JP2008537351A - 可飽和吸収構造体 - Google Patents

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Abstract

多層エピタキシャルヘテロ構造吸収体を備えた可飽和吸収構造体(10)が提供される。この構造体は、典型的には、放射輝度に非線形に依存する光吸収率を有するQW(量子井戸)半導体材料からなる少なくとも1つの第1の吸収体層と、第1の吸収体層の1つ又は複数の表面に接する第1の透光性半導体材料からなる少なくとも1つの第1のコンタクト層と、第1のブラッグ反射体(23)とを含む。第1のコンタクト層は、第1の吸収体層に対して格子整合性又は擬似格子整合性を有している。QW半導体材料からなる吸収体層(13,13a,13b)は、最大で60nmの厚み(S)を有する。更に、第1のコンタクト層(14,14a,14b,14c)をなす第1の透光性半導体材料は、2つ以上の主成分、少なくとも1つのドーパント(M2)、及び、主成分のうちの1つを置換してドーパントの添加を促進する少なくとも1つの金属添加元素(M1)を含むR(反応性)材料である。金属添加元素は、その金属添加元素により置換される主成分の少なくとも50原子パーセントの濃度を有する。第1の吸収体層をなすQW半導体材料中に発生する荷電キャリアは、ドーパントの位置における荷電キャリアの再結合により決定される最大で100ピコ秒の第1の再結合時間を有し、それによって、高速可飽和吸収体が形成される。

Description

本発明は、超短放射パルスを発生させることを目的として、レーザーの受動モード同期を達成するために使用される可飽和吸収構造体に関する。
ピコ秒又はサブピコ秒の範囲のパルス持続時間を持つ短光パルス及び超短光パルスを発生させるため、レーザー共振器の内部で可飽和吸収ミラーが使用される。可飽和吸収ミラーは、特に、レーザーの、所謂自律的な受動モード同期のために非常に有用であり、この場合、可飽和吸収ミラー要素によって、パルス光の周期的トレインが自発的に発生する。モード同期の機構は、可飽和吸収ミラーの非線形の(すなわち、輝度(intensity)に依存する)反射率に基いている。このミラーは、低輝度光に対しては、大きな吸収率及び低い反射率を有しており、一方、高輝度光に対しては、吸収率は低下し、反射率は増大する。吸収率が最大値の半分になる輝度Iは、可飽和吸収体の飽和輝度ISと呼ばれ、輝度に依存する吸収係数α(I)は、次式で表すことができる。
但し、α0は、非飽和(低輝度)吸収係数である。
このように、可飽和吸収ミラーは、レーザー共振器の様々な縦モードの相対位相を同期することにより、高いパルス輝度を備える短光パルスの周期的トレインを、正確に発生させるものである。この他にも、ミラーの可飽和吸収が、受動モード同期のために有用であるための重要な要件がある。重要な特性の1つは、飽和した低い値から飽和していない高い値への吸収回復時間である。ピコ秒パルス又はサブピコ秒パルスを発生させるためには、この吸収回復時間が十分に短い必要がある。又、パルス光を効果的に吸収するために、可飽和吸収体の吸収帯域は、パルス光の全スペクトルに対して十分に大きい必要がある。第3の因子は、ミラーの非飽和性の吸収である。輝度のこの種の吸収を無くすことはできず、結果として、ミラー又は反射体が示す反射率の最大値が制限される。吸収のこの部分は、最小限に留める必要がある。
大部分の可飽和吸収ミラーは、半導体可飽和吸収ミラー(SESAM:Semiconductor Saturable Absorber Mirror)に基いている。典型的なSESAM構造体は、単結晶半導体基板上にエピタキシャル成長させた分布ブラッグ反射体(DBR:Distributed Bragg Reflector)と、DBR上に成長させた可飽和吸収体層を含む活性層構造体からなる。DBRは、発振波長の光を、典型的には99%よりも良好な反射率で反射する。活性層構造体は、単一又は複数の量子井戸(QW:Quantum Well)層を含み、QW層は、SESAM構造体中の定在電磁波の腹の位置又は腹からはずれた位置のいずれかに配置される。定在波に対するQWの位置を変更することにより、飽和輝度を変化させることができる。SESAM上に入射した光の反射率は、QW層における可飽和吸収のために、その輝度に応じて変動する。高い光学品質を有するQW層は、その吸収回復時間が、必要なピコ秒範囲ではなくナノ秒範囲にあるため、モード同期には適さない。したがって、回復時間の短縮を促進するためには、QW材料の品質を幾分劣化させる必要がある。ここで、QWにおける回復時間は、電子と正孔の再結合時間により決定される。このような短縮を達成するために提案されている方法は、転位の生成、低温成長、QW材料のドーピング、及び材料のイオン注入に基くものである。しかしながら、これら全ての方法には、それぞれ次のような欠点がある。転位及び低温成長では、材料の界面が粗くなるともに光の散乱も発生し易くなり、これによって、非飽和性損失が発生する。転位は均一に分布しておらず、又、キャリア寿命の短縮は、転位のない領域から再結合中心として機能する転位へと比較的低速でキャリアが拡散することに付随して生じるものであり、少なくともファイバーレーザーの場合、これによって、ピコ秒パルス又はサブピコ秒パルスを伴う受動モード同期を開始させることはできない。更に、低温成長において、キャリア寿命を短縮するヒ素等の析出物が生成されることは、当業者にとって周知の事実であるが、残念ながら、この析出物は、非飽和性損失を誘発するとともに、デバイスのロバスト性及び寿命の問題を生じさせるものである。イオン注入は、層間の相互混合を引き起こすことにより、ミラー中の可飽和吸収体層及びDBR層の構造品質を劣化させ、この劣化は、構造体の光学品質の低下につながるとともに、非飽和性損失を発生させる可能性がある。更に、イオン注入は、相当に高価であって、かつプロセスチャンバー外での(ex-situ)処理を要するものである。
半導体層が数多く存在することにより、SESAM構造体の成長には数時間を要し、又、半導体DBR層間の屈折率の差に対する制限により、層厚の慎重な制御を要するものである。DBRミラーは、先ず基板上に成長させるものであるため、この基板は、通常、サンプル上に残されており、それによって、ヒートシンク上にSESAMチップをマウントしたときに、ヒートシンクに基板が対峙することが、大きな熱抵抗の要因となる。
米国特許第4,860,296号明細書(特許文献1)には、光共振器と、光共振器の内部に配置され、光の放射及びその光によるレーザー発振が可能なレーザー利得媒質と、光共振器の内部に配置された多層ヘテロ構造体と、光共振器の光学利得を制御するために多層ヘテロ構造体の光吸収率を変動させる手段とを有し、それによって、レーザー利得媒質のレーザー発振を制御する制御レーザーが開示されている。受動モード同期は、利得媒質により放射される光によって、多層ヘテロ構造体の光吸収率を制御することにより達成される。能動モード同期及び変調は、多層ヘテロ構造体に電界を印加することによって、多層ヘテロ構造体の光吸収率を制御することにより達成される。外部光源によるレーザー利得の制御は、外部光源からの光を多層ヘテロ構造体に照射することによって、多層ヘテロ構造体の光吸収率を制御することにより達成される。特許文献1には、ヘテロ構造体の一実施形態として、タイプI超格子バンド構造を備えたGaAs−AlGaAs多層量子井戸として製作された、半導体ダイオードレーザーのための受動モード同期体が記載されている。特に、予め定められた光周波数において非線形の光吸収率を有する複数の第1材料層と、この第1材料層と交互に積層された第2材料層とからなり、第1材料層間の間隔を、上記予め定められた光周波数の光の波長の2分の1の整数倍とした半導体デバイスが記載されている。これは、光共振器構造体の両端部ミラーの間に、多層ヘテロ構造体により形成された可飽和吸収体が配置されることを意味するが、ファブリー−ペロー・エタロンについては記載されていない。特許文献1に開示された受動モード同期の達成方法は、サンプル上へのレーザービームの非常に高い収束性と、光生成キャリアの拡散に依存するものである。
米国特許第5,237,577号明細書(特許文献2)によれば、第1及び第2反射要素により形成されるファブリー−ペロー・エタロン内に可飽和吸収要素を配置し、可飽和吸収要素を、ファブリー−ペロー・スペクトル応答の反共振部分における光波長、すなわち、共振ピークに対応する光波長の間の波長を有する光に応答するように設定することによって、飽和輝度と可飽和吸収体の損失とが実質的に独立に調整される。これらの要素の組み合せは、ファブリー−ペロー可飽和吸収体と呼ばれる。可飽和吸収要素の厚みによってファブリー−ペロー可飽和吸収体の損失がほぼ設定され、一方、光が入射する第1反射要素の屈折率の変化によって飽和輝度(非線形度)がほぼ設定されるとともに、この変化は、可飽和吸収要素の損失を補償するために役立つものである。一実施形態では、高反射性の第1反射要素が、入射光の放射に対峙するように可飽和吸収体の端部に配置され、一方、高反射性の第2反射要素が、可飽和吸収体の反対側の端部に配置される。ここで、第1反射要素は誘電材料層により形成され、第2反射要素は半導体層により形成される。又、可飽和吸収体を構成するためには、複数の量子井戸層及び障壁層が使用される。特に、特許文献2には、ファブリー−ペロー・エタロンを間に形成するように離れて配置された第1及び第2反射要素と、予め定められた光周波数において非線形の光吸収率を有するとともに上記第1及び第2反射要素の間に配置された半導体材料とを含む光学装置が開示されており、上記ファブリー−ペロー・エタロンは、各々の周波数が1つの共振条件に対応する複数の光周波数によって特徴付けられ、上記予め定められた光周波数は、上記複数の光周波数のうちの隣り合う任意の2つの周波数の間にあり、それによって、上記予め定められた光周波数は、ファブリー−ペロー・エタロンの反共振条件に対応する光周波数で生ずるものである。
