JP2005315794A - ダイオキシン類測定用試料の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ダイオキシン類測定をするための試料の調製においてダイオキシン類含有溶液の溶媒を揮発させて除去する際に、ダイオキシン類が揮発および飛散するのを抑制する。
【解決手段】 分析対象試料中に含まれるダイオキシン類を測定するための試料の作製方法に関し、分析対象試料を前処理することにより得られたダイオキシン類を含む溶液の溶媒を揮発させて除去する際に、その溶液中に多価アルコールを添加することを特徴とする方法。本方法により作成される測定試料は、特に、アリルハイドロカーボンレセプターサイトソルを用いるイムノアッセイによりダイオキシン類を測定する場合に有効である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、分析対象試料(例えば環境、食品、飼料または生体試料など)からダイオキシン類測定用試料を作製する方法に関する。さらに、該作製方法により作製される測定用試料を用いて、分析対象試料中のダイオキシン類を正確に検知、定性、および定量するための方法に関する。
ダイオキシン類は、環境ホルモンとして、人体だけでなく広く動植物に有害な作用を与え、自然環境をも破壊する環境汚染物質であり、それを正確に分析測定することが大きな課題となっている。環境物質中に含まれるダイオキシン類は、環境物質1gあたり数ピコグラム〜数ナノグラム程度であって微量に存在するだけであるが、にもかかわらず強い毒性を示すことから、超微量の分析であっても、厳密な精度管理が要求される。一方では、分析時間の短縮、分析手段の自動化・簡略化、コストダウンなども重要な課題である。
ダイオキシン類の測定方法は、JIS K 0311(排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法)およびJIS K 0312(工業用水・工場排水中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法)に規定されているように、一般的には、ダイオキシン類を含む固体試料、液体試料または気体試料から溶剤を用いてダイオキシン類を抽出するステップ、その抽出液からダイオキシン類を精製するステップ、および前記精製されたダイオキシン類を測定するステップからなる。
前記測定するステップで用いられる手段としては、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計(HRGC−HRMS)を使用する方法(公定法とも呼ばれる)(例えば、特許文献1参照)、および生物学的機能を利用する方法が知られている。生物学的機能を利用する方法としては、抗原抗体反応を利用する方法、およびダイオキシン類とAh受容体(多環芳香族炭化水素受容体)の結合を利用する方法が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。Ah受容体の結合を利用する方法としては、ヒトやマウスなどの生きた細胞を利用するもの(レポータージーンアッセイ)や、直接細胞を使わず細胞抽出液(サイトソル)に含まれるAh受容体を使用するものとがある。
上記したいずれのダイオキシン類測定法または上記した方法以外の測定法を用いるにしても、そのための測定用試料を作製するためには、分析対象試料を精製して得たダイオキシン類を含む溶液の溶媒を揮発させて除去し、溶媒を除去して得たダイオキシン類を、用いる測定手段に応じて適切な測定用溶媒に溶解させる必要がある。この溶液の溶媒を除去する際に、溶媒の揮発とともに、溶液中に含まれるダイオキシン類が昇華してしまうこと、またガスの吹き付けにより溶媒を除去する場合にはガスによってダイオキシン類が飛散してしまうという問題があることが知られている。例えば、ダイオキシン類を含む溶液に窒素ガスを吹き付けて溶媒を揮発させた場合、20分間の吹き付けによって当初含まれていたダイオキシンの4割しか残らないこと、さらに60℃以上で吹き付けを行うと4.4%しか残らないことが報告されている(非特許文献1参照)。このため、測定用試料の作製において分析対象試料に含まれていたダイオキシン類の回収率が下がり、分析対象試料中のダイオキシン類の正確な測定を困難にしているという問題があった。
また、ダイオキシン類測定は迅速かつ簡便に行われることが好ましいため、上記抽出処理および精製処理が簡略化された、迅速に測定用試料を作製するための方法が望まれている。このような簡略化のための手段としては、抽出処理を簡略化する方法(例えば、非特許文献2参照)や、精製処理、特にカラムクロマトグラフィー処理(カラムによるクリー
ンアップ処理)を簡略化するためのクロマトグラフカラム(例えば、特許文献3参照)などが報告されている。しかしながら、ダイオキシン類測定法の簡略化は依然として求められており、改善の余地がある。
特開2000−346832号公報
特表2001−503130号公報
特開2002−40007号公報
鈴木滋他,「ダイオキシン類の大気への揮散に関する検討」,日本環境科学会第8回討論会講演要旨集、p.116−117
「ダイオキシン類分析迅速化のための分析試料抽出方法の検討」,材料とプロセス,11,1998,p.247
ンアップ処理)を簡略化するためのクロマトグラフカラム(例えば、特許文献3参照)などが報告されている。しかしながら、ダイオキシン類測定法の簡略化は依然として求められており、改善の余地がある。
本発明は、ダイオキシン類を含有する可能性のある分析対象試料(例えば環境、食品、飼料または生体試料)からのダイオキシン類測定用試料の作製において、ダイオキシン類を含む溶液の溶媒を揮発させて除去する際に、ダイオキシン類成分が昇華または飛散するのを抑制することにより、該分析対象試料中のダイオキシン類を正確に測定することができる測定法を提供することを課題とする。
また、分析対象試料からのダイオキシン類測定用試料の作製において、抽出および精製などを含む前処理を簡略化するとともに、前処理する分析対象試料の必要量および前処理に必要な溶媒量をスケールダウンさせるなどして、簡便かつ迅速に測定用試料を作製することができるダイオキシン類測定法を提供することを課題とする。
また、分析対象試料からのダイオキシン類測定用試料の作製において、抽出および精製などを含む前処理を簡略化するとともに、前処理する分析対象試料の必要量および前処理に必要な溶媒量をスケールダウンさせるなどして、簡便かつ迅速に測定用試料を作製することができるダイオキシン類測定法を提供することを課題とする。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1) 分析対象試料中のダイオキシン類を測定するための、ダイオキシン類測定用試料の作製方法であって、該分析対象試料を前処理することにより得られたダイオキシン類を含む溶液の溶媒を除去するステップを含み、該溶液は、溶媒が除去される際に多価アルコールを含むことを特徴とする方法。
(2) 前記多価アルコールがグリセリンであることを特徴とする、(1)に記載の作製方法。
(3) 前記ダイオキシン類測定が、アリルハイドロカーボンレセプターサイトソルを用いるイムノアッセイである、(1)または(2)に記載の作製方法。
(4) 前記溶媒を除去して得たダイオキシン類を、水溶性高沸点溶媒と水溶性低沸点溶媒の混合溶媒に溶解させるステップ、および該低沸点溶媒を揮発させるステップをさらに含むことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の作製方法。
(5) 前記前処理は、ヘキサンを溶媒とする抽出処理、硫酸処理およびカラムによるクリーンアップ処理を含むことを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の作製方法。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の作製方法により作製された測定用試料を用いてダイオキシン類を測定することを特徴とする、分析対象試料中のダイオキシン類測定法。
