JP2009036719A - 電気泳動装置及び電気泳動を用いた生体関連物質検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】バイオチップを用いた生体関連分子検出において、検出時のバックグラウンドノイズを抑え、目的とする生体関連物質成分のみを感度良く検出することができ、マイクロRNAを面倒な検体の前処理なしに感度良く検出することが可能な電気泳動装置及びその検出方法を提供する。
【解決手段】検体液収容部10と、検体液収容部10と連通して配置されたフィルタ20と、フィルタ20を介して検体液収容部10と連通する反応液収容部30と、反応液収容部30と連通して配置されたバイオチップ40と、フィルタ20を挟んで検体液収容部10側と反応液収容部30側にそれぞれ配置され、生体関連物質を検体液収容部10と反応液収容部30との間でフィルタ20を通過させて電気泳動させるための一対の電極50,60とを備え、フィルタ20は、生体関連物質が通過するときに所定の生体関連物質を捕捉して精製する。
【選択図】図1
【解決手段】検体液収容部10と、検体液収容部10と連通して配置されたフィルタ20と、フィルタ20を介して検体液収容部10と連通する反応液収容部30と、反応液収容部30と連通して配置されたバイオチップ40と、フィルタ20を挟んで検体液収容部10側と反応液収容部30側にそれぞれ配置され、生体関連物質を検体液収容部10と反応液収容部30との間でフィルタ20を通過させて電気泳動させるための一対の電極50,60とを備え、フィルタ20は、生体関連物質が通過するときに所定の生体関連物質を捕捉して精製する。
【選択図】図1
Description
本発明は、核酸等の生体関連物質の検出に適した電気泳動装置及び電気泳動を用いた生体関連物質検出方法に関する。
近年、病気の診断、原因の解明のために、DNAマイクロアレイやDNAチップ等と呼ばれるバイオチップが開発されている。このようなバイオチップは、シリコン等の基盤上にフォトグラフィー技術によって短鎖の核酸を直接固相合成していく方法(例えば、特許文献1,2)や、化学的又は物理的に修飾した基盤上に核酸等の生体関連物質プローブ(以下、プローブという)をスポッティングして固定化する方法(例えば、非特許文献1)によって製造される。
また、多数の中空繊維を束ねて樹脂で固定化し、その中空繊維の中空部にゲル状物と共にプローブを導入した後、この固定化物を中空繊維と直交する方向に切断し薄片化して製造するバイオチップが知られている(例えば、特許文献3)。このバイオチップは、プローブをバイオチップの表面部だけでなく厚み方向にも保持可能であるので、多量のプローブを導入可能であり、高い検出感度を得るのに適している。
このようにプローブがゲルに固定化されたバイオチップのハイブリダイゼーション効率を高めるため、電気泳動装置を用いる技術が知られている(例えば、特許文献4,5)。特許文献5に記載の電気泳動装置は、特許文献3に記載されたようなバイオチップを介してその両側に各々設けられた検体液収容部と、半透膜を介して各検体液収容部の外側に設けられたバッファ液収容部と、各バッファ液収容部の外側に設けられた電極とを有している。この電気泳動装置は、さらに検体液収容部内に充填される検体液を洗浄液に入れ替える機構を有する。
特許文献5に記載の電気泳動装置では、一対の電極に電圧を印加すると、一方の検体液収容部内の検体液に含まれる検体(生体関連物質)が他方の検体収容部側へ電気泳動し、検体がバイオチップに接触する。このときバイオチップのゲル中へ検体が素早く拡散し、プローブと検体とのハイブリダイゼーション反応が加速される。ハイブリダイズしなかった検体は、バイオチップを通過して他方の検体収容部内へ移動する。特許文献5に記載の電気泳動装置では、一対の電極の極性を反転させて、未ハイブリダイズ検体を検体収容部間で往復させることにより、ハイブリダイゼーション効率を高めることができる。
特許文献5に記載の電気泳動装置では、検体をハイブリダイズさせた後、さらに検体液を洗浄液に入れ替え、再び電極に電圧を印加することにより、バイオチップから未ハイブリダイズ検体を洗浄液内へ電気泳動させて、未ハイブリダイズ検体をバイオチップから除去することができる。このような不要検体の洗浄処理によって、未ハイブリダイズ検体に起因するバックグラウンドノイズが低減され、検査精度が高められる。
また、近年、マイクロRNAと呼ばれる核酸が、生体内での細胞の分化・再生における制御機構に重要な役割を果たしていることが知られるようになった(非特許文献2)。このため、成分量が少なく、20塩基前後と鎖長が短い核酸が生体関連物質として盛んに注目されている。このマイクロRNAは、検体中に相対的に微量しか含まれないので、検出生体から取り出した核酸混合物からマイクロRNAを検出することは難しい。このため、マイクロRNAを検出するには、まず生体から抽出した核酸物質から鎖長の短い核酸成分を一度分離精製した後に、バイオチップ等による検査方法に供する方法がとられている。
「サイエンス」(Science)、1995年、第270号、p.467−470
Nature、2005年、第435号、p.745−746
米国特許第5,445,934号明細書
米国特許第5,744,305号明細書
特開2000−270878号公報
特開2000−60554号公報
国際公開第2005/031335号パンフレット
しかしながら、電気泳動装置を用いて生体関連物質を電気泳動させるとき、検体液に含まれる夾雑物が、バイオチップの表面に吸着し、このため検出のバックグラウンドレベルが高くなりノイズの原因となってしまうという問題があった。
また、夾雑物が、生体関連物質を検出するためのプローブに非特異的に吸着し、目的の生体関連物質がプローブに正しく結合又は相互作用することが妨げられてしまうという問題があった。
また、夾雑物が、生体関連物質を検出するためのプローブに非特異的に吸着し、目的の生体関連物質がプローブに正しく結合又は相互作用することが妨げられてしまうという問題があった。
特に特許文献4,5のように、プローブがゲルに固定化されたバイオチップを用い電気泳動を利用してハイブリダイゼーションを行う際には、ゲル中に強制的に検体が拡散されるため、夾雑物の影響が出やすく、検出のバックグラウンドノイズが非常に高くなってしまう。
また、生体関連物質としてマイクロRNAを検出する場合、上述のように、検体中に含まれるマイクロRNAが相対的に微量であるので、先ず目的とする短鎖長成分を単離し、その後に単離した成分をバイオチップに接触させ検出する方法がとられている。しかしながら、短鎖長成分を単離する際、分解や精製ロスが避けられないので、この方法においても結果的に高い検出感度が得られないという問題があった。
本発明の目的は、バイオチップを用いた生体関連物質検出において、検出時のバックグラウンドノイズを抑え、目的とする生体関連物質成分のみを感度良く検出することができる電気泳動装置及び電気泳動を用いた生体関連物質検出方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、マイクロRNAを面倒な検体の前処理なしに感度良く検出することが可能な電気泳動装置及びその検出方法を提供することにある。
