JP2008537726A - 癌細胞を殺傷するためのエラスチンアナログおよびその使用 - Google Patents

癌細胞を殺傷するためのエラスチンアナログおよびその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、エラスチンおよび関連する化合物または誘導体による癌細胞の効果的な殺傷方法を提供する。

Description

(米国政府資金提供)
本明細書に記載の作業は、全体または一部において、米国立癌研究所の助成金1R01CA97061-01により補助された。米国政府は、本発明において一部権利を有する。
(発明の背景)
疾患を処置するために投与される多くの薬物は、疾患細胞および正常細胞の間の一般的な差に標的化される。例えば、卵巣癌および乳癌を処置するために使用され、微小管機能を阻害するパクリタキセルは、正常細胞に対して腫瘍細胞の大きな増殖速度に基づき、腫瘍細胞特異性を示すと考えられる(MillerおよびOjima, Chem. Rec. 1:195-211, 2002)。しかしながら、この合意の見解にもかかわらず、パクリタキセルのインビトロ活性は、腫瘍細胞株間で広く変化し(Weinstein et al., Science 275:343-349, 1997)、遺伝因子がパクリタキセルに対する腫瘍細胞の感受性を変更し得、腫瘍細胞の応答性は、その増殖速度によって単純に測定されないことを示す。
分子的標的化治療薬は、抗癌薬の発見への将来有望な新しいアプローチを表す(Shawver et al., Cancer Cell 1:117-23, 2002)。このアプローチを用いて、小分子は、特定の腫瘍細胞型で変異または過剰発現される非常に発癌性のタンパク質を直接阻害するために設計される。腫瘍細胞内に見られる特定の分子欠陥を標的化することにより、このアプローチは、最終的に、各腫瘍の遺伝的構成に合わせた治療薬をもたらし得る。好結果である分子的標的化抗癌治療剤の最近の2つの例は、Philadelphia染色体陽性慢性骨髄性白血病に見られるブレイクポイントクラスター領域-アベルセン(abelsen)キナーゼ(BCR-ABL)癌タンパク質のインヒビターであるGleevec (メシル酸イマチニブ) (Capdeville et al, Nat Rev Drug Discov 1:493-502, 2002)および転移性乳癌に見られるHER2/NEU 癌タンパク質に標的化されるモノクローナル抗体であるHerceptin (trastuzumab) (MokbelおよびHassanally, Curr Med Res Opin 17:51-9, 2001)である。
補足的なストラテジーは、特定の癌タンパク質の存在下または特定の癌抑制物質の非存在下でのみ腫瘍細胞に致死性である遺伝子型選択的抗腫瘍剤の調査を含む。かかる遺伝子型選択的化合物は、癌タンパク質を直接標的化し得、または癌タンパク質関連シグナリングネットワークに関与する他の重要なタンパク質を標的化する。合成的致死性示すことが報告されている化合物としては、(i) PTENを欠く骨髄腫細胞におけるラパマイシンアナログ CCI-779 (Shi et al., Cancer Res 62:5027-34, 2002)、(ii) BCR-ABL形質転換細胞におけるGleevec(Druker et al, Nat Med 2:561-6, 1996)および(iii) 種々のあまりよく特性評価されていない化合物(Stockwell et al, Chem Biol 6:71-83, 1999; Torrance et al, Nat Biotechnol 19:940-5, 2001)が挙げられる。
上記の研究にもかかわらず、腫瘍細胞を選択的に標的化する化合物を開発および/または同定する重要な必要性がある。
(発明の要旨)
腫瘍の存在もしくは発生などの状態または疾患あるいは細胞の過剰増殖を特徴とする他の状態(例えば、白血病)を処置または予防するための薬剤または薬物を同定するために有用な合成的致死性スクリーニング方法、特に、合成的致死性高処理量スクリーニング方法を用い、本出願人らは、処置または予防を必要とするヒトなどの個体における癌(例えば、腫瘍または白血病)を処置または予防するのに有用ないくつかの化合物/薬剤/薬物を同定した。本発明はまた、治療価値を有する特定の同定化合物/薬剤に直接または間接的に結合する細胞タンパク質を提供する。かかる細胞タンパク質は、細胞の過剰増殖を特徴とする疾患または状態(例えば、白血病)を処置するためのさらなる方法を提供する。
本明細書で使用されるように、用語「薬剤」および「薬物」は、互換的に使用される。これらは、化合物または分子であり得る。
1つの態様において、本発明は、その塩を含む本明細書に開示する化合物に関する。
別の態様において、本発明は、薬学的に許容され得る担体および本明細書に開示する化合物を含む医薬組成物に関する。
また別の態様において、本発明は、本明細書に開示する化合物の有効量を細胞に投与する工程を含む、細胞死を促進する方法である。
1つの局面において、本発明は、
a) 適当な条件下で細胞を充分な量の試験薬剤と接触させる工程;ならびに
b) 試験薬剤が、エラスチン結合タンパク質またはエラスチン結合タンパク質をコードする核酸のレベルを増大または抑制するかを決定する工程
を含む、候補抗腫瘍剤を同定するための方法である。該方法は、
a) 試験薬剤を腫瘍細胞(インビトロまたはインビボ)と接触させる工程;ならびに
b) 試験薬剤が腫瘍細胞の成長を阻害するかどうかを決定する工程
をさらに含み得る。
別の局面において、本発明は、
a) エラスチン結合タンパク質またはエラスチン結合タンパク質を発現する細胞を試験薬剤と接触させる工程、ここで、エラスチン結合タンパク質または試験薬剤は、検出可能なマーカーで任意に標識される;ならびに
b) 試験薬剤がエラスチン結合タンパク質に結合するかどうかを決定する工程
を含む候補抗腫瘍剤の同定方法である。該方法は、
a) 試験薬剤を腫瘍細胞と(インビボまたはインビトロで)接触させる工程;ならびに
b) 試験薬剤が腫瘍細胞の成長を阻害するかどうかを決定する工程
をさらに含み得る。
すぐ上に記載の2つの方法は、異なる試験薬剤のライブラリーを用いて繰返され得る。
さらなる局面において、本発明は、操作された腫瘍形成細胞などの腫瘍形成細胞を殺傷するか、その成長を阻害するが、その同系正常細胞相対物にはそうしない化合物を同定するためのスクリーニング方法に関する。該方法は、公知の化合物ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、カンプトテシン、サンギバマイシン、エキノマイシン、ボウバルジン(bouvardin)、NSC 146109および本明細書においてエラスチンとよぶ新規化合物を含む、遺伝子型選択的活性を有する公知および新規化合物を同定するために使用されている。これらの化合物は、一般的に、以下:hTERT癌タンパク質、SV40ラージT癌タンパク質 (LT)、スモールT癌タンパク質 (ST)、ヒトパピローマウイルス型 16 (HPV) E6 癌タンパク質、HPV E7 癌タンパク質、ならびに発癌性HRAS、NRASおよびKRASの1種類以上の存在下で増加した活性を有する。本出願人らは、hTERTおよびE7またはLTのいずれかの過剰発現が、トポイソメラーゼ2aの発現を増加させ、hTERTを過剰発現する細胞におけるRASV12およびSTの過剰発現は、ともにトポイソメラーゼ1の発現を増加させ、エラスチンによって開始される非アポトーシス細胞死プロセスに細胞を感作することと決定した。
本発明は、ヒト腫瘍形成細胞(例えば、操作されたヒト腫瘍形成細胞および/または腫瘍細胞)を含む、操作された腫瘍形成細胞などの腫瘍形成細胞に選択的に毒性である(例えば、殺傷するか、その成長を阻害する)薬剤(例えば、薬物)の同定方法に関する。1つの態様において、本発明は、操作されたヒト腫瘍形成細胞である試験細胞を候補薬剤と接触させる工程; 候補薬剤と接触させた試験細胞の生存率を測定する工程;ならびに試験細胞の生存率を適切なコントロールの生存率と比較する工程を含む、操作されたヒト腫瘍形成細胞を選択的に殺傷するか、その成長を阻害する(毒性である) 薬剤(例えば、薬物)の同定方法に関する。すべての態様において、生存率は、細胞を殺傷するか、細胞の成長/増殖を抑制するか、またはその両方を行なう薬剤(例えば、薬物)の能力を測定することにより評価される。試験細胞の生存率がコントロール細胞のものよりも低い場合、操作されたヒト腫瘍形成細胞に選択的に毒性である(殺傷するか、その成長を阻害する)薬剤(例えば、薬物)が同定される。適切なコントロールは、コントロール細胞が腫瘍形成性となるように操作されていない以外は、試験細胞と同じ型の細胞である。例えば、コントロール細胞は、試験細胞が由来する親一次細胞であり得る。コントロール細胞は、試験細胞と同じ条件下で候補薬剤と接触させる。適切なコントロールを同時に行ない得るか、または予備確立させ得る (例えば、予備確立させた標準または参照)。
1つの態様において、腫瘍形成細胞に選択的に毒性である薬剤の同定方法は、適切な動物モデルまたはさらなる細胞系もしくは非細胞系システムまたはアッセイにおける操作されたヒト腫瘍形成細胞におけるスクリーニングの結果同定された薬剤の毒性を評価する工程をさらに含む。例えば、こうして同定された薬剤または薬物は、個体から得られた腫瘍細胞もしくは白血病細胞などの癌細胞に対するその毒性について、または(1つ以上の)癌(腫瘍)細胞株に対するその毒性について評価され得る。例えば、該方法は、適切なマウスモデルまたは非ヒト霊長類における腫瘍形成細胞に対する薬剤(例えば、薬物)の選択的毒性を評価する工程をさらに含む。本発明は、さらに、操作されたヒト腫瘍形成細胞に選択的に毒性である薬剤(例えば、薬物)などの、本発明の方法によって同定される薬剤(例えば、薬物) の作製方法に関する。腫瘍形成細胞に選択的に毒性であることが示された薬剤(例えば、薬物)は、公知の方法を用いて合成される。
本発明は、さらに、操作されたヒト腫瘍形成細胞などの操作された腫瘍形成細胞に毒性である薬剤(例えば、薬物)の同定方法に関する。1つの態様において、本発明は、操作されたヒト腫瘍形成細胞である試験細胞を候補薬剤と接触させる工程; 候補薬剤と接触させた試験細胞の生存率を測定する工程;ならびに試験細胞の生存率を適切なコントロールの生存率と比較する工程を含む、操作されたヒト腫瘍形成細胞を殺傷するか、その成長を阻害する(毒性である)薬剤(例えば、薬物)の同定方法に関する。試験細胞の生存率がコントロール細胞のものよりも低い場合、操作されたヒト腫瘍形成細胞に毒性である(殺傷するか、その成長を阻害する)薬剤(例えば、薬物)が同定される。ここで、適切なコントロールは、コントロール細胞が候補薬剤と接触させていない以外は、試験細胞と同じ型の細胞(例えば、操作されたヒト腫瘍形成細胞)である。適切なコントロールを同時に行ない得るか、または予備確立させ得る(例えば、予備確立させた標準または参照)。例えば、こうして同定された薬剤または薬物は、個体から得られた腫瘍細胞もしくは白血病細胞などの癌細胞に対するその毒性について、または(1つ以上の)癌(腫瘍)細胞株に対するその毒性について評価され得る。
1つの態様において、操作された腫瘍形成細胞に毒性である薬剤の同定方法は、適切な動物モデルまたはさらなる細胞系もしくは非細胞系システムまたはアッセイにおける操作されたヒト腫瘍形成細胞におけるスクリーニングの結果同定された薬剤の毒性を評価する工程をさらに含む。例えば、該方法は、適切なマウスモデルまたは非ヒト霊長類における腫瘍形成細胞への薬剤(例えば、薬物)の毒性を評価する工程をさらに含む。本発明は、さらに、操作されたヒト腫瘍形成細胞に毒性である薬剤(例えば、薬物)などの本発明の方法によって同定される薬剤(例えば、薬物)の作製方法に関する。腫瘍形成細胞に毒性であることが示された薬剤(例えば、薬物)は、公知の方法を用いて合成される。
別の態様において、本発明は、腫瘍の成長速度を低下させるのに充分な量の治療剤を投与することを含む、腫瘍の成長速度の低下方法であり、ここで、治療剤は、
(a) VDACタンパク質のレベルを増大または抑制する薬剤;
(b) VDACタンパク質の活性を増大または抑制する薬剤;
(c) VDACタンパク質に結合する薬剤;
(d) 少なくとも1種類のVDACおよび任意に1種類以上の他のタンパク質を含むタンパク質複合体に結合および/またはこれを調節する薬剤;
(e) VDACポリペプチドもしくはその機能性バリアントを含む薬剤;または
(f) VDACポリペプチドもしくはその機能性バリアントをコードする核酸を含む薬剤
である。好適な薬剤は、現存する形態または完全もしくは部分代謝後に、記載の活性を有し得る。
1つの局面において、本発明は、
(a) VDACタンパク質のレベルを増大または抑制する薬剤;
(b) VDACタンパク質の活性を増大または抑制する薬剤;
(c) VDACタンパク質に結合する薬剤;
(d) 少なくとも1種類のVDACおよび任意に1種類以上の他のタンパク質を含むタンパク質複合体に結合および/またはこれを調節する薬剤;
(e) VDACポリペプチドまたはその機能性バリアントを含む薬剤;ならびに
(f) VDACポリペプチドまたはその機能性バリアントをコードする核酸を含む薬剤
から選択される治療剤を患者に投与することを含む、癌を患う患者の処置方法である。好適な薬剤は、現存する形態または完全もしくは部分代謝後に記載の活性を有し得る。
腫瘍の成長速度の低下および癌を患う患者の処置における使用に適した薬剤としては、限定されないが、有機低分子、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、核酸、抗体およびその組合せが挙げられる。かかる薬剤は、典型的に、薬学的に許容され得る担体を用いて製剤化され、静脈内、経口、口腔内、非経口、吸入スプレーによって、局所(topical)適用または経皮的に投与され得る。薬剤はまた、局所(local)投与によって投与され得る。薬剤は、さらに、癌細胞を抑制する少なくとも1種類のさらなる抗癌化学療法剤を添加剤で、または相乗的に組み合わせて投与され得る。
別の局面において、本発明は、腫瘍細胞を、エラスチン結合タンパク質の存在量(abundance)を増加または減少させる化合物と接触させる、化学療法剤への腫瘍細胞の感受性を増加させる方法である。関連局面において、本発明は、正常細胞を、エラスチン結合タンパク質の存在量を増加または減少させる化合物と接触させる化学療法剤への正常細胞の感受性を低下させる方法である。
本発明の特定の態様において、候補薬剤は、注釈付き(annotated)の化合物ライブラリー、コンビナトリアルライブラリー、または未知もしくは公知の化合物(例えば、薬剤、薬物)または両方を含む他のライブラリーをスクリーニングすることにより同定される。
特定の態様において、本発明は、
a) 試験薬剤とVDACタンパク質または少なくとも1種類のVDACタンパク質および任意に1種類以上の他のタンパク質を含むタンパク質複合体を混合する工程;
b) 試験薬剤がVDACタンパク質に結合するかどうかを決定する工程;ならびに
c) 試験薬剤がVDACタンパク質に結合する場合、試験薬剤を細胞(インビボまたはインビトロ)で接触させ、試験薬剤が細胞の増殖を改変するかどうかを決定する工程
を含む、不要な細胞増殖を抑制するための候補治療剤の同定方法である。
試験薬剤へのVDACタンパク質の結合は、例えば、免疫結合アッセイ、酵母ツーハイブリッドアッセイ、蛍光極性化アッセイ、表面プラスモン共鳴または蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイなどの物理的結合アッセイによって検出され得る。
特定の態様において、本発明は、化合物エラスチンおよびエラスチン関連化合物のクラス(例えば、本発明の化合物)に関する。
さらなる態様において、本発明は、化合物エラスチンBおよびその関連化合物に関する。
さらなる態様において、本発明は、化合物エラスチンAおよびその関連化合物に関する。
本発明のさらなる態様において、本発明は、操作されたヒト腫瘍形成細胞を選択的に殺傷するか、その成長を阻害する(毒性である)エラスチンのアナログに関する。任意に、本発明のこれらの化合物は、薬学的に許容され得る担体を用いて医薬組成物として製剤化される。
本発明は、さらに、腫瘍形成に関与する細胞成分の同定方法に関する。細胞成分としては、例えば、タンパク質(例えば、酵素、受容体)、核酸(例えば、DNA、RNA)、および脂質(例えば、リン脂質)が挙げられる。1つの態様において、本発明は、(a) 操作されたヒト腫瘍形成細胞などの細胞をエラスチンと接触させ、(b) エラスチンと直接または間接的のいずれかで相互作用する細胞成分が同定される、腫瘍形成に関与する(1種類以上の)細胞成分の同定方法に関する。同定される細胞成分は、腫瘍形成に関与する細胞成分である。さらなる態様において、本発明は、(a) 操作されたヒト腫瘍形成細胞などの細胞、組織、器官、生物または前記の1種類の溶解物もしくは抽出物をエラスチンと接触させ、(b) エラスチンと直接または間接的のいずれかで相互作用する細胞成分が同定される、エラスチンと相互作用する(1種類以上の)細胞成分の同定方法に関する。同定される細胞成分は、エラスチンと直接または間接的のいずれかで相互作用する細胞成分である。
本発明は、さらに、癌の処置または予防方法に関する。1つの態様において、本発明は、例えば、エラスチンもしくはそのアナログまたは以下の式I〜Vの化合物などの化合物の治療有効量が、癌の処置を必要とする個体に投与される、癌の処置または予防方法に関する。特定の態様において、癌は、RAS経路が活性化される細胞を特徴とする。あるさらなる態様において、癌は、SV40スモールT癌タンパク質を発現する細胞を特徴とするか、またはSTおよび/または発癌性HRASを発現する細胞と表現型が類似する。ある好ましい態様において、該細胞は、実質的に野生型レベルのRbを発現する(例えば、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、または150%など)。
本発明はまた、エラスチンと直接または間接的に相互作用する1種類以上の細胞成分と相互作用する薬剤(例えば、薬物)の同定方法に関する。1つの態様において、本発明は、(a) 細胞、組織、器官、生物または前記の1種類の溶解物もしくは抽出物をエラスチンと接触させる工程; (b) エラスチンと(直接または間接的に)相互作用する細胞成分を同定する工程; (c) 細胞、組織、器官、生物または前記の1種類の溶解物もしくは抽出物を、エラスチンと相互作用する細胞成分(1つまたは複数)と相互作用するその能力について評価される薬剤または薬物である候補薬剤と接触させる工程;ならびに(d) 薬剤が(b)の細胞成分と(直接または間接的に)相互作用するかどうかを決定する工程を含む、エラスチンと相互作用する細胞成分と相互作用する薬剤の同定方法に関する。薬剤が(b)の細胞成分と相互作用する場合、それは、エラスチンと相互作用する細胞成分と相互作用する薬剤である。
関連局面において、本発明はまた、(a) 細胞、組織、器官、生物または前記の1種類の溶解物もしくは抽出物を、エラスチンと相互作用することが知られている細胞成分(1つまたは複数)と相互作用するその能力について評価される薬剤または薬物である候補薬剤と接触させる工程;ならびに(b) 薬剤が(a)の細胞成分と(直接または間接的に)相互作用するかどうかを決定する工程を含む、エラスチンと直接または間接的に相互作用することが知られている1種類以上の細胞成分と相互作用する薬剤(例えば、薬物)の同定方法に関する。薬剤が(a)の細胞成分と相互作用する場合、それは、エラスチンと相互作用する細胞成分と相互作用する薬剤である。
特定の態様において、細胞は、操作されたヒト腫瘍形成細胞である。さらなる態様において、本発明は、エラスチンと相互作用する(1種類以上の)細胞成分と直接または間接的に相互作用する化合物に関する。特定の態様において、エラスチンと相互作用する細胞成分は腫瘍形成に関与する。エラスチンと相互作用する細胞成分と相互作用することが示された薬剤(例えば、薬物)は、公知の方法を用いて合成される。
本発明は、さらに、アポトーシスまたは非アポトーシス機構などによって腫瘍細胞の死を誘導する薬剤(例えば、薬物)の同定方法に関する。1つの態様において、非アポトーシス機構によって腫瘍細胞の死を誘導する薬剤の同定方法は、(a) 腫瘍細胞(または腫瘍細胞を含む器官もしくは組織)である試験細胞を、腫瘍細胞の死を誘導する候補薬剤と接触させる工程; (b) (a)の薬剤が試験細胞におけるアポトーシスを誘導するかどうかを評価する工程;ならびに(c) (b)の細胞におけるアポトーシスの誘導を適切なコントロールと比較する工程を含む。アポトーシスがコントロール細胞において誘導されるが、試験細胞で誘導されない場合、非アポトーシス機構によって腫瘍細胞の死を誘導する薬剤(例えば、薬物)が同定される。適切なコントロールは、コントロール細胞を、細胞においてアポトーシスを誘導することが知られている薬剤と接触させる以外は、試験細胞と同じ型の細胞である。適切なコントロールを同時に行ない得るか、または予備確立させ得る (例えば、予備確立させた標準または参照)。特定の態様において、試験細胞は、操作されたヒト腫瘍形成細胞である。
本明細書で使用されるように、「a」および「an」は、言及しているものの1種類以上をいう。
特定の局面において、本発明は、薬物発見ビジネスを行なう方法を提供する。1つの態様において、本発明は、(a) 操作されたヒト腫瘍形成細胞に選択的に毒性である薬剤(例えば、薬物)を同定すること; (b) (a)で同定された薬剤またはそのアナログの有効性および毒性を動物において評価すること;ならびに(c) (b)で評価された1種類以上の薬剤を含む医薬調製物を製剤化することを含む、薬物発見ビジネスを行なう方法に関する。評価される有効性は、動物において腫瘍形成細胞における細胞死を選択的に誘導する薬剤の能力であり得る。さらなる態様において、薬物発見ビジネスを行なう方法は、販売のために医薬調製物を流通させるための流通システムを確立することを含む。任意に、医薬調製物のマーケティングのために販売集団が確立される。さらなる態様において、本発明は、操作されたヒト腫瘍形成細胞に選択的に毒性である薬剤(例えば、薬物)を同定する工程、および操作されたヒト腫瘍形成細胞に選択的に毒性である薬剤のさらなる薬物開発の権利を第3者に実施許諾することを含む、プロテオミクスビジネスを行なう方法に関する。
別の態様において、本発明は、(a) 操作されたヒト腫瘍形成細胞に毒性である(1種類以上の)薬剤(例えば、薬物)を同定すること; (b) (a)で同定された薬剤またはそのアナログの有効性および毒性を動物において評価すること;ならびに(c) (b)で評価された1種類以上の薬剤を含む医薬調製物を製剤化することを含む、薬物発見ビジネスを行なう方法に関する。例えば、同定される薬剤はエラスチンである。評価される有効性は、動物において細胞成長における改変、腫瘍形成細胞における毒性または細胞死を選択的に誘導する薬剤の能力であり得る。さらなる態様において、薬物発見ビジネスを行なう方法は、販売のために医薬調製物を流通させるための流通システムを確立することを含む。任意に、医薬調製物のマーケティングのために販売集団が確立される。さらなる態様において、本発明は、操作されたヒト腫瘍形成細胞に毒性である薬剤(例えば、薬物)を同定する工程、および操作されたヒト腫瘍形成細胞に毒性である薬剤のさらなる薬物開発の権利を第3者に実施許諾することを含む、プロテオミクスビジネスを行なう方法に関する。
さらなる態様において、本発明は、(a) エラスチンと相互作用する細胞成分と相互作用する(1種類以上の)薬剤(例えば、薬物)を同定すること; (b) (a)で同定された薬剤またはそのアナログの有効性および毒性を動物において評価すること;ならびに(c) (b)で評価された1種類以上の薬剤を含む医薬調製物を製剤化することを含む、薬物発見ビジネスを行なう方法に関する。薬剤の評価される有効性は、動物において腫瘍形成細胞における細胞死を選択的に誘導するその能力であり得る。さらなる態様において、薬物発見ビジネスを行なう方法は、販売のために医薬調製物を流通させるための流通システムを確立することを含む。任意に、医薬調製物のマーケティングのために販売集団が確立される。さらなる態様において、本発明は、エラスチンと相互作用する細胞成分と相互作用する薬剤(例えば、薬物)を同定すること、およびエラスチンと相互作用する細胞成分と相互作用する薬剤のさらなる薬物開発の権利を第3者に実施許諾することを含む、プロテオミクスビジネスを行なう方法に関する。
また別の態様において、本発明は、
(a) 細胞増殖を抑制するための候補治療剤を同定すること、ここで、候補治療剤は
(i) VDACタンパク質のレベルを増大もしくは阻害する薬剤;
(ii) VDACタンパク質の活性を増大もしくは抑制する薬剤;
(iii) VDACタンパク質に結合する薬剤;
(iv) 少なくとも1種類のVDACおよび任意に1種類以上の他のタンパク質を含むタンパク質複合体に結合および/またはこれを調節する薬剤;
(v) VDACポリペプチドもしくはその機能性バリアントを含む薬剤;
(vi) VDACポリペプチドもしくはその機能性バリアントをコードする核酸を含む薬剤;または
(vii) 本明細書に開示した化合物
である、
(b) 動物において、工程(a)で同定された候補治療剤を有効性および毒性について治療プロファイリングを行なうこと;ならびに
(c) 工程(b)で許容され得る治療プロフィールを有すると同定された1種類以上の候補治療剤を含む医薬調製物を製剤化すること
を含む、医薬ビジネスを行なう方法である。工程(b)および(c)の一方もしくは両方の代わりに、またはこれに加えて、該方法は、候補治療剤のさらなる開発の権利を第3者に実施許諾することを含み得る。さらなる態様において、薬物発見ビジネスを行なう方法は、販売のために医薬調製物を流通させるための流通システムを確立することを含む。任意に、医薬調製物のマーケティングのために販売集団が確立される。
さらなる態様において、本発明は、
(a) 細胞増殖を抑制するための候補治療剤を同定すること、ここで、候補治療剤は
(i) VDACタンパク質を増大もしくは抑制する薬剤;または
(ii) VDACタンパク質および第2のタンパク質間の相互作用を増大もしくは抑制する薬剤
である、ならびに
(b) 候補治療剤のさらなる開発の権利を第3者に実施許諾すること
を含む、医薬ビジネスを行なう方法である。さらなる態様において、薬物発見ビジネスを行なう方法は、販売のために医薬調製物を流通させるための流通システムを確立することを含む。任意に、医薬調製物のマーケティングのために販売集団が確立される。
本発明の別の局面は、マーケティング、製造、マーケティングする権利を第3者に実施許諾することおよびキットを製造する権利を第3者に実施許諾することの1つ以上を含む、医薬ビジネスを行なう方法であり、キットは
(a) 生物学的試料においてエラスチン結合タンパク質のレベル、エラスチン結合タンパク質の活性、または両方を測定するための1種類以上の試薬;ならびに
(b) アッセイの結果を解釈するための使用説明書
を含む。一般的に、使用説明書は、その所望のレベルおよび/または活性と比べて、エラスチン結合タンパク質のレベルおよび/または活性が正常であるか、増加したか、または減少したかを示し、それにより、レベルおよび/または活性が改変されたかどうかが決定され得、またはレベルおよび/または活性 (例えば、癌化学療法)に(部分的に)依存する治療が成功したかどうかが予測され得る。
特定の態様において、使用説明書は、エラスチン結合タンパク質の1つ以上の通常、減少した、および上昇したレベルまたは活性に関する手引きを含む。
特定の態様において、使用説明書は、エラスチン結合タンパク質のレベル、エラスチン結合タンパク質の活性または両方に基づいた、1種類以上の
(i) VDACタンパク質のレベルを増大または抑制する薬剤;
(ii) VDACタンパク質の活性を増大または抑制する薬剤;
(iii) VDACタンパク質に結合する薬剤;
(iv) 少なくとも1種類のVDACおよび任意に1種類以上の他のタンパク質を含むタンパク質複合体に結合するか、これを調節するか、または結合して調節する薬剤;
(v) VDAC ポリペプチドまたはその機能性バリアントを含む薬剤;
(vi) VDACポリペプチドまたはその機能性バリアントをコードする核酸を含む薬剤;ならびに
(vii) 本明細書に開示する化合物
での続く処置に関する手引きを含む。
特定の態様において、使用説明書は、エラスチン結合タンパク質のレベル、エラスチン結合タンパク質の活性または両方に基づいた、1種類以上の以下:
(i) VDACタンパク質のレベルを増大または抑制する薬剤;
(ii) VDACタンパク質の活性を増大または抑制する薬剤;
(iii) VDACタンパク質に結合する薬剤;
(iv) 少なくとも1種類のVDACおよび任意に1種類以上の他のタンパク質を含むタンパク質複合体に結合するか、これを調節するか、または結合して調節する薬剤;
(v) VDAC ポリペプチドまたはその機能性バリアントを含む薬剤;
(vi) VDACポリペプチドまたはその機能性バリアントをコードする核酸を含む薬剤;ならびに
(vii) 本明細書に開示する化合物
での処置が成功したかどうかに関する手引きを含む。
特定の態様において、使用説明書は、エラスチン結合タンパク質のレベル、エラスチン結合タンパク質の活性または両方に基づいた癌治療の成功の確率に関する手引きを含む。
特定の化合物へのヒト細胞の感受性を増加させる遺伝子の改変の同定は、最終的に、発癌性のシグナリングネットワークの機械的解離(dissection)および特定の腫瘍型への化学療法の調整を可能にし得る。本出願人らは、特定の遺伝子変化を有する細胞において増加した活性を有する小分子を発見するための体系的な方法を開発した。この系を用い、本発明者らは、いくつかの臨床的に使用される抗腫瘍剤が、特定の遺伝要素の存在下でより強力で、より活性であると決定した。さらに、本発明者らは、スモールT癌タンパク質および発癌性RASを発現する細胞を選択的に殺傷する新規化合物を同定した。これらの遺伝子標的化小分子はまた、有利な治療指数を有する抗癌薬の開発をもたらす機能を果たし得る。
本発明は、さらに、パッケージされた医薬品を提供する。1つの態様において、パッケージされた医薬品は、(i) 操作されたヒト腫瘍形成細胞に選択的に毒性である薬剤の治療有効量;ならびに(ii) 癌を有する患者の処置のための薬剤の投与のための使用説明書および/またはラベルを含む。特定の態様において、薬剤はエラスチンである。別の態様において、パッケージされた医薬品は、(i) 操作されたヒト腫瘍形成細胞に毒性である薬剤の治療有効量;ならびに(ii) 癌を有する患者の処置のための薬剤の投与のための使用説明書および/またはラベルを含む。別の関連する態様において、パッケージされた医薬品は、(i) エラスチンと相互作用する細胞成分と相互作用する薬剤の治療有効量;ならびに(ii) 癌を有する患者の処置のための薬剤の投与のための使用説明書および/またはラベルを含む。
使用説明書またはラベルは、CD、DVD、フロッピーディスク、メモリーカードなどのコンピュータにより読取可能であり得る電子媒体上に保存され得る。
本発明は、さらに、癌の処置のための医薬の製造における、本発明によって同定される任意の薬剤の使用、例えば、癌の処置のための医薬の製造におけるエラスチンまたはそのアナログの使用を提供する。
特定の態様において、本発明の方法は、さらに、典型的にアポトーシス機構により細胞を殺傷する化学療法剤などの1種類以上の薬剤を共同で(conjointly)投与することを含む。腫瘍の成長速度の低下および癌を患う患者の処置での使用に適した薬剤としては、限定されないが、有機低分子、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、核酸、抗体、およびその組合せが挙げられる。本発明のすべての態様は、1つ以上の他の態様と組み合わされ得ることが考慮される。
別の局面において、本発明は、操作された細胞においてタンパク質の細胞毒性を抑制するが、その同系正常細胞相対物を抑制しない化合物を同定するためのスクリーニング方法に関する。これらの方法は、遺伝子型選択的活性を有する公知および新規化合物を同定するために使用した。任意に、これらの化合物は、変異タンパク質の存在下で増加した活性を有する。
本発明は、操作された細胞において細胞毒性を選択的に抑制する薬剤(例えば、薬物)の同定方法に関する。1つの態様において、本発明は、試験細胞 (例えば、変異タンパク質を発現する操作された細胞)を候補薬剤と接触させる工程; 候補薬剤と接触させた試験細胞の生存率を測定する工程;ならびに試験細胞の生存率を適切なコントロールの生存率と比較する工程を含む、操作された細胞において変異タンパク質の細胞毒性を抑制する薬剤(例えば、薬物)の同定方法に関する。試験細胞の生存率がコントロール細胞のものより高い場合、選択的に細胞毒性を抑制する薬剤(例えば、薬物)が同定される。適切なコントロールは、コントロール細胞が、毒性を引きこすタンパク質を発現するように操作されていない以外は、試験細胞と同じ型の細胞である。例えば、コントロール細胞は、試験細胞が由来する親一次細胞であり得る。コントロール細胞は、試験細胞と同じ条件下で候補薬剤と接触させる。適切なコントロールを同時に行ない得るか、または予備確立させ得る (例えば、予備確立させた標準または参照)。
特定の局面において、本発明は、エラスチンのアナログ、例えば、一般式I:


