JP2008533216A - 固結剤、ならびに加水分解安定な成形部材およびコーティングを製造するためのその使用 - Google Patents

固結剤、ならびに加水分解安定な成形部材およびコーティングを製造するためのその使用 Download PDF

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Abstract

【課題】シリコン化合物と金属化合物のモル比が10000:1〜10:1の範囲である、少なくとも1種のオルガノシラン、および少なくとも1種の金属化合物の加水分解物またはプレ縮合物を含む固結剤が記載されている。
【解決手段】該固結剤を使用して、多孔質または粒子状の材料を加水分解安定に固結し、成形物を形成することができる。該固結剤を使用して、基材を加水分解安定にコーティングすることができる。

Description

本発明は固結剤、ならびに加水分解および水熱に安定な成形品およびコーティングを製造するためのその使用、さらにそれから形成される製品に関する。
バインダーは、小型または粒子状の製品を結合し、それらから成形物を製造するのに特に重要である。この状況に関連した特別な問題は、侵食的条件にさらされる場合の固結剤の加水分解安定性である。というのは、バインダーを効果的に使用するためには、高圧、高温、および酸または塩基などの水性または腐食性媒体との接触などの侵食的条件下においても、安定性ができる限り長く維持され、結合強度が著しく減少してはならないことが重要であるからである。この点において、バインダーとしての有機ポリマーは、安定性が不十分であることがしばしばある。
適切なバインダーを用いて微粒子系からの複合材料を製造することも、結合剤を含まない製品と比較して、複合材料がごくわずかに多孔性を失い得る場合は困難である。例えば、多孔質複合材料の製造は、有機ポリマーバインダーで可能であるが、元の多孔性を維持するのはほぼ不可能であることが判明している。バインダーの使用を減少した場合、多孔質系を製造することは可能であるが、こうした複合材料は多くの用途、特に高温で、および有機溶媒の存在下で膨潤または溶解する有機ポリマーの特性による有機液体の環境下では、不適当である。
例えば、ゾルゲル法によって得られ得る純粋に無機バインダーを使用すると、適切な多孔性が固結した成形体に維持される結合が確かに得られるが、その結合系は非常に脆く、脆弱で、剪断応力や高圧応力などの機械的応力に対する耐性が十分でない。
さらに、後にまた使用する条件下で成形物を製造することはしばしば適切である。したがって、固結した成形物を高圧下で硬化させることがしばしば望ましい。このことは、多くの固結剤にとってまったく不可能である。
腐食条件下でさえ、特に加水分解安定で水熱安定である、固結した成形物およびコーティングを製造する方法を提供することが、本発明の一目的であった。所望の多孔性の保持も可能とすべきである。さらに、十分なたわみ性を有する優れた結合強度も実現すべきである。水熱条件下で、即ち、高圧および高温下での固結を可能にすることも望まれていた。
本目的は、
(a)一般式(I)の少なくとも1種のオルガノシラン
SiX4−n(I)
(式中、R基は、同じかまたは異なっており、加水分解により除去できない基であり、X基は、同じかまたは異なっており、加水分解により除去できる基、またはヒドロキシル基であり、nは1、2、または3である)、
(b)一般式(II)の少なくとも1種の加水分解性シラン
SiX(II)
(式中、X基はそれぞれ上記の定義と同じである)、および
(c)一般式(III)の少なくとも1種の金属化合物
MX(III)
(式中、Mは、ホウ素を含む元素周期表の主族I〜VIII、または遷移族II〜VIIIの金属であり、Xは式(I)に定義されるとおりであり、2つのX基は1つのオキソ基と置き換えてもよく、aは当該元素の原子価に対応する)
の加水分解物またはプレ縮合物を含み、
使用されるシリコン化合物と使用される金属化合物とのモル比が10000:1〜10:1の範囲である、
加水分解安定な成形体またはコーティングを製造するための固結剤の提供により達成される。
式(III)の加水分解性金属化合物の使用は、驚くべきことに2つの利点をもたらす。即ち、これらの金属化合物を含有する固結剤の場合、この金属化合物を有していない固結剤と比較して、高温および高圧、侵食的水性媒体との接触などの侵食的条件下でも、硬化した固結剤の特に優れた加水分解安定性および水熱安定性が認められた。したがって、腐食性水熱応力下での長期使用さえも可能である。さらに有利な点は、こうした金属を含有する固結剤は、高圧下でも硬化することができるという事実である。
