JP2009025051A - 有機ハロゲン化合物の簡易測定方法及び装置 - Google Patents

有機ハロゲン化合物の簡易測定方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】土壌や地下水に含まれるPCB類を始めとする有機ハロゲン化合物をオンサイトで、簡易的且つ短時間、高検出感度で検出する。
【解決手段】予め有機ハロゲン化合物を複数の異なる濃度に調整し、濃度毎に発光細菌との接触時間による発光量の経時変化パターンを取得するパターン取得工程と、濃度毎の経時変化パターンにおける発光量の低下挙動の違いに基づいて、経時変化パターンを接触時間の初期、中期、後期に区分する区分工程と、土壌又は地下水から採取したサンプル液と発光細菌とを接触させて発光細菌による発光量の経時変化を測定する測定工程と、測定したサンプルの経時変化データと予め取得した経時変化パターンとを照合する照合工程と、照合した経時変化データにおける発光量の低下挙動が、初期、中期、後期の何れにおいて発現するかによりサンプル液の有機ハロゲン化合物濃度を判定する判定工程と、を備えた。
【選択図】 図3

Description

本発明は、有機ハロゲン化合物の簡易測定方法及び装置に係り、特に土壌や地下水に含まれるPCB類やダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物の濃度を、微生物を利用した毒性、有害性試験により簡易的にスクリーニングする方法に関する。
2002年に制定された土壌汚染対策法によって、テトラクロロエチレンやトリクロロエチレン等の有機塩素系化合物、カドミウム、六価クロムなどの重金属類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)や有機リン化合物等の農薬類が特定有害物質として規制対象となっている。ダイオキシン類についても、ダイオキシン類対策特別措置法等によって環境基準が制定されている。
その中でもPCBは、化学的、熱的に安定であるため、トランスやコンデンサ等の電気機器の絶縁油や可塑剤、化学機器の熱媒体等に広く適用されていた。しかし、現在では生体に対する有害性が指摘されており、製造及び使用が禁止されるとともに、PCBによる土壌及び地下水汚染の調査や浄化対策の必要性が高まりつつある。
土壌汚染調査は、初めに広範囲にわたる表層調査を実施し、汚染の疑わしいエリアの絞り込みを行なう。絞り込みを行った後、不透水層までの詳細調査を行なうが、絞込み精度を高めるためには更に詳細な調査を行なう必要がある。また、汚染が存在した場合は浄化対策をとるが、一般的には、対象土壌を掘削して、場外搬出した後廃棄処分するか、或いはオンサイトの浄化処理を行った後埋め戻している。この際、掘削管理が非常に重要となるが、事前に行なった詳細調査によるコンター図だけでは不十分であり、分析しながら掘削を行なう必要がある。このとき、通常のPCB分析手法としては、GC−LRMSやGC−HRMS、GC−ECI等の機器分析によって測定するため、分析結果が得られるまでには数日間かかるという問題がある。
これらの機器分析では、サンプルを分析施設へ持ち込む必要があること、前処理や測定に長時間を要すること、専門的な分析者が必要であること、高コストであること等の問題がある。このため、汚染の可能性のあるエリアを全て網羅するには時間、費用ともに莫大なものとなる。
このようなことから、JISK0311:1999に規定されている公定法分析を補完し、高濃度汚染の有無の判断を現場で測定が可能で、簡易且つ安価に分析できる方法が望まれている。これまで、土壌汚染物質の簡易分析法としては、例えば特許文献1では、土壌等に含まれる有機ハロゲン化合物類をトルエン抽出し、その後金属ナトリウムと反応させて水相に移行させた後、滴定法、比濁法、分光光度法により有機ハロゲン化合物を分析する方法が提案されている。