(1) 分析対象試料中のダイオキシン類を測定するための、ダイオキシン類測定用試料の作製方法であって、該分析対象試料を前処理することにより得られたダイオキシン類を含む溶液の溶媒を除去するステップを含み、該溶液は、溶媒が除去される際に多価アルコールを含むことを特徴とする方法。
(2) 前記多価アルコールがグリセリンであることを特徴とする、(1)に記載の作製方法。
(3) 前記ダイオキシン類測定が、アリルハイドロカーボンレセプターサイトソルを用いるイムノアッセイである、(1)または(2)に記載の作製方法。
(4) 前記溶媒を除去して得たダイオキシン類を、水溶性高沸点溶媒と水溶性低沸点溶媒の混合溶媒に溶解させるステップ、および該低沸点溶媒を揮発させるステップをさらに含むことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の作製方法。
(5) 前記前処理は、ヘキサンを溶媒とする抽出処理、硫酸処理およびカラムによるクリーンアップ処理を含むことを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の作製方法。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の作製方法により作製された測定用試料を用いてダイオキシン類を測定することを特徴とする、分析対象試料中のダイオキシン類測定法。
本発明の方法を用いて分析対象試料(例えば環境、食品、飼料または生体試料)からダイオキシン類測定用試料を作製し、該測定用試料を用いてダイオキシン類を測定することにより、該分析対象試料中のダイオキシン類を正確に測定することができ、また迅速かつ簡便に測定結果を得ることができる。本願方法は、ダイオキシン類の測定手段として生物学的測定手段(本願明細書において、「生物学的測定」とは、生物を用いた物質の測定のみならず、受容体などのタンパク質を用いた物質の測定を含む)を用いた場合に、特に効
果的にその効果が発揮される。
果的にその効果が発揮される。
本発明は、ダイオキシン類の測定法に関するが、ここで「ダイオキシン類」とは、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、およびコプラナ−ポリ塩化ビフェニル(Co−PCB)、ならびにそれらの異性体を含むが、これらに限定されない。
「ダイオキシン類測定」とは、分析対象試料、すなわち環境、食品、飼料もしくは生体試料、またはその他の試料に含まれるダイオキシン類を検知、定性および定量することを意味する。例えば、いわゆる公定法を用いて測定した場合には毒性等量(TEQ)としてダイオキシン類濃度が定量され、Ahイムノアッセイにより測定した場合にはDEQ(ダイオキシン当量)としてダイオキシン類濃度が定量され得る。
本発明のダイオキシン類測定用試料の作製方法(以下単に「作製方法」とも称する)は、ダイオキシン類を含む可能性のある分析対象試料を前処理することにより得られたダイオキシン類含有溶液の溶媒を除去するステップを含み、好ましくはさらに、該溶媒を除去されたダイオキシン類を、測定手段に応じて適切な測定溶媒に溶解させるステップを含む。
本願明細書において「ダイオキシン類測定用試料」とは、分析対象試料を、それに含まれ得るダイオキシン類が所望のダイオキシン類測定手段により測定され得る程度に、処理および/または精製することにより得られる、ダイオキシン類を含みうる測定サンプルを意味する。なお、前記測定され得る程度とは、用いられる測定手段によって異なる。GC−MSを用いる測定手段(例えば公定法とよばれる測定手段)に用いられる測定用試料は、生物学的機能を利用した測定手段と比較して、純度の高い試料であることが必要である。従って、簡便かつ迅速な測定用試料の作製方法を提供するという本発明の課題からいえば、本願発明における測定手段は生物学的機能を利用した測定手段であることが好ましい。
またGC−MSを用いる測定手段では、同位体等を使用することによりダイオキシン類の回収率を確認し、前処理(抽出処理を含む)におけるロスを数理的に補正することで、ある程度精度の高い測定結果を得ることが可能であるが、一方、生物学的機能を利用した測定手段では、同位体を利用してダイオキシン類の回収率を確認したり、ロスを補正することは困難である。従って、生物学的機能を利用した測定手段においては、分析対象試料からダイオキシン類測定用試料を作製する過程において、分析対象試料中のダイオキシン類のロスを抑える必要性が高いといえる。よって、ダイオキシン類の前処理におけるロスを抑えることができる、本発明のダイオキシン類測定用試料の作製方法は、生物学的機能を利用した測定法に適していると考えられる。
またGC−MSを用いる測定手段では、同位体等を使用することによりダイオキシン類の回収率を確認し、前処理(抽出処理を含む)におけるロスを数理的に補正することで、ある程度精度の高い測定結果を得ることが可能であるが、一方、生物学的機能を利用した測定手段では、同位体を利用してダイオキシン類の回収率を確認したり、ロスを補正することは困難である。従って、生物学的機能を利用した測定手段においては、分析対象試料からダイオキシン類測定用試料を作製する過程において、分析対象試料中のダイオキシン類のロスを抑える必要性が高いといえる。よって、ダイオキシン類の前処理におけるロスを抑えることができる、本発明のダイオキシン類測定用試料の作製方法は、生物学的機能を利用した測定法に適していると考えられる。
本発明において「分析対象試料」とは、環境試料、食品試料、飼料試料もしくは生体試料、またはその他の試料であって、ダイオキシン類を含む可能性のある任意のサンプルを意味する。環境試料としては、例えば土壌、底質、排ガス、焼却灰、排水、などが挙げられるがこれらに限定されない。食品試料としては、人間が食物として利用しうる哺乳動物の肉、魚肉、牛乳が挙げられる。飼料試料としては、家畜が食物として利用しうる動植物を含む飼料が挙げられる。生体試料としては、血液、母乳、各種動物の各種臓器が挙げられる。本発明において好ましい試料は環境試料、特に土壌または底質である。
本発明のダイオキシン類測定用試料の作製方法においては、分析対象試料を前処理することによりダイオキシン類を含む溶液を得る必要がある。前処理は、ダイオキシン類を含み得る分析対象試料から、有機溶媒を用いてダイオキシン類成分を含む有機化合物を抽出
する処理(以下単に「抽出処理」とも称する)を少なくとも含む。前処理は、前記抽出処理により得られた抽出液のカラムによるクリーンアップ処理をさらに含むことが好ましい。分析対象試料の種類によって、前処理はさらにその他の処理を含み得る。例えば分析対象試料が土壌や、川などの底質などのように、高レベルの有機化合物を含有する試料の場合には、前記抽出処理することにより得られた抽出液を、カラムによるクリーンアップ処理する前に濃硫酸により処理(以下単に「硫酸処理」とも称する)することが好ましい。また、試料が土壌などの湿試料である場合は、抽出処理をする前に試料を乾燥処理することが好ましい。あるいは分析対象試料の種類によって必要に応じて、塩酸処理(分析対象試料が焼却灰などの場合に有効)、アルカリ処理、テトラブチルアンモニウムによる処理(硫黄単体の除去に有効)を含む種々の処理を前処理として行うことができる。また、用いられるダイオキシン類測定手段の種類によっても、前処理に含まれる処理は異なり得る。当業者は、分析対象試料の種類、ダイオキシン類測定手段の種類、その他の要件に応じて、前処理として行う処理を適宜選択することができる。
