JP2009067968A - インクジェット記録用インク組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】隠蔽性に加えて、耐沈降性および耐擦過性の両方に優れたインクジェット記録用インク組成物を提供すること。
【解決手段】インクジェット記録用インク組成物は、一次粒子径が1nm以上、130nm以下である第1の金属酸化物からなる微粒子の表面を第1層として該第1の金属酸化物と異なる第2の金属酸化物で被覆し、かつその外側を第2層としてポリマーで被覆してなり、該第1の金属酸化物からなる微粒子の体積平均粒子径が150nm以上、500nm以下であり、かつポリマー被覆量が該第1の金属酸化物と該第2の金属酸化物との合計量に対して5質量%以上、200質量%以下であるポリマー被覆金属酸化物微粒子を含有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用インク組成物に関する。
産業用・工業用インクジェット印刷装置に用いられる白色インク組成物は、例えば、白色顔料の酸化チタンを用いて隠蔽性を発現しているが、酸化チタンの比重が大きいので、酸化チタン微粒子が沈降するという問題点があった。この問題を解消するためには、一次粒子径が小さい酸化チタン微粒子を用いることも考えられるが、一次粒子径が小さくなると、今度は、隠蔽性が低下するという問題点があった。それゆえ、隠蔽性を低下させることなく、顔料粒子の沈降を防止する技術が求められていた。
そこで、例えば、特許文献1には、アルミニウムおよび/またはケイ素の酸化物で被覆されている平均一次粒子径が0.15〜0.25μmの酸化チタン微粒子を、さらにSiH含有ポリシロキサンおよび/またはジメチルポリシロキサンにて0.01〜2.5質量%の割合で表面処理した白色顔料を含有するインクジェット記録用油性インク組成物が開示されている。このインク組成物は、隠蔽性に加えて、白色顔料の沈降に対する安定性、すなわち耐沈降性に優れるとされている。
ところで、インクジェット記録用インク組成物は、被記録材料に印刷された後、印刷面を手指などで擦った場合に色移りしないこと、すなわち耐擦過性が要求される。この点に関し、特許文献1に開示されたインク組成物には、顔料粒子に加えて、バインダー樹脂として機能する繊維素系樹脂が配合されているが、耐擦過性を向上させるために、繊維素系樹脂の配合割合を多くすると、インク組成物の粘度が上昇して、良好な印字適性が得られない。それゆえ、良好な印字適性を確保しながら、目的とする耐擦過性を発現させるのに充分な量の繊維素系樹脂を配合することは困難である。また、耐擦過性を向上させるために、顔料粒子のポリシロキサン被覆量を多くすると、顔料粒子が沈降しやすくなる。それゆえ、隠蔽性を低下させることなく、顔料粒子の沈降を防止すると共に、さらに、耐擦過性を発現させる技術が求められている。
特開2004−263181号公報
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、隠蔽性に加えて、耐沈降性および耐擦過性の両方に優れたインクジェット記録用インク組成物を提供することにある。
本発明者は、種々検討の結果、一次粒径が小さい金属酸化物微粒子を用いても、その体積平均粒子径を所定の範囲内に調整し、その表面を第1層として該金属酸化物と異なる金属酸化物で被覆し、かつその外側を第2層として所定量のポリマーで被覆すれば、得られたポリマー被覆金属酸化物微粒子を配合したインクジェット記録用インク組成物が、隠蔽性に加えて、耐沈降性および耐擦過性の両方に優れることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、一次粒子径が1nm以上、130nm以下である第1の金属酸化物からなる微粒子の表面を第1層として該第1の金属酸化物と異なる第2の金属酸化物で被覆し、かつその外側を第2層としてポリマーで被覆してなり、該第1の金属酸化物からなる微粒子の体積平均粒子径が150nm以上、500nm以下であり、かつポリマー被覆量が該第1の金属酸化物と該第2の金属酸化物との合計量に対して5質量%以上、200質量%以下であるポリマー被覆金属酸化物微粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク組成物を提供する。
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、前記第2の金属酸化物で被覆した前記第1の金属酸化物からなる微粒子(すなわち、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子)の表面は、好ましくは、カップリング剤で処理されている。
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、前記第1の金属酸化物は、好ましくは、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物である。また、前記第2の金属酸化物は、好ましくは、シリカおよび/またはアルミナである。さらに、前記ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびスチレン−(メタ)アクリル系ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである。
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、そこに配合されたポリマー被覆金属酸化物微粒子が金属酸化物微粒子を構成する第1の金属酸化物と異なる第2の金属酸化物からなる第1層とポリマーからなる第2層とを有すると共に、該第1の金属酸化物からなる微粒子の体積平均粒子径が150nm以上、500nm以下であり、かつポリマー被覆量が該第1の金属酸化物と該第2の金属酸化物との合計量に対して5質量%以上、200質量%以下であるので、隠蔽性に加えて、耐沈降性および耐擦過性の両方に優れる。特に、バインダー樹脂の機能を果たすポリマーが第2の金属酸化物で被覆された第1の金属酸化物からなる微粒子の表面に局在化するので、インク組成物の粘度を上昇させることなく、耐沈降性と耐擦過性とを両立させることができる。
≪インクジェット記録用インク組成物≫
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、一次粒子径が1nm以上、130nm以下である第1の金属酸化物からなる微粒子(以下、単に「金属酸化物微粒子」ということがある。)の表面を第1層として該第1の金属酸化物と異なる第2の金属酸化物で被覆し、かつその外側を第2層としてポリマーで被覆してなり、該第1の金属酸化物からなる微粒子の体積平均粒子径が150nm以上、500nm以下であり、かつポリマー被覆量が該第1の金属酸化物と該第2の金属酸化物との合計量に対して5質量%以上、200質量%以下であるポリマー被覆金属酸化物微粒子を含有することを特徴とする。ここで、「一次粒子径」とは、金属酸化物微粒子を構成する最小の粒子である一次粒子の粒子径を意味し、本発明では、金属酸化物微粒子を走査型または透過型電子顕微鏡(倍率:1万倍)で観察して得られた撮影像に含まれる任意の金属酸化物微粒子100個の1次粒子径を測定して、その測定値から算出した数平均粒子径(なお、走査型電子顕微鏡で観察する場合には、観察に先立って金属酸化物微粒子に貴金属合金の蒸着処理を行うので、蒸着層の厚さの分だけ補正した数平均粒子径)であるか、あるいは、金属酸化物微粒子の市販品を利用する場合には、市販品を提供する業者の公称値を採用する。
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、金属酸化物微粒子の一次粒子径は、通常は1nm以上、130nm以下、好ましくは5nm以上、120nm以下、より好ましくは10nm以上、100nm以下である。金属酸化物微粒子の一次粒子径が1nm未満であると、一次粒子が凝集して二次粒子を形成しても、粒子径が小さすぎるので、インク組成物の隠蔽性が低下することがある。逆に、金属酸化物微粒子の一次粒子径が130nmを超えると、一次粒子が凝集して二次粒子を形成すると、粒子径が大きすぎるので、インク組成物の耐沈降性が低下することがある。