上式の加水分解除去性基Xの適切な例としては、水素、ハロゲン(F、Cl、BrまたはI、特にClまたはBr)、アルコキシ(例えば、C1〜6アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、およびn−、i−、sec−またはtert−ブトキシ)、アリールオキシ(好ましくはC6〜10アリールオキシ、例えばフェノキシ)、アルカリールオキシ、例えば、ベンゾイルオキシ、アシルオキシ(例えばC1〜6アシルオキシ、好ましくはC1〜4アシルオキシ、例えばアセトキシまたはプロピオニルオキシ)およびアルキルカルボニル(例えばアセチルなどのC2〜7アルキルカルボニル)である。同様に適しているのは、NH、モノ−またはジアルキル−、アリール−および/またはアラルキル置換アミノであり、アルキル、アリールおよび/またはアラルキル基の例としては、Rに関する上記のもの、ベンゾアミドなどのアミド、あるいはアルドキシム基またはケトキシム基である。例えばグリコール、グリセロールまたはピロカテコールとのSi−ポリオール複合体の場合、2つまたは3つのX基が互いに結合してもよい。記述した該基は、場合によってハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノまたはエポキシなどの置換基を含んでよい。
好ましい加水分解除去性X基は、ハロゲン、アルコキシ基、およびアシルオキシ基である。特に好ましい加水分解除去性基は、C2〜4アルコキシ基、特にエトキシである。
式(I)の加水分解非除去性R基は、例えば、アルキル(例えばC1〜20アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどのC1〜4アルキル)、アルケニル(例えばC2〜20アルケニル、特にビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、ブテニルなどのC2〜4アルケニル)、アルキニル(例えばC2〜20アルキニル、特にエチニルまたはプロパルギルなどのC2〜4アルキニル)、アリール(特にフェニル、ナフチルなどのC6〜10アリール)およびトリル、ベンジルなどの対応するアラルキル基およびアルカリール基、ならびにシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの環状C〜C12アルキル基およびアルケニル基である。
R基は、官能基でよい通例の置換基を有してよく、必要な場合、それを介して有機基により縮合物の架橋も可能である。典型的な置換基は、例えば、ハロゲン(例えば、塩素またはフッ素)、エポキシド(例えば、グリシジルまたはグリシジルオキシ)、ヒドロキシル、エーテル、エステル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、必要に応じて置換されたアニリノ、アミド、カルボキシル、アルケニル、アルキニル、アクリロイル、アクリロイルオキシ、メタクリロイル、メタクリロイルオキシ、メルカプト、シアノ、アルコキシ、イソシアナート、アルデヒド、ケト、アルキルカルボニル、酸無水物、およびリン酸である。これらの置換基は、二価の架橋基、特に、酸素または−NH−基が介在してもよいアルキレン、アルケニレン、またはアリーレン架橋基を介して、シリコン原子に結合している。架橋基は、炭素原子を例えば1〜18個、好ましくは1〜8個、特に1〜6個含む。上記の二価の架橋基は、例えば、上記一価のアルキル、アルケニル、またはアリール基から誘導される。当然、R基は1つを超える官能基を有してもよい。
架橋を可能にする官能基を有する加水分解非除去性R基の好ましい例は、β−グリシジルオキシエチル、γ−グリシジルオキシプロピル、δ−グリシジルオキシブチル、ε−グリシジルオキシペンチル、ω−グリシジルオキシヘキシル、および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルなどのグリシジルまたはグリシジルオキシ(C1〜20)アルキレン基、(メタ)アクリロイルオキシ(C1〜6)アルキレン基、例えば(メタ)アクリロイルオキシメチル、(メタ)アクリロイルオキシエチル、(メタ)アクリロイルオキシプロピル、または(メタ)アクリロイルオキシブチル、ならびに3−イソシアノトプロピル(isocyanotopropyl)基である。特に好ましい基は、γ−グリシジルオキシプロピルおよび(メタ)アクリロイルオキシプロピルである。この文脈で、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
使用される好ましいR基は、置換基または官能基を有していない基、特に好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチルおよびエチル、さらにフェニルなどのアリール基である。