する処理(以下単に「抽出処理」とも称する)を少なくとも含む。前処理は、前記抽出処理により得られた抽出液のカラムによるクリーンアップ処理をさらに含むことが好ましい。分析対象試料の種類によって、前処理はさらにその他の処理を含み得る。例えば分析対象試料が土壌や、川などの底質などのように、高レベルの有機化合物を含有する試料の場合には、前記抽出処理することにより得られた抽出液を、カラムによるクリーンアップ処理する前に濃硫酸により処理(以下単に「硫酸処理」とも称する)することが好ましい。また、試料が土壌などの湿試料である場合は、抽出処理をする前に試料を乾燥処理することが好ましい。あるいは分析対象試料の種類によって必要に応じて、塩酸処理(分析対象試料が焼却灰などの場合に有効)、アルカリ処理、テトラブチルアンモニウムによる処理(硫黄単体の除去に有効)を含む種々の処理を前処理として行うことができる。また、用いられるダイオキシン類測定手段の種類によっても、前処理に含まれる処理は異なり得る。当業者は、分析対象試料の種類、ダイオキシン類測定手段の種類、その他の要件に応じて、前処理として行う処理を適宜選択することができる。
前記前処理における抽出処理は、分析対象試料から、ダイオキシン類を含む有機化合物を、抽出溶媒である有機溶媒中に抽出し得る処理方法であれば特に限定されず、液−液振とう抽出、ソックスレー抽出、還流抽出、超音波抽出、超臨界抽出、高速溶媒抽出などが挙げられる。これらのいずれかの抽出処理を複数回行ってもよく、また2種以上の抽出処理を併用して抽出を行ってもよい。また、分析対象試料が土壌などの湿試料である場合には、抽出処理を行う前に該試料を高温下で乾燥処理したり、乾燥剤(珪藻土、無水硫酸ナトリウムなど)と混合させるなどして水分を除去しておくことが好ましい。
本願方法において抽出処理は、好ましくは高速溶媒抽出法により行う。高速溶媒抽出法とは、例えば米国特許明細第5,843,311号に記載されているが、簡単に述べると、試料を抽出セルに充填し、抽出に用いる有機溶媒の沸点以上(例えば100〜200℃)、かつ高圧(例えば1,500〜2,000psi)の条件下で抽出する方法である。高速溶媒抽出は、市販の高速溶媒抽出機を用いて行うことができる。高速溶媒抽出機としては、ダイオネクス社製のDionex ASE-200などが例示される。一の分析対象試料に対して高速溶媒抽出を繰り返し行うこともできる。高速溶媒抽出は、約16時間を要したソックスレー抽出と比較して、抽出時間を大幅に短縮することができる。
上記抽出、好ましくは高速溶媒抽出に用いられる抽出溶媒としては、任意の有機溶媒を用いることができるが、好ましくはヘキサン、トルエン、ベンゼン、アセトン、ジクロロメタン、酢酸、またはメタノールなどから選択される溶媒を単独で、または2種以上の溶媒を適宜混合した混合溶媒を用いることができる。溶媒としてヘキサンを用いれば、得られた抽出液を濃硫酸処理する前に抽出液中の溶媒(ヘキサン)を留去する必要がなくなり、また本発明の測定方法に用いられる有機溶媒の種類を少なくすることができる。
抽出処理される試料の量は任意の量とすることができるが、好ましくは、次の処理、好ましくは硫酸処理またはカラムによるクリーンアップ処理に必要な試料の量の1〜10000倍、好ましくは10〜1000倍、さらに好ましくは約100倍の量の試料を抽出処理することが好ましい。すなわち、抽出により得られた抽出液の1/1〜1/10000、好ましくは1/10〜1/1000、さらに好ましくは約1/100を分取して次の処理に用いることが好ましい。
抽出処理される試料の質量は、分析対象試料の種類によって異なるが、土壌などの湿試料であれば、高温乾燥した状態で、約0.5〜20g、好ましくは約5gであることが好ましい。
ダイオキシン類を含む可能性のある分析対象試料から有機溶媒を用いてダイオキシン類
成分を抽出することにより得られた抽出液、該抽出液を少量になるまで濃縮して得た濃縮液、または該抽出液もしくは該濃縮液にヘキサンなどの溶媒を加えた溶液(これらを総称して「抽出液」とも称する)は、濃硫酸による処理(硫酸処理)をされることが好ましい。硫酸処理することにより、該抽出液に含まれる、ダイオキシン類と比較して高濃度の種々の有機化合物を除去することができる。該有機化合物のうち、特に芳香族成分は、後述するダイオキシン類測定、特にアリルハイドロカーボンレセプターを用いるイムノアッセイによる測定への影響が大きいので、硫酸処理をすることにより除去されることが好ましい。
成分を抽出することにより得られた抽出液、該抽出液を少量になるまで濃縮して得た濃縮液、または該抽出液もしくは該濃縮液にヘキサンなどの溶媒を加えた溶液(これらを総称して「抽出液」とも称する)は、濃硫酸による処理(硫酸処理)をされることが好ましい。硫酸処理することにより、該抽出液に含まれる、ダイオキシン類と比較して高濃度の種々の有機化合物を除去することができる。該有機化合物のうち、特に芳香族成分は、後述するダイオキシン類測定、特にアリルハイドロカーボンレセプターを用いるイムノアッセイによる測定への影響が大きいので、硫酸処理をすることにより除去されることが好ましい。
前記抽出処理により得られた抽出液の全てを硫酸処理してもよいが、前述したように、その一部を分取して硫酸処理することが好ましい。
硫酸処理は、反応容器(例えば試験管)中に、好ましくはヘキサンを溶媒とする溶液である抽出液、および濃硫酸を加え、該反応容器を振とうすることにより行うことができる。硫酸処理は1回だけ行ってもよく、複数回行ってもよい。硫酸処理に用いられるヘキサンおよび硫酸の量は、抽出処理された分析対象試料の種類及び硫酸処理される抽出液に含まれる抽出物の量によって決定されるが、例えば、土壌などの湿試料を乾燥させた状態の試料(0.05g相当)から抽出された抽出物の場合は、約4mlのヘキサン、および約2mlの濃硫酸を用いることが好ましい。ヘキサンの量を約4ml程度と少量にすれば、硫酸処理することにより得られたダイオキシン類含有溶液を、濃縮することなくカラムによりクリーンアップ処理することができる。
なお、前記抽出処理に用いられる抽出溶媒をヘキサンとすれば、抽出液の溶媒を留去することなく硫酸処理を行うことができる。
前記抽出液、好ましくは硫酸処理がされた抽出液は、カラムによるクリーンアップ処理(カラムクロマトグラフィーを含む)がなされる。該カラムとしては、シリカゲルカラム、多層シリカゲルカラム、アルミナカラム、活性炭シリカゲルカラムなどが挙げられ、これらを組み合わせることもできる。また、カラムによるクリーンアップ処理は、1段階処理であってもよく、複数段階処理であってもよい。どのようなカラムによりクリーンアップ処理をするのが好ましいかは、抽出液に含まれる不純物の種類および量、ならびに用いるダイオキシン類測定手段などに応じて当業者が適宜決定することができる。
本発明においては、多層シリカゲルカラムを用いてクリーンアップ処理するのが好ましく、アルミナカラムや活性炭シリカゲルカラムによるクリーンアップ処理を行うことなく、測定用試料を迅速かつ簡便に作製でき、さらに正確に分析対象試料中のダイオキシン類を測定しうる。該多層シリカゲルカラムの構成は、例えば下流側から順に、シリカゲル層、硫酸シリカゲル層、シリカゲル層、硝酸銀シリカゲル層を有する4層シリカカラム、またはその上流側に無水硫酸ナトリウム層をさらに含む多層カラムが好ましく、さらにその上流側に銅粉を積層した多層カラムも好ましい。また市販のカートリッジカラムである多層シリカゲルカラムを使用してもよく、それにより充填剤の充填操作および使用後のクロマト管洗浄が不要になる。市販のカートリッジカラムとしては、例えばスペルコ製スペルクリンカラムが好ましく例示される。
カラムによるクリーンアップ処理に用いられる溶出溶媒は、任意の有機溶媒であり得るが、好ましくはヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンが挙げられ、さらに好ましくはヘキサンである。前記したように、抽出処理および硫酸処理で用いられる好ましい溶媒はヘキサンであるため、カラムによるクリーンアップ処理の溶出溶媒をヘキサンとすることにより、抽出処理または硫酸処理して得た溶液の溶媒(ヘキサン)を除去することなく、該溶液をカラムによりクリーンアップ処理することが可能となる。従って、前処理
