JP2009023929A - 微小循環構築の血管種別選択的造影剤および造影方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微小循環構築の血管種別の三次元イメージングおよび微小循環三次元再構築を可能にする造影剤、ならびにそれを用いた造影方法などを提供する。
【解決手段】粒子径が1μm以下の硫酸バリウムを含有する毛細血管および後方微小血管用造影剤A、および粒子径が10〜20μmの硫酸バリウムを含有する前方微小血管用造影剤Bを含む、微小循環の多重造影剤、前記多重造影剤を用いることを特徴とする微小循環の多重造影方法、前記多重造影方法に加えて、撮像工程で得られた画像を、CT値の分画に基づいて毛細血管画像、前方微小血管像、後方微小血管像、さらに大きい血管の像、もしくは管付随組織画像またはこれらから選ばれる少なくとも2つの画像を重ね合わせた画像を抽出する工程を含む、微小循環の分離再構築三次元イメージング方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、微小循環の三次元イメージングの分野に関する。詳しくは、血管の種別選択的画像イメージングに役立つ造影剤および造影方法などに関する。
心筋が虚血再灌流に曝されると、冠循環微小血管はアポトーシスに陥り、その血管構築を失う。今日まで、虚血再灌流障害による冠循環アポトーシスに関する研究において利用されてきたイメージング上の指標は、冠毛細血管を観察対象とする組織観察(免疫染色を含む)がほとんどであった。最近、本発明者を含む研究グループは、虚血再灌流障害の急性期に冠毛細血管が特有の三次元構築異常(コルクスクリュー状の変形萎縮と血管閉塞機転)を生じることを三次元的観察によって明らかにし(非特許文献1)、それらのことが微小循環血液レオロジーを破綻させることを報告してきた。しかし、虚血再灌流障害による慢性期において、毛細血管のみならず、冠細動脈や冠細静脈の三次元構築がいかに損なわれていくか、その様相の詳細は不明である。
冠循環系をはじめとする毛細血管と動静脈系とのリンケージはこれまでに研究されてきた。例えば、毛細血管を動脈系と静脈系に染色分類する手法(非特許文献2)、動脈系および静脈系それぞれへの分化関連タンパク質:エフェリンの研究(非特許文献3)などがある。ジオメトリックな検討としては、組織切片中で細動脈はαアクチンの免疫組織染色法によって識別されているが、この方法論では観察範囲の制約(例えば、深達度においては共焦点レーザー顕微鏡観察では数百μmオーダー、免疫組織染色観察では数μmオーダーのみ)から、その様相を十分な深さと広がりを持つ立体空間の中で観察評価することが困難であった。すなわち、細動脈や細静脈にどのような立体構造異常が生じているのか、その構造異常の連続性はどうか、例えば心筋アポトーシス領域を超えてどの範囲まで波及しているかなど、心臓全体にわたって三次元広範囲で観察しなければ不明な点が多い。
本発明者を含む研究グループは、これまで、冠微小循環を隈なくエックス線三次元イメージングする独自の方法論を確立し(非特許文献4)、これを基盤に微小循環三次元イメージングの研究を発展させてきた(非特許文献1、5、6、7)。この方法論は、硫酸バリウム粒子を特異な組成で調合した造影剤をラット冠循環に定圧灌流固定し、マイクロフォーカスエックス線コンピュータ断層撮影(CT)装置で撮像するものである。
Watanabe N et al., Circ J, 2004; 68(9):868-872 Koyama T et al., Jpn J Physiol 1998; 48(4):229-241 Wang et al., Cell 1998; 93(5):741-753 Toyota E et al., Circulation 2002; 105(5):621-626 Watanabe N et al., Circ J, 2004; 68(12):1210-1214 Toyota E et al., Circulation 2005; 112(14):2108-2113 Toyota E et al., Circulation J, 2007; 71(5):788-795
本発明者らがこれまでに開発してきた冠微小循環三次元イメージングは、心臓を血液灌流している冠微小血管の全体像を明確に把握することが可能であったが、その血管種別のイメージングは実現できていなかった。そこで、本発明の目的は、任意の生体臓器または組織中に構築されている微小循環の血管種別の三次元イメージング、およびそれを可能にする造影剤、ならびにそれを用いた造影方法などを提供することにある。
本発明者は、ヒト消化管のエックス線撮影検査に使用される硫酸バリウムの優れたエックス線吸収率に注目し、硫酸バリウムの粒径と濃度を選択することにより、微小循環の選択的三次元イメージングに成功し、本発明を完成するに至った。即ち、本願発明は、以下に示す通りである。
〔1〕 粒子径が1μm以下の硫酸バリウムを含有する毛細血管および後方微小血管用造影剤A(以下、「造影剤A」と省略する)、ならびに粒子径が10〜20μmの硫酸バリウムを含有する前方微小血管用造影剤B(以下、「造影剤B」と省略する)を含む、微小循環の多重造影剤。
〔2〕 前記造影剤Aおよび造影剤Bに含まれる硫酸バリウムの濃度が、0.1〜60w/v%からそれぞれ選ばれ、かつ当該濃度が相互に異なるものである、前記〔1〕に記載の多重造影剤。