米国特許第5,701,327号明細書(特許文献3)には、半波長のn倍(但し、nはゼロより大きい奇数)の応力緩和層内に1つ又は複数の半導体量子井戸が組み込まれた非線形反射体によって、光学損失の低減及び製造方法の簡易化を達成することが記載されており、この応力緩和層は、標準的な半導体4分の1波長層反射体上に形成される。半波長層の成長は、界面領域に十分な濃度で転位が形成され、非発光再結合源として効果的に機能するように制御される。飽和後、レーザー空洞内を往復する次の光パルスが到達する前に、これらの再結合源により量子井戸内からキャリアが除去される。非線形反射体は、通信分野において現在考えられている多くの応用に関連する高波長のレーザーモード同期のために適しており、そのような波長における輝度依存性応答を備えることにより、レーザーの主振動空洞内で直接的に可飽和吸収を行うために使用することができる。非線形反射体の飽和輝度、従って、関連するレーザーモード同期の特性は、量子井戸を応力緩和層内の特定の位置に配置することによって制御することができる。更に、特許文献3には、周知の原理によれば、光ルミネセンス強度が高い場合、発光性のキャリア寿命が不可避的に非発光性の寿命と同程度となるのに対して、このような応力緩和層上に成長させた量子井戸では、良好なモード同期と良好な光ルミネセンスが得られることが記載されている。
米国特許第6,252,892号明細書(特許文献4)は、空洞内共振ファブリー−ペロー可飽和吸収体(R−FPSA:resonant Fabry-Perot saturable absorber)により、ファイバーレーザーのようなレーザーにおいて、モード同期を発生させることが開示されている。二光子吸収体(TPA:two photon absorber)のような光リミッタをR−FPSAとともに使用してQスイッチを抑制できる結果、CWモード同期されたレーザー出力が得られる。R−FPSAとTPAの両方を使用することにより、Qスイッチモード同期されたファイバーレーザーの挙動は、CWモード同期に発展する。特に、特許文献4の請求項には、例えば、利得媒質を含む光学空洞と、レーザー周波数近傍の共振周波数を有する光学空洞内のファブリー−ペロー・エタロンと、ファブリー−ペロー・エタロン内に配置され、非線形の吸収特性を有するとともにモード同期されたレーザーパルスを発生させる可飽和吸収体とを含むモード同期レーザーが記載されている。更に、特許文献4には、可飽和吸収体におけるキャリア寿命の短縮方法として、イオン注入が記載されている。
米国特許第6,538,298号明細書(特許文献5)には、「低電界増強」(LFR:low field enhancement)半導体可飽和吸収デバイスの構成が開示されており、このデバイス構成では、共振条件を有するように構造が変更されている。その結果、スペーサ層における電界強度が増大するため、飽和フルエンスが低下するとともに変調度が増大する。但し、スペーサ層中の電界は、自由空間中の電界と比較すれば、依然として低いか、又は、増大の度合いがそれ程大きくはないものである。一実施形態における吸収デバイスは、半導体可飽和吸収ミラー(SESAM:Semiconductor Saturable Absorber Mirror)デバイスである。従来のSESAMとは異なり、吸収体を含むとともにブラッグ反射体上に配置された構造体を設け、この構造体が共振条件を満たすようにすることにより、構造体中に定在電磁波が存在する。換言すれば、このデバイス構成は、デバイスの表面付近で電界強度が極大値に達するものである。特許文献5に記載された計算例によれば、このような構造体において、最大で1.4%の反射率変調を達成することができる。しかしながら、特許文献5は、キャリア寿命を短縮するための手段を何ら示唆するものではない。
米国特許第6,551,850号明細書(特許文献6)によれば、低温で成長する半導体材料の非線形光学材料特性を、異原子のドーピング及び/又は熱アニールの追加といった手段によって顕著に向上させることができる。一例として、300℃で成長させたGaAsに、3×1019cm-3の濃度までBeをドーピングすると、応答時間が480フェムト秒から110フェムト秒まで短縮する。又、これによって吸収率変調が低減することも、又は、非飽和性の吸収損失が発生することもない。製造の間に上記の手段の少なくとも1つを実施した半導体材料により、これらの手段が、特に、応答時間を短縮するとともに高い吸収率変調と低い非飽和性吸収損失を同時に実現することにおいて、有効であることが示されている。特許文献6は、これらの材料が、例えば光情報処理、光通信、又は超短レーザーパルス物理等の非線形光学分野の応用に対して、非常に適していることを示唆するものである。
米国特許第4,860,296号明細書 米国特許第5,237,577号明細書 米国特許第5,701,327号明細書 米国特許第6,252,892号明細書 米国特許第6,538,298号明細書 米国特許第6,551,850号明細書
本発明は、先行技術に示した従来の可飽和吸収ミラーに関連する上記の問題の多くを解決し、高利得活性媒質を有するレーザーにおいて有用な、改善された可飽和吸収ミラーを実現することを、その目的とする。例えばファイバーレーザーのような高利得活性媒質を有するレーザーの受動モード同期のためには、高輝度反射率と低輝度反射率との間に大きな差、すなわち、受動モード同期のための大きな反射率変調を生成することが可能な可飽和吸収ミラーが必要である。高輝度反射率と低輝度反射率との間の差は、少なくとも数パーセントであることが好ましい。これは、一般に、高利得レーザーでは空洞損失が非常に大きいからであり、このように空洞損失が大きいことは、低利得レーザー媒質で使用するために構成された可飽和吸収ミラーが、高利得レーザー媒質では適切に機能しない場合があることの理由でもある。又、非飽和性損失を最小化するために、可飽和吸収ミラーの良好な構造的統合性を達成することが好ましい。更に、構成要素(特に、高い平均出力パワーを有するモード同期レーザー発振器)の長寿命化のためには、効率的な冷却が重要であるため、デバイスの効率的な放熱が可能であることが好ましい。
本発明は、更に、上記改善された可飽和吸収ミラーの製造を可能にする方法を実現することを、その目的とする。
本発明の第1の態様に従って、多層エピタキシャルヘテロ構造吸収体を備えた可飽和吸収構造体が提供される。この可飽和吸収構造体は、2つの対向する表面を備え、かつ、前記可飽和吸収構造体内に前記2つの対向する表面の法線方向から供給される電磁放射の予め定められた光周波数範囲で、放射輝度に非線形に依存する光吸収率を有するQW(量子井戸)半導体材料からなる少なくとも1つの第1の吸収体層と、第1の透光性半導体材料からなり、かつ、前記第1の吸収体層の1つ又は複数の表面に接して前記第1の吸収体層に対して格子整合性を有するか又は擬似格子整合性を有する少なくとも1つの第1のコンタクト層と、複数の4分の1波長層を備えた第1のブラッグ反射体とを含んでいる。前記QW半導体材料からなる前記少なくとも1つの第1の吸収体層は、最大で60nmの厚みを有し、前記第1のコンタクト層をなす前記第1の透光性半導体材料は、2つ以上の主成分、少なくとも1つのドーパント、及び、前記主成分のうちの1つを置換して前記ドーパントの添加を促進する少なくとも1つの金属添加元素を含むR(反応性)材料であり、かつ、前記金属添加元素は、該金属添加元素により置換される前記主成分の少なくとも50原子パーセントの濃度を有している。そして、前記第1の吸収体層をなす前記QW半導体材料中に発生する荷電キャリアは、前記ドーパントのサイトにおける前記荷電キャリアの再結合により決定される最大で100ピコ秒の第1の再結合時間を有し、それによって、高速可飽和吸収体が形成されるものである。これによって、転位の導入又はイオン注入の実施を要することなく、したがって、これらの両方によってもたらされる非飽和性損失や吸収体材料のスペクトル特性の広がりを生じさせることなく、可飽和吸収体層中の荷電キャリアの寿命の短縮を達成することが可能となる。吸収体層を囲むR材料からなるコンタクト層のバンドギャップが一般に大きいことにより、光生成キャリアの吸収体層内への強い閉じ込めが達成される。これによって、吸収体層からのキャリアの漏洩が最小限に抑制されるとともに、吸収の飽和をもたらす過程の動特性が向上する。
