JP2009059935A - 有機半導体素子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 有機半導体素子において、有機化合物の溶解性、電気特性、光学特性を制御する方法を提供する。
【解決手段】 加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物を用いることにより、加熱によりその保護基を脱離させ、ポリアミン化合物の溶解性、電気特性、光学特性を制御し、その構造変化によって有機半導体素子の特性を向上させる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、有機半導体素子およびその製造方法に関する。更に詳しくは、有機半導体素子の構成成分として、加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物を用いることにより、保護基の脱離による溶解性制御、電気特性制御が可能な有機半導体素子に関する。
有機半導体素子は、その半導体を構成する有機化合物の種類が豊富なことと、有機化合物の精製技術、成膜技術の進歩により電気伝導特性、光学特性の理解が深まったことから、無機半導体に代わる次世代デバイスとして注目されている。その応用分野は、有機EL(Electroluminescence)、有機太陽電池、有機TFT(Thin Film Transistor)、電子ペーパーなどに広がっている。特に有機ELは、最も実用化が進んでいる分野である。有機ELに用いられる化合物は、高精彩、長寿命化が可能な真空蒸着法で素子作製される低分子化合物と、大面積・低コスト化が容易なインクジェットやスピンコーティング法などの塗布法で素子作製される高分子化合物がある。
しかし、既に実用化されている有機ELは、真空蒸着法で有機化合物を積層することが可能な、低分子化合物を用いた素子に限られている。これは、低分子化合物の特徴として、再結晶や昇華等の精製方法によって化合物の高純度化が比較的容易なこと、真空蒸着法を用いることで電荷注入や電荷輸送、発光といった異なる機能を持つ有機化合物の多層化が可能で、発光効率や寿命など特性の向上が達成できること、真空蒸着法により水や酸素などの寿命に悪影響を及ぼす不純物の混入が少ないことが要因である。このような点から、現状では低分子化合物を用いた量産が進んでいるが、将来の大面積化や低コスト化が難しく、塗布法での実用化が期待されている。
現在、一般的な塗布法で作製される代表的な素子構造は、陽極/正孔注入層/発光層/陰極であり、有機層は正孔注入層と発光層の2層構造である。4〜5層積層する真空蒸着法に比べて多層化できない原因は、溶媒に溶解させた化合物を積層するとき、既に成膜した下層との混合、あるいは下層の溶解が起こるためである。よって現状は、下層の正孔注入層にはポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)が広く用いられている。この材料は水溶液に分散させることが可能である。発光層には、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレンなどの有機溶媒(例えば、トルエン、キシレン、ジクロロエタンなど)に可溶な発光性高分子が用いられている。すなわち、正孔注入層/発光層の界面は、水/有機溶媒のような混和性のない溶媒によって達成されていた。
しかしながら、PEDOT:PSSは、PSSの構成成分であるスルホン酸が強酸の水溶液であることから、製造装置のラインを腐食し、膜中に残った水分が素子寿命に悪影響を及ぼすことも課題とされている。これは、水が流れた電流の電圧が1.5V程度(理論的には1.23V)の低電圧で発生し、生じたOH、Hイオンが他の材料の化学反応を引き起こす原因になるためと考えられる。そのため有機材料に電流を流す素子において、水が内部に含まれることは重大な問題である。
この課題に鑑み、水を含まない非水溶液溶媒も用いPEDOT:PSS以外の高分子正孔注入材料を有機EL素子に使う方法も報告されている。この場合、発光層を積層するときに下層の正孔注入層が溶解しないことが必要となる。その手法として、光感光性樹脂への色素ドーピング(例えば、特許文献1参照)、シランカップリング剤を用いた熱硬化(例えば、特許文献2参照)、架橋型ポリカルバゾールの熱硬化(例えば、特許文献3参照)、熱硬化性樹脂への発光材料ドーピング(例えば、特許文献4参照)、塗布溶媒への分散剤混入(例えば、特許文献5参照)、不飽和基を有するモノマーの重合(例えば、特許文献6参照)などが報告されている。しかし、これらの対策では、不純物として寿命に悪影響を及ぼす、感光剤、カップリング剤、架橋剤、熱硬化性樹脂、分散剤、モノマーなどが成膜後に残存し、十分な効果が得られなかった。
特開平10−69981号公報 特開2006−318876公報 特開2006−257196公報 特開2001−237075公報 特開2007−165231公報 特開2003−292948公報
したがって、PEDOT:PSSに代わる非水系高分子正孔注入材料を用いると、有機半導体素子には不純物の残存という重大な課題が生じ、十分な対策ではなかった。
本発明者らは、先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物が、保護基の脱離による有機溶媒への溶解性を低下させ、かつ素子特性に必要な電気特性を保つことにより、上層の発光層が積層可能であること見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物からなることを特徴とする有機半導体素子に関するものである。本発明は、かかる知見に基づき更に検討を重ねた結果、有機溶媒に溶解可能なポリアミン化合物を塗布、成膜後、加熱処理によって保護基を脱離させることで分子構造変化をもたらし、有機溶媒に対する溶解性を変化させることを利用する有機半導体素子を提供することができる。
