以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。図1に示すように、LCoS型位相変調装置1は、LCoS型空間光変調器2と、LCoS型空間光変調器2を電圧で駆動する駆動装置3と、駆動装置3に後述する所望パターン13などのデータを送信する制御装置4とを備える。
図2に示すように、LCoS型空間光変調器2は、シリコン基板21と、スペーサー26を介してシリコン基板21に接着されるガラス基板25とを有する。シリコン基板21とガラス基板25との間には、液晶分子28からなる液晶層27が充填されている。シリコン基板21には複数の画素電極22と、各画素電極22に与える電圧を制御する回路(図示せず)とが形成されており、画素電極22上には配向膜23が形成されている。ガラス基板25は、対向電極24と、配向膜23とを備えている。対向電極24は、液晶層27を介して画素電極22と対向している。液晶層27の液晶分子28は、平行配向、垂直配向、もしくはハイブリッド配向になるように形成されている。LCoS型空間光変調器2は、画素電極22がアルミニウムで構成されており、入射光を反射させるミラーとしても機能する。尚、1つの画素電極22が、位相変調を行う際の1画素に対応する。
各画素電極22の電圧を制御する回路(図示せず)は、例えば、アクティブマトリクス回路である。アクティブマトリクス回路では、各画素電極22にトランジスタとコンデンサを配し、さらにトランジスタには画素電極22選択のための、行方向に伸びたゲート信号線と、アナログ電圧信号を供給するための、列方向に伸びたデータ信号線が接続されている。ゲート信号線にHi信号を印加して選択された画素電極22のコンデンサに、データ信号線に印加されたアナログ電圧信号が記録されることにより、当該画素電極の電圧を制御する。選択するデータ線とゲート線とを順次切り替えることにより、全ての画素電極22に所定の電圧を入力することができる。
図3(A)−3(C)に示すように、画素電極22に任意の電圧を印加し液晶分子28を回転させる。図3(A)は画素電極22と対向電極24との電位差がない場合の液晶分子28の状態を表している。図3(B)は当該電位差が低い状態、図3(C)は、当該電位差が大きい状態を表している。偏光成分に対する屈折率が電圧によって変化するため、当該光成分の位相が変調される。図8を参照して後述するように、画素電極22が動作可能な電圧範囲はP−Sであるが、本実施の形態では、画素電極22には動作電圧範囲P−S中の使用電圧範囲Q−R内で電圧を印加している。
LCoS型空間光変調器2を用いて光の位相を変調するには、液晶の配向方向に対して平行な直線偏光をガラス基板25側から入射させる。光はガラス基板25から入射して液晶層27を伝搬し、画素電極22で反射し、再び液晶層27を伝搬してガラス基板25から出射する。光は液晶層27内を伝搬中に位相の変調を受ける。各画素電極22で位相を変調することにより、光の位相分布を制御することができる。従って、LCoS型空間光変調器2は波面を制御できる。
各画素は固有の電圧依存性位相変調特性、及び、電圧非依存性位相変調特性を有している。本実施の形態では全T個の画素のそれぞれが、その電圧依存性位相変調特性に従い、r個のグループのいずれかに所属している。(ここで、T、rは、T>0,r>0,T>rを満足する正の整数である。例えばrは20である。)従って、各グループには位相変調量が近似した画素が所属している。
図1に示すように、制御装置4は、例えばパーソナルコンピュータであり、中央処理装置41と、通信装置42と、メモリ43と、HDD44とを備える。HDD44は、所望パターン13を格納している。中央処理装置41は、LCoS型位相変調装置1全体を判断するためのものである。
所望パターン13は、画素の位置情報と、当該画素において達成させたい所望の位相変調量を示す値(以下、画素入力値という)を全画素に関して有している。所望の位相変調量を示す値は、全階調数がN(0からN−1)のデジタル信号であり、本実施の形態ではN=256である。0からN−1までの全N階調の画素入力値が0から2πまでの1周期分の位相変調量を示す。
LCoS型位相変調装置1で位相変調を行う場合には、中央処理装置41は、所望パターン13をHDD44からメモリ43に読み出す。中央処理装置41は、所望パターン13を入力データとして通信装置42を介して駆動装置3に送信する。
駆動装置3は、通信装置33と、処理装置31と、加算装置35と、LUT処理装置36と、画素位置検出装置37と、D/A(デジタルアナログ)回路32と、RAM38と,RAM39とを有する。D/A回路32は駆動部321を備える。RAM38は、補正パターン12を格納している。
駆動装置3は、後述する図9のフローチャートが示すプログラムを図示せぬROMに格納している。処理装置31が、このプログラムを駆動装置3の図示せぬROMから読み出して実行することによりLCoS型位相変調装置1全体を判断して位相変調処理を実行する。
補正パターン12は、電圧非依存性歪みを補正するためのものである。補正パターン12は、画素の位置情報と、当該画素において画素入力値に対して加算すべき値(以下、画素補正値という)を全画素に関して有する。画素補正値も全階調がN(0からN−1)のデジタル信号である。0からN−1までの全N階調の画素補正値が0から2πまでの1周期分の位相補正量を示す。
RAM39は、1個のLUTマップ15と、r個(rは正の整数)のLUT11とを格納している。LUTマップ15は、各画素がr個のグループのうちのどのグループに所属しているかを示すものである。r個のLUT11は、全r個のグループに1対1に対応している。各LUT11は、対応するグループに所属する画素の電圧依存性位相変調特性を補正するためのものである。各画素の電圧依存性位相変調特性を、その画素が所属するグループに対応するLUT11によって補正することにより、各画素の電圧依存性位相変調特性の非線形性を線形に補正でき、かつ、電圧依存性位相変調特性の画素毎のバラツキを補正することができる。
通信装置33は、制御装置4から所望パターン13などのデータを受信し、処理装置31に転送する。処理装置31は、所望パターン13に基づきLCoS型空間光変調器2を駆動するのに必要な、垂直同期信号と、水平同期信号などを含むデジタル制御信号を発生させる。また並行して、処理装置31は、所望パターン13を加算装置35に転送する。さらに並行して、処理装置31は、所望パターン13における画素の位置情報を画素位置検出装置37に出力する。
加算装置35は、各画素毎に、所望パターン13の画素入力値と、補正パターン12の画素補正値とを足し合せ、その加算結果を、当該画素に対応する制御入力値Aと設定する。上述のように、画素入力値と、画素補正値とは、共に、全階調数がN(0からN−1)のデジタル信号であり、本実施の形態ではN=256である。ここで、加算結果の値がNを超える場合には、さらに加算結果に対して位相折り畳み処理が施され、その結果を制御入力値Aとする。即ち、制御入力値Aは、位相変調量に対応し、0からN−1までの全N階調の制御入力値Aが位相変調量の1周期分(2π(rad))を示す。従って、加算装置35は、制御入力値Aの位相折り畳み処理において、上記の加算結果が負の値もしくは255以上の値となった場合には、加算結果を256で割った余りを制御入力値Aと設定する。例えば、上記の加算結果が512のときには、制御入力値Aは0となる。また、加算結果が384のときには制御入力値Aは128となる。なお、加算結果が負の値を256で割った余りを求めるには、まず、当該負の値の絶対値を求め、次に、当該絶対値の値と足しあわせると足しあわせた結果が256の整数倍となる数のうち最小の正の値を制御入力値Aとすればよい。例えば、加算結果が−64となったら、制御入力値Aは192である。加算装置35は、各画素の制御入力値Aを当該画素の位置情報と共にLUT処理装置36へ送信する。
画素位置検出装置37は、所望パターン13が有する画素の位置情報に基づいて、LUTマップ15を参照して、各画素グループのグループ番号を特定する。画素位置検出装置37は、各画素についてその位置情報と、特定したグループ番号に対応するLUT11(即ち、当該画素の位置情報に対応したLUT11)とを、LUT処理装置36に転送する。
