米国特許第2,994,897号に、閉止具がねじ込み可能式に取り付けられた、従来のプラスチック製の絞り出しボトルが開示されている。この容器オリフィスに、毛材の房を担持した比較的簡易なスナップ嵌めまたは摩擦嵌め挿入体が嵌合される。この挿入体の中を通る流路が、毛材のベースに通じる。望ましくない流れを防止する手段は開示されていない。つまり上記の漏れ問題が生じる可能性がある。さらに、製品流路は、まだ容器挿入体内部のちょうど毛材のベースのところで終わり、毛材の房の中まで延びていない。このため、製品は、密接に圧着された毛材部分の間を無理に通らなければならならず、毛材上に製品が均等に分散することは困難である。対照的に、本発明は、望ましくない流れを制御する手段を提供し、その流路は、製品の分散を改善するために、厳密なパッケージハウジングの中からアプリケータ先端部の中まで延びる。
米国特許第4,040,753号に、ヘッドが通常、共にスナップ嵌めまたは摩擦嵌合された2つの表面の迫台によって封止される、絞り出し可能なリザーバとブラシの間の流路が開示されている。封止が解け、圧力を受けた製品が毛材まで流れることができるように、リザーバを絞る作用によって1つまたは複数の表面が変形する。圧力が取り除かれると、変形した表面が元の形状に戻り、封止が回復する。この装置はかなり簡易だが、流路が通じているのは、パッケージハウジングの外側になる毛材の囲いの中のある程度先ではなく、まだ厳密なパッケージハウジングの内側レベルである毛材の囲いの外側までという欠点をもつ。有用に使用するためには、製品の一部がブラシの末端の方に押し上げられるまで、製品をリザーバからブラシに搾り出さなければならない。これにはかなり大量の製品が必要になるが、そのすべてが使用者にとって必要とは限らない可能性がある。分配された製品の、毛材のベースの近くに残っている部分は使用されず、使用していない間に乾く可能性がある。さらに、この装置では、流路はボトルを絞った場合だけ開く。したがって、使用者がブラシへの製品の流れを維持したい場合は、化粧品を正確に塗るためにブラシを操作しながら、リザーバをしっかりと力を込めて握らなければならない。対照的に、本発明は、ブラシの内部と、毛材のベースのほぼ上と、厳密なパッケージハウジングの外側とに製品を注入し、そこから製品がブラシの全体にわたって均一に流れる。さらに、閉止具を容器から取り外すと、リザーバを絞らなくても流路が開く。
米国特許第3,545,874号は、容器頸部に配設された弁部材ハウジングを有するブラシアプリケータを備えた、絞り出し容器である。弁部材ハウジングは、リザーバから毛材までの流路を画成し、通常は流路のオリフィスに対して封止式に付勢される、軸方向に動作可能な弁ステムを備える。封止式の付勢は、弁部材ハウジングの壁として一体成型された、ばねまたは蛇腹によって行われる。弁は、封止付勢に打ち勝つだけ強くブラシアプリケータを表面に押し付けることによってはじめて開くことができる。次いで、容器を絞る、かつ/またはひっくり返すと、製品がリザーバから毛材へ流れる。流路のオリフィスは通常封止されているので、望ましくない流れが制御される。ただし、この装置は、比較的複雑で、それぞれパッケージのコストに追加される、注文設計された構成部品を複数必要とする。さらに、流路は、厳密なパッケージハウジングの先にある毛材の房の中まで延びていない。上記のように、このため毛材上での製品の均一な分散を実現することが難しくなる。この設計の他の不利な点には、腐食を受ける金属製のばねが必要なこと、弁部材ハウジングと係合する特殊設計されたキャップが必要なことが含まれる。ばねも特殊キャップも、パッケージのコストを吊り上げる。さらに、上述のように、弁を開くのにブラシアプリケータを十分強く押さなければならない。このため、マニキュアや目のメーキャップなどの繊細な塗布にはこの装置を使用することができない。対照的に、本発明は、ばねも、製造が複雑な蛇腹も、注文設計の閉止具も使用しない。さらに、こういった従来技術の装置やそれに続く装置は、液密封止を維持する必要がある一方で、互いに摺動する構成部品を利用している点で、本発明より劣っている。このタイプの液密封止を実現するには、製造時に厳しい許容差を維持しなければならない。構成部品の滑り嵌めは、効果的封止を形成するのに十分密接していなければならないが、一方の構成部品をもう一方の構成部品に滑り通せるだけ十分に緩くなければならない。このタイプの効果的な封止は、本発明で使用される、封止関係において互いに摺動する構成部品を利用しない封止手段よりも、実現がかなり難しい。
