JP2009026282A - 産業活動に伴う環境破壊や健康被害を軽減する,効果的な対策の判定システム - Google Patents

産業活動に伴う環境破壊や健康被害を軽減する,効果的な対策の判定システム Download PDF

Info

Publication number
JP2009026282A
JP2009026282A JP2007212492A JP2007212492A JP2009026282A JP 2009026282 A JP2009026282 A JP 2009026282A JP 2007212492 A JP2007212492 A JP 2007212492A JP 2007212492 A JP2007212492 A JP 2007212492A JP 2009026282 A JP2009026282 A JP 2009026282A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
damage
health
substances
amount
information
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2007212492A
Other languages
English (en)
Inventor
Wakae Maruyama
若重 丸山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
RISK ANALYSIS LAB CO Ltd
RISK ANALYSIS LABORATORY CO Ltd
Original Assignee
RISK ANALYSIS LAB CO Ltd
RISK ANALYSIS LABORATORY CO Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by RISK ANALYSIS LAB CO Ltd, RISK ANALYSIS LABORATORY CO Ltd filed Critical RISK ANALYSIS LAB CO Ltd
Priority to JP2007212492A priority Critical patent/JP2009026282A/ja
Publication of JP2009026282A publication Critical patent/JP2009026282A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Medical Treatment And Welfare Office Work (AREA)
  • Management, Administration, Business Operations System, And Electronic Commerce (AREA)

Abstract

【課題】産業活動に伴う環境破壊や健康被害を軽減する,効果的な対策の判定システムを提供する。
【解決手段】産業活動において利用される物質が,環境汚染や人の健康被害をもたらす場合,被害を軽減するための対策を選択するため,対策の効果と費用のバランス解析を介してその妥当性を判断する,コンピュータ上で動作するシステムであり、科学情報や統計データの数学的処理によって,対策のメリットとデメリットを予測して具体的な数値に表し,費用対効果分析を通じて対策の妥当性を判断することを特徴とするシステムである。
【選択図】図3