一般式(I)のオルガノシランの例は、次式の化合物であり、アルキルシラン、および特にメチルトリエトキシシランが特に好ましい。
Figure 2008533216
一般式(II)の加水分解性シランの例は、Si(OCH、Si(OC、Si(O−n−またはi−C、Si(OC、SiCl、HSiCl、Si(OOCCHである。これら加水分解性シランの中で、テトラエトキシシランが特に好ましい。
前記シランは公知の方法により調製できる。W.Noll、「Chemie und Technologie der Silicone」[Chemistry and technology of the silicones]、Verlag Chemie GmbH、Weinheim/BergstraBe(1968)参照。
一般式(III)の金属化合物中、
MX(III)
Mは、ホウ素を含む元素周期表の主族I〜VIII、または遷移族II〜VIIIの金属であり、Xは式(I)に定義されるとおりであり、2つのX基は1つのオキソ基と置き換えてもよく、aは当該元素の原子価に対応する。
MはSiと異なる。本明細書では、ホウ素も金属に属するものと見なす。こうした金属化合物の例は、ガラスまたはセラミック形成元素の化合物、特に元素周期表の主族III〜Vおよび/または遷移族II〜IVの少なくとも1つの元素Mの化合物である。該化合物は、Al、B、Sn、Ti、Zr、V、またはZn、特にAl、Ti、またはZrの加水分解性化合物、あるいはこれらの元素2つ以上の混合物の化合物が好ましい。例えば、周期表の主族IおよびII(例えばNa、K、Ca、およびMg)、ならびに周期表の遷移族V〜VIII(例えばMn、Cr、Fe、およびNi)の元素の加水分解性化合物を使用することも同様に可能である。Ceなどのランタノイドの加水分解性化合物を使用することもできる。好ましいのは、元素B、Ti、Zr、およびAl、特に好ましいのはTiの金属化合物である。
好ましい金属化合物は、例えば、B、Al、Zr、および特にTiのアルコキシドである。好適な加水分解性金属化合物は、例えば、Al(OCH、Al(OC、Al(O−n−C、Al(O−i−C、Al(O−n−C、Al(O−sec−C、AlCl、AlCl(OH)、Al(OCOC、TiCl、Ti(OC、Ti(O−n−C、Ti(O−i−C、Ti(OC、Ti(2−エチルヘキソキシ)、ZrCl、Zr(OC、Zr(O−n−C、Zr(O−i−C、Zr(OC、ZrOCl、Zr(2−エチルヘキソキシ)、さらに錯体基を有するZr化合物、例えば、β−ジケトンおよび(メタ)アクリロイル基、ナトリウムエトキシド、酢酸カリウム、ホウ酸、BCl、B(OCH、B(OC、SnCl、Cn(OCH、Sn(OC、VOCl、およびVO(OCHである。
特に好ましい実施形態では、固結剤はメチルトリエトキシシラン(MTEOS)などのアルキルシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアリールシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)などのオルトケイ酸エステル、および式(III)の金属化合物を使用して調製されるが、特に使用に好ましいのは、B、Al、Zr、および特にTiの金属化合物である。
固結剤を調製するために、少なくとも1つの加水分解非除去性基を有する式(I)のオルガノシランが、好ましくは少なくとも50mol%、より好ましくは少なくとも70mol%、および特に少なくとも80mol%使用される。その残りは、加水分解性化合物、特に加水分解非除去性基を有していない式(II)の加水分解性シラン、および式(III)の金属化合物を含有する。
式(I)および(II)の使用されるシリコン化合物と式(III)の使用される金属化合物とのモル比は、10000:1〜10:1の範囲であり、特に優れた加水分解安定性は、2000:1〜20:1、より好ましくは2000:1〜200:1の範囲内で達成される。
先に記載したモル比および割合の計算において、それぞれの場合における化合物の出発点は、モノマー化合物である。下記に説明するように、すでにプレ縮合した化合物(二量体など)を出発原料として使用する場合、対応するモノマーに変換するべきである。
固結剤の加水分解物またはプレ縮合物は、加水分解および縮合により、加水分解性シランおよび加水分解性金属化合物から得られる。加水分解物またはプレ縮合物は、特に加水分解性出発化合物が加水分解した化合物、または少なくとも部分的に縮合した化合物を意味することは理解されよう。加水分解性モノマー化合物の代わりに、すでにプレ縮合した化合物を使用することも可能である。好ましくは反応媒体に溶解するこうしたオリゴマーは、縮合度が例えば、約2〜100、特に約2〜6である、例えば直鎖または環状の低分子量部分縮合物(例えばポリオルガノシロキサン)でよい。