上述したコンタクト層を、すべての吸収体層の周りには配置しないことを選択することもできる。このような構造体には、2種類の吸収体層が存在する。1つは、高速の回復時間を備えた吸収体層(高速可飽和吸収体)であり、もう1つは、低速の回復時間を備えた吸収体層(低速可飽和吸収体)である。この目的のために、可飽和吸収構造体は、2つの対向する表面を備え、かつ、前記可飽和吸収構造体内に前記2つの対向する表面の法線方向から供給される電磁放射の予め定められた光周波数範囲で、放射輝度に非線形に依存する光吸収率を有するQW(量子井戸)半導体材料からなる少なくとも1つの第2の吸収体層と、透光性半導体材料からなり、かつ、前記第2の吸収体層の1つ又は複数の表面に接して前記第2の吸収体層に対して格子整合性を有するか又は擬似格子整合性を有する少なくとも1つの第2のコンタクト層と、を更に含んでおり、前記第2のコンタクト層をなす前記透光性半導体材料は、前記少なくとも1つの金属添加元素の濃度及び/又は前記少なくとも1つのドーパントの濃度が、前記第1のコンタクト層の前記R材料よりも低いN(中性)材料である。そして、前記第2の吸収体層をなす前記QW半導体材料中に発生する荷電キャリアは、100ピコ秒よりも長い第2の再結合時間を有し、それによって、低速可飽和吸収体が形成される。同一の構造体中に低速可飽和吸収体と高速可飽和吸収体の両方を組み合せるという固有の特徴によって、モード同期の開始及び維持を最適化することが可能になる。更なる利点は、低速可飽和吸収体層と高速可飽和吸収体層の両方を、コンタクト層の配置により、同一の構造体中に形成できることである。
前記第1の吸収体層と前記第1のコンタクト層との間のそれぞれの前記格子整合性又は前記擬似格子整合性は、前記第1の吸収体層をなす前記QW半導体材料が有する転位密度が、最大で200×104/cm2であるか、又は、10×104/cm2よりも小さいか、又は、5×103/cm2よりも小さい程度に良好なものである。これによって、コンタクト層と可飽和吸収体層との間の界面の点欠陥が均一に分布するため、これらの点欠陥へのキャリアの拡散距離が最小化される。更に、すべての構造的損傷が無視し得る程度に維持され、キャリアの非発光性の結合により発生する熱も均一に分布するため、デバイスの寿命が向上する。
これらの同種又は異種の吸収体層は、種々の方法により配置することができる。前記可飽和吸収構造体は、前記QW半導体材料からなる少なくとも2つの吸収体層を含んでおり、前記吸収体層は、それぞれの前記吸収体層の一側又は両側に前記R材料、又は、任意選択により前記N材料からなるコンタクト層を備えて、2つ以上の吸収体ユニットを形成するものである。一態様において、前記吸収体ユニットは、図5に示すように、前記電磁放射の定在波の少なくとも1つ又はそれぞれの腹の位置又はその近傍に配置される。別の態様では、前記吸収体ユニットは、図6に示すように、前記電磁放射の定在波の少なくとも1つ又はそれぞれの腹の位置又はその近傍に、1つ以上のグループをなして配置され、前記グループ中の前記吸収体ユニット同士の互いの距離は、一連の前記腹の間の間隔よりも短いものである。更に、前記吸収体層間の適正な間隔を得るために、それぞれの前記吸収体層の間にスペーサ層(15)を含むものであってもよい。前記スペーサ層は、前記N材料又は前記R材料のような、透光性半導体材料からなるものである。
本発明に従うQW(量子井戸)半導体材料は、例えば、GaX1In1-X1As、又は、GaX1In1-X1AsY11-Y1、又は、GaX1In1-X1AsY11-Y1(但し、原子分率X1は、0.5よりも小さい)である。あるいは、前記QW(量子井戸)半導体材料は、(AlX1Ga1-X1Y1In1-Y1As(但し、原子分率X1は、0.5よりも小さい)とすることもできる。
本発明に従うR材料では、このR材料の前記2つ以上の主成分が、ガリウム、インジウム、ヒ素、及びリンから選択される。前記R材料の典型的な例は、(M1RGa1-R)In1-X2As、又は、(M11-R)GaX2In1-X2P、又は、(M1RGa1-R)In1-X2AsY21-Y2、又は、M1RAs1-Rの組成を有し、原子分率Rが0.6よりも大きいか、又は、0.7よりも大きいか、又は、0.8よりも大きいものである。特に、前記第1のコンタクト層をなす前記R材料では、前記金属添加元素(M1)は、ガリウム及びインジウム以外の第III族の金属であり、前記ドーパントは、第VI族及び/又は第VIII族の元素である。好ましくは、第III族の金属はアルミニウム、第VI族又は第VIII族のドーパント元素は、酸素及び/又は鉄及び/又はクロム及び/又はニッケルである。
前記第1のブラッグ反射体、及び、任意に選択される第2のブラッグ反射体は、誘電材料により形成することができる。この種の反射体は、誘電材料により大きな屈折率差が達成されるため、半導体DBRよりも容易に製作することができる。特に、例えば金又は銀のような反射率を増大させる金属層を誘電体層の最上部に配置した場合、99%以上の反射率を達成するために、典型的には、一対の4分の1波長層を数対使用する必要があるだけである。これによって、大きな反射率帯域幅を達成することが可能となる。
本発明の好適な一実施形態における吸収構造体、例えばハイブリッド型可飽和吸収ミラー(Hybrid Saturable Absorber Mirror:HSAM)チップは、第1のブラッグ反射体側からヒートシンクに結合される。これによって、記第1及び/又は第2の透光性半導体材料からなる前記コンタクト層を伴う前記QW(量子井戸)半導体材料からなる前記吸収体層は、前記ヒートシンク及び前記第1のブラッグ反射体から延びるものとなる。このように、ヒートシンクと吸収体層との間に厚い基板が存在しないため、吸収体層からヒートシンクまでの距離がマイクロメートルのオーダーになる。したがって、このチップは、低い熱抵抗を有するものとなり、モード同期レーザーによる高出力パワーで動作することが可能となる。
本発明の第2の態様に従って、多層エピタキシャルヘテロ構造吸収体を備えた可飽和吸収構造体の製造方法が提供される。この製造方法は、半導体材料からなる基板を準備する段階と、複数の4分の1波長層を備えたブラッグ反射体を堆積する段階と、電磁放射の予め定められた光周波数範囲で、放射輝度に非線形に依存する光吸収率を有するQW(量子井戸)半導体材料からなる1つ以上の第1の吸収体層をエピタキシャル成長させる段階と、前記第1の吸収体層の成長の前及び/又は後に、第1の透光性半導体材料からなる1つ以上の第1のコンタクト層(14)を、前記第1の吸収体層に対して格子整合性を有するか又は擬似格子整合性を有するようにエピタキシャル成長させる段階とを含んでいる。更に、前記QW半導体材料からなる前記第1の吸収体層の前記エピタキシャル成長は、最大で60nmの予め定められた厚みに到達したときに停止され、かつ、前記第1のコンタクト層の前記エピタキシャル成長の際に、1つ又はいくつかの主成分、少なくとも1つのドーパント、及び、少なくとも1つの金属添加元素がそれぞれ供給され、前記金属添加元素は、追加成分であるか、又は、いくつかの前記主成分のうちの1つを置換して、置換される原子分率の少なくとも50パーセントの濃度が得られるものであり、それによって、前記第1の吸収体層をなす前記QW半導体材料中に発生する荷電キャリアが、最大で100ピコ秒の第1の再結合時間を有するようなR(反応性)材料が形成されるものである。
目的とする製品に応じて、前記可飽和吸収構造体の製造方法は、電磁放射の予め定められた光周波数範囲で、放射輝度に非線形に依存する光吸収率を有するQW(量子井戸)半導体材料からなる1つ以上の第2の吸収体層をエピタキシャル成長させる段階と、前記第1の吸収体層の成長の前及び/又は後に、第2の透光性半導体材料からなる1つ以上の第2のコンタクト層を、前記第2の吸収体層に対して格子整合性を有するか又は擬似格子整合性を有するようにエピタキシャル成長させる段階と、を更に含むものであってもよく、そして、前記第2のコンタクト層の前記エピタキシャル成長の際に、前記第1のコンタクト層よりも低い濃度の、前記少なくとも1つの金属添加元素及び/又は前記少なくとも1つのドーパントが供給され、前記第2の吸収体層をなす前記QW半導体材料中に発生する荷電キャリアが100ピコ秒よりも長い第2の再結合時間を有するものである。
必要に応じて、それぞれの前記第1及び第2の吸収体層のエピタキシャル成長の前又は後、又は、それぞれの前記第1及び第2のコンタクト層のエピタキシャル成長の前又は後に、スペーサ層のエピタキシャル成長も実施される。又、前記第1及び第2の吸収体層、前記第1及び第2のコンタクト層、及び前記スペーサ層の前記エピタキシャル成長の後に、好ましくは1つ以上の適切な誘電材料を使用して、複数の4分の1波長層を備えた第1のブラッグ反射体が堆積される。
図1、4、5、6、及び7Dに示すように、対象とする製品に応じて、前記可飽和吸収構造体は、その構造体の端面でヒートシンクに付着させるものであってもよい。更に、前記第1及び第2の吸収体層及び前記第1及び第2のコンタクト層を保持しつつ、少なくとも前記半導体基板を選択的に除去するものであってもよい。又、前記第1及び第2の吸収体層及び前記第1及び第2のコンタクト層の最上部(すなわち、前記半導体基板が除去された位置)に、複数の4分の1波長層を備えた第2のブラッグ反射体を堆積させるものであってもよい。これによって、ファブリーーペロー・エタロンを得ることができる。