また、金属酸化物微粒子は、一次粒子が凝集して二次粒子を形成しており、一次粒子間に空隙を有するので、同じ粒子径の一次粒子に比べて、比重が小さくなり、インク組成物の耐沈降性が向上する。金属酸化物微粒子の体積平均粒子径は、通常は150nm以上、500nm、好ましくは180nm以上、450nm以下、より好ましくは200nm以上、400nm以下である。金属酸化物微粒子の体積平均粒子径が150nm未満であると、粒子径が小さすぎるので、インク組成物の隠蔽性が低下することがある。逆に、金属酸化物の体積平均粒子径が500nmを超えると、粒子径が大きすぎるので、インク組成物の耐沈降性が低下することがある。なお、金属酸化物微粒子の体積平均粒子径は、動的光散乱粒子径測定装置(商品名「NICOMP 380」、Particle Sizing System Inc.製)を用いて測定された金属酸化物微粒子のGaussian体積平均粒子径である。
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、金属酸化物微粒子を構成する第1の金属酸化物は、白色顔料として隠蔽性を発現する限り、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの金属酸化物からなる微粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの金属酸化物からなる微粒子のうち、市販品を容易に入手できることから、酸化チタン微粒子が好適である。
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、金属酸化物微粒子の表面を被覆する金属酸化物層を構成する第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物と異なる種類であって、金属酸化物微粒子の白色顔料としての隠蔽性を阻害しない限り、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、シリカ、酸化アルミニウム(以下「アルミナ」ということがある。)などが挙げられる。なお、本発明では、シリカを金属酸化物の範疇に含めるものとする。これらの金属酸化物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの金属酸化物のうち、金属酸化物微粒子を均一に被覆することができることや、微粒子表面をシランカップリング剤などで前処理しやすいことから、シリカおよび/またはアルミナが好適である。
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、ポリマー被覆金属酸化物微粒子のポリマー層を構成するポリマーは、第2の金属酸化物で被覆された金属酸化物微粒子の存在下で、重合性モノマーを乳化重合することにより、その表面にポリマー層を形成することができる限り、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、これらの共重合体などが挙げられる。これらのポリマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのポリマーのうち、上記のような乳化重合が容易に行えることから、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、スチレン−(メタ)アクリル系ポリマーが好適である。
ポリマー被覆金属酸化物微粒子のポリマー被覆量は、第1の金属酸化物と第2の金属酸化物との合計量に対して、通常は5質量%以上、200質量%以下、好ましくは5質量%以上、180質量%以下、より好ましくは5質量%以上、150質量%以下である。ポリマー被覆金属酸化物微粒子のポリマー被覆量が5質量%未満であると、ポリマー被覆金属酸化物微粒子のポリマー層がバインダー樹脂として充分に機能せず、インク組成物の耐擦過性が低下することがある。逆に、ポリマー被覆金属酸化物微粒子のポリマー被覆量が200質量%を超えると、ポリマー被覆金属酸化物微粒子が凝集して高次構造を形成するので、インク組成物の耐沈降性が低下することがある。
ポリマー被覆金属酸化物微粒子の粒子径は、好ましくは170nm以上、600nm以下、より好ましくは190nm以上、500nm以下、さらに好ましくは220nm以上、450nm以下である。ポリマー被覆金属酸化物微粒子の粒子径が170nm未満であると、粒子径が小さすぎるので、インク組成物の隠蔽性が低下することがある。逆に、ポリマー被覆金属酸化物微粒子の粒子径が600nmを超えると、粒子径が大きすぎるので、インク組成物の耐沈降性が低下することがある。なお、ポリマー被覆金属酸化物微粒子の粒子径は、動的光散乱粒子径測定装置(商品名「NICOMP 380」、Particle Sizing System Inc.製)を用いて測定されたポリマー被覆金属酸化物微粒子のGaussian体積平均粒子径である。
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、白色顔料として、ポリマー被覆金属酸化物微粒子を含有する。ポリマー被覆金属酸化物微粒子の配合量は、インクジェット記録用インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上、50質量%以下、より好ましくは1質量%以上、40質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上、30質量%以下である。ポリマー被覆金属酸化物微粒子の配合量が0.5質量%未満であると、インク組成物の隠蔽性が不充分となり、被記録材料の下地の色を充分に隠蔽できないことがある。逆に、ポリマー被覆金属酸化物微粒子の配合量が50質量%を超えると、ポリマー被覆金属酸化物微粒子同士が構造粘性を示すので、インク組成物の粘度が上昇しやすく、インクジェットプリンターで印字する際の吐出安定性が低下することがある。
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、ポリマー被覆金属酸化物微粒子以外の成分に応じて、水性インク組成物、油性インク組成物または紫外線硬化型インク組成物の形態に調製することができる。
水性インク組成物の場合には、ポリマー被覆金属酸化物微粒子に加えて、水、水溶性有機溶剤などの溶剤のほか、必要に応じて、例えば、バインダー樹脂、湿潤剤、分散剤、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤などの各種添加剤が配合される。油性インク組成物の場合には、ポリマー被覆金属酸化物微粒子に加えて、有機溶剤のほか、必要に応じて、例えば、バインダー樹脂、帯電防止剤、界面活性剤、粘度調整剤、可塑剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤が配合される。紫外線硬化型インク組成物の場合には、ポリマー被覆金属酸化物微粒子に加えて、水や水溶性有機溶剤、または、有機溶剤などの溶剤、(メタ)アクリル酸エステル類などのラジカル重合性化合物および光ラジカル重合開始剤、あるいは、エポキシ化合物やビニル化合物などのカチオン重合性化合物および光カチオン重合開始剤のほか、必要に応じて、例えば、バインダー樹脂、増感剤、分散剤、帯電防止剤、粘度調整剤、可塑剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤が配合される。なお、これらの添加剤は、従来公知の添加剤の中から適宜選択すればよく、また、これらの添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわない限り、各々の添加剤がその機能を発揮する配合量の範囲内で適宜設定すればよい。
なお、本発明のインクジェット記録用インク組成物は、ポリマー被覆金属酸化物微粒子のポリマー層がバインダー樹脂の機能を果たすので、必ずしもバインダー樹脂を配合する必要がない。それゆえ、本発明のインクジェット記録用インク組成物は、粘度を上昇させることなく、耐沈降性に加えて、充分な耐擦過性を発現することができる。
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、白色顔料として、ポリマー被覆金属酸化物微粒子を含有するが、さらに従来公知の色素や顔料を添加して、淡色系のインク組成物とすることもできる。