また、特許文献2では、有機ハロゲン化合物の分析において、金属ナトリウムと陽イオン交換樹脂からなる分析用前処理キットを用いることで、前処理操作を簡易化する方法が提案されている。
また、特許文献3及び4では、主に、ダイオキシン類を対象とした簡易分析方法が提案されている。
特開2006−177981号公報 特開2006−226813号公報 特開2004−156970号公報 特開2001−305121号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、操作が煩雑である上、分析時間が最短でも8時間以上かかるという問題があった。また、PCBの検出可否や検出感度については不明であった。
特許文献2の方法では、有機ハロゲン化合物の濃度が数十〜数千ppmレベルの高濃度を対象としており、低濃度の場合は検出できない虞があった。
特許文献3及び4の方法では、公定法を若干改良したものであり、作業や分析時間を考慮すると、簡易的な方法とはいえなかった。
このように、上記特許文献1〜4の方法では、いずれもPCBを含む有機ハロゲン化合物をオンサイトで測定できるものではなく、簡易的且つ短時間、高検出感度でスクリーニングできるものでもなかった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、土壌や地下水に含まれるPCB類を始めとする有機ハロゲン化合物をオンサイトで、簡易的且つ短時間、高検出感度で検出できる簡易測定方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、土壌又は地下水に含まれる有機ハロゲン化合物の簡易測定方法において、予め前記有機ハロゲン化合物を複数の異なる濃度に調整し該濃度ごとに、発光細菌との接触時間による発光量の経時変化パターンを取得するパターン取得工程と、前記取得した濃度ごとの経時変化パターンにおける発光量の低下挙動の違いに基づいて、該経時変化パターンを前記接触時間の初期、中期及び後期に区分する区分工程と、前記土壌又は地下水から採取したサンプル液と発光細菌とを接触させて前記発光細菌による発光量の経時変化を測定する測定工程と、前記測定したサンプルの経時変化データと前記予め取得した経時変化パターンとを照合する照合工程と、前記照合した経時変化データにおける発光量の低下挙動が、前記初期、中期及び後期の何れにおいて発現するかにより、前記サンプル液の有機ハロゲン化合物濃度を判定する判定工程と、を備えたことを特徴とする有機ハロゲン化合物の簡易測定方法を提供する。
発明者らは、有機ハロゲン化合物の所定濃度ごとに、ある一定の発光量の経時変化挙動(パターン)を示すことを見出した。さらに、発光量の経時変化挙動を初期、中期、後期と区分した各領域ごとに発光量の増減を判断することで、有機ハロゲン化合物の濃度を高い検出精度で推定できることを見出した。
請求項1によれば、予め取得した各濃度ごとの発光量の経時変化挙動(パターン)を接触時間の初期、中期、後期に区分し、未知のサンプル液の発光量の経時変化データにおける低下挙動が何れの領域で発現するかを判断することで、未知のサンプル液における有機ハロゲン化合物の濃度を判定できる。したがって、サンプル液を分析施設へ持ち込み、機器分析する必要がなく、オンサイトで簡易的且つ短時間、高検出感度で検出できる。なお、発光量の経時変化パターンは、予め標準データとして用意しておいてもよいし、現場で各濃度のサンプル液を調製してその場で作成してもよい。なお、発光量の経時変化挙動(パターン)を初期、中期、後期に区切る際、各領域は一部又は全部が重複してもよく、要求される検出精度に応じて区切り方を適宜変更することもできる。
請求項2は請求項1において、前記有機ハロゲン化合物は、PCBであることを特徴とする。
請求項2によれば、PCBは高い検出精度が必要であり、本発明が特に有効である。
請求項3は請求項1又は2において、前記測定した経時変化データにおいて、接触時間0〜1分の間を初期とし、接触時間1〜30分の間を中期とし、接触時間30〜120分の間を後期とすることを特徴とする。