で表される化合物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における状態の処置方法であって、状態は、SV40スモールt抗原の細胞標的タンパク質の増大されたRasシグナリング活性および改変された(例えば、低下または増加した)活性;ならびに任意に実質的に野生型レベルのRb活性を有する細胞を特徴とし、
(式中、
R1は、H、-Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、3〜8員環の炭素環式または複素環式、アリール、ヘテロアリール、およびC1〜4アラルキルから選択される;
R2およびR4は、各々独立して各存在について、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルスルホニル、およびアリールスルホニルから選択される、ただし、R2およびR4の両方が同じN原子上にあり、両方ともHでない場合、これらは異なり、R2およびR4の両方が同じN上にあり、R2またはR4のいずれかがアシル、アルキルスルホニル、またはアリールスルホニルである場合、他方は、H、C1〜8アルキル、アリール、C1〜4アラルキル、およびヘテロアリールから選択されるものとする;
R3は、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される;
Wは、

から選択される;
Qは、OおよびNR2から選択される;ならびに
Zは、独立して各存在について、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルから選択される。Zがアルケニルまたはアルキニル基である場合、二重結合または三重結合または結合は、好ましくは、基の末端にない (それにより、例えば、エノールエーテル、アルキノールエーテル、エナミンおよび/またはイナミンを排除する))
方法を提供する。
特定の態様において、Wは、

から選択される。かかる特定の態様において、R1は、-Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、アリール、ヘテロアリール、およびC1〜4アラルキルから選択される。
特定の態様において、Wは、

である。かかる特定の態様において、R1は、-Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、アリール、ヘテロアリール、およびC1〜4アラルキルから選択される。
特定の態様において、R1は、-Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、アリール、ヘテロアリール、およびC1〜4アラルキルから選択される。
特定の態様において、R4は、C1〜4アラルキルおよびアシルから選択される。かかる特定の態様において、R4はアシルである。
特定の態様において、R4がアシルである場合、R4は、-C(O)-C1〜3アルキル-Yであり、Yは、H、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、およびシクロアルキルから選択される。かかる特定の態様において、Yは、アリールオキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシおよびシクロアルキルから選択される。好ましいかかる態様において、Yは、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシから選択される。より好ましいかかる態様において、C1〜3アルキル-Yは-CH2O-フェニルであり、ここで、フェニルは、ハロゲン、好ましくは、クロロで任意に置換される。Yが-CH2O-フェニルである特定の好ましい態様において、残りの値は、エラスチンが該態様から排除されるように選択される。
特定の態様において、アリールは、C1〜6アルキル、CF3、ヒドロキシル、C1〜4アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ハロゲン、-NR2R4、ニトロ、カルボン酸、カルボン酸エステル、およびスルホニルから選択される基で任意に置換される。
好適な薬剤は、現存する形態または完全もしくは部分代謝後に記載の活性を有し得る。
特定の態様において、状態は、実質的に野生型レベルのRb活性を有する細胞を特徴とする。かかる特定の態様において、細胞は、SV40スモールt抗原の細胞標的タンパク質の増大されたRasシグナリング活性および/または改変された(例えば、低下または増加した)活性をさらに特徴とする。
特定の態様において、化合物は非アポトーシス機構によって細胞を殺傷する。
特定の態様において、化合物は非アポトーシス機構以外の機構によって細胞を殺傷する。
特定の態様において、細胞は、増大されたRas経路活性 (例えば、RasV12)を有し、SV40スモールt抗原を過剰発現し、ホスファターゼPP2Aの実質的に低下した活性を有し、および/またはVDAC2もしくはVDAC3などのVDACレベルもしくは活性を調節(例えば、増大もしくは阻害)する。
特定の態様において、該状態は癌である。
特定の態様において、細胞は、例えば、前記細胞を、レトロウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターなどのSV40スモールt抗原を過剰発現するウイルスベクターで感染させることにより、SV40スモールt抗原を発現するように誘導される。
特定の態様において、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである。
特定の態様において、該方法は、アポトーシス機構により細胞を殺傷する化学療法剤などの薬剤を哺乳動物に共同で投与することをさらに含む。特定の態様において、共同で投与される薬剤は、EGF-レセプターアンタゴニスト、硫化ヒ素、アドリアマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、シメチジン、カルミノマイシン、塩酸メクロレタミン、ペンタメチルメラミン、チオテパ、テニポシド、シクロホスファミド、クロラムブシル、デメトキシヒポクレリンA、メルファラン、イホスファミド、トロホスファミド、トレオサルファン、ポドフィロトキシンもしくはポドフィロトキシン誘導体、リン酸エトポシド、テニポシド、エトポシド、ロイロシジン、ロイロシン、ビンデシン、9-アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン、クリスナトール、メゲストロール、メトプテリン、マイトマイシンC、エクテナサイジン743、ブスルファン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ロバスタチン、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン、セムスチン、スタウロスポリン、ストレプトゾシン、フタロシアニン、ダカルバジン、アミノプテリン、メトトレキサート、トリメトレキサート、チオグアニン、メルカプトプリン、フルダラビン、ペンタスタチン、クラドリビン、シタラビン(ara C)、ポルフィロマイシン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、塩酸ドキソルビシン、ロイコボリン、ミコフェノール酸、ダウノルビシン、デフェロキサミン、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラルチトレキセド、イダルビシン、エピルビカン、ピラルビカン、ゾルビシン、ミトキサントロン、硫酸ブレオマイシン、アクチノマイシンD、サフラシン、サフラマイシン、キノカルシン、ディスコデルモライド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、酒石酸ビノレルビン、ベルトポルフィン、パクリタキセル、タモキシフェン、ラロキシフェン、チアゾフラン、チオグアニン、リバビリン、EICAR、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、フルタミド、ビカルタミド、ブセレリン、ロイプロリド、プテリジン、エネジイン、レバミゾール、アフラコン、インターフェロン、インターロイキン、アルデスロイキン、フィルグラスチム、サルグラモスチム、リツキシマブ、BCG、トレチノイン、ベタメタゾン、塩酸ゲムシタビン、ベラパミル、VP-16、アルトレタミン、タプシガーギン、オキサリプラチン、イプロプラチン、テトラプラチン、ロバプラチン、DCP、PLD-147、JM118、JM216、JM335、サトラプラチン、ドセタキセル、脱酸素化パクリタキセル、TL-139、5'-ノル-アンヒドロビンブラスチン(anhydrovinblastine)(以下、5'-ノル-ビンブラスチン)、カンプトテシン、イリノテカン (カンプトサール、CPT-11)、トポテカン (ヒカンプチン)、BAY 38-3441、9-ニトロカンプトテシン (オレテシン、ルビテカン)、エキサテカン(DX-8951)、ルロトテカン(lurtotecan)(GI-147211C)、ギマテカン、ホモカンプトテシンジフロモテカン(BN-80915)および9-アミノカンプトテシン (IDEC-13')、SN-38、ST1481、カラニテシン(BNP1350)、インドロカルバゾール (例えば、NB-506)、プロトベルベリン、イントプリシン、イデノイソキノロン、ベンゾ-フェナジンまたはNB-506から選択される。
本発明の別の局面は、(1) 有効量の一般式I:

(式中:
R1は、H、-Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、3〜8員環の炭素環式または複素環式、アリール、ヘテロアリール、およびC1〜4アラルキルから選択される;
R2およびR4は、各々独立して各存在について、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルスルホニル、およびアリールスルホニルから選択される、ただし、R2およびR4の両方が同じN原子上にあり、両方ともHでない場合、これらは異なり、R2およびR4の両方が同じN上にあり、R2またはR4のいずれかがアシル、アルキルスルホニル、またはアリールスルホニルである場合、他方は、H、C1〜8アルキル、アリール、C1〜4アラルキル、およびヘテロアリールから選択されるものとする;
R3は、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される;
Wは、

から選択される;
Qは、OおよびNR2から選択される;ならびに
Zは、独立して各存在について、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルから選択される(Zがアルケニルまたはアルキニル基である場合、二重結合または三重結合または結合は、好ましくは、基の末端にない))
で表される化合物;ならびに
(2)細胞においてVDAC(例えば、VDAC2、VDAC3)の存在量を増加させる薬剤
を細胞に投与することを含む、細胞を殺傷し、細胞死を促進するか、または細胞増殖を阻害する方法を提供する。
本発明の別の局面は、(1) 有効量の一般式I:

(式中:
R1は、H、-Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、3〜8員環の炭素環式または複素環式、アリール、ヘテロアリール、およびC1〜4アラルキルから選択される;
R2およびR4は、各々独立して各存在について、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルスルホニル、およびアリールスルホニルから選択される、ただし、R2およびR4の両方が同じN原子上にあり、両方ともHでない場合、これらは異なり、R2およびR4の両方が同じN上にあり、R2またはR4のいずれかがアシル、アルキルスルホニル、またはアリールスルホニルである場合、他方は、H、C1〜8アルキル、アリール、C1〜4アラルキル、およびヘテロアリールから選択されるものとする;
R3は、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される;
Wは、

から選択される;
Qは、OおよびNR2から選択される;ならびに
Zは、独立して各存在について、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルから選択される(Zがアルケニルまたはアルキニル基である場合、二重結合または三重結合または結合は、好ましくは、基の末端にない))
で表される化合物;ならびに
(2)細胞においてVDAC(例えば、VDAC2、VDAC3)の存在量を減少させる薬剤
を細胞に投与することを含む、細胞を殺傷する方法を提供する。
別の態様において、本発明は、有効量の式(I)の化合物を細胞に投与することを含む、細胞死を促進する方法である。
特定の態様において、化合物は上記のものである。
特定の態様において、細胞は癌細胞である。
特定の態様において、薬剤は、VDAC3などのVDACをコードするポリヌクレオチドを含む。
特定の態様において、薬剤は、細胞内への輸送に適合させた、例えば、異種インターナリゼーションドメインと融合させたVDACタンパク質(例えば、VDAC3)である。
特定の態様において、薬剤は、VDACタンパク質(例えば、VDAC3)を含むリポソーム調製物である。
特定の態様において、薬剤は、内在VDAC(例えば、VDAC3)発現を増大もしくは抑制し、VDAC(例えば、VDAC3)発現を刺激もしくは抑制し、またはVDAC(例えば、VDAC3) インヒビターの機能を増大もしくは抑制する。
特定の局面において、該方法はまた、細胞においてVDAC(例えば、VDAC1、VDAC2、VDAC3)の存在量を増加させる薬剤を投与することを含む。特定の局面において、該方法はまた、細胞においてVDAC(例えば、VDAC1、VDAC2、VDAC3)の存在量を減少させる薬剤を投与することを含む。
別の局面において、本発明は、腫瘍細胞を本明細書に開示する化合物と接触させる、化学療法剤への腫瘍細胞の感受性を(例えば、相加的または相乗的に)増加させる方法である。関連局面において、本発明は、正常細胞を本明細書に開示する化合物と接触させる、化学療法剤への正常細胞の感受性を低下させる方法である。
1つの態様において、本発明は、本発明の化合物での処置に応答する可能性のある患者の同定方法である。当該技術分野で公知の標準的な特徴付け方法を用い、以下:1種類以上の経路メンバー(例えば、リン酸化Erk1/2、リン酸化MEKなど)の活性化を特徴とする異常Rasシグナリング経路活性および/またはVDACタンパク質(1、2もしくは3)の発現および/またはインビトロもしくはインビボいずれかでの本発明の化合物の曝露への類似もしくは同一の遺伝子型の細胞株の感受性の属性の1つ以上を示す新形成を有すると特定された患者は、応答性であると予測され得る。
本発明の別の局面は、一般式I:

(式中:
R1は、H、Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、3〜8員環の炭素環式または複素環式、アリール、ヘテロアリール、およびC1〜4アラルキルから選択される;
R2およびR4は、各々独立して各存在について、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルスルホニル、およびアリールスルホニルから選択される、ただし、R2およびR4の両方が同じN原子上にある場合、これらは異なり(R2およびR4が両方ともHである特定の態様を除く)、R2およびR4の両方が同じN上にあり、R2またはR4のいずれかがアシル、アルキルスルホニル、またはアリールスルホニルである場合、他方は、H、C1〜8アルキル、アリール、C1〜4アラルキル、およびヘテロアリールから選択されるものとする;
R3は、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される;
Wは、

から選択される;
Qは、OおよびNR2から選択される;ならびに
Zは、独立して各存在について、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルから選択され、Zがアルケニルまたはアルキニル基である場合、二重結合または三重結合または結合は、好ましくは、基の末端にない))
で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
本発明の別の局面は、一般式II:

(式中
Arは、置換フェニルである;
R1は、H、C1〜8アルキル、Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、3〜8員環の炭素環式または複素環式、アリール、ヘテロアリール、およびC1〜4アラルキルから選択される;
R2およびR4は、各々独立して各存在について、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルスルホニル、およびアリールスルホニルから選択される、ただし、R2およびR4の両方が同じN原子上にあり、R2またはR4のいずれかがアシル、アルキルスルホニル、またはアリールスルホニルである場合、他方は、H、C1〜8アルキル、アリール、C1〜4アラルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択されるものとする;
R3は、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される;
R5は、これが結合する環上の0〜4個の置換基を表す;
Wは、

から選択される;
Qは、OおよびNR2から選択される;ならびに
Zは、独立して各存在について、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルから選択される。Zがアルケニルまたはアルキニル基である場合、二重結合または三重結合または結合は、好ましくは、基の末端にない)
で表される化合物を提供する。
本発明の別の局面は、一般式III:


(式中
Arは、置換もしくは非置換のフェニルである;
R1は、H、C1〜8アルキル、-Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、3〜8員環の炭素環式または複素環式、アリール、ヘテロアリール、およびC1〜4アラルキルから選択される;
R2およびR4は、各々独立して各存在について、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルスルホニル、およびアリールスルホニルから選択される、ただし、R2およびR4の両方が同じN原子上にあり、R2またはR4のいずれかがアシル、アルキルスルホニル、またはアリールスルホニルである場合、他方は、H、C1〜8アルキル、アリール、C1〜4アラルキル、およびヘテロアリールから選択されるものとする;
R3は、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される;
R5は、これが結合する環上の0〜4個の置換基を表す;
Wは、


から選択される;
Qは、OおよびNR2から選択される;ならびに
Zは、独立して各存在について、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルから選択される。Zがアルケニルまたはアルキニル基である場合、二重結合または三重結合または結合は、好ましくは、基の末端にない)
で表される化合物を提供する。
本発明の別の局面は、一般式IV:

(式中
Arは、置換もしくは非置換のフェニルである;
R1はC1〜8アルキルである;
R2およびR4は、各々独立して各存在について、HおよびC1〜8アルキルから選択される;
R5は、これが結合する環上の0〜4個の置換基を表す;
Wは、


から選択される;ならびに
Qは、OおよびNR2から選択される)
で表される化合物を提供する。
本発明の別の局面は、一般式V:


(式中
R1は、HおよびC1〜8アルキルから選択される;
R2は、HおよびC1〜8アルキルから選択される;
R3は、ハロゲン、C1〜8アルコキシおよびC1〜8アルキルから選択される;
R4は、H、ハロゲン、C1〜8アルコキシおよびC1〜8アルキルから選択される;
R5は、H、ハロゲンおよびニトロから選択される;ならびに
nは1または2である)
で表される化合物を提供する。
上記の式I〜Vで表される化合物のいずれかが、1) 前記化合物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における状態を処置する方法、2) a) 有効量の前記化合物、およびb)細胞においてVDAC (例えば、VDAC2、VDAC3)の存在量を増加させる薬剤を細胞に投与することを含む、細胞を殺傷する方法、または3) a) 有効量の前記化合物、およびb)細胞においてVDAC (例えば、VDAC2、VDAC3)の存在量を減少させる薬剤を細胞に投与することを含む、細胞を殺傷する方法に使用され得ることが想定される。
本発明のすべての態様は、1種類以上の他の態様と、本発明の異なる局面の下に記載されたものとさえ組み合わされ得ることが考慮される。本発明の特定の態様において、化合物または薬剤は、表2に開示した化合物でない。
発明の詳細な説明
分子プローブとしての機能を果たす遺伝子型選択的化合物の能力は、タンパク質および生物学的効果の基礎をなす経路を同定するために小分子が使用され得るという遺伝生化学の前提に基づく(Schreiber, 1998, Bioorg. Med. Chem. 6, 1127-1152; Stockwell, 2000, Nat Rev Genet 1, 116-25; Stockwell, 2000, Trends Biotechnol 18, 449-55)。例えば、天然物のラパマイシンは細胞成長を遅らせるという観察は、哺乳動物のラパマイシン標的(mTOR)の細胞成長を調節するタンパク質としての発見を可能にした(Brown et al, 1994, Nature 369, 756-758; Sabatini et al, 1994, Cell 78, 35-43)。本出願人らはこれらの2つのアプローチ、遺伝生化学および分子遺伝学を組合せ、癌などのヒト疾患と関連する変異によって影響される経路を発見した。
出願人らは、破壊が腫瘍形成表現型をもたらすこれらクリティカルパスウェイの同定に使用するための定義された遺伝要素を用いて、一連のヒト腫瘍細胞を操作した(Hahn et al., 1999, Nat Med 5, 1164-70; Hahn et al., 2002, Nat Rev Cancer 2, 331-41; Lessnick et al., 2002, Cancer Cell 1, 393-401)。出願人らは、これら実験に基づいた形質転換細胞が、特異的な癌関連対立遺伝子の存在下で合成的致死性を示す公知化合物および新規化合物供給源の両方から遺伝子型選択薬剤(genotype-selective agent)を同定することが可能であると仮定した。遺伝子型選択的致死性(genotype-selective lethality)を有する化合物は、腫瘍細胞中に存在するシグナルネットワークの分子プローブとして、および好ましい治療指数を有する臨床的に効果的な薬物の二次的開発を導くものとして、および/または効果的な薬物として供給され得る。
このアプローチを用いることで、出願人らは、天然および合成化合物ライブラリーのいくつかの高処理能力スクリーニング研究を行い、強力な殺癌活性を示す化合物を同定した。これらの化合物の中には、エラスチンならびにエラスチンBおよびエラスチンAなどのエラスチンアナログが存在する。それにもかかわらず、種々の試験薬剤または化合物が、本明細書に記載されるスクリーニング研究(例えば抗腫瘍候補物の同定方法)において使用され得る。かかる試験薬剤としては、限定されないが、有機低分子、ペプチド、ペプチド模倣物、タンパク質(抗体を含む)、核酸、炭水化物が挙げられる。
したがって本発明は、癌細胞、特に上昇したRasシグナル伝達活性、改変されたSV40スモールt抗原標的活性、および/または実質的に完全なRb活性を有する癌細胞などの遺伝子型特異的癌細胞を殺傷する式Iの化合物を提供する。
出願人らはまた、直接的または間接的にエラスチンおよび/またはそのアナログに結合するいくつかの細胞タンパク質を同定した。これらのタンパク質としては:電位依存性アニオンチャンネル(Voltage-Dependent Anion Channel)(VDAC1、VDAC2およびVDAC3)、プロヒビチン、リボホリン(Ribophorin)、Sec61aおよびSec22bが挙げられる。定量RT-PCRはまた、エラスチン破壊に高感度な細胞が、高いレベル(例えば2〜6倍高く、典型的に2〜2.5倍高い)のVDAC3発現を有することを示唆する。どんな特定の理論にも縛られることを望まないが、これらの実験は、VDAC、特にVDAC3およびVDAC2の高レベル発現がエラスチン(およびそのアナログ)媒介細胞破壊を増強し、有効性のために必要とさえされ得ることを示唆する。
したがって、本発明の一局面は、特に上昇したRas活性、改変されたSV40スモールt抗原標的活性、ならびに好ましくは実質的に完全なRbおよび/またはp53活性を有する癌細胞を選択的に殺傷する方法を提供し、該方法は、一般式I:


(式中:
R1は、H、-Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、3〜8員環の炭素環式または複素環式、アリール、ヘテロアリールおよびC1〜4アラルキルから選択される;
R2およびR4は、各存在に対して各々独立して、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルスルホニルおよびアリールスルホニルから選択されるが、R2およびR4の両方が同じN原子上に存在し、両方ともHでない条件のとき、それらは異なるものであり、R2およびR4の両方が同じN原子上に存在し、R2もしくはR4のいずれかがアシル、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニルである条件のとき、他方はH、C1〜8アルキル、アリール、C1〜4アラルキルおよびヘテロアリールから選択されるものとする;
R3は、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択される;
Wは、

