JP2009058876A - 光ファイバ - Google Patents

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Abstract

【課題】光ファイバの長手方向で安定した特性を有し、かつSBSの発生を抑制できる光ファイバを提供すること。
【解決手段】コアと、前記コアの周囲に形成されたクラッドと、を有する石英系光ファイバであって、前記コアは、屈折率を上げて音響速度を下げるドーパントであるGeOの添加量W(質量%)の値がW>4.74(質量%)を満たすように添加するとともに、屈折率を上げて音響速度を下げるドーパントであるAlの添加量W(質量%)の値が(−2.814+0.594×W)≦W≦(54.10+0.218×W)且つW+W≦60且つW≧56.63−2.04×Wを満たすように添加し、非線形定数が2.6×10−9−1以上である。
【選択図】 図2

Description

本発明は、誘導ブリユアン散乱の発生を抑制できる光ファイバに関するものである。
大容量の光通信を実現するために、波長分割多重(WDM)方式や時分割多重(TDM)方式などの通信方式が採用されている。このような通信方式においては、伝送路である光ファイバに入力される光強度が増大し、光ファイバ中での非線形光学現象の発生が顕著になる。非線形光学現象の一つである誘導ブリユアン散乱(SBS)は、光ファイバに入力した光の一部が後方に散乱され、この散乱された光すなわちブリユアン散乱光が誘導散乱を起こす現象であり、光ファイバ中を伝搬する光と音響波との相互作用で発生する。SBSが発生すると光ファイバ中の光伝搬の障害となる。SBSは入力する光の強度が閾値(SBS閾値)以上になると発生するので、伝送路に用いられる光ファイバは、SBS閾値が高いものが望まれる。
一方、光ファイバ中の非線形光学現象を利用した光信号制御用などに用いられる光ファイバデバイスにおいても、SBSが問題となる。この種の光ファイバデバイスに使用される光ファイバは、通常の伝送路用の光ファイバよりも約5倍以上光学非線形性が高い光ファイバであり、高非線形光ファイバと呼ばれる。このような高非線形光ファイバは、石英系光ファイバのコアにGeOを大量に添加し、有効断面積Aeffを小さくし、光のコアへの閉じ込めを強くすることで実現されている。
高非線形光ファイバにおいて利用される非線形光学現象は、主に自己位変調(SPM)、相互位相変調(XPM)、四光波混合(FWM)であるが、これらの非線形光学現象を利用しようとすると、不必要なSBSが発生する場合がある。SBSは条件によっては上記の利用しようとする非線形光学現象よりも低い光強度で発生してしまうため、光信号制御を行う前の段階で悪影響が起こる場合がある。したがって、高非線形光ファイバも、SBS閾値が高いものが望まれる。
従来、SBS閾値を高くする方法として、光ファイバの長手方向でコア径やコアに添加するドーパントの添加量を変化させることにより、波長分散や伝送損失といった光ファイバの特性を長手方向で変化させる方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。これらの方法によれば、光の周波数スペクトル上での入力光に対するブリユアン散乱光のシフト量(ブリユアンシフト量)が光ファイバの長手方向で変化するため、SBSが発生しにくくなり、SBS閾値が高くなる。
特許第2584151号公報 特許第2753426号公報 特許第3580640号公報
しかしながら、上記の長手方向で特性を変化させた光ファイバは、SBS閾値が高くなってSBSの発生を抑制できるとしても、光ファイバの長手方向で安定した特性を持たないという課題があった。その結果、光ファイバ中に光パルスを伝搬させると、特性が局所的に変化している部分を光パルスが通過するときにパルス形状が歪むなどの光パルスの劣化が起こる可能性がある。また、信号伝送速度が高速化されるに伴い波長分散などの特性もより精密に調整する必要があるが、長手方向で光ファイバの特性が変化していると上記光パルスと同様に伝送する光信号が劣化する可能性がある。