JP2009063479A - 雑音検出装置及び測位装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】衛星信号の搬送波位相を利用して測位するときに、各受信機で独立し、さらに各衛星で独立して、受信した信号に含まれるマルチパス雑音とサイクルスリップを検出できるようにする。
【解決手段】マルチパス強度等計算部15では、ある時刻及び別の時刻におけるL1信号及びL2信号にそれぞれ当該信号の波長を乗算する。そして、その乗算後のそれぞれの値について、当該ある時刻の値と別の時刻の値との差を求める。次に、この求めたL1信号の差信号とL2信号の差信号との差を求める。そして、この値の絶対値や二乗値を所定の基準値と比較する。
【選択図】図1
【解決手段】マルチパス強度等計算部15では、ある時刻及び別の時刻におけるL1信号及びL2信号にそれぞれ当該信号の波長を乗算する。そして、その乗算後のそれぞれの値について、当該ある時刻の値と別の時刻の値との差を求める。次に、この求めたL1信号の差信号とL2信号の差信号との差を求める。そして、この値の絶対値や二乗値を所定の基準値と比較する。
【選択図】図1
Description
本発明は、雑音検出装置及び測位装置に関する。
自動車などの移動体に搭載されて現在位置を測位する測位装置においては、GPSを利用したものが知られている。これは、移動体に設置されたアンテナで受信する複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの信号により移動体の現在位置を測位する技術である。
GPSを用いて測位する手段としては、GPS衛星信号の搬送波に乗っているコードを利用する手段と、搬送波の位相を利用する手段と、これらを併用する手段とが知られている。
GPS衛星信号の搬送波に乗っているコードを利用する手段では、数メートルオーダーの精度で簡単に測位することができるが、搬送波の位相を利用する手段では、時間は要するものの、RTK(Real Time Kinematic)測位により数ミリ〜数センチオーダーの精度で測位することができる。
非特許文献1には、搬送波の位相を利用して測位する手段に関し、移動局(受信機)が基地局からの情報を用いてGPS衛星信号のマルチパス雑音とサイクルスリップの大きさを検出する技術について開示されている。
Bisnath, S.B., "Efficient, AutomatedCycle-Slip Correction of Dual-Frequency Kinematic GPS Data", Proc. on ION GPS 2000, Sept. 2000, pp. 145-154, Utah,USA
Bisnath, S.B., "Efficient, AutomatedCycle-Slip Correction of Dual-Frequency Kinematic GPS Data", Proc. on ION GPS 2000, Sept. 2000, pp. 145-154, Utah,USA
GPSを利用して測位する技術に関し、搬送波位相測定値について説明する。搬送波位相測定値とは、衛星から受信したGPS衛星信号の搬送波の位相と、GPS衛星信号を受信する受信機が生成した搬送波(GPS衛星信号の搬送波と同じ周波数)の位相とのある測定時刻における差であり、これは、受信機のクロック変動、衛星のクロック変動、受信機と衛星との間の距離の変動等により変化する。受信機と衛星との間の距離の変動により搬送波位相測定値は変動するため、受信機において搬送波位相測定値を求めることで、受信機は当該受信機と衛星との距離を判断することができる。
この搬送波位相測定値φ(単位は波数)はモデル化すると、
……(1)
のように表される。ここで、λは波長、rは衛星と受信機間の距離、cは光速、δtsは受信機のクロック誤差、δtrは衛星のクロック誤差、Iは電離層による遅延、fは周波数、Tは対流圏による遅延、eはマルチパス等による雑音による誤差を表す。またNは整数値アンビギュイティと呼ばれる値で、測定値と衛星受信機間の距離の間にはN波数分の未知数を含むことに起因する値である。この整数値アンビギュイティは、衛星信号を追尾し続ける限り一定の値を保ち続ける。
のように表される。ここで、λは波長、rは衛星と受信機間の距離、cは光速、δtsは受信機のクロック誤差、δtrは衛星のクロック誤差、Iは電離層による遅延、fは周波数、Tは対流圏による遅延、eはマルチパス等による雑音による誤差を表す。またNは整数値アンビギュイティと呼ばれる値で、測定値と衛星受信機間の距離の間にはN波数分の未知数を含むことに起因する値である。この整数値アンビギュイティは、衛星信号を追尾し続ける限り一定の値を保ち続ける。