本発明は下記を要旨とするものである。
(1) 加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物からなることを特徴とする有機半導体素子。
(2) 加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物が、下記式
Figure 2009059935
[式中、ArおよびArは、各々独立して炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基で1つ以上置換されていても良いフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基(−p−C−p−C−)、チエニレン(−CS−)基またはフルオレン−2,7−ジイル基を示す。Rはt−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基またはメトキシメチル基を示す。mは1または2を示し、nは0または1を示す。]
で表される繰り返し単位からなるポリアミン化合物[Mn(数平均分子量)=1000〜 500000]であることを特徴とする(1)項に記載の有機半導体素子。
(3) 加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物を含んでなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(4) 加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物を正孔注入材料として用いることを特徴とする(3)項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(5) 加熱によってポリアミン化合物の保護基を脱離させることを特徴とする有機半導体素子の製造方法。
このように積層された有機EL素子は、水溶液を用いたPEDOT:PSSのような正孔注入層と比較した場合、水を使わない素子作製方法であるため、素子特性の向上が期待される。更に、水分吸着に用いる乾燥剤の省略や腐食のないプロセスとしてメンテナンスコストの低減など効果は大きい。更に、単一化合物の構造変化であるため、電気的に活性なイオン源、ラジカル源として不純物となる重合開始剤、カップリング剤、分散剤、架橋剤が存在せず、電気特性、特に寿命などにおいて非常に効果的である。
本発明で用いるポリアミン化合物の具体例としては、下記式
Figure 2009059935
[式中、ArおよびArは、各々独立して炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基で1つ以上置換されていても良いフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基(−p−C−p−C−)、チエニレン(−CS−)基またはフルオレン−2,7−ジイル基を示す。Rはt−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基またはメトキシメチル基を示す。mは1または2を示し、nは0または1を示す。]
で表される繰り返し単位からなる化合物[Mn(数平均分子量)=1000〜500000]が挙げられる。
本発明で述べる「有機半導体素子」には、例えば、有機EL、有機太陽電池、有機TFT、電子ペーパー、有機導電膜などが含まれるが、その他、有機化合物に電流を流すことを機能とする素子にも適用可能である。また、下記に示す具体的な効果として、溶媒への溶解性を中心に説明するが、本発明における保護基の脱離によるポリアミン化合物の分子構造変化は、Highest Occupied Moleculer Orbital(HOMO)、Lowest Unoccupied Moleculer Orbital(LUMO)やエネルギーバンドギャップ、双極子モーメントなどの電気特性、吸収スペクトル、蛍光スペクトル、屈折率などの光学特性、膜の凹凸変化、密度変化などの表面形状変化も誘起し、無機半導体、フラットパネルディスプレイ向けの、例えば、導電材料、絶縁材料、光学材料、コーティング材料など様々な用途での適用が見込まれる。
また本発明は、先に述べたこれまでの溶解性変化と異なり、不純物となる重合開始剤、カップリング剤、分散剤、架橋剤などを含まずに、単一材料の構造変化によって、溶解性が変化することを特徴としている。
本発明の効果について、PEDOT:PSSを有機EL素子の正孔注入層に用いた系と、加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物を有機ELの正孔注入層に用いた場合を例に、更に詳細に説明する。有機EL素子の構造は、陽極/正孔注入層/発光層/陰極であり、通常陽極には透明導電膜のIndium Tin Oxide(ITO)が用いられる。水溶性正孔注入材PEDOT:PSSを用いる場合は、ガラスや樹脂製の基板上にパターニングされたITO基板上に、PEDOT:PSS水溶液を塗布して乾燥する。この時、PEDOT:PSSを含む水溶液は強酸であるため、水溶液を送る配管やディスペンサーの腐食が問題となり、また陽極に用いるITOも溶解すると報告されている。次に、水と相溶しない有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどに溶解させた発光材を塗布する。