本発明の電気泳動装置は、生体関連物質を含む検体液を導入するための検体液収容部と、該検体液収容部と連通して配置されたフィルタと、該フィルタを介して前記検体液収容部と連通する反応液収容部と、該反応液収容部と連通して配置された生体関連物質を検出するためのバイオチップと、前記フィルタを挟んで前記検体液収容部側と前記反応液収容部側にそれぞれ配置され、生体関連物質を前記検体液収容部と前記反応液収容部との間で前記フィルタを通過させて電気泳動させるための一対の電極と、を備え、前記フィルタは、生体関連物質が通過するときに所定の生体関連物質を捕捉して精製することを特徴とする。
このような構成によれば、検体液収容部に検体液を導入すると共に、反応液収容部にバッファー液を配置した後、一対の電極に所定の電圧を印加することにより、検体液中の生体関連物質を検体液収容部からフィルタを通して反応液収容部に電気泳動させることができる。本発明では、生体関連物質は、フィルタを通過して反応液収容部に移動するので、検体液中に含まれる検査対象ではない所定の生体関連物質や夾雑物をフィルタによって捕捉することができる。これにより、検査対象ではない所定の生体関連物質や夾雑物に起因するバックグラウンドを低減して、バイオチップにより、目的とする生体関連物質のみを感度よく検出することができる。
本発明の他の好ましい態様によれば、前記フィルタは、所定の大きさよりも大きな生体関連物質を捕捉する。このような構成によれば、フィルタが捕捉する生体関連物質のサイズを適宜に設定することにより、目的とする生体関連物質(例えば、所定サイズのマイクロRNA)のみを、面倒な検体の前処理なしに感度よく検出することができる。
具体的には、前記フィルタは、水溶性高分子で形成することができる。
具体的には、前記フィルタは、水溶性高分子で形成することができる。
本発明の他の好ましい態様によれば、前記電極は、半透膜又は電解質膜を介して前記検体液収容部内又は前記反応液収容部内と連通する。このような構成によれば、半透膜又は電解質膜によって、電極本体を生体関連物質から隔絶して、生体関連物質が電気的酸化還元反応によって分解されてしまうことを防止することができる。
また、前記反応液収容部側に配置された電極は、前記バイオチップに設けてもよい。
また、前記反応液収容部側に配置された電極は、前記バイオチップに設けてもよい。
本発明の他の好ましい態様によれば、前記バイオチップは、前記反応液収容部内に面する電気的貫通孔を有し、該電気的貫通孔は、その内部に生体関連物質を検出するためのプローブが固定されている。このような構成によれば、生体関連物質に、バイオチップの電気的貫通孔を通過させることにより、生体関連物質とプローブとを効率よくハイブリダイゼーション反応させることができる。
本発明の他の好ましい態様によれば、前記反応液収容部は、前記バイオチップと前記フィルタとの間に第1の反応液収容部と、前記バイオチップを挟んで前記第1の反応液収容部と反対側に第2の反応液収容部と、を有し、前記反応液収容部側に配置された電極は、前記バイオチップよりも前記第2の反応液収容部側に配置されている。
このような構成によれば、検体液収容部から第1の反応液収容部に移動してきた生体関連物質を、バイオチップの電気的貫通孔を通して第2の反応液収容部に移動させることができるので、生体関連物質が電気的貫通孔を通過するときに、生体関連物質を電気的貫通孔に固定されたプローブと効率よくハイブリダイゼーション反応させることができる。
本発明の他の好ましい態様によれば、生体関連物質は、核酸である。
本発明の他の好ましい態様によれば、生体関連物質は、核酸である。
また、本発明は、検体液収容部と、該検体液収容部と連通して配置されたフィルタと、該フィルタを介して前記検体液収容部と連通する反応液収容部と、該反応液収容部と連通して配置された生体関連物質を検出するためのバイオチップと、前記フィルタを挟んで前記検体液収容部側と前記反応液収容部側にそれぞれ配置された一対の電極と、を備えた電気泳動装置を用いて生体関連物質を検出する方法であって、前記検体液収容部に生体関連物質を含む検体液を導入する工程と、前記一対の電極に電圧を印加して、生体関連物質を前記検体液収容部から前記フィルタを通過させて前記反応液収容部に電気泳動させ、前記フィルタに所定の生体関連物質を捕捉させて精製する精製工程と、前記反応液収容部に移動した生体関連物質を前記バイオチップと接触させる工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、バイオチップを用いた生体関連分子検出において、検出時のバックグラウンドノイズを抑え、目的とする生体関連物質成分のみを感度良く検出することができる電気泳動装置及び電気泳動を用いた生体関連物質検出方法を提供することができる。
また、本発明によれば、マイクロRNAを面倒な検体の前処理なしに感度良く検出することが可能な電気泳動装置及びその検出方法を提供することができる。
また、本発明によれば、マイクロRNAを面倒な検体の前処理なしに感度良く検出することが可能な電気泳動装置及びその検出方法を提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態の電気泳動装置及び電気泳動を用いた生体関連物質検出方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、これらは実施形態を例示するものであって、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般的に、バイオチップを用いた生体関連分子検出では、検体は、生体等から取り出され、バイオチップと反応させるために、ある程度単離精製される。また、検体は、製品として入手可能なシリカゲルビーズや分離膜等によって精製される。そして、精製された検体は、バイオチップでの検出が可能なように、蛍光色素や、電気化学的活性物質、放射性物質、発光性色素等が修飾される。
しかしながら、上述のように精製された検体には、目的とする生体関連物質だけではなく、不要成分が含まれている。不要成分は、バイオチップの基盤やプローブと非特異的に吸着し、検出効率を低下させる。本発明の電気泳動装置では、この原因物質(不要成分)を効率よく除去し、検出効率を大幅に向上させることができるように構成されている。
まず、図1に基づいて、本発明の第1態様の電気泳動装置について説明する。図1は、電気泳動装置1の概略構成図である。
本実施形態の電気泳動装置1は、検体液収容部10と、フィルタ20と、反応液収容部30と、バイオチップ40と、電極50(第1の電極),60(第2の電極)と、電源装置70とを備えている。
本実施形態の電気泳動装置1は、検体液収容部10と、フィルタ20と、反応液収容部30と、バイオチップ40と、電極50(第1の電極),60(第2の電極)と、電源装置70とを備えている。
