文献12)。いくつかの解糖酵素をコードするRNAは、EPO産生Hep3B細胞またはEPO非産生Hela細胞中において、1%O2、CoCl2、およびDFXにより誘導されたが、HIF-1結合部位を含有する解糖遺伝子配列は、トランスフェクションアッセイにおいて低酸素誘発転写を仲介した(Firthら(1994)上記)。これらの実験は、低酸素状態に対するホメオスタシス応答を活性化するHIF-1の役割を支持する。
Jelkmann (1992) Physiol. Rev. 72:449-489) Whiteら(1992) Circ. Res. 71:1490-1500 Wolfleら(1983) Eur. J. Biochem. 135:405-412 Semenza (1994) Hematol. Oncol. Clinics N. Amer. 8:863-884 Shweikiら(1992) Nature 359:843-845 Banaiら(1994) Cardiovasc. Res. 28:1176-1179 Goldberg & Schneider (1994) J. Biol. Chem. 269:4355-4359 Firthら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:6496-6500 Semenzaら(1994) J. Bio. Che. 269:23757-23663 Goldbergら(1988) Science 242:1412-1415 Wang & Semenza (1993a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:4304-4308 Mazwellら(1993) Proc. Ntl. Acad. Sci. USA 90:2423-2427
本発明は、実質的に精製されたDNA結合タンパク質である低酸素誘導因子-1(HIF-1)に関するものであり、この因子は、構造遺伝子のプロモーター領域がHIF-1結合部位を含有する場合に構造遺伝子発現を活性化することを特徴とする。こうした構造遺伝子としては、例えば、エリトロポイエチン(EPO)、血管内皮成長因子(V-EGF)、および解糖遺伝子が挙げられる。HIF-1は、2つのサブユニット(すなわちHIF-1αおよびイソ型のHIF-1β)から構成されている。
本発明は、実質的に精製されたHIF-1αポリペプチドおよびHIF-1αをコードするヌクレオチド配列に関する。
本発明は、治療上有効量のHIF-1タンパク質を投与することによって、低酸素状態および再灌流に起因した組織障害などの低酸素関連疾患を防止および治療する方法に関する。また、本発明には、HIF-1をコードするヌクレオチド配列を細胞中に導入する遺伝子治療が含まれる。本発明はまた、治療上有効量のHIF-1またはHIF-1をコードするヌクレオチド配列と混合された医薬品として許容しうるキャリヤーを含んでなる医薬用組成物を提供する。
本発明は更に、in vivoにおいてHIF-1の機能を不活性化する新規なHIF-1α変種ポリペプチドを提供する。本発明は、本発明の有効量のHIF-1α変種を投与することによって、HIF-1の機能的不活性化に起因したHIF-1媒介疾患または容態を治療する方法を提供する。
HIF-1結合モチーフを有する構造遺伝子の調節領域(好ましくは、エンハンサー領域)にある領域と結合するDNA結合タンパク質であることを特徴とする実質的に純粋な低酸素誘導因子-1(HIF-1)を提供する。HIF-1により活性化できる構造遺伝子に関与するものとしては、エリトロポイエチン(EPO)、血管内皮成長因子(VEGF)、および低酸素状態に曝露された細胞における解糖遺伝子転写物が挙げられる。精製されたHIF-1の分析により、HIF-1がHIF-1αおよびイソ型のHIF-1βのサブユニットから成ることが示される。HIF-1形成時に互いに会合しうるドメイン含まれるほか、HIF-1のαサブユニットおよびβサブユニットにはDNA結合ドメインが含まれる。αサブユニットはHIF-1中にユニークに存在するが、βサブユニット(ARNT)は少なくとも2つの他の転写因子の成分である。
本発明は、SDS-PAGEにより測定した場合の分子量が120dDaであり、配列番号2(図10)のアミノ酸配列を有し、かつHIF-1βと二量化を起こしてHIF-1を形成することを特徴とする実質的に純粋な低酸素誘導因子-α(HIF-1α)を提供する。「実質的に純粋」という用語は、本明細書中で使用する場合、他のタンパク質、脂質、炭水化物、またはHIF-1αが自然に会合を起こす他の物質を実質的に含まないHIF-1αを指す。当業者は、タンパク質精製の標準的な技術を使用してHIF-1αを精製することができる。実質的に純粋なポリペプチドは、非還元性ポリアクリルアミドゲル上に単一のバンドを生成する。HIF-1αポリペプチドの純度は、アミノ末端アミノ酸配列分析により測定することもできる。HIF-1αタンパク質にはポリペプチドの官能性断片が含まれるが、ただし、HIF-1αの活性(例えば、HIF-1βと結合する能力)が残存している場合に限られる。HIF-1αの生物学的活性を有するより小さなペプチドも本発明に含まれる。
本発明は、HIF-1αポリペプチド配列番号1(図10)をコードするヌクレオチド配列を提供する。これらのヌクレオチド配列には、HIF-1αをコードするDNA、cDNA、およびRNAが含まれる。また、HIF-1αの全部または一部分をコードするヌクレオチドはすべて本発明に含まれるものとする。例えば、HIF-1αヌクレオチド配列に位置指定突然変異誘発を起こしてもよい。また、HIF-1αのヌクレオチド配列にはアンチセンス配列も含まれる。本発明のヌクレオチド配列には、遺伝暗号の結果が縮重する配列が含まれる。縮重ヌクレオチド配列は、該ヌクレオチド配列によりコードされるHIF-1αポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に変化しない限り、本発明に含まれる。
特に本発明で開示されるものとしては、ヒトHIF-1αをコードするDNA配列が挙げられる。この配列には、826個のアミノ酸の長さを有するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームが含まれる。図10のヌクレオチド位置29〜31に示されているヒトHIF-1α開始メチオニンコドンは、ヌクレオチド2〜4にあるフレーム内終止コドンに続く最初のATGコドンである。好ましくは、ヒトHIF-1αアミノ酸配列は、配列番号2である。
HIF-1αをコードするヌクレオチド配列には、配列番号1、ならびに配列番号1に相補的な核酸配列が含まれる。相補的配列がアンチセンスヌクレオチドを含んでいてもよい。配列がRNAの場合は、配列番号2のデオキシヌクレオチドA、G、C、およびTを、それぞれリボヌクレオチドA、G、C、およびUと置き換える。本発明にはまた、配列番号2のポリペプチドをコードするDNAまたはRNAと生理学的条件下で選択的にハイブリッドを形成するのに十分な長さである少なくとも15塩基を含む先に規定した核酸配列の断片が含まれる。具体的には、断片は、HIF-1αをコードするDNAまたはRNAとストリンジェント条件下でハイブリッドを形成する必要がある。
HIF-1αアミノ酸配列に多少の変更を加えても、本明細書中に記載のHIF-1αポリペプチドと比較して実質的に同等な活性を有するタンパク質を生じる場合がある。こうしたタンパク質には、「本質的に配列番号2のアミノ酸配列を有する」という用語により規定されるタンパク質が含まれる。こうした変更は位置指定突然変異誘発などのように意図的なものであってもよいし、偶然的なものてあってもよい。こうした変更により生成するポリペプチドはすべて、HIF-1αの生物学的活性が残存するかぎり本発明に含まれる。更に、1つ以上のアミノ酸を除去することにより、生物学的活性の有意な変化を起こさないように生成分子の構造を変更することもできる。こうして広範な利用度を有するより小さな活性分子の開発が可能となる。例えば、HIF-1αが生物学的活性を呈するうえで必要としないアミノ末端またはカルボキシ末端のアミノ酸を除去することができる。
本発明のヌクレオチド配列によりコードされる本発明のHIF-1αポリペプチドには、開示されている配列(配列番号2)およびその保存変種が含まれる。「保存変種」という用語は、本明細書中で使用する場合、アミノ酸残基を他の生物学的に類似の残基で置き換えることを意味する。保存変種の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシン、もしくはメチオニンなどの1つの疎水性残基と他の残基との置換、または1つの極性残基と他の残基との置換(例えば、リジンをアルギニンに、アスパラギン酸をグルタミン酸に、あるいはアスパラギンをグルタミンに置き換える等)が挙げられる。「保存変種」という用語にはまた、無置換の母核アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することが含まれるが、ただし、置換されたポリペプチドに対して生じる抗体もまた、無置換のポリペプチドと免疫反応を起こすものでなけばならない。
本発明のDNA配列は、種々の方法によって得ることができる。例えば、当該技術分野で公知のハイブリダイゼーション法を使用してDNAを単離することができる。これらの方法には、1)ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーと、プローブとのハイブリダイゼーションによる相同的ヌクレオチド配列の検出、2)対象のDNA配列にアニールできるプライマーを使用した、ゲノムDNAまたはcDNA上のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および3)発現ライブラリーの抗体スクリーニングによる共通構造特性を有するクローン化DNA断片の検出が含まれるが、これらに限定されるものではない。
本発明のHIF-1αヌクレオチド配列は、好ましくは哺乳類組織から、最も好ましくはヒトから誘導される。核酸ハイブリダイゼーションに基づくスクリーニング法により、任意の組織から任意の遺伝子配列を単離することができるが、それは適切なプローブが得られる場合に限られる。対象となるタンパク質をコードする配列の一部分に対応するオリゴヌクレオチドプローブは、化学的に合成することができる。このためには、アミノ酸配列の短いオリゴペプチド伸張体が既知である必要がある。タンパク質をコードするDNA配列は遺伝暗号から誘導することができるが、暗号の縮重を考慮する必要がある。配列が縮重している場合、混合付加反応を行うことができる。これには変性二本鎖DNAのヘテロ混合物が含まれる。こうしたスクリーニングのために、一本鎖DNAまたは変性二本鎖DNAのいずれかを用いてハイブリダイゼーションを行うことが好ましい。対象のポリペプチドに関連するmRNA配列の量が極端に少ない供給源から誘導されるcDNAクローンの検出には、ハイブリダイゼーションが特に有用である。言い換えると、非特異的な結合を回避するようにしたストリンジェントハイブリダイゼーション条件を使用すれば、例えば、標的DNAとその完全な補体である混合物中の単一プローブとのハイブリッドを形成することによって、特異的なcDNAクローンをオートラジオグラフィーで可視化することが可能である(Sambrookら(1989) Molecular Cloneing: A Laboratory Manual, 2nd Ed.; Cold String Harbor Laboratory Press, Plainview. NY)。
HIF-1αをコードする特異的DNA配列の開発は、1)ゲノムDNAからの二本鎖DNA配列の単離、2)DNA配列の化学的製造による対象のポリペプチドに必要なコドンの提供、および3)真核供与細胞から単離されたmRNAの逆転写による二本鎖DNA配列のin vitro合成によって行うこともできる。後者の場合、mRNAの二本鎖DNA補体が実際に形成され、一般的にはcDNAと呼ばれている。組換え技術に使用される特異的DNA配列を開発するための3つの上述の方法のうち、ゲノムDNAを単離する方法が最も一般的である。この方法は、特に、イントロンの存在に起因した哺乳類ポリペプチドの微生物発現が望まれる場合に使用されるものである。
所望のポリペプチド産物のアミノ酸残基の全配列が既知の場合、DNA配列の合成には、しばしば合成方法に選択の余地がある。所望のポリペプチドのアミノ酸残基の全配列が未知の場合、DNA配列の直接的な合成は不可能であり、利用できる方法はcDNA配列を合成する方法である。対象のcDNA配列を単離するための標準的な手順において、対象の遺伝子を高レベルに発現する供与細胞中に豊富に存在するmRNAの逆転写により誘導されるプラスミドおよびファージ担持cDNAライブラリーの作製が行われる。ポリメラーゼ連鎖反応と併用する場合、わずかな発現産物ですらクローン化できる。ポリペプチドのアミノ酸配列のかなりの部分が既知の場合には、標的cDNA中に存在すると推測される配列を複製する標識化された一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAプローブ配列を生成させて、DNA/RNAハイブリダイゼーション法で利用してもよい。この方法は、変性させて一本鎖型に変換されたcDNAのクローン化コピーに関して行われるものである(Jayら(1983) Nucl. Acid Res., 11:2325)。
ラムダgt11などのcDNA発現ライブラリーは、HIF-1αに特異的な抗体を用いることによって、少なくとも1つのエピトープを有するHIF-1αペプチドの間接的なスクリーニングに利用できる。こうした抗体は、ポリクロナール的またはモノクロナール的のいずれで誘導されたものであってもよく、HIF-1α cDNAの存在を示唆する発現産物の検出に利用できる。
HIF-1αをコードするDNA配列は、好適な宿主細胞へDNAを移入することによってin vitroで発現させることができる。「宿主細胞」とは、ベクターが繁殖でき、かつそのDNAが発現できる細胞を指す。この用語にはまた、対象宿主細胞の任意の後代が含まれる。複製の際に突然変異が起こる可能性があるので、すべての後代が親細胞と同じである必要はないと考えられる。しかしながら、「宿主細胞」という用語を使用する場合、こうした後代が含まれる。安定な移入(外来DNAが宿主中に常に保持されていることを意味する)を行う方法は、当該技術分野で公知である。
本発明において、HIF-1αヌクレオチド配列を、組換え発現ベクター中に挿入してもよい。「組換え発現ベクター」という用語は、HIF-1α遺伝子配列の挿入すなわち組込によって処理されたプラスミド、ウイルス、または当該技術分野で公知の他の担体を意味する。こうした発現ベクターには、宿主中での挿入遺伝子配列の効率的な転写を促進するプロモーター配列が含まれる。発現ベクターは、典型的には、複製起点、プロモーター、ならびに形質転換された細胞の表現型選択を可能にする特異的遺伝子を含有する。本発明に使用するうえで好適なベクターとしては、細菌中で発現させるためのT7を基剤とする発現ベクター(Rosenbergら(1987) Gene 56:125)、哺乳類細胞中で発現させるためのpMSXND発現ベクター(Lee and Nathans (1988) J. Biol. Chem. 263:3521)、および昆虫細胞中で発現させるためのバキュロウイルス誘導ベクターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。DNAセグメントは、プロモーター(例えば、T7プロモーター、メタロチオネインIプロモーター、またはポリヘドリンプロモーター)などの調節要素に操作可能に連結されたベクター中に存在させることができる。
HIF-1αをコードするDNA配列は、原核生物または真核生物のいずれにおいても発現させることができる。宿主には、微生物、酵母菌、昆虫、および哺乳動物の組織が含まれる。原核生物において、真核生物またはウイルスの配列を有するDNA配列を発現させる方法は、当該技術分野で周知である。宿主における発現および複製が可能な生物学的機能を有するウイルスおよびプラスミドDNAベクターは、当該技術分野で公知である。こうしたベクターを使用して、本発明のDNA配列の取込みが行われる。
組換えDNAを用いた宿主細胞の形質転換は、当業者に周知の従来技術により行うことができる。宿主がE. coliなどの原核生物である場合、DNA取込が可能なコンピテント細胞は、指数増殖期の後で収穫された細胞を、収穫後、当該技術分野で周知の手順を利用してCaCl2法で処理することにより調製することができる。この他、MgCl2またはRbClを使用することも可能である。必要に応じて、宿主細胞のプロトプラスト形成後に、形質転換を行うこともできる。