より複雑な手法が、例えば米国特許第4,748,990号に開示されているように、流通形ブラシアプリケータを有する絞り出し容器の開発に採用されてきた。この場合、リザーバとアプリケータブラシの間の流路にあるオリフィスを、オリフィスの方またはそれと反対の方へ動く弁ステムによって、完全にまたは部分的に遮断することができる。固定弁ステムと可動オリフィスの相対位置は、ねじ山が設けられた容器の下側部分を相対的に回転させることによって、連続的に調節することができる。このようにして、オリフィスを通過できる製品の量を制御することができる。この装置は、特殊設計された「中心封止プラグ」によって弁ステムを(封止機構の一方の本質的部分)容器頸部に固定式に取り付けなければならない点が比較的複雑であるので不利である。このプラグは、かなり複雑であり、容器頸部オリフィスとの間の良好な封止を確保するために特別な注意が必要である。さらに、製品流路のオリフィス(封止機構のもう一方の本質的部分)はそれ自体が、複雑な特殊設計されたハウジングの一部分になっており、この製品流路は、パッケージハウジングの外側まで延びていない。
米国特許第5,397,195号は、他の回転タイプのシステムであり、リップスティック繰出し器システムと同様のものである。閉位置から、スリーブと容器の相対的回転によって、アプリケータホルダが軸方向に進む。これが行われると、アプリケータホルダのベースのオリフィスが、閉位置にあるときにオリフィスを封止するニードルと反対の方へ動く。このようにして、リザーバからブラシへの流路が開く。相対的な回転が反対方向に行われると、オリフィスはニードルの方に動いてそれに接触し、製品が流れることができないように密封される。従来の動きと流れ制御を実現するために相対的な回転を使用する、上記およびその他の流通型の装置は、比較的複雑で、製造にコストがかかり、本発明よりも信頼性が低い。さらに、繰り返すが、製品の流路がパッケージハウジングの外側まで延びていない。
米国特許第3,655,290号、第4,368,746号および第5,904,433号の開示は、容器閉止具で活動化される流れ制御手段を有する流通形アプリケータについて記述している点で同様である。米国特許第3,655,290号では、ブラシアプリケータが、軸方向に移動させることができる「ノズル」に取り付けられる。ノズルと接触するように特殊設計された閉止具をこの容器に付けると、ノズルがさらに容器内に押し込まれ、リザーバからブラシまでの流路の部分が封鎖される。閉止具を容器から取り除くと、流路を開くのに十分なだけ、ノズルをわずかに延ばすことができる。ノズルは、任意選択で、使用者が容器を絞ったときに生成される、あるいはノズルの背を押すように設けられたばねによって生成される、ノズルの背のところの圧力によって延ばすことができる。この従来技術の装置は、液密封止を維持する必要がある一方で、互いに摺動する構成部品を利用している点が、本発明より劣っている。この不利な点については、上記で説明した。さらに、この従来技術の装置の流路は、ハウジングの先にある毛材の房の中央にまで延びず、まだハウジング内部の毛材のベースのところで終端している。上記のように、このことによって、毛材上の製品の均一な分散の実現が難しくなる。ばねを使用していることによっても、この設計は本発明より劣ることになる。
米国特許第4,368,746号には、製品出口オリフィスを有する絞り出し可能なクリームのチューブを備える、リップクリームのアプリケータが開示されている。出口オリフィスは、アプリケータパッドのベースに通じるアプリケータ先端部構造の流路の中に出ている。アプリケータ先端部構造は、チューブの出口オリフィスに対して、軸方向に可動である。対抗するものがないと、ばねは、完全に延びた位置でアプリケータ先端部構造を保持し、出口オリフィスが開く。ただし、ねじキャップをアプリケータ先端部構造に付けて覆い、チューブのねじと係合させると、先端部構造内部の弁ヘッドが出口オリフィスに載置されて、チューブからの製品の流れを遮断するまで、アプリケータ先端部構造がばねの作用に対抗して出口オリフィスの近くまで押される。この従来技術の装置は、液密封止を維持する必要がある一方で、互いに摺動する構成部品を利用している点が、本発明より劣っている。この不利な点については、上記で説明した。この設計の他の不利な点には、腐食を受ける金属製のばねを必要とすること、アプリケータ先端部構造と係合する特殊設計されたキャップを必要とすることが含まれる。ばねも、特殊キャップも、パッケージのコストを吊り上げる。キャップは、パッケージの寿命全体にわたって、アプリケータ先端部に繰り返し押し付けられるので、特殊設計する必要がある。予防措置を講じなかった場合、この摩耗性の接触によって、アプリケータ先端部が損傷を受ける可能性がある。さらに、上記のように、アプリケータ先端部構造は軸方向に可動である。この動きは、アプリケータ先端部が使用中に肌に押し付けられたときに生じることがある。これは、正確に製品を塗布しようとしている使用者にとって、気を散らすものになる可能性がある。さらに、使用者がそれだけ十分に強く押し付けると、使用中に製品の流れが低減または遮断される。