検体液を収容する検体液収容部10は、両端が開口した形状を有している。検体液収容部10の一端側(外方側)の開口部は、電極50で覆われ、他端側(内方側)の開口部は、フィルタ20の一方の面によって覆われている。
反応液を収容する反応液収容部30も、両端が開口した形状を有している。反応液収容部30の一端側(外方側)の開口部は、板状のバイオチップ40によって覆われ、他端側(内方側)の開口部は、フィルタ20の他方の面によって覆われている。
従って、本実施形態の電気泳動装置1は、検体液収容部10と反応液収容部30とがフィルタ20を挟んで対向して配置され、さらにその外方に電極50とバイオチップ40とが配置された構成を備えている。
反応液を収容する反応液収容部30も、両端が開口した形状を有している。反応液収容部30の一端側(外方側)の開口部は、板状のバイオチップ40によって覆われ、他端側(内方側)の開口部は、フィルタ20の他方の面によって覆われている。
従って、本実施形態の電気泳動装置1は、検体液収容部10と反応液収容部30とがフィルタ20を挟んで対向して配置され、さらにその外方に電極50とバイオチップ40とが配置された構成を備えている。
検体液収容部10は、内部に検体液2を保持することができる空間を有している。検体液2は、生体から取り出し、バイオチップ40に適合するように調製された生体関連物質を含むバッファー溶液である。この検体液収容部10の内部空間に、検体液2が導入される。
フィルタ20は、フィルタ本体21である水溶性高分子のアガロースが環状の支持体22内に保持された構成である。フィルタ20は、フィルタ本体21が検体液収容部10内の検体液2と接触するように、検体液収容部10に連通して配置されている。フィルタ20は、後述するように、生体関連物質が検体液収容部10から反応液収容部30に向けて通過するときに、所定の生体関連物質や夾雑物を捕捉して、生体関連物質を精製する。
フィルタ20は、フィルタ本体21である水溶性高分子のアガロースが環状の支持体22内に保持された構成である。フィルタ20は、フィルタ本体21が検体液収容部10内の検体液2と接触するように、検体液収容部10に連通して配置されている。フィルタ20は、後述するように、生体関連物質が検体液収容部10から反応液収容部30に向けて通過するときに、所定の生体関連物質や夾雑物を捕捉して、生体関連物質を精製する。
反応液収容部30は、内部に反応液3を保持することができる空間を有している。反応液収容部30は、内部に満たされた反応液3がフィルタ本体21と接触するように、フィルタ20を介して検体液収容部10と連通している。反応液収容部30は、フィルタ20を挟んで検体液収容部10と反対側に位置している。すなわち、検体液収容部10と反応液収容部30は、フィルタ20によって隔絶されている。しかしながら、これに限定されず、検体液収容部10と反応液収容部30とが、フィルタ20を介さず、直接連通している部位を有していてもよい。反応液3は、例えば、2×SSC及び0.5%SDSの混合溶液からなるバッファー液である。
検体液収容部10,フィルタ20の支持体22,反応液収容部30を構成する材料としては、溶液を漏出させず、化学的に安定であって、イオンやその他の成分を液中へ溶出する量が少なく、且つ溶液中の検体分子の吸着が少ないものを用いることが望ましい。例えば、ブチルゴム,ニトリルゴム,シリコンゴム,テフロン(登録商標)樹脂,アクリル樹脂,ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
バイオチップ40は、基盤表面又は内部にプローブが固定されたバイオチップであり、所定の生体関連物質を検出することができるようになっている。バイオチップ40は、反応液収容部30内の反応液3と接触するように、反応液収容部30と連通して配置されている。これにより、反応液3内に移動してきた生体関連物質と、バイオチップ40の生体関連物質からなるプローブとが、結合または相互作用することができるようになっている。
電極50は、フィルタ20に対向し、且つ、検体液収容部10内に露出して検体液2と接触するように配置されている。電極60は、電極50に対してフィルタ20を挟んで配置されている。具体的には、電極60は、反応液収容部30内に一部が露出して反応液3と接触するように配置されている。電極50,60は白金製の電極である。しかしながら、電極材料は、これに限らず、導電性の材料であればよく、化学的に安定でイオンやその他の成分の溶液中への溶出の少ないものが好適である。
なお、電極50,60は、それぞれ複数の電極から構成されていてもよい。
なお、電極50,60は、それぞれ複数の電極から構成されていてもよい。
また、電極50,60は、電極本体の表面上に電解質膜51,61が形成されている。これにより、生体関連物質が電極50,60に接触又は接近したときに、電気的酸化還元反応によって生体関連物質が分解されてしまうことを防止することができる。
また、同様の効果を得るために、電極50,60を半透膜で覆ってもよい。半透膜としては、検体(生体関連物質)を透過させず、溶液中の水や塩類のような低分子を透過させるようなものを用いることができ、例えば、ゼラチン膜,アセテート膜,アクリルアミド系ポリマーやポリビニルアルコール等のハイドロゲル,再生セルロース膜等を用いることができる。これにより、生体関連物質は、半透膜を通過できず電極50,60から隔離されて溶液中に留まり、電極50,60によって直接反応するのを防止することができる。
また、同様の効果を得るために、電極50,60を半透膜で覆ってもよい。半透膜としては、検体(生体関連物質)を透過させず、溶液中の水や塩類のような低分子を透過させるようなものを用いることができ、例えば、ゼラチン膜,アセテート膜,アクリルアミド系ポリマーやポリビニルアルコール等のハイドロゲル,再生セルロース膜等を用いることができる。これにより、生体関連物質は、半透膜を通過できず電極50,60から隔離されて溶液中に留まり、電極50,60によって直接反応するのを防止することができる。
電源装置70は、電極50,60間に接続されており、所定の電圧を電極50,60間に印加することができるようになっている。また、電源装置70は、制御装置を有しており、電極50,60間に印加される電圧を制御することができるようになっている。このように、電極50,60間に所定時間電圧が印加されることにより、検体液2中の生体関連物質がバイオチップ40側へ電気泳動される。
次に、本発明に用いることができるフィルタ20についてさらに詳細に説明する。フィルタ20は、検体液中に含まれる不要な夾雑物や比較的高分子量の生体関連物質を除去する精製機構を構成する。フィルタ20には、生体物質関連の限外ろ過に一般的に用いられる水溶性高分子や透析膜を用いることができる。
水溶性高分子としては、アガロース以外に、アクリルアミド、ポリエチレングリコール及びその誘導体から選択することができる。一般的な電気泳動に用いることができるゲルを使用することができる。