〔3〕 前記造影剤Aおよび造影剤Bがさらにゼラチンを含有するものである、前記〔1〕または〔2〕に記載の多重造影剤。
〔4〕 虚血性心疾患、虚血性神経疾患、虚血性腎疾患、虚血性肺疾患、虚血性消化器疾患、虚血性骨格筋疾患、および虚血性皮膚疾患;
固形がん、肉腫、およびこれらの転移性腫瘍;ならびに
微小領域の骨の破壊と増生を起こしうる骨梁疾患および骨髄疾患
からなる群より選ばれる病態を生じうる臓器を撮像対象とするものである、前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の多重造影剤。
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕いずれかに記載の多重造影剤を用いることを特徴とする、微小循環の多重造影方法。
〔6〕 下記工程:
前記〔1〕、〔2〕または〔4〕に記載の造影剤Aを、ヒトを除く動物の微小循環または生体外に取り出された動物の標的臓器の微小循環に注入する工程、
前記〔1〕、〔2〕または〔4〕に記載の造影剤Bをさらに前記微小循環に注入し、当該造影剤Bを前方微小循環で閉塞させる工程、および
閉塞工程で処理された前方微小循環と、後方微小循環をマイクロフォーカスエックス線CT装置で撮像する工程
を含む、前記〔5〕に記載の多重造影方法。
〔7〕 下記工程:
前記〔3〕または〔4〕に記載の造影剤Aを加温してゼラチンを溶解し、ヒトを除く動物の微小循環または生体外に取り出された標的臓器の微小循環に注入する工程、
前記〔3〕または〔4〕に記載の造影剤Bを加温してゼラチンを溶解し、さらに前記微小循環に注入し、当該造影剤Bを微小循環で閉塞させる工程、
閉塞工程で処理された微小循環を冷却し、固定する工程、および
固定された微小循環をマイクロフォーカスエックス線CT装置で撮像する工程
を含む、前記〔5〕に記載の多重造影方法。
〔8〕 下記工程:
前記〔1〕、〔2〕または〔4〕に記載の造影剤Aを、ヒトを除く動物の微小循環または生体外に取り出された動物の標的臓器の微小循環に注入する工程、
前記〔1〕、〔2〕または〔4〕に記載の造影剤Bをさらに前記微小循環に注入し、当該造影剤Bを前方微小循環で閉塞させる工程、
閉塞工程で処理された前方微小循環と、後方微小循環をマイクロフォーカスエックス線CT装置で撮像する工程、および
撮像工程で得られた画像を、CT値の分画に基づいて毛細血管画像、前方微小血管像、後方微小血管像、さらに大きい血管の画像、もしくは血管付随組織画像またはこれらから選ばれる少なくとも2つの画像を重ね合わせた画像を抽出する工程
を含む、微小循環の分離再構築三次元イメージング方法。
〔9〕 下記工程:
前記〔3〕または〔4〕に記載の造影剤Aを加温してゼラチンを溶解し、ヒトを除く動物の微小循環または生体外に取り出された動物の標的臓器の微小循環に注入する工程、
前記〔3〕または〔4〕に記載の造影剤Bを加温してゼラチンを溶解し、さらに前記微小循環に注入し、当該造影剤Bを微小循環で閉塞させる工程、
閉塞工程で処理された微小循環を冷却し、固定する工程、
固定された微小循環をマイクロフォーカスエックス線CT装置で撮像する工程、および
撮像工程で得られた画像を、CT値の分画に基づいて毛細血管画像、前方微小血管像、後方微小血管像、さらに大きい血管の画像、もしくは血管付随組織画像またはこれらから選ばれる少なくとも2つの画像を重ね合わせた画像を抽出する工程
を含む、微小循環の分離再構築三次元イメージング方法。
〔10〕 虚血性心疾患、虚血性神経疾患、虚血性腎疾患、虚血性肺疾患、虚血性消化器疾患、虚血性骨格筋疾患および虚血性皮膚疾患;
前記いずれかの疾患によって二次的に生じた血管構造の変化の生じた病態、血管アポトーシスおよび血管新生が生じた病態;
骨梁疾患および骨髄疾患;ならびに
固形がん、肉腫、およびこれらの転移性腫瘍
からなる群より選ばれる疾患もしくは病態の診断または前記疾患もしくは病態に対する治療手法の効果判定に使用されるものである、前記〔8〕または〔9〕に記載のイメージング方法。
〔11〕 発生、臓器再生、組織再生、血管新生またはアポトーシスが関わる基礎医学の評価に使用されるものである、前記〔8〕または〔9〕に記載のイメージング方法。
〔12〕 前記〔1〕〜〔4〕いずれかに記載の多重造影剤を用いてヒトを除く動物の微小冠循環を多重造影する工程を含む、循環器系疾患の治療候補のスクリーニング方法。
本発明の微小循環の多重造影剤、造影剤キット、または多重造影方法によると、当該造影剤を用いて、マイクロフォーカスエックス線CT装置で心臓を撮像する場合に、細動脈、細静脈、毛細血管などのCT値に有意なCT値分布差を生じさせることができ、CT値分画の範囲に基づいて、これらの各血管構築要素を分離、抽出、あるいはオーバーレイした三次元イメージングを実現することができる。これまでのイメージング技術は、心臓の冠微小循環を動脈系と静脈系を同時的にイメージングし且つ各々を分離抽出してイメージングすること、とりわけ、各々の三次元微小構築を臓器全体の空間的広がりにわたってイメージングすることは不可能であったが、本発明の三次元イメージング方法によれば、血管種別のイメージング、各々の血管種の連続性の描出と定量的解析を可能とする三次元的イメージング、臓器内の微小循環の広範囲空間的なイメージング等、多彩な画像を選択して示すことができる。また、本発明のスクリーニング方法によれば、本発明の多重造影剤およびこれを用いた造影方法、三次元イメージング方法を駆使することにより、微小循環に作用する任意の治療法の効果を明確に可視化することが可能である。ここで述べる治療法とは、薬物治療に限定されることなく、細胞治療、物理的治療、それらの複合的治療など、広く一般的な治療法をさす。循環器系疾患の治療手法候補等を有効に選別することができる。