Description

この発明は,人の健康被害を回避するための様々な施策に対し,その効果と必要性を客観的に判断するための最適手順に関するものであり,特に一般環境あるいは産業上で流通する物質による,直接・間接的な健康被害や経済的損害に対し,損害を防御またはできるだけ軽減させるための管理対策とその費用の妥当性を定量的に評価し,効果・経済両面から見て最適な対策を選択するための手順,およびその手順を達成するためのコンピューター上で動作するシステムと,それらシステムの一部をなし,コンピューター上で動作する専用プログラムおよび専用データベースに関するものである。
産業活動は多種多様な物質の使用により支えられている。こうした物質が環境中に放出され蓄積し,ある物は人や野生生物その他生態系全体に有害な影響を及ぼす可能性は大きく,じっさいに過去に健康被害の問題がいくつも発生した。しかし一方でこれらの物質が,快適で安全な生活のために必要なことも事実で,有害性のある物質であっても,利用価値の高いものであれば,使用を完全に放棄することは難しい。
物質の毒性は一般にその量に依存する。従って有害性を持つ物質であっても,健康に害を及ぼさない程度の量を環境中で維持できれば,有用な物質を使用しつつ健康被害を防ぐことも可能である。先進国であれば物質の安全管理は既に常識で,実際に産業上有用な物質は常に適切な管理が心がけられ,日本では化学物質の使用と廃棄は化審法やPRTR法など様々な法律で監視されている。
しかし一方で,物質の取り扱いにはそれなりの設備と相当の費用がかかり,そのため経済的な理由から,二重三重の防御策には手が回らない例もあり得る。過去の環境汚染や労働災害では,毒性に対する知識不足と,こうした対策にかけるべき費用のバランスを読み違えたことによる事故が目立つ。
たとえばアスベスト問題では,防塵マスクなど簡単な対策すら行われなかったことが,過去の症例や被害者の体験談から伺える。一方でアスベストは不燃性や耐薬品性に加えて安価な天然物であるため,むしろその価値が健康影響よりも重視されて世界各国で長年にわたって大量使用されたと考えられる。その時,数十年後に発生する健康被害の深刻さや被害者への補償金の問題などが懸念されていたら,当時からもっと安全な使い方に注意が払われたと推測される。
いったん被害が発生すると,責任企業だけでは負いきれないほど大きな損害になることも多く,その場合は,企業が被害者に賠償を行っても,その額は少なすぎて健康被害を十分補償できない可能性もある。出費が多大になることを恐れて責任を回避したがる企業が増えれば,被害者の救済が遅れ社会問題を引き起こす。
このようなことは,現在まだ毒性が低いとされる数々の物質でも,当然起こりうることと考えて備えておかなければならない。ここで言う物質とは,産業上で使用する物質のみに留まらず,人の生活活動の結果発生する非意図的な物質も含めて考えるべきである。例えばダイオキシンなどはこうした非意図的生成物で有害性をもつ物質の代表であるが,この発生源は殆どあらゆる燃焼反応過程で生成するため,産業に係わる企業だけでなく,ゴミの焼却に携わる行政自治体の機関であっても,その排出対策に係わらなければならなくなった。
そのため物質を安全に管理するための方法が,企業でも自治体でも模索されており,安全な物質管理を目指したシステムや,環境中の化学物質のリスク評価の方法論構築が急がれている。こうした潜在的な需要にあわせ,幾つかの実験的技術が既に提示されている(例えば,特許文献1,特許文献2参照)。
特開2006−268756号公報(第2−3頁) 特開2004−351357号公報(第2−3頁)
これまでの物質管理対策の問題点は,大きく分けて2つある。
1つは,対策の結果を明確な数値で予測することなしに,管理者の主観的な判断による「必要かつ十分な処置」が行われてきた点である。
リスク評価に従った明確なリスク管理は,行政に於いてもあまり例がない。環境中化学物質のリスク評価に関する様々な行政文書でも,実際のリスクレベルを説明したり,根拠となるデータが詳しく提示されたりすることはほとんどない。また法律が示す環境規制値などは,多くが科学的に推奨される基準値を参考にしているものの,基準値自体の決定方法が様々な不確実係数や安全係数などを含んでおり,規制の到達点を分かりにくくしている。
これを解決するための方向性としては,まず,起こりうるリスクを明確に設定し,そのリスクと対策の効果とを明確に関連づけることである。
汚染防止対策ならば対策の効果,すなわち将来の損害の軽減度を考える必要がある。対策の結果,環境中への物質の放出がどのくらい減少し,それによって物質の曝露による健康被害はどの程度減少するのかという予備解析は,リスク管理上重要である。
最近はリスク・コミュニケーションの必要性が叫ばれており,行政による施策でも将来起こるべきリスクを予測して備えるべきだとの認識は広まっている。しかし実際にはリスク予測が行われリスク管理やリスク・コミュニケーションに活用されたという例はほとんどない。数値をはっきり示して将来のリスク予測を行った例はさらに少なく,その理由はおそらく,リスク解析技術が未熟であるためである。例えばがんのリスク計算の一部を除いてリスク判定は「リスクが高いか低いか」といった非定量的な判断を下すに留まっている(例えば非特許文献1)。つい数年前まで健康リスク=確率という概念がなかったことと,コンピュータ・シミュレーションを駆使した毒性解析が発達途上であったことなど,健康被害の発生確率を的確に予測する技術が未完成なためであった。
最近になってようやく,健康リスクを定量的に評価する方法が整備されつつある。例えば動物実験データなどの科学文献から毒性と曝露量とを比較し,現状の汚染レベルから環境リスクや将来の疾病の発生確率などを予測する方法が提唱されている(特許文献3,非特許文献2参照)。
特開2005−339102号公報(第2−4頁) 厚生労働省,「労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会報告書」,平成17年5月労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会,http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/06/h0610−1b.html 丸山若重,青木康展,「生物試験と生理学的薬物動態モデルを用いて推定した,ダイオキシンの人への発がんリスク(Estimated cancer risk of dioxins to humans using a bioassay and physiologically based pharmacokinetic model)」トキシコロジー・アンド・アプライド・ファーマコロジー(Toxicology and Applied Pharmacology),エルゼビア社(Elsevier Inc.),2006年,第214巻,p.188−198.
従来の物質管理対策におけるもう1つの問題点は,対策にかかる費用の問題が表立って議論されない点である。
企業においても,行政においても,対策を立てる前に予めその費用対効果の分析行ったり,またその対策を施した状況でなお発生しうる事故の予測と損害の程度を予測する事などが重要と考えられるが,じっさいには事前の解析に時間も手間もかけられないのが現状である。