米国特許第5,904,433号には、容器閉止具を容器から取り除くと開き、容器に付けると閉じる流路を有する、絞り出し可能な流通形アプリケータシステムが記載されている。この閉止具を容器に付けると、その閉止具が径方向に突出するタブを押さえつけ、それによって、アプリケータハウジングが特殊成型された薄い壁の部分のところで変形する。この変形によって、薄い壁の部分の近くに配置された封止ストリップが、その封止ストリップと反対側の表面によって封止が形成されるまで、反対側の表面の方に移動して、流路が遮断される。閉止具を取り除くと、変形が解放され、流路が開く。この装置はかなり複雑である。壁に特定の曲げ特性を与えるように壁厚を厳しく制御しなければならないセンチメートルサイズの部分を有する特注構成部品が必要なので、比較的製造が難しい。隣接する構成部品(すなわち封止ストリップ)を正確に移動させて第3の構成部品(反対側の表面)と封止関係にするように、1つの構成部品(すなわち薄い壁の部分)を変形するのは、部品コストを低く保つ要求が高い化粧品市場においては特に、かなり複雑な設計になる。さらに、製品流路は、アプリケータ先端部内で終端するのではなく、まだハウジング内の毛材のベースのところで終端する。対照的に、本発明は、この従来技術の装置よりもかなり簡易な設計の閉止具に応答する変形封止手段を使用する。
米国特許第1,067,596号には、厳密なパッケージハウジングを大幅に超えてアプリケータ先端部の内部に延びるゴム製品の流路を有する、ピストン作動のシェービングクリームブラシが記載されている。不快感を与える硬質の部材を肌の上で引きずる感触を低減するために、流路は可撓性のあるゴムになっている。しかし、不快感を与える感触は完全にはなくならず、流路はブラシの操作と干渉する。これは、本発明では、製品の分散を最大にするために流路が厳密なパッケージハウジングの先のアプリケータ先端部の中に延びているが、アプリケータ先端部の機能と干渉もせず、不快感を与える経験も生じない点で異なる。本発明は、比較的複雑なピストンシステムを利用しない。
本発明の主要な目的は、従来技術に比べて簡易な構造を有する、流通型化粧品アプリケータ・パッケージを提供することである。
他の目的は、従来技術に比べて信頼性が高い流通型化粧品アプリケータ・パッケージを提供することである。
他の目的は、規格の口頸部を有する任意の既存の容器を流通型アプリケータ・パッケージに変える手段を提供することである。
本発明は、流動性のある製品を分配できるリザーバと、ベースおよび外部表面を有するアプリケータ先端部と、リザーバとアプリケータ先端部のベースとの間に製品を導くことができる変形可能な弾性導管と、変形可能な導管を変形する手段と、閉止具(クロージャ:closure)とを備える、流動性のある製品のための流通型アプリケータ・パッケージである。さらに本発明は、変形可能な導管と流体連通する硬質の導管を備えてもよい。さらに本発明は、アプリケータ先端部のベースの近くにフェルール(ferrule)を備えてもよい。さらに閉止具は、内部キャップおよびオーバーシェルを備えてもよい。リザーバは、チューブなどの可撓性のある容器の内部に配置されても、ガラス製ボトルなどの硬質の容器の内部に配置されてもよい。リザーバおよび容器は、任意の形状を呈することができる。本発明はまた、規格の口頸部を有する任意の化粧品分配容器を流通形アプリケータシステムにする、簡易な手段を包含する。
本明細書全体にわたり、用語「備える」は一貫して、対象物の集合が具体的に記載されたものに限定されないことを意味するものとする。
本明細書全体にわたり、用語「導管」は一貫して、管腔(lumen)自体との重複部分ではなく、管腔の境界を形成する固体材料を表すものとする。