水溶性高分子をフィルタとして機能させるために、高分子の構造を保持し力学的強度を強化するように支持体を用いて補強したり、高分子を3次元架橋させたりしてもよい。また、IPN構造のゲルや、ナノコンポジットゲルと呼ばれる高強度の3次元架橋型水溶性高分子を用いてもよい。
水溶性高分子をフィルタとして機能させるために、高分子の構造を保持し力学的強度を強化するように支持体を用いて補強したり、高分子を3次元架橋させたりしてもよい。また、IPN構造のゲルや、ナノコンポジットゲルと呼ばれる高強度の3次元架橋型水溶性高分子を用いてもよい。
また、透析膜としては、ゼラチン膜、アセテート膜、再生セルロース膜等、セルロースや多孔性テフロン(登録商標)膜等を用いることができる。膜の孔のサイズは、対象とする生体関連物質のサイズによって適宜選ばれる。具体的には、膜の孔のサイズは、対象とする生体関連物質よりも大きいサイズの生体関連物質を捕捉するようなサイズに設定される。
フィルタ20の素材は、生体関連物質の特異的吸着が少ないものが望ましい。しかしながら、これに限定されず、生体関連物質を溶解させる溶液中に特異的吸着を抑える添加物を添加したり、素材表面をコーティングしたりしてもよい。特異的吸着を抑える添加物としては、SDSやTweenなどの界面活性剤が挙げられる。
フィルタ20の素材は、生体関連物質の特異的吸着が少ないものが望ましい。しかしながら、これに限定されず、生体関連物質を溶解させる溶液中に特異的吸着を抑える添加物を添加したり、素材表面をコーティングしたりしてもよい。特異的吸着を抑える添加物としては、SDSやTweenなどの界面活性剤が挙げられる。
次に、検体液収容部10に導入される生体関連物質について説明する。
生体関連物質とは、検査の対象となる生体関連物質、例えばDNA,RNA,蛋白質,ペプチド等を含むものである。これらの生体関連物質は、バイオチップ40に固定された対応する生体関連物質プローブと結合又は相互作用することにより、バイオチップ40の特定のプローブに固定される。予め生体関連物質に蛍光色素,電気化学的活性物質,放射性物質,発光性色素等を修飾しておくことにより、バイオチップ40のプローブに固定される生体関連物質を検出することができ、これにより検体中に含まれる生体関連物質の種類と量を見積もることが可能である。
生体関連物質とは、検査の対象となる生体関連物質、例えばDNA,RNA,蛋白質,ペプチド等を含むものである。これらの生体関連物質は、バイオチップ40に固定された対応する生体関連物質プローブと結合又は相互作用することにより、バイオチップ40の特定のプローブに固定される。予め生体関連物質に蛍光色素,電気化学的活性物質,放射性物質,発光性色素等を修飾しておくことにより、バイオチップ40のプローブに固定される生体関連物質を検出することができ、これにより検体中に含まれる生体関連物質の種類と量を見積もることが可能である。
検体液2は、生体から取り出された生体関連物質の他、電気泳動を行うために必要なバッファー液や添加剤から構成される。電気泳動を行うためのバッファー液組成成分としては、例えばトリス−ホウ酸バッファ(TB)、トリス−酢酸バッファ(TA)、塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)等の電解質を用いることができる。また、添加剤は、目的に応じて添加することができ、例えば界面活性剤により非特異的な吸着を抑えることができる。界面活性剤としては、SDSやTweenなどを用いることができる。
次に、図2に基づいて、本発明の第2態様の電気泳動装置について説明する。なお、以下の態様では、同様の構成要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
第2態様の電気泳動装置1は、第1態様のものと同じ構成要素を有するが、フィルタ20aが細長い筒状の形状となっている構成の例示である。図2では、筒状の支持体22a内にフィルタ本体21aが保持されている。
フィルタ20aは、上部に同じく筒状の検体液収容部10aが配置され、その内部の検体液2とフィルタ本体21aとが接触している。さらに、フィルタ20aは、下部が反応液3で満たされた反応液収容部30a内に差し込まれ、フィルタ本体21aと反応液収容部30a内の反応液3とが接触している。
第2態様の電気泳動装置1は、第1態様のものと同じ構成要素を有するが、フィルタ20aが細長い筒状の形状となっている構成の例示である。図2では、筒状の支持体22a内にフィルタ本体21aが保持されている。
フィルタ20aは、上部に同じく筒状の検体液収容部10aが配置され、その内部の検体液2とフィルタ本体21aとが接触している。さらに、フィルタ20aは、下部が反応液3で満たされた反応液収容部30a内に差し込まれ、フィルタ本体21aと反応液収容部30a内の反応液3とが接触している。
支持体22aは、例えば、中空のキャピラリーチューブであってもよい。また、支持体22aの長さ及び太さは、任意に設定してよい。例えば、支持体22aの長さを細長くした場合には、検体液収容部10aと反応液収容部30aとを空間的に離すことができる。
フィルタ20aの上部には、電解質膜51を有する電極50aが配置されている。
フィルタ20aの上部には、電解質膜51を有する電極50aが配置されている。
また、検体液収容部10aは、完全に密閉されている必要はなく、例えば、試験管のようなものに検体液を入れ、電極50aを配置すると共に、フィルタ本体21aを充填したキャピラリー状のフィルタ20aを、検体液2が導入された検体液収容部10a内に差し込む構成であってもよい。この構成でも、検体液収容部10aから生体関連物質を反応液収容部30aに移動させることと、フィルタ20aにより生体関連物質の不要物質を除去することを同時に達成することができる。
次に、図3に基づいて、本発明の第3態様の電気泳動装置について説明する。
第3態様の電気泳動装置1では、バイオチップ40aに複数の電極60が設けられている。このように構成すると、装置の製造を容易にすることができる。
なお、電極60は、複数でなくてもよく、一つであってもよい。また、プローブが固定される基盤そのものが電極であってもよい。このように構成すると、反応液収容部30に電気泳動によって移動してきた生体関連物質が、プローブ固定位置近くまで強制的に移動されるため、プローブと生体関連物質の結合または相互作用の反応を迅速化することができる。
第3態様の電気泳動装置1では、バイオチップ40aに複数の電極60が設けられている。このように構成すると、装置の製造を容易にすることができる。
なお、電極60は、複数でなくてもよく、一つであってもよい。また、プローブが固定される基盤そのものが電極であってもよい。このように構成すると、反応液収容部30に電気泳動によって移動してきた生体関連物質が、プローブ固定位置近くまで強制的に移動されるため、プローブと生体関連物質の結合または相互作用の反応を迅速化することができる。
次に、図4に基づいて、本発明の第4態様の電気泳動装置について説明する。
第4態様のバイオチップ40bは、複数の電気的な貫通孔41を有し、電気的貫通孔41の内部に生体関連物質を検出するためのプローブ分子が固定されている構成である。