から選択される;
Qは、OおよびNR2から選択される;ならびに
Zは、各存在に対して独立的に、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルおよびC2〜6アルキニルから選択される。Zがアルケニルまたはアルキニル基であるとき、二重結合または三重結合または結合は、好ましくは基の末端に存在しない)
で表される治療有効量の化合物を、処置を必要とする哺乳類の患者に投与することを含む。
特定の態様において、式Iの化合物はエラスチンまたはエラスチンAを含まない。
当該分野で周知のように、Rasの構成的活性化は、ヒト癌細胞の悪性成長に対して重要因子であると思われる。RAS原腫瘍遺伝子の変異(H-RAS、N-RAS、K-RAS)は、全てのヒト腫瘍中の20%〜30%で見出されるよくある遺伝子異常であるが、腫瘍型における発生率は大きく変化する(Bos, Cancer Res.49: 4682-4689, 1989)。RAS変異の最大割合は、膵臓(90%)、結腸(50%)、および肺(30%)の腺癌中で検出された。甲状腺の濾胞状癌および未分化の癌において、RAS変異の発生率もまた相当なものである(50%)。最も一般的に観察されるRAS変異は、Ras調節に対して決定的な部位、すなわちコドン12、13および61で起こる。これらの変異の各々は、Rasの正常なGTPアーゼ活性の抑制をもたらす。Ras活性化はまた、骨髄性白血病および多発性骨髄腫などの血液学的悪性疾患において頻繁に観察される。骨髄異形成症候群(MDS)および急性骨髄性白血病(AML)の約1/3において、RAS遺伝子は変異的に活性化される。RAS変異は、新しく診断された多発性骨髄腫の患者の約40%で生じ、頻度は疾患の進行と共に増加する。
一方、ポリオーマウイルスは種々の脊椎動物(現在12種類が分かっている)に感染する。マウスのポリオーマウイルスは、1953年にLudwig Grossによってマウスの白血病を研究している間に単離され、それが複数の部位で固形腫瘍を引き起こすという理由から名付けられた。ファミリーの第二のメンバーであるサル空胞形成ウイルス40(SV40)は、Sabin OPVを大きくするために用いられる一次サル腎細胞培養において1960年にSweetおよびHillemanによって単離された(Hilleman, Dev Biol Stand 94: 183-190, 1998)。cBKウイルス(BKV)およびJCウイルス(JCV)の2つのヒトポリオーマウイルスが1971年に単離された。
ポリオーマウイルスは、ラージ腫瘍抗原(LT)、ミドルT抗原(mT)、およびスモール腫瘍抗原(sT)とよばれる細胞性形質転換と関係がある3つのタンパク質をコードする。これら3つのタンパク質は、初期領域転写の異なるスプライシングから得られ、相同配列を含む。ポリオーマのラージT抗原は腫瘍抑制タンパク質のpRbと反応し、培養中の一次線維芽細胞を不死化し得る。N-末端、特に残基42と47との間で見られるHPDKYG配列に位置するDna Jドメインは、SV40ラージT抗原の場合と同様に、Rbファミリータンパク質の機能的不活性化に決定的である。LTの発現は、十分に形質転換された細胞表現型を産生するのに十分でなく−これはポリオーマウイルスの主な形質転換タンパク質であるmTを必要とする。マウスポリオーマミドルTは421のアミノ酸からなり、少なくとも3つのドメインに分けられ得、そのいくつかはLTおよびsTと共有される。アミノ末端ドメインは最初の79のアミノ酸を含み、LTおよびsT中にも存在する。それに隣接して、残基80〜192の間は、ポリオーマsTにも存在し、SV40のスモールt中で同定された2つのシステインに富んだ領域、Cys-X-Cys-X-X-Cysを含むドメインである。これらシステインの変異は、細胞を形質転換させるmTの能力を抑制する。残りの229のアミノ酸はmTに特有であり、マウスmTの主なチロシンリン酸化部位、および形質転換活性のために必要である、このタンパク質の膜局在化に関連する疎水性領域(カルボキシ末端でのおよそ20のアミノ酸)を含む。
SV40のスモールt抗原は174のアミノ酸を含む。残基97〜103間の領域はタンパク質ホスファターゼ2A(PP2A)と相互作用する。この相互作用は、PP2AのERK1およびMEK1プロテインキナーゼを不活性化する能力を減少させ、静止サル腎細胞の増殖の刺激をもたらす。スモールt抗原依存アッセイもまた、細胞形質転換を増強する能力を有する他の領域を同定した。これらの領域は、SV40のスモールおよびラージT抗原で共有されるN末端部分に位置し、Dna Jドメインとして潜在的に機能し得る。スモールt抗原はまた、チューブリンと結合し得、これが生物学的機能において役割を果たすことを示唆した。
出願人らは、活性化Ras活性およびスモールt抗原発現(かくして減少したスモールt抗原標的タンパク質活性、例えば減少したPP2A等、または増強されたERK1およびMEK1)の両方を有する細胞が、非アポトーシス機構を介するように、エラスチンおよびそのアナログによって選択的に殺され得ることを発見した。好ましい態様において、細胞は実質的に野生型レベルのRbおよび/またはp53(または他のE6/E7タンパク質標的)を発現する。
かくして、特定の態様において、ある特異的遺伝子型の癌細胞は、本発明の化合物によって選択的に殺傷され得る。これらは、構成的に活性なRas変異もしくはRasシグナル経路突然変異、および増強されたERK1、MEK1活性または減少したPP2A活性を有する癌を含む。
特定の他の態様において、標的細胞の遺伝子型は選択的に改変され得(例えばSV40のスモールt抗原を発現するために、ERK1もしくはMEK1を発現するために、またはPP2Aを阻害するために等)、そのため以前はエラスチンおよびエラスチンアナログの破壊に感受性でなかった標的細胞が、いまではかかる殺傷に感受性である。
具体的には、本発明は、上昇したRas活性およびスモールt抗原発現(あるいはPP2A活性、増強されたERK1もしくはMEK1活性、または限定されないがPP2A調節サブユニットにおける変異を含むsTの効果を模倣する機構などの、改変されたスモールt抗原標的タンパク質活性)を有する癌細胞を選択的に殺傷する方法を提供するが、上昇したRas活性を有さない比較的正常な細胞もまた、これらの細胞がスモールt抗原を発現するときでさえ、保護される。これは、多くの癌が、体細胞(somatic)RasV12または癌細胞中の上昇したRasシグナル送達活性を導く他の類似した変異を有するが、同じ患者/個体における正常細胞は、通常同一のRasV12またはRas経路変異を有さないので有用であり得る。エラスチンおよびそのアナログは、癌細胞がまたスモールt抗原を発現する(または改変されたスモールt抗原標的タンパク質活性を有する)場合、これらの癌細胞を選択的に殺傷するために用いられ得る。個体/患者における他の正常な細胞もまたスモールt抗原を発現するが、正常な細胞は恐らく上昇したRasシグナル送達活性を有さないので、主題の方法は癌細胞を殺傷することにおいてさらに効果的である。たとえ個体がスモールt抗原を発現しないとしても、スモールt抗原は、癌(しかし正常でない)細胞におけるエラスチン/エラスチンアナログ破壊に対して感受性を与えるために、患者に(タンパク質として、またはベクターでコードしたDNAとしてのいずれかで)送達され得る。
スモールt抗原それ自体は、患者に対して有害な影響をもたらすのに十分であると理解されていないので、(スモールt抗原を患者に提供する)処置の副作用は最小限または存在しないであろう。実際、3千万人ものアメリカ人が、1955〜1963年の間に、ポリオワクチンによってSV40に曝されたと考えられる。ポリオウイルスを成長させるのに用いられたマカク腎細胞によって、SV40はワクチン中へ取り込まれた。この方法はもはや用いられておらず、1963年以来ポリオワクチンは該ウイルスを含んでない。1990年代のDNA研究で、SV40をいくつかのヒト腫瘍中に見出した。しかし、腫瘍組織におけるウイルスDNAと分裂細胞との関連は、ウイルスが腫瘍の形成を引き起こすことを証明しない。2002年10月、米国医学研究所からの科学調査団は、何十年も前にシミアンウイルスSV40で汚染されたポリオワクチンの広範囲な使用が、ヒトにおける増大した癌の割合を導いたかどうかを決定する方法が存在しないことを結論付けた。
いくつかの態様において、上昇したRas活性は、アミノ酸位置12、13および/または61での構成的に活性なRas(N-、H-、またはK-Ras)変異によって現れる。
いくつかの他の態様において、上昇したRas活性は、限定されないがRaf、MEK、MAPKなどを含む、Ras経路タンパク質の1つ以上の下流成分の増強された活性によって現れる。
さらなる他の態様において、スモールt抗原の発現は、SV40スモールt抗原を発現するアデノウイルスまたはレトロウイルスベクターなどのベクターによる標的細胞の感染によって達成され得る(以下参照)。
あるいはスモールt抗原は、標的細胞に直接提供され得る。例えばスモールt抗原は、当該分野で公知の種々の方法を用いて標的細胞に導入され得る(以下の詳細を参照)。一態様において、スモールt抗原は、表面上で正電荷を有するリポソーム(例えばリポフェクチン)で、標的組織の細胞表面抗原に対する抗体、例えば癌細胞表面抗原に対する抗体で任意に標識されたリポソームに捕捉されることによって、標的細胞に提供され得る。別の態様において、スモールt抗原は、限定されないがHIVタンパク質TatのN末端ドメイン(例えばTatの残基1〜72またはトランスサイトーシスを促進し得るそのより小さなフラグメント)、ショウジョウバエのアンテナペディア(antenopedia)IIIタンパク質の全部か一部分、マストパランの十分な部分などを含む、この効果を媒介し得る任意の「内在性(internalizing)ペプチド」を用いて、トランスサイトーシスにより標的細胞に提供され得る(以下参照)。
他の態様において、減少したPP2A(および/または他のスモールt抗原標的タンパク質)は抗体、RNAi(siRNA、ショートヘアピンRNA等)、アンチセンス配列、またはかかる標的タンパク質に特異的な小分子インヒビターを送達することによって達成され得る。
タンパク質のかかるアンタゴニストを標的細胞に送達する工程は、当該分野において周知である。例えば、WO04078940A2、EP1439227A1、WO04048545A2、US20040029275A1、WO03076592A2、WO04076674A1、WO9746671A1を参照、全ては本明細書に参照によって援用される。
本発明の別の局面は、エラスチン/エラスチンアナログおよびアポトーシス機構を介して細胞を殺傷する1つ以上の薬剤または治療法(放射線療法)を用いる併用療法を提供する。かかる薬剤は、以下に記載される多くの化学治療薬を含む。
特定のタンパク質は、エラスチン感受性細胞中で上昇した発現レベルを有すると考えられる。1つのかかるタンパク質であるVDAC3は、例えばエラスチンに曝したとき、量で2〜2.5倍上昇し、出願人らは理論に縛られることを望まないが、その存在または増加量でさえ、エラスチン媒介の破壊に必要不可欠であると考えられる。
したがって、本発明の別の局面において、標的細胞をエラスチンおよび/もしくは式I〜IVのエラスチンアナログと接触させる工程を含む、VDAC2またはVDAC3などのVDACの上昇したレベルを有する細胞の増殖速度を弱めるか遅延させる方法が提供される。
特定の態様において、標的細胞は、エラスチンおよびその機能的なアナログにより増殖速度の減少または遅延の感受性を増強するように、VDAC2またはVDAC3などのVDACのより高いレベルを発現するように操作される(manipulate)。
例えば、VDACタンパク質を、当該分野で公知の種々の方法を用いて標的細胞中に導入し得る(以下の詳細を参照)。一態様において、VDACタンパク質は、表面上で正電荷を有するリポソーム(例えばリポフェクチン)で、標的組織の細胞表面抗原に対する抗体、例えば癌細胞表面抗原に対する抗体で任意に標識されたリポソームに捕捉されることによって、標的細胞に提供され得る。別の態様において、VDACタンパク質は、限定されないがHIVタンパク質TatのN末端ドメイン(例えばTatの残基1〜72またはトランスサイトーシスを促進し得るそのより小さなフラグメント)、ショウジョウバエのアンテナペディアIIIタンパク質の全部か一部分、マストパランの十分な部分などを含む、この効果を媒介し得る任意の「内在性ペプチド」を用いて、トランスサイトーシスにより標的細胞に提供され得る(以下参照)。
あるいは、機能的VDACをコードする核酸は、例えばVDACを発現するアデノウイルスまたはレトロウイルスベクターを用いてかかる標的細胞中に導入され得る。
さらに、内因性VDAC(例えばVDAC3)活性は、VDAC発現を刺激するか、またはVDACインヒビター(転写もしくは翻訳インヒビター、または細胞中のVDACターンオーバーを促進するインヒビター)の活性を抑制するかのいずれかである薬剤によって刺激され得る。
特定の局面において、本発明の方法はまた、細胞中のVDAC(例えばVDAC1、VDAC2、VDAC3)の存在量を増加させる薬剤を投与する工程を含む。VDACの存在量を増加させるための薬剤は、例えば、VDAC3などのポリヌクレオチドコードVDACを含み得;細胞中に輸送されるように適合された、例えば異なる内在化ドメインと融合するか、またはリポソーム製剤中に調製されたVDACタンパク質(例えばVDAC3)であり得る。
特定の局面において、本発明の方法はまた、細胞中のVDAC(例えばVDAC1、VDAC2、VDAC3)の存在量を減少させる薬剤を投与する工程を含む。VDACの存在量を減少させるための薬剤は、例えば、内因性VDAC(例えばVDAC3)発現を阻害するか、VDAC(例えばVDAC3)発現を抑制するか、またはVDAC(例えばVDAC3)インヒビターの機能を向上させ得る。
以下の節は、本発明のある例示的な態様を記載し、それらはお互いを組み合わせ得るように意図される。さらに、態様は例証的な目的のみであり、いかなる点において限定するように解釈してはならない。
操作された細胞株
一局面において、本発明は、操作された腫瘍形成細胞株に関する。
先の報告は、一次ヒト細胞を、hTERTおよび癌遺伝子RASタンパク質、ならびにp53、RBおよびPP2Aの機能を崩壊させる他のものを発現するベクターの導入によって腫瘍形成細胞に変換し得ることを示した(Hahn et al, 2002, Mol Cell Biol 22, 2111-23; Hahn et al, 1999, Nature 400, 464-8; HahnおよびWeinberg, 2002, Nat Rev Cancer 2, 331-41; Lessnick et al, 2002, Cancer Cell 1, 393-401)。出願人らは、特定の遺伝子要素を一次ヒト包皮線維芽細胞に導入することによって生成された、一連の操作されたヒト腫瘍形成細胞およびその前駆体を利用した(図1)。倍増する時間、培養中の複製老化および重大局面(crisis)への耐性、ガンマ線照射に対する反応、足場非依存性様式での成長能力および免疫不全マウスでの腫瘍を形成する能力を含む、これら操作された腫瘍形成細胞の種々の特性が先に報告された(Hahn et al., 1999, 前述; Hahn et al, 2002, 前述; Lessnick et al, 2002, 前述)。
操作された細胞の一系列(series)において、以下の遺伝子要素:酵素テロメラーゼのヒト触媒サブユニット(hTERT)、シミアンウイルス40ラージ(LT)およびスモールT(ST)腫瘍タンパク質をコードするゲノム構築物、ならびにHRASの発癌性対立遺伝子(RASV12)を、連続的に一次BJ線維芽細胞中に導入した。得られた形質転換された細胞株を、それぞれBJ-TERT、BJ-TERT/LT/ST、およびBJ-TERT/LT/ST/RASV12と名付けた。第2の系列において、細胞株が生成され、ウイルス性タンパク質の両方をコードするSV40ゲノム構築物の代わりに、LTおよびSTをコードする相補DNA(cDNA)構築物を用いた。この後者の系列において、STが最終段階で導入され、出願人らはSTの存在または非存在下で化合物を試験し得るようになった。この後者の操作されたヒト腫瘍形成細胞株を、BJ-TERT/LT/RASV12/STと名付けた。
第3の系列において、hTERT、LT、STおよびRASV12をコードするcDNA構築物を導入することによって生成される、独立的に調製されたヒトTIP5包皮線維芽細胞由来の細胞株(Lessnick et al, 2002, Cancer Cell 1, 393-401)を使用した。これらの細胞株をそれぞれ、TIP5/TERT、TIP5/TERT/LT、TIP5/TERT/LT/ST、およびTIP5/TERT/LT/ST/RASV12と名付けた。第4の系列において、hTERT、E6、E7、STおよびRASV12をコードするcDNA構築物を導入することによって生成される、TIP5線維芽細胞由来の細胞株を使用した。これらの細胞株をそれぞれ、TIP5/TERT/E6、TIP5/TERT/E6/E7、TIP5/TERT/E6/E7/ST、およびTIP5/TERT/E6/E7/ST/RASV12と名付けた。この系列において、p53およびRBをそれぞれ不活性化するHPV E6およびE7は、前の系列のLTと同様の機能を果たす。しかしHPV E6およびE7を用いることによって、出願人らは、p53およびRBの不活性化の効果を、別々におよび独立して観察することができた。これら操作された腫瘍形成細胞株を選択的に殺傷することを示す化合物のための大規模スクリーニングの結果は、以下の実施例に記載される。
遺伝子型選択的化合物のためのスクリーニング方法
特定の態様において、本発明は、操作された腫瘍形成細胞株を選択的に殺傷すること、またはその成長を選択的に抑制すること(それに対して選択的に毒性である)を示す化合物のための大規模スクリーニングに関する。本明細書に用いられる場合、用語薬剤および薬物は互換的に用いられる。本明細書に用いられる場合、用語「毒性である」とは、腫瘍形成細胞の成長/増殖を弱めるか、または抑制する薬剤または化合物の能力をいう。大規模スクリーニングは、操作された腫瘍形成細胞への選択的毒性に対し、高処理形式で何百または何千の化合物をスクリーニングするスクリーニングを含む。本発明の一態様において、選択的毒性を、操作された腫瘍形成細胞である試験細胞の細胞生存率と、候補剤との接触後のコントロール細胞とを比較することによって決定する。適切なコントロールは、コントロール細胞が腫瘍形成であるように操作されていないことを除いては、試験細胞の型と同一の細胞の型である細胞である。例えば、コントロール細胞は、試験細胞が由来する親の一次細胞であり得る。コントロール細胞を、試験細胞と同一の条件下で、候補剤と接触させる。適切なコントロールは同時に実施され得るか、または予備確立され得る(例えば予備確立された基準または参照)。特定の態様において、候補剤は、コンビナトリアルライブラリーなどの化合物ライブラリーより選択される。細胞生存率は、カルセインアセトキシメチルエステル(カルセインAM)およびアラマーブルーなどの染料の使用を含む、当該分野で公知である任意の種々の手段によって測定され得る。本発明の特定の態様において、カルセインAMなどの染料を、候補剤での処理後に試験細胞およびコントロール細胞に適用する。生存する細胞において、カルセインAMは細胞内エステラーゼによって切断され、生存する細胞外では拡散し得ないアニオン系蛍光性誘導体カルセインを形成する。よって、カルセインAMでインキュベートするとき、生存する細胞は緑色の蛍光を示すが、死んだ細胞は示さない。生存する細胞によって示される緑色の蛍光は検出され得、それにより細胞生存率の測定が提供され得る。
本発明の特定の態様において、操作された腫瘍形成細胞中に細胞死を選択的に誘導するものとして同定された薬剤は、動物モデルにおいてさらに特徴付けられる。動物モデルとしては、非トランスジェニック(例えば野生型)またはトランスジェニック動物であり得るマウス、ラット、ウサギ、およびサルが挙げられる。操作された腫瘍形成細胞中に細胞死を選択的に誘導する薬剤の効果を、動物における腫瘍形成細胞中に細胞死を選択的に誘導する能力、および動物に対する一般毒性など、多数の効果に対して動物モデルで評価し得る。例えば該方法は、適当なマウスモデルの腫瘍形成細胞に対する薬剤(薬物)の選択的毒性をさらに評価する工程を含み得る。
操作された腫瘍形成細胞中に死を選択的に誘導する薬剤の効果を、動物の腫瘍形成細胞中に死を誘導する能力、および動物に対する一般毒性など、多数の効果に対して動物モデルで評価し得る。例えば該方法は、適当なマウスモデルの腫瘍形成細胞に対する薬剤(薬物)の毒性をさらに評価する工程を含み得る。例示するために、薬剤を、マウスにおける定着した(established)固形腫瘍の成長を抑制する試験される薬剤の能力を評価する腫瘍増殖アッセイを用いて、さらに評価し得る。アッセイは、腫瘍細胞をヌードマウスの脂肪パッド中に移植することによって実行され得る。次いで、薬剤を投与する前に、腫瘍細胞を特定の大きさに成長させることができる。腫瘍の体積を指定された数の週、例えば3週間モニターする。試験される動物の通常の健康状態もまた、アッセイの過程でモニターする。
本発明のさらなる態様において、操作された腫瘍形成細胞の成長/増殖を選択的に弱めるか、または抑制するものとして同定された薬剤は、その作用機構を評価する細胞ベースアッセイでさらに特徴付けられる。例えば薬剤をアポトーシスアッセイで試験して、プロアポトーシス経路によって細胞死を誘導する能力を評価し得る。本発明のさらなる態様において、腫瘍細胞中に死を誘導する薬剤を、非アポトーシス経路によって腫瘍形成細胞中に死を誘導する能力に対して評価する。例えば、薬剤をアポトーシスアッセイで試験して、プロアポトーシス経路によって細胞死を誘導できない無能力を評価し得る。
他の態様において、本発明は、操作された細胞での細胞毒性を選択的に抑制する薬剤(薬物)の同定方法に関する。一態様において、本発明は、試験細胞を候補剤と接触させる工程;候補剤と接触させた試験細胞の生存率を測定する工程;および試験細胞の生存率を適切なコントロールの生存率と比較する工程を含む、細胞毒性を抑制する薬剤(薬物)の同定方法に関する。試験細胞の生存率がコントロール細胞のものよりも大きい場合、次いで細胞毒性を選択的に抑制する薬剤(薬物)が同定される。コントロール細胞が毒性を引き起こすタンパク質を発現するように操作されていないことを除いては、適切なコントロールは、試験細胞の型と同一の細胞の型である細胞である。例えば、コントロール細胞は試験細胞が由来する親の一次細胞であり得る。コントロール細胞を、試験細胞と同一の条件下で、候補剤と接触させる。適切なコントロールは同時に実施され得るか、または予備確立され得る(例えば予備確立された基準または参照)。
特定の態様において、合成的に生成されようが、組換え技術で生成されようが、または天然源から単離されようが、本発明の遺伝子型選択的化合物(抗腫瘍剤)は任意の化学物質(成分、分子、化合物、薬物)であり得る。例えば、これらの化合物はペプチド、ポリペプチド、ペプトイド、糖類、ホルモンまたは核酸分子(アンチセンスまたはRNAi核酸分子など)であり得る。さらに、これらの化合物は、例えば小分子またはコンビナトリアルケミストリーで生成されたさらに複雑な分子であり得、ライブラリー中に蓄積され得る。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、アルキルハロゲン化物、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテルおよび有機化合物の他の種類を含み得る。これらの化合物はまた、天然産物または細胞−細菌性、動物もしくは植物−の溶解産物もしくは成長培地から単離された遺伝子工学産物であり得るか、あるいは細胞溶解産物もしくは成長培地それ自体であり得る。試験系に対するこれらの化合物の提示は、特に最初のスクリーニング工程において、単離された形態または化合物の混合物としてのいずれかであり得る。
本発明の遺伝子型選択的化合物
出願人らの結果は、特定の遺伝子要素の存在下での増大した効能および活性を有する化合物の同定が可能であることを示す。先の報告は、目的の1つの遺伝子要素の場合において、かかる遺伝子型選択的化合物を同定することが可能であり得ることを示したが(Simons et al, 2001, Genome Res 11, 266-73; Stockwell et al, 1999, Chem Biol 6, 71-83; Torrance et al, 2001, Nat Biotechnol 19, 940-5)、本明細書に記載される研究は、23,000より多い化合物および1つ以上の癌関連遺伝子要素を用いて、合成的致死性の系統的試験を提供する。
同定された9つの選択的化合物は、TERT、および1つ以上のLT、ST、E6、E7、ならびに発癌性RASを正常なヒト細胞中に導入することによる結果の定義付けを補助する。これらの遺伝的変化の1つの効果は、細胞増殖の割合が増加すること、およびDNA合成を抑制する小分子に対する感受性を与えることである。かかる薬剤が、迅速に複製する腫瘍細胞を選択的に標的とすることがよく確立されているが、この公平なスクリーニングアプローチからこの原理が現れることを理解することが再確認される。さらに、方法論によって、遺伝的選択性に対して明確な基準を有する化合物とそうでない化合物とを容易に区別し得る。
結果は、hTERTおよびE7またはLTのいずれかの発現が、細胞をトポイソメラーゼII毒(poison)に対して感受性にすることを示した。RBの欠失または不活性化(SellersおよびKaelin, 1997, J Clin Oncol 15, 3301-12; Sherr, 2001, Nat Rev Mol Cell Biol 2, 731-7)およびテロメラーゼの活性化(HahnおよびWeinberg, 2002, Nat Rev Cancer 2, 331-41; Harley, 1994, Pathol Biol (Paris) 42, 342-5)は、大部分のヒトの癌に見出されるので、これらの観察は、部分的に、ヒト腫瘍型の多様な範囲におけるこれらの薬剤の活性を説明し得る。
出願人らは、トポイソメラーゼIの発現における2つの遺伝子の組み合わされた効果のために、カンプトテシンがSTおよび発癌性RASの両方を有する細胞に対して選択的に破壊的であることを発見した。急速に分裂する腫瘍細胞は、スーパーコイルDNAを巻き戻すためにトポイソメラーゼIを使用して継続的で急速な細胞分裂を実行(effect)する。これら2つの経路が同時に改変されるとき、トポイソメラーゼIは恐らく間接的に上方調節され、かかる腫瘍細胞はトポイソメラーゼI毒に対して感受性となる。
これらの観察は、RASV12、LTおよびhTERTと共にヒト細胞を形質転換するSTの能力の一局面が、トポイソメラーゼIの発現におけるSTおよびRASV12の効果であり得ることを示す。HRASおよびKRASの変異は、ヒトの癌の多くのタイプで説明されてきた。さらにPP2Aの成分であるPPP2R1Bの不活性化が結腸腫瘍および肺腫瘍において最近報告された(Wang et al, 1998, Science 282, 284-7)が、異なるPP2Aサブユニットの変異が、黒色腫、肺癌、乳癌および結腸癌で説明されてきた(Calin et al, 2000, Oncogene 19, 1191-5; Kohno et al, 1999, Cancer Res 59, 4170-4; Ruediger et al, 2001, Oncogene 20, 1892-9; Ruediger et al, 2001, Oncogene 20, 10-5)。現在、これら2つの経路の同時改変が、ヒト腫瘍において高い頻度で起こるかどうか、またはこれらの経路の両方が乱される(perturb)癌が、これらの化合物に対する増大した感受性を示すかどうかは不明確なままである。
さらに、出願人らは、STおよびRASV12の両方を発現する細胞に対して致死的である、エラスチン(図8参照)と称される新規の化合物を同定した。この化合物での細胞の処理は、特異性の程度を示すRASV12およびSTの両方を発現する細胞上での効果を観察するために必要とされるよりも8倍高い濃度で使用されるときでさえ、RASV12およびSTを欠いている細胞を殺傷することができなかった。エラスチンの致死効果は、一度得たら急速で、不可逆的である。
エラスチンを用いて、任意の腫瘍細胞の細胞死を誘導し得、ここで腫瘍細胞とエラスチンとの接触が細胞死をもたらす。エラスチン活性によって致死性が生じる腫瘍形成細胞としては、STおよびRASV12の両方を発現する操作された細胞などの操作された腫瘍形成細胞だけでなく、STおよびRASV12発現と無関係な活性化されたRAS経路を含む腫瘍形成細胞も含む。
出願人らは、腫瘍細胞対正常細胞の活性および選択性に対し、135のエラスチンのアナログをさらに試験した。これらのアナログのうち134は不活性だった。1つは活性があり選択的であったが、エラスチンよりも強力でなかった。この化合物をエラスチンBと名付けた(図8参照)。本発明の特定の態様において、本発明は化合物エラスチンに関する。さらなる態様において、本発明は化合物エラスチンのアナログに関し、該アナログは、操作されたヒト腫瘍形成細胞などの操作された腫瘍形成細胞に対して選択的な毒性を示す。一態様において、操作されたヒト腫瘍形成細胞に対して選択的な毒性を示すエラスチンのアナログは、エラスチンBである。特定の態様において、本発明は、本発明の化合物のラセミ混合物に関し、該混合物は、操作された腫瘍形成細胞に対して選択的な毒性を示す。
カンプトテシン(CPT)およびエラスチンの両方に対し、出願人らは、RASV12およびSTの発現で改変された経路間の相乗効果を同定した。RASV12の発現は、RAF-MEK-MAPKシグナルカスケード、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)シグナル経路およびRal-グアニン解離因子経路(Ral-GDS)を含む、いくつかのよく特徴付けられたシグナル経路の活性化を導く。これらの経路の各々はヒトの癌に関係しており、最近の研究は、これらの経路が細胞形質転換のこの系において協調して働くことを示す(Hamad et al, 2002, Genes Dev 16, 2045-57)。さらに、STは、幅広く発現するセリン-トレオニンホスファターゼであるPP2Aに結合し、それを不活性化する。STの発現の際に乱されるPP2Aの特異的酵素標的はまだ知られてないが、PP2AおよびRASで改変された経路間に実質的なオーバーラップが存在する(Millward et al, 1999, Trends Biochem Sci 24, 186-91)。エラスチンがこれら2つのシグナル経路の改変を有する細胞に死を誘導する機構をさらに理解することによって、これら2つの経路間の性質および機能的オーバーラップの程度に対する手がかりが提供され得る。
エラスチンBおよびエラスチンA以外の、本発明のエラスチンアナログは、一般式I:


(式中:
R1は、H、-Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、3〜8員環の炭素環式または複素環式、アリール、ヘテロアリールおよびC1〜4アラルキルから選択される;
R2およびR4は、各存在に対して各々独立して、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルスルホニルおよびアリールスルホニルから選択されるが、R2およびR4の両方が同じN原子上に存在し、R2もしくはR4のいずれかがアシル、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニルである条件のとき、他方はH、C1〜8アルキル、アリール、C1〜4アラルキルおよびヘテロアリールから選択されるものとする;
R3は、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択される;
Wは、

から選択される;
Qは、OおよびNR2から選択される;ならびに
Zは、各存在に対して独立的に、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルおよびC2〜6アルキニルから選択される。Zがアルケニルまたはアルキニル基であるとき、二重結合または三重結合または結合は、好ましくは基の末端に存在しない)
で表される。
特定の好ましい態様において、R2およびR4の両方が同じN原子上に存在するとき、それらは両方ともHか、または異なるかのいずれかである。
特定の態様において、R1はHである。
特定の態様において、Wは

である。
特定の態様において、R4はHまたは置換もしくは非置換低級アルキルから選択される。
特定の態様において、R1はH、Wは

であり、および
R4はHまたは置換もしくは非置換低級アルキルから選択される。
式Iの具体的な化合物としては、

が挙げられる。
本発明のさらなるエラスチンアナログは、一般式II:


(式中、
Arは、置換フェニルである;
R1は、H、C1〜8アルキル、-Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、3〜8員環の炭素環式または複素環式、アリール、ヘテロアリールおよびC1〜4アラルキルから選択される;
R2およびR4は、各存在に対して各々独立して、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルスルホニルおよびアリールスルホニルから選択されるが、R2およびR4の両方が同じN上に存在し、R2もしくはR4のいずれかがアシル、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニルである条件のとき、他方はH、C1〜8アルキル、アリール、C1〜4アラルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択されるものとする;
R3は、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択される;
R5は、それが結合する環上の0〜4個の置換基を表す:
Wは、

から選択される;
Qは、OおよびNR2から選択される;ならびに
Zは、各存在に対して独立的に、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルおよびC2〜6アルキニルから選択される。Zがアルケニルまたはアルキニル基であるとき、二重結合または三重結合または結合は、好ましくは基の末端に存在しない)
で表される。
特定の態様において、R5はハロゲンまたはニトロなどの1〜4個の置換基を表す。特定の態様において、R5は、キナゾリノン環のカルボニルに対してパラに位置する、ハロゲンまたはニトロなど、特にクロロである1つの置換基を表す。他の態様において、R5は環上で置換基を表さない(すなわち、全ての置換基は水素原子である)。
特定の態様において、Arは単置換で、ここで置換基はハロゲン、低級アルコキシ、または低級アルキルである。特定の態様において、Arはオルト位に置換基を有し、ここで置換基はハロゲン、低級アルコキシ、または低級アルキルである。特定の態様において、Arは、1つの置換基がハロゲン、低級アルコキシ、または低級アルキルであり、第二の置換基がハロゲン、低級アルコキシ、または低級アルキルであるように、2,6-二置換である。
特定の態様において、式IIの化合物は、Ar上の置換基が、キナゾリノン環の窒素への結合に対しオルト位置でエトキシであるものを含まない。さらなる態様において、式IIの化合物は、Arが、キナゾリノン環の窒素への結合に対しオルトな低級アルコキシまたは低級アルキル置換を有さないものを含まない。
式IIの化合物の特定の態様において、Arは少なくとも1つのハロゲン置換基を有する。特定の態様において、Arはオルト位置でハロゲン置換基を有する。好ましい態様において、式IIの化合物は、Arが2,6-二置換フェニル環であるものを含み、ここで置換基はハロゲン原子である。
式IIの具体的な化合物として、

が挙げられる。
本発明のさらなるエラスチンアナログは、一般式III:


(式中、
Arは、置換または非置換フェニルである;
R1は、H、C1〜8アルキル、-Z-Q-Z、-C1〜8アルキル-N(R2)(R4)、-C1〜8アルキル-OR3、3〜8員環の炭素環式または複素環式、アリール、ヘテロアリールおよびC1〜4アラルキルから選択される;
R2およびR4は、各存在に対して各々独立して、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルスルホニルおよびアリールスルホニルから選択されるが、R2およびR4の両方が同じN原子上に存在し、R2もしくはR4のいずれかがアシル、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニルである条件のとき、他方はH、C1〜8アルキル、アリール、C1〜4アラルキルおよびヘテロアリールから選択されるものとする;
R3は、H、C1〜4アルキル、C1〜4アラルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択される;
R5は、それが結合する環上の0〜4個の置換基を表す:
Wは、


から選択される;
Qは、OおよびNR2から選択される;ならびに
Zは、各存在に対して独立的に、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルおよびC2〜6アルキニルから選択される。Zがアルケニルまたはアルキニル基であるとき、二重結合または三重結合または結合は、好ましくは基の末端に存在しない)
で表される。
特定の態様において、R2およびR4は両方ともHか、または異なるかのいずれかである。
特定の態様において、R5はハロゲンまたはニトロなど、それが結合する環上の1〜4個の置換基を表す。特定の態様において、R5は、キナゾリノン環のカルボニルに対してパラに位置する、ハロゲンまたはニトロなど、特にクロロである1つの置換基を表す。他の態様において、R5は環上で置換基を表さない(すなわち、全ての置換基は水素原子である)。
特定の態様において、式IIIの化合物は、Ar上の置換基が、キナゾリノン環の窒素への結合に対しオルト位置でエトキシであるものを含まない。さらなる態様において、式IIIの化合物は、Arが、キナゾリノン環の窒素への結合に対しオルトな低級アルコキシまたは低級アルキル置換を有さないものを含まない。
本発明の好ましい態様において、Arは置換フェニルである。式IIIの化合物の特定の態様において、Arは少なくとも1つのハロゲン置換基を有する。特定の態様において、Arはオルト位置でハロゲン置換基を有する。好ましい態様において、式IIIの化合物は、Arが2,6-二置換フェニル環であるものを含み、ここで置換基はハロゲン原子である。
式IIIの具体的な化合物として、

が挙げられる。
本発明のさらなるエラスチンアナログは、一般式IV:


(式中、
Arは、置換または非置換フェニルである;
R1は、C1〜8アルキルである;
R2およびR4は、各存在に対して各々独立して、HおよびC1〜8アルキルから選択される;
R5は、それが結合する環上の0〜4個の置換基を表す:
Wは、


から選択される;ならびに
Qは、OおよびNR2から選択される)
で表される。
特定の態様において、R5はハロゲンまたはニトロなど、それが結合する環上の1〜4個の置換基を表す。特定の態様において、R5は、キナゾリノン環のカルボニルに対してパラに位置する、ハロゲンまたはニトロなど、特にクロロである1つの置換基を表す。他の態様において、R5は環上で置換基を表さない(すなわち、全ての置換基は水素原子である)。
本発明の好ましい態様において、Arは置換フェニルである。特定の態様において、Arは単置換で、ここで置換基はハロゲン、低級アルコキシ、または低級アルキルである。特定の態様において、Arはオルト位に置換基を有し、ここで置換基はハロゲン、低級アルコキシ、または低級アルキルである。特定の態様において、Arは、1つの置換基がハロゲン、低級アルコキシ、または低級アルキルであり、第二の置換基がハロゲン、低級アルコキシ、または低級アルキルであるように、2,6-二置換である。
特定の態様において、式IVの化合物は、Ar上の置換基が、キナゾリノン環の窒素への結合に対しオルト位置でエトキシであるものを含まない。さらなる態様において、式IVの化合物は、Arが、キナゾリノン環の窒素への結合に対しオルトな低級アルコキシまたは低級アルキル置換基を有さないものを含まない。
式IVの化合物の特定の態様において、Arは少なくとも1つのハロゲン置換基を有する。特定の態様において、Arはオルト位置でハロゲン置換基を有する。好ましい態様において、式IVの化合物は、Arが2,6-二置換フェニル環であるものを含み、ここで置換基はハロゲン原子である。
式IVの具体的な化合物として、

が挙げられる。
本発明のさらなるエラスチンアナログは、一般式V:


