JP2008531631A - ヒト心臓肥大症を治療するためのepacのアンタゴニストの使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、少なくとも1つのEpac (cAMPにより直接活性化される交換タンパク質)アンタゴニストの、心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する医薬の製造のための使用に関する。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
発明の分野
本発明は、ヒト心臓肥大症(HCM)を治療するための方法及び組成物に関する。より具体的には、本発明は、HCMを治療するためのEpacのアンタゴニストの使用に関する。
本発明は、ヒト心臓肥大症(HCM)を治療するための方法及び組成物に関する。より具体的には、本発明は、HCMを治療するためのEpacのアンタゴニストの使用に関する。
背景
生理的肥大、例えば運動誘発心臓肥大症は、体の要求における増加に適応させ、心不全を導かない心臓における好都合な順応である。これに対して、病的肥大、例えば圧負荷誘発肥大は、改善されなければ通常は心不全を導く病的刺激に対する順応不良応答である。
生理的肥大、例えば運動誘発心臓肥大症は、体の要求における増加に適応させ、心不全を導かない心臓における好都合な順応である。これに対して、病的肥大、例えば圧負荷誘発肥大は、改善されなければ通常は心不全を導く病的刺激に対する順応不良応答である。
ヒト心臓肥大症(HCM)は、推定600,000〜150万人、又は500人に1人の米国人に影響を与える。これは、700人に1人に影響する多発性硬化症よりも頻繁である。HCMは、30歳未満の人の心臓突然死の最も一般的な原因である。
ヒト心臓肥大症(HCM)は、高血圧又は心臓弁膜症の副作用としてしばしば発生する。成体心筋細胞は分裂できず、ストレス及び成長刺激に対してタンパク質合成速度を増加することにより応答するので、細胞容量の増加をもたらす(Sadoshimaら 1997)。個別の心筋細胞の成長は、心臓の肥厚をもたらす。心臓肥大症は、心不整脈、拡張機能障害(diastolic dysfunction)、うっ血性心不全及び死の発生について影響の強い危険因子である(Hennersdorfら 2001; Vakiliら 2001)。
ヒト心臓肥大症(HCM)は、高血圧又は心臓弁膜症の副作用としてしばしば発生する。成体心筋細胞は分裂できず、ストレス及び成長刺激に対してタンパク質合成速度を増加することにより応答するので、細胞容量の増加をもたらす(Sadoshimaら 1997)。個別の心筋細胞の成長は、心臓の肥厚をもたらす。心臓肥大症は、心不整脈、拡張機能障害(diastolic dysfunction)、うっ血性心不全及び死の発生について影響の強い危険因子である(Hennersdorfら 2001; Vakiliら 2001)。
現在までに、種々の薬剤治療がヒト心臓肥大症の治療のために現在用いられている。
例えば、ベータ受容体遮断薬は、心拍を遅くし、収縮力を低減させる。これらの薬剤は、通常、胸部痛、息切れ及び動悸を緩和するが、これらの薬で過剰に心拍を遅くすることは、時に倦怠を引き起こし得る。
例えば、ベータ受容体遮断薬は、心拍を遅くし、収縮力を低減させる。これらの薬剤は、通常、胸部痛、息切れ及び動悸を緩和するが、これらの薬で過剰に心拍を遅くすることは、時に倦怠を引き起こし得る。
用いられる薬剤の2番目に主要な群は、カルシウムアンタゴニスト又はカルシウムチャネル遮断薬である。この群では、ベラパミル(verapamil)がHCMに最も一般的に用いられている薬である。これは、心臓の充填(filling)を改善し、ベータ受容体遮断薬のように、胸部痛、息切れ及び動悸のような症状を低減する。また、ベータ受容体遮断薬のように、ベラパミルは心拍を過剰に遅くし、血圧を低くすることができる。
抗不整脈薬も、心臓肥大症の治療に用いられている。これらの薬剤は、頻脈のような不整脈が検出され、個別の場合に重要であると考えられるときに用いられる。これらの抗不整脈薬のうち、アミダロン(Amiodarone) (コルダロン(Cordarone))は、肥大性心筋症において最も一般的に用いられる。これは、強力で効果的な薬剤である。しかし、これは、肺の毒性(ある研究においては2%〜7%、しかし10%〜17%程度という報告もある)、肝臓機能試験異常(4%〜9%)、甲状腺機能亢進症(約2%)及び甲状腺機能低下症(2%〜4%の場合があるが、8%〜19%程度の研究もある)、心室頻拍(proarrhythmia) (2%〜5%)、並びに失明に導き得る眼の神経障害を含むいくつかの重大かもしれない副作用を有する。
つまり、上記のような副作用を好ましくは示さない、HCM治療用の代替の薬剤を見出す必要性が当該技術において存在する。
つまり、上記のような副作用を好ましくは示さない、HCM治療用の代替の薬剤を見出す必要性が当該技術において存在する。
Ca2+感受性シグナル伝達経路が心筋細胞肥大において重大な役割を演じることが、よく認められている(Freyら, 2000)。2つの顕著なCa2+依存性経路は、Ser/Thrプロテインホスファターゼであるカルシニューリン(Liangら, 2003; Molkentin, 2004)とCa2+/カルモジュリン-依存性プロテインキナーゼII (CaMKII)(Zhang & Brown, 2004)を含む。カルシニューリンのCa2+による活性化は、活性化T細胞の細胞質性核因子(NFAT)転写因子の脱リン酸化と核移送をもたらし、該因子は次いで、肥大遺伝子(hypertrophic genes)の転写をアップレギュレートする。カルシニューリンも、筋細胞エンハンサー因子2 (MEF2)に対するクラスIIヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害を軽減でき、それによりこの転写因子が肥大遺伝子発現を誘導することを可能にする。さらに、CaMKIIは、HDACのリン酸化の際にMEF2を活性化することが知られている(McKinsey & Olson, 2004)。現在までに、これらの肥大シグナル伝達カスケードの調節におけるRhoファミリーの低分子量Gタンパク質の参加は、詳しく定義されていない。
低分子量Gタンパク質のスーパーファミリーのうち、Rho、Rac及びCdc42を含むRhoファミリーは、細胞骨格構造の生成において鍵となる役割を演じることが示されているので、多くの興味を集めている(Hall, 1998)。実際に、Rhoは、繊維芽細胞のストレスファイバー形成及びフォーカルアドヒージョンに重要であるが、Rac及びCdc42はより動的な構造、例えば膜ラッフリング(membrane ruffles)、ラメリポディア(lamellipodia)及びフィロポディア(filopodia)の調節に参加する(Hall, 1998)。いくつかの研究により、心筋細胞肥大の発生におけるRhoタンパク質の役割が指摘されている(Clerk & Sugden, 2000)。例えば、2つの強力な肥大刺激物質であるエンドセリン1 (ET-1)及びフェニレフリン(PE)は、新生心筋細胞における内因性Racの迅速な活性化を誘発する(Clerkら, 2001)。さらに、構成的に活性な形のRac (RacG12V)での心筋細胞のアデノウイルス感染は、ANF発現及びタンパク質合成を増加させ、筋細胞肥大に関連する形態学的変化を促進する(Pracykら, 1998)。心臓肥大症におけるRhoタンパク質の役割についてのインビボでの証明は、心臓でRacG12Vを特異的に発現するトランスジェニックマウスで得られた。これらのマウスは、心筋細胞のフォーカルアドヒージョンの調節解除を伴う拡張型心筋症を発生する(Sussmanら, 2000)。これらのデータは、Rhoタンパク質、特にRacが肥大応答を制御し、心臓リモデリング、及び細胞拡大を特徴とする心筋症の病因に関与しているようであることを示唆する。
低分子量Gタンパク質のスーパーファミリーのうち、Rho、Rac及びCdc42を含むRhoファミリーは、細胞骨格構造の生成において鍵となる役割を演じることが示されているので、多くの興味を集めている(Hall, 1998)。実際に、Rhoは、繊維芽細胞のストレスファイバー形成及びフォーカルアドヒージョンに重要であるが、Rac及びCdc42はより動的な構造、例えば膜ラッフリング(membrane ruffles)、ラメリポディア(lamellipodia)及びフィロポディア(filopodia)の調節に参加する(Hall, 1998)。いくつかの研究により、心筋細胞肥大の発生におけるRhoタンパク質の役割が指摘されている(Clerk & Sugden, 2000)。例えば、2つの強力な肥大刺激物質であるエンドセリン1 (ET-1)及びフェニレフリン(PE)は、新生心筋細胞における内因性Racの迅速な活性化を誘発する(Clerkら, 2001)。さらに、構成的に活性な形のRac (RacG12V)での心筋細胞のアデノウイルス感染は、ANF発現及びタンパク質合成を増加させ、筋細胞肥大に関連する形態学的変化を促進する(Pracykら, 1998)。心臓肥大症におけるRhoタンパク質の役割についてのインビボでの証明は、心臓でRacG12Vを特異的に発現するトランスジェニックマウスで得られた。これらのマウスは、心筋細胞のフォーカルアドヒージョンの調節解除を伴う拡張型心筋症を発生する(Sussmanら, 2000)。これらのデータは、Rhoタンパク質、特にRacが肥大応答を制御し、心臓リモデリング、及び細胞拡大を特徴とする心筋症の病因に関与しているようであることを示唆する。
環状アデノシン3',5'-一リン酸(cAMP)は、心臓における最も重要なセカンドメッセンジャーの一つである。なぜなら、これは、心臓の収縮、弛緩及び自動性のような多くの生理的プロセスを調節するからである。伝統的に、これらの影響は、cAMPによる過分極活性化環状ヌクレオチドゲート(HCN)チャネル及びプロテインキナーゼA (PKA)の活性化に帰する(Fimia & Sassone-Corsi, 2001)。PKAは、Gs-連関受容体の多くの生理的効果を媒介する必須のエフェクター分子であると考えられている。伝統的な例は、心臓アドレナリン性β受容体の刺激であり、ここではPKAが興奮収縮連関に関与するいくつかの鍵となるタンパク質、例えばL-タイプCa2+チャネル、ホスホランバン、リアノジン受容体(RyR)及びトロポニンIをリン酸化する(Bers & Ziolo, 2001)。
Epac (cAMPにより直接活性化される交換タンパク質(exchange proteins directly activated by cAMP))の、cAMPにより直接活性化されるタンパク質としての最近の発見は、cAMPとPKAを取り囲む定説を破った(米国特許第6,987,004号; Bos, 2003; de Rooijら, 1998; Kawasakiら, 1998)。Epacタンパク質は、PKAの調節サブユニットのものと同様の親和性でcAMPに結合するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)である(de Rooijら, 1998; Kawasakiら, 1998)。これらは、Ras様低分子量GTPアーゼRap1及びRap2についてGEFと同様に機能することが示され、PKA非依存性の様式でcAMPにより直接活性化される(Bos, 2003)。Epacには2つのアイソフォーム、Epac 1及びEpac 2が存在し、ともに制御及び触媒領域からなる(de Rooijら, 1998; Kawasakiら, 1998)。Epac1は、心臓で高発現する(Kawasakiら, 1998)。Epac 2は、さらなるcAMP結合ドメインを有し、これはcAMP-誘発Rap活性化に重要でない(de Rooijら, 2000)。cAMPの結合の後に、Epacは、低分子量GTPアーゼRapのGDPのGTPへの交換を触媒して、それらの標的エフェクターとの相互作用を可能にする(Rehmannら, 2003)。最近の研究は、Epacが細胞接着(Enserinkら, 2004; Rangarajanら, 2003)、神経突起伸長(Christensenら, 2003)に関与し、アミロイド前駆体タンパク質及びインスリン分泌を調節することを示す(Mailletら, 2003; Ozakiら, 2000)。最近の研究は、Epac1が、低分子量GTPアーゼであるRacの活性を、cAMP-依存性であるがPKA-非依存性の様式で、神経細胞内で刺激することの実験的証拠を示している(Mailletら, 2003)。
要約
本発明者らは、今回、驚くべきことに、Epac1が、低分子量GTPアーゼであるRacの活性を刺激し、培養心筋細胞内で肥大遺伝子マーカーの発現を増大させることを示す。さらに、本発明者らは、Epac1が心筋細胞肥大を誘発することを証明する。このプロセスは、細胞内[Ca2+]可動化及び転写因子NFAT及びMEF2の活性化を伴う。これらの発見は、まとめて、cAMP結合タンパク質であるEpacが、心臓成長の新規な正の調節物質であることを明らかにする。
本発明者らは、今回、驚くべきことに、Epac1が、低分子量GTPアーゼであるRacの活性を刺激し、培養心筋細胞内で肥大遺伝子マーカーの発現を増大させることを示す。さらに、本発明者らは、Epac1が心筋細胞肥大を誘発することを証明する。このプロセスは、細胞内[Ca2+]可動化及び転写因子NFAT及びMEF2の活性化を伴う。これらの発見は、まとめて、cAMP結合タンパク質であるEpacが、心臓成長の新規な正の調節物質であることを明らかにする。
よって、本発明の第一の態様は、心臓肥大症、特にヒトの心臓肥大症の治療用の医薬の製造のためのEpacのアンタゴニストの使用である。
本発明のさらなる目的は、少なくとも1つのEpacのアンタゴニストを対象に投与することを含む、心臓肥大症、特にヒトの心臓肥大症を治療する方法である。
本発明のさらなる目的は、少なくとも1つのEpacのアンタゴニストを含む、心臓肥大症、特にヒトの心臓肥大症の治療に有用な医薬組成物である。
本発明のさらなる目的は、少なくとも1つのEpacのアンタゴニストを対象に投与することを含む、心臓肥大症、特にヒトの心臓肥大症を治療する方法である。
本発明のさらなる目的は、少なくとも1つのEpacのアンタゴニストを含む、心臓肥大症、特にヒトの心臓肥大症の治療に有用な医薬組成物である。
ある実施形態において、Epacのアンタゴニストは、cAMP、又は肥大刺激物質、例えばアンジオテンシンII、エンドセリンI及びフェニレフリンによるEpacの活性化を妨げるか若しくは制限する天然若しくは天然でない化合物である。ある具体的な実施形態では、上記のアンタゴニストは、Epacへの結合についてcAMPと競合するが、その際にcAMP又は肥大刺激物質、例えばアンジオテンシンII、エンドセリンI及びフェニレフリンにより誘発される生物学的応答をブロックするか又は著しく阻害するcAMPアナログである。cAMPアナログ候補物質は、cAMPと大きくは変わらないか又はそれより高いEpacへの結合親和性を有し、天然cAMPよりも著しく低いレベルで生物学的応答を誘発するか、又は全く誘発しない化合物である。
さらなる実施形態において、Epacのアンタゴニストは、Epacの発現を阻害できる化合物である。ある具体的な実施形態において、該アンタゴニストは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA又はリボザイムである。
本発明のさらなる目的は、Epacの活性化に影響を与える化合物、特にcAMPアナログをスクリーニングする方法である。
ある実施形態において、上記のスクリーニング方法は、
- a) Epacを、i) 限定されないがRap1、Rap2、Rac又はRasから選択される少なくとも1つのEpacのエフェクター、ii) cAMP、及びiii) 試験される化合物とインキュベートし、
- b) Epacによる上記のエフェクターの活性化を評価する
工程を含み、ここで、試験される化合物の非存在下で得られる活性化と比較して、より低い活性化は、該化合物がEpacのアンタゴニストであることを示す。エフェクター活性化のアッセイは、以下の実施例1「Rac活性化アッセイ」に記載するように行うことができ、ここで該エフェクターはGSTとフレームで(in frame)結合する。
- a) Epacを、i) 限定されないがRap1、Rap2、Rac又はRasから選択される少なくとも1つのEpacのエフェクター、ii) cAMP、及びiii) 試験される化合物とインキュベートし、
- b) Epacによる上記のエフェクターの活性化を評価する
工程を含み、ここで、試験される化合物の非存在下で得られる活性化と比較して、より低い活性化は、該化合物がEpacのアンタゴニストであることを示す。エフェクター活性化のアッセイは、以下の実施例1「Rac活性化アッセイ」に記載するように行うことができ、ここで該エフェクターはGSTとフレームで(in frame)結合する。
さらなる実施形態において、上記のエフェクターは、蛍光標識2',3'-ビス(O)-N-メチルアントラノリル-グアノシンジホスフェート(mGDP)を載せることができるRap1である。この特定の実施形態において、Rap1の活性化は、以前に記載されるようにして、蛍光分光計でmGDPの放出をリアルタイムで検出することにより評価する(Van den Bergheら, 1997)。
さらなる実施形態において、スクリーニング方法は、
a) Epacの活性形若しくはEpac野生型を構成的に発現するか、又は肥大刺激物質、例えばアンジオテンシンII、エンドセリンI及びフェニレフリンで処理されたいずれかの心筋細胞を提供し、
b) 該心筋細胞を、試験する化合物の一つに曝露し、
c) 上記の心筋細胞の肥大特性に対する上記の化合物の影響を評価する
工程を含み、ここで肥大特性の阻害は、該化合物がEpacのアンタゴニストであることを示す。
a) Epacの活性形若しくはEpac野生型を構成的に発現するか、又は肥大刺激物質、例えばアンジオテンシンII、エンドセリンI及びフェニレフリンで処理されたいずれかの心筋細胞を提供し、
b) 該心筋細胞を、試験する化合物の一つに曝露し、
c) 上記の心筋細胞の肥大特性に対する上記の化合物の影響を評価する
工程を含み、ここで肥大特性の阻害は、該化合物がEpacのアンタゴニストであることを示す。
ある具体的な実施形態において、心筋細胞肥大特性は、細胞のサイズ、タンパク質含量及び/又は肥大遺伝子マーカー、例えばナトリウム排泄増加因子をコードするmRNAの発現若しくはNFAT転写活性を測定することにより決定される。
さらなる実施形態において、上記のスクリーニング方法は、上記の2つの方法の組み合わせであり得る。
本発明のさらなる目的は、心臓肥大症が、Epac、特にEpac1のドミナントポジティブ形(positive dominant form)の特異的な発現により誘発される心臓肥大症の非ヒトモデルである。ある具体的な実施形態において、上記のモデルはマウスである。別の具体的な実施形態において、上記のEpacのドミナントポジティブ形は、心臓特異的プロモーター、例えばα-ミオシン重鎖プロモーター(Myosin Heavy Chain promoter)の制御下にある。さらなる実施形態において、Epac1のドミナントポジティブ形は、Epac1の最初の322アミノ酸が欠失したEpac-ΔcAMPをもたらす(de Rooijら, 1998)。
ある実施形態において、Epacは、配列番号2 (Epac1, アクセッション: NM_006105)若しくは配列番号4 (Epac2, アクセッション: NM_007023)に示すタンパク質、又はその部分タンパク質、或いはそのエステル、アミド又は塩である。
詳細な説明
本発明は、少なくとも1つのEpac (cAMPにより直接活性化される交換タンパク質)アンタゴニストの、心臓肥大症、心不整脈、弁膜症(valvulopathies)、拡張機能障害(diastolic dysfunction)、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する医薬の製造のための使用に関する。
本明細書において、Epacのアンタゴニストは、Epacの発現、活性化又は活性を阻害できる化合物として定義される。
本発明は、少なくとも1つのEpac (cAMPにより直接活性化される交換タンパク質)アンタゴニストの、心臓肥大症、心不整脈、弁膜症(valvulopathies)、拡張機能障害(diastolic dysfunction)、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する医薬の製造のための使用に関する。
本明細書において、Epacのアンタゴニストは、Epacの発現、活性化又は活性を阻害できる化合物として定義される。
Epacの発現を阻害するEpacのアンタゴニストとは、該アンタゴニストが、Epac遺伝子の転写のプロセス及び/又はEpac mRNAのEpacタンパク質への翻訳のプロセスを妨げることを意味する。
Epacの活性化を阻害するEpacのアンタゴニストとは、該アンタゴニストが、EpacのアクチベーターがEpacを活性化するのを妨げることを意味する。
Epacの活性を阻害するEpacのアンタゴニストとは、該アンタゴニストがEpacの機能を妨げることを意味する。このようなアンタゴニストは、GDPのGTPへの交換のEpacによる触媒作用をブロックし得る。