LUT処理装置36は、各画素に対して、当該画素の位置情報を共に受け取ったLUT11を参照して、当該画素の位置情報と共に受け取った制御入力値AをDA入力値Bに変換する。ここで、DA入力値Bは全階調数がM(0からM−1)のデジタル信号である。ここで、Mは、M>Nを満たす整数であり、本実施の形態ではM=4096である。LUT処理装置36は、各画素のDA入力値Bを当該画素の位置情報と共に駆動部321に送信する。
駆動部321は、各画素に対して、DA入力値Bを、動作可能な所定の使用電圧範囲(Q−R)内の電圧値を示すアナログ信号Cに変換し、LCoS型空間光変調器2の各画素をアナログ信号Cが示す電圧値の駆動電圧にて駆動する。
ここで、図8に示すように、0から4095の全4096階調のDA入力値Bが使用電圧範囲Q−Rに対して線形に割り当てられている。駆動部321は、0から4095のいずれかの値であるDA入力値Bを、使用電圧範囲Q−R(最小値Qから最大値R)内の駆動電圧値を示すアナログ信号Cに変換する。
LUT処理装置36は、各画素毎に、制御入力値AをLUT11にてDA入力値Bに変換し、更に、駆動部321が、DA入力値Bを使用電圧範囲Q−R内の電圧値を示すアナログ信号Cに変換してLCoS型空間光変調器2に電圧を印加する。
LUTマップ15は、後述する方法により、LCoS型位相変調装置1に備えられたLCoS型空間光変調器2の特性に応じて作成されたものである。図4−6は、LUTマップ15の例である。説明を分かりやすくするため、図4では、r=4、図5では、r=8、図6ではr=5の場合を例としている。
図4,5,6に示すLUTマップ15の例では、太線は全画素を含む画素領域に対応し、細線で区切られた1つの領域は1画素に対応している。図4では、各画素に対して、A−Dのグループ番号のうちいずれかが付されている。図5では、各画素に対してA−Hのグループ番号のいずれかが付されている。 図6では、各画素に対してA−Eのグループ番号のいずれかが付されている。なお、図5,6では、破線で囲まれた領域内に位置する画素には同一のグループ番号が付されている。
図7はr個のLUT11のうちの1つの例を示す。図7に示されるように、LUT11は、制御入力値Aが採りうる値ta(第1の値)と、その制御入力値Aに対してDA入力値Bが採るべき値tb(第2の値)との対応関係を示している。
また、図7には、DA入力値Bが採る値tbが駆動部321によって対応する電圧値に変換され、当該LUT11が対応するグループに所属する画素に印加されることによって当該画素が達成する位相変調量φの平均値φaveも示している。ただし、図7のφaveに関する値はLUT11を用いて実際に測定を行った場合の位相変調量の平均値を示すものであり、LUT11は、φaveに対応するデータを有してはいない。DA入力値Aがとる値taと位相変調量の平均値φaveとは線形関係を有している。しかも、全r個のLUT11において、制御入力値Aがとりうる値taの各値に対応する位相変調量の平均値φaveは、互いに略等しくなるように、DA入力値Bがとるべき値tbが定められている。具体的には、ta=0でφave=1.500、ta=1でφave=1.508などとなるようにDA入力値がとるべき値tbが定められている。
従って、各グループに属する画素について、制御入力値Aを対応するLUT11にてDA入力値Bに変換し、さらにこのDA入力値Bをアナログ信号Cに変換して電圧を印加すれば、各グループに属する画素において得られる位相変調量φは、制御入力値Aに対し略線形でかつ、グループ毎のバラツキが小さいものとなる。
補正パターン12、及び、LUT11、LUTマップ15は、LCoS型位相変調装置1の起動時に、駆動装置3の図示せぬROMから、それぞれRAM38、RAM39に読み出す。あるいは、補正パターン12、及び、LUT11、LUTマップ15は、制御装置4のHDD44に保存されており、LCoS型位相変調装置1の起動時に、駆動装置3に転送されて、それぞれ、RAM38、RAM39に保持するようにしてもよい。また、RAM38,39を統合して単一のRAMとし、この単一のRAMが補正パターン12、LUTマップ15、及びLUT11を保持するようにしてもよい。
上記構成を有するLCoS型位相変調装置1は、図9に示すように動作して位相変調を行なう。まず、ステップ1で、通信装置33は、制御装置4から所望パターン13を受信し処理装置31に転送する。ステップ2では、処理装置31は画素位置検出装置37に各画素の位置情報を送信する。ステップ3では、画素位置検出装置37は、各画素の位置情報に基づきLUTマップ15を参照し、各画素が所属するグループのグループ番号を特定する。ステップ4では、画素位置検出装置37は、各画素の位置情報と、各画素に対して特定したグループ番号に対応するLUT11をLUT処理装置36に送信する。
また、制御装置31は、ステップ2と並行して、ステップ5で、所望パターン13を加算装置35に送信する。ステップ6では、加算装置35は、各画素毎に所望パターン13における画素入力値と、補正パターン12における補正入力値とを足し合わせ、必要に応じて足し合わせた値の位相折り畳みを行なう。このようにして求めた値を当該画素の位置情報に対応する制御入力値Aとして設定する。ステップ7において、LUT処理装置36は、各画素毎にステップ4にて画素位置検出装置37から受信したLUT11を参照して、制御入力値AをDA入力値Bに変換する。ステップ8では、駆動部321が、DA入力値Bをアナログ信号Cに変換して、LCoS型空間光変調器2へ出力する。
処理装置31は、ステップ1,5と並行して、ステップ9で、LCoS型空間光変調器2の駆動に必要なデジタル信号を生成する。
ステップ10では、LCoS型空間光変調器2は、ステップ8にて駆動部321から受け取ったアナログ信号Cと制御装置31から受け取ったデジタル信号とに基づいて入射光の位相を変調する。
LCoS型位相変調装置1を作成する際には、LCoS型位相変調装置1が備えるLCoS型空間光変調器2に対応して駆動部321、LUTマップ15、LUT11、補正パターン12を設定する。その設定方法について以下説明する。なお、設定の順番としては、まず、D/A回路32の使用電圧範囲Q−Rの最小・最大電圧Q,Rを設定し、次に、LUTマップ15を作成し、その後、LUTマップ15に基づいてLUT11を作成し、最後に、補正パターン12を作成する。
図10を参照して、使用電圧の最小値Qおよび最大値Rの設定方法を説明する。まず、ステップ21では、図11に示す偏光干渉計60を用いて、全画素の内任意に選択した複数の画素(例えば、5個の画素)に対して電圧依存性の位相変調特性を測定する。偏光干渉計60はキセノンランプ61と、コリメートレンズ62と、偏光子63と、ビームスプリッター64と、LCoS型位相変調装置1と、検光子65と、イメージレンズ66,67と、帯域フィルター68と、イメージセンサー69とからなる。ここでは、駆動部321は、図12に示すように、DA入力値0−4095を、LCoS型空間光変調器2に印加可能な動作電圧範囲(Q‐R)に対して線形に割り当てるように設定されている。LCoS型空間光変調器2によって位相変調された光が、イメージセンサー69によって測定される。偏光子63の偏光方向は、LCoS型空間光変調器2の液晶分子の配向方向に対し45°ずれている。このため、LCoS型空間光変調器2に入射される光(入射光)は、液晶分子28の配向方向に対し45°ずれる。入射光が液晶層27を透過することによって、入射光の位相変調される成分(液晶分子28の配向方向に対し平行な成分)と位相変調されない成分との間には位相差が生じる。従って、LCoS型空間光変調器2で反射した光(反射光)の偏光方向は、入射光の位相変調される成分の位相変調量に依存する。また、検光子65の配向方向は偏光子63に対して90°ずれており、検光子65を透過する光の強度は反射光の偏光方向に依存するため、イメージセンサー69の測定結果により、電圧依存性の位相変調特性が強度情報Iとして測定される。ある画素におけるイメージセンサー69によって測定される強度情報Iから、例えば、以下の式を用いて位相変調量φが求まる。
ここで、I
maxは、LCoS型空間光変調器2に印加する電圧を動作電圧範囲内で変化させて測定される強度情報の最大値であり、I
minは、LCoS型空間光変調器2に印加する電圧を動作電圧範囲内で変化させて測定される強度情報の最小値である。