宿主が真核生物の場合、リン酸カルシウム共沈法、マイクロインジュクションなどの従来型の機械的方法、電気穿孔法、リポソーム中に包埋されたプラスミドを挿入する方法、またはウイルスベクターを利用する方法などのDNA移入法が利用できる。本発明のHIF-1αをコードしたDNA配列および選択可能な表現型をコードした外来DNA分子(例えば、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子)を用いて、真核細胞を同時形質転換することもできる。もう1つの方法は、シミアンウイルス40(SV40)やウシパピローマウイルスなどの真核ウイルスベクターを使用して、真核細胞に一時的に感染させ(すなわち、真核細胞の形質転換を行って)、タンパク質を発現させる方法である(例えば、Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman ed., 1982を参照されたい)。
本発明により提供される微生物発現ポリペプチドまたはその断片の単離および精製は、例えば、分取クロマトグラフィー分離や免疫学的分離(モノクロナール抗体またはポリクロナール抗体を使用する)などの従来の手段により行うことができる。
本発明のHIF-1αポリペプチドを使用して、HIF-1αポリペプチドのエピトープと交差反応するかまたは該エピトープと結合する抗体を生成することができる。こうした抗体を、例えば、標準的なアフィニティー精製技術に利用すれば、HIF-1αまたはHIF-1を単離することができる。本質的に、異なるエピトープ特異性を有するプールモノクロナール抗体を含む抗体、および種々のモノクロナール抗体製剤が提供される。モノクロナール抗体は、当該技術分野で周知の方法により、タンパク質の断片を含有する抗原から調製される(Kohler,ら(1975) Nature 256:495; Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, et al., ed., 1989)。
本発明の目的のために、HIF-1αに特異的な抗体または核酸プローブを使用して、生体液または生体組織中においてHIF-1αポリペプチド配列(抗体を使用する)またはヌクレオチド配列(核酸プローブを使用する)を検出することができる。HIF-1αと反応する抗体または核酸プローブは、HIF-1αとの結合を検出できる化合物で標識化することが好ましい。検出可能な量の抗原またはポリペプチドを含有する任意の試料を使用することができる。種々の検出可能な標識およびアッセイ形態が当業者には周知であり、これらを利用すれば余計な実験をしないでも済む。
細胞成分が核酸の場合、核酸を増幅してからHIF-1α特異性プローブと結合させることが必要なこともある。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用することが好ましいが、リガーゼ連鎖反応(LCR)、連結活性化転写(LAT)、および核酸配列型増幅(NASBA)などの他の核酸増幅法を利用してもよい。
本発明は、HIF-1βと二量化を起こして機能的に不活性なHIF-1複合体を形成することを特徴とするHIF-1α変種ポリペプチドを提供する。ただし、この複合体は、調節領域中のHIF-1結合モチーフと十分に結合することができず、調節領域の制御下で構造遺伝子の効果的な発現を行うことはできない。本発明は更に、HIF-1α変種をコードするヌクレオチドを提供する。特定の1実施態様において、配列番号3のヌクレオチド配列を有する、HIF-1α変種をコードするポリヌクレオチドが提供される。野生型アミノ酸を異なるアミノ酸と置換するかまたは野生型配列の一部を除去することによって、HIF-1α変種ポリペプチド(配列番号4)が得られる。HIF-1α変種アミノ酸配列の変更は本発明に含まれるが、得られるポリペプチドがHIF-1βに対して二量化を起こして機能的に不活性なHIF-1複合体を形成する場合に限られる。機能的に不活性とは、HIF-1複合体または二量体がもはや十分にDNAに結合しないという意味である。本発明の好ましい実施態様において、遺伝子工学の技術を利用して、HIF-1とDNAとの結合に関与するアミノ酸の1つ以上を置き換えた特異的HIF-1α変種が提供される。
HIF-1αの特異的ドミナントネガティブ変種型は、HIF-1αΔNBおよびHIF-1αΔNBΔAB(実施例10を参照されたい)である。これらの2つの型は、共通して、DNA結合に必要な基本ドメインを構成するアミノ酸が除去されている(HIF-1αアミノ酸残基17〜30;図10を参照されたい)。基本ドメインの変更によりDNA結合活性が消失してはいるが、HIF-1αがHIF-1βとの二量体形成能を保持しているかぎり、ドミナントネガティブ変種として機能する。基本ドメインをコードするヌクレオチド配列のこうした変更には、DNA結合に必要なドメイン内の必須の基本アミノ酸残基の除去または置換が含まれる。タンパク質の更なる修飾を行って、in vivoにおけるドミナントネガティブ作用を促進してもよい。例えば、HIF-1αΔNBΔABは、HIF-1αΔNBと同じように基本ドメイン中の突然変異を含むが、更に、HIF-1αΔNBΔABは、カルボキシ末端で切断され、in vivoにおけるタンパク質の安定性を向上させている。
本発明のHIF-1α変種分子をコードするヌクレオチド配列は、適切な発現ベクター中に挿入して、細胞中で発現させることができる。配列番号4の特異的HIF-1α変種の改良型を作製して、発現させた産物の安定性、産生、精製、または収率を向上させることができる。例えば、HIF-1α変種と異種タンパク質とを含有する融合タンパク質または開裂可能な融合タンパク質の発現を行うことが可能である。こうした融合タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーにより(例えば、異種タンパク質に特異的なカラム上に不動化させることにより)容易に単離することができる。HIF-1α部分と異種タンパク質との間に開裂可能な部位を導入する場合、適切な酵素または開裂部位を切断する薬剤を用いて処理することにより、HIF-1αポリペプチドをクロマトグラフィーカラムから放出させることができる(Boothら(1988) Immunol. Lett. 19:65-708; Gardellaら(1990) J. Biol. Chem. 265:15854-15859)。
本発明は、HIF-1遺伝子発現または活性の調節により改善または軽減されるHIF-1仲介疾患(例えば、低酸素仲介組織障害)の治療方法を提供する。「調節」という用語には、必要に応じて、HIF-1の発現を抑制するか、または適切であれば、HIF-1発現を促進することが含まれる。HIF-1の発現または発現の促進が望まれる場合、その治療方法には、HIF-1の直接的(タンパク質)投与または間接的(ヌクレオチド)投与が含まれる。
本発明の方法によれば、実質的に精製されたHIF-1またはHIF-1をコードするヌクレオチド配列が、HIF-1仲介疾患の治療または防止のために患者(ヒト)に投与される。適切な患者(ヒト)は、HIF-1仲介疾患または低酸素関連疾患、例えば、アテローム硬化性冠状動脈疾患または大脳動脈疾患、を患った被検者である。患者をヌクレオチドを用いて治療する場合、このヌクレオチドとして、HIF-1αをコードするヌクレオチド配列およびHIF-1βをコードするヌクレオチド配列が利用できる(例えば、Rayesら、Science, 256:1193-1195, 1992; およびHoffmanら、Science, 252:954-958)。
HIF-1α発現の抑制(例えば、VEGF誘発血管形成により仲介される腫瘍増殖の抑制など)が望まれる場合、翻訳レベルでHIF-1発現を阻害する抑制的核酸配列を使用することができる。この方法では、例えば、アンチセンス核酸、リボザイム、またはトリプレックス薬剤を使用し、トリプレックス薬剤を有するアンチセンス核酸またはDNAを用いてmRNAをマスクするか、またはリボザイムによりヌクレオチド配列を開裂することによって、特異的HIF-1α mRNAまたはDNAの転写または翻訳を妨害する。
アンチセンス核酸とは、特異的mRNA分子の少なくとも一部分と相補的であるDNA分子またはRNA分子を指す(Weintraub (1990) Scientific American 262:40)。細胞中において、アンチセンス核酸は、対応するmRNAとハイブリッドを形成し、二本鎖分子となる。細胞は二本鎖のmRNAを翻訳しないので、アンチセンス核酸は、mRNAの翻訳を妨害することになる。約15個のヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが好ましい。なぜなら、こうしたオリゴマーは合成が容易なうえに、標的HIF-1α産生細胞に導入されたときに大きな分子よりも問題を生じにくいからである。
オリゴヌクレオチドを使用して転写を停止することは、トリプレックス法と呼ばれている。こう呼ばれるのは、オリゴマーが二重螺旋DNAのまわりに巻き付いて、三本鎖のヘリックスを形成するからである。従って、所定の遺伝子上の特異な部位を認識するように、これらのトリプレックス化合物をデザインすることができる(Maher,ら(1991) Antisense Res. and Dev. 1:227; Helene (1991) Anticancer Drug Design, 6:569)。
リボザイムとは、DNA制限エンドヌクレアーゼと同じ様な方法で他の一本鎖RNAを特異的に開裂させる能力を有するRNA分子を指す。これらのRNAをコードするヌクレオチド配列に改良を加えれば、RNA分子中の特異的ヌクレオチド配列を認識し、これを開裂させる分子を開発することが可能となる(Cech (1988) J. Amer. Med. Assn. 260:3030)。この方法の主な利点は、配列特異性があることにより特定の配列を有するmRNAだけが不活性化されることである。
リボザイムには2つの基本的なタイプ、すわなち、テトラヒメナタイプ(Hasselhoff (1988) Nature 334:585)および「ハンマーヘッド」タイプがある。テトラヒメナタイプのリボザイムは、4個の塩基の長さの配列を認識し、一方、「ハンマーヘッド」タイプのリボザイムは、11個〜18個の塩基の長さの塩基配列を認識する。認識配列が長くなるほど、その配列が標的mRNA種中で排他的に存在する可能性が大きくなる。従って、特異的なmRNA種を不活性化するためには、ハンマーヘッドタイプのリボザイムの方がテトラヒメナタイプのリボザイムよりも好ましく、18個の塩基の認識配列の方がそれよりも短い認識配列よりも好ましい。
HIF-1機能の抑制はまた、HIF-1α変種ポリペプチド(ドミナントネガティブ変種型)またはHIF-1α変種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を投与することにより行うこともできる。例えば、HIF-1αの発現により促進される疾患(例えば、VEGF仲介血管形成に対する二次的腫瘍増殖など)の場合、腫瘍に十分な養分を供給するために必要な血管新生を抑制することにより、腫瘍を「餓死」させることが望ましい。HIF-1α変種ポリペプチドまたはこうしたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を投与することにより、HIF-1βと結合してHIF-1二量体を形成することに関して、この変種が野生型HIF-1αと競合するようになり、従って、HIF-1 DNA結合モチーフに効率的に結合できる細胞中のHIF-1二量体の濃度が低下する。
本発明はまた、HIF-1ポリペプチドにより改善または軽減される低酸素関連疾患の治療のための遺伝子療法を提供する。この療法では、HIF-1αヌクレオチドを、単独またはHIF-1βヌクレオチドと併用して、低酸素状態に曝露された細胞中に導入することにより、その治療効果が得られる。単独またはHIF-1βと併用したHIF-1αの送達は、キメラウイルスなどの組換え発現ベクターまたはコロイド分散系を使用して行うことができる。治療のために配列を送達するうえで特に好ましいのは、標的化リポソームの使用である。
本明細書中で教示されているような遺伝子療法に利用できる種々のウイルスベクターとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、または好ましくはレトロウイルスなどのRNAウイルスが挙げられる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスまたはトリレトロウイルスの誘導体である。単一外来遺伝子を挿入できるレトロウイルスとしては、例えば、Moloneyマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、Harveyマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺癌ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。被検者がヒトの場合、テナガザル白血病ウイルスなどのベクターを利用することが好ましい。多数の他のレトロウイルスベクターは複数の遺伝子に取入れることができる。これらのベクターはすべて、選択マーカー用遺伝子の移入または取込を行うことができる。その結果、形質導入された細胞の同定および発生が可能となる。対象のHIF-1α配列を、例えば、特定の標的細胞上の受容体に対するリガンドをコードするもう1つの遺伝子と共に、ウイルスベクター中に挿入することによって、ベクターは標的特異性をもつようになる。例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質を結合させることによって、レトロウイルスベクターに標的特異性をもたせることができる。好ましい標的化は、抗体を使用してレトロウイルスベクターを標的化することにより行われる。レトロウイルスゲノムに挿入するかまたはウイルスエンベロープに結合して、HIF-1αヌクレオチド配列を含有するレトロウイルスベクターの標的特異性送達を可能にする特異的ポリヌクレオチド配列について、当業者は分かるかまたは過度な実験をせずに容易に確認することができるであろう。
組換えレトロウイルスには欠陥があるので、感染性ベクター粒子を産生するための補助が必要である。例えば、LTR内の調節配列の制御下でレトロウイルスの構造遺伝子をすべてコードするプラスミドを含有するヘルパー細胞系統を使用することによって、こうした補助が得られる。これらのプラスミドには、パッケージング機構を働かせて、キャプシドに包むためのRNA転写物の認識を可能にするヌクレオチド配列が含まれていない。パッケージングシグナルが欠落したヘルパー細胞系統としては、例えば、Ψ2、PA317、およびPA12が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの細胞系統では、ゲノムがパッケージされないので、エンプティビリオンが産生される。パッケージングシグナルが無傷であるとともに対象の他の遺伝子により構造遺伝子が置き換えられている細胞へ、レトロウイルスベクターを導入する場合は、ベクターをパッケージしてベクタービリオンを産生することができる。
この他、レトロウイルス構造遺伝子gag、pol、およびevをコードするプラスミドを、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションを用いてNIH3T3細胞または他の組織培養細胞へ直接に移入することができる。この後で、対象の遺伝子を含有するベクタープラスミドをこれらの細胞へ移入する。こうして得られた細胞は、レトロウイルスベクターを培地へ放出する。