(式中、
R1は、HおよびC1〜8アルキルから選択される;
R2は、HおよびC1〜8アルキルから選択される;
R3は、ハロゲン、C1〜8アルコキシおよびC1〜8アルキルから選択される;
R4は、H、ハロゲン、C1〜8アルコキシおよびC1〜8アルキルから選択される;
R5は、H、ハロゲンおよびニトロから選択される:ならびに
nは、1または2である)
で表される。
式Vの具体的な化合物として、

が挙げられる。
式I〜Vの任意の化合物は、エラスチンおよびエラスチンアナログのために本明細書に記載される任意の方法に用いられ得る。
本発明に含まれる化合物は、本明細書に開示される化合物のエナンチオマーおよびジアステレオマーを含む。本発明はまた、塩、特に本明細書に開示される化合物の薬学的に許容され得る塩を含む。さらに本発明は、本明細書に開示される化合物の溶媒和物、水和物および多形結晶形態を含む。
適切な薬剤は、存在する形態、または完全もしくは部分代謝後において、先に述べた活性を有し得る。
本発明はまた、本発明の化合物の合成または製造を提供する。
特定の態様において、本発明は化合物A

(式中、R5およびR1は、構造式II〜Vに記載されるようなものである)の調製を提供する。特定の態様において、化合物のAの合成工程は、化合物B

および化合物C

の反応である。
特定の態様において、化合物Bと化合物Cとの反応は、アセトニトリル、DMSO、ジエチルエーテル、ブタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロメタン、スルホラン、またはジメチルホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒中で行われる。好ましい態様において、溶媒はジクロロメタン、またはジメチルホルムアミドである。特定の態様において、反応は窒素の雰囲気下で行われる。特定の態様において、ピリジン、ジイソプロピルアミン、2,6-ルチジン、トリアルキルアミン類(例えば、トリエチルアミン)、ピロリジン、イミダゾールまたはピペリジンなどの有機塩基を化合物Bの溶液に添加した後、得られる溶液に化合物Cを添加する。好ましい態様において、有機塩基は、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミンのようなアミン塩基である。好ましい態様において、反応は0〜10℃の範囲で行われる。
本発明はさらに、構造式D

(式中、R5、R1およびArは、構造式II〜Vに記載されるようなものである)の化合物の調製を提供する。特定の態様において、Dの合成工程は、化合物AとAr-NH2である化合物Eとの反応である。
特定の態様において、化合物Aと化合物Eとの反応は、アセトニトリル、DMSO、ジエチルエーテル、ブタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロメタン、スルホラン、またはジメチルホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒中で行われる。好ましい態様において、溶媒はアセトニトリルである。特定の態様において、反応は窒素の雰囲気下で行われる。特定の態様において、反応はトリクロロホスフィンの存在下で行われる。特定の態様において、反応は、例えば5〜15時間 40〜60℃の範囲で維持される。他の態様において、三塩化ホスホリルをAおよびEの攪拌した溶液に添加し、得られる混合物を加熱して、例えば1〜5時間還流させる。
本発明はまた、構造式F

(式中、R5、R1、ArおよびWは、構造式II〜Vに記載されるようなものである)の化合物の調製を提供する。特定の態様において、化合物Fの合成工程は、化合物DとHWと同等であるHNR2との反応である。特定の態様において、反応は、極性非プロトン性溶媒中で、炭酸カリウムおよびヨウ化銅、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化テトラブチルアンモニウムなどのヨード源の存在下で行われる。特定の態様において、化合物Dと炭酸カリウムは組み合わされ、HNR2の添加後にヨード源を添加する。好ましい態様において、溶媒はアセトニトリルである。特定の態様において、ヨウ化物試薬はヨウ化テトラブチルアンモニウムである;特定の態様において、ヨウ化物試薬はヨウ化ナトリウムである。特定の態様において、混合物は、例えば5〜15時間 50〜70℃の範囲で維持される。
特定の態様において、HNR2(HW)は、アミン保護基が存在する第二の窒素原子を含む。いくつかの態様において、保護基は、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメトキシカルボニル、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、または2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルであり得る。特定の態様において、反応は、極性非プロトン性溶媒中で、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、ピリジン、ジイソプロピルアミン、2,6-ルチジン、トリエチルアミン、ピロリジン、イミダゾールまたはピペリジンなどの塩基およびヨード源の存在下で行われる。特定の態様において、塩基は炭酸カリウムまたはトリエチルアミンである。特定の態様において、化合物Dと塩基は組み合わされ、HNR2の添加後にヨード源を添加する。好ましい態様において、溶媒はアセトニトリルまたはアセトンである。特定の態様において、ヨウ化物試薬はヨウ化テトラブチルアンモニウムである;特定の態様において、ヨウ化物試薬はヨウ化ナトリウムである。特定の態様において、混合物は、例えば1〜10時間 70〜90℃の範囲で維持される。添加反応の完了後、適切な脱保護反応によって、得られる生成物から保護基を除去し得る。例えば、保護基がtert-ブトキシカルボニルの場合、化合物の溶液に酸を添加すること(例えば、ジオキサン中の生成物の溶液にジオキサンの4N HClの溶液を添加すること)によって保護基を除去し得る。特定の態様において、反応を次いで、混合物を中和する前に水および有機溶媒で希釈する。特定の態様において、混合物は、炭酸ナトリウムの飽和水溶液の添加によって塩基性となる。
本発明の全ての態様は、本発明の異なる局面の下で記載されるものでさえ、1つ以上の他の態様と組合され得ることを意図する。
用語「アシル」とは当該分野で認められており、一般式ヒドロカルビルC(O)-、好ましくはアルキルC(O)-で表される基をいう。
用語「アシルアミノ」とは当該分野で認められており、アシル基で置換されたアミノ基をいい、例えば、式ヒドロカルビルC(O)NH-で表され得る。
用語「アシルオキシ」とは当該分野で認められており、一般式ヒドロカルビルC(O)O-、好ましくはアルキルC(O)O-で表される基をいう。
用語「アルコキシ」とは、結合する酸素を有するアルキル基、好ましくは低級アルキル基をいう。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。
用語「アルコキシアルキル」とは、アルコキシ基で置換されたアルキル基をいい、一般式アルキル-O-アルキルで表され得る。
用語「アルケニル」とは、本明細書で用いる場合、少なくとも1つの二重結合を含む脂肪族基をいい、「非置換アルケニル」および「置換アルケニル」の両方を含むことを意図し、その後者は、アルケニル基の1つ以上の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルケニル部分をいう。かかる置換基は、1つ以上の二重結合を含むか、または含まない1つ以上の炭素上に生じ得る。さらにかかる置換基は、安定性が妨げられる(prohibitive)場合を除いて、以下に記載されるようなアルキル基と考えられるもの全てを含む。例えば、1つ以上のアルキル基、カルボサイクリル(carbocyclyl)、アリール基、ヘテロシクリル(heterocyclyl)、またはヘテロアリール基によるアルケニル基の置換が考えられる。
用語「アルキル」とは、直鎖アルキル基、分枝アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキルで置換されたシクロアルキル基、およびシクロアルキルで置換されたアルキル基を含む飽和脂肪族基のラジカルをいう。好ましい態様において、直鎖または分枝アルキルは、その主鎖に30以下の炭素原子(例えば、直鎖に対しC1〜C30、分枝に対しC3〜C30)、好ましくは20以下を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造に3〜10個の炭素原子を有し、より好ましくは環構造に5、6または7個の炭素を有する。
さらに、用語「アルキル」(または「低級アルキル」)とは、本明細書、実施例および特許請求の範囲を通して用いる場合、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含むことを意図し、その後者は、炭化水素主鎖の1つ以上の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルキル部分をいう。かかる置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテートまたはチオフォルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロサイクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。炭化水素鎖上で置換された部分は、適切な場合、それ自体置換され得ることを当業者は理解されたい。例えば、置換アルキルの置換基としては、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(サルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、およびシリル基の置換または非置換形態、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレートおよびエステルを含む)、-CF3、-CNなどが挙げられる。具体的な置換アルキルは以下に記載される。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニルで置換されたアルキル、-CF3、-CNなどでさらに置換され得る。
用語「Cx〜y」は、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシなどの化学物質の部分と組み合わせて用いられる場合、鎖にx〜y個の炭素を含む基を含むことを意味する。例えば、用語「Cx〜yアルキル」は、例えばトリフルオロメチルおよび2,2,2-トリフルオロエチルなどのハロアルキル基を含む、鎖にx〜y個の炭素を含む直鎖アルキル基および分枝アルキル基を含む、置換または非置換飽和炭化水素基をいう。基が末端位置に存在する場合、C0アルキルは水素を示し、内部に存在する場合は結合を示す。用語「C2〜yアルケニル」および「C2〜yアルキニル」は、長さが類似した置換または非置換不飽和脂肪族基をいい、アルキルに対する可能な置換を上記するが、それぞれ少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む。
用語「アルキルアミノ」とは、本明細書で用いられる場合、少なくとも1つのアルキル基で置換されたアミノ基をいう。
用語「アルキルチオ」とは、本明細書で用いられる場合、アルキル基で置換されたチオール基をいい、一般式アルキルS-で表され得る。
用語「アルキニル」とは、本明細書で用いられる場合、少なくとも1つの三重結合を含む脂肪族基をいい、「非置換アルキニル」および「置換アルキニル」の両方を含むことを意図し、その後者は、アルキニル基の1つ以上の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルキニル部分をいう。かかる置換基は、1つ以上の三重結合を含むか、または含まない1つ以上の炭素上に生じ得る。さらにかかる置換基は、安定性が妨げられる場合を除いて、上記されるようなアルキル基と考えられるもの全てを含む。例えば、1つ以上のアルキル基、カルボサイクリル、アリール基、ヘテロサイクリル、またはヘテロアリール基によるアルキニル基の置換が考えられる。
用語「アミド」とは、本明細書で用いられる場合、

(式中、R9およびR10は各々独立して、水素もしくはヒドロカルビル基を表すか、またはR9およびR10は、それが結合するN原子と一緒になって、環構造に4〜8原子を有する複素環を形成する)基をいう。
用語「アミン」および「アミノ」とは当該分野で認められており、非置換および置換アミンおよびその塩、例えば、

(式中、R9、R10およびR10’は各々独立して、水素もしくはヒドロカルビル基を表すか、またはR9およびR10は、それが結合するN原子と一緒になって、環構造に4〜8原子を有する複素環を形成する)で表され得る部分をいう。
用語「アミノアルキル」とは、本明細書で用いられる場合、アミノ基で置換されたアルキル基をいう。
用語「アラルキル」とは、本明細書で用いられる場合、アリール基で置換されたアルキル基をいう。
用語「アリール」とは、本明細書で用いられる場合、環の各原子が炭素である置換または非置換単環芳香族基を含む。好ましくは、該環は5〜7員環、より好ましくは6員環である。用語「アリール」はまた、2つ以上の炭素が2つの隣接環と共通する2つ以上の環式環を有する多環式環系も含み、ここで環の少なくとも1つが芳香族であり、例えば他の環式環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/または複素環であり得る。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが挙げられる。
用語「カルバメート」とは当該分野で認められており、

(式中、R9およびR10は独立して、水素またはヒドロカルビル基を表す)基をいう。
用語「炭素環(carbocycle)」、「カルボサイクリル」および「炭素環」とは、本明細書で用いられる場合、環の各原子が炭素である非芳香族飽和環または不飽和環をいう。好ましくは、炭素環は3〜10個の原子、より好ましくは5〜7個の原子を含有する。
用語「カルボサイクリルアルキル」は、本明細書で使用する場合、炭素環基で置換されたアルキル基のことをいう。
用語「炭酸塩」は当該分野で認識され、-OCO2-R9基のことをいい、式中R9はヒドロカルビル基を表す。
用語「カルボキシ」は、本明細書で使用する場合、式-CO2Hで表される基のことをいう。
用語「エステル」は、本明細書で使用する場合、-C(O)OR9基のことをいい、式中R9はヒドロカルビル基を表す。
用語「エーテル」は、本明細書で使用する場合、酸素を介して別のヒドロカルビル基に結合したヒドロカルビル基のことをいう。従ってヒドロカルビル基のエーテル置換は、ヒドロカルビル-O-であり得る。エーテルは左右対称か左右非対称のいずれかであり得る。エーテルの例としては、限定されないが、複素環-O-複素環およびアリール-0-複素環が挙げられる。エーテルには「アルコキシアルキル」基が含まれ、一般式アルキル-O-アルキルで表され得る。
用語「ハロ」および「ハロゲン」は、本明細書で使用する場合、ハロゲンを意味し、塩素、フッ素、臭素及びヨードが挙げられる。
用語「ヘタラルキル(hetaralkyl)」および「ヘテロアラルキル」は、本明細書で使用する場合、ヘタリール(hetaryl)基で置換されたアルキル基のことをいう。
用語「ヘテロアリール」および「ヘタリール」としては、環構造中に少なくとも一個のヘテロ原子、好ましくは1〜4個のヘテロ原子、より好ましくは1または2個のヘテロ原子を含む、置換または非置換の芳香族単環構造、好ましくは5〜7員環、より好ましくは5〜6員環が挙げられる。用語「ヘテロアリール」および「ヘタリール」としてはまた、2個以上の炭素が隣接する二つの環に共有される、二つ以上の環を有する多環系が挙げられ、ここで環の少なくとも一つはヘテロ芳香族であり、例えば、他の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る。ヘテロアリール基としては、例えばピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン等が挙げられる。
用語「ヘテロ原子」は、本明細書で使用する場合、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は窒素、酸素、および硫黄である。
用語「ヘテロシクリル」、「複素環」、および「複素環式」は、環構造が少なくとも一つのヘテロ原子、好ましくは1〜4個のヘテロ原子、より好ましくは1または2個のヘテロ原子を含む、置換または非置換の非芳香族環構造、好ましくは3〜10員環、より好ましくは3〜7員環のことをいう。用語「ヘテロシクリル」および「複素環式」としてはまた、2個以上の炭素が隣接する二つの環に共有される、二つ以上の環を有する多環系が挙げられ、ここで環の少なくとも一つは複素環式であり、例えば、他の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る。ヘテロシクリル基としては、例えばピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルフォリン、ラクトン、ラクタム等が挙げられる。
用語「ヘテロシクリルアルキル」は、本明細書で使用する場合、複素環基で置換されたアルキル基のことをいう。
用語「ヒドロカルビル」は、本明細書で使用する場合、=Oまたは=S置換基を有さない炭素原子を介して結合される基のことをいい、通常少なくとも一つの炭素-水素結合および主に炭素骨格を有するが、随意にヘテロ原子を含み得る。従って、メチル、エトキシエチル、2-ピリジル、およびトリフルオロメチル等の基は本願の目的のためのヒドロカルビルであると考えられるが、アセチル(結合している炭素上に=O置換基を有する)およびエトキシ(炭素ではなく酸素を介して結合する)等の置換基はヒドロカルビルであるとは考えられない。ヒドロカルビル基としては限定されないが、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびそれらの組合せが挙げられる。
用語「ヒドロキシアルキル」は、本明細書で使用する場合、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基のことをいう。
用語「低級」は、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシ等の化学部分と組み合わせて使用する場合、置換基中に10個以下、好ましくは6個以下の水素ではない原子が存在する基を含むことを意味する。例えば「低級アルキル」は10個以下、好ましくは6個以下の炭素原子を含有するアルキル基のことをいう。特定の態様において、本明細書で定義されるアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシ置換基はそれぞれ、単独または他の置換基、詳細にはヒドロキシアルキルおよびアラルキル等と組み合わせて存在しようとなかろうとも(例えばアルキル置換基中の炭素原子を数える際にアリール基中の原子を数えない場合)、低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニルまたは低級アルコキシである。
用語「ポリシクリル(polycyclyl)」、「多環」、および「多環式」とは、2個以上の原子が隣接する環、例えば「縮合環」である二つの環に共有される、二つ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリル)のことをいう。多環中のそれぞれの環は置換または非置換され得る。特定の態様において、多環のそれぞれの環は、環中に3〜10個、好ましくは5〜7個の原子を含有する。
用語「置換される」とは主鎖の一つ以上の炭素上の水素を置換する置換基を有する部分のことをいう。「置換(substitution)」または「〜に置換される」は、かかる置換が置換された原子および置換基の許容される原子価に従うこと、および該置換により、例えば転位、環状化、脱離等により自発的に成分置換(transformation)を受けないような安定な化合物が生じることといった暗黙を含むことが理解されよう。用語「置換される」とは、本明細書で使用する場合、有機化合物の全ての許容され得る置換を含むことが企図される。広い局面において、許容され得る置換基としては、非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の有機化合物置換基が挙げられる。許容され得る置換基は、適切な有機化合物に関して一つ以上であり、同じ物または異なる物であり得る。本発明の目的のために、窒素等のヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物の水素置換基および/または任意の許容され得る置換基を有し得る。置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル等)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメート等)、アルコキシ、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロサイクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族機部分の本明細書に記載される任意の置換基が挙げられ得る。適切であるならば、炭化水素鎖上で置換される部分自体が置換され得ることが当業者に理解されよう。
特に「非置換」との記載がない限り、本明細書中の化学部分に関する言及は置換バリアントを含むと理解される。例えば、「アリール」基または機能基に関する参照は、暗黙のうちに置換および非置換バリアントの両方を含む。
用語「サルフェート(sulfate)」は当該分野で認識され、-OSO3H基またはその薬学的に許容され得る塩のことをいう。
用語「スルホンアミド」は当該分野で認識され、一般式


(式中R9およびR10は独立して水素またはヒドロカルビルを表す)により表される基のことをいう。
用語「スルホキシド」は当該分野で認識され、式中R9がヒドロカルビルを表す-S(O)-R9基のことをいう。
用語「スルホネート(sulfonate)」は当該分野で認識され、SO3H基またはその薬学的に許容され得る塩のことをいう。
用語「スルホン」は当該分野で認識され、式中R9がヒドロカルビルを表す-S(O)2-R9基のことをいう。
用語「チオアルキル」は、本明細書で使用する場合、チオール基で置換されるアルキル基のことをいう。
用語「チオエステル」は、本明細書で使用する場合、式中R9がヒドロカルビルを表す-C(O)SR9基または-SC(O)R9基のことをいう。
用語「チオエーテル」は、本明細書で使用する場合、酸素が硫黄に置き換えられたエーテルの均等物である。
用語「尿素」は当該分野で認識され、一般式