ステップ22では、イメージセンサー69の測定結果に基づいて、DA入力値‐電圧依存性位相変調特性を各画素について求める。図12は、画素5点に対して得られたDA入力値‐電圧依存性位相変調量の関係を示すグラフである。図12より、以下の(A)‐(D)が確認できる。(A)位相変調量が2π(rad)以上ある。(B)電圧が変化しても位相変調量がほとんど変化しない領域(DA入力値が0−800の範囲)がある。(C)画素5点の位相変調量が異なる。(D)位相変調量がDA入力値に対して非線形である。
LCoS型空間光変調器2において、位相変調量が2π(rad)分あれば、位相の折り畳み処理を行うことで2π(rad)以上の位相変調量を実現することができる。従って、液晶に印加する電圧の駆動範囲は、位相変調量が2π(rad)確保できる範囲であれば十分である。しかし、実際には歪みの補正を行う際には、各画素の位相変調量のバラツキを考慮してある程度の余裕が必要であるため、位相変調量を2π(rad)以上確保できる値として、本実施の形態では3.5π(rad)に設定する。ここで、位相の折り畳み処理とは、制御入力値の位相折り畳みと同様に、位相が2π(rad)以上か0より小さい場合に、位相を2π(rad)で割った値に置き換えることである。
具体的には、ステップ23において、LCoS型空間光変調器2に印加する使用電圧の最小電圧Qを液晶が動作するしきい値電圧以上になり、最大電圧Rが液晶の動作が飽和する飽和電圧以下になり、かつ、使用電圧の最小電圧Qと最大電圧R間の位相変調範囲がおよそ3.5πになるように設定する(図12)。このように設定した使用電圧の最小電圧Qと最大電圧Rとの範囲に対してDA入力値Bを4096階調で対応させる。図13は、最小電圧Qと最大電圧Rをこのような条件で設定した場合の上記5点に関するDA入力値Bと位相変調量と使用電圧範囲(Q‐R)との関係を示している。LCoS型空間光変調器2の動作可能電圧範囲全体を使用する図12の場合では、位相変調量が0.5π‐4π(rad)までの範囲に対してDA入力値Bは、約1100‐1800のおよそ700階調であった。これに対して、図13では、位相変調量が同じ0.5π‐4π(rad)までの範囲に対して、4096段階の電圧制御が可能となっている。従って、同じ位相変調量の範囲に対して、DA入力値Bは約5倍の階調を持つことになり、高い精度で電圧を制御できることになる。言い換えれば、最小最大電圧Q,Rを設定することで、DA入力値Bに対する使用電圧範囲のスケール変換を行なっていることになる。こうして、駆動部321は、0‐4095のDA入力値Bを使用電圧範囲Q−Rの電圧値を示すアナログ信号Cに線形変換するように設定される。
次に、図14を参照してLUTマップ15の作成方法を説明する。LUTマップ15は、D/A回路32の使用電圧範囲Q−Rの最小・最大電圧Q,Rを設定した後に作成される。
ステップ31では、図11で示した偏光干渉計60で、DA入力値Bと電圧依存性の位相変調量との関係をLCoS型空間光変調器2の各画素に対して求める。具体的には、全画素に対して同じ値のDA入力値Bを印加して各画素の位相変調量を計測する。即ち、全画素に対して同じ値のDA入力値Bを駆動部321にてアナログ信号Cに変換して、このアナログ信号CにてLCoS型空間光変調器2を駆動して、位相変調量を計測する。このDA入力値Bの値を0から4095まで変化させて計測を繰り返す。あるいは、DA入力値Bについて0から4095の全ての値に関してではなく、間隔を置いて測定してもよい。
ステップ32では、各画素に対してステップ31で求めたDA入力値−位相変調特性を元に、位相変調量(φ)とDA入力値(t
b)との関係を最小二乗法などを用いて多項式で近似する。例えば、DA入力値をt
b
、位相変調量をφとおき、多項式としてK次のべき多項式を用いる場合には、多項式は、(3)式のように表される。
(3)式を求めることによって、DA入力値(tb)と位相変調量(φ)との関係を、光源やイメージセンサなどによる測定ノイズの影響を軽減して得ることができる。また、DA入力値Bを全ての値に関して測定せず、間隔を置いて測定した場合には、測定しなかったDA入力値Bに対する位相変調量を(3)式から推定できる。このようにして、全ての画素に対してそれぞれDA入力値Bと位相変調量φとの関係(3)を求める。
ステップ33では、DA入力値Bと、当該DA入力値Bの入力により各画素において得られた位相変調量φを全画素に関して平均した値との関係を求める。具体的には、まず、全ての画素に関する位相変調量の平均値をDA入力値B毎に求める。これにより、DA入力値Bと、位相変調量の平均値φ
aveとの関係が求まる。この関係を近似式で求める。例えば、K次の多項式で求めた場合には、DA入力値Bをt
b,ave(φ)として、(4)式のように求まる。
ステップ34では、(4)で求めた、平均した位相変調量に対するDA入力値t
b、ave(φ)と、DA入力値t
b(φ)との最小2乗誤差(RMS)値ε
1(以下、第1の最小2乗誤差値という)を、式(5)より画素毎に求める。
次に、全画素の内、第1の最小2乗誤差(RMS)値ε1が最も大きい画素(最大値画素)を見つける。最小2乗誤差(RMS)値ε1が最も大きい画素は、当該画素の位相変調量φが位相変調量の全画素の平均値と最も離れている画素であると判断できる。
ステップ35では、最大値画素のDA入力値(以下、t
MAX(φ)という)と、DA入力値t
b(φ)との最小2乗誤差(RMS)値ε
2(以下第2の最小2乗誤差値)を、式(6)を用いて画素毎に求める。
ステップ36では、全画素について求めた第2の最小2乗誤差(RMS)値ε2の最大値を求める。一方、全画素について求めた第2の最小2乗誤差(RMS)値ε2の最小値は0である。最大値画素ではtb(φ)=tMAX(φ)となるからである。そして、この第2の最小2乗誤差(RMS)値ε2の最大値と最小値との間をr個の区間に等間隔で分ける。次に、区間毎に当該区間内に最小2乗誤差値ε2を持つ画素を1つのグループとしてまとめる。このようにして、1つの区間に対して1つのグループを構成していき、全ての画素を20のグループに分配する。このように構成された、画素と、その画素の属するグループとの関係をLUTマップ15に保存する。
以上のように、電圧依存性位相変調量特性を示す量ε2が同一の区間内に存在する画素を1つのグループとしてまとめることによりLUTマップ15が構成される。従って、電圧依存性位相変調特性の近似した画素を1つのグループにまとめることができる。
図4は、互いに近似する電圧依存性位相変調特性を有する画素が、全画素領域内に略均一に分散したようなLCoS型空間光変調器2に対して作成されたLUTマップ15の例である。グループA−Dに属する画素が全画素領域に略均一に分布している。図5は、近接した画素が近似した特性を有しているようなLCoS型空間光変調器2に対して作成されたLUTマップ15の例である。破線で囲まれた領域内の画素が互いに近接した特性を有するため、同一のグループに属している。
また、LCoS型空間光変調器2の位相変調特性によっては、図6に示すグループA、B、Cのように、近接した画素が同一のグループに含まれるだけではなく、離れた画素領域においても同じグループに含まれる場合もある。
尚、上述のグループ化の方法は、以下[1]−[5]のように変更してもよい。
[1]上記の方法で画素をグループ分けする場合には、LCoS型空間光変調器2の特性によっては全画素はr個のグループに均一に分配されていない場合がある。即ち、各グループに属する画素の個数がT/rから大きくずれる場合があり得る。これに対し、本方法[1]によれば、全画素をr個のグループに略均一に分配することができる。即ち、各グループに属する画素の個数を略T/rとすることができる。具体的には、ステップ36におけるグループ化を以下のように変更する。まず、全画素について得られた第2の最小2乗誤差(RMS)値ε2を昇順(または降順)に並べる。即ち、全画素分の最小2乗誤差(RMS)値ε2が並んだ列を作成する。この列を略一定の間隔で区切り、全体でr個の区間を構成するようにする。この結果、1つの区間に含まれる画素の数がT/rに略等しくなり、互いに略等しくなる。
[2]予め基準値tMAX(φ)を決めておいてもよい。この場合には、ステップ33,34は実行しない。
[3]LCoS型位相変調器2の製造過程において、所定の画素が他の画素に比べて著しく性能が異なることがわかっているような場合には、当該所定の画素が第1の最小2乗誤差(RMS)値ε1のうちで最も大きい値を持つ。その場合には、当該画素に対して得られた(3)式を基準値tMAX(φ)として設定すればよい。この場合にも、ステップ33,34は実行しない。
