JP2009060855A - 微生物が生産するポリヒドロキシアルカン酸中の生産菌由来dnaの特定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 微生物が生産するポリエステル中に存在する生産菌由来DNAを高感度に検出し、特に宿主やポリヒドロキシアルカン酸合成酵素の由来を特定する方法を提供する。
【解決手段】 ポリヒドロキシアルカン酸を可溶性有機溶剤に溶解し、水または緩衝液で抽出することにより、ポリヒドロキシアルカン酸からポリヒドロキシアルカン酸生産生物由来のDNAを検出及び同定可能な程度で抽出することができる。抽出したDNAから宿主の16SリボソーマルRNAをコードするDNAや、ポリヒドロキシアルカン酸合成酵素DNAの断片を増幅させることができる。その塩基配列を決定することにより、該DNAの由来を特定できる。
【選択図】 なし
【解決手段】 ポリヒドロキシアルカン酸を可溶性有機溶剤に溶解し、水または緩衝液で抽出することにより、ポリヒドロキシアルカン酸からポリヒドロキシアルカン酸生産生物由来のDNAを検出及び同定可能な程度で抽出することができる。抽出したDNAから宿主の16SリボソーマルRNAをコードするDNAや、ポリヒドロキシアルカン酸合成酵素DNAの断片を増幅させることができる。その塩基配列を決定することにより、該DNAの由来を特定できる。
【選択図】 なし
Description
本発明はポリヒドロキシアルカン酸中に含まれるポリヒドロキシアルカン酸生産生物由来のDNAの抽出方法および該DNAの特定方法に関する。
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、広範な微生物によって生成されるポリエステル型有機分子ポリマーとして知られており、PHA合成能を有する微生物に関して多くの報告がなされている(非特許文献1)。これらのポリマーは生分解性を有し、熱可塑性高分子であること、また、再生可能資源から産生されることから、環境調和型素材または生体適合型素材として多様な産業への応用が期待されている。
PHAの生産研究の例としては、アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus、旧名:ラルストニア・ユートロファ、現名:カプリアビダス・ネケイター)の変異株をグルコースとプロピオン酸とを炭素源として培養することによる3−ヒドロキシ酪酸(3HB)と3−ヒドロキシ吉草酸(3HV)とからなる共重合体(P(3HB−co−3HV))の製造方法が開示されている(特許文献1)。また、アエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)を用いた培養で3HBと3−ヒドロキシヘキサン酸(3HH)とからなる共重合ポリエステル(P(3HB−co−3HH))が生産されている(非特許文献2)。
また、遺伝子組換え技術を応用した生産研究も行われている。例えば、特許文献2ではアエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素遺伝子をカプリアビダス・ネケイターに導入した形質転換体を用いてP(3HB−co−3HH)を生産している。そのほか、アエロモナス属細菌由来のPHA合成酵素遺伝子を大腸菌に導入してP(3HB−co−3HH)を生産した例(非特許文献3)や、シュードモナス属細菌由来のPHA合成酵素遺伝子をシュードモナス・プチダやカプリアビダス・ネケイターに導入してよりアルキル鎖の長い3−ヒドロキシアルカン酸で構成される中鎖PHAを生産した例(非特許文献4)などがある。
このような遺伝子組換え生物が生産したポリヒドロキシアルカン酸を工業製品として市場に供給する場合、従来の石油原料由来のポリエステルとは異なり、ポリヒドロキシアルカン酸製品中にその生産生物由来のDNAが混入する可能性が考えられ、製品管理上そのDNAの量及び由来等を把握する必要が生じてきている。
従来、DNA量を測定する方法としてはジフェニルアミン反応による方法(非特許文献5)やインドール反応による方法(非特許文献6)が知られている。しかしこれらの方法は、検出感度がいずれも数μg/ml程度と高感度な測定法とはいえず、被検体中の測定対象物質が微量の場合は定量できないという欠点があった。また、試料を電気泳動したのち、ゲルをエチジウムブロマイド染色してトランスイルミネーターにて検出する方法や、ビオチン、酵素、ラジオアイソトープなどで標識された標的核酸と相補的な塩基配列を有するプローブを用い、これと標的核酸とをハイブリダイゼーション反応させ、未反応物を洗浄除去等で分離した後、その標識体から信号を検出する方法、または、PCRを応用した方法(非特許文献7参照)などによってDNAを定量することができる。しかしながらこれらの方法はいずれも水溶液中のDNAを測定するもので、ポリヒドロキシアルカン酸に包含されたDNAの測定にはそのままでは適用できなかった。