請求項3によれば、低濃度のPCBも精度よく検出できる。
請求項4は請求項1〜3の何れか1項において、前記サンプル液は、前記有機ハロゲン化合物を有機溶媒に溶解させた後、濃縮したものであることを特徴とする。
有機溶媒は、有機ハロゲン化合物の溶解性が高いため抽出し易く、揮発性も高いので有機ハロゲン化合物を短時間で濃縮できる。したがって、低濃度の有機ハロゲン化合物でも短時間且つ高検出精度で検出できる。
請求項5は請求項4において、前記有機溶媒は、メタノールであることを特徴とする。
請求項5によれば、検出対象物質である有機ハロゲン化合物を溶解し易く、効率よく抽出できるとともに、発光細菌へのダメージも少なくすることができる。
請求項6は請求項1〜5の何れか1項において、前記サンプル液と接触させる前記発光細菌の菌体濃度を5000〜40000CFU/mLとすることを特徴とする。
請求項6によれば、菌体濃度を5000〜40000CFU/mLとすることで、高い検出感度を維持できる。なお、菌体濃度を8000〜20000CFU/mLとすることがより好ましい。
請求項7は請求項1〜6の何れか1項において、前記発光細菌と接触させるサンプル液が水溶液である場合は、前記サンプル液量Xと前記発光細菌の菌体量Yとの質量比X/Yを1/2以下とし、前記発光細菌と接触させるサンプル液が有機溶媒である場合は、前記質量比X/Yを1/200以下とすることを特徴とする。
菌体量に対してサンプル液の割合が多すぎると、発光細菌がダメージを受けて検出精度が低下する。請求項7によれば、サンプル液が水溶液である場合は、サンプル液量Xと発光細菌の菌体量Yとの質量比X/Yを1/2以下にするので、検出精度の低下を抑制できる。また、サンプル液が有機溶媒である場合は、発光細菌が有機溶媒によるダメージを受け易いが、菌体量Yの割合を増やす(質量比X/Yを1/200以下とする)ことで検出感度の低下を抑制できる。
本発明の請求項8は前記目的を達成するために、土壌及び地下水に含まれる有機ハロゲン化合物の簡易測定装置において、前記土壌及び地下水から採取したサンプル液と有機溶媒とを混合する混合部と、前記混合により、前記有機ハロゲン化合物を抽出した有機溶媒を濃縮する濃縮部と、前記濃縮した有機溶媒に前記発光細菌を接触させ、該発光細菌による発光量の経時変化を検出する検出部と、を備えたことを特徴とする有機ハロゲン化合物の簡易測定装置を提供する。
請求項8によれば、前処理を含めた分析操作を自動的に行えるので、分析が簡易的に行えるとともに、ハンドリングによる誤差を低減できる。
本発明によれば、土壌や地下水に含まれるPCB類を始めとする有機ハロゲン化合物をオンサイトで、簡易的且つ短時間、高検出感度で検出できる。
以下、添付図面に従って本発明に係る有機ハロゲン化合物の簡易測定方法及び装置の好ましい実施の形態について説明する。
本実施の形態は、土壌や地下水から採取したサンプル液に含まれるPCB濃度を、オンサイトで簡易的に一次スクリーニングする例で説明する。
発光細菌は、発光細菌の呼吸機構に伴って発光するが、この過程でPCB等の有害性物質が作用すると発光細菌がダメージを受けて発光が抑制される。本発明は、この性質を利用し、発光量の経時変化を測定することで土壌等から採取したサンプル液Bに含まれるPCB濃度を検出するものである。
本発明に使用される発光細菌としては、例えば、海洋性発光細菌(Vibro fischri)などが挙げられる。
本発明が対象とする有機ハロゲン化合物としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン類、クロロフェノール類、PCB類、ダイオキシン類、クロロベンゾフラン類、各種ブロモ化合物、各種のハロゲン系農薬類などの多種類の有機ハロゲン誘導体が挙げられる。中でも、PCB類、ダイオキシン類の検出に好適である。
まず、本発明に使用される簡易分析装置の概要について説明する。