しかし,物質を適切に管理・使用するにはどうすれば良いのか,最小の費用で最大の効果を上げるにはどうすればいいのか,は,実は誰もが知りたいことである。もし,物質の使用と管理状況による健康被害やその他の経済的被害がどの程度になるのか,金額として予めわかっていれば,費用対効果の上で最も適切な対策を計画できるはずである。
このような費用と効果のバランス解析は,リスク管理の第一歩として徐々に認識されつつある。例えば環境中の化学物質の曝露によって発生する疾病の患者数を算出し,その疾病の治療費を社会が受け持つべきコストとして計算するなどの方法が提案されている(例えば,特許文献4,特許文献5参照)ほか,環境中の汚染物質削減対策の費用とそれによる環境中の量の減少分との間で費用対効果解析を行う方法も提言されている(特許文献6)。しかしこれらの方法で使われている費用対効果分析は,物質の使用を減らす方向にのみ設定されており,物質のもつ経済的効果や社会の安定化に及ぼすメリットを解析に組み込んでいないため,社会の実情を正しく反映したバランス分析とはなっておらず,社会システムの構築に積極的に活用しうる情報を提示できない。
特開2002−342563号公報(第2−4頁) 特開2007−011902号公報(第2−3頁) 特開2005−182451号公報(第2−3頁)
先に例をあげたように,環境汚染と健康被害の定量的解析方法や,それら被害を金額として換算する方法など,既に幾つかの部分的な技術は提唱され始めている。にもかかわらず,リスク管理や化学物質対策に生かす実用的かつ具体的な方法は,まだ提示されていない。これは,「何をもってリスク管理の目標とすべきか」という最も根本的な概念が定まっていないことが原因と考えられる。例えば既に照会されている幾つかの技術でも,それらの最終目的はばらばらで,ある方法では減らすべきリスクとして環境中の汚染物質濃度を挙げ(特許文献6),あるものは健康被害によるコスト増を挙げ(特許文献4,特許文献5),またある方法ではさらに漠然とした人の健康への危険度を挙げる(特許文献3)など,物質濃度や健康被害の定量解析法自体に注意を向けていて,その解析結果の意味するところや応用まで解釈が及んでいない。
さらに重要な欠陥は,どのリスク解析方法も,物質を使うメリットの側面を考慮していない点である。すなわち物質の使用の有害な面しか見ておらず,これでは「有害な物質をどうやって削減するか」という一方向にしか解析が働かない。また解析方法の設定も,多くの方法では化学物質管理の厳重化に向けて「より厳重な管理によって環境中の物質濃度が減少し,人への被害が減る」という大まかな方向性は揃っているものの,物質を扱う主体(企業や行政自治体など)がそのような管理によってどのようなメリットを受け,どの程度負担を強いられるかを解析する視点がない。こうした中途半端なリスク解析からは,単に「より安全を期した最良の対策を立てるべき」という,利用者の善意のみに頼った解決法しか期待できない。これでは,対策の費用負担や損害補償など,マイナス面をどう避けるかといった方法論の提示に結びつかないので,ビジネスにこれらのリスク解析法を利用する意味は薄い。
例えばアスベストという物質は吸入による肺疾患の可能性は昔から指摘されていたにもかかわらず,長年大量に使われてきた理由は,物性が優れており,耐火設備や補強など,社会の安全確保の面でのメリットと,安価で扱いやすいメリットとが重視されたことが原因と考えられる。しかし従来のリスク管理の指向は「危険な物だから排除する」という1方向にしか向かっていない。このようなアンバランスな解析方法は,「経済の持続的発展と環境保全の両立を目指す」という世界各国の努力に対し貢献できる方法とは言えない。またやみくもに何でも禁止することは,毒性影響の本体の研究など基本的な原因解明の道を閉ざしてしまい,次に同じような問題が起こったときの解決手段を自ずから減らしてしまうことになる。
実際の社会で物質利用の方法や量を決めるのは,メリットとデメリットのバランスであるはずで,過去に提唱された方法ではこの視点が欠けているため,実際に役立つ解析結果は期待できない。逆に,メリットとデメリットの両方を対等に扱うことで,現状に即した対策評価が可能となり,実社会に有用な物質管理対策の提示につながるのではないかと考えられる。
様々な物質の開発や使用は,産業上必要であるから行われているのであり,これを減らしたり使用中止にしたりすることによって,利便性が減少したり,安全性が低くなったり,コストが余計にかかるなどの弊害も発生するはずである。
しかし一方で,これら物質が不適切に管理され,人への健康被害が大きくなるのであれば,当然使用を中止しなければならないし,またその管理は適切でかつできるだけ安価である必要がある。
この判断をするためには,物質を使うことのメリットとデメリット,さらに物質を使わないことのメリットとデメリットの4面からのバランス解析を行う必要があり,しかもその判断はできるだけ早期になされる必要がある。
本発明ではこの問題を解決するため,物質の安全管理に必要な対策費用と,対策の結果発生しうる健康被害や経済的損害とを,両方とも妥当な金額に換算して数量として比較することを特徴とする,新しい解析システムを開発した。同時に,予め幾つかの対策とその費用を算出しておき,損害と対策費用との間でバランス解析を行えば,全ての面に於いてどの対策が最も必要な条件を満たせるか,という絞り込みや決定に役立つ。
これによって対策の費用対効果を分析することができ,物質の使用量に依存した健康被害や経済損害など,潜在的な損害を明確にするだけではなく,具体的な対策を立ててその妥当な費用を決定したり,被害発生時の補償に備えプールすべき妥当な金額を予算化するのにも役立つ。
<本発明の新規性>
すでに環境汚染物質削減をめざした解析システムが,特許としても幾つか申請されているが,従来の方法は全て最終目標として「物質を減らす」ことだけを目指している。しかし本発明のシステムは,物質使用の利点も同時に考慮するなど,相反する立場からのメリットとデメリットのバランス比較を含み,より実社会での損益の実情に沿った解析が可能である。また従来はバランス比較の具体的な方法やその概念が明確でなかったため実用性に乏しく,「リスクをはっきり見極め,それに対する対策をたてたリスク管理を」と言われている割には,解析の結果が有効活用できなかった。本発明のシステムはバランス解析の前に,全ての要素を金額など具体的で客観的な数値に表すことを特徴としており,解析結果を具体的なリスク管理の方針策定に利用しやすい。本発明のシステムは,健康被害や怪我の被害など人的被害の大小に基づきリスク評価を行っているが,将来これに企業の収益性などを対立項目として設けて解析すれば,企業活動にもより具体的な提言を出しうる。また,最近の行政の施策決定の方向性として,一方的な押しつけではなく,リスクとベネフィットを住民が理解し納得した上で施策を決定するといった,リスク・コミュニケーションが重視される傾向にある。本発明のシステムは,リスクの内容とその大きさを具体的な数値で説明しうるという特徴を持つため,リスク・コミュニケーションにおいて有効な情報提供手段となる。
<環境政策の効率化>
本発明のシステムを用いたリスクと対策の費用対効果分析によって,従来曖昧であったリスク管理対策の内容決定に関する具体的な指針が作成でき,かつ発生した事故への迅速な補償によって社会不安の拡大を防ぐ効果も持つ。本発明では産業上で利用する物質を対象としているが,システムの基本概念自体は物質以外の対象にも適用しうる。
