JP2009058342A - センシング回路、光検出回路、電気光学装置および電子機器 - Google Patents

センシング回路、光検出回路、電気光学装置および電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】センシング素子の経時劣化による検出値のずれを簡素な構成で正確に校正する。
【解決手段】光検出回路10は、光センサ回路5の出力値をn×m個取得するたびに、その平均値μを算出する。最初に算出された平均値μは、初期平均値μとしてメモリ6に保存される。光検出回路10は、2回目以降に平均値μを算出した場合に、今回算出した平均値μとメモリ6に保存されている初期平均値μとの比から、光センサ回路5に組み込まれているa-Si TFT(光電変換素子)の劣化率Dを算出し、メモリ6に保存している劣化率Dの値を更新する。光検出回路10は、光センサ回路5の出力値とメモリ6に保存されている劣化率Dの値とを用いて、入射する環境光の照度を検出する。
【選択図】図6

Description

本発明は、照度や温度等を検出可能なセンシング回路、光検出回路、これを用いた電気光学装置および電子機器に関する。
光電変換素子としてアモルファスシリコン薄膜トランジスタ等を使用した光センサでは、検出される照度と真の照度とのずれが時間の経過に応じて徐々に大きくなる。これは積算照度が増えるほど導電率が低下するという光劣化現象が起きるためである。このような光劣化による検出照度のずれをなくすため、例えば、特許文献1には、同じ光電変換素子を2つ使用することが記載されている。
具体的に説明すると、特許文献1には、アクティブマトリックス駆動型の液晶ディスプレイ等に用いられる薄膜トランジスタとほぼ同じ構造を有し、かつ特性の等しい2つの光電変換素子1,2を直列に接続したラインイメージセンサが開示されている(同文献1の段落0045,図2)。光電変換素子1には、光源から放射され、原稿104の表面で反射された照射光100aが入射する。また、光電変換素子2には、同じ光源から放射され、反射面106で反射された照射光100bが入射する(同文献1の図1(B),段落0041)。同文献1の図2に示す等価回路において、電源の電位をVd、光電変換素子1の電気抵抗をRa、光電変換素子2の電気抵抗をRbとすると、ラインイメージセンサの出力である画像読取信号の電位Voは、下式のとおりである(同文献1の段落0048)。
Vo=(Vd)/{1+(Rb/Ra)}
ここで、光電変換素子1に入射する照射光100aと、光電変換素子2に入射する照射光100bとは、同じ光源から放射されている。よって、光源の放射強度が変動しても画像読取信号の電位Voはこれに依存せず、画像情報を担った原稿表面の濃度のみに依存する(同文献1の段落0049)。また、一般に使用される原稿は、反射率の高い白色の領域が原稿全体の面積の95%程度を占める。よって、白色の原稿を読み取った場合に光電変換素子1に入射する照射光100aと同じ照度の照射光100bを光電変換素子2に入射すべく、反射率の高い反射面106を設けること等により、光電変換素子1と光電変換素子2の光劣化の程度を概略等しくしている(同文献1の段落0053,段落0054,段落0056)。このため、上記の式においてRb/Ra(光電変換素子1,2の電気抵抗の比)は、原稿表面の濃度が同じであれば常に一定の値をとる。したがって、光劣化によって光電変換素子1,2の電気伝導率が低下しても、光電変換素子1,2の電気抵抗の比は変化せず、画像読取信号の電位Voには光劣化による影響が現れない(同文献1の段落0028,段落0051)。
特開平6−350803号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術を用いて光劣化による検出照度のずれを校正するためには、同じ光電変換素子を2つ使用しなければならない。このため、回路構成が複雑になるとともにコストアップを招く。
また、特許文献1に記載された技術を用いて光劣化による検出照度のずれを校正するためには、光電変換素子1と光電変換素子2の光劣化の程度を概略等しく保つ必要がある。この点について、特許文献1には、一般に使用される原稿では、全体の面積の95%程度が反射率の高い白色であるので、白色をターゲットにして光電変換素子2に入射させる照射光100bの照度を設定すればよい旨が記載されている。しかしながら、例えば、カラー写真画像を読み取る場合のように、読み取り対象となる原稿において白色の占める割合が10%にも満たない場合は多々存在する。したがって、光電変換素子1の積算照度と、光電変換素子2の積算照度との差は、徐々に大きくなり、やがては無視できない大きさになる。つまり、光電変換素子1と光電変換素子2との光劣化の程度を概略等しく保つことができなくなり、正確なセンサ出力を得られなくなる。
また、例えば、環境光の照度(周囲の明るさ)を検出する光センサの場合、ラインイメージセンサのように原稿画像の読み取りを行なう必要がない。このような光センサにおいて、光電変換特性が等しい2つの光電変換素子に同じ環境光を入射しても、光劣化による検出照度のずれを校正することはできない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、センシング素子の経時劣化による検出値のずれを、簡素な構成で正確に校正可能なセンシング回路、光検出回路、これを用いた電気光学装置および電子機器を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明に係るセンシング回路は、測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの出力信号を出力するセンシング素子と、前記センシング素子の出力信号を取得するタイミングを定めた条件が成立するたびに、前記出力信号を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した出力信号の数が所定数に達するたびに、当該所定数の出力信号のレベルについて平均値を算出する平均値算出手段と、前記平均値算出手段が最初に算出した平均値を記憶する記憶手段と、前記平均値算出手段による平均値の算出が2回目以降の場合に、前記平均値算出手段が今回算出した平均値と、前記記憶手段に記憶されている平均値との比に基づいて、前記センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す劣化率を算出し、当該劣化率の値を更新する更新手段と、前記更新手段による更新後の劣化率と前記センシング素子の出力信号とに基づいて、測定対象となるエネルギーの大きさを算出するエネルギー算出手段とを備えることを特徴とする。