それらに対し、微生物生産ポリヒドロキシアルカン酸製品中のDNAを定量する方法として、ポリヒドロキシアルカン酸製品からDNAを抽出し、ハイブリダイゼーション法により定量する方法が開示されており、その検出限界濃度は0.3ngDNA/gポリマーである。(特許文献3)。
しかし、その方法によってもポリヒドロキシアルカン酸試料によっては含まれるDNAが極微量のため検出限界以下になることもある。ましてや上市後のポリマーペレットなどから、製品管理上必要な自社製品であることの区別が可能になるような情報、例えばどのような生物によって生産されたものか、またPHA合成酵素の由来等を特定することはできなかった。
特開昭57−150393号公報
特開平10−108682号公報
特開平19−000014号公報
「生分解性プラスチックハンドブック」,生分解性プラスチック研究会編,(株)エヌ・ティー・エス,P178−197
Lee等、Biotechnol.Bioeng.,67:240−244(2000)
Park等、Biomacromolecules,2:248−254(2001)
Matsusaki等、J.Bacteriol.,180:6459−6467(1998)
Dische、Mikrochemie,8:4(1930)
Ceriotti、J.Biol.Chem.,198:297−303(1952)
「バイオ実験イラストレイテッド3+ 新版本当にふえるPCR」,中山広樹著,秀潤社,P141−150(1998)
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、生物が生産したポリヒドロキシアルカン酸中に存在するDNA情報、特に生産細胞やポリヒドロキシアルカン酸合成酵素の由来を特定する方法を提供するものである。
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリヒドロキシアルカン酸を可溶性有機溶剤に溶解し、水または緩衝液で抽出することにより、ポリヒドロキシアルカン酸生産細胞由来のDNAを効率的に抽出することができ、抽出したDNAから16SリボソーマルRNAやポリヒドロキシアルカン酸合成酵素をコードするDNAを増幅させ、その塩基配列を決定することにより該DNAの由来を特定できることを見出した。
即ち本発明は以下の通りである。
[1]ポリヒドロキシアルカン酸を含有する試料を可溶性有機溶剤に溶解し、水または緩衝液で試料DNAを抽出する工程と、前記試料DNAを増幅させる工程と、その増幅DNAの内部塩基配列を決定する工程からなることを特徴とするポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[2]特定するDNAが16SリボソーマルRNAをコードするDNAである上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[3]特定するDNAがポリヒドロキシアルカン酸合成酵素をコードするDNAである上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[4]可溶性有機溶剤がクロロホルム、ジクロロメタンおよび1,2−ジクロロエタンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[5]試料DNAを抽出する工程で、水または緩衝液にキャリアDNAを0.1〜500ng/mlになるよう添加することを特徴とする、上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[6]DNAを増幅させる工程がPCR法である、上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[7]ポリヒドロキシアルカン酸が3−ヒドロキシヘキサン酸を含む重合体であることを特徴とする、上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[8]ポリヒドロキシアルカン酸が3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸からなる共重合体であることを特徴とする、上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
に関する。