その後、真空蒸着法によって、陰極からの発光層への電子注入を促進しやすい仕事関数の低い金属から選ばれ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土金属、およびその酸化物、ハロゲン化物の単体もしくは複数の混合物が陰極として蒸着される。その後、水や酸素が素子に接触しないように窒素、アルゴンのような不活性ガス中で、金属キャップやガラスキャップの様な有機EL素子との空間をもった封止キャップや、また薄膜封止としてのChemical Vapor Deposition(CVD)法やスパッタリング法などによって成膜されたSiO膜、SiN膜などの密着型の封止膜で封止される。金属キャップやガラスキャップを用いる場合は、素子内部に残る水、酸素を吸収するCaO、MgO、BaOなどの無機系、あるいは有機系乾燥剤をキャップ内部に設置すると、特に素子寿命の向上に効果がある。特に水を溶媒として用いるPEDOT:PSSは、その膜中に残存する水分のため、乾燥剤による水吸収の効果が大きい。
これに対し、本発明の加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物を有機ELの正孔注入層に用いた場合を次に説明する。ITO基板上に、前記したような有機溶媒に、加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物を溶解、塗布する。このポリアミン化合物の保護基には、t−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、メトキシメチル基などが挙げられるが、この他に加熱によって脱離可能な保護基の使用が可能である。次に、成膜後、膜中に残存する有機溶媒を除去するための乾燥後、更に温度を上げ、保護基を脱離させる加熱を行う。保護基の脱離に必要な加熱は、一般的なホットプレート等の接触式加熱炉やオーブンなどの対流式加熱炉の使用が可能であるが、その他に光、レーザ、マイクロ波による加熱も利用可能である。更に、加熱と未加熱の部分を分けることによって、保護基が脱離する箇所と脱離しない箇所のパターンニングが可能である。このパターニングは、例えば、溶解性の違いによるエッチング速度の違いを利用したレジストパターニングや、溶液との親和性の違いを応用した印刷の潜像パターン、電気的特性変化による回路作製など、幅広く応用でき有用である。また、ポリアミン化合物の保護基の脱離における加熱工程は、前記塗布工程で記した溶媒を除去する加熱工程と共用することができ、素子作製工程の省力化につなげることもできる。保護基が脱離されたポリアミン化合物は、その分子構造変化から、溶媒に対する溶解性や、電気特性、光学特性などが変化する。例えば、脱離によって有機溶媒に対する溶解性が低下する化合物を有機ELの正孔注入層に用いた場合、その上に塗布する発光層を下層の正孔注入層を溶かすことなく積層可能にすることができる。
(実施例)
以下、本発明の加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物によって構成される有機半導体素子について実施例をもって説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定は、東ソー製 SC−8020を用いて行った。溶出溶媒にはDMFを用い、ポリスチレンを分子量測定のリファレンスとした。
NMR測定は、日本電子製 JNM−EX400を用いて行った。
IR測定は、日本分光赤外分光光度計IR−810を用いて、KBrペレット法により行った。
元素分析は、Yanaco CHN corder MT−5を用いて行った。
実施例1 加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物の合成
加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物として、Macromolecules、pp7493、39巻、2006年に記載のポリアリールアミン化合物を用いた。
上記ポリアリールアミン化合物は下記繰り返し単位を有するポリアミン化合物であり、その合成方法を以下に示す。
Figure 2009059935
100mlのシュレンク管に、N−tert−ブトキシカルボニル−4,4’−ジブロモジフェニルアミンを854mg(2mmol)、1,4−ビス(トリメチルスタンニル)ベンゼンを807mg(2mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを60mg(0.052mmol)仕込み、脱気したジメチルホルムアミド(DMF)を50ml加え、85℃の窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応後、室温に冷却し、反応生成物を10%フッ化カリウム水溶液200mlに注ぎ、得られた沈殿物をろ過した。ろ過物を10%フッ化カリウム水溶液とメタノールで洗浄した。その後、溶媒除去後、生成物をクロロホルム5mlに溶解し、その溶液を50mlのヘキサン溶液に滴下し、生成物を再沈殿させた。ろ過、真空乾燥後、目的とするポリアリールアミン化合物を薄黄色粉末(収量639mg、収率93%)として得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー GPC(DMF):Mn(数平均分子量)=7400,Mw(重量平均分子量)=9600
H−NMR(DMSO−d,ppm):δ7.76−7.71(m,8H),7.33(s,4H),1.43(s,9H).