≪インクジェット記録用インク組成物の製造方法≫
まず、所定の一次粒子径を有する第1の金属酸化物からなる微粒子の表面を第2の金属酸化物で被覆して金属酸化物被覆金属酸化物微粒子を調製する方法について説明する。
<金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の調製>
金属酸化物微粒子(すなわち、第1の金属酸化物からなる微粒子)の表面を第1層として該第1の金属酸化物と異なる第2の金属酸化物で被覆する方法としては、微粒子表面を被覆することができる限り、特に限定されるものではないが、微粒子表面を均一に被覆することができるという観点から、ゾル−ゲル法が好適である。
ゾル−ゲル法を用いて、金属酸化物微粒子を被覆するには、アルコールなどの有機溶媒中に金属酸化物微粒子を超音波などで分散させておき、ここに第2の金属酸化物を与える金属アルコキシド、水、酸または塩基を加えて加水分解し、一定期間適当な温度で熟成させ、金属酸化物微粒子の表面に、金属アルコキシドの加水分解により生成した第2の金属酸化物を析出または沈積させることにより、第2の金属酸化物で被覆された金属酸化物微粒子が得られる。
金属酸化物微粒子としては、一次粒子径が通常は1nm以上、130nm以下、好ましくは5nm以上、120nm以下、より好ましくは10nm以上、100nm以下である金属酸化物微粒子を用いるが、このような金属酸化物微粒子を溶媒に添加混合した後、例えば、超音波を用いて分散を行うことにより、金属酸化物微粒子の体積平均粒子径が通常は150nm以上、500nm以下、好ましくは180nm以上、450nm以下、より好ましくは200nm以上、400nm以下となるように調整する。この操作により、金属酸化物微粒子の一次粒子が凝集して二次粒子を形成し、所定の体積平均粒子径を有するようになる。
第2の金属酸化物を与える金属アルコキシドとしては、第2の金属酸化物が酸化チタンである場合には、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラフェノキシチタンなどが挙げられ、第2の金属酸化物が酸化亜鉛である場合には、ジエトキシ亜鉛、ジブトキシ亜鉛などが挙げられ、第2の金属酸化物が酸化ジルコニウムである場合には、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトライソブトキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジルコニウムなどが挙げられ、第2の金属酸化物がシリカである場合には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラフェノキシシランなどが挙げられ、第2の金属酸化物がアルミナである場合には、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリ−t−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウムなどが挙げられる。なお、本発明では、上記のような有機ケイ素化合物を金属アルコキシドの範疇に含めるものとする。これらの金属アルコキシドは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの金属アルコキシドを2種以上併用すれば、第2の金属酸化物は、金属酸化物の混合物や、2種以上の金属元素を含む複酸化物となる。
上記したように、金属酸化物微粒子を均一に被覆することができることや、微粒子表面をシランカップリング剤などで前処理しやすいことから、第2の金属酸化物としては、シリカおよび/またはアルミナが好適である。
有機溶媒としては、水との混和性を有する限り、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコールなどの一価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルなどの多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトンなどのケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、一価アルコール類が好適である。
金属アルコキシドを加水分解する際には、触媒として、酸または塩基が用いられる。酸としては、例えば、塩酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。塩基としては、例えば、アンモニアなどが挙げられる。これらの触媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの触媒のうち、反応速度が速く、3次元性や密度が非常に高いゲルを生じ、高い緻密性からゲル骨格内部に水やアルコールを含有しにくいことから、塩基(例えば、アンモニア)を用いることが好ましい。
金属酸化物微粒子の分散液に、金属アルコキシド、水、酸または塩基を同時または順次に添加した後、この混合液を、好ましくは50℃以上、90℃以下、より好ましくは60℃以上、80℃以下の温度で、好ましくは30分間以上、12時間以下、より好ましくは1時間以上、8時間以下にわたって保持して、加水分解すると共に熟成させる。
かくして、所定の1次粒子径を有する金属酸化物微粒子が凝集して形成された二次粒子の表面に、加水分解により生じた第2の金属酸化物が析出または沈積することにより、金属酸化物微粒子の表面を第1層として第2の金属酸化物で被覆してなる金属酸化物被覆金属酸化物微粒子が得られる。
第2の金属酸化物の生成量は、金属酸化物微粒子に対して、好ましくは1質量%以上、35質量%以下、より好ましくは3質量%以上、30質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上、25質量%以下である。
なお、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子は、分散液の形態で得られるが、次のポリマー被覆工程には、分散液の形態で用いても、あるいは、例えば、遠心分離や濾過などの従来公知の方法で単離して粉体の形態で用いてもよい。ただし、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理する場合には、分散液から金属酸化物被覆金属酸化物微粒子を単離することなく、カップリング剤で処理した後、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子を単離して粉体の形態とし、次のポリマー被覆工程に用いることが好ましい。なお、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理する方法については、以下で詳しく説明する。
次に、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面を所定量のポリマーで被覆してポリマー被覆金属酸化物微粒子を調製する方法について説明する。
<ポリマー被覆金属酸化物微粒子の調製>
ポリマー被覆金属酸化物微粒子は、水性媒体中、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子、好ましくはカップリング剤で処理した金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の存在下で、重合性モノマーを乳化重合することにより、製造することができる。
金属酸化物被覆金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理することにより、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基とカップリング剤とを反応させて、前記金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面に化学結合を介して官能基を導入することができる。金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面に官能基を導入した後、前記官能基と反応しうる反応性基を有する重合性モノマーを反応させて、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面において前記重合性モノマーからポリマーを合成することにより、前記金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面を前記ポリマーで切れ目なく被覆することができる。
