JP2009073973A - 固体燃料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】含水分の多いバイオマスを原料として、少ない加工エネルギー消費量で、ハンドリングのための十分な強度を有する固体燃料を得ることを目的とする。
【解決手段】セルロース系又はデンプン系バイオマスと縮合型タンニン又はそれを含有する植物組織体との混合物の比重1.05以上をもつペレット状圧密体からなる固体燃料であって、セルロース系又はデンプン系バイオマスを含水量20±1質量%まで乾燥し、この乾燥質量当り、日本薬局方に定める五倍子又は没食子から得られるタンニン酸に換算して0.01〜5質量%に相当する割合で縮合型タンニン又はそれを含有する植物組織体粉末を加え、圧密加工して比重1.05以上のペレット状に成形後、乾燥することにより製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、農業廃棄物、食品廃棄物、林産廃棄物、畜産廃棄物などの比較的高水分量のセルロース系又はデンプン系バイオマスを原料とし、少ないエネルギー消費量で製造した固体燃料及びその製造方法に関するものである。
比較的多量の水分を含むバイオマスを原料として固体燃料を製造するには、通常、先ず原料を水分が5〜15質量%になるまで乾燥したのち、デンプン系のりをバインダーとして加え、直径6〜8mmのペレット状に成形している。
しかしながら、このようにして得られる固体燃料は、そのほとんどが4000kcal/kg程度の低位発熱量であるので、水分を5〜15質量%にする過程で、発生するエネルギーの23〜38%を既に消費し、さらにダイスを通す際に5〜10%を消費する結果、加工のために得られる燃料が発生するエネルギーの28〜48%を要することになってしまい、燃料化する意味が失われることになる。
このような問題点を解決するために、バイオマスを高い含水量のまま、接着剤としてデンプンを加えて水分調整し、ダイスを用いて押し出し、ペレット化することが行われている。
このようにすると、ダイス押出しの際の摩擦熱によりエネルギーの消費を補なうことができるので、加工エネルギーを25〜30%まで低下することができるが、固体燃料としての強度が不足し、実用性を欠くことになる。
そのほか、生ごみや可燃性粗大ごみのような廃棄物を米粒大に細断し、これを絞砕機により固形分と水分とに分け、固形分を乾燥したのち、石油系バインダーと混合して成形し、炭化処理して炭化物を調製し、これを粉末化後、デンプン系バインダーと混合し、加圧成形して高カロリーの炭素化固形燃料とする方法が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、この方法は、多工程を有する上に、炭素化するために、多くのエネルギー消費を必要とするという欠点がある。
また、食品加工残渣については、これを炭化物とし、その粉砕物にバインダーとして、糖蜜、デンプン、リグニン、ポリビニルアルコールのような有機バインダー又は消石灰、水ガラス、セメント、タールピッチのような無機バインダーあるいはその両方を加え、加圧成形した固形燃料が提案されている(特許文献2、3参照)。
しかしながら、この固形燃料においても、炭化のためのエネルギー消費量が多くなるという欠点は解消されていない。
他方、木質材片に、ミモザのような植物から抽出されたタンニン系接着剤を加え、加熱加圧することにより、木質系複合材を製造する方法が知られている(特許文献4参照)。
このため、前記したデンプン系接着剤の代りにタンニン系接着剤を用いることが考えられたが、これまでタンニン系接着剤を用いた固体燃料は実現していない。
特開平5−43884号公報(特許請求の範囲その他) 特開2000−319676号公報(特許請求の範囲その他) 特開2001−329281号公報(特許請求の範囲その他) 特開2004−1358号公報(特許請求の範囲その他)
本発明は、含水分の多いバイオマスを原料として、少ない加工エネルギー消費量で、ハンドリングのための十分な強度を有する固体燃料を得ることを目的としてなされたものである。