さらに、高非線形光ファイバデバイスにおいては非線形光学現象の発生効率は光ファイバの局所的な波長分散特性に影響されるので、長手方向で光ファイバの特性が変化していると非線形光学現象の発生効率が低下する可能性がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光ファイバの長手方向で安定した特性を有し、かつSBSの発生を抑制できる光ファイバを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバは、コアと、前記コアの周囲に形成されたクラッドと、を有する石英系光ファイバであって、前記コアは、屈折率を上げてかつ音響波速度を下げるドーパントであるGeOの添加量W(質量%)の値がW>4.74(質量%)を満たすように添加するとともに、屈折率を上げてかつ音響波速度を上げるドーパントであるAlの添加量W(質量%)の値が(−2.814+0.594×W)≦W≦(54.10+0.218×W)且つW+W≦60且つW≧56.63−2.04×Wを満たすように添加し、非線形定数が2.6×10−9−1以上であることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバは、コアと、前記コアの周囲に形成されたクラッドと、を有する石英系光ファイバであって、前記クラッドは、前記コアの外周部に形成されフッ素が添加された内層部と、前記内層部の外周部に形成された外層部と、を有し、前記内層部のフッ素の添加量をW(質量%)とした場合に、前記コアは、屈折率を上げてかつ音響波速度を下げるドーパントであるGeOの添加量W(質量%)の値がW>4.74+0.64×W(質量%)を満たすように添加するとともに、屈折率を上げてかつ音響波速度を上げるドーパントであるAlの添加量W(質量%)の値が0≦(−2.814+0.594×W−0.38×W)≦W≦(54.10+0.218×W−0.29×W)且つW+W≦60且つW≧56.63−2.04×Wを満たすように添加し、非線形定数が2.6×10−9−1以上であることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバは、コアと、前記コアの周囲に形成されたクラッドと、を有する石英系光ファイバであって、非線形定数が2.6×10−9−1以上であり、前記コアは、屈折率を上げてかつ音響波速度を下げるドーパントを添加するとともに、屈折率を上げてかつ音響波速度を上げるドーパントを添加することを特徴とする。
本発明によれば、光ファイバのコアが、屈折率を上げてかつ音響速度を下げるドーパントを添加するとともに、屈折率を上げてかつ音響速度を上げるドーパントを添加することによって、コアとクラッドでの音響波速度の差が極めて小さくなり、光ファイバ中を音響波がクラッドまで広がって伝搬するので、光ファイバ中を伝搬する光と音響波との空間的な重なりを小さくできる。その結果、ファイバの長手方向で特性を変化させなくてもSBSの発生を抑制できる光ファイバを実現できるという効果を奏する。
以下に、図面を参照して本発明に係る光ファイバの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバの断面図である。本実施の形態1に係る光ファイバ10は、コア11と、コア11の周囲に形成されたクラッド12とを有する石英系シングルモード光ファイバである。
コア11は、屈折率を上げてかつ音響波速度を下げるドーパントであるGeOを22質量%だけ添加するとともに、屈折率を上げてかつ音響波速度を上げるドーパントであるAlを12.66質量%だけ添加している。コア径は7μmである。クラッド12は屈折率または音響波速度を変化させる添加物を含まない純シリカガラスからなる。コア11のGeOの添加量W(質量%)は上記の値であるからW>4.74(質量%)を満たしており、Alの添加量W(質量%)は上記の値であるから(−2.814+0.594×22)≦W≦(54.10+0.218×22)且つW+W≦60且つW≧56.63−2.04×22を満たしている。