この発明によれば、センシング素子の出力信号を所定数取得するたびにその平均値を算出し、最初に算出した平均値と今回算出した平均値との比から、センシング素子の現在の劣化率を算出する。したがって、このようにして算出した劣化率とセンシング素子の出力信号とを用いて測定対象となるエネルギーの大きさを求めることで、センシング素子の入出力特性が劣化しても正確な検出値を得ることが可能となる。また、センシング素子の劣化に伴う検出値のずれを、同じセンシング素子を2つ使用せずとも校正可能である。よって、センシング素子の劣化による検出値のずれを簡素な構成で正確に校正することができる。
なお、測定対象となるエネルギーには、例えば、光エネルギーや熱エネルギーが含まれる。つまり、本発明は、例えば、光の照度を検出する光センサや、温度を検出する温度センサに適用することが可能であり、センシング素子には、光電変換素子や感温素子が含まれる。また、上述したセンシング回路において、前記取得手段は、予め定められた期間毎に前記センシング素子の出力信号を取得する構成であってもよい。
また、センシング回路は、測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの出力信号を出力するセンシング素子と、前記センシング素子の出力信号を取得するタイミングを定めた条件が成立するたびに、前記出力信号を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した出力信号の数が所定数に達するたびに、当該所定数の出力信号のレベルについて平均値を算出する平均値算出手段と、記平均値算出手段が最初に算出する平均値について、予め定められた理想値を記憶する記憶手段と、前記平均値算出手段が今回算出した平均値と、前記記憶手段に記憶されている理想値との比に基づいて、前記センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す劣化率を算出し、当該劣化率の値を更新する更新手段と、前記更新手段による更新後の劣化率と前記センシング素子の出力信号とに基づいて、測定対象となるエネルギーの大きさを算出するエネルギー算出手段とを備える構成であってもよい。このような構成であっても、記憶手段に記憶されている理想値と今回算出した平均値との比から、センシング素子の現在の劣化率を算出することが可能である。
次に、本発明に係る光検出回路は、入射する光の照度に応じたレベルの出力信号を出力する光電変換素子と、前記光電変換素子の出力信号を取得するタイミングを定めた条件が成立するたびに、前記出力信号を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した出力信号の数が所定数に達するたびに、当該所定数の出力信号のレベルについて平均値を算出する平均値算出手段と、前記平均値算出手段が最初に算出した平均値を記憶する記憶手段と、前記平均値算出手段による平均値の算出が2回目以降の場合に、前記平均値算出手段が今回算出した平均値と、前記記憶手段に記憶されている平均値との比に基づいて、前記光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率を算出し、当該劣化率の値を更新する更新手段と、前記更新手段による更新後の劣化率と前記光電変換素子の出力信号とに基づいて、入射する光の照度を算出する照度算出手段とを備えることを特徴とする。
この発明によれば、光電変換素子の出力信号を所定数取得するたびにその平均値を算出し、最初に算出した平均値と今回算出した平均値との比から、光電変換素子の現在の劣化率を算出する。したがって、このようにして算出した劣化率と光電変換素子の出力信号とを用いて、入射する光の照度を求めることで、光劣化現象により光電変換素子の導電率が低下しても、正確な検出照度を得ることが可能となる。また、このような光劣化現象による検出照度のずれを、同じ光電変換素子を2つ使用せずとも校正可能である。よって、光劣化現象による検出照度のずれを簡素な構成で正確に校正することができる。
なお、上述した光検出回路において、前記取得手段は、予め定められた期間毎に前記光電変換素子の出力信号を取得する構成であってもよい。また、前記光電変換素子は、アモルファスシリコン薄膜トランジスタ、低温ポリシリコン薄膜トランジスタ、高温ポリシリコン薄膜トランジスタであってもよい。
また、光検出回路は、入射する光の照度に応じたレベルの出力信号を出力する光電変換素子と、前記光電変換素子の出力信号を取得するタイミングを定めた条件が成立するたびに、前記出力信号を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した出力信号の数が所定数に達するたびに、当該所定数の出力信号のレベルについて平均値を算出する平均値算出手段と、前記平均値算出手段が最初に算出する平均値について、予め定められた理想値を記憶する記憶手段と、前記平均値算出手段が今回算出した平均値と、前記記憶手段に記憶されている理想値との比に基づいて、前記光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率を算出し、当該劣化率の値を更新する更新手段と、前記更新手段による更新後の劣化率と前記光電変換素子の出力信号とに基づいて、入射する光の照度を算出する照度算出手段とを備える構成であってもよい。このような構成であっても、記憶手段に記憶されている理想値と今回算出した平均値との比から、光電変換素子の現在の劣化率を算出することが可能である。
次に、本発明に係る電気光学装置は、上述したいずれかの光検出回路と、画像を表示する表示部と、前記光検出回路の出力信号に基づいて、前記表示部の画像の輝度を調整する調整部とを備えることを特徴とする。また、本発明に係る他の電気光学装置は、上述したいずれかの光検出回路と、画像を表示する表示部と、前記表示部を照明する照明手段と、前記光検出回路の出力信号に基づいて、前記照明手段の発光輝度を調整する調整部とを備えることを特徴とする。なお、電気光学装置には、例えば、液晶表示装置に加え、OLED素子、無機EL、発光ポリマー等の発光素子を用いた電気光学装置が含まれる。
また、上述した電気光学装置は、電力消費量が異なる複数の動作モードを有しており、前記取得手段は、前記電気光学装置の動作モードが異なる動作モードに切り替わるたびに、前記光電変換素子の出力信号を取得する構成であってもよい。
また、上述した電気光学装置は、第1の動作モードと、前記第1の動作モードの場合よりも消費電力を低減する第2の動作モードとを有しており、前記取得手段は、前記電気光学装置の動作モードが前記第2の動作モードから前記第1の動作モードに切り替わるたびに、あるいは前記電気光学装置の動作モードが前記第1の動作モードから前記第2の動作モードに切り替わるたびに、前記光電変換素子の出力信号を取得する構成であってもよい。なお、第1の動作モードには、いわゆる通常モードが含まれる。また、第2の動作モードには、例えば、スリープモードやディスプレイオフモード等の省電力モードが含まれる。
