JP2009030280A - 住宅用水回り部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】特別な装置を備える必要なく、長期に亘って汚れを防ぐことができ、清掃の労力を軽減することができる住宅用水回り部材を提供する。
【解決手段】水溶性樹脂2を含有するアクリル樹脂1の被膜で形成された樹脂層3を住宅用水回り部材の表面に形成する。樹脂層3の表面から水溶性樹脂2が水に溶出することによって、樹脂層3の表面が更新され、汚れはこの表面の更新と共に除去されるものであり、住宅用水回り部材の表面が汚れることを防ぐことができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、防汚性の住宅用水回り部材、特に浴室などの排水口に関するものである。
住宅用水回り部材は常時水が作用するので、表面に汚れが付着し易い。特に浴室などの排水口には、洗浄に用いた石鹸かす、人体から出た垢、またこれらに起因する金属石鹸、細菌、カビなどが、ヌメリや湯垢などとして付着して、汚れ易い。従って、頻繁に清掃することが必要であり、特に油脂などを含んだ汚れは除去することが難しく、浴室専用の洗剤等を用いて手作業で擦り落とさなければならないなど、清掃に非常な労力を必要とするものであった。
そこで、特許文献1では、上水又は上水に電解質を添加した溶液を電気分解して電解水を生成する浴室洗浄装置を浴室に設け、生成された電解水を浴室の排水口などに散水することによって、電解水で洗浄・殺菌して排水口に汚れが付着することを防止し、清掃の労力を軽減することができるようにしている。
しかしこのような電解水を生成して散布するための特別な装置を備えることは、設備コストがかさむことになるのは勿論、浴室のスペースを狭めるなどの種々の問題があり、一般家庭に適用することは難しい。
一方、船舶塗料では、防汚成分の他に水溶性成分を含有する塗料を船舶に塗装し、水溶性成分が海水に溶解することによって、塗装表面を常に活性な表面に保ち、長期に亘って防汚性を維持する技術が提供されている。例えば特許文献2では非錫系防汚塗料組成物を船舶に塗装することが、特許文献3ではエステル基含有脂肪族系炭化水素樹脂及び/又は水酸基含有脂環族系炭化水素樹脂を含む防汚塗料を船舶に塗装することが提案されている。
特開2001−025445号公報 特開平11−061002号公報 特開2005−015531号公報
そこで本発明者は、上記のような船舶塗料の技術を排水口などの住宅水回り部材に応用することによって、住宅水回り部材に汚れが付着することを長期に亘って防ぐことが可能になるのではないかと検討した。しかし、船舶塗料は海水中で使用されるのに対して、住宅水回り部材に作用するのは淡水であり、上記の特許文献2や特許文献3の技術を住宅用水回り部材に適用することはできないものであった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、特別な装置を備える必要なく、長期に亘って汚れを防ぐことができ、清掃の労力を軽減することができる住宅用水回り部材を提供することを目的とするものである。
本発明に係る住宅用水回り部材は、水溶性樹脂を含有するアクリル樹脂の被膜で形成された樹脂層を表面に有することを特徴とするものである。
この発明によれば、アクリル樹脂の被膜で形成された樹脂層の表面から水溶性樹脂が水に溶出することによって、樹脂層の表面が更新され、汚れはこの表面の更新と共に除去されるものであり、住宅用水回り部材の表面が汚れることを防ぐことができるものである。
また本発明において、上記の水溶性樹脂はロジンであることを特徴とするものである。
この発明によれば、ロジンは淡水に溶解し易く、家庭で使用される淡水で樹脂層の表面を容易に更新させることができるものである。
また本発明において、上記の樹脂層の膜厚は7μm以上であることを特徴とするものである。
この発明によれば、水溶性樹脂の溶解で樹脂層の表面が更新されても、長期に亘って樹脂層の被膜を維持することができ、長期に亘って汚れを防ぐことができるものである。
また本発明において、アクリル樹脂に対する水溶性樹脂の比率は、固形分比で20質量%以上43質量%以下であることを特徴とするものである。
この発明によれば、水溶性樹脂の比率を20質量%以上に設定することによって、水溶性樹脂が水に溶出することによる汚れ防止の効果を高く得ることができると共に、水溶性樹脂の比率を43質量%以下に設定することによって、水溶性樹脂の溶出を抑制して樹脂層の被膜を長期に亘って存在させることができ、汚れ防止の効果を長期間維持することができるものである。
また本発明において、上記住宅用水回り部材は排水口であることを特徴とするものである。
この発明によれば、汚れ易く頻繁に清掃が必要な排水口に汚れが付着することを防ぐことができ、清掃の労力を軽減することができるものである。