図2は、本実施の形態1に係る光ファイバ10と、GeOを添加するがAlを添加しない従来の光ファイバとについて、光ファイバの径方向の屈折率プロファイルおよび音響波速度のプロファイルを模式的に表した図である。図2(a)は本実施の形態1に係る光ファイバ、図2(b)は従来の光ファイバである。本実施の形態1に係る光ファイバ10のコア11の屈折率プロファイル13はいわゆる単峰型であり、クラッド12の屈折率プロファイル14は径方向で平坦である。コア11の屈折率の最大値とクラッド12の屈折率との比屈折率差15をΔとすると、Δ=2.80%である。光ファイバ10がこのような屈折率プロファイルを有する結果、光は光ファイバ10中をコア11に閉じ込められて伝搬する。また、従来の光ファイバにおいても、コアの屈折率プロファイル13´、クラッドの屈折率プロファイル14´、比屈折率差15´は光ファイバ10と同様であり、光は光ファイバ中をコアに閉じ込められて伝搬する。
一方、音響波速度のプロファイルについては、従来の光ファイバでは、コアの音響波速度のプロファイル18´とクラッドの音響波速度のプロファイル19´とはいずれも径方向で平坦であるが、コアに音響波速度を下げるGeOを添加するので、コアの音響波速度はクラッドの音響波速度より低い値を有する。その結果、音響波は光ファイバ中をコアに閉じ込められて伝搬する。しかし、本実施の形態1に係る光ファイバ10では、コア11に音響波速度を下げるGeOと音響波速度を上げるAlとを上記の量だけ添加するので、コア11の音響波速度とクラッド12の音響波速度とはほぼ等しい値をとる。光ファイバ10がこのような音響波速度のプロファイルを有する結果、音響波は光ファイバ10中をコア11およびクラッド12の全体にわたって広がって伝搬する。その結果、光ファイバ10中を伝搬する光と音響波との空間的な重なりを小さくできるので、SBSの発生を抑制できる。なお、このときのブリユアンシフト量は11.39GHzである。
また、非線形定数は非線形屈折率nを有効コア断面積Aeffで除したn/Aeffで表されるが、本実施の形態1に係る光ファイバはn/Aeffが2.64×10−9−1であり、高い光学非線形性を有する。
なお、このときSBSの発生を抑制しつつ好適なn/Aeffも実現できる最適なGeO濃度とAl濃度は、Ferdinand A.Oguama et al. “Measurement of the nonlinear coefficient of telecommunication fibers as a function of Er, Al, and Ge doping profiles by using the photorefractive beam-coupling technique” J. Opt. Soc. Am. B vol.22, No.8, August 2005, pp. 1600-1604、に開示されている下記の式(1)を用いて算出した。
/Aeff=(n/Aeff)(SiO)+K(Al)X(Al)+K(Er)X(Er)+K(GeO)X(GeO) ・・・ (1)
ただし、K:各添加物に対する係数(W−1mol%−1)、X:濃度(mol%)、(n/Aeff)(SiO)=4.26×10−10−1である。なお、各添加物に対する係数Kとして図7に示す値を用いた。なお、本実施の形態1ではX(Er)=0であるから、Erがn/Aeffに与える影響については考慮しなくてよい。
以上説明したように、本実施の形態1に係る光ファイバにおいては、非線形定数を高くするためにコアにGeOを大量に添加しているので、光は光ファイバ中をコアに強く閉じ込められて伝搬する。一方、コアに屈折率を上げてかつ音響波速度を上げるAlを上記の量だけ添加しているので、非線形定数を高く維持しつつ、音響波は光ファイバ中をコアおよびクラッドの内層部の全体にわたって広がって伝搬する。その結果、光ファイバ中を伝搬する光と音響波との空間的な重なりを小さくできるので、SBSの発生を抑制できる。また、高い光学非線形性を有するので、非線形光学現象を利用する高非線形光ファイバとして好適なものとなる。
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。図3は、本実施の形態2に係る光ファイバの断面図である。本実施の形態2に係る光ファイバ20は、コア21と、コア21の外周部に形成されフッ素が添加された内層部22aと内層部22aの外周部に形成された外層部22bとを有するクラッド22と、を有する石英系シングルモード光ファイバである。