電気的な貫通孔41は、バッファー液等を介してバイオチップ40bの表側(電極50側)と裏側(電極60a側)との通電を可能にする貫通孔である。電気的な貫通孔41は、具体的には、板状の基盤に穿設された貫通孔に、セルロース、アガロース、アクリルアミド、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子材料から成るゲルが満たされた構成である。プローブ分子は、水溶性高分子材料に固定されている。
第4態様のバイオチップ40bは、複数の電気的な貫通孔41を有し、電気的貫通孔41の内部に生体関連物質を検出するためのプローブ分子が固定されている構成である。
電気的な貫通孔41は、バッファー液等を介してバイオチップ40bの表側(電極50側)と裏側(電極60a側)との通電を可能にする貫通孔である。電気的な貫通孔41は、具体的には、板状の基盤に穿設された貫通孔に、セルロース、アガロース、アクリルアミド、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子材料から成るゲルが満たされた構成である。プローブ分子は、水溶性高分子材料に固定されている。
また、電気的な貫通孔41は、多孔質材料で形成されてもよい。基盤を多孔質材料で形成することにより、表側と裏側が物理的に貫通する。多孔質材料は、例えば、ガラス、セラミック、プラスチック等を多孔質構造として用いることができる。プローブ分子は、多孔質材料の表面に固定される。
反応液収容部31は、内部に反応液3を保持することができる第1の反応液収容部31aと第2の反応液収容部31bによって構成されている。第1の反応液収容部31aと第2の反応液収容部31bは、これらの間にバイオチップ40bが配置され、互いに隔離されている。反応液3中の精製された生体関連物質は、バイオチップ40bの電気的貫通孔41を通じて往来することができるようになっている。
また、第2の反応液収容部31b内に連通して、電極60aがバイオチップ40bと対向するように配置されている。これにより、電極60aは、第2の反応液収容部31b内の反応液3と接触している。
このような構成であるので、電源装置70によって電極50,60a間に所定極性の電圧が印加されると、検体液収容部10内の生体関連物質は、電気泳動の原理によってフィルタ20を通過し、精製され、一旦、第1の反応液収容部31aに到達する。
第1の反応液収容部31aに到達した精製された生体関連物質は、電気泳動によって、さらにバイオチップ40bの電気的貫通孔41を通過する。電気的貫通孔41を通過する際、生体関連物質の一部が、内部に固定化されたプローブと結合または相互作用反応する。プローブと結合または相互作用反応しない生体関連物質は、第2の反応液収容部31bに移動する。
第1の反応液収容部31aに到達した精製された生体関連物質は、電気泳動によって、さらにバイオチップ40bの電気的貫通孔41を通過する。電気的貫通孔41を通過する際、生体関連物質の一部が、内部に固定化されたプローブと結合または相互作用反応する。プローブと結合または相互作用反応しない生体関連物質は、第2の反応液収容部31bに移動する。
所定時間後に、電源装置70によって電極50,60aに印加する電圧の極性が反転されると、第2の反応液収容部31bに移動した生体関連物質は、電気泳動によって、再びバイオチップ40bの貫通孔41を通過する。貫通孔41の通過の際、生体関連物質は、プローブとの結合または相互作用反応を行う。第4態様の電気泳動装置1では、この極性反転を繰り返し行うことにより、プローブと精製された生体関連物質との反応の効率が高まり、検出の感度及び速度を向上させることができる。
次に、図5に基づいて、本発明の第5態様の電気泳動装置について説明する。
第5態様の電気泳動装置1では、第4態様のバイオチップ40bを用いている。第5態様では、第1の反応液収容部31aにさらに電極60b(第3の電極)が設けられている。電源装置70aは、内部に切替えスイッチ71を有している。このスイッチ71は、電源出力を電極50,60bのいずれかに選択的に接続するものである。
第5態様の電気泳動装置1では、第4態様のバイオチップ40bを用いている。第5態様では、第1の反応液収容部31aにさらに電極60b(第3の電極)が設けられている。電源装置70aは、内部に切替えスイッチ71を有している。このスイッチ71は、電源出力を電極50,60bのいずれかに選択的に接続するものである。
このように構成されているので、第5態様の電気泳動装置1では、まず、スイッチ71が電極50に接続されている状態で電源装置70aによって電圧が印加されると、生体関連物質は検体液収容部10から第1の反応液収容部31aに向けて移動される。そして、生体関連物質がフィルタ20を通過するときに、生体関連物質をフィルタ20によって精製することができる。所定の生体関連物質がフィルタ20を通過した時点で、電源装置70aによってスイッチ71が電極60bに切替えられる。
その後、所定時間毎に、電源装置70aの出力電圧の極性が、電極60a,60bの間で切替えられることにより、生体関連物質を、第1の反応液収容部31aと第2の反応液収容部31bとの間で、バイオチップ40bの電気的貫通孔41を通して効率よく往復移動させることができる。これにより、生体関連物質を、効果的にプローブと反応させることができる。
次に、生体関連物質が核酸である場合を例として、本発明の電気泳動装置の作用について説明する。ここでは、第4態様の電気泳動装置1を例にとって説明する。
図6は、フィルタ20の作用を説明するための原理模式図である。生体から抽出されバイオチップ40b用に調製された検体液中に含まれる核酸4は、図6に示すように、大小様々な大きさの核酸4a,4bから構成されている。
図6は、フィルタ20の作用を説明するための原理模式図である。生体から抽出されバイオチップ40b用に調製された検体液中に含まれる核酸4は、図6に示すように、大小様々な大きさの核酸4a,4bから構成されている。
本出願人は、鋭意研究した結果、大きなサイズの核酸4bは、バイオチップ40bの表面と非特異吸着を起こし易く、バックグラウンドノイズの原因物質となることを突き止めた。
また、核酸サイズの大きな核酸4bがプローブとハイブリダイゼーション反応した場合、核酸サイズが大きいため、他のプローブとの干渉が起こり、他の核酸がハイブリダイゼーションする立体障害となってしまう。このため、核酸サイズの大きな核酸4bは、ハイブリダイゼーションの効率を下げる原因となることが分かった。
また、核酸サイズの大きな核酸4bがプローブとハイブリダイゼーション反応した場合、核酸サイズが大きいため、他のプローブとの干渉が起こり、他の核酸がハイブリダイゼーションする立体障害となってしまう。このため、核酸サイズの大きな核酸4bは、ハイブリダイゼーションの効率を下げる原因となることが分かった。
さらに、本出願人は、バイオチップ40bのプローブの固定されている材料がゲルである場合、大きなサイズの核酸4bがゲル中に非特異的に絡まってしまいバックグラウンドノイズの原因物質となることを突き止めた。