HIF-1αヌクレオチドに対するもう1つの標的化送達系は、コロイド分散系である。コロイド分散系としては、巨大分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビーズ、および脂質を基剤とする系(例えば、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、およびリポソーム)が挙げられる。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、in vitroおよびin vivoにおける送達担体として有用な人工膜ベシクルである。サイズが0.2μm〜4.0μmの範囲にある大きな単一ラメラベシクル(LW)は、大型巨大分子を含有する水性緩衝剤を実質的なパーセントでカプセル化できることが分かっている。RNA、DNA、および無傷ビリオンを水性の内部にカプセル化して、生物学的に活性な形態で細胞へ送達することができる(Fraley,ら(1981) Trends Biochem. Sci. 6:77)。哺乳類細胞のほかに、植物細胞、酵母菌細胞、および細菌細胞において、ポリヌクレオチドの送達のためにリポソームが使用されてきた。リポソームが有効な遺伝子移入担体であるためには、以下の特性が存在する必要がある:(1)生物学的活性を犠牲にせずに対象の遺伝子が高効率でカプセル化されること、(2)非標的細胞と比べて標的細胞への結合が優先的かつ実質的に行われること、(3)ベシクルの水性内容物が高い効率で標的細胞の細胞質へ送達されること、(4)遺伝情報が正確かつ効果的に発現されること(Mannino,ら(1988) Biotechniques 6:682)。
リポソームの組成物は、通常はリン脂質(特に、高相転移温度のリン脂質)の組合せであり、また通常はステロイド(特に、コレステロール)と併用される。他のリン脂質または他の脂質もまた使用可能である。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
リポソーム生成に有用な脂質としては、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドなどのホスファチジル化合物が挙げられる。特に有用な脂質はジアシルホスファチジルグリセロールであり、この場合には、脂質部分は14個〜18個の炭素原子、好ましくは、16個〜18個の炭素原子を有し、かつ飽和されている。代表的なリン脂質としては、卵のホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
リポソームの標的化は、解剖学的因子および機構的因子に基づいて分類することができる。解剖学的分類は、選択性のレベル(例えば、器官特異性、細胞特異性、およびオルガネラ特異性)に基づくものである。機構的標的化は、受動的かまたは能動的かに基づいて識別できる。受動的標的化では、洞様毛細血管を含有する器官中の細網内皮系(RES)の細胞へのリポソームの自然な分配傾向を利用する。一方、能動的標的化では、モノクロナール抗体、糖、糖脂質、もしくはタンパク質などの所定のリガンドへリポソームを結合させることによるか、またはリポソームの組成またはサイズを変化させて自然に起こる局在化部位以外のタイプの器官および細胞への標的化を行うことによりリボソームの改変を行う。
標的化送達系の表面は、種々の方法で改質することができる。リポソーム標的化送達系の場合、リポソームの脂質二重層中へ脂質基を取込んで、リポソーム二重層と共に標的リガンドを安定に保持することができる。種々の連結基を使用して、脂質鎖を標的リガンドに結合させることができる。
VEGF、GPO、および解糖酵素の合成を促進するHIF-1の生物学的活性のおかげで、本発明のポリペプチドまたはヌクレオチドを利用する種々の用途が存在する。こうした用途としては、低酸素関連組織障害およびHIF-1仲介疾患の治療が挙げられる。この他、HIF-1は、種々の遺伝子治療法に利用することができる。HIF-1を使用して、低酸素仲介組織障害の防止または修復を行うことができる。重要な用途としては、大脳動脈疾患および冠状動脈疾患の治療が挙げられる。
これとは逆に、抗HIF-1抗体、抗HIF-1α抗体、またはHIF-1αアンチセンスヌクレオチドのいずれかを用いてHIF-1作用を妨害すれば、HIF-1作用に起因する疾患(例えば、V-EGF促進腫瘍血管新生)を遅らせるかまたは軽減させることが可能である。HIF-1αヌクレオチドを送達するための上述の方法は、必要に応じてHIF-1発現および/または活性の特異的阻害を起こすためにHIF-1アンタゴニストの送達に完全に適用することが可能である。HIF-1アンタゴニストは、HIF-1抗体、HIF-1α抗体、HIF-1αアンチセンスヌクレオチド配列、またはHIF-1α変種のポリペプチドもしくはヌクレオチドであってもよい。
EPO産生Hep3B細胞および非EPO産生HeLa S3細胞からのHIF-1の単離および精製は、実施例1〜3に記載されている。HIF-1タンパク質は、DEAEイオン交換およびDNAアフィニティークロマトグラフィーにより11,250倍まで精製された。HIF-1の分析により、91kDa、93kDa、94kDa(HIF-1β)、および120kDa(HIF-1α)の分子量を有する4つのポリペプチドが明らかになった。グリセロール濃度勾配沈降分析により、HIF-1は、主としてヘテロ二量体として存在し、ヘテロ四量体として少し存在することが示唆される。
HIF-1αポリペプチドを単離し、配列を調べた。PCRによりcDNAを生成し、その配列を決定した。HIF-1αポリペプチドは、細胞のO2圧によって発現が制御されるPASドメインを含有する基本ヘリックス‐ループ‐ヘリックス(bHLH)ポリペプチドであることが特徴である(実施例4〜7)。
HIF-1による解糖酵素をコードする遺伝子の転写の誘発を調べた(実施例9)。この結果、細胞をHIF-1インデューサー(1%O2、CoCl2、DFX)に曝露することにより、解糖酵素であるアルドラーゼA(ALDA)、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK1)、およびピルビン酸キナーゼM(PKM)が誘導されることが分かった。これらの遺伝子はHIF-1結合部位を有し、HIF-1と特異的に結合することが示された。これらの結果は、細胞および組織の酸素のホメオスタシスの基礎となる低酸素状態に対する適応応答のメディエイターとしてのHIF-1の役割を支持する。
HIF-1αのドミナントネガティブ変種を生成したが、これはHIF-1がDNAに結合するために必要なタンパク質の基本ドメイン(アミノ酸17〜30)が欠落したものである。変種HIF-1αサブユニットは、HIF-1βと二量体を形成することができるが、得られるヘテロ二量体はDNAに結合できない。変種HIF-1αサブユニットを過剰発現する細胞中において、ほとんどのHIF-1βサブユニットは、非機能性ヘテロ二量体の形成に使用され、その結果、HIF-1が機能的に不活性化された。これらの結果から、HIF-1α変種は、in vivoにおいて、HIF-1活性を阻害するうえで有用であることが分かる。
以下の実施例は説明を目的とするものであり、本発明を制限するものではない。これらの実施例は利用可能な典型的な例であるが、当業者に公知の他の手順を代わりに使用してもよい。
実施例1 実験方法
下記のとおりヒトHIF-1を精製し、そのDNA結合活性の特徴を調べた。
細胞培養及び核抽出物の調製
ヒトHep3B及びHeLa細胞を維持し、1%O2及びCoCl2で処理し(Wang & Semenza(1993a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:4304-4308)、核抽出物を既報(Semenza & Wang(1992), Mol.Cell.Biol.12:5447-5454; Dignamら、(1983)Nucleic Acids Res.11:1474-1489)に従って調製した。HelaS3細胞はAmerican Type Culture Collectionから入手したもので5%(W/V)ウマ血清(Quality Biological, Gaithersburg, MD, USA)を添加したスピナー最小基本培地中での懸濁培養に適応させた。その細胞を8X105個/mlの密度となるまで増殖させ、2日ごとに新鮮な完全培地で希釈し、2X105個/mlを維持した。HIF-1のDNA結合活性を誘導するため、HeLaS3細胞を125μM CoCl2で37℃4時間処理した後、2,500 X gで10分間遠心して細胞を採取した。細胞ペレットを氷冷した食塩加リン酸緩衝液で2度洗い、2mM ジチオスレイトール(DTT)、0.4mM フェニルメチルスルホニルフルオリド及び1mM Na3VO4を添加した、充填細胞容積の5倍量の緩衝液A(10mM Tris-HCl(pH 7.6)、1.5mM MgCl2、10mM KCl)中に再懸濁した。氷上で10分間インキュベートした後、2500 X g、5分間遠心して細胞をペレットとし、充填細胞容積の2倍量の緩衝液A中に再懸濁し、ガラス製ダウンスホモゲナイザーでタイプB乳棒を20ストロークさせて細胞を溶解させた。核画分を10,000 X g, 10分間遠心してペレットとし充填核画分の3.5倍量の、2mM DTT, 0.4mMフェニルメチルスルホニルフルオリド及び1mM Na3VO4を添加した緩衝液C(0.42M KCl, 20mM Tris-HCl(pH7.6), 20%グリセロール, 1.5mM MgCl2)で再懸濁した。4℃で30分間攪拌して核タンパク質を抽出した。15,000 X gで30分間遠心した後、上清を緩衝液Z-100(25mM Tris-HCl(pH7.6), 0.2mM EDTA, 20%グリセロール, 2mM DTT, 0.4mMフェニルメチルスルホニルフルオリド, 1mM Na3VO4及び100mM KCl)に対して4℃で透析した。透析物を4℃, 100,000 X g, 60分間超遠心にかけたものを粗核抽出物とした。この核抽出物を少量ずつわけ液体窒素で凍結し、-80℃で保存した。タンパク濃度は市販のキット(Bio-Rad)で、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準品として用い、Bradford(1976)Anal. Biochem, 72:248-254の方法で行った。
ゲルシフトアッセイ
ゲルシフトアッセイは、結合反応を緩衝液Z-100中で行ったことを除き、既報(Semenza & Wang(1992) Mol.Cell.biol. 12:5447-5454,本明細書中に参照として特に組み込んでいる)に従い行った。部分精製及びアフィニティー精製したHIF-1標品のゲルシフトアッセイでは0.25mg/mlのBSA及び0.05% Nonidet P-40を結合反応液中に加えた。部分精製HIF-1画分の測定には非特異的競合剤である仔牛胸腺DNA(Sigma)を減量して用い、アフィニティー精製HIF-1画分の測定には仔牛胸腺DNAは用いなかった。競合剤を用いた実験では、プローブのDNAを添加する前に、非標識のオリゴヌクレオチドDNAをDEAE-Separoseカラム画分と氷上で5分間インキュベートした。
0, 5, 10, 25, 50, 75, 100, 250, 500あるいは1000μM CoCl2の存在下で37℃4時間培養したHeLa細胞から調製した核抽出物をW18プローブとインキュベートした。
メチル化妨害(阻害)分析
メチル化妨害分析は、結合反応液中にCoCl2処理HeLa細胞から調製した核抽出物を100μg用いたことを除いては既報(Wang & Smenza(1993b) J.Biol.Chem.268:21513-21518,本明細書中に参照として特に組み込んでいる)のとおり行った。
結果
HIF-1DNA結合活性を誘導するためのCoCl2至適濃度を求めるため、HeLa細胞をCoCl2で処理した。核抽出物を調製し、プローブとして野生型オリゴヌクレオチドW18(実施例2)を用いてゲルシフトアッセイで分析した。結果を図1に示す。CoCl2によるHIF-1DNA結合活性の誘導は用量依存性であった。核抽出物中のHIF-1活性は25μM CoCl2で検出され、250μMでピークに達した。しかし、250μMを超えるCoCl2濃度では顕著な細胞死が認められ、その結果として、核タンパク質の収率の減少がみられた。このため、これ以降の大規模核抽出物標品の調製には125μM CoCl2を選んだ。構成性(constitutive)のDNA結合活性、これは0-100μM CoCl2で処理された細胞中で比較的未変化の状態で残存しているW18プローブ配列と特異的に結合し、250μMを超えるCoCl2では減少したが、このことは、細胞に対する高CoCl2濃度の副作用を示唆している。非特異的DNA結合活性はこのゲルシフトアッセイではかろうじて検出されるに過ぎず、細胞のタイプ及び用いられた非特異的競合DNAの相対量によって変わる。
メチル化妨害分析は低酸素性Hep3B細胞から得たHIF-1が、CoCl2処理HeLa細胞から得たものと同じDNA結合性を有するか調べるために行った。図2に示すとおり、コードする鎖のG8又はG10のメチル化はHIF-1結合活性をそれぞれ消失又は大きく減弱させる(図2、左、レーン2)。G10のメチル化は構成性の因子の結合を部分的に妨害するのみであった(図2、左、レーン3及び4)。コードしない鎖に対してはG7又はG11のメチル化はHIF-1のプローブへの結合能をブロックした(図2B、右、レーン2)。G7のメチル化のみが構成性の因子の結合を妨害した(図2B、右、レーン3及び4)。どちらの鎖のDNAをメチル化した場合でも非特異的結合活性は影響を受けなかった(図2A、左、レーン5、及び図2B、右、レーン5)。これらの結果は、(i)HIF-1はDNAヘリックスの主グルーブを通ってコーディング鎖上のG8及びG10及び非コーディング鎖上のG7およびG11と密接に接触しており、(ii)HIF-1及び構成性のDNA結合因子はそれらのDNA結合部位との接触性によって区別しうる、ことを示している。
実施例2 HIF-1の生化学的精製
DNAアフィニティーカラムの調製
DNAアフィニティーカラムは多量体化した二重鎖オリゴヌクレオチドをCNBrで活性化させたSeparoseにカップリングさせることにより調製した(Kadonaga & Tijan(1986) Proc. Natl. Acad. Sci.USA 83:5889-5893)。野生型及び変異型カラムにはマルチマーとしたオリゴヌクレオチドW18(配列番号5)及びM18(配列番号6)(変異箇所を下線で示す)をそれぞれ含む。
W18: 5'-gatcGCCCTACGTGCTGTCTCA-3'
3'-CGGGATGCACGACAGAGTctag-5'
M18: 5'-gatcGCCCTAAAAGCTGTCTCA-3'
3'-CGGGATTTTCGACAGAGTctag-5'
同量の相補的オリゴヌクレオチドをアニーリングし、リン酸化し、連結させた。連結されたオリゴヌクレオチド(60-500 bp)はフェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させ、脱イオン水に再懸濁し、CNBr活性化Separose 4Bに製造者(Pharmacia Biotech Inc.)の説明書に従いカプルさせた。Separose 1mlあたり約50μgの連結二重鎖オリゴヌクレオチドがカプルされた。
HIF-1の精製
120LのCoCl2処理HeLaS3細胞(435ml, 3,040mg)から得られた粗核抽出物を氷上で融解させ、15,000 X g, 10分間遠心して澄明化した。抽出物を36mlのDEAE-Separose CL-6Bカラム(Pharmacia)で緩衝液Z-100中でKClの濃度を段階的に増加させて3つのバッチに分画した。活性のピークを示したフラクションをプールし緩衝液Z-100 に対して透析した。DEAE-Separoseカラムから得た透析物を、4.4 μg/mlの仔牛胸腺DNA(Sigma)と氷上で15分間インキュベートした。15,000 X g, 10分間遠心した後、上清(240ml, 2.3 mg/ml)を、連結されたW18オリゴヌクレオチドで調製した 6mlのDNAアフィニティーカラムにアプライした。HIF-1活性を持つフラクションをプールし、緩衝液Z-100に対して透析した。1回目のDNAアフィニティーカラムから得た透析物を、2.5μg/mlの仔牛胸腺DNAと混合し、氷上で15分間インキュベートした。遠心(上述と同様)した後、上清を1.5mlのM18DNA-Sepharoseカラムにアプライした。M18カラムの流出液を集め、再び第二の2ml W18カラムにアプライした。DNAアフィニティークロマトグラフィーに用いた緩衝液には全て0.05% Nonidet P-40及び5mM DTTが添加されている。アフィニティーカラムフラクション中のタンパク含量はSDS-ポリアクリルアミドゲルの銀染色又はニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell)のAmido Black(Sigma)染色で、タンパク質サンプルをスポットし既知量のタンパク質標準品(Bio-Rad)と比較して定量した。