[4]ステップ31において、ある1つの値(例えば最小値0)のDA入力値Bに対する位相変調量φのみを各画素毎に求めるのでもよい。ステップ32からステップ35までの処理は行わず、ステップ36において、測定した位相変調量φを基に、グループ化を行う。例えば、全画素の位相変調量φを昇順(または降順)に並べる。即ち、全画素の位相変調量φが並んだ列を作成する。この位相変調量φの列を一定の間隔で区切りr個の区間を構成する。従って、1つの区間には、位相変調量φが、T/r個だけ並ぶことになる。同一の区間に含まれる位相変調量φを達成した画素を同一のグループ内のものとする。従って、同一のDA入力値Bに対して互いに近似した位相変調量を達成したT/r個の画素を同一のグループに所属させることができる。各グループに互いに略等しい個数の画素を分配することができる。
また、全画素の位相変調量φを昇順、又は、降順に並べる代わりに、全画素の位相変調量のうち最大値と最小値との間を長さの等しいr個の区間に分けてもよい。位相変調量φが同一の区間に値をもつ画素を同一のグループとして構成する。この場合には、1つのグループに属する画素の個数はT/r個から大きくずれる可能性がある。
[5]ステップ32において、平均した位相変調量に対するDA入力値t
b,ave(φ)を用いるのではなく、予め決められた特定の画素のDA入力値t
b,0(φ)に対して、第1の最小2乗誤差(RMS)値ε
1’を以下の式より求めても良い。尚、このときには、ステップ33は行なわない。
尚、上記の実施の形態では、スカラー量子化を用いてグループ化を行なったが、グループ化の方法はこれに限定されない。例えば、ステップ31において、全ての画素に関する式(3)を求めた後、上記実施例以外のスカラー量子化を用いたほかの方法や、ベクトル量子化を用いて特性の近いもの同士をr個のグループに分けるようにしてもよい。
図15を参照して、LUT11の作成方法を説明する。まず、ステップ41では、ステップ31と同様に、図11で示した偏光干渉計60で、DA入力値Bと電圧依存性の位相変調量との関係をLCoS型空間光変調器2の各画素に対して求める。ステップ42では、ステップ41で求めた測定値を元に、各画素に対して、DA入力値‐電圧依存性位相変調特性を求める。結果は、上述の図13と同じになり、非線形性を有し、かつ、画素毎にバラツキがある。
ステップ43では、各画素に対して、得られたDA入力値‐電圧依存性位相変調特性を元に画素別LUTを作成する。即ち、(3)式を求めた場合と同様に(7)式を求める。
ここで、式中の添字(1)は、一回目の測定に基づいて求めた近似多項式における値であることを表している。それ以外は、式(3)と同じものである。
このように、DA入力値Bと位相変調量との関係を示す近似式を全画素に対して求める。一方、制御入力値Aと位相変調量との関係が線形で、かつ、0.0−2.0π(rad)を256段階の制御入力値Aで表わすために、制御入力値をt
a(1)とし、位相変調量φとの関係を、以下のように表す。
ここで、t
a(1)は0から255までの整数値であり、constはオフセット値である。このオフセット値は全ての画素で式(8)が実現できる同一の値に設定する。式(8)を式(7)に代入し制御入力値t
a(1)とt
bとの関係を求める。この際、t
bは整数であるため四捨五入(または、切り捨て、切り上げ)をする必要がある。四捨五入の操作をROUNDで表すと、t
a(1)とt
bとの関係は以下のようになる。
ta(1)の値0‐255に対して(9)で求まるtbの値を対応させることで1つの画素に対する画素別LUTが作成される。かかる画素別LUTを全画素に対してそれぞれ求める。
ステップ44では、上記のように作成された画素別LUTをHDD44に保存する。画素別LUTはグループ毎のLUT11を求めるために一時的に使用するものである。HDD44に保存された画素別LUTは、以下の処理において、画素位置検出装置37が特定した画素の位置に対応する画素別LUTがHDD44から読み出され、駆動装置3のRAM39に転送される。上記の画素別LUTは、干渉計の干渉強度出力から位相を計算によって求めている。この際、測定した干渉強度の最大値と最小値を用いるが、これらの値には誤差が含まれている可能性がある。ステップ45−47では、この誤差がどの程度になるかの評価を行なっている。
詳細には、ステップ45において、ステップ41と同じく、全画素に対してDA入力値tbと位相変調量φとの関係を計測する。ただしステップ45では、LUT処理装置36は、直前のステップ44で得られた各画素用の画素別LUTに基づいて、制御入力値A(0−255)をDA入力値Bに変換した上で、駆動部321がDA入力値Bをアナログ信号Cに変換し、LCoS型空間光変調器2の対応する画素を駆動する。こうして、全画素について制御入力値A(ta)と電圧依存性位相変調量φとの関係を計測する。ステップ46において、ステップ45の結果を元に制御入力値‐位相変調特性を求める。ステップ47において、ステップ46の結果から、画素別LUTにより電圧依存性位相変調特性の補正が所望の精度で行えているかを判断する。例えば、制御入力値‐電圧依存性位相変調特性が線形に近づいていれば所望の精度が得られていると判断するという方法を用いる。尚、判断方法はこの例に限定されない。ステップ47において、所望の精度が得られていないと判断した場合は、ステップ43を反復して、ステップ46の結果に基づいて画素別LUTを更新し、画素別LUTによる、電圧依存性位相変調特性に対する補正の精度を向上させる。
2回目に行なうステップ43では、制御入力値A(t
b(1))と位相変調量φとの関係を以下のように近似する。
今回の処理で得られる新たな制御入力値t
a(2)もまた256階調で表され、位相変調量と線形な関係とする。従って以下の式が成り立つ。
前回の制御入力値A(t
a(1))と今回の制御入力値A(t
a(2))との関係は(10)と(11)とから以下のように表すことができる。
(12)式を(9)式に代入することにより、t
bとt
a(2)の関係が以下のようになる。
(13)式により新たな制御入力値A(t
a(2))とDA入力値B(t
b)との関係が求められる。尚、ステップ43をJ回(Jは、J>2を満たす自然数)行なった場合には、以下のような、t
bとt
a(J)の関係が得られる。
これらの値に基づいて、新たな画素別LUTを作成し、ステップ44において、画素別LUTをHDD44に上書き保存する。尚、式(7)−(14)のデータは、後述するステップ48において用いられるため、一時的にHDD44に保存される。一方、ステップ47で所望の精度が得られていると判断した場合、あるいは、更新前の画素別LUTに比べて精度の向上が得られないと判断した場合には、ステップ48に移行する。
ステップ48では、全画素に対して得られた画素別LUTに基づいて、グループ毎のLUT11を作成する。
具体的には、まず、各グループ毎に、当該グループ内の全画素で得られた位相変調量φの平均値(以下、位相変調量平均値φaveという)をDA入力値(tb)毎に求める。これは、当該グループに属する全画素に対して得られた画素別LUTに基づいて決定する。ただし、当該グループ内にDA入力値‐位相変調特性が極端に異なる画素が存在する場合には、当該画素を除いた画素について位相変調量平均値φaveを求める。
次にDA入力値tbあるいは制御入力値taと位相変調量平均値φaveとの関係を近似式で求める。かかる近似式に基づいて、制御入力値taとDA入力値tbとの関係を示したグループ毎のLUT11を求める。こうして求めたグループ毎のLUT11を駆動装置3の図示せぬROMに保存する。また、HDD44に保存されていた画素別LUTを消去する。
以下、DA入力値tbあるいは制御入力値taと位相変調量平均値φaveとの関係を示す近似式、及び、この近似式に基づき制御入力値taとDA入力値tbとの関係を求める方法について、以下の3つの場合(1)〜(3)に分けて、具体的に説明する。
(1)ステップ47からステップ43へ回帰する処理が行われず、ステップ42の測定の結果に基づいて得られた画素別LUTが更新されることなく、ステップ48に到った場合である。この場合、画素別LUTは、第1回目に行われた測定(すなわち、ステップ42の測定)の結果に基づいて得られている。
