JP2009059255A - 塑性加工シミュレータ及び記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、圧延、押出し、引抜き、ロール成形、回転成形、鍛造、ロールフォージング、リングローリングなどの主に金属材料の塑性加工プロセスのコンピュータシミュレーションにおいて、加工中の材料の変形状態を高精度かつ迅速に予測する。
【解決の手段】変形前の材料の任意点の位置を変形後の材料位置に変換する変形写像関係を設定するとともに変形後の初期メッシュを生成する手段、該定常変形の初期メッシュの任意の有限要素節点を通過する変形前に材料の中心軸と平行であったファイバーが該初期メッシュの有限要素境界と交わる点を積分節点として材料座標系で記憶する手段、該ファイバーを該初期流線と見なして該初期流線上の積分値が自明な任意の該積分節点または該有限要素節点を開始点とする積分経路において上流から下流方向に該積分節点の補間速度または該有限要素節点の速度を積分する手段を有することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、圧延、押出し、引抜き、ロール成形、回転成形、鍛造、ロールフォージング、リングローリングなどの主に金属材料の塑性加工プロセスのコンピュータシミュレーションにおいて、加工中の材料の変形状態を予測するための塑性加工シミュレータに関する。
鉄鋼やアルミニウムなどの金属材料は橋梁や配管など社会的なインフラ整備や、家庭用の耐久消費財など各種の人工物の材料として極めて重要であり、金属材料無しの状況では人類の60億人の生存は覚束ない。
一口に金属材料といってもその形状や性質は極めて多様であり、互換性や品質を維持するためにJISやASTMなど各国で規格化された寸法形状や強度・材質に従って大量生産され、これを一次加工製品と称する。
代表的な一次加工製品である鉄鋼材料は全世界で年間約10億トンが消費され、ほぼ同じ量が生産される。我国では年間平均約1億トンの鉄鋼製品が少数の高炉会社と多数の電炉会社により製造され、その製品の多くが圧延加工を経由して製造される。圧延の加工プロセスでは1つの工場で年間100万トン以上の製品が高生産性の大型のタンデム圧延機により生産される。主な製品は造船や建築などに利用される圧板製品、自動車や家電製品の外板に加工される薄板製品、各種機械部品などに利用される棒線製品、流体などの輸送に利用される管製品、軌条や建材として利用される形鋼製品などであり、製品毎に専用の工場で生産される。そのため圧延加工プロセスは数百億円規模の初期投資で建設されるので、投資効率を上げるために24時間のフル操業で利用される。トラブルによる設備停止はメーカーに巨額の機会損失をもたらすばかりでなくユーザーの機会損失も生じる。また、製品を製造する際に発生する圧延製品の先後端や幅端部などの不良部は切り落とされて屑化される。投入された原料に対するロスの割合は歩留まり落ち率として管理され、これを極限まで低減させることにより鉄鋼会社は巨額の利益を得る事ができる。同様のことが製品当たりに消費されるエネルギー(エネルギー原単位)や投入労力などにもあてはまる。そのため、一次加工メーカーでは研究開発が活発に行われており、最先端の技術の有効性が常に精査され、メリットのある場合はプロセス開発を経て実用化され操業に活用される。
そのような加工プロセスにおける先端技術の例として、1970年代に萌芽した塑性加工有限要素解析が、1980年代に主に大学における発展期を経て、1990年の前後数年で我国の鉄鋼会社において技術的な成熟期を迎えた。鉄鋼各社がそれぞれの主力製品の圧延工程に関して、競うように専用の圧延CAEシステムを構築したことは誠に印象深い。その成果は、主要製品である薄板圧延において数メートルの幅で数から数十ミクロンmの板厚の差を管理する形状制御技術に活用され、また付加価値の高い棒線管などの圧延におけるロール形状の最適化などにも適用され、各種圧延技術の高度化に確実に貢献した。
その理論的な基盤となったのが流線法による定常剛塑性有限要素解析という極めて特殊な技術であったことは特筆される。非特許文献1は日本塑性加工学会で編集されたバルク材の塑性加工有限要素解析のテキストである。第5章の『定常変形における流線法の定式化』に流線法の歴史や方法、特徴が詳しく解説されおり、既に1975年にR.I. Tanner, R.E. Nickell and R.W. Bilgerの論文が出されている。我国では1982年にM.
Mori, K. Osakada and T. Odaの論文があり、鉄鋼メーカーで開発された圧延CAEは程度の差はあれ、後者の技術に影響を受けている場合が多い。
非特許文献2は『三次元剛塑性有限要素法によるマンドレル圧延の解析』と題して、我国を代表する大手鉄鋼会社から発表された流線法による圧延CAEの論文である。鉄鋼継ぎ目無し鋼管の製造過程で厚肉の素管にマンドレルと呼称される棒状の工具を挿入した状態で、6タンデムに配設された2カリバーロールの成形スタンドで圧延する非常に複雑な変形を伴うプロセスである。6スタンドの中で第1スタンドの変形解析が実施された。8節点六面体要素を使用し、1条件当たり3時間(560要素、インコアソルバー、NSSUN SP/330 CPU時間)程度であり、10から15回の修正で流線形状は収束したと報告された。流線法による圧延CAEの論文はこの時期をピークにして減少し、現在は皆無に近い状況である。
尚、特許文献1はこの時期に大学で実施された研究開発の成果である。
その後、地球温暖化対策などに代表されるように環境対策の社会的な要請が強まり材料の軽量化、高強度化が指向されはじめると、硬くて脆い難加工材料の二次加工技術が注目されるようになった。
二次加工では一次加工製品を材料として、ねじやボルトなどの締結部品から自動車の車体を構成する各種プレス製品まで多様な部品が大量生産される。特に複雑な形状の製品が多く、鍛造や板金プレス、ファインブランキングに代表されるように、安価で高精度な加工を柔軟にかつ効率良く行うために各種金型成型加工方法が開発され適用された。特に自動車部品関連の二次加工では、少数の大手部品メーカーが多数の中小零細の子会社や孫会社などを系列化して生産している。鍛造加工に代表される二次加工では小規模企業が多く、親会社が支給する材料と金型を用いて、小型の加工プロセスで決められたスケジュールで製造される。ジャストインタイム生産方式では、一次加工と同様、生産トラブルはメーカーおよびユーザーの機会損失となるので、トラブルに繋がるリスクの芽は徹底的に排除される。
かつて我国の自動車産業がモータリゼーションにより拡大をする頃は、二次加工メーカーで金型を設計し製造することが一般的であった。独自技術による他社との差別化が企業の発展に極めて重要であることが認識されていたからである。生産設備が停止する休日や深夜に実機設備に試作金型を取り付けて試行錯誤による製品開発が行われた。しかし、ジャストインタイムのような生産体制の下ではこのような実機による試作は設備の故障や破壊の原因になりかねないため、厳しく制限されている。
このように制約の多い実機試作を代替する有力な手法として、2000年頃から汎用塑性加工有限要素解析を用いたコンピュータシミュレーションがCAD/CAM/CAE/CATシステムの一貫として行われるようになった。これらのシステムは1980年代に米国が我国の生産システムを参考に開発し、現在世界的に主流になりつつあるオンライン生産・管理システムと結びついて発展した。その特徴は三次元CADシステムのデータを用いてメッシュジェネレータにより有限要素メッシュを生成して三次元構造解析のシミュレーションを行うものであり、設計段階で製品特性を最適化することにより実機による試作を合理化してコストと開発期間の大幅な短縮をもたらす。これらの新生産システムを採用することにより、自動車の新車開発のサイクルは10年前に比べて1/4程度に短縮化された。
汎用塑性加工有限要素解析は構造解析よりも大幅に複雑なため、構造解析比べて実用化がかなり遅れて、ようやくこの時期にCAEに使えるような製品が開発された。日本では大手の金型メーカーがいちはやく金型設計の合理化のために導入し、解析のノウハウを蓄積することによって、解析プログラムの販売およびコンサルティングを手がけるようになった。そのため、金型設計製作技術の蓄積される場所がかつての鍛造の現場から現在は大手の金型メーカーに急速に移行しつつあり、金型技術自体が急速に平準化される状況にある。
汎用塑性加工有限要素解析の理論的基盤は、今から約30年程前に米国の大学で開発された非定常剛塑性有限要素解析であり、その後の着実な技術の進化によりベンチャービジネスとして製品化されたことは特筆される。非特許文献1)に剛塑性有限要素解析に関する歴史、方法、特徴、適用事例、プログラムなどが詳細に解説されている。30年に及ぶ長い歴史の中でようやく数年前から市販製品によるコンピュータシミュレーションが行われるようになった。その原因は、三次元CADからの自動モデリング機能と三次元の自動リメッシュ技術の取り込みに成功したこと、そのためユーザーの操作性と解析の信頼性が向上したことが大きい。また、従来のプログラムが高性能なワークステーション上で稼動するよう設計されていたが、この頃から安価で高性能に進化したパソコン上でも稼動するように変更され使いやすくなった。更に、ユーザーニーズが開発に反映され、バージョンアップの度に重要な機能が付加されており、非定常弾塑性有限要素解析やALEと呼ばれるメッシュ制御技術が付加された。
近年、非特許文献3に市販プログラムを用いてロール成形プロセスで実験結果と解析結果を比較した研究成果が『角鋼管のコーナー形状に及ぼすロール成形条件の影響 第1報』として大学から報告された。丸鋼管を3タンデムに配設された4カリバーロールの成形スタンドで圧下成形して矩形の鋼管を製造する。解析条件としては、材料丸管に対して8節点六面体要素を使用し肉厚方向は3要素で、全要素数は約15000〜20000要素のメッシュを生成し、管端付近をロールの締め込みによるプレス成形で変形させた後、ローリングにより定常状態になるまで加工する。計算は汎用解析コードDEFORM(商標)−3D Ver.5.1を用い、各プロセスにおける計算時間はそれぞれ12時間〜24時間(Pentium-4、3.0GHzのパソコンを使用)と報告された。