次に、GPS衛星信号の搬送波の位相の誤差要因について説明する。このような誤差要因としては、マルチパス雑音とサイクルスリップの発生がある。
まず、マルチパス雑音について説明する。GPS衛星信号に含まれる雑音eは、
……(2)
のように表される。ここで、empはマルチパスによる雑音、etempは熱雑音である。
のように表される。ここで、empはマルチパスによる雑音、etempは熱雑音である。
マルチパスとは、GPS衛星信号中に直接波以外に受信機の周囲の建物や地上からの反射波が一つ以上混在していることをいう。
マルチパスの受信信号は、
……(3)
となる。
となる。
ここで、Δφは直接波と反射波の行路差ldによる位相変化であり、
……(4)
と表される。
と表される。
そして、マルチパスによる位相誤差は、
……(5)
となる。
となる。
次に、サイクルスリップの発生について説明する。サイクルスリップとは、衛星信号の追尾の瞬断等により、整数値アンビギュイティ値が不連続に変化することをいう。
すなわち、
……(6)
となる。
となる。
GPS衛星の移動に伴う衛星信号のドップラーシフトにより前述の搬送波位相測定値は変動し、これにより受信機とGPS衛星との距離を判断することができるが、衛星信号の追尾の瞬断等が生じてサイクルスリップが発生すると、搬送波位相測定値は大きく変動して、搬送波位相測定値から受信機とGPS衛星との距離を判断することができなくなる。
このように、GPS衛星信号の搬送波の位相の誤差要因としては、マルチパス雑音とサイクルスリップの発生とがあり、これらの誤差要因を含んでいる衛星信号を無条件に使用して測位を行なうと測定の精度が低下してしまうことになる。
これに対して、非特許文献1に開示の技術では、搬送波の位相を利用して測位する手段に関し、受信機が基地局からの情報を用いてGPS衛星信号のマルチパス雑音とサイクルスリップの大きさを検出する技術について開示されている。
しかしながら、非特許文献1に開示の技術では、マルチパス雑音やサイクルスリップの検出は受信機と基地局との搬送波位相測定値の差に基づくので、検出したマルチパス雑音やサイクルスリップが受信機の搬送波位相に混入したものか、それとも基地局の搬送波位相に混入したものかを判別することはできないという不具合が存在する。
また、かかる技術では、マルチパス雑音やサイクルスリップの検出は、2つの衛星間の搬送波位相測定値の差にも基づくので、検出したマルチパス雑音やサイクルスリップが、差を算出した2つの衛星のどちらの搬送波位相に混入したものかを判別することはできないという不具合が存在する。
そこで、本発明の目的は、衛星信号の搬送波位相を利用して測位するときに、各受信機で独立し、さらに各衛星で独立して、受信した信号に含まれるマルチパス雑音とサイクルスリップを検出できるようにすることである。
本発明は、アンテナと、前記アンテナにより互いに周波数の異なる第1の信号及び第2の信号を各衛星からそれぞれ受信する受信手段と、前記受信手段で受信した各衛星からの前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相を測定する搬送波位相測定手段と、前記搬送波位相測定手段で測定した各衛星からの前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相であって互いに異なる時刻である第1の時刻及び第2の時刻に測定したものをそれぞれ記憶する記憶手段と、前記記憶手段で記憶した第1の時刻及び第2の時刻における前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相測定値にそれぞれ当該信号の波長を乗算する乗算手段と、前記乗算手段で波長を乗算した前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相測定値のそれぞれについて前記第1の時刻の値と前記第2の時刻の値との差を求める第1の減算手段と、前記第1の減算手段で求めた前記第1の信号の搬送波位相測定値の差信号と前記第2の信号の搬送波位相測定値の差信号との差を求める第2の減算手段と、前記第2の減算手段で求めた差信号の強度に基づく値を所定の基準値と比較する比較手段と、を備えている雑音検出装置である。