低酸素処理したHep3B細胞からのHIF-1の精製のため、核抽出物(95mg)を上述のDEAE-Sepharose CL-6Bカラム4mlを用いて分画した。0.25M KClで溶出するフラクションを緩衝液Z-100に対して透析し、Sephacryl S-300ゲルろ過カラム(50ml, 1.5 X 30cm)にアプライした。HIF-1活性を有するフラクションをプールし、一重鎖仔牛胸腺DNAをCNBr活性化Sepharose 4Bにカプルさせて製した2mlの仔牛胸腺DNAカラム(0.8mg仔牛胸腺DNA/ml Sepharose)にアプライした。流出液を集め、仔牛胸腺DNA(2.2μg/ml)と10分間インキュベートした後、上述の0.4mlのW18カラムにアプライし、その後、緩衝液Z-100に対して透析した後、再度0.2mlのW18カラムにかけた。
SDS-PAGE及び銀染色
SDS-PAGEはLaemmli(1970) Nature 227:680-685に記載のとおり行った。ゲルは高分子量標準品又は染色済分子量マーカー(Bio-Rad)を用いてキャリブレートした。電気泳動は30mAで行った。銀染色は硝酸銀を用い既知(Switzerら、(1979) Anal. Biochem. 98:231-237)の方法で行った。HIF-1の分子量の推定は3.2%の架橋結合(アクリルアミド/ビスアクリルアミドを30:1の比で)を有するSDS-ポリアクリルアミドゲルに基づいて行った。
結果
低酸素性Hep3B細胞から得たHIF-1のDNA結合活性とCoCl2処理HeLa細胞から得たものとの区別は付けられないため(実施例1)、HIF-1の大規模精製の出発物質としては125μMCoCl2処理したHeLaS3細胞を用いた。HIF-1をDNAアフィニティークロマトグラフィーで精製するために構成性のDNA結合活性をまず最初にHIF-1から分離しなければならなかった。なぜならば、両者とも特異的にW18DNA配列に結合してしまうからである。各種のイオン交換樹脂及びゲルろ過マトリックスを検討した。HIF-1は緩衝液Z-100中のDEAE陰イオン交換樹脂上に残存するのに対し、構成性のDNA結合活性は流出液中に認められた。HIF-1DNA結合活性は緩衝液Z中250mM KClで溶出された。DEAEクロマトグラフィーは効果的に構成性のDNA結合活性を除去し、HIF-1を4倍精製する結果となった(図3A, レーン1及び2)。しかしながらこのステップはHIF-1タンパク質複合体を不安定化させるようであり、速移動型(faster migration form)のHIF-1とする(図3A, レーン2、2番目の矢印)が、この型はしばしば粗核抽出物標品にも認められる。速移動型は高い塩濃度では遅移動型(slower migration form)に転換するものと思われ、第1回目のDNAアフィニティークロマトグラフィー後には再びHIF-1の遅移動型が優勢となる(図3A, レーン10-12)。このことはDEAE-Separose カラムステップではHIF-1の構成成分は失われていないことを示唆している。HIF-1の両方の型のプローブ結合は、非標識のW18には競合し得たが(図3B, レーン2-4)、M18オリゴヌクレオチドとは競合し得なかった(図3B, レーン5-7)。それはM18は3つの塩基が置換されているため低酸素性を誘導する転写に介在するEPOエンハンサー能が欠けていたためである。
次いで、部分精製HIF-1フラクションを非特異的競合剤である仔牛胸腺DNAと、ゲルシフトアッセイでHIF-1DNA結合能検出に最適となる濃度でインキュベートし、W18DNAアフィニティーカラムにアプライした。HIF-1を含有する溶出フラクション(0.5M KCl,図3A, レーン10; 1M KCl, 図3A, レーン11)をプールし、緩衝液Z-100に対して透析した。仔牛胸腺DNA競合剤では除去し得ない非特異的DNA結合タンパク質を排除するため、透析物をM18DNAカラムにアプライした。流出液にHIF-1DNA結合活性が検出され、これを直接第二番目のW18カラムにアプライした。HIF-1活性は0.5M KClフラクションのみに検出された。W18で2回、M18で1回のカラムクロマトグラフィーで約2,800倍精製された。
大規模精製の最終結果は表1に要約されている。HeLa細胞120Lから約60μgの高度精製HIF-1が得られた。精製度の総計は11,250倍となり、出発時のHIF-1DNA結合活性の約22%が回収された。我々の目的はペプチドマッピングとタンパク質ミクロシークエンシング分析のためのHIF-1サブユニットの同定とHIF-1構成成分の単離である。精製ステップをさらに追加した場合にははるかに低い収率しか得られなかったため、我々はそれ以上HIF-1を均一になるまでの精製は行わなかった。M18カラム流出液からのアリコート(図4a, Load)、及び2回目のW18カラムの0.5M KCl溶出フラクション及び0.25M KCl洗液を6% SDS-PAGE及び銀染色で分析した。0.5M KClフラクションには90-120 kDaの4つのポリペプチドが非常に豊富であり、そのフラクションは、0.25M KClフラクション(HIF-1活性は非常に低い)と比較すると、高いHIF-1DNA結合活性を有していた。しかし、0.5M KClフラクションは、0.25M KClフラクション中に認められる夾雑タンパク質の多くを依然として含んでいた。
低酸素状態誘導Hep3B細胞からのHIF-1の精製の最初のパイロット試験では異なる精製プロトコールが用いられた。Sephacryl S-300カラムによるゲルろ過が、構成性のDNA結合活性からHIF-1を分離させるのに効果的であることがわかった。さらに、2回のW18アフィニティークロマトグラフィーの前に、仔牛胸腺DNAカラムを非特異的DNA結合タンパク質を除去するために用いた。2つのDNAアフィニティーカラムのどちらからもその0.5M KClフラクションからHIF-1活性が検出された。1回目のW18カラムの0.5M KCl溶出フラクション(図4B, Load)のアリコート、及び2回目のW18カラムの0.25M KCl洗液及び0.5M KCl溶出フラクションを7%SDS-PAGE及び銀染色で分析した。CoCl2処理HeLa細胞中のHIF-1DNA結合活性と共精製したときと同程度の分子量を持つ4つのポリペプチドが、低酸素状態のHep3B細胞からアフィニティー精製した標品中に存在し(図4B, レーン3,矢印)、このことは2種類の異なる細胞から得たHIF-1が同じポリペプチドサブユニットからなることを示している。ゲルシフトアッセイにおいてはCoCl2処理HeLa細胞及び低酸素状態Hep3B細胞のどちらから得られたアフィニティー精製HIF-1とも特異的にW18プローブと結合した。
実施例3 HIF-1サブユニットの分析
下記の実験はHIF-1DNA結合複合体の一部であるポリペプチドを同定するために行った。
30μlのアフィニティー精製HIF-1及びプローブW18を用いて、調製的ゲルシフトアッセイを行った。湿潤なゲルをオートラジオグラフィーにかけた後、HIF-1及びその周辺を含むゲルの切片を単離した。ゲル切片を6% SDS-ポリアクリルアミドゲルの重層ゲル上に置き、Laemmli緩衝液とin situで15分間インキュベートし、電気泳動を30μlのアフィニティー精製HIF-1及び分子量マーカーを並行させて行った。二次元変性ゲル電気泳動にはアフィニティー精製HIF-1のアリコートを2回取り、5%架橋結合(19:1のアクリルアミド/ビスアクリルアミド比)させた6%SDS-ポリアクリルアミドゲル上で分解させた。一つのレーンを硝酸銀で染色した。目的とする領域に対応するゲルの切片を未染色レーンから単離した。単離したゲル切片を、3.2%架橋結合を含む二次元6%SDS-ポリアクリルアミドゲルの重層ゲル上に直接置き、30μlのアフィニティー精製HIF-1と並行させて電気泳動を行った。
HIF-1サブユニットのペプチドマッピング
アフィニティー精製HIF-12mlを10mM重炭酸アンモニウム、0.05% SDSに対して透析し、凍結乾燥した。溶解溶液(100mMショ糖, 3% SDS, 21.25mM Tris-HCl(pH6.9), 1mM EDTA, 5% β-メルカプトエタノール, 0.005%ブロムフェノールブルー)中に再懸濁した後、タンパク質サンプルを37℃15分間加熱し、0.2% SDS含有の6%ポリアクリルアミドゲル上で分解した。4℃で電気泳動によりペプチドを10%酢酸含有の0.5 X Towbin緩衝液((Towbinら、91979)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 76:4350-5354)(96mMグリシン, 12.5mM Tris-HCl(pH8.3))中のポリビニリデンジフルオリド膜(Bio-Rad)に移し、5%酢酸で脱色し、Milli-Q水で洗った。120kDa、94/93kDa及び91kDaのポリペプチドを含む膜切片を切り取り、ペプチドマッピング(Bestら、Technique in Protein Chemistry V (Crabb, J.W. ed.), pp.205-213, Academic Press, San Diego, CA, USA)を行った。in situ トリプシン分解及び逆相HPLCはWistar Protein Microchemistry Laboratoryで実施した。
UV架橋結合分析
UV架橋結合は30μlのアフィニティー精製HIF-1を結合反応に用いたこと以外は既報の方法(Wang & Semenza(1993)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 90:4304-4308)で行った。アフィニティー精製HIF-1を非標識のW18又はM18オリゴヌクレオチドの存在下又は非存在下でW18プローブとインキュベートした。4℃、15分間インキュベートした後、反応混液にUV光線(312nm:Fisher Scientific)を30分間照射し、染色済の分子量マーカーとともに6% SDS-PAGEで分解し、オートラジオグラフィーで可視化した。
グリセロールグラディエント沈降反応
48時間4℃でBeckman SW40ローターで遠心するため、100mM KCl、25mM Tris-HCl (pH7.6)、0.2mM EDTA、5mM DTT、及び0.4mM フェニルメチルスルホニルフルオリドを含有する緩衝液中に12mlの10-30%グリセロールでリニアグラディエントを作製した。低酸素状態のHep3B細胞から調製した核抽出物(100μl, 5mg/ml)を、10%グリセロールを含むグリセロールグラディエント緩衝液の等量と混合し、グラディエントの最上部に重層した。マーカーグラディエントは並行して沈降させたが、それには各50μgのサイログロブリン(660kDa)、フェリチン(440kDa)、カタラーゼ(232kDa)、アルドラーゼ(158kDa)、及びBSA(67kDa)(Pharmacia)を加えた。これらのマーカーはサンプルと同量、同グリセロール濃度となるよう調整した。試験管の最上部からフラクションをとり、DNA結合活性をゲルシフトアッセイで測定した。マーカーはSDS-PAGE及び銀染色でアッセイした。
結果
HIF-1DNA結合複合体の一部であるポリペプチドを同定するため、調製的ゲルシフトアッセイをアフィニティー精製HIF-1とW18プローブを用いて行った。HIF-1DNA複合体を含有するゲル切片を単離し、SDS-ポリアクリルアミドゲルのウエルに直接挿入し、電気泳動でアフィニティー精製HIF-1のアリコートを並行させ分析した(図5A)。HIF-1複合体に存在する4種のポリペプチドは、それぞれ120, 94, 93,及び91kDaの見かけの分子量の位置に移動した(図5A, HIF-1)。これらのペプチドのうち、同じレーンの他の場所からのゲル切片から検出されたものはなかった。これらの4種のポリペプチドはDNAアフィニティークロマトグラフィーにより、HIF-1DNA結合活性で共精製して得られたポリペプチドと同位置に移動した(図5A, レーンA)。120kDaのポリペプチド及び91-94kDaポリペプチドは等モル比で存在するようであり、このことは120kDaポリペプチドが91-, 93-, 及び94kDaのポリペプチドのいずれか一つと複合体を形成していることを示唆している。
3.2%架橋結合を有する6%SDS-ポリアクリルアミドゲル上で120kDaHIF-1ポリペプチドはわずかに大きい見かけの分子量を持つ夾雑タンパク質の非常に近傍に移動し(図5A, レーンA)、120kDaポリペプチドの単離を困難にした。この問題は5%架橋結合を有する6%SDS-ポリアクリルアミドゲルでHIF-1ポリペプチドを分離することによって解決した。120kDaポリペプチドは、より高度に架橋結合したゲル上では116kDaの分子量マーカーよりはるかに速く移動したが、一方夾雑タンパク質のバンド(*1)は変化がなかった(図5B, レーンA)。しかし、これらの条件下では91kDaのポリペプチドは、その下の別の夾雑バンド(*2)と非常に近接して移動した。それ故、2種類の、異なる架橋結合度を有するポリアクリルアミドゲルシステムが、91-94kDa及び120kDaポリペプチドの単離にはそれぞれ必要であった。
この2種のゲルシステムで同定されたHIF-1ポリペプチドが同一であるか確認するため、二次元変性ゲル電気泳動を行った。アフィニティー精製HIF-1をまず最初に5%架橋結合の6%SDS-ポリアクリルアミドゲル上で分解した(図5B, レーンAに示すとおり)。120kDa, 94/93/91-kDaHIF-1ポリペプチド、及び2つの夾雑バンドを含むゲルの領域を単離し、3.2%架橋結合の 6%SDS-ポリアクリルアミドゲルで、アフィニティー精製HIF-1のアリコートと並行させて電気泳動で分析した。図5Cに示すとおり、単離したHIF-1及び夾雑ポリペプチドは対照としたサンプルではそれぞれの対応するバンドが共に移動したが、このことはそれらの移動の相異が SDS-ポリアクリルアミドゲルの架橋結合の度合いの相異によるものであることを示唆している。
HIF-1複合体から得た4種のポリペプチドが固有のタンパク種であるか調べるためトリプシンペプチドマッピングを行った。91kDaバンドは単独で単離されたが93及び94kDaのバンドは電気泳動での分離処理後共に切り取られ、ポリビニリデンジフルオリド膜に移された。タンパク質はin situでトリプシン消化され、消化されたペプチドは逆相HPLCで分離した(図6)。91kDaタンパク質及び93/94タンパク質から由来したトリプシン消化ペプチドの溶出プロフィールはほとんど重ねうるもの(図6)であり、このことはそれらのペプチドが類似のポリペプチドから由来するものであることを示している。120kDaHIF-1ポリペプチドの単離のために、5%架橋結合の6%ポリアクリルアミドゲル上で、HIF-1のアリコートをもう一度別に分解した。120kDaポリペプチドから由来するトリプシン消化ペプチドの溶出プロフィールは91-94kDaポリペプチドのものとは明らかに異なっていた。これらの結果はHIF-1が2つの異なるサブユニット、120kDaHIF-1α、及び91/93/94kDaHIF-1βから構成されていることを示唆している。
DNA結合性のサブユニットを同定するため、アフィニティー精製HIF-1をW18プローブとインキュベートした。DNA結合タンパク質を結合部位のヌクレオチド残基と架橋結合させるためのUV照射の後、反応混液をLaemmli緩衝液中で煮沸し、SDS-PAGEで分解し、架橋結合されたタンパク質をオートラジオグラフィーで可視化させた。2種のDNA結合タンパク質が検出された(図7,レーン1)。それらの分子量は約120及び92kDaと見積もられ(プローブDNAによる16kDaの寄与を差し引いた後)、これらはHIF-1α及びHIF-1βと同等であった。この2種のタンパク質のプローブへの結合は、非標識野生型W18と競合し(図7,レーン2)、変異型のM18オリゴヌクレオチドとは競合しない(図7,レーン3)ことから配列特異的であった。これらの結果はHIF-1α及びHIF-1βがDNAに直接接触することを示唆している。HIF-1αはHIF-1βよりはるかに強くDNAと架橋結合した(図7,レーン1及び3)。これらのデータはDNAアフィニティークロマトグラフィーで精製した4種のポリペプチドがHIF-1DNA結合活性の真の構成成分であることをさらに証拠立てている。
