JP2008524986A - タキサンに基づく薬物療法に対する悪性腫瘍の応答予測に有用な遺伝子変化 - Google Patents

タキサンに基づく薬物療法に対する悪性腫瘍の応答予測に有用な遺伝子変化 Download PDF

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Abstract

本発明は、悪性腫瘍、例えば、乳癌、卵巣癌、胃癌、大腸癌、食道癌、間葉癌、膀胱癌または非小細胞肺癌の、診断、予後、予測、予防および治療における補助のための新規組成物、方法および使用を提供する。乳癌患者の乳房組織において染色体性に増幅される遺伝子が開示される。さらに、タキサン耐性、タキサンによる利益または有害なタキサン反応に関連し、治療決定を行うための補助として利用できる染色体性に増幅される遺伝子および増幅されない遺伝子が開示される。

Description

発明の技術分野
本発明は、腫瘍性疾患、例えば、乳癌、卵巣癌、胃癌、大腸癌、食道癌、間葉癌、膀胱癌または非小細胞肺癌の診断、予後、予測、予防および治療のための方法および組成物に関する。本発明はまた、バイオマーカーおよび癌の予測および予後のためのバイオマーカーの使用ならびに癌治療の効力をモニターするためのバイオマーカーの使用にも関する。特に興味深いのは、例えばタキソール(商標)またはタキソテール(商標)などのタキサンまたはその他のタキサンに基づく誘導体を含む様々な治療計画に対する腫瘍性病変の応答予測である。腫瘍性疾患はしばしば、遺伝子材料の増幅または欠損、あるいは再配列した遺伝子の過剰または過小発現を導く染色体再配列によって引き起こされる。本発明は、腫瘍組織において増幅または過剰発現され、診断マーカーおよび治療標的として有用な遺伝子を開示する。本発明はさらに、治療予後に関連する増幅されるおよび増幅されない遺伝子または遺伝子のセットを開示する。さらにタキソール耐性、タキソールによる利益または有害なタキソール反応に関連し、治療決定の指針の補助として利用可能な染色体性に増幅される遺伝子および増幅されない遺伝子も開示する。腫瘍性疾患を診断、予後、予測、予防および治療するための方法も開示される。
発明の背景
多くの疾患状態は、特定の遺伝子の転写レベルの変化を介する (例えば、開始の制御、RNA 前駆体の供給、RNA プロセッシング等を介する) か、またはゲノムDNAのコピー数の変化を介する、様々な遺伝子の発現レベルの差異によって特徴づけられる。例えば、遺伝子材料の喪失および獲得は、悪性化および進行において重要な役割を果たす。かかる獲得および喪失は、少なくとも2種類の遺伝子、即ち、癌遺伝子および癌抑制遺伝子によって制御されていると考えられている。癌遺伝子は腫瘍形成の正の制御因子であり、癌抑制遺伝子は腫瘍形成の負の制御因子である。
それゆえ、制御を失った増殖の活性化の一つの機構は、(例えば、細胞または環境の変化に応答しての)癌遺伝子タンパク質をコードする遺伝子の数の増加またはかかる癌遺伝子の発現レベルの上昇であり、もう一つの機構は遺伝子材料の喪失または発癌抑制物質をコードする遺伝子の発現レベルの低下である。このモデルは神経膠腫進行に関連する遺伝子材料の喪失および獲得によって支持されている(Mikkelson、et al.、J. Cellular Biochem. 46:3-8、1991)。したがって、特定の遺伝子(例えば、癌遺伝子または発癌抑制物質)の発現 (転写) レベルの変化またはコピー数の変化は、様々な癌の存在および進行についての標識としての役割を果たす。
本発明は、癌組織におけるヒトゲノムの増幅に関する。本発明はまた、様々な遺伝子座の増幅を分析するための方法および材料、および、診断、予後、予測、予防および癌治療のための治療決定の補助における増幅の使用にも関する。