また、本発明に係る電子機器は、上述したいずれかの電気光学装置を備えることを特徴とする。この電子機器には、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、情報携帯端末が含まれる。
<1.第1実施形態>
図1は、光電変換素子として用いるa-Si TFT(Amorphous Silicon TFT:アモルファスシリコン薄膜トランジスタ)のゲート電圧とドレイン電流との関係を示すグラフである。ゲートオフ時に着目すると、a-Si TFTのチャネル部に光が当たっていない場合は、同図に“暗電流”として示すように、10−13A以下となるリーク電流(ドレイン電流)しか流れない。これに対し、同じゲートオフ時であっても、チャネル部に光が当たっている場合は、チャネル部に当たっている光の強さ(明るさ)に応じたリーク電流が流れる。つまり、このa-Si TFTは、ゲートオフ時におけるリーク電流の大きさが、チャネル部に当たっている光の強さに比例する。
このようなリーク電流特性を有するa-Si TFTを使用して光の照度を検出する場合、例えば、図2に示す光センサ回路5を用いることができる。同図に示す光センサ回路5において、a-Si TFTのゲート電極Gには、−10Vのゲート電圧を常時印加してa-Si TFTのゲートを常にオフにしておく。そして、スイッチSWをオンにしてコンデンサCに電圧Vs(例えば、+2V)を印加した後、スイッチSWをオフにすると、コンデンサCの両端の電圧は、時間の経過に応じてVsから徐々に低下する。このときのコンデンサCの放電特性は、a-Si TFTのリーク電流Iの大きさ、すなわちa-Si TFTのチャネル部に当たっている光の強さに応じて異なる。具体的には、図3に示すように、a-Si TFTのチャネル部に当たっている光が強いほど、コンデンサCの電圧は急速に低下する。
したがって、スイッチSWをオフにした後、予め定められた基準時間tが経過した時点でコンデンサCの電圧を測定すれば、その電圧値と、a-Si TFTのチャネル部に当たっている光の強さとの間には反比例関係が成立する。よって、基準時間tが経過した時点でのコンデンサCの電圧値とa-Si TFTのチャネル部に当たっている光の強さとの関係を示すプロファイルデータを予めメモリに記憶しておき、このプロファイルデータを参照することで、測定したコンデンサCの電圧値からa-Si TFT のチャネル部に当たっている光の強さを求めることができる。
しかしながら、図2に示した光センサ回路5を用い、上述した方法で照度を検出する構成であると、積算照度が増えるほど導電率が低下するというa-Si TFT の光劣化現象によって、検出照度と真の照度との間にずれが生じてしまう。このため、正確な照度を検出することができない。そこで、本実施形態においては、中心極限定理に基づいて光劣化現象によるa-Si TFTの劣化率を算出し、算出した劣化率を用いて照度検出を行うことで、図2に示した光センサ回路5の回路構成を何ら変更することなく、正確な照度を検出できるようにする。
ここで、中心極限定理によれば、標本Xが、平均μ,標準偏差σのある分布に従うならば、大きさnの無作為標本に基づく標本平均 ̄Xは、nが無限に大きくなるとき、平均μ,標準偏差σ/√nの正規分布に近づく(但し、平均や分散は有限であるとする)。つまり、この定理は、母集団の分布がどのような分布であったとしても、その標本平均は正規分布に従うことを示している。
今、仮に、光電変換特性の劣化が全く生じない光電変換素子を用いて、環境光等の比較的ランダムに光量が変化する光の照度を測定する場合について考えてみると、照度の測定結果は、測定回数が多くなるにつれて徐々に正規分布に近づいていく。また、図2に示した光センサ回路5の出力値(スイッチSWをオフにしてから基準時間tが経過した時点でのコンデンサCの電圧値)についても、測定回数が多く、かつ測定期間内においてa-Si TFTに光電変換特性の劣化が生じていなければ、正規分布をとるはずである。
しかしながら、実際には、a-Si TFTには光劣化現象による光電変換特性の劣化が生じるため、ある測定回数毎の光センサ回路5の出力値の分布およびその平均値μは、図4に示すように徐々に図中左側へと移動していく。この平均値μの移動こそが、まさに光劣化現象によるa-Si TFTの光電変換特性の経時劣化を表している。したがって、初期平均値(一番最初に測定した出力値分布の平均値)をμ、現時点において一番最後に測定した出力値分布の平均値をμとすると、a-Si TFTの光電変換特性の劣化率Dは、式(1) で表すことができる。
D=μ/μ …(1)
よって、a-Si TFTの劣化率Dは、以下のようにして求めることができる。
まず、予め定められた時間毎に、光センサ回路5の出力値Lを取得し、取得した出力値Lを測定値DATとしてメモリに保存していく。
DAT=L (i=1,2…n−1,n) …(2)
次いで、メモリに保存されている測定値DATの数がn個に到達する都度、式(3)を使用してn個の測定値DATについての平均値AVEを算出し、算出した平均値AVEをメモリに保存する。
Figure 2009058342
これを繰り返し、今度は、メモリに保存されている平均値AVEの数がm個に到達する都度、式(4) を用いてm個の平均値AVEについての平均値μを算出する。そして、一番最初に算出した平均値μについては初期平均値μとしてメモリに保存する一方、平均値μの算出が2回目以降の場合に、今回算出した平均値μと、メモリに保存してある初期平均値μとを式(1)に代入すれば、a-Si TFTの現時点における劣化率Dを求めることができる。
Figure 2009058342
図5は、本実施形態に係わる光センサ回路5および光検出回路10の全体構成を示すブロック図である。光検出回路10は、メモリ6と制御部7を備えており、メモリ6には、基準時間tが経過した時点でのコンデンサCの電圧値とa-Si TFTのチャネル部に当たっている光の強さとの関係を示すプロファイルデータが記憶されている。また、このメモリ6には、測定値DAT,平均値AVE,初期平均値μ,劣化率D等が記憶される。なお、工場出荷時等の初期状態において、メモリ6には、初期平均値μの値として“0”が記憶されている。一方、制御部7は、CPU,ROM,タイマ等を備えており、図2に示した光センサ回路5を制御するとともに、a-Si TFTの劣化率Dの更新や、劣化率Dを加味した環境光の照度測定等を行う。
図6は、制御部7によって実行される劣化率校正処理のフローチャートである。同図に示すように、劣化率校正処理を開始すると、まず、制御部7は、jとiの値をともに“1”にセットする(ステップS101,S102)。次いで、制御部7は、光センサ回路5の出力値Lを取得し、取得した出力値Lを測定値DATとしてメモリ6に保存した後、iの値をインクリメントする(ステップS103)。この後、制御部7は、予め定められたnの値よりもiの値が大きいか否かを判別する(ステップS104)。その結果、制御部7は、i>nであればステップS106に移行する。一方、i≦nの場合、制御部7は、予め定められた時間Δtが経過したか否かを判別し(ステップS105)、Δtが経過すると、ステップS103に戻る。