これらのことから、本出願人は、大きなサイズの核酸4bを除去しながらハイブリダイゼーションを行うことにより、バックグラウンドを低減しつつ、ハイブリダイゼーションの効率を上げ、感度を向上させることができることを見出した。
これらのことから、本出願人は、大きなサイズの核酸4bを除去しながらハイブリダイゼーションを行うことにより、バックグラウンドを低減しつつ、ハイブリダイゼーションの効率を上げ、感度を向上させることができることを見出した。
図6に示すように、検体液収容部10に導入された検体(核酸)4は、電気泳動の原理により、フィルタ20を通過しバイオチップ40bに接近する。その際、フィルタ20によって上記の大きなサイズの核酸4b及び夾雑物が除去され、比較的短い核酸4aのみがフィルタ20を通過する。この比較的短い核酸4aはバイオチップ40bに搭載されたプローブと接触して効率よくハイブリダイゼーションすることができると同時に、不都合な非特異的吸着を引き起こさないため、検出の感度が向上する。
また、生体から取り出される核酸物質中に含まれるマイクロRNAは、他の核酸に比べて極めて微量である。このため、従来は、バイオチップ40bに振り掛ける前に、200塩基程度以下の短い核酸成分のみを別処理で抽出する必要があった。しかしながら、電気泳動装置1を用いることにより、このような抽出処理を別途行う必要がなく、検査を簡便に行うことができる。また、従来は、短い核酸成分の抽出の際にロスや分解が発生していたが、電気泳動装置1を用いることにより、このようなロスや分解が生じないため、検出の感度を向上させることができる。このように、電気泳動装置1は、マイクロRNAの検出にも有効である。
以下、本発明の効果をより明確にするために、実施例を用いて説明する。
以下、本発明の効果をより明確にするために、実施例を用いて説明する。
<実施例1>
(電気的貫通孔を有するDNAチップの製造)
SUS304鋼板(縦35mm、横35mm、厚さ0.1mm)の中央部2.1mm×2.1mmの範囲に、直径0.32mmの孔が縦横各方向に0.42mm間隔で12行12列に144個設けられた多孔板を2枚準備した。2枚の多孔板を積層し、対向する各孔に、ポリカーボネート製中空繊維(外径0.28mm、内径0.16mm、長さ100cm)を略平行に通した。次いで、2枚の多孔板の位置が中空繊維の一方の端部から10cmと60cmの位置となるように多孔板の間隔を50cmに広げ、さらに2枚の多孔板及びその間の中空繊維束の周囲を厚さ10mmのポリテトラフルオロエチレン製板で直方体状に囲った。
(電気的貫通孔を有するDNAチップの製造)
SUS304鋼板(縦35mm、横35mm、厚さ0.1mm)の中央部2.1mm×2.1mmの範囲に、直径0.32mmの孔が縦横各方向に0.42mm間隔で12行12列に144個設けられた多孔板を2枚準備した。2枚の多孔板を積層し、対向する各孔に、ポリカーボネート製中空繊維(外径0.28mm、内径0.16mm、長さ100cm)を略平行に通した。次いで、2枚の多孔板の位置が中空繊維の一方の端部から10cmと60cmの位置となるように多孔板の間隔を50cmに広げ、さらに2枚の多孔板及びその間の中空繊維束の周囲を厚さ10mmのポリテトラフルオロエチレン製板で直方体状に囲った。
次に、この囲いの中にカーボンブラック(三菱化学(株)製、MA1000)で着色したポリウレタン樹脂(日本ポリウレタン工業(株)製、ニッポラン4276,コロネート4403)を流し込んだ。引き続き、室温で1週間静置して樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、多孔板とポリテトラフルオロエチレン製板の囲いを取り除き、20mm、20mm、長さ50mmの角柱状の中空繊維配列体を得た。この中空繊維配列体には、その断面の中央部7mm×7mmの範囲に144本の中空繊維が配列されていた。
N,N−ジメチルアクリルアミド:4.5質量部、N,N−メチレンビスアクリルアミド:0.5質量部、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩:0.1質量部、水:95質量部からなる組成の混合溶液を調製した。この混合溶液を、中空繊維配列体の64本の中空繊維の中空部に導入した。
表1にDNAチップに搭載する核酸プローブの塩基配列リストを示す。表1の40種類の各塩基配列のDNAを、前記混合溶液に濃度が5nmol/mlになるように添加して40種類の溶液を作製した。各溶液を、中空繊維配列体の残り80本の中空繊維の中空部に各2本ずつ導入した。次いで、70℃で3時間かけて重合させ、中空繊維の中空部にゲル状物を生成させた。その後、ミクロトームを用いて中空繊維軸と直角方向に、厚みが0.5mmとなるように薄片を切り出した。更にその周囲をトリミングして12mm×12mm×0.5mmのDNAチップ(バイオチップ40b)を得た。
(アガロースゲルを用いたフィルタの製造)
フィルタ20を作製するため、図7に示すポリカーボネート製の枠(支持体22)を用意した。支持体22は、外形が2cm角、厚さ2mmであり、中央部に円形の孔23が設けられている。孔23は直径1.5cmである。円形の孔23の内面は、ゲル状のフィルタ本体21との密着性を向上させるために、粗面加工が施されており、また脱落を防ぐために段24が設けられている。
この支持体22に、熱湯に溶かしたアガロース(5重量%)を流し込み、上下をスライドガラスで挟み込み、アガロースがゲル化し固まるまで放置した。アガロースがゲル化した後、スライドガラスを取り除いてフィルタ20を得た。
フィルタ20を作製するため、図7に示すポリカーボネート製の枠(支持体22)を用意した。支持体22は、外形が2cm角、厚さ2mmであり、中央部に円形の孔23が設けられている。孔23は直径1.5cmである。円形の孔23の内面は、ゲル状のフィルタ本体21との密着性を向上させるために、粗面加工が施されており、また脱落を防ぐために段24が設けられている。
この支持体22に、熱湯に溶かしたアガロース(5重量%)を流し込み、上下をスライドガラスで挟み込み、アガロースがゲル化し固まるまで放置した。アガロースがゲル化した後、スライドガラスを取り除いてフィルタ20を得た。
(電気泳動用カートリッジ)
次いで、図8に示す電気泳動用カートリッジ5を組み立てた。検体液収容部10、第1の反応液収容部31a、第2の反応液収容部31bには、ブチルゴム製の矩形状のパッキン(外形2cm角、厚み2mm、開口部1cm角)を用いた。
フィルタ20は、上述のアガロースゲルフィルタを用いた。
バイオチップ40bは、上述のDNAチップを用いた。
また、検体液収容部10の上側開口と、第2の反応液収容部31bの下側開口を覆うため、半透膜81を用いた。半透膜81には、スペクトラム社製「スペクトロポア」(カットオフ分子量:3500)を用いた。
次いで、図8に示す電気泳動用カートリッジ5を組み立てた。検体液収容部10、第1の反応液収容部31a、第2の反応液収容部31bには、ブチルゴム製の矩形状のパッキン(外形2cm角、厚み2mm、開口部1cm角)を用いた。