非特許文献2と非特許文献3は何れも多スタンドの鋼管の成形工程から取り出した単スタンドのカリバーロール加工であるが、前者の方が後者に比べてひずみが大きくかつ変形が複雑である。非特許文献4のホームページの資料から非特許文献2のパーソナルコンピュータは非特許文献3のワークステーションに比べて約500倍程度高速な演算処理能力を有すると推定される。それにも関わらず処理時間は前者が後者の0.25〜0.125倍と大幅に短い。これは両者で解析理論が異なったことが最も影響したものと判断され、計算処理量が後者は前者の実に2000倍から4000倍に達すると結論できる。
一見同じような問題に対して、適用する解析理論が異なることにより計算処理のパフォーマンスが数千倍変化することがあり得るのか疑問が生じる。また、世界的に事実上の標準と見なされつつある市販の最新の高性能汎用プログラムが、専用とはいえ10年以上も前に開発されたプログラムに対して劣るのであれば、その原因を明らかにして改善することが出来ると考えられる。しかしながら、市販プログラムの内部構造や詳細な理論などに関する情報は開示されていない。そこで、インターネットで文献調査を行った。
非特許文献5は市販プログラムの開発関係者による『Recent development and applications of three-dimensional finite
element modeling in bulk forming processes』と題する論文である。市販プログラムの特徴として、アップデートラグランジェ法による有限要素定式であり、金属加工においてメッシュがひどく変形した際に自動リメッシュを適用することにより解析を継続できる。MINI elementが三次元解析のために有効に組み込まれているようである。
この部分の記述は極めて専門的で難解であり、最初のアップデートラグランジェ法と自動リメッシュは非特許文献1に詳しいので、以下にMINI elementに関してはインターネット上の断片的な情報から発明者が理解した範囲で、簡単に説明する。
塑性加工の前後で材料の質量および体積は弾性変形成分を除き変化しない。塑性加工プロセスでは弾性ひずみに比べて大きな永久変形ひずみを生じるので、その場合は弾性ひずみが無視され、体積変化が生じないという物理的な制約が生じる。
鍛造や圧延などの大規模な変形が生じる塑性加工解析では、有限要素が変形して写像関数が不正になり計算が途中停止する問題があった。その対策として、解析の途中で健全なメッシュを再生成するリメッシュが適用されている。但し、有限要素の幾何学的な制約から、信頼出来るメッシュを自動生成できるのは二次元問題の三角形要素、三次元問題の四面体要素、そして流線法などのスライス法で便利な五面体要素などに限られる。また、塑性変形解析では非圧縮性の条件のため、低次の三角形や四面体要素を利用した場合に、クロストライアングル(二次元では四角形を交差する二本の対角線で分割することにより4つ三角形要素に分割、三次元では六面体を五個の四面体に分割)などの特殊例を除きロッキングを生じる問題があった。ロッキングとは要素が自由に変形出来ない状態で、ロッキングを生じた場合に得られる変形形状は物理的に不合理であり信頼性が無い。ロッキングを防止するために1要素当たりの変形の自由度を増加させることが効果的であり、二次元の場合の6節点3角形要素や三次元の場合の10節点四面体要素のように要素の辺の中央にも節点を有する二次要素が知られている。しかしながら、これらの高次の要素は要素境界面の形状関数が一次の線形でないから、一次要素のように単純な比例配分で接触面の荷重を予測すると誤差を生じるので使いにくい。
一方、非圧縮性流体解析では低次要素に泡節点(バブルノード、泡沫節点)を付加することによりロッキングを解消する試みがなされており、成果を納めている。MINI elementは泡節点を有する要素であり、ラグランジェ未定乗数法を用いて効率良く計算処理が出来る。泡節点は要素の中心部に付加され変形の自由度を増加させるとともに、要素の表面で零となる形状関数を利用する。そのため低次要素と同じメッシュジェネレータや接触判定がそのまま利用出来る。これは、構造解析で既に確立された3次元CADを核とするCAD/CAM/CAE/CATシステムを塑性加工解析に適用出来る可能性を意味している。
次に、非特許文献3で流線法に比べて計算処理量が数千倍に増加する原因について検討する。
そのために、非特許文献1で利用されている要素、即ち二次元問題では4節点四角形要素、三次元問題では8節点六面体要素と上記の泡節点付要素を比較する。二次元では格子状分割した各四角形を対角線で2個の三角形に分割した場合、三次元では格子状に分割した各六面体を5個の四面体に分割した場合を想定して、1要素当たりに振分けた場合の節点数(期待値)を求めた。二次元の場合、四角形要素で1個/要素、低次三角形要素で0.5個/要素であるのに対し、泡節点付三角形要素は1.5個/要素と低次要素の3倍である。三次元の場合は、六面体要素が1個/要素、低次元四面体要素で0.2個/要素であるのに対して、泡節点付四面体要素は1.2個/要素と低次要素の実に6倍にも達する。
非特許文献2では8節点六面体要素をもちいており、要素数が560個であるから節点は600個程度と推定され、変形の自由度は1800個程度である。一方、非特許文献3では泡節点付四面体要素を利用したものとすると、要素数が最大2万個であるから、節点数はおよそ2万4千個程度と推定され、変形の自由度は実に7万2千個にも達する。
非特許文献6は代表的な連立一次方程式の直接解法および反復解法を用いて、有限要素節点数と計算量および処理時間の関係を調査した。直接解法は自由度が少の場合に処理量も少ないが、自由度が増加するとそのべき乗で増加する。一方、反復解法は自由度が少の場合は反復のため処理量が多いが、自由度が増加しても処理量の増加が少ない傾向である。そのため、自由度が1万程度以上では反復解法が有利になる傾向である。但し、剛塑性有限要素解析では反復解法で収束解を得るためには特別な処理が必要であることが知られており、また収束条件が解析の条件に大きく影響されるため、ノウハウが必要と考えられる。
非特許文献2では自由度が1800個程度で十分な精度の結果が得られたので、全体の処理量が極めて少ない特徴がある。一方、非特許文献3では自由度が7万2千と多いため、反復解法が使用されたと考えられる。しかし、自由度が絶対的に多いため処理量は非特許文献2に比べて4千倍程度に達したものと推定される。
このように、圧延の定常解析問題では流線法による定常解析は非定常解析に比べて格段に高性能である。また、圧延、押出し、引抜き、ロール成形、回転成形、鍛造、ロールフォージング、リングローリングなどの二次加工の塑性加工プロセスにおいても定常変形に近似出来る場合が多い。しかしながら、流線法は二次加工の定常変形解析として小企業には殆ど普及していない。これは、流線法による市販製品が開発されていないことが最大の理由であると考えられるが、流線法の製品プログラムが開発されない理由は文献調査を行っても依然として不明である。発明者は流線法による高性能な二次加工の解析プログラムを開発するために、実際にプログラムを試作しながら検討した。その結果、以下の課題を発見した。
第1の課題として、断面形状の多様性と局部変形への対応がある。アルミ建材などの異形断面の定常押出し加工プロセスを想定して流線法のメッシュ生成と流線の定義を行った際に、材料の断面積を製品の断面積で除した押出し比が10程度以上と大変形になる場合がある。この場合、製品の断面形状に加工したダイスの隙間を材料が流動する際に、流線が三次元的に複雑に変化する。これは、油粘土や鉛などの模擬材による加工試験で観察されており、大きな押出し比における流線の定義の困難性が課題の一つとして挙げられる。また、製品の断面形状が棒や管などの軸対称形状から外れて、多角形やサッシのようなボックス状の形状になると、押出し比が小の場合でも流線が複雑化して定義が困難になる。現在、非特許文献3で利用された市販プログラムによる非定常解析が行われ、このような流線の予測が困難な問題で定常解が得られたと報告されている。非定常解析の場合、材料の先端がダイスの隙間に流入する際に、材料の有限要素が変形により潰れて解析を継続することが困難になる。そこで、解析の途中で潰れの大きな要素をリメッシュにより新しい健全な要素に強制的に置き換えて解析がなされる。これは、非特許文献5で開示された泡節点付要素と自動メッシュジェネレータによるリメッシュ技術の恩恵により解が得られたものと理解される。説明の便宜のため今後この技術を『パス内リメッシュ』と呼称する。
一方、流線法による定常解析に関して、非定常大変形の場合のようなリメッシュに相当する技術を文献調査した。その結果、そのような技術は報告されておらず、これから類推すると圧延プロセスではパス内で要素のひずみによる計算停止の問題は発生しないようである。即ち、長い歴史と先進の技術で洗練された圧延プロセスでは問題が顕在化しない可能性がある。
非特許文献7は形鋼の多パス圧延を非特許文献2および非特許文献3と同様に単スタンドの圧延を繰り返すことによって予測する際に、上流スタンドの変形の蓄積で下流の材料のメッシュが潰れる場合があるため、メッシュを再構築する技術が開示された。今後この技術を『パス間リメッシュ』と呼称して、非定常解析のような『パス内リメッシュ』と区別する。パス間リメッシュは本来連続である多パス圧延中の材料の一部を切り出して単スタンド圧延に近似したため、従来技術であるメッシュ生成とリゾーニングの組合わせで実現された。しかしながら、この方法はパス内リメッシュに対して解決策とはならない。即ち、非定常解析の使用ではパス内リメッシュが必要な程厳しい変形を生じる問題では、メッシュと流線を同一視する従来の流線法では全く解析が出来ない問題があった。