コア21は、GeOを22.5質量%だけ添加するとともに、Alを11.82質量%だけ添加している。コア径は7μmである。クラッド22の内層部22aは屈折率を下げてかつ音響波速度を下げるドーパントであるフッ素を3.5質量%だけ添加しており、クラッド22の外層部22bは屈折率または音響波速度を変化させる添加物を含まない純シリカガラスである。内層部22aの径は23μmである。コア21のGeOの添加量W(質量%)は上記の値であるからW>4.74+0.64×3.5(質量%)を満たしており、クラッド22の内層部22aのフッ素の添加量W(質量%)が上記の値である場合に、Alの添加量W(質量%)は上記の値であるから(−2.814+0.594×W−0.38×W)≦W≦(54.10+0.218×W−0.29×W) 且つW+W≦60且つW≧56.63−2.04×Wを満たしている。
また、本実施の形態2に係る光ファイバの非線形定数はn/Aeffが2.65×10−9−1であり、高い光学非線形性を有する。
図4は、本実施の形態2に係る光ファイバ20について、径方向の屈折率プロファイルおよび音響波速度のプロファイルを模式的に表した図である。本実施の形態2に係る光ファイバ20のコア21の屈折率プロファイル23はいわゆる単峰型であり、クラッド22の内層部22aの屈折率プロファイル24aおよび外層部22bの屈折率プロファイル24bはいずれも径方向で平坦である。コア21の屈折率の最大値と外層部22bの屈折率との比屈折率差25をΔ1とすると、Δ1=2.75%である。また、内層部22aの屈折率と外層部22bの屈折率との比屈折率差26をΔ2とすると、Δ2=−0.98%である。したがって、コア21の屈折率の最大値と内層部22aの屈折率との比屈折率差27をΔとすると、Δ=3.73%である。光ファイバ20がこのような屈折率プロファイルを有する結果、光は光ファイバ20中をコア21に閉じ込められて伝搬する。
一方、クラッド22において、内層部22aの音響波速度のプロファイル29aと外層部22bの音響波速度のプロファイル29bとはいずれも径方向で平坦であるが、内層部22aに音響波速度を下げるフッ素を添加するので、内層部22aの音響波速度は外層部22bの音響波速度より低い値を有する。しかし、コア21に音響波速度を下げるGeOと音響波速度を上げるAlとを上記の量だけ添加するので、コア21の音響波速度と内層部22aの音響波速度とはほぼ等しい値をとる。光ファイバ20がこのような音響波速度のプロファイルを有する結果、音響波は光ファイバ20中をコア21およびクラッド22の内層部22aの全体にわたって広がって伝搬する。その結果、光ファイバ20中を伝搬する光と音響波との空間的な重なりを小さくできるので、SBSの発生を抑制できる。なお、このときのブリユアンシフト量は11.27GHzである。
ところで、上記実施の形態の説明でも述べたように、光ファイバはコアに光を閉じ込めて伝搬させるためにコアの屈折率が最も高い屈折率分布になっている。コアの屈折率をクラッドより高くするために、一般的にはコアにドーパントとしてGeOを添加する。
また光ファイバ中の音響波の伝搬についても、光における屈折率と同様に、acoustic indexという値が高い領域に音響波が閉じ込められて伝搬することが知られている(Peter D.Dragic et al., “Optical fiber with an acoustic guiding layer for Stimulated Brillouin Scattering suppression”, CLEO 2005 CThz3)。acoustic indexは屈折率と同様に材質の特性で決定される。また、acoustic indexは音響波の伝搬速度すなわち音響波速度と反比例の関係にある。