[1]ポリヒドロキシアルカン酸を含有する試料を可溶性有機溶剤に溶解し、水または緩衝液で試料DNAを抽出する工程と、前記試料DNAを増幅させる工程と、その増幅DNAの内部塩基配列を決定する工程からなることを特徴とするポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[2]特定するDNAが16SリボソーマルRNAをコードするDNAである上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[3]特定するDNAがポリヒドロキシアルカン酸合成酵素をコードするDNAである上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[4]可溶性有機溶剤がクロロホルム、ジクロロメタンおよび1,2−ジクロロエタンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[5]試料DNAを抽出する工程で、水または緩衝液にキャリアDNAを0.1〜500ng/mlになるよう添加することを特徴とする、上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[6]DNAを増幅させる工程がPCR法である、上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[7]ポリヒドロキシアルカン酸が3−ヒドロキシヘキサン酸を含む重合体であることを特徴とする、上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
[8]ポリヒドロキシアルカン酸が3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸からなる共重合体であることを特徴とする、上記記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法、
に関する。
生産方法が不明な粉末やペレット状のポリマーなどからでもポリヒドロキシアルカン酸中に存在するDNAを高感度に検出し、製品管理上必要な自社製品であることの区別が可能になるような情報、例えばどのような生物によって生産されたものか、PHA合成酵素の由来等を特定することに有効な方法を提供する。
本発明におけるポリヒドロキシアルカン酸を含有する試料は、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を含有するポリエステル樹脂であればどのような形態のものでもよく、例えば、ポリヒドロキシアルカン酸生産生物から回収されたPHA粉末、およびそれを溶融してペレット化したものなどの原体、あるいは原体を種々の副原料と混練してシート状、フィルム状、繊維状、ビーズ状およびそれを発泡させたものなどの半加工品、或いはそれらの半加工品に成形加工などを施した最終加工品が挙げられる。
<DNA抽出工程>
ポリエステルからDNAを抽出する手順は、試料ポリヒドロキシアルカン酸に可溶性有機溶剤を添加して溶解させた後に、水または緩衝液を添加して混合してもよいが、試料ポリヒドロキシアルカン酸を溶解させる時に、水又は緩衝液を添加しておいてもよい。試料ポリヒドロキシアルカン酸を溶解後、混合物全体を遠心分離にかけ、水層と有機溶剤層に分ける。水層を取り出すことによって抽出されたDNA試料が得られる。
ポリエステルからDNAを抽出する手順は、試料ポリヒドロキシアルカン酸に可溶性有機溶剤を添加して溶解させた後に、水または緩衝液を添加して混合してもよいが、試料ポリヒドロキシアルカン酸を溶解させる時に、水又は緩衝液を添加しておいてもよい。試料ポリヒドロキシアルカン酸を溶解後、混合物全体を遠心分離にかけ、水層と有機溶剤層に分ける。水層を取り出すことによって抽出されたDNA試料が得られる。
本発明によれば、1回の分析に使用するポリヒドロキシアルカン酸試料の量は0.01g〜1g程度でよい。ポリエステル試料は小片化してある方が有機溶剤への溶解が容易である。
ポリエステル試料を溶解するための可溶性有機溶剤としては、ポリエステル試料を溶解し、かつ水又は緩衝液と混ざらないものであればどのような溶剤でも利用できるが、ポリエステルの溶解性が高く、水層との分離が容易である点から、クロロホルム、ジクロロメタン又は1,2−ジクロロエタンを用いることが好ましく、それらの内少なくとも1種用いることができる。可溶性有機溶剤の添加量は、ポリエステル試料が溶解できればよく、通常はポリエステル試料の20〜200倍量(重量比)が好適である。