図1は、本発明に使用される簡易分析装置10の概略構成の一例を示す概略図である。図2は、図1の検出装置16を説明する概略図である。
簡易分析装置10は、図1及び図2に示すように、主に、土壌から採取したサンプル液に発光細菌を含む菌液を混合した液を保持する複数のセル12…を備えた専用プレート14と、該専用プレート14を収納し、サンプル液の発光量を検出する検出装置16と、該検出装置16とPCケーブル17を介して接続され、検出結果を表示するPC(コンピュータ)18と、を備えている。
これにより、専用プレート14の各セル12内に発光細菌の菌液(A)と、有機ハロゲン化合物を含有するサンプル液(B)を注入した後、専用プレート14を検出装置16にセットし、PC18の表示画面でサンプル液の発光量の経時変化を測定する。
このような簡易分析装置10としては、オンサイト対応土壌毒性検査システムROTAS(Rapid Onsite Toxicity Audit System、日立化成工業)を使用できる。
次に、図1の簡易分析装置10を用いて、PCBの各濃度ごとの発光量の経時変化パターンを取得する方法について説明する。
まず、PCB濃度が0.000065〜0.0013mg−PCB/cell(0.065〜1.3mg−PCB/L)の各標準サンプル液Bを調製する。そして、図2の専用プレート12の複数のセル12…に発光細菌の菌液Bをシリンジ19で0.95mLずつ注入した後、各標準サンプル液Bを0.05mLずつ添加して、総量が1mLになるようにする。このように調製した各濃度のサンプルを一定時間(1〜120分)静置する。これを検出装置16にセットし、各セル12における発光量の経時変化を測定し、PC18の表示画面で観察する。なお、ブランクとして清水及びメタノールのみ、コントロールとして発光細菌と清水及びメタノールを混合した条件での発光強度を測定し、各実験条件の値を補正する。
図3は、このときの発光量(相対発光強度)の経時変化パターンを示す図である。
相対発光強度=(各サンプルを添加したセルの発光強度)/(ブランクの発光強度)
測定条件:温度…20℃、測定時間…120分、菌体濃度…15000CFU/mL
図3に示すように、発光量の経時変化挙動は、標準サンプル液Bに含まれるPCB濃度によって異なることがわかる。すなわち、0.78mg−PCB/L以上ではPCBの添加直後に発光量は低下し、それ以後、発光量はほぼ一定で変化はみられない。また、0.52mg−PCB/Lでは、一旦発光量は低下し、その後初期発光量まで上昇した後に再度低下する。0.52mg−PCB/Lより低濃度では、PCB添加直後に発光量は約1.6倍まで上昇し、それ以後は徐々に低下する。
さらに、図3の経時変化パターンは、経過時間(接触時間)0〜1分を初期とし、経過時間1〜30分を中期とし、経過時間30〜120分を後期として区分することで、詳細に分析できる。図4は、図3で区分した初期における発光量の経時変化データであり、図5は、中期における発光量の経時変化データであり、図6は、後期における発光量の経時変化データである。
初期では、図4に示すように、PCB濃度が0.52mg−PCB/Lを境に発光量の低下挙動が異なる。すなわち、PCB濃度が0.52mg−PCB/Lよりも低いと発光量は上昇し、0.52mg−PCB/Lよりも高いと発光量は低下する。これにより、PCB濃度について0.52mg−PCB/Lを基準とした大小を判定できる。
中期では、図5に示すように、0.065mg−PCB/Lを境に発光量の低下挙動が異なる。すなわち、0.065mg−PCB/L以下(ブランクを含む)になると発光量が低下し、0.065mg−PCB/Lよりも高いと発光量はほぼ一定となる。これにより、0〜0.065mg−PCB/Lの範囲が判定できる。
後期では、図6に示すように、0.26mg−PCB/Lを境に発光量の低下挙動が異なる。すなわち、0.26mg−PCB/L以下になると発光量が一旦上昇した後低下するカーブが得られ、0.26mg−PCB/Lよりも高いと、前述のようなカーブはなくなる。これにより、0〜0.26mg−PCB/Lの範囲が判定できる。