を簡便にすることができ、また本発明の測定方法に用いられる溶媒の種類を低減することができる。
を簡便にすることができ、また本発明の測定方法に用いられる溶媒の種類を低減することができる。
また、カラムによるクリーンアップ処理に関しては、例えば前記した特許文献3の記載、その他の公知技術に従って、適宜、改善修飾された方法を採用することができる。
前述してきたように、分析対象試料を前処理(好ましくは抽出処理、硫酸処理、およびカラムによるクリーンアップ処理を含む)することにより得られたダイオキシン類を含む溶液の溶媒は、前処理後に除去される。該溶媒の除去は、溶媒を揮発させることにより行うことができる。該溶媒の揮発は、減圧条件下で、加熱条件下で、または窒素気流下で行うことができるが、好ましくは窒素気流下で行う。さらに好ましくは、窒素気流自動濃縮装置を用いて窒素気流下で揮発させる。溶媒を揮発させるためのこれらの処理を、以下、「揮発処理」とも称する。
ダイオキシン類を含む溶液の溶媒を揮発させた後、さらに揮発処理を続けるとダイオキシン類が徐々に昇華する。このダイオキシン類の昇華を防ぐためには、揮発処理をしている間、溶液の状態を監視し、溶媒が完全に除去された時点で速やかに揮発処理を止めればよいが、操作が煩雑になり、複数のサンプルを同時に揮発処理することが困難になる。それに対し、該溶液の溶媒を除去する際に、溶液(ダイオキシン類含有溶液)中に少量の多価アルコールを存在させ、溶液が完全に乾固するのを防ぐことでダイオキシン類の昇華を抑制することができる。それにより、揮発処理をする間、溶液の状態を監視する必要がなくなり、揮発処理を簡便に行うことができる。多価アルコールとしては、例えばグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ジエチレングリコールが挙げられるが、最も好ましくはグリセリンが挙げられる。多価アルコール(特にグリセリン)が好ましい理由としては、後述するAhイムノアッセイによるダイオキシン類測定の結果に影響が少ないからである。このことは、下記する実施例及び参考例においても説明されている。
前記溶媒の除去は、例えば以下のようにして行うことができる。ダイオキシン類を含む溶液を少量(例えば0.1ml〜1ml)になるまで濃縮した後に、多価アルコール(好ましくはグリセリン)を添加し、さらに溶媒を除去する。ここで添加する多価アルコール(好ましくはグリセリン)の量は、モル数で、該溶液に含まれる(または含まれると予想される)ダイオキシン類の1000倍程度であることが好ましい。例えば、グリセリンであれば0.1〜10000μg、より好ましくは1〜1000μg、さらに好ましくは10〜100μgである。
多価アルコールは、純粋な多価アルコールとして添加されてもよいが、低沸点溶媒に溶解された多価アルコールとして添加されることが好ましく、該低沸点溶媒としてはアセトン、メタノールなどが挙げられる。該溶液中の多価アルコールの濃度は、例えばグリセリンであれば、好ましくは0.1〜0.0001重量%、より好ましくは0.01〜0.001重量%である。多価アルコールをアセトンなどの低沸点溶媒に溶解させて添加するのは、添加溶液の容量を上げることで、微量の多価アルコールを容易に量りとることができるからである。多価アルコールが添加されたダイオキシン類含有溶液の該低沸点溶媒は、揮発させられて、除去される。なお、ここで低沸点溶媒とは、室温での窒素気流下で揮発されやすい溶媒であって、例えば沸点が約70℃以下の溶媒を意味する。
多価アルコールは、純粋な多価アルコールとして添加されてもよいが、低沸点溶媒に溶解された多価アルコールとして添加されることが好ましく、該低沸点溶媒としてはアセトン、メタノールなどが挙げられる。該溶液中の多価アルコールの濃度は、例えばグリセリンであれば、好ましくは0.1〜0.0001重量%、より好ましくは0.01〜0.001重量%である。多価アルコールをアセトンなどの低沸点溶媒に溶解させて添加するのは、添加溶液の容量を上げることで、微量の多価アルコールを容易に量りとることができるからである。多価アルコールが添加されたダイオキシン類含有溶液の該低沸点溶媒は、揮発させられて、除去される。なお、ここで低沸点溶媒とは、室温での窒素気流下で揮発されやすい溶媒であって、例えば沸点が約70℃以下の溶媒を意味する。
前述のように溶媒を除去されたダイオキシン類は、後述する測定手段によってダイオキシン類の測定を行うために、適切な有機溶媒に溶解させられることができる。該有機溶媒(以下、「測定溶媒」とも称する)としては、例えばGC−MSにより測定する場合はノナン、デカンなどの直鎖アルカン系溶媒など、生物学的測定方法により測定する場合は水溶性有機溶媒(例えば、DMSO、DMF、C3〜C8ケトン、C1〜C5アルコールなど
が挙げられるがこれらに限定されない)などが挙げられる。
が挙げられるがこれらに限定されない)などが挙げられる。
生物学的測定を行う場合は、前記測定溶媒の量をできるだけ少なくして、高濃度の測定用試料を得ることが好ましいが、一方で、測定溶媒は、前記揮発処理によって容器の内壁に付着した試料をも溶解させる必要があるので、ある程度の容量が必要である。そこで好ましくは、少量の水溶性高沸点溶媒を、水溶性低沸点溶媒で希釈した混合溶媒を用いて、溶媒除去後の試料を容器の内壁に付着した試料とともに溶解させた後に、該低沸点溶媒だけを揮発させる(高沸点溶媒は揮発させない)ことで高濃度の測定用試料を得る。ここで、水溶性高沸点溶媒とは例えばDMSO、DMFなどが挙げられ、水溶性低沸点溶媒とはアセトン、メタノールなどが挙げられるが、これらに限定されず、生物学的測定に悪影響がない溶媒を選択すればよい。なお、ここで低沸点溶媒とは室温における窒素気流下で、揮発されやすい溶媒(例えば沸点が約70℃以下の溶媒)を意味し、また高沸点溶媒とは同条件下で揮発されにくい溶媒(例えば沸点が約150℃以上の溶媒)を意味する。
適切な測定溶媒に溶解させられた測定用試料を用いて、公知のダイオキシン類測定法により、分析対象試料中のダイオキシン類の測定をすることができる。公知のダイオキシン類測定法とは、GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)を用いる方法や、生物学的測定法を挙げることができる。生物学的測定法としては、抗原抗体反応を利用する方法およびダイオキシン類とAh受容体の結合を利用する方法が挙げられる。ダイオキシン類とAh受容体の結合を利用する方法としては、ヒトやマウスなどの生きた細胞を使用する方法(レポータージーンアッセイ)、直接細胞を使わず細胞抽出液(サイトソル)に含まれるAh受容体を測定に使用する方法(「Ahイムノアッセイ」を含む)が挙げられる。また、Ah受容体を使用する測定方法としてAhRC PCR法も開発されている。
サイトソルに含まれるAh受容体を使用する測定法の一つは、Ahイムノアッセイ(登録商標)法とよばれ、例えば前記した特許文献2に記載されているが、以下において簡単に説明する。Ah受容体(Aryl hydrocarbon Receptor)は脊椎動物以上の高等生物の細胞内に存在し、細胞内でリガンドであるダイオキシン類と結合することにより種々の生体内での毒性などが発現される。Ahイムノアッセイの測定原理は、このような細胞内でのダイオキシン類による毒性発現のメカニズムに基づいている。測定用試料中のダイオキシン類はAh受容体およびARNT(Ah Receptor Nuclear Translocator)と結合し、複合体を形成する。この複合体はDRE(Dioxin Responsive Element)とよばれるDNA配列と結合し、このDREによりプレートの各ウェルに固定される。次に固定された複合体を抗原とする1次抗体を結合させる。さらにその1次抗体を抗原とする、酵素が付加された2次抗体を結合させる。2次抗体に付加された酵素と反応する基質を加えることにより発色物質が得られ、その発色の吸光度を測定する。得られた吸光度を、2,3,7,8- TCDDに対する吸光度と比較して、ダイオキシン類濃度を定量する。このような測定は、例えば、Ahイムノアッセイ(登録商標)(パラセルシアン社製)の分析キットを用いて行うことができる。