別の本発明は、アンテナと、前記アンテナにより互いに周波数の異なる第1の信号及び第2の信号を各衛星からそれぞれ受信する受信手段と、前記受信手段で受信した各衛星からの前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相を測定する搬送波位相測定手段と、前記搬送波位相測定手段で測定した各衛星からの前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相であって互いに異なる時刻である第1の時刻及び第2の時刻に測定したものをそれぞれ記憶する記憶手段と、前記記憶手段で記憶した第1の時刻及び第2の時刻における前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相測定値にそれぞれ当該信号の波長を乗算する乗算手段と、前記乗算手段で波長を乗算した前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相測定値のそれぞれについて前記第1の時刻の値と前記第2の時刻の値との差を求める第1の減算手段と、前記第1の減算手段で求めた前記第1の信号の搬送波位相測定値の差信号と前記第2の信号の搬送波位相測定値の差信号との差を求める第2の減算手段と、前記第2の減算手段で求めた差信号の強度に基づく値を所定の基準値と比較する比較手段と、前記比較手段による比較の結果に基づいて前記各衛星から受信した信号に対して選別及び重み付けの少なくとも一方を行う選別・重み付け手段と、前記選別・重み付け手段により選別及び重み付けの少なくとも一方を行なった後の前記各衛星の受信信号を用いて測位を行う測位手段と、を備えている測位装置である。
本発明によれば、衛星信号の搬送波位相を利用して測位するときに、各受信機で独立し、さらに各衛星で独立して、受信した信号に含まれるマルチパス雑音とサイクルスリップを検出できる。
以下、本発明の一実施の形態について説明する。以下では、GPS衛星からの衛星信号を利用する場合の例について説明する。
[搬送波の位相の誤差要因の検出手法について]
GPS衛星信号から搬送波の位相の誤差要因、具体的にはマルチパス雑音の大きさやサイクルスリップの発生を、基地局からの信号を用いることなく検出する手法について説明する。
GPS衛星信号から搬送波の位相の誤差要因、具体的にはマルチパス雑音の大きさやサイクルスリップの発生を、基地局からの信号を用いることなく検出する手法について説明する。
GPS衛星からはL1信号とL2信号という2種類の衛星信号が送信されている。L1信号とL2信号では搬送波の周波数が異なっている。図5は、この場合のGPS衛星信号の受信について説明する説明図である。GPS衛星Sから送信されるL1信号とL2信号とはそれぞれ周波数がf1,f2であり、受信機のアンテナaを搭載した移動体MでL1信号とL2信号とを受信している。
ここで、あるGPS衛星からのL1信号とL2信号の測定値は、
L1信号:
……(7)
L2信号:
……(8)
と表すことができる。ここで、λは波長、rは衛星と受信機間の距離、δtsは受信機のクロック誤差、δtrは衛星のクロック誤差、Iは電離層による遅延、fは周波数、Tは対流圏による遅延、eはマルチパス等による雑音による誤差、Nは整数値アンビギュイティである。添え字L1,L2は、各値がそれぞれL1,L2信号についての値であることを示す。すなわち、(7)式、(8)式は、ある時刻におけるL1信号とL2信号の搬送波位相測定値にそれぞれ当該L1信号又はL2信号の波長を乗算した値を示している。
L1信号:
L2信号:
と表すことができる。ここで、λは波長、rは衛星と受信機間の距離、δtsは受信機のクロック誤差、δtrは衛星のクロック誤差、Iは電離層による遅延、fは周波数、Tは対流圏による遅延、eはマルチパス等による雑音による誤差、Nは整数値アンビギュイティである。添え字L1,L2は、各値がそれぞれL1,L2信号についての値であることを示す。すなわち、(7)式、(8)式は、ある時刻におけるL1信号とL2信号の搬送波位相測定値にそれぞれ当該L1信号又はL2信号の波長を乗算した値を示している。
そして、受信機において、ある時刻tAとtBにおけるL1信号、L2信号それぞれの測定値の差は、
L1信号の時刻tAとtBにおける測定値の差:
……(9)
L2信号の時刻tAとtBにおける測定値の差:
……(10)
となる。
L1信号の時刻tAとtBにおける測定値の差:
L2信号の時刻tAとtBにおける測定値の差:
となる。
なお、ここで、
……(11)
である。
である。
時刻tAとtBの時間差とそのときの受信機の位置差が電離層の大きさに影響を与えない程度、すなわち、
……(12)
とすると、式(9)と式(10)の差分を取れば、
……(13)
となる。
とすると、式(9)と式(10)の差分を取れば、
となる。
もしも、マルチパスが無く、サイクルスリップも無い場合(ΔN=0(Δの下に“tA,tB”と表記)の場合)、
……(14)
となり、その二乗の期待値は、
……(15)
となる。
となり、その二乗の期待値は、
となる。