尚、多段加工では同一の材料が複数の加工スタンドにおいて工具と接触し変形する。そのため、各スタンド間の材料の移流量のバランスを調節する力学的なレスポンスとしてスタンド間力が発生する。特に、各スタンドの工具速度と材料移流速度が整合しない場合はスタンド間力によるバックテンションによりロールバイトの変形形状が変化する。従って、多段加工でスタンド間力の影響を考慮するためには材料は上流から下流まで繋がる必要がある。
但し、圧延プロセスの場合にはスタンド間力を含む各種の変形状態をセンサーでモニタリングするので、単スタンドの解析モデルに実測されたバックテンションやフロントテンションを負荷することにより、高精度の予測が可能である。
しかし、二次加工では、成形加工機にセンサーが取り付けられていないことが多く、そのためスタンド間の材料も解析領域に加える必要がある。
非特許文献8は忠実材料を傾斜圧延しながら穿孔するマンネスマン方式による管圧延の解析が開示されている。この場合材料は回転しながら前進するので流線がらせん状(スパイラル状)になる。通常の流線法では材料のファイバーと一致する有限要素の辺が流線に沿うようにメッシュを修正する。そのため、マンネスマン方式の管圧延にこの修正方法を適用すると、有限要素がスパイラル状にねじれるためメッシュが潰れる問題があった。そこで、非特許文献8では流線を有限要素の境界面内に存在するように拡張して、流線がらせん状に変形してもメッシュが潰れることのない方法を開示した。尚、流線の修正は断面内で有限要素節点と隣り合う流線の極座標を角度で補間して求める数学モデルを仮定した。但し、この場合の流線がらせん状になるのは材料の剛体回転による影響のためであり、加工ひずみが集中するためではない。そのため非定常解析で『パス内リメッシュ』が必要な厳しい変形を生じる問題では、断面内のメッシュが大きく変形することを防止できないので非特許文献8の開示の方法では全く解析が出来ない問題があった。
課題の2として、高精度な多段加工のメッシュと流線の生成がある。非特許文献2は6スタンドの連続圧延、非特許文献3は3スタンドの連続ロール成形であるが、何れも単スタンドの加工プロセスとして近似した上で解析を行っている。非特許文献3は既に検討したように、自由度が計算機の限界に近い程度に設定されているので、単純にスタンド数をN台にすると自由度がN倍に増加する。これは解析時間とメモリの増加をもたらすので、解析が極めて困難な状況になることが予想される。一方、非特許文献1では、Nスタンドの連続解析とした場合に、自由度はN倍に増加する。しかし、連立一次方程式の直接解法では処理量を増加させる最大のリスクは剛性行列のバンド幅であり、これは材料断面の有限要素節点の数で記述される。即ち、材料の断面の要素分割を変更せず材料の長さをN倍に増加させる限りは、バンド幅は材料の長さによらず一定である。問題となるのは各スタンドでロールかリバーが異なり、材料の断面形状も上流スタンドの加工変形の影響を受けて変化する。そのため、各スタンドでロ−ルと材料の接触状況が大きく変化し、各スタンドに合わせた流線の生成が重要になる。しかしながら、非特許文献2では構造格子状のメッシュを前提に、材料の中心線に平行な要素の辺を長手方向に結ぶことにより流線と仮定している。有限要素メッシュは構造格子状なので長手方向の任意の断面で同じ分割パターンを維持するのに対して、流線は工具接触の有無により長手方向にも変化する。そのため、前処理でメッシュと流線を最適化することが単スタンドの場合に比べて著しく困難になる。
第3の課題として、前処理に必要なユーザーの労力を削減するとともに、事務用のパソコンでも処理時間を短縮して解析のレスポンスを向上することにより、ケーススタディによる十分な検討が出来るようにしなければならない。
非特許文献5では構造解析で既に確立された3次元CADを核とするCAD/CAM/CAE/CATシステムを塑性加工解析に適用出来る可能性を指摘した。しかしながら、非特許文献3のパフォーマンスを参考にするとCAEの入力から結果の出力までの待ち時間、即ちレスポンスが構造解析の場合に比べて完全に劣る。構造解析であれば1回の連立方程式の解法で解が得られる。これに対して、塑性加工解析では非線形性のため何回も連立方程式を解かねばならず、非定常解析では更に時間ステップ数これを繰り返すことになる。非特許文献3の場合、1スタンドの解析に半日から丸一日の待ち時間が必要になる。3スタンドの場合は2日〜3日程度でようやく1条件であり、十分なケーススタディが困難である。レスポンスが3分程度に短縮されると構造解析のようにケーススタディによる最適条件の抽出が可能になる。例えば流線法に変更して処理量を2000分の1に削減した場合に、解析のレスポンスは2000倍に向上する。即ち、非定常解析で2日〜3日であれば、定常解析により3分〜4分弱のレスポンスに改善されるので、十分な最適化が可能になる。
特許文献1)特開2002-288240:『圧延解析システムおよびプログラム』
非特許文献1)日本塑性加工学会偏:『静的解法FEM−バルク解法』(2003)、コロナ社
非特許文献2)山田健二、小川茂、濱渦修一、菊間敏夫:塑性と加工、第36巻第411号(1995)、384
非特許文献3)長町拓夫:第57回塑性加工連合講演会講演論文集(2006)、123
非特許文献4)姫野ベンチマークのホームページ accc.riken.jp/HPC/HimenoBMT/
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非特許文献5)G. Li, J. T. Jinn, W. T. Wu and S. I. Oh: Journal of Materials Processing Technology Vol.113, Issues 1-3,
15 June 2001, Pages 40-45
非特許文献6)吉田忠継:塑性加工有限要素データ作成ツール,プレス技術,44-11(2006),39
非特許文献7)柳本潤、木内学:H5塑性加工春季講演会(1993)、25
非特許文献8)小森和武:H19塑性加工春季講演会(2007)、53
塑性加工の変形解析では微小な弾性変形成分を無視しても差し支えない場合が殆どであり、優れた実用性から主に剛塑性有限要素解析が適用されてきた。非特許文献1に開示のように剛塑性有限要素解析では圧延のように圧延機に固定された座標系で被加工材の形状が変化しない定常解析と、鍛造プロセスのように時間とともに被加工材の形状が変化する非定常解析が適用されてきた。
流線法による定常解析は1990年頃に圧延加工プロセスの専用解析プログラムとして開発のピークを迎えた。一方、非定常解析は汎用塑性加工解析プログラムとして製品化され、2000年頃から各種二次加工の解析に利用されはじめた。自動リメッシュ技術の適用により、二次加工の定常変形問題などにも適用されている。しかし、本来、定常変形の場合はレスポンス性に優れる流線法による専用解析プログラムの利用が望ましいはずである。
しかしながら、流線法を二次加工に適用する際に、(1)断面形状の多様性と局部変形への対応、(2)多段加工の高精度メッシュ生成、(3)省エネ省力化の課題が顕在化するため、流線法の見直しが必要になる。圧延解析では流線の生成は即メッシュの生成であり、流線の修正とは有限要素節点の座標の修正を意味した。しかし、このようなメッシュと不可分の流線の定義は非常に特殊であり、違和感があることから見直しが必要である。
これらの検討を踏まえて、以下に流線法を二次加工に適用する際に克服しなければならない技術的な課題や問題点を詳細に分類して説明する。
(1)発明者は油粘土を模擬材料とする圧延試験で加工前の材料試験片の中心軸に平行なファイバー状の目印を材料に設定するとともに、圧延加工しながら定常変形の途中で停止して目印のファイバーの変形状態から定常流線を推定した。有限要素解析では前処理において複数の有限要素を組合わせることにより、材料をモデル化する。これは油粘土で材料を造形して試験材とすることと同じである。
ところが、従来の流線法では有限要素の辺がファイバーと一致するようにメッシュ生成を行う。従って、流線はメッシュ生成の段階で既に仮定されており、メッシュ生成により自動的に生成される。
一方、油粘土による模擬試験では、造形した試験材の中心軸に平行な任意のファイバーに目印を付加することにより、観察する流線を指定する。即ち、材料とファイバーは全く独立に指定出来るものであることが容易に理解出来る。
従来の流線法ではメッシュを構造格子状に生成するとともに、材料の中心軸に平行な連続する要素の境界辺をファイバーと見なしてきた。そのため、流線生成を合理化したが、同時に流線定義の自由度を完全に制限してしまった。複雑な問題で流線が複雑に変化すると、流線に固定されたメッシュも複雑に変形して要素の潰れが不可避的に発生した。
一方、ファイバーはロールと材料が接触するロールバイト近傍で湾曲するが、変形の生じないスタンド間では中心軸に平行のままである。即ち、有限ひずみ速度の分布域はロールバイトとその近傍に限られるため、従来の均一メッシュでは無駄な未知変数が増加する問題があった。
(2)流線法では、前処理でメッシュを生成する際に定常変形状態を仮定する必要がある。これは求める解を前処理の段階、即ち解析を行う前の段階で直接近似することに他ならない。圧延加工ではプロセス改善のメリットが大きいため、前記の油粘土による模擬試験など実験により定常変形状態の調査が行われ、有用な知見がデータベース化されているので、定常変形状態を精度良く予測することが出来る。しかし、二次加工ではそのようなデータベースが利用できないので、解析だけで定常変形状態を高精度に予測する必要があった。