本願発明において、ダイオキシン類測定をAhイムノアッセイにより行う場合、上述のようにして得られた測定用試料(好ましくはDMSOを溶媒とする測定用試料)に、反応液であるサイトソルを加えて混合し、その混合液を反応容器であるプレートに移すことが好ましい。測定用試料の容量が微量であっても、サイトソルを加えることによって容量が増し、測定用試料のほぼ全量を反応に用いることが可能となる。その結果、作製すべき測定用試料の量を減らすことができ、したがって前処理するべき環境などの試料の必要量を減らすことができるので、前処理を簡便に(スケールダウン)することができる。
前述したようにAhイムノアッセイよって定量されるダイオキシン類濃度は、DEQ(2,3,7,8- TCDD当量)として表される。Ahイムノアッセイでは、WHO−TEFが規定されて
いないダイオキシン類の異性体にも反応することから、DEQとTEQ(公定法により得られるダイオキシン測定値)は異なる値を示す。本願方法の、Ahイムノアッセイを用いたダイオキシン類測定法による測定値は、後述する実施例からも明らかなように、TEQと良好な相関関係を示す。
公定法値(TEQ)と良好な相関関係を示す測定値が得られる生物学的測定法は、信頼性の高い測定法であるということができるので、本願方法のAhイムノアッセイを用いたダイオキシン類測定法は、精度の高いダイオキシン類測定法であるといえる。
いないダイオキシン類の異性体にも反応することから、DEQとTEQ(公定法により得られるダイオキシン測定値)は異なる値を示す。本願方法の、Ahイムノアッセイを用いたダイオキシン類測定法による測定値は、後述する実施例からも明らかなように、TEQと良好な相関関係を示す。
公定法値(TEQ)と良好な相関関係を示す測定値が得られる生物学的測定法は、信頼性の高い測定法であるということができるので、本願方法のAhイムノアッセイを用いたダイオキシン類測定法は、精度の高いダイオキシン類測定法であるといえる。
さらに本発明は、環境などの試料中のダイオキシン類を測定するための、多価アルコール(好ましくはグリセリン)を含むキットにも関する。該キットを用いることにより、分析対象試料からダイオキシン類測定用試料を作製するために、ダイオキシン類含有溶液から溶媒を除去するにあたり、該溶液に多価アルコールを添加することができ、溶媒を除去する際にダイオキシン類が昇華または飛散するのを防止することができる。本発明のキットに含まれる多価アルコールは、低沸点溶媒、好ましくはアセトンを溶媒とする溶液として含まれることが好ましい。
さらに本発明のキットにはイムノアッセイで用いられる免疫試薬を含み、作製した測定用試料を用いてダイオキシン類を測定することができる。該キットが免疫試薬の他、アッセイに必要な発色試薬、洗浄液、反応プレートその他などをも含みうることは言うまでもない。
以下に、実施例、比較例及び参考例を参照して本願発明をさらに説明するが、これらにより本発明の範囲が限定されることはない。
<実施例1>
共栓付先細試験管を2本用意し、それぞれに2,3,7,8- テトラクロロジベンゾオキシン(2,3,7,8−TCDD)のヘキサン溶液(32pg/μl)を40μlずつ加え、1本にはさらに、0.004%グリセリン/アセトン溶液1mlを加えた。それぞれを35℃で窒素吹き付け濃縮を行い、それぞれ溶媒(ヘキサン)が揮発させられ完全に除去された後、さらに30分間窒素気流下に放置した。
<実施例1>
共栓付先細試験管を2本用意し、それぞれに2,3,7,8- テトラクロロジベンゾオキシン(2,3,7,8−TCDD)のヘキサン溶液(32pg/μl)を40μlずつ加え、1本にはさらに、0.004%グリセリン/アセトン溶液1mlを加えた。それぞれを35℃で窒素吹き付け濃縮を行い、それぞれ溶媒(ヘキサン)が揮発させられ完全に除去された後、さらに30分間窒素気流下に放置した。
その後、それぞれの試験管にDMSO40μlを添加し、ボルテックスミキサーで撹拌した。さらに10分間超音波を照射(40℃)し、再びボルテックスミキサーで撹拌してダイオキシン類を溶解させた。
得られた溶液を測定用試料として、Ahイムノアッセイキット(パラセルシアン社製)を用いてダイオキシン類分析を行った。具体的には、Ahイムノアッセイキット付属の取扱説明書に記載の方法に従ってダイオキシン類の濃度を求めた。具体的手順を以下において説明する。
1) 活性化サイトソルの調製
キットに付属のサイトソル、ARNT、DRE及びアクチベーターをそれぞれ解凍した。サイトソルに、DRE、ARNT、アクチベーターの順に加えて混合した。この混合液を活性化サイトソルとした。さらに活性化サイトソルを13mLと19mLに分け、活性化サイトソル19mLに対しDMSO190μLを加え、混合し、氷温に保管した。
2) 1次抗体液、2次抗体液及び検出試薬の調製
キットに付属のAB1抗体及びAB2抗体をそれぞれAB希釈液に移して混合した。これを1次抗体液及び2次抗体液とした。一方、キットに付属の検出タブレットを検出溶液に加え、遮光下でタブレットを溶解させた。これを検出試薬とした。
3) 洗浄液の調製
キットに付属の20倍濃縮洗浄液を蒸留水により20倍希釈し、これを洗浄液とした。
4) 試料のロード及び検量線の作成
キットに付属の96ウェルELISAプレートの、1〜9のB,C,D,F,G,Hのウェル及び10〜12のB〜Hのウェルに、DMSOを加えた活性化サイトソル(上記1)で調製したもの)を各200μL入れた。次に、残りのウェルにDMSOを加えていない活性化サイトソルを各200μL入れた。1〜9のA及びEに上記で得られた測定用試料を、10〜12には標準物質として2,3,7,8−TCDDのDMSO溶液(32pg/μl)を、各4μLロードした。
1〜9のA及びEにさらにDMSOを加えていない活性化サイトソル(上記1)で調製したもの)を各200μL入れ、混合した後、各200μLを抜き取り、1〜9のB及びFのウェルに加えた。同様の操作を1〜9のC、D及びG、Hについて行った。この操作により測定用試料の原液〜8倍の希釈列を作成した。
10〜12のAのウェルの標準物質は試料と同様の操作をA〜Gまで繰り返し、64pg〜1pgの検量線を作成した。10〜12のHはブランクとした。
サンプルロード後30℃、2時間インキュベートした。
5) プレートの洗浄
インキュベートの後、プレート内のサイトソルを廃棄した。洗浄液380μLをプレートの各ウェルに加え、2分間放置の後廃棄した。この操作を3回繰り返した。
6) 1次抗体液の注入
1次抗体液200μLをプレートの各ウェルに加え30℃、1時間インキュベートした。
7) プレートの洗浄
インキュベートの後、プレート内の1次抗体液を廃棄した。その後上記5)と同様の操作を行った。
8) 2次抗体液の注入
2次抗体液200μLをプレートの各ウェルに加え30℃、1時間インキュベートした。
9) プレートの洗浄
インキュベートの後、プレート内の2次抗体液を廃棄した。その後上記5)、7)と同様の操作を行った。
10) 検出試薬の注入
検出試薬(上記2)で調製したもの)200μLをプレートの各ウェルに加え30℃、1時間インキュベートした。
11) 吸光度の測定
プレートリーダーにより405nmの吸光度を測定した。
12) 濃度の算出
測定された吸光度の結果から、回帰直線統計ソフトを用い、2,3,7,8-TCDDの検量線から、各測定用試料のダイオキシン濃度を、2,3,7,8−TCDD等価量(pgDEQ)として算出した。