染色体異常(増幅、欠失、逆位、挿入、転座および/またはウイルス組込み)は、それぞれの領域の調節解除の原因であるため、癌および腫瘍性病変の発達のために重要である。成長特性、分化、治療介入に対する侵襲性または耐性に関して重要な遺伝子が位置しているゲノム領域の増幅が以前に記載されている。染色体異常を有する領域の一つはHER-2/neu遺伝子を担持する領域であり、この領域は乳癌患者において増幅されている。乳癌患者のおよそ25%において、HER-2/neu遺伝子が遺伝子増幅のために過剰発現している。HER-2/neu 過剰発現は予後不良 (再発、全生存、および薬物療法に対する感受性)と関連する。その他の治療介入がタキサンに基づく治療、即ち以下の分析について記載されている:ADME遺伝子、例えば、多剤耐性タンパク質 (MDR-1等)および シトクローム p450 タンパク質 (Cyp2C8 等)、STK-6 増幅、TRAG3またはタキサン標的ベータチューブリン (TUBB)。該文献に引用されている文献には、突然変異またはSNP、増幅または発現レベルについて記載されている。これに反して、本発明者らは、遺伝子のセットが腫瘍において増幅された場合の、タキソール耐性または有害なタキソール反応だけでなく、驚くべきことに、タキソールによる利益に対する関係を見いだした。これにより、より価値の高い診断ツールが導かれる。
これに関して、臨床試験によると医薬による治療に対する患者の応答はしばしば不均一であることが示されている。したがって選択的治療を予測するための改善された診断が要求されている。
本発明は癌患者におけるいくつかの染色体増幅の発見に基づく。具体的には、本発明者らは乳癌患者の約10、20、または30 %がその腫瘍において遺伝子増幅を有することを見いだした。本発明者らは特定の個々の増幅が臨床試験における治療予後に関連している可能性があることを見いだした。特に、本発明者らはタキソール治療なしの同じ計画に対して特定の化学療法計画において、遺伝子増幅とタキソール治療とを関連づけた。これらの知見が本出願の基礎になる。
発明の概要
本発明は、癌組織における染色体変化が、変化した染色体領域によってコードされる遺伝子のコピー数変化または遺伝子の発現レベルの変化を導きうるという発見に基づく。乳癌組織からの腫瘍性病変において共増幅される例示的な60のヒト遺伝子が同定された(表1、2および4)。これら60の遺伝子は、正常、即ち非乳癌状態における増幅と比較して乳癌状態において示差的に増幅される。本発明はこれら遺伝子の誘導体、断片、アナログおよびホモログ、そしてその使用またはそれを用いる方法に関する。
本発明はさらに、悪性腫瘍、特に乳癌のための新規な予防用、予測用、診断用、予後判断用および治療用組成物ならびに使用にも関する。特に細胞外ドメインを含む膜結合マーカー遺伝子産物が、治療方法ならびに診断および臨床モニタリング方法のための特に有用な標的であり得る。
本発明はさらに、DNAおよびmRNAなどの核酸の量を検出することによる悪性腫瘍における調節解除を検出する方法にも関する。
本発明はさらに、染色体変化の検出方法にも関し、該方法は、変化した染色体領域に位置する遺伝子によりコードされる、個々のmRNAの相対的存在量を検出することを特徴とする。
本発明はさらに、定量的 PCRまたはDNA-アレイおよびDNA 配列決定によるDNA コピー数の測定による、指定された染色体変化の側方切断点の検出方法にも関する。
指定されたゲノム切断点に隣接するかまたはその中に存在するDNA配列の検出による悪性腫瘍の予測、診断または予後のための方法も含まれる。
本発明はさらに染色体変化の検出方法に関し、該方法は、1または複数の変化した染色体領域内に位置する1以上のゲノム核酸配列のコピー数を定量的 PCR 技術(例えば、TaqMan(商標)、Lightcycler(商標) およびiCycler (商標))により検出することを特徴とする。
本発明はさらに、1または複数のマーカーの検出による悪性腫瘍の予測、診断または予後方法に関し、ここで、マーカーは、悪性腫瘍、特に乳癌において変化している1つの染色体領域に位置する遺伝子およびその断片またはゲノム核酸配列である。
本発明はまた、1または複数のマーカーの検出による悪性腫瘍の予測、診断または予後方法も開示し、ここでマーカーは悪性腫瘍において変化している1以上の染色体領域に位置する。