HIF-1の天然型の大きさを推定するため、低酸素状態のHep3B細胞から調製した粗核抽出物についてグリセロールグラディエント沈降分析を行った。HIF-1及び構成性のDNA結合活性をゲルシフトアッセイでモニターした。低酸素状態のHep3B核抽出物では、HIF-1DNA複合体は2種の型で存在するが、CoCl2処理のHeLa細胞では速く移動する型のものが多数を占める。図8に示す結果はHIF-1の二重縞の2つのバンドが沈降法で分離可能なことを示している。速く移動する形のものは約200-220kDaの分子量を持つと見積もられる。オートラジオグラフにより長時間暴露すると、分子量440kDaであるフェリチンと共に遅く移動するバンドが現れた。2種のタンパク複合体が球状のコンホメーションを持つものと仮定すると、これらの結果は、速く移動する型のものは120kDaHIF-1αサブユニット1個と91-94kDaHIF-1βサブユニット1個からなるヘテロ二量体複合体で、遅く移動する型のものはヘテロ四量体であるという仮説と整合している。しかし、これらのHIF-1複合体の正確な性質と化学量論はまだ明らかになっていない。構成性のDNA結合活性は、分子量としては67kDaのBSAより小さい。UV架橋結合分析では、構成性の因子は約40-50kDaのDNA結合サブユニットを持つことを示しているので、構成性の因子はおそらくDNAとモノマーとして結合しているものと考えられる。グリセロールグラディエント沈降分析の結果に整合して、Sephacryl S-300ゲルろ過カラムからHIF-1は構成結合活性の前に溶出し、遅く移動するHIF-1ゲルシフト活性は速く移動する型のものの前に溶出した。これらの結果はHIF-1が溶液中ではヘテロ二量体が多数を占める形で存在し、より高度な(higher order)複合体は頻度が低く、これらの複合体が少なくとも1個のHIF-1αと1個のHIF-1βを含有していることを示唆している。
実施例4 HIF-1αcDNA配列の単離と特性
タンパク質ミクロ配列分析
精製HIF-1サブユニットはSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分画し、120及び94kDaのポリペプチドをポリビニリデンジフルオリド膜に移し、個々にトリプシンでin situで消化し、ペプチドを逆相高圧液体クロマトグラフィー(Wang & Semenza(1995) J. Biol. Chem. 270:1230-1237, 本明細書に参照として特に組み込んだ)で分画した。タンパク質ミクロ配列分析はWistar Protein Microchemistry Laboratory, Philadelphia(Bestら、(1994)同上)で行った。
cDNAライブラリーの構築とスクリーニング
37℃16時間、1%O2/5%CO2/残りをN2とした気体を流したチャンバーで培養したHep3B細胞からポリ(A)+RNAを単離した。cDNAはオリゴ(dT)及びランダムヘキサマープライマーを用いて合成し、バクテリオファージライブラリーはλgt11及びUni-ZAP XR(Stratagene, La Jolla, USA)に構築した。cDNAライブラリーは32P標識cDNAフラグメントでプラークハイブリダイゼーションで文献(Sambrookら、(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, NY, 参照として特に組み込んだ) に記載の方法でスクリーニングした。
PCR
変性オリゴヌクレオチドプライマーはコドン選択則(codon preference rule)(Lathe (1985) J. Mol. Biol. 183:1-12)を用いてデザインした。αF1(5'-ATCGGATCCATCACIGA(A/G)CT(C/G)-ATGGGITATA-3')(配列番号7)は、HIF-1αペプチド87-1のアミノ末端の基づいており、順方向のプライマーとして用いられた。2種の入れ子になった(nested)逆行プライマー、αR1(5'-ATTAAGCmTGGT(G/C)AGGTGGTCI(G/C)(A/T)GTC-3')(配列番号8)及びαR2(5'-ATTAAGCTTGCATGGTAGTA(T/C)TCATAGAT-3')(配列番号9)はペプチド91-1のカルボキシル末端に基づいたものである。108ファージあるいは10ngのファージDNAを95℃で10分間変性させることにより、PCRは、AmpliTaq(Perkin-Elmer)を30℃で添加し、95℃、37℃、及び72℃の3サイクル(各30秒)で増幅した後、95℃、50℃、及び72℃(各30秒)で35サイクル増幅して行った。αF1/αR1次いでαF1/αR2との入れ子PCRにより86-bpのフラグメントが得られ、これをpGEM4(Promega)にクローン化した。HIF-1β(ARNT)についてはPCRは上述のとおり、プライマー;5'-ATAAAGCTTGT(C/G)TA(C/T)GT-(C/G)TCIGA(C/T)TCIG-3'(配列番号10) 及び5'ATCGAATTC(C/T)TCI-GACTGIGGCTGGTT-3'(配列番号11)を用いて行い、その結果、予測どおり69-bpの産物を得た。HIF-1β(ARNT)の5'末端を分析するために、Hep3B poly(A)+RNAを5'-RACE kit(Clonetech)から入手した試薬を用いて逆転写した。cDNAはARNTcDNA(Hoffmanら、(1991)同上)のnt 54-425の増幅のための鋳型として用いられ、5'-TACGGATCCGCCATGGCGGCGACT-ACTGA-3'(配列番号12)(順行プライマー)、及び入れ子逆行プライマー5'-AGCCAGGGCACTACAGGTGGGTACC-3'(配列番号13)及び5'GTTCCCCGCAAGGACTTCATGTGAG-3'(配列番号14)と共に95℃、60℃、及び72℃(各30秒)で35サイクル行った。PCR産物はヌクレオチド配列分析のため、pGEM4にクローン化した。
結果
精製120kDaHIF-1αポリペプチドをトリプシンで消化し、ペプチドを逆相高圧液体クロマトグラフィーで分画し、フラクション87及び92はミクロ配列決定法を行った。各フラクションは2種のトリプシン処理ペプチドを含有しており、それらの完全なアミノ酸配列が得られた:ITELMGYEPEELLGR(配列番号15)(87-1), XIILIPSDLAXR(配列番号16)(87-2), SIYEYYHALDSDHLTK(配列番号17)(91-1),及びSFFLR(配列番号18)(91-2)。87-1及び91-1を隣接配列として入力したところ、データベース検索でPER(Drosophila proteins period)、SIM(single-minded)、及び哺乳類のAHR(aryl hydrocarbon receptor)及びARNT(aryl hydrocarbon nuclear translocator)タンパク質、それらは全てPAS(PER-ARNT-AHR-SIM)ドメイン(Hoffmanら、(1991)Science 252:954-958; Citriら、(1987) Nature 326:42-47; Burbachら、(1992) Proc. Natl. Acad. Sci.USA 89:8185-8189; Crewsら、(1988) Cell 52:143-151; Nambuら、(1991) Cell 67:1157-1167)を構成する200-350個のアミノ酸の配列を持っているが、それらとの類似性が見出された。縮退(degenerate)オリゴヌクレオチドは87-1及び91-1配列に基づき合成され、低酸素状態のHep3B細胞から調製したcDNAと共にPCRに用いられた。ヌクレオチド配列分析ではクローン化されたPCR産物が予期したアミノ酸をコードしていることが示され、87-1及び91-1が隣接ペプチドであることが示された。
実施例5 ヌクレオチド配列とデータベース解析
完全長の疑う余地のない二重鎖ヌクレオチド配列が、蛍光標識ジデオキシヌクレオチドをT3, T7及び特別に合成したプライマーを用いて熱サイクルシークエンシング反応に取り込むことによって得られた。反応はJohns Hopkins UniversityのGenetic Core Resources Facilityで、Applied Biosystems 394DNA Synthesizer及び373a AutomatedDNASequencersを用いて行った。タンパク質及び核酸のデータベース検索はNational Center for Biotechnology InformationでBLASTPおよびTBLASTN(Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403-410)プログラムを用いて行った。HIF-1αcDNAヌクレオチド配列及びそれから生ずるアミノ酸配列はGen Bankに提出済である。アクセスNo.はU22431である。
結果
由来するアミノ酸配列がbHLH-PASタンパク質と類似性を有するEST(expressed sequence tag)もデータベース解析によって見出した。我々はESTが由来した3.6-kbのcDNA, hbc025(Takedaら、(1993) Hum. Mol. Genet.2:1793-1798)を得た。完全長のヌクレオチド配列の分析によってそれが4種のトリプシン処理ペプチドの全てをコードしていることが明らかとなった。別のESTが同定され、それはhbc025と共通の同一性があり、2.0-kbのcDNA hbc120(Takedaら、(1993)同上)によってコードされていた。hbc120の配列分析によってそれがhbc025の3'末端と共直鎖(co-linear)をなし(図9)、ポリ(A)テイルの長さのみ異なることが示された。hbc025の5'末端はHep3B cDNAライブラリーをスクリーンするために用いられ、その結果、イニシエーターコドンに伸びている、オーバーラップしている3.4-kbcDNA, 3.2-3,が単離された。3720 bpの複合(composite)cDNAは、翻訳開始コドンを含む2478bpのオープンリーディングフレーム、インフレーム停止コドンを有する28 bpの5'非翻訳領域(5'-UTR)、及び43個のアデニン残基による12bpの後ろの正準(canonical)なポリアデニレーションシグナルで終わる1211 bp 3'-UTRをコードしていた。コンセンサス翻訳開始配列GCC(A/G)CCATGG(配列番号19)(Kozak(1987) Nucleic Acid Res. 15:8125-8132)に比べ、HIF-1αcDNA配列はTTCACCATGG(配列番号20)であった。HIF-1αcDNAオープンリーディングフレームから、新しい826個のアミノ酸のポリペプチド(図10)が予測され、それは93kDaの分子量を持ちそのアミノ末端にbHLH-PASドメインを持つ。94kDaHIF-1βポリペプチドから単離された2種のトリプシン処理ペプチドの分析により、部分的なアミノ酸配列が明らかとなった;VVYVSDSVTPVLNQPQSE(配列番号21)、及びTSQFGVGSFQTPSSFSSMXLPGAPTASPGAAAY(配列番号22)。第二のペプチド配列に基づく変性オリゴヌクレオチドを用いて、予測された大きさのPCR産物をHep3B細胞cDNAから増幅した。データベース解析により、2種のペプチドがARNT配列の中に含まれることがわかった。ARNT配列はbHLH-PASタンパク質で、AHRとヘテロ二量体を形成して機能性ジオキシン受容体となることが知られている(Reyesら,(1992) Science 256:1193-1195)。 2つの異なる形のARNTは、45bpの別のエクソンによってコードされる15アミノ酸配列が存在するか否かが異なることが示された(Hoffmanら、(1991)同上)。Hep3B細胞RNAの逆転写酵素-PCRによる分析では、これらの2種の配列及びさらに別の同型体の存在を明らかにした。これらの一次配列の相異は3種(91, 93,及び94kDa)の精製を説明しうる(Wang & Semenza (1995)同上)。変性ゲル上でのHIF-1αとHIF-1βの見かけの分子量はcDNA配列から予測された分子量より大きい。HIF-1αについては計算値は93kDaであったのに比べ、見かけの分子量は120kDaであり、HIF-1βサブユニットについては、774個及び789個のアミノ酸を有するARNTの同型体がそれぞれ85及び87kDaなのに対し、見かけの分子量は91-94kDaであった。HIF-1αとARNT配列はタンパク質リン酸化のための多重コンセンサス部位を有し、HIF-1はDNA結合にリン酸化を要することが知られている(Wang & Semenza(1993b), 同上)。
HIF-1αとHIF-1β(ARNT)は異なるクラスのbHLHドメインに属しており、隣接DNA結合(b)及び二量体化(HLH)モチーフからなっている。HIF-1αのbHLHドメインは他のbHLHPASタンパク質であるSIM及びAHR(図11)と最も類似している。HIF-1β(ARNT)は、5'-CACGTG-3'(配列番号23)(Dangら、(1992) Proc. Natl. Acad. Sci.USA 89:599-603)、この配列はHIF-1[5'-(G/Y)ACGTGC(G/T)-3'(配列番号24)(Semenzaら、(1994)同上)]及びジオキシンレセプター[5'-(TIG)NGCGTG(A/C)-(G/C)A-3'(配列番号25)(Lusskaら、(1993)J. Biol. Chem.286:6575-6580)]結合部位に似ているが、その配列と結合する一連の哺乳類(MI, USF, L-MYC)及び酵母(CP-1)のタンパク質に認められるbHLHドメインに非常によく似ている。これらの転写因子は、異なる二量体化コンテクストで生じる関連配列のbHLHドメインを共有する:MI、L-MYC、及びUSFはbHLH-ロイシンジッパータンパク質であり、ARNTはbHLH-PASタンパク質であり、CP-1はBHLHドメインのみを含んでいる。
PASドメインはリガンド結合及びタンパク質二量体化に関係があるが(Huangら、(1993)Nature 364:259-262; Dolwickら、(1993)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 90:8566-8570; Reisz-Porszaszら、(1994) Mol. Cell. Biol.14:6075-6086)、このドメインの分析によりHIF-1αがSIMと最もよく似ていることが明らかとなった。我々のアライメントでは、これまでに報告されたことのないモチーフで、全てのPASタンパク質のA及びBリピートに存在するモチーフであるHXXD(図12)を含むコンセンサス配列を設けた。また、我々はBacillus subtilisのKinA(PEREGOら、(1989) J. Bacteriol. 171:6187-6196)がアミノ末端にPASドメインを含みそれ故にこのタンパク質ファミリーの原核生物の最初のメンバーであることを見出したが、このことは進化における保存が非常に顕著であることを示している。KinAはPERと同様にPASを有しているがbHLHは持たないため、DNAと結合するとは考えられない。B.Subtilisは悪い環境条件に反応して芽胞形成を行い、KinAはカルボキシル末端のキナーゼドメインを経由してシグナルを伝達するセンサーとして機能する(Burbulysら、(1991) Cell 64:545-552)。
実施例6 RNAブロットハイブリダイゼーション
HIF-1DNA結合活性のインデューサーに反応して起こるHIF-1RNAの発現を下記のように分析した。
総RNAを2.2Mホルムアルデヒド/1.4%アガロースゲル電気泳動で分画し、ニトロセルロース膜に移し、68℃でQuik-Hyb(Staratagene)中で32P標識HIF-1α又はARNTcDNAとハイブリダイズした。ゲルを臭化エチジウムで染色し、等量のローディングとトランスファーが各レーンで行われたか確認するため、トランスファー前後でRNAを紫外線照射で可視化した。同一ゲル上のRNAのサイズのマーカー(BRL-GIBCO)に基づき、HIF-1αRNAのサイズは3.7 ± 0.1 kbと見積もられた。2種のARNTRNAが既報(Hoffmanら、(1991)同上)のとおり同定された。
結果