本発明の微小循環の多重造影剤は、2種類の造影剤、すなわち粒子径が1μm以下の硫酸バリウム粒子を含有する毛細血管用および後方微小血管用造影剤A、および粒子径が10〜20μmの硫酸バリウム粒子を含有する前方微小血管用造影剤Bを含むことを特徴とするものである。
本発明において「微小循環」とは、循環血液(リンパを除く)と臓器の組織や細胞を指し示すところの微小領域との間で物質交換が行われるための管腔構築およびそのネットワーク構築を指し、微小領域局所のみならず、その臓器の中の全体構築を包含する概念である。微小循環は順行性に細動脈、毛細血管、細静脈の順で組織および細胞に血液灌流を行うための血管樹を構築している。また、血管樹は微小領域局所とより大きな血管との間で連続性を有するので、ここで定義する微小循環とは、微小領域局所からより大きな動脈や静脈への連続性をも含めた全体的な構成要素としてもよい。
本発明において「毛細血管」とは、血液循環をおこなう直径が10μm未満の細い管と定義する(ただし解剖学用語的に毛細血管とは、管の直径で規定すれば約5〜7μmの範囲であるものを一般には指し示す。しかし、次項の「微小血管」との識別のために、あえて本発明の明細を述べるにあたり、直径が10μm未満の細い管と定義する)。本発明の多重造影剤がその効果を発揮するという観点から、毛細血管が発達した組織である心臓をはじめ、あらゆる全身の臓器や、癌組織または再生組織における毛細血管が観察対象として好ましい。
本発明において「微小血管」とは、解剖学用語的には細動脈または細静脈を指し示し、血液循環を担う血管であり、管の直径で規定すれば10μm以上の細い管と定義する。本発明の造影剤Bを注入した場合に当該造影剤が前方微小血管(あるいは上流微小血管)に閉塞して毛細血管と識別可能となる観点から微小血管が発達した組織である心臓をはじめ、あらゆる全身の臓器や、癌組織あるいは再生組織などが観察対象として好ましい。
ここで、「前方微小血管」とは、造影剤Bの注入側を前方と称した場合の注入側から閉塞部位までの微小血管をいう。「上流微小血管」とは、造影剤Bの注入側を上流と称した場合の注入側から閉塞部位までの微小血管をいい、「前方微小血管」と同義である。また、「後方微小血管」とは、造影剤Bの注入側を前方と称した場合の閉塞部位から後方の微小血管をいう。「下流微小血管」とは、造影剤Bの注入側を上流と称した場合の閉塞部位から下流の微小血管をいい、「後方微小血管」と同義である。同様に、「前方微小循環」、「後方微小循環」、「上流微小循環」および「下流微小循環」も、微小循環内の造影剤Bの閉塞部位を基準にして、前方(上流)側および後方(下流)側を示す。
本発明において「多重造影」とは、少なくとも1種の造影剤Aおよび少なくとも1種の造影剤Bを用いてエックス線撮影することをいう。造影剤Aと造影剤Bは各々の硫酸バリウムけん濁液中の硫酸バリウムの粒子径が異なることを特徴とするものである。同時に、多重造影する場合には、異なるエックス線吸収率を付与することが好ましいことから、造影剤Aと造影剤Bには、各々が異なる濃度の硫酸バリウムけん濁液となるように組み合わせることが重要である。エックス線吸収率は、マイクロフォーカスエックス線CT装置で撮像する場合、CT値で識別される。
本発明の造影剤の成分である硫酸バリウムは、消化管のエックス線撮影に通常使用されるあらゆる種類の硫酸バリウム粒子けん濁液を限定なく使用することができる。例えば、硫酸バリウムは、日本薬局方に規定された粉末の硫酸バリウムを用いてもよく、市販のゾル状製剤を用いてもよい。市販の製剤としては、後述するゼラチンなどとの適合性が良好な点から、バリトゲン(登録商標)ゾル145(伏見製薬製)、フシミ流動液100(伏見製薬製)などが好適に使用される。
本発明において定義する硫酸バリウムの粒子径とは、実施例に記載の方法により硫酸バリウムの粒度分布を測定し、分布曲線を求めたときのピーク値をいう。
造影剤Aは、直径が毛細血管径よりも微小な硫酸バリウム粒子を含有するものであり、循環系に注入すると太い血管を経て前方微小血管に充填され、続いて毛細血管全体に充填された後、後方微小血管にも充填される造影剤である。
造影剤A中の硫酸バリウム粒子の直径は、毛細血管全体に灌流欠損なく十分到達させ充填させるために用いるという観点から、毛細血管の直径以下、すなわち10μm未満(一般解剖学的な見地にもとづけば5〜7μm未満)が好ましく、とくに1μm以下がより確実性が高く好ましい。造粒剤Aは、前方微小血管を容易に通過可能にするためには、10μm以上の粒子径の硫酸バリウムを実質的に含むべきではない。
造影剤Bは、直径が10〜20μmの硫酸バリウム粒子を含有するものであり、循環系に注入すると太い血管から前方微小血管を満たし、ここで塞栓させる造影剤である。