例えば環境規制などの政策決定に対して,政策Aは費用がかかるが環境中濃度を極端に下げられ,一方政策Bは費用はかからないが環境中濃度の低減は政策Aに劣る,などといった2つの政策があり,どちらを選択するかリスク・コミュニケーションを行う場合,本システムの応用版で解析対象を政策の効果とし,同様に健康被害や政策実施にかかる予算の多寡などを,費用対効果分析によって選択できる。
もう一つの利点は被害額を予め予測できることである。政府も自治体も企業も,環境対策にかける費用は必ずしも潤沢ではない。限られた額で不十分な範囲の対策を立てなければならない場合,その対策の結果やむをえず起こりうる被害の程度を予測しておくことで,被害者に対する対応と補償費用を蓄えておくことができる。それによって被害発生時の救済が迅速になり,社会全体の安定性を保つことに寄与しうる。
<新規ビジネス創生>
本発明によってリスク評価の目標と方法が明確になるので,適切な方法に則れば誰でもリスク評価を行えることになる。それによって従来専門の学者・研究者が細々と行ってきたリスク評価が,ビジネスとして成立可能となる。本発明では,物質の使用増加による損害も利益も同時に扱うことを目的としており,相反する複数の立場からのメリットとデメリットをバランス比較するので,実社会での損益の実情に沿った解析が可能である。たとえば,企業の経営や自治体の施策における予算配分に対して,環境保全と人的被害の回避に関する具体的な提案を行う,新たな種類のシンクタンクのビジネス創生につながる。
<環境会計への応用と企業の意識改革>
企業の環境会計はこれまで,目的と到達点が不明確なまま行われてきたが,本発明を活用すれば,環境会計の方針に具体性が出る。たとえば本発明のシステムでは,物質管理のメリットとデメリットを,人的被害に対する補償費用という観点から損害計算を行って,環境への配慮の欠如が引き起こしうる事故の大きさを具体的に算出できるようになっている。これで環境会計の目的に対し,環境保全という従来の目的に加えて事故リスクへの備えが加わり,そのための資金の投入や対策の検討など,具体的な取組につながる。また本システムでは設定されていないが,物質の使用・不使用に対する収益の増減などの項目を組み入れれば,利益と損失のバランスを重視する企業にとって,より意味のある環境会計となり,環境保全対策のための基金や技術開発などを率先して行うようになる。
<周辺装置やデータベースやソフトウェアの商業化>
本発明では,扱う情報や出力される情報を,データベースや計算プログラムの形で扱っているため,システムに必要な設備を個別に商業化しやすい。必要な情報データベースや数値計算プログラムの目的と用途を詳細に説明しているため,個々のデータベースや計算プログラムの改良版を作成したり販売することが可能である。
本発明で提示されたシステムは,その広範囲な性質上,一度に完璧な物を構築することは難しく,計算用のプログラムやデータベースが幾種類も必要で,それらは最新の情報に基づいて常に更新される必要がある。新たな化学情報や経済的な状況の変化に応じて変化する必要がある。その意味では,本発明のシステムは,必要なステップを曝露量設定段階・健康リスク設定段階・被害額設定段階・対策費設定段階などに明確に区分されており,各ステップごとに改良を行う余地がある。本発明のシステムは,こうした外部製作のプログラムの受け入れが可能になっているので,システムの部分ごとの更新が可能である。そのためデータベースを個別に販売したり,計算用プログラムのバージョンアップ商品を販売するなど,関連のビジネスが派生すると考えられる。より充実したデータベースや改良されたプログラムが供給されることによって,リスク評価システムの品質も向上する。この種のデータベースは今まで,研究機関などで研究者個人が小規模に作成していたが,ほかに使い道がなく普及しなかった。本発明のシステムなど具体的な用途ができれば,データベースも計算用プログラムも付加価値を持った商品として開発や販売が活発となり,埋もれていた知識や技術の有効利用につながる。
またこれにより,従来は複雑で多岐にわたった環境リスク評価・管理システムが,誰でも容易に理解できるように細分化され,その結果ビジネスの用途に改良しやすくなり,化学物質対策の技術が,行政や公的な研究機関だけでなく,民間企業のレベルでも発達させられるようになる。
<ゲームソフトへの応用>
都市育成型シミュレーションゲームなどで,環境汚染リスクの推定が現実的に行えるようになり,ゲームの付加価値を高める。
<人材育成効果>
本発明を実施する結果,今まで漠然としていた環境リスク・健康リスクが,実用的で分かりやすくなることで,この方面の学問・研究が進む。またビジネスとしてリスク評価やコンサルティングの市場ができれば,この方面の人材育成が大学や公的・民間研究機関で盛んになる。その結果,化学物質評価業務の人材不足が緩和される。
<発明を実施するシステムの例>
本発明の目的に添ったシステムの例を図1に示す。
このシステムは,専用の計算プログラム(図1中Calc−表示)からなる複数のブロックと付属のデータベース群(図1中DB−表示)で構成された,コンピューター上で動作するシステムである。このシステムは図1中の点線枠で囲んだ曝露設定ブロック,健康リスク算出ブロック,被害額計算ブロック,対策費用計算ブロック,事故災害費用計算ブロック,最適対策選出ブロックの6つのブロックから構成される。ブロック外には付属データベースである環境濃度データベース(DB−1),人体情報データベース(DB−2),毒性情報データベース(DB−3),疾患情報データベース(DB−4),医療費情報データベース(DB−5),生活水準データベース(DB−6),物質情報データベース(DB−7),設備管理情報データベース(DB−8),事故災害情報データベース(DB−9)が備えられ,各ブロック内の計算プログラムに適宜接続して必要なデータを提示したり,また逆にプログラムの計算結果を取り込んでデータベースに格納する機能を持つ。
システム自体は各ブロックごとに区切られており,ブロックごとにデータ出力が可能である。必要に応じてブロック間の連結を変えることができ,また各ブロックを構成する計算プログラムやデータベースも,自作品と市販品どちらも導入できる。
<Step1.健康損害の算出>
曝露設定ブロック,健康リスク算出ブロックは,環境中に放出された物質が回り回って人の体内に取り込まれる量を計算し,この量に基づいて特定な疾患の発生頻度すなわち被害の患者数を計算するブロックである。
曝露設定ブロックは,環境中の物質濃度や物質排出量などから,人が曝露する物質の量とその経時変化・確率などを計算するブロックで,このブロックから出力された曝露量は,次の健康リスク計算ブロックで用いられる。
健康リスク計算ブロックは本発明のシステムの中核であり,動物実験や疫学など科学的データをもとに,数学的な操作で物質の量と健康被害の発生確率との関係付けを行う役割を持つ。例えば請求項3に記載した式1を求める作業は,この健康リスク計算ブロックの中で複数の計算プログラムとデータベースを使って行われる。本発明では健康被害として特定な疾患の患者数を算出することを特徴とする。