マルチパス波による誤差において、“λL1emp(L1)−λL2emp(L2)”の値の大きさ、すなわち、L1信号のマルチパス成分とL2信号のマルチパス成分の差の大きさは、式(5)の関係より図3に示すようになる。すなわち、行路差がわずかに変動しただけで、“λL1emp(L1)−λL2emp(L2)”の値は大きく乱れる。もしも、マルチパスが存在し、そのマルチパスの行路差の変化が大きい場合、マルチパスが大きければ、ある時間区間におけるマルチパスの変化量の二乗の期待値、
……(16)
も大きくなる。
も大きくなる。
よって、
……(17)
となる。
となる。
もしも、時刻tAとtBの間にサイクルスリップが起きたとき、ΔN(Δの下に“tA,tB”と表記)は大きな値を取ることから、
……(18)
は、一般に大きな値を取る。
は、一般に大きな値を取る。
このように、(14)式は、搬送波位相測定値の誤差成分である、サイクルスリップやマルチパスの強度を表わしている。そこで、例えば、Δerr(Δの下に“tA,tB”と表記)の絶対値を所定の基準値と比較することにより、サイクルスリップを検出することができる。また、例えば、Δerr(Δの下に“tA,tB”と表記)の二乗値を所定のローパスフィルタにかけ、その値を所定の基準値と比較することにより、マルチパスの有無とその強度について判断することができる。
すなわち、
……(19)
により、サイクルスリップを検出することができる。
により、サイクルスリップを検出することができる。
また、
……(20)
により、マルチパスの大きさを検出できる。
により、マルチパスの大きさを検出できる。
以上説明した検出手法によれば、行路差とマルチパスの関係を見る限り、時刻tAとtBの間に行路差が10cm以上の変化があれば、Δerr(Δの下に“tA,tB”と表記)の値は大きく変化し、マルチパスを検出することができる。
図4は、移動体の移動による行路差の変化を説明する説明図である。移動体Mに受信機のアンテナaを搭載し、GPS衛星信号を受信している。直接波とあるのは、GPS衛星信号の直接波をアンテナaで受信していることを示している。障害物BでGPS衛星信号が反射し、その反射波もアンテナaで受信している。行路差とあるのは、アンテナaに直接入射する直接波と障害物Bに当たる直接波との行路差である。図4(a)では行路差がl1であるのに対し、図4(b)では行路差がl2になり、行路差が“l1−l2”だけ変化している。この行路差の変化“l1−l2”が10cm以上あれば、十分マルチパスを検出することができる。
また、時刻tAとtBの間が1秒間であれば、移動体が良い場合で360m/h以上で動けばマルチパスを検出できる。自動車のような移動体では、通常その約100倍の40km/h程度で移動するので、十分マルチパスを検出することができる。
[雑音検出装置について]
次に、前記のとおり説明した検出手法によりマルチパス雑音やサイクルスリップを検出する雑音検出装置について説明する。
次に、前記のとおり説明した検出手法によりマルチパス雑音やサイクルスリップを検出する雑音検出装置について説明する。
図1は、雑音検出装置1の電気的な接続を示すブロック図である。雑音検出装置1は、GPS衛星信号を受信するアンテナ2と、アンテナ2を介してGPS衛星信号のうちL1信号を受信するL1信号受信部3と、L2信号を受信するL2信号受信部4と、この受信したL1信号とL2信号とを処理する処理部5とを備えている。処理部5は、GPS衛星信号の複数チャンネル(チャンネル1,2,…,n)にそれぞれ対応して複数設けられている。
各処理部5の構成は全て共通であるため、ここでは代表してチャンネル1に対応した処理部5について説明する。処理部5は、L1信号受信部3、L2信号受信部4でそれぞれ受信したL1信号、L2信号の搬送波位相をそれぞれ追尾する搬送波位相追尾部11,12と、この搬送波位相追尾部11,12で追尾しているL1信号、L2信号の搬送波位相をそれぞれ測定する搬送波位相測定部13,14と、この測定されたL1信号、L2信号の搬送波位相に基づいてマルチパス雑音強度などを測定するマルチパス強度等計算部15とを備えている。
次に、マルチパス強度等計算部15が行なう処理について説明する。マルチパス強度等計算部15では、前記のとおり説明した検出手法によりマルチパス雑音やサイクルスリップを検出するための計算を行なう。すなわち、搬送波位相測定部13,14では所定の時間差で定期的にL1信号、L2信号の搬送波位相を測定し、その測定値を記憶装置に記憶する。そして、GPS衛星からのL1信号とL2信号の時刻tAとtBにおける測定値にそれぞれの波長λL1,λL2を乗算して(7)式、(8)式を求める。次に、L1信号とL2信号の時刻tAとtBにおける測定値の差をそれぞれ(9)式、(10)式により求め、式(9)と式(10)の差分を取れば、式(11)の値Δerr(Δの下に“tA,tB”と表記)が得られる。後は、式(19)と式(20)によりマルチパス雑音の大きさとサイクルスリップを検出することができる。各チャンネルの処理部5は、この検出の結果を出力する。