IR(KBr,cm−1)3054−2976,1706,1516−1482,1322.
Anal.Calcd for(C2321NO:C,80.44;H,6.16;N,4.08.Found:C,79.00;H,5.82;N,3.66;Br0.16.
次に、合成した化合物を過熱し、保護基の脱離による物性変化や素子特性変化を実施した例を以下に示す。
実施例2 保護基の加熱脱離による有機溶媒への溶解性変化
実施例1で合成したポリアリールアミン化合物を0.5重量%濃度でテトラヒドロフランに溶解させた。その後、イソプロピルアルコールと純水で洗浄した石英基板(25mm角)上に、約0.2ml滴下してスピンコートした。スピンコート後、テトラヒドロフラン溶媒を除去するため、70℃で30分真空加熱した。その膜を接触式膜厚測定装置(DEKTAK)で測定したところ58.3nmであった。また、同様に200℃のベーク温度で加熱した膜厚は、53.6nmであった。
次に、これら2つの膜の溶解性の違いを確認する目的で、成膜したサンプルにクロロホルムとテトラヒドロフランを約0.3ml滴下し、約5秒間放置後、2000rpmで溶媒を振り切り、再び70℃で30分真空乾燥した。各段階で膜厚測定した結果を表1に示す。表1から解るように、スピンコート後70℃で加熱した膜は、クロロホルム、テトラヒドロフランの塗布で、それぞれ44%、67%の膜厚減少が確認された。これは、各溶媒でスピンコート成膜した化合物の膜が、溶解したことを示している。
一方、200℃で加熱した膜は、それぞれ5%、17%の膜厚減少しかなく、70℃加熱と比較して溶解性が変化していた。
Figure 2009059935
これらの溶媒に対する溶解性が低下した効果は、例えば、有機EL素子の正孔注入層としてこのポリアリールアミン化合物を含む膜を用いた場合、正孔注入層を成膜した後、200℃に加熱することで溶解性を低下させ、有機溶媒で塗布する発光層を積層した際に、正孔注入層が溶解することなく積層させることが可能であることを示している。この溶解性変化の効果は、非特許文献1に記載されているtert−ブトキシカルボニル基の熱による脱離反応によるものと考えられる。つまり、加熱によって以下の化学構造変化が起こり、溶解度の変化が起こったものと考えられる。
Figure 2009059935
この結果は、重合開始剤、カップリング剤、分散剤、架橋剤などを用いて高分子材料を硬化、不溶化させる従来の手法と異なり、単一材料の構造変化のみで溶解性の制御が可能であり、電気的に不純物となる添加物が存在しない。また、その用途も有機EL、有機太陽電池、有機TFTのみならず、溶媒との親和性が変化することを利用した印刷用途やレジストパターンのエッチング制御材、塗料など幅広い分野での応用が期待できる。
実施例3 保護基の加熱脱離による光学特性の変化
次に、実施例1で合成したポリアリールアミン化合物の加熱による光学特性変化について示す。
実施例2のように200℃に加熱することで、tert−ブトキシカルボニル基が脱離することが解った。この脱離の結果、窒素原子上の電子密度が高まり、芳香環上の電子状態が変化することが予想される。ここで、ポリアリールアミン化合物をスピンコートした後、tert−ブトキシカルボニル基脱離前後の吸収スペクトル変化を測定した。結果を図1に示す。スピンコート後、70℃で加熱したポリアリールアミン化合物の膜は、310nm付近に吸収のショルダーをもつ可視光吸収特性が得られた。一方、200℃加熱によりtert−ブトキシカルボニル基が脱離した膜は、360nm付近にピークを持ち、脱離前と比較して吸収スペクトルが長波長側にシフトしている。また、同様に蛍光スペクトルにおいても長波長側へのシフトが確認されている。この結果は、単なるスペクトル変化を示しているが、加熱によって光の透過率、蛍光色が変化することから、スイッチング素子、表示材料、レンズ材、光吸収材などの光学材料に適用可能であることが予想される。
実施例4 保護基の加熱脱離による電子状態の変化
保護基の脱離による材料の電子状態変化を測定した。前記基板上に成膜したポリアリールアミン化合物の膜を用いて、HOMO、LUMOを測定した。HOMOの値は、理研計器株式会社製の大気中光電子分光装置(AC−3)を用いて得られたイオン化ポテンシャルの値とした。また、LUMOの値は、膜の吸収スペクトルを測定した吸収端波長から得られたエネルギーバンドギャップを用いて算出した。ポリアリールアミン化合物の膜の加熱温度の違いにより、HOMO、LUMO変化を測定した結果を表2に示す。