造影剤B中の硫酸バリウムの粒子径は、前方微小血管を閉塞させるために用いるという観点から10μm以上が好ましく、とくに10〜20μmがより好ましい。また、観察対象とする微小血管レベルよりも上流側の太い血管における閉塞がアーチファクトとして生じうる直径20μmより大きい硫酸バリウム粒子を実質的に含むべきではない。
造影剤Aおよび造影剤Bに含まれる硫酸バリウムの濃度は、多重造影する場合に異なるCT値を付与する観点から、例えば0.1〜60w/v%の幅広い範囲からそれぞれ選ばれ、かつ当該濃度が相互に異なるように選ばれることが好ましい。例えば、造影剤B中の濃度を20w/v%としたとき、造影剤A中の濃度を20w/v%以外の濃度で単一または複数選択することができる。このような組合せを有する多重造影剤は、循環系に注入すると、血管の種別を異なるCT値で識別することが可能となり好ましい。造影剤Aおよび造影剤Bにおける硫酸バリウムの濃度差は、CT値を明確に区画化するためには、濃度差が大きいほど好ましいが、撮影対象におけるエックス線撮影のバックグラウンド等を考慮して適宜濃度の最適化を図ることができる。例えば、ラットの冠循環の多重造影の場合、造影剤B中の硫酸バリウムの濃度は20w/v%、造影剤A中の硫酸バリウムの濃度は5w/v%などがあげられる。
本発明の多重造影剤は、循環系に注入した後に硫酸バリウムを凝固し局所で固定させる。このためには、造影剤Aおよび造影剤Bがさらにゼラチンを含有するものであることが好ましい。用いられるゼラチンは特に限定されるものではないが、市販品として、ナカライテスク製のゼラチンが例示される。ゼラチンの濃度は、造影剤を冷却後に硫酸バリウムを凝固させるに足りる濃度であればよく、通常4〜12w/v%であり、好ましくは6〜10w/v%であり、より好ましくは8w/v%である。
本発明の多重造影剤には、硫酸バリウムを凝固させるために、ゼラチンの代わりにアガーを含有させてもよい。用いられるアガーは、特に限定されるものではない。アガーの濃度は、造影剤を冷却後に硫酸バリウムを凝固させるに足りる濃度であればよく、通常4〜12w/v%であり、好ましくは6〜10w/v%である。
造影剤Aおよび造影剤Bには、硫酸バリウムを水に分散させるため、例えばトラガントガム、アラビアガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウムまたはポリリン酸ナトリウムなどの増粘剤(けん濁剤)を含んでいてもよい。さらに、ソルビン酸、デヒドロ酢酸などの防腐剤、サッカリンナトリウム、ブドウ糖などの甘味剤、香料などの医薬上許容される担体を含んでいてもよい。
本発明の多重造影剤は、造影剤Aおよび造影剤Bを別々の容器に収容したキットであってもよい。この場合、造影剤Aおよび造影剤Bのそれぞれ1種類または2種類以上を、種類ごとに別々の容器に収容していることが好ましい。前記キットには、造影剤AまたはBに含まれる硫酸バリウムの濃度を調整するための希釈液(例、蒸留水など)、造影剤Aと造影剤Bを識別するための色素(例、墨汁など)等をさらに含んでいてもよい。
本発明の多重造影剤は、硫酸バリウムと同等のエックス線吸収率を有する物質であれば、硫酸バリウムの代わりに、あるいは硫酸バリウムと混合して用いることができる。このような物質としては、オキシ炭酸ビスマスなどに代表される高いエックス線吸収率を有するすべての物質があげられる。
本発明の多重造影剤を用いて撮像する対象としては、特に限定されるものではないが、成熟健常臓器として心臓冠循環、腎臓泌尿器循環、肝臓循環、肺循環、中枢および末梢神経循環、消化器循環、内分泌腺循環、骨髄および骨梁循環、骨格筋循環、感覚器循環、皮膚循環などほぼすべての臓器における微小循環があげられる。これらの発生中の組織、再生組織、血管新生を伴う組織、血管アポトーシスを伴う組織、梗塞を有する組織、がんや肉腫、それらの転移などあらゆる腫瘍の組織からなる群より選ばれる微小循環があげられる。本発明の多重造影剤を用いて撮像する対象としては、病態を生じうる臓器として、微小血管構造の変化または異常によって生じる疾患として虚血性心疾患、虚血性神経疾患、虚血性腎疾患、虚血性肺疾患、虚血性消化器疾患、虚血性骨格筋疾患、虚血性皮膚疾患など、循環不全や臓器の梗塞が生じうる全ての臓器を撮像の対象とする。固形がんや肉腫、さらにこれらの転移性腫瘍を発生する全ての臓器も撮像の対象とする。微小領域の骨の破壊と増生を起こしうる骨梁疾患および骨髄疾患も撮像の対象とする。後述するように、これらの臓器の毛細血管、前方および後方微小循環、さらに大きな血管、周辺組織を個別にあるいはオーバーレイして三次元イメージングすることにより、各々の原疾患によって二次的に生じた血管構造の変化すなわち血管リモデリング(たとえば血管アポトーシスや血管新生を含む血管構造変化)を三次元イメージングすることが可能となる。またこれらの疾患または病態に対する任意の治療手法の効果判定にも本発明の三次元イメージングを利用することができる。
本発明は、本発明の多重造影剤を用いることを特徴とする微小循環の多重造影方法を提供する。本発明の多重造影剤の適用対象は、生体内に投与する場合はヒトを除く動物であり、生体外で投与する場合は、ヒトを含む動物由来の微小循環系である。動物としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ブタ、ミニブタ、ヒツジ、ウマ、トカゲ、オオサンショウウオ、カエルなどがあげられ、好適な動物としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ等の実験小動物があげられる。