特に、前記第1のコンタクト層をなす前記R(反応性)材料を得るために、前記可飽和吸収構造体の製造方法は、最後にエピタキシャル成長させた層に向けて1つ又は複数のガスを、その1つ又は複数の成分が、前記少なくとも1つの金属添加元素及び/又は前記少なくとも1つのドーパントとして、前記最後にエピタキシャル成長させた層に転移するように供給し、それによって前記R材料を形成する段階、及び/又は、前記最後にエピタキシャル成長させた前記R材料からなる前記第1のコンタクト層に接して存在する1つ又は複数のガスの1つ又は複数の成分を、前記少なくとも1つのドーパントとして前記第1のコンタクト層に転移させる段階を含むものである。
図1〜図4は、例えば、周知のMOCVD法又はMBE法により成長させた可飽和吸収エピタキシャル構造体のいくつかの例示的な実施形態を示す図である。これらの構造体は、最終段階のものであっても、又は、中間段階のものであってもよい。図7Aから図7Bは、特定のプロセス段階における可飽和吸収エピタキシャル構造体の例を示す図である。図3に示す構造体は、吸収体ユニット(図5及び図6のA参照)が、QW(量子井戸)半導体材料の一方の表面に接する1つのR材料コンタクト層と、N(中性)材料スペーサ層からなる点において、図7Aから図7Bに示すプロセスと部分的に同様のものであり、これらの各層及び材料の詳細については後述する。すべての場合において、吸収構造体10は、単結晶半導体基板11(図7A及び図7B参照)上に形成され、1つ又は複数の吸収体層13、各吸収体層13に隣接するか又は近接する少なくとも1つのコンタクト層14、吸収体層間の何種類かのスペーサ層15を含んでいる。ここで、上記の「近接する」は、吸収体層13中の荷電キャリアが、それらの寿命の所望の短縮を達成するために、最も近いコンタクト層14との界面において不純物と相互作用可能であることを意味する。又、吸収体層を一般的に示す場合には参照符号13を使用し、より詳細な参照符号13a、13b、13c、・・・は、個別の吸収体層(13に属する13a、13b、13c、・・・)同士の区別が必要な場合にのみ使用する。同様に、コンタクト層を一般的に示す場合には参照符号14を使用し、より詳細な参照符号14a、14b、14c、・・・は、個別のコンタクト層(14に属する14a、14b、14c、・・・)同士の区別が必要な場合にのみ使用する。このようなエピタキシャル構造体、及び、このような構造体を成長させるための方法は周知であるため、その詳細な説明は省略する。
製造の間に使用される犠牲層12によって、可飽和吸収構造体の後のプロセス段階において、可飽和吸収構造体10を基板11から分離することができる。例えば、第1エッチング剤を用いて化学エッチングすることにより、基板を取り除くことができる。犠牲層12の組成は、第1エッチング剤により実質的にエッチングされないように選択されており、犠牲層12に達するとエッチングは停止する。次いで、サンプルに第2エッチング剤を適用し、残りの各層13、14、15又は引き続く任意の誘電材料を実質的にエッチングすることなく、犠牲層12を選択的にエッチングする。あるいは、犠牲層12は、残りの構造体と一体の部分として残存するものであってもよい。この種のエッチング剤及び犠牲層のための材料は周知であるため、その詳細の説明は省略する。ヒートシンクを使用する場合、可飽和吸収構造体10は、エッチング時にヒートシンク21に結合され、ヒートシンク21は、図7Cに示すように、薄層構造体のための支持体となる。あるいは、犠牲層12が構造体の一体の部分として構造体上に残存している場合には、吸収構造体10を設計する際に、例えば、厚み、屈折率、バンドギャップのような犠牲層の特性及び/又は犠牲層の材料を考慮する必要がある。
好ましくは、第1の吸収体層13、13a、13b、・・・は量子井戸であり、QW(量子井戸)半導体材料からなる。これらの吸収体層は、2つの対向する表面3a、3bを有しており、吸収体層の厚みSは、最大で60nm、又は、好ましくは最大で50nm、又は、1nmと40nmの間、又は、1ナノメートルから数十ナノメートルの範囲である。吸収体層13の組成は、レーザー放射Bに対する吸収体であるとともに、適切な飽和輝度を備える飽和吸収を達成可能なように選択される。例えば、1.06μmのレーザー放射の場合、吸収体材料を、GaXIn1-XAs(但し、X≒0.25)とすることができる。放射輝度に非線形に依存する光吸収率を備え、かつ、吸収体層の材料として適用可能なQW材料は周知であり、第1の吸収体層のために、任意の周知の材料又は新規の材料を使用することができる。適用可能なQW材料の例として、GaX1In1-X1AsY11-Y1、GaX1In1-X1AsY11-Y1、及び、GaX1In1-X1As(但し、原子分率X1は、0.5よりも小さい)を挙げることができる。あるいは、(AlX1Ga1-X1Y1In1-Y1As(但し、原子分率X1は、0.5よりも小さい)を使用することもできる。より詳細な例のいくつかは、「材料の例」と題した下表に示されている。
第1のコンタクト層14は、第1の透光性半導体材料からなり、この第1の透光性半導体材料は、本発明に従って、2つ以上の主成分、少なくとも1つのドーパントM2、少なくとも1つの金属添加元素M1を含んでいる。この金属添加元素は、主成分のうちの1つを置換してドーパントの添加を促進するものであり、置換される主成分の少なくとも50原子パーセントの濃度を有している。この種の半導体材料は、R(反応性)材料と呼ばれる。現在、R材料の上述した主成分は、典型的には、ガリウム及び/又はインジウム及び/又はヒ素及び/又はリンである。すなわち、R材料の組成は、金属添加元素M1及びドーパントM2を除けば、上述したようなQW半導体材料の組成と同様のものであるが、R(反応性)材料を得るために、これらの主成分のうちの少なくとも1つの一部又は全部を、金属添加元素M1と置換するものである。第1のコンタクト層14、14a、14b、14c、・・・は、それぞれの第1の可飽和吸収体層13、13a、13b、・・・に隣接して形成される。その際、第1のコンタクト層は、図4及び図2の一部に示すように、第1の可飽和吸収体層の両面側に、すなわち2つの対向する表面3a、3bに接して形成されるか、又は、図1、図3、及び図2の一部に示すように、第1の可飽和吸収体層の片面側に、すなわち表面3a又は表面3bのうちの1つに接して形成される。コンタクト層14は、好ましくは、多数の反応性原子(例えば、アルミニウム)を含んでおり、それらの反応性原子によって、真空環境から多数の不純物原子を吸収するものである。これが、コンタクト層の材料が、R(反応性)材料と呼ばれる理由である。一例として、第1のコンタクト層14は、Alの原子分率Xが大きいとして、AlXGa1-XAsからなるものであってもよい。極端な場合、この例の第1のコンタクト層14は、AlAsからなるものであってもよく、この場合、X=1であり、主成分の1つを金属元素M1によって完全に置き換えることを意味し、この例では、ヒ素がアルミニウムにより置き換えられている。適用可能なR材料の例として、(M1RGa1-R)In1-X2As、(M11-R)GaX2In1-X2P、(M1RGa1-R)In1-X2AsY21-Y2、及び、M1RAs1-Rあって、原子分率Rが0.6よりも大きいか、又は、好ましくは0.7よりも大きいか、又は、典型的には0.8よりも大きい場合を挙げることができる。金属添加元素M1は、ガリウム及インジウム以外の第III族に属する金属、典型的にはアルミニウムである。添加元素M1は、エピタキシャル構造体中の他の元素と同様の方法によって、第1のコンタクト層中に導入することができる。この方法は周知であるため、その詳細な説明は省略する。又、最後にエピタキシャル成長させた層に向けて1つ又は複数のガスを供給する方法を使用して、ドーパントの導入、及び、少なくとも1つの金属添加元素M1のその層中への転移を実施することもできる。
本発明に従って、R(反応性)材料は、金属添加元素M1だけでなく、少なくとも1つのドーパントM2も含むものである。本明細書において、「ドーパント」とは、通常通り、最大で10-4の原子分率の濃度で存在する添加元素をいう。ドーパントM2は、1つ又は複数の第VI族元素、又は、場合によっては第VIII族元素であり、エピタキシャル構造体中の他の添加元素と同様の方法によって、第1のコンタクト層中に導入することができる。この方法は周知であるため、その詳細な説明は省略する。ドーパントM2の元素としては、酸素及び/又は鉄及び/又はクロムを使用することができるが、好ましくは酸素が使用される。更に、第1のコンタクト層14と第1の吸収体層13との間のヘテロ界面又はその近傍で層の成長を中断し、その中断の間に、酸素のような不純物原子の吸収を促進するものであってもよい。又、エピタキシャル成長させたR材料からなる第1のコンタクト層の周囲の雰囲気中に既に存在している1つ又は複数のガスを発生源とするドーパント原子を、少なくとも1つのドーパントM2として、第1のコンタクト層に転移させるものであってもよい。不純物原子(ドーパント)によって、エネルギーバンド構造中に深いエネルギーレベルが形成され、このエネルギーレベルが、第1の吸収体層13中で発生したキャリアの有効なシンクとして機能することによって、可飽和吸収体が形成される。これによって、キャリアの寿命が大幅に短縮し、可飽和吸収構造体10におけるモード同期の発生が促進される。更に、第1のコンタクト層14は、通常、そのバンドギャップが第1の吸収体層13よりも大幅に広いという利点を有している。