(2)ステップ47からステップ43へ回帰する処理が1回行われ、ステップ45が1回行われた後ステップ48に到った場合である。この場合、画素別LUTは、第2回目に行われた測定(すなわち、最初に行われたステップ45の測定)に基づいて更新されて得られたものである。
(3)ステップ47からステップ43へ回帰する処理が2回以上行われ、ステップ45が2回以上行われた後ステップ48に到った場合である。この場合、画素別LUTは、第M回目(Mは3以上の自然数)に行われた測定(すなわち、(M−1)回目に行われたステップ45における測定)に基づいて更新されて得られたものである。
<(1)の場合>
まず、第1回目の測定により得られたDA入力値t
bと位相変調量平均値φ
aveとの関係を示す近似式を以下のように求める。
第1回目の測定における制御入力値t
aと位相変調量平均値φ
aveとの関係が線形で、かつ、0.0−2.0π(rad)を256段階の制御入力値Aで表わすために、制御入力値をt
a(M)とし、位相変調量の平均値φ
aveとの関係を以下のように表す。なお、ここで、M=1である。
ta(M)は0から255までの整数値であり、constは全グループに対して同一のオフセット値である。
式(16)を式(15)に代入することで、以下の関係(17)が得られる。
(17)式に対して四捨五入を行なうことにより、以下の(18―1)式が得られる。
(18―1)式は、DA入力値(tb(1))と制御入力値(ta(1))との関係を示している。したがって、(18―1)式が示す制御入力値ta(1)と、DA入力値tb(1)との関係に基づき、LUT11を作成する。
<(2)の場合>
まず、前回の制御入力値t
aと今回の位相変調量平均値φ
aveとの関係を示す近似式を以下のように求める。なお、M=2とする。
M=2において、式(16)を式(19)に代入することで、以下の関係(20)が得られる。
(20)式を(18−1)式に代入することにより、以下の(18―2)式が得られる。
(18―2)式は、DA入力値(t
b(2))と制御入力値(t
a(2))との関係を示している。したがって、(18―2)式が示す制御入力値t
a(2)と、DA入力値t
b(2)との関係に基づき、LUT11を作成する。
<(3)の場合>
(2)の場合と同様な方法により、以下の(18―3)式が得られる。
(18―3)式が、DA入力値(tb(M))と制御入力値(ta(M))との関係を示している。したがって、(18―3)式が示す制御入力値ta(M)と、DA入力値tb(M)との関係に基づき、LUT11を作成する。
なお、位相変調量φの平均値φaveを求める代わりに、グループ内の位相変調量φの分散が最も小さくなる値を求めその値に基づいてLUT11を作成してもよい。(より具体的な記載が必要であれば追加をお願いします。)
図7に示したLUT11には、上記の処理によりあるグループに対して得られたtaとtbと位相変調量φaveとの関係が格納されている。LUT11を参照して、ステップ7(図9)の変換を行うことにより、当該グループに属する画素において、制御入力値Aと位相変調量φとの関係が線形になる。LUT11を用いることにより、グループ内において画素毎の位相変調量のバラツキが補正され、かつ制御入力値Aと位相変調量との関係が略線形になるような補正が実現される。しかも、各グループについてのLUT11を作成する際、同一の(18)式を用いているため、全グループに渡って、画素毎の位相変調量のバラツキが補正され、かつ、制御入力値Aと位相変調量との関係が略線形になるような補正が実現される。
以上のようにして、各グループに対してLUT11を作成した後、補正パターン12を作成する。電圧非依存性歪みは、通常では単独では計測できないが、LUT11を用いて電圧依存性位相変調特性を補正した状態でLCoS型位相変調装置1の出力波面を計測することにより計測が可能となるからである。電圧非依存性歪みを含む光波面の測定は、2光束干渉計を用いて測定される。本実施の形態では、2光束干渉計として図16に示すマイケルソン干渉計80を用いる。マイケルソン干渉計80は、レーザー光源81と、スペーシャルフィルタ82と、コリメートレンズ83と、偏光子84と、ビームスプリッター85と、LCoS型位相変調装置1と、ミラー86と、イメージレンズ87,88とCCD89とからなる。偏光子84の偏光方向は、液晶の偏光方向と平行になっている。ミラー86で反射される波面とLCoS型位相変調装置1のうちLCoS型空間光変調器2で反射される波面との干渉によって生成される干渉縞が計測され、以下の文献に示される解析方法を用いることにより、計測した干渉縞からLCoS型位相変調装置1の出力波面を求めることができる。即ち、LCoS型空間光変調器2で反射される波面には電圧非依存性歪みパターンが形成されており、ミラー86で反射される波面は平面であるので、計測した干渉縞画像をフーリエ変換し、キャリア成分を取り除くことで、電圧非依存性歪みを得る事ができる。
参考文献:M.Takeda, H.Ina, and
S.Kobayashi, "Fourier-transform method of fringe pattern analysis for
computer-based topography and interferometry", J. Opt. Soc. Am., Vol. 72,
156-160(1982).
図17を参照して、電圧非依存性の歪みを補正する補正パターン12の作成方法を説明する。まず、ステップ51では、駆動装置3において、全ての画素の値が0のパターンを初期の補正パターン12としてRAM38に格納する。ステップ52では、中央処理装置41は、全ての画素の値が、0‐255のうちいずれかの値で互いに等しい位相画像を所望パターン13として設定し、所望パターン13を駆動装置3に送信する。駆動装置3において、受信した所望パターン13を加算装置35に送信し、所望パターン13における画素の位置情報を画素位置検出装置37に送信する。尚、画素位置検出装置37は、当該画素の位置情報に基づいて対応するLUT11を特定する。ステップ53では、加算装置35は、所望パターン13と補正パターン12とを加算し、加算結果に位相折り畳みを施したものを制御入力値Aとする。ステップ54では、LUT処理装置36は、特定されたLUT11に基づいて、制御入力値AをDA入力値Bに変換し、駆動装値3に転送する。ステップ55では、駆動部321が、DA入力値Bに基づいて、アナログ信号Cを生成し、LCoS型空間光変調器2に使用電圧を印加する。ステップ56では、マイケルソン干渉計80のCCD89の出力結果に基づいてLCoS型位相変調装置1の出力波面を計測する。LUT11を用いて電圧依存性位相変調特性が補正されているため、ステップ56で計測した出力波面は電圧非依存性歪みのみを含んでいる。ステップ57では、計測した電圧非依存性歪みの符号を逆にし、補正パターン12を作成する。ステップ58では、補正パターン12の位相値に対して、位相の折り畳みを施す。ステップ59では、補正パターン12の各画素の位相値(位相変調量)を、制御入力値に変換し、256階調の値に表現しなおす。かかる変換は、例えば、(8)式、および、(16)式のような位相変調量と制御入力値との理想的な関係式を用いて行なってもよいし、位相変調量と制御入力値との関係をLUT11に保持しておき、かかる関係に基づいて行なってもよい。図18は、補正パターン12を256階調の階調画像として表現した例である。ステップ60では、得られた256階調で表現した補正パターン12の値を図示せぬROMに格納する。