このようにしてステップS103〜S105までの処理を繰り返すことにより、光検出回路10では、時間Δtが経過するたびに、測定値DATが取得されてメモリ6に保存される。その結果、メモリ6には合計n個の測定値DATが保存される。
次いで、ステップS106において制御部7は、上述した式(3)を使用して、メモリ6に保存されているn個の測定値DATについて平均値AVEを算出する。制御部7は、算出した平均値AVEをメモリ6に保存するとともに、jの値をインクリメントする。なお、制御部7は、平均値AVEの算出を終えると、メモリ6に保存されているn個の測定値DATを消去する。この後、制御部7は、予め定められたmの値よりもjの値が大きいか否かを判別する(ステップS107)。その結果、制御部7は、j>mであればステップS108に移行する一方、j≦mであればステップS102に戻る。このようにしてステップS102〜S107までの処理を繰り返すことにより、光検出回路10では、m個の平均値AVEが算出されてメモリ6に保存される。
次いで、ステップS108において制御部7は、上述した式(4)を使用して、メモリ6に保存されているm個の平均値AVEについて平均値μを算出する。なお、制御部7は、平均値μの算出を終えると、メモリ6に保存されているm個の平均値AVEを消去する。この後、制御部7は、メモリ6に保存されている初期平均値μの値が“0”であるか否かを判別する(ステップS109)。
前述したように初期平均値μの値は、初期状態において“0”がセットされているので、一番最初に平均値μを算出した場合、すなわち平均値μの算出が1回目の場合のみ、ステップS109の判別結果がYESとなる。この場合、制御部7は、ステップS110に移行して、今回算出した平均値μを初期平均値μとしてメモリ6に保存する。次いで、制御部7は、劣化率Dの値を“1”にセットして(ステップS111)、ステップS101に戻る。
一方、ステップS109の判別結果がNOの場合、すなわち平均値μの算出が2回目以降の場合は、ステップS112に移行する。この場合、制御部7は、今回算出された平均値μと、メモリ6に保存されている初期平均値μとを上述した式(1)に代入し、劣化率Dの値を算出する。そして、制御部7は、メモリ6に保存されている劣化率Dの値を、今回算出した劣化率Dの値に書き替えた後、ステップS101に戻る。
以上説明した劣化率校正処理を行うことで、メモリ6には、たえず最新の劣化率Dの値が保存されることになる。したがって、光検出回路10では、光センサ回路5を用いて環境光の照度を測定する際に、メモリ6から劣化率Dの値を読み出し、この劣化率Dの値を用いて照度の測定値を補正する。具体的に説明すると、光検出回路10は、光センサ回路5を用いて環境光の照度を測定する場合に、まず、光センサ回路5の出力値として、スイッチSWをオフにしてから基準時間tが経過した時点でのコンデンサCの電圧値を取得する。次いで、光検出回路10は、メモリ6から劣化率Dの値を読み出し、この劣化率Dの値を、光センサ回路5から取得したコンデンサCの電圧値に乗算する。この後、光検出回路10は、メモリ6に記憶されている、基準時間tが経過した時点でのコンデンサCの電圧値とa-Si TFTのチャネル部に当たっている光の強さとの関係を示すプロファイルデータを参照し、補正後のコンデンサCの電圧値から最終的な環境光の照度値を求める。
このように本実施形態によれば、光検出回路10は、光センサ回路5の出力値をn×m個取得するたびに、その平均値μを算出し、最初に算出された平均値μについては初期平均値μとしてメモリ6に保存する一方、2回目以降に平均値μを算出した場合に、今回算出した平均値μとメモリ6に保存されている初期平均値μとの比から、a-Si TFTの劣化率Dを算出し、メモリ6に保存している劣化率Dの値を更新する。そして、光検出回路10は、光センサ回路5の出力値とメモリ6に保存されている劣化率Dの値とを用いて、入射する環境光の照度を検出する。
したがって、光劣化現象によりa-Si TFTの導電率が低下しても、環境光の照度を正確に検出することができることに加え、このような光劣化現象による検出照度のずれを、同じ光電変換素子を2つ使用せずとも校正可能である。よって、光劣化現象による検出照度のずれを簡素な構成で正確に校正することができる。また、本実施形態によれば、a-Si TFTの実際の劣化状態に合わせて補正を行うことが可能である。例えば、a-Si TFTのレンジ切り換えのためにゲート電圧レベルを変更したことで光劣化の進行度合いが変化してしまった場合や、炎天下に長期間放置され光劣化が予想以上に進んでしまった場合であっても、a-Si TFTの実際の劣化状態に合わせて補正を行うことが可能である。
なお、以上説明した第1実施形態においては、光センサ回路5の出力値として、スイッチSWをオフにしてから基準時間tが経過した時点でのコンデンサCの電圧値を用いたが、このコンデンサCの電圧値の代わりに、ゲートオフ時におけるa-Si TFTのリーク電流値Iを用いてもよい。但し、この場合は、ゲートオフ時におけるa-Si TFTのリーク電流値Iの大きさと、a-Si TFTのチャネル部に当たっている光の強さとの関係を示すプロファイルデータをメモリ6に記憶しておく必要がある。
<2.第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態おいて説明した光センサ回路5および光検出回路10を使用し、環境光の照度(周囲の明るさ)に応じて画面全体の明るさを調整する電気光学装置について説明する。
図7は、本実施形態に係わる電気光学装置50の構成を示すブロック図である。この電気光学装置50は、透過型の液晶表示装置であり、液晶パネルAAと、光検出回路10と、調光回路300と、バックライト400と、制御回路500と、画像処理回路600とを備える。また、液晶パネルAAには、画像表示領域Aと、走査線駆動回路100と、データ線駆動回路200と、光センサ回路5とが設けられる。画像表示領域Aには、X方向に延在するm本の走査線と、Y方向に延在するn本のデータ線とが形成される。また、走査線とデータ線との各交差に対応する位置には画素回路P1が配置され、各画素回路P1は、スイッチング素子としてa-Si TFTを備える。