図1〜4を参照すると、本発明は、流動性のある製品(1)を保有することができるリザーバ(11)を画成する容器(10)を含んでいる。この容器は、流動性のある製品を分配するための1つまたは複数の壁(12)およびオリフィス(13)を備える。1つまたは複数の壁は、可撓性があっても、硬質であってもよい。例えば、この容器は、プラスチック製の絞り出し可能なチューブでも、硬質プラスチック製の広口瓶でも、ガラス製のボトルでもよい。容器は、消費財産業で一般に見られる任意の規格化されたタイプのものでもよく、あるいは注文設計してもよく、完全に規格外であってもよい。この容器およびその中のリザーバは任意の形状にできるが、容器はアプリケータ・パッケージの柄の働きをすることができるので、容器の外部は、使用者の手で握るのに適していることが好ましい。例えば、容器の外部は、鉛筆のように細長く、全般に円筒形の形状を画成してもよい。任意選択で、容器の外部に、使用者の握りを強化する、あるいはこの部材の操作に役立つ任意の機能を組み込んでもよい。任意選択で、容器はさらに、規格の構造および寸法をもつ口頸部(15)を含む。かかる構造および寸法は、容器技術において周知である。その一部の例が、Rigid Plastic Packaging Institute(硬質プラスチック容器協会)、Glass Packaging Institute(ガラスびん協会)およびEuropean Tube Manufacturers Association(ヨーロッパチューブ製造業者協会)によって普及された自主規格である。本発明の流通形化粧用アプリケータ・パッケージは、規格口頸部を有する容器を備えていると好ましい。
本発明のアプリケータ・パッケージは、リザーバ(11)とアプリケータ先端部のベース(下記参照)の間で製品を導くことができる変形可能な弾性導管(20)を備える。変形可能な導管の一実施形態が、図4〜7に示されている。変形可能な導管は、リザーバからの製品が流れることができる管腔(21)を画成する。変形可能な導管は、管腔の基端、末端オリフィス(24、25)を画成する基端、末端(22、23)を有する。基端オリフィス(24)は、容器オリフィス(13)と流体連通する。容器オリフィスから出てくるほぼすべての製品が、基端オリフィスを全く迂回することができないように、管腔の基端オリフィス内に通過しなければならないのが好ましい。これを実現するために、容器と変形可能な導管の間の接触点で、効果的な液密封止を実施することができる。容器と変形可能な導管の間に何らかの要素が介在する場合は、流動性のある製品の漏れを防止するために、容器から変形可能な導管への流路全体を封止するべきである。図6の実施形態では、変形可能な導管は、容器の口頸部(15)の上端に平坦な状態で配置されるように設計された封止フランジ(26)を備える。この封止フランジは、効果的な封止が形成されるように、下記の手段によって、口頸部の上端に対して圧締めされる。管腔の末端オリフィス(25)は、リザーバからの製品が直接または間接的にアプリケータ先端部に通過できるように、アプリケータ先端部(30)と流体連通する。
変形可能な弾性導管(20)の少なくとも一部分は、圧力が加わると形状が変化し、圧力が取り除かれると元の形状にほぼ戻る1つまたは複数の材料を含む。使用中は、導管の画成された部分(27)のみが、変形圧力を受ける。それにもかかわらず、導管(20)全体を、変形可能な弾性材料で形成してもよい。これは、変形可能な導管を単一材料の単体ボディとして製造するほうが容易な場合に行われることがある。アプリケータ・パッケージを閉じ、使用していないときは、変形可能な導管を通る製品の流れが制限、または完全に遮断されるように、画成部分(27)が挟んで締め付けられる。画成部分に適した材料は、膨張度が小さく、機械的応答が安定し、使用中に加わる力に対抗して裂傷を食い止めるのに十分な引裂強度を有する、弾性のある材料を含む。一般に、これに適した材料には、天然ゴムおよび合成ゴムが含まれる。合成ゴムの中では、シリコーンおよび非シリコーン・エラストマーを使用することができる。適当な非シリコーン・エラストマーの非網羅的なリストには、スチレン‐ブタジエンエラストマー(BUNA−SおよびSBR)、ポリブタジエンエラストマー、ポリイソプレンエラストマー、ニトリルエラストマー(BUNA−N)、ブチルム、ネオプレンム、エチレンプロピレンゴムおよびウレタンエラストマーが含まれる。一般に、広範囲のシリコーン・エラストマー系材料が弾性導管および画成部分に適しており、こういった材料は、弾性導管が2次加工操作中に熱を受ける可能性がある場合に好ましい。例えば、シリコーン・エラストマーが好ましいのは、まず弾性導管をアプリケータ先端部に合わせて組み立て、次いでそのアプリケータ先端部に熱を当てて、アプリケータ先端部の形成に使用した接着剤を硬化させる場合があり得る。かかる方法は、現実に即した製造方法であるとみなされている。