加水分解物またはプレ縮合物は、ゾルゲル法によって、加水分解性出発化合物の加水分解および縮合により得られる。ゾルゲル法では、加水分解性化合物は、必要に応じて酸触媒または塩基触媒の存在下、水で加水分解、および少なくとも部分的に縮合される。加水分解および縮合を、酸縮合触媒(例えば塩化水素、リン酸、またはギ酸)の存在下、好ましくはpH1〜3で実施するのが好ましい。形成されるゾルは、適切なパラメーター、例えば縮合度、溶媒、またはpHにより、固結剤に望ましい粘度に調整することができる。
さらにゾルゲル法の詳細が、例えば、C.J.Brinker、G.W.Scherer、「Sol−Gel Science−The Physics and Chemistry of Sol−Gel−Processing」、Academic Press、Boston、San Diego、New York、Sydney(1990)に記載されている。
加水分解および縮合には、化学量論量の水を使用することが可能であるが、それより少ない量でも多い量でもよい。存在する加水分解性基に対して化学量論量未満の水を用いることが好ましい。加水分解性化合物の加水分解および縮合に使用される水の量は、存在する加水分解性基の1モル当たり、好ましくは0.1〜0.9モル、さらにより好ましくは0.25〜0.75モルの水である。しばしば、存在する加水分解性基の1モル当たり、0.7モル未満の水、特に0.65〜0.75モルの水で、特に優れた結果が得られる。
本発明に従って使用される固結剤は、溶液またはエマルジョンとして、特に粒子のない形態で存在する。使用する前に、水の量をさらに加えることにより、固結剤を活性化することができる。
固結剤は、水、アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノールおよび1−ブタノールなどの低級脂肪族アルコール(C〜Cアルコール)、ケトン、好ましくはアセトンおよびメチルイソブチルケトンなどのジ低級アルキルケトン、エーテル、好ましくはジエチルエーテルなどのジ低級アルキルエーテル、あるいはC〜Cアルコールとエチレングリコールまたはプロピレングリコールなどのジオールのモノエーテル、ジメチルホルムアミドなどのアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、スルホキシド、スルホン、またはブチルグリコール、ならびにそれらの混合物などの通常の添加剤および溶媒を含有してよい。水およびアルコールを使用するのが好ましい。高沸点溶媒、例えばトリエチレングリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテルおよびテトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのポリエーテルを使用することも可能である。場合によっては、他の溶媒、例えば軽質パラフィン(石油エーテル、アルカン、およびシクロアルカン)、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、およびハロゲン化炭化水素も使用できる。コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルなどのジカルボン酸エステル、およびそれらの混合物を使用することが可能であり、さらに環状カルボン酸エステル、例えばプロピレンカーボネートおよびグリセリルカーボネートも使用することが可能である。
他の通常の添加剤は、例えば、染料、顔料、粘度調節剤および界面活性剤である。固結剤エマルジョンの調製では、一般にシリコーンエマルジョンを安定化する乳化剤、例えばTween(登録商標)80、およびBrij(登録商標)30を使用してよい。
本発明の固結剤は、粉末状、粒状、ペレット、繊維状、または同様の粒子形態のいずれの有機または無機固形物を固結するのにも適している。粒子は、例えば、サブミクロンの大きさの粒子、或いはmmの範囲、およびそれ以上の粒子でよい。使用できる他の固形物は、例えば、ブレーキライニングの製造に使用する場合、例えば、中空のガラス微粒子または繊維である。例えば、鉱物質(mineral nature)または金属でよい天然材料、あるいは、例えば、超微細金属粉末、セラミック粉末、ガラス、またはそれら2種の組合せ、例えば、ガラスセラミックまたはサーメットから形成される合成成形体のいずれかを使用することができる。固結させる粒子状または多孔質の材料は、金属、非金属、ガラス、セラミック、カーボン、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、鉱物、プラスチック、プラスチック繊維、ガラス繊維、無機繊維、天然繊維、および木質材料から選択されるのが好ましい。好適な材料は、例えば、パーライト、ガラス球、岩粉、金属粉末、黒鉛、石油コークス、スチールウール、バーミキュライト、短繊維、または顔料、例えばTiOである。製造される成形品は、例えばプレス成形品または鋳造品でよい。