カップリング剤としては、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基と反応する反応性部位と、反応性基を有する重合性モノマーの前記反応性基と反応する官能基とを有する化合物である限り、特に限定されるものではないが、例えば、様々な官能基を有するシランカップリング剤やチタネート系カップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤を用いた場合には、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基と反応して、−O−Si−結合を介して、前記金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面に様々な官能基が導入される。また、チタネート系カップリング剤を用いた場合には、−O−Ti−結合を介して、前記金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面に様々な官能基が導入される。カップリング剤としては、様々な官能基を有するものが市販されており、入手し易いことから、シランカップリング剤が好適である。カップリング剤が有する官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などを含有するシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルジメチルクロロシランなどのビニル基含有シランカップリング剤;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;γ−イソシアノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤;γ―メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのシランカップリング剤のうち、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面からポリマー合成を効率よく行えることから、ビニル基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤が好適である。
金属酸化物被覆金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理するには、例えば、水性媒体中で、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子とカップリング剤とを混合して攪拌すればよい。その際、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子とカップリング剤との反応を促進させるために、必要に応じて、好ましくは30℃以上、100℃以下、よりこのましくは40℃以上、90℃以下の温度に加温または加熱することができる。カップリング剤の使用量は、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子に対して、好ましくは0.05質量%以上、20質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上、15質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上、10質量%以下である。カップリング剤の使用量が0.05質量%未満であると、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面をポリマーで充分に被覆できないことがある。逆に、カップリング剤の使用量が20質量%を超えると、反応液の粘度が上昇したり、反応液がゲル化を起こしたりすることがある。
金属酸化物被覆金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理する際に用いる水性媒体は、下記で説明する重合反応に用いる水性媒体と同様であるが、重合反応に用いる水性媒体と同一であっても異なっていてもよい。
金属酸化物被覆金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理する際には、水性媒体中に金属酸化物被覆金属酸化物微粒子を分散させることが好ましいので、必要に応じて、分散安定剤を用いることができる。分散安定剤としては、例えば、従来公知の界面活性剤や、ポバールなどの高分子分散安定剤などが挙げられる。これらの分散安定剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。分散安定剤の使用量は、水性媒体に対して、好ましくは0質量%以上、5質量%以下、より好ましくは0質量%以上、4質量%以下、さらに好ましくは0質量%以上、3質量%以下である。分散安定剤の使用量が5質量%を超えると、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子をカップリング剤で効率よく処理できないことがある。
重合性反応基を有するカップリング剤の場合、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理した後、未反応のカップリング剤が存在すると、重合工程で架橋剤として作用し、被覆ポリマーが架橋構造を有するようになり、溶媒や樹脂などに対する分散性が低下することがある。それゆえ、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理した後、未反応のカップリング剤を除去するために、カップリング剤で処理した金属酸化物被覆金属酸化物微粒子を洗浄することができる。カップリング剤で処理された金属酸化物被覆金属酸化物微粒子を洗浄するには、例えば、適当な溶媒に再分散させ、遠心分離し、上澄み液は捨てて沈降物のみを回収すればよい。この再分散、遠心分離および沈降物のみの回収という操作は、経済的観点からは必ずしも行う必要はないが、この操作を行う場合には、1回だけ行っても複数回行ってもよいが、3回またはそれ以上繰り返すことが好適である。
重合反応は、水性媒体中、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子、好ましくはカップリング剤で処理した金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の存在下で行われる。重合反応をカップリング剤で処理した金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の存在下で行う場合には、重合反応には、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理して得られた分散体をそのまま用いてもよいし、カップリング剤で処理した後で洗浄した金属酸化物被覆金属酸化物微粒子を水性媒体に再分散させて得られた分散体を用いてもよい。
重合反応に用いる重合性モノマーは、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面に導入された官能基と反応しうる反応性基を有する重合性モノマーから前記官能基に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などの官能基と反応しうる反応性基を含有する重合性モノマー、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基などを含有する重合性モノマーが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ビニル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどのスチレン誘導体;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合体モノマーのうち、スチレンなどのスチレン誘導体が好適である。