[測位装置について]
次に、前記のとおり説明した検出手法によりマルチパス雑音やサイクルスリップを検出する機能を備えた測位装置について説明する。
次に、前記のとおり説明した検出手法によりマルチパス雑音やサイクルスリップを検出する機能を備えた測位装置について説明する。
図2は、測位装置21を中心としたシステム全体の説明図である。測位装置21は搬送波位相測定値を用いて2点間(ユーザ局となる測位装置21と基準局31)の相対位置を高精度に算出するRTK(Real Time Kinematic)測位を行なう。
基準局31は各所に設けられ、複数のGPS衛星信号を受信するアンテナ32と、この受信したGPS衛星信号に対して復調、位置算出等の処理を行う衛星信号処理部33と、ユーザ局となる測位装置21が相対測位に必要とする基準局31のデータをアンテナ34から送信する基準局データ送信部35とを備えている。
ユーザ局となる測位装置21は、基準局31のデータを受信するアンテナ22と、この受信した基準局31のデータをアンテナ22により受信して復調処理等する基準局データ処理部23と、複数のGPS衛星信号を受信するアンテナ24と、アンテナ24で受信されたGPS衛星信号の復調、衛星位置計算、コード擬似距離による現在の位置計算等を行う衛星信号処理部25と、基準局データ処理部23から得られる基準局31の搬送波位相等のデータと、衛星信号処理部25から得られるユーザ局の搬送波位相等のデータから、基準局31のアンテナ32と測位装置21のアンテナ24と間の基線を測定する基線計算部26とを備えている。また、衛星信号処理部25は、前述の雑音検出装置1の機能を備えており、GPS衛星信号についてのマルチパス雑音の大きさとサイクルスリップの検出結果のデータを基線計算部26に出力する。
次に、ユーザ局となる測位装置21と基準局31との間の相対位置の測定の概略について説明する。
説明の簡単化のために、アンテナ32からアンテナ24までの距離が十分短いとすれば、算出手順は次の(1)(2)のようになる。
(1)まず、衛星信号処理部25から得られた搬送波位相から、一重位相差(アンテナ32及びアンテナ24における、同一衛星からの信号の搬送波位相の差分)又は二重位相差(基準衛星に対する一重位相差と他の衛星の一重位相差との差分)を求める。
(2)次に、この一重位相差又は二重位相差と衛星への視線方向ベクトルの関係から、最小二乗法により基線ベクトルを算出する。
次に、この算出手順の詳細について説明する。まず、基線と一重位相差又は二重位相差との関係について説明する。
一重位相差とは、アンテナ32及びアンテナ24における、同一衛星からの信号の搬送波位相の差分である。この差分と基準アンテナ及びユーザアンテナにより構成される基線ベクトルの間には行路差から、
……(21)
が成り立つ(図6参照)。
が成り立つ(図6参照)。
ここで、yは位相差、h(太字)は衛星への単位方向ベクトル、b(太字)は基線ベクトル、aは整数値アンビギュイティ、Δtは受信機の位相差の取得タイミングのズレを表す時計誤差、eは観測誤差であり、y,b(太字),a,Δt,eの単位は波数とする。また、添え字sは一重位相差についての値であることを意味し、
……(22)
となる。φrefは基準局で観測された搬送波位相、φUSERはユーザ局となる測位装置21で観測された搬送波位相差である。
となる。φrefは基準局で観測された搬送波位相、φUSERはユーザ局となる測位装置21で観測された搬送波位相差である。
また、
……(22-1)
である。ここで、Nrefは基準局で観測された搬送波位相測定値における整数値アンビギュイティ、Nuserはユーザ局となる測位装置21で観測された搬送波位相測定値における整数値アンビギュイティである。
である。ここで、Nrefは基準局で観測された搬送波位相測定値における整数値アンビギュイティ、Nuserはユーザ局となる測位装置21で観測された搬送波位相測定値における整数値アンビギュイティである。
二重位相差とは、ある基線における基準衛星の一重位相差と基準衛星以外の一重位相差の差分である。基準衛星iと衛星kの二重位相差と基線の関係は、
……(23)
と表される。
と表される。
ここで、
……(24)
を意味する。添え字dは二重位相差に関する値であることを表している。二重位相差を用いる利点は、時計誤差を打ち消すことができる点にある。
を意味する。添え字dは二重位相差に関する値であることを表している。二重位相差を用いる利点は、時計誤差を打ち消すことができる点にある。