70℃加熱ではtert−ブトキシカルボニル基が脱離していないことから、ポリアリールアミン化合物のHOMO、LUMOが得られていると予想される。一方、200℃加熱ではtert−ブトキシカルボニル基が脱離していることから、脱離状態でのHOMO、LUMOが得られていると考えられる。200℃加熱では、HOMOが0.65eV浅くなり、LUMOは0.26eV深くなっている。これは、実施例3で示したように、200℃加熱によってバンドギャップが減少したことによるものである。このHOMO、LUMOの変化は、正孔、電子のキャリヤー移動を促進する、或いは、止めることを制御する有機半導体素子の特性として非常に重要である。勿論、有機材料のHOMO、LUMOは、材料固有の値であるため、実施例の材料に留まらず、分子構造によってかなり細かい制御が可能である。例えば、HOMO、LUMOを浅くするためには、電子供与基であるアルキル基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、アミノ基などで置換し、深くするためには、電子吸引基であるシアノ基、ニトロ基、ピリジル基、エステル基などで置換すればよい。よって、使用用途に応じて様々な分子構造にすることで、加熱前後の電子状態を制御することが可能である。
Figure 2009059935
実施例5 保護基の加熱脱離による有機EL素子特性評価
実施例2と実施例4から、ポリアリールアミン化合物からなる膜は、200℃加熱によって、有機溶媒への溶解性が低下し、HOMOが浅くなることが解った。高分子有機EL素子に一般的に用いられる正孔注入材であるPEDOT:PSSは、その水溶性を利用し、その上に有機溶媒で溶解した発光層を積層させることができる。また、その浅いHOMOから、陽極からの正孔注入障壁が低く、正孔注入性が良好である。
一方、ポリアリールアミン化合物も200℃加熱によって、有機溶媒への溶解性が低下し、またHOMOが浅くなる傾向がある。この2つの現象は、高分子有機EL素子の正孔注入層として必要な条件であると考えられる。加熱によってHOMOが浅くなることが、陽極からの正孔注入性を向上させることを確認する目的で、有機EL素子の作製、評価を行った。
以下に詳細な説明を述べる。
基板には、2mm幅の酸化インジウム−スズ(ITO)膜がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用いた。この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。洗浄後の基板に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、断面図を図2に示すような発光面積4mmの有機EL素子を作製した。
先ず、前記ガラス基板上に、ポリアリールアミン化合物を1.5重量%の濃度に調整したクロロホルム溶液を用いて、膜厚が90nmになるように成膜し、正孔注入層2とした。同様に作製した3つの基板で、tert−ブトキシカルボニル基の脱離効果を確認するため、70℃、140℃、200℃の3条件で真空加熱した。その後、真空蒸着槽内に基板を導入し、1.0×10−4Paまで減圧した。その後、図2で示す基板上に、正孔輸送層3、発光層4および電子輸送層5を順次成膜し、その後陰極層6を成膜した。正孔輸送層3としては、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ビフェニル(NPD)を45nmの膜厚で真空蒸着した。発光層4としては、アルミニウムトリキノリノ錯体(Alq)を60nmの膜厚で真空蒸着した。電子輸送層5としては、Alqを20nmの膜厚で真空蒸着した。なお、各蒸着有機材料は抵抗加熱方式により加熱した化合物を0.3〜0.5nm/秒の成膜速度で真空蒸着して成膜した。最後に、ITOストライプと直行するようにメタルマスクを配し、陰極層6を成膜した。陰極層6は、フッ化リチウムとアルミニウムをそれぞれ1nmと100nmの膜厚で真空蒸着し、2層構造とした。それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(DEKTAK)で測定した。更に、この素子を酸素および水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップと前記成膜基板エポキシ型紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いた。