(3)また、流線法では定常状態のメッシュに対して、初期流線を高精度に仮定する必要がある。初期流線は流線修正後も変形しないことが望ましい。何故なら、歪みの少ない定常状態のメッシュを生成しても初期流線の予測精度が悪い場合には大幅な流線修正が行われるのでメッシュが歪んで最悪計算処理が停止する問題があった。
(4)複雑な形状の定常変形状態の三次元メッシュを手動で生成することは、解析の労力が増すだけでなく、健全なメッシュの生成が困難である。そこで、自動メッシュジェネレータを用いる必要があるが、生成出来る低次要素のメッシュは塑性加工ではロッキングのために解析精度が極端に悪いことが知られている。
(5)ロッキングを生じ難い泡節点付要素が、非圧縮性流体の解析で開発され実用化された。これはラングランジェ未定乗数方と結びついて海外で独自の発展をしたようである。しかし、我国ではその利用が全く行われていなかったようである。そのため、我国独自の高性能な圧縮性材料特性法のような方法が泡節点付要素に適用出来るか不明であった。
(6)タンデム加工プロセスでは解析の初期に工具速度の設定が困難な場合がある。そのような場合に工具速度を未知変数に取り込む処理が必要である。
(7)タンデム加工の解析では、流線がロールバイトの近傍で湾曲するので、ロールバイトのメッシュを密に、スタンド間のメッシュを疎に分割する必要があった。しかしながら、流線法では長手方向の要素長さを変化させる以外は、そのような取り組みが行われなかった。
(8)鋼管のように曲率を持つ材料のメッシュを生成するためには最低限の流線が必要である。また、スタンド毎に最適な流線を定義するためには、材料のメッシュとは別に工具接触の情報を取り込むため任意の流線を追加することが重要である。しかしながら、このような柔軟な流線の定義が行えなかった。
(9)有限要素メッシュのコネクティビティーを考慮すると、材料メッシュの自由な生成が大幅に制限される。特にスタンド毎に最適な流線を生成するためには、コネクティビティーの制約条件の緩和が必要である。そのための十分な検討がなされていない。
(10)各種加工加工プロセスの専用の解析システムとして前処理の自動化を行うとともに、各プロセスの変形の特徴を考慮した加工組織の変化を迅速に予測するシステムが実現されなかった。特に、パス内リメッシュが必要な程大きなひずみが生じる場合の解析が困難である、
(11)加工発熱を考慮することによって材料の温度履歴を検討できるようにしたい。また、加工履歴と温度履歴を求めて材質の予測を実施したい。特に、パス内リメッシュが必要な程大きなひずみが生じる場合の解析が困難であった。
(12)連立一次方程式の高速な解法を行って、レスポンスを向上したい。
(13)流線法では弾性変形成分を無視するので、これを合理的に補正したい。特に、冷間加工ではスプリングバックによる加工精度の低下を防止する金型設計を行いたい。
(14)プログラムのメンテナンスなどが比較的容易な、オンラインのCAEシステムを構築したいが、解析の待ち時間が長いと利用しにくい。レスポンスを3分程度に制限できれば実現が可能である。
(15)事務用の性能が悪いパーソナルコンピュータでスタンドアローンの解析を実施したい。
これらの課題を解決するためには、剛塑性有限要素解析によるビジネスモデルを分析して、オーソドックスな方向を目指すか、特異性を活かしたニッチな方向を目指すか、検討する必要性がある。
剛塑性有限要素解析の基本は非定常解析である。何故なら、一般的に解析前に自明であるのは初期条件と境界条件だからである。非定常剛塑性有限要素解析では初期状態の剛性方程式に境界条件を適用して釣り合い条件を満足する速度場を求める。この速度を時間積分して次時刻(次時間ステップ)の解析領域を求める。この操作を繰返し行って最終時刻(最終ステップ)の解析領域の形状および速度場を求める。リメッシュ技術を適用した非定常解析では、マニュアルに従って操作すればプロセスの素人でも原理的に解を得ることが可能であり、極めてシュアな(堅実な)方法である。
正に、オーソドックスなビジネスモデルであり、汎用性と信頼性が開発の方向である。
一方、流線法は非定常解析をベースとした応用技術である。前処理の段階で最終的な解を予測し、1時刻(1時間ステップ)だけの非定常解析を行って解を修正する。一般に修正量は僅かであるから、計算処理量は圧倒的に少なくて済み、経済的である。しかし、前処理の解の予測精度が悪い場合には解が収束しない危険性がある。収束させるためには前処理にノウハウを注入するので、非定常解析のような汎用性は望めない。これはメーカーから見た場合に製品として拡販が困難である。但し、ノウハウが優れている場合は、非特許文献2で報告されているように、抜群のパフォーマンスを示す。まさに、材料の変形状態を熟知したプロセスの玄人が開発して自ら使うクールな(賢い)方法である。
これは、正にニッチなビジネスモデルであり、パフォーマンスが柱である。即ち、流線法は徹底的に専用化を図り、圧倒的なパフォーマンスを備えなければ、使われない。前期の詳細な課題はそのような方向性で開発されるべきである。
代表的な一次加工である圧延解析として流線法による専用プログラムが成功した背景には、メーカーとユーザーがともに自社の専門技術者であったことが挙げられる。そのため、使い勝手よりもパフォーマンスが追求された。しかし、専用プログラムなので慣れれば使い易さは極めて良好である。
二次加工では金型設計や操業を行う技術者が実機試験の代替手段として利用する。この場合、対象とするプロセスは各工場で決まっているので、ユーザーとしては専用のプログラムが使い易い。また、メーカーとしては専用のプログラムの方が保守や改造が容易である。
但し、専用プログラムは需要が少ないこと、プロセスの専門知識が必要なことから、製品の価格が割高となる傾向にある。出来るだけ前処理の汎用化とプログラムの簡素化を指向する必要がある。
以上のことを考慮して、発明者はメッシュの生成と流線の生成を分離することが簡素化のために重要であると直感した。また、解析を行う前に定常変形状態を予測するという、本末転倒のような課題に対しては、補助的に簡易有限要素解析を実施して近似解の精度の向上を図る方針とした。
また、プログラムのフローは各種プロセスで共通として、簡易有限要素解析の境界条件や初期条件などを変更することにより、専用化を図ることにした。
これらの基本方針に従って最適なシステムを検討して、以下に示すように問題解決を図った。
即ち、第1の発明は定常変形の初期メッシュおよび初期流線を設定した後、剛塑性有限要素解析を含む反復計算により定常状態の物理的な条件を満足するがごとく流線を修正しながら定常流線を予測する塑性加工シミュレータにおいて、変形前の材料の任意点の位置を変形後の材料位置に変換する変形写像関係を設定するとともに変形後の初期メッシュを生成する手段、定常変形の初期メッシュの任意の有限要素節点を通過する変形前に材料の中心軸と平行であったファイバーが初期メッシュの有限要素境界と交わる点を積分節点として材料座標系で記憶する手段、ファイバーを初期流線と見なして初期流線上の積分値が自明な任意の積分節点または有限要素節点を開始点とする積分経路において上流から下流方向に積分節点の補間速度または有限要素節点の速度を積分する手段を有することを特徴とする塑性加工シミュレータである。
第2の発明は、設定した変形写像関係を変形前の材料に適用することにより変形後の材料の表面形状を予測する手段、予測された表面形状を基準として材料表面および内部に三次元有限要素メッシュを生成する手段、生成された三次元有限要素メッシュの任意の有限要素節点を通過するがごとくファイバーを変形写像関係の逆関係から特定する手段、変形写像関係を変形前のファイバーに適用することにより変形後の材料の初期流線を設定する手段、を有することを特徴とする請求項1に記載の塑性加工シミュレータである。
第3の発明は、変形写像関係が有限要素変形解析、更に望ましくはリメッシュ機能付きの一般化平面ひずみ非定常剛塑性有限要素変形解析であることを特徴とする請求項1および請求項2に記載の塑性加工シミュレータである。
第4の発明は、三次元有限要素メッシュが少なくとも8節点六面体要素、泡節点付の四面体一次要素または泡節点付の五面体一次要素の何れかを含む要素であり、更に望ましくはデローニ分割による自動メッシュジェネレータで生成されることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の塑性加工シミュレータである。
第5の発明は、圧縮性材料特性法またはペナルティー法による剛塑性有限要素定式であることを特徴とする請求項1から請求項4に記載の塑性加工シミュレータである。
第6の発明は、任意の工具速度を未知変数として材料と工具の接触節点における相対速度を記述し、摩擦仕事を汎関数に取り込んで最小化することにより工具速度を予測することを特徴とする請求項1から請求項5に記載の塑性加工シミュレータである。
第7の発明は、タンデム状に配置された複数段の加工手段による定常変形中の材料を解析領域とし、有限ひずみ速度分布域のメッシュを密に、見なし剛体変形域のメッシュを粗に設定するとともに、所望により見なし剛体変形域を流線積分から除外することを特徴とする請求項1から請求項6に記載の塑性加工シミュレータである。
第8の発明は、材料の上流から下流方向に単数または複数の分割様式のスライスを直列状に配置することにより有限ひずみ速度分布域に密な分割様式、見なし剛体変形域に粗な分割様式を設定する手段、隣り合うスライス間のメッシュ情報伝達機能によりメッシュの整合性を維持しながら基本となる材料の形状定義流線に接触や局部変形の細メッシュ流線を付加する手段を有することを特徴とする請求項7に記載の塑性加工シミュレータである。
第9の発明は、見なし剛体域において、形状関数が異なる異種の有限要素を接続する手段、材料特性が異なる有限要素を接続する手段、有限ひずみ速度分布域と次数や次元が異なる要素を用いる手段、接続節点を大幅に省略する手段の所望の手段を適用することを特徴とする請求項7および請求項8に記載の塑性加工シミュレータである。