本発明のアプリケータ・パッケージは、アプリケータ先端部(30;図8、9を参照)を備える。アプリケータ先端部は外部表面(31)を備える。「外部表面」は、接触することによって流動性のある製品(1)を受け表面に移すことができる、アプリケータ先端部の任意の部分を意味する。この定義によれば、外部表面の厳密な形状および寸法は、塗布するごとに変化する。というのは、最初の塗布では、この先端部のある部分で製品の移動を実現し、2番目の塗布では、その先端部の他の部分で製品の移動を実現してもよいからである。「受け表面」は、外部表面から直接製品を受けることができる任意の素地を意味する。化粧用アプリケータでは、受け表面は、使用者の体の一部分、すなわち肌、髪、爪などであることが最も多い。アプリケータ先端部の外部表面は、周知の任意のタイプのアプリケータ表面で形成することができる。例えば、外部表面はブラシまたは櫛の毛材で形成してもよく、あるいはスポンジ、パウダーパフ、フロック加工基材または吸収材料の覆いが付いた成型基材などのアプリケータ先端部は「雌鹿の足(doe−foot)」と呼ばれることがある。あるいは、外部表面は、流動性のある製品を受け表面に移すのに適した他の任意の表面にすることができる。
一般に、アプリケータ先端部(30)は、管腔(21)の末端オリフィス(25)と流体連通式にしっかり保持されるように作られたベース(32)を有する。アプリケータ先端部のベースは、適当な任意の手段でこのオリフィス構造に保持することができる。例えば、変形可能な導管の末端(23)にアプリケータ先端部のベースを直接または間接的に、接着、インモールド成型、溶接、圧着、スナップ嵌めまたはねじ込み嵌めしてもよい。図8の実施形態では、フェルール(ferrule)(33)が、アプリケータ先端部と変形可能な導管の末端の間に介在する。フェルールは、当技術分野で一般に周知の方法で使用される。ここで、フェルールは、ブラシを形成するために毛材と合わせて圧着させる目的と、さらにアプリケータ先端部を管腔の末端オリフィスと流体連通式に固定するための目的と、の2重の目的を有する。例えば、フェルールの基端を、管腔の末端オリフィスに部分的に挿入してもよい。末端オリフィスとフェルールは、その間に液密摩擦嵌合を形成するようなサイズにすることができる。任意選択で(図5参照)、アプリケータ先端部のベース近くに、変形可能な導管の上端に切り込まれた溝(29)への摩擦嵌合挿入に適した1つまたは複数の薄壁部分(37)を設けることによって、より強力な摩擦嵌合を実現することができる。さらに、フェルール上での末端オリフィスのグリップを増すために、環状の干渉リングをフェルールの外側および/または末端オリフィスの内側に設けてもよい。
任意選択で、流管(34)をアプリケータ先端部の内側に設けてもよい(図5、9を参照)。流管の基端(35)が、管腔(21)と流体連通する。流管は、そこから、アプリケータ先端部(30)の、フェルール(33)内部にある部分の内側に延びる。流管は、フェルールの上端(38)下のアプリケータ先端部の中心領域で終端し、出口開口(36)がアプリケータ先端部の末端近くに配置される。この設計では、製品がアプリケータ先端部のベース近くの流路から出てくる場合にそうなるはずの状況よりも製品を均等に、アプリケータ先端部全体にわたって散布可能にしながら、流管がアプリケータ先端部の機能と干渉せず、それによって不快感が生じないように、製品流路が、厳密なパッケージハウジングを超えたアプリケータ先端部内部の、アプリケータ先端部の密接に圧着された部分を超えた位置で終端するので有利である。このため、本発明によるアプリケータは、説明したように流管を有すると好ましい。
流管は、プラスチック、天然/合成ゴム、シリコーン・エラストマーまたは金属などの、任意の適当な材料で構成することができる。一般に、流管は可撓性があっても硬質であってもよいが、かなり硬質の流管のほうが、摩耗および裂傷に耐える可能性がある。流管は、腐食に対して耐性があり、分配中の製品と反応しないことが好ましい。ステンレス鋼は、これらの必要条件を満たす材料の1つの例である。流管は、可撓性のある弾性材料の少なくとも一部分に構成されている場合は特に、任意選択で、アプリケータ先端部の内側にあるその末端で自閉式になっていてもよい。自閉式とは、製品が流管の末端を通過していないときに、その末端が自動的に閉じることを意味する。末端が自閉式になっていると、流管内に残っている製品は、乾燥および雰囲気からの汚染を受けにくくなる。自閉式流管は、出口開口(36)が流管の末端のスリットになっている場合に実現することができる。かかるスリットは、それに対抗して圧力を加える製品に応答して開き、圧力が解放されると閉じる。予想の範囲内で、流管の内径は、この状況から分かるように、およそ0.25mm〜10mmの間の任意の値にあってよい。
以上、製品は、リザーバから変形可能な導管の中を通ってアプリケータ先端部の外部表面に流れることができる。次に、変形可能な導管の中を通る製品の流れを制御する手段について説明する。