作製した有機EL素子に直流電流を印加し、TOPCON社製のLUMINANCE METER(BM−9)の輝度計を用いて発光特性を評価した。正孔注入層2の加熱温度の違いによる電圧−電流特性を測定した。その結果を図3に示す。70℃と140℃加熱の場合は、電圧23Vで電流注入が始まった。一方、200℃加熱の場合は、13Vで電流注入が始まった。正孔注入層の加熱温度の違いによって電流特性が変化しており、明らかに陽極からの正孔注入特性が200℃加熱で向上したことが解った。今回の電圧は10V高いが、正孔注入層を90nmから25nmまで薄くすることで、電圧が7Vにまで低下した。
本発明に用いる化合物の分子構造を変えることで、正孔注入特性を更に向上させることが可能である。
このように、加熱によって脱離する保護基を有する有機化合物は、加熱によりその溶解性、光学特性、電子状態を制御することが可能である。本発明は実施した有機EL素子に限らず、有機太陽電池、有機TFT、レジストや印刷のパターニング、表面改質剤など幅広い用途に使用可能である。更に、本実施例のポリアリールアミン化合物以外の高分子材料や異なる機能を持つ高分子の共重合体、例えば、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾールなど電気伝導性の高い分子骨格と保護基を含む分子骨格、ポリイミドなど耐熱性に優れた分子骨格と保護基を含む分子骨格、ポリビニルアルコール、ポリカーボネートなど光学特性に優れた分子骨格と保護基を含む分子骨格など、既に実用化されている機能性高分子材料の改質にも有効である。また、その加熱により脱離する保護基も、今回のtert−ブトキシカルボニル基は、150〜250℃での加熱によって脱離するが、他の既知の保護基、例えば、ベンゾイル基、ベンジルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、メトキシメチル基やそれ以外の熱によって脱離する保護基を用いることも可能で、幅広い加熱温度範囲にも適用が可能である。
以上のように、本発明の加熱によって脱離する保護基を有する有機化合物を有機半導体素子に用いれば、加熱による溶解性制御、電気特性制御が可能な有機半導体素子を提供することができる。
有機半導体素子は、水を使わない素子作製方法であるため、素子特性の向上が期待され、水分吸着に用いる乾燥剤の省略や腐食のないプロセスとしてメンテナンスコストの低減など効果は大きく、有機半導体素子として有用である。
tert−ブトキシカルボニル基脱離前後の吸収スペクトル変化を示す。 本発明で作製した有機EL素子の層構造を示す。 正孔注入層2の加熱温度の違いによる電圧−電流特性を示す。

Claims (5)

  1. 加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物からなることを特徴とする有機半導体素子。
  2. 加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物が、下記式
    Figure 2009059935
    [式中、ArおよびArは、各々独立して炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基で1つ以上置換されていても良いフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基(−p−C−p−C−)、チエニレン(−CS−)基またはフルオレン−2,7−ジイル基を示す。Rはt−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基またはメトキシメチル基を示す。mは1または2を示し、nは0または1を示す。]
    で表される繰り返し単位からなるポリアミン化合物[Mn(数平均分子量)=1000〜500000]であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体素子。
  3. 加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物を含んでなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 加熱によって脱離する保護基を有するポリアミン化合物を正孔注入材料として用いることを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 加熱によってポリアミン化合物の保護基を脱離させることを特徴とする有機半導体素子の製造方法。
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