第10の発明は、圧延、押出し、引抜き、ロール成形、回転成形、鍛造、プレス成形、ロールフォージング、リングローリングの何れかの加工プロセスにおいて、任意の流線の変位勾配増分を積分することにより変形の履歴を予測する手段、結晶塑性理論により任意の変形の履歴に対する結晶組織を推定し結晶塑性データベースに登録する手段、予測された変形の履歴を入力して結晶塑性データベースから結晶組織を予測する手段を有することを特徴とする請求項1から請求項9に記載の塑性加工シミュレータである。
第11の発明は、温度解析および組織予測解析と連成することを特徴とする請求項1から請求項10に記載の塑性加工シミュレータである。
第12の発明は、スカイライン法による連立一次方程式の求解を行う手段、解剖法順序による節点番号付け、更に望ましくは二段階離散化法による節点番号付けと多重スカイライン法による連立一次方程式の求解を行う手段、剛塑性有限要素解析の収束条件を備えた反復解法による連立一次方程式の求解を行う手段の何れかを任意に選択することを特徴とする請求項1から請求項12に記載の塑性加工シミュレータである。
第13の発明は、非定常弾塑性有限要素解析により弾性変形に関する補正を実施することを特徴とする請求項1から請求項12に記載の塑性加工シミュレータである。
第14の発明は、インターネットのサーバーに登録された請求項1から請求項13のいずれかに記載の塑性加工シミュレータである。
第15の発明は、請求項1から請求項13のいずれかに記載の塑性加工シミュレータのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
図1は本発明の実施例における解析の流れ図を示す説明図である。これは発明者が試作したプログラムを参考に作成したものである。
即ちプログラムを開始すると、〔1〕入力で解析に必要なデータをテキストファイルから読み込む。そして、変形前の材料のメッシュを生成する。ここでメッシュとは解析領域を有限要素で隙間なく分割したもので、節点の座標と、要素に属する節点の番号(コネクティビティー)などが処理される。流線法では材料の中心軸に平行なファイバーが定義される。従来技術ではファイバーは有限要素の辺に固定されるので、その場合はここでファイバー上の有限要素節点を上流から下流に記憶する。また、ファイバーを変形後のメッシュと整合させながら決める場合は、ここで定義された変形前のメッシュが参照される。
〔2〕前処理では工具のメッシュを生成する。このメッシュは工具の表面を三角形の要素で隙間なく分割したもので、節点の座標と、要素に属する節点の番号などが処理される。また、工具の要素の節点において工具の摩擦係数、工具の速度ベクトル、工具表面の法線ベクトルなどを記憶する。そして、材料と工具のメッシュを加工中のプロセスに倣って所定の位置に配置する。工具が材料と一部重なるので、材料の有限要素節点が工具のメッシュに侵入しないように節点を工具表面に移動する。この処理を接触解析と呼称し、その際、材料の内部の節点も幾何学的に矛盾がないように、変位写像関係を用いて移動する。
また、接触解析で表面の節点の移動量が多い場合は内部の節点の移動との関係で有限要素が潰れる場合がある。この場合は、変位写像関係をより精度の高いものに変更して変形後の材料の形状を求める。そして、この変形後の形状に対してメッシュを生成する。
変位写像関係が既知なので逆写像も既知であり、変形後のメッシュの有限要素節点を逆写像で変形前の材料メッシュにマッピング(位置付け)することが出来る。その際、マッピングした節点を通過するファイバーの位置が材料全長に渡って既知になるので、ファイバー上の任意の点を変位写像関係により変形後の材料メッシュにマッピングする。これらのマッピングされたファイバーの節点を結ぶ曲線が初期流線に相当する。
工具接触面では摩擦力が作用するので、固着せん断摩擦を上限として適当な初期値が設定される。尚、材料および工具のメッシュは計算処理の合理化のため通常対称性を利用して必要最小限の範囲でモデル化する。その際、対称面は工具の接触面と同様に境界条件が指定される。対称面は工具の表面と同様に法線ベクトルが定義されるが、摩擦力は作用しないので常に零と設定される。
〔3〕Bマトリックスを求める。これは有限要素解析で仮定した形状関数(節点の関数値を有限要素内の任意点に内挿する関数)とその導関数を積分することにより得られる要素のローカル節点間の影響係数行列である。主な要素に関してはテキストなどで式が求められているので、これを機械的にプログラムすれば良い。ここでは、節点座標が記述される全体座標系で表示した。
〔4〕剛性行列を構築し、境界条件を設定する。剛塑性有限要素解析では、加工前後の体積が変化しない条件を、ラグランジェ未定乗数法、ペナルティー法、圧縮性材料特性法の何れかで理論定式化する。本発明はこの何れの場合にも適用可能である。我国では非特許文献1に開示された圧縮性材料特性法の利用が多いので、この定式化を用いて数値解析を行った。三次元解析では工具との接触面や対称面の境界条件を定式化する際に、面の法線を座標軸に含むローカル座標系で記述すると式が簡単になる。そこで、剛性行列を求める際に、接触節点または対称面の節点に関係する場合は座標変換して記述した。境界条件は変位指定の場合は未知変数から外した。
〔5〕連立一次方程式では剛性行列を指定境界条件の下で直接解法により求解した。得られた未知変数はローカル座標系を含む節点の速度である。
〔6〕速度変換において、求解された節点速度をローカル座標系から全体座標系に変換し、速度境界条件指定の場合は既知速度を代入することによって、全ての有限要素節点での速度成分を求めた。
〔7〕汎関数では得られた節点速度から各要素のひずみ速度を求めるとともに汎関数の値を計算した。また、ひずみ速度以外の変形勾配の速度表示も求めた。一般に、汎関数の値が極小値になった場合が正解の速度場とされる。しかし、ここでは汎関数はモニタリングするだけである。
〔8〕ひずみにおいて、節点の属する有限要素で定義されたひずみ速度を平均処理で節点に割り当てる。そして、流線積分で得られた節点の速度を積分することにより、節点座標と材料特性を更新する。
〔9〕釣り合い応力とは境界条件指定点を除く零の節点力に収束すべき節点の誤差節点力を要素表面の平均面積で除すことにより求めた応力パラメータである。収束による釣り合い式の満足度を正確に評価できるので、汎関数にかわり収束条件として利用する。収束条件を満たす場合は、摩擦力へ進む。満たさない場合は収束のループに戻る。
〔10〕摩擦力では、工具との接触面の節点で工具面の法線方向に節点力を求めて、これが圧縮力であれば摩擦係数を乗じることにより摩擦力を得る。また、引張り力であれば工具から離れるものと仮定して零に置き換える。摩擦力がせん断摩擦力を超える場合は、せん断摩擦力に置き換える。
〔11〕後処理では、流線に沿った積分により各節点の座標値と材質変数を求める。このようにして得られた新しい材料形状は一般に接触の境界条件を満足しないので、接触節点を接触解析により工具面上に移動する。当然材料内部の有限要素節点も変位写像関係により新しい座標に移動する。以上で流線が収束した場合は、正解が得られたものと見なす。収束しない場合は、新しい境界条件で収束解析のループに戻りやり直す。
〔12〕出力において得られた結果をファイルに書き出し、一連の処理を終了する。
図2は本発明の実施例における二次元板圧延解析のメッシュと流線の関係を示す説明図である。
6スタンドタンデム圧延解析の1スタンド分だけを抽出して示す。多段加工ではスタンド数だけ図2のメッシュを上流または下流側に付加する。■印は有限要素節点、●印は新たに定義した積分節点を意味する。積分節点は変形前メッシュの特定のファイバーと有限要素境界の交点で定義し、要素のローカル座標、即ち材料に固定した座標系で記憶する。この例ではロールバイト近傍のメッシュを密に、スタンド間の見なし剛体域を粗に設定している。また、見なし剛体域では流線が中心軸に平行なので流線積分から除外することも可能である。積分節点の流線積分値などは同一要素内の有限要素節点から補間した速度または積分値として得られる。そのため、流線の開始点は積分値が自明な積分節点または有限要素節点であれば自由に設定が出来る。
このように、図2の流線は従来の流線よりも簡略化されているので簡略流線と呼称し、この簡略流線を用いた流線法を簡略流線法と呼ぶ。
簡略流線法では、全ての有限要素節点は変形前の材料メッシュのファイバー上に存在すること、ファイバーは要素境界との交点で積分節点を持つ。また、変形前後の材料メッシュはファイバーとの位置関係が各要素のローカル座標で関連付けされる限り、変形後もファイバーを特定出来るので任意のパターンでよい。従来の流線法よりもメッシュとファイバーの関係が緩いという際立った特徴がある。
圧延機の入り側から出側までスタンド間を含めて全ての材料を解析領域とする。その場合、有限ひずみ速度の分布域はロールバイトとその近傍に限られるため、従来の均一メッシュでは無駄な未知変数が増加する問題があった。
そこで、適合メッシュ的な発想で有限ひずみ速度域を密に、スタンド間を粗にするスライス法による要素分割様式を採用した。また、粗な要素に関しては流線積分からの除外や、必要であれば要素境界に流線積分点の追加など各所既存ソルバーに適用しやすい仕様とした。この仕様に基づき棒線管の多段加工プレ処理プログラムを試作し操作性の検証を行った。
各スライス間のメッシュ情報伝達機能を追加して不要な入力データの削減とメッシュの整合性を両立した。これにより材料の形状定義流線と接触や局部変形の細メッシュ流線を分離し、メッシュ精度の確保と各スタンドの工具形状や変形の多様性に対応した。
尚、本提案のシステムの基本特性を把握するために、簡略流線法による平面ひずみ板圧延用の解析システムを作成し、6スタンドの連続圧延に適用した。表面流線形状は一定とし、各ロールの直径は800mm、設定回転速度は設定圧下により板が増速する割合で増加するものとした。n値0.29、m値0.1、クーロン摩擦係数は0.15、板厚は20、16、12、8、6、4、3mmと設定した。ロールバイトの要素分割は肉厚方向と圧延方向に各5である。