キットに付属のサイトソル、ARNT、DRE及びアクチベーターをそれぞれ解凍した。サイトソルに、DRE、ARNT、アクチベーターの順に加えて混合した。この混合液を活性化サイトソルとした。さらに活性化サイトソルを13mLと19mLに分け、活性化サイトソル19mLに対しDMSO190μLを加え、混合し、氷温に保管した。
2) 1次抗体液、2次抗体液及び検出試薬の調製
キットに付属のAB1抗体及びAB2抗体をそれぞれAB希釈液に移して混合した。これを1次抗体液及び2次抗体液とした。一方、キットに付属の検出タブレットを検出溶液に加え、遮光下でタブレットを溶解させた。これを検出試薬とした。
3) 洗浄液の調製
キットに付属の20倍濃縮洗浄液を蒸留水により20倍希釈し、これを洗浄液とした。
4) 試料のロード及び検量線の作成
キットに付属の96ウェルELISAプレートの、1〜9のB,C,D,F,G,Hのウェル及び10〜12のB〜Hのウェルに、DMSOを加えた活性化サイトソル(上記1)で調製したもの)を各200μL入れた。次に、残りのウェルにDMSOを加えていない活性化サイトソルを各200μL入れた。1〜9のA及びEに上記で得られた測定用試料を、10〜12には標準物質として2,3,7,8−TCDDのDMSO溶液(32pg/μl)を、各4μLロードした。
1〜9のA及びEにさらにDMSOを加えていない活性化サイトソル(上記1)で調製したもの)を各200μL入れ、混合した後、各200μLを抜き取り、1〜9のB及びFのウェルに加えた。同様の操作を1〜9のC、D及びG、Hについて行った。この操作により測定用試料の原液〜8倍の希釈列を作成した。
10〜12のAのウェルの標準物質は試料と同様の操作をA〜Gまで繰り返し、64pg〜1pgの検量線を作成した。10〜12のHはブランクとした。
サンプルロード後30℃、2時間インキュベートした。
5) プレートの洗浄
インキュベートの後、プレート内のサイトソルを廃棄した。洗浄液380μLをプレートの各ウェルに加え、2分間放置の後廃棄した。この操作を3回繰り返した。
6) 1次抗体液の注入
1次抗体液200μLをプレートの各ウェルに加え30℃、1時間インキュベートした。
7) プレートの洗浄
インキュベートの後、プレート内の1次抗体液を廃棄した。その後上記5)と同様の操作を行った。
8) 2次抗体液の注入
2次抗体液200μLをプレートの各ウェルに加え30℃、1時間インキュベートした。
9) プレートの洗浄
インキュベートの後、プレート内の2次抗体液を廃棄した。その後上記5)、7)と同様の操作を行った。
10) 検出試薬の注入
検出試薬(上記2)で調製したもの)200μLをプレートの各ウェルに加え30℃、1時間インキュベートした。
11) 吸光度の測定
プレートリーダーにより405nmの吸光度を測定した。
12) 濃度の算出
測定された吸光度の結果から、回帰直線統計ソフトを用い、2,3,7,8-TCDDの検量線から、各測定用試料のダイオキシン濃度を、2,3,7,8−TCDD等価量(pgDEQ)として算出した。
グリセリン/アセトン溶液を加えて処理した検体については2,3,7,8-TCDDの濃度は32pgDEQ/μlとなり、2,3,7,8-TCDDの減少は認められなかった。一方、グリセリン/アセトン溶液を加えずに処理した検体については2,3,7,8-TCDDの濃度は22pgDEQ/μlとなり、2,3,7,8-TCDDが減少していることがわかった。この結果はグリセリンを添加しなかった溶液について、溶液の溶媒を除去したときに2,3,7,8-TCDDが昇華または飛散していることを示す。
<実施例2>
<本願方法による分析対象試料からの測定用試料の作製およびダイオキシン類測定>
採取した土壌または底質検体をアルミホイル上に広げ、105℃の送風乾燥機にて2時間放置して乾燥させた後、乳鉢にて磨り潰して粉末状試料とした。この粉末状試料を5g量り取り、珪藻土5gと十分に混合した。この混合物から高速溶媒抽出機(150℃、2000psi、40分、溶媒:ヘキサン50ml)を用いてダイオキシン類を抽出し、抽出液を得た。
<本願方法による分析対象試料からの測定用試料の作製およびダイオキシン類測定>
採取した土壌または底質検体をアルミホイル上に広げ、105℃の送風乾燥機にて2時間放置して乾燥させた後、乳鉢にて磨り潰して粉末状試料とした。この粉末状試料を5g量り取り、珪藻土5gと十分に混合した。この混合物から高速溶媒抽出機(150℃、2000psi、40分、溶媒:ヘキサン50ml)を用いてダイオキシン類を抽出し、抽出液を得た。
共栓付ガラス製試験管に濃硫酸2mlを加え、これに上記で得られた抽出液の1/100(乾燥試料0.05g相当)を添加し、さらにヘキサン4mlを添加して振盪し、硫酸処理を行った。
一方、多層シリカゲルカラム(スペルコ製スペルクリンカラム)にヘキサン(20ml)を流下させ、該カラムの予備洗浄を行った。このカラムの上部に、ガラス製漏斗の底部にグラスウールを詰めてさらに無水硫酸ナトリウムを敷いたものを載せた。前記硫酸処理を行ったヘキサン層を全量ピペットで吸い上げ、漏斗を通してカラムへ流し入れた。さらに、硫酸層が残った試験管内をヘキサン0.5mlで1回洗い、そのヘキサン層をピペットで吸い上げ漏斗を通してカラムへ流し入れた。カラムへ流しいれたヘキサンの液面をカラム充填層の上端にまで下げ、ヘキサン50mlを流下させてダイオキシン類を溶出した。
なお、上記多層シリカゲルカラムをスペルコ製スペルクリンカラムから、内径15mm/長さ300mmのガラス製クロマトグラフ管の底部に石英ウールを詰めて、下流側から順にシリカゲル0.2g、44%硫酸シリカゲル3g、シリカゲル0.2g、10%硝酸銀シリカゲル1g、無水硫酸ナトリウム3gをヘキサンで湿式充填したもの、またはこれらの上部にさらに銅粉0.1を積層したものに替え、予備洗浄用のヘキサンの量を20mlとし、溶出用ヘキサンの量を50mlにした場合も、同様のダイオキシン類の測定結果が得られた。
得られた溶出液を濃縮容器に入れ、窒素気流濃縮機、またはロータリーエバポレーターで0.5〜1ml程度にまで濃縮し、濃縮容器をヘキサンで洗いこみながら、濃縮物を半量ずつ2本の試験管に移し替えた。2本の試験管のうち一方は保存し、もう一方はさらに窒素気流下で濃縮を行った。溶液が0.2ml程度にまで濃縮された時点で、約1mlの0.004%グリセリン/アセトン溶液を、試験管の内壁に付着した試料を洗い落としながら添加し、さらに窒素気流下でグリセリン以外の有機溶媒(ヘキサン、アセトン)を完全に除去した。
濃縮処理後の試験管中にアセトン40μlおよびDMSO5μlを添加して、ボルテックスミキサーでよく撹拌した。試験管の下部にドライヤーの熱風をあててアセトンを揮発させた。これに超音波を10分間、40℃にて照射し、再びボルテックスミキサーで撹拌して、試験管中の試料を溶解させた。
得られた溶液を測定用試料としてAhイムノアッセイキット(パラセルシアン社製)を用いて、前記実施例1(段落0043)と同様にしてダイオキシン類等量を算出した。
同様の手順で、5種類の土壌または底質検体(A〜E)についてダイオキシン類等量を算出した。これらの測定結果を表1中に、「迅速法による測定値」として示した。
<比較例1>
<従来法による分析対象試料からの測定用試料の作製およびダイオキシン類測定>
採取した土壌または底質検体をアルミホイル上に広げて、室温で一晩風乾した後、2mmメッシュの篩を通した。篩にかけた試料を2g量り取り、あらかじめ高速溶媒抽出機でトルエンを用いて洗浄した珪藻土2gと十分に混合した。この混合物を高速溶媒抽出機(150℃、2000psi、40分、溶媒:トルエン50ml)でダイオキシン類を抽出し、抽出液を得た。
<従来法による分析対象試料からの測定用試料の作製およびダイオキシン類測定>
採取した土壌または底質検体をアルミホイル上に広げて、室温で一晩風乾した後、2mmメッシュの篩を通した。篩にかけた試料を2g量り取り、あらかじめ高速溶媒抽出機でトルエンを用いて洗浄した珪藻土2gと十分に混合した。この混合物を高速溶媒抽出機(150℃、2000psi、40分、溶媒:トルエン50ml)でダイオキシン類を抽出し、抽出液を得た。