具体的には、本発明の多重造影方法は、下記工程(1)〜(4)を含む。
(1)造影剤Aを加温してゼラチンを溶解し、ヒトを除く動物の微小循環または生体外に取り出された標的臓器の微小循環に注入する工程
造影剤Aは、微小循環のすべての血管構築要素に行き渡るように設計されているため、前述した微小循環系のいずれの血管構築部分から注入してもよい。注入が容易で注入速度の制御が可能な大動脈、臓器主幹動脈、臓器主幹静脈(動脈系も静脈系も、いわゆる逆行性注入を含む。)などの太い血管が好ましい。
ゼラチンを含む造影剤AおよびBは、室温以下ではゲル状あるいは固形である。注入する前に加温し、粘性の低い液状にしてから使用する。加温の温度はゼラチンの融点である37℃以上から蛋白が凝固する60℃以下の範囲がよいとするが、とくに40〜42℃がより好ましい。加温時間は、30〜60分程度が例示される。攪拌すればより早くより確実に溶解できる。攪拌する場合は微小気泡が造影剤中に発生したり混じないよう、空気との混合を避けて静かに攪拌する。アガーを含む造影剤AおよびBも同様である。
造影剤の注入量および注入速度は、対象とする動物種、微小循環、イメージングの目的等を勘案して適宜設定することが可能である。注入方法は、生体内に投与する場合は注射(いわゆる一回のボーラス投与)、精密速度調節ポンプによる持続投与等があげられ、生体外で微小循環に注入する場合は、灌流装置へ摘出臓器を装着(注入側血管と連続させて装着)させて注入する等があげられる。いずれも灌流圧をモニタリングしながら注入することが推奨される。
(2)造影剤Bを加温してゼラチンを溶解し、さらに前記微小循環に注入し、当該造影剤Bを微小循環で閉塞させる工程
造影剤Bは、前方あるいは上流微小血管を閉塞させるように設計されているため、太い血管から微小血管へ向けて、微小血管の太い部分から毛細血管方向へ向けて注入することが好ましい。前記工程(1)で前方微小血管に充填されていた造影剤Aは、造影剤Bのあとからの注入により毛細血管および後方微小血管に押し出されて移動するため、注入側の太い血管および前方微小血管の管腔内は造影剤Bに置換される。10μm以上の粒子径を有する造影剤Bは、前方微小血管を閉塞させる。
前記工程(1)および(2)の具体的一態様を図1に示す。図1は、標的臓器の動脈側から造影剤Aを注入し、続いて同じ動脈側から造影剤Bを注入することを模式的に示している。この場合、毛細血管およびそれに連続する下流の細静脈および静脈が造影剤Aで満たされ、動脈(大動脈および細動脈)が造影剤Bで満たされている。
(3)閉塞工程で処理された微小循環を冷却、固定する工程
前記工程(1)および(2)が終了した後、造影剤を注入する際の灌流圧を維持したまま、微小循環を冷却する。冷却方法は0〜4℃の生理食塩水内にサンプル全体を浸水させてサンプル内部の造影剤を冷却凝固させる。冷却凝固後、直ちに臓器ごと化学的に固定させる。このための固定液の具体例は、0〜4℃に冷却したホルマリン液やグルタールアルデヒド液などがあげられる。ここで重要なことは、サンプルを入れた固定液もまた0〜4℃の低温を維持され続けることである。これによりサンプル内の血管内に充填、凝固された造影剤が再び血管外へ溶出し微小血管イメージングが劣化することを防ぐ。なお、化学固定は、撮像工程を0〜4℃で行う場合は、省略することもできる。
(4)固定された微小循環をマイクロフォーカスエックス線CT装置で撮像する工程
閉塞工程で処理された微小循環系をマイクロフォーカスエックス線CT装置で撮像する方法は、特に限定されることなく、用いる装置の手順に従い行うことができる。
本発明は、微小循環の分離再構築三次元イメージング方法を提供する。本イメージング方法において、造影剤Aの注入工程、造影剤Bによる閉塞工程、冷却固定工程およびマイクロフォーカスエックス線CT装置での撮像工程は、それぞれ、前述した工程(1)、工程(2)、工程(3)および工程(4)と同様に行うことができる。本イメージング方法は、さらに下記工程を含む。
(5)撮像工程で得られた画像から、CT値の分画に基づいて毛細血管画像、前方および後方微小血管画像、さらに大きな血管の画像もしくは管付随組織画像、またはこれらから選ばれる少なくとも2つの画像を重ね合わせた画像を抽出する工程
「微小循環の分離」とは、撮像工程で得られた画像から、CT値の分画に基づいて毛細血管画像、前方及び後方の微小血管画像、さらに大きな血管の画像、もしくは管付随組織画像を抽出する工程を行うことによって、これら各々の三次元画像として分離することをいう。また、「微小循環画像のオーバーレイ」とは、前記分離した画像から必要に応じて少なくとも2つ選択した画像を重ね合わせた微小循環構築画像を得ることをいう。これら「分離」および「オーバーレイ」を併せて「微小循環の分離再構築」という。
ここで「CT値の分画」について以下に説明する。エックス線CT撮影に際して、撮像サンプルを構成する各々の要素の原子量と密度によってエックス線吸収率に分布差が生じる。通常、この分布はエックス線吸収率の値を横軸としたヒストグラム表示によって視覚的に識別される。ヒストグラム横軸方向で規定できる任意のエックス線吸収値範囲をCT値の分画とする。例えば、造影剤が存在する場合、造影剤の濃度と密度によって、エックス線吸収率ヒストグラム上固有のバンド、すなわち固有のCT値の分画として識別される。