図3に平面ひずみ圧延の材料節点速度分布を示す。図示しないが、近似汎関数の最小化で得られた初期速度は図3とほぼ同様であり多段加工にエネルギー法が好適である。2、3、5号入り側速度が前スタンドの出側に比べて若干減速している。設定ロール回転数の最適化等が検討できる。表面流線を変更しないので流線積分のループが数回で収束し、実行後数秒で計算が完了した。三次元プリ処理で中心軸を含む断面メッシュを図3の例とほぼ同様とし、1/8対称で周方向に6分割した場合に要素数が1692、節点数が2450、剛性行列の帯幅が186と簡略化できた。
図4は入力INPUTで生成した素材メッシュの多スタンドの例、図5はその後、プリ処理POSITNで生成した初期流線(メッシュ)の単スタンドの例である。初期速度場を仮定し、1時間ステップの非定常剛塑性有限要素解析を行い、仮定した流線(メッシュ)で境界条件と釣り合い条件を満足する速度場を得る。但し、得られた速度場は流線に沿う速度ベクトルとは限らない。そこで、得られた速度場を用いて流線を修正する。この中間処理がPOSITN2であり、流線積分により流線と材質を更新する。この流線(メッシュ)で再度境界条件と釣り合い条件を満足する速度場を求める繰返しループで流線の変動が許容範囲になった場合を解とする。
試作のFORTRANソースコードは約16000行、うちINPUTが6割、POSITNが1割弱、POSITN2が1割程度であり、実に8割弱が簡略流線生成などの形状定義に関係している。この試作システムを用いて図6に示す丸管から矩形管を製造するロール成形工程の速度場を求める解析を行った。この部分は従来の流線法と出来るだけ共通するように、非特許文献1を参考に作成した。
以上の試作プログラムによるシミュレーションを参照して、本発明の効果について検討する。
(1)本発明の第一の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の前処理において、初期メッシュと初期流線を生成する手段に関する。
従来の流線法はメッシュと流線が同一であったので、異形押出しのようなひずみが大きい加工の場合にメッシュが潰れる問題があった。このような問題では、初期のメッシュを健全に生成しても流線修正により節点が大きく移動しメッシュが潰れる。これを防止するためにはメッシュと流線を区別して定義しなければならない。既に、検討したようにメッシュは材料の形状定義に関係し、流線は変形前の材料の中心軸に平行なファイバーの定常変形後の形状である。
図7は本発明の第1の塑性加工シミュレータの簡略流線法のフローである。
〔1〕変形写像関係の設定と変形後の初期メッシュの生成手段は、接触解析による定常変形状態の仮定を変形写像関係として明確に設定する。変形前の任意の素材のメッシュの各節点に変形写像関係を作用させることにより、定常変形のメッシュを生成出来る。同様に、変形前の任意のファイバー上の点に変形写像関係を作用させることにより初期流線を生成可能である。
〔2〕任意の有限要素節点を通過するファイバーの積分節点の生成手段では、流線上に積分を行うために必要な節点を設定する。ファイバーの位置を材料にリンクさせるために材料座標系で記憶する。ここで材料座標系とは、有限要素のローカル座標のように、材料に埋め込まれ材料の変形とともに変形する。材料に目印を記すような処理に対応する。流線積分を行うことによって最新の速度場から流線上の有限要素節点の座標値と材料特性を求めて更新する。そのため流線上に少なくとも1個以上の有限要素節点が存在しなければ流線積分が無駄になる。全ての有限要素節点はこの点を通過するファイバーと関連付けられる必要がある。ファイバーは材料の上流から下流まで定義されるので、多くの有限要素の要素境界と交点を持つ。この交点を積分節点として定義すれば、この積分節点が属する任意の有限要素の節点速度に形状関数を作用させることにより速度を補間して求めることが出来る。
〔3〕初期流線上の積分節点または有限要素節点の速度の積分手段により、流線上の積分節点もしくは有限要素節点の速度を上流から下流に積分すれば、従来の流線積分と全く同じ効果が得られる。即ち、有限要素節点の節点座標と材料特性を更新出来る。
(2)本発明の第2の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の前処理において、初期メッシュと初期流線を生成する手段に関する。
図8はリメッシュが必要な程に流線が変形する場合の解析のフローである。
〔1〕変形写像関係から変形後の表面形状の予測手段では変形前の材料のメッシュに変形写像関係を作用することにより、変形後の材料形状を得る。但し、写像されたメッシュは大ひずみのため健全性を保証されない。その場合は、健全性が期待される表面形状を求める。
〔2〕材料内部の三次元有限要素メッシュの生成手段では改めて健全な表面形状を基に、自動メッシュジェネレータで健全な三次元メッシュを生成する。
〔3〕有限要素節点を通過するファイバーを特定する手段では変形後の三次元メッシュの有限要素節点を通過するファイバーを求める。変形前の材料メッシュにおいてファイバーは任意のC断面位置が特定できれば全長に渡って座標が判明する。そこで、変形写像関係の逆関係を用いて有限要素節点の変形前材料の位置を調べれば全長の位置が確定出来る。
〔4〕変形写像関係をファイバーに適用する初期流線の設定手段では変形写像関係で変形後のメッシュにファイバーを写像により生成できる。このファイバーは有限要素節点を通過するとともに有限要素境界との交点の座標、即ち積分節点を求めることが可能である。このファイバーは初期流線として利用出来る。
(3)本発明の第3の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の前処理において、変形写像関係の設定に関する。
流線法では流線の修正が大きい場合は収束解をえることが出来ないことが経験されている。即ち、変形写像関係をできるだけ正解に近づけなければならない。実験により変形写像関係を求めることも考えられるが、不便であるし、解析的に求められれば便利である。非特許文献1に近似三次元解析として一般化平面ひずみ有限要素変形解析の適用例が紹介された。圧延のようにC断面内の変形に関心がある場合は、この手法による近似は効果的である。
そこで、変形写像関係として変形が厳しくない場合は適当な有限要素変形解析を実施して変形写像関係を求める。また変形が厳しい場合はリメッシュが必要になる場合もあるので、リメッシュ機能付きの一般化平面ひずみ非定常剛塑性有限要素変形解析を適用する。
(4)本発明の第4の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の前処理において、変形後の材料の自動メッシュジェネレータに関する。
非特許文献1のアダプティブメッシュの章で自動メッシュジェネレータが解説された。ゆがみの少ない健全な三次元要素を高い信頼性を持って生成できるのは図9に示すように二次元では三角形、三次元では四面体、流線法のようにスライス法を適用する場合は五面体だけである。構造解析のメッシュジェネレータで生成可能と考えられる。しかし、塑性加工解析では変形前後に体積が一定であることから、この制約を課すとこれらの低次要素では変形の自由度が不足するロッキングが生じて正解をえられない。そこで、低次要素の中心に泡節点を付加する。これは比圧縮性流体解析で変形の自由度を向上しロッキングを防止する効果があることが報告されている。泡節点は低次要素を生成した後、容易に付加できる。但し、ロッキングは防止できても生成する要素の形状が正三角形や正四面体でなければ変形に異方性が生じる。そこで、異方性の生じにくい等方的性の高いメッシュ形状を生成できるデローニ分割の使用が望ましい。
(5)本発明の第5の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の剛性行列の生成における有限要素定式に関する。
非特許文献5ではラグランジェ未定乗数法による剛塑性有限要素定式を用いて解析が行われた。非特許文献1の解説では有限要素1個に付1個の未知数が付加されるので剛性行列のサイズが増大する問題があった。特に泡節点付要素を採用する場合はこの問題が一層深刻になる。
そこで、圧縮性材料特性法またはペナルティー法による剛塑性有限要素定式を採用することにより、未知数の増加を軽減することが出来る。泡節点付要素と圧縮性材料特性法の組み合わせによる解析例は報告されていないようである。そこで、発明者は非特許文献1に開示の圧縮性材料特性法のプログラムと同様の泡節点付要素による平面ひずみ圧縮変形解析を実施し、通常の四角形要素と比較した。
図10は泡節点付要素要素、図11は通常の四角形要素の場合において、摩擦係数が0.3の場合に矩形断面材の平面ひずみ据え込み変形を調査した。図11の四角形要素は圧下率が高くなっても滑らかな変形をしている。一方、図10の三角形要素の場合は変形が20%の時点で右上から左下への対角線付近に変形が集中する傾向が見られる。そして、圧下がさらに進むとこの傾向が更に顕著になり、圧下が60%程度では熱間加工でオーバーヒートした試験片のような対称性の希薄な形状になった。
但し、ロッキングによる不自然な変形は発生しなかったので、圧縮性材料特性法との組合わせが有効であることが判明した。同様のことがペナルティー法との組み合わせでも成立する。
また、図示しないが摩擦係数が0の場合は何れの要素の場合も圧下率60%以上で均一変形であり、対称性を有する結果であった。このことからせん断変形による三角形要素の局部的なゆがみが、その後の変形のレスポンスに異方性を生じることが推定される。
発明者は各要素をなるだけ正三角形に保つようにすればある程度異方性を回避できると考えている。その有力な方法として、頻度の高いリメッシュの適用が考えられる。
(6)本発明の第6の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の剛性行列の生成において、未知の工具速度の設定に関する。