以上の処理においても、LUT11の作成の際と同様に、干渉を測定することによる測定誤差が含まれている可能性がある。ステップ61−65において、この誤差がどの程度あるかを評価する。具体的には、ステップ61では、加算装置35は、ステップ53と同様にして上記の所望パターン13と、直前のステップ60で得られた補正パターン12とを加算し、必要に応じて加算結果に位相折り畳みを施したものを制御入力値Aとする。ステップ62−64は、ステップ54−56と同様であり、ステップ62で、LUT処理装置36は、ステップ61で得られた制御入力値Aに対するDA入力値Bを求め、ステップ63で、駆動部321は、DA入力値Bをアナログ信号Cに変換してLCoS型空間光変調器2に駆動電圧を印加する。ステップ64で、CCD89の出力結果に基づいて出力波面の計測が行なわれる。ステップ65では、この計測結果に基づいて、直前のステップ60にて得られた補正パターン12によって必要な精度の補正が行われたか否かを判断している。例えば、出力波面の平面度が得られていれば所望の精度が得られていると判断する方法を用いる。尚、判断方法はこの例に限定されない。ステップ65において、必要な精度が補正パターン12で得られたと判断されるか、もしくは精度の向上が得られないと判断される場合には補正パターン作成処理を終了する。必要な精度が得られない場合には、ステップ57に戻り、ステップ64の結果が示す電圧非依存性歪みに基づいて補正パターン12を作成しなおす。具体的には、ステップ60において、直前に得られた補正パターン12の値と、繰り返しで得られた補正パターン12の値とを、画素毎に足しあわせ、足し合わせた結果を新たな補正パターン12として図示せぬROMに保存する。こうして、反復して補正パターン12の作成を繰り返す。所望の精度が得られた補正パターン12を駆動装置3の図示せぬROMに保存する。
以上の本実施の形態によるLCoS型位相変調装置1では、全画素をその位相変調特性に基づいて複数のグループに割り振り、1つのグループ内の全画素に対して、同一のLUT11を使用する。このため、各画素毎にLUT11を持つ必要はなく、全画素の位相変調特性を少ないデータ量で効率よく補正できる。そのため、装置に大容量のメモリ(RAM)を搭載することが難しい場合であっても、駆動装置3にLUT11を格納することができる。
さらに、駆動装置3にLUT11を格納することで、(1)所望パターン13と、補正パターン12との足し合わせ、必要であれば位相の折りたたみ処理を行う処理(加算装置35における処理)、(2)画素位置情報の取得をする処理(画素位置検出装置37における処理)、(3)LUT処理装置36において制御入力値AをLUT11に基づいてDA入力値Bへ変換し、LCoS型空間光変調器2へ出力するという処理(LUT処理装置36)を、専用のハードウェア(加算装置35、画素位置検出装置37、LUT処理装置36)を用いて行なっている。駆動装置3における(1)―(3)の処理にかかる処理時間は、例えば、制御装置4における中央処理装置41で上記の処理を行なう場合に比べて短縮できる。そのため、これらの処理を、1フレーム時間内に終わらせることができる。
LUTマップ15によって、画素の位置情報と、グループ番号との対応関係が把握できる。これにより、確実に画素の特性にあったLUT11を選んで位相変調を行なうことができる。
また、本実施の形態によるLCoS型位相変調装置1では、4096階調で表されるDA入力値Bに対して、LCoS型空間光変調器2を、動作可能電圧の範囲より小さく必要な位相変調量が確保された使用電圧の範囲内で制御している。そのため、LCoS型空間光変調器2に印加する電圧を精度良く制御できる。しかも、LUTマップ15を用いてその画素に最適なLUT11を特定している。そのため、LUT11によって制御入力値Aと電圧依存性の位相変調量との関係が略線形になり、電圧依存性に起因する画素毎のバラツキも補正されるため、所望の位相変調量を高い精度で得ることができる。さらに、補正パターン12を用いて電圧非依存性歪みを補正することにより、より正確な位相変調を行うことができる。
尚、本実施の形態におけるLUTマップ15、LUT11、補正パターン12とを用いて補正を行なった場合には、(1)全く補正を行なわない場合、及び、(2)全画素に対して単一のLUT11と補正パターン12とを用いて補正を行なった場合の両者に比べて、出力波面を精度よく測定できることが確認できた。例えば、上記の各条件において測定された制御入力値‐位相変調特性と、理想的な制御入力値‐位相変調特性(φ(t
a)=2π/256)との最小2乗誤差(RMS)値を求めると、以下のような結果が得られた。
図19(A)は、LUT11及び補正パターン12を用いて、ラゲールガウシアンビームの位相変調を測定した図である。かかる補正を行っていない図19(B)と比較して、図19(A)は理論どおり同心円状のパターンが見えている。
また、LUT11の作成及び補正パターン12の作成において、必要な精度が得られるか、精度の向上が得られなくなるまで、作成処理を反復している。そのため、高い精度でLUT11及び補正パターン12が得られ、電圧依存性位相変調特性および、電圧非依存性歪みを精度よく補正できる。
本発明による位相変調装置及び位相変調装置の設定方法は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、LCoS型空間光変調器2においては、画素電極22がミラーも兼ねていたが、図20に示すLCoS型空間光変調器120のように、画素電極22上に誘電体ミラー29を積層する構成のものをLCoS型空間光変調器2の代わりに用いてもよい。尚、LCoS型空間光変調器120において、LCoS型空間光変調器2と同様の構成要素には同じ番号を付し説明を省略した。
また、制御装置4と駆動装置3とは上記の例に限定されず、駆動装置3に制御装置4の機能を組みこんでもよい。
上記の実施の形態におけるLCoS型位相変調装置1では、補正パターン12を駆動装置3のRAM38に格納し、加算装置35で所望パターン13と補正パターン12とを足し合わせたが、図21に示すLCoS型位相変調装置100のように、HDD44に所望パターン13と補正パターン12とを格納し、これらをメモリ43に読み出して、これらの値を制御装置4において足し合わせるようにしてもよい。このときには、中央処理装置41は入力値設定手段47を備える。入力値設定手段47は、所望パターン13に補正パターン12を足し合わせる。また、駆動装置130には、加算装置、及び補正パターンを格納するRAMは設けられていない。即ち、駆動装置130は、通信装置133と、処理装置131と、画素位置検出装置137と、LUT処理装置136と、D/A回路132と、RAM139とを備えている。RAM139は、LUTマップ15とLUT11とを格納している。D/A回路132は駆動部321を備える。
位相変調を行なう際には、入力値設定手段47は、所望パターン13に補正パターン12を足し合わせ、必要であれば足し合わせた値に位相折り畳みを行い制御入力値Aを設定する。通信装置42は、制御入力値Aと画素位置情報とを駆動装置130に送信する。通信装置133は、制御入力値Aと画素位置情報とを処理装置131に転送する。処理装置131は、制御入力値Aを入力すべき画素の位置情報を画素位置検出装置137に送り、当該画素の制御入力値Aの値をLUT処理装置136に送る。これ以降、LCoS型位相変調装置100は、実施の形態のLCoS型位相調装置1と同様の処理を行い、LCoS型空間光変調器2が入射光の位相を変調する。上述の、LCoS型位相変調装置100では、駆動装置130にて補正パターン12と所望パターン13とを加算する必要がないため、駆動装置3に搭載するRAMの容量を削減できる。
また、図22に示すLCoS型位相変調装置200のように、HDD44に、所望パターン13と、補正パターン12と、LUT11と、LUTマップ15とを保存し、これらをメモリ43に読み出してDA入力値Bを求め駆動装置230に送信するようにしてもよい。この場合には、中央処理装置41は、変換手段46と、入力値設定手段47と、画素位置検出手段48とを備える。また、駆動装置230は、加算装置、LUT処理装置、画素位置検出装置、ROMは備えていない。即ち、駆動装置230は、通信装置233と、処理装置231と、駆動部321を有するD/A回路232とを備える。
位相変調を行なう際には、入力値設定手段47は、所望パターン12に補正パターン13を足し合わせ、必要であれば足し合わせた値に位相折り畳みを行い制御入力値Aを設定する。画素位置検出手段48は、LUTマップ15を参照し、画素の位置情報に対応するグループ番号を特定する。変換手段46は特定されたグループ番号に対応するLUT11を用いて、当該画素の制御入力値AをDA入力値Bに変換する。通信装置42は、DA入力値Bを駆動装置230に送信する。通信装置233は、受信したDA入力値Bを処理装置231に転送する。これ以降の処理は、実施の形態と同様であり、LCoS型空間光変調器2が入射光の位相を変調する。LCoS型位相変調装置200においては、駆動装置230に、所望パターン13、LUT11、LUTマップ15、補正パターン12を保持するRAMを設ける必要がない。そのため装置のコストを削減できる。