Hep3B細胞を1%O2に暴露させた場合には、HIF-1α及びHIF-1β(ARNT)RNAレベルは1-2時間でピークに達し、8時間でほぼ基底レベルまで減少し、16時間の連続低酸素状態で二次的な増加が認められた(図13A)。75μMのCoCl2に応じてHIF-1RNAは4時間でピークに達し、8時間で減少し、16時間で再上昇した(図13B)。130μMのデスフェリオキサミンで処理した細胞では、1-2時間で単一のピークが認められた(図13C)。細胞を1%O2で4時間インキュベートし、次いで20%O2に戻した場合にはHIF-1α及びHIF-1βのRNAは5分以内(アッセイしうる最も早い時点)で両方とも基底レベル以下に減少した(図13D)。これらの結果はHIF-1DNA結合活性の場合(Wang & Semenza(1993b)同上)と同様にHIF-1RNAレベルは細胞へのO2の圧によって調節されていることを示している。低酸素状態後のHIF-1αRNAの顕著な不安定性は、8つのAUUUA配列(図13E)、その配列は半減期の短いRNA中に見出され、ヘテロのRNAに導入された場合には不安定性を示す配列であるが(Shaw & Kamen(1986) Cell 46:659-667)、その配列をを含む3'-非翻訳領域が関係している可能性がある。HIF-1αのAUUUA配列のうちの7つは、RNA不安定性エレメント5'-UUAUUUA(U/A)(U/A)-3'(配列番号26)(Lagnadoら、(1994) Mol.Cell.Biol.14:7984-7995)のよりストリンジェントなコンセンサスと整合する。
実施例7 抗体産生
HIF-1タンパク質の発現を分析するため、HIF-1α及びHIF-1βに対するポリクローナル抗血清を下記のとおり作製した。
HIF-1αの329-531、又はARNTの496-789のアミノ酸にグルタチオン-S-トランスフェラーゼを融合させた遺伝子組換えタンパク質でウサギを免疫した。HIF-1αに対する抗体を産生させるため、hbc025からの0.6kb EcoRIフラグメントをpGEX-3X(Pharmacia)にクローンし、E.coli DH5α細胞(GIBCO-BRL)を形質転換した。細菌(OD600=0.8)を0.1mM IPTGに対して室温で1時間暴露し、50mM Tris-HCL(pH7.4)、1mM EDTA、1mM EGTA、1mM フェニルメチルスルホニルフルオリド中で超音波処理し、上清を1% NP-40存在下でグルタチオンアガロース(Pharmacia)と4℃で1時間インキュベートし、5mM 還元型グルタチオン、50mM Tris-HCl(pH8.0)、150mM NaClで溶出させてGST/HIF-1α融合タンパク質を単離した。HIF-1βに対する抗体を産生させるために、Hep3BcDNAからARNT nt 1542-2428をTaqポリメラーゼで、順行プライマーとして5'-ATAGGATCCTCAGGTCAGCTGGCACCCAG-3'(配列番号27)及び逆行プライマーとして5'-CCAAAGCTTCTATTCTGAAAAGGGGGG-3'(配列番号28)を用いてPCRで増幅した。ARNT nt 1542-2387に対応するフラグメントを得るため、PCR産物をBamHI及びEcoRIで消化し、pGEX-2T(Pharmacia)にクローン化した。融合タンパク質の単離は、その誘導を1mM IPTGで2時間誘導し、グルタチオンアガロースへの結合をNP-40ではなく1% Triton X-100で行ったこと以外は上述のとおり行った。融合タンパク質を10% SDS/ポリアクリルアミドゲルから切り取り、ニュージーランド白色種ウサギ(HRP Inc., Denver PA, USA)を試験施設で許可されたプロトコールに従って免疫した。HIF-1αに対して作製した抗体を、CNBr活性化Sepharose 4B(Pharmacia)にカプルされたGST/HIF-1αと結合させてアフィニティー精製した。
結果
クローン化されたHIF-1αcDNA及びARNTでコードされるタンパク質がHIF-1DNA結合活性の構成成分であることを示すために抗血清を用いた(図14A)。低酸素状態の細胞から得た粗核抽出物をプローブDNAと両方の抗血清と共にインキュベートすると、抗血清非存在下で認められたHIF-1/DNA複合体が、より遅く移動するHIF-1/DNA/抗体複合体に置き換わるが、免疫前血清の添加ではHIF-1/DNA複合体に影響がなかった。
実施例8 イミュノブロット分析
核タンパク抽出物の15μgを6% SDS/ポリアクリルアミドゲル上で分解し20mM Tris-HCl(pH8.0)、150mM グリシン、20% メタノール中でニトロセルロース膜に移した。その膜を5%ミルク/TBS-T[20mM Tris-HCl(pH7.6), 137mM NaCl, 0.1% Tween-20]でブロックし、アフィニティー精製HIF-1α抗体又はHIF-1β抗血清をそれぞれ1:400、1:5000に希釈したものとインキュベートし、洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ-抗イムノグロブリンコンジュゲート(1:5000希釈)とインキュベートし、洗浄し、ECL試薬(Amersham)で展開し、オートラジオグラフィーにかけた。上記の各インキュベーションは5%ミルク/TBS-T中で1時間行い、各洗浄は室温でTBS-t中で合計30分間行った。
結果
イミュノブロット分析で、低酸素状態のHep3B又はCoCl2処理HeLa細胞からの粗核抽出物中にあり、精製HIF-1タンパク質標品中に存在するポリペプチドと共に移動するポリペプチドを、抗血清が検出したことが示された(図14B)。1%O2に暴露したHep3B細胞から調製した核及び細胞質抽出物の分析により、HIF-1DNA結合活性の誘導キネティックス(Wang & Semenza(1993) J.Biol.Chem.268:21513-21518)と同様に、連続低酸素状態の4-8時間目の核抽出物中にHIF-1α及びHIF-1βのピークレベルがあることを示した。HIF-1αでは、遅い時点で多数を占めるタンパク種がゲルでは早い時点に存在するタンパク質よりも高い位置に移動することは、翻訳後のHIF-1αの修飾が起こっている可能性を示唆している。HIF-1βでは、94-及び93kDa種はそれら相互から由来したものではなく91kDa型から由来しており、移動時のシフトはみられなかった。HIF-1タンパク質の低酸素状態後の崩壊は極めて速く(図14D)、このことはRNAの場合と同様、これらのタンパク質が低酸素状態後の細胞では不安定なことを示している。HIF-1α及びARNTの両者において、そのアミノ酸の31%はプロリン、グルタミン酸、セリン、又はトレオニン(PEST)でありそれらのアミノ酸はタンパク質の不安定性に関連がある(Rogersら,(1986)Science 234:364-368)。HIF-1αでは2つの20個のアミノ酸の配列(499-518及び581-600;図10)はそれぞれ15個のPEST残基を含んでいる。HIF-1β(ARNT)では、核コンパートメントと細胞質コンパートメント間の再分配も、核タンパク質レベルの誘導と崩壊の双方に、ある役割を担っているものと考えられる。
HIF-1に関する我々のこれまでの研究と合わせると、この結果は、HIF-1が、91-94kDaのHIF-1β(ARNT)同型体と複合体を形成する120kDaのHIF-1αサブユニットからなるヘテロ二量体bHLH-PAS転写因子であることを示している。ARNTはHIF-1及びジオキシンレセプターの両者に用いられている一連の共通サブユニットをコードするが、それは各種のbHLHタンパク質とE2A遺伝子産物とのヘテロ二量体化(Murreら,(1989) Cell 58:537-544)と類似している。これらの結果と、HIF-1α及びSIMのbHLH-PASドメイン内における類似性に基づけば、ARNTもSIMとヘテロ二量体を形成している可能性がある。Drosophiliaでは、数種のSIM-調節遺伝子が、1-5コピーの5'-(G/A)(T/A)ACGTG-3'配列(配列番号29)(Whartonら、(1994)Develoopment 120:3563-3569)を含むエンハンサーエレメントによって特徴づけられている。HIF-1、ジオキシンレセプター、及びSIM結合部位が5'-CGTG-3'配列を共有しているという観察はARNTがHIF-1、AHR、及びSIMと組み合わせて会合しうるという仮説を支持している。なぜならばこの半部位は、ARNTと非常によく似たbHLHドメインを持つ転写因子類によって認識されるからである。
実施例9 解糖酵素をコードする遺伝子のHIF-1による転写調節
低酸素状態の細胞における解糖酵素類をコードする遺伝子の転写調節へのHIF-1の関与を下記のように検討した。
RNA分析
総RNAをHep3B細胞及びHeLa細胞から単離した(Chomczynski & Sacchi(1987)Anal. Biochem 162:156-159)。RNA濃度は260nmの吸光度で求めた。アガロースゲル電気泳動を行いその後、臭化エチジウムで染色し、UV照射下で28及び18SrRNAを可視化し、異なる標品からの一定量が同量のインタクトな総RNAを含んでいるか確認した。P.Maire(Institut Cochin de Genetique Moleculaire, Paris)から提供を受けたプラスミドN-KS*及びH-KS*をHindIII消化により直線化した。アンチセンスRNAをα-32PIATPの存在下でT3ポリメラーゼを用いて合成した。10μgの総細胞RNAを、HまたはNリボプローブ(3 X 105 cpm)と66℃3時間ハイブリダイズし、RNase AおよびT1で消化し、防護されたフラグメントを8 M尿素、8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Semenzaら,(1990) Mol.Cell.Biol. 10:930-938)で分析した。American Type Culture Collectionから入手したプラスミドpHPGK-7e(Michelsonら、(1985)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 82:6965-6969)から得たヒトホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGKI)cDNA、及びT.Noguchi(Osaka University Medical School, Osaka, Japan)より提供を受けたプラスミドpM2PK33(Noguchiら,(1986) J.Biol.Chem.261:13807-13812)から得たラットPKM cDNAを、QuikHyb(Atratagene)中で68℃1時間のブロットハイブリダイゼーションのランダム標識プローブとして用い、次いで15mM塩化ナトリウム、1.5mM クエン酸ナトリウム、0.1% SDSで50℃で洗浄した。オートラジオグラムのデンシトメーターによる分析はLKM Ultroscan XLレーザーデンシトメーターで、コンピューター化ピークインテグレーションを用いて行った。
電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
粗核抽出物標品、プローブの調製条件、結合反応、及びゲル分析は全て上述した。二重鎖オリゴヌクレオチドは、各オリゴヌクレオチドがその5'末端に5'-GATC-3'配列、それは相補的オリゴヌクレオチドとアニーリングしたとき一重鎖の5'オーバーハングを形成するものであるが、その配列を各オリゴヌクレオチドが含んでいること以外は表2に示す配列に従って合成した。W18及びM18オリゴヌクレオチドのセンス鎖配列は上述した。HIF-1は50LのCoCl2処理HeLa細胞から、粗核抽出物標品、DEAE-Separoseクロマトグラフィー、MonoQ 迅速タンパク質液体クロマトグラフィー、及びDNAアフィニティークロマトグラフィーによって部分精製した。粗核抽出物及び部分精製HIF-1のインキュベーションはそれぞれ100及び1ngの変性仔牛胸腺DNAを共存させて行った。競合実験は5ngの非標識W18又はM18オリゴヌクレオチドを用いて行った。
組織培養
Hep3B細胞及びHeLa細胞は培養液中で維持し、1%O2、CoCl2、DFX、及びシクロヘキシミド(CHX)で、上述のとおり処理した。
一過性発現アッセイ(Transient Expression Assay)
psvcatレポータープラスミド(pCAT プロモーター, Promega)は、SV40早期領域プロモーター、バクテリアのクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする配列、SV40スプライス、及びポリアデニル化シグナルを含んでいる。オリゴヌクレオチドは5'及び3'にそれぞれ位置しているBgIII及びBamHI部位に、転写ユニットに向かってクローン化した。pNMHcat及びpHcatプラスミド(Concordetら,(1991) Nucleic Acid res. 19:4173-4180)は、CATをコードする配列と直接融合したヒトアルドラーゼA遺伝子配列を含んでおり、P.Maireから供給を受けた。pSVβgal(Promega)はSV40早期領域プロモーター及びエンハンサーによってドライブされる、バクテリアのlacZをコードする配列を含んでいる。プラスミドはアルカリ融解と2回の塩化セシウムデンシティーグラディエント遠心処理によって精製した。Hep3B細胞はGene Pulser(Bio-Rad)で260V, 960μFで電気穿孔法によってトランスフェクトした。電気穿孔法を2回行い、それをプールし、8mlの培地を容れた10cmの組織培養皿(Corning) 2皿に分けた。細胞は24時間、5%CO2、95%空気インキュベーターで37℃で回収し、培地を交換し、デュプリケートのプレートのうちの1セットを取り除いてモジュラーインキュベーターチャンバー(1%O2, 5%CO2, 残りはN2の組成の気体を流している)に移し、封をし、37℃に置いた。細胞をトランスフェクションの72時間後に集め、CAT及びβガラクトシダーゼ活性のための抽出物を調製した。
結果
ヒトアルドラーゼA遺伝子(hALDA)は4個のコードしないエクソン、N1、N2、M、及びHを含んでいる(Maireら,(1987) J.Mol.Biol. 197:425-438)。筋肉以外の多くの組織では転写はN1及びHエクソンから開始される。20%又は1%O2に16時間暴露されたRNAのリポヌクレアーゼ防護アッセイでは、1%O2に暴露されたHep3B細胞及びHeLa細胞でエクソンHから開始されたALDARNAは3.0倍及び2.9倍高いレベルを示したが、低酸素状態のHep3B細胞及びHeLa細胞でエクソンN1から開始されたRNAの増加はそれぞれ1.7倍及び1.1倍にすぎず、このことは低酸素状態に対するプロモーター特異的な反応性を示唆している。
次いで我々は1%O2に1-16時間暴露させたHep3B細胞におけるALDAとホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK1)の発現を比較した。ALDAおよびPGK1RNAの双方ともそれらの誘導が最大となるキネティックスは遅延を示し、これは誘導の際にタンパク質合成が必要であることを示唆しており、このことはHep3B細胞を100μMのCHXで処理すると低酸素状態の細胞におけるALDA及びPGK1RNAの誘導が6.1倍及び8.2倍から1.6倍及び1.4倍へとそれぞれ減少することによって確認された。
Hep3B細胞を16時間75μM CoCl2又は130μM DFXで処理すると、ALDAの転写がエクソンHから優先的に開始されてALDA及びPGK1RNAが誘導された。同じRNAサンプルをPKM用のプローブを用いて分析したところ、PKM RNAも1%O2、CoCl2、又はDFXにHep3B細胞を暴露させることによって誘導されることが明らかとなった。ALDA、PGK1、及びPKMのRNAもHeLa細胞を1%O2、CoCl2、又はDFXで処理することによって誘導された。PFKLRNAはHep3B細胞又はHeLa細胞では検出可能なレベルでは発現されていなかった。これらのRNA分析は、既にEPO RNA及ぶHIF-1活性の誘導で示したように(Semenza & Wang(1992) Mol.Cell.Biol.12:5447-5454)、EPO-産生Hep3B細胞及び非産生HeLa細胞においてEPO RNA及びHIF-1活性を誘導する物質は、ALDK、PGK1、及びPKMのRNAをも、デノボ(de novo)のタンパク質合成を必要とはするが、誘導することを示している。