(式中R9およびR10は独立して水素またはヒドロカルビルを表す)で表され得る。
用語「有機低分子」とは2000amu未満の分子量を有する非重合化合物のことをいう。通常、かかる分子は1000amu未満、500amu未満等の分子量を有する。
遺伝子型選択的化合物についての標的の同定方法
特定の態様において、本発明は、疾患細胞の表現型の付与に関係する標的(本明細書で「細胞成分」(例えばタンパク質、核酸、または脂質)ともいわれるを同定する、本明細書で「リガンド」(例えばエラスチン)ともいわれる目的の遺伝子型選択的化合物の使用に関する。
一態様において、本発明は腫瘍形成に関係のある細胞成分を同定する方法であり、ここで遺伝子工学により作製されたヒト腫瘍形成細胞等の腫瘍形成細胞、組織、器官、生物またはそれらの溶解物もしくは抽出物を目的の抗腫瘍化合物と接触させ、接触後にエラスチンと(直接または間接的に)相互作用する細胞成分を同定し、腫瘍形成に関係のある細胞成分の同定をもたらす方法を提供する。別の態様において、本発明は腫瘍形成に関係のある細胞成分を同定する方法を提供する。この方法において、(a)遺伝子工学により作製されたヒト腫瘍形成細胞等の腫瘍形成細胞、組織、器官、生物またはそれらの溶解物もしくは抽出物をエラスチンのインヒビターと接触させてエラスチンと接触させ、(b)エラスチンのインヒビターと(直接または間接的に)相互作用する、腫瘍形成に関係する細胞成分を同定する。該細胞はエラスチンおよびエラスチンのインヒビターと連続して、または同時に接触され得る。エラスチンまたは本発明の任意の薬剤と相互作用する細胞成分を公知の方法により同定し得る。
本明細書に記載される場合、これらの方法の目的の化合物(またはリガンド)は任意の化学的方法により生成され得る。あるいは、目的の化合物はインビボまたはインビトロで合成される、天然に存在する生体分子であり得る。該リガンドは別の化合物を用いて随意に誘導し得る。この改変の一つの利点は、例えばリガンドと標的の分離後、誘導された化合物を用いてリガンド標的複合体の回収またはリガンドの回収が容易になり得るということである。誘導される基の非限定的な例としては、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位元素、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ、光活性化クロスリンカー(photoactivatible crosslinkers)またはそれらの任意の組合せが挙げられる。誘導される基はまた、検出を容易にするために、標的(例えばエラスチン結合タンパク質)と共に使用され得る。
本発明によれば、標的(細胞成分)はインビボまたはインビトロで合成される、天然に存在する生体分子であり得る。標的は、アミノ酸、核酸、糖、脂質、天然の産物またはそれらの任意の組合せで構成され得る。本発明の利点は、標的の同定または機能の従来の知識が必要ではないことである。
リガンドと標的の間の相互作用は共有結合性または非共有結合性であり得る。随意に、リガンド-標的対のリガンドは、他の標的に親和性を示し得るかまたは示し得ない。リガンド-標的対の標的は、他のリガンドに親和性を示し得るかまたは示し得ない。
例えば、リガンドと標的の間の結合は、光架橋(photo-crosslinking)、放射性標識リガンド結合、および親和性クロマトグラフィーを含むインビトロの生化学的方法を用いて、タンパク質レベルで同定され得る(Jakoby WB et al., 1974, Methods in Enzymology 46: 1)。あるいは、低分子を適切な固形支持体またはアガロースマトリックス等の親和性マトリックス上に固定して使用し、種々の細胞型および生物の抽出物をスクリーニングし得る。同様に、低分子を細胞、組織、器官、生物またはそれらの溶解物もしくは抽出物に接触し得、その後固形支持体を添加して低分子を回収し得、標的タンパク質を結合し得る。
発現クローニングを用いて、タンパク質の小プール中の標的について試験し得る(King RW et. al., 1997, Science 277:973)。発現クローニングにペプチド(Kieffer et. al., 1992, PNAS 89:12048)、ヌクレオシド誘導体(Haushalter KA et. al., 1999, Curr. Biol. 9:174)、および薬物-ウシ血清アルブミン(薬物-BSA)コンジュゲート(Tanaka et. al., 1999, Mol. Pharmacol. 55:356)を用いた。
リガンド結合を、標的をコードするDNAと密接に関連付ける別の有用な技術はファージディスプレイである。モノクローナル抗体の分野で主に使用されるファージディスプレイにおいて、ペプチドまたはタンパク質ライブラリーをウイルス表面上に生成し、活性についてスクリーニングする(Smith GP, 1985, Science 228:1315)。ファージは、固相に連結される標的に関して選り分けられる(Parmley SF et al., 1988, Gene 73:305)。ファージディスプレイの利点の一つは、cDNAがファージ中に存在するので、別のクローニング工程が必要でないことである。
非限定的な例としては、リガンドが、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、放射性同位体、ヒスチジンタグ、磁気ビーズ、酵素またはそれらの組合せ等のマーカーを含む結合反応条件が挙げられる。本発明の一態様において、標的に結合するリガンドを検出するアッセイ等のメカニズムベースアッセイで標的をスクリーニングし得る。これはリガンドもしくはタンパク質のいずれかとの固相または液相結合事象、または検出されるいずれかの指標を含み得る。あるいは、これまでに機能が未定義のタンパク質をコードする遺伝子を、レポーターシステム(例えば、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質)と共に細胞にトランスフェクトし得、ライブラリーに対して好ましくは、ハイスループットスクリーニングによって、またはライブラリーの個々のメンバーを用いてスクリーニングし得る。例えば、酵素活性に対する効果を測定する生化学アッセイ、標的およびレポーターシステム(例えば、ルシフェラーゼまたはβガラクトシダーゼ)が細胞に導入される細胞ベースアッセイ、ならびに自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイ等の、他のメカニズムベース結合アッセイが使用され得る。ウェル、ビーズもしくはチップに固定されるかまたは固定化抗体により捕捉されるかまたはキャピラリー電気泳動により分離される標的を用いて結合アッセイを実行し得る。通常、結合したリガンドは、比色定量または蛍光または表面プラスモン共鳴を用いて検出され得る。
特定の態様において、本発明はさらに、本発明により同定される標的(細胞成分)の機能(例えば活性または発現)を調節することにより疾患(例えば癌)を処置または予防する方法を想定する。例示するために、標的が腫瘍増殖を促進すると同定される場合、治療剤を用いて標的の機能(活性または発現)を緩和または低減し得る。あるいは、標的が腫瘍増殖を阻害すると同定される場合、治療剤を用いて標的の機能(活性または発現)を増強し得る。治療剤としては、限定されないが、抗体、核酸(例えばRNA干渉のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは低分子阻害RNA)、タンパク質、低分子(例えば本発明の化合物)またはペプチド模倣物が挙げられる。
エラスチン標的
特定の態様において、本発明は、本明細書で一般的にエラスチン標的といわれる、エラスチンおよびエラスチンアナログの標的を提供する。エラスチン標的は直接または間接的に、上述のエラスチンまたはエラスチンアナログに結合し得る。随意に、エラスチン標的は細胞中のエラスチンまたはエラスチンアナログ等の化合物の抗腫瘍活性を仲介し得る。例示的なエラスチン標的としては、限定されないが、VDAC1、VDAC2、VDAC3、プロヒビチン、リボホリン、Sec61、およびSec22bが挙げられる。
電位依存性アニオンチャネル(VDAC)は、異なる遺伝子にコードされる、哺乳動物組織内で発現される少なくとも三つのタンパク質産物(VDAC1、VDAC2およびVDAC3)を有する孔形成タンパク質のファミリーである。VDACの主に理解されている機能的な役割は、ミトコンドリア外膜(ODF)の透過性をほとんどなしにすることである。例えばShoshan-Barmatz et al., 2003, Cell Biochem Biophys 39:279〜92を参照。VDAC2およびVDAC3は、ミトコンドリアよりもODFにおいて選択的な構造的構成および異なる機能を有し得る(Hinsch et al., 2004, J Biol Chem. 279:15281〜8)。様々な種の代表的なVDAC配列はGenBankに寄託されている。例えば、ヒトVDAC1アミノ酸配列および核酸配列はGenBank受託番号NP_003365およびNM_003374に見出され得、ヒトVDAC2アミノ酸配列および核酸配列はGenBank受託番号NP_003366およびNM_003375に見出され得、ヒトVDAC3アミノ酸配列および核酸配列はGenBank受託番号NP_005653およびNM_005662に見出され得る。
プロヒビチンは、進化的に保存された、遍在的に発現する遺伝子である。プロヒビチンは細胞増殖のネガティブ調節因子であると考えられており、腫瘍抑制因子であり得る(例えばFusaro et al., 2003, J. Biol. Chem. 278:47853〜47861;Fusaro et al., 2002, Oncogene 21:4539〜4548)。様々な種の代表的なプロヒビチン配列はGenBankに寄託されている。例えば、ヒトプロヒビチンアミノ酸配列および核酸配列はGenBank受託番号NP_002625およびNM_002634に見出され得る。
リボホリン(例えばIおよびII)は、リボソーム結合に関与すると思われるタンパク質である。それらは粗面小胞体の膜に専ら局在する、豊富な、高度に保存された糖タンパク質である(例えばFu et al., 2000, J. Biol. Chem. 275:3984〜3990;Crimaudo et al., 1987, EMBO J. 6:75〜82)。様々な種の代表的なリボホリン配列はGenBankに寄託されている。例えば、ヒトリボホリンIアミノ酸配列および核酸配列はGenBank受託番号NP_002941およびNM_002950に見出され得、ヒトリボホリンIIアミノ酸配列および核酸配列はGenBank受託番号NP_002942およびNM_002951に見出され得る。
Sec61αタンパク質は、分泌ポリペプチドおよび膜ポリペプチドの小胞体への挿入の役割を担うと提唱される(例えばHigy et al., 2004, Biochemistry 43:12716〜22参照)。様々な種の代表的なSec61α配列はGenBankに寄託されている。例えば、ヒトSec61αIアミノ酸配列および核酸配列はGenBank受託番号NP_037468およびNM_013336に見出され得、ヒトSec61αIIアミノ酸配列および核酸配列はGenBank受託番号NP_060614およびNM_018144に見出され得る。
Sec22βタンパク質は、ER-ゴルジタンパク質輸送およびSNAREとの複合体における役割を担うと提唱される(例えば、Parlati et al., 2000, Nature 407:194〜198;Mao et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:8175〜8180)。様々な種の代表的なSec61β配列はGenBankに寄託されている。例えばヒトSec61βアミノ酸配列および核酸配列はGenBank受託番号NP_004883およびNM_004892に見出され得る。
特定の態様において、本発明は、エラスチン標的の使用による候補抗腫瘍治療剤の同定方法に関する。かかる方法において、エラスチン標的に結合するかまたはエラスチン標的の機能(例えば活性または発現または相互作用)を増加もしくは減少する試験薬剤を候補抗腫瘍治療剤として同定し得る。候補抗腫瘍治療剤はさらに、その抗腫瘍活性についてインビボまたはインビトロで試験され得る。候補抗腫瘍治療剤を同定する方法は、上述のスクリーニング方法によって同様に実行され得る。
送達方法
本発明の特定の態様は、任意の標準的分子生物学技術および分子医学技術により完成され得る、タンパク質(例えば低分子t抗原、VDAC、PP2Aインヒビター等)またはかかるタンパク質をコードするDNAを標的細胞に送達する方法を使用する。以下に例示される態様は、わずかではあるがかかる目的に使用され得る技術である。
本発明の一局面において、目的タンパク質またはアンチセンス分子の生成のための発現構築物は、任意の生物学的に有効な担体、例えばインビボにおいて組換え遺伝子で細胞を効果的にトランスフェクトし得る任意の製剤または組成物として投与され得る。アプローチとしては、組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、および単純ヘルペスウイルス1を含むウイルスベクターまたは組換え細菌プラスミドもしくは組換え真核生物プラスミド中の目的の遺伝子の挿入が挙げられる。ウイルスベクターを用いて細胞を直接トランスフェクトし得、プラスミドDNAは、例えばカチオン性リポソーム(例えばリポフェクチン)もしくは誘導物(例えば、抗体共役化物)、ポリリシンコンジュゲート、グラミシジン(gramacidin)S、人工ウイルスエンベロープもしくは他のかかる細胞内担体の補助、ならびにインビボで行なわれる遺伝子構築物の直接挿入またはCaPO4沈殿により送達され得る。適切な標的細胞の形質導入が遺伝子治療の決定的な最初の工程を示すため、特定の遺伝子送達系の選択が目的とする標的の表現型および例えば局所または全身の投与の経路のような因子に依存することが理解されよう。
目的のタンパク質の一つをコードする核酸の細胞へのインビボ導入のための好ましいアプローチは、核酸、例えば遺伝子産物をコードするcDNAを含有するウイルスベクターの使用による。ウイルスベクターを用いた細胞の感染は、大部分の標的とされた細胞が核酸を受け得るという利点を有する。さらに、ウイルスベクター中にコードされる分子は、例えばウイルスベクターに含有されるcDNAによって、ウイルスベクターの核酸を取り込んだ細胞で効率的に発現される。
レトロウイルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクターは一般的に、インビボ、特にヒトへの外因性遺伝子の移入のための、選り抜きの組換え遺伝子送達系であると理解される。これらのベクターは細胞への効率的な遺伝子の送達を提供し、移入された核酸は宿主の染色体DNAに安定に組み込まれる。「レンチウイルス」と呼ばれるレトロウイルスファミリーの亜集団の長時間の潜伏段階後の組み込みは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)に示される。これらのウイルスの両方に由来するベクター系は前臨床モデルで効果的に使用されており、治療応用のための大きな見込みを示す(Humeau et al., Mol Ther. 2004, 9(6):902〜13;Curran et al., Mol Ther. 2000, 1(1):31〜8;EngelおよびKohn, Front Biosci. 199, 4:e26〜33)。ほとんどのレトロウイルスと異なり、HIVおよびFIV(およびそれら由来のベクター)は非分裂細胞に形質導入する能力を有する(Humeau et al., Mol Ther. 2004, 9(6):902〜13;Curran et al., Mol Ther. 2000, 1(1):31〜8)。この特性は標的細胞の型によっては有利であり得る。さらに、FIVはその高いトランスジーン保持能力によって、自身を他のレトロウイルスと区別し得る(Curran et al., Mol Ther. 2000, 1(1):31〜8)。レトロウイルスの使用の主要な先行条件は、特に細胞集団中での野生型ウイルスの拡散の可能性に関してそれらの使用の安全性を保証することである。複製欠損レトロウイルスのみを産生する特殊化した細胞株(「パッケージング細胞」という)の開発は遺伝子治療のためのレトロウイルスの高い有用性を高め、欠損レトロウイルスは遺伝子治療目的の遺伝子移入における使用について良く特徴付けられる(Miller, A.D., Blood 76:271, 1990を概説として参照)。従って、レトロウイルスコーディング配列(gag、pol、env)の部分が目的のポリペプチドをコードする核酸で置き換えられ、レトロウイルスを複製欠損とする組換えレトロウイルスが構築され得る。次いで、複製欠損レトロウイルスをビリオンに封入し、それを用いて標準的な技術によりヘルパーウイルスを用いることで標的細胞に感染させ得る。組換えレトロウイルスを作製するため、およびかかるウイルスを用いてインビボまたはインビトロで細胞を感染させるためのプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.M. et al., (編), John Wiley & Sons, Inc., Greene Publishing Associates, (2001), セクション9.9〜9.14および他の標準的な研究室マニュアルに見出され得る。適切なレトロウイルスの例としては、当業者に周知であるpLJ、pZIP、pWEおよびpEMが挙げられる。エコトロピックおよび両栄養性のレトロウイルス系の両方を調製するための適切なパッケージングウイルス株の例としては、ψCrip、ψCre、ψ2およびψAmが挙げられる。レトロウイルスを使用して種々の遺伝子が、インビトロおよび/またはインビボにおいて神経細胞、表皮細胞、内皮細胞、リンパ球、筋芽細胞、肝細胞、骨髄細胞を含む多くの異なる細胞型に導入されている(例えば、Eglitis et al., Science 230:1395〜1398, 1985;DanosおよびMulligan, PNAS USA 85:6460〜6464, 1988;Wilson et al., PNAS USA 85:3014〜3018, 1988;Armentano et al., PNAS USA 87:6141〜6145, 1990;Huber et al., PNAS USA 88:8039〜8043, 1991;Ferry et al., PNAS USA 88:8377〜8381, 1991;Chowdhury et al, Science 254:1802〜1805, 1991;van Beusechem et al., PNAS USA 89:7640〜7644, 1992;Kay et al., Human Gene Therapy 3:641〜647, 1992;Dai et al., PNAS USA 89:10892〜10895, 1992;Hwu et al., J. Immunol. 150:4104〜4115, 1993;米国特許第4,868,116号;米国特許第4,980,286号;PCT出願WO 89/07136;PCT出願WO 89/02468;PCT出願WO 89/05345;ならびにPCT出願WO 92/07573参照)。
さらに、ウイルス粒子表面上のウイルスパッケージングタンパク質を改変することで、レトロウイルスおよび結果的にレトロウイルスベースベクターの感染スペクトルを制限することが可能であると示されている(例えばPCT公開公報WO93/25234、WO94/06920、およびWO94/11524参照)。例えば、レトロウイルスベクターの感染スペクトルの改変のための戦略としては、細胞表面抗原に特異的な抗体をウイルスenvタンパク質にカップリングすること(Roux et al., PNAS USA 86:9079〜9083, 1989;Julan et al., J. Gen Virol 73:3251〜3255, 1992;およびGoud et al., Virology 163:251〜254, 1983)、または細胞表面リガンドをウイルスenvタンパク質にカップリングすること(Neda et al., J. Biol. Chem. 266:14143〜14146, 1991)が挙げられる。カップリングとは、タンパク質または他の変形を用いた化学的架橋の形態(例えばラクトースでenvタンパク質をアシアロ糖タンパク質に変換する)、および融合タンパク質(例えば、単鎖抗体/env融合タンパク質)を生成することによってであり得る。この技術は制限されるかまたは制限されなくとも有用であるが、特定の組織型に対する感染を制限するかまたは感染を指向し、また、これを用いてエコトロピックなベクターを両栄養性のベクターに転換し得る。
本発明に有用な別のウイルス遺伝子送達系には、アデノウイルス由来のベクターが利用される。アデノウイルスのゲノムは操作され得て目的の遺伝子産物をコードするようになるが、通常の溶解ウイルス生活環におけるその複製能力に関しては不活性である(例えば、Berkner et al., BioTechniques 6:616, 1988;Rosenfeld et al., Science 252:431〜434, 1991;およびRosenfeld et al., Cell 68:143〜155, 1992参照)。アデノウイルス株Ad型5 dl324またはアデノウイルスの他の株(例えばAd2、Ad3、Ad7等)に由来する適切なアデノウイルスベクターは当業者に周知である。組換えアデノウイルスは、それらが非分裂細胞に感染し得ないという点の特定の状況で有利であり得、それらを用いて気道上皮(上述で引用したRosenfeld et al., (1992))、内皮細胞(Lemarchand et al., PNAS USA 89:6482〜6486, 1992)、肝細胞(HerzおよびGerard, PNAS USA 90:2812〜2816, 1993)、および筋肉細胞(Quantin et al., PNAS USA 89:2581〜2584, 1992)を含む広い種類の細胞型に感染させ得る。さらに、ウイルス粒子は比較的安定で精製および濃縮に対して影響を受け易く、上述のように、改変して感染のスペクトルに影響を与え得る。さらに、導入されたアデノウイルスのDNA(およびアデノウイルスDNAに含有された外来DNA)は宿主細胞のゲノムに組み込まれないがエピソームに残るので、導入されたDNAが宿主のゲノム(例えばレトロウイルスDNA)に取り込まれる場合に挿入性突然変異の結果として生じ得る潜在的な問題を免れる。さらに、アデノウイルスゲノムの外来DNAの保持能力は、他の遺伝子送達ベクターと比べると大きい(8kベースまで)(Berkner et al.,上述;Haj-AhmandおよびGraham J., Virol. 57:267, 1986)。現在、使用されており、従って本発明で好ましいほとんどの複製欠損アデノウイルスベクターはウイルスのE1およびE3遺伝子の全部または部分について欠失しているが、80%ほどのアデノウイルス遺伝子材料を保持する(例えばJones et al., Cell 16:683, 1979;Berkner et al.,上述;およびMethods in Molecular BiologyのE.J. Murray, 編. Graham et al., (Humana, Clifton, NJ, 1991) vol. 7. pp. 109-127参照)。挿入された目的の遺伝子の発現は、例えばE1Aプロモーター、主要後期プロモーター(MLP)および関連のリーダー配列、ウイルス性E3プロモーターまたは外因性の付加されたプロモーター配列の制御下にあり得る。
目的の遺伝子の送達に有用な、さらに別のウイルスベクター系はアデノ関連ウイルス(AAV)である。アデノ関連ウイルスは、効率的な複製および増殖性生活環のためのヘルパーウイルスとして、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス等の別のウイルスを必要とする、天然に存在する欠損ウイルスである。(概説についてMuzyczka et al., Curr. Topics in Micro. Immunol. (1992) 158:97〜129, 1992参照)。アデノ関連ウイルスはまた、自身のDNAを非分裂細胞に組み込み得る、いくつかのウイルスの一つであり、高頻度の安定な組み込みを示す(例えばFlotte et al., Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 7:349〜356, 1992;Samulski et al., J. Virol. 63:3822〜3828, 1989;およびMcLaughlin et al., J. Virol. 62:1963〜1973, 1989参照)。300塩基対程度のAAVを含有するベクターはパッケージされ得、組み込まれ得る。外来性のDNAのためのスペースは約4.5kbまでに制限される。Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5:3251〜3260, 1985に記載されるもの等のAAVベクターを用いて細胞にDNAを導入し得る。AAVベクターを用いて種々の核酸が異なる細胞型に導入されている(例えばHermonat et al., PNAS USA 81:6466〜6470, 1984;Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 4:2072〜2081, 1985;Wondisford et al., Mol. Endocrinol. 2:32〜39, 1988;Tratschin et al., J. Virol. 51:611〜619, 1984;およびFlotte et al., J. Biol. Chem. 268:3781〜3790, 1993参照)。
遺伝子治療において応用を有し得る他のウイルスベクター系は、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、およびいくつかのRNAウイルスに由来している。特に、ヘルペスウイルスベクターは、中枢神経系および眼組織の細胞における目的の組換え遺伝子の持続性について独特の戦略を提供し得る(Pepose et al., Invest Ophthalmol Vis Sci 35:2662〜2666, 1994)。
上記で説明したようなウイルス移入法に加えて、非ウイルス性の方法を用いても、動物の組織において目的のタンパク質の発現を生じさせ得る。遺伝子移入のほとんどの非ウイルス性の方法は、巨大分子の取り込みおよび細胞内輸送について哺乳動物細胞に使用される通常の機構に依存する。好ましい態様において、本発明の非ウイルス性遺伝子送達系は、標的細胞による目的の遺伝子の取り込みのためのエンドサイトーシス型の経路に依存する。この型の例示的な遺伝子送達系としては、リポソーム由来の系、ポリリシンコンジュゲート、および人工のウイルスエンベロープが挙げられる。
代表的な態様において、目的のポリペプチドをコードする遺伝子は、表面が正に帯電したリポソーム(例えばリポフェクチン)に捕捉され得、(随意に)リポソームは標的組織の細胞表面抗原に対する抗体で標識される(Mizuno et al., No Shinkei Geka 20:547〜551, 1992;PCT公開公報WO91/06309;日本特許出願1047381;および欧州特許公報EP-A-43075)。例えば、神経グリオーム細胞のリポフェクションはグリオーム関連抗原に対するモノクローナル抗体で標識されたリポソームを用いて行なわれ得る(Mizuno et al., Neurol. Med. Chir. 32:873〜876, 1992)。
さらに別の例示的な態様において、遺伝子送達系は、ポリリシン等の遺伝子結合剤に架橋される抗体または細胞表面リガンドを含む(例えばPCT公開公報WO93/04701、WO92/22635、WO92/20316、WO92/19749、およびWO92/06180参照)。例えば、ポリカチオン、例えばポリリシン(米国特許5,166,320号参照)にコンジュゲートした抗体を含む可溶性ポリヌクレオチド担体を用いて、目的の遺伝子構築物がインビボにおいて特定の細胞をトランスフェクトするために使用され得る。ペプチド仲介エンドサイトーシスを介した目的の核酸構築物の効果的な送達が、エンドソーム構造からの遺伝子の回避を促進する因子を用いて改善され得ることも理解されよう。例えば、完全アデノウイルスまたはインフルエンザHA遺伝子産物の膜融合性(fusogenic)ペプチドを送達系の一部として使用してDNA含有エンドソームの効果的な崩壊を誘導し得る(Mulligan et al., Science 260〜926, 1993;Wagner et al., PNAS USA 89:7934, 1992;およびChristiano et al., PNAS USA 90:2122, 1993)。
臨床的な設定において、遺伝子送達系は、それぞれ当該分野で公知である任意の多くの方法によって患者に導入され得る。例えば遺伝子送達系の医薬製剤は、例えば静脈注射によって全身に導入され得、標的細胞における構築物の特異的な形質導入は主に、遺伝子送達ビヒクル、遺伝子の発現を制御する転写調節配列による細胞型発現または組織型発現またはそれらの組合せにより提供されるトランスフェクションの特異性によって生じる。他の態様において、組換え遺伝子の最初の送達は、完全に局在している動物への導入によってさらに制限される。例えば、遺伝子送達ビヒクルはカテーテルによって(米国特許5,328,470号参照)、または定位固定注射によって(例えばChen et al., PNAS USA 91:3054〜3057, 1994)導入され得る。
また、目的のタンパク質は、「トランスサイトーシス」、例えば標的細胞によるペプチドの取り込みを促進する、第二のペプチドとの融合ペプチドとして提供され得る。例示するために、目的のタンパク質は、HIVタンパク質Tatの全部またはN末端ドメインのフラグメント、例えばトランスサイトーシスを促進し得るTatの残基1〜72またはより小さなそのフラグメントとの融合ポリペプチドの一部として提供され得る。他の態様において、目的のポリペプチドはアンテナペディアIIIタンパク質の全部または一部と共に融合ポリペプチドとして提供され得る。合成ペプチドはまたは、血液脳関門を含む生物膜を通過するタンパク質、ペプチドおよび低分子の輸送に効果的に使用されており、従って本出願に応用し得る。(Rothbard et al., Nat Med. 2000, 6(11):1253〜7;Rothbard et al., J Med Chem. 2002, 45(17):3612〜8)。提供された合成タンパク質の導入配列の例が高密度のアルギニン残基を特徴とするが、他の機能的に類似であるが構造的には異なる分子または配列が代用され得る。
さらに例示するために、目的のポリペプチド(またはペプチド模倣物)は、目的のポリペプチドの細胞内局在を容易にするために細胞膜を通過する目的のポリペプチド配列の細胞外形態のトランスロケーションを作動させる異種ペプチド配列(「内在化ペプチド」または「内在化ドメイン」)を含むキメラペプチドとして提供され得る。このことに関して、治療用の目的のポリペプチドは、細胞内において活性なものである。内在化ペプチドはそれ自身、比較的高い割合で、例えばトランスサイトーシスにより細胞膜を通過し得る。内在化ペプチドは随意に切断可能な様式で、例えば融合タンパク質として目的のポリペプチドにコンジュゲートされる。得られたキメラペプチドを活性化因子ポリペプチド単独よりも高い割合で細胞に移入し、それにより、例えば目的のポリペプチドの局所的な応用を促進するために応用される、キメラポリペプチドの細胞内への導入を高める手段を提供する。タンパク質およびペプチド模倣物に加えて、薬剤が物質の送達を促進する化合物(例えばビタミンB12等のレセプター仲介化合物)と共役させ得る。
一態様において、内在化ペプチドはショウジョウバエのアンテナペディアタンパク質またはその相同体に由来する。ホメオタンパク質アンテナペディアの60アミノ酸長ホメオドメインは生体膜にわたってトランスロケートすることが示され、共役する異種ポリペプチドのトランスロケーションを容易にし得る。例えば、Derossi et al. (1994) J Biol Chem 269:10444〜10450;およびPerez et al. (1992) J Cell Sci 102:717〜722参照。このタンパク質の16アミノ酸長程度の小さなフラグメントは内部移行を誘導するのに十分であることが示されている。Derossi et al. (1996) J Biol Chem 271:18188〜18193参照。
本発明はまた、本明細書に記載されるポリペプチド配列(低分子t抗原またはVDAC)またはペプチド模倣物配列、および目的のポリペプチドまたはペプチド模倣物と比較して、統計学的に有意な量でキメラタンパク質の膜貫通輸送を増加させるのに十分であるアンテナペディアタンパク質(またはその相同体)の少なくとも一部を提供する。本方法において、かかるポリペプチドまたはそのペプチド模倣物を用いて癌細胞の効果的かつ特異的な殺傷を補助し得る。
内在化ペプチドの別の例はHIVトランスアクチベーター(TAT)タンパク質である。このタンパク質は四つのドメインに分けられると思われる(Kuppuswamy et al. (1989) Nucl. Acids Res. 17:3551〜3561)。精製TATタンパク質は組織培養中の細胞に取り込まれ(FrankelおよびPabo, (1989) Cell 55:1189〜1193)、TATの残基37〜62に相当するフラグメント等のペプチドはインビトロで細胞に迅速に取り込まれる(GreenおよびLoewenstein, (1989) Cell 55:1179〜1188)。高度に塩基性の領域は内在化および内在化部分の核への標的化を仲介する(Ruben et al., (1989) J. Virol. 63:1〜8)。
別の例示的な細胞透過ポリペプチドは、キメラタンパク質の膜貫通輸送を増加させるマストパラン(mastoparan)の十分な領域を含むように生成され得る(T. Higashijima et al., (1990) J. Biol. Chem. 265:14176)。
任意の特定の理論に縛られることを望まないが、レセプター仲介トランスサイトーシスによって膜を通過し得る輸送可能なペプチドにポリペプチドをカップリングまたはコンジュゲートすることにより、親水性ポリペプチドも膜障壁を通って生理学的に輸送され得ることに注意されたい。この型の適切な内在化ペプチドは、例えばヒストン、インスリン、トランスフェリン、塩基性アルブミン、プロラクチンおよびインスリン様成長因子I(IGF-I)、インスリン様成長因子II(IGF-II)または他の成長因子の全てまたは一部を用いることで生成され得る。例えば、毛細管細胞上のインスリンレセプターに親和性を示し、血糖減少においてインスリンよりも効果が低いインスリンフラグメントがレセプター仲介トランスサイトーシスによって膜貫通輸送を行い得、目的の細胞透過ペプチドおよびペプチド模倣物のために内在化ペプチドとして作用し得ることが見出されている。好ましい成長因子由来内在化ペプチドとしては、CMHIESLDSYTCおよびCMYIEALDKYAC等のEGF(上皮成長因子)由来ペプチド、TGF-β(トランスホーミング成長因子β)由来ペプチド、PDGF(血小板由来成長因子)またはPDGF-2由来のペプチド、IGF-I(インスリン様成長因子)またはIGF-II由来のペプチド、およびFGF(線維芽細胞成長因子)由来ペプチドが挙げられる。
トランスロケーション化/内在化ペプチドの別の部類は、pH依存性膜結合を示す。酸性pHでヘリックス型コンホメーションをとる内在化ペプチドに関して、内在化ペプチドは両親媒性の特性を必要とし、例えば疎水性界面および親水性界面の両方を有する。より具体的に、およそ5.0〜5.5のpH範囲内で内在化ペプチドは、標的膜への部分の挿入を容易にするαヘリックス、両親媒性構造を形成する。αヘリックスを誘導する酸性pH環境は、例えば細胞エンドソーム内にある低pH環境中に見出され得る。かかる内在化ペプチドを用いて、エンドサイトーシス機構によりエンドソーム区画から細胞質に取り込まれる目的のポリペプチドおよびペプチド模倣物の輸送を容易にし得る。
好ましいpH依存性膜結合内在化ペプチドは、高い割合で、グルタミン酸、メチオニン、アラニンおよびロイシン等のヘリックス形成残基を含む。さらに、好ましい内在化ペプチド配列は、pH5〜7の範囲内でpKaを有するイオン化可能残基を含むので、十分に電荷を帯びていない膜結合ドメインがpH5でペプチド内に存在して標的細胞膜への挿入を可能とする。
これに関して特に好ましいpH依存性膜結合内在化ペプチドは、aa1-aa2-aa3-EAALA(EALA)4-EALEALAA-アミドであり、これはSubbaraoら(Biochemistry 26:2964, 1987)のペプチド配列の改変を示す。このペプチド配列内で、第一のアミノ酸残基(aa1)は、好ましくは、内在化ペプチドの標的タンパク質コンジュゲートへの化学的コンジュゲーションを容易にする、システインまたはリシン等の特有の残基である。アミノ酸残基2〜3は、異なる膜に関して内在化ペプチドの親和性を調節するように選択され得る。例えば、残基2および3の両方がlysまたはargである場合、内在化ペプチドは負の表面電荷を有する脂質の膜またはパッチに結合する能力を有する。残基2〜3が中性アミノ酸である場合、内在化ペプチドは中性の膜に挿入される。
さらに他の好ましい内在化ペプチドとしては、アポリポタンパク質A-1およびBのペプチド;メリチン、ボンボリチン(bombolittin)、Δ溶血素およびパルダキシン(pardaxin)等のペプチド毒素;アラメチシン等の抗生物質ペプチド;カルシトニン、コルチコトロピン放出因子、βエンドルフィン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、膵臓ポリペプチド等のペプチドホルモン;ならびに無数の分泌タンパク質のシグナル配列に相当するペプチドが挙げられる。さらに、例示的な内在化ペプチドは、酸性pHで内在化ペプチドのαヘリックス特性を増強する置換基の付加によって修飾され得る。
本発明の使用に適している内在化ペプチドのさらに別の部類は、生理的pHでは「隠される」が、標的細胞エンドソームの低pH環境下では曝露される疎水性ドメインを含む。疎水性ドメインのpH誘導性アンフォールディングおよび曝露の際に、該部分は脂質二重層に結合し、共有結合したポリペプチドの細胞質内へのトランスロケーションに影響を及ぼす。かかる内在化ペプチドは、例えばシュードモナス外毒素A、クラスリン、またはジフテリア毒素において配列同定後にモデル化され得る。
孔形成タンパク質またはペプチドはまた、本明細書で内在化ペプチドとして作用し得る。孔形成タンパク質またはペプチドは、例えばC9補体タンパク質、細胞溶解性T細胞分子またはNK細胞分子から得ることができるか、またはそれらに由来し得る。これらの部分は膜において環状構造を形成し得、それにより結合したポリペプチドの膜から細胞内への輸送が可能になる。
目的のポリペプチドまたはペプチド模倣物の細胞膜を通過するトランスロケーションには内在化ペプチドの単なる膜挿入で十分であり得る。しかし、トランスロケーションは内在化ペプチドを細胞内酵素の基質(すなわち「付属(accessory)ペプチド」)と結合させることによって改良され得る。付属ペプチドが、細胞膜を通って細胞質表面に突き出る内在化ペプチドの一部と結合することが好ましい。付属ペプチドは、トランスロケーション化/内在化部分またはアンカーペプチドの一つの末端に有利に結合され得る。本発明の付属部分は一つ以上のアミノ酸残基を含有し得る。一態様において、付属部分は細胞内リン酸化の基質を提供し得る(例えば、付属ペプチドはチロシン残基を含有し得る)。
これに関して、例示的な付属部分は、GNAAAARR等のN-ミリストイルトランスフェラーゼのペプチド基質である(Peptides. Chemistry and Biology, Garland Marshall (編)中のEubanks et al., ESCOM, Leiden, 1988, pp. 566〜69)。この構成において、N末端のグリシンが付属部分の活性に決定的であるので、内在化ペプチドは付属ペプチドのC末端に結合する。C末端でのE2ペプチドまたはペプチド模倣物への結合の際に、このハイブリッドペプチドはN-ミリストイル化され、さらに標的細胞膜に固定され、例えば細胞膜でペプチドの局所濃度を増加させるように作用する。
付属ペプチドの使用をさらに例示するために、まずリン酸化可能付属ペプチドを内在化ペプチドのC末端に共有結合させ、次いで、目的のポリペプチドまたはペプチド模倣物と共に融合タンパク質に取り込ませる。融合タンパク質の該ペプチド成分は標的細胞膜に介在し、結果的に付属ペプチドは膜をトランスロケーションして標的細胞の細胞質内に突き出る。細胞膜の細胞質側で、付属ペプチドは中性pHで細胞キナーゼによってリン酸化される。一旦リン酸化されると、付属ペプチドは融合タンパク質を膜に不可逆的に固定するように作用する。細胞表面膜への局在は、ポリペプチドの細胞質内へのトランスロケーションを増強し得る。
適切な付属ペプチドとしては、キナーゼの基質であるペプチド、単一の正の電荷を有するペプチド、および膜結合グリコトランスフェラーゼにより糖化される配列を含むペプチドが挙げられる。膜結合グリコトランスフェラーゼにより糖化される付属ペプチドは、配列x-NLT-xを含み、ここで「x」は、例えば別のペプチド、アミノ酸、カップリング剤または疎水性分子であり得る。この疎水性トリペプチドがミクロソーム小胞と共にインキュベートされる場合、トリペプチドは小胞膜を通過し、管腔側で糖化されその疎水性のために小胞内に捕捉される(C. Hirschberg et al., (1987) Ann. Rev. Biochem. 56:63〜87)。従って、配列x-NLT-xを含む付属ペプチドは相当するポリペプチドの標的細胞停留を増強する。
本発明のこの局面の別の態様において、付属ペプチドを用いてポリペプチドまたはペプチド模倣物と標的細胞の相互作用を増強し得る。これに関して、例示的な付属ペプチドとしては、配列「RGD」を含有する細胞接着タンパク質由来のペプチド、または配列CDPGYIGSRCを含有するラミニンに由来するペプチドが挙げられる。フィブロネクチンおよびラミニン等の細胞外マトリックス糖タンパク質は、レセプター仲介過程を介して細胞表面に結合する。トリペプチド配列RGDは、細胞表面レセプターへの結合に必要なものとして同定された。この配列はフィブロネクチン、ビトロネクチン、補体のC3bi、フォン・ビルブラント因子、EGFレセプター、トランスホーミング成長因子β、コラーゲンI型、大腸菌のλレセプター、フィブリノーゲンおよびシンドビスコートタンパク質中に存在する(E. Ruoslahti, Ann. Rev. Biochem. 57:375〜413, 1988)。RGD配列を認識する細胞表面レセプターは、「インテグリン」と称される関連タンパク質のスーパーファミリーに分類されている。「RGDペプチド」の細胞表面インテグリンへの結合はポリペプチドの細胞表面停留、および最終的にトランスロケーションを促進する。
上述のように、内在化ペプチドおよび付属ペプチドはそれぞれ独立して、化学的架橋によって、または融合タンパク質の形態のいずれかで、ポリペプチドまたはペプチド模倣物に付加され得る。融合タンパク質の例において、非構造ポリペプチドリンカーがそれぞれのペプチド部分間に含まれ得る。
一般的に、内在化ペプチドは、ポリペプチドの直接輸送に十分である。しかし、RGD配列等の付属ペプチドが提供される場合、宿主からの融合タンパク質の直接輸送を指向するための分泌シグナル配列を含むことが必要であり得る。好ましい態様において、分泌シグナル配列はN末端の先端に配置され、(随意に)分泌シグナルおよび残りの融合タンパク質の間のタンパク質分解部位の側面に配置される。
例示的な態様において、ポリペプチドまたはペプチド模倣物は、RGD/SV40ヌクレオチド配列:MGGCRGDMFGCGAPPKKKRKVAGFをコードするNde1-EcoR1フラグメントcatatggutgactgccgtggcgatatgttcggttgcggtgctcctccaaaaaagaagagaaaggtagctggattcに提供されるヌクレオチド配列にコードされるような、インテグリン結合RGDペプチド/SV40核局在シグナルを含むように作り変えられる(例えばHart S L et al., 1994; J. Biol. Chem.,269: 12468〜12474)。別の態様において、タンパク質は、例えばHIV-1 tat(1〜72)ペプチド配列:MEPVDPRLEPWKHPGSQPKTACTNCYCKKCCFHCQVCFITKALGISYGRKKRRQRRRPPQGSQTHQVSLSKQをコードする、Ndel-EcoRlフラグメント:catatggagccagtagatcctagactagagccc-tggaagcatccaggaagtcagcctaaaactgcttgtaccaattgctattgtaaaaagtgttgctttcattgccaagtgtttcataacaaaagcccttggcatctcctatggcaggaagaagcgagacagcgacgaagacctcctcaaggcagtcagactcatcaagtttctctaagtaagcaaggattcに提供されるようなHIV-1 tat(1〜72)ポリペプチドを有するように作り変えられ得る。さらに別の態様において、融合タンパク質は、Nde1-EcoR1フラグメントに提供されるHSV-1 VP22ポリペプチド(Elliott G., O'Hare P (1997) Cell, 88:223〜233)を含む。さらに別の態様において、融合タンパク質は、例えばヌクレオチド配列(Nde1-EcoR1フラグメント)からのVP22タンパク質のC末端ドメインを含む。
特定の例において、目的のポリペプチドの部分として核局在シグナルを含むことも望ましくあり得る。ポリペプチドを含む融合ポリペプチドの生成において、種々のペプチドドメインの適切なフォールディングを保証するために非構造リンカーを含むことが必要であり得る。多くの合成および天然のリンカーは当該分野に公知であり、本発明の使用に適合され得、(Gly3Ser)4リンカーを含む。
処置方法
特定の態様において、本発明は個体において癌を処置または予防する方法を提供する。用語「癌」、「腫瘍」、および「新形成」が本明細書で互換的に使用される。本明細書で使用する場合、癌(腫瘍または新形成)は一つ以上の以下の性質:環境において正常の生化学的および身体的影響によって調節されない細胞増殖;脱分化(例えば正常な調和された細胞分化の欠損);およびいくつかの例において転移を特徴とする。癌疾患としては、例えば肛門癌、膀胱癌、乳癌、頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、子宮内膜癌、ヘアリー細胞性白血病、頭部癌および頸部癌、肺(小細胞)癌、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、卵巣癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、肝細胞癌、カポジ肉腫、肺(非小細胞癌)、黒色腫、膵臓癌、前立腺癌、腎細胞癌、および軟組織肉腫が挙げられる。さらなる癌障害は、例えば本明細書で参照により援用される、Isselbacher et al. (1994) Harrison's Principles of Internal Medicine 1814〜1877に見出され得る。
通常、上述され、本明細書に記載される方法で処置され得る癌は調節されないVDACの発現を示す。一態様において、上述の癌はRasシグナル経路に変異を含み、高いRasシグナル送達活性を生じる。例えば、該変異はRas V12等のRas遺伝子において構成的に活性な変異であり得る。他の態様において、癌はPP2Aにおける機能欠失変異、ならびに/またはMEK1および/もしくはERK1の活性化変異を含み得る。特定のさらなる態様において、癌は、SV40低分子t癌タンパク質を発現する細胞を特徴とするか、またはSTおよび/または癌遺伝子HRASを発現する細胞に表現型が類似する。特定の好ましい態様において、細胞は実質的に野生型レベルのRb(例えば、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、または150%等)を発現する。
一態様において、本発明は、作り変えられたヒト腫瘍形成細胞、または特定の遺伝子型(または特異的に改変された遺伝子型)の癌細胞に対して選択的に毒性である治療的有効量の化合物を個体に投与する工程を含む、個体における癌の処置または予防方法に関する。特定の態様において、癌は活性化されたRAS経路を含む細胞を特徴とする。特定のさらなる態様において、癌はSV40低分子T癌タンパク質を発現するか、またはsTおよび/または癌遺伝子RASの標的の調節を示す細胞を特徴とする。
関連のある態様において、本発明は、固形腫瘍に対して指向される従来の化学療法および転移の確立の制御のための従来の化学療法等の他の抗腫瘍治療と組み合わせた本発明の方法の実施を想定する。本発明の化合物の投与は化学療法の最中または後に実施され得る。かかる薬剤は通常、薬学的に許容され得る担体と共に調剤され、静脈、経口、頬(bucally)、非経口で、吸引スプレーにより、局所適用によりまたは経皮で投与され得る。薬剤は局所投与によっても投与され得る。好ましくは、抗癌化学治療剤(例えば本発明の化合物)と組み合わせて投与される一つ以上のさらなる薬剤が、付加的または相乗的な様式で癌細胞を阻害する。
多くの従来の化合物が抗腫瘍活性を有することが示されている。これらの化合物は、固形腫瘍を小さくするか、転移およびさらなる増殖を予防するか、または白血病の悪性細胞もしくは骨髄性悪性腫瘍の数を減少させる化学療法において医薬剤として使用されてきた。化学療法は種々の型の悪性腫瘍の処置に有効であるが、多くの抗腫瘍化合物は望ましくない副作用を引き起こす。多くの場合において、二つ以上の異なる治療薬を組み合わせた場合、治療薬は相乗的に作用してそれぞれの治療薬の用量の減少を可能にし、それにより高用量の各化合物で生じる有害な副作用が減少する。他の例において、治療薬に対して悪性腫瘍は二つ以上の異なる治療薬の組合せ療法に応答し得る。