本実施の形態では、駆動装置3内にD/A回路32を設けているが、駆動装置3からD/A回路を分離し、LCoS型空間光変調器2側にD/A回路と、DA入力値Bを受信する受信回路とを新たに設ける構成をとっても良い。この場合、駆動装置3からLCoS側の受信回路には、DA入力値Bが伝送されることになる。
また、本実施の形態の駆動装置3では、LUT11は画素位置検出装置37を介してLUT処理装置36に読み出されているが、LUT処理装置36がLUT11を直接処理するようにしてもよい。この場合、画素位置検出装置37はLUTマップ15を参照して特定したLUT11の情報をLUT処理装置36に送信する。LUT処理装置36は、受信したLUT11の情報に基づいて、参照するLUT11を切り替えながらLUT処理(制御入力値AをDA入力値Bに変換する処理)を行なう。
図1の駆動装置3は、D/A回路32を1個のみ備えているが、D/A回路32を複数個設けて、複数のアナログ信号を同時にLCoS型空間光変調器2に出力し、複数の画素に同時にアナログ信号を書き込むようにしてもよい。この場合、駆動装置3の処理回路では、複数の画素に関するDA入力値Bを各D/A回路32に同時に出力するようにしている。
また、本実施の形態では、5つの画素に関して電圧依存性位相変調特性を測定し、その測定結果に基づいて最小・最大電圧Q,Rを設定していたが、測定する画素の数は少なくとも1つあればよい。その場合も、測定した少なくとも1つの画素に対する電圧依存性位相変調特性に基づき最小・最大電圧を設定すればよい。
LUT11の代わりに、(15)、(19)式で求めた近似多項式のデータ(係数ak(I),ave、Iは自然数)を駆動装置3の図示せぬROMに保存し、位相変調量を測定する際には、それらをRAM39に読み出すようにしてもよい。上述の実施の形態におけるLUT11の作成方法(ステップ48)と同様に、かかるデータと式(16)とから、ステップ47から43への回帰したか回数に応じて式(18−1),(18−2),(18−3)のいずれかを求めることにより、制御入力値AとDA入力値Bの関係を得ることができる。
上記の実施の形態では、LUT11、LUTマップ15を作成する際に全ての画素で計測を行なっていた。しかしながら、全画素に関しては位相変調量の計測は行なわず、代表する画素についてのみ測定を行うようにしてもよい。例えば、隣り合う複数の画素を1つのブロックとして構成する。ブロックの構成の仕方は、例えば4画素×4画素を1つのブロックとして構成する。1つのブロックにおいて1つの画素を代表画素とし、各ブロックの代表画素に関して測定を行う。この測定結果に基づいて、ブロック(代表画素)をグループに区分する。このようにして作成されたグループを示すLUTマップ15を作成する。即ち、LUTマップ15は、ブロックと、そのブロックに対応するLUT11との関係を示すものになる。この場合には、1つのブロック内の画素には同一のLUT11が適用される。
また、図23に示すように、LUT11に補正パターン12の値を包含してもよい。あるグループにおける画素の制御入力値Aをtとし、そのグループにおける画素のうち代表の1画素に対応する補正パターン12の値をp(図23ではp=64)とする。上述の実施の形態では、両者が加算された後にLUT11を適用していた。即ち、LUT11を参照するときの制御入力値Aはt+pであった。所望画像は随時変化するが、pは固定値なので、参照位置が常にpだけずれることになる。これは、LUTの参照開始位置をpだけずらすことと同等である。尚、補正パターン12において、グループにおける代表の1画素の値をpとせずに、グループ内の画素の平均値を求めその値をpとしてもよい。
各画素のLUT11の参照位置を補正パターンの当該画素での値分だけずらすことにより、電圧非依存性歪みを補正する情報をLUT11に包含することができる。図23は、p=64として、図4のデータに電圧非依存性歪みを補正する情報を包含させたものである。例えば、図7において、taが0であったときのtbの値1050が、図23ではtaが64の箇所に現れている。この場合、図1におけるLCoS型位相変調装置1の駆動装置3において、加算装置35、RAM38は不要になる。さらに、図9を参照して説明した位相変調方法において、ステップ6は必要なくなり、処理装置31は、入力値列をLUT処理装置36に送信する。また、ステップ3、4、7で用いられるLUT11は、図23に示すような補正パターン12の値を加えたLUT11である。
別の例として、p=1、及び、p=−1の場合を説明する。図7に示すように、LUT11では、制御入力値taが255,0,1に対して、DA入力値tbは、それぞれ、3036,1050,1055が対応していた。これに対して、p=1の場合には、制御入力値taが255,0,1に対して、DA入力値tbは、それぞれ、1050,1055,1058が対応するようにLUT11を作成すればよい。あるいはp=−1の場合には、制御入力値taが255,0,1に対して、DA入力値tbは、それぞれ、3028,3036,1050が対応するようにLUT11を作成すればよい。
このように、LUT11に補正パターンの情報を含め、かかるLUT11を用いて制御入力値AをDA入力値Bに変換することで電圧非依存性による歪みも補正することができる。そのため、補正パターン12を処理する加算装置35を省略でき、効率的な位相変調が可能となる。
LCoS型空間光変調器2では、ガラス基板25の厚さを、例えば、3mm程度と極めて厚くしているため、ガラス基板25に歪みがない。図24(A)のようにシリコン基板21の歪みだけが問題となる。尚、図24(A)、24(B)(後述)では、配向膜23、対向電極24は省略してある。図24(A)の液晶層27の厚みは、d1、d2で示されるように、シリコン基板21の歪み差がそのまま液晶層27の厚みの差となる。
つまり、液晶層27の厚みが同じで等電圧を印加するような画素は同じ位相変調量となる。以上のことより、ガラス基板が厚い場合にはシリコン基板の歪み形状がわかれば、同じ位相変調量をもつ画素がわかることになる。そこで、図14で示したLUTマップ15の作成方法に代わって、例えば、以下の3通りのいずれかの方法によって、シリコン基板の歪み形状を示す量を測定することによりLUTマップ15を求めることができる。
1.図25を参照して説明する。まず、ステップ71において全画素に関して、画素別LUTを作成する。具体的には、図15に示すLUT11の作成方法において、ステップ41−47と同一の処理を行なう。次に、ステップ72では、図16に示すマイケルソン干渉計80を用いて位相変調量Φを測定する。具体的には、全画素に関して同じ値の単一の制御入力値Aを、画素別LUTを用いてDA入力値Bに変換し、さらにアナログ信号Cに変換し、アナログ信号Cを印加して行なう。ステップ73では、求めた位相変調量のうち、最大値の位相変調量に対応する画素と、最小値の位相変調量に対応する画素を求める。ステップ74では、位相変調量の最大値と最小値との間をr等分の区間に分ける。同一の区間に位相変調量を持つ画素を同一のグループとしてまとめる。このように構成されたグループと画素との関係をLUTマップ15に保存する。
尚、この方法では、マイケルソン干渉計80において、画素別LUTを用いて制御入力値AをDA入力値Bに変換して位相変調量Φを測定している。そのため、電圧依存性位相変調特性は補正されている。即ち、(1)式のうち電圧Vに依存する項φは補正されており画素毎のバラツキがない。そのため、測定された位相変調量Φの画素毎のバラツキは、Φ0の画素毎のバラツキそのものである。Φ0は、シリコン基板の歪みを示す量であった。そのため、この方法で作成したLUTマップ15では、シリコン基板の歪みを示す電圧非依存性位相変調特性に応じて全画素をグループ分けしている。
2.本変更例では、図14で示したLUTマップ15の作成方法を以下のように変更する。実施の形態では、ステップ31では、図11の偏光干渉計60を使用してLCoS型空間光変調器2の各画素に同一のDA入力値Bに基づく同一の電圧を印加して位相変調量を計測した。しかも、このDA入力値Bを0から4095まで変化させて計測を繰り返した。これに対し、本変更例では、偏光干渉計60の代わりに、図16のマイケルソン干渉計80を使用する。また、LCoS型空間光変調器2の各画素に同一のDA入力値Bに基づく同一の電圧を印加して位相変調量を測定する。但し、この測定は、0から4095のうちの単一の値のDA入力値Bに対する電圧値を印加して行なう。ステップ32−35は行なわない。ステップ36において、ステップ31にて得られた全画素に関する位相変調量の最小値と最大値とを求め、その間をr等分する。等分した区間に値を持つ位相変調量に対応する画素を1つのグループにまとめる。このようにして画素とグループとの関係を求めLUTマップ15を作成する。