Epacの活性化を阻害するEpacのアンタゴニストとは、該アンタゴニストが、EpacのアクチベーターがEpacを活性化するのを妨げることを意味する。
Epacの活性を阻害するEpacのアンタゴニストとは、該アンタゴニストがEpacの機能を妨げることを意味する。このようなアンタゴニストは、GDPのGTPへの交換のEpacによる触媒作用をブロックし得る。
本発明は、特に、アンタゴニストがEpac活性化阻害剤、Epac活性阻害剤、Epac細胞内局在化破壊剤(intracellular localization disruption agents)及びEpac発現阻害剤を含む群から選択される上記で定義される使用に関する。
「Epac発現阻害剤」は、Epacタンパク質の発現を妨げるか又は低減させる。上記の阻害剤は、Epacの転写及び/又は翻訳のプロセスをブロックするか又は低減させることができる。Epac発現の阻害は、ウェスタンブロッティング又は逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応により評価できる。
「Epac活性化阻害剤」は、特にEpacのアクチベーター、例えばcAMPによるEpacの活性化を妨げる。Epac活性化の阻害は、そのエフェクターであるRap1又はRap2のGTP形を、Mailletら, 2003に記載されるようなプルダウンアッセイを用いて測定することにより評価できる。
「Epac活性阻害剤」は、GDPのGTPへの交換、又はc-Jun NH2-末端キナーゼの活性化のようなEpacの通常の機能を妨げる化合物である。
Epac活性の阻害は、そのエフェクターであるRap1又はRap2のGTP形をプルダウンアッセイを用いて測定するか、又はc-Jun NH2-末端キナーゼの活性化をHochbaumら(2003)により記載されるキナーゼアッセイを用いて測定するかのいずれかにより評価できる。
Epac活性の阻害は、そのエフェクターであるRap1又はRap2のGTP形をプルダウンアッセイを用いて測定するか、又はc-Jun NH2-末端キナーゼの活性化をHochbaumら(2003)により記載されるキナーゼアッセイを用いて測定するかのいずれかにより評価できる。
「Epac細胞内局在化破壊剤」は、Epacの正しい細胞局在化を妨げる化合物である。Epacの細胞分布は、Epac選択的抗体を用いる免疫細胞化学により評価できる。
本発明は、さらに、上記のアンタゴニストが、
- Epac cAMP結合部位に指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- cAMPアナログ、例えばcAMP誘導体又は8-(4-クロロフェニルチオ)-2'-O-メチルアデノシン-3'-5-環状一リン酸 (8-CPT-2'-O-Me-cAMP)誘導体、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性化阻害剤である上記で定義される使用に関する。
- Epac cAMP結合部位に指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- cAMPアナログ、例えばcAMP誘導体又は8-(4-クロロフェニルチオ)-2'-O-メチルアデノシン-3'-5-環状一リン酸 (8-CPT-2'-O-Me-cAMP)誘導体、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性化阻害剤である上記で定義される使用に関する。
Epacの活性化を阻害できる化合物は、特に、Epacの天然のアゴニスト、例えばcAMPと相互作用できるか、及び/又は該アゴニストのEpacへの結合において相互作用できるか、及び/又は該結合に起因するEpacの活性化を阻害できる化合物を含む。
「Epacのアゴニスト」の用語は、Epacに結合し、この結合によりEpacを活性化する化合物のことである。
「Epacのアゴニスト」の用語は、Epacに結合し、この結合によりEpacを活性化する化合物のことである。
Epacの活性化の阻害剤は、Epac cAMP結合部位に指向された、すなわち、cAMPのEpacへの結合を妨げる抗体、そのフラグメント又はアプタマーであり得る。
本発明において、用語「抗体」とは、ポリクローナル又はモノクローナルの抗体のことである。用語「ポリクローナル」及び「モノクローナル」は、抗体調製の均一性の程度のことであり、特定の作製方法に限定されることを意図しない。
哺乳動物、例えばウサギ、マウス又はハムスターは、タンパク質の免疫原性の形、例えばタンパク質全体又はその一部分で免疫され得る。タンパク質又はその一部分は、アジュバントの存在下で投与され得る。
哺乳動物、例えばウサギ、マウス又はハムスターは、タンパク質の免疫原性の形、例えばタンパク質全体又はその一部分で免疫され得る。タンパク質又はその一部分は、アジュバントの存在下で投与され得る。
用語「免疫原性」は、分子が抗体応答を惹起する能力のことである。それ自体が免疫原性でないタンパク質又はその一部分に免疫原性を与える方法は、担体へのコンジュゲーション又は当該技術で公知のその他の方法を含む。
免疫化のプロセスは、血漿又は血清中の抗体力価の検出により監視できる。標準的な免疫アッセイ、例えばELISAを、抗原として免疫原性タンパク質又はペプチドと用いて、抗体のレベルを評価することができる。
本発明によると、Epacの活性化阻害剤である抗体は、Epac cAMP結合部位に指向される。
本発明によると、Epacの活性化阻害剤である抗体は、Epac cAMP結合部位に指向される。
本発明において、用語「アプタマー」は、Epacタンパク質に特異的に結合する核酸分子又はオリゴヌクレオチド配列のことである。アプタマーはDNA又はRNAであり得、ヌクレオチド誘導体を含み得る。アプタマーは、通常、16〜60ヌクレオチド長の一本鎖又は二本鎖であり得る。SELEX (試験管内人工分子進化法(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment))とよばれる方法は、標的についての親和性を示すアプタマーを選択して同定するために通常用いられる。
本発明によると、Epacの活性化阻害剤であるアプタマーは、Epac cAMP結合部位に特異的に結合する。
本発明によると、Epacの活性化阻害剤であるアプタマーは、Epac cAMP結合部位に特異的に結合する。
本明細書で用いられるように、用語「オリゴヌクレオチド」は、通常、少なくとも10、好ましくは少なくとも12、より好ましくは少なくとも15、さらに好ましくは少なくとも20ヌクレオチド、好ましくは100ヌクレオチド未満、さらに好ましくは70ヌクレオチド未満で、かつEpacゲノムDNA、cDNA又はmRNAにハイブリダイズ可能な核酸のことである。
Epacの活性化の阻害剤は、cAMPのEpacへの結合を妨げるcAMPのアナログであり得る。具体的な実施形態において、該アンタゴニストは、Epacへの結合についてcAMPと競合するが、その際にcAMP又は肥大刺激物質、例えばアンジオテンシンII、エンドセリンI及びフェニレフリンにより誘発される生物学的応答をブロックするか又は著しく阻害するcAMPアナログである。cAMPアナログ候補物質は、cAMPのものと大きくは変わらないか又はそれより高いEpacへの結合親和性を有し、かつ天然cAMPよりも著しく低いレベルの生物学的応答を誘発するか又は全く誘発しない化合物である。
上記のcAMPのアナログは、以下に記載のスクリーニング方法により同定できる。
上記のcAMPのアナログは、以下に記載のスクリーニング方法により同定できる。
Epac活性化の別の阻害剤は、毒性真菌により産生される低分子量の疎水性化合物であるブレフェルジンAであり得る。ブレフェルジンAは、広範囲の抗生物質活性を示す大環状ラクトンである。ブレフェルジンAは、Rap-GDP/Epac界面に結合できるので、ヌクレオチドの解離に進行できない不全型のコンホメーションに複合体をとどめる。
本発明は、上記のアンタゴニストが、
- Epacのグアニンヌクレオチド交換因子(Guanine nucleotide Exchange Factor (GEF))ドメイン、又はRas交換モチーフ(Exchange Motif) (REM)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性阻害剤、特にEpacのGEFドメインの阻害剤、又はEpacのREMドメインの阻害剤である、上記で定義される使用にも関する。
- Epacのグアニンヌクレオチド交換因子(Guanine nucleotide Exchange Factor (GEF))ドメイン、又はRas交換モチーフ(Exchange Motif) (REM)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性阻害剤、特にEpacのGEFドメインの阻害剤、又はEpacのREMドメインの阻害剤である、上記で定義される使用にも関する。
グアニンヌクレオチド交換因子ドメイン(GEF)は、Epacタンパク質の触媒領域に位置し、Epac触媒活性に関与する。EpacのGEFドメインは、Epac1の616〜848及びEpac2の768〜1005のアミノ酸の間に位置する。
Ras交換モチーフ(REM)ドメインは、Epacタンパク質の触媒領域に位置し、Epac触媒活性に参加する。EpacのREMドメインは、Epac1の342〜466及びEpac2の495〜615のアミノ酸の間に位置する。
Ras交換モチーフ(REM)ドメインは、Epacタンパク質の触媒領域に位置し、Epac触媒活性に参加する。EpacのREMドメインは、Epac1の342〜466及びEpac2の495〜615のアミノ酸の間に位置する。
本発明は、上記のアンタゴニストが、
- Epac細胞局在化ドメイン、例えばDishevelled Egl-10 Pleckstrin (DEP)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac細胞内局在化破壊剤である、上記で定義される使用にも関する。
用語「Epac細胞局在化ドメイン」とは、膜局在化に関与するドメインのことである。Epac細胞局在化ドメインは、例えばDishevelled Egl-10 Pleckstrin (DEP)ドメインである。
- Epac細胞局在化ドメイン、例えばDishevelled Egl-10 Pleckstrin (DEP)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac細胞内局在化破壊剤である、上記で定義される使用にも関する。
用語「Epac細胞局在化ドメイン」とは、膜局在化に関与するドメインのことである。Epac細胞局在化ドメインは、例えばDishevelled Egl-10 Pleckstrin (DEP)ドメインである。
本発明は、上記のアンタゴニストが、
- Epac mRNAに指向されたアンチセンス核酸、
- Epac二本鎖DNAに指向された一本鎖DNA、
- Epac核酸配列を含む二本鎖RNA、siRNA又はshRNA、
- Epac mRNAに指向されたリボザイム
を含む群から選択されるEpac発現阻害剤である、上記の使用にも関する。
- Epac mRNAに指向されたアンチセンス核酸、
- Epac二本鎖DNAに指向された一本鎖DNA、
- Epac核酸配列を含む二本鎖RNA、siRNA又はshRNA、
- Epac mRNAに指向されたリボザイム
を含む群から選択されるEpac発現阻害剤である、上記の使用にも関する。
Epacの発現の阻害剤は、例えば、Epac遺伝子を標的するアンチセンスオリゴヌクレオチド又は干渉RNAsi又はリボザイムを含む。
用語「遺伝子」とは、1つ又は複数のタンパク質又は酵素の全体又は一部分を含むアミノ酸の特定の配列をコードするか又はそれに対応するDNA配列を意味し、その条件の下で遺伝子が例えば発現する条件を決定する調節DNA配列、例えばプロモーター配列を含むか又は含まなくてよい。「プロモーター」又は「プロモーター配列」は、細胞内でRNAポリメラーゼに結合して下流の(3'方向)コーディング配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。構成遺伝子ではないいくつかの遺伝子は、DNAからRNAに転写され得るが、アミノ酸配列に翻訳されない。その他の遺伝子は、構成遺伝子のレギュレーターとして、又はDNA転写のレギュレーターとして機能できる。特に、遺伝子の用語は、タンパク質をコードするゲノム配列、すなわちレギュレーター、プロモーター、イントロン及びエキソン配列を含む配列を意図し得る。
用語「遺伝子」とは、1つ又は複数のタンパク質又は酵素の全体又は一部分を含むアミノ酸の特定の配列をコードするか又はそれに対応するDNA配列を意味し、その条件の下で遺伝子が例えば発現する条件を決定する調節DNA配列、例えばプロモーター配列を含むか又は含まなくてよい。「プロモーター」又は「プロモーター配列」は、細胞内でRNAポリメラーゼに結合して下流の(3'方向)コーディング配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。構成遺伝子ではないいくつかの遺伝子は、DNAからRNAに転写され得るが、アミノ酸配列に翻訳されない。その他の遺伝子は、構成遺伝子のレギュレーターとして、又はDNA転写のレギュレーターとして機能できる。特に、遺伝子の用語は、タンパク質をコードするゲノム配列、すなわちレギュレーター、プロモーター、イントロン及びエキソン配列を含む配列を意図し得る。
「コーディング配列」又は発現産物、例えばRNA、ポリペプチド、タンパク質若しくは酵素を「コードする」配列は、発現したときにRNA、ポリペプチド、タンパク質又は酵素をもたらすヌクレオチド配列、すなわちそのポリペプチド、タンパク質又は酵素のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列である。タンパク質のコーディング配列は、開始コドン(通常、ATG)と停止コドンを含み得る。
本明細書で用いられるように、「Epac遺伝子」の用語は、いずれの種のEpac (cAMPにより直接活性化される交換タンパク質)、特にヒトEpacであるが本発明が適用できるその他の哺乳動物又は脊椎動物も含むEpacをコードする遺伝子のことである。特に明記しない限り、用語「Epac」は、明細書を通して、Epac遺伝子又はコードされるEpacタンパク質のことを無関係に示すために用いられる。de Rooijら, 1998及びKawasakiら, 1998に記載されるように、Epacには2つのアイソフォーム、Epac 1 (Rapグアニンヌクレオチド交換因子(GEF) 3ともよばれる)とEpac 2 (Rapグアニンヌクレオチド交換因子(GEF) 4ともよばれる)とがある。さらに、Repac (Epacに関する)とよばれる関連するタンパク質が、Ichibaら (1999)により同定されている。Repacは、Epac 2に近い配列類似性を示し、Epac1及びEpac2に存在する調節配列が欠如している(Ichibaら, 1999)。ホモ・サピエンスのEpac 1遺伝子は、染色体12に局在化している。Epac1のそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列である配列番号1及び2は、アクセッション番号NM_006105でGenebankに登録されている。Epac 2のそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列である配列番号3及び4は、アクセッション番号NM_007023でGenebankに登録されている。Epac 2は、ヒト染色体2q31にマッピングされている。Repacのそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列である配列番号5及び6は、アクセッション番号BC039203でGenebankに登録されている。Repacは、ヒト染色体7p15.3にマッピングされている。
アンチセンス分子は、改変されているか若しくはされていないRNA、DNA、又は混合ポリマーオリゴヌクレオチドであり得、マッチング配列に結合することにより主に機能してペプチド合成の阻害をもたらす。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ワトソンクリック塩基対形成により標的RNAに結合し、立体配置的なブロック又はRNアーゼHの活性化のいずれかにより、結合した配列のリボソームによる翻訳を妨げることにより遺伝子発現をブロックする。アンチセンス分子は、RNAのプロセシング又は核から細胞質への輸送を妨害することによりタンパク質合成を変化させることもできる。さらに、アンチセンスデオキシオリゴリボヌクレオチドは、DNA-RNA相互作用によりRNAを標的することができ、それによりRNアーゼHを活性化し、これは二重鎖の(in the duplex)標的RNAを消化する。アンチセンスDNAは、一本鎖DNA細胞内発現ベクター又はその等価物及び変異形を用いて発現させることができる。
アンチセンス核酸は、Epacタンパク質遺伝子の発現をインビボ及びインビトロで調節及び制御するのに有用であり、上記で開示する疾患の治療のためにも有用である。このようなアンチセンスRNA及び遺伝子治療に関する技術は、当業者に公知である。最も広い定義によると7〜40ヌクレオチドの範囲の長さであり得るヒトEpac RNAのいずれの配列に相補的な新規なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、15〜25ヌクレオチド、最も好ましくは約20ヌクレオチドの範囲の長さである。
用語「相補的」は、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列が、ワトソン−クリック又はその他の塩基対相互作用により標的mRNA配列と水素結合を形成できることを意味する。この用語は、100 %相補的ではない配列もカバーすると理解されるべきである。より低い相補性、例えば50 %より多く低くても作用し得ると考えられている。しかし、100 %の相補性が好ましい。
一本鎖DNAは、配列特異的な様式でゲノムDNAに結合するように設計できる。三重鎖形成オリゴヌクレオチド(Triplex Forming Oligonucleotides) (TFO)は、ピリミジンリッチオリゴヌクレオチドからなり、これはフーグスティーン塩基対形成によりDNAヘリックスに結合する。DNAセンス、DNAアンチセンス及びTFOからなる得られる三重らせんは、RNAポリメラーゼによるRNA合成を破壊する。
二本鎖RNAは、RNA干渉(RNAi)とよばれる進化上保存されたプロセスにより相同遺伝子の発現を抑制できる。サイレンシングの基礎となるある機構は、小型干渉RNA (siRNA)を基質選択のガイドとして含むRNP (リボヌクレオチドタンパク質)複合体による標的mRNAの分解である。
用語「siRNA」は、小型の(典型的には30ヌクレオチド長未満)二本鎖RNA分子のことである。典型的には、siRNAは、siRNAが標的する遺伝子の発現を調整する。適切な小型干渉RNA (siRNA)分子の選択は、標的mRNAのヌクレオチド配列又はmRNAが転写された元の遺伝子についての知見を必要とする。本発明のsiRNA分子は、典型的には10〜30ヌクレオチド長であり、好ましくは18〜23ヌクレオチド長である。siRNA分子は、コーディング配列及び非コーディング配列を含む発現が調整される標的遺伝子のいずれの部分と同一であるか又は少なくとも90%同一である配列を含み得る。
Epacの発現を特異的に抑制できるsiRNAを提供するために、Elbashirら, 2002に従って以下のガイドラインを用いる:1) cDNA配列のオープンリーディングフレーム(ORF)から、開始コドンの好ましくは50〜100ヌクレオチド下流での標的配列の選択。2) 標的mRNA中で、AAジヌクレオチドで始まる21ヌクレオチド配列の決定(Elbashirら, 2001)。よって、配列は5'-AA(N19)UU (式中、Nはいずれかのヌクレオチドである)である。配列は、約50% G/Cを含まなければならない。3) 選択されたsiRNA配列を、ESTライブラリ又は各生物のmRNA配列に対してBlastサーチし(www.ncbi.nih.go/BLAST)、単独の遺伝子のみが標的されていることを確実にする。その他のコーディング配列に相同な16〜17より多い連続する塩基対を有するいずれの標的配列は、排除されなければならない。4) いくつかのsiRNA配列の合成は、ノックダウン実験の特異性を制御するために推奨される。
短いヘアピンRNAは、RNAの2つの末端が相補的でありかつ一緒にハイブリダイズできるので、2つの末端の間にループを有する人工的二本鎖RNAを形成する単純ひずみ(simple strain) RNAである。
リボザイムは、その他の一本鎖RNAを特異的に開裂する能力を有するRNA分子である。これらのRNAをコードするヌクレオチド配列の改変により、RNA分子中の特定のヌクレオチド配列を認識してそれを開裂する分子を加工することができる。このアプローチの主要な利点は、リボザイムは配列特異的に加工されるので、リボザイムを含む構築物に相補的な配列を有するmRNAのみが不活性化されることである。リボザイムには、2つの基本的なタイプがある。すなわち、テトラヒメナタイプと「ハンマーヘッド」タイプである。テトラヒメナタイプのリボザイムは、4塩基の長さの配列を認識するが、「ハンマーヘッド」タイプのリボザイムは、約3〜18塩基の長さの塩基配列を認識する。認識配列が長くなればなるほど、その配列が標的mRNA種内でのみ発生する可能性が大きい。よって、ハンマーヘッドタイプリボザイムは、特定のmRNA種を不活性化するために、テトラヒメナタイプのリボザイムよりも好ましい。