従って、本発明の化合物および医薬組成物は、従来の抗腫瘍化合物と組み合わせて投与され得る。従来の抗腫瘍化合物としては、単に例示するのみであるが、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビジン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン(ironotecan)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトザントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレキチド、オキサリプラチン、パクリタクセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リタキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンが挙げられる。
他の態様において、本発明の化合物および医薬組成物は、EGFレセプターアンタゴニスト、硫化ヒ素、アドリアマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、シメチジン、カルミノマイシン、塩酸メクロレタミン、ペンタメチルメラミン、チオテパ、テニポシド、シクロホスファミド、クロラムブシル、デメトキシヒポクレリンA、メルファラン、イホスファミド、トロホスファミド、トレオサルファン、ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体、リン酸エトポシド、テニポシド、エトポシド、ロイロシジン、ロイロシン、ビンデシン、9-アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン、クリスナトール、メゲストロール、メトプテリン、マイトマイシンC、エクテナサイジン743、ブスルファン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ロバスタチン、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン、セムスチン、スタウロスポリン、ストレプトゾシン、フタロシアニン、ダカルバジン、アミノプテリン、メトトレキサート、トリメトレキサート、チオグアニン、メルカプトプリン、フルダラビン、ペンタスタチン、クラドリビン、シタラビン(ara C)、ポルフィロマイシン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、塩酸ドキソルビシン、ロイコボリン、マイコフェノリン酸、ダウノルビシン、デフェロキサミン、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラルチトレキセド、イダルビシン、エピルビカン、ピラルビカン、ゾルビシン、ミトザントロン、硫酸ブレオマイシン、アクチノマイシンD、サフラシン、サフラマイシン、キノカルシン、ディスコデルモライド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、酒石酸ビノレルビン、ベルトポルフィン、パクリタキセル、タモキシフェン、ラロキシフェン、チアゾフラン、チオグアニン、リバビリン、EICAR、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、フルタミド、ビカルタミド、ブセレリン、ロイプロリド、プテリジン、エネジイン、レバミゾール、アフラコン、インターロイキン、アルデスロイキン、フィルグラスチム、サルグラモスチム、リツキシマブ、BCG、トレチノイン、ベタメトゾン、塩酸ゲムシタビン、ベラパミル、VP-16、アルトレタミン、タプシガルギン、オキサリプラチン、イプロプラチン、テトラプラチン、ロバプラチン、DCP、PLD-147、JM118、JM216、JM335、サトラプラチン、ドセタキセル、脱酸素化パクリタキセル、TL-139、5'-ノル-アンヒドロビンブラスチン(以降、5'-ノル-ビンブラスチン)、カンプトテシン、イリノテカン(カンプトサール、CPT-11)、トポテカン(ヒカンプチン)、BAY38-3441、9-ニトロカンプトテシン(オレテシン、ルビテカン)、エキサテカン(DX-8951)、ルートテカン(GI-147211C)、ギマテカン、ホモカンプトテシンジフロモテカン(BN-80915)および9-アミノカンプトテシン(IDEC-13')、SN-38、ST1481、カラニテシン(BNP1350)、インドロカルバゾール(例えばNB-506)、プロトベルベリン、イントプリシン、イデノイソキノロン、ベンゾ-フェナジンまたはNB-506から選択される従来の抗腫瘍化合物と組み合わせて投与され得る。
別の関連のある態様において、本発明は、放射線等の他の抗腫瘍療法と組み合わせた方法の実施を想定する。用語「放射線」は、本明細書で使用する場合、光子、中性子、電子、または他の型の電離照射線による新形成細胞または被験体の任意の処置を含むことを意図する。かかる放射線としては限定されること無く、X線、γ線、またはαもしくはβ粒子等の重イオン粒子が挙げられる。さらに、該放射線は放射性であり得る。被験体における新形成細胞を照射する手段は当該分野に周知であり、例えば外部ビーム療法および近接照射療法が挙げられる。
癌(腫瘍または新形成)が治療されたかどうかを決定する方法は、当業者に周知であり、例えば腫瘍細胞数の減少(例えば、細胞増殖の減少または腫瘍の大きさの減少)が挙げられる。本発明の処置が持続し、かつ完全な反応であり得るか、または部分的もしくは一過的な臨床反応を包含し得ることが理解されよう。例えば、参照により本明細書に援用される、Isselbacher et al. (1996) Harrison's Principles of Internal Medicine 13版、 1814〜1882を参照。
感作または腫瘍細胞の増強された死を試験するアッセイは当該分野で周知であり、例えば細胞の生存力を評価する標準的な用量反応アッセイ;DNAの断片化、細胞死の特徴を決定するDNA抽出物のアガロースゲル電気泳動またはフローサイトメトリー;アポトーシスに関連するポリペプチドの活性を測定するアッセイ;ならびに細胞死の形態学的徴候のためのアッセイが挙げられる。かかるアッセイに関する詳細は本明細書中の他の場所に記載される。他のアッセイとしては、クロマチンアッセイ(例えば、核クロマチンの凝集の頻度を計測する)または例えば本明細書中で参照により援用されるLowe et al. (1993) Cell 74:95 7〜697に記載されるような薬剤耐性アッセイが挙げられる。本明細書で参照により援用される米国特許第5,821,072号も参照。
医薬組成物
有望な治療剤は、医薬組成物の含有物についての適性を決定するためにプロファイルされ得る。かかる治療剤についてのある一般的な測定は、治療指標であり、それは毒素量に対する治療量の割合である。治療量(効力)および毒素量の閾値は適切に調整され得る(例えば、治療反応の必要性または毒素反応を最小化する必要性)。例えば、治療量は薬剤の治療に有効な量(一つ以上の状態の処置に関して)であり得、毒素量は処置集団の割合中で死が起こる量(例えばLD50)または望ましくない効果が生じる量であり得る。好ましくは、薬剤の治療指標は少なくとも2、より好ましくは少なくとも5、さらにより好ましくは少なくとも10である。治療剤のプロファイリングとしてはまた、種々の調製においておよび/または種々の経路を介して投与された場合の治療剤のバイオアベイラビリティーおよび/または吸収を決定する治療剤の薬物動態の測定が挙げられ得る。
エラスチンまたはチューブリンインヒビター等の本発明の化合物は、それらを必要とする個体に投与され得る。特定の態様において、個体とは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物等の哺乳動物である。個体に投与される場合、本発明の化合物は、例えば本発明の化合物および薬学的に許容され得る担体を含有する医薬組成物として投与され得る。薬学的に許容され得る担体は当該分野に周知であり、例えば水もしくは生理的緩衝化塩溶液等の水溶液またはグリコール、グリセロール、オリーブ油等の油もしくは注射可能な有機エステル等のその他の溶媒もしくはビヒクルが挙げられる。好ましい態様において、かかる医薬組成物がヒト投与用である場合、該水溶液は発熱物質を含まないか、または実質的に発熱物質を含まない。賦形剤は、例えば薬剤の遅延型放出をもたらすか、または一つ以上の細胞、組織もしくは器官を選択的に標的とするように選択され得る。
薬学的に許容され得る担体は、例えばエラスチンまたはチューブリンインヒビター等の化合物の吸収を安定化するか、または増加するように作用する生理学的に許容され得る薬剤を含有し得る。かかる生理学的に許容され得る薬剤としては、例えばグルコース、スクロースもしくはデキストラン等の炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオン等の抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質または他の安定化剤もしくは賦形剤が挙げられる。生理学的に許容され得る薬剤を含む薬学的に許容され得る担体の選択は、例えば組成物の投与経路に依存する。該医薬組成物(製剤)はまた、例えば本発明の化合物中に組み込まれ得るリポソームまたは他のポリマーマトリックスであり得る。例えば、リン脂質または他の脂質から構成されるリポソームは非毒性で、生理的に許容され得、かつ代謝可能である、比較的単純に作製され投与される担体である。
本発明の化合物を含有する医薬組成物(製剤)は、例えば経口、筋内、静脈、肛門、膣、非経口、鼻腔、腹膜内、経皮、および局所を含む多くの任意の投与経路により被験体に投与され得る。組成物は注射またはインキュベーションにより投与され得る。
特定の態様において、本発明の化合物(例えばエラスチン)は単独で使用され得るか、または別の型の抗腫瘍治療剤と組み合わせて投与され得る。語句「共投与」とは、本明細書で使用される場合、二つ以上の異なる治療化合物と組み合わせた任意の投与形態のことをいい、先に投与された治療化合物が依然体内で有効である間に第二の化合物が投与される(例えば二つの化合物が患者において同時に効果的であり、二つの化合物の相乗的な効果を含み得る)。例えば、同一の製剤中または別の製剤中に、同時または連続的のいずれかで、異なる治療化合物が投与され得る。従って、かかる処置を受ける個体は異なる治療化合物の組み合わせた効果の利益を受け得る。
本発明の化合物(例えばエラスチン)が治療有効量(用量)で被験体(例えば哺乳動物、好ましくはヒト)に投与されることが想定される。「治療有効量」は望ましい治療効果(例えば症状の処置、新生物形成細胞の死)を誘発するのに十分な化合物の濃度を意味する。一般的に、化合物の有効量は被験体の体重、性別、および病歴によって変化し得ることが理解されよう。有効量に影響を及ぼす他の要因としては限定されないが、患者の症状の重症度、処置される障害、化合物の安定性、および所望の場合、本発明の化合物と共に投与される別の種類の治療剤が挙げられ得る。一般的には、ヒト被験体に関して、有効量は約0.001 mg/kg体重〜約50 mg/kg体重の範囲である。薬剤の複数投与により、さらに多量の全用量が送達され得る。効力および用量を決定する方法は当業者に公知である。例えば、参照によって本明細書に援用されるIsselbacher et al. (1996) Harrison's Principles of Internal Medicine 13版、1814〜1882を参照。
本発明は一般的に記載され、単に本発明の特定の局面および態様の例示目的で挙げられ、本発明を限定することを意図しない以下の実施例についての参照によってより容易に理解されよう。
実施例1 特定の癌関連対立遺伝子の存在で増加した効力または活性を有する化合物の同定
hTERT、LT、ST、E6、E7またはRASV12の存在で増加した効力または活性を有する化合物を同定するために実施した研究を本明細書中に記載する。本明細書中に記載される研究は形質転換遺伝子としてhTERT、LT、ST、E6、E7およびRASV12を使用したが、多くの癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子を含むシグナル伝達網を定義するために、将来の研究は本方法論を用いて広く多様な癌関連対立遺伝子を使用し得る。これらの遺伝子エレメントを用いて遺伝子工学で作られた細胞株を、組み合わせライブラリーからの20,000の化合物、National Cancer Institute diversity collectionからの1,990の化合物、および出願人によって選択および購入され、かつスクリーニング可能な収集物にフォーマットされた1,540の生物学的に活性な公知化合物を含む、23,550の化合物をスクリーニングするために使用した。一次スクリーニングは、腫瘍形成BJ-TERT/LT/ST/RASV12が遺伝子工学で作られた腫瘍形成細胞を、ライブラリーのおよそ中央値分子量である分子量400を有する化合物について10μMに対応する4μg/mLの濃度の各化合物で48時間処理する効果を(4重で)試験した。細胞生存を、細胞内に自由に拡散する非蛍光化合物である色素カルセインアセトキシメチルエステル(カルセインAM)(Wangら,1993, Hum. Immunol. 37, 264-270)を用いて測定した。生細胞において、カルセインAMは、細胞内エステラーゼによって切断され、生細胞から外に拡散し得ない陰イオン蛍光誘導体カルセインを形成する。従って、生細胞はカルセインAMとインキュベートされた場合に緑の蛍光を示すが、一方で死細胞は示さない。同系の1次細胞中ではなく腫瘍形成細胞中で致死性である人工的な致死性を示す化合物を同定するために、BJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞中で生存色素カルセインAMを用いた染色の50%以上の阻害を示した化合物を、BJ細胞およびBJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞中2倍希釈列で続けて試験した。IC50値(カルセインAMシグナルの50%を阻害するのに必要とされる濃度)を、各細胞株中の各化合物について計算した(表1)。これは、BJ一次細胞に対してBJ-TERT/LT/ST/RASV12腫瘍形成細胞中で少なくとも4倍より効力があった9つの化合物(カルセインAMシグナルの同じ50%阻害を得るために少なくとも4倍より高い濃度がBJ一次細胞中で必要とされる化合物)の同定という結果になった(図2)。以下はこれらの9つの化合物のより詳細な分析である。
これらの化合物のうち3つ(ドキソルビシン、ダウノルビシンおよびミトキサントロン)は、抗癌薬として現在臨床使用にあり、1つ(カンプトテシン)は、臨床的に使用される抗癌薬(トポテカンおよびイリノテカン)の天然物アナログであり、1つ(エキノマイシン)は第II相臨床試験で最近試験された。観察された選択性が複数の独立して派生した細胞株で見られることを確認するために、9つの化合物全てを、遺伝子工学で作られた細胞の各パネルにおいて複数の用量で反復して続けて試験した(図1および表1)。
出願人は、2つの異なる細胞株中で化合物のIC50(生存シグナルの50%阻害に必要とされる濃度)の変化を測定する選択性測定基準を開発した。2つの細胞株間でこの選択性スコアを計算するために、1つの細胞株の化合物についてのIC50を、第二の細胞株の同じ化合物についてのIC50で割った。従って、第二の細胞株に対して1つの細胞株で4倍より高い濃度で使用されなければならない化合物は4の選択性スコアを有する。「腫瘍選択性スコア」は、親の一次BJ細胞の化合物についてのIC50値を、腫瘍形成細胞を作り出すのに必要とされる4つの遺伝子エレメント全てを含む遺伝子工学で作られたBJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞の化合物についてのIC50値で割ることによって各化合物について計算された(表1)。
これらの遺伝子工学で作られた腫瘍形成細胞は、LT、ST、E6およびE7のような優性的作用ウイルス癌タンパク質を使用する。これらのウイルスタンパク質は、特定の形式の癌、即ち、サルウイルス40誘導性悪性中皮腫(TestaおよびGiordano,2001, Semin Cancer Biol 11, 31-8)およびヒトパピローマウイルス誘導性頸部癌(Boschら,2002, J Clin Pathol 55, 244-65)における細胞形質転換にあるいは関わり、インビトロおよびインビボで細胞を形質転換するようにp53機能およびpRB機能を阻害するために使用されている(Elenbaasら,2001, Genes Dev 15, 50-65; Jorcykら,1998, Prostate 34, 10-22; Perez-Stableら,1997, Cancer Res 57, 900-6; Richら,2001, Cancer Res 61, 3556-60; Sandmollerら,1995, Cell Growth Differ 6,97-103)。出願人は、特定のウイルスタンパク質で観察され得る特異的な効果を制御するために、細胞タンパク質を不活性化するこれらの2つの異なる方法を使用した、(出願人は、pRBおよびp53のLTおよびE6/E7ベースの不活性化の両方の効果を試験した)。これらの化合物の選択性をまた、ウイルスエレメント由来でないp53およびpRBのドミナントネガティブインヒビターを発現する細胞株中で確認した。この細胞株は、(i)内在性p53の四量体を破壊するp53の切断型(p53DD)、(ii)p16INK4Aおよびp15INK4Bによる阻害に耐性であるCDK4R24C変異体(CDK4の主要なネガティブ調節因子)および(iii)サイクリンD1を発現する。9つの遺伝子型選択性化合物の効果を、BJ-TERT/p53DD/CDK4R24C/D1/ST/RASV12細胞と呼ばれるこれらの細胞中で濃度の範囲で試験した(表1)。結果は、これらの細胞中で試験した場合に全ての化合物に対する活性において全体的にわずかな減少があることを示した。しかしながら、分析の全体結果は、この細胞株中で非ウイルスタンパク質の使用によって変化されなかった(表1)。
実施例2 化合物の選択性についての遺伝子基盤の決定
出願人らは、各化合物について選択性の遺伝子基盤を決定するために調べた。即ち、各化合物について、出願人らは、細胞が化合物に感受性となる原因である遺伝子または遺伝子の組み合わせを定義しようと試みた(表1)。結果は、これらの9つの化合物が、3つの群、即ち、(i)単純な遺伝子選択性を示さない化合物、(ii)TERTおよび不活性なRBを含む細胞について選択性を示した化合物、ならびに(iii)致死性を示すために発癌性RASおよびSTの両方の存在を必要とした化合物に分類され得ることを示した。
群(i)の化合物、サンギバマイシン、ボウバルジン、NSC146109およびエキノマイシンは、腫瘍形成細胞選択性について明らかな遺伝子基盤を有さない。例えば、各遺伝子エレメントが導入される時に、エキノマイシンは、いくらかより活性になる(図3a)。出願人は、これらの遺伝子エレメントのそれぞれが導入される場合に細胞増殖率が増加することを観察した。従って、群(i)の化合物は、迅速に分裂する細胞について単純に選択的でありそうである。この解釈を支持することは、これらの化合物の全てがDNA合成またはタンパク質合成を阻害することによって作用することが報告されているという事実であり、迅速に分裂する細胞においてより大きな必要である。例えば、エキノマイシンは、DNA二インターカレーターとして機能することが報告され(Van Dyke および Dervan,1984, Science 225, 1122-7; Waring および Wakelin, 1974, Nature 252, 653-7)、ボウバルジンはタンパク質合成インヒビターとして機能することが報告され(Zalacainら,1982, FEBS Lett 148, 95-7)、サンギバマイシンは、ヌクレオチドアナログであり(Rao, 1968, J Med Chem 11, 939-41)、かつNSC146109は構造的にDNAインターカレーターに類似する(図2)。他のPKCインヒビターはこの系で選択性を示さなかったためにこの活性がこの文脈で関係が無いように思われるが、サンギバマイシンはPKCインヒビターとして機能することが報告されていることに注目されるべきである(Loomis および Bell, 1988, J.Biol. Chem. 263, 1682-92)。出願人が、これらの群(i)化合物のような、迅速に分裂する細胞で単純により活性である化合物を同定し得たのは、これらが選択性について明らかな遺伝子基盤を示さないためである。さらなる研究はこれらの化合物についてされなかった。従って、出願人は、選択性を示す群(ii)および群(iii)の化合物に対する機械論的研究に焦点を当てることができた。
群(ii)の化合物、ミトキサントロン、ドキソルビシンおよびダウノルビシンは、トポイソメラーゼII毒であり、トポイソメラーゼIIおよびDNAに結合し、トポイソメラーゼIIによって導入される二本鎖DNA切断の再連結を防ぐ。出願人はこれらの3つの化合物の存在でこれらの遺伝子工学で作られた細胞中でROSの形成を観察しなかったが、これらの化合物および一般にアントラサイクリンはまた、いくつかの細胞型で反応性酸素種(ROS)の形成を誘導することが報告されている(Laurent および Jaffrezou, 2001, Blood 98, 913-24; Mullerら, 1998, Int J Mol Med 1, 491-4: Richardら, 2002, Leuk Res 26, 927-31)。出願人は、hTERTが導入される場合およびさらにRBがLTまたはHPV E7の導入によって不活性化される場合にこれらの化合物がより強力(より低い濃度で活性)になることを発見した。該細胞において、E7がE6の後に導入された結果、E6自体はこれらの化合物に増加した効力を付与しなくとも、E7を含む細胞におけるこれらの化合物の増加した効力はまた、E6の存在に依存することが可能である。hTERTの導入およびRBの不活性化はトポイソメラーゼIIα発現の増加(図5A)およびトポイソメラーゼIIα発現の非常にわずかな増加のみを生じた。出願人は、発癌性RASの存在下でトポイソメラーゼII毒へのさらなる感作を観察しなかったが、発癌性RASの導入はトポイソメラーゼIIα発現のさらなる増加を生じる(図5A)。
群(iii)の化合物は、カンプトテシン(CPT)、ならびにRASおよびST発現細胞の根絶物(eradicator)について出願人がエラスチンと名づけた組み合わせライブラリーからの新規化合物である(図2)。効率のよいCPT誘導細胞死およびエラスチン誘導細胞死は、STおよびRASV12の両方の存在を必要とする(図3および図4ならびに表1)。CPTおよびエラスチンは選択性の類似する遺伝子基盤を有するが、これらは別々な作用機構を有する。CPTは、RB機能を欠く細胞中で部分的に活性であるが(E7の発現を介して)、一方でエラスチンが活性でなく、CPTはBJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞の死滅を生ずるのに2日を必要とするが、一方でエラスチンは18時間以内で100%活性である(図3および図4)。ホスファターゼインヒビターオカダ酸が、別の方法で耐性BJ一次細胞をCPTに感作し得るのは(図5E)、おそらくはオカダ酸がTOP1を上方調節するためである(図5F)。オカダ酸は、CPTおよびエラスチンが異なる機構を介して作用するモデルと一致して、BJ細胞またはBJ-TERT細胞をエラスチンに対して感受性にしない。さらに、出願人は、チューブリンインヒビターである致死化合物ポドフィロトキシンはBJ細胞またはBJ-TERT細胞をCPTに感作しないことを見出し、オカダ酸によるBJ細胞のCPTへの感作は特異的であり、機能的に相関しないが付加的効果を有する2つの弱い細胞死刺激の結果ではないことを確認した。
RASV12発現細胞およびST発現細胞のCPTへの増加した感受性のための分子基準を理解しようと試みる際に、出願人は、CPTの推定の標的であるトポイソメラーゼI(TOPI)の遺伝子工学で作られた細胞の発現レベルを決定した(Andohら,1987, Proc Natl Acad Sci USA 84, 5565-9; Bjornstiら,1989, Cancer Res 49, 6318-23; Champoux, 2000, Ann NY Acad Sci 922, 56-64; D'Arpaら,1990, Cancer Res 50, 6919-24; Engら,1988, Mol Pharmacol 34, 755-60; Hsiangら,1989, Cancer Res 49, 5077-82; Hsiang および Liu, 1988, Cancer Res 48, 1722-6; Liuら,2000, Ann NY Acad Sci 922, 1-10; Madden および Champoux, 1992, Cancer Res 52, 525-32; Tsao ら,1993, Cancer Res 53, 5908-14)。出願人らは、RASV12およびSTの両方を発現する細胞はTOP1を上方調節することを発見した(図5B)。他の細胞型中でCPTの推定の作用の機構は機能の取得、即ちTOP1依存的な様式で二本鎖DNA切断の導入を含むので(Liuら,2000, Ann NY Acad Sci 922, 1-10)、TOP1の上方調節はRASV12およびST発現細胞のCPTへの増加した感受性を説明し得る。この解釈の支持において、出願人はBJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞中で低分子干渉RNA(siRNA)を用いたTOP1の遺伝子不活性化はCPTへの部分的な耐性を付与することを見出した(図5C、D)。
出願人らは、腫瘍細胞対正常細胞における活性および選択性についてエラスチンの他のアナログをさらに試験した。別のアナログ化合物は活性および選択的であるが、エラスチンより強力でないとして同定された。この化合物をエラスチンBと名づけた(図8参照)。BJELR細胞は、BJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞であり、BJEH細胞はBJ-TERT細胞である。BJELR細胞およびBJEH細胞の両方で試験されたさらなる化合物は以下の通りである。
実施例3 細胞死の特徴付け
出願人は、腫瘍形成BJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞中でCPTおよびエラスチンによって誘導される細胞死の型を特徴付けするために調べた。他の文脈において、CPTはアポトーシス細胞死を誘導することが見出され(Traganosら,1996, Ann NY Acad Sci 803, 101-10)、核濃縮、核崩壊および/または染色質の辺縁化を含む核形態の変化によって特徴付けられる(Majno および Joris, 1995, Am J Pathol 146, 3-15)。エラスチンまたはCPTはこれらの系でアポトーシスを誘導するかどうかを決定するために、出願人は、蛍光顕微鏡を用いてCPTおよびエラスチン処理腫瘍形成細胞の核形態をモニターした。核崩壊および染色質の辺縁化はCPT処理細胞で明確に認識できたが、かかる形態変化はエラスチン処理細胞で認識できなかった(図7A)。核形態変化は、アポトーシス細胞に必要とされるので、出願人はエラスチンによって誘導される細胞死は、非アポトーシス性であると結論づける。この結論をさらに支持することは、エラスチンではなくCPTがDNA断片化(DNAラダーの形成である)を誘導し、パン-カスパーゼインヒビター(50μM Boc-Asp(Ome)-フルオロメチルケトン、Sigma♯B2682(Chenら,2001, Neuroreport 12, 541-545))がエラスチンによってではなく、CPTによって誘導される細胞死を部分的にブロックし、かつエラスチンではなくCPTがアネキシンV染色の増加(図7B)および切断された活性カスパーゼ3の出現を生ずる(図7C)という観察であった。さらに、核はエラスチン処理腫瘍細胞中でそのままであった(図9)。
エラスチンの非アポトーシス細胞死を誘導する能力は、ST-およびRASV12発現細胞について選択的である。エラスチンのより長い処理およびより高い濃度はRASV12またはSTを欠く細胞の生存にほとんど影響がなく、エラスチンの選択性の質を確認した(図6A、C)。エラスチン処理細胞はアポトーシスを起こさないので、出願人は、エラスチンが細胞剥離よりむしろ細胞死を真に誘導することを確認しようと調べた。出願人らは、細胞内還元電位を測定する生存色素であるアラマーブルー(Ahmedら,1994, J. Immunol. Methods 170, 211-224)を用いて、エラスチンの存在下で細胞生存を定量化した。エラスチンは、この同質なアラマーブルー生存アッセイにおいてBJ-TERT細胞に比べて腫瘍形成BJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞中で選択的致死を示した(図6B)。エラスチンで18時間処理されたBJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞は丸くなり、剥離し(図6C)、生存色素トリパンブルーを排除することができず、電位差測定色素JC-1によってアッセイされるようなミトコンドリア膜電位の損失を示し、死細胞に特徴的な小さな細胞サイズを有した。出願人は、エラスチンによって誘導される生存の損失は、エラスチンで24時間処理されたBJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞が、丸まり、剥離し、エラスチンを含まない培地に置かれた場合に回収できないという点で、一度完了すると不可逆であることを決定した。従って、エラスチンはST-およびRASV12依存性の様式において迅速で(12〜24時間)、不可逆な、非アポトーシス細胞死を誘導する。
エラスチンは反応性酸素種の形成を誘導するということを示す研究をさらに実施した(図10参照)。
エラスチン活性のサプレッサー(インヒビター)のためのスクリーニングを実施した。エラスチン活性を抑制する4つの抗酸化剤を同定し、1つは抗酸化剤、α-トコフェロールであった。
以下の方法および材料を本明細書中に記載される実施例で使用した。
構築物およびレトロウイルス
hTERT、LT、ST、SV40初期領域、およびHRASV12のための発現構築物を以前に記載されたように使用した(Hahnら,1999,上掲;Hahnら,2002, 上掲)。hTERT-pWZL-Blastε, E6-pWZL-Zeoε、およびE6E7-pWZL-Zeoεを以前に記載した(Lessnickら,2002,上掲)。E6およびLT cDNAをpWZL-Hygroεレトロウイルスベクターにクローン化した(J. Morgenstern, Millenium Pharmaceuticalsから現物贈与)。水疱性口内炎ウイルスG糖タンパク質偽型レトロウイルスを調製し、以前に記載されるように感染を実施した(Lessnickら,2002,上掲)。
細胞株
TIP5一次線維芽細胞(Lessnickら,2002,上掲)を廃棄された新生包皮から調製し、hTERT-pWZL-blastεまたはhTERT-pBabe-hygroレトロウイルスを用いる感染およびブラスチシジンまたはハイグロマイシンのいずれかを用いる選択それぞれによって不死化した。BJ細胞はJim Smithの贈与であった。hTERT-不死化線維芽細胞に指示されるレトロウイルスを感染させ、適切なマーカーに対して選択した。全てのBJ派生物を、15%不活性化ウシ胎仔血清、ペニシリンおよびストレプトマイシン(pen/strep)を補充したDMEMおよびM199の1:1混合物中で培養した。TIP5細胞を、10%FBSおよびpen/strepを含むDMEM中で増殖した。全ての細胞培養物を、5%CO2を含む加湿されたインキュベーター中37℃でインキュベートした。
化合物ライブラリー
1,540の化合物を含む注釈された化合物ライブラリー(ACL)、National Cancer Instituteから得られた1,990の化合物のNCI多様セットおよび20,000の化合物を含む組み合わせライブラリー(Comgenex International, Inc)を、腫瘍選択的合成致死スクリーニングで使用した。全ての化合物ライブラリーを、384ウェルのポリプロピレンプレート(縦列3〜22)において4mg/ml溶液としてDMSO中に調製し、-20℃で保存した。カンプトテシン(cat♯C9911, MW348.4)、ドキソルビシン(cat♯D1515,MW580.0)、ダウノルビシン(cat♯D8809,MW564.0)、ミトキサントロン(cat♯M6545,MW517.4)、オカダ酸(cat♯O4511, MW805.0)、エキノマイシン(cat♯E4392,MW1101)、サンギバマイシン(cat♯S5895,MW 309.3)を、Sigma-Aldrich Coから得た。ボウバルジン(MW772.84)およびNSC146109(MW280.39)を、National Cancer Instituteの発達治療プログラムから得た。エラスチン(MW545.07)を、Comgenex International,Incから得た。
カルセインAM生存アッセイ
カルセインアセトキシルメチルエステル(AM)は、細胞内エステラーゼによって切断され、陰イオン性、細胞非透過性、蛍光化合物カルセインを形成する細胞膜透過性、非蛍光化合物である。細胞内エステラーゼの存在のためにおよびそのままな細胞膜は蛍光カルセインが細胞から漏れるのを防ぐので、生細胞をカルセインによって染色する(Wangら,1993,上掲)。細胞を、Zymark Sciclone ALHを用いて384ウェルプレート中に播種し、一次スクリーニングにおいて4μg/mLの各化合物で三重に2日間処理し、384ウェル洗浄器を有するPackard Minitrakでリン酸緩衝化食塩水を用いて洗浄し、0.7μg/mLのカルセイン(Molecular Probes)で4時間インキュベートした。各ウェル中の全蛍光強度をPackard Fusionプレートリーダーで記録し、装置バックグラウンドを差し引くことでシグナルのパーセント阻害に変換し、細胞が任意の化合物で処理されなかった場合に得られた平均シグナルで割った。
アラマーブルー生存アッセイ
アラマーブルーは、生細胞中のミトコンドリア酵素活性によって減少され、比色定量変化および蛍光変化の両方を生じる(Nociariら,1998, J.Immunol. Methods 13, 157-167)。細胞を、シリンジバルクディスペンサー(Zymark)を用いて384ウェルの黒色で、透明な底部プレートのウェルあたり6000個の細胞(50μl)の密度で播種した。連続して2倍希釈したエラスチンプレート(6×最終濃度)から、384固定化カニューレヘッドを用いて10μlを除去し、最も高い濃度を有するウェル中に最終濃度20μg/mlとした。プレートを24時間インキュベートした。アラマーブルー(Biosource International)を1:10に希釈することで各ウェルに添加し、37℃で16時間インキュベートした。535nmに中心がくるように調節された励起フィルターおよび590nmに中心がくるように調節された発光フィルターを有するPackard Fusion プレートリーダーを用いて蛍光強度を測定した。各濃度での平均パーセント阻害を計算した。エラーバーは1つの標準偏差を示す。アラマーブルーアッセイは細胞の洗浄を含まない。
スクリーニング
Zymark Sciclone ALHを用いてレプリカ娘プレートを調製し、ストックプレートを血清およびpen/strepを欠く培地中に50倍に希釈することでTwister IIにまとめ、娘プレート中に2% DMSOを有する80μg/mlの化合物濃度を得た。シリンジバルクディスペンサーを用いて黒色で、透明な底部384ウェルプレート中の縦列1〜23(57μl中に6000細胞/ウェル)に細胞を播種することによってアッセイプレートを調製した。384位置固定カニューレアレイを用いて娘ライブラリープレートから3μlを移すことによって、縦列3〜22を、娘ライブラリープレートからの化合物で処理した。アッセイプレートの最終化合物濃度は、従って4μg/mlであった。アッセイプレートを、5%CO2を含む加湿されたインキュベーター中37℃で48時間インキュベートした。カルセインAM生存アッセイのためのプレート処理をPackard Bioscience(Perkin Elmer)からの統合Minitrak/Sidetrak ロボットシステムを用いて実施した。アッセイプレートをリン酸緩衝化食塩水で洗浄し、ウェルあたり20μlのカルセインAM(0.7μg/ml)を添加した。プレートを室温で4時間インキュベートした。蛍光強度を485nmの励起および535nmの発光に中心を調節されたフィルターを有するFusionプレートリーダーを用いて測定した。
希釈シリーズにおける化合物の再試験
再試験される化合物を製造業者から購入した。384ウェルポリプロピレンプレートのDMSO中に1mg/mlの濃度でストックを調製し、16点の、2倍希釈用量曲線の各化合物を縦列において二重に有した。縦列1〜2および23〜24をコントロールのために空にした。384ウェル深深ウェルプレートのDMSOに66.6倍に希釈すること(4.5μlを300μlに移す)によってストック再試験プレートから娘再試験プレートを調製した。細胞を、ウェルあたり40μl中6000の密度で播種し、20μlを娘再試験プレートから添加した。プレートを5%CO2と共に37℃で2日間インキュベートした。
データ分析
未処理細胞の平均RFU(相対蛍光ユニット)を、縦列1、2および23を平均することで計算した(化合物を欠くが細胞を有するウェル)。カルセインバックグラウンドを、縦列24を平均することによって計算した(細胞を欠くがカルセインを有するウェル)。各ウェルのパーセント阻害を、[1-(RFU-カルセインコントロール)/(未処理細胞―カルセインコントロール)*100]として計算した。一次スクリーニングで少なくともカルセイン染色の50%阻害を生じる化合物を、BJ一次細胞およびBJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞中で濃度の範囲で試験することによってBJ-TERT/LT/ST/RASV12遺伝子工学で作られた腫瘍細胞に対する選択性を試験した。選択化合物を全ての遺伝子工学で作られた細胞株で再試験した。
核形態アッセイ
増殖培地中に何もなし(NT)、9μMエラスチンまたは1.1μMカンプトテシン(CPT)で18時間処理されるが、一方で5%CO2と共に37℃でインキュベートされる、6ウェルのディッシュの各ウェルのガラスカバーグラス上に200,000個の腫瘍形成BJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞を2mLで播種した。核を25μg/mL Hoechst 33342(Molecular Probes)で染色し、蛍光顕微鏡で油浸100×対物レンズを用いて観察した。
細胞サイズ測定
200,000個のBJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞を、6ウェルのディッシュ中に2mLの増殖培地のみ(処理なし)、9μMのエラスチンまたは1.1μMのカンプトテシン(CPT)を有する2mL増殖培地に播種した。24時間後に、細胞をトリプシン/EDTAを用いて解離し、増殖培地で10mLに希釈し、各試料の細胞サイズ分布をCoulter Counterで決定した。
カンプトテシン活性のための細胞計数アッセイ
BJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞を、6ウェルディッシュ中に播種し(200000細胞/ウェル;2ml/ウェル)、Oligofectamine(Life Technologies)を用いて血清および抗生物質を含まない培地中で全体積1ml中ウェルあたり100nMのsiRNAをトランスフェクトした。30%のFBSを含む500μlの培地をトランスフェクトした4時間後に添加した。トランスフェクトした30時間後に指示された濃度のカンプトテシンで細胞を処理した。500μlの所望のカンプトテシン濃度の5×溶液を各ウェルに添加した。細胞を、トリプシン-EDTAで除去し、トランスフェクトした75時間後に血球計を用いて計数した。コントロール実験は、トランスフェクション効率がおよそ10%であることを示した。
ウェスタンブロット分析
カスパーゼ-3
BJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞を、実験前に60mmディッシュに5×105細胞で播種した。細胞を5μg/mlエラスチン(9μM)で2、4、6、8または10時間処理した。1つのディッシュを、陽性コントロールとしてカンプトテシン処理(24時間の0.4μg/ml)について維持した。各時点後に細胞を溶解バッファ(50 mM HEPES KOH pH7.4, 40 nM NaCl, 2 mM EDTA, 0.5% TritonX-100, 1.5 mM Na3VO4, 50 mM NaF, 10 mMピロリン酸ナトリウム, 10 mMβ-グリセロリン酸ナトリウムおよびプロテアーゼインヒビタータブレット(Roche))に溶解した。タンパク質含量をBiorad タンパク質アッセイ試薬を用いて定量した。等量のタンパク質を16%のSDS-ポリアクリルアミドゲルで分離した。電気泳動されたタンパク質をPVDF膜に転写し、5%ミルクでブロッキングし、1:1500の希釈の抗-活性カスパーゼ-3ポリクローナル抗体(BD Pharmingen)を用いて4℃で一晩インキュベートした。膜を次に1:3000の希釈の抗-ウサギ-HRP(Santa Cruz Biotechnology)中で1時間インキュベートし、増強化学発光混合物(NEN life science, Renaissance)を用いて発色した。各レーンに載せられる等価物を試験するために、ブロット物をストリップし、ブロッキングし、1:1000希釈の抗-eIF-4E抗体(BD Transduction laboratories)でプローブした。
トポイソメラーゼ-IIα
BJ、BJ-TERT、BJ-TERT/LT/ST、BJ-TERT/LT/ST/RASV12、BJ-TERT/LT/RASV12およびBJ-TERT/LT/RASV12/ST細胞を60mmディッシュ中にディッシュあたり1×106細胞で播種した。5%CO2を伴う37℃で細胞の一晩インキュベーションの後、細胞を上記のように溶解し、タンパク質を10%ポリアクリルアミドゲルで分離した。膜を、1:1000希釈のモノクローナル抗-ヒトトポイソメラーゼIIαp170抗体(TopoGEN)と共に4℃で一晩インキュベートし、次に抗-マウスHRP(Santa Cruz Biotechnology)と共にインキュベートした。
トポイソメラーゼ1(TOP1)
TOP1に対して指向された21個のヌクレオチド二本鎖siRNA(開始コドンから番号をつけてヌクレオチド2233〜2255、Genbank accession J03250)を合成し(Dharmacon,精製および脱塩/脱保護)、6ウェルディッシュのBJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞にoligofectamine(Life Technologies)を用いて(100nM)トランスフェクトした。75時間後に細胞を、溶解し、TOP1の発現レベルをウェスタンブロットによって決定した(Topogen, Cat♯2012-2,1:1000希釈)。タンパク質充填レベルを、ストリップし、同じブロットをeIF-4Eに対して指向された抗体(BD Biosciences, Cat♯610270,1:500希釈)で再プローブすることによって決定した。また、1×106細胞を、60mmディッシュに播種し、5%CO2を伴う37℃で一晩増殖し、次に150μlの溶解バッファで溶解した。細胞を、スクレーパーを用いて除去し、マイクロ遠心チューブに移し、氷上で30分間インキュベートした。溶解物中のタンパク質の含量を、Bioradタンパク質評価アッセイ試薬を用いて定量した。タンパク質の等量を10%勾配SDS-ポリアクリルアミドゲルに載せた。電気泳動されたタンパク質をPVDF膜上に転写した。5%乾燥ミルクでブロッキングした後、膜を、マウス抗-ヒトトポイソメラーゼI抗体(Pharmingen)と共に4℃で一晩インキュベートし、次に抗-マウスペルオキシダーゼ結合体抗体(Santa Cruz Biotechnology)と共にインキュベートした。
アネキシンV-FITCアポトーシスアッセイ
BJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞を、100mmディッシュ中にディッシュあたり1×106細胞で播種し、一晩増殖させた。細胞を、エラスチン(5または10μg/ml)で6、8または11時間処理した。播種時に処理されたカンプトテシン処理(0.4μg/ml)コントロールを20時間維持した。処理後、細胞をトリプシン/EDTAで回収し、血清を含む新鮮培地で一度、次にリン酸緩衝化食塩水で二度洗浄した。細胞を、1×結合バッファ(BD Pharmingen)中に1×106細胞/mlの濃度で再懸濁した。100μl(1×105細胞)を5μlのアネキシンV−FITC(BD Pharmingen)およびヨウ化プロピジウム(BD Pharmingen)と共に暗所中室温で15分間インキュベートした。次に、400μlの1×結合バッファを添加し、細胞をフローサイトメトリー(Becton-Dickinson)によって分析した。データを得、Cellquestソフトウェアを用いて分析した。ヨウ化プロピジウムで染色しなかった生細胞のみをアネキシンV-FITC染色についてFL1チャンネルを用いて分析した。
ROS分析:H2DCF-DAを用いたフローサイトメトリー分析
2',7'-ジクロロジヒドロフルオロセインジアセテート(H2DCF-DA)は、非蛍光細胞透過性化合物である。細胞内の内在性エステラーゼ酵素は、ジアセテート部分を切断し、細胞から外へもはや通過し得ない。従って、これは細胞に蓄積する。次にH2DCFはROSと反応し、FL1チャンネルのフローサイトメトリーによって測定され得る蛍光ジクロロフルオロセイン(DCF)を形成する。
1. 60mmディッシュのディッシュあたり3×105細胞で細胞を播種し、一晩増殖させる。
2. 異なる時間(1〜10時間)試験化合物で処理する。
3. 各時点に関して未処理細胞、化合物処理細胞について1つのディッシュおよび陽性コントロールディッシュ(過酸化水素処理)を維持する。
4. 10μMのH2DCF-DAで細胞を37℃で10分間インキュベートする。
5. 陽性コントロール細胞について、H2DCF-DA負荷の5分後に500μMの過酸化水素を添加し、さらに5分間インキュベートする。
6. 細胞をトリプシン処理によって回収する。
7. 冷却PBSで2度洗浄する。
8. 100μlのPBSにペレットを再懸濁し、5mlのFACSチューブに移す。
9. 5μlのヨウ化プロピジウム(50μg/ml)を添加し、暗所中氷上で10分間インキュベートする。
10. 400μlのPBSを添加し、フローサイトメトリー(Becton-Dickinson)によって分析する。
11. データを得、CellQuestソフトウェアプログラムを用いて分析する。
12. FL1チャンネルを用いたDCF染色、FL3チャンネルにおけるPIのための分析のためにヨウ化プロピジウム陰性細胞(生細胞)だけを取り出し、4半分チャートをプロットする。
BJELR細胞でエラスチン活性を抑制し得る化合物のためのACLライブラリーのスクリーニング
方法:
ACLライブラリーは1,540個の化合物を含み、全ての化合物を384ウェルポリプロピレンプレート中に4μg/mlでDMSO中に調製し、-20℃で保存した。各ライブラリープレートについてレプリカ娘プレートをZymark Scilone ALHを用いて調製した。娘プレートをDMEMで50倍に希釈し、娘プレートの化合物濃度は、2%DMSOを伴う80μg/mlである。アッセイプレートにおいて、娘プレートからの化合物は細胞懸濁で20倍に希釈され、従って、各化合物の最終濃度は4μg/mlである。
シリンジバルクディスペンサーを用いて384ウェル黒色で、透明な底部プレート中にBJELR細胞を6000細胞/ウェル(57μl)(共処理スクリーニングについて)および5000細胞/ウェル(57μl)(前処理スクリーニングについて)で播種した。共処理サプレッサースクリーニングのために、ACLライブラリーの娘プレートからの3μlの化合物で細胞を処理し(アッセイプレート中で4μg/mlの最終濃度)、同時に5μg/mlのエラスチンで処理した。化合物の移送を、384固定化カニューレヘッドを用いて行なった。プレートを、5%CO2を伴うインキュベーター中37℃で48時間インキュベートした。前処理スクリーニングのために、細胞を、ACL娘ライブラリープレートからの化合物で一晩前処理し、次に5μg/mlのエラスチンでさらに48時間処理した。Packard BioScienceからのMiniTrak/SideTrak ロボットシステムを用いてプレートをカルセインアッセイのために処理した。アッセイプレートをPBSで洗浄し、カルセインAM(0.7μg/ml)で室温にて4時間インキュベートした。蛍光強度を485nmの励起および535nmの発光に中心を調節されたフィルターを有するFusion プレートリーダーを用いて測定した。BJELR細胞は、BJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞である。
表1は、遺伝子工学で作られた細胞株の腫瘍選択的化合物の能力を示す。9つの腫瘍選択的化合物を、遺伝子工学で作られた全ての細胞株において16点、2倍希釈用量曲線で再試験した。表は、各細胞株の各化合物についてカルセインAM染色の50%阻害(IC50)を達成するのに必要とされる濃度(μg/mL)を列挙する。一次BJ細胞のIC50をBJ-TERT/LT/ST/RASV12腫瘍形成細胞のIC50で割ることで各化合物について腫瘍選択比を得た。各遺伝子エレメントについての化合物選択性を、一連の細胞株のそれぞれの後の対についての選択比を計算することで決定した。スモールT癌タンパク質選択的化合物をPP2A(スモールT癌タンパク質の標的)について選択的とみなしたが、一方でE6選択的化合物をp53の欠損に選択的とみなし、E7選択的化合物をRBの欠損に選択的とみなした。