(メタ)アクリロイル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
アミノ基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミンなどのビニルアミン類;アリルアミン、α−メチルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミンなどのアリルアミン類;(メタ)アクリルアミド,N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;p−アミノスチレンなどのアミノスチレン類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
エポキシ基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸エステル類;ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸エステル類が好適である。
カルボキシル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸;これらの不飽和ジカルボン酸のモノエステル化物;これらの不飽和ジカルボン酸の無水物;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸が好適である。
水酸基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;ポリカプロラクトン変性の(メタ)アクリル酸エステル類;ポリオキシエチレン変性やポリオキシプロピレン変性の(メタ)アクリル酸エステル類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
重合性モノマーの使用量は、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子に対して、好ましくは5質量部以上、200質量部以下、より好ましくは5質量部以上、180質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上、150質量部以下である。重合性モノマーの使用量が5質量部未満であると、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面をポリマーで被覆することが困難になり、インク組成物の耐擦過性が不充分になることがある。逆に、重合性モノマーの使用量が200質量部を超えると、ポリマー被覆金属酸化物微粒子が大きく成長しすぎてしまい、インク組成物の耐沈降性が低下することがある。
重合開始剤としては、水溶性のラジカル重合開始剤である限り、特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウムなどの過酸化物;これらの過酸化物に、アスコルビン酸およびその塩、エリソルビン酸およびその塩、酒石酸およびその塩、クエン酸およびその塩、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ロンガリットC(NaHSO・CHO・HO)、ロンガリットZ(ZnSO・CHO・HO)、デクロリン(Zn(HSO・CHO))などの還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤;t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、t−ヘキシルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド類;ジベンゾイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジドデカノイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などのアゾ系化合物;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、重合性モノマーの使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、重合性モノマーに対して、好ましくは0.001質量%以上、3質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上、2質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上、1質量%以下である。
モノマー成分の重合反応は、水性媒体中で行われる。ここで、「水性媒体」とは、水、または、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を意味する。水性媒体として、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を用いると、界面活性剤などの分散安定剤を使用しなくても、原料の金属酸化物被覆金属酸化物微粒子や生成するポリマー被覆金属酸化物微粒子の単分散状態を充分良好に保持することができる。しかし、有機溶媒がポリマー被覆金属酸化物微粒子水分散体やインクジェット記録用インク組成物に混入することが望ましくない場合や、ポリマー被覆金属酸化物微粒子とその他の成分との相性が悪く、分散性が低下する場合は、分散安定剤を用いることにより、原料の金属酸化物被覆金属酸化物微粒子や生成するポリマー被覆金属酸化物微粒子の単分散状態を充分良好に保持することができる。
水性媒体として、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、水に対する水混和性の有機溶媒の割合は、好ましくは0質量%以上、40質量%以下、より好ましくは0質量%以上、20質量%以下である。
水と併用しうる水混和性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコールなどの一価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルなどの多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、モノマー成分から合成されるポリマーに対して貧溶媒となる有機溶媒、すなわちモノマー成分は溶解するが、モノマー成分から合成されるポリマーは溶解しない有機溶媒が好適である。
重合反応を行う際の反応温度は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは40℃以上、90℃以下、より好ましくは50℃以上、80℃以下である。また、反応時間も、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子や重合性モノマーの使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されることはないが、例えば、好ましくは1時間以上、24時間以下、より好ましくは3時間以上、12時間以下である。さらに、反応圧力は、常圧、減圧、加圧のいずれであってもよいが、好ましくは常圧である。
重合反応後、金属酸化物被覆金属酸化物微粒子の表面がポリマーで被覆されてなるポリマー被覆金属酸化物微粒子の水分散体が得られる。得られた水分散体は、そのまま用いてもよいし、例えば、重合反応液を遠心分離にかけて上澄み液と沈降物に分離し、この沈降物を回収して乾燥させることにより、ポリマー被覆金属酸化物微粒子を得て、粉体として用いてもよい。なお、ポリマー被覆金属酸化物微粒子を乾燥させる方法としては、従来公知の乾燥方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥などが挙げられる。得られたポリマー被覆金属酸化物微粒子は、粉体のままで用いてもよいし、適当な溶媒に再分散させた分散体として用いてもよい。
ポリマー被覆金属酸化物微粒子を分散媒に再分散させる方法としては、従来公知の分散方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、攪拌機、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、ディスパーなどを用いた方法が挙げられる。