本発明によると、リボザイム、siRNA、一本鎖DNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、プラスミド又はレトロウイルスベクターにクローニングされたDNA配列の発現により作製できる。当業者に公知の標準的な方法を用いて、リボザイム、siRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドをいずれの簡便なクローニングベクター内に維持できる。
種々の遺伝子調節制御要素を、リボザイム、siRNA、一本鎖DNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチド発現ベクターに組み込んで、心臓細胞内での増殖を促進できる。例えば、siRNAの心臓特異的発現は、α-ミオシン重鎖プロモーターのような心臓特異的プロモーターにより推進できる。
「ベクター」は、別の遺伝子の配列又は要素(DNA又はRNAのいずれか)を結合させて、結合させた配列又は要素の複製をもたらすことができるレプリコン、例えばプラスミド、コスミド、バクミド、ファージ又はウイルスである。
「レプリコン」は、それ自体の制御の下で広く複製できるいずれの遺伝子の要素、例えばプラスミド、コスミド、バクミド、ファージ又はウイルスである。レプリコンは、RNA又はDNAであり得、一本鎖又は二本鎖であり得る。
「発現オペロン」は、転写及び翻訳制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(例えばATG又はAUGコドン)、ポリアデニル化シグナル、ターミネーターなどを有し得る核酸セグメントであり、これは宿主細胞又は生物内のポリペプチドコーディング配列の発現を促進する。
「レプリコン」は、それ自体の制御の下で広く複製できるいずれの遺伝子の要素、例えばプラスミド、コスミド、バクミド、ファージ又はウイルスである。レプリコンは、RNA又はDNAであり得、一本鎖又は二本鎖であり得る。
「発現オペロン」は、転写及び翻訳制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(例えばATG又はAUGコドン)、ポリアデニル化シグナル、ターミネーターなどを有し得る核酸セグメントであり、これは宿主細胞又は生物内のポリペプチドコーディング配列の発現を促進する。
別の実施形態によると、本発明は、治療上有効量の少なくとも1つのEpacアンタゴニストを患者に投与することを含む、患者の心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変を治療する方法に関する。
本発明は、上記のアンタゴニストが、Epac活性化阻害剤、Epac活性阻害剤、Epac細胞内局在化破壊剤及びEpac発現阻害剤を含む群から選択される、上記で定義される方法に関する。
本発明は、上記のアンタゴニストが、Epac活性化阻害剤、Epac活性阻害剤、Epac細胞内局在化破壊剤及びEpac発現阻害剤を含む群から選択される、上記で定義される方法に関する。
本発明は、上記のアンタゴニストが、
- Epac cAMP結合部位に指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- cAMPアナログ、例えばcAMP誘導体又は8-(4-クロロフェニルチオ)-2'-O-メチルアデノシン-3'-5-環状一リン酸 (8-CPT-2'-O-Me-cAMP)誘導体、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性化阻害剤である、上記で定義される方法にも関する。
- Epac cAMP結合部位に指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- cAMPアナログ、例えばcAMP誘導体又は8-(4-クロロフェニルチオ)-2'-O-メチルアデノシン-3'-5-環状一リン酸 (8-CPT-2'-O-Me-cAMP)誘導体、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性化阻害剤である、上記で定義される方法にも関する。
上記のアンタゴニストの1日当たりの投与量は、1日あたり成人につき0.01〜1,000 mgの広い範囲にわたって変動できる。好ましくは、上記の組成物は、治療される患者に対する投与量の対症調整のために、有効成分を0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500 mg含有する。医薬は、典型的には約0.01 mg〜約500 mgの有効成分、好ましくは1 mg〜約100 mgの有効成分を含有する。薬剤の有効量は、1日あたり0.0002 mg/kg〜約20 mg/kg-体重、特に1日あたり約0.001 mg/kg〜10 mg/kg-体重の投与レベルで通常は供給される。しかし、いずれの患者に対する具体的な用量レベル及び投与頻度は変動でき、用いる具体的な化合物の活性、代謝安定性及びその化合物の作用の長さ、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食餌、投与の形態及び時間、排泄速度、薬剤の組み合わせ、具体的な状態の重篤度、並びに治療を受ける受容者を含む種々の因子に依存するであろう。
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸の投与のための本発明の医薬組成物において、単独又は別の有効成分と組み合わせたEpacのアンタゴニストは、通常の医薬支持物(supports)との混合物としての単位投与形態で、動物及びヒトに投与できる。適切な単位投与形態は、経口経路形態、例えば錠剤、ゲルカプセル剤、粉剤、顆粒剤及び経口懸濁物又は溶液、舌下及び頬側投与形態、エアロソル、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、真皮下、経皮、鞘内、及び鼻腔内の投与形態、並びに直腸投与形態を含む。
本発明の医薬組成物において、有効成分は、1日当たりの投与のための投与単位当たり0.5〜1000 mg、好ましくは1〜500 mg、より好ましくは2〜200 mgの有効成分を含む投与単位として、一般的に処方される。
本発明は、さらに、上記のアンタゴニストが、
- Epacのグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)ドメイン又はRas交換モチーフ(REM)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性阻害剤、特にEpacのGEFドメインの阻害剤、又はEpacのREMドメインの阻害剤である、上記で定義される方法に関する。
本発明は、上記のアンタゴニストが、
- Epac細胞局在化ドメイン、例えばDishevelled Egl-10 Pleckstrin (DEP)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac細胞内局在化破壊剤である、上記で定義される方法にも関する。
- Epacのグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)ドメイン又はRas交換モチーフ(REM)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性阻害剤、特にEpacのGEFドメインの阻害剤、又はEpacのREMドメインの阻害剤である、上記で定義される方法に関する。
本発明は、上記のアンタゴニストが、
- Epac細胞局在化ドメイン、例えばDishevelled Egl-10 Pleckstrin (DEP)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac細胞内局在化破壊剤である、上記で定義される方法にも関する。
本発明は、上記のアンタゴニストが、
- Epac mRNAに指向されたアンチセンス核酸、
- Epac核酸配列を含む二本鎖RNA、siRNA又はshRNA、
- Epac mRNAに指向されたリボザイム
を含む群から選択されるEpac発現阻害剤である、上記で定義される方法にも関する。
- Epac mRNAに指向されたアンチセンス核酸、
- Epac核酸配列を含む二本鎖RNA、siRNA又はshRNA、
- Epac mRNAに指向されたリボザイム
を含む群から選択されるEpac発現阻害剤である、上記で定義される方法にも関する。
別の実施形態によると、本発明は、
- Epac mRNAに指向されたアンチセンス核酸、
- Epac核酸配列を含む二本鎖RNA、siRNA又はshRNA、
- Epac mRNAに指向されたリボザイム
を含む群から選択されるEpac発現阻害剤を作用物質として、医薬的に許容される担体とともに含む医薬組成物に関する。
- Epac mRNAに指向されたアンチセンス核酸、
- Epac核酸配列を含む二本鎖RNA、siRNA又はshRNA、
- Epac mRNAに指向されたリボザイム
を含む群から選択されるEpac発現阻害剤を作用物質として、医薬的に許容される担体とともに含む医薬組成物に関する。
本明細書に記載されるベクター及び構築物をコードするリボザイム、siRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、医薬製剤として対象に一般的に投与される。本明細書において、用語「対象」は、哺乳動物、例えばげっ歯類、ネコ科、イヌ科及び霊長類のことである。好ましくは、本発明の対象はヒトである。
リボザイム、siRNA若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド分子又はベクターを含む医薬製剤は、許容される媒体、例えば水、緩衝生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、油、界面活性剤、懸濁化剤又は適切なそれらの混合物とともに、投与のために簡便に処方される。選択された媒体中のリボザイム、siRNA若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド分子又はベクターの濃度は、媒体の疎水性若しくは親水性の性質、リボザイム、siRNA若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド分子又はベクターの長さ及びその他の特性に依存し得る。溶解性の限界は、当業者により容易に決定できる。
リボザイム、siRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチド分子、及びそれをコードするベクターは、静脈内注射により血流中に、皮下、筋肉内若しくは腹腔内の注射により、又は当該技術において公知のいずれのその他の方法により、非経口的に投与できる。非経口注射用の医薬製剤は、当該技術において一般的に知られている。非経口注射を分子又はベクターを投与する方法として選択するのであれば、充分な量の分子又はベクターがそれらの標的細胞に到達して生物学的効果を奏することを確実にする工程をふまなければならない。オリゴヌクレオチドの安定性、細胞による摂取及び生物学的分布を増加させるために、いくつかの方法が用いられている。本発明のリボザイム、siRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、親油性の標的担体、例えばリポソーム内にカプセル化され得る。
本発明の医薬製剤は、投与の簡易性及び投与形態の均質性のために、投与単位形態で処方されることができる。本明細書で用いられるように、投与単位形態とは、治療を受ける患者に適する医薬製剤の物理的に分かれた単位のことである。各投与形態は、選択された所望の効果を生み出すように計算された活性成分の量を医薬担体とともに含むべきである。適切な投与単位を決定するための手法は、当業者に公知である。投与単位は、患者の体重に基づいて比例して増加又は低減できる。具体的な病気の状態の緩和に適切な濃度は、当該技術で知られているようにして、投与濃度曲線算出法により決定できる。
本発明によると、リボザイム-siRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチド分子の投与のための適切な投与単位は、リボザイム、siRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチド分子の動物モデルにおける毒性を評価することにより決定できる。医薬製剤中の上記の分子の種々の濃度をマウスに投与でき、最小限及び最大限の投与量を、治療の結果としての副作用とは対照的に、得られた所望の結果を比較することにより決定できる。
上記の分子を含む医薬製剤は、適切な間隔、例えば病気の症状が減少するか又は緩和されるまで1日2回で投与でき、その後に投与量を維持レベルに低減できる。
医薬組成物は、実質的に純粋であることが有利である。用語「実質的に純粋」とはある物質(例えば核酸、オリゴヌクレオチド)を少なくとも50〜60重量%含む製剤のことをいう。より好ましくは、製剤は、ある化合物を少なくとも75重量%、最も好ましくは90〜95重量%含む。純度は、ある化合物に適切な方法(例えばクロマトグラフィー法、アガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC分析など)により測定される。
本発明は、特に、作用物質として
- Epac cAMP結合部位に指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- EpacのGEFドメイン又はREMドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- Epac細胞局在化ドメイン、例えばDEPドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー
を含む群から選択されるEpac活性化阻害剤、Epac活性阻害剤又はEpac細胞内局在化破壊剤を、医薬的に許容される担体とともに含む医薬組成物に関する。
- Epac cAMP結合部位に指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- EpacのGEFドメイン又はREMドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- Epac細胞局在化ドメイン、例えばDEPドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー
を含む群から選択されるEpac活性化阻害剤、Epac活性阻害剤又はEpac細胞内局在化破壊剤を、医薬的に許容される担体とともに含む医薬組成物に関する。
本発明は、心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する化合物をスクリーニングするためのEpacの使用にも関する。
これらの化合物は、具体的には、Epac活性化阻害剤、Epac活性阻害剤、Epac細胞内局在化破壊剤及びEpac発現阻害剤から選択される。
これらの化合物は、具体的には、Epac活性化阻害剤、Epac活性阻害剤、Epac細胞内局在化破壊剤及びEpac発現阻害剤から選択される。
本発明は、さらに、
- Epacを、スクリーニングされる化合物と、cAMP又はEpac活性化cAMPアナログの存在下に接触させ、
- Epac活性化をアッセイし、
- Epac活性化を阻害する化合物、特に該化合物の非存在下でのEpac活性化に比べて、Epac活性化の少なくとも30%を阻害する化合物を選択する
工程を含む、心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する化合物をスクリーニングする方法に関する。
Rap1のcAMP-依存性活性化を評価して、Epac活性化のパーセンテージを決定することができる。
- Epacを、スクリーニングされる化合物と、cAMP又はEpac活性化cAMPアナログの存在下に接触させ、
- Epac活性化をアッセイし、
- Epac活性化を阻害する化合物、特に該化合物の非存在下でのEpac活性化に比べて、Epac活性化の少なくとも30%を阻害する化合物を選択する
工程を含む、心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する化合物をスクリーニングする方法に関する。
Rap1のcAMP-依存性活性化を評価して、Epac活性化のパーセンテージを決定することができる。
本発明は、Epacを、Epac活性化の際に活性化されやすいエフェクタータンパク質、例えばRap1、Rap2、Rac又はRasとも接触させ、Epac活性化を上記のエフェクタータンパク質の活性を測定することにより評価する、上記で定義される方法にも関する。
上記のスクリーニング方法は、よって、
- a) Epacを、i) 限定されないがRap1、Rap2、Rac又はRasから選択される少なくとも1つのEpacのエフェクター、ii) cAMP及びii) 試験される上記の化合物とインキュベートし、
- b) Epacによる上記のエフェクターの活性化を評価する
工程を含み、ここで、試験される化合物の非存在下で得られる活性化と比較してより低い活性化は、上記の化合物がEpacのアンタゴニストであることを示す。エフェクターの活性化のアッセイは、以下の実施例1の「Rac活性化アッセイ」に記載するようにして行うことができ、すなわち上記のエフェクターはGSTとフレームで結合する。
- a) Epacを、i) 限定されないがRap1、Rap2、Rac又はRasから選択される少なくとも1つのEpacのエフェクター、ii) cAMP及びii) 試験される上記の化合物とインキュベートし、
- b) Epacによる上記のエフェクターの活性化を評価する
工程を含み、ここで、試験される化合物の非存在下で得られる活性化と比較してより低い活性化は、上記の化合物がEpacのアンタゴニストであることを示す。エフェクターの活性化のアッセイは、以下の実施例1の「Rac活性化アッセイ」に記載するようにして行うことができ、すなわち上記のエフェクターはGSTとフレームで結合する。
ある特定の実施形態において、スクリーニング方法は、Epac-誘発cAMP-依存性Rap1又はRap2活性化を化合物が阻害する効果をインビトロで試験することを含む。Rap1は、公知のEpacのエフェクターである。これを行うために、全長Epacを、蛍光標識2',3'-ビス(O)-N-メチルアントラノリル(antharanoloyl)-グアノシンジホスフェート(mGDP)を載せたRap1又はRap2とインキュベートし、以前に記載されたようにして(Van den Bergheら, 1997)、蛍光分光計によりリアルタイムでmGDPの放出を検出する。Epac-誘発cAMP-依存性Ras又はRac活性化に対する化合物の阻害効果は、以前に記載されたようにして(Mailletら, 2003)、GSTプルダウンアッセイを用いて評価できる。
別の実施形態において、本発明は、
- 正常な心筋細胞に比べてEpac活性が増加した心筋細胞を、スクリーニングされる化合物と接触させ、
- Epac活性が増加した上記の心筋細胞の肥大特性を評価し、
- 上記の化合物により処理されていない、Epac活性が増加した心筋細胞の肥大特性に比べて、Epac活性が増加した上記の心筋細胞の肥大特性を阻害する化合物を選択する
工程を含む、心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する化合物をスクリーニングする方法に関する。
- 正常な心筋細胞に比べてEpac活性が増加した心筋細胞を、スクリーニングされる化合物と接触させ、
- Epac活性が増加した上記の心筋細胞の肥大特性を評価し、
- 上記の化合物により処理されていない、Epac活性が増加した心筋細胞の肥大特性に比べて、Epac活性が増加した上記の心筋細胞の肥大特性を阻害する化合物を選択する
工程を含む、心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する化合物をスクリーニングする方法に関する。
さらなる実施形態において、スクリーニング方法は、
a) Epacの活性形を発現する心筋細胞を提供し、
b) 上記の心筋細胞を、試験される化合物に曝露し、
c) 上記の化合物の、上記の心筋細胞の肥大特性に対する影響を評価する
工程を含み、ここで該肥大特性は、細胞サイズ及び/又は肥大遺伝子マーカー、例えばナトリウム排泄増加因子をコードするmRNAの発現を測定することにより決定される。
a) Epacの活性形を発現する心筋細胞を提供し、
b) 上記の心筋細胞を、試験される化合物に曝露し、
c) 上記の化合物の、上記の心筋細胞の肥大特性に対する影響を評価する
工程を含み、ここで該肥大特性は、細胞サイズ及び/又は肥大遺伝子マーカー、例えばナトリウム排泄増加因子をコードするmRNAの発現を測定することにより決定される。