画像の分離と抽出とは、任意のCT値の分画を選択して、その分画を構成する構造物のみを全CT画像データから分離および抽出することをいう。例えば、内部に充填された造影剤の濃度で規定できる微小血管の構造は、サンプル画像全体の中から分離した別個の微小血管のみの画像として抽出することをいう。
画像のオーバーレイとは、CT分画によって分離、抽出した個別の構造物を同一画面上に重ね合わせて表示することをいう。例えば、造影剤Aが充填されている構造物(後方微小血管)と造影剤Bが充填されている構造物(前方微小血管)は各々固有のCT値の分画により個別に分離および抽出できるが、これら両者を同一画面上に重ね合わせて表示することをいう。
本発明のイメージング方法は、各種疾患の診断に利用することができる。かかる疾患としては、血管構造の変化または異常によって生じる疾患として虚血性心疾患、虚血性神経疾患、虚血性腎疾患、虚血性肺疾患、虚血性消化器疾患、虚血性骨格筋疾患、虚血性皮膚疾患など、循環不全や臓器の梗塞が生じる病態が対象となる。したがって、これらの疾患の対象臓器が撮像対象となる。これらの原疾患によって二次的に生じた血管構造の変化すなわち血管リモデリングの生じた病態、たとえば血管アポトーシスや血管新生が生じた病態を含む。骨梁疾患および骨髄疾患も含む。二次的に血管構造異常を来す疾患として、固形がんや肉腫などの腫瘍を含み、さらにこれらの転移性腫瘍も含む。
またこれらの疾患または病態に対する任意の治療手法の効果判定にも利用することができる。
また、本発明のイメージング方法は、基礎医学研究の様々な評価方法に利用することができる。かかる研究分野としては、発生、臓器再生、組織再生、血管新生、アポトーシスなどが関わる基礎医学研究すべてを含む。
さらに、本発明の多重造影剤と造影方法を用いて対象臓器の微小循環を多重造影することにより、対象疾患の治療法の候補をスクリーニングすることも可能であり、かかるスクリーニング方法を提供する。好ましい対象疾患としては、循環器系疾患があげられる。本発明のスクリーニング方法は、具体的には下記工程を含む。
(a)動物に被験物質を投与するまたは治療手法を施す工程、
(b)前記被験物質を投与した動物または治療手法を施した動物における微小循環を多重造影し、被験物質を投与しない動物または治療手法を施さない動物における微小循環も同時にまたは別途多重造影する工程、ならびに
(c)前記多重造影工程により得られた三次元画像を比較し、比較結果に基づいて被験物質または治療手法を選択する工程。
前記(a)において、被験物質とは、いかなる公知物質および新規物質であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、ナノ技術により修飾した治療剤、分子ターゲッティング修飾した治療剤、ナノバブルまたはマイクロバブルを利用した治療剤、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分などがあげられる。また、これらの化合物の2種以上の混合物を試料として供することもできる。
前記(a)において、治療手法とは、あらゆる治療方法であってもよい。例えば、被験物質の投与経路としては、経口投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮膚投与、口腔内投与、直腸内投与、気管支内投与、局所への直接注入投与などがある。
被験物質の投与方法としては、単体投与、ウィルスベクターなどのバイオ技術を用いた方法、無機化合物や有機化合物や高分子化合物を修飾した方法、ナノ技術を用いた方法、これらによる分子ターゲッティング法、ナノバブルやマイクロバブルで修飾した方法、それらの治療手法を増強させる効果をふくむ物理的手法あるいは単独で効果を期待する物理的手法として、体外式および体内式の超音波刺激、衝撃波刺激、レーザー刺激、放射線、中性子線、放射光などの高エネルギー波被曝刺激、温熱刺激、寒冷刺激などがあげられる。また、これらの治療法を2種以上施してもよい。
前記(a)において、動物とはヒトを除く動物であり、好適な動物としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ等の実験小動物、さらに好ましくは、循環器疾患モデル小動物モデルである。循環器疾患のモデル小動物としては、同じくマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギなどが例示される。
前記被験物質の投与量は、有効成分の種類、分子の大きさ、投与経路、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって適宜設定することができる。
前記工程(b)において、被験物質を投与した動物または治療手法を施した動物における微小循環の多重造影方法としては、前述した本発明の多重造影方法を行えばよい。被験物質を投与しない動物または治療手法を施さない動物における微小循環の多重造影も同時にまたは別途実施する。循環器系疾患を対象とする場合、微小冠循環を造影対象とすることが好ましい。
前記工程(c)において、前記工程(b)により得られた三次元画像を比較し、比較結果に基づき、微小循環に対して有意に作用する被験物質を選択する。選択する基準は、被験物質を投与していない動物を指標にすればよい。