また、ポリマー被覆金属酸化物微粒子が分散体の形態であり、該ポリマー被覆金属酸化物微粒子を異なる分散媒に分散させる場合には、例えば、分散体を濾過、遠心分離、分散媒の蒸発などにより、ポリマー被覆金属酸化物微粒子を分離した後、置換したい分散媒に混合した後、上記のような方法を用いて分散させるか、あるいは、分散体を加熱することにより、分散体を構成する分散媒の一部または全部を蒸発させて留去しながら、置換したい分散媒を混合する、いわゆる加熱溶媒置換法などを採用することができる。
<インクジェット記録用インク組成物の製造>
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、ポリマー被覆金属微粒子の分散体または粉体と、溶剤のほか、その他の成分や各種添加剤を混合し、例えば、ディスパーなどの分散機や超音波などを用いて、充分に分散させることにより、製造することができる。各々の成分は、同時に添加しても順次に添加してもよく、また、添加の順序も特に限定されるものではない。なお、必要に応じて、得られたインク組成物を、例えば、メンブランフィルターなどで濾過することにより、目詰まりの原因となる粗大粒子や異物などを除去するようにしてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
≪各種の測定方法≫
下記の製造例で得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子分散体について、分散体の不揮発分、ポリマー被覆量は、以下の方法により測定した。
<分散体の不揮発分>
ポリマー被覆酸化チタン微粒子分散体を約1g秤量し、熱風乾燥機を用いて、105℃で1時間乾燥し、乾燥前の質量に対する乾燥後の質量の割合を百分率で表した値(単位は質量%)を不揮発分とした。
<ポリマー被覆量>
ポリマー被覆酸化チタン微粒子分散体を105℃で1時間乾燥させ、得られた乾燥粉末20mgを、熱分析装置(商品名「TG−DTA 2010SA」、ブルカー・エイエックスエス(株)製)を用いて、窒素雰囲気下、100℃から500℃まで昇温する条件下で測定した熱質量減少量から次式により算出した。
酸化チタンとシリカとの合計量に対するポリマー被覆量(%)
=[熱質量減少量(%)/(100−熱質量減少量(%))]×100
まず、金属酸化物の表面をシリカで被覆したシリカ被覆金属酸化物微粒子の粉体、特にシリカ被覆酸化チタン微粒子の粉体の製造例について説明する。
≪製造例1≫
攪拌機、滴下口、窒素導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器に、微粒子酸化チタン(商品名「MT−500B」、テイカ(株)製;平均一次粒子径35nm)180g、メタノール1,020gを添加して混合した後、超音波を用いて分散処理を行った。得られた分散体について、動的光散乱粒子径測定装置(商品名「NICOMP 380」、Particle Sizing System Inc.製)を用いて、粒子径を測定したところ、Gaussian解析体積平均粒子径が220nmであった。
次いで、テトラメトキシシラン28.6g、メタノール100gを滴下ロート(1)に入れ、25%アンモニア水14.5g、脱イオン水14.5gを滴下ロート(2)に入れた。反応容器を65℃に昇温して還流させながら、滴下ロート(1)および(2)から内容物を1時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、65℃で5時間保持してから、ラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール0」、花王(株)製)の20%水溶液10gを添加し、さらに3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−503」、信越化学工業(株)製)10gを10分間かけて添加した。その後、50℃で3時間熟成を行ってから、室温まで冷却することにより、微粒子表面をシランカップリング剤で処理したシリカ被覆酸化チタン微粒子の分散体(ST−1)を得た。
得られた分散体(ST−1)に含有される微粒子を遠心分離により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、微粒子表面をシランカップリング剤で処理したシリカ被覆酸化チタン微粒子の粉体(DT−1)を得た。
≪製造例2≫
製造例1において、シリカで被覆する前に微粒子酸化チタンを分散させる際に、超音波を用いて分散処理を行い、得られた分散体について、動的光散乱粒子径測定装置(商品名「NICOMP 380」、Particle Sizing System Inc.製)を用いて、粒子径を測定したところ、Gaussian解析体積平均粒子径が70nmであったこと以外は、製造例1と同様にして、微粒子表面をシランカップリング剤で処理したシリカ被覆酸化チタン微粒子の粉体(DT−2)を得た。
次に、金属酸化物微粒子の表面を第1層としてシリカで被覆し、かつその外側を第2層としてポリマーで被覆してなるポリマー被覆金属酸化物微粒子の分散体および粉体、特にポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体および粉体の製造例について説明する。
≪製造例3≫
攪拌機、滴下口、窒素導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器に、窒素ガスを吹き込みながら、シリカ被覆酸化チタン微粒子の粉体(DT−1)200g、脱イオン水800g、ラウリル硫酸ナトリウム(周品名「エマール0」、花王(株)製)の20%水溶液10gを添加して混合した後、ディスパーと超音波とを用いて分散処理を行った。
また、別の容器で、メチルメタクリレート7g、2−エチルヘキシルアクリレート13g、ラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール0」、花王(株)製)の20%水溶液5g、脱イオン水8gを乳化し、プレエマルション組成物を調製しておいた。プレエマルション組成物の10%(3.3g)をガラス製反応器に添加した後、反応槽を75℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液1gを添加した。30分間熟成した後、残りのプレエマルション組成物を30分間かけて滴下し、攪拌しながら5時間保持し、シリカ被覆酸化チタン微粒子の外側を第2層としてポリマーで被覆してなるポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−1)を得た。
得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−1)について、動的光散乱粒子径測定装置(商品名「NICOMP 380」、Particle Sizing System Inc.製)を用いて、粒子径を測定したところ、Gaussian解析体積平均粒子径が280nmであった。また、不揮発分は21.3%、総回収量は1,040gであった。
得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−1)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化チタン微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで被覆されていることが確認された。
また、ポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−1)に含有される微粒子を遠心分離により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタン微粒子の外側を第2層としてポリマーで被覆してなるポリマー被覆酸化チタン微粒子の粉体(PCP−1)を得た。得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の粉体(PCP−1)について、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、9.8%の質量減少が観察された。それゆえ、得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子のポリマー被覆量は、酸化チタンとシリカとの合計量に対して、10.9質量%であった。