正常な心筋細胞に比べてEpac活性が増加した心筋細胞は、例えばEpacの野生型の形又はそのcAMP結合ドメインが欠如したEpacの構成的に活性化された形を発現する。
肥大特性の阻害は、上記の化合物がEpacのアンタゴニストであることを示す。
肥大特性の阻害は、上記の化合物がEpacのアンタゴニストであることを示す。
リボザイム、siRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドを産生するベクターの投与は、心臓細胞又は心臓細胞系統に、限定されることなくいずれの方法で、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション及び形質導入により投与できる。
さらなる実施形態において、スクリーニング方法は、上記の2つの方法の組み合わせをもたらすことができる。
本発明は、さらに、スクリーニングされる化合物が
- cAMPアナログ、例えばcAMP誘導体若しくは8-(4-クロロフェニルチオ)-2'-O-メチルアデノシン-3'-5-環状一リン酸 (8-CPT-2'-O-Me-cAMP)誘導体、又は
- ブレフェルジンA誘導体
である上記で定義される方法に関する。
- cAMPアナログ、例えばcAMP誘導体若しくは8-(4-クロロフェニルチオ)-2'-O-メチルアデノシン-3'-5-環状一リン酸 (8-CPT-2'-O-Me-cAMP)誘導体、又は
- ブレフェルジンA誘導体
である上記で定義される方法に関する。
本発明のさらなる目的は、Epacの活性化に影響する化合物、特にcAMPアナログをスクリーニングする方法である。
別の実施形態によると、本発明は、Epac活性が、対応する野生型非ヒト哺乳動物に関して増加している、心臓肥大症のモデルとして用いられる非ヒトトランスジェニック哺乳動物に関する。
この心臓肥大症の非ヒトモデルにおいて、心臓肥大症は、心筋細胞におけるEpac、特にEpac1のドミナントポジティブ形の特異的発現により誘発される。
この心臓肥大症の非ヒトモデルにおいて、心臓肥大症は、心筋細胞におけるEpac、特にEpac1のドミナントポジティブ形の特異的発現により誘発される。
本発明は、特に、Epacが、対応する野生型非ヒト哺乳動物に関して過剰発現している、上記で定義される心臓肥大症のモデルとして用いられる非ヒトトランスジェニック哺乳動物に関し、特に、該非ヒトトランスジェニック哺乳動物は、Epac天然プロモーターよりも強い転写活性を有する心臓特異的プロモーター、例えばα-ミオシン重鎖のプロモーターの制御下にEpacコーディング配列を含む。
Epacのドミナントポジティブ形は、心臓特異的プロモーター、例えばα-ミオシン重鎖の制御下にある。
Epacのドミナントポジティブ形は、心臓特異的プロモーター、例えばα-ミオシン重鎖の制御下にある。
本発明は、活性化cAMP結合ドメインが欠如したEpacの構成的に活性化された形をコードする核酸配列を含む、上記で定義される心臓肥大症のモデルとして用いられる非ヒトトランスジェニック哺乳動物に関する。
さらなる実施形態において、Epac1のドミナントポジティブ形は、Epac1の最初の322アミノ酸の欠失を含むEpac-ΔcAMPをもたらす(de Rooijら, 1998)。Epac-ΔcAMPは、cAMP-結合ドメインを欠き、よってEpacの構成的に活性化された形としてふるまい、cAMPにより調節されることができない(de Rooijら, 1998)。
本発明は、マウスである、上記で定義される心臓肥大症のモデルとして用いられる非ヒトトランスジェニック哺乳動物にも関する。
治療方法
Epacアンタゴニストを含有する組成物は、予防及び/又は治療の処置のために投与できる。医薬組成物中の有効成分は、一般的に、「有効量」で存在する。医薬組成物の「有効量」は、所望の効果を提供する充分であるが非毒性の量を意味する。この用語は、対象(例えば哺乳動物、特にヒト)を処置するのに充分な量のことである。つまり、用語「治療上の量」は、心臓肥大症又はいずれのその他の望ましくない症状の進行を妨害するか、妨げるか、遅らせるか又は逆にすることにより、疾患状態又は症状を治療するのに充分な量のことである。用語「予防上の有効な」量は、心臓肥大症の症状をまだ示していない対象に与えられる量のことであり、よって心臓肥大症の発症を妨害するか、妨げるか又は遅らせるのに有効な量である。
Epacアンタゴニストを含有する組成物は、予防及び/又は治療の処置のために投与できる。医薬組成物中の有効成分は、一般的に、「有効量」で存在する。医薬組成物の「有効量」は、所望の効果を提供する充分であるが非毒性の量を意味する。この用語は、対象(例えば哺乳動物、特にヒト)を処置するのに充分な量のことである。つまり、用語「治療上の量」は、心臓肥大症又はいずれのその他の望ましくない症状の進行を妨害するか、妨げるか、遅らせるか又は逆にすることにより、疾患状態又は症状を治療するのに充分な量のことである。用語「予防上の有効な」量は、心臓肥大症の症状をまだ示していない対象に与えられる量のことであり、よって心臓肥大症の発症を妨害するか、妨げるか又は遅らせるのに有効な量である。
心臓肥大症の症状は、労作時息切れ、めまい、失神及び狭心症(狭心症は、心筋への血液供給の減少により引き起こされる胸痛又は不快感である)を含む。心不整脈の人もいる。これらは、異常な心臓リズムであり、突然死に導き得る場合もある。左心室からの血流の閉塞は心室の仕事を増加させ、心雑音が強くなり得る。肥大性心筋症の患者の大多数において、身体検査は平凡であり、異常をとらえにくい。多くの患者は力強いか又はぎくしゃくした(jerky)脈と力強い鼓動を持ち、これらは胸の左側で感じることができる。これらはともに、肥厚した強く収縮した心臓を反映する。しかし、身体検査における最も明確な異常は、心雑音であり、これは患者の30〜40%に存在する。肥大性心筋症を診断するために、心電図(ECG)が通常用いられる。ECGは、通常、筋肉肥厚及び筋肉構造の組織崩壊による異常な電気シグナルを示す。患者の少数(約10%)では、ECGは正常であるか又はわずかな変化しか示さない。MRI (磁気共鳴イメージング)が心臓の高解像度の断層画像を提供できるので、近年これは、心臓肥大症における左心室肥大のサイズ及び程度の評価のためによく適合した重要な新しい試験となっている。実際に、近年の研究は、心臓MRIが、左心室の前外側の壁及び心尖のような領域の肥大を高い信頼性で検出するのに、心臓エコー図よりもよいであろうことを示している。結果として、ある患者においては、心臓エコー図は、心臓肥大症の診断を確信して除外するのには不十分であり、その状況では心臓MRIを推奨できる。
治療のための適用において、組成物は、上記のように疾患にすでに罹患している患者に、疾患及びその合併症を治癒するか又は少なくとも部分的に阻止するのに充分な量で投与される。医薬組成物の適切な投与量は、いくつかのよく確立されたプロトコルのいずれの1つに従って容易に決定される。例えば、動物実験(例えばマウス、ラット)は、体重キログラム当たりの生理活性成分の最大許容量を決定するのに通常用いられる。一般的に、試験される動物種の少なくとも1つは哺乳動物である。動物実験からの結果を外挿して、その他の種、例えばヒトで用いる用量を決定することができる。有効用量を構成するものは、疾患又は状態の性質及び重篤度、並びに患者の健康の全身状態にも依存する。
予防のための適用において、少なくとも1つのEpacアンタゴニストを含有する組成物は、心臓肥大症にかかりやすいか又はその危険性がある患者に投与される。そのような量は、「治療上の有効な」量又は用量であると定義される。この使用においても、精密な量は、患者の健康状態及び体重に依存する。
以下の実施例は、提供される方法及び組成物のある態様を説明するが、請求された発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
図面の説明
図1A、図1B及び図1C
Epacは、初代ラット心室心筋細胞及びHL-1心房細胞において、低分子量Gタンパク質Racを活性化する。
図1A:初代ラット心室心筋細胞に、コントロールとしてのAd.GFP、又はAd.EpacWT若しくはAd.Epac-ΔcAMPを、方法に記載されるようにして感染させた。感染の2日後に、細胞を、Epacの選択的アクチベーターである8-CPT (1μM)で10分間処理したか、又は処理しなかった。Rac-GTPの量を、プルダウン実験により決定した。全Rac発現(全溶解物)についてのコントロールを示す。上のパネルは、典型的なイムノブロットを示す。組換えタンパク質の発現は、抗HA抗体を用いてウェスタンブロッティングにより決定した。下のパネルは、3つの独立した実験の平均±S.E.M.を示す。結果は、Ad.GFPを感染させたコントロール細胞に対する活性化の倍数として表す。コントロールと比較して*p<0.05、**p<0.01。
図1A、図1B及び図1C
Epacは、初代ラット心室心筋細胞及びHL-1心房細胞において、低分子量Gタンパク質Racを活性化する。
図1A:初代ラット心室心筋細胞に、コントロールとしてのAd.GFP、又はAd.EpacWT若しくはAd.Epac-ΔcAMPを、方法に記載されるようにして感染させた。感染の2日後に、細胞を、Epacの選択的アクチベーターである8-CPT (1μM)で10分間処理したか、又は処理しなかった。Rac-GTPの量を、プルダウン実験により決定した。全Rac発現(全溶解物)についてのコントロールを示す。上のパネルは、典型的なイムノブロットを示す。組換えタンパク質の発現は、抗HA抗体を用いてウェスタンブロッティングにより決定した。下のパネルは、3つの独立した実験の平均±S.E.M.を示す。結果は、Ad.GFPを感染させたコントロール細胞に対する活性化の倍数として表す。コントロールと比較して*p<0.05、**p<0.01。
図1B:HL-1心房細胞を、8-CPT (100μM)、フォルスコリン(FSK) (100μM)、又は8-Br-cAMP (10μM)で10分間処理した。上のパネルは、代表のイムノブロットを示す。下のパネルでは、Rac-GTPを、コントロール(CT)細胞に対する活性化の倍数として表す(平均±S.E.M;n=4)。
図1C:Rac-GTPの量に対する異なる時間のインキュベーションでの8-CPT (10μM)の影響。Rac活性化を、上記のようにして決定した。全溶解物に対するコントロール(全Rac)を示す。
図2A、図2B、図2C及び図2D
Epacは、遺伝子発現の肥大パターンを刺激する。
図2A、2C及び2D:新生心筋細胞を、ANF-Luc (図2A)、SkM-α-actin-Luc (図2C)又はc-fos-SRE-Luc (図2D)及びEpacWT、RacG12V又はコントロールとしての空のベクター(模擬)でトランスフェクションし、8-CPT (1μM)で処理したか又は処理しなかった。トランスフェクションの2日後に、細胞をルシフェラーゼ活性についてアッセイした。結果は、コントロールの活性化のパーセンテージとして表す。結果は、3重に行った3回の独立した実験の平均±S.E.M.である。
Epacは、遺伝子発現の肥大パターンを刺激する。
図2A、2C及び2D:新生心筋細胞を、ANF-Luc (図2A)、SkM-α-actin-Luc (図2C)又はc-fos-SRE-Luc (図2D)及びEpacWT、RacG12V又はコントロールとしての空のベクター(模擬)でトランスフェクションし、8-CPT (1μM)で処理したか又は処理しなかった。トランスフェクションの2日後に、細胞をルシフェラーゼ活性についてアッセイした。結果は、コントロールの活性化のパーセンテージとして表す。結果は、3重に行った3回の独立した実験の平均±S.E.M.である。
図2B:Epacは、ANF mRNAの発現を誘発する。心筋細胞に、Ad.EpacWT、Ad.RacG12V又はAd.GFF (コントロール)を感染させ、8-CPT (1μM)で2日間刺激したか又は刺激しなかった。ANF mRNA発現は、方法に記載するようにして、定量PCRにより決定した。値は、ANF/GCB比に関して表し、結果は、各実験についてコントロールに標準化した。結果は、2重に行った3回の独立した実験の平均±S.E.M.として示す。コントロールに比較して*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図3A、図3B、図3C、図3D及び図3E
Epacは、新生(図3A、3B及び3C)、及び成体(図3D及び3E)のラットの初代心筋細胞において、心筋細胞の肥大を誘発する。
図3A:サルコメアの組織化に対するEpacの影響の蛍光顕微鏡分析。コントロールとしてのAd.GFP、又はAd.EpacWTでの感染の48時間後の代表的な筋細胞の形態を示す。Epac選択的アクチベーターである8-CPTを、1μMで2日間、Ad.GFPを感染させた細胞において用いた。ポジティブコントロールとして、細胞にAd.GFPを感染させ、PE (1μM)で2日間処理した。アクチンフィラメントを、ローダミン結合ファロイジンを用いて視覚化した。
Epacは、新生(図3A、3B及び3C)、及び成体(図3D及び3E)のラットの初代心筋細胞において、心筋細胞の肥大を誘発する。
図3A:サルコメアの組織化に対するEpacの影響の蛍光顕微鏡分析。コントロールとしてのAd.GFP、又はAd.EpacWTでの感染の48時間後の代表的な筋細胞の形態を示す。Epac選択的アクチベーターである8-CPTを、1μMで2日間、Ad.GFPを感染させた細胞において用いた。ポジティブコントロールとして、細胞にAd.GFPを感染させ、PE (1μM)で2日間処理した。アクチンフィラメントを、ローダミン結合ファロイジンを用いて視覚化した。
図3B:Ad.GFP又はAd.EpacWTを2日間感染させ、8-CPT (1μM)又はPE (1μM)のいずれかで処理したか又は処理しなかった細胞の写真イメージをデジタル化した。2〜3回の独立した実験からの条件当たり30〜50個の個別の細胞の領域(μm2)を、コンピュータ補助面積測定により決定した。値は、平均±S.E.M.を示す。
図3C:[3H]-ロイシンの取り込み。心筋細胞を上記のようにして処理し、タンパク質に取り込まれた[3H]-ロイシンの全放射活性を、シンチレーション検出により決定した。図は、2重に行った3回の実験についてのデータの平均±S.E.M.を示す。コントロールAd.GFPに比較して*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図3D:Ad.GFP又はAd.EpacWT及びGFP、或いはAd.EpacdcAMP、或いはAd.RapQ63Eを感染させ、Epacのアゴニストである8-CPTで処理したか又は処理しなかった心筋細胞のα-アクチニン染色。コントロールとしてのAd.GFP、Ad.EpacWT/GFP又はAd.RapQ63Eで感染させた48時間後の代表的な筋細胞の形態を示す。Epac選択的アクチベーターである8-CPTを、1μMにて2日間用いた。α-アクチニンは、方法に記載するようにして、免疫細胞化学により視覚化した。画像は、上から下のパネルに示す:α-アクチニン染色(上のパネル)、GFP発現 (中)、前の2つの画像からの合成(下のパネル)。
図3E:Ad.GFP、又はAd.EpacWT、又はAd.EpacdcAMP又はAd.RapQ63Eを2日間感染させ、8-CPT (1μM)で処理したか又は処理しなかったラット成体心臓筋細胞の写真イメージをデジタル化した。5〜6回の独立した実験からの条件当たり約100個の個別の細胞の表面、長さ及び幅を、コンピュータ補助面積測定により決定した。値は、平均±S.E.M.を示す。
図4A、図4B、図4C、図4D及び図4E
Epacは、細胞内Ca2+過渡現象(transients)を誘発し、Ca2+はRacを活性化する。
図4A、4B、4C及び4Dにおいて、平板培養して1又は2日後の新生心筋細胞に、Ca2+指示薬であるFluo3-AMを負荷し、コントロールの外部リンゲル液で潅流した。
Epacは、細胞内Ca2+過渡現象(transients)を誘発し、Ca2+はRacを活性化する。
図4A、4B、4C及び4Dにおいて、平板培養して1又は2日後の新生心筋細胞に、Ca2+指示薬であるFluo3-AMを負荷し、コントロールの外部リンゲル液で潅流した。
図4A:1.8 mMの外部[Ca2+]での自発的なスパイキング活性に対する10μM 8-pCPT-2'-O-Me-cAMP (8-CPT)の影響。
図4B:20 mMの外部Cs+の存在下での10μM 8-CPTの影響。
図4C:外部Ca2+の非存在下での100μM 8-CPTの影響。
図4D:外部Ca2+の非存在下及びPKAブロッカーH89 (1μM)の存在下での100μM 8-CPTの影響。
図4E:Rac活性化に対するイオノマイシンの影響。初代ラット心室心筋細胞を、2日でインビトロにて、種々のインキュベーション時間でイオノマイシン(1μM)と、又はポジティ分コントロールとして15分間PE (1μM)と処理した。Rac-GTPの量を、プルダウン実験、その後の抗-Rac抗体を用いてウェスタンブロッティングにより決定した。
図4B:20 mMの外部Cs+の存在下での10μM 8-CPTの影響。
図4C:外部Ca2+の非存在下での100μM 8-CPTの影響。
図4D:外部Ca2+の非存在下及びPKAブロッカーH89 (1μM)の存在下での100μM 8-CPTの影響。
図4E:Rac活性化に対するイオノマイシンの影響。初代ラット心室心筋細胞を、2日でインビトロにて、種々のインキュベーション時間でイオノマイシン(1μM)と、又はポジティ分コントロールとして15分間PE (1μM)と処理した。Rac-GTPの量を、プルダウン実験、その後の抗-Rac抗体を用いてウェスタンブロッティングにより決定した。
図5A、図5B及び図5C
NFATのEpacによる活性化
図5A及び図5B:NFAT転写活性に対するEpacの影響。Ad.GFP (コントロール)、Ad.EpacWT、又はAd.VIVITを感染させた心筋細胞に、NFAT-Lucでトランスフェクションし、CsA (0.5μM)で48時間処理したか又は処理しなかった。Luc活性を、方法に記載されるようにしてアッセイした。
NFATのEpacによる活性化
図5A及び図5B:NFAT転写活性に対するEpacの影響。Ad.GFP (コントロール)、Ad.EpacWT、又はAd.VIVITを感染させた心筋細胞に、NFAT-Lucでトランスフェクションし、CsA (0.5μM)で48時間処理したか又は処理しなかった。Luc活性を、方法に記載されるようにしてアッセイした。
図5C:Epacは、MCIP1発現を増加させる。Ad.GFP (コントロール)又はAd.EpacWTを感染させた心臓筋細胞を、8-CPT (1μM)で2日間処理したか又は処理しなった。MCIP1/GCB mRNAの比は、定量PCRにより決定した。値は、MCIP1/GCB比に関して表す。
結果は、各実験についてコントロールに標準化し、3重(図5A及び5B)又は2重(図5C)で行った少なくとも3回の独立した実験の平均±S.E.Mとして表す。
結果は、各実験についてコントロールに標準化し、3重(図5A及び5B)又は2重(図5C)で行った少なくとも3回の独立した実験の平均±S.E.Mとして表す。
図6A及び図6B
Ad.VIVITは、Epac-誘発心筋細胞肥大を阻害する。
図6A:サルコメアの組織化に対するEpacの影響の蛍光顕微鏡分析。コントロールとしてのAd.GFP、Ad.VIVIT、Ad.EpacWT又はAd.EpacWTとAd.VIVITを感染させて48時間後の代表的な筋細胞の形態を示す。
Ad.VIVITは、Epac-誘発心筋細胞肥大を阻害する。
図6A:サルコメアの組織化に対するEpacの影響の蛍光顕微鏡分析。コントロールとしてのAd.GFP、Ad.VIVIT、Ad.EpacWT又はAd.EpacWTとAd.VIVITを感染させて48時間後の代表的な筋細胞の形態を示す。
図6B:上記のようにして感染させた心臓筋細胞の写真イメージをデジタル化した。3回の独立した実験からの条件当たり約50個の個別の細胞の面積(μm2)を、コンピュータ補助面積測定により決定した。値は、平均±S.E.Mを示す。コントロールと比較して又は記載する値に対して*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001。
図7A、図7B及び図7C
Epacは、CaMKIIシグナル伝達経路を活性化する。
図7A:Epacは、MEF2転写活性を調節する。Ad.GFP (コントロール)、Ad.EpacWT、又はAd.EpacΔcAMPに感染させた心筋細胞を、MEF2-Lucでトランスフェクションし、CsA (0.5μM)で48時間処理したか又は処理しなかった。Luc活性を、方法に記載するようにしてアッセイした。
図7B:Epacは、MEF2転写活性を調節する。Ad.GFP (コントロール)、Ad.EpacWT、又はAd.EpacΔcAMPに感染させた心筋細胞を、MEF2-Lucでトランスフェクションし、KN-93 (1μM)で48時間処理したか又は処理しなかった。Luc活性を、方法に記載するようにしてアッセイした。
Epacは、CaMKIIシグナル伝達経路を活性化する。
図7A:Epacは、MEF2転写活性を調節する。Ad.GFP (コントロール)、Ad.EpacWT、又はAd.EpacΔcAMPに感染させた心筋細胞を、MEF2-Lucでトランスフェクションし、CsA (0.5μM)で48時間処理したか又は処理しなかった。Luc活性を、方法に記載するようにしてアッセイした。