走査線駆動回路100は、マトリクス状に配列する画素回路P1を、走査信号Y1、Y2、Y3、…、Ymを用いて行単位で選択して動作させる。一方、データ線駆動回路200は、走査線駆動回路100が選択した1行分(n個)の画素回路P1に対し、データ信号X1、X2、…、Xnを供給する。制御回路500は、クロック信号等の各種の制御信号を走査線駆動回路100とデータ線駆動回路200に出力する。また、画像処理回路600は、入力画像データDinに、液晶パネルAAの光透過特性を考慮したガンマ補正等を施した後、RGB各色の画像データをD/A変換して画像信号VIDを生成し、データ線駆動回路200に供給する。
光センサ回路5は、第1実施形態おいて説明した光センサ回路5(図2参照)であって、各画素回路P1に備わるa-Si TFTと同じa-Si TFTを備えている。また、光検出回路10は、第1実施形態おいて説明した光検出回路10(図5参照)であって、環境光の照度を検出すると、検出結果である照度データ10aを調光回路300に出力する。調光回路300は、液晶パネルAAの背面に設けられたバックライト400を、照度データ10aに応じた輝度で発光させる。
バックライト400からの光は液晶パネルAAを介して射出される。また、液晶パネルAAには、各画素回路P1に対応してマトリクス状に画素が設けられており、各画素に印加されるデータ信号の電圧レベルに応じて液晶分子の配向や秩序が変化し、透過率が画素毎に制御される。よって、光変調による階調表示が可能となり、画像表示領域Aに画像が表示される。
ここで、表示画像の見易さは、周囲の明るさによって左右される。例えば、日中の自然光の下では、バックライト400の発光輝度を高く設定し、画面全体を明るくする必要がある。一方、夜間の暗い環境の下では、バックライト400の発光輝度が日中ほど高くなくても鮮明な画像を表示することができる。したがって、調光回路300は、照度データ10aの値が大きい場合は、バックライト400の発光輝度を高く設定する一方、照度データ10aの値が小さい場合は、バックライト400の発光輝度を低く設定して消費電力を削減する。
このように本実施形態においては、光検出回路10から出力される照度データ10aに基づいてバックライト400の発光輝度を調整したので、環境光の正確な照度に基づいて画面の明るさを制御し、表示画像を見易くしたり、電気光学装置50の消費電力を低減することができる。また、各画素回路P1に備わるa-Si TFTと、光センサ回路5に備わるa-Si TFTは同じものであるので、液晶パネルAAを製造する際に、光センサ回路5用のa-Si TFTや、さらには光センサ回路5そのものを液晶パネルAA上に同時に形成することができる。また、前述したように、光センサ回路5に組み込むa-Si TFTは1つでよいので、液晶パネルAA上に形成する光センサ回路5を小型化できるとともにその製造コストを低減できる。
なお、本実施形態では、バックライト400の発光輝度を調整する場合について説明したが、光検出回路10から出力される照度データ10aを画像処理回路600に供給し、画像処理回路600において、照度データ10aに基づいて画像信号VIDの信号レベルを調整してもよい。この場合、データ線駆動回路200は、調整された画像信号VIDに基づいてデータ信号X1〜Xnを生成するので、環境光の照度に応じて画面全体の明るさを調整することができる。
<3.電子機器>
次に、第2実施形態に係る電気光学装置50を適用した電子機器について説明する。図8に、電気光学装置50を適用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す。パーソナルコンピュータ2000は、表示ユニットとしての電気光学装置50と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。
図9に、電気光学装置50を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置50を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置50に表示される画面がスクロールされる。
図10に、電気光学装置50を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置50を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が電気光学装置50に表示される。
なお、電気光学装置50が適用される電子機器としては、図8〜図10に示すものの他、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した電気光学装置50が適用可能である。
<4.変形例>
(1)光電変換素子は、例えば、LTPS TFT(Low Temperature Poly-Silicon TFT:低温ポリシリコン薄膜トランジスタ)や、HTPS TFT(High Temperature Poly-Silicon TFT:高温ポリシリコン薄膜トランジスタ)であってもよい。
(2)上述した実施形態では、光センサ回路5の出力値を定期的(時間Δt毎)に取得する場合について説明した。これは、恣意的な取得方法であると適度にばらついた出力値を得ることができないので、できるだけ正規分布するように出力値を取得するためである。しかしながら、例えば、電気光学装置50には、動作モードとしてスリープモードやディスプレイオフモード等の省電力モードが備わっている場合がある。このような場合に、光センサ回路5の出力値を省電力モードの期間中において取得することは実質的に困難なことが多いので、光センサ回路5の出力値を取得するタイミングをどのように設定するのかが問題になる。このように電気光学装置50が動作モードして、通常モード(第1の動作モード)と省電力モード(第2の動作モード)を有している場合は、動作モードが、省電力モードから通常モードに切り替わるときや、通常モードから省電力モードに切り替わるときに、光センサ回路5の出力値を取得する構成としてもよい。あるいは、電気光学装置50の動作モードが、省電力モードから通常モードに切り替わるときに加え、通常モードから省電力モードに切り替わるときに、光センサ回路5の出力値を取得する構成としてもよい。また、電気光学装置50がクラムシェル型の筐体を有する電子機器に組み込まれている場合は、筐体を開いたときや筐体を折り畳んだときに光センサ回路5の出力値を取得する構成であってもよい。このように光センサ回路5の出力値を取得するタイミングは、一定時間毎に限らない。
(3)上述した劣化率校正処理では、n個の測定値DATを取得するたびに平均値AVEを算出し、この平均値AVEがm個になった時点で最終的な平均値μを算出する、という2段構えの構成で平均値μを求める場合について説明した。しかしながら、測定値DATをn×m個連続して取得・保存した後、その平均を求めることで平均値μを算出する構成であってもよい。但し、測定値DATをn×m個連続して取得する場合は、メモリ6にn×m個の測定値DATを保存しなければならないが、上述したように2段構えの構成で平均値μを算出する場合は、n個の測定値DATとm個の平均値AVEをメモリ6に保存するだけでよいので、メモリ6の使用量を低減できる。なお、2段構えの構成で平均値μを算出する場合について、その要旨をまとめると以下のとおりである。