このようにして選択された被験物質または治療手法は、対象疾患を改善させる作用を有することが期待されるものであり、対象疾患の治療候補となりうる。
同様に、本発明のスクリーニング方法に用いる動物を適宜選択することにより、循環器系疾患のみならず、中枢神経疾患、腎臓疾患、肺疾患、消化器疾患、骨格筋疾患、皮膚疾患、骨梁疾患、骨髄疾患、固形がん、肉腫、転移性腫瘍などの治療候補を選別することも可能である。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
<硫酸バリウムの粒子径の測定>
バリトゲンゾルおよびフシミ流動液100は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−910)により粒度分布を測定し、分布曲線より粒度のピーク値を求めた。
<マイクロフォーカスエックス線CT装置>
本発明の造影剤とその充填による微小循環構築のイメージングを行うための撮像機器には、エックス線マイクロCT装置が最適である。なぜなら1)エックス線が優れたサンプル透過能をもつため、サンプルを三次元的に撮像する上で適切であること、2)サンプル内に充填する造影剤が高いエックス線吸収特性を有し、高いS/N比を得ながらも、撮像に支障となる程度の減衰も少ないこと、3)サンプルの微小構造を撮像するためにはマイクロメーターオーダーの空間分解能を有する必要があること、これらを満たすからである。
具体的には、既製品として市場に流通しているエックス線マイクロCT装置でよい。例えば日鉄エレックス社製卓上型マイクロフォーカスX線CT装置(ELESCAN NX-MCP-C100I(4/2)K)や、Scanco Medical製Micro CT Systemsでもよい。エックス線ナノCT(分解能がナノメーターオーダー、すなわちサブマイクロメーターオーダを有する)でもよい。エックス線のエネルギー設定は電流値(マイクロアンペア)と電圧値(キロエレクトロンボルト)で制御するが、これは撮像機種やサンプルの組み合わせによって異なるため特に規定しない。また、エックス線以外の高エネルギーを用いる撮像機器であってもよい。例えば、高輝度光科学研究センター(SPring8)の放射光microCT(ビームラインBL20B2)でもよい。
撮像条件として重要な点は、任意に設定する空間分解能である。前方微小血管と後方微小血管(10μm以上の管径)を分離抽出するためには、毛細血管(10μm未満の管径)をノイズとして構成画像から排除したほうがよいため、例えば最大でも10μmを空間分解能として設定する。実際には例えばラットの心臓全体を一度に撮像する場合、空間分解能を数十μmのオーダーにする場合が多い。現実的には、撮像機種と撮像対象サンプル全体の大きさによってこの分解能は規定される場合が多い。一方、毛細血管を画像化するためには2〜3μm以上の空間分解能が必要である。1μm以下であればさらに好ましい。この場合、高分解能を求めるためにエックス線ナノCT装置、ツーフォトンレーザー顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡を用いてもよい。
<動物試料の調製>
実験動物の取り扱いについては、川崎医科大学の動物実験委員会(倫理委員会)で承認された学内のガイドラインに従った。
[実施例1]
(1)造影剤Aの製造
粒子径0.7μmの硫酸バリウムを100w/v%含有する硫酸バリウム流動液(伏見製薬製)を原液として用いた。原液を水で希釈し、ゼラチン精製粉末(ナカライテスク製)を最終濃度が8w/v%となるように添加し、2.5〜20w/v%の種々の濃度の硫酸バリウム流動液を調製し、造影剤Aとした。
(2)造影剤Bの製造
バリトゲン(登録商標)ゾル145(粒子径10μmの硫酸バリウムを145w/v%含有する、伏見製薬製)を原液として用いた。原液を水で希釈し、ゼラチン精製粉末(ナカライテスク製)を最終濃度が8w/v%となるように添加し、20w/v%の硫酸バリウム流動液を調製し、造影剤Bとした。
[実施例2]
血管ファントムによる各種造影剤の比較
本発明の造影剤A、Bおよびその他の種々の造影剤のファントムを下記のようにして比較した。造影剤として、実施例1で調製した造影剤Aおよび造影剤B、リピオドール(登録商標)(ヨード系造影剤、ゲルベジャパン製)、ガストログラフィン(登録商標)(日本シエーリング製)、墨汁嵯峨高級濃染(登録商標、西文明堂製)、ならびにゼラチン(ナカライテスク製)を用いた。造影剤Aの濃度は、2.5、5、10、15および20w/v%であり、造影剤Bの濃度は、20w/v%であった。結果を図2および3に示す。
図2より、本発明の造影剤の成分である硫酸バリウムは、他の造影剤に比べてエックス線吸収率が高いことがわかる。図3より、硫酸バリウムの濃度を変えることにより、濃度依存的にエックス線吸収率が変化し、当該吸収率の差異に基づくCT値の識別が可能であることがわかる。
[実施例3]
ラット冠循環の三次元イメージング