得られた抽出液の全量をナス形フラスコに移し、ロータリーエバポレーターで0.5ml程度に濃縮した。分液ロートに濃硫酸10mlおよびヘキサン30mlを入れ、さらに
先述の濃縮した抽出液の全量を、ヘキサンで容器(ナス形フラスコ)を洗いこみながら添加した。5分間振盪し、静置後硫酸層を除去した。この操作を濃硫酸が呈色しなくなるまで繰り返した。ヘキサン層を水で、洗液がほぼ中性になるまで繰り返し洗浄した後、ビーカーに移し、無水硫酸ナトリウムを添加して脱水した。脱水後の溶液を窒素気流濃縮機専用試験管またはナス型フラスコに移し、窒素気流濃縮機またはロータリーエバポレーターで液量1〜2ml程度にまで濃縮した。
先述の濃縮した抽出液の全量を、ヘキサンで容器(ナス形フラスコ)を洗いこみながら添加した。5分間振盪し、静置後硫酸層を除去した。この操作を濃硫酸が呈色しなくなるまで繰り返した。ヘキサン層を水で、洗液がほぼ中性になるまで繰り返し洗浄した後、ビーカーに移し、無水硫酸ナトリウムを添加して脱水した。脱水後の溶液を窒素気流濃縮機専用試験管またはナス型フラスコに移し、窒素気流濃縮機またはロータリーエバポレーターで液量1〜2ml程度にまで濃縮した。
一方、内径15mm長さ300mmのガラス製クロマトグラフ管の底部に石英ウールを詰め、下流側から順にシリカゲル0.2g、44%硫酸シリカゲル6g、シリカゲル0.2g、10%硝酸銀シリカゲル1g、無水硫酸ナトリウム3gをヘキサンで湿式充填し、あるいはこれらの上部にさらに銅粉0.1gを積層し、多層シリカゲルカラムを作製した。これにヘキサン70mlを流下させ予備洗浄を行った。この上部に濃縮液を添加し、さらにヘキサン数mLでナス型フラスコを2回洗いこみながら全量をカラムへ添加した。添加されたヘキサンの液面をカラム充填層の上端にまで下げ、ヘキサン100mlを流下させダイオキシン類を溶出した。
得られた溶出液を、ロータリーエバポレーターで0.5〜1ml程度にまで濃縮し、容器をヘキサンで洗い込みながら試験管に移し替え、さらに窒素気流下で濃縮を行った。溶液が0.2ml程度まで濃縮された時点で、約1mlのヘキサンを試験管の内壁に付着した試料を洗い落としながら添加し、更に窒素気流下で有機溶媒を完全に除去した。この試験管にDMSO40μlを添加してボルテックスミキサーでよく攪拌し、10分間超音波照射(40℃)後、再びボルテックスミキサーで攪拌して試験管中の試料を溶解させた。
得られた溶液を測定用試料として、Ahイムノアッセイキットを用いて実施例1(段落0043)と同様にしてダイオキシン等量を算出した。
同様の手順で、5種類の土壌または底質検体(A〜E)についてダイオキシン類等量(DEQ)を算出した。これらの結果を表1中に「従来法による測定値」として示した。
さらに、同様の5種類の検体(A〜E)について、公定法に従ってダイオキシン類毒性当量(TEQ)を測定した。それらの結果を表1に公定法として示した。
表1に示すように、試料A〜Eのいずれについても迅速法で測定された測定値は、従来法で測定された測定値に対して0.8〜1.2倍の範囲(平均で1.08倍)にあることが解り、同様の結果が得られていることがわかる。
さらに、図1は迅速法の測定結果と公定法による測定結果との相関関係を示し、図2は従来法と公定法との測定結果との相関関係を示すが、迅速法と公定法の相関係数は0.9942であるのに対し、従来法と公定法との相関係数は0.9494であるので、迅速法は従来法よりも、公定法とより良好な相関関係があることが認められる。
<実施例3>
灰試料1gをビーカーに分取し、6N塩酸を3〜5mL加え、しばらく放置した後pHが酸性であることを確認する。ブフナー型ロートにグラスファイバーフィルター(以後GFP)を敷き、ビーカー内の試料を濾別する。GFPに残った試料をヘキサン洗浄水により未反応の塩酸を除く。GFPに残った試料乾燥後、GFPごと高速溶媒抽出機(150℃、2000psi、40分、溶媒:トルエン50mL)により粗抽出液を作製した。
作製した粗抽出液を灰試料の通常の前処理(上記比較例1:段落0054〜0055と同様)によりクリーンアップを行った。
灰試料1gをビーカーに分取し、6N塩酸を3〜5mL加え、しばらく放置した後pHが酸性であることを確認する。ブフナー型ロートにグラスファイバーフィルター(以後GFP)を敷き、ビーカー内の試料を濾別する。GFPに残った試料をヘキサン洗浄水により未反応の塩酸を除く。GFPに残った試料乾燥後、GFPごと高速溶媒抽出機(150℃、2000psi、40分、溶媒:トルエン50mL)により粗抽出液を作製した。
作製した粗抽出液を灰試料の通常の前処理(上記比較例1:段落0054〜0055と同様)によりクリーンアップを行った。
上記クリーンアップにより得られた溶液の一部を分取し、従来法(上記比較例1:段落0056と同様)でのDMSO転溶により測定用試料を作製した(従来法により得られた測定用試料)。
一方、上記クリーンアップにより得られた溶液の一部を分取し、迅速法(上記実施例2:段落0049〜0050と同様)、すなわち0.004%グリセリン/アセトン溶液によりDMSO転溶を行い、測定用試料を得た(迅速法により得られた測定用試料)。
それぞれの測定用試料を、Ahイムノアッセイキット(パルセルシアン社製)により、実施例1(段落0043)と同様にしてダイオキシン類分析を行った。
それぞれの測定用試料から得られた結果を比較し、「迅速法による測定値/従来法による測定値」を求めた。
同様の実験を、5種類の分析対象試料(灰試料)について、合計で9回行った。その結果を下記表2に示す。
一方、上記クリーンアップにより得られた溶液の一部を分取し、迅速法(上記実施例2:段落0049〜0050と同様)、すなわち0.004%グリセリン/アセトン溶液によりDMSO転溶を行い、測定用試料を得た(迅速法により得られた測定用試料)。
それぞれの測定用試料を、Ahイムノアッセイキット(パルセルシアン社製)により、実施例1(段落0043)と同様にしてダイオキシン類分析を行った。
それぞれの測定用試料から得られた結果を比較し、「迅速法による測定値/従来法による測定値」を求めた。
同様の実験を、5種類の分析対象試料(灰試料)について、合計で9回行った。その結果を下記表2に示す。
上記表2から明らかなように、迅速法で得られた測定用試料から得られた測定値は、従来法で得られた測定用試料から得られた測定値と比較して、平均で108%であった。また、測定結果から得られた標準偏差は8.75、変動係数は0.08であり、いずれの方法からもほぼ同様の結果を得られることが確認された。
<参考例1>
<グリセリン濃度を変化させて測定した例>
灰試料1gをビーカーに分取し、6N塩酸を3〜5mL加え、しばらく放置した後pHを測定し、酸性であることを確認した。ブフナー型ロートにグラスファイバーフィルター(以後GFP)を敷き、ビーカー内の試料を濾別した。GFPに残った試料をヘキサン洗浄水により未反応の塩酸を除いた。GFPに残った試料を乾燥後、GFPごと高速溶媒抽出機(150℃、2000psi、40分、溶媒:トルエン50mL)により粗抽出液を作製した。
<グリセリン濃度を変化させて測定した例>
灰試料1gをビーカーに分取し、6N塩酸を3〜5mL加え、しばらく放置した後pHを測定し、酸性であることを確認した。ブフナー型ロートにグラスファイバーフィルター(以後GFP)を敷き、ビーカー内の試料を濾別した。GFPに残った試料をヘキサン洗浄水により未反応の塩酸を除いた。GFPに残った試料を乾燥後、GFPごと高速溶媒抽出機(150℃、2000psi、40分、溶媒:トルエン50mL)により粗抽出液を作製した。
以下、灰試料の通常の前処理を行い(上記比較例1:段落0054〜0056と同様)、DMSO溶液を調製した。