本発明によれば、アクリル樹脂の被膜で形成された樹脂層の表面から水溶性樹脂が水に溶出することによって、樹脂層の表面が更新され、汚れはこの表面の更新と共に除去されるものであり、電解水を生成して散布するなどの特別な装置を備える必要なく、住宅用水回り部材の表面が汚れることを防ぐことができるものであって、清掃の労力を軽減することができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明において樹脂層を形成するベースレジンとなるアクリル樹脂としては、特に限定されることなく、一般に使用されるアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体を用いることができるものである。アクリル樹脂を構成する単量体となるこのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルを具体的に例示すると、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヘプチルアクリレート、ヘプチルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、さらには水酸基含有の2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート等を挙げることができる。本発明では特に、常温硬化型アクリル樹脂が好ましい。
本発明は上記のアクリル樹脂に水溶性樹脂を混合して含有させるものであり、この水溶性樹脂としては、特に限定されるものではないが、ロジンや、モノカルボン酸およびその塩の重合体を挙げることができる。モノカルボン酸としては、炭素数9〜19程度の脂肪酸や、ナフテン酸を挙げることができ、モノカルボン酸の塩としては、Cu塩、Zn塩、Ca塩等を挙げることができる。これらの水溶性樹脂のうちでは、特にロジンが好ましい。ロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどがあり、いずれも使用することができる。これらの水溶性樹脂は、1種を単独で用いる他、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
アクリル樹脂に対する水溶性樹脂の配合量は、アクリル樹脂の固形分100質量部に対して水溶性樹脂の固形分が20〜43質量部の範囲になるように、すなわちアクリル樹脂に対して水溶性樹脂を固形分比で20質量%以上43質量%以下の比率になるように設定するのが好ましい。水溶性樹脂の固形分比率が20質量%未満であると、後述のように水溶性樹脂を水に溶出させて樹脂層の表面を更新する効果を十分に得ることが難しくなる。逆に水溶性樹脂の固形分比率が43質量%を超えると、アクリル樹脂をベースレジンとする樹脂層の塗膜密着性が低下し、また外観にも問題が生じるおそれがあり、さらに水溶性樹脂の溶出を抑制して樹脂層の被膜を長期に亘って存在させることができ、後述の汚れ防止の効果を長期間に亘って維持することができるものである。
上記のようにアクリル樹脂にロジン等の水溶性樹脂を配合して含有させ、さらに希釈溶剤その他の成分を配合することによってコーティング組成物を得ることができるものである。そしてこのコーティング組成物を住宅用水回り部材を構成する基材の表面に塗装することによって、図1に示すように、基材4の表面に、ベースレジンであるアクリル樹脂1のマトリクス中に水溶性樹脂2が分散された樹脂層3の被膜を形成することができるものである。
このように基材4の表面に樹脂層3の被膜を被覆して形成される住宅用水回り部材にあって、住宅用水回り部材には水が常に作用しているが、この水が表面の樹脂層3に作用すると、樹脂層3の表層部に存在する水溶性樹脂が水に溶出し、樹脂層3の表面が更新されることになる。このとき、樹脂層3の表面に汚れが付着していると、樹脂層3の表面の更新に伴なってこの汚れも除去されるものであり、この結果、樹脂層3で形成される住宅用水回り部材の表面が汚れることを防ぐことができるものである。特に、住宅用水回り部材が浴室の床などに設けられる排水口である場合、この排水口の表面にはヌメリや湯垢などの汚れが付着し易いが、浴室で使用する水や湯が排水口の表面を被覆する樹脂層3に作用して、樹脂層3の表面が更新される際にこのヌメリや湯垢などの汚れは自動的に除去されることになり、ヌメリや湯垢などの汚れが排水口に付着して頑固な汚れとして固まるようなことを防ぐことができるものである。従って、掃除の回数を減らすことができるなど、掃除の手間を少なくすることができ、場合によっては掃除を不要にすることができ、清掃の労力を軽減することができるものである。