固結成形品を製造するため、固結剤を例えば攪拌導入、混合、またはポンプ導入によって、多孔質または粒子状の固結させる材料と混合し、次に多孔質または粒子状の該材料と混合した該固結剤を硬化させる。実際の固結(硬化)は、例えば熱の供給により、熱的に行うことができる。硬化の別法は、無機架橋が可能なSiOH基または金属−OH基の架橋を触媒して、無機網目を形成する縮合触媒の供給である。この目的に好適な縮合触媒は、例えば塩基であるが、さらにフッ化物イオンまたはアルコキシドもある。重合性基または重縮合性基、例えばメタクリロイルオキシ基またはエポキシド基を有する出発化合物を使用する場合、重合、重付加または重縮合工程は、熱開始剤またはフリーラジカル開始剤を添加することにより開始できる。
好ましい実施形態では、固結(硬化)は標準条件に基づいて高温および高圧下、即ち1バールを超える圧力、20℃より高い温度で実施することができる。該固結剤は、少なくとも40℃の温度、および少なくとも5バールの圧力でも硬化できる。硬化は最高200℃の温度、および最高500バールの圧力でも行うことができる。
周囲圧力下での固結剤の熱硬化は、まったく問題ないことが知られている。バインダーゾルと固結させる材料の混合物から、溶媒および反応生成物の水を連続除去することにより、縮合反応が進む。さらなる熱硬化工程では、固化させる該固結剤を材料上に圧縮する。
しかし、固結した材料の特性は、製造する条件にも左右される。一般に、固結した材料の改善された性能は、使用する場合とほぼ同じ条件下で製造する際に得られる。したがって、高圧および高温で固結した材料を使用するには、製造もほぼ同じ条件下で行うことが望ましい。しかし、従来技術の固結剤を高圧および高温、即ち水熱条件下で硬化する場合、溶媒および反応生成物は系内に残存し、平衡の移動を可能にするだけなので、このことは従来技術の固結剤では問題となる。しかし、このような条件下の平衡位置では、固化または固結した材料が得られない。
驚くべきことに、式(III)の金属化合物を使用することにより平衡位置を変化させると、使用した固結剤の硬化が水熱条件(高圧および高温)下で可能となることが見出された。この方法で、固結した成形物またはコーティングを水熱条件下で得ることができ、固結したその成形物およびコーティングは十分なたわみ性を有する優れた結合強度を有する。
水熱条件下での固結剤の硬化は、固結剤に無水物を添加することによっても促進できる。該無水物の補助を受けて、水およびエタノールなどの縮合生成物を除去することが可能である。無水物は、有機酸の無水物、またはこれら無水物の混合物が好ましい。例としては、無水酢酸、無水メチルナジン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、およびそれらの混合物である。
無水物を添加する場合、溶媒として、例えばプロピレンカーボネートなどの環状炭酸エステル、またはグルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチルなどのジカルボン酸エステル、あるいは上記エステルのジメチルジカーボネート混合物を使用するのが好ましい。一般に、好適な溶媒を、この目的においては、固結剤の調製に使用または形成される溶剤と、すべてまたは一部交換することができる。溶媒の交換に加えて、固結剤の調製において実際に、所望の溶剤を使用することも可能である。
固結させる成形物の硬化は、このようにして水熱条件下で可能となる。
ゲル状固結剤の圧縮工程は、水熱条件下で一部または完全に妨げられるので、固結剤ゲルは、大容積の細孔を塞ぐことができる。多孔質成形物を得る場合、固体または液状の媒体を固結剤と混和している固結させる成形物内に通過させることにより、これを実施するのが好ましい。これにより、多孔性を所望の方法で調節することができる。この導入は、特に硬化操作の前または間の特定期間に実施する。
液相または気相の持続時間、時刻、量、または流量など、ポンピング移送のパラメーターは、当分野の技術者により直ちに適当に選択され、所望の多孔性を設けることができる。この導入は、例えば、部分硬化前または後に実施することができ、その場合、導入後および/または導入中に完全硬化が起こる。液体または気体媒体の導入のために、例えば、不活性溶媒またはガス、例えばN、CO、または空気をポンプで入れ、細孔容積内をパージして空にし、反応生成物を除去することが可能である。液体媒体用溶媒の例としては、上記のものを参照することができる。液体または気体媒体は、必要に応じて触媒および/またはガス放出成分を含んでもよく、またはそれらを含有してもよい。成形物またはコーティング中を通過する気体または液体媒体は、例えば、硬化触媒を含有して、硬化される成形物に供給してもよい。触媒は揮発性、気体状または蒸発性であるのが好ましく、溶解物質、例えばオキシ塩化ジルコニウムを含んでいてもよく、徐々にバインダーに計り入れてよい。