表2は、遺伝子工学で作られた細胞株の腫瘍選択的化合物の能力を示す。表は各細胞株の各化合物についてカルセインAM染色(IC50)の阻害(ネガティブ%値)または増強(ポジティブ%値)を列挙する。



















実施例4 エラスチンの結合パートナーの同定および特徴付け
固定化エラスチンおよび細胞溶解物を用いるプルダウン(pull-down)アッセイを、細胞内でエラスチン結合パートナーを同定する最初の試みに使用した。最初のプルダウン実験を、HEK293、BJEHおよびBJELR全細胞溶解物を用いて実施した。これらの実験において、エラスチンのメチル-アミノ誘導体(ERA-A6)をAffigel 10に固定化し、標準プルダウン条件下で溶解物とインキュベートした。ビーズを洗浄し、100μMエラスチンまたは0.8%N-ラウロイルサルコシン(サルコシル)のいずれかで溶出した。溶出物を質量分析に供した。
エラスチンプルダウンアッセイの結果の分析は、HEK293溶解物またはBJEH溶解物およびBJELR溶解物を用いたプルダウン実験のこの最初のセットで同定された、ミトコンドリアタンパク質またはER膜タンパク質の高い割合となった。これは膜孔がエラスチンまたはそのアナログの1つの標的であり得ることを示唆した。しかしながら、この結果は、エラスチンがプルダウン実験のこのセットでまだ同定されていないさらなる標的および/または異なる標的を有し得るという可能性を排除しない。
いくつかのタンパク質を、エラスチンまたはエラスチンアナログを用いるプルダウン実験で繰り返し観察した。VDAC1、VDAC2、VDAC3、プロヒビチン、リボホリン、Sec61aおよびSec22bを含むこれらのタンパク質は、おそらくエラスチンの標的である。
全細胞溶解混合物はなお非常に複雑であったので、これらのタンパク質はプルダウン実験のサルコシル溶出液中にのみ検出された。これは、潜在的に質量分析を複雑にする。従って、混合物を単純にするために、種々の分離方法を使用し、全細胞溶解物プルダウン実験から同定されたいくつかのタンパク質を単離したか、あるいは前濃縮した。
プロヒビチンおよびVDACアイソフォームは全てミトコンドリアタンパク質であるので、出願人らは細胞溶解物からミトコンドリアを単離することで潜在的なエラスチン標的を濃縮した。単離されたミトコンドリア抽出物を次にエラスチンプルダウン実験に使用した。ミトコンドリア抽出物を用いたこれらのエラスチンプルダウン実験において、プロヒビチン、VDACおよびリボホリンをまた、ウェスタンブロットによって同定した。図14は、ミトコンドリア抽出物をビーズ上に固定化された活性(A6)および不活性(B1)エラスチン誘導体と接触したプルダウンのウェスタンブロットを示す。プルダウンを、ミトコンドリア抽出物の0.25mgの全タンパク質を用いて実施した。ビーズを抽出物と4℃で1.5時間インキュベートし、次に何回か洗浄した。固定化エラスチン誘導体に結合したタンパク質を50μLの0.8%N-ラウロイルサルコシン溶液で溶出した。タンパク質を、抗-リボホリン、抗-Sec6、抗-プロヒビチン、および抗-VDAC抗体の混合物を用いたウェスタンブロットによって同定した。タンパク質をまた、MS分析によって同定した。
リボホリンおよびプロヒビチンは、5.57(プロヒビチン)および5.96(リボホリンI)の計算されたPIを有する少し酸性のタンパク質である。出願人らはpH6.8でのMonoQカラムのイオン交換クロマトグラフィーによってより塩基性のタンパク質(VDACアイソフォーム、Sec22およびSec61a)からこれらの2つのタンパク質を分離した。画分を次に抗体を用いてプロヒビチン含量またはリボホリン含量について試験した。画分をまた、固定化ERA-A6および固定化ERA-B1化合物を含むBIACORETM表面への結合について試験した。プロヒビチンおよびリボホリンをBIACORETM実験で結合を示した画分中に見出した。驚くべきことに、使用された抗体のいずれとも反応しなかった未知の45kDaタンパク質は、銀染色SDS-PAGEゲル中でERA-A6ビーズまたはERA-B1ビーズに結合することを観察した。
これらの当たりを確認するために、ERA-A6およびERA-B1を用いたプルダウン実験を、MonoQ溶出物の画分から実施した。再度、プロヒビチンおよびリボホリンをいくつかの画分からエラスチンビーズへの結合として同定した。これらの実験は、VDACアイソフォーム、ならびにプロヒビチンおよびリボホリンがエラスチンおよびエラスチンアナログに結合するという概念を明らかに支持する。従って、これらのタンパク質は、全てインビボでのエラスチンの潜在的標的/結合パートナーである。
実施例5 様々なVDACアイソフォームの発現レベル
エラスチンのERA-A6アナログを用いた首尾よいプルダウンは、BJEH細胞由来の溶解物と比較して、BJELR溶解物からプルダウンを実施した場合、VDAC3についてより高いMSベース同定スコアを一貫して生じた。VDACアイソフォームのより高いスコアは、比較可能な全タンパク質の量である場合、BJEH溶解物と比較して、BJELR溶解物中のアイソフォームのより高い豊富さと一致する。標的タンパク質のこれらの異なるレベルはエラスチンの選択性に影響を有し得る。
この点に取り組むために、出願人らは、定量的PCR(Q-PCR)を用いて様々なVDACアイソフォームの相対発現レベルを試験した。他の可能な方法は、ウェスタンブロットおよび質量分析を含む。
「正常」BJEH細胞株および腫瘍形成BJELR株中の様々な遺伝子についてmRNA(遺伝子発現の代用マーカーとして)の相対量を決定するために定量的PCR(Q-PCR)実験を実施した。VDACアイソフォーム(VDAC1、2および3)のそれぞれについて、mRNAの2つの領域を増幅のために標的とした。これらの領域を、それぞれ1および1−2、2−1および2−2、ならびに3−1および3−2と呼ぶ。目的の各遺伝子についてmRNA断片増幅についてのQ-PCRシグナルを、一連の内部標準と比較し、標的細胞中のGAPDH mRNA由来のシグナルに対してスケールした。図11に記述される結果は、VDAC3の発現がBJEH細胞の発現と比較してBJELR細胞で有意に上昇されることを示す。この発見は、いくつかの他の遺伝子について観察された結果とコントロール的であり、BJEH細胞で観察されたものと比較してBJELR細胞で抑制された。
図12を、図11と同じQ-PCRデータを用いて生じたが、図12は標的細胞中のVDACアイソフォームの相対発現レベルに専ら焦点を当てる。それぞれの増幅されたmRNA断片についてのQ-PCRシグナルを一連の内部標準と比較して、100%と定義する標的細胞のVDAC1 mRNA由来のシグナルに対して表される。図11のように、VDACアイソフォーム(VDAC1、2および3)のそれぞれについてmRNAの2つの増幅された領域を、それぞれ1、1−2、2−1、2−2、3−1、および3−2と呼ぶ。結果は、VDAC3の発現が、BJEH細胞よりもBJELR細胞で2〜2.5倍高いレベルで発現されることを示す。
一緒に考慮すると、これらの発見はBJELR細胞のエラスチン処理への異なる感受性を説明する潜在的な機構を示唆する。
実施例6 様々なVDACアイソフォームに対するエラスチンの機能評価
機能アッセイは、エラスチンに対する機能標的として同定タンパク質を確認するために役立つ。特定の態様において、単離されたミトコンドリアは、エラスチンがミトコンドリア機能に対する任意の機能効果または表現型効果を有するかどうかを見るために使用され得る。例えば、表現型効果は顕微鏡によって観察され得るが、一方でミトコンドリア膜電位の変化の検出、またはエラスチン処理時の酸化種の放出は、反応性酸素種(ROS)を検出するための、当該分野で公知な特定の色素を用いることによって観察され得る。
特定の他の態様において、確認実験は、アジド-エラスチン誘導体、またはエラスチンアナログもしくは2座アフィニティー標識架橋剤(SBED等)、もしくは切断可能な架橋剤に連結される誘導体を用いる標的タンパク質の光アフィニティー標識を含み得る。
さらに他の態様において、組換えタンパク質および過剰発現タンパク質を、エラスチンがこれらの機能に対して有し得る任意の潜在的な効果を評価するために特定のインビトロアッセイで使用し得る。かかるインビトロアッセイは、限定はされないが、直接結合(インビトロまたはBIACORETM)、またはVDACアイソフォームのチャンネル特性を決定し得る流出アッセイを含み得る。
さらに他の態様において、これらの標的タンパク質のノックアウト変異体(細胞または生物)を使用し得る。野生型と比較して、これらの変異体は、エラスチンに対して耐性または過敏のいずれかになり得る。これらのノックアウト細胞株をまた、エラスチンまたはそのアナログの特異性を決定および/または評価するためにハイスループットスクリーニング(HTS)で使用し得る。
さらに他の態様において、VDAC、プロヒビチンおよびリボホリンについてのRNAi実験をまた、エラスチン処理の際に任意の表現型(例えば、エラスチン耐性または過敏)を評価するために使用し得る。本発明のこの態様に従って、それぞれVDAC1、VDAC2およびVDAC3を標的とするSMARTPOOL(登録商標)siRNAを、Dharmacon(Lafayette, CO)から購入し得る。トランスフェクション条件を次に、例えば、384ウェルプレート中でFUGENETMおよびoligofectamine、ならびに蛍光標識したsiRNA二重鎖を用いて最適化する。かかる手順は、約90%のトランスフェクション効率となった。ELR腫瘍細胞を次に、VDAC1、VDAC2、またはVDAC3に対するsiRNAでトランスフェクションし得、エラスチンに対する用量応答を測定し得る。
実施例7 細胞増殖の阻害
化合物のBJELR細胞およびBJEH細胞の増殖を阻害する能力を決定する。化合物を、化合物処理の結果として細胞生存増殖の変化をモニターする表現型アッセイであるSytox 一次スクリーニングによって評価する。これは、癌患者で見出された原因となる変異を有する細胞の増殖能を特異的に変更するが、一方で正常細胞の増殖に影響を与えない化合物を同定するハイスループット方法として発明されている。アッセイは、安価、単純および信頼可能な、核酸と結合する膜非透過性蛍光色素(Sytox, Molecular Probesから)の読み取りに依存する。健常細胞において、細胞膜はそのままであり、色素は中に入らないためにシグナルは検出されない。しかしながら、細胞膜がアポトーシスまたはネクローシスの結果として妥協して処理される場合、同様に影響を受けた細胞の数に比例する蛍光シグナルが検出される。2段階読み取り(すべての細胞の標識を可能にする界面活性剤の存在下での最終読み取り)を利用することによって、アッセイは、細胞分裂停止、細胞傷害性および/または有糸分裂生起を生じる化合物を同定し得る。第一の読み取りまたは「死細胞」読み取りは、アッセイ時の培養物中の死細胞または死にかけている細胞の数を示すことによって所定の化合物の傷害性の評価を提供する。第二の読み取りまたは「全細胞」読み取りは、細胞集団のサイズを減少する点における傷害性の蓄積効果および試験化合物が傷害性の無い試験集団の細胞に対して発揮し得る任意の細胞分裂停止効果または抗増殖性効果の両方を捕捉する。
スクリーニングの目的のために、以前に記載されたBJ-TERT株を、「正常な」参照細胞株として定義し、BJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞は腫瘍形成細胞株である。処置無しで72時間後にウェル中で95%コンフルエンシーを可能にする密度で細胞を96ウェルプレートに一晩播種する。次の日、細胞を希釈シリーズの試験化合物に48時間曝露する。このインキュベーション期間に続いて、Sytox試薬を製造者の推奨する濃度で培養物に添加し、死細胞の蛍光読み取りを行なう。この測定の完了後に、界面活性剤サポニンを、培養物の各ウェルに添加し、膜を透過性にするSytox試薬がどの細胞にも入ることを可能にし、それによって培養物中に残存する全細胞数の測定を容易にする。
実施例8 3-(2-エトキシフェニル)-2-(ピペラジン-1-イルメチル)キナゾリン-4(3H)-オン(化合物5)の合成
工程1:2-(クロロメチル)-4H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-4-オン(化合物2)の調製
方法1:
窒素雰囲気下で、アントラニル酸(化合物1、15.3g)を、300mLのジクロロメタン(CH2Cl2)に溶解した。トリエチルアミン(TEA、1.1当量)を次に添加し、混合物を氷水浴中で冷却した。ジクロロメタン(150mL)中のクロロアセチルクロリド(1.1当量)の溶液を滴下で添加し、混合物を周囲温度まで温めながら2時間攪拌した。(氷浴は、添加の終わりに除去され得、混合物は2時間を超えて周囲温度まで温められ得る。)固形物を濾過によって単離し、冷水(2×)続いてヘキサン中の5%ジエチルエーテル(Et2O)で洗浄し、空気乾燥し、白色粉末固形物として化合物2を得た(22.5g、定量的収量)。最終生成物をLC/MS m/z MH+ 196.13; >95%純度;1HNMRによって特徴付けた。
方法2−反応溶媒としてのジメチルホルムアミド(DMF)の使用:
10gのアントラニル酸を300mLのDMFに溶解した。TEA(1.5当量)を添加し、混合物を氷/水浴中で冷却した。DMF(100mL)中のクロロアセチルクロリド(1.3当量)の溶液を冷却反応混合物に滴下で添加した。氷/水浴を除き、反応混合物を2時間攪拌させた。反応混合物を氷冷水(200〜300mL)に注ぎ、酢酸エチル(EtOAc,3x抽出)で抽出した。有機層を合わせて、水および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム(Na2SO4)で乾燥した。濃縮物は100mLの10%Et2O/ヘキサンで粉末にされた固形物を与え、白色粉末として化合物2を得た(12g、85%収量)。最終生成物をLC/MSによって特徴づけた。
工程2:2-(クロロメチル)-3-(2-エトキシフェニル)キナゾリン-4(3H)-オン(化合物3)の調製