図7B:Epacは、MEF2転写活性を調節する。Ad.GFP (コントロール)、Ad.EpacWT、又はAd.EpacΔcAMPに感染させた心筋細胞を、MEF2-Lucでトランスフェクションし、KN-93 (1μM)で48時間処理したか又は処理しなかった。Luc活性を、方法に記載するようにしてアッセイした。
図7C:KN-93は、Epac-誘発心筋細胞肥大を阻害する。Ad.GFP (コントロール)又はAd.EpacΔcAMPに感染させ、KN-93 (1μM)で2日間処理したか又は処理しなかった心筋細胞を、ファロイジンで染色した。写真イメージを撮影し、デジタル化した。3回の独立した実験からの条件当たり約50個の個別の細胞の面積(μm2)を、コンピュータ補助面積測定により決定した。結果は、各実験についてコントロールに標準化し、3重で行われた少なくとも3回の別々の実験の平均±S.E.Mとして表した。
図8A、図8B及び図8C
Epac-誘発NFAT依存性心筋細胞肥大におけるRacの関与
図8A、8B及び8Cにおいて、Ad.GFP (コントロール)、Ad.RacS17N、Ad.EpacWT、又はAd.EpacWT及びAd.RacS17Nに感染させた心筋細胞を、NFAT-Luc、MEF2-Luc又はANF-Lucでトランスフェクションした。2日後に、Luc活性を測定した。Luc活性を、各実験についてコントロールに標準化し、3重で行われた少なくとも3回の別々の実験の平均±S.E.Mとして表した。
図8Bの下のパネルにおいて、感染構築物の発現を、HA及びc-Mycに指向された抗体を用いて監視した。
Epac-誘発NFAT依存性心筋細胞肥大におけるRacの関与
図8A、8B及び8Cにおいて、Ad.GFP (コントロール)、Ad.RacS17N、Ad.EpacWT、又はAd.EpacWT及びAd.RacS17Nに感染させた心筋細胞を、NFAT-Luc、MEF2-Luc又はANF-Lucでトランスフェクションした。2日後に、Luc活性を測定した。Luc活性を、各実験についてコントロールに標準化し、3重で行われた少なくとも3回の別々の実験の平均±S.E.Mとして表した。
図8Bの下のパネルにおいて、感染構築物の発現を、HA及びc-Mycに指向された抗体を用いて監視した。
図9A及び図9B
Ad.RacS17Nは、Epac-誘発心筋細胞肥大を逆にする。
図9A:Ad.GFP (コントロール)、Ad.EpacWT、Ad.RacS17N又はAd.EpacWT及びAd.RacS17Nに2日間感染させた細胞の写真イメージをデジタル化した。
図9B:3回の独立した実験からの条件当たり50個の個別の細胞の面積(μm2)を、コンピュータ補助面積測定により決定した。値は、平均±S.E.M.を示す。コントロール細胞又は記載した値に対して*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001。
Ad.RacS17Nは、Epac-誘発心筋細胞肥大を逆にする。
図9A:Ad.GFP (コントロール)、Ad.EpacWT、Ad.RacS17N又はAd.EpacWT及びAd.RacS17Nに2日間感染させた細胞の写真イメージをデジタル化した。
図9B:3回の独立した実験からの条件当たり50個の個別の細胞の面積(μm2)を、コンピュータ補助面積測定により決定した。値は、平均±S.E.M.を示す。コントロール細胞又は記載した値に対して*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001。
図10
Epacにより制御される、可能性のある肥大シグナル伝達経路。
Gs-結合受容体の刺激は、細胞内cAMPレベルを増加させるアデニリルシクラーゼ(AC)を活性化する。その後のEpacの活性化は、[Ca2+]iの上昇を誘発し、これがRac活性化を増加させる。低分子量Gタンパク質Racは、細胞骨格再組織化と、カルシニューリン/NFATシグナル伝達経路の活性化の両方を誘発できる。Epacは、MEF2転写活性を、CaMKIIを介して調節もする。Epacシグナル伝達経路は、肥大遺伝子発現及び心筋細胞成長を誘発する。
Epacにより制御される、可能性のある肥大シグナル伝達経路。
Gs-結合受容体の刺激は、細胞内cAMPレベルを増加させるアデニリルシクラーゼ(AC)を活性化する。その後のEpacの活性化は、[Ca2+]iの上昇を誘発し、これがRac活性化を増加させる。低分子量Gタンパク質Racは、細胞骨格再組織化と、カルシニューリン/NFATシグナル伝達経路の活性化の両方を誘発できる。Epacは、MEF2転写活性を、CaMKIIを介して調節もする。Epacシグナル伝達経路は、肥大遺伝子発現及び心筋細胞成長を誘発する。
図11
Epac1の活性化は、成体ラット初代心筋細胞におけるタンパク質合成を増加させる。
心筋細胞を、Ad.GFP (コントロール)、又はAd.EpacWT及びGFP、又はAd.RapQ63Eに感染させ、Epacのアゴニストである8-CPTで処理したか又は処理せずに、タンパク質に取り込まれた[3H]-ロイシンの全放射活性を、シンチレーション検出により決定した。Epac選択的アクチベーターである8-CPTを、1μMで2日間用いた。ポジティブコントロールとして、細胞を肥大刺激物質であるフェニレフリンで2日間処理した(1μM)。図は、2重に行われた3回の実験のデータの平均±S.E.M.を示す。コントロールAd.GFPと比較して*p<0.05、**p<0.01。
Epac1の活性化は、成体ラット初代心筋細胞におけるタンパク質合成を増加させる。
心筋細胞を、Ad.GFP (コントロール)、又はAd.EpacWT及びGFP、又はAd.RapQ63Eに感染させ、Epacのアゴニストである8-CPTで処理したか又は処理せずに、タンパク質に取り込まれた[3H]-ロイシンの全放射活性を、シンチレーション検出により決定した。Epac選択的アクチベーターである8-CPTを、1μMで2日間用いた。ポジティブコントロールとして、細胞を肥大刺激物質であるフェニレフリンで2日間処理した(1μM)。図は、2重に行われた3回の実験のデータの平均±S.E.M.を示す。コントロールAd.GFPと比較して*p<0.05、**p<0.01。
図12
Epac1は、心不全(HF、n=22)の患者では増加する。
遺伝子発現の変化を、定量RT-PCRにより分析した。ヒストグラムは、相対的にヒトEpac1のmRNAが豊富であることを示す。データは、ハウスキーピング遺伝子GCBに標準化したコントロール患者(n=11)に対する倍数として表す。結果は、平均値±SEMである。
Epac1は、心不全(HF、n=22)の患者では増加する。
遺伝子発現の変化を、定量RT-PCRにより分析した。ヒストグラムは、相対的にヒトEpac1のmRNAが豊富であることを示す。データは、ハウスキーピング遺伝子GCBに標準化したコントロール患者(n=11)に対する倍数として表す。結果は、平均値±SEMである。
図13
サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にEpacWT (野生型)又はEpacΔcAMP (Epac1の構成的に活性化された形)のいずれかと、内部リボソーム侵入部位(IRES)の制御下に緑色蛍光タンパク質(GFP)を有する2シストロン性アデノウイルス(Ad.)の模式図。
サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にEpacWT (野生型)又はEpacΔcAMP (Epac1の構成的に活性化された形)のいずれかと、内部リボソーム侵入部位(IRES)の制御下に緑色蛍光タンパク質(GFP)を有する2シストロン性アデノウイルス(Ad.)の模式図。
図14
α-MHC-HA-EpacΔAMPの模式図。
最初の322アミノ酸が欠如したEpac1のヒト形(EpacΔcAMP)をコードし、かつそのN-末端にHAエピトープ(HA)を含むcDNAを、α-ミオシン重鎖心臓特異的プロモーター(α-MHC)の上流に融合した。
α-MHC-HA-EpacΔAMPの模式図。
最初の322アミノ酸が欠如したEpac1のヒト形(EpacΔcAMP)をコードし、かつそのN-末端にHAエピトープ(HA)を含むcDNAを、α-ミオシン重鎖心臓特異的プロモーター(α-MHC)の上流に融合した。
実施例1:cAMP-結合タンパク質Epacは、心筋細胞肥大を誘発する
材料及び方法
材料
細胞培養に用いる全ての培地、血清及び抗生物質は、Invitrogen (Cergy Pontoise, France)から購入した。8-(4-クロロ-フェニルチオ)-2'-O-メチルアデノシン-3'-5'環状一リン酸(8-pCPT-2'-O-Me-cAMP)は、Biolog Life Science Institute (Bremen, Germany)から購入した。フォルスコリン、8-ブロモ-cAMP、フェニレフリン及びH89は、Calbiochem (France Biochem, Meudon, France)から得た。
材料及び方法
材料
細胞培養に用いる全ての培地、血清及び抗生物質は、Invitrogen (Cergy Pontoise, France)から購入した。8-(4-クロロ-フェニルチオ)-2'-O-メチルアデノシン-3'-5'環状一リン酸(8-pCPT-2'-O-Me-cAMP)は、Biolog Life Science Institute (Bremen, Germany)から購入した。フォルスコリン、8-ブロモ-cAMP、フェニレフリン及びH89は、Calbiochem (France Biochem, Meudon, France)から得た。
細胞培養
HL-1心房心筋細胞は、Dr. Claycomb (Louisiana State University, New Orleans, LA, U.S.A.)からの寄贈物であり、フィブロネクチン-ゼラチン-被覆プレート又はカバーガラスに載せ、10%胎児ウシ血清、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.1 mMノルエピネフリン及び2 mM L-グルタミンを補ったClaycomb培地で、記載されるようにして(Claycombら, 1998)培養した。
HL-1心房心筋細胞は、Dr. Claycomb (Louisiana State University, New Orleans, LA, U.S.A.)からの寄贈物であり、フィブロネクチン-ゼラチン-被覆プレート又はカバーガラスに載せ、10%胎児ウシ血清、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.1 mMノルエピネフリン及び2 mM L-グルタミンを補ったClaycomb培地で、記載されるようにして(Claycombら, 1998)培養した。
新生ラット心室筋細胞を、Wollertらにより記載されたプロトコル(Wollertら 1996)に従って単離し、以下のようにして改変した:1日齢のウィスターラットからの心室細胞を、コラゲナーゼA (Roche Diagnostics Corporation, Germany)及びパンクレアチンを用いる消化によりばらばらにした。細胞懸濁物を、不連続パーコール勾配による遠心分離により精製した(Sigma Aldrich, L'Isle d'Abeau Chesmes, France)。心筋細胞を、10 %ウシ血清(v/v)、5%新生仔ウシ血清(v/v)、グルタミン及び抗生物質を補ったダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/培地199 (4/1)中で、ゼラチン被覆培養ディッシュ内で平板培養した。1日後に、心筋細胞を、グルタミン及び抗生物質のみを補ったDMEM/培地199からなる維持培地に交換した。
成体ラット心室筋細胞を、雄のウィスターラット(160〜180 g)から単離した。ラットは、ペントサルの腹腔内注射(0.1 mg/g)により麻酔をかけ、心臓を迅速に切開した。ばらばらの心室筋細胞を、以前に記載されたようにして(Verdeら, 1999)、心臓の逆方向潅流により得た。新鮮な単離細胞を、1.2 mM Ca2+、2.5%胎児ウシ血清(FBS, Invitrogen, Cergy-Pontoise, France)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン及び2% HEPES (pH 7.6)を含む最少必須培地(MEM:M 4780; Sigma)に懸濁し、ラミニン被覆培養ディッシュ(10μg/ml ラミニン, 2 h)に、ディッシュ当たり105細胞で平板培養した。細胞を、37℃にて95% O2、5% CO2インキュベータ内で1時間放置して接着させ、その後、アデノウイルス感染を行った。
アデノウイルス感染
サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にEpacWT又はEpacΔcAMPのいずれかと、内部リボソーム侵入部位(IRES)の制御下に緑色蛍光タンパク質(GFP)とを有する2シストロン性アデノウイルス(Ad5)を構築し、Genethon Center of Evry (France)で増殖させた(図13)。VIVIT、カルシニューリン-媒介NFAT活性化の選択的ペプチド阻害剤及びRacをコードするアデノウイルスは、Dr. J. Molkentin及びDr. T. Finkelによりそれぞれ提供された。平板培養の1日後に、心筋細胞を、組換えアデノウイルスと2時間インキュベートした。ウイルス懸濁物を除去した後に、細胞を維持培地に2日間置き換え、次いで種々の薬剤で刺激した。ウイルスは、100の感染多重度(MOI)で用いた。
サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にEpacWT又はEpacΔcAMPのいずれかと、内部リボソーム侵入部位(IRES)の制御下に緑色蛍光タンパク質(GFP)とを有する2シストロン性アデノウイルス(Ad5)を構築し、Genethon Center of Evry (France)で増殖させた(図13)。VIVIT、カルシニューリン-媒介NFAT活性化の選択的ペプチド阻害剤及びRacをコードするアデノウイルスは、Dr. J. Molkentin及びDr. T. Finkelによりそれぞれ提供された。平板培養の1日後に、心筋細胞を、組換えアデノウイルスと2時間インキュベートした。ウイルス懸濁物を除去した後に、細胞を維持培地に2日間置き換え、次いで種々の薬剤で刺激した。ウイルスは、100の感染多重度(MOI)で用いた。
成体ラット心室筋細胞のアデノウイルス感染に関して、細胞を、37℃にて95% O2、5% CO2インキュベータ中に1時間放置して接着させ、その後、培地を、Epac1野生型(WT)をコードするアデノウイルス(Ad.EpacWT)、Epac1の構成的活性形(Ad.EpacΔcAMP)アデノウイルス、Rap1の構成的活性形(Ad.Rap1Q63E)又は緑色蛍光タンパク質をコードするアデノウイルス(Ad.GFP)を含む胎児ウシ血清(FBS)フリーMEM 200μlで置き換えた。Ad.EpacWT、Ad.Rap1Q63E又はAd.GFPを、細胞当たり100プラーク形成単位(pfu)の感染多重度(MOI)で用い、Ad.EpacΔcAMPは、通常、500 MOIで用いた(結果を参照)。2時間後に、アデノウイルスを含まない同じ容量のFBSフリー培地を加え、細胞をインキュベータ(37℃、5%CO2)中に2日間置いた。次の朝に、培地を、アデノウイルスフリーでFBSフリーのMEMに変えた。
プラスミド構築物及びトランスフェクション
プラスミド構築物は、以下から豊富に提供された:Dr. K. Knowltonより提供されたルシフェラーゼレポーター遺伝子に融合されたラットANFプロモーター(ANF-Luc)の-3003 bpフラグメント、Dr. M. D. Schneiderからの骨格筋α-アクチンのプロモーターに結合させたルシフェラーゼレポーター遺伝子(SkM-α-actin-Luc)及び血清応答要素調節性c-fos (c-fos-SRE-Luc)に結合させたルシフェラーゼレポーター遺伝子、Dr. J. Bosにより構築されたEpac1プラスミド。4つのNFATコンセンサス結合部位により駆動されるか(NFAT-Luc)、又は3つのMEF2コンセンサス結合部位により駆動される(MEF2-Luc)ルシフェラーゼレポータープラスミドは、それぞれ、Stratageneから得るか、Dr KC Wollertから提供された。一過性のトランスフェクション実験は、製造業者の指示に従って、1 mgの種々のプラスミド構築物の存在下に、最適培地(optimem medium)中でLipofectamine 2000 (Invitrogen Life Technologies, France)を用いて行った。トランスフェクションの2日後に、細胞を溶解し、自動化ルシフェリン溶液注入(automated luciferin solutions injection) (Lumat LB 9507, EG & G Berthold)を可能にするルミノメータとともにルシフェラーゼアッセイキット(promega corporation, Madison USA)を用いて37℃にてルシフェラーゼ活性をアッセイした。
プラスミド構築物は、以下から豊富に提供された:Dr. K. Knowltonより提供されたルシフェラーゼレポーター遺伝子に融合されたラットANFプロモーター(ANF-Luc)の-3003 bpフラグメント、Dr. M. D. Schneiderからの骨格筋α-アクチンのプロモーターに結合させたルシフェラーゼレポーター遺伝子(SkM-α-actin-Luc)及び血清応答要素調節性c-fos (c-fos-SRE-Luc)に結合させたルシフェラーゼレポーター遺伝子、Dr. J. Bosにより構築されたEpac1プラスミド。4つのNFATコンセンサス結合部位により駆動されるか(NFAT-Luc)、又は3つのMEF2コンセンサス結合部位により駆動される(MEF2-Luc)ルシフェラーゼレポータープラスミドは、それぞれ、Stratageneから得るか、Dr KC Wollertから提供された。一過性のトランスフェクション実験は、製造業者の指示に従って、1 mgの種々のプラスミド構築物の存在下に、最適培地(optimem medium)中でLipofectamine 2000 (Invitrogen Life Technologies, France)を用いて行った。トランスフェクションの2日後に、細胞を溶解し、自動化ルシフェリン溶液注入(automated luciferin solutions injection) (Lumat LB 9507, EG & G Berthold)を可能にするルミノメータとともにルシフェラーゼアッセイキット(promega corporation, Madison USA)を用いて37℃にてルシフェラーゼ活性をアッセイした。
[3H]-ロイシン取り込み
タンパク質合成の評価は、1 mCi/mlの[3H]-ロイシン(Amersham Chemical Corp.)を、各ウェルに、維持培地中のアデノウイルスの存在下及び/又は刺激条件下で24時間(新生心筋細胞)又は48時間(成体心筋細胞)加えることにより達成した。その後、[3H]-ロイシン含有培地を吸引した。筋細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、5%トリクロロ酢酸と4℃にて30分間インキュベートした。細胞残渣を70%エタノール、次いで100%エタノール中でリンスし、0.33 M NaOH中で1時間可溶化し、ラバーポリスマンでこそげた。放射活性を、液体シンチレーションカウンタ(LS 6000 SC Beckman)中で測定した。
タンパク質合成の評価は、1 mCi/mlの[3H]-ロイシン(Amersham Chemical Corp.)を、各ウェルに、維持培地中のアデノウイルスの存在下及び/又は刺激条件下で24時間(新生心筋細胞)又は48時間(成体心筋細胞)加えることにより達成した。その後、[3H]-ロイシン含有培地を吸引した。筋細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、5%トリクロロ酢酸と4℃にて30分間インキュベートした。細胞残渣を70%エタノール、次いで100%エタノール中でリンスし、0.33 M NaOH中で1時間可溶化し、ラバーポリスマンでこそげた。放射活性を、液体シンチレーションカウンタ(LS 6000 SC Beckman)中で測定した。
アクチン染色及び表面積
心筋細胞を、ゼラチン(0.2%)で予め被覆したLab-Tekプラスチックチャンバスライド(Nunc)に載せ、種々の作用剤の存在下又は非存在下でインキュベートした。48時間後に、細胞を、1% BSA含有PBSで3回リンスし、4%パラホルムアルデヒドに30分間浸漬することにより固定した。
アクチン細胞骨格組織化のために、心筋細胞を、ローダミンファロイジン(Sigma Aldrich, L'isle d'Abeau Chesmes, France)の1/800希釈溶液と45分間、穏やかに振とうしながらインキュベートした。
心筋細胞を、ゼラチン(0.2%)で予め被覆したLab-Tekプラスチックチャンバスライド(Nunc)に載せ、種々の作用剤の存在下又は非存在下でインキュベートした。48時間後に、細胞を、1% BSA含有PBSで3回リンスし、4%パラホルムアルデヒドに30分間浸漬することにより固定した。