入射する光の照度に応じたレベルの出力信号を出力する光電変換素子と、
前記光電変換素子の出力信号を取得するタイミングを定めた条件が成立するたびに、前記出力信号を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した出力信号の数が第1の所定数(n)に達するたびに、当該第1の所定数の出力信号のレベルについて平均値を算出する第1平均値算出手段と、
前記第1平均値算出手段が算出した平均値の数が第2の所定数(m)に達するたびに、当該第2の所定数の平均値について平均値を算出する第2平均値算出手段と、
前記第2平均値算出手段が最初に算出した平均値を記憶する記憶手段と、
前記第2平均値算出手段による平均値の算出が2回目以降の場合に、前記第2平均値算出手段が今回算出した平均値と、前記記憶手段に記憶されている平均値との比に基づいて、前記光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率を算出し、当該劣化率の値を更新する更新手段と、
前記更新手段による更新後の劣化率と前記光電変換素子の出力信号とに基づいて、入射する光の照度を算出する照度算出手段と
を備える光検出回路。
(4)上述した劣化率校正処理では、初期平均値μを算出してメモリ6に保存する処理を工場出荷後にユーザの元で行う。しかしながら、初期平均値μを算出してメモリ6に保存する処理を工場出荷前に行う構成であってもよい。例えば、光センサ回路5と光検出回路10が組み込まれた電気光学装置50の場合を例に挙げて説明すると、工場から出荷する前に電気光学装置50をテストルームに入れ、液晶パネルAA上に設けられた光センサ回路5内のa-Si TFTに対し、n×m回に渡ってランダムなテスト光を照射する。これにより図6に示した劣化率校正処理において、n×m回に渡って照射されたテスト光についての平均値μが算出され、この平均値μが初期平均値μとしてメモリ6に保存される。
なお、このように工場出荷前に初期平均値μを算出してメモリ6に保存しておく構成を採用する場合は、例えば、一回目の平均値μ(初期平均値μ)が算出されるまでの間に限り、2回目以降の平均値μを算出する場合よりも測定値DATを取得する時間間隔Δtを狭める等して、迅速に初期平均値μを算出できるようにすることが望ましい。また、照射されるテスト光を利用して、a-Si TFTに対応したプロファイルデータ(基準時間tが経過した時点でのコンデンサCの電圧値と、a-Si TFTのチャネル部に当たっている光の強さとの関係を示すプロファイルデータや、ゲートオフ時におけるa-Si TFTのリーク電流値Iの大きさと、a-Si TFTのチャネル部に当たっている光の強さとの関係を示すプロファイルデータ)をメモリ6に書き込むようにしてもよい。
また、以上のようにして工場出荷前に初期平均値μを算出してメモリ6に保存する場合、テスト光を照射するための設備等が必要になる。そこで、テスト光を照射するのではなく、初期平均値μについての理想値を工場出荷前にメモリ6に保存する構成としてもよい。この場合、メモリ6に保存する初期平均値μ(理想値)は、例えば、100個のa-Si TFTを測定して得られた初期平均値μの平均値とすることができる。このような構成であると、a-Si TFTの個体差によって若干の誤差は生じるものの、テスト光を照射することなく、メモリ6に初期平均値μを保存することができる。なお、このようにして初期平均値μをメモリ6に保存する場合は、2回目以降に算出される平均値μからではなく、最初に算出される平均値μから、メモリ6に記憶されている初期平均値μ(理想値)との比をとり、a-Si TFTの劣化率Dを算出することができる。また、このように初期平均値μについての理想値を工場出荷前にメモリ6に保存する場合は、上述したプロファイルデータについても、初期平均値μの場合と同様に、例えば、100個のa-Si TFTを測定して得られたプロファイルデータの標準値等をメモリ6に書き込む構成とすることができる。
(5)第2実施形態では、電気光学装置として透過型の液晶表示装置を挙げたが、本発明に係わる電気光学装置は、例えば、半透過型の液晶表示装置や、反射型の液晶表示装置であってもよい。但し、反射型の液晶表示装置の場合は、光検出回路10から出力される照度データ10aに基づいて画像信号VIDの信号レベルを調整し、画面全体の明るさを制御する。また、反射型の液晶表示装置の中には、例えば、特開2002− 131742号公報に記載されているようにフロントライトを備えるものがある。このようなフロントライトを備えた反射型液晶表示装置では、周囲が暗い場合にフロントライトを点灯させて表示パネルを照らす一方、周囲が明るい場合はフロントライトを消灯して外光(自然光)のみで表示パネルを照らすが、このフロントライトの発光輝度を光検出回路10から出力される照度データ10aに基づいて調整してもよい。
また、本発明に係わる電気光学装置は、OLED(Organic Light Emitting Diode:有機発光ダイオード)素子を用いた電気光学装置であってもよい。OLED素子は、光の透過量を変化させる液晶素子とは異なり、それ自体が発光する電流駆動型の発光素子である。但し、OLED素子を用いた電気光学装置の場合も、光検出回路10から出力される照度データ10aに基づいて画像信号VIDの信号レベルを調整し、画面全体の明るさを制御する。さらに、本発明に係わる電気光学装置は、液晶素子やOLED素子以外の電気光学素子を用いた電気光学装置であってもよい。なお、電気光学素子とは、電気信号(電流信号または電圧信号)の供給によって透過率や輝度といった光学的特性が変化する素子である。例えば、無機EL(ElectroLuminescence)や発光ポリマー等の発光素子を用いた表示パネルや、着色された液体と当該液体に分散された白色の粒子とを含むマイクロカプセルを電気光学物質として用いた電気泳動表示パネル、極性が相違する領域ごとに異なる色に塗り分けられたツイストボールを電気光学物質として用いたツイストボールディスプレイパネル、黒色トナーを電気光学物質として用いたトナーディスプレイパネル、あるいはヘリウムやネオン等の高圧ガスを電気光学物質として用いたプラズマディスプレイパネル等を備えた電気光学装置に対しても本発明を適用することができる。
<5.シミュレーション>
Excelの乱数機能によって生成した「実照度データ」に、劣化率D(光劣化率)を重畳させることで擬似的に「劣化照度データ」を生成し、この劣化照度データから、第1実施形態において説明した手順に従って光劣化率を算出するシミュレーションを行った。なお、Excelのrand関数を用いて一様分布、指数分布および正規分布を生成し、各々の場合で検証を行った。各分布の意味するところは以下の通りである。また、以下の検証を行うに当たっては、n=128,256、m=5と設定した。