本発明者らは、従来用いられていたデンプン系接着材に代わるべき粘着材について種々検討した結果、植物タンニンには、カテコール系で代表される縮合型タンニンとピロガロール系で代表される加水分解型タンニンがあるが、含水量の多いバイオマスに対する接着材としては、加水分解されにくい縮合型タンニンが適していること、この縮合型タンニンは、ダイスを通過する際の圧密作用により原料が流動して発生する摩擦熱で粘弾性を発揮すること、バイオマス原料において水分が20質量%前後になると、加圧により毛管水が脱離して毛管内に空間が形成され、弾性変形しやすい性質に変わり、この状態でペレット化すると、圧密と熱変形による粘着材の樹脂化が起ること及びダイス内で原料同士の摩擦とダイスの穴の壁面との摩擦による原料内の水分の蒸発及び粘着材の加水分解によって促進され、ペレット化の動力低減に寄与することを見出し、これらの知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、セルロース系又はデンプン系バイオマスと縮合型タンニン又はそれを含有する植物組織体との混合物の比重1.05以上をもつペレット状圧密体からなる固体燃料、及びセルロース系又はデンプン系バイオマスを含水量20±1質量%まで乾燥し、この乾燥質量当り、日本薬局方に定める五倍子又は没食子から得られるタンニン酸(以下局方タンニン酸という)に換算して0.01〜5質量%に相当する割合で縮合型タンニン又はそれを含有する植物組織体粉末を加え、圧密加工して比重1.05以上のペレット状に成形後、乾燥することを特徴とする固体燃料の製造方法を提供するものである。
本発明におけるセルロース系又はデンプン系バイオマスとしては、農業廃棄物又は林業廃棄物を用いるのが好ましい。この農業廃棄物としては、例えばイネワラ、ムギワラ、トウモロコシの茎又は葉、野菜屑、果物屑、果樹剪定枝、残飯、おから、焙煎コーヒー粕、茶がらなどがある。また、林業廃棄物として間伐材、食用きのこ栽培廃木、やしの葉、廃菌床などがある。
また、このセルロース系又はデンプン系バイオマスとしては、家畜糞を用いることもできる。なお、この家畜糞は、そのままで用いてもよいし、乾燥物、炭化物として用いてもよい。
このセルロース系又はデンプン系バイオマスの含水量としては、特に制限はなく、かなり多量の水分を含むものも用いることができるが、乾燥工程における熱エネルギー消費を節約するためには、含水量50質量%以下のものが好ましく、またダイス通過の際に毛管水が除去されて空間ができやすい点を考慮すると10〜30質量%、特に20±1質量%の範囲が好ましい。
次に、本発明においては、上記セルロース系又はデンプン系バイオマスと併用するバインダーとしてタンニンを用いるが、このタンニンとしては縮合型タンニンを用いることが必要である。
ところで、植物タンニンは、カテコール系の縮合型タンニンとピロガロール系の加水分解型タンニンに大別されるが、本発明においては、含水量の多いバイオマス原料として用いるため、加水分解型タンニンを用いるのは不適当であり、加水分解されにくい縮合型タンニンを用いることが必要である。
この縮合型タンニンは、カキ科のカキ(Disopyros kaki THUNB)の実、ブナ科クリ(Castanea crenata SIBE)の渋皮、マメ科タマリンド(Tamarindus indica LINNE)の種子の種皮、マメ科ミモザ(Acacia dealbata LINNE)の樹皮、ウルシ科ヌルデ(Rhus javanica LINNE)にできる虫こぶ、すなわち五倍子やブナ科植物の虫こぶ、すなわち没食子などの植物体に含まれているので、これらから水、エタノールなどの溶媒を用いて抽出することができる。最も好ましい縮合型タンニンの供給原料はヌルデから得られる五倍子や没食子である。
本発明においては、上記の抽出液から縮合型タンニンを分離して用いてもよいし、抽出液をそのまま用いてもよい。また、所望ならば、縮合型タンニンを含む植物組織体をそのまま粉砕して用いることもできる。さらに、植物組織体を自然発酵後抽出した液を用いてもよい。
茶抽出残渣、焙煎コーヒー抽出残渣にはリグニンが含まれているが、このリグニンは加水分解型リグニンのため、含水量の多いセルロース系又はデンプン系バイオマスと混合すると、加水分解するので、バインダーとしての役割を果さなくなる。
本発明においては、セルロース系又はデンプン系バイオマス原料に対し、縮合型タンニンを、局方タンニン酸に換算した量で、上記原料の乾燥質量当り、0.01〜5質量%の割合で混合する。これよりも少ない量では、得られるペレットの強度が低く、ハンドリングが困難になるし、またこれよりも量を増加させても、特にメリットはなく経済的に無駄となる。