被害額計算ブロックは,物質によって引き起こされる疾患の治療費と生活費を計算し,それらの合計として1人分の被害額を計算するブロックである。この1人分の被害額に,健康リスク算出ブロックから算出された被害者数を掛け合わせて,疾患による健康損害額を計算する。
<Step2.事故損害の算出>
事故災害計算ブロックは,建物の安全性の増減を対象に,物質の使用・不使用によるメリットとデメリットを費用の形で算出するブロックである。例えば請求項6に記載した式3や式4はこのブロックで求められる。式3と物質使用量とに基づき,事故や災害の件数を予測し,次いで式4によって人的被害を算出する。この人的被害の程度は,怪我の治療費と生活費の面から費用に換算され,事故損害として算出される。この部分は,産業上で利用する物質が社会の安定化に寄与する場合のメリットを計算する機能を持ち,このシステムの特徴の一つである。例えばアスベストなどが長期曝露により健康被害を引き起こす一方で,火災防止や建物の強度補強など安全面に寄与する効果を算出し,これらメリットとデメリットを総合的に判断した場合に,どのような使用法または禁止策を講じることが適切であるかを判断する材料とする。このブロックでは事故や災害の件数と被害者人数を算出し,これに怪我の治療費を被害額計算ブロックで計算して掛け合わせ,事故損害として算出する。またこのブロックでは,請求項2の3)に記載したような,事故や災害の発生に伴う健康被害以外の経済的損害についても計算する。
<Step3.対策プランの設定と対策費の算出>
対策費計算ブロックは,物質の環境中への放出を抑制するために設置する様々な対策とその費用を計算するブロックである。このブロックの目的は,事故・疾患を含めた被害に対する様々な防御対策を組み合わせたセットを用意し,それらのセットにかかる費用を算出することである。ここで組み合わせた対策プランに従った場合の環境中の物質排出量をもとに,本システムの曝露計算ブロックで人体曝露量を計算し,健康リスク算出ブロックと被害額算出ブロックで健康損害額を計算する。
<Step4.各対策の費用対効果の計算>
最適対策選出ブロックは,疾患による健康損害と,事故や災害による事故損害と,事故・疾患を含めた被害に対する防御対策にかかる費用を比較してその効果を検討するブロックで,本システムの最終段階である。Step1とStep2で計算した健康損害と事故損害額を足し合わせ,Step3で設定した各対策プランに要する費用と,その対策の結果発生する健康・事故・経済的各損害とを比較して,費用対効果分析を行う。解析対象の物質が建物の耐久性や耐火性を増強する場合,物質の使用を減らすことは建物の安全性が低下することになる。その結果,事故損害が増加するが,一方で慢性的な曝露による健康被害が減少する。このような対立する両者の損失のバランス解析を行うことが,このシステムの特徴である。
<Step5.最適対策の選出>
最適対策選出ブロックでは,被害額と対策費用とを元に,最適の物質管理対策を選出する。選出の基準は対策費用に対する効果の大きさであり,また効果が被害額の減少で表される場合,環境中への物質の排出を削減するための対策費用,およびその対策によって削減される健康影響の被害額を計算したものが比較される。
例えば図2に示すように,現状の物質管理対策とその結果環境中の物質濃度がC0,患者数がP0,健康上の被害額がH0とする。現状より進んだ対策1を想定し,その結果環境中の物質濃度がC1,患者数がP1,健康上の被害額がH1とするとき,対策の効果としての被害の減額分はH0−H1で表され,対策1にかかる新たな費用をE1とすると,費用対効果計算プログラムを用いて(H0−H1)/E1のような費用対効果分析を行うことによって,対策1の効果が定量的に判定できる。対策とその費用,および対策の効果である被害額減少分のセットを複数作成して計算し,同様の解析を繰り返して(H0−H1)/E1の最も大きい対策を選択すれば,最もコスト・パフォーマンスのよい対策を選択できることになる。あるいは各対策プランの細部を少しずつ変化させて,費用対効果が最大になるまでStep1から4までの解析を繰り返す事によって,最適な対策の条件を絞り込むことができる。
<Step.6:リスクへの備え>
前述のStep.5までで既に,環境と人の健康への悪影響を抑制する最も効率的な対策の選定が十分に行われたと考える。しかし実際の対策に当てはめるためには,健康など人的側面の損害以外に経済的要素を考慮しなければならない場合がある。例えば図3で,i年後の出費(Xi)には,健康被害(Hi)とその発生確率(hi),環境修復費用(Ei)とその発生確率(ei),製品回収費用(Ri)とその発生確率(ri)などを考慮すると,事業所としての最終的な出費はそれらすべての総額ΣXiとなり,次式で表される。
ΣXi=Σ(Hi*hi+Ei*ei+Ri*ri)(図3参照。)
また曝露量の分布,曝露による発症の確率や発症時期のずれなどを考慮し,被害と対策の費用を経年的に算出して比較を行う。将来起こりうる被害の確率が低いと思われれば,対策費用を減らすという判断もあり得,その場合に予測される被害額の一定割合を,リスク対策として備蓄するという選択肢も起こりうる。このような汚染防御対策→被害の予測→リスク対策の定量解析のループ計算を繰り返すことで,妥当と考えられる対策の絞り込みが,効率的にできるようになる。
<健康リスク計算ブロックの詳細説明>
健康リスク計算の手順の例を図4に示す。
環境濃度データベース(図4.DB−1)の環境媒体中ぼ物質濃度情報をもとに曝露設定ブロックで求められた曝露情報(濃度,曝露期間,媒体取込量,変動・確率など)が曝露量として健康リスク計算ブロックに提示され(図4.A),これをもとに健康リスク計算プログラム(図4.Calc−3)は,曝露人口に対する疾患の発生数を予測計算する(図4.C,F)。健康リスク計算プログラムは,毒性情報データベース(図4.DB−3)から物質ごとの毒性情報および代謝経路など物質の体内運命情報を得(図4.B),疾患情報データベース(図4.DB−4)からは疾患の発生部位や関連組織および潜伏期間などの情報を得る。これらデータベースからの情報は,健康リスク計算の精度向上につながる。
本システムでは健康リスク計算プログラムで使用する量−反応関係式を求めることを特徴としており,この作業は量−反応関係計算プログラム(図4.Calc−5)によって行われる。量−反応関係計算プログラムは健康リスク計算プログラムのリスク予測精度を上げるための補助プログラムのひとつで,毒性情報データベースから物質の投与量に対応した有害作用の程度を示す数値データを取込み,このデータにある種の数学的な処理を施して,物質の曝露量(D)と取込時間dおよび被害発生率(p)に関する関数fをf(D,d)=p(式1)の形で導き出す。
関数fを求める方法は,例えば曝露量データを入力すると被害発生率が計算されるような単純な計算式のテンプレートを予め作成しておき,実際の曝露量と被害数のデータを検証に用いて,フィッティング操作などの数学的処理をコンピュータ上で繰り返すことで得られる。なお,フィッティング機能は市販のシミュレーション・プログラムにも既に導入されており,最小二乗法を使ったパラメータ最適化などの機能を含む。