共栓付先細試験管4本に、調製したDMSO溶液各50μLを加え、そのうちの試験管3本それぞれにグリセリンを50μL、100μL及び200μL加えた。グリセリン50μLを添加したものを調製液A、100μLを添加したものを調製液B、及び200μLを添加したものを調製液Cとした。
共栓付先細試験管4本に、調製したDMSO溶液各50μLを加え、そのうちの試験管3本それぞれにグリセリンを50μL、100μL及び200μL加えた。グリセリン50μLを添加したものを調製液A、100μLを添加したものを調製液B、及び200μLを添加したものを調製液Cとした。
上記調製液A〜Cを、測定用試料として、Ahイムノアッセイキット(パラセルシアン社製)を用いて、測定用試料が同量となる(調製液A 4μL/well、調製液B 6μL/well、調製液C 10μL/well)ようにロードすること以外は、実施例1と同様にして、ダイオキシン類分析を行った。得られた測定結果を表3に示す。
表3から、グリセリン濃度が2500〜10000μg/well(グリセリンの比重1.263)のいずれの場合も、Ahイムノアッセイキットを用いるダイオキシン測定に影響か少ないことが明らかである。なお、本発明の測定用試料作製方法においては、通常40μg/well程度であればよいので、グリセリンがダイオキシン測定に及ぼす影響は小さいことがわかる。
<参考例2>
<グリセリンを他の多価アルコールに置換した例>
1) 多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール及びトリエチレングリコール)の2%ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を調製した。
2) 共栓付先細試験管4本に2,3,7,8−テトラクロロジベンゾジオキシン(2,3,7,8−TCDD)のDMSO溶液(32pg/μL)を各20μL入れ、そのうちの3本の試験管に上記で調製した多価アルコール/DMSO溶液を各20μL加えた。残り1本はコントロールとしてDMSOのみ20μLを加えた。
3) これらを、Ahイムノアッセイキット(パラセルシアン社製)により、実施例1(段落0043)と同様にしてダイオキシン類分析を行った。それぞれの測定結果を表4に示す。
<グリセリンを他の多価アルコールに置換した例>
1) 多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール及びトリエチレングリコール)の2%ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を調製した。
2) 共栓付先細試験管4本に2,3,7,8−テトラクロロジベンゾジオキシン(2,3,7,8−TCDD)のDMSO溶液(32pg/μL)を各20μL入れ、そのうちの3本の試験管に上記で調製した多価アルコール/DMSO溶液を各20μL加えた。残り1本はコントロールとしてDMSOのみ20μLを加えた。
3) これらを、Ahイムノアッセイキット(パラセルシアン社製)により、実施例1(段落0043)と同様にしてダイオキシン類分析を行った。それぞれの測定結果を表4に示す。
表4の結果から、Ahイムノアッセイによるダイオキシン類測定において、20μg/well程度の多価アルコールを添加されても、その測定結果への影響は少ないことが明らかになった。
<参考例3>
トリトンX-100の濃度が2重量%、1重量%、0.5重量%、0.25重量%、0.125重量%、0.063重量%、0.031重量%、または0.016重量%であるDMSO溶液をそれぞれ調製した。
一方、共栓付先細試験管7本を用意し、それぞれに2,3,7,8−TCDD(32pg/μl)のDMSO溶液20μlを加えた。そのうち6本の試験管に、上記した各濃度のDMSO溶液(20μl)をそれぞれ加えた(それぞれを「試料1〜6」とする)。試料1〜6のトリトンの濃度は、それぞれ1重量%、0.5重量%、0.25重量%、0.125重量%、0.063重量%、0.031重量%である。残りの1本の試験管には、トリトンX-100を含まないDMSO(20μl)を加えた(「コントロール試料」とする)。
トリトンX-100の濃度が2重量%、1重量%、0.5重量%、0.25重量%、0.125重量%、0.063重量%、0.031重量%、または0.016重量%であるDMSO溶液をそれぞれ調製した。
一方、共栓付先細試験管7本を用意し、それぞれに2,3,7,8−TCDD(32pg/μl)のDMSO溶液20μlを加えた。そのうち6本の試験管に、上記した各濃度のDMSO溶液(20μl)をそれぞれ加えた(それぞれを「試料1〜6」とする)。試料1〜6のトリトンの濃度は、それぞれ1重量%、0.5重量%、0.25重量%、0.125重量%、0.063重量%、0.031重量%である。残りの1本の試験管には、トリトンX-100を含まないDMSO(20μl)を加えた(「コントロール試料」とする)。
試料1〜6、及びコントロール試料を測定用試料として、Ahイムノアッセイキット(パラセルシアン社製)を用いて、実施例1(段落0043)と同様にしてダイオキシン類測定を行い、DEQを求めた。コントロール試料から得られた測定結果(DEQ)に対する、試料1〜6から得られた測定結果(DEQ)の比率を表5に示す。
表5から明らかなように、測定用試料中のトリトンの濃度によって測定結果がまったく異なり、トリトン濃度が高いほど、DEQ値が低下している。従って、Ahイムノアッセイによるダイオキシン類測定において、測定用試料にトリトンを存在させることは好ましくないといえる。
Claims (6)
- 分析対象試料中のダイオキシン類を測定するための、ダイオキシン類測定用試料の作製方法であって、該分析対象試料を前処理することにより得られたダイオキシン類を含む溶液の溶媒を除去するステップを含み、該溶液は、溶媒が除去される際に多価アルコールを含むことを特徴とする方法。
- 前記多価アルコールがグリセリンであることを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
- 前記ダイオキシン類測定が、アリルハイドロカーボンレセプターサイトソルを用いるイムノアッセイである、請求項1または2に記載の作製方法。
- 前記溶媒を除去して得たダイオキシン類を、水溶性高沸点溶媒と水溶性低沸点溶媒の混合溶媒に溶解させるステップ、および該低沸点溶媒を揮発させるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の作製方法。
- 前記前処理は、ヘキサンを溶媒とする抽出処理、硫酸処理およびカラムによるクリーンアップ処理を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の作製方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の作製方法により作製された測定用試料を用いてダイオキシン類を測定することを特徴とする、分析対象試料中のダイオキシン類測定法。
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JP2009025051A (ja) * | 2007-07-17 | 2009-02-05 | Hitachi Plant Technologies Ltd | 有機ハロゲン化合物の簡易測定方法及び装置 |
WO2019035311A1 (ja) * | 2017-08-12 | 2019-02-21 | 三浦工業株式会社 | ハロゲン化有機化合物の抽出方法 |
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- 2004-04-30 JP JP2004135996A patent/JP2005315794A/ja active Pending
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