アクチン細胞骨格組織化のために、心筋細胞を、ローダミンファロイジン(Sigma Aldrich, L'isle d'Abeau Chesmes, France)の1/800希釈溶液と45分間、穏やかに振とうしながらインキュベートした。
或いは、心臓アクチン組織化は、以下のプロトコルにより評価した。筋細胞を、0.2% Triton X-100と5分間、次いでPBS中の0.5 mol/L NH4Clと15分間インキュベートした。PBS中の5%ウシ血清アルブミン中で30分間プレインキュベーションした後に、筋細胞を、心臓サルコメアのα-アクチニンに指向されたマウスモノクローナル抗体(クローンEA-53, 1/300, Sigma, France)と一晩インキュベートした。用いた二次抗体は、Alexa Fluor (登録商標) 594結合ヤギ抗マウスIgG (1/150, Molecular Probes)であった。
PBSで洗浄した後に、細胞を、カバーガラス上でモウィオールアンチフェーデント封入剤(mowiol antifadent mounting medium) (モウィオール8%、グリセロール8%, DABCO (ジ-アザ-ビシクロ-オクタン); France Biochem, Meudon, France)中に封入した。F-アクチンを、共焦走査レーザ顕微鏡により分析した。一連の光切片を、Plan Apochromat 63X対物レンズ(NA 1.4, 油浸)を用いて得た。形態計測パラメータを、コンピュータ補助面積測定(Perkin Elmer)により決定した。ローダミンファロイジンを用いて30〜50の個別の細胞を、及び心臓サルコメアのα-アクチニン抗体を用いて500〜600の個別の細胞を、各条件について分析した。
Rac活性化アッセイ
Racプルダウン実験を、以前に記載されたようにして(Mailletら, 2003)、PAKのCdc42/Rac相互作用結合ドメイン(CRIB)含有GST融合タンパク質を用いて行った。刺激の後に、細胞を、RIPAバッファー(50 mM Tris-HCl, pH 7.5; 500 mM NaCl; 20 mM MgCl2; 0.5%デオキシコール酸; 0.1% SDS; 1% Triton X-100; 1 mM PMSF; 10 mg/mlロイペプチン及びアプロチニン)中で溶解し、2 mgのタンパク質を、グルタチオン-セファロースビーズと結合したGST-CRIB (Amersham Biosciences)と4℃にて1時間インキュベートした。次いでビーズを、Rac洗浄バッファー(50 mM Tris-HCl, pH 7.5; 150 mM NaCl, 20 mM MgCl2, 1% Triton X-100; 0.1 mM PMSF; 10 mg/ml ロイペプチン及びアプロチニン)中で3回洗浄した。Rac-GTPサンプル及び全溶解物を、SDS-PAGEゲルで分離し、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブレン(Amersham Pharmacia Biotech)上にトランスファーした。メンブレンを、抗Rac1モノクローナル抗体(Upstate Biotechnology)とハイブリダイズし、タンパク質を、高感度化学発光(ECL+; Amersham Pharmacia Biotech)により視覚化した。
Racプルダウン実験を、以前に記載されたようにして(Mailletら, 2003)、PAKのCdc42/Rac相互作用結合ドメイン(CRIB)含有GST融合タンパク質を用いて行った。刺激の後に、細胞を、RIPAバッファー(50 mM Tris-HCl, pH 7.5; 500 mM NaCl; 20 mM MgCl2; 0.5%デオキシコール酸; 0.1% SDS; 1% Triton X-100; 1 mM PMSF; 10 mg/mlロイペプチン及びアプロチニン)中で溶解し、2 mgのタンパク質を、グルタチオン-セファロースビーズと結合したGST-CRIB (Amersham Biosciences)と4℃にて1時間インキュベートした。次いでビーズを、Rac洗浄バッファー(50 mM Tris-HCl, pH 7.5; 150 mM NaCl, 20 mM MgCl2, 1% Triton X-100; 0.1 mM PMSF; 10 mg/ml ロイペプチン及びアプロチニン)中で3回洗浄した。Rac-GTPサンプル及び全溶解物を、SDS-PAGEゲルで分離し、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブレン(Amersham Pharmacia Biotech)上にトランスファーした。メンブレンを、抗Rac1モノクローナル抗体(Upstate Biotechnology)とハイブリダイズし、タンパク質を、高感度化学発光(ECL+; Amersham Pharmacia Biotech)により視覚化した。
細胞内Ca2+測定
単離後1〜2日の新生ラット心室筋細胞に、血清フリー維持培地中でCa2+指示薬Fluo 3 AM (Molecular Probes, 10μM, 30分, 37℃)を負荷し、NaCl 121 mM, KCl 5.4 mM, Hepes 10 mM, グルコース5 mM, ピルビン酸Na 5 mM, NaHCO3 4 mM, Na2HPO4 0.8 mM, MgCl2 1.8 mM, CaCl2 1.8 mMを含有する外部リンゲル液中でさらに30分間洗浄した。実験は、この溶液中、又は100μM EGTAを含み、Ca2+もMg2+も含まないリンゲル液中で行った。HCNチャネルをブロックするために、20 mM CsClを最初のCa2+溶液に加える一方、KClを割愛し、NaClを107 mMに減らして浸透度定数を維持した。細胞を、Nikon Eclipse倒立顕微鏡の戴物台に載せ、63X油浸蛍光対物レンズを用いて視覚化した。視野を、キセノンランプを用いて488 nmで照らした。535 nmでの画像を、Metafluorソフトウェアで駆動されるCCDカメラ(Sensicam QE, photoline)により取り込んだ。実験は、室温で行った。
単離後1〜2日の新生ラット心室筋細胞に、血清フリー維持培地中でCa2+指示薬Fluo 3 AM (Molecular Probes, 10μM, 30分, 37℃)を負荷し、NaCl 121 mM, KCl 5.4 mM, Hepes 10 mM, グルコース5 mM, ピルビン酸Na 5 mM, NaHCO3 4 mM, Na2HPO4 0.8 mM, MgCl2 1.8 mM, CaCl2 1.8 mMを含有する外部リンゲル液中でさらに30分間洗浄した。実験は、この溶液中、又は100μM EGTAを含み、Ca2+もMg2+も含まないリンゲル液中で行った。HCNチャネルをブロックするために、20 mM CsClを最初のCa2+溶液に加える一方、KClを割愛し、NaClを107 mMに減らして浸透度定数を維持した。細胞を、Nikon Eclipse倒立顕微鏡の戴物台に載せ、63X油浸蛍光対物レンズを用いて視覚化した。視野を、キセノンランプを用いて488 nmで照らした。535 nmでの画像を、Metafluorソフトウェアで駆動されるCCDカメラ(Sensicam QE, photoline)により取り込んだ。実験は、室温で行った。
逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
ヒトの心臓から得られた左心室サンプルを、コントロール(「正常」)ドナーと末期の心不全(failing hearts)の2つの群に分類した。トータルRNAを、ヒト組織又は新生ラット心筋細胞から、Trizol RNA精製システム(Life Technologies Inc.)を用いて調製した。RNAを、次いで、DNアーゼI (Life Technologies Inc.)で処理し、3 mgのトータルRNAを、オリゴ(dT)プライマーとハイブリダイズさせ、Superscript逆転写酵素II (Life Technologies Inc.)を用いて逆転写した。定量RT-PCRを、LightCyclerシステム(Roche)で、LightCycler-FastStart DNA Master SYBR Green Iキット(Roche)、及びヒトEpac1 (5'- GCTCTTTGAACCACACAGCA -3'; 5'-TGTCTTCTCGCAGGATGATG -3')、又はANF (5'-GGGCTCCTTCTCCATCACCAA-3'; 5'-CTTCATCGGTCTGCTCGCTCA-3')、又はMCIP1 (5'-AGCGAAAGTGAGACCAGGGC-3'; 5'-GGCAGGGGGAGAGATGAGAA-3') に対する特異的プライマー対を用いて行った。PCR反応は、以下のサイクル条件を用いて行った:95℃にて10秒の変性、60℃にて5秒のアニーリング、及び72℃にて11秒の伸長。各PCR運転の後に解離曲線を作製して、単独の特異的産物が増幅されていることを確実にした。グルコセレブロシダーゼ(GCB)を、プライマー対5'-GCACAACTTCAGCCTCCCAGA-3'及び5'-CTTCCCATTCACCGCTCCATT-3'を用いて、参照遺伝子として測定した。
ヒトの心臓から得られた左心室サンプルを、コントロール(「正常」)ドナーと末期の心不全(failing hearts)の2つの群に分類した。トータルRNAを、ヒト組織又は新生ラット心筋細胞から、Trizol RNA精製システム(Life Technologies Inc.)を用いて調製した。RNAを、次いで、DNアーゼI (Life Technologies Inc.)で処理し、3 mgのトータルRNAを、オリゴ(dT)プライマーとハイブリダイズさせ、Superscript逆転写酵素II (Life Technologies Inc.)を用いて逆転写した。定量RT-PCRを、LightCyclerシステム(Roche)で、LightCycler-FastStart DNA Master SYBR Green Iキット(Roche)、及びヒトEpac1 (5'- GCTCTTTGAACCACACAGCA -3'; 5'-TGTCTTCTCGCAGGATGATG -3')、又はANF (5'-GGGCTCCTTCTCCATCACCAA-3'; 5'-CTTCATCGGTCTGCTCGCTCA-3')、又はMCIP1 (5'-AGCGAAAGTGAGACCAGGGC-3'; 5'-GGCAGGGGGAGAGATGAGAA-3') に対する特異的プライマー対を用いて行った。PCR反応は、以下のサイクル条件を用いて行った:95℃にて10秒の変性、60℃にて5秒のアニーリング、及び72℃にて11秒の伸長。各PCR運転の後に解離曲線を作製して、単独の特異的産物が増幅されていることを確実にした。グルコセレブロシダーゼ(GCB)を、プライマー対5'-GCACAACTTCAGCCTCCCAGA-3'及び5'-CTTCCCATTCACCGCTCCATT-3'を用いて、参照遺伝子として測定した。
統計的分析
結果は、平均±SEMとして表す。群の間の差は、一元配置分散分析の後に対応のないスチューデントのt検定を行うことにより分析する。差は、* P<0.05、** P<0.01、*** P<0.001のときに有意とみなす。
結果は、平均±SEMとして表す。群の間の差は、一元配置分散分析の後に対応のないスチューデントのt検定を行うことにより分析する。差は、* P<0.05、** P<0.01、*** P<0.001のときに有意とみなす。
結果:
Epacは、心筋細胞において低分子量Gタンパク質Racを活性化する
本発明者らは、p21-活性化キナーゼ(PAK)のCdc42-Rac相互作用結合ドメイン(CRIB)を含むグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質を用いて、Rac GTP-ローディングを直接アッセイした。このGEFの選択的アクチベーターである8-pCPT-2'-O-Me-cAMP (8-CPT) (Enserinkら, 2002)を用いる内因性Epacの活性化は、ラットの心臓筋細胞においてRac活性化を増加させた(図1A)。同様に、Epac1WTをコードするアデノウイルス(Ad.EpacWT)を感染させた心筋細胞は、GFPを感染させたコントロール細胞に比べて、Rac GTP-ローディングを著しく増進した(図1A)。Rac活性化は、Ad.EpacWTを感染させた細胞を8-CPT (1μM)で10分間処理したときにさらに増加した(図1A)。図1Aに示すように、Epac1の構成的に活性化された形を有するアデノウイルス(Ad.Epac-ΔcAMP) (de Rooijら, 1998)は、Rac活性化を著しく誘発した。Ad.EpacWTがRac活性に対して、Ad.Epac-ΔcAMPについて観察されるものと同様の効果を有するという事実は、内因性cAMPでのその活性化により説明できるだろう。EpacによるRac活性の調節は、心室心筋細胞に限定されなかった。なぜなら、HL-1成体マウスの心房細胞を8-CPT (100μM)に10分間曝露することにより、Rac-GTPの量が強く増加されたからである(図1B)。この細胞系統において、8-CPT-誘発Rac活性化は、このcAMPアナログで5分間処理することにより検出された(図1C)。さらに、本発明者らは、アデニリルシクラーゼの効力のあるアクチベーターであるフォルスコリン(100μM)及びcAMPアナログである8-Br-cAMP (100μM)が、Rac活性化について8-CPTの効果を模倣したことを観察した(図1B)。まとめて、これらの結果は、組換え及び天然のEpacが、心房及び心室の心筋細胞において、Racの活性化状態への変換を誘発することを示す。
Epacは、心筋細胞において低分子量Gタンパク質Racを活性化する
本発明者らは、p21-活性化キナーゼ(PAK)のCdc42-Rac相互作用結合ドメイン(CRIB)を含むグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質を用いて、Rac GTP-ローディングを直接アッセイした。このGEFの選択的アクチベーターである8-pCPT-2'-O-Me-cAMP (8-CPT) (Enserinkら, 2002)を用いる内因性Epacの活性化は、ラットの心臓筋細胞においてRac活性化を増加させた(図1A)。同様に、Epac1WTをコードするアデノウイルス(Ad.EpacWT)を感染させた心筋細胞は、GFPを感染させたコントロール細胞に比べて、Rac GTP-ローディングを著しく増進した(図1A)。Rac活性化は、Ad.EpacWTを感染させた細胞を8-CPT (1μM)で10分間処理したときにさらに増加した(図1A)。図1Aに示すように、Epac1の構成的に活性化された形を有するアデノウイルス(Ad.Epac-ΔcAMP) (de Rooijら, 1998)は、Rac活性化を著しく誘発した。Ad.EpacWTがRac活性に対して、Ad.Epac-ΔcAMPについて観察されるものと同様の効果を有するという事実は、内因性cAMPでのその活性化により説明できるだろう。EpacによるRac活性の調節は、心室心筋細胞に限定されなかった。なぜなら、HL-1成体マウスの心房細胞を8-CPT (100μM)に10分間曝露することにより、Rac-GTPの量が強く増加されたからである(図1B)。この細胞系統において、8-CPT-誘発Rac活性化は、このcAMPアナログで5分間処理することにより検出された(図1C)。さらに、本発明者らは、アデニリルシクラーゼの効力のあるアクチベーターであるフォルスコリン(100μM)及びcAMPアナログである8-Br-cAMP (100μM)が、Rac活性化について8-CPTの効果を模倣したことを観察した(図1B)。まとめて、これらの結果は、組換え及び天然のEpacが、心房及び心室の心筋細胞において、Racの活性化状態への変換を誘発することを示す。
Epacは、肥大遺伝子マーカーの発現を増加させる
Racは、心臓筋細胞の肥大に関与することが見出されているので(Pracykら, 1998; Sussmanら, 2000)、本発明者らは、次に、このプロセスにおけるEpacの関与の可能性について試験した。胚遺伝子の再発現(Re-expression)及び最初期遺伝子の一過性の活性化は、頻繁に用いられる筋細胞肥大の指標である(Chienら, 1991)。Epacが遺伝子発現を刺激する能力は、心房ナトリウム排泄増加因子(ANF)、骨格筋(SkM)α-アクチン及びc-fos-応答性要素(c-fos-SRE)のプロモーターの制御下のルシフェラーゼ(Luc)構築物を用いて決定した。図2Aは、コントロール細胞に比べて、8-CPT (1μM)で刺激した新生心筋細胞におけるANF-Lucレポーター遺伝子の3倍の活性化を示す。Epac1WTの一過性のトランスフェクション及び8-CPT (1μM)は、ANF-Luc活性の基底のレベルを増加させた(図2A)。Racの構成的に活性化された形(RacG12V)は、ANF-Luc活性に対するEpacの効果を模倣した(図2A)。よって、ANF mRNAの内因性の発現は、コントロールAd.GFPを感染させた細胞に比べて、Ad.EpacWTを感染させ、かつ8-CPT (1μM)で刺激したか又はしなかった心室心筋細胞において著しく増加した(図2B)。同様の結果は、Ad.RacG12Vを発現するアデノウイルスで得られた(図2B)。さらに、SkM-α-actin-Luc又はc-fos-SRE-Lucで同時トランスフェクション実験を行った場合、EpacWT、Epac-ΔcAMP又はRacG12Vは、コントロール細胞に比べてLuc活性を著しく増加させたことが見出された(図2C及び2D)。
Racは、心臓筋細胞の肥大に関与することが見出されているので(Pracykら, 1998; Sussmanら, 2000)、本発明者らは、次に、このプロセスにおけるEpacの関与の可能性について試験した。胚遺伝子の再発現(Re-expression)及び最初期遺伝子の一過性の活性化は、頻繁に用いられる筋細胞肥大の指標である(Chienら, 1991)。Epacが遺伝子発現を刺激する能力は、心房ナトリウム排泄増加因子(ANF)、骨格筋(SkM)α-アクチン及びc-fos-応答性要素(c-fos-SRE)のプロモーターの制御下のルシフェラーゼ(Luc)構築物を用いて決定した。図2Aは、コントロール細胞に比べて、8-CPT (1μM)で刺激した新生心筋細胞におけるANF-Lucレポーター遺伝子の3倍の活性化を示す。Epac1WTの一過性のトランスフェクション及び8-CPT (1μM)は、ANF-Luc活性の基底のレベルを増加させた(図2A)。Racの構成的に活性化された形(RacG12V)は、ANF-Luc活性に対するEpacの効果を模倣した(図2A)。よって、ANF mRNAの内因性の発現は、コントロールAd.GFPを感染させた細胞に比べて、Ad.EpacWTを感染させ、かつ8-CPT (1μM)で刺激したか又はしなかった心室心筋細胞において著しく増加した(図2B)。同様の結果は、Ad.RacG12Vを発現するアデノウイルスで得られた(図2B)。さらに、SkM-α-actin-Luc又はc-fos-SRE-Lucで同時トランスフェクション実験を行った場合、EpacWT、Epac-ΔcAMP又はRacG12Vは、コントロール細胞に比べてLuc活性を著しく増加させたことが見出された(図2C及び2D)。
Epacは、心筋細胞のサイズ及びサルコメア組織化を増大させる
肥大プログラムのその他の特徴、例えば細胞サイズ及びサルコメア組織化に対するEpacの影響を決定するために、さらなる研究を行った。細胞骨格組織化は、ファロイジン染色により分析した。Ad.GFP及び8-CPT (1 mM)を用いる心筋細胞の処理、並びにAd.EpacWTでの心筋細胞の感染は、Ad.GFPのみを感染させた心筋細胞に比べて、F-アクチン網目(meshwork)の明らかな増加及び多くの線が入った見かけを誘発し、このことはこのF-アクチン細胞骨格のサルコメア構造への組織化を反映する(図3A)。サルコメア組織化に対するEpacの影響は、Ad.Epac-ΔcAMP (データ示さず)、及び心臓肥大症の公知の誘発物質であるPE (1 mM) (図3A)に匹敵した。形態的な肥大を誘発するEpacの能力をさらに特徴付けるために、本発明者らは細胞表面積を測定した。内因性Epacを8-CPT (1μM)で活性化することにより、コントロールAd.GFPを感染させた心臓筋細胞に比べて、細胞表面積が2倍増加した(図3B)。同一の結果が、心筋細胞にAd.EpacWT (図3B)、Ad.Epac-ΔcAMP (データ示さず)、又はAd.GFPを感染させ、PE (1μM) (図3B)で処理したときに得られた。細胞表面積に対するAd.EpacWTの影響は、8-CPT (1μM)の存在下でさらに増加せず、このことは、細胞内cAMPが、組換えEpacを活性化し、タンパク質合成に対するその最大限の効果を誘発するのに充分であったことを示唆する(図3B)。