体内動態計算プログラム(図4.Calc−4)も健康リスク計算の精度を上げるための補助プログラムで,組織レベルや細胞レベルの毒性応答にまで踏み込んだ,詳細な定量解析を可能にする。このプログラムは,生理学的薬物動態モデル(PBPKモデル)という数理モデル理論に基づき,コンピュータ上で仮想人体を作り上げ,疾患の標的組織に物質が到達する時の量と時間を予測する。動物で得られた毒性データをもとに,標的組織における物質と毒性の量−反応関係を確立させ,人の個体レベルの疾患発生予測に導く。この方法は毒性量を予測する最も正確な方法として,米国やカナダなどの環境保護庁で研究されている方法であるが,日本ではまだ殆ど取り入れられていない。本発明のシステムではこの新しい解析方法を導入し,今までにない正確な毒性発現予測を行うことができる。
<被害額計算ブロックの詳細説明>
被害額の計算手順の例を図5に示す。
被害額計算ブロックでは,医療費計算プログラム(図5.Calc−6)と生活費計算プログラム(図5.Calc−7)を用いてそれぞれ計算した医療費と生活費の和を,人の健康被害に対する費用として算出する。治療すべき疾患として物質曝露が原因でおこる具体的な疾患を選択すれば疾病の健康損害額を計算することになり,また事故などによる怪我を選択すれば,事故損害を計算することになる。算出された1人分の医療費と生活費の和に,前項で算出した健康リスク=患者数を乗じたものが,被害額である。この被害額は必要な年数分すべて計算する。
疾患情報データベース(図5.DB−4)は,対象となる疾患の治療法と治療に要する時間の情報を提示し,医療費情報データベース(図5.DB−5)は医療処置・投薬・検査・入院を含む治療法とその価格に関する情報を提示する。生活費に関する情報は生活水準情報データベース(図5.DB−6)から抽出して用いる。
「毒性情報データベース」において,疾患が複数リストアップされた場合は,その各々について医療費を計算する。各疾患の発生頻度に応じて,各疾患の治療に要する費用の重み付けを行い,「健康リスク算出ブロック」から算出される各疾患の発生確率と掛け合わせ,生活費などを全て足し合わせて,健康損害を算出する。
<対策費用計算ブロックの詳細説明>
対策費用計算ブロックでは,対策費用計算プログラム(図1.Calc−8)を用いて,有害物質の環境中への放出の抑制対策にかかる費用を,対策費として算出する。放出抑制対策には,▲1▼現行の対策,▲2▼有害物質の環境中への放出を防ぐ方法,▲3▼現在使用中の有害物質の使用を中止する方法,▲4▼現在使用中の有害物質から他の物質へ転換する方法,および▲5▼これらの対策によって減少する企業の利益分,を含む。対策の具体的な方法とその費用は,設備管理情報データベース(図1.DB−8)から必要な情報を抽出して計算に用いる。対策費は必要な年数分すべて計算され,結果は対策費として出力され,最適対策選出ブロックに送られて,費用対効果計算プログラム(図1.Calc−10)で費用対効果分析にかけられる。
対策費用計算プログラムはまた,選択した対策によって物質の環境中への排出量がどのくらいになるのかを計算する。得られた排出量は曝露設定ブロックの環境濃度計算プログラム(図1.Calc−2)に提示され,曝露量の計算に使われる。対策の効果である被害減額と対策費用などのバランス解析をコンピューター上でループ解析することによって,最適対策の絞り込みを行える。
実施例1)企業に対し効率的な化学物質対策を提案する。
企業などの事業所が業務で扱う有害物質の使用・管理方法を,対策費・利益・被害補償額のバランスから解析し,最も適切と思われる使用プランを提言する。
環境中に排出され,大気に蓄積して人の健康に害を与えうる物質Aがある。大気中濃度が1mg/mのとき,10万人に対して5人の割合で疾患を惹起する。ある企業が毒性が強い物質Aから物質Bへの転換を考えており,5年をめどに転換を図るべきか否かを助言する。物質Bは毒性が物質Aの1/10であるが,価格は1.5倍である。選択肢として,次の3つを想定した。
シナリオ1:最初の年から物質Bに転換する。
シナリオ2:5年かけて徐々に物質AからBに転換する。
シナリオ3:このまま物質Aを使い続ける。
また上記シナリオ全ての場合に,初年度1億3千400万円,1〜4年度に340万円をかけて従業員個人の曝露防御措置をとり,工場など建物からの物質の安全排出装置を備える。これが対策費用となる。また売上は初年度が6億円で,毎年2%ずつ上昇するものと仮定すると,支出に対して利益が5年以内にマイナスになるかどうかも,同時に推定する。
シナリオ1〜3の計算結果は次のようになった。
まずシナリオ1の場合,物質Bの大気中濃度が年々上昇するにつれて,物質Bによる患者数が年々増加する(図6.A−1参照)。しかし売上の増加のため,被害額と対策費を差し引いても,5年以内に利益が赤字になることはない(図6.A−2参照)。
シナリオ2の場合は,物質Aの濃度が徐々に頭打ちになるため,患者数は5年目でほぼ頭打ちとなる(図6.B−1)。しかし患者数はシナリオ1の場合の約5倍で,被害額の上昇が売上に拮抗し,1年目より利益は赤字に転じる(図6.B−2)。
シナリオ3の場合,物質Aの大気中濃度の上昇が続き,患者数は5年目で最大360人に達する(図6.C−1)。
これらの結果から,直ちに物質Aから物質Bへの転換を行うことが,5年以内の損失を少なくするために必要であるとの提言を行う。従来の経営判断のように,健康被害による損失を考慮しない場合,より高価な材料である物質Bへの転換は利益の減少につながる。しかし昨今のアスベスト補償問題や自動車公害の訴訟問題から類推すると,汚染物質を排出した事業所に責任と補償を求める傾向が強まると考えられ,そのため今後はこのように被害額を予測する解析技術が必要となる。
<物質使用による社会不安の予測と対策の選定>
本発明のシステムによる健康リスクと被害の情報をもとに,環境中の規制濃度を決定したり,被害者への早期対応を行えば,社会不安が軽減される。
例えばアスベストなどのように曝露から長い潜伏期間を経て散発的に患者が発生するような健康問題の場合,曝露量が最多な人が発症する時期はi年後で,発症確率は10%とする。曝露量が最少な人はその5年後(i+5)に発症し,発症確率が3%とすると,曝露量がある確率分布をもって変動するとき,その結果起こるi年後からi+5年後までの各年ごとの発症人数は,本システムのプログラムで各年ごとのシミュレート値を積分することで算出可能である。
シミュレートの結果,X軸に時間,Y軸に発症人数をプロットした患者数の経年曲線が得られ,これと1人分の被害額を掛け合わせたものが,被害額の経年変動の曲線で表される。このプロットを満たす関数Fを各種数理モデルにてフィッティング操作で求め,関数Fを時間方向に積分すれば,被害額の総額が得られる。このように,いつ,何人の患者が見込まれ,その治療費総額がどのくらいになるのか,など予め想定することで,対策費用と被害発生時の出費のバランスを解析することができる。
また実際の人の集団には様々な個体差があるが,物質の曝露量や,曝露から疾患発生に至る潜伏期間など,個人差による変動が見込まれる部分は,これら変動を確率分布関数で表し,計算時にこの確率情報を組み込むことで,より範囲の広い被害予測ができる。
<行政や企業に対するコンサルティング>
企業に対して,本発明に基づいた化学物質リスクの解析を行い,被害の最適防止対策や被害額の算定を提案できる。またアスベストの被害例などのような,産業界で使われる物質が原因で起こる健康被害に対し,行政がその救済に必要な資金の備蓄額を,予め計算するのに役立つ。特に住民とのリスク・コミュニケーションに威力を発揮する。