図5は、石英系光ファイバに使用されるおもな添加物と各添加物を石英系光ファイバに添加した際の屈折率、acoustic index、ならびに音響波速度の変化を示す図である(C.K. Jen et al., “Role of guided acoustic wave properties in single-mode optical fiber design”, Electron. Lett., 1988, 24, pp. 1419-1420)。図中上向きの矢印はその特性が増加することを示し、下向きの矢印はその特性が減少することを意味する。図5に示すように、GeOは屈折率を上げるとともにacoustic indexを上げ、音響波速度を下げる。そのためGeOをコアに添加した場合、コアに光が閉じ込められるとともに音響波も閉じ込められる。そこでコアに光を閉じ込めながら音響波を閉じ込めないためには、コアの屈折率を高く維持しつつ、コアのacoustic indexをクラッドに対して相対的に下げて音響波速度を上げる添加物をコアに添加すればよい。
図5に示すように、Alは屈折率を上げるとともにacoustic indexを下げ音響波速度を上げる。すなわち、コアにAlを添加することにより、コアに光が閉じ込められるが音響波はコアに閉じ込められず、光ファイバ中での光と音響波の空間的な重なり合いが小さくなり、ブリユアン散乱光の強度が小さくなってSBSが抑制される。
つぎに、Alの具体的な添加量と音響波速度との関係について説明する。Y. Koyamada et al., “Simulating and designing Brillouin gain spectrum in single-mode fibers”, J.Lightwave Technol., vol.22, pp. 631-639, 2004及びY.Y.Huang, A.Sarkar, P.C.Shultz “Relationship between composition, density and refractive index for germania silica glasses” J.Non-Cryst. Solids 27, pp.29-37 (1978)の開示によれば、GeOとFとに関する添加量と音響波速度との関係は、以下の式(2)、(3)で表される。
=5944(1−7.2×10−3−2.7×10−3) ・・・ (2)
=3749(1−6.4×10−3−2.7×10−3) ・・・ (3)
ただし、V:縦モード音響波速度(m/s)、V:横モード音響波速度(m/s)、M:GeO添加量(mol%)、W:F添加量(質量%)、である。なお、縦モード音響波とは光ファイバの長手方向に伝搬する音響波であり、横モード音響波とは光ファイバの径方向に伝搬する音響波である。ブリユアン散乱は主に光と縦モード音響波との相互作用により発生する。
しかし、従来Alについては添加量と音響波速度との関係は知られていなかった。そこで本発明者は、Alを添加した光ファイバのブリユアン散乱の特性について精査し、Alに関して添加量と音響波速度との関係を求めた。
以下に、その手順を説明する。まず図6に示すような特性を有する光ファイバ(以下サンプルファイバという)を用意した。このサンプルファイバはコアにGeOとAlとが添加され、クラッド全体にフッ素が添加されたものである。Δ1はコアの屈折率の最大値の純シリカガラスに対する比屈折率差であり、Δ2はクラッドの純シリカガラスに対する比屈折率差である。つぎに、GeO添加量およびAl添加量と屈折率との関係を示す式(4)より、波長1.55μmμmの光に対するサンプルファイバのコアの屈折率nを求めた。
n=1.444(1+1.01×10−3+1.5×10−3) ・・・ (4)
ただし、M:Al添加量(mol%)である。
つぎに、サンプルファイバに波長λ(m)が1.55×10−6mで強度が13.25dBmの光を入力してSBSを発生させ、ブリユアン散乱光スペクトルを測定することにより、ブリユアンシフト量νを求めた。
そして、上記で求めたサンプルファイバのコアの屈折率nおよびブリユアンシフト量νから、下記の式(5)を用いて、サンプルファイバのコア中の縦モード音響波速度V(m/s)を求めた。
ν=2nV/λ ・・・ (5)
求めた縦モード音響波速度Vは、GeOとAlの双方の効果を含むものであるから、縦モード音響波速度Vに対して下記の式(6)が成り立つと仮定する。βは縦モード音響波速度に対するAl添加量の寄与を示す比例係数である。