一般に、加えられた圧力の作用を受けて管腔(21)が一時的に狭くなるような、変形可能な導管を可逆的に変形させる任意の手段が、流れ制御手段として適し得る。「可逆的」とは、管腔が、加えられた圧力が取り除かれた後に、変形前の寸法にほぼ戻ることを意味する。変形可能な導管を通る製品の流れを制御する手段の一実施形態が、図3、5、10および11に示されている。そこに示されているように、流れ制御手段は、全般に中空の円筒形ハウジング(40)を備えることができる。好ましい実施形態では、このハウジングは2つの半円筒形のサブハウジング(sub−housings)(40a、40b)から形成され、各ハウジングは1つまたは複数の付勢された蝶番(41)を有する。2つの半円筒形のハウジングは、その組み合わせによって円筒形のハウジングが形成されるように、一緒に配置することができる。この半円筒形のハウジングは、それらを一緒に保持して円筒形のハウジングを形成する手段を備えてもよい。かかる手段には、戻り止め(45)と、それを受ける密接嵌合陥凹部のような、協働するスナップ嵌めまたは摩擦嵌め構造が含まれてもよい。円筒形のハウジングを別々の部品として形成することによって、例えば図3および4などに示すように、円筒形のハウジング内部に変形可能な導管(20)を配置することが簡単になる。原理的に、円筒形のハウジングを、3つ以上のサブハウジングから形成する、あるいは単体として形成しても差し支えない。ハウジングは、必要な形状に成型するのに適した任意の材料から形成することができる。プラスチックまたはエラストマーが好ましい。例えば、ハウジングは、アセタールまたは共重合体アセタール(または寸法安定性、溶接適性が十分あり、復原力が小さいその他の材料)から2つのサブハウジングに成型し、その後、変形可能な導管をこの2つの部品の内部に位置決めした後に超音波溶接することができる。あるいは、2つ以上のサブハウジングが互いに分離しないようにするために、円筒形のバンド(47)を設けてもよい。図2および3では、例えば、変形可能な導管をサブハウジングの間に位置決めした後に、そのサブハウジング同士を一緒にスナップ嵌めすることができる。このスナップ嵌めを全体的に利用したくない場合は、円筒形のバンドを付勢蝶番(41)と干渉しない位置まで滑らせてハウジングの外側を覆ってもよい。
付勢蝶番(biased hinge)(例えば、一体蝶番またはばね蝶番)は、加えた力を取り除いたときに静止位置に戻るものである。この1つまたは複数の付勢蝶番(41)が、変形可能な導管の画成部分(27)の方へ、かつそれと反対の方へ1またはそれ以上の楔(44)が回転できるように、ハウジング壁に配置される。その際、楔が、画成部分と変形接触しないときに第1の位置を占める。楔は、画成部分の変形を引き起こし、管腔(21)を通る液体または粉末の製品の流れをほぼ停止させるように画成部分と接触するときに、第2の位置を占める。楔の第3の位置は、第1と第2の位置の中間の任意の位置として定義される。第3の位置では、1つまたは複数の楔で管腔のサイズを縮小させることによって、変形可能な導管を通る製品の流れが減少する。ただし、製品の流れは、1つまたは複数の楔が第2の位置にあるときでも実際は、ほぼ完全に遮断されることはない。この設計の利点は、それによって、変形可能な導管を通って流れる製品の量を連続的に調節する可能性が生まれることである。
代替実施形態では、別個のハウジング(40)および付勢蝶番をなしで済ますことができ、楔を変形可能な導管の構造に組み込むことができる。原理的に、本発明に必要なのは、楔が、画成部分および第2の位置と変形接触しないように第1の位置を占めることができ、画成部分を変形させて、管腔を通る製品の流れをほぼ停止させるように第2の位置を占めることができる点だけである。
変形可能な導管(20)を通る製品の流れをほぼ停止させるのに必要な楔(44)の数は、変形可能な導管および楔の正確な幾何形状および寸法に依存する。ただし、必要な楔の数は、当分野の技術者なら、また型どおりの実験を行うことによって、容易に決定することができる。図3に示す好ましい実施形態は、変形可能な導管を間に挟んで締め付けることができるように、互いに向かい合う2つの楔を有する。一般に、大部分の化粧品アプリケータには、楔は2つで十分であろう。ただし原理的に、所望の流れ制御は、1つの楔、または2つを上回る数でも実現することもできる。さらに、図3の2つの楔は、導管に沿って同じ軸位置に配置されているが、複数の楔を一般に、導管の長手方向の軸に沿った異なる位置に配置してもよい。楔の配置は全く便宜上のものであり、唯一の必要条件は、楔が、加えられた圧力の作用を受けて変形可能な導管の方に回転し、圧力が取り除かれたときは変形可能な導管と反対の方へ回転することができるということである。液体または粉末の製品の流れをほぼ遮断するように楔が第2の位置にあるときに、製品の蒸気がその後も、変形可能な導管を通って移動できる可能性があることに留意されたい。これは実のところ、例えばこの蒸気によってアプリケータ先端部の乾燥が防止されるときなど、望ましい場合がある。
