JP2009001448A - 常温硬化親水性重合体及びその製造方法 - Google Patents

常温硬化親水性重合体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】長期にわたる防汚効果と同時に親水性・耐水性の維持が可能となり、基材表面に対する常温での親水性被膜の形成が容易に行える常温硬化親水性重合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】無機質前駆体Pを加水分解1し、ゾル・ゲル法2により均一化することで疎水性モノマーとする工程と、該疎水性モノマーを水熱合成3することにより親水性オリゴマー化及び親水性ポリマー化する工程と、更に、カップリング剤Qを混合することで未反応の有機性官能基を親水化する工程とによって、常温硬化により親水性を有する成膜が可能となる常温硬化親水性重合体Rを形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、基材の表面を加熱及び焼成を要せずに親水化させることで、長期にわたって安定した防汚効果が得られるようにした常温硬化親水性重合体及びその製造方法に関する。
従来、特許文献1及び特許文献2に開示されているように、無機質である例えばシラン系酸化物、チタン系酸化物をその前駆体であるテトラエトキシシラン(TEOS)やテトラエトキシチタンを加水分解させ、ゾル・ゲル法により均一化させてからその材料を基材に塗布し、加熱及び焼成させて膜を形成させる方法が提供されている。
すなわち、特許文献1においては、ガラス基板の表面を超親水化させることで安定した防曇効果が得られるようにするために、ガラス基板の表面に酸化チタン薄膜を形成する。このとき、光触媒半導体である酸化チタン結晶に、当該半導体のバンドギャップエネルギーより高いエネルギーの波長の光が照射されることで、その表面が高度に親水化されるという特性を応用している。
また、特許文献1では、表面の超親水化を要する基材を光触媒性コーティングで被覆し、基材が金属、セラミックス、ガラスのような耐熱性の材料で形成されている場合には、光触媒の粒子を焼結することにより光触媒性コーティングを基材の表面に固定する。或いは、無定形の光触媒前駆体の薄膜を基材の表面に固定し、加熱して結晶化させることにより、光活性のある光触媒に変換するものとしている。
また、特許文献2においては、表面圧縮応力が10MPa以下であるガラス基板の表面にチタン元素を含有する液体を塗布し、該液体が塗布された表面を550〜700℃の最高温度まで加熱してから、0.2≦a/t2≦5(但し、a:冷却する際に、500℃から200℃まで降温するのに要する時間(秒)、t:ガラス基板の厚さ(mm))を満足する条件で冷却して、ガラス基板の表面圧縮応力が20〜250MPaとなるようにすることで強固な酸化チタン薄膜を形成するものとしている。
特許第2756474号公報 特開2003−1129490号公報
しかしながら、従来による方法では、表面に付着する汚染物質により時間が経つにつれて表面は親水性を失い、防曇性能が次第に失われるという欠点がある。また、建築外装材料や塗膜の汚れは、カーボンブラックのような燃焼生成物、都市煤塵、粘土粒子のような無機質物質等の汚染物質からなる。このような汚染物質の多様性が防汚対策を複雑にしているものと考えられている。
また、特許文献1及び特許文献2においては、膜を成形するために加熱と焼成が必要であることから、現場での施工並びに例えば車両等の複雑な形状及び大型となる基材等にはこのような成膜が不可能となる。また、大規模な加熱装置を現場に持ち込むことができても、経済的にかなりの負担となることから、近年では常温での成膜が切望されているのが実状である。
他方、建築材料・ガラス基材・車両等においては定期的な汚れを取り除くための洗浄に対し多額の費用を要しており、これらの基材の低額な防汚対策が可能であれば経済的効果が期待できるものとなるのであるが、未だにこのような解決策が見いだされていない。
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、長期にわたる防汚効果と同時に親水性・耐水性の維持が可能となり、基材表面に対する常温での親水性被膜の形成が容易に行える常温硬化親水性重合体とその製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る常温硬化親水性重合体にあっては、無機質前駆体を加水分解させ均一化してなるモノマーを水熱合成することで親水性オリゴマー化又は親水性ポリマー化してなることを特徴とする。
更に、カップリング剤を混合してなる常温硬化親水性重合体を特徴とする。
上記無機質は、シラン系酸化物又はチタン系酸化物である常温硬化親水性重合体を特徴とする。
また、本発明に係る常温硬化親水性重合体の製造方法にあっては、無機質前駆体を加水分解し、ゾル・ゲル法により均一化することで疎水性モノマーとする工程と、該疎水性モノマーを水熱合成することにより親水性オリゴマー化又は親水性ポリマー化する工程とから成ることを特徴とする。
更に、カップリング剤を混合することで未反応の有機性官能基を親水化する工程を含む常温硬化親水性重合体の製造方法を特徴とする。
本発明によれば、長期にわたる防汚効果と同時に親水性・耐水性の維持ができ、基材表面に対する常温での親水性被膜の形成が容易に行えることが可能となった。