ところで、日本薬局方には、五倍子及び没食子について、黄白色ないし淡褐色の無晶形の粉末、光沢のある小葉片又は海綿状の塊で、においはないか、又はわずかに特異なにおいがあり、味は極めて渋い。水又はエタノールに極めて溶けやすく、エーテルにほとんど溶けない。乾燥減量12%以下(1g、105℃、2時間)、強熱残分1.0%以下(0.5g)と規定されている。
本発明の固体燃料は、比重1.05以上に加圧、緻密化されていることが必要であり、これよりも比重が小さいとハンドリングや運搬中に崩壊するおそれがある。
次に、本発明の固体燃料を製造するには、あらかじめセルロース系又はデンプン系バイオマスを20〜40mmのサイズに粗粉砕又は裁断し、これを含水量50質量%以下、好ましくは10〜30質量%、特に20±1質量%に乾燥したのち、これに、この乾燥質量当り、局方タンニン酸に換算して0.01〜5質量%の縮合型タンニンを加える。この際、バイオマス原料として含水量が少ないものを用いた場合には、縮合型タンニンを含む水溶液を、含水量が10〜15質量%になるまで噴霧してもよい。
次いで、リングダイ又はディスクダイ型造粒装置を用い、ダイスの孔径6〜10mmの範囲で圧縮押出して圧密化し、ペレットとする。この際ペレット化された材料の温度が70〜90℃になることが、縮合型タンニンの樹脂化の目安になる。
本発明によると、これまで未利用のセルロース系又はデンプン系バイオマスを有効利用し、低い加工エネルギー消費量で4000kcal/kg前後の低位発熱量ではあるが、硫黄などの有毒成分の少ない固体燃料を得ることができる。
しかも、この固体燃料は、生物資源由来の原料成分を用いているので、大気圏の二酸化炭素の濃度増加には関係がなく、地球温暖化防止に寄与するというメリットがある。
次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
なお、各例におけるセルロース系又はデンプン系バイオマス原料と縮合型タンニンとの混合割合は以下のようにして決定された数値である。
既知量の局方タンニン酸を含むバイオマス原料について、含水率を20質量%に調整し、孔径6mmのダイスを用いて標準ペレットを作製し、その比重を求める。次いで、未知量のタンニン酸を含むバイオマス原料を用いて、含水率20質量%に調整して孔径6mmのダイスから押し出してペレットを作製し、上記の標準ペレットと同じ比重になったときの、そのペレットのタンニン抽出残渣量を求め、これに基づいて配合比率を決定する。
このタンニン抽出残渣量は、40℃において水又はエタノールで抽出した液をろ過したのち蒸発して液体を除去し、残った残渣の量と減量との割合から算出する。
上記のようにして縮合型タンニンを含む植物ごとに作製したペレット燃料の固体の比重を測定し、局方タンニン酸含有率を推定し、これに対応する個別のバインダーの含有率を推定し、これに基づいて縮合型タンニンを含むバインダーとバイオマス原料乾物量との混合比を決定する。
イネワラをカッターで20〜40mmサイズに裁断し、これにカキ渋を局方タンニン酸換算1.0質量%を加えたのち、約50℃の温度に保って、含水率20±1質量%になるまで乾燥する。次いでダイス径6mm、8mm又は10mmのディスクダイ型ペレッタイザーを用いて押出し、長さ20mmのペレットを作製する。この際、ペレッタイザーを通過後のペレットの温度は最大90℃に達し、その表面には水分が移行しているので、コンベア内で送風することにより、水分の除去と冷却を行い、含水量を15質量%まで低下させる。このようにして得た、固体燃料のペレット状態及び比重を、この際の所要動力とともに表1に示す。
次に、上記のイネワラの代りにムギワラ又はトウモロコシ茎葉を用いて同様の操作を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。
Figure 2009073973
なお、表中(以下同じ)のペレット状態の記号は次の意味をもつ。
◎:非常に良好
○:良好
△:やや不良
×:不良