ここで、住宅用水回り部材の表面に形成する樹脂層3の膜厚は7μm以上であることが好ましい。樹脂層3は水の作用で水溶性樹脂が溶出して表面が更新されることによって、徐々に膜厚が薄くなるが、樹脂層3の膜厚が7μm未満であると、短期間で樹脂層3の膜厚が消失するおそれがあり、住宅用水回り部材の表面が汚れることを長期に亘って防ぐことが難しい。このため、樹脂層3の膜厚は7μm以上であることが好ましいものである。樹脂層3の膜厚の上限は特に設定されないが、樹脂層3の塗膜性状等のうえで、樹脂層3の膜厚は50μm以下であることが好ましい。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
アクリル樹脂として三井化学社製「アルマテックスL1043」を用い、水溶性樹脂としてナカライテスク社製のロジンを用いた。そして表1に示す配合量でアクリル樹脂にロジンを配合して、アクリル樹脂に対するロジンの固形分比率を20質量%に設定し、さらにキシレンを希釈溶剤として用いて希釈して、固形分濃度を25質量%に調整したコーティング組成物を得た。
そしてこのコーティング組成物をFRP製の試験板の表面にバーコーターにより目標膜厚20〜30μmとなるように塗布し、60℃で45分間乾燥することによって樹脂層を形成した。
(実施例2〜4)
表1に示す配合量でアクリル樹脂にロジンを配合して、アクリル樹脂に対するロジンの固形分比率を表1に示す比率に設定し、さらにキシレンを表1に示す量で配合量して固形分濃度を25質量%に調整するようにした他は、実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製した。そしてこのコーティング組成物を実施例1と同様に塗装して樹脂層を形成した。
(比較例1)
表1のようにロジンを配合せずアクリル樹脂のみでコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を実施例1と同様に塗装して樹脂層を形成した。
(比較例2)
表1のようにアクリル樹脂を使用せず、ロジンのみでコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を実施例1と同様に塗装して樹脂層を形成した。
Figure 2009030280
上記のように実施例1〜4及び比較例1〜2で得た、樹脂層を表面に形成した試験板を水道水中に浸漬し、50℃に設定した恒温槽に静置した。そして渦電流膜厚計(Kett社製「LH−300J」)を用いて、各試験板の樹脂層の膜厚の経時変化を測定した。樹脂層の膜厚の測定は、浸漬直前(0時間)、浸漬から2時間後、4時間後、24時間後、72時間後、90時間後にそれぞれ行い、それぞれ前回測定したときからの膜厚の減少を求めて、これを樹脂層消耗量として表2に示した。
Figure 2009030280
表2にみられるように、各実施例のものは樹脂層の膜厚が経時的に減少しており、ロジンが水に溶出して樹脂層の表面が更新されていることが確認される。
一方、ロジンを配合せずアクリル樹脂のみで樹脂層を形成した比較例1は、樹脂層の膜厚の減少が殆どみられず、このため樹脂層の表面の更新が殆どなく、汚れ防止の効果を期待することができないものであった。またロジンのみで樹脂層を形成した比較例2は、水への溶出が大きいために短時間で樹脂層の全部が消失するものであり、防汚性能が短時間で失われ、実用的ではないものであった。
また、実施例4では、ロジンの固形分比率が多いために、浸漬後90時間で樹脂層が消失している。従って、より長期間の防汚性能を得るためには、ロジンの固形分比率は実施例1〜3のように43質量%未満であることが望ましい。
本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 アクリル樹脂
2 水溶性樹脂
3 樹脂層
4 住宅用水回り部材の基材

Claims (5)

  1. 水溶性樹脂を含有するアクリル樹脂の被膜で形成された樹脂層を表面に有することを特徴とする住宅用水回り部材。
  2. 水溶性樹脂はロジンであることを特徴とする請求項1に記載の住宅用水回り部材。
  3. 樹脂層の膜厚は7μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の住宅用水回り部材。
  4. アクリル樹脂に対する水溶性樹脂の比率は、固形分比で20質量%以上43質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の住宅用水回り部材。
  5. 上記住宅用水回り部材は排水口であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の住宅用水回り部材。
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