多段加工では同じ材料を複数のスタンドで加工するためスタンド間力が発生する。これは各スタンドのロールバイト入り口のバックテンションを変化させるので、送り方向のロールの速度と材料の速度が等しくなる中立線を変化させる。各スタンドのロールの設定は中立線の位置を基準に実施される場合が多いので、一般に最適化が困難である。そこで所望のスタンドのロール速度を設定し、最適化したいスタンドのロール速度を未知数として、剛性行列の境界条件を設定する。
非特許文献9に単スタンドのリングローリングで従動ロールの回転速度を未知数にして剛性行列に取り込む方法が開示されており、多スタンドの場合もこのような手法が有効である。
(7)本発明の第7の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の前処理において、変形後の材料の自動メッシュジェネレータに関する。
図3に示すように多スタンド加工では工具が直接接触するロールバイトで材料の速度の変化が著しい。しかしながらスタンド間の材料は材料速度が一定か、もしくは直線的に緩やかに変化する。有限要素解析では速度勾配の大きい有限ひずみ速度分布域のメッシュ密度を密に、変形が殆ど生じないためひずみ速度を零と見なす事ができるスタンド間部分のメッシュ密度を祖に設定することが合理的である。
しかしながら、従来の流線法ではC断面のメッシュ分割を一定にするので送り方向の要素寸法のみを変更するだけであった。簡略流線法ではC断面のメッシュ分割も所望に設定できるので、最適な節点の密度の管理が実施できる。また、簡略流線法では流線積分の開始位置を積分値が既知の任意の積分節点に変更できるので、ひずみ速度が事実上無視できるスタンド間の見なし剛体変形域では、流線積分の経路から外しても結果に影響がない。
(8)本発明の第8の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の前処理において、変形後の材料の自動メッシュジェネレータに関する。
二次加工では棒材、線材、管材など曲率を有する形状の材料の加工が多く実施される。これらの材料では材料表面の曲率が付与された部分の節点の密度を増すことにより、曲率を近似することが出来る。一般に、棒材、線材、管材などでは材料の周方向に均一なメッシュを生成する。しかし、(7)で検討したように、事実状変形を生じないと見なせる見なし剛体領域では、曲率を近似する必要がないので節点密度を減少できる。一方、ひずみ速度が大きいロールバイト域では、工具の接触境界の材料は局部的に大きな曲率を付加される。そこで、この部分の曲率の近似精度を向上するために、この部分の節点密度を局部的に増加する必要がある。
節点密度の分布に従って、流線の密度の分布も変化する。材料の形状を定義する均一密度の表面流線と接触に伴う局部変形を考慮した細メッシュ部の流線を区別して管理することが重要である。前者は解析のケーススタディを通じて変化させる必要性は少ないので、同じデータを用いる事が出来る。後者は工具の接触状況に応じて、密度や位置を調整するのが望ましいので、ケーススタディの都度変更することができる。
スライス法では材料を長手方向にスライス状に分割し、このC断面内のメッシュパターンを種々変更して粗密を調整する。一般にスライスの数は1スタンド当たりの平均スライス数にスタンドの数を乗じた数だけ設定する。前処理では最終的にスライスの数の分割変数を設定する必要があるが、これを少ない入力データから自動処理により設定することが望ましい。
発明者は前処理の要素分割を上流のスライスから下流のスライスへ順番に行っているので、上流で生成したメッシュ情報を下流のスライスに引き継ぐことにより入力データを削減する方法を着想した。隣り合うスライスの合わせ面に相当するC断面のメッシュは共通である。メッシュパターン(コネクティビティー)が適切であれば節点番号と節点座標を引き継ぐことで実現できることを確認した。
一方、メッシュパターンは入力データとしてファイルに記入して読み込ませることが出来る。この方法による三次元プログラムを試作して、材料の形状を定義する均一密度のメッシュを効率良く処理出来ることを確認した。試作のプログラムではメッシュパターンは9個であった。
しかしながら、ロールバイト領域の接触に伴う局部変形を考慮した細メッシュを付与するためには、スライスのパターンを変化させる必要があるため、多くの入力が必要であることが判明した。接触部によるメッシュパターンの変更は主に周方向の分割をロールバイトのスライスで局部的に増加させるものであった。この処理はロールバイトの入り側と出側で細要素分割位置および密度を指定すること、ロールバイド内のスライスのメッシュ分割をこの情報により自動的に実施することで実現出来ることが判明した。即ち、入力データに追加するのはロールバイト入り口と出口の細要素分割位置と密度の情報だけである。ここで重要なのことは、入り口と出口のスライスパターンを2個増加させて、スライス間のメッシュ情報伝達機能を利用することにより初めて実現されたことである。
(9)本発明の第9の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の前処理において、変形後の材料の自動メッシュジェネレータに関する。
既に検討したように、簡略流線法では解析コストを軽減するためにスライスのメッシュパターンを変化させている。しかし、コネクティビティーによる制限のためパターン数が多いこと、これに伴い入力データが増加する傾向にあった。また、密度の変化も隣合うスライス間では極端に変更できない。
一方、多スタンドの解析では見なし剛体域の解析領域に占める割合が多いため、殆ど変形しない見なし剛体域としてこの部分のメッシュを出来るだけ粗に設定することが重要であった。
見なし剛体域では変形が実質的に変形が生じないので、コネクティビティーに関する制限を無視することが可能である。そこで、見なし剛体域が変形しないことを前提にコネクティビティーの制限を緩和する方法を検討し以下の4つの手段を考案した。
〔1〕形状関数が異なる異種の有限要素を接続する手段とは、形状関数の異なる複数の要素に同じ番号の節点を付与して直接結合することである。一般に要素同士は合わせ面を介して接続されるので、形状関数が隣合う要素で異なると合わせ面に変形状態が異なる。そのため変形前は隙間なくて繋がった面に隙間や重なりが生じるため不合理な結果となる。但し、変形が零であれば面の変形が生じないので隙間や重なりも発生せず異常とはならない。
〔2〕材料特性が異なる有限要素を接続する手段とは、合わせ面を介してして繋がる要素間で材料の硬さや比重などの物性値が異なることである。これ自体は問題にならない場合もあるが、ここでは見なし剛体域の変形を防止するために変形域の数千倍から数万倍程度に物性値を大きく設定することである。また、異方性を有する要素を異方性の無い要素に接続することなども設定できる。この場合も変形が生じないので異常とはならない。
〔3〕有限ひずみ速度分布域と次数や次元が異なる要素を用いる手段とは、変形域が3次元形状の要素でモデル化されていても、見なし剛体域を一次元の直線要素で近似することや、六面体要素の四角形の表面に五面体要素を2個繋ぐなどである。この場合も合わせ面に変形が生じないので異常は生じない。
〔4〕接続節点を大幅に省略する手段とは、六面体同士を接続する際に、四角形状の合わせ面を介して4個の節点で結合される。しかし、これを1個の節点に制限して他の節点は繋がないなどが可能である。但し、荷重が作用する場合には異常な結果も生じる可能性があるので、変形しないことを確認しながら設定する必要がある。
これらを有効利用すると変形域にメッシュを集中して配置できるので、計算コストの面でも有利である。
(10)本発明の第10の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の塑性加工シミュレータの有効利用に関する。
圧延、押出し、引抜き、ロール成形、回転成形、鍛造、プレス成形、ロールフォージング、リングローリングなど各種の加工プロセスでは、定常変形に近似できる場合が多い。そのような場合は、流線法による定常変形解析が入力データの削減、計算コストの劇的な改善、解析精度の向上に何れの点でも有利である。流線法では流線積分により材料が受ける変形の履歴(変形勾配に関する変数)を求める事が出来る。そのため、非特許文献10に開示の結晶塑性に関するD/B(データベース)を利用することにより加工組織を予測することが出来る。結晶塑性はマルチスケール解析の一種であり、処理コストが極めて多く必要になるので、典型的な加工の履歴で結果を求めてD/Bすることにより始めて有用になる。
(11)本発明の第11の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の塑性加工シミュレータの有効利用に関する。
塑性加工プロセスでは多大のエネルギ−を集中して加工する。塑性加工ではそのエネルギーの殆どが熱エネルギーに変換されるので、加工後の材料の温度は上昇する。例えば、鋼の冷間鍛造では加工後に素手で製品を触ると火傷を負う危険性がある。加工発熱と呼ばれるこの現象は実際の操業においても生じる。
非特許文献1では温度解析や組織予測解析と組合わせることにより、精度の高い温度や組織の予測が可能であるとされている。しかしながら、従来の流線法による変形解析では加工発熱の影響が大きい1パス大変形の加工でメッシュが歪むために、解析できなかった。本発明の簡略流線法ではメッシュの歪みを防止できるので、従来解析が事実上困難であった加工プロセスの解析が実施出来る。
(12)本発明の第12の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の連立一次式解法において、解析コストの削減に関する。