したがって、第1の吸収体層13中で発生したキャリアは、ヘテロ障壁によって閉じ込められ、可飽和吸収体13から熱的に漏洩することができなくなる。第1のコンタクト層14の効果を更に向上させるために、最後にエピタキシャル成長させた層に向けて、その成長の間又は成長の中断の間に、例えばO2のような適切な不純物原子を含む1つ又は複数のガスをリーク弁を通じて射出又は供給し、1つ又は複数のガスの1つ又は複数の成分を、ドーパントM2としてその層中に転移させるものであってもよい。これによって、十分な数の不純物原子が第1のコンタクト層14中に吸収及び埋め込まれ、第1の吸収体層13中のキャリア寿命、すなわち第1の再結合時間の十分な短縮が達成される。このキャリア寿命は、最大で100ピコ秒又は100ピコ秒よりも短時間にまで短縮される。金属元素M1及びドーパントM2を導入するためにエピタキシャル成長の中断を実施するか又は実施することなく、金属元素M1及びドーパントM2の両方を導入した後、R(反応性)材料からなる第1のコンタクト層が形成される。コンタクト層14、14a、14b、・・・の厚みは、大幅に変動させることができ、数原子程度にまで薄いものであってもよく、又は、数百ナノメートル又はそれ以上であってもよい。各吸収体層とそれぞれ対応する1つ又は複数のコンタクト層との間に、良好な格子整合性(特に、コンタクト層がそれ程薄くない場合)、又は、良好な擬似格子整合性(特に、コンタクト層が非常に薄い場合)が存在することが重要であり、これによって、線状、2次元状、及び3次元状の格子欠陥が過剰に発生することが回避される。第1の吸収体層と第1のコンタクト層との間のそれぞれの格子整合性又は擬似格子整合性は、第1の吸収体層をなすQW材料が有する転位密度が、最大で200×104/cm2であるか、又は、10×104/cm2よりも小さいか、又は、5×103/cm2よりも小さい程度に良好なものである。
下表に、放射輝度に非線形に依存する光吸収率を備えたいくつかの可能なQW半導体材料と、これらのQW半導体材料とともに使用可能ないくつかのR材料(但し、ドーパントは明示されていない)を示す。更に、下表には、その使用を任意に選択可能な後述するいくつかのN材料と、該当する可飽和吸収体が機能する波長が示されている。
QW半導体材料からなる第1の吸収体層13、13a、13bと、R材料からなる第1のコンタクト層14、14a、14b、14cとを含む、上述したような本発明に従う高速可飽和吸収体に加えて、本発明に従う可飽和吸収構造体10は、より長い再結合時間を達成するための、吸収体層、すなわち第2の吸収体層13、13cと、第2のコンタクト層14、14d、14eとを更に含むものであってもよい。これは、高速可飽和吸収体が、レーザーの安定な短パルスモード同期動作を維持するために好適なものである一方、低速可飽和吸収体は、モード同期の開始のために好適なものであるからである。この目的のために、上述したような種類のQW(量子井戸)半導体材料からなり、2つの対向する表面3c、3dを備えた少なくとも1つの第2の吸収体層13、13cが存在する。又、第2の吸収体層の1つ又は複数の表面(3c及び/又は3d)に接して、透光性半導体材料からなる少なくとも1つの第2のコンタクト層14、14d、14eも存在する。上述した場合とは異なり、この場合には、第2のコンタクト層をなす透光性半導体材料は、N(中性)材料である。N材料は、金属添加元素M1の濃度及び/又はドーパントM2の濃度が、第1のコンタクト層14、14a、14b、14cをなすR材料よりも低いものである。これによって、第2の吸収体層13、13cをなすQW材料中に発生する荷電キャリアは、100ピコ秒よりも長い第2の再結合時間を有し、それによって、低速可飽和吸収体が形成される。このように、同一の構造体中に低速可飽和吸収体と高速可飽和吸収体の両方を組み合せるという固有の特徴によって、モード同期の開始と維持の両方のためにデバイスを最適化することが可能となる。
スペーサ層15は、少なくとも2つの吸収体層又は複数の吸収体層を互いに分離するものである。スペーサ層15は、図5に示すように、定在波パターンのそれぞれの腹Aの位置又はその近傍に配置される、それぞれ対応するコンタクト層14、14a、14b、14c、14d、14e、・・・を伴う異なる吸収体層13、13a、13b、13c、・・・の間の適正な間隔L1を形成するか、
又は、図6に示すように、それぞれ対応するコンタクト層14、14a、14b、14c、14d、14e、・・・と複数の吸収体層13、13a、13b、13c、・・・からなり、定在波パターンのそれぞれの腹Aの位置又はその近傍に配置される、異なるグループ7a、7b、7cの間の適正な間隔L2を形成するものである。例えば、グループ7a、7b、7cは、定在波パターンのそれぞれの腹の位置に配置される場合、光波長の半分の距離L2だけ離れて配置される。スペーサ層15のための材料は、スペーサ層15によって光が吸収されないように、そのバンドギャップが可飽和吸収体層をなすQW材料のバンドギャップよりも大きいN(中性)材料とすることができる。QW半導体材料が、GaX1In1-X1AsY11-Y1、又は、GaX1In1-X1Asの場合、N(中性)材料は、例えば、GaAs、又は、AlX3Ga1-X3As(但し、原子分率X3は0.5よりも小さいものとする)であってもよい。又、スペーサ層15のためのN材料を、コンタクト層と実質的に同一の材料、すなわちR(反応性)材料と同一の材料とすることもできる。又は、スペーサ層15のためのN材料を、ドーパントを含むか又は含まない、あるいは、R材料に比べて低いドーパント濃度を有する、改質R材料とすることもできる。吸収体層をなすQW半導体材料が、GaX1In1-X1AsY11-Y1、又は、(AlX1Ga1-X1Y1In1-Y1Asの場合、N材料は、InP、又は、GaX3In1-X3AsY31-Y3、又は、(AlX3Ga1-X3Y3In1-Y3Asとすることができる(但し、X3及びY3は、N材料が接触しているQW材料中よりも大きなバンドギャップが生じるような原子分率とする)。この場合も、スペーサ層のためのN材料を、コンタクト層と実質的に同一の材料、すなわちR(反応性)材料と同一の材料とすることもでき、又は、ドーパントを含むか又は含まない、あるいは、R材料に比べて低いドーパント濃度を有する、改質R材料とすることもできる。
少なくとも1つのミラー又は反射体、すなわち第1のブラッグ反射体23が吸収構造体上に堆積されており、そして、可飽和吸収構造体10は、典型的には、第1のブラッグ反射体23から離れた位置に、図示しない別のミラー又は吸収構造体上に堆積される第2のブラッグ反射体24のいずれかを備えているため、ファブリー−ペロー・エタロンが形成される。したがって、波長λの電磁放射Bを、各層13、14、15及び反射体の平面に対して直交する方向から構造体10内に供給すると、可飽和吸収構造体内に定在波が生じる。与えられたレーザー波長λにおける定在波のパターン中には、節、すなわち振幅の最大点、及び、腹、すなわち振幅の最小点が形成される。飽和輝度を最小化したい場合、吸収体層13は、上述したように、腹Aの位置又はその近傍に配置することが好ましい。1つ又は複数の吸収体層13、13a、13b、13c、・・・をそれぞれの腹の周辺でグループ化し、1つ又は複数のそのようなグループを、構造体内の各腹の位置又は腹に近接する他の好ましい位置毎に1つ配置するものであってもよい。吸収体層13、13a、13b、13c、・・・の数及び位置は、必要な飽和輝度によって決定される。可飽和吸収構造体は、好ましくは、2つの異なる屈折率を交互に備えた多数の4分の1波長層19からなる第1及び第2のブラッグ反射体23、24を有しており、ブラッグ反射体は、透光性半導体材料、又は、好ましくは、透光性誘電材料からなるものである。ブラッグ反射体は周知であり、その詳細な説明は省略する。第1のブラッグ反射体23は、誘電積層体の最上部に、高い反射率を有する金属層を含むものであってもよく、この金属層は、誘電積層体とともに反射率を向上させ、又、ブラッグ反射体として誘電積層体中に必要な層の対の数を低減するものである。又、この金属層は、後述するように、結合材料22を介したヒートシンク21への結合付着性を向上させる機能も有する。
更に、可飽和吸収構造体10は、第1のブラッグ反射体23に接するように配置されたヒートシンク21を含むものであってもよい。この配置構成では、第1及び/又は第2の透光性半導体材料からなるコンタクト層14、14a、14b、14c、14d、14eを伴うQW(量子井戸)半導体材料からなる吸収体層13、13a、13b、13cは、ヒートシンク及び第1のブラッグ反射体から延びるものとなる。ヒートシンク21は、例えばダイアモンド又は銅−ダイアモンド複合材等の高熱伝導性材料を含んでいる。可飽和吸収構造体31は、例えば金属製の半田のような熱伝導性材料22とともに、ヒートシンク21に付着される。