正常ラットから心臓を摘出し、ランゲンドルフ灌流装置に接続した。心筋保護液で冠循環を還流した後、造影剤A(5w/v%調整)を一定灌流圧で冠循環に注入した。その直後造影剤B(20w/v%調整)を一定灌流圧で冠循環に注入した。灌流圧を維持しながら急速冷蔵し造影剤を凝固させ、冷ホルマリンにて固定した。日鉄エレックス製のエックス線マイクロCT装置で撮像した。結果を図4に示す。図4では、図4−Iは造影剤Bによる動脈側微小循環を、図4−IIは造影剤Aによる動脈側と静脈側両方の微小循環を、図4−IIIはその重ね合わせを示す。ここでは示していないが、図4−IIと図4−Iのサブトラクションにより静脈側微小循環のみの画像が得られる。この撮像には分解能は40マイクロメーターを設定したので、毛細血管はノイズ成分として画像上には現れない。
本発明の多重造影剤、多重造影方法または三次元イメージング方法は、微小血管解剖学、微小血管内流体力学、発生学もしくは再生医療学への応用、血管の損失(アポトーシス)の研究、血管新生の研究、虚血性疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)の基礎研究とその治療戦略、または腫瘍学(腫瘍血管学)の基礎研究と治療戦略などの技術分野で貢献が期待される。
図1は、本発明の多重造影法の概念を示す図である。 図2は、ファントムによる種々の造影剤のエックス線吸収率を比較した図である。 図3は、ファントムによる硫酸バリウムの濃度の違いによるエックス線吸収率を比較した図である。 図4は、本発明の多重造影法により得られたラット冠循環の三次元イメージ画像である。図4−Iは動脈系微小循環を分離して示す三次元画像、図4−IIは静脈系微小循環と動脈系微小循環を両方示す三次元画像、図4−IIIは両者の重ね合わせ像であり、動脈系と静脈系の位置関係を明確に示す。静脈系微小循環のみ分離する場合は図4−IIと図4−Iのサブトラクションを行う。

Claims (10)

  1. 粒子径が1μm以下の硫酸バリウムを含有する毛細血管および後方微小血管用造影剤A、ならびに粒子径が10〜20μmの硫酸バリウムを含有する前方微小血管用造影剤Bを含む、微小循環の多重造影剤。
  2. 前記造影剤Aおよび造影剤Bに含まれる硫酸バリウムの濃度が、0.1〜60w/v%からそれぞれ選ばれ、かつ当該濃度が相互に異なるものである、請求項1に記載の多重造影剤。
  3. 前記造影剤Aおよび造影剤Bがさらにゼラチンを含有するものである、請求項1または2に記載の多重造影剤。
  4. 虚血性心疾患、虚血性神経疾患、虚血性腎疾患、虚血性肺疾患、虚血性消化器疾患、虚血性骨格筋疾患、および虚血性皮膚疾患;
    固形がん、肉腫、およびこれらの転移性腫瘍;ならびに
    微小領域の骨の破壊と増生を起こしうる骨梁疾患および骨髄疾患
    からなる群より選ばれる病態を生じうる臓器を撮像対象とするものである、請求項1〜3いずれかに記載の多重造影剤。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の多重造影剤を用いることを特徴とする、微小循環の多重造影方法。
  6. 下記工程:
    請求項3または4に記載の造影剤Aを加温してゼラチンを溶解し、ヒトを除く動物の微小循環または生体外に取り出された標的臓器の微小循環に注入する工程、
    請求項3または4に記載の造影剤Bを加温してゼラチンを溶解し、さらに前記微小循環に注入し、当該造影剤Bを微小循環で閉塞させる工程、
    閉塞工程で処理された微小循環を冷却し、固定する工程、および
    固定された微小循環をマイクロフォーカスエックス線CT装置で撮像する工程
    を含む、請求項5に記載の多重造影方法。
  7. 下記工程:
    請求項3または4に記載の造影剤Aを加温してゼラチンを溶解し、ヒトを除く動物の微小循環または生体外に取り出された動物の標的臓器の微小循環に注入する工程、
    請求項3または4に記載の造影剤Bを加温してゼラチンを溶解し、さらに前記微小循環に注入し、当該造影剤Bを微小循環で閉塞させる工程、
    閉塞工程で処理された微小循環を冷却し、固定する工程、
    固定された微小循環をマイクロフォーカスエックス線CT装置で撮像する工程、および
    撮像工程で得られた画像を、CT値の分画に基づいて毛細血管画像、前方微小血管像、後方微小血管像、さらに大きい血管の画像、もしくは血管付随組織画像またはこれらから選ばれる少なくとも2つの画像を重ね合わせた画像を抽出する工程
    を含む、微小循環の分離再構築三次元イメージング方法。
  8. 虚血性心疾患、虚血性神経疾患、虚血性腎疾患、虚血性肺疾患、虚血性消化器疾患、虚血性骨格筋疾患および虚血性皮膚疾患;
    前記いずれかの疾患によって二次的に生じた血管構造の変化の生じた病態、血管アポトーシスおよび血管新生が生じた病態;
    骨梁疾患および骨髄疾患;ならびに
    固形がん、肉腫、およびこれらの転移性腫瘍
    からなる群より選ばれる疾患もしくは病態の診断または前記疾患もしくは病態に対する治療手法の効果判定に使用されるものである、請求項7に記載のイメージング方法。
  9. 発生、臓器再生、組織再生、血管新生またはアポトーシスが関わる基礎医学の評価に使用されるものである、請求項7に記載のイメージング方法。
  10. 請求項1〜4いずれかに記載の多重造影剤を用いてヒトを除く動物の微小冠循環を多重造影する工程を含む、循環器系疾患の治療候補のスクリーニング方法。
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