≪製造例4≫
製造例3において、反応器に仕込んだラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール0」、花王(株)製)の20%水溶液を20g、プレエマルション組成物の調製に用いたラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール0」、花王(株)製)の20%水溶液を10g、脱イオン水を16g、モノマー組成を、メチルメタクリレート10.0g、ブチルアクリレート20.0g、メタクリル酸6.0g、2−エチルヘキシルアクリレート4.0g、重合開始剤の5%過硫酸カリウム水溶液を2gに変更したこと以外は、製造例3と同様にして、シリカ被覆酸化チタン微粒子の外側を第2層としてポリマーで被覆してなるポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−2)を得た。
得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−2)について、動的光散乱粒子径測定装置(商品名「NICOMP 380」、Particle Sizing System Inc.製)を用いて、粒子径を測定したところ、Gaussian解析体積平均粒子径が310nmであった。また、不揮発分は21.2%、総回収量は1,085gであった。
得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−2)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化チタン微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで被覆されていることが確認された。
また、ポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−2)に含有される微粒子を遠心分離により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタン微粒子の外側を第2層としてポリマーで被覆してなるポリマー被覆酸化チタン微粒子の粉体(PCP−2)を得た。得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の粉体(PCP−2)について、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、17.1%の質量減少が観察された。それゆえ、得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子のポリマー被覆量は、酸化チタンとシリカとの合計量に対して、20.6質量%であった。
≪製造例5≫
製造例3において、シリカ被覆酸化チタン微粒子の粉体(DT−1)に代えてシリカ被覆酸化チタン微粒子の粉体(DT−2)を用いたこと以外は、製造例3と同様にして、シリカ被覆酸化チタン微粒子の外側を第2層としてポリマーで被覆してなるポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(NPC−1)を得た。
得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(NPC−1)について、動的光散乱粒子径測定装置(商品名「NICOMP 380」、Particle Sizing System Inc.製)を用いて、粒子径を測定したところ、Gaussian解析体積平均粒子径が150nmであった。また、不揮発分は21.2%、総回収量は1,037gであった。
得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(NPC−1)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化チタン微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで被覆されていることが確認された。
また、ポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(NPC−1)に含有される微粒子を遠心分離により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタン微粒子の外側を第2層としてポリマーで被覆してなるポリマー被覆酸化チタン微粒子の粉体(NPCP−1)を得た。得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の粉体(NPCP−1)について、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、9.7%の質量減少が観察された。それゆえ、得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子のポリマー被覆量は、酸化チタンとシリカとの合計量に対して、10.7質量%であった。
≪製造例6≫
製造例3において、反応器に仕込んだラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール0」、花王(株)製)の20%水溶液を2g、プレエマルション組成物の調製に用いたラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール0」、花王(株)製)の20%水溶液を1g、モノマー組成を、メチルメタクリレート1.5g、2−エチルヘキシルアクリレート1.5gに変更したこと以外は、製造例3と同様にして、シリカ被覆酸化チタン微粒子の外側を第2層としてポリマーで被覆してなるポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(NPC−2)を得た。
得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(NPC−2)について、動的光散乱粒子径測定装置(商品名「NICOMP 380」、Particle Sizing System Inc.製)を用いて、粒子径を測定したところ、Gaussian解析体積平均粒子径が240nmであった。また、不揮発分は19.8%、総回収量は1,010gであった。
得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(NPC−2)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化チタン微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで被覆されていることが確認された。
また、ポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(NPC−2)に含有される微粒子を遠心分離により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタン微粒子の外側を第2層としてポリマーで被覆してなるポリマー被覆酸化チタン微粒子の粉体(NPCP−2)を得た。得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子の粉体(NPCP−2)について、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、2.4%の質量減少が観察された。それゆえ、得られたポリマー被覆酸化チタン微粒子のポリマー被覆量は、酸化チタンとシリカとの合計量に対して、2.5質量%であった。
次に、ポリマー被覆金属酸化物微粒子、特にポリマー被覆酸化チタン微粒子を含有するインクジェット記録用水性インク組成物の製造例について説明する。
≪実施例1≫
ポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−1)を脱イオン水で希釈して不揮発分を20%に調整した水分散体50g、グリセリン10g、濡れ剤としてアセチレンジオールのエチレンオキシド(10モル)付加物(商品名「オルフィンE1010」、日信化学工業(株)製)0.5g、トリエタノールアミン0.5g、脱イオン水39gを、ディスパーを用いて充分に分散させ、インクジェット記録用水性インク組成物(WIC−1)を得た。
≪実施例2≫
実施例1において、ポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−1)に代えてポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録用水性インク組成物(WIC−2)を得た。
≪比較例1≫
実施例1において、ポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−1)に代えてポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(NPC−1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録用水性インク組成物(NWIC−1)を得た。
≪比較例2≫
実施例1において、ポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−2)に代えてポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(NPC−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録用水性インク組成物(NWIC−2)を得た。
≪比較例3≫
実施例1において、ポリマー被覆酸化チタン微粒子の分散体(PC−1)に代えて、酸化チタン(商品名「タイペークCR95」、石原産業(株)製;一次粒子径250nm)、脱イオン水88g、分散剤としてポリビニルピロリドンの50%水溶液(商品名「K−30W」、(株)日本触媒製)2gを超音波により分散させた分散体を用い、得られたインク組成物をメンブランフィルター(8μm)で濾過したこと以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録用水性インク組成物(NWIC−3)を得た。
次に、インクジェット記録用水性インク組成物の隠蔽性、耐沈降性および耐擦過性を評価する方法について説明する。
<水性インク組成物の隠蔽性>
得られた水性インク組成物を、バーコーターNo.14を用いて、インクジェットプリンター用OHPシート(商品名「MJOHPS1N」、セイコーエプソン(株)製)に塗工して乾燥させた。乾燥膜厚は約3〜4μmであった。水性インク組成物を塗工したシートを黒色のアクリル板上に載置し、目視により観察して、下記基準により評価した。
A:完全に隠蔽する;
B:下地の影響を受けるが、その程度が非常に小さい;
C:下地の影響を受ける。
<水性インク組成物の耐沈降性>
得られた水性インク組成物を容器に入れ、10日間静置した後、容器内の状態を観察して、下記基準により評価した。
A:沈降物も水浮きも見られない;
B:沈降物は見られないが、水浮きがわずかに見られる;
C:沈降物および水浮きがわずかに見られる;
D:沈降物が多量に見られる。
<水性インク組成物の耐擦過性>
水性インク組成物の隠蔽性評価で得られた塗工シートの塗工面を手指で軽くこすり、色移りの程度を観察して、下記基準により評価した。
A:色移りしない;
B:わずかに色移りする;
C:著しく色移りする。
実施例1、2および比較例1、2、3で得られたインクジェット記録用水性インク組成物の隠蔽性、耐沈降性および耐擦過性を評価した結果を表1に示す。
Figure 2009067968
表1から明らかなように、一次粒子径が35nmであり、体積平均粒子径が220nmである酸化チタン微粒子の表面を第1層としてシリカで被覆し、その外側を第2層としてポリマーで被覆してなり、ポリマー被覆量が酸化チタンとシリカとの合計量に対して、それぞれ10.9質量%および20.6質量%であるポリマー被覆酸化チタン微粒子を配合した実施例1および2のインクジェット記録用水性インク組成物は、隠蔽性に加えて、耐沈降性および耐擦過性の両方に優れていた。
これに対し、一次粒子径が35nmであり、体積平均粒子径が70nmである酸化チタン微粒子の表面を第1層としてシリカで被覆し、その外側を第2層としてポリマーで被覆してなり、第2層としてポリマーで被覆してなり、ポリマー被覆量が酸化チタンとシリカとの合計量に対して10.7質量%であるポリマー被覆酸化チタン微粒子を配合した比較例1のインクジェット記録用水性インク組成物は、耐沈降性および耐擦過性の両方に優れるものの、隠蔽性に劣っていた。また、一次粒子径が35nmであり、体積平均粒子径が220nmである酸化チタン微粒子の表面を第1層としてシリカで被覆し、その外側を第2層としてポリマーで被覆してなり、第2層としてポリマーで被覆してなり、ポリマー被覆量が酸化チタンとシリカとの合計量に対して2.5質量%であるポリマー被覆酸化チタン微粒子を配合した比較例2のインクジェット記録用水性インク組成物、および、一次粒子径が250nmである酸化チタン微粒子を第2の金属酸化物やポリマーで被覆せずに配合した比較例3のインクジェット記録用インク組成物は、隠蔽性に優れるものの、耐沈降性および耐擦過性の両方に劣っていた。
かくして、一次粒子径が1nm以上、130nm以下である第1の金属酸化物からなる微粒子の表面を第1層として該第1の金属酸化物と異なる第2の金属酸化物で被覆し、かつその外側を第2層としてポリマーで被覆してなり、該第1の金属酸化物からなる微粒子の体積平均粒子径が150nm以上、500nm以下であり、かつポリマー被覆量が該第1の金属酸化物と該第2の金属酸化物との合計量に対して5質量%以上、200質量%以下であるポリマー被覆金属酸化物微粒子を配合すれば、隠蔽性に加えて、耐沈降性および耐擦過性の両方に優れたインクジェット記録用インク組成物が得られることがわかる。
本発明のインクジョット記録用インク組成物は、隠蔽性に加えて、耐沈降性および耐擦過性の両方に優れるので、産業用・工業用インクジェット印刷装置に好適である。それゆえ、本発明のインクジェット記録用インク組成物は、インクジェット記録に関連する分野で多大の貢献をなすものである。

Claims (5)

  1. 一次粒子径が1nm以上、130nm以下である第1の金属酸化物からなる微粒子の表面を第1層として該第1の金属酸化物と異なる第2の金属酸化物で被覆し、かつその外側を第2層としてポリマーで被覆してなり、該第1の金属酸化物からなる微粒子の体積平均粒子径が150nm以上、500nm以下であり、かつポリマー被覆量が該第1の金属酸化物と該第2の金属酸化物との合計量に対して5質量%以上、200質量%以下であるポリマー被覆金属酸化物微粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク組成物。
  2. 前記第2の金属酸化物で被覆した前記第1の金属酸化物からなる微粒子の表面がカップリング剤で処理されている請求項1記載のインクジェット記録用インク組成物。
  3. 前記第1の金属酸化物が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物である請求項1または2記載のインクジェット記録用インク組成物。
  4. 前記第2の金属酸化物がシリカおよび/またはアルミナである請求項1〜3のいずれか1項記載のインクジェット記録用インク組成物。
  5. 前記ポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびスチレン−(メタ)アクリル系ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである請求項1〜4のいずれか1項記載のインクジェット記録用インク組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011126113A (ja) * 2009-12-17 2011-06-30 Seiko Epson Corp インク供給装置および描画装置

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