DNAを抽出するための緩衝液としては、リン酸緩衝液、トリス−塩酸(Tris−HCl)緩衝液等を用いることができ、例えばTE緩衝液(pH8.0、10mM Tris−HCl、1mM EDTA)が好ましく用いることができる。水又は緩衝液には抽出されたDNAが試験管の器壁などに吸着して失われるのを防ぐ目的でキャリアDNAを添加しておくことができる。キャリアDNAとしては、例えばニシンやサケの精子DNAを超音波処理したものが好適に使用できる。その濃度は0.1〜500ng/mlが好ましく、更に好ましくは1〜200ng/ml、より好ましくは10〜100ng/mlである。水又は緩衝液の添加量は前記有機溶剤の添加量に対して重量換算で0.2〜5倍が好ましく、より好ましくは0.5〜1倍が適当である。
<DNAを増幅させる工程>
抽出したDNAを増幅させる工程としては、PCR法やICAN法等が利用可能であり、特にPCR法が好適である。
抽出したDNAを増幅させる工程としては、PCR法やICAN法等が利用可能であり、特にPCR法が好適である。
これまで種々微生物由来のPHA合成酵素遺伝子がクローニングされており、それらは合成するPHAの種類により、いくつかのクラスに分類できる。しかし、例えばカプリアビダス・ネケイターを代表例とするクラスIに属するPHA合成酵素遺伝子においても、またシュードモナス・アエルギノーサを代表例とするクラスIIに属するPHA合成酵素遺伝子においてもクラスを超えて非常に良く保存されている領域がいくつか存在していることが報告されている。 即ち、N末端から319番目のアミノ酸に相当するシステインが活性中心とされており、その周辺のアミノ酸配列は微生物種にかかわりなく比較的良く保存されている。またそこから約40アミノ酸程度N末端に近い領域、即ち280番目のトリプトファンを中心とする領域や活性中心から約60〜70アミノ酸程度N末端に近い領域も比較的良く保存されていることが報告されている(Steinbuffel等、FEMS Microbiol.、vol.103,p217−230、(1992)、Steinbuffel等、Adv. Biochem. Eng. Biochem., vol.71, p81−123,(2001))。従って、適宜相同性の高い2ヶ所を選択し、アミノ酸配列から考えられるPCR用プライマーセットを作製し、LA Taq with GC Buffer(タカラバイオ製)等でPCRを行うことにより増幅断片を得ることができる。
また別のクラスに属するPHA合成酵素を有する微生物種としては、例えばアエロモナス・キャビエのPHA合成酵素が例示できる。アエロモナス・キャビエのPHA合成酵素は前記カプリアビダス・ネケイター等のグループ用プライマーセットではPCR法による増幅断片は効率よく得られない。しかし、アエロモナス・キャビエのPHA合成酵素遺伝子用に適当なプライマーセットを使用することにより、同酵素遺伝子断片をPCR法にて増幅させることも可能である。特に、国際公開公報WO 2004/101796号パンフレットに記載されているようなアミノ酸置換を伴う変異体酵素(例えばN149S変異体やD171G変異体)においては、その置換部分が内部に含まれるようなプライマーセットを用いることにより、対応する塩基置換が行われたPHA合成酵素遺伝子断片として増幅可能である。
その他、たとえ全クラスに対応するようなプライマーセットでは増幅困難な場合でも、各クラスや生物学的に近縁の属や種のみで良く保存されている領域を選択すれば、対応する遺伝子断片の増幅が可能である。
更に適宜プライマーセットを選択すれば、定量的PCR法による増幅やリアルタイムPCR法による増幅を行えば、16SリボソーマルRNAをコードするDNA(以下16SrDNAと略記する)やPHA合成酵素遺伝子断片を基にポリエステル試料中に含まれるDNAの定量も可能である。
微生物の同定方法はコロニーの形態、種々の炭素源の資化性、ビタミンやアミノ酸などの栄養要求性、種々の酵素等の生産性、抗生物質に対する耐性等を指標として行われてきたが、一般的には専門の同定機関に依頼されていた。しかし、分子生物学の発展や塩基配列決定装置の普及・低価格化などにより、対象微生物の16SrDNAを解析することで、特に同定経験が無くとも系統分類を行うことができるようになってきた。特に細菌の16SrDNAには10個の可変領域(微生物の帰属する属や種によって非常に異なる領域)と11個の保存領域とが交互に反復された構造をとっている。その中でも特にV3及びV10と言われる領域は変化に富んでおり、菌種に特異的な配列が含まれていることが多い(江崎 孝行等、腸内細菌学雑誌 vol.20、p245(2006)、 Delong等、 Proc.Natl.Acad.Sci.USA、vol.89、p5685(1992)、 Stackebrandt等編、 Nucleic Acid Techniques in Bacterial Systematics.(1991))。