上述の楔の設計には、管腔(21)の直径をどのくらいにすべきかについて、実際的な制限がいくつか課せられる。例えば、管腔を通る製品の流れをほぼ遮断するために、2つの向かい合う楔はそれぞれ、変形可能な導管の直径の半分マイナス壁厚に等しい距離だけ移動する必要がある。つまり、楔自体は少なくともそれだけの幅にし、変形可能な導管の両側にその同じ距離だけ楔自体を突出させなければならない。後述のように、楔は、楔を覆う閉止具の押圧によって、第1の位置から第2の位置まで回転する。実際には、その閉止具を付けることが難しくなるより前に、楔が突出できる距離の限界に達する。若干の指針を挙げると、管腔の直径(変形可能な導管の内径)は、最大約8mmまで可能である。
ハウジング(40)は、変形可能な導管(20)の少なくとも一部分を取り囲み、支持する。さらに、ハウジングを口頸部(15)に固定すると、変形可能な導管のフランジ(26)が、口頸部の上端との封止接触を維持するように口頸部の上端に圧締めされる。ハウジングは、適当な任意の手段によって、口頸部に固定することができる。口頸部が螺旋状のねじを備えるときは、ハウジング内壁(42)上の協働ねじ(43)を使用するのが好ましい方法である。ハウジングと口頸部の協働によって加えられる軸方向の力は、変形可能な導管のフランジと口頸部の上端の間に密封を作り出すのに十分である。例えば、図11の実施形態では、ハウジングの内壁は、変形可能な導管のフランジの上端に静止する、環状の肩(46)を備える。ハウジングが口頸部(15)に固定されると、肩がフランジを圧迫して、フランジを口頸部の上端に押し付け、気密/液密封止を形成する。
本発明の流通型アプリケータ・パッケージはさらに、アプリケータ先端部を覆うことができ、円筒形のハウジング(40)に固定できる閉止具(50)を備える。閉止具は、主な2つの目的に役立つ。第1に、閉止具は、アプリケータを使用していないときにアプリケータ先端部を保護する。第2に、閉止具は、変形可能な導管を通る製品の流れを妨げる、流れ制御手段を作動させる。図4の実施形態には、1つまたは複数の楔(44)と接触した時点の閉止具が示されている。閉止具をハウジング上でさらに前進させると、楔が第1の位置から第2の位置まで回転させられ、それによって管腔(21)が狭くなり、管腔を通る製品の流れがほぼ妨げられる。したがって、アプリケータを使用していないときは、リザーバ(11)からアプリケータ先端部(30)までの製品の移動が妨げられる。閉止具の内寸は、当分野の技術者なら容易に決定することができる。唯一の必要条件は、閉止具が、完全に載置されたときに、1つまたは複数の楔を第2の位置に押し込むことである。これを行うには、さまざまな選択肢がある。
例えば、閉止具(50)の内壁(51)を、1つまたは複数の楔(44)に直接接触し、それらを第1の位置から第2の位置へ、または第1の位置から第3の位置へ動かすように寸法決めしてもよい。後者の場合は、第3の位置から第2の位置に楔を移動させるために、追加の手段を設けなければならない。例えば、閉止具が完全に載置される位置に達したときに、1つまたは複数の楔の上端に留まるように配置された1つまたは複数のビードまたは戻り止めを、閉止具の内壁が有してもよい。戻り止めは、第3の位置から第2の位置へ楔を付勢する。
あるいは、閉止具(50)の内壁(51)は、1つまたは複数の楔(44)と直接接触しなくてもよい。この場合、閉止具がパッケージ上の完全に載置される位置に達したときに、楔に接触しその楔を第1の位置から第2の位置へ押し込むような戻り止めが、内壁に設けられる。
任意選択で、閉止具(50)の内壁(51)は、内壁の丈のほぼ全体にわたって楔(44)に接触するように寸法決めすることができる。あるいは閉止具が完全に載置される位置に達して初めて、楔に接触するように寸法決めしてもよい。
閉止具(50)は、摩擦嵌合、スナップ嵌め、ねじ係合、干渉ビードなどの、任意の適当な手段によってハウジングに載置することができる。図4の実施形態では、閉止具は、サブハウジング(40a、40b)に摩擦嵌合する。やはり図5に示すように、任意選択の機能として、閉止具の内壁(51)の一部分が、変形可能な導管(20)の上側部分(28)と摩擦嵌合式に接触する。この接触により、気密封止が形成され(図5に「A」で示す)、したがって乾燥またはその他の雰囲気の影響からアプリケータ先端部を保護できることが有利である。