非特許文献6)は有限要素解析で最も計算コストを必要とする連立一次式解法に関して、図1の入力における材料のメッシュ生成、詳細には節点番号付けの最適化を行うことにより計算処理量を低減する技術が開示されている。特に、二段階離散化法を用いることにより、従来最適化が難しかった多角形断面の材料でも解剖法順序の節点番号付けが適用出来る。連立一次式解法に多重スカイライン法を適用することにより解析コストを数分の1に削減して、ユーザーの待ち時間を短縮できる。
(13)本発明の第13の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の塑性加工シミュレータの有効利用に関する。
二次加工の冷間加工では高い加工力のため弾性ひずみが多く発生する。弾性ひずみは塑性加工ひずみと異なり工具で加工中最大になり、工具を取り除くと元に戻って大部分が消滅する。その際、弾性ひずみに対応してスプリングバックと呼称される加工量を相殺する方向の変形が生じる。精密な製品の加工ではスプリングバックを考慮して最適な金型を設計するので、加工中の弾性ひずみの予測が重要である。
流線法では弾性ひずみを無視した剛塑性有限要素解析が用いられるので、原理的に弾性ひずみの予測は困難である。
非特許文献3は弾塑性非定常解析を適用するのでスプリングバックを直接検討できるが、定常変形状態に設定するまでに多大の加工を行う必要がある。これは材料を定常変形の形状に一致させるために計算コストの殆どを使っていることを意味する。そこで、解析を二段階に分けて第1段階で流線法による定常解析を実施し、その後弾塑性解析により定常状態が得られるまで加工してスプリングバックを評価する。
従来もこのような手法は度々行われてきたが、普及していない。従来の流線法による変形解析では1パス大変形の加工でメッシュが歪むために、解析できなかったからである。本発明の簡略流線法ではメッシュの歪みを防止できるので、従来解析が事実上困難であった加工プロセスの解析が実施出来る。
(14)本発明の第14の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の塑性加工シミュレータのシステム化とその利用形態に関する。
非特許文献6には『塑性加工有限要素データ作成ツール』として、WEB2.0時代の塑性加工CAEシステムが開示された。これはインターネットを利用したオンラインのシミュレーションシステムである。ユーザーはインターネット上のサーバを利用して、登録された入力データを用い解析を実施する。この場合、シミュレーションを開始して結果が表示されるまで待ち時間が長いと使い難い。3分程度で結果が得られれば、利用価値が高まる。
流線法は計算量が少ないので、非定常解析に比べてレスポンスが速く、オンラインシミュレーションに適する性質を有する。
(15)本発明の第15の塑性加工シミュレータの効果について説明する。
図1の塑性加工シミュレータシステム化とその利用形態に関する。
既に検討したように、流線法は計算量が少ないので、非定常解析に比べてレスポンスが速く、また処理能力の低い事務用のパーソナルコンピュータでも快適に動作するので、小規模企業での利用に適する性質を有する。
非特許文献9)瀧澤英男:第51回塑性加工連合講演会(2000)、283
非特許文献10)吉田忠継:H19塑加春講論(2007)、47
本発明の装置は、塑性加工プロセスの定常変形状態を材料の有限要素メッシュと定常流線を分離して定義するので、変形が厳しい1パス大加工や、上流スタンドの影響で下流スタンドで変形が厳しい多スタンド加工などの、従来困難とされた解析に適用できる特徴がある。そのため、二次加工の流線解析として小規模の工場での塑性加工シミュレーションに適する。
図3は多スタンド圧延解析の解析結果である。
図6はロール成形の解析結果である。
本発明の塑性加工シミュレーションの実施の形態を示すフローチャートである。 本発明の多スタンド圧延シミュレーションの実施の形態を示す説明図である。 本発明の多スタンド圧延シミュレーションの節点速度を示す説明図である。 本発明の多スタンドロール成形シミュレーションのメッシュを示す説明図である。 本発明のロール成形シミュレーションのメッシュの節点を示す説明図である。 本発明のロール成形シミュレーションの節点速度を示す説明図である。 本発明の簡略流線法の実施形態をしめすフローチャートである。 本発明の簡略流線法の実施形態をしめすフローチャートである。 本発明の簡略流線法に用いる自動メッシュで生成できる有限要素であり、白丸印は泡節点である。 本発明の泡節点付要素による平面ひずみ圧縮の変形状態を示す説明ずである。 比較のための四角形要素による平面ひずみ圧縮の変形状態を示す説明ずである。
符号の説明

Claims (15)

  1. 定常変形の初期メッシュおよび初期流線を設定した後、剛塑性有限要素解析を含む反復計算により定常状態の物理的な条件を満足するがごとく該流線を修正しながら定常流線を予測する塑性加工シミュレータにおいて、変形前の材料の任意点の位置を変形後の材料位置に変換する変形写像関係を設定するとともに変形後の初期メッシュを生成する手段、該定常変形の初期メッシュの任意の有限要素節点を通過する変形前に材料の中心軸と平行であったファイバーが該初期メッシュの有限要素境界と交わる点を積分節点として材料座標系で記憶する手段、該ファイバーを該初期流線と見なして該初期流線上の積分値が自明な任意の該積分節点または該有限要素節点を開始点とする積分経路において上流から下流方向に該積分節点の補間速度または該有限要素節点の速度を積分する手段を有することを特徴とする塑性加工シミュレータ。
  2. 設定した該変形写像関係を変形前の該材料に適用することにより変形後の該材料の表面形状を予測する手段、予測された該表面形状を基準として材料表面および内部に三次元有限要素メッシュを生成する手段、生成された該三次元有限要素メッシュの任意の該有限要素節点を通過するがごとく該ファイバーを該変形写像関係の逆関係から特定する手段、該変形写像関係を変形前の該ファイバーに適用することにより変形後の該材料の初期流線を設定する手段、を有することを特徴とする請求項1に記載の塑性加工シミュレータ。
  3. 該変形写像関係が有限要素変形解析、更に望ましくはリメッシュ機能付きの一般化平面ひずみ非定常剛塑性有限要素変形解析であることを特徴とする請求項1および請求項2に記載の塑性加工シミュレータ。
  4. 該三次元有限要素メッシュが少なくとも8節点六面体要素、泡節点付の四面体一次要素または泡節点付の五面体一次要素の何れかを含む要素であり、更に望ましくはデローニ分割による自動メッシュジェネレータで生成されることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の塑性加工シミュレータ。
  5. 圧縮性材料特性法またはペナルティー法による剛塑性有限要素定式であることを特徴とする請求項1から請求項4に記載の塑性加工シミュレータ。
  6. 任意の工具速度を未知変数として材料と工具の接触節点における相対速度を記述し、摩擦仕事を汎関数に取り込んで最小化することにより該工具速度を予測することを特徴とする請求項1から請求項5に記載の塑性加工シミュレータ。
  7. タンデム状に配置された複数段の加工手段による定常変形中の材料を解析領域とし、有限ひずみ速度分布域のメッシュを密に、見なし剛体変形域のメッシュを粗に設定するとともに、所望により該見なし剛体変形域を流線積分から除外することを特徴とする請求項1から請求項6に記載の塑性加工シミュレータ。
  8. 材料の上流から下流方向に単数または複数の分割様式のスライスを直列状に配置することにより有限ひずみ速度分布域に密な分割様式、見なし剛体変形域に粗な分割様式を設定する手段、隣り合うスライス間のメッシュ情報伝達機能によりメッシュの整合性を維持しながら基本となる材料の形状定義流線に接触や局部変形の細メッシュ流線を付加する手段を有することを特徴とする請求項7に記載の塑性加工シミュレータ。
  9. 該見なし剛体域において、形状関数が異なる異種の有限要素を接続する手段、材料特性が異なる有限要素を接続する手段、有限ひずみ速度分布域と次数や次元が異なる要素を用いる手段、接続節点を大幅に省略する手段の所望の手段を適用することを特徴とする請求項7および請求項8に記載の塑性加工シミュレータ。
  10. 圧延、押出し、引抜き、ロール成形、回転成形、鍛造、プレス成形、ロールフォージング、リングローリングの何れかの加工プロセスにおいて、任意の流線の変位勾配増分を積分することにより変形の履歴を予測する手段、結晶塑性理論により任意の変形の履歴に対する結晶組織を推定し結晶塑性データベースに登録する手段、該予測された変形の履歴を入力して該結晶塑性データベースから結晶組織を予測する手段を有することを特徴とする請求項1から請求項9に記載の塑性加工シミュレータ。
  11. 温度解析および組織予測解析と連成することを特徴とする請求項1から請求項10に記載の塑性加工シミュレータ。
  12. スカイライン法による連立一次方程式の求解を行う手段、解剖法順序による節点番号付け、更に望ましくは二段階離散化法による節点番号付けと多重スカイライン法による連立一次方程式の求解を行う手段、剛塑性有限要素解析の収束条件を備えた反復解法による連立一次方程式の求解を行う手段の何れかを任意に選択することを特徴とする請求項1から請求項12に記載の塑性加工シミュレータ。
  13. 非定常弾塑性有限要素解析により弾性変形に関する補正を実施することを特徴とする請求項1から請求項12に記載の塑性加工シミュレータ。
  14. インターネットのサーバーに登録された請求項1から請求項13のいずれかに記載の塑性加工シミュレータ。
  15. 請求項1から請求項13のいずれかに記載の塑性加工シミュレータのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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