従って、例えばV3領域を含む断片を増幅させるような複数のユニバーサルプライマーと言われるようなプライマーセットを調製しておけば殆どの微生物に対応可能であり、菌種に特異的な配列が含まれる遺伝子断片として増幅可能である。
例えば腸内細菌科の菌群であれば、16SrDNA増幅用プライマーセットを含む解析用キットも市販されている。
V3領域だけでなく、他の領域に対応する断片も増幅させ、内部塩基配列を決定することで、より精度の高い分類も可能である。更にネスティッドPCR法と言われる2段階のPCR法を利用することも好適である。また、1回目のPCR法と塩基配列決定で大まかな分類を推定し、その後の2回目或いは3回目のPCR法や塩基配列決定で属や種等を特定していくことも可能である。
<増幅断片の塩基配列を確認する工程>
PCR法により増幅した断片の塩基配列確認は通常の方法で可能である。増幅断片を精製後、一旦pUC19等のクローニング用ベクターにサブクローニングしてもよく、サブクローニングせずに直接、サンガー法等でシークエンスすることも可能である。塩基配列の確認方法としては、例えばAPPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行うことができる。
PCR法により増幅した断片の塩基配列確認は通常の方法で可能である。増幅断片を精製後、一旦pUC19等のクローニング用ベクターにサブクローニングしてもよく、サブクローニングせずに直接、サンガー法等でシークエンスすることも可能である。塩基配列の確認方法としては、例えばAPPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行うことができる。
その結果得られる増幅断片内部の塩基配列により、PHA合成に使用された宿主生物や合成酵素遺伝子の由来を特定することが可能である。
更に複数の領域断片が増幅可能であれば、それぞれの断片の内部配列を確認することにより、より精度の高い推定が可能となる。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
(実施例1) ポリヒドロキシアルカン酸試料からのDNAの抽出
アエロモナス・キャビエのPHA合成酵素遺伝子を導入した遺伝子組換えカプリアビダス・ネケイターにより産生されたポリヒドロキシアルカン酸試料として5種類(b〜f)を用意した。これらは紡糸用或いはブロー成型用に配合されたペレット又は粉末サンプルである。
アエロモナス・キャビエのPHA合成酵素遺伝子を導入した遺伝子組換えカプリアビダス・ネケイターにより産生されたポリヒドロキシアルカン酸試料として5種類(b〜f)を用意した。これらは紡糸用或いはブロー成型用に配合されたペレット又は粉末サンプルである。
まずそれぞれのポリヒドロキシアルカン酸試料を約1g秤量し、クロロホルムを20ml及びTE緩衝液(Sau3AI消化したλファージDNAを500ng/ml含む)を4ml加え、ポリエステル試料が溶解するまで撹拌した。
次に4℃、4000gで15分間の遠心分離を行い、水層約3.4mlを分取した。ついでこの水層をNucleo Trap Kit(MACHEREY−NAGEL製)を用いて精製し、最終的に25μlのTE緩衝液で溶出してDNA抽出液とした。
(実施例2)PHA合成酵素遺伝子断片のPCR法による増幅
実施例1で調製したDNA抽出液をテンプレートとし、PCR法による増幅用酵素としてはLA Taq with GC Buffer(タカラバイオ製)を用いた。アエロモナス・キャビエのPHA合成酵素遺伝子断片の増幅用プライマーセットとしては、(1)配列番号1と配列番号2に示すプライマー、(2)配列番号3と配列番号4に示すプライマー、(3)配列番号5と配列番号6に示すプライマーセットを用いた。その他のPCR条件は、(イ)96℃で2分、(ロ)96℃で10秒、50℃で30秒、72℃で15秒、を35サイクル繰り返した。PCR反応液のそれぞれ10μlを4%アガロースで電気泳動を行って増幅断片を確認した。(1)のプライマーセットと(2)のプライマーセットを用いた際の結果を図1に示す。
実施例1で調製したDNA抽出液をテンプレートとし、PCR法による増幅用酵素としてはLA Taq with GC Buffer(タカラバイオ製)を用いた。アエロモナス・キャビエのPHA合成酵素遺伝子断片の増幅用プライマーセットとしては、(1)配列番号1と配列番号2に示すプライマー、(2)配列番号3と配列番号4に示すプライマー、(3)配列番号5と配列番号6に示すプライマーセットを用いた。その他のPCR条件は、(イ)96℃で2分、(ロ)96℃で10秒、50℃で30秒、72℃で15秒、を35サイクル繰り返した。PCR反応液のそれぞれ10μlを4%アガロースで電気泳動を行って増幅断片を確認した。(1)のプライマーセットと(2)のプライマーセットを用いた際の結果を図1に示す。