閉止具(50)は、当技術分野で一般に知られているように、任意選択で内部キャップ(52)およびオーバーシェル(53)を備えることができる。閉止具が内部キャップを備える場合は、上記の閉止具の内壁(51)について触れた点についてはすべて、内部キャップの内壁のことであると理解されたい。閉止具は、任意の適当な材料から作ることができる。例えば、内部キャップはポリプロピレン製、オーバーシェルはアルミニウム製にすることができる。以上から、本発明の閉止具は、パッケージの操作にとって重要であると同時に、一部の従来技術では必要な、特殊設計も、注文の閉止具も必要ないことが理解されよう。例えば、従来の摩擦嵌合閉止具で十分である可能性がある。
以上述べたように、本発明は操作が簡単である。閉位置から始めると、閉止具(50)によって流通形パッケージが閉じられ、楔(44)が第2の位置に配置され、変形可能な導管(20)が挟まれて遮断され、その結果、液体または粉末の製品が変形可能な導管をほぼ流れることができなくなる。そのようであっても、アプリケータ先端部を乾燥しないようにしておくために、リザーバ内の揮発性の蒸気が変形可能な導管を通過できてもよい。使用者が閉止具を取り除くと、楔は付勢蝶番(41)の作用を受けて、第2の位置から第1の位置まで回転する。楔が第1の位置まで移動すると、変形可能な導管の回復力によって、導管が変形されていない状態まで戻され、管腔(21)が製品の流れに対して開く。いずれの適当な手段であっても、それによって、製品がリザーバ(11)から推し進められる。容器(10)が柔らかく、曲げやすい場合は、製品をリザーバから押し出すのに、絞り出す手段を使用することができる。容器が絞り出し可能ではない場合は、製品をリザーバから移動させるのに、容器を振る、または軽く叩く手段が適していることがある。リザーバからの製品は、変形可能な導管に入ってそれを通り抜け、流管に入ってそれを通り抜けて、アプリケータ先端部の内部領域に出る。追加の製品がリザーバから推し進められると同時に、アプリケータ先端部の内部領域にすでに入っている製品が、放射状に広がって均一に分散しながらアプリケータ先端部の表面に出る。使用者は、その製品をアプリケータ先端部から素地へ塗布する。製品がさらに必要な場合は、使用者は製品をリザーバからさらに推し進め、塗布を繰り返す。終了するときは、閉止具をパッケージに戻し、変形可能な導管の画成部分(27)に楔を押し込み、変形可能な導管を挟んで遮断し、製品の流れに対して管腔を閉じる。
当然のことながら、本発明の設計は比較的簡易である。本発明は、厳密な対合の許容差によって信頼性の高さが決まり、製品と接触することによって機能が損なわれる可能性のある逆止弁やストッパを使用しない。本発明は、摺動封止を形成する構成部品を使用しない。本発明は、特殊設計された従来と異なる閉止具を必要としない。本発明は、蒸気を放出するための別個の通路も、蒸気通路を制御するための圧力作動の逆止弁も必要としない。腐食する可能性がある高価な金属ばねが必要ない。ブラシを前進/後退させる機能は必要ない。本発明の流れ制御手段が従来技術と異なっているのは、従来技術では、効果的な封止を実現するために、正確な許容範囲に製造する必要がある封止表面を接合することによって封止を形成する手段を利用している点である。対照的に本発明では、変形可能な導管を挟んだ遮断にはそれほど精度が必要なく、したがって、より容易に安定した実施を行うことができる。導管は変形可能であるが、従来技術のように薄い壁の部分は必要ない。全般に円筒形の変形可能な導管は、米国特許第5,904,433号の構成部品よりも製造がはるかに簡単である。
本発明はまた、化粧分配容器を流通型アプリケータ・パッケージに改造する簡易な方法を含む。分配容器は、規格の口頸部を有していても、有していなくてもよい。一般に、この方法は、流通型アプリケータ・パッケージに改造した容器を提供するステップと、容器口部を変形可能な導管を収容するハウジングに嵌合させるステップと、変形可能な導管が、変形可能な導管と流体連通式にしっかり保持されたベースを有するアプリケータ先端部に連結されるステップとを含み、さらに、変形可能な導管を変形する手段を提供するステップと、パッケージ上に載置されたときに導管変形手段を作動させる閉止具を提供するステップとを含む。この方法は、上記の追加の、または任意選択の、構造または配置のいずれかを提供することによって、さらに改良することができる。