一様分布…暗闇でも快晴のスキー場でも同じ頻度で光センサ回路5の出力値を取得するケースを想定したもの。
指数分布…鞄の中,省電力モード時,クラムシェル型の筐体を折り畳んだ状態等においても光センサ回路5の出力値を取得する一方、極端に明るい場所では光センサ回路5の出力値をほとんど取得しないケースを想定したもの。
正規分布…鞄の中,省電力モード時,クラムシェル型の筐体を折り畳んだ状態等においては光センサ回路5の出力値をほとんど取得せず、スリープアウト時やディスプレイオン時など、通常モードの期間中においてのみ、光センサ回路5の出力値を取得するケースを想定したもの。
(1)一様分布の場合のシミュレーション結果
照度範囲をa=0からb=100とし、式(5)を用いて一様分布を生成して実照度データとした。
=a+(b−a)×rand( ) …(5)
実照度データの分布を図11に示す。また、この実照度データに光劣化率を重畳して生成した劣化照度データ(一部分のみを抽出)を図12に示す。なお、光劣化率は、単位時間毎に0.002%ずつ劣化していくものとした。この場合の光劣化率の算出結果を図13に示す。
(2)指数分布の場合のシミュレーション結果
平均値1/m=50とし、式(6)を用いて指数分布を生成して実照度データとした。
Figure 2009058342
実照度データの分布を図14に示す。また、この実照度データに光劣化率を重畳して生成した劣化照度データ(一部分のみを抽出)を図15に示す。なお、光劣化率は、一様分布の場合と同様に、単位時間毎に0.002%ずつ劣化していくものとした。この場合の光劣化率の算出結果を図16に示す。
(3)正規分布の場合のシミュレーション結果
平均値μを50、標準偏差σを20とし、式(7) に示すようにExcelのNORMSINV関数を用いて正規分布を生成し、実照度データとした。
=μ+σ×NORMSINV(rand( )) …(7)
実照度データの分布を図17に示す。また、この実照度データに光劣化率を重畳して生成した劣化照度データ(一部分のみを抽出)を図18に示す。なお、光劣化率は、一様分布や指数分布の場合と同様に、単位時間毎に0.002%ずつ劣化していくものとした。この場合の光劣化率の算出結果を図19に示す。また、標準偏差σを10とした場合のシミュレーション結果を、図20〜図22に示す。
以上、図11〜図22に示したシミュレーション結果からも明らかとなるように、実照度データの分布が、正規分布ではなく一様分布や指数分布であったとしても、光劣化率を算出できることがわかる。また、実照度データの分布が正規分布の場合はより高い追従性が認められる。なお、nの値が大きい方が、光劣化率の算出結果のばらつきを抑えることができるが、反面、実際の光劣化率からの乖離が大きくなる。また、実照度データの分布が正規分布の場合は、当然のことながら標準偏差σの値が小さい方が、光劣化率の算出結果のばらつきを抑えられる。
<6.応用例>
本発明は、温度センサにも適用可能である。
例えば、熱電対、測温抵抗体、サーミスタ等の感温素子の出力値をn×m個取得するたびにその平均値を算出し、最初に算出した平均値を初期平均値としてメモリに保存する一方、2回目以降に平均値を算出した場合に、今回算出した平均値とメモリに保存されている初期平均値との比から、積算温度(温度×時間)による感温素子の劣化率を算出し、メモリに保存してある劣化率の値を更新する。そして、感温素子の出力値とメモリに保存されている劣化率の値とを用いて、感温素子に加わる熱エネルギー(温度)を検出する。勿論、上述した変形例(4)にも記載しているように、初期平均値についての理想値を予めメモリに保存しておき、2回目以降からでなく最初に算出された平均値から、メモリに保存されている初期平均値(理想値)との比をとり、感温素子の劣化率を算出する構成であってもよい。
また、本発明は、音の大きさを検出するセンサ等にも適用可能である。このように本発明は、センシング素子の出力信号を所定数取得するたびにその平均値を算出し、メモリに保存されている初期平均値と今回算出した平均値との比から、センシング素子の現在の劣化率を算出し、算出した劣化率を用いて正確な検出値を得ることを要旨とする。
本発明の第1実施形態に係わるa-Si TFTのゲート電圧とドレイン電流との関係を示すグラフである。 光センサ回路5の構成を示す回路図である。 光センサ回路5におけるコンデンサCの放電特性を示すグラフである。 光センサ回路5の出力値分布を示すグラフである。 光センサ回路5および光検出回路10の全体構成を示すブロック図である。 制御部7によって実行される劣化率校正処理のフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係る電気光学装置50の全体構成を示すブロック図である。 本発明に係る電子機器の具体例を示す斜視図である。 本発明に係る電子機器の具体例を示す斜視図である。 本発明に係る電子機器の具体例を示す斜視図である。 実照度データの分布(一様分布)を示すグラフである。 図11に示した実照度データに光劣化率を重畳して生成した劣化照度データ(一部)を示すグラフである。 図13に示した劣化照度データからの光劣化率の算出結果を示すグラフである。 実照度データの分布(指数分布)を示すグラフである。 図14に示した実照度データに光劣化率を重畳して生成した劣化照度データ(一部)を示すグラフである。 図15に示した劣化照度データからの光劣化率の算出結果を示すグラフである。 実照度データの分布(正規分布:σ=20)を示すグラフである。 図17に示した実照度データに光劣化率を重畳して生成した劣化照度データ(一部)を示すグラフである。 図18に示した劣化照度データからの光劣化率の算出結果を示すグラフである。 実照度データの分布(正規分布:σ=10)を示すグラフである。 図20に示した実照度データに光劣化率を重畳して生成した劣化照度データ(一部)を示すグラフである。 図21に示した劣化照度データからの光劣化率の算出結果を示すグラフである。
符号の説明
5…光センサ回路、6…メモリ、7…制御部、10…光検出回路、10a…照度データ、50…電気光学装置、AA…液晶パネル、A…画像表示領域、P1…画素回路、100…走査線駆動回路、200…データ線駆動回路、300…調光回路、400…バックライト、500…制御回路、600…画像処理回路、2000…パーソナルコンピュータ、3000…携帯電話機、4000…情報携帯端末。

Claims (14)

  1. 測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの出力信号を出力するセンシング素子と、