フィルタ20は、上述のアガロースゲルフィルタを用いた。
バイオチップ40bは、上述のDNAチップを用いた。
また、検体液収容部10の上側開口と、第2の反応液収容部31bの下側開口を覆うため、半透膜81を用いた。半透膜81には、スペクトラム社製「スペクトロポア」(カットオフ分子量:3500)を用いた。
さらに、これらを挟持して一体化するため、ポリカーボネート製の矩形状のカートリッジハウジング80a,80bを用いた。ハウジング80a,80bは、中央部に矩形の貫通孔が形成されている。
そして、ハウジング80a,半透膜81,検体液収容部10,フィルタ20,第1の反応液収容部31a,バイオチップ40b,第2の反応液収容部31b,半透膜81,ハウジング80bをこの順に積層し、液が漏れ出さないようにハウジング80a,80bをポリカーボネート製のネジ82で固定した。これにより、電気泳動用カートリッジ5を得た。
そして、ハウジング80a,半透膜81,検体液収容部10,フィルタ20,第1の反応液収容部31a,バイオチップ40b,第2の反応液収容部31b,半透膜81,ハウジング80bをこの順に積層し、液が漏れ出さないようにハウジング80a,80bをポリカーボネート製のネジ82で固定した。これにより、電気泳動用カートリッジ5を得た。
(検体液及びバッファー液の調製)
検体の調製は、Mouse PolyA−RNA5μgを出発原料として行った。T7増幅法により転写増幅する際、Cy5−UTPを混在させることにより、転写増幅されるaRNAにCy5を取り込ませた。さらに、Znバッファーによる断片化を行った。これを濃縮し、5μg相当を200μLのバッファー液に溶解させ検体液とした。バッファー液は、2×SSC及び0.5%SDSの混合溶液を用いた。
検体の調製は、Mouse PolyA−RNA5μgを出発原料として行った。T7増幅法により転写増幅する際、Cy5−UTPを混在させることにより、転写増幅されるaRNAにCy5を取り込ませた。さらに、Znバッファーによる断片化を行った。これを濃縮し、5μg相当を200μLのバッファー液に溶解させ検体液とした。バッファー液は、2×SSC及び0.5%SDSの混合溶液を用いた。
(電気泳動用カートリッジへの各液の導入)
上記検体液を検体液収容部10内に注射器で注入した。また、上記バッファー液を反応液収容部31a,31b内にそれぞれ注射器で注入した。
上記検体液を検体液収容部10内に注射器で注入した。また、上記バッファー液を反応液収容部31a,31b内にそれぞれ注射器で注入した。
(ハイブリダイゼーション及び洗浄)
次に、検体液及びバッファー液が導入された電気泳動用カートリッジ5を、図9のようなハイブリダイゼーション用の槽6に取り付け、槽6内をバッファー液で満たした。電気泳動用カートリッジ5は、槽6の中央部に設けられた保持部6aに取付けた。槽6は、保持部6aの両側、すなわち、ハウジング80a側(図中左側)と、ハウジング80b側(図中右側)とに、それぞれバッファー液を保持する第1槽6b,第2槽6cが形成されており、各槽にバッファー液を満たした。
次に、検体液及びバッファー液が導入された電気泳動用カートリッジ5を、図9のようなハイブリダイゼーション用の槽6に取り付け、槽6内をバッファー液で満たした。電気泳動用カートリッジ5は、槽6の中央部に設けられた保持部6aに取付けた。槽6は、保持部6aの両側、すなわち、ハウジング80a側(図中左側)と、ハウジング80b側(図中右側)とに、それぞれバッファー液を保持する第1槽6b,第2槽6cが形成されており、各槽にバッファー液を満たした。
第1槽6b,第2槽6cには、それぞれハウジング80a,80bと対向するように、電極50,60aが取付けられている。各槽6b,6cは、電極50,60aと保持部6a間の幅が35mm、奥行き(図9の上下方向長さ)が70mm、深さ(図9の紙面方向長さ)が50mmである。
また、第1槽6b,第2槽6cには、バッファー液を循環させるための循環装置(図示せず)が取付けられている。循環装置は、熱交換器つき循環器を有しており、槽6内のバッファー液を温度を保持したまま(例えば、55℃)循環させることができる。
また、第1槽6b,第2槽6cには、バッファー液を循環させるための循環装置(図示せず)が取付けられている。循環装置は、熱交換器つき循環器を有しており、槽6内のバッファー液を温度を保持したまま(例えば、55℃)循環させることができる。
槽6内をバッファー液で満たした後、電源装置70によって電極50,60a間に6Vの電圧(電極50が負極)を40分間印加した。負に帯電した検体は、検体液収容部10フィルタ20を通過して、第1の反応液収容部31a内に移動しようとする。このとき、夾雑物や、大きなサイズの生体関連物質がフィルタ20により捕捉され精製される。これにより、精製された生体関連物質、すなわち、比較的サイズの小さい生体関連物質のみがフィルタ20を通過し、第1の反応液収容部31a内に移動する。
さらに、電気泳動により、第1の反応液収容部31a内に移動した生体関連物質は、バイオチップ40bのゲル内部へ泳動する。このとき、ゲルに固定されたプローブに特異的な検査対象の生体関連物質(検体)は、プローブとハイブリダイズしてゲル内に保持される。プローブに相補的でない生体関連物質はプローブとハイブリダイズせず、第2の反応液収容部31bに泳動する。
未ハイブリ検体を除くため、電気泳動用カートリッジ5を、槽6の新しいバッファー液中に、さらに55度で20分間放置し洗浄した。
未ハイブリ検体を除くため、電気泳動用カートリッジ5を、槽6の新しいバッファー液中に、さらに55度で20分間放置し洗浄した。
(蛍光検出)
次いで、三菱レイヨン社製イメージアナライザを用いて、ハイダイゼーションさせたDNAチップ(バイオチップ40b)の各スポットの蛍光強度を定量評価した。露光時間及びCCDカメラの条件を同じにすることで比較できるデータを取得した。
次いで、三菱レイヨン社製イメージアナライザを用いて、ハイダイゼーションさせたDNAチップ(バイオチップ40b)の各スポットの蛍光強度を定量評価した。露光時間及びCCDカメラの条件を同じにすることで比較できるデータを取得した。
(比較例1)
上記のアガロースゲルを用いたフィルタ20及び第1の反応液収容部31bを使用せずに、図10に示す構成の電気泳動用カートリッジを使用して、実施例1と同様のハイブリダイゼーション処理を行った。
上記のアガロースゲルを用いたフィルタ20及び第1の反応液収容部31bを使用せずに、図10に示す構成の電気泳動用カートリッジを使用して、実施例1と同様のハイブリダイゼーション処理を行った。
図11は、実施例1及び比較例1の蛍光強度の測定結果から、40種類の遺伝子プローブを搭載した各スポットの蛍光強度プロファイルをプロットしたグラフである。
また、図12は、遺伝子プローブを搭載していない全ブランクスポットの平均蛍光強度を示すグラフである。図13は、遺伝子プローブを搭載したスポットのうち、蛍光強度の強い上位5つのプローブの平均値を示すグラフである。