なお、発光量の経時変化パターンは、PCB濃度が既知の土壌又は地下水から採取したサンプル液を、各濃度にそれぞれ希釈又は濃縮したものを用いて作成できるが、PCB濃度が既知の標準サンプル液を調製して作成してもよい。
以下、図1の簡易分析装置10を用いて、未知のサンプル液についてPCB濃度を測定(及び判定)する方法について説明する。
図7は、本発明に係る簡易分析方法の流れを説明する説明図である。まず、PCBを含有するサンプル液Bの前処理工程について説明する。
抽出工程では、土壌等から採取したサンプル液を有機溶媒と混合し、PCBを有機溶媒に抽出する。使用する有機溶媒としては、発光細菌に対するダメージが少なく、且つ検出対象であるPCBの溶解性が高いものが好ましく、例えば、ヘキサン、メタノール、エタノール、DMSO(ジメチルスルホキシド)等が使用できる。中でも、発光細菌へのダメージが少ないメタノール及びDMSOが好ましく、極性が高く、PCBの溶解性の高いメタノールがより好ましい。
有機溶媒の発光細菌に対する影響については、図8で確認することができる。図8は、発光細菌の菌液1000μLを用意し、各菌液に対して各種有機溶媒(ヘキサン、メタノール、エタノール、DMSO)を50μL添加したときの発光量を比較したグラフ図である。
図8に示すように、メタノール又はDMSOを添加した場合に最も発光量が高く、特にメタノールを添加した場合に発光細菌によるダメージが少ないことがわかる。
なお、採取したサンプル液Bが地下水である場合、そのまま有機溶媒と混合して抽出操作を行うことができる。一方、採取したサンプル液Bが砂利等を含む土壌サンプルである場合、土壌サンプルを有機溶媒と混合・攪拌した後、上澄み液を分離(例えば、遠心分離)・ろ過することでサンプル液を得ることができる。
濃縮工程では、上記抽出した有機溶媒を加熱濃縮することで、サンプル液B中のPCB濃度を高くする。加熱温度は、使用する有機溶媒によるが、例えば80〜120℃とすることができる。その他、有機溶媒を減圧雰囲気下で濃縮する方法も採用できる。これにより、採取したサンプル液BのPCBが極めて低濃度であっても、検出できるようになる。
なお、濃縮工程は必要に応じて行えばよく、採取したサンプル液自体が高濃度である場合は省いてもよい。このように、前処理したサンプル液を未知の抽出サンプル液Bとする。この前処理工程は、予め発光量の経時変化パターンを作成する際にも適用できることはいうまでもない。
次に、図1の簡易分析装置10を用いて、PCB濃度が未知の抽出サンプル液Bに含まれるPCBの簡易測定工程について図7を参照して説明する。
まず、図1の専用プレート14のセル12内に発光細菌の菌液Bを0.95mLずつ注入した後、PCB濃度が未知の抽出サンプル液Bを0.05mL添加して、総量が1mLになるようにする。このように調製した測定用のサンプルを一定時間(1〜120分)静置する。
これを検出装置16にセットした後、各セル12の発光量の経時変化を測定し、PC18の表示画面で観察する。なお、ブランクとして清水及びメタノールのみ、コントロールとして発光細菌と清水及びメタノールを混合した条件での発光強度を測定し、各実験条件の値を補正する。
そして、既述した図3〜図6の発光量の経時変化パターンに従い、測定した未知の抽出サンプル液Bの発光量の経時変化データについて、経過時間0〜1分を初期とし、経過時間1〜30分を中期とし、経過時間30〜120分を後期として区分する。
未知の抽出サンプル液Bの発光量の経時変化データの初期において、例えば、(図4のように)発光量が経時的に上昇していると、未知の抽出サンプル液Bに含まれるPCB濃度は0.52mg−PCB/Lよりも低いと判定できる。
同様に、発光量の経時変化データの中期において、未知の抽出サンプル液Bの発光量が経時的に低下していると、未知の抽出サンプル液Bに含まれるPCB濃度は0.065mg−PCB/L以下であると判定できる。