次に、基線の算出について説明する。複数の衛星を受信すれば、基線ベクトルb(太字)に関する連立方程式を立てることができ、この連立方程式を最小二乗法により解けば、基線ベクトルb(太字)を算出することができる。
一重位相差の場合、連立方程式は、
……(25)
と表される。
と表される。
ここで、
……(26)
である。
である。
整数値アンビギュイティが既知であるとすれば、基線と時計誤差は、最小二乗法を用いて、
……(27)
と推定できる。ここで、Qは重み行列であり、通常、
……(28)
と設定するのが普通である。ここでσ2は規格化係数である。
と推定できる。ここで、Qは重み行列であり、通常、
と設定するのが普通である。ここでσ2は規格化係数である。
二重位相差の場合も同様に解け、連立方程式は、
……(29)
と表され、整数値アンビギュイティが既知であるとすれば、基線の推定値b(太字のbにハット)は、
……(30)
と求めることができる。
と表され、整数値アンビギュイティが既知であるとすれば、基線の推定値b(太字のbにハット)は、
と求めることができる。
整数値アンビギュイティは、LAMBDA法などの周知の手法を用いることで解くことができる。
以上のようにして基線ベクトルを求め、アンテナ24の現在位置の測位を行なうことができる。
次に、このような測位を行なう場合に、衛星信号処理部25で求めたマルチパス雑音の大きさやサイクルスリップの検出結果のデータを用い、マルチパスや、サイクルスリップといった誤差の影響を低減するための手法について説明する。
このような精度向上のためには、マルチパスや、サイクルスリップといった誤差を含むようなGPS衛星信号は用いないで算出するか、又は、検出したマルチパスなどの大きさに基づいて、重み行列Qを設定するようにすればよい。
マルチパスや、サイクルスリップといった誤差を含むような衛星からのGPS衛星信号は用いないで算出することは、前述の(19)式、又は(20)式に該当する衛星のGPS衛星信号は用いないで、観測方程式を立てて基線を算出すればよい。
また、マルチパスの大きさに基づいて、重み行列Qを設定するには、例えば、一重位相差についての重み係数Qsは、
……(31)
とするのが一般的に良いとされる。ここで、σ2 s(k)は衛星kの一重位相差の雑音の分散であり、
……(32)
である。
とするのが一般的に良いとされる。ここで、σ2 s(k)は衛星kの一重位相差の雑音の分散であり、
である。
実際のσ2 s(k)は分からないが、es(k)にはマルチパス成分が含まれることから、衛星kの信号に含まれるマルチパスの強度を表す(20)式の左辺の値を用いて、
……(33)
として与える。
として与える。
関数f(x)は、xが増加すると増加するような適当な関数で、例えば、
……(34)
といった関数とするのが適当である。二重位相差についての重み係数Qdも同様の考え方で設定すればよい。
といった関数とするのが適当である。二重位相差についての重み係数Qdも同様の考え方で設定すればよい。
以上のようにして、衛星信号の搬送波位相を利用して測位するときに、各受信機で独立し、さらに各衛星で独立して、受信した信号に含まれるマルチパス雑音とサイクルスリップを検出できる。
また、整数値アンビギュイティ値を解決することなくマルチパス雑音の大きさを検出することができる。
なお、この測位方法は、1台の受信機で時刻の異なった2点で観測した搬送波位相を用い、当該2点間で行なう相対測位に対しても同様に応用することができる。
また、この測位方法では、GPSのL1周波数とL2周波数を用いているが、ここで用いる2つの周波数は、GPSのL1周波数とL2周波数に限られるものではなく、将来打ち上げられる衛星から放送が計画されているL5周波数を利用して、L1周波数とL5周波数の組み合わせ、あるいは、L5周波数の組み合わせでも、同様の効果を得ることが出来る。
さらに、欧州で計画中の衛星航法システムであるGALILEOシステムから放送が計画されているE1,E5,E6周波数、我が国で計画中の準天頂衛星システムから放送が計画されているL1,L2,L5周波数、ロシアが運用中の衛星航法システムであるGLONASSから放送されているL1,L2周波数に適用しても、同様の効果を得ることが出来る。
1 雑音検出装置
2 アンテナ
21 測位装置
24 アンテナ
31 基準局
32 アンテナ
2 アンテナ
21 測位装置
24 アンテナ
31 基準局
32 アンテナ
Claims (2)
- アンテナと、
前記アンテナにより互いに周波数の異なる第1の信号及び第2の信号を各衛星からそれぞれ受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した各衛星からの前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相を測定する搬送波位相測定手段と、