肥大プログラムのその他の特徴、例えば細胞サイズ及びサルコメア組織化に対するEpacの影響を決定するために、さらなる研究を行った。細胞骨格組織化は、ファロイジン染色により分析した。Ad.GFP及び8-CPT (1 mM)を用いる心筋細胞の処理、並びにAd.EpacWTでの心筋細胞の感染は、Ad.GFPのみを感染させた心筋細胞に比べて、F-アクチン網目(meshwork)の明らかな増加及び多くの線が入った見かけを誘発し、このことはこのF-アクチン細胞骨格のサルコメア構造への組織化を反映する(図3A)。サルコメア組織化に対するEpacの影響は、Ad.Epac-ΔcAMP (データ示さず)、及び心臓肥大症の公知の誘発物質であるPE (1 mM) (図3A)に匹敵した。形態的な肥大を誘発するEpacの能力をさらに特徴付けるために、本発明者らは細胞表面積を測定した。内因性Epacを8-CPT (1μM)で活性化することにより、コントロールAd.GFPを感染させた心臓筋細胞に比べて、細胞表面積が2倍増加した(図3B)。同一の結果が、心筋細胞にAd.EpacWT (図3B)、Ad.Epac-ΔcAMP (データ示さず)、又はAd.GFPを感染させ、PE (1μM) (図3B)で処理したときに得られた。細胞表面積に対するAd.EpacWTの影響は、8-CPT (1μM)の存在下でさらに増加せず、このことは、細胞内cAMPが、組換えEpacを活性化し、タンパク質合成に対するその最大限の効果を誘発するのに充分であったことを示唆する(図3B)。
同様の結果が、成体ラット初代心筋細胞を用いて得られた。アクチン組織化は、心臓のサルコメアのα-アクチニンに指向された抗体を用いて評価し、細胞表面積を測定した。図3D及び3Eは、8-CPT (1μM)の存在下のAd.EpacWT、Ad.Epac-ΔcAMP又はRap1の構成的に活性化された形RapQ63Eを感染させた細胞が、GFPを感染させたコントロール細胞に比べて、細胞サイズが著しく増加したことを示す。
最後に、タンパク質合成に対するEpacの影響を、心臓筋細胞への[3H]-ロイシンの取り込みの測定により分析した。Ad.EpacWTが細胞表面積を増加させる能力と首尾一貫して、このcAMP-GEFの発現は、心筋細胞への[3H]-ロイシンの取り込みを増加させた(図3C)。同様に、Epac-選択性cAMPアナログである8-CPT (1μM)又は至適基準(gold standard)であるPE (1μM)での細胞の処理は、タンパク質合成を約2倍増加させた(図3C)。さらに、8-CPTの存在下でのAd.EpacWT、及びRapQ63Eは、Ad.GFPを感染させたコントロール細胞に比べて、成体心臓筋細胞においてタンパク質合成を著しく増加させた(図11)。まとめると、これらの結果は、Epac活性化が、初代心室心筋細胞において肥大表現型の全ての特徴を付与することを示す。
Epac活性化は、Ca2+過渡現象周波数を増加させる
細胞内Ca2+取り扱いにおける変化は、部分的には、Ca2+感受性シグナル変換経路の持続的活性化を通して、肥大又は心筋症の表現型を進歩的に悪化させる(Balke & Shorofsky, 1998)。心臓肥大症においてEpacが関与するのであれば、本発明者らは、その活性化が、新生筋細胞における細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)のに影響し得るかについて試験した(図4)。図4Aで見られるように、生理的外部[Ca2+]では、これらの細胞は、低い周波数(0.120±0.015 Hz, n=20)の自発的なCa2+過渡現象を示した。Epacアゴニストである8-CPT (10μM)を作用させると、スパイクの振幅を変化させることなくこれらのCa2+振動(0.51±0.04 Hz, n=7)の劇的な増加が引き起こされた。この効果は、100 nM 8-CPTでも観察された(0.40±0.05 Hz, n=13, データ示さず)。HCNチャネルは、もしそれが新生心室細胞における自動性の重要な寄与物質であれば、ペースメーカ電流の基礎となる(Erら, 2003)。もしそれがcAMPにより直接調節され、その活性化がcAMPアナログにより調節されるならば、8-CPTは自発的拡張期脱分極及び律動的活動を増加させると期待できるであろう。この仮定を試験するために、本発明者らは、外部媒体中の20 mM Cs+の存在下で8-CPT (10μM)がHCNチャネルをブロックする効果を分析した。図4Bに見られるように、外部Cs+は、自発的Ca2+過渡現象に対する8-CPTの影響を妨げることができず、むしろ、それらを増幅させた。実際に、これらの条件下では、スパイク周波数は、8-CPTにより、0.09±0.11 Hzから1.25±0.35 Hzに増加した(n=8)。
細胞内Ca2+取り扱いにおける変化は、部分的には、Ca2+感受性シグナル変換経路の持続的活性化を通して、肥大又は心筋症の表現型を進歩的に悪化させる(Balke & Shorofsky, 1998)。心臓肥大症においてEpacが関与するのであれば、本発明者らは、その活性化が、新生筋細胞における細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)のに影響し得るかについて試験した(図4)。図4Aで見られるように、生理的外部[Ca2+]では、これらの細胞は、低い周波数(0.120±0.015 Hz, n=20)の自発的なCa2+過渡現象を示した。Epacアゴニストである8-CPT (10μM)を作用させると、スパイクの振幅を変化させることなくこれらのCa2+振動(0.51±0.04 Hz, n=7)の劇的な増加が引き起こされた。この効果は、100 nM 8-CPTでも観察された(0.40±0.05 Hz, n=13, データ示さず)。HCNチャネルは、もしそれが新生心室細胞における自動性の重要な寄与物質であれば、ペースメーカ電流の基礎となる(Erら, 2003)。もしそれがcAMPにより直接調節され、その活性化がcAMPアナログにより調節されるならば、8-CPTは自発的拡張期脱分極及び律動的活動を増加させると期待できるであろう。この仮定を試験するために、本発明者らは、外部媒体中の20 mM Cs+の存在下で8-CPT (10μM)がHCNチャネルをブロックする効果を分析した。図4Bに見られるように、外部Cs+は、自発的Ca2+過渡現象に対する8-CPTの影響を妨げることができず、むしろ、それらを増幅させた。実際に、これらの条件下では、スパイク周波数は、8-CPTにより、0.09±0.11 Hzから1.25±0.35 Hzに増加した(n=8)。
本発明者らは、次に、8-CPTの影響の細胞外Ca2+への依存性を試験した。浴中にこのイオンが存在しないと、自発的Ca2+過渡現象は実質的になくなり、8-CPT (10μM)は効果がなかった(データ示さず)。しかし、Epacアゴニストの濃度を100μMに増加させることにより、Ca2+スパイクの発生が引き起こされた(基底で0.004±0.002 Hz、及び100μM 8-CPTの存在下に0.12±0.02 Hz, n=4, 図4C)。この効果は、PKAに依存しない。なぜなら、このキナーゼの阻害剤であるH89は、Ca2+過渡現象周波数の8-CPTにより誘発される増加をブロックできなかったからである(図4D)。H89 (1μM)の存在下に、8-CPT (100μM)は、基底のスパイク周波数を0.012±0.007 Hzから0.23±0.049 Hz (n=8)に増加させた。これらのデータは、Epac活性化が、部分的に、内部のCa2+起源を可動化させることにより、新生心臓筋細胞におけるCa2+過渡現象のバーストを生み出すことを示す。
上記のように、EpacはRac活性化を誘発した。よって、本発明者らは、Rac活性化のCa2+シグナル伝達に対する依存性を調べた。心臓筋細胞をCa2+イオノフォアであるイオノマイシン(1μM)で処理することにより、Rac活性化が時間依存的な様式で増加した(図4E)。Rac活性化に対するイオノマイシンの効果は、実験においてポジティブコントロールとして用いたPE (1μM)と同様に強かった(図4E)。これらの結果から、本発明者らは、細胞内[Ca2+]iの上昇は、Racを活性化するのに充分であると結論付けた。
Epacは、肥大カルシニューリン/NFAT及びMEF2シグナル伝達経路を活性化する
Epacが肥大カルシニューリンNFATシグナル伝達経路を活性化し得るかを調べるために、初代心筋細胞を、4つのNFATコンセンサス結合部位により駆動されるLucレポータープラスミド(NFAT-Luc)でトランスフェクションし、Ad.EpacWTを感染させた。図5Aに示すように、Ad.EpacWTは、Ad.GFPを感染させたコントロール細胞に比べて、NFAT転写活性を著しく増加させた。これに対して、Ad.EpacWTは、プロモーターのないpGL3基本ベクターに対して影響がなかった(データ示さず)。Epac-誘発NFAT転写活性は、カルシニューリンの薬理学的阻害剤であるシクロスポリン(CsA) (0.5μM)によりブロックされた(図5A)。この知見と首尾一貫して、VIVITとよばれるカルシニューリンの選択的ペプチド阻害剤を有するアデノウイルス(Ad.VIVIT) (Aramburuら, 1999)は、NFAT転写活性に対するAd.EpacWTの刺激効果をブロックした(図5B)。さらに、本発明者らは、Ad.EpacWTに感染し、8-CPT (1μM)で処理したか又はしなかった心臓筋細胞(図5C)、又はAd.Epac-DcAMP (データ示さず)は、心臓肥大症の間のカルシニューリンシグナル伝達のメディエイターである調節性カルシニューリン相互作用タンパク質1 (modulatory calcineurin-interacting protein 1) (MCIP1) (Yangら, 2000)をコードするmRNAが増加していたことを見出した。本発明者らは、ファロイジン染色により、サルコメア構造へのEpacにより誘発される細胞骨格再組織化に対するAd.VIVITの影響も分析した。Ad.VIVIT及びAd.EpacWTの同時感染は、Ad.EpacWTにより誘導されるサルコメア組織化の増強を低減させた(図6A)。予期されたように、Ad.EpacWTが細胞表面積を増加させる能力は、Ad.VIVITにより著しく低減された(図6B)。まとめて、これらのデータは、NFATが、Epac肥大シグナル伝達経路の下流の構成要素であることを示す。
Epacが肥大カルシニューリンNFATシグナル伝達経路を活性化し得るかを調べるために、初代心筋細胞を、4つのNFATコンセンサス結合部位により駆動されるLucレポータープラスミド(NFAT-Luc)でトランスフェクションし、Ad.EpacWTを感染させた。図5Aに示すように、Ad.EpacWTは、Ad.GFPを感染させたコントロール細胞に比べて、NFAT転写活性を著しく増加させた。これに対して、Ad.EpacWTは、プロモーターのないpGL3基本ベクターに対して影響がなかった(データ示さず)。Epac-誘発NFAT転写活性は、カルシニューリンの薬理学的阻害剤であるシクロスポリン(CsA) (0.5μM)によりブロックされた(図5A)。この知見と首尾一貫して、VIVITとよばれるカルシニューリンの選択的ペプチド阻害剤を有するアデノウイルス(Ad.VIVIT) (Aramburuら, 1999)は、NFAT転写活性に対するAd.EpacWTの刺激効果をブロックした(図5B)。さらに、本発明者らは、Ad.EpacWTに感染し、8-CPT (1μM)で処理したか又はしなかった心臓筋細胞(図5C)、又はAd.Epac-DcAMP (データ示さず)は、心臓肥大症の間のカルシニューリンシグナル伝達のメディエイターである調節性カルシニューリン相互作用タンパク質1 (modulatory calcineurin-interacting protein 1) (MCIP1) (Yangら, 2000)をコードするmRNAが増加していたことを見出した。本発明者らは、ファロイジン染色により、サルコメア構造へのEpacにより誘発される細胞骨格再組織化に対するAd.VIVITの影響も分析した。Ad.VIVIT及びAd.EpacWTの同時感染は、Ad.EpacWTにより誘導されるサルコメア組織化の増強を低減させた(図6A)。予期されたように、Ad.EpacWTが細胞表面積を増加させる能力は、Ad.VIVITにより著しく低減された(図6B)。まとめて、これらのデータは、NFATが、Epac肥大シグナル伝達経路の下流の構成要素であることを示す。
次に、本発明者らは、MEF2もEpac肥大シグナル伝達の標的であるかを探索した。Ad.EpacWT又はAd.Epac-DcAMPのいずれかでの心筋細胞の感染により、MEF2転写活性が強く増大された(図7A)。カルシニューリンは、心筋細胞においてMEF2活性を刺激することが示されているので(Zhangら, 2002)、本発明者らは、CsAが、EpacがMEF2転写活性を増進させる能力をブロックできるかについて試験した。図7Aに示すように、CsA (0.5μM)は、Epac-誘発MEF2依存性ルシフェラーゼ活性を阻害できず、このことは、カルシニューリンがこのシグナル伝達経路に関与しないことを示す。これに対して、CaMKIIの阻害剤であるKN-93 (1μM) (Tombesら, 1995)は、MEF2-Luc活性に対するEpacWT又はEpac-DcAMPの影響を完全にブロックした(図7B)。これらの結果は、Epac-誘発MEF2転写活性におけるCaMKIIについての要件を示唆する。よって、本発明者らは、Ad.Epac-DcAMPにより誘発される細胞表面積の増加は、KN-93 (1μM)により著しく減少することを見出した(図7C)。
Epac-誘発NFAT依存性心筋細胞肥大におけるRacの関与
Racは、Epacシグナル伝達経路の下流の構成要素であることが見出されているので(図1A、1B及び1C)、本発明者らは、次に、Epac-誘発NFAT及びMEF-2転写の活性におけるRacの関与について調べた。初代心筋細胞を、NFAT-Luc又はMEF2-Lucでトランスフェクションし、RacS17N、Racのドミナントネガティブ形の影響を、Lucレポーター構築物のEpac-媒介活性化について試験した。Ad.RacS17Nは、Epac-誘発NFAT転写活性を完全に阻害したが(図8A)、Ad.RacS17Nは、Ad.EpacWT (図8B)又はAd.Epac-DcAMP (データ示さず)のいずれかを感染させた細胞において、MEF2転写活性に対して影響がなかった。心筋細胞肥大を制御するEpacシグナル伝達経路におけるRacの関与は、Ad.RacS17NがEpac-誘発ANF発現を阻害した(図8C)という観察によってもさらに支持された。これらの知見と首尾一貫して、Ad.RacS17Nは、Epac-誘発細胞骨格再組織化を阻害し(図9A)、細胞表面積を増加させた(図9B)。まとめて、これらのデータは、Epacが、カルシニューリン/NFATシグナル伝達経路を、低分子量Gタンパク質であるRacを介して活性化することを明確に示す(図10)。
Racは、Epacシグナル伝達経路の下流の構成要素であることが見出されているので(図1A、1B及び1C)、本発明者らは、次に、Epac-誘発NFAT及びMEF-2転写の活性におけるRacの関与について調べた。初代心筋細胞を、NFAT-Luc又はMEF2-Lucでトランスフェクションし、RacS17N、Racのドミナントネガティブ形の影響を、Lucレポーター構築物のEpac-媒介活性化について試験した。Ad.RacS17Nは、Epac-誘発NFAT転写活性を完全に阻害したが(図8A)、Ad.RacS17Nは、Ad.EpacWT (図8B)又はAd.Epac-DcAMP (データ示さず)のいずれかを感染させた細胞において、MEF2転写活性に対して影響がなかった。心筋細胞肥大を制御するEpacシグナル伝達経路におけるRacの関与は、Ad.RacS17NがEpac-誘発ANF発現を阻害した(図8C)という観察によってもさらに支持された。これらの知見と首尾一貫して、Ad.RacS17Nは、Epac-誘発細胞骨格再組織化を阻害し(図9A)、細胞表面積を増加させた(図9B)。まとめて、これらのデータは、Epacが、カルシニューリン/NFATシグナル伝達経路を、低分子量Gタンパク質であるRacを介して活性化することを明確に示す(図10)。
Epac1は、心不全の患者で増加する
Epacの発現レベルが心不全において調節解除されているかを調べるために、本発明者らは、心臓におけるEpacの主要なアイソフォームであるEpac1の定量を、定量逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により行った。図12に示すように、Epac1 mRNA発現は、コントロールサンプルに比べて、心不全の患者において著しく増加した。
Epacの発現レベルが心不全において調節解除されているかを調べるために、本発明者らは、心臓におけるEpacの主要なアイソフォームであるEpac1の定量を、定量逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により行った。図12に示すように、Epac1 mRNA発現は、コントロールサンプルに比べて、心不全の患者において著しく増加した。
考察
この研究は、EpacのcAMP-依存性活性化が、成体及び新生のラットの心臓筋細胞において心筋細胞肥大を誘発することを初めて示す。このことは、Epac活性化が形態学的変化を導き、タンパク質合成を増加させ、かつ心臓の肥大マーカー、例えばANF及び骨格α-アクチンの遺伝子発現の変化を誘発するという観察に基づく。さらに、本発明者らは、Epacが、Ca2+ 感受性ホスファターゼ、カルシニューリン、並びにその一次下流エフェクターであるNFAT及びMEF2を伴う前肥大(prohypertrophic)シグナル伝達経路を活性化することを見出した。Epac-誘発NFAT活性化は、Rac活性に依存した。
この研究は、EpacのcAMP-依存性活性化が、成体及び新生のラットの心臓筋細胞において心筋細胞肥大を誘発することを初めて示す。このことは、Epac活性化が形態学的変化を導き、タンパク質合成を増加させ、かつ心臓の肥大マーカー、例えばANF及び骨格α-アクチンの遺伝子発現の変化を誘発するという観察に基づく。さらに、本発明者らは、Epacが、Ca2+ 感受性ホスファターゼ、カルシニューリン、並びにその一次下流エフェクターであるNFAT及びMEF2を伴う前肥大(prohypertrophic)シグナル伝達経路を活性化することを見出した。Epac-誘発NFAT活性化は、Rac活性に依存した。
彼らの研究において、本発明者らは、Epac-特異的cAMPアナログ8-CPTが、新生筋細胞においてCa2+過渡現象のバーストを生み出すことを示した。低濃度の8-CPT (100 nM)は、生理的外部[Ca2+]の存在下でこの効果を引き出したが、細胞外Ca2+の非存在下では、より高い濃度(100μM)が必要であった。言い換えると、8-CPTが細胞内Ca2+スパイクを引き起こす明らかな効力は、外部Ca2+の存在下で増強された。この観察に対しては、いくつかの説明をすることができる。平凡なものとしては、外部Ca2+が、細胞において8-CPT透過を直接促進するというものである。あるいは、これらの結果は、8-CPTが2つの別個の機構、高い感度でのCa2+流入の活性化と、より低い感度での細胞内Ca2+の可動化とにより作用することを示唆する。
構造データ(Enserinkら, 2002)と一致して、今回の結果は、Ca2+恒常性に対する8-CPT作用の機構としての心臓細胞におけるcAMPのその他の2つの主要な標的であるHCNチャネル及びPKAの参加を除外する。実際に、図4B及び4Dは、Cs+も、薬理学的PKA阻害剤であるH89も、8-CPT-誘発Ca2+過渡現象を妨げなかったことを示す。よって、Epac-誘発細胞内Ca2+調節は、L-タイプのCa2+チャネルの活性を増強しかつ心臓筋細胞においてPKA依存的にRyR2を感作するというcAMPの以前に報告された能力を補完するであろう。本発明者らによる発見は、膵臓β細胞及びINS-1インスリン分泌細胞における最近の研究と調和しており、このことは、cAMP-上昇ホルモングルカゴン様ペプチド1による細胞内Ca2+のPKA-依存性可動化、及びこの効果におけるEpacの密接な関係を証明する(Tsuboiら, 2003)。これらの細胞において、内因性Epacの活性化は、Ca2+-誘発Ca2+放出を引き起こし(Kangら, 2003)、そしてこれらの細胞系統において、EpacとRyRとの間に機能的結合が存在することが示唆されている(Holz, 2004)。よって、心臓筋細胞において、EpacがCa2+放出チャネルと相互作用するか、又は中間物を介してCa2+取り扱いタンパク質のキナーゼ媒介リン酸化を促進すると想像できる。興味深いことに、Epacのエフェクターである低分子量GTPアーゼRap1は、巨核球においてSERCA3bを介するcAMP-誘発[Ca2+]i増加において役割を演じると考えられている(den Dekkerら, 2002; Magnierら, 1994)。あるいは、イノシトール1,4,5-トリホスフェート受容体(IP3Rs)は、Epac-誘発細胞内Ca2+放出に関与しているはずである。なぜなら、このcAMP-GEFは、HEK-293細胞及び神経芽腫細胞系統において、低分子量GTPアーゼRap2Bを介してホスホリパーゼCを刺激することが以前に示されているからである(Keiperら, 2004)。