多孔質固結成形物は、例えば、多孔度(成形物全体積に対する細孔体積率)が5〜50%のでよい。当然、実質的に無孔質の成形物を得ることも可能である。
その化学構成により、本発明の固結剤は、急速および有効な固化を可能にする。これに関し、フェニルシランアルコキシドの使用が特に有用であることが見出された。これは、これらの化合物が、フェニル基の立体障害および電子的効果により、急速に反応することがないOH基を有し、無機材料の表面へ特に効果的に結合するからであると思われる。
調査の結果、本発明に従って製造される成形物は、高圧および高温のオートクレーブ内で製造されても、長期間にわたっても劣化せず、これらの条件下でもなお安定な結合を形成することがわかった。多孔度も、減少するとしても、ほんのわずかな程度までである。
成形物の製造に加え、固結剤はコーティング組成物としても使用することができる。それを通常の方法で、基材にそのまま塗布し、次に通常の方法で硬化することができる。該硬化は、成形体に関する説明に従って実施することができる。すべての通常の基材、例えばガラス、金属、セラミック、レンガ、セメント、または他の建築材料、あるいは木材を使用することが可能である。上記に例示した多孔質または粒子状の材料と混合した固結材料を、複合被膜を得るために、コーティング組成物として使用することも可能である。
本発明の固結成形物またはコーティング基材は、例えば、加水分解安定で耐薬品性の反応器内張りとして、水素または他の燃料用貯蔵システムとして、あるいは相変化性固体用貯蔵システムとして使用することができる。他の利用分野は、ブレーキライニングの製造である。
次の実施例で本発明を例証する。
実施例
粒子のない固結剤の調製、および加水分解耐性の成形物および層を製造するためのその使用:
a)固結剤MTTi0.1−TiOSOMT04
MTEOS 52.4g、TEOS 15.28g、およびチタンテトライソプロポキシド0.174gを混合し、あらかじめ脱イオン水16.81gに溶解したチタンオキソサルフェート−硫酸錯体0.285gと激しく攪拌しながら反応させた。転換点後、反応媒体は最大温度69℃を超えた。反応混合物を54℃まで冷却後、さらにMTEOS 52.4gおよびTEOS 15.28gからなるシラン混合物を、該混合物に添加してさらに5分間攪拌した。終夜放置後、バインダーはさらなる処理に適当となる。pHは、必要に応じて、pH0〜7の範囲内に調整することができる。
この目的のために、例えば、黒鉛、石油コークス、スチールウール、およびバーミキュライトの混合物225gを、脱イオン水5gを添加することによりあらかじめ活性化した上記バインダー100gと混合し、圧縮成形用金型(10×10×1cm)へ充填して、ホットプレス内で圧力20MPaで圧縮し、最初の15分以内は70℃で、さらに15分間は120℃で硬化した。離型後、成形物の硬化を120℃で終夜続けた。得られた成形物は、350〜500N/cmの範囲の剪断強さを示した。
b)固結剤MTTi0.106
MTEOS 26.2g、TEOS 7.64g、およびチタンテトライソプロポキシド0.087gを混合し、脱イオン水12.63gおよび濃塩酸(37%)0.088mlと激しく攪拌しながら反応させた。転換点後、反応混合物は最大温度62℃を超えた。反応混合物を47℃まで冷却後、さらにフェニルトリエトキシシラン26.45g、MTEOS 6.54g、およびTEOS 7.64gからなるシラン混合物を該混合物に添加してさらに5分間攪拌した。終夜放置後、バインダーはさらなる処理に適当となる。pHは、必要に応じて、pH0〜7の範囲内に調整することができる。
上記バインダー17gを、TiO顔料(DuPont R931)9gに添加した。混合物をUltraturraxを用いて均質化し、スピンコーティングを用いてステンレス鋼またはガラスの基材に塗布した。その層を初め70℃で30分間乾燥した。これに続いて500℃で10分燃焼した。該層は、0.1N NaOH溶液に16時間貯蔵した後、非常に加水分解安定性であることがわかった。

Claims (18)

  1. 加水分解安定な成形品またはコーティングを製造するための固結剤であって、
    (a)一般式(I)の少なくとも1種のオルガノシラン
    SiX4−n(I)