(実施例3) 増幅断片の内部塩基配列の決定
実施例2で増幅したDNA断片をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製し、その溶出液の一部をテンプレートDNAとし、それぞれ増幅に用いたPCRプライマーをシークエンス用プライマーとしてBigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit(APPLIED BIOSYSTEMS社製)によるシークエンス反応を行った。反応液をDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzer(APPLIED BIOSYSTEMS社製)を用いて解析した結果、プライマーセット(1)で増幅した断片ではアエロモナス・キャビエのPHA合成酵素由来のN149S変異を含む塩基配列が確認され、またプライマーセット(2)で増幅した断片ではアエロモナス・キャビエのPHA合成酵素由来のD171G変異を含む塩基配列が確認された。
実施例2で増幅したDNA断片をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製し、その溶出液の一部をテンプレートDNAとし、それぞれ増幅に用いたPCRプライマーをシークエンス用プライマーとしてBigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit(APPLIED BIOSYSTEMS社製)によるシークエンス反応を行った。反応液をDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzer(APPLIED BIOSYSTEMS社製)を用いて解析した結果、プライマーセット(1)で増幅した断片ではアエロモナス・キャビエのPHA合成酵素由来のN149S変異を含む塩基配列が確認され、またプライマーセット(2)で増幅した断片ではアエロモナス・キャビエのPHA合成酵素由来のD171G変異を含む塩基配列が確認された。
Claims (8)
- ポリヒドロキシアルカン酸を含有する試料を可溶性有機溶剤に溶解し、水または緩衝液で試料DNAを抽出する工程と、当該試料DNAを増幅させる工程と、その増幅DNAの内部塩基配列を決定する工程からなることを特徴とするポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法。
- 特定するDNAが16SリボソーマルRNAをコードするDNAである請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法。
- 特定するDNAがポリヒドロキシアルカン酸合成酵素をコードするDNAである請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法。
- 可溶性有機溶剤がクロロホルム、ジクロロメタンおよび1,2−ジクロロエタンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3に記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法。
- 試料DNAを抽出する工程で、水または緩衝液にキャリアDNAを0.1〜500ng/mlになるよう添加することを特徴とする、請求項1〜4に記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法。
- DNAを増幅させる工程がPCR法である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法。
- ポリヒドロキシアルカン酸が3−ヒドロキシヘキサン酸を含む重合体であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法。
- ポリヒドロキシアルカン酸が3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸からなる共重合体であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸中のDNAの特定方法。
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