=5944(1−7.2×10−3+βM) ・・・ (6)
式(6)にV、GeO添加量、Al添加量の値を代入すると、β=1.22×10−2と求められた。その結果、GeOとAlとを添加したコアにおける縦モード音響波速度は、下記の式(7)で表されることを、本発明者は見出した。
=5944(1−7.2×10−3+1.22×10−2) ・・・ (7)
つぎに、SBS閾値が高く、高い強度の光を入力してもSBSが発生しにくい、つまりSBSの発生が抑制された光ファイバにおけるコアおよびクラッドの縦モード音響波速度の関係を説明する。一般に光ファイバのSBSの特性はブリユアン散乱光スペクトルにより説明される。光ファイバ中に複数の縦モード音響波が存在する場合は、ブリユアン散乱光スペクトルには各音響波の縦モード周波数に対応するピークが現われる。このうち、最もスペクトルの強度が大きいピークの周波数におけるブリユアンゲインが、SBS発生の挙動を支配している。なお、ブリユアンゲインとはブリユアン散乱光が誘導散乱を起こす際に受ける利得である。
そこで、コア径4μmでコアとクラッドの比屈折率差が3%の光ファイバについて、光ファイバ中のコアとクラッドでの縦モード音響波速度の差をパラメータとして変化させたときの、ブリユアンゲインの最大ピーク値を計算した。その結果、ブリユアンゲインの最大ピーク値が極小となる音響波速度の差の値が存在した。したがって、この音響波速度の差の値の近傍であれば、縦モード音響波がクラッドまで十分に広がって伝搬することによりブリユアンゲインの最大ピーク値が極小値の近傍の値となり、効果的にSBSの発生が抑制される。具体的には、下記の式(8)が成立すれば、効果的にSBSの発生が抑制される。
−0.02≦ΔV=(VLコア−VLクラッド)/VL0≦0.5 ・・・ (8)
ただし、VLコア:コアの縦モード音響波速度、VLクラッド:クラッドの縦モード音響波速度、VL0:5944(m/s)である。
式(8)のように、ΔVが0.5以下であれば、縦モード音響波がクラッドまで十分に広がり、ブリユアンゲインが十分に小さくなる。一方、ΔVが−0.02以上であれば、縦モード音響波がクラッドまで十分に広がるとともに、横モード音響波が発生して伝搬光に悪影響を与えるということもない。
つぎに、式(8)を満たす条件を、コアにGeOとAlとを添加した光ファイバで実現する場合について説明する。クラッドが音響波速度を変化させる添加物を添加していない純シリカガラスからなる場合はVLクラッド=5944(m/s)である。
ここで、SiOガラス中のGeOとAlの添加量をmol%から質量%に変換すると,次の関係式が成り立つ。
=(W/104.6)/{(100−W−W)/60.1+W/104.6+W/102}×100 ・・・ (9)
=(W/102)/{(100−W−W)/60.1+W/104.6+W/102}×100 ・・・ (10)
したがって、前記した式(7)を式(8)に代入し,式(9)、(10)の関係を用いると、下記の式(11)が成り立つ。
(−2.814+0.594×W)≦W≦(54.10+0.218×W) ・・・ (11)
また、0<Wであるから、0<(−2.814+0.594×W)である。したがって、Wは4.74質量%より大きい値である。
なお、コアにGeOとAlとを添加し、クラッドにフッ素を添加した光ファイバの場合には、フッ素によりクラッドの縦モード音響波速度が遅くなるため、式(2)を考慮すると、式(8)を満たす条件は下記の式(12)で表される。
(−2.814+0.594×W−0.38×W)≦W≦(54.10+0.218×W−0.29×W) ・・・ (12)
このとき、0<Wであるから、0<−2.814+0.594×W−0.38×W)である。したがって、Wは4.74+0.64×W質量%より大きい値である。
また非線形定数n/Aeffが2.6×10−9−1以上である場合,式(1)及び式(9)、(10)式の関係から,次式の条件を得る。
≧56.63−2.04×W ・・・ (13)
さらにファイバ製造上の添加量の限界を考慮し、
+W≧60(質量%) ・・・ (14)
の条件を定めた。