本発明者らは、Epac-特異的アクチベーターである8-CPTが、初代心筋細胞及びHL-1細胞においてRac活性化を誘発することを見出した。さらに、本発明者らは、EpacWT又はEpac-ΔcAMPの発現も、ラット心筋細胞においてRac活性化を増強したことを示した。このことは、非心臓細胞、例えば一次皮質ニューロン及びCHO細胞においてEpacが、cAMP-依存性であるがPKA-非依存性の様式でRac活性化を誘発するという、本発明者らによる最近の発見(Mailletら, 2003)と一致する。本発明者らは、Epac刺激に続いてCa2+によりRacが活性化されることを見出したので、Racが、Ca2+に感受性であるGEFにより調節されるであろうと考えることは妥当である。このようなGEFは、Rasファミリーの低分子量GTPアーゼについて報告されている(Keiperら, 2004; Quilliamら, 2002)。Ca2+依存性Rac活性化に関与し得る別の分子標的は、Rho GDP-解離阻害剤 (RhoGDI)である。実際に、RhoGDIは、Racを細胞質中に維持し、RacがそのGEFに遭遇することを可能にするために解離しなければならない(Robbeら, 2003; Schmidt & Hall, 2002)。最近、Priceら(2003)は、PC3細胞において、Ca2+がRac-Rho GDI複合体の破壊を誘発して、Racの移動及び活性化を導くことを示している。つまり、このような機構が心筋細胞内で発生し、Epac-誘発Ca2+依存性Rac活性化に寄与するであろうことが推測できる。
本発明者らは、Epacが心臓筋細胞においてNFAT及びMEF2の活性化に関係することを初めて報告する。EpacがNFAT活性を刺激する能力は、CsA及びVIVITでの処理により著しく阻害され、このことは、カルシニューリン活性がEpacにより調節されることを示唆する。よって、本発明者らは、Epacが、その遺伝子プロモーター中に一連のNFAT結合部位を有するカルシニューリンシグナル伝達の公知のモジュレーターであるMCIP1の発現をアップレギュレートすることを見出した(Vegaら, 2002; Yangら, 2000)。さらに、Ad.VIVITは、Epac-誘発心筋細胞肥大を部分的に逆にし、このことは、Epacが肥大カルシニューリン/NFATシグナル伝達経路の新規な調節物質であることを示す。興味深いことに、Racのドミナントネガティブ形であるRacS17Nの発現は、Epac-誘発NFAT活性化を阻害したが、MEF2転写活性については阻害できなかった。今回の結果によると、RacS17Nは、免疫細胞においてNFAT活性化をブロックすることが示されている(Jacintoら, 1998)。
多様なCa2+依存性シグナル変換経路が、心臓肥大症に関係しているが、これらの経路が依存性又は互いに依存性であるのかは明確でない(Molkentin, 2004; Zhang & Brown, 2004)。Passierら(2000)は、カルシニューリン/NFAT経路、及びCaMKII/MEF2経路が並行して作用し、異なる転写因子を選択的に標的して、心臓肥大症を誘発することを報告している。しかし、彼らの研究において、本発明者らは、カルシニューリン/NFAT及びCaMKII/MEF2の経路の両方が、これらの2つのシグナル伝達カスケードの1つを非依存的に阻害することにより、Epac-誘発肥大増殖を充分にブロックできるので(図7D、8C、9A)、新生心筋細胞における肥大プログラムを引き起こすために必要であったことを見出した。このことは、CaMKII及びカルシニューリン経路が、Epacにより開始される肥大シグナル伝達経路において共通の下流の標的遺伝子に集まっているという可能性を高める。この仮定と一致して、NFATは、緩徐繊維プログラムのタンパク質をコードする遺伝子の転写を制御するプロモーター/エンハンサー領域においてMEF2とともにDNAに結合することが示されている(Chinら, 1998)。さらに、2つの肥大シグナル伝達分子であるカルシニューリン/NFAT、及びMEK1-ERK1/2は、2つの別個の機構により心臓の増殖を調和して調節する(Sannaら, 2005)。
つまり、本発明者らは、延長されたEpacの活性化が[Ca2+]iの持続的な増加を導き、これが次いでCaMKII及びRacを活性化する、新規なcAMPシグナル伝達経路を提案する。後者は、カルシニューリン/NFAT活性化を増加させる。このシグナル伝達カスケードは、肥大遺伝子発現を活性化し、心臓筋細胞肥大の形態学的外観を誘発する(図10)。これらの結果は、よって、それによりcAMPが心筋細胞におけるその生物学的効果を媒介するシグナル伝達経路への新しい見通しを切り開き、心臓筋細胞においてEpac活性の調節に関与する神経ホルモン因子の同定の問題を提起する。最後に、心不全の患者におけるEpac1遺伝子発現のアップレギュレーションを見出したことは、このグアニンヌクレオチド交換因子がこの病変の進行に貢献することを示唆し、Epacの阻害剤がこのような心臓疾患の治療に有用であるという仮説を強化する。
実施例2:Epacの発現を特異的に阻害するsiRNAの構築
Epacの発現を特異的に阻害するsiRNAを提供するために、以下のガイドラインをElbashirら, 2002に従って用いる:1) 開始コドンの下流好ましくは50〜100ヌクレオチドのcDNA配列のオープンリーディングフレーム(ORF)からの標的領域の選択。2) AAジヌクレオチドで始まる標的mRNAでの21ヌクレオチド配列の決定(Elbashirら, 2001)。よって、配列は5'-AA(N19)UU (ここで、Nはいずれかのヌクレオチドである)である。配列は、約50%のG/Cを含まなければならない。3) 選択されたsiRNA配列を、ESTライブラリ又は各生物のmRNA配列に対してBlastサーチ(www.ncbi.nih.go/BLAST)して、単一の遺伝子のみが標的されることを確実にする。その他のコーディング配列と16〜17より多い連続塩基対の相同性を有するいずれの標的配列は、除外しなければならない。4) いくつかのsiRNA配列の合成は、ノックダウン実験の特異性を制御するために推奨できる。
Epacの発現を特異的に阻害するsiRNAを提供するために、以下のガイドラインをElbashirら, 2002に従って用いる:1) 開始コドンの下流好ましくは50〜100ヌクレオチドのcDNA配列のオープンリーディングフレーム(ORF)からの標的領域の選択。2) AAジヌクレオチドで始まる標的mRNAでの21ヌクレオチド配列の決定(Elbashirら, 2001)。よって、配列は5'-AA(N19)UU (ここで、Nはいずれかのヌクレオチドである)である。配列は、約50%のG/Cを含まなければならない。3) 選択されたsiRNA配列を、ESTライブラリ又は各生物のmRNA配列に対してBlastサーチ(www.ncbi.nih.go/BLAST)して、単一の遺伝子のみが標的されることを確実にする。その他のコーディング配列と16〜17より多い連続塩基対の相同性を有するいずれの標的配列は、除外しなければならない。4) いくつかのsiRNA配列の合成は、ノックダウン実験の特異性を制御するために推奨できる。
次いで、A) Qiagen社のソフトウェア又はRNAの会社Ambionのウェブサイト上にあるsiRNAのカスタム化学合成サービスのソフトウェア「online target finder」を用いて、上記のガイドラインに基づいて可能な配列を設計する。
B) 選択されたsiRNA配列を、完全に脱保護され、PAGE精製により脱塩された形で購入し、これはRNアーゼフリーの水及び5×アニーリングバッファーとともに乾燥形態で配達される。
C) 次の工程は、siRNAをアニーリングして、RNAiトランスフェクション実験にすぐに用いるための二重鎖siRNA (siRNA duplex)を産生することである。アニーリングは、次のようにして行うことができる。90℃にて1分間の、アニーリングバッファー中で等モル濃度のオリゴヌクレオチド(20μM)のインキュベーション、遠心分離(15秒)及び37℃にて1時間のインキュベーション。二重鎖siRNA (20μM)は、RNAi実験にすぐに用いることができ、-20℃で保存及び複数回の凍結−乾燥を行うことができる。
B) 選択されたsiRNA配列を、完全に脱保護され、PAGE精製により脱塩された形で購入し、これはRNアーゼフリーの水及び5×アニーリングバッファーとともに乾燥形態で配達される。
C) 次の工程は、siRNAをアニーリングして、RNAiトランスフェクション実験にすぐに用いるための二重鎖siRNA (siRNA duplex)を産生することである。アニーリングは、次のようにして行うことができる。90℃にて1分間の、アニーリングバッファー中で等モル濃度のオリゴヌクレオチド(20μM)のインキュベーション、遠心分離(15秒)及び37℃にて1時間のインキュベーション。二重鎖siRNA (20μM)は、RNAi実験にすぐに用いることができ、-20℃で保存及び複数回の凍結−乾燥を行うことができる。
D) 二重鎖siRNAのトランスフェクションを、初代新生ラット心筋細胞においてリポフェクタミン2000 (Clontech)を、製造業者の指示に従って最適媒体とともに用いて行い、サイレンシングのアッセイを、トランスフェクションの1及び2日後に行う。ラットの新生心筋細胞は、前日に12ウェルプレートに40〜50%の集密度で播種する。トランスフェクション効率は、典型的には約90〜95%であるが、細胞タイプに依存する。
E) Epacのいくつかのアイソフォームのサイレンシング効果(Epac1配列番号1の配列のアクセッション番号NM_006105、Epac2配列番号3の配列のNM_007023、及びRepac配列番号5の配列のBC_039203)を、心臓肥大症の種々のパラメータについて(細胞サイズ、肥大遺伝子マーカー)、心筋細胞の種々の肥大刺激物質での処理の間に(すなわち:イソプロテレノール、アンジオテンシンII、フェニレフリン、エンドセリン-1)、ヒト心臓生理病理学における将来の使用を目的として、調べる。
実施例3:Epacにより誘発される心臓肥大症の非ヒトモデル
マウス心筋細胞においてEpac1のドミナントポジティブ形(Epac-ΔcAMP)の特異的発現により、心臓肥大症をマウスにおいて誘発した。最初の322アミノ酸が欠如したEpac1のヒト形(EpacΔcAMP)をコードし、そのN-末端にHAエピトープを含むcDNA (de Rooijら, Nature 396: 474〜477)を、α-ミオシン重鎖心臓特異的プロモーターに融合した(Gulickら, 1991) (図14)。HA-Epac-ΔcAMP上流にクローニングしたα-ミオシン重鎖プロモーターを含むプラスミド構築物(図14)を、線状にし、Farhadiら 2003及び国際出願WO2005/005619により記載された技術に従って、BPES細胞hprtネガティブのヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Hypoxanthine PhosphoRibosylTransferase) (hprt)遺伝子座に挿入した。陽性のクローンを、マウスの未分化胚芽細胞(C57Bl/6 遺伝的バックグラウンド)にマイクロインジェクションし、これを雌の養子(foster)に移植する。子孫を、尾の生検から抽出したDNAについてのサザンブロッティング分析により、トランスジーンの存在についてスクリーニングする。トランスジェニックヘテロ接合性動物の第2世代を犠牲にして、トランスジーンのRNA及びタンパク質発現、並びに心臓におけるその機能的活性について調べる。
マウス心筋細胞においてEpac1のドミナントポジティブ形(Epac-ΔcAMP)の特異的発現により、心臓肥大症をマウスにおいて誘発した。最初の322アミノ酸が欠如したEpac1のヒト形(EpacΔcAMP)をコードし、そのN-末端にHAエピトープを含むcDNA (de Rooijら, Nature 396: 474〜477)を、α-ミオシン重鎖心臓特異的プロモーターに融合した(Gulickら, 1991) (図14)。HA-Epac-ΔcAMP上流にクローニングしたα-ミオシン重鎖プロモーターを含むプラスミド構築物(図14)を、線状にし、Farhadiら 2003及び国際出願WO2005/005619により記載された技術に従って、BPES細胞hprtネガティブのヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Hypoxanthine PhosphoRibosylTransferase) (hprt)遺伝子座に挿入した。陽性のクローンを、マウスの未分化胚芽細胞(C57Bl/6 遺伝的バックグラウンド)にマイクロインジェクションし、これを雌の養子(foster)に移植する。子孫を、尾の生検から抽出したDNAについてのサザンブロッティング分析により、トランスジーンの存在についてスクリーニングする。トランスジェニックヘテロ接合性動物の第2世代を犠牲にして、トランスジーンのRNA及びタンパク質発現、並びに心臓におけるその機能的活性について調べる。
Claims (23)
- 少なくとも1つのEpac (cAMPにより直接活性化される交換タンパク質)アンタゴニストの、心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する医薬品の製造のための使用。
- 前記アンタゴニストが、Epac活性化阻害剤、Epac活性阻害剤、Epac細胞内局在化破壊剤及びEpac発現阻害剤を含む群から選択される請求項1に記載の使用。
- 前記アンタゴニストが、
- Epac cAMP結合部位に指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- cAMPアナログ、例えばcAMP誘導体又は8-(4-クロロフェニルチオ)-2'-O-メチルアデノシン-3'-5-環状一リン酸 (8-CPT-2'-O-Me-cAMP)誘導体、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性化阻害剤である請求項1又は2に記載の使用。 - 前記アンタゴニストが、
- Epacのグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)ドメイン又はRas交換モチーフ(REM)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性阻害剤、特に、EpacのGEFドメイン阻害剤、又はEpacのREMドメイン阻害剤である請求項1又は2に記載の使用。 - 前記アンタゴニストが、
- Epac細胞局在化ドメイン、例えばDishevelled Egl-10 Pleckstrin (DEP)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac細胞内局在化破壊剤である請求項1又は2に記載の使用。 - 前記アンタゴニストが、
- Epac mRNAに指向されたアンチセンス核酸、
- Epac二本鎖DNAに指向された一本鎖DNA、
- Epac核酸配列を含む二本鎖RNA、siRNA又はshRNA、
- Epac mRNAに指向されたリボザイム
を含む群から選択されるEpac発現阻害剤である請求項1又は2に記載の使用。 - 少なくとも1つのEpacアンタゴニストの治療上有効量を患者に投与することを含む、患者の心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変を治療する方法。
- 前記アンタゴニストが、Epac活性化阻害剤、Epac活性阻害剤、Epac細胞内局在化破壊剤及びEpac発現阻害剤を含む群から選択される請求項7に記載の方法。
- 前記アンタゴニストが、
- Epac cAMP結合部位に指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- cAMPアナログ、例えばcAMP誘導体又は8-(4-クロロフェニルチオ)-2'-O-メチルアデノシン-3'-5-環状一リン酸(8-CPT-2'-O-Me-cAMP)誘導体、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性化阻害剤である請求項7に記載の方法。 - 前記アンタゴニストが、
- Epacのグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)ドメイン又はRas交換モチーフ(REM)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac活性阻害剤、特に、EpacのGEFドメイン阻害剤、又はEpacのREMドメイン阻害剤である請求項7に記載の方法。 - 前記アンタゴニストが、
- Epac細胞局在化ドメイン、例えばDishevelled Egl-10 Pleckstrin (DEP)ドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- ブレフェルジンA又はその誘導体
を含む群から選択されるEpac細胞内局在化破壊剤である請求項7に記載の方法。 - 前記アンタゴニストが、
- Epac mRNAに指向されたアンチセンス核酸、
- Epac核酸配列を含む二本鎖RNA、siRNA又はshRNA、
- Epac mRNAに指向されたリボザイム
を含む群から選択されるEpac発現阻害剤である請求項7に記載の方法。 - 作用物質として、
- Epac mRNAに指向されたアンチセンス核酸、
- Epac核酸配列を含む二本鎖RNA、siRNA又はshRNA、
- Epac mRNAに指向されたリボザイム
を含む群から選択されるEpac発現阻害剤を、医薬的に許容される担体とともに含む医薬組成物。 - 作用物質として、
- Epac cAMP結合部位に指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- EpacのGEFドメイン又はREMドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー、
- Epac細胞局在化ドメイン、例えばDEPドメインに指向された抗体、そのフラグメント又はアプタマー
を含む群から選択されるEpac活性化阻害剤、Epac活性阻害剤又はEpac細胞内局在化破壊剤を、医薬的に許容される担体とともに含む医薬組成物。 - 心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する化合物をスクリーニングするためのEpacの使用。
- - Epacを、スクリーニングされる化合物と、cAMP又はEpac活性化cAMPアナログの存在下に接触させ、
- Epacの活性化をアッセイし、
- Epacの活性化を阻害する化合物、特に化合物の非存在下でのEpacの活性化に比べて少なくとも30%のEpacの活性化を阻害する化合物を選択する
工程を含む、心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する化合物をスクリーニングする方法。 - Epacを、Epacの活性化の際に活性化されやすいエフェクタータンパク質、例えばRap1、Rap2、Rac又はRasとも接触させ、Epacの活性化が、該エフェクタータンパク質の活性を測定することにより評価される請求項16に記載の方法。
- - 正常心筋細胞に比べてEpac活性が増加した心筋細胞を、スクリーニングされる化合物と接触させ、
- 前記Epac活性が増加した心筋細胞の肥大特性を評価し、
- 化合物で処理していないEpac活性が増加した心筋細胞の肥大特性に比べて、Epac活性が増加した心筋細胞の肥大特性を阻害する化合物を選択する
工程を含む、心臓肥大症、心不整脈、弁膜症、拡張機能障害、慢性心不全、虚血性心不全及び心筋炎を含む群から選択される病変の予防又は治療を意図する化合物をスクリーニングする方法。 - 前記スクリーニングされる化合物が、
- cAMPアナログ、例えばcAMP誘導体又は8-(4-クロロフェニルチオ)-2'-O-メチルアデノシン-3'-5-環状一リン酸 (8-CPT-2'-O-Me-cAMP)誘導体、或いは
- ブレフェルジンA誘導体
である請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。 - Epac活性が、対応する野生型非ヒト哺乳動物に対して増加している、心臓肥大症モデルとして用いるための非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
- Epacが対応する野生型非ヒト哺乳動物に対して過剰発現している、特にEpacコーディング配列を、Epac天然プロモーターよりも強い転写活性を有する心臓特異的プロモーター、例えばα-ミオシン重鎖のプロモーターの存在下に含む、請求項20に記載の心臓肥大症モデルとして用いるための非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
- 活性化cAMP結合ドメインが欠如したEpacの構成的に活性化された形をコードする核酸配列を含む、請求項20又は21に記載の心臓肥大症モデルとして用いるための非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
- マウスである、請求項20〜22のいずれか1項に記載の心臓肥大症モデルとして用いるための非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
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