図1に示す可飽和吸収構造体10は、唯一の第1の吸収体層13、13aと、第1の吸収体層の一方の表面3bに接する第1のコンタクト層14、14aとを有しており、この第1のコンタクト層は、第1の吸収体層とヒートシンク21上の第1のブラッグ反射体23との間に存在する。図2に示す可飽和吸収構造体10は、第1のブラッグ反射体23とともに、2つの第1の吸収体層13、13a、13bと2つの第1のコンタクト層14、14a、14bとを有しており、これらの第1のコンタクト層は、1つの吸収体層の両方の表面3a、3bに接し、かつ、別の吸収体層の一方の表面3bに接している。図2に示す可飽和吸収構造体は、ヒートシンクを備えていない。図3に示す可飽和吸収構造体10も、第1のブラッグ反射体23とともに、2つの第1の吸収体層13、13a、13bと2つの第1のコンタクト層14、14a、14bとを有しているが、これらの第1のコンタクト層は、それぞれの吸収体層の一方の表面3aに接するものである。図1から図3を通じて、コンタクト層14は、可飽和吸収体層13に接するか又は近接させて使用されており、それによって、これらの2種類の層、特に層間の界面に吸収された不純物原子により、荷電キャリアの寿命の短縮が生じるものである。図4に示す可飽和吸収構造体10は、両方の表面3a、3bに接する2つの第1のコンタクト層14、14a、14cを伴う唯一の第1の吸収体層13、13a、及び、両方の表面3a、3bに接する2つの第2のコンタクト層14、14d、14eを伴う1つの第2の吸収体層13、13cを有している。図4に示す構造体には、高速可飽和吸収体と低速可飽和吸収体の両方が組み込まれており、第1の吸収体層が高速可飽和吸収体として機能し、第2の吸収体層が低速可飽和吸収体として機能する。ここで、これらの図は、本発明の原理を例示するための簡略化された図であり、実際の可飽和吸収構造体において、典型的には、構造体の性能を最適化するために、構造体中に、複数の高速可飽和吸収体、及び、任意選択により複数の低速可飽和吸収体が使用されるものである。
図5は、より多くの構成要素を備えた可飽和吸収構造体10の例を部分的に示す図である。図5に示す構造体は、複数の第1の吸収体層13、13aと、第1の吸収体層のそれぞれに対して、その両方の表面に接する2つの第1のコンタクト層14、14a、14bとを含み、それによって、高速可飽和吸収体ユニット5a、5b、5cが形成されている。図示の例において、各吸収体ユニット5a、5b、5cは、最大で100ピコ秒の第1の再結合時間を実現するために、各吸収体ユニットに属する1つの吸収体層と2つのコンタクト層により形成される。第1の吸収体層は、各高速可飽和吸収体ユニット5a、5b、5cの間、及び、この例の場合、第1のブラッグ反射体と吸収体ユニットの1つとの間のスペーサ層15を使用して、腹Aの位置又はその近傍に配置される。図5には、1つの第2の吸収体層13、13cも示されており(実際には、いくつかの第2の吸収体層が存在する)、第2の吸収体層の両側のスペーサ層15は、第2のコンタクト層14、14d、14eを形成している。これによって、100ピコ秒よりも長い再結合時間を有する、少なくとも1つ又は複数の低速可飽和吸収体ユニット6が形成される。このような1つ又は複数の第2の吸収体層も、各低速吸収体ユニット6の間、及び、高速吸収体ユニットの1つ5cと低速吸収体ユニットの1つ6との間のスペーサ層15を使用して、腹Aの位置又はその近傍に配置される。
図6は、より多くの構成要素を備えた可飽和吸収構造体10の別の例を示す図である。図6において、第1の高速吸収体ユニット8aは、第1の吸収体層13、13a、及び、この第1の吸収体層の両側の2つの第1のコンタクト層14、14a、14bからなり、第2の高速吸収体ユニット8bは、第1の吸収体層13、13b、及び、この第1の吸収体層の両側の2つの第1のコンタクト層14、14b、14cからなり、そして、第3の低速吸収体ユニット8cは、第2の吸収体層13、13b、及び、この第2吸収体層の両側の2つの2つの第2のコンタクト層14、14d、14eからなる。そして、それぞれ互いに近接する吸収体ユニット8a、8b、8cを有するいくつか(この例では4つ)のグループ7a、7b、7c、7dが存在している。各グループ7a、7b、7c、7d内の吸収体ユニット8a、8b、8cの間の距離、より厳密には吸収体層13、13a、13b、13cの間の距離L3、L4は、一連の腹Aの間の間隔L1、L2よりも短く、典型的には、大幅に短い。このようにして、吸収体層13、13a、13b、13cは、電磁放射Bの定在波の少なくとも1つ又はそれぞれの腹Aの位置又はその近傍に配置される。この実施形態では、同一のグループ中に高速吸収体ユニットと低速吸収体ユニットとが存在し、すべてのグループ7a、7b、7c、7dは同様のものである。但し、図5に示す実施形態と同様に、高速吸収体ユニットと低速吸収体ユニットとを、別のグループ中に配置し、吸収体のグループ7a、7b、7c、7dのいくつかには、高速吸収体ユニットのみが含まれ、グループ7a、7b、7c、7dのいくつかには、低速吸収体ユニットのみが含まれるようにすることも可能である。勿論、吸収構造体10は、各グループ中に高速吸収体ユニットのみが含まれており、腹Aの位置及びその近傍の両方に第1の吸収体層が配置されるものであってもよい。
本発明に従う可飽和吸収構造体10の製造の間に、先ず、単結晶基板11上での犠牲層12(これを使用する場合)の成長が実施される。次に、犠牲層12上又は基板上において、吸収体層13(少なくとも第1の吸収体層及び第1のコンタクト層であるが、それだけではなく第2の吸収体層及び第2のコンタクト層も含んでいてもよい)、コンタクト層14、及び、場合によってはスペーサ層のエピタキシャル成長がそれぞれ実施される。エピタキシャル成長の各段階は、所定の数の種々の層を形成するために必要な回数だけ繰返される。これらのプロセス段階の終了後の構造体は、図7Aに示す構造体に相当する。次に、第1の反射体23が、エピタキシャル構造体上に堆積され、続いて、図7Bに示すように、第1の反射体上をメタライズする。次に、構造体は、例えば金属性の半田等の良好な熱伝導性22を示す材料を用いて、メタライズ層の表面側からヒートシンク21に付着される。その結果を図7Cに示す。次に、ウェットエッチング、ドライエッチング、化学機械的エッチング、又はこれらの組み合せにより、基板11が選択的に除去される。犠牲層12の組成は、選択されたエッチング剤が、犠牲層12を実質的には侵食しないように設計されている。したがって、犠牲層12は、エッチング停止層である。次に、エッチングにより犠牲層12が選択的に除去される。あるいは、犠牲層12が所望のレーザー波長に対して透明な場合には、犠牲層12を可飽和吸収構造体10の一体の部分として残存させることもできる。最後に、任意選択により第2のブラッグ反射体24が堆積され、可飽和吸収構造体10が完成する。ここで、第2の反射体24の形成は、可飽和吸収構造体10中の定在波の腹における必要な輝度に応じて、除外されるものであっても、又は、代わりに不動態化層が形成されるものであってもよい。
以上、要約すれば次の通りである。本発明は、ハイブリッド型可飽和吸収ミラー(HSAM:Hybrid Saturable Absorber Mirror)とも呼び得る可飽和吸収構造体10に係るものである。HSAMの一実施形態は、上部に半導体可飽和吸収構造体が配置された誘電ミラーからなる。吸収体層の高速の回復時間は、QW半導体材料からなる吸収体層の一側又は両側に接するR(反応性)材料からなる特有のコンタクト層を用いたエピタキシャル成長プロセスにより、インサイチューに達成される。可飽和吸収構造体は、典型的には、QW半導体材料からなる少なくとも2つの吸収体層13、13a、13bと、R材料からなる少なくとも2つのコンタクト層14、14a、14b、14cとを含み、少なくとも1つのR材料は、QW材料からなる上記吸収体層のそれぞれに接しており、それによって、QW材料及びR材料からなる上記吸収体層及び上記コンタクト層は、多重量子井戸構造体を形成する。可飽和吸収体の上部に、第2の誘電反射体を配置し、吸収構造体の飽和輝度及び群遅延特性を制御するものであってもよい。これによって、散乱及び非飽和性の吸収のような非飽和性損失を招くことなく、同時に、構造的損傷を無視し得る程度に維持しながら、キャリア寿命のピコ秒又はサブピコ秒領域への短縮が可能となり、又、可飽和吸収体サンプル上で大きなスポットサイズを使用することが可能となる。定在波の輝度の、第1の反射体23及び第2の反射体24の反射率への依存性は、例えば、周知の転送行列法を用いることにより計算することができる。レーザー波長における可飽和吸収構造体10の光学厚さが、その波長における定在波の輝度に影響を及ぼすことも、当業者には周知の事実である。又、本明細書において、レーザーと可飽和吸収体との結合については説明を省略したが、可飽和吸収体とレーザーを結合するためには、様々な手段が存在し、本発明に従う可飽和吸収構造体10は、任意の既知又は新規のデバイス、配置構成、及び目的の用途に適用可能な方法を用いて結合することが可能である。