    (式中、R基は、同じかまたは異なっており、加水分解により除去できない基であり、X基は、同じかまたは異なっており、加水分解により除去できる基、またはヒドロキシル基であり、nは1、2、または3である)、
    (b)一般式(II)の少なくとも1種の加水分解性シラン
    SiX(II)
    (式中、X基はそれぞれ上記の定義と同じである)、および
    (c)一般式(III)の少なくとも1種の金属化合物
    MX(III)
    (式中、Mは、ホウ素を含む元素周期表の主族I〜VIII、または遷移族II〜VIIIの金属であり、Xは式(I)に定義されるとおりであり、2つのX基は1つのオキソ基と置き換えてもよく、aは、当該元素の原子価に対応する)
    の加水分解物またはプレ縮合物を含み、
    使用されるシリコン化合物と使用される金属化合物とのモル比が10000:1〜10:1の範囲である固結剤。
  2. 一般式(III)の金属化合物の金属が、B、Al、Zr、および特にTiから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の固結剤。
  3. (a1)アルキルシラン、(a2)アリールシラン、(b)オルトケイ酸エステル、および(c)金属アルコキシレートの加水分解物またはプレ縮合物を含むことを特徴とする、請求項1および2のいずれか一項に記載の固結剤。
  4. 存在する加水分解性基に対して化学量論量未満の水を用いるゾルゲル法により調製されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の固結剤。
  5. 粒子のない形態で存在することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の固結剤。
  6. 溶液またはエマルジョンとして存在することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の固結剤。
  7. 溶媒および/または添加剤を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の固結剤。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の固結剤を、多孔質または粒子状の固結させる材料と混合し、該固結剤を硬化することを特徴とする、加水分解安定な固結成形体を製造する方法。
  9. 前記固結剤を高圧および高温下で硬化することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
  10. 前記固結剤を少なくとも40℃の温度、および少なくとも5バールの圧力で硬化することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 固結させる材料が、金属、非金属、ガラス、セラミック、炭素、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、鉱物、プラスチック、プラスチック繊維、ガラス繊維、無機繊維、天然繊維、および木質材料から選択されることを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 硬化前および/または硬化中に、液体または気体媒体、特に空気を前記固結剤と混和している固結させる成形体中に、特定の期間通過させることにより、多孔性を設けることを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 請求項1から7のいずれか一項に記載の固結剤を、コーティング材料として基材に塗布し、該固結剤を硬化することを特徴とする、加水分解安定な固結コーティングを製造する方法。
  14. 前記固結剤を、高圧および高温下で硬化することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
  15. 前記基材に塗布する前に、前記固結剤を多孔質または粒子状の固結させる材料と混合することを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
  16. 請求項8から12に記載の方法により得られ得る加水分解安定な成形品。
  17. 請求項13から15に記載の方法により得られ得る加水分解安定なコーティングを有する基材。
  18. ブレーキライニングのための、加水分解安定で耐薬品性の反応器内張りとしての、水素または他の燃料用貯蔵システムとしての、あるいは相変化性固体用貯蔵システムとしての、請求項16に記載の加水分解安定な成形品、または請求項17に記載のコーティング基材の使用。
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