同様に、発光量の経時変化データの後期において、未知の抽出サンプル液Bの発光量が経時的に一旦上昇した後低下していると、未知の抽出サンプル液Bに含まれるPCB濃度は0.026mg−PCB/L以下であると判定できる。一方、未知の抽出サンプル液Bの発光量がほぼ一定であれば、0.026mg−PCB/Lよりも高いと判定できる。
このように本実施の形態によれば、予め取得した発光量の経時変化パターン(図3〜図6)を初期、中期、後期と区分し、測定した経時変化データにおける発光量の低下挙動が上記区分した何れの領域において発現するかを判別する。これにより、PCB濃度が0.065mg−PCB/L以下、即ち第二溶出量基準である0.003mg/Lの約20倍の濃度まで検出が可能となる。また、サンプル液中のPCB濃度を、簡易的な方法、且つ前処理から測定までを約2時間以内で行うことができる。
上記測定において、調製サンプル液Bが水溶液の場合は、発光細菌に対する悪影響はない。しかし、PCB濃度が高い場合は発光細菌に悪影響を与えるため菌体量が低下し、それに伴い検出感度も低下する。このため、接触させるサンプル液量Xと発光細菌の菌体量Yとの質量比X/Yを1/2以下とすることが好ましい。調製サンプル液Bが有機溶媒の場合は、有機溶媒が発光細菌に対して影響を及ぼすことが懸念されるので、上記の質量比X/Yは1/200以下とすることが好ましい。
発光細菌の発光量は、菌体濃度の上昇に伴って増加する。ここで、接触させたサンプル液における発光細菌の菌体濃度が5000CFU/mL以下では極度に検出感度が低下し、20000CFU/mL以上では検出感度が顕著に向上しない。これより、発光細菌の菌体濃度は5000〜40000CFU/mLとすることが好ましく、8000〜20000CFU/mLとすることがより好ましい。
なお、本実施の形態では、採取したサンプル液Bの前処理や菌液Aの添加等をハンドリングで行う例で説明したが、これらを装置で行ってもよい。
図9は、図1の別態様である簡易分析装置20を示すブロック図である。
図9に示すように、簡易分析装置20は、主に、土壌等から採取したサンプル液Bを保持する保持部22と、有機溶媒を供給する有機溶媒供給部24と、サンプル液Bと有機溶媒を混合、振とうする混合部26と、混合したサンプル液Bを濃縮する濃縮部28と、発光細菌の菌液Aを供給する菌液供給部30と、濃縮したサンプル液Bと菌液Aとを接触させた後、発光量を検出する検出部32と、を備えている。なお、検出部32での検出結果は、接続されたPC18に出力される(点線矢印)。
濃縮部28としては、例えば、各種ヒータが使用できる。
これにより、操作者は、簡易分析装置20をPC18に接続すると共に、採取したサンプル液Bと菌液Aを保持部22、有機溶媒供給部24にそれぞれセットするだけで、サンプル液Bの前処理を含めたPCB濃度の測定を効率的に行うことができる。
以上、本発明に係る簡易分析方法及び装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、上記実施の形態では、PCBの各濃度ごとの発光量の経時変化パターンを予め取得しておき、現場では、PCB濃度が未知のサンプル液についてのみ測定する例で説明したが、これに限定されず、オンサイトでPCB濃度が既知のサンプル液を用意し、各濃度ごとの発光量の経時変化パターンを取得してもよい。
上記実施の形態では、PCB濃度が未知のサンプル液について、前処理として濃縮を行う例で説明したが、PCB濃度が高濃度である場合は、これとは逆に希釈を行ってもよい。
また、発光量の経時変化パターンを初期、中期、後期に区切る際、各領域は重複してもよく、要求される検出精度に応じて区切り方を適宜変更してもよい。さらに、初期、中期、後期はそれぞれ1つずつに限らず、2つ以上であってもよい。
上記実施の形態では、検出対象物質がPCBである例で説明したが、その他の有機ハロゲン化合物についても適用できる。