図1は、本発明に従う可飽和吸収構造体の実施形態の第1例として、最も簡単な例を放射の方向に平行な断面図で示した図である。この可飽和吸収構造体は、量子井戸半導体(QW)材料からなる唯一の吸収体層と、R(反応性)材料からなる1つのコンタクト層を有している。 図2は、本発明に従う可飽和吸収構造体の実施形態の第2例を、放射の方向に平行な断面図で示した図である。この可飽和吸収構造体は、量子井戸半導体(QW)材料からなる2つの吸収体層と、荷電キャリアR(反応性)材料からなる3つのコンタクト層を有しており、吸収体層のすべての表面は、R(反応性)材料に接している。コンタクト層は、スペーサ層としても機能するものである。 図3は、本発明に従う可飽和吸収構造体の実施形態の第3例を、放射の方向に平行な断面図で示した図である。この可飽和吸収構造体は、量子井戸半導体(QW)材料からなる2つの吸収体層と、荷電キャリアR(反応性)材料からなる2つのコンタクト層を有しており、各吸収体層の一方の表面はR(反応性)材料に接し、各吸収体層の反対側の表面はN(中性)材料からなるスペーサ層に接している。 図4は、本発明に従う可飽和吸収構造体の実施形態の第4例を、放射の方向に平行な断面図で示した図である。この可飽和吸収構造体は、量子井戸半導体(QW)材料からなる2つの吸収体層と、荷電キャリアR(反応性)材料からなる2つのコンタクト層を有しており、1つの吸収体層の両方の表面はR(反応性)材料に接し、別の吸収体層の両方の表面はN(中性)材料からなるスペーサ層に接している。 図5は、本発明に従う複数の可飽和吸収体を備えたファブリー−ペロー・エタロンの一部を、図1から図4と同様の断面図で示した図である。複数の可飽和吸収体は、電磁放射の定在波の腹の位置又はその近傍のそれぞれに1つの可飽和吸収体が位置するように、配置されている。複数の可飽和吸収体は、互いに同様のものであってもよく、又は、互いに異なるものであってもよい。例えば、可飽和吸収体の1つ又はいくつかを、本発明に従う高速のものとし、1つ又はいくつかを低速のものとすることができる。このファブリー−ペロー・エタロンの場合、図1から図4に示す実施形態と同様に半導体基板は除去されており、エタロンは、ヒートシンク上に付着されている。これによって、高エネルギーのレーザーパルスに対応することができる。 図6は、本発明に従う複数の可飽和吸収体を備えたファブリー−ペロー・エタロンの全体を、図1から図5と同様の断面図で示した図である。複数の可飽和吸収体は、電磁放射の定在波の腹の位置又はその近傍のそれぞれに3つの可飽和吸収体が位置するように、配置されている。複数の可飽和吸収体は、互いに同様のものであってもよく、又は、互いに異なるものであってもよい。1つの腹に対応する1つの可飽和吸収体のグループ中の複数の可飽和吸収体は、高速のものであっても、又は低速のものであっても、又は種々の速度を有するものであってもよい。又、可飽和吸収体のグループ同士が、互いに異なるものであってもよい。このファブリー−ペロー・エタロンの場合も、図1から図4に示す実施形態と同様に半導体基板は除去されており、エタロンは、ヒートシンク上に付着されている。 図7A〜図7Dは、最も多くの構成要素を備えた構造体を得るための製造段階のいくつかにおける、本発明に従う可飽和吸収構造体を、図1から図6と同様の断面図で模式的に示す図である。 図8は、本発明に従う最も多くの構成要素を備えた可飽和吸収構造体を得るための製造プロセスの主要な段階を示す図である。特定の用途のために必要な場合には、1つ又は複数の最後の段階を省略することができる。

Claims (27)

  1. 多層エピタキシャルヘテロ構造吸収体を備えた可飽和吸収構造体(10)であって、
    2つの対向する表面(3a,3b)を備え、かつ、前記可飽和吸収構造体(10)内に前記2つの対向する表面の法線方向から供給される電磁放射(B)の予め定められた光周波数範囲で、放射輝度に非線形に依存する光吸収率を有するQW(量子井戸)半導体材料からなる少なくとも1つの第1の吸収体層(13)と、
    第1の透光性半導体材料からなり、かつ、前記第1の吸収体層の1つ又は複数の表面(3a及び/又は3b)に接して前記第1の吸収体層に対して格子整合性を有するか又は擬似格子整合性を有する少なくとも1つの第1のコンタクト層(14)と、
    複数の4分の1波長層(19)を備えた第1のブラッグ反射体(23)と、を含み、
    前記QW半導体材料からなる前記少なくとも1つの第1の吸収体層(13,13a,13b)は、最大で60nmの厚み(S)を有し、前記第1のコンタクト層(14,14a,14b,14c)をなす前記第1の透光性半導体材料は、2つ以上の主成分、少なくとも1つのドーパント(M2)、及び、前記主成分のうちの1つを置換して前記ドーパントの添加を促進する少なくとも1つの金属添加元素(M1)を含むR(反応性)材料であり、かつ、前記金属添加元素は、該金属添加元素により置換される前記主成分の少なくとも50原子パーセントの濃度を有しており、前記第1の吸収体層(13,13a,13b)をなす前記QW半導体材料中に発生する荷電キャリアは、前記ドーパントの位置における前記荷電キャリアの再結合により決定される最大で100ピコ秒の第1の再結合時間を有し、それによって、高速可飽和吸収体が形成されることを特徴とする可飽和吸収構造体。
  2. 前記第1の吸収体層と前記第1のコンタクト層との間のそれぞれの前記格子整合性又は前記擬似格子整合性は、前記第1の吸収体層をなす前記QW半導体材料が有する転位密度が、最大で200×104/cm2であるか、又は、10×104/cm2よりも小さいか、又は、5×103/cm2よりも小さい程度に良好なものであることを特徴とする請求項1に記載の可飽和吸収構造体。
  3. 前記QW半導体材料からなる少なくとも2つの前記第1の吸収体層(13,13a,13b)と、前記R材料からなる少なくとも2つの前記第1のコンタクト層(14,14a,14b,14c)とを含み、少なくとも1つの前記R材料は、前記QW半導体材料からなる前記第1の吸収体層のそれぞれに接しており、前記QW半導体材料及び前記R材料からなる前記吸収体層及び前記コンタクト層(13,14)は、多重量子井戸構造体を形成することを特徴とする請求項1に記載の可飽和吸収構造体。
  4. 前記少なくとも1つのドーパントの含有量は、最大で10-4の原子分率であることを特徴とする請求項1に記載の可飽和吸収構造体。
  5. 2つの対向する表面(3c,3d)を備え、かつ、前記可飽和吸収構造体(10)内に前記2つの対向する表面の法線方向から供給される電磁放射(B)の予め定められた光周波数範囲で、放射輝度に非線形に依存する光吸収率を有するQW(量子井戸)半導体材料からなる少なくとも1つの第2の吸収体層(13,13c)と、
    透光性半導体材料からなり、かつ、前記第2の吸収体層の1つ又は複数の表面(3c及び/又は3d)に接して前記第2の吸収体層に対して格子整合性を有するか又は擬似格子整合性を有する少なくとも1つの第2のコンタクト層(14,14d,14e)と、を更に含んでおり、
    前記第2のコンタクト層(14,14d,14e)をなす前記透光性半導体材料は、前記少なくとも1つの金属添加元素(M1)の濃度及び/又は前記少なくとも1つのドーパント(M2)の濃度が、前記第1のコンタクト層(14,14a,14b,14c)の前記R材料よりも低いN(中性)材料であり、前記第2の吸収体層(13,13c)をなす前記QW半導体材料中に発生する荷電キャリアは、100ピコ秒よりも長い第2の再結合時間を有し、それによって、低速可飽和吸収体が形成されることを特徴とする請求項1に記載の可飽和吸収構造体。
  6. 前記QW半導体材料からなる少なくとも2つの吸収体層(13,13a,13b,13c)を含んでおり、前記吸収体層は、それぞれの前記吸収体層の一側又は両側に前記R材料又は前記N材料からなるコンタクト層(14,14a,14b,14c,14d,14e)を備えて、2つ以上の吸収体ユニット(5a,5b,5c...;6a)を形成し、
    前記吸収体ユニットは、前記電磁放射(B)の定在波の少なくとも1つ又はそれぞれの腹(A)の位置又はその近傍に配置されることを特徴とする請求項1又は5に記載の可飽和吸収構造体。
  7. 前記QW半導体材料からなる少なくとも2つの吸収体層(13,13a,13b,13c)を含んでおり、前記吸収体層は、それぞれの前記吸収体層の一側又は両側に前記R材料又は前記N材料からなるコンタクト層(14,14a,14b,14c,14d,14e)を備えて、2つ以上の吸収体ユニット(8a,8b,8c...)を形成し、
    前記吸収体ユニット(8a,8b,8c...)は、前記電磁放射(B)の定在波の少なくとも1つ又はそれぞれの腹(A)の位置又はその近傍に、1つ以上のグループ(7a,7b,7c,7d...)をなして配置され、前記グループ中の前記吸収体ユニット同士の互いの距離(L3,L4)は、一連の前記腹(A)の間の間隔(L1,L2)よりも短いことを特徴とする請求項1又は5に記載の可飽和吸収構造体。
  8. それぞれの前記吸収体層(13,13a,13b,13c)の間にスペーサ層(15)を更に含み、前記スペーサ層(15)は、透光性半導体材料からなることを特徴とする請求項1又は5に記載の可飽和吸収構造体。
  9. 前記スペーサ層(15)をなす前記透光性半導体材料は、前記N材料又は前記R材料であることを特徴とする請求項8に記載の可飽和吸収構造体。
  10. 前記QW半導体材料は、GaX1In1-X1As、又は、GaX1In1-X1AsY11-Y1、又は、GaX1In1-X1AsY11-Y1(但し、原子分率X1は、0.5よりも小さい)であるか、又は、(AlX1Ga1-X1Y1In1-Y1As(但し、原子分率X1は、0.5よりも小さい)であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の可飽和吸収構造体。
  11. 前記R材料の前記2つ以上の主成分は、ガリウム、インジウム、ヒ素、及びリンから選択されることを特徴とする請求項1に記載の可飽和吸収構造体。