方法1−トリクロロホスフィン(PCl3)を用いる:
窒素雰囲気下で、化合物2(8.8g)を440mLのアセトニトリル(CH3CN)に溶解し、これに2-エトキシベンゼンアミン(1.5当量)を添加し、攪拌した。この十分に攪拌された反応混合物に、PCl3(2当量)を滴下添加した。得られたスラリーを6〜12時間、50℃で加熱した。反応混合物を飽和Na2CO3/氷混合物に注ぎ、30分攪拌し、EtOAc(3x300mL)で抽出した。合わせた有機層を(最小量の)水および塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶液を濃縮し、粗固形物/油混合物を3%Et2O/ヘキサン(2x100mL)で粉末にし、ほとんどの未反応フェネチジンを除去した。得られた固形物を濾過によって単離し、シリカゲル(20%EtOAc/ヘキサン)のカラムを通過させることによってさらに精製した。化合物3を白色粉末として単離した(11g、75〜80%)。最終生成物をLC/MS m/z MH+ 315/317; >98%純度によって特徴付けした。
方法2−ホスホリルトリクロリド(POCl3)を用いる:
窒素雰囲気下で、化合物2(1.2g、6.0 mmol;1.0当量)および2-エトキシベンゼンアミン(1.2 mL;9.0 mmol、1.5当量)を30mLのCH3CNに溶解した。この溶液にPOCl3(1.1 mL、12 mmol、2.0当量)を滴下添加し、混合物を、3時間を超えて還流加熱した。反応物を、周囲温度まで冷却し、氷/飽和NaHCO3のスラリーに注ぎ、EtOAc(3x200 mL)で抽出した。合わせた有機層を水および塩水で洗浄し、Na2SO4で(ove)乾燥した。LC/MSによる粗反応混合物の分析は、少量の副生成物化合物3c(2〜3%)と共に所望の生成物化合物3(97%)の存在を確認した。LC/MSのMH+ m/z(333/334/335)は、化合物3cのジアミド構造と一致する。所望の生成物を、シリカゲルのクロマトグラフィー後に典型的に単離し(方法1の工程2に前記されるように)、白色粉末として化合物3を得た(1.3g、80〜85%収量)。
工程3:3-(2-エトキシフェニル)-2-(ピペラジン-1-イルメチル)キナゾリン-4(3H)-オン(化合物5)の調製
方法1:
窒素雰囲気下で、化合物3(5g)をCH3CN(0.08〜0.2M化合物濃度)に溶解し、これに炭酸カリウム(K2CO3、1.2当量、市販粉末)、ピペラジン(2当量)およびヨウ化テトラブチルアンモニウム(0.2当量)をその順番に添加した。混合物を8〜10時間60℃(浴温度)で加熱した。反応物を、以下の2つの方法:(a)溶媒の80%を蒸発させ、水(20mL)を添加し、混合物をEtOAc(4×60mL)で抽出する;または(b)反応混合物を400mLのEtOAcで希釈し、水(3×20mL)で洗浄する、のいずれかで進めた。合わせた有機層を塩水で洗浄し、濃縮し、淡黄油を得た。化合物5を、シリカ(10〜25%MeOH/ジクロロメタン)の中圧力クロマトグラフィー(CombiFlash(登録商標))による精製後に白色粉末(80〜85%収量)として得た。生成物を1HNMRおよびLC/MS MH+ 365によって特徴付けた。
工程4:tert-ブチル4-((3-(2-エトキシフェニル)-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)メチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(化合物4)の調製
方法1:
窒素雰囲気下で化合物3(4.0g、12.7 mmol、1.0当量)を60mLのCH3CNに溶解し、この溶液にK2CO3(2.1g、15 mmol、1.2当量)、Boc-ピペラジン(4.73g、25 mmol、2.0当量)およびヨウ化ナトリウム(NaI、570mg、3mmol、0.3当量)の固形物試料をこの順番で添加した。混合物(懸濁液)を3〜6時間80℃で加熱した。白色懸濁物が生じた。TLCおよびLC/MSを用いた反応の実験は、化合物3から化合物4への完全な転換を示した。およそ30mLのCH3CNを減圧下での蒸留によって除去し、得られたスラリーに60mLの水を添加し、混合物をEtOAc(4x60 mL)で抽出した。合わせた有機層を、水、塩化アンモニウムの飽和溶液(未反応Boc-ピペラジンを除去するため)、NaHCO3の飽和溶液および塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。濾過濃縮物はヘキサンで粉末にされた固形物を与え、白色固形物として化合物4(5.6g、定量的収量)を得た。この物質を、さらなる精製なしで次の脱保護工程に使用した。最終化合物を1HNMR、LCMSによって特徴づけた。
工程5:3-(2-エトキシフェニル)-2-(ピペラジン-1-イルメチル)キナゾリン-4(3H)-オン(化合物5)の調製
方法1:
化合物4(2.7g、5.8 mmol、1.0当量)を、周囲温度で15mLの無水ジオキサンに懸濁した。4N HCl/ジオキサンの溶液(17 mL、12当量)を、周囲温度で滴下添加した;反応の30分後にさらなる17mLの4N HCl/ジオキサンを添加し、反応進行をLC/MSによってモニターした。(これは発熱反応であり、ガス放出が観察された。反応系は、無水条件を維持するが、一方で圧力放出のために開放されなければならない。)任意の量の未反応化合物4が残っている場合、さらなる8〜10 mLの4N HCl/ジオキサンが添加され、反応を完了し得る。反応の終わりに、水およびCH2Cl2の40mLそれぞれを反応物に添加し、混合物を十分な量の飽和水性Na2CO3溶液を添加することによって塩基性にし、8〜9のpHを達成した。層を分離し、水層をCH2Cl2(3x60mL)で抽出した。有機層を合わせて、水(4x10mL、水性抽出物のpHがおよそ中性になるまで)および塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。濃縮物は、シリカ(10〜25%MeOH/ジクロロメタン)の中圧力クロマトグラフィー(CombiFlash(登録商標))によって精製された淡黄油を与え、5〜10%ジエチルエーテルを含むヘキサンで粉末にした後に白色粉末として化合物5を得た(85〜95%収量)。化合物5を1HNMRおよびLC/MSによって特徴付けた。
概略:分析方法
以下のLC条件を用いて化合物5を分析した:
カラム:MSのためのXTerra(登録商標);C18、3.5μm
大きさ:2.1x150 mm
勾配:75% CH3CN(0.08%のギ酸を含む)/25%水(0.1%のギ酸を含む)〜90%CH3CN(0.08%ギ酸を含む)/10%水(0.1%ギ酸を含む)
全ての化合物を以下のカラムおよび移動相条件下でLC/MSによって分析した:
実施例9 Sytox一次スクリーニング
Sytox一次スクリーニングは、化合物処理の結果として細胞生存−増殖の変化をモニターする表現型アッセイである。これは、癌患者で見出された原因となる変異を有する細胞の増殖能を特異的に変更するが、一方で正常細胞の増殖に影響を与えない化合物を同定するハイスループット方法として発明された。
アッセイは、安価で、単純および信頼可能な、核酸と結合する膜非透過性蛍光色素(Sytox, Molecular Probesから)の読み取りに依存する。健常細胞において、細胞膜はそのままであり、色素は中に入らないためにシグナルは検出されない。しかしながら、細胞膜がアポトーシスまたはネクローシスの結果として妥協して処理される場合、同様に影響を受けた細胞の数に比例する蛍光シグナルが検出される。2段階読み取り(全ての細胞の標識を可能にする界面活性剤の存在下の最終読み取り)を利用することによって、アッセイは、細胞分裂停止、細胞傷害性および/または有糸分裂生起を生じる化合物を同定し得る。第一の読み取りまたは「死細胞」読み取りは、アッセイ時の培養物中の死細胞または死にかけている細胞の数を示すことによって所定の化合物の傷害性の評価を提供する。第二の読み取りまたは「全細胞」読み取りは、細胞集団のサイズを減少する点における細胞傷害性の蓄積効果および試験化合物が毒性の無い試験集団の細胞に対して発揮し得る任意の細胞分裂停止効果または抗増殖効果の両方を捕捉する。
スクリーニングの目的のために、以前に記載されたBJ-TERT株は「正常」参照細胞株として定義され、BJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞は、腫瘍形成細胞株であった。処理無しで72時間後にウェル中で95%のコンフルエンシーを可能にする密度で96ウェルプレート中に細胞を一晩播種した。次の日、細胞を希釈シリーズの試験化合物に48時間曝露した。このインキュベーション期間に続いて、Sytox試薬を製造者の推奨する濃度で培養物に添加し、死細胞の蛍光読み取りを行なった。この測定の完了後に、界面活性剤サポニンを培養物の各ウェルに添加し、膜を透過性にするSytox試薬がそこでどの細胞にも入ることを可能にし、それによって培養物中に残存する全細胞数の測定を容易にした。
データの評価について、出願人は、細胞傷害性効果または細胞分裂停止効果を示した化合物を区別できなかった。さらなる試験について考慮されるために、化合物は、2つのストリンジェントな基準:
i. 死細胞もしくは全細胞読み取り(または両方)のいずれかの腫瘍細胞株で少なくとも2標準偏差の大きさのシグナルの変化を生じる
ii. 「正常」コントロール細胞について1標準偏差の大きさ未満のシグナルの変化を生じる、を満たさなければならなかった。
本発明の化合物に対応するインビトロデータについて表3および4ならびに図15〜17を参照。
実施例10 HT-1080腫瘍処置研究:PRLX化合物6およびPRLX化合物5の抗腫瘍活性の評価
マウス株:
ヌードBalb/c(Nu/Nu株、Charles River Laboratories)、雌性、5〜6週齢(約20g平均体重)
試験品の処方(formulation)
両方の化合物を、同一の様式で処方した、100mg/kg用量レベルについて、各化合物を、0.2mlの注射体積中10.0mg/mlの濃度で送達した。50mg/kg用量レベルについて、各化合物を、0.2mlの注射体積中5.0mg/mlの濃度で送達した。両方の用量レベルについて、ビヒクルは、0.025% Tween-80、0.01% ベンジルアルコール、35mM 酢酸(HOAc)、100mMリン酸カリウムバッファおよび32mMスクロース、pH6.5を含んだ。
研究群
A:PRLX化合物6@100mg/Kg、QD×5日、IP、n=8
B:PRLX化合物6@50mg/Kg、QD×5日、IP、n=8
C:PRLX化合物5@100mg/Kg、QD×5日、IP、n=8
D:PRLX化合物5@50mg/Kg、QD×5日、IP、n=8
E:ビヒクルコントロール、QD×5日、IP、n=8
F:未処置コントロール、n=8
処置スケジュール:
平均腫瘍体積が約200mmに到達したときに開始し、第5日まで毎日続け、各動物に、全部で5用量について上記処置の1つの単回IP注射を投与した。
腫瘍移植物および病期分類:
70匹のマウスの各々に、右後側腹部への0.1ccの接種物のSC注射によって、1×10HT−1080細胞を移植した。25G×5/8”針サイズを使用した。腫瘍細胞接種物を、DMEM[Gibco, No. 10569-010]+10% FCS[Gibco, No. F-2442]中で培養されたHT−1080細胞(ATCC分離菌、第6継代フリーザーストック)を使用して調製した。細胞回収の時に、細胞は、95〜100%コンフルエンスまで増殖していた。HT−1080接種物を、1.0×10細胞/mlの密度で滅菌DMEM培地+10% FCS中で調製した。腫瘍移植9日後に、動物を、処置群およびコントロール群に一致させ、各群は、8匹のマウスからなった。合計22匹のアウトライアーを、小さすぎるまたは大きすぎるのいずれかである腫瘍のために研究から除外した。これは、研究第1日とみなし、処置を、この日に開始した。
注射溶液の調製
以下の注射溶液を、化合物投与の5日間の各日々に新しく調製した。
100mg/kg用量(群AおよびC)
第1に、100mg/mlストック溶液を、35mgのPRLX化合物6またはPRLX化合物5を0.35mlの溶媒(0.25% Tween−80、0.1%ベンジルアルコールおよび350mM酢酸)に溶解することによって、各化合物について調製した。次いで、最終注射溶液を、各々を3.15mlの希釈液(100mMリン酸カリウムバッファおよび32mMスクロース、pH6.8)と混合することによって、得られたストック溶液を1:10に希釈することによって調製した。次いで、溶液を濾過滅菌した(0.45μm膜)。得られた溶液は、PRLX化合物6またはPRLX化合物5を10.0mg/ml、pH6.5の最終濃度で含んだ。
50mg/Kg用量(群BおよびD)
2つの化合物の各々について、1.0mlの10mg/ml注射溶液(上記)を、1.0mlの希釈液(100mMリン酸カリウムバッファおよび32mMスクロース、pH6.8)の添加によって1:2に希釈した。得られた溶液は、pH6.5で最終濃度5.0mg/mlのPRLX化合物6またはPRLX化合物5を含む。
ビヒクルコントロール(群E)
ビヒクルコントロールを、希釈液(100mMリン酸カリウムバッファおよび32mMスクロース、pH6.8)を使用して溶媒(0.25% Tween−80、0.1%ベンジルアルコールおよび350mM酢酸)を1:10に希釈することによって調製した。ビヒクルコントロールの最終組成物は、最終pH6.8の100mMリン酸カリウムおよび32mMスクロース中に0.025% Tween−80、0.01%ベンジルアルコールおよび35mM HOAcを含んだ。
投薬概要:
腫瘍測定:
第1日に開始して、全ての動物の体重を測定し、腫瘍の大きさ(長さ(L)および幅(W))を1日おきに測定した。次いで、腫瘍測定値を以下の式を使用して腫瘍体積(mm)に変換した:
腫瘍体積=L×W×W/2。
得られた腫瘍体積値を各研究群について各時点について平均し、次いで、時間に対してプロットした。分散を平均の標準誤差(±SEM)として表した。
これらの実験からの結果を、図18〜20に示す。
実施例11 PANC−1腫瘍処置研究:PRLX化合物6およびPRLX化合物5の抗腫瘍活性の評価
PANC−1異種移植片調製物および移植物
PANC−1研究のための実験計画は、以下を除いては、上記実施例10に概略を示されるHT−1080研究の実験計画と本質的に同一であった:継代されたPANC−1腫瘍組織の約30〜40mgの断片は、免疫欠損ヌードマウスの右側腹部に皮下的に移植された。腫瘍増殖を毎日モニターし、腫瘍が約100mmに到達した場合、同様の大きさの腫瘍を有する動物を、群に一致し、化合物投薬を開始した。化合物5の投与は、以下に列挙される用量で5日連続で1日に1回行われた。PANC−1異種移植片において、モデルに対して最大に許容された用量で投与されるゲムシタビンをコントロールとして使用した。ゲムシタビンレジメンは、9日の期間の間3日ごとに毎日3回180mg/kgであった。
これらの実験からの結果を、図21〜22に示す。
参照による援用
本明細書中に示される全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許の各々が参照によって援用されるように具体的かつ個々に示されたように、その全体を参照によって本明細書によって援用される。矛盾がある場合、本明細書中に任意の定義を含む本願は制御する。
(等価物)
本発明の特定の態様が議論され、その一方で、上記明細書は、例示的であり、限定的ではない。本発明の多くのバリエーションは、本明細書および添付の特許性球の範囲の検討の際に当業者に明らかになる。本発明の全範囲は、特許請求の範囲を、これらの等価物の全範囲および本明細書とともに、かかるバリエーションとともに参照することによって決定されるべきである。
図1は、実験的に形質転換したヒト細胞間の関係を示す図である。BJ細胞は、一次ヒト包皮線維芽細胞である。BJ-TERT 細胞は、BJ 細胞から誘導され、酵素テロメラーゼの触媒性サブユニットであるhTERTを発現する。B J-TERT/LT/ST 細胞は、シミアンウイルス40ラージ(LT)およびスモールT (ST) 癌タンパク質の両方をコードするゲノム構築物の導入によってBJ-TERT 細胞から誘導される。BJ-TERT/LT/ST/RASV12 腫瘍細胞は、HRASの発癌性対立遺伝子(RASV12)の導入によってB J-TERT/LT/ST 細胞から誘導される (Hahn et al, 1999, Nat Med 5, 1164-70)。BJ-TERT/LT/RASV12細胞は、TERT、LT、RASV12をコードするcDNA構築物およびコントロールベクターの導入によってBJ 細胞から誘導される(Hahn et al., 2002, Nat Rev Cancer 2, 331-41)。BJ-TERT/LT/RASV12/ST 細胞は、STをコードするcDNAの導入によってBJ-TERT/LT/RASV12細胞から誘導される(Hahn et al., 2002, Nat Rev Cancer 2, 331-41)。TIP5 細胞は、一次ヒト包皮線維芽細胞である。TIP5由来細胞株は、図に示すようなhTERT、LT、ST、RAS、またはパピローマウイルスE6もしくはE7タンパク質をコードするベクターを導入することにより調製した。E6およびE7は、共同してLTを置換し得る (Lessnick et al., 2002, Cancer Cell 1, 393-401)。 図2は、9個の遺伝子型選択的化合物の化学構造を示す。 図3は、操作された細胞へのエキノマイシンおよびカンプトテシンの効果をグラフで示したものを示す。示した細胞を、384ウェルプレート内で48時間、エキノマイシン (A)またはカンプトテシン (B、C)により処理した。カルセインAMを用いて測定した細胞生存率の阻害割合を示す。エラーバーは1つの標準偏差を示す。(A) エキノマイシン処理BJ、BJ-TERT、BJ-TERT/LT/STおよびBJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞; (B) カンプトテシン処理BJ、BJ-TERT、BJ-TERT/LT/STおよびB J-TERT/LT/ST/RASV12 細胞;ならびに(C) カンプトテシン処理BJ-TERT/LT/RASV12、BJ-TERT/LT/RASV12/STおよびBJ-TERT/LT/ST/RASV12細胞。 図4は、操作された細胞へのエラスチンの効果をグラフで示したものを示す。示した細胞を、384ウェルプレート内で48時間、エラスチンにより処理した。カルセインAMを用いて測定した細胞生存率の阻害割合を示す。エラーバーは1つの標準偏差を示す。(A) Erastin処理BJ、BJ-TERT、BJ-TERT/LT/STおよびBJ-TERT/LT/ST/RASV12 細胞; (B) エラスチン処理B J-TERT/LT/RASVI2 細胞 (STを欠く)、B J-TERT/LT/RASV12/ST (腫瘍形成細胞)およびBJ-TERT/LT/ST/RASV12(腫瘍形成細胞);ならびに(C) 独立して誘導したTIP5/TERT、TIP5/TERT/E6、TIP5/TERT/LT、TIP5/TERT/LT/STおよびTIP5/TERT/LT/ST/RASV12細胞。 図5は、腫瘍選択的化合物のタンパク質標的が操作された腫瘍形成細胞において上方調節されることを示す。(A〜C)トポイソメラーゼII (A)またはTOPI (B、C)に対する抗体によるBJ、BJ-TERT、BJ-TERT/LT/ST、BJ-TERT/LT/ST/RASV12、BJ-TERT/LT/RASV12およびBJ-TERT/LT/RASV12/ST細胞の溶解物のウエスタンブロット。パネル(C)では、細胞をTOPI、lamic A/Cに対するsiRNAまたは同じ長さのコントロール二本鎖DNA二重らせん (TOPI dsDNA)でトランスフェクトした。各場合において、ブロットをeIF-4Eに対する抗体でプローブし、加えたタンパク質の量の差を確認した。相対量を各バンドの下に示す。(D) TOPI siRNAは、操作された腫瘍細胞において、カンプトテシンによって引き起こされる細胞死を妨げる。TOPIに対するsiRNAでのトランスフェクションおよび示した濃度のカンプトテシンでの処置後に細胞数を測定した。(E)PP2Aおよび他の細胞ホスファターゼのインヒビターであるオカダ酸は、一次ヒト細胞をカンプトテシンに感作させる。BJ 一次細胞を、示した濃度のカンプトテシンおよびオカダ酸の両方で同時に処理し、カルセインAM 生存率染色への効果を測定した。オカダ酸は、試験した最高濃度、3.4 nM でBJ 細胞を殺傷するが、自身に対する効果はないが、BJ 細胞をカンプトテシンに感受性にする。(F) オカダ酸は、TOPIの発現を刺激する。BJ 一次細胞を、示した濃度のオカダ酸により処理し、TOP1の発現レベルをウエスタンブロットによって測定した。相対量を各バンドの下に示す。 図6は、エラスチンは、ST/RASV12依存的様式で急速な細胞死を誘導することを示す。(A) BJ-TERTおよびBJ-TERT/LT/ST/RASV12 細胞へのエラスチン時間依存的効果。示した濃度のエラスチンの存在下で384ウェルプレートに細胞を播種した。細胞生存率の阻害をカルセインAMを用いて24、48および72時間後に測定した。(B) BJ-TERT (red)およびBJ-TERT/LT/ST/RASV12 (青) 細胞におけるアラマブルー生存率染色へのエラスチンの効果。(C) エラスチンで処理したBJ-TERT/LT/ST/RASV12およびBJ 一次細胞の写真。細胞を一晩結合させ、次いで、9μM エラスチンで24時間処理し、写真撮影した。 図7は、エラスチンではなくカンプトテシンが、アポトーシスの特徴を誘導することを示す。(A) カンプトテシン処理したがエラスチン処理していないBJ-TERT/LT/ST/RASV12 細胞は、示されたように、断片化された核を示した(すべての核の10〜20%、赤および青矢印)。(B) カンプトテシン処理したがエラスチン処理していないBJ-TERT/LT/ST/RASV12 細胞は、アネキシンV染色を示す。M1領域に示された細胞の割合は、未処理、エラスチン処理(9μM)およびカンプトテシン処理(1μM)において、それぞれ6%、6%および38%であった。(C) カンプトテシン処理したがエラスチン処理していないBJ-TERT/LT/ST/RASV12 細胞は、活性化されたカスパーゼ3を有する。カンプトテシンおよびエラスチン処理試料の溶解物を、活性な切断形態のカスパーゼ3に対する抗体によりウエスタンブロットによって解析した。添加レベルの制御のため、ブロットをeIF4Eに対する抗体で再プローブした。 図8は、エラスチンおよびエラスチンBの化学構造を示す。 図9は、核がエラスチン処理腫瘍細胞においてそのままであることを示す。 図10は、エラスチンが反応性酸素種の形成を誘導することを示す。 図11は、エラスチンAの化学構造を示す。 図12は、VDAC3の発現が、非腫瘍形成性 BJEH 細胞に関して腫瘍形成性 BJELR 細胞において有意に上昇したことを示す。 図13は、100%に設定したVDAC-Iのレベルを用いた、標的細胞におけるVDACアイソフォームの相対発現レベルを示す。 図14は、固定化活性 (A6)および不活性(B1) エラスチン誘導体とともにミトコンドリア抽出物を用いたプルダウン(pull-down)実験からのウエスタンブロットおよびSDS-PAGEによって同定されたタンパク質を示す。 図15は、(a) HCT116 細胞、(b)DLD-1 細胞、(c) OVCAR-3 細胞、および(d) BT549 細胞でのMCLアッセイにおける化合物12、13および5を示す。 図16は、(a) MiaPaca2 細胞、(b) DU145 細胞、(c) SK-Mel 28 細胞、および(d) Malm3M 細胞でのMCLアッセイにおける化合物12、13および5を示す。 図17は、(a) BT549 細胞、(b) MCF-7 細胞、(c) HOP-92 細胞、および(d) HOP-62 細胞でのMCLアッセイにおける化合物12、13および5を示す。 図18は、化合物6によるHT-1080異種移植片における腫瘍成長阻害の誘導を示す。 図19は、化合物5によるHT-1080異種移植片における強い腫瘍後退の誘導を示す。 図20は、化合物5によるHT-1080異種移植片における体重傾向を示す。 図21は、化合物6によるPANC-I異種移植片における腫瘍成長阻害の誘導を示す。 図22は、化合物5によるPANC-I異種移植片における腫瘍後退の誘導を示す。

Claims (29)

  1. 以下の式:
























    の1つで表される化合物またはその塩。
  2. 薬学的に許容され得る担体および請求項1記載の化合物を含む医薬組成物。
  3. 治療有効量の請求項1記載の化合物を細胞に投与する工程を含む、細胞死を促進する方法。
  4. 状態が、増強されたRasシグナル伝達活性およびSV40スモールt抗原の細胞性標的タンパク質の変更された活性を有する細胞によって特徴付けられる、請求項3記載の方法。
  5. 状態が、実質的に野生型レベルのRb活性によってさらに特徴付けられる、請求項3記載の方法。
  6. 治療有効量の請求項1記載の化合物を哺乳動物に投与することを含み、状態が、増強されたRasシグナル伝達活性およびSV40スモールt抗原の細胞性標的タンパク質の変更された活性を有する細胞によって特徴付けられる、哺乳動物における状態の処置方法。
  7. 状態が、実質的に野生型レベルのRb活性によってさらに特徴付けられる、請求項6記載の方法。
  8. 前記細胞が増強されたRasシグナル伝達活性を有する、請求項6記載の方法。
  9. 前記細胞がSV40スモールt抗原を過剰発現する、請求項6記載の方法。
  10. 前記細胞がホスファターゼPP2Aの実質的に減少した活性を有する、請求項6記載の方法。
  11. 前記細胞がVDACを過剰発現する、請求項6記載の方法。
  12. 前記状態が癌である、請求項6記載の方法。
  13. 前記細胞がSV40スモールt抗原を発現するように誘導される、請求項6記載の方法。
  14. 前記細胞が、SV40スモールt抗原を過剰発現するウイルスベクターで該細胞を感染することによってSV40スモールt抗原を発現するよう誘導される、請求項13記載の方法。
  15. 前記ウイルスベクターがレトロウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである、請求項14記載の方法。
  16. アポトーシス機構によって細胞を殺傷する薬剤を前記哺乳動物に共同して投与することをさらに含む、請求項6記載の方法。
  17. 前記薬剤が化学療法剤である請求項16記載の方法。
  18. 前記化学療法剤が、EGFレセプターアンタゴニスト、硫化砒素、アドリアマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、シメチジン、カルミノマイシン、塩酸メクロレタミン、ペンタメチルメラミン、チオテパ、テニポシド、シクロホスファミド、クロラムブシル、デメトキシヒポクレリンA、メルファラン、イホスファミド、トロホスファミド、トレオサルファン、ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体、リン酸エトポシド、テニポシド、エトポシド、ロイロシジン、ロイロシン、ビンデシン、9−アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン、クリスナトール、メゲストロール、メトプテリン、マイトマイシンC、エクテナサイジン743、ブスルファン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ロバスタチン、1−メチル−4−フェニルピリジニウムイオン、セムスチン、スタウロスポリン、ストレプトゾシン、フタロシアニン、ダカルバジン、アミノプテリン、メトトレキサート、トリメトレキサート、チオグアニン、メルカプトプリン、フルダラビン、ペンタスタチン、クラドリビン、シタラビン(araC)、ポルフィロマイシン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、塩酸ドキソルビシン、ロイコボリン、ミコフェノール酸、ダウノルビシン、デフェロキサミン、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラルチトレキセド、イダルビシン、エピルビカン、ピラルビカン、ゾルビシン、ミトキサントロン、硫酸ブレオマイシン、アクチノマイシンD、サフラシン、サフラマイシン、キノカルシン、ディスコデルモリド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、酒石酸ビノレルビン、ベルトポルフィン、パクリタキセル、タモキシフェン、ラロキシフェン、チアゾフラン、チオグアニン、リバビリン、EICAR、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、フルタミド、ビカルタミド、ブセレリン、ロイプロリド、プテリジン、エネジイン、レバミゾール、アフラコン、インターフェロン、インターロイキン、アルデスロイキン、フィルグラスチム、サルグラモスチム、リツキシマブ、BCG、トレチノイン、ベタメトゾン、塩酸ゲムシタビン、ベラパミル、VP−16、アルトレタミン、タプシガーギン、オキサリプラチン、イプロプラチン、テトラプラチン、ロバプラチン、DCP、PLD−147、JM118、JM216、JM335、サトラプラチン、ドセタキセル、脱酸素化パクリタキセル、TL−139、5’−ノル−アンヒドロビンブラスチン(以後、5’−ノル−ビンブラスチン)、カンプトテシン、イリノテカン(カンプトサール、CPT−11)、トポテカン(ヒカンプチン)、BAY38−3441、9−ニトロカンプトテシン(オレテシン、ルビテカン)、エキサテカン(DX−8951)、ルートテカン(GI−147211C)、ギマテカン、ホモカンプトテシンジフロモテカン(BN−80915)および9−アミノカンプトテシン(IDEC−13’)、SN−38、ST1481、カラニテシン(BNP1350)、インドロカルバゾール(例えば、NB−506)、プロトベルベリン、イントプリシン、イデノイソキノロン、ベンゾ−フェナジンならびにNB−506から選択される、請求項17記載の方法。
  19. (1)有効量の請求項1記載の化合物;および
    (2)細胞中のVDACの存在量を増加させる薬剤
    を細胞に投与する工程を含む、細胞を殺傷する方法。
  20. VDACが、VDAC1、VDAC2またはVDAC3である請求項19記載の方法。
  21. 前記細胞が癌細胞である、請求項19記載の方法。
  22. 前記薬剤がVDACをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項19記載の方法。
  23. 前記薬剤が、細胞に輸送されるように適合されたVDACタンパク質である、請求項19記載の方法。
  24. 前記薬剤が、異種内在化ドメインと融合されたVDACタンパク質である、請求項23記載の方法。
  25. 前記薬剤が、VDACタンパク質を含むリポソーム調製物である、請求項23記載の方法。
  26. 前記薬剤が内因性VDAC発現を増強または阻害する、請求項19記載の方法。
  27. 前記薬剤がVDAC発現を刺激する請求項26記載の方法。
  28. 前記薬剤がVDACインヒビターの機能を阻害する、請求項26記載の方法。
  29. (1)有効量の請求項1記載の化合物;および
    (2)細胞中のVDACの存在量を減少させる薬剤
    を細胞に投与する工程を含む、細胞を殺傷する方法。
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