この方法でも、上記変更例1と同様、画素別LUTを用いずにマイケルソン干渉計で位相変調量Φを測定している。但し、画素別LUTによる制御入力値AからDA入力値Bへの変換は行なっていない。そのため、測定された位相変調量Φには、(1)式の電圧に依存する量φが含まれている。(2)式に示したように、φは、液晶層27の厚みd(x,y)に依存する。ガラス基板25に歪みのないLCoS型空間光変調器2では、液晶層27の厚みd(x,y)はそのまま、反射面の歪みを示す量になる。従って、(1)式のΦを求めることが、シリコン基板の歪みに関する量を求めることになる。そのため、この方法においても、シリコン基板の歪みを示す電圧非依存性位相変調特性に応じて全画素をグループ分けできる。
3.2の場合と同様にして、ステップ31で、図16のマイケルソン干渉計80で各画素が達成する位相変調量Φを測定する。この測定結果に基づき、位相変調量Φが全画素において一定の値となるようなパターンを作成し、そのパターンを用いてLUTマップ15を作成する。具体的には、DA入力値Bを0から4095の全ての値に順に設定し、対応するアナログ信号Cにて各画素を駆動する。得られた位相変調量を元に、全画素の位相変調量が互いに等しくなるDA入力値Bの分布を示すパターンを求める。ステップ32−35は行なわない。ステップ36では、ステップ31で求めたパターン内に分布したDA入力値Bのうち、最小値と最大値とを求め、その間をr等分する。同一の区間内の位相変調量を達成した画素を1つのグループにまとめる。このようにして画素とグループとの関係を求めLUTマップ15を作成する。この方法においても、シリコン基板の歪みを示す電圧非依存性位相変調特性に応じて全画素をグループ分けできる。
上記の方法1−3では、マイケルソン干渉計80で電圧非依存性歪みの測定を行い、液晶層27の膜厚d(x,y)の差に基づく画素のグループ分けを行ったが、測定の方法はこれに限定されない。画素位置による膜厚d(x,y)の違いを示す量を測定することができれば、かかる結果に基づいて上述の方法と同様にしてLUTマップを作成することができる。例えば、光学測定によって各画素位置における膜厚d(x,y)を直接測定しグループ分けをおこなってもよい。
なお、上記の3つの場合において、ガラス基板25がチルトしている場合には、図24(B)のようにシリコン基板21の歪み差=膜厚差とはならない。このようにガラス基板25がチルトしている場合には、シリコン基板21の歪みに起因する膜厚d
s(x,y)に加えて、ガラス基板の傾きに起因する膜厚d
g(x,y)の差を考慮したグループ分けを行なう。例えば、ガラス基板25の下面のx、y方向に対する傾きθ
x,θ
yがわかっている場合には、以下の方法でLUTマップ15を作成することができる。図24(B)において、基準面S1は、シリコン基板21の下面に対して平行な面である。即ち、ガラス基板25がチルトしなかったときには、ガラス基板25の下面は基準面S1に一致する。シリコン基板21の上面から基準面S1までの膜厚がd
s(x,y)であり、基準面S1からガラス基板までの膜厚がd
g(x,y)であり、以下の式(21)で求められる。なお、d(x,y)は、d
s(x,y)とd
g(x,y)との和で与えられる。
ここで、基準点Oを、d
g(x,y)=0となる点とする。L
x、L
yは、基準点Oから画素の位置(x,y)までの、それぞれx方向,y方向の距離である。
従って、膜厚差d
g(x,y)に起因する電圧依存性位相変調量φ
g(V,x,y)は
、以下の式より計算できる。
ここで、電圧Vは、例えば、位相変調量Φ
0(x,y)の測定に使用した値とする。
このようにガラス基板25がチルトしたLCoS型空間光変調器2を用いて図16のマイケルソン干渉計80で位相変調量を測定した場合、得られる位相変調量は(1)式で表されるΦ0(V,x,y)であり、φg(V,x,y)はΦ0(V,x,y)に影響しない。
即ち、測定された位相変調量Φ0(V,x,y)は膜厚ds(x,y)の差に基づいたパターンであり、計算によって求められたφg(V,x,y)は膜厚dg(x,y)の差に基づいたパターンである。従って、図16のマイケルソン干渉計80で測定された位相変調量Φ0(V,x,y)と、(20)式から計算で求めたφg(V,x,y)とを足しあわせ、位相の折り畳み処理を行った位相変調量(以下チルトの効果を含んだ位相変調量と呼ぶ)に基づいて、例えば、上述の変更例2のようにグループ分けを行なう。即ち、グループ分けにおいて、チルトの効果を含んだ位相変調量のうち最大値と最小値とを特定し、かかる最大値と最小値との間をr等分の区間に分ける。同一の区間にチルトの効果を含んだ位相変調量を持つ画素を同一のグループとしてまとめる。これによりLUTマップ15を作成する。
以上の1−3の方法、および、ガラス基板25がチルトしている場合の方法により、画素のグループ分けをシリコン基板21の歪みを示す量を反映させてグループ分けすることができる。
LCoS型位空間光変調器2の代わりに、一般的な位相変調型の空間光変調器、例えば、光アドレス型位相変調器、MEMS型位相変調器、可変鏡、アナログ型の磁気光学素子を用いても良い。光アドレス型位相変調器としては、例えば、Yasunori Igasaki et al. “High Efficiency Electrially-Addressable
Phase-Only Spatial Light Modulator”, Optical Review, Vol.6, No.4, pp. 339-344,
1999に記載されたものを使用することができる。また、MEMS型位相変調器としては、例えば、M. Friedrichs et al. “One
Megapixel SLM with high optical fill factor and low creep actuators”, Optical
MEMS and Their Applications Conference 2006, IEEE/LEOS International Conference
onに記載されたものを使用することができる。アナログ型の磁気光学素子としては、例えば、Mitsuteru Inoue et al. ”Magnetophotinic
crystals ? a novel magneto-optic material with artificial periodic structures”,
J. Mater. Chem. Vol.16, pp678-684, 2006に記載されたものを使用することができる。
尚、MEMS型SLMを用いた場合には、電圧非依存性歪みは、電圧を印加しない場合に得られる波面の歪みとして現れる。式(1)においてV=0とすると、φ(V,x,y)=0となり、Φ0= Φ(0,x,y)となる。このため、図16のマイケルソン干渉計80において、電圧を印加せずに測定を行うことで、そのまま、反射面の歪みに起因するΦ0を求めることができる。Φ0に基づき補正パターン12を作成する。また、電圧依存性位相変調特性は、電圧を印加した場合における位相変調量の画素毎のバラツキとして現れる。かかる電圧依存性位相変調特性は、本実施の形態と同一な方法にて作成したLUT11にて補正することができる。
アナログ型の磁気光学素子は電圧が印加されると、入射光の偏光方向を回転させる。電圧非依存性位相変調特性は、図16のマイケルソン干渉計80にて電圧を印加せずに測定した光の偏光方向の回転の画素毎によるバラツキを示している。また電圧依存性位相変調特性は、図16のマイケルソン干渉計80にて電圧を印加して測定した光の偏光方向の回転量の画素毎のバラツキを示している。従って、マイケルソン干渉計80において、電圧を印加せずに測定した光の偏光方向の回転を元に、補正パターン12を作成する。また、マイケルソン干渉計80にて電圧を印加して測定した光の偏光方向の回転量を元に、LUT11を作成するようにすればよい。