本実施形態において使用される簡易分析装置の概略構成の一例を示す概略図である。 図1の検出装置の一例を示す説明図である。 本実施の形態における発光量の経時変化パターンを示すグラフ図である。 本実施の形態における発光量の経時変化パターンを示すグラフ図である。 本実施の形態における発光量の経時変化パターンを示すグラフ図である。 本実施の形態における発光量の経時変化パターンを示すグラフ図である。 本実施の形態における簡易分析方法の流れを説明する説明図である。 本実施の形態におけるグラフ図である。 本実施の形態における簡易分析装置の別態様を示すブロック図である。
符号の説明
10…簡易分析装置、12…セル、14…専用プレート、16…検出装置、18…PC、20…簡易分析装置、22…保持部、24…有機溶媒供給部、26…混合部、28…濃縮部、30…菌液供給部、32…検出部

Claims (8)

  1. 土壌又は地下水に含まれる有機ハロゲン化合物の簡易測定方法において、
    予め前記有機ハロゲン化合物を複数の異なる濃度に調整し該濃度ごとに、発光細菌との接触時間による発光量の経時変化パターンを取得するパターン取得工程と、
    前記取得した濃度ごとの経時変化パターンにおける発光量の低下挙動の違いに基づいて、該経時変化パターンを前記接触時間の初期、中期及び後期に区分する区分工程と、
    前記土壌又は地下水から採取したサンプル液と発光細菌とを接触させて前記発光細菌による発光量の経時変化を測定する測定工程と、
    前記測定したサンプルの経時変化データと前記予め取得した経時変化パターンとを照合する照合工程と、
    前記照合した経時変化データにおける発光量の低下挙動が、前記初期、中期及び後期の何れにおいて発現するかにより前記サンプル液の有機ハロゲン化合物濃度を判定する判定工程と、
    を備えたことを特徴とする有機ハロゲン化合物の簡易測定方法。
  2. 前記有機ハロゲン化合物は、PCBであることを特徴とする請求項1に記載の有機ハロゲン化合物の簡易測定方法。
  3. 前記測定した経時変化データにおいて、前記接触時間が0〜1分の間を初期とし、前記接触時間が1〜30分の間を中期とし、前記接触時間が30〜120分の間を後期とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機ハロゲン化合物の簡易測定方法。
  4. 前記サンプル液は、前記有機ハロゲン化合物を有機溶媒に溶解させた後、濃縮したものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機ハロゲン化合物の簡易測定方法。
  5. 前記有機溶媒は、メタノールであることを特徴とする請求項4に記載の有機ハロゲン化合物の簡易測定方法。
  6. 前記サンプル液と接触させる前記発光細菌の菌体濃度を5000〜40000CFU/mLとすることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の有機ハロゲン化合物の簡易測定方法。
  7. 前記発光細菌と接触させるサンプル液が水溶液である場合は、前記サンプル液量Xと前記発光細菌の菌体量Yとの質量比X/Yを1/2以下とし、前記発光細菌と接触させるサンプル液が有機溶媒である場合は、前記質量比X/Yを1/200以下とすることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の有機ハロゲン化合物の簡易測定方法。
  8. 土壌又は地下水に含まれる有機ハロゲン化合物の簡易測定装置において、
    前記土壌及び地下水から採取したサンプル液と有機溶媒とを混合する混合部と、
    前記混合により前記有機ハロゲン化合物を抽出した有機溶媒を濃縮する濃縮部と、
    前記濃縮した有機溶媒に前記発光細菌を接触させ、該発光細菌による発光量の経時変化を検出する検出部と、
    を備えたことを特徴とする有機ハロゲン化合物の簡易測定装置。
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