Claims (9)

  1. 物質や自然現象や社会制度が原因で人の健康が損なわれる可能性がある時,その被害を抑えるべく施す最適な対策を選択するため,起こりうる被害の状態を予測し客観的な数値で表すとともに,対策の費用と被害とを定量的に比較する操作を介して,その対策の効果を判定することを特徴とする,施策の判断方法。
  2. 一般環境に存在するかまたは産業上使用されている物質が惹起しうる,以下の1)〜3)の損害について,これら損害を軽減するための最適な防御対策とその費用を決定するためのシステムであって,予め想定した防御対策の効果として起こりうる1)〜3)の損害を算出し,その損害額と防御対策費用の比の大小に基づいて最適な対策を選出することを特徴とした,コンピューター上で動作する,物質管理対策の決定システム。
    1)有害物質の接触や取込によって起こる健康被害を妥当な費用に換算した,健康損害。
    2)突発的な事故や災害によって起こる健康被害を妥当な費用に換算した,事故損害。
    3)有害物質・事故・災害による損害のうち,1)と2)以外の経済的損害。
  3. 一般環境に存在するかまたは産業上使用されている種々の物質が,通常の生活を介して非意図的に人体に取り込まれた場合に,発生が予想される健康被害の種類と量を予測するためのシステムであって,次の4)に記載する特徴を備えた,コンピューター上で動作する健康リスク算出システム。またこの方法で算出した健康リスクをもとに請求項2に記載した健康損害を計算し,これに基づき請求項2に記載した方法で決定した物質管理対策。
    4)物質の取込量Dと取込時間dの増加に依存して増える健康被害の被害者数をpとしたとき,Dとdに依存しf(D,d)=p(式1)を満たすような関数fを求めることを特徴とする,健康リスク算出方法。関数fは物質の種類と毒性・疾患の種類により異なり,定量的情報を含む科学データを基に,コンピュータ上で数学的な操作によりできるだけ簡素な形の式として求められることを特徴とする。
  4. 健康被害を金額に換算するためのコンピュータ上で動作するシステムであって,次の5)に記載する方法で1人あたりの健康損害額を計算する,健康被害額算出システム。
    5)疾患i(i=1,2,..)の治療期間をEi,1日の医療費の総計をMiとし,治療期間のうち生活費を補填すべき最長日数Gと1日分生活費をFとし,1つ以上の疾患を被った患者が治療期間中に必要とする費用をJとするとき,J=Σ(Mi*Ei)+F*G(式2)で求めることを特徴とする,1人あたり健康被害額算出方法。
  5. 請求項4に記載した方法によって算出した1人あたり健康被害額と,請求項3に記載した方法によって算出し確率情報を含んだ健康リスク値とを掛け合わせて健康損害額を算出し,この健康損害に基づいて,請求項2に記載した方法で妥当な管理対策を決定する,物質のリスク管理対策決定システム。
  6. 一般環境に存在するかまたは産業上使用されている種々の物質が,事故や災害の程度や発生件数の増減効果を持つ場合,この物質の使用量に依存した事故や災害の発生予測件数を次の6)の方法で算出することを特徴とする,事故リスク算出システム。
    6)産業における物質の使用量がAのとき発生する事故・災害の件数をBとするときB=g(A)(式3)を満たす関数gを求め,その事故や災害の被害者数RについてR=h(B)(式4)を満たす関数hを求める。関数gおよびhは各物質に依存した関数で,過去の事故・災害の実例報告データや科学的予測によるデータを基に,コンピュータ上で数学的な操作によってできるだけ簡素な形の式として求められることを特徴とする。
  7. 請求項6に記載した事故リスク算出システムを用いて算出した事故の被害者数と,請求項4に記載した方法で算出した1人あたり健康被害額とを掛け合わせて事故損害とし,この事故損害額に基づいて請求項2に記載したシステムにより対策を決定する,リスク管理対策決定方法。
  8. 次の7)〜9)のいずれかの機能を備え,結果をハードウェアやインターネットまたは着脱可能な媒体を介して出力可能で,請求項2や請求項5や請求項7に記載したシステムに組み込まれてコンピューター上で動作する,単独のプログラムまたは複数のプログラムの集合体。
    7)請求項3の式1に記載した関数f,請求項6の式3および式4に記載した関数gと関数hなどを求めるため,参考データを基に数学的操作によって,目的に添った関数を導くプログラム。
    8)7)に記載したプログラムに必要なデータを供給するため,適切なデータベースにアクセスしてデータを検索・ダウンロードするプログラム。
    9)請求項2〜7に記載したシステムおよび方法を用いて計算した各種の結果を,数値・文字・画像などで構成される適切なデータに変換し,このデータを新たなデータベースの形にまとめて保存するプログラム。
  9. 以下の10)から18)に記載する機能のいずれかを備えたデータベースであって,請求項2および請求項7に記載したシステムに付属して使用可能なデータベース。
    10)大気・海洋・湖沼・河川・土壌・底質・岩石などの様々な環境媒体中またはその環境媒体に生息する動植物中に存在する,特定な物質の濃度情報を格納する環境濃度データベース。
    11)人体の解剖学的・生理学的情報および生活・運動に関する数値情報を格納する人体情報データベース。
    12)物質が生物に対して及ぼす毒性の種類と量の情報を格納する毒性情報データベース。
    13)人の病理学的情報や疾患の種類と状態およびその治療法と治療にかかる時間に関する情報を格納する疾患情報データベース。
    14)個々の疾患の治療に要する医療費の情報を格納する医療費情報データベース。
    15)一般市民の衣食住に関する価格情報を格納する生活水準データベース。
    16)物質の物理化学的性質に関する情報を格納する物質情報データベース。
    17)物質の安全な管理・使用法およびそれらにかかる費用の情報を格納する設備管理情報データベース。
    18)産業上で使用する物質の量に依存した事故や災害の発生件数と被害者数に関する情報を格納した,事故災害情報データベース。
JP2007212492A 2007-07-21 2007-07-21 産業活動に伴う環境破壊や健康被害を軽減する,効果的な対策の判定システム Pending JP2009026282A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007212492A JP2009026282A (ja) 2007-07-21 2007-07-21 産業活動に伴う環境破壊や健康被害を軽減する,効果的な対策の判定システム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007212492A JP2009026282A (ja) 2007-07-21 2007-07-21 産業活動に伴う環境破壊や健康被害を軽減する,効果的な対策の判定システム