GenBankに存在する解糖酵素をコードする遺伝子のヌクレオチド配列で、HIF-1結合部位の可能性のあるものを、検索にかける配列として5'-ACGTGC-3'を用いて検索した。そのヌクレオチド配列は、DNAの主グルーブ内にあるHIF-1と接触する4個のグアニン残基を有する(Wang & Semenza(1993b)同上)。二重鎖オリゴヌクレオチドは、ヒトPGK1(hPGK1)、ヒトエノラーゼ1(hENO1)、及びマウスLDHA(mLDHA)の5'-フランキング配列(5'-FS)、hPGK1の5'-非翻訳配列(5'-UT)、及びhALDA及びmPFKL遺伝子の介在配列(IVS)に対応して合成した。これらのオリゴヌクレオチドはHIF-1部位の可能性のあるものとして、5'-TACGTGCT-3'(配列番号30)、5'-GACGTGCG-4'(配列番号31)(これはhEPO 5'-FSにも見出される)、及び5'-CACGTGCG-3'(配列番号32)を含んでいる。最初の配列は既に同定したEPOエンハンサーのHIF-1結合部位の配列と同一のものであるが(Semenza & Wang (1992)同上)、後の2種の配列は最初と最後のヌクレオチドが異なっている。これらのオリゴヌクレオチドのHIF-1結合能はEMSAで調べた。
1%O2に4時間暴露されたHep3B細胞から調製した核抽出物とインキュベートした時、各プローブは、hEPO 3'-FSのヌクレオチド1-18に対応するプローブW18を用いて作られたHIF-1複合体と類似の移動度と強度を有するDNAタンパク質複合体を生成した。これに対して、EMSAパターンは低酸素状態の細胞から得た核抽出物で得られたパターンと類似してはいたが、これらのプローブはどれも、20%O2で維持された細胞から得た核抽出物中のHIF-1複合体を検出しなかった。低酸素状態の核抽出物をアッセイした場合(非低酸素のものとの比較で)には、HIF-1複合体の下に移動するDNAタンパク質複合体の強度はより低いものであった。我々は以前にこの複合体がHIF-1と同じDNA配列を認識する構成性に発現する因子であることを示している(Wang & Semenza(1993b)同上)。構成性の因子の結合の減少は低酸素性抽出物中のHIF-1との結合での競合の結果として起こるものである。
CoCl2処理HeLa細胞から、DEAE-セルロース、MonoQ、及びDNAアフィニティークロマトグラフィーで約600倍に精製されたHIF-1標品についてもEMSAを行った。各プローブは、W18を用いて形成した複合体と定性的及び定量的に類似したやり方でHIF-1と結合した。HIF-1のこれらのプローブとの結合は、非標識W18の過剰によって競合しえたが、変異体オリゴヌクレオチドであるM18、それは3カ所のヌクレオチド置換(HIF-1との結合及び低酸素状態を誘導しうるエンハンサー機能を排除することが以前に示されている)を含んでいるが、そのヌクレオチドでは競合し得ないので、配列特異的であった。W18及びM18の競合実験を低酸素状態のHep3B細胞から得た粗核抽出物で行ったところ、同様な結果が得られた。これらの結果から、ALDA、ENO1、PFKL、及びPGK1をコードする遺伝子中、及びhEPO 5'-FS中の新規のHIF-1結合部位が同定された。HIF-1と特異的に結合することが示された8種のオリゴヌクレオチド(表8)は、コンセンサス5'-(C/G/T)ACGTGC(G/T)-3'(配列番号33)で表される3つの異なる結合部位配列を有している。確認のためのバイアスされた方法では、HIF-1がこのコンセンサスで表していない他の配列を認識することはありうる。解糖関連遺伝子からの6個のHIF-1部位に加えて、5'-CACGTGCT-3'配列(配列番号34)もhENO1 5'-FSの786から793に存在するが(Gialongoら,(1990) Eur.J.Biochem.190:567-573)、それについてはHIF-1結合性は調べられていない。総計7箇所のHIF-1部位と考えられる部位が、これら5種の解糖関連遺伝子の故にGenBankに報告された20.7kbのヌクレオチドの配列中に同定された。これに対して5種のランダムに選んだ遺伝子、AFP、BUP4、CREB、DHFR、及びEPOR(Gibbsら,(1987)Biochemistry 26:1332-1343; Kuriharaら,(1993)Biochem.Biophys.Res.Commun.192:1049-1056; Meyerら,(1993)Endocrinology 132:770-780; Mitchellら,(1986)Mol.Cell.Biol.6:425-440; Noguchiら,(1991)Blood 78:2548-2556)のヌクレオチド配列からなる総計43.5kb中のどちらのDNA鎖にもコンセンサスHIF-1部位と適合する配列は認められなかった。
これらのHIF-1結合部位が機能的な重要性を有するか調べるため、上述のレポーター遺伝子を用いて一過性発現アッセイを行った。レポータープラスミドはHep3B細胞にpSVβgalとコトランスフェクトさせた。pSVβgalはトランスフェクション効率の変動を調べるための対照としてここに含めた。トランスフェクトした細胞をデュプリケート測定のプレートに分け、1%又は20%O2中で48時間培養し、レポータープラスミド及び対照プラスミドの転写後に合成されたCAT及びβガラクトシダーゼタンパク質を細胞抽出物から定量した。ベーサルレポーターpsvcat中ではCATをコードする配列はSV40早期領域プロモーターでドライブされているが、psvcatは1%O2及び20%O2で培養された細胞中で同程度のCAT/β-ガラクトシダーゼ値を示した。33塩基対のhEPO 3'-FSエンハンサーの1個(psvcatEPO1)又は2個(psvcatEPO2)のコピーを3'から転写ユニットに向かってクローン化した場合には、1%O2で培養した細胞中のCAT/βガラクトシダーゼの発現はそれぞれ4.9倍及び17倍となり、これは以前に報告した結果(Semenza & Wang(1992)同上)と整合するものであった。
解糖関連遺伝子から得たHIF-1結合部位配列を同じアッセイで分析した。mPFKL IVS-1 及び hPFK1 5'-FSオリゴヌクレオチドが、hEPO 3'-FS中のHIF-1部位と同一又はそれから分岐した配列を持ち、かつそれぞれ3'又は5'に位置し転写開始部位に向かうため、それらを選択した。24塩基対のhPGK1 5'-FSオリゴヌクレオチドの2つのコピーを、hPGK1中の位置と同様に、5'にpsvcat転写ユニットに向けてクローン化した(図15A)。低酸素性細胞ではpPGK2svcatの発現は5.6倍誘導された(図15B)。26塩基対のmPFK1 IVS-1オリゴヌクレオチドの3つのコピーを5'にpsvcat転写ユニットに向けてクローン化した。低酸素性細胞ではpPFKL3svcatは47倍の誘導ををもたらした(図15B)。
また、我々は天然のプロモーター機能を分析し、内因性RNA発現データとトランスフェクションアッセイにおける誘導に必要な配列との相関を調べるため、hALDA遺伝子配列での実験も行った。プラスミドpNMHcat(Concordetら,(1991)同上)、このプラスミドではhALDAの5'末端から3.5kbがCATをコードする配列と融合されているが(図15A)、このプラスミドは低酸素性細胞で5.5倍の誘導をもたらした(図15B)。プラスミドpHcatは、pNMHcatの3'末端と共直鎖をなし、IVS-4の中から開始し、5'からエクソンHへと伸びている0.76kbのhALDA配列を含んでいる(図15A)。エクソンN1、N2、及びMと、それらのフランキング配列を除去するとCAT発現レベルが20倍増加するが、1%O2における相対的な発現には、pHcatが低酸素性Hep3B細胞で5.4倍誘導されたような顕著な影響は与えなかった(図15B)。これらの結果は次の観察結果、すなわち(i)hALDA転写の特異的誘導はエクソンHから開始されたこと、及び(ii)IVS4の5'末端のHIF-1結合部位の存在はpNMHcat及びpHcatの内部であったこと、と整合するものである。mPFKL、hPGK1、及びhALDA遺伝子から得たHIF-1部位を含む配列は、天然型又は異種プロモーターと併用して、低酸素状態で誘導されうる転写をもたらす。
実施例10 優性形質を持たないHIF-1α変異体の構築
HIF-1の機能不活化を調べるためにHIF-1αの変異体を構築した。
原構築物はHIF-1αcDNA3.2-3をプラスミドpBluescript SKにクローン化したものである。このプラスミドを制限エンドヌクレアーゼNcol及びBgIIIで、アミノ酸2-28をコードする配列を削除するために消化した。Ncol及びBgIII末端を持つ二重鎖オリゴヌクレオチドを挿入し、T4DNAリガーゼの存在下で、プラスミドを再環化させた。この結果得られた構築物はアミノ酸1-3をコードし、その後には野生型HIF-1αの対応する位置には存在しない3つのアミノ酸(イソロイシン、アラニン、及びグリシン)があり、その後ろにはHIF-1αの28-826アミノ酸が続いている。この構築物(pBluescript/HIF-1α3.2T7ΔNB)はin vitroでの転写(T7 RNAポリメラーゼを用いて)及びHIF-1α変異体(HIF-1αΔNB)(配列番号35)の翻訳が可能である。
哺乳類組織培養細胞で、優性形質を持たないHIF-1αを作り出すために、変異体cDNAをコードするKpnI-Not IフラグメントをpBluescriptベクターから切り取り、哺乳類の発現ベクターpCEP4にクローン化した。そのプラスミドをAfIII及びBamHIで消化し、Klenow型のDNAポリメラーゼで処理して平滑端を作り、T4DNAリガーゼで再環化した。この結果としてできたプラスミド(pCEP4/HIF-1αΔNBΔAB)(配列番号3)はアミノ酸1-3をコードし、その後には野生型HIF-1αの対応する位置には存在しない3つのアミノ酸(イソロイシン、アラニン、及びグリシン)があり、その後ろにはHIF-1αの28-391アミノ酸が続き、その後ろに野生型HIF-1αの対応する位置には存在しない3つのアミノ酸(イソロイシン、グルタミン、及びトレオニン)が続く。アミノ酸392-826は変異体タンパク質(HIF-1αΔNBΔAB)の細胞内での安定性を向上させるために除去した(図16)。
結果
25μgのレポーター遺伝子psvcatEPO2、これは上述のとおりヒトエリスロポエチン遺伝子から得た33-bpのエンハンサー配列のコピーを2つ含んでいるが、この遺伝子で、Hep3B細胞を一過性にトランスフェクトした。このプラスミドは、細胞を1%O2で培養した場合には20%O2の場合に比べ9倍高いレベルのCATタンパク質を発現した。細胞をpsvcatEPO2及びpCEP4/HIF-1αΔNBΔABでトランスフェクトした場合には1%O2でCAT発現の用量依存性の阻害が認められた。表3は細胞中にトランスフェクトされたpCEP4/HIF-1αΔNBΔABの量(μg)を関数とした相対誘導量(1%O2における発現を20%O2における発現で割ったもの)を示している。結果は3回の実験の平均値で示している。
変異体HIF-1の発現は、低酸素性細胞で産生される内因性HIF-1によるレポーター遺伝子の発現の活性化を妨害した。40μgの変異体のトランスフェクションでみられる残存している活性化は、psvcatEPO2を取り上げ、pCEP4/HIF-1αΔNBΔABを取り上げなかった細胞を表しているのかもしれない。これらの結果は優性形質を持たない変異体はin vivoでのHIF-1機能を妨害することを示している。
この変異体タンパク質は、EPOエンハンサーから得たHIF-1結合部位を含む二重鎖オリゴヌクレオチドプローブへの結合の電気泳動移動度シフトアッセイで用いられた。pBluescript/HIF-1α3.2T7ΔNBはin vitroでの転写及び翻訳の鋳型として用いられた。野生型HIF-1α及びHIF-1βの一定量の鋳型を含む反応液にpBluescript/HIF-1α3.2T7ΔNBを増量しつつ添加するにつれて、DNA結合性の用量依存性阻害が認められたが、これはpBluescript/HIF-1α3.2T7ΔNBが野生型の鋳型pBluescript/HIF-1α3.2T7より16倍過剰に存在した場合にはHIF-1のDNA結合性が排除されることとなるように阻害するものであった。
これらのin vitro及びin vivo実験は、HIF-1αの基本ドメインの削除は、DNA結合を阻害することによりHIF-1活性をブロックするタンパク質の産生を招くことを示している。
Figure 2009077729
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図1は、CoCl2によるHIF-1のDNA結合活性の用量依存的誘発を示すオートラジオグラフである。37℃において0、5、10、25、50、75、100、250、500、および1000μMのCoCl2の存在下で4時間培養されたHeLa細胞から調製された核抽出物を、W18プローブを用いてインキュベートし、ゲルシフトアッセイにより分析した。レーン1〜8および9〜12は、2つの別々の実験から調製された抽出物を表す。矢印は、HIF-1、構成DNA結合活性(C)、非特異的活性(NS)、および遊離プローブ(F)を指している。 図2は、CoCl2処理HeLa細胞から得られた核抽出物を用いたメチル化干渉分析の結果を表すオートラジオグラフである。W18を、コード鎖または非コード鎖上の5'末端で標識化し、部分的にメチル化し、各抽出物と共にインキュベートした。HIF-1、構成DNA結合活性(C1およびC2)、および非特異的活性(NS)に対応するDNAタンパク質複合体(下図)を、遊離プローブ(F)(図示せず)と共に、分離ゲルシフトアッセイにより単離した。DNAを精製し、ピペリジンで切断し、15%変性ポリアクリルアミドゲルを用いて解析した(上図)。その結果は、コード鎖については左側に、また非コード鎖については右側にまとめられている。W18プローブ上の位置に従ってグアニン残基が番号付けされている。HIF-1結合部位は矩形で囲んだ。HIF-1結合を有する完全メチル化干渉体は白丸で示され;構成DNA結合活性を有する部分的および完全メチル化干渉体はそれぞれ黒の四角形および白の四角形で示されている。 図3Aは、HIF-1のDNA結合活性に対するカラム画分のゲルシフトアッセイ分析を表すオートラジオグラフである。核抽出物をDEAE-セファロースクロマトグラフィーにより分画し、HIF-1活性を有する画分をW18 DNAアフィニティーカラムにかけた。5μgのタンパク質を0.1μgの子ウシ胸腺DNAと共にインキュベートし、粗製の核抽出物(粗製NE;レーン1)およびDEAE-セファロースカラムから得られたHIF-1活性画分(DEAE;レーン2)のゲルシフト分析を行った。W18カラムから得られた画分(レーン3〜13)に対しては、1μlのアリコートを5ngの子ウシ胸腺DNAと共にインキュベートした。2つのHIF-1バンド、構成活性(C)、非特異的活性(NS)、および遊離プローブ(F)の位置が示されている。FT(流出)、0.25M、0.5M、1M、および2Mは、緩衝剤Z中に指定の濃度のKClを含有させたときに溶離された画分である。 図3Bは、図3Aについての説明文中に記載した部分的に精製された画分の配列特異的DNA結合を示すオートラジオグラフである。DEAE-セファロースカラムから得られた画分の5μgアリコートを、競合体なし、10倍モル過剰(レーン2および5)、50倍モル過剰(レーン3および6)、または250倍モル過剰(レーン4および7)の非標識化W18(W、レーン2〜4)またはM18(M、レーン5〜7)オリゴヌクレオチドの存在下で、W18プローブと共にインキュベートした。 図4Aは、CoCl2処理HeLa S3細胞から得られたHIF-1の精製を示すオートラジオグラフである。M18 DNAカラムから得られた流出画分(充填物、レーン1)、ならびに第2のW18 DNAアフィニティーカラムから得られた0.25M KCl画分および0.5M KCl画分(レーン2および3)を分析した。各画分のアリコート(5μgの充填物画分または1μgのアフィニティーカラム画分)を6%SDS-PAGEにより分離させ、銀染色した。レーン2および3のHIF-1ポリペプチドは、図の右側の矢印で示されている。 図4Bは、低酸素Hep3B細胞から得られたHIF-1の精製を示すオートラジオグラフである。第1のW18カラムから得られたHIF-1画分(充填物、レーン1)、ならびに第2のW18カラムから得られた0.25M KCl画分および0.5M KCl画分(レーン2および3)を分析した。各画分のアリコート(50μl)を7%SDS-PAGEにより分離させ、銀染色した。分子質量マーカーは、ミオシン(200kDa)、β-ガラクトシダーゼ(116kDa)、ホスホリラーゼ(97kDa)、DSA(66kDa)、およびオボアルブミン(45kDa)である。レーン2および3のHIF-1ポリペプチドは、図の右側の矢印で示されている。 図5Aは、HIF-1ポリペプチドを同定するオートラジオグラフである。