おから、野菜残澄(千切りキャベツ)、残飯(米)の水分を70℃に保持して、水分が30質量%、20質量%又は15質量%になるまで乾燥したのち、縮合型タンニン(タマリンド)0.1質量%を加えたものと加えないものについて、孔径8mmのリングダイを用いてペレット化し、固体燃料を製造した。このようにして得た固体燃料のペレット状態を表2に示す。
Figure 2009073973
コーヒー抽出粕、茶だしがら又は廃ホダ木(なら)の含水量25質量%、20質量%又は15質量%のものに対して、局方タンニン酸換算で1質量%に相当するミモザ樹皮乾燥物を加え、又は加えずに孔径6mmのリングダイを用いてペレット化し、固体燃料を製造した。このようにして得た固体燃料のペレット状態を表3に示す。
Figure 2009073973
ナシ剪定枝粉砕物(サイズ5〜10mm、水分20質量%)に五倍子から抽出したタンニン0.01質量%を添加したもの又は添加しないものについて、それぞれ直径6mm、8mm又は10mmのディスクダイを用いてペレット化し、固体燃料を製造した。この際の、得られた材料の温度とペレットの比重を表4にそれぞれ示す。
Figure 2009073973
水分5質量%、10質量%又は15質量%の豚糞炭化物に、縮合型タンニンの含有量を0.1質量%から5質量%に相当するクリの渋皮を添加したのち、直径6mmのリングダイを用いてペレット化し、固体燃料を製造した。これらの固体燃料のペレット状態を表5に示す。
Figure 2009073973
この表におけるペレット状態の評価は次のとおりである。
D:形成不可能
C:形成するが崩壊しやすい
B:比重が小さい(1.03〜1.05)
A:比重が大きい(1.05〜1.08)
パインアップルジュースの搾り粕、ココナッツヤシの外皮の繊維分やタピオカデンプンを採取した根茎果皮残渣のうち、15質量%以下に乾燥されたものを、柿渋入りの水を噴霧してタンニン混合割合が0.8質量%になるようにし、普通の水を使用して水分を約20質量%に調整して、ダイス孔径6mm、8mm又は10mmのディスクダイを用いて、表6の結果を得た。この結果、南洋産バイオマスはリグニンの多いものとそうでないものを対象原料としたが、実施例1よりやや少ないタンニン酸でも十分ペレット化が可能であることが分った。
Figure 2009073973
本発明は、これまで燃料として利用が困難であった農業廃棄物、食品廃棄物、畜産廃棄物などの比較的水分の多いバイオマスを原料として、4000kcal/kg程度の発熱量を有する固体燃料を製造することができる。

Claims (9)

  1. セルロース系又はデンプン系バイオマスと縮合型タンニン又はそれを含有する植物組織体との混合物の比重1.05以上をもつペレット状圧密体からなる固体燃料。
  2. セルロース系又はデンプン系バイオマスが農業又は林業廃棄物の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の固体燃料。
  3. 農業又は林業廃棄物が、イネワラ、ムギワラ、トウモロコシ茎葉、野菜屑、果物屑、果樹剪定枝、残飯、おから、焙煎コーヒー粕、茶がら、食用きのこ栽培廃木又は廃菌床である請求項2記載の固体燃料。
  4. セルロース系又はデンプン系バイオマスが家畜糞である請求項1記載の固体燃料。
  5. 縮合型タンニンが植物組織体からの抽出物である請求項1記載の固体燃料。
  6. 縮合型タンニン含有植物組織体が植物組織体粉末である請求項1記載の固体燃料。
  7. 縮合型タンニン含有植物組織体がカキの実、ミモザの樹皮、クリの渋皮、タマリンドの豆又はヌルデの葉茎である請求項5又は6記載の固体燃料。
  8. 縮合型タンニン又は縮合型タンニン含有植物組織体の含有量が、日本薬局方に定める五倍子又は没食子から得られるタンニン酸の量に換算して、セルロース系又はデンプン系バイオマスの乾燥質量当り0.01〜5質量%である請求項1ないし7のいずれかに記載の固体燃料。
  9. セルロース系又はデンプン系バイオマスを含水量20±1質量%まで乾燥し、この乾燥質量当り、日本薬局方に定める五倍子又は没食子から得られるタンニン酸に換算して0.01〜5質量%に相当する割合で縮合型タンニン又はそれを含有する植物組織体粉末を加え、圧密加工して比重1.05以上のペレット状に成形後、乾燥することを特徴とする固体燃料の製造方法。
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