また、図12は、遺伝子プローブを搭載していない全ブランクスポットの平均蛍光強度を示すグラフである。図13は、遺伝子プローブを搭載したスポットのうち、蛍光強度の強い上位5つのプローブの平均値を示すグラフである。
図12から分かるように、ブランクスポットの平均蛍光強度(すなわちブランクノイズ)は、フィルタ20を使用した場合(実施例1)には741であり、フィルタ20を使用しなかった場合(比較例1)には4079であった。このように、フィルタ20を使用することにより、ブランクノイズを略1/5.5に低減することができた。
図13から分かるように、遺伝子プローブを搭載したスポットの上位5つの平均蛍光強度は、フィルタを使用した場合(実施例1)には33500であり、フィルタ20を使用しなかった場合(比較例1)には28500であった。このように、フィルタ20を使用することにより、ハイブリダイゼーションの効率を1.2倍程度向上させることができた。
また、図11から分かるように、ハイブリダイゼーションによる蛍光強度が10000以下のプローブに関しては、フィルタを使用しなかった場合(比較例1)には、数千程度のブランクノイズに埋もれて精度良く測定できていなかったが(例えば、スポット11,13,26等)、フィルタを使用した場合(実施例)には、数千程度の低い強度のスポットに関しても精度良く測定することができた。
1‥電気泳動装置、2‥検体液、3‥反応液、4‥核酸、
5‥電気泳動用カートリッジ、
6‥槽、6a‥保持部、6b,6c‥槽、
10,10a‥検体液収容部、
20,20a‥フィルタ、21,21a‥フィルタ本体、
22,22a‥支持体、
30,30a,31‥反応液収容部、
31a‥第1の反応液収容部、31b‥第2の反応液収容部、
40,40a,40b‥バイオチップ、41‥電気的貫通孔、
50,50a,60,60a,60b‥電極、
70,70a‥電源装置、71‥切替えスイッチ、
80a,80b‥カートリッジハウジング、
81‥半透膜、82‥ネジ
5‥電気泳動用カートリッジ、
6‥槽、6a‥保持部、6b,6c‥槽、
10,10a‥検体液収容部、
20,20a‥フィルタ、21,21a‥フィルタ本体、
22,22a‥支持体、
30,30a,31‥反応液収容部、
31a‥第1の反応液収容部、31b‥第2の反応液収容部、
40,40a,40b‥バイオチップ、41‥電気的貫通孔、
50,50a,60,60a,60b‥電極、
70,70a‥電源装置、71‥切替えスイッチ、
80a,80b‥カートリッジハウジング、
81‥半透膜、82‥ネジ
Claims (10)
- 生体関連物質を含む検体液を導入するための検体液収容部と、
該検体液収容部と連通して配置されたフィルタと、
該フィルタを介して前記検体液収容部と連通する反応液収容部と、
該反応液収容部と連通して配置された、生体関連物質を検出するためのバイオチップと、
前記フィルタを挟んで前記検体液収容部側と前記反応液収容部側にそれぞれ配置され、生体関連物質を前記検体液収容部と前記反応液収容部との間で前記フィルタを通過させて電気泳動させるための一対の電極と、を備え、
前記フィルタは、生体関連物質が通過するときに所定の生体関連物質を捕捉して精製することを特徴とする電気泳動装置。 - 前記フィルタは、所定の大きさよりも大きな生体関連物質を捕捉することを特徴とする請求項1に記載の電気泳動装置。
- 前記フィルタは、水溶性高分子で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の電気泳動装置。
- 前記電極は、半透膜又は電解質膜を介して前記検体液収容部内又は前記反応液収容部内と連通することを特徴とする請求項1に記載の電気泳動装置。
- 前記反応液収容部側に配置された電極は、前記バイオチップに設けられたことを特徴とする請求項1に記載の電気泳動装置。
- 前記バイオチップは、前記反応液収容部内に面する電気的貫通孔を有し、
該電気的貫通孔は、その内部に生体関連物質を検出するためのプローブが固定されていることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動装置。 - 前記反応液収容部は、前記バイオチップと前記フィルタとの間に第1の反応液収容部と、前記バイオチップを挟んで前記第1の反応液収容部と反対側に第2の反応液収容部と、を有し、
前記反応液収容部側に配置された電極は、前記バイオチップよりも前記第2の反応液収容部側に配置されたことを特徴とする請求項6に記載の電気泳動装置。 - 生体関連物質は、核酸であることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動装置。
- 検体液収容部と、該検体液収容部と連通して配置されたフィルタと、該フィルタを介して前記検体液収容部と連通する反応液収容部と、該反応液収容部と連通して配置された生体関連物質を検出するためのバイオチップと、前記フィルタを挟んで前記検体液収容部側と前記反応液収容部側にそれぞれ配置された一対の電極と、を備えた電気泳動装置を用いて生体関連物質を検出する方法であって、
前記検体液収容部に生体関連物質を含む検体液を導入する工程と、
前記一対の電極に電圧を印加して、生体関連物質を前記検体液収容部から前記フィルタを通過させて前記反応液収容部に電気泳動させ、前記フィルタに所定の生体関連物質を捕捉させて精製する精製工程と、
前記反応液収容部に移動した生体関連物質を前記バイオチップと接触させる工程と、を含むことを特徴とする生体関連物質検出方法。 - 前記精製工程では、前記フィルタに所定の大きさよりも大きな生体関連物質を捕捉させることを特徴とする請求項9に記載の生体関連物質検出方法。
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WO2020226215A1 (ko) * | 2019-05-09 | 2020-11-12 | (주)크레용테크놀러지즈 | 이온 전도성 필름을 이용한 전기 영동 방식의 생체 시료 염색 방법 및 염색 장치 |
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2007
- 2007-08-03 JP JP2007203304A patent/JP2009036719A/ja active Pending
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KR20210046721A (ko) * | 2019-05-09 | 2021-04-28 | (주)크레용테크놀러지즈 | 이온 전도성 필름을 이용한 전기 영동 방식의 생체 시료 염색 방법 및 염색 장치 |
CN112740013A (zh) * | 2019-05-09 | 2021-04-30 | 科来旺科技公司 | 使用离子导电膜对生物样本进行电泳染色的方法和设备 |
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