前記搬送波位相測定手段で測定した各衛星からの前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相であって互いに異なる時刻である第1の時刻及び第2の時刻に測定したものをそれぞれ記憶する記憶手段と、
前記記憶手段で記憶した第1の時刻及び第2の時刻における前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相測定値にそれぞれ当該信号の波長を乗算する乗算手段と、
前記乗算手段で波長を乗算した前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相測定値のそれぞれについて前記第1の時刻の値と前記第2の時刻の値との差を求める第1の減算手段と、
前記第1の減算手段で求めた前記第1の信号の搬送波位相測定値の差信号と前記第2の信号の搬送波位相測定値の差信号との差を求める第2の減算手段と、
前記第2の減算手段で求めた差信号の強度に基づく値を所定の基準値と比較する比較手段と、
を備えている雑音検出装置。 - アンテナと、
前記アンテナにより互いに周波数の異なる第1の信号及び第2の信号を各衛星からそれぞれ受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した各衛星からの前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相を測定する搬送波位相測定手段と、
前記搬送波位相測定手段で測定した各衛星からの前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相であって互いに異なる時刻である第1の時刻及び第2の時刻に測定したものをそれぞれ記憶する記憶手段と、
前記記憶手段で記憶した第1の時刻及び第2の時刻における前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相測定値にそれぞれ当該信号の波長を乗算する乗算手段と、
前記乗算手段で波長を乗算した前記第1の信号及び第2の信号の搬送波位相測定値のそれぞれについて前記第1の時刻の値と前記第2の時刻の値との差を求める第1の減算手段と、
前記第1の減算手段で求めた前記第1の信号の搬送波位相測定値の差信号と前記第2の信号の搬送波位相測定値の差信号との差を求める第2の減算手段と、
前記第2の減算手段で求めた差信号の強度に基づく値を所定の基準値と比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果に基づいて前記各衛星から受信した信号に対して選別及び重み付けの少なくとも一方を行う選別・重み付け手段と、
前記選別・重み付け手段により選別及び重み付けの少なくとも一方を行なった後の前記各衛星の受信信号を用いて測位を行う測位手段と、
を備えている測位装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007232584A JP2009063479A (ja) | 2007-09-07 | 2007-09-07 | 雑音検出装置及び測位装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007232584A JP2009063479A (ja) | 2007-09-07 | 2007-09-07 | 雑音検出装置及び測位装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009063479A true JP2009063479A (ja) | 2009-03-26 |
Family
ID=40558174
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007232584A Pending JP2009063479A (ja) | 2007-09-07 | 2007-09-07 | 雑音検出装置及び測位装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2009063479A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2007
- 2007-09-07 JP JP2007232584A patent/JP2009063479A/ja active Pending
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