    前記センシング素子の出力信号を取得するタイミングを定めた条件が成立するたびに、前記出力信号を取得する取得手段と、
    前記取得手段が取得した出力信号の数が所定数に達するたびに、当該所定数の出力信号のレベルについて平均値を算出する平均値算出手段と、
    前記平均値算出手段が最初に算出した平均値を記憶する記憶手段と、
    前記平均値算出手段による平均値の算出が2回目以降の場合に、前記平均値算出手段が今回算出した平均値と、前記記憶手段に記憶されている平均値との比に基づいて、前記センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す劣化率を算出し、当該劣化率の値を更新する更新手段と、
    前記更新手段による更新後の劣化率と前記センシング素子の出力信号とに基づいて、測定対象となるエネルギーの大きさを算出するエネルギー算出手段と
    を備えるセンシング回路。
  2. 測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの出力信号を出力するセンシング素子と、
    前記センシング素子の出力信号を取得するタイミングを定めた条件が成立するたびに、前記出力信号を取得する取得手段と、
    前記取得手段が取得した出力信号の数が所定数に達するたびに、当該所定数の出力信号のレベルについて平均値を算出する平均値算出手段と、
    前記平均値算出手段が最初に算出する平均値について、予め定められた理想値を記憶する記憶手段と、
    前記平均値算出手段が今回算出した平均値と、前記記憶手段に記憶されている理想値との比に基づいて、前記センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す劣化率を算出し、当該劣化率の値を更新する更新手段と、
    前記更新手段による更新後の劣化率と前記センシング素子の出力信号とに基づいて、測定対象となるエネルギーの大きさを算出するエネルギー算出手段と
    を備えるセンシング回路。
  3. 入射する光の照度に応じたレベルの出力信号を出力する光電変換素子と、
    前記光電変換素子の出力信号を取得するタイミングを定めた条件が成立するたびに、前記出力信号を取得する取得手段と、
    前記取得手段が取得した出力信号の数が所定数に達するたびに、当該所定数の出力信号のレベルについて平均値を算出する平均値算出手段と、
    前記平均値算出手段が最初に算出した平均値を記憶する記憶手段と、
    前記平均値算出手段による平均値の算出が2回目以降の場合に、前記平均値算出手段が今回算出した平均値と、前記記憶手段に記憶されている平均値との比に基づいて、前記光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率を算出し、当該劣化率の値を更新する更新手段と、
    前記更新手段による更新後の劣化率と前記光電変換素子の出力信号とに基づいて、入射する光の照度を算出する照度算出手段と
    を備える光検出回路。
  4. 入射する光の照度に応じたレベルの出力信号を出力する光電変換素子と、
    前記光電変換素子の出力信号を取得するタイミングを定めた条件が成立するたびに、前記出力信号を取得する取得手段と、
    前記取得手段が取得した出力信号の数が所定数に達するたびに、当該所定数の出力信号のレベルについて平均値を算出する平均値算出手段と、
    前記平均値算出手段が最初に算出する平均値について、予め定められた理想値を記憶する記憶手段と、
    前記平均値算出手段が今回算出した平均値と、前記記憶手段に記憶されている理想値との比に基づいて、前記光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率を算出し、当該劣化率の値を更新する更新手段と、
    前記更新手段による更新後の劣化率と前記光電変換素子の出力信号とに基づいて、入射する光の照度を算出する照度算出手段と
    を備える光検出回路。
  5. 前記取得手段は、予め定められた期間毎に前記光電変換素子の出力信号を取得する
    ことを特徴とする請求項3または4に記載の光検出回路。
  6. 前記光電変換素子は、アモルファスシリコン薄膜トランジスタである
    ことを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか1項に記載の光検出回路。
  7. 前記光電変換素子は、低温ポリシリコン薄膜トランジスタである
    ことを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか1項に記載の光検出回路。
  8. 前記光電変換素子は、高温ポリシリコン薄膜トランジスタである
    ことを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか1項に記載の光検出回路。
  9. 請求項3乃至8のうちいずれか1項に記載の光検出回路と、
    画像を表示する表示部と、
    前記光検出回路の出力信号に基づいて、前記表示部の画像の輝度を調整する調整部と
    を備える電気光学装置。
  10. 請求項3乃至8のうちいずれか1項に記載の光検出回路と、
    画像を表示する表示部と、
    前記表示部を照明する照明手段と、
    前記光検出回路の出力信号に基づいて、前記照明手段の発光輝度を調整する調整部と
    を備える電気光学装置。
  11. 前記電気光学装置は、電力消費量が異なる複数の動作モードを有しており、
    前記取得手段は、前記電気光学装置の動作モードが異なる動作モードに切り替わるたびに、前記光電変換素子の出力信号を取得する
    ことを特徴とする請求項9または10に記載の電気光学装置。
  12. 前記電気光学装置は、第1の動作モードと、前記第1の動作モードの場合よりも消費電力を低減する第2の動作モードとを有しており、
    前記取得手段は、前記電気光学装置の動作モードが前記第2の動作モードから前記第1の動作モードに切り替わるたびに、前記光電変換素子の出力信号を取得する
    ことを特徴とする請求項9または10に記載の電気光学装置。
  13. 前記電気光学装置は、第1の動作モードと、前記第1の動作モードの場合よりも消費電力を低減する第2の動作モードとを有しており、
    前記取得手段は、前記電気光学装置の動作モードが前記第1の動作モードから前記第2の動作モードに切り替わるたびに、前記光電変換素子の出力信号を取得する
    ことを特徴とする請求項9または10に記載の電気光学装置。
  14. 請求項9乃至13のうちいずれか1項に記載の電気光学装置を備えた電子機器。
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