以上の条件を満たす場合のコアに添加するGeO及びAlの添加量であるW、Wの領域を図8、9に示す。図8はクラッドが純シリカガラスからなる場合であって、式(11)、(13)、(14)を満たす領域を示しており,図9はW=4(質量%)において、W≧7.30(質量%)及び式(12)、(13)、(14)を満たす領域を示している。
また、式(1)に示されるように、式(11)においてW=(54.10+0.218×W)の条件を満たす光ファイバは、GeO添加量が同等でAlを添加しない光ファイバに比べて非線形定数が増加する。たとえば、W=(54.10+0.218×W)の条件を満たす高非線形光ファイバにおいてGeO添加量をW=20質量%とした場合は、Alを添加しない高非線形光ファイバに比べて2.03倍だけ非線形定数が増加するから、より効率的に非線形光学現象が利用できる高非線形光ファイバが実現できる。
本発明の実施の形態1に係る光ファイバの断面図である。 実施の形態1に係る光ファイバと従来の光ファイバとについて、径方向の屈折率プロファイルおよび音響波速度のプロファイルを模式的に表した図である。 本発明の実施の形態2に係る光ファイバの断面図である。 実施の形態2に係る光ファイバについて、径方向の屈折率プロファイルおよび音響波速度のプロファイルを模式的に表した図である。 各添加物を石英系光ファイバに添加した際の屈折率、acoustic index、ならびに音響波速度の変化を示す図である。 光ファイバの特性を示す図である。 添加物に対する係数Kを示す図である。 、Wが、式(11)、(13)、(14)を満たす領域を示す図である。 =4(質量%)において、W、Wが、W≧7.30(質量%)及び式(12)、(13)、(14)を満たす領域を示す図である。
符号の説明
10、20 光ファイバ
11、21 コア
12、22 クラッド
22a 内層部
22b 外層部
13、23 コアの屈折率プロファイル
14 クラッドの屈折率プロファイル
24a 内層部の屈折率プロファイル
24b 外層部の屈折率プロファイル
15、25〜27 比屈折率
18、28 コアの音響波速度のプロファイル
19 クラッドの音響波速度のプロファイル
29a 内層部の音響波速度のプロファイル
29b 外層部の音響波速度のプロファイル

Claims (3)

  1. コアと、前記コアの周囲に形成されたクラッドと、を有する石英系光ファイバであって、
    前記コアは、屈折率を上げてかつ音響波速度を下げるドーパントであるGeOの添加量W(質量%)の値がW>4.74(質量%)を満たすように添加するとともに、屈折率を上げてかつ音響波速度を上げるドーパントであるAlの添加量W(質量%)の値が(−2.814+0.594×W)≦W≦(54.10+0.218×W)且つW+W≦60且つW≧56.63−2.04×Wを満たすように添加し、非線形定数が2.6×10−9−1以上であることを特徴とする光ファイバ。
  2. コアと、前記コアの周囲に形成されたクラッドと、を有する石英系光ファイバであって、
    前記クラッドは、前記コアの外周部に形成されフッ素が添加された内層部と、前記内層部の外周部に形成された外層部と、を有し、前記内層部のフッ素の添加量をW(質量%)とした場合に、
    前記コアは、屈折率を上げてかつ音響波速度を下げるドーパントであるGeOの添加量W(質量%)の値がW>4.74+0.64×W(質量%)を満たすように添加するとともに、屈折率を上げてかつ音響波速度を上げるドーパントであるAlの添加量W(質量%)の値が0≦(−2.814+0.594×W−0.38×W)≦W≦(54.10+0.218×W−0.29×W)且つW+W≦60且つW≧56.63−2.04×Wを満たすように添加し、非線形定数が2.6×10−9−1以上であることを特徴とする光ファイバ。
  3. コアと、前記コアの周囲に形成されたクラッドと、を有する石英系光ファイバであって、
    非線形定数が2.6×10−9−1以上であり、
    前記コアは、屈折率を上げてかつ音響波速度を下げるドーパントを添加するとともに、屈折率を上げてかつ音響波速度を上げるドーパントを添加することを特徴とする光ファイバ。
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