アフィニティー精製されたHIF-1のアリコートを、6%SDS-ポリアクリルアミドゲル(架橋度3.2%)上で、分離未変性ゲルシフトアッセイにより単離されたHIF-1タンパク質複合体(HIF-1)と共に分離させた。MWは図の左側に示されているサイズ(kDa)をもつ分子質量マーカーの分子量であり、図の右側の数値は、HIF-1ポリペプチドの見掛けの分子量を表している。 図5Bは、6%SDS-ポリアクリルアミドゲル(架橋度5%)上のHIF-1成分を示すオートラジオグラフである。アフィニティー精製されたHIF-1のアリコートを、6%SDS-ポリアクリルアミドゲル上で、分離未変性ゲルシフトアッセイにより単離されたHIF-1タンパク質複合体(HIF-1)と共に分離させた。120kDaポリペプチド、94/93/91kDaポリペプチド、および2つの不純物タンパク質(1および2)が示されている。 図5Cは、異なる架橋度を有する2つのゲル系上で同定されたHIF-1成分の並びを示すオートラジオグラフである。6%SDS-ポリアクリルアミドゲル(架橋度5%)から切り出された、120kDaポリペプチド、94/93/91kDaポリペプチド、および2つの不純物タンパク質(1および2)に対応する切片を、アフィニティー精製されたHIF-1(図5A)のアリコート(30μl)と一緒に、6%SDS-ポリアクリルアミドゲル(架橋度3.2%)上で分離させた。 図6は、91kDa HIF-1ポリペプチド(上)、93/94kDaポリペプチド(中)、およびトリプシン(下)から誘導されたトリプシンペプチドの215nmにおける吸収プロフィルである。 図7は、250倍モル過剰の非標識化W18(レーン2)またはM18(レーン3)オリゴヌクレオチドの不存在下または存在下におけるアフィニティー精製されたHIF-1およびプローブW18を用いたUV架橋分析を示すオートラジオグラフである。結合反応混合物にUV照射し、6%SDS-ポリアクリルアミドゲル上で分析した。分子質量標準は左側に示されている。 図8は、グリセロール濃度勾配沈降分析の結果を示すオートラジオグラフである。1%O2に4時間曝露したHep3B細胞から調製された核抽出物(充填物)を、10%〜30%の直線的グリセロール濃度勾配にかけて沈降させた。各画分からのアリコート(10μl)をゲルシフトアッセイにより分析した。上側の矢印は、フェリチン(440kDa)、カタラーゼ(232kDa)、アルドラーゼ(158kDa)、およびBSA(67kDa)に対するピーク泳動を示している。 図9は、HIF-1αをコードするcDNA配列の線図である。太線は、下に示されている全長RNAコード配列に対するクローンhbc120、hbc025、および3.2-3の範囲を示している。矩形領域はアミノ酸コード配列を示し、細線は非翻訳配列を示し、bHLHは基本的ヘリックス‐ループ‐ヘリックスドメインを示し、AおよびBはPASドメイン内の内部相同ユニットを示している。 図10は、HIF-1αのヌクレオチド配列および誘導アミノ酸配列である。クローン3.2-3(nt 1-3389)、hbc025(nt 135-3691)、およびhbc120(nt 1739-3720)に対して測定された完全ヌクレオチド配列から複合配列が誘導された。精製されたHIF-1α120kDaポリペプチドから得られた4つのトリプシンペプチドの配列には下線が引かれている(2つのペプチドは連続している)。 図10-1は、HIF-1αのヌクレオチド配列および誘導アミノ酸配列である。クローン3.2-3(nt 1-3389)、hbc025(nt 135-3691)、およびhbc120(nt 1739-3720)に対して測定された完全ヌクレオチド配列から複合配列が誘導された。精製されたHIF-1α120kDaポリペプチドから得られた4つのトリプシンペプチドの配列には下線が引かれている(2つのペプチドは連続している)。 図10-2は、HIF-1αのヌクレオチド配列および誘導アミノ酸配列である。クローン3.2-3(nt 1-3389)、hbc025(nt 135-3691)、およびhbc120(nt 1739-3720)に対して測定された完全ヌクレオチド配列から複合配列が誘導された。精製されたHIF-1α120kDaポリペプチドから得られた4つのトリプシンペプチドの配列には下線が引かれている(2つのペプチドは連続している)。 図10-3は、HIF-1αのヌクレオチド配列および誘導アミノ酸配列である。クローン3.2-3(nt 1-3389)、hbc025(nt 135-3691)、およびhbc120(nt 1739-3720)に対して測定された完全ヌクレオチド配列から複合配列が誘導された。精製されたHIF-1α120kDaポリペプチドから得られた4つのトリプシンペプチドの配列には下線が引かれている(2つのペプチドは連続している)。 図10-4は、HIF-1αのヌクレオチド配列および誘導アミノ酸配列である。クローン3.2-3(nt 1-3389)、hbc025(nt 135-3691)、およびhbc120(nt 1739-3720)に対して測定された完全ヌクレオチド配列から複合配列が誘導された。精製されたHIF-1α120kDaポリペプチドから得られた4つのトリプシンペプチドの配列には下線が引かれている(2つのペプチドは連続している)。 図10-5は、HIF-1αのヌクレオチド配列および誘導アミノ酸配列である。クローン3.2-3(nt 1-3389)、hbc025(nt 135-3691)、およびhbc120(nt 1739-3720)に対して測定された完全ヌクレオチド配列から複合配列が誘導された。精製されたHIF-1α120kDaポリペプチドから得られた4つのトリプシンペプチドの配列には下線が引かれている(2つのペプチドは連続している)。 図10-6は、HIF-1αのヌクレオチド配列および誘導アミノ酸配列である。クローン3.2-3(nt 1-3389)、hbc025(nt 135-3691)、およびhbc120(nt 1739-3720)に対して測定された完全ヌクレオチド配列から複合配列が誘導された。精製されたHIF-1α120kDaポリペプチドから得られた4つのトリプシンペプチドの配列には下線が引かれている(2つのペプチドは連続している)。 図10-7は、HIF-1αのヌクレオチド配列および誘導アミノ酸配列である。クローン3.2-3(nt 1-3389)、hbc025(nt 135-3691)、およびhbc120(nt 1739-3720)に対して測定された完全ヌクレオチド配列から複合配列が誘導された。精製されたHIF-1α120kDaポリペプチドから得られた4つのトリプシンペプチドの配列には下線が引かれている(2つのペプチドは連続している)。 図10-8は、HIF-1αのヌクレオチド配列および誘導アミノ酸配列である。クローン3.2-3(nt 1-3389)、hbc025(nt 135-3691)、およびhbc120(nt 1739-3720)に対して測定された完全ヌクレオチド配列から複合配列が誘導された。精製されたHIF-1α120kDaポリペプチドから得られた4つのトリプシンペプチドの配列には下線が引かれている(2つのペプチドは連続している)。 図11は、bHLHドメインの分析である。各配列の最初の残基の位置およびHIF-1αまたはHIF-1β(ARNT)とのアミノ酸の一致度が、それぞれ左右の余白のカッコ内に示されている。ハイフンは最大の並びに合わせるために配列中に導入されたギャップである。ただし、コンセンサスのところに示されたハイフンは不一致を意味する。コンセンサスとは、所定の位置で同等または類似の残基を有するタンパク質が少なくとも3つあることを意味する。1:FI、L、M、またはV;2:SまたはT;3:DまたはE;4:KまたはR。不変残基は太字で示されている。 図12は、PASドメインの分析である。PASのA(上)サブドメインおよびB(下)サブドメインの並びが示されている。コンセンサスとは、所定の位置で同等または類似の残基を有するタンパク質が少なくとも4つあることを意味する。GenBankアクセス番号:ARNT, M69238; AHR, L19872; SIM, M19020; MI, Z23066; USF, X55666; L-MYC, X13945; CP-1, M34070; PER, M30114; KinA, M31067。 図13Aは、Hep3B細胞を1%O2に0時間、1時間、2時間、4時間、8時間、および16時間曝露した後のHIF-1αおよびHIF-1βRNA発現を示すオートラジオグラフである。 図13Bは、Hep3B細胞を75μM CoCl2に0時間、1時間、2時間、4時間、8時間、および16時間曝露した後のHIF-1αおよびHIF-1βRNA発現を示すオートラジオグラフである。 図13Cは、Hep3B細胞を130μM デスフェリオキサミン(DFX)に0時間、1時間、2時間、4時間、8時間、および16時間曝露した後のHIF-1αおよびHIF-1βRNA発現を示すオートラジオグラフである。 図13Dは、Hep3B細胞を1%O2に4時間曝露し、更に、この細胞をRNA単離前に20%O2に0分間、5分間、15分間、30分間、および60分間曝露した後のHIF-1αおよびHIF-1βRNA発現を示すオートラジオグラフである。 図13Eは、HIF-1α 3'-UTRから得られたAUUUA含有要素の表である。第1のヌクレオチドは、複合cDNA配列に従って番号付けされている。 図14Aは、低酸素Hep3B細胞から得られた核抽出物のオートラジオグラフである。ただし、該細胞をオリゴヌクレオチドプローブW18と共に10分間インキュベートし、免疫血清を添加し(レーン2および5)、氷上で20分間インキュベートし、更にポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた。免疫前血清(レーン3および5)および抗血清(レーン2および4)はそれぞれ、GST/HIF-1α(レーン2および3)またはGST/HIF-1β(レーン4および5)を用いた免疫処理の前と後のウサギから採取したものである。HIF-1、構成(C)DNA結合活性、非特異的(NS)DNA結合活性、遊離プローブ(F)、およびスーパーシフトHIF-1/DNA/抗体複合体(S)が示されている。 図14Bは、精製されたタンパク質調製物および粗製タンパク質抽出物中に存在するHIF-1サブユニット抗血清認識を示す免疫ブロットである。未処理(レーン1)または1%O2に4時間曝露処理(レーン2)したHep3B細胞ならびに未処理(レーン6)または75μM CoCl2に4時間曝露処理(レーン7)したHeLa細胞から得られた核抽出物を、CoCl2処理HeLa細胞から得られたアフィニティー精製HIF-1(1μl、2μl、および5μl)(レーン3〜5)と一緒に、6% SDS/ポリアクリルアミドゲル上で分別した。タンパク質をニトロセルロース膜に移し、HIF-1α(上)またはHIF-1β(下)に対する抗血清と共にインキュベートした。 図14Cは、低酸素細胞中におけるHIF-1αタンパク質およびHIF-1βタンパク質の誘導速度論を示す免疫ブロットである。Hep3B細胞を1%O2に0時間〜16時間曝露した後、核(N.E.)抽出物および細胞質(C.E.)抽出物を調製し、HIF-1α(上)またはHIF-1β(下)に対する抗血清と共に免疫ブロット分析を行った。 図14Dは、低酸素状態後の細胞中のHIF-1αポリペプチドおよびHIF-1βポリペプチドの減少速度論を示す免疫ブロットである。Hep3B細胞を1%O2に4時間曝露し、更に20%O2に戻して0分間〜60分間経過させた後、抽出物を調製し、免疫ブロット分析を行った。矢印の先端により、HIF-1サブユニットと正体不明の交差反応タンパク質とを区別している。 図15Aは、ヒトアルドラーゼ(hALDA)遺伝子、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ1(hPGK1)遺伝子、およびマウスホスホフルクトキナーゼL(mPFKL)遺伝子中のHIF-1結合部位の機能分析に使用したリポーター遺伝子構成体の構造の線図である。矢印は転写開始部位を表し;矩形は、EPO 3'-FS(斜線部分)、hPGK1 5'-FS(斑点部分)、またはmPFKL IVS-1(縞部分)のオリゴヌクレオチドを表している(配列は表3に示した通りである)。pNMHcatおよびpHcat中のhALDA遺伝子の5'末端から得られたDNA断片は、それぞれ3.5kbおよび0.76kbであり、CATコード領域と直接的に融合されている3'末端において共直線性が存在する。 図15Bは、20%O2(白地の棒)または1%O2(黒地の棒)に曝露された形質転換細胞におけるCAT/β-ガラクトシダーゼ発現(相対的CAT活性)を表す棒グラフである。いずれの結果に対しても、上側の目盛を使用してプロットされているが、pHcatのデータだけは下側の目盛を用いてプロットされている。1%O2/20%O2についての相対的CAT活性を表す誘導は、各実験ごとに計算し、平均および平均の標準誤差(SEM)は、n回の独立した実験から得られた結果を用いて決定した。 図16は、HIF-1αの野生型およびドミナントネガティブ変種のアミノ末端(上)およびカルボキシ末端(下)のアミノ酸配列である。

Claims (20)

  1. (a)図10(配列番号1)に示されたDNA配列またはその相補的ストランド;
    または
    (b)(a)で規定されたDNA配列に対してストリンジェント条件下でハイブリダイズを起こすDNA配列;
    によってコードされる単離されたヒトHIF-1αポリペプチド。
  2. 請求項1のHIF-1αポリペプチドおよびHIF-1βからなる、単離されたHIF-1。
  3. (a)配列番号1;
    (b)配列番号1に相補的な核酸;
    (c)少なくとも15個の塩基の長さであり、かつ配列番号1のHIF-1αポリペプチドをコードするヌクレオチドに対してストリンジェント条件下で選択的にハイブリダイズを起こす(a)または(b)の断片;
    から成る群より選ばれるヒトHIF-1αポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  4. 前記ポリヌクレオチドが哺乳類細胞から単離される請求項3のポリヌクレオチド。
  5. 前記哺乳類細胞がヒト細胞である請求項4のポリヌクレオチド。
  6. 請求項3のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  7. 前記ベクターがプラスミドである請求項6のベクター。
  8. 前記ベクターがウイルスである請求項6のベクター。
  9. 請求項6のベクターを用いて安定に形質転換された宿主細胞。
  10. 前記細胞が原核細胞である請求項9の宿主細胞。
  11. 前記細胞が真核細胞である請求項9の宿主細胞。
  12. 請求項2のHIF-1もしくは請求項1のHIF-1αポリペプチドまたはそれらの免疫反応性断片と結合する精製された抗体。
  13. 前記抗体がポリクローナル抗体である請求項12の抗体。
  14. 前記抗体がモノクローナル抗体である請求項12の抗体。
  15. 配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドと比較して同等の生物学的活性を持つ精製かつ単離されたポリペプチドであって、該生物学的活性が、Hep3B細胞中においてエリトロポイエチン(EPO)、アルドラーゼA(ALDA)、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK1)、ピルビン酸キナーゼM(PKM)、および血管内皮成長因子(V-EGF)の合成を促進する、上記ポリペプチド。
  16. HIF-1βイソ型と二量体を形成するヒトHIF-1α変種ポリペプチドであって、しかも配列番号2のアミノ酸の少なくとも1つが他のアミノ酸で置換されている上記ポリペプチド。
  17. 配列番号4の配列を有するヒト変種HIF-1αポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、該変種がHIF-1のDNAへの結合を抑制する、上記ポリヌクレオチド。
  18. 請求項1のポリペプチドまたは請求項3のポリヌクレオチドの検出方法であって、被検者の試料を該ポリペプチドまたは該ポリヌクレオチドに結合する試薬と接触させる工程と、該試薬と該ポリペプチドまたは該ポリヌクレオチドとの結合を検出する工程と、を含む上記検出方法。
  19. 前記試薬が配列番号1に相補的なポリヌクレオチドまたはその一部分である請求項18の方法。
  20. 前記試薬が前記ポリペプチドに特異的な抗体である請求項18の方法。
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