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009026282A true JP2009026282A (ja) 2009-02-05

Family

ID=40398006

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007212492A Pending JP2009026282A (ja) 2007-07-21 2007-07-21 産業活動に伴う環境破壊や健康被害を軽減する,効果的な対策の判定システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2009026282A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015011655A (ja) * 2013-07-02 2015-01-19 中日本ハイウェイ・パトロール東京株式会社 流出物拡散防止支援装置、流出物拡散防止支援プログラムおよび記憶媒体
JP2020042548A (ja) * 2018-09-11 2020-03-19 株式会社FiNC Technologies 健康評価システムおよび健康評価プログラム
WO2020054368A1 (ja) * 2018-09-11 2020-03-19 株式会社FiNC Technologies 健康評価システムおよび健康評価プログラム
JP2020087077A (ja) * 2018-11-28 2020-06-04 株式会社東芝 安全性評価システム、安全性評価方法、及び安全性評価プログラム
JP2021033619A (ja) * 2019-08-23 2021-03-01 株式会社竹中工務店 リスク評価支援装置及びリスク評価支援プログラム
KR102227958B1 (ko) * 2019-11-11 2021-03-17 경북대학교 산학협력단 건설 현장 미세먼지 보상금 산정 시스템 및 방법
CN116822970A (zh) * 2023-08-30 2023-09-29 湖北省生态环境科学研究院(省生态环境工程评估中心) 高环境健康风险污染物监管优先级的自动判断方法及系统

Cited By (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015011655A (ja) * 2013-07-02 2015-01-19 中日本ハイウェイ・パトロール東京株式会社 流出物拡散防止支援装置、流出物拡散防止支援プログラムおよび記憶媒体
JP2020042548A (ja) * 2018-09-11 2020-03-19 株式会社FiNC Technologies 健康評価システムおよび健康評価プログラム
WO2020054369A1 (ja) * 2018-09-11 2020-03-19 株式会社FiNC Technologies 健康評価システムおよび健康評価プログラム
WO2020054368A1 (ja) * 2018-09-11 2020-03-19 株式会社FiNC Technologies 健康評価システムおよび健康評価プログラム
JP2020042547A (ja) * 2018-09-11 2020-03-19 株式会社FiNC Technologies 健康評価システムおよび健康評価プログラム
JP2020087077A (ja) * 2018-11-28 2020-06-04 株式会社東芝 安全性評価システム、安全性評価方法、及び安全性評価プログラム
JP7114447B2 (ja) 2018-11-28 2022-08-08 株式会社東芝 安全性評価システム、安全性評価方法、及び安全性評価プログラム
JP2021033619A (ja) * 2019-08-23 2021-03-01 株式会社竹中工務店 リスク評価支援装置及びリスク評価支援プログラム
JP7379797B2 (ja) 2019-08-23 2023-11-15 株式会社竹中工務店 リスク評価支援装置及びリスク評価支援プログラム
KR102227958B1 (ko) * 2019-11-11 2021-03-17 경북대학교 산학협력단 건설 현장 미세먼지 보상금 산정 시스템 및 방법
CN116822970A (zh) * 2023-08-30 2023-09-29 湖北省生态环境科学研究院(省生态环境工程评估中心) 高环境健康风险污染物监管优先级的自动判断方法及系统
CN116822970B (zh) * 2023-08-30 2023-11-21 湖北省生态环境科学研究院(省生态环境工程评估中心) 高环境健康风险污染物监管优先级的自动判断方法及系统

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Rababah et al. Analyzing the effects of COVID‐19 pandemic on the financial performance of Chinese listed companies
Meng et al. The relationship between corporate environmental performance and environmental disclosure: An empirical study in China
Levine et al. Bank liquidity, credit supply, and the environment
Akpalu et al. Gold mining pollution and the cost of private healthcare: the case of Ghana
Lowenkamp et al. The federal Post Conviction Risk Assessment (PCRA): A construction and validation study.
JP2009026282A (ja) 産業活動に伴う環境破壊や健康被害を軽減する,効果的な対策の判定システム
Hultman et al. Climate risk
Chen et al. New evidence of moral hazard: Environmental liability insurance and firms' environmental performance
Damania et al. A future for wild tigers
Li et al. Responses to the COVID-19 pandemic have impeded progress towards the Sustainable Development Goals
Ing et al. COVID-19: Impacts on Indonesia’s trade
Najaf et al. Role of ICT for workers’ safety at the workplace during pandemics: evidence from global data
Qadri et al. Overflow Effect of COVID‐19 Pandemic on Stock Market Performance: A Study Based on Growing Economy
Ampofo et al. An empirical investigation of COVID-19 effects on herding behaviour in USA and UK stock markets using a quantile regression approach
Quah et al. Forest fires and environmental haze in Southeast Asia: Using the ‘stakeholder’approach to assign costs and responsibilities
Kearins et al. International financial institutions and the Three Gorges hydroelectric power scheme
Raucher et al. Benefit-cost analysis for drinking water standards: efficiency, equity, and affordability considerations in small communities
Ashworth et al. COVID-19 research and policy analysis: Contributions from environmental economists
Stanton et al. Climate and development economics: Balancing science, politics and equity
Yakovleva et al. Monitoring regional development based on" green" indicators
Nevitt Climate Security Insights from the COVID-19 Response
Iheonu et al. Human rights in Sub Saharan Africa: Understanding the influence of militarization, governance and democracy
Zhang et al. Flow and Ebb: Factors affecting SMEs to exit from the DRP market during pandemic
He et al. The possibilities and limits of insurance as governance in insuring pandemics
Fiamos et al. The Integrated Development and Environmental Additionally Assessment System (IDEAAS)

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070918

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20080516

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080515

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080722

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080806

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20080926

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20081007

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081030

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20090302

A912 Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912

Effective date: 20090319