  12. 前記R材料は、(M1RGa1-R)In1-X2As、又は、(M11-R)GaX2In1-X2P、又は、(M1RGa1-R)In1-X2AsY21-Y2、又は、M1RAs1-Rの組成を有し、原子分率Rが0.6よりも大きいか、又は、0.7よりも大きいか、又は、0.8よりも大きいものであり、前記第1のコンタクト層をなす前記R材料では、
    前記金属添加元素(M1)は、ガリウム及びインジウム以外の第III族の金属であり、
    前記ドーパントは、第VI族及び/又は第VIII族の元素である、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の可飽和吸収構造体。
  13. 第III族の前記金属は、アルミニウムであり、第VI族及び/又は第VIII族の前記ドーパントの元素は、酸素及び/又は鉄及び/又はクロム及び/又はニッケルであることを特徴とする請求項12に記載の可飽和吸収構造体。
  14. 前記QW半導体材料がGaX1In1-X1As又はGaX1In1-X1AsY11-Y1の場合、前記N材料は、
    GaAsか、又は、
    原子分率X3が0.5よりも小さく、及び/又は、前記ドーパントを含んでおらず、及び/又は、前記R材料に比べて低いドーパント濃度を有するAlX3Ga1-X3Asであり、
    前記QW半導体材料がGaX1In1-X1AsY11-Y1又は(AlX1Ga1-X1Y1In1-Y1Asの場合、前記N材料は、
    InPか、又は、
    原子分率X3及びY3が、前記N材料が接触している前記QW半導体材料中よりも大きなバンドギャップが生じるような原子分率であり、及び/又は、前記ドーパントを含んでおらず、及び/又は、前記R材料に比べて低いドーパント濃度を有するGaX3In1-X3AsY31-Y3、又は、(AlX3Ga1-X3Y3In1-Y3Asである、
    ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の可飽和吸収構造体。
  15. 前記第1のブラッグ反射体(23)に接して配置されたヒートシンク(21)を更に含んでおり、前記第1及び/又は第2の透光性半導体材料からなる前記コンタクト層(14,14a,14b,14c,14d,14e)を伴う前記QW(量子井戸)半導体材料からなる前記吸収体層(13,13a,13b,13c)は、前記ヒートシンク及び前記第1のブラッグ反射体から延びることを特徴とする請求項1に記載の可飽和吸収構造体。
  16. 前記第1のブラッグ反射体(23)から離れた位置に第2のブラッグ反射体(24)を更に含んでおり、前記第1及び第2の透光性半導体材料からなる前記コンタクト層(14,14a,14b,14c,14d,14e)と前記QW(量子井戸)半導体材料からなる前記吸収体層(13,13a,13b,13c)により形成される吸収体ユニットが、前記第1のブラッグ反射体と前記第2のブラッグ反射体との間に存在するファブリー−ペロー・エタロンであることを特徴とする請求項15に記載の可飽和吸収構造体。
  17. 前記ブラッグ反射体(23,24)をなす前記4分の1波長層(19)は、透光性半導体材料又は透光性誘電材料からなることを特徴とする請求項1又は15又は16に記載の可飽和吸収構造体。
  18. 多層エピタキシャルヘテロ構造吸収体を備えた可飽和吸収構造体(10)の製造方法であって、
    半導体材料からなる基板(11)を準備する段階と、
    複数の4分の1波長層(19)を備えたブラッグ反射体を堆積する段階と、
    電磁放射の予め定められた光周波数範囲で、放射輝度に非線形に依存する光吸収率を有するQW(量子井戸)半導体材料からなる1つ以上の第1の吸収体層(13)をエピタキシャル成長させる段階と、
    前記第1の吸収体層の成長の前及び/又は後に、第1の透光性半導体材料からなる1つ以上の第1のコンタクト層(14)を、前記第1の吸収体層に対して格子整合性を有するか又は擬似格子整合性を有するようにエピタキシャル成長させる段階とを含み、更に、
    前記QW半導体材料からなる前記第1の吸収体層(13,13a,13b)の前記エピタキシャル成長は、最大で60nmの予め定められた厚み(S)に到達したときに停止され、かつ、
    前記第1のコンタクト層(14,14a,14b,14c)の前記エピタキシャル成長の際に、1つ又はいくつかの主成分、少なくとも1つのドーパント(M2)、及び、少なくとも1つの金属添加元素(M1)がそれぞれ供給され、前記金属添加元素は、追加成分であるか、又は、いくつかの前記主成分のうちの1つを置換して、置換される原子分率の少なくとも50パーセントの濃度が得られるものであり、それによって、前記第1の吸収体層(13,13a,13b)をなす前記QW半導体材料中に発生する荷電キャリアが、最大で100ピコ秒の第1の再結合時間を有するようなR(反応性)材料が形成されること、を特徴とする可飽和吸収構造体の製造方法。
  19. 電磁放射の予め定められた光周波数範囲において、放射輝度に非線形に依存する光吸収率を有するQW(量子井戸)半導体材料からなる1つ以上の第2の吸収体層(13,13c)をエピタキシャル成長させる段階と、
    前記第1の吸収体層の成長の前及び/又は後に、第2の透光性半導体材料からなる1以上の第2のコンタクト層(14,14d,14e)を、前記第2の吸収体層に対して格子整合性を有するか又は擬似格子整合性を有するようにエピタキシャル成長させる段階と、を更に含み、
    前記第2のコンタクト層(14,14d,14e)の前記エピタキシャル成長の際に、前記第1のコンタクト層(14,14a,14b,14c)よりも低い濃度の、前記少なくとも1つの金属添加元素(M1)及び/又は前記少なくとも1つのドーパント(M2)が供給され、前記第2の吸収体層(13,13c)をなす前記QW半導体材料中に発生する荷電キャリアが100ピコ秒よりも長い第2の再結合時間を有すること、を特徴とする請求項18に記載の可飽和吸収構造体の製造方法。
  20. それぞれの前記第1及び第2の吸収体層(13,13a,13b,13c)のエピタキシャル成長の前又は後、又は、それぞれの前記第1及び第2のコンタクト層(14,14a,14b,14c,14d,14e)のエピタキシャル成長の前又は後に、スペーサ層(15)をエピタキシャル成長させる段階を更に含むことを特徴とする請求項18又は19に記載の可飽和吸収構造体の製造方法。
  21. 前記第1及び第2の吸収体層(13,13a,13b,13c)、前記第1及び第2のコンタクト層(14,14a,14b,14c)、及び前記スペーサ層(15)の前記エピタキシャル成長の後に、複数の4分の1波長層(19)を備えた第1のブラッグ反射体(23)を堆積させる段階を更に含むことを特徴とする請求項18又は19又は20に記載の可飽和吸収構造体の製造方法。
  22. 前記可飽和吸収構造体(10)を、前記第1のブラッグ反射体(23)の最上部の端面(31)でヒートシンク(21)に付着させる段階を更に含むことを特徴とする請求項21に記載の可飽和吸収構造体の製造方法。
  23. 前記第1及び第2の吸収体層(13,13a,13b,13c)及び前記第1及び第2のコンタクト層(14,14a,14b,14c,14d,14e)を保持しつつ、少なくとも前記半導体基板(11)を選択的に除去する段階を更に含むことを特徴とする請求項21又は22に記載の可飽和吸収構造体の製造方法。
  24. 前記第1及び第2の吸収体層(13,13a,13b,13c)及び前記第1及び第2のコンタクト層(14,14a,14b,14c,14d,14e)の最上部に、複数の4分の1波長層(19)を備えた第2のブラッグ反射体(23)を堆積させる段階を更に含むことを特徴とする請求項23に記載の可飽和吸収構造体の製造方法。
  25. 前記第1のコンタクト層(14,14a,14b,14c)をなす前記R(反応性)材料を得るために、
    最後にエピタキシャル成長させた層に向けて1つ又は複数のガスを、その1つ又は複数の成分が、前記少なくとも1つの金属添加元素(M1)及び/又は前記少なくとも1つのドーパント(M2)として、前記最後にエピタキシャル成長させた層に転移するように供給し、それによって、前記R材料を形成する段階、及び/又は、
    前記最後にエピタキシャル成長させた前記R材料からなる前記第1のコンタクト層に接して存在する1つ又は複数のガスの1つ又は複数の成分を、前記少なくとも1つのドーパント(M2)として前記第1のコンタクト層に転移させる段階、を更に含むことを特徴とする請求項18から24のいずれか1項に記載の可飽和吸収構造体の製造方法。
  26. 前記R材料の前記主成分を供給するために、少なくともヒ素及び/又はリンが使用され、任意選択によりガリウム及び/又はインジウムが使用されることを特徴とする請求項18から25のいずれか1項に記載の可飽和吸収構造体の製造方法。
  27. 前記金属添加元素(M1)を供給するために、アルミニウムが使用され、前記ドーパント(M2)を供給するために、酸素及び/又は鉄及び/又はクロムが使用されることを特徴とする請求項18から26のいずれか1項に記載の可飽和吸収構造体の製造方法。

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