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。本発明に係る常温硬化親水性重合体Rは、無機質前駆体Pを加水分解させ均一化してなるモノマーを水熱合成とすることで親水性オリゴマー化又は親水性ポリマー化した後、更に、カップリング剤Qを混合してなるものである。
すなわち、この常温硬化親水性重合体Rを製造するには、図1に示すように、先ず、無機質である例えばシラン系酸化物の無機質前駆体Pであるテトラエトキシシラン(TEOS)又はチタン系酸化物の無機質前駆体Pであるテトラエトキシチタンを加水分解1させてゾル・ゲル法2により均一化させる。この段階ではモノマーであり、その表面にはメチル、エチル等の有機性の官能基が結合して疎水性を有するものとなる。
そこで、この液体を水熱合成3することによりオリゴマー化又はポリマー化し、表面官能基を親水基として親水性を有するものとする。その後、カップリング剤Qを混合することにより未反応の有機性官能基を親水化することで常温硬化親水性重合体Rが生成される。
そして、この常温硬化親水性重合体Rを例えばガラス基板等の基材にスプレーコーティング、フローコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング或いはその他の各種のコーティング法4によって密着して常温で硬化させる。
このシラン系酸化物(無定形シリカ)の無機質前駆体Pとしては、テトラエトキシシランの他に、例えばテトライソプロポキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、それらの加水分解物であるシラノール、又は平均分子量30,000以下のポリシロキサン等が挙げられる。
また、チタン系酸化物の無機質前駆体Pとしては、有機チタン化合物であるテトラエトキシチタンの他に、例えばテトライソプロポキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等のアルコキシド、カルボン酸塩或いはキレート化合物等が挙げられる。
以下に実施例について説明する。
シラン系酸化物(無定形シリカ)の無機質前駆体Pであるテトラエトキシシラン(TEOS)を0.5〜30wt%に対し、1規定の塩化水素(HCl)を1〜10wt%、水を60〜98.5wt%を加えて、110℃〜140℃の温度で0.5〜4.0時間だけ水熱合成することでオリゴマー化又はポリマー化する。これにジメチルアミンを0.3cc〜4.0ccだけ加えてから、更に、シランカップリング剤としてアミノカップリングを0.5cc〜5.0cc加えて常温硬化親水性重合体Rを得た。
テトラクロロシランを0.5〜10wt%に対し、溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)を30〜60wt%、水を0.5〜10wt%、ピリジンを0.5〜10wt%加えてから、110℃〜160℃の温度で0.5〜4.0時間だけ水熱合成することでオリゴマー化又はポリマー化する。これにジメチルアミンを0.3cc〜4.0ccだけ加えてから、更に、シランカップリング剤としてアミノカップリングを0.5cc〜5.0cc加えて常温硬化親水性重合体Rを得た。
上記した方法で製造した常温硬化親水性重合体Rを、例えばガラス基板等の基材表面に塗布して成膜施工し常温硬化後に、この膜の親水性を評価した。すなわち、施工後初期においては、成膜後の基材における親水角が2°〜10°を示し、長期間放置後でもこの親水角は10°〜20°の範囲内に保たれることから長期にわたる防汚効果が期待できる。
更に、耐水性においては、成膜後の基材を水中に200時間浸漬した後も、外観上において白色等に変色するような変化はなく、親水角も10°〜20°の範囲内に保たれ、親水性が常に維持されている。これらは水熱合成によりオリゴマー化又はポリマー化がほぼ完全にでき上がっていることによると考察できる。
本発明の常温硬化親水性重合体の応用としては、例えば高層ビルへの施工による防汚や、ソーラーセル部分のソーラーへの施工による電圧低下の防止等が現実的に期待できる。
本発明を実施するための最良の形態における常温硬化親水性重合体の製造工程を示すフローチャート図である。
符号の説明
P 無機質前駆体
Q シランカップリング剤
R 常温硬化親水性重合体
1 加水分解
2 ゾル・ゲル法
3 水熱合成
4 コーティング法

Claims (5)

  1. 無機質前駆体を加水分解させ均一化してなるモノマーを水熱合成することで親水性オリゴマー化又は親水性ポリマー化してなることを特徴とする常温硬化親水性重合体。
  2. カップリング剤を混合してなることを特徴とする請求項1記載の常温硬化親水性重合体。
  3. 無機質は、シラン系酸化物又はチタン系酸化物としたことを特徴とする請求項1又は2記載の常温硬化親水性重合体。
  4. 無機質前駆体を加水分解し、ゾル・ゲル法により均一化することで疎水性モノマーとする工程と、該疎水性モノマーを水熱合成することにより親水性オリゴマー化又は親水性ポリマー化する工程とから成ることを特徴とする常温硬化親水性重合体の製造方法。
  5. カップリング剤を混合することで未反応の有機性官能基を親水化する工程を含むことを特徴とする請求項4記載の常温硬化親水性重合体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012172061A (ja) * 2011-02-22 2012-09-10 Nihon Univ 親水性薄膜及びその製造方法

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