さらに、少なくとも1つのマーカーの検出による悪性腫瘍の予測、診断または予後方法も開示され、ここでマーカーは、増幅に起因して悪性腫瘍において変化する1つの染色体領域に位置するVNTR、SNP、RFLPまたはSTSであり、該マーカーは同じ固体からの(a) 癌組織または生物学的サンプル、および、(b)非癌組織または生物学的サンプルにおいて検出される。より好ましくは、かかる多型マーカーの検出、定量およびサイズ決定が以下の方法により達成されうる:(a) PCR 増幅による量およびサイズの比較測定方法および続くキャピラリー電気泳動、(b)ゲル電気泳動 (例えば、SSCP、DGGE、DHPLC)、リアルタイム 動力学的 PCR、直接的DNA 配列決定、ピロシーケンス、質量特異的対立遺伝子識別またはDNA アレイ技術による再配列決定による、配列決定および対立遺伝子識別方法、(c)特異的制限パターンの判定方法および続く電気泳動分離、および(d)アレル特異的 PCR (例えば、ASO)による対立遺伝子識別方法。ヘテロ接合性 VNTR、SNP、RFLPまたはSTSのより好ましい検出は、様々な標識プライマー(例えば、蛍光、放射性、生理活性) および好適なキャピラリー電気泳動 (CE) 検出系を用いて多重的に行われる。
別の態様において、これら遺伝子の発現はWO9727317およびUS6379895に記載のようなDNA-アレイを用いて検出されうる。
さらなる態様において、これら遺伝子の発現は、ビーズに基づく直接的蛍光読み取り技術、例えば、WO9714028およびWO9952708に記載の技術によって検出することが出来る。
一つの態様において、本発明は、細胞または組織の表現型の判定方法に関し、該方法は、表1、2または3からの配列を含む少なくとも1つの ポリヌクレオチドの、正常または非処理細胞と比較しての示差的発現を検出することを含み、ここで、該ポリヌクレオチドは、少なくとも約 1.5 倍、少なくとも約 2 倍または少なくとも約 3 倍、示差的に発現している。
さらなる側面において、本発明は、細胞または組織の表現型の判定方法に関し、該方法は、ストリンジェントな条件下で表1、2または3からの配列のポリヌクレオチドの1つにハイブリダイズし、それぞれのポリヌクレオチドについて表1または2に示すものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの、正常または非処理細胞と比較した示差的発現を検出することを含み、ここで、該ポリヌクレオチドは、少なくとも約 1.5 倍、少なくとも約 2 倍または少なくとも約 3 倍、示差的に発現している。
本発明の別の態様において、表1、2または3からの配列から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、乳癌または疾患表現型に罹りやすい表現型を示す個体における細胞または組織の同定に使用することができ、それによって個体が悪性腫瘍 、特に乳癌の、(a)発達の危険にあるか否かの予測、または(b) 個体が悪性腫瘍 、特に乳癌であるか否かの診断、または(c) 悪性腫瘍 、特に乳癌の、進行または治療の結果の予後判断が可能となる。
さらに別の態様において、本発明は、悪性腫瘍、特に乳癌において、染色体レベルにて変化している、および/または、示差的に発現する遺伝子をコードする、ゲノム領域を同定する方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、悪性腫瘍 、特に乳癌の予測、診断および予後ならびに予防および治療に使用するための上記遺伝子付近の表1、2または3に示されるゲノム領域を提供し、該染色体領域の、遺伝子内領域のみならず、遺伝子間領域、偽遺伝子または非転写遺伝子が、診断用、予測用、予後判断用および予防用ならびに治療用組成物および方法に用いることが出来る。それゆえ本発明に示すコードまたは非コード領域の配列は例示的に提供されるものであって、限定的なものではない。この一つの側面として、示されたゲノム配列の間にあるゲノム配列も類似の目的に用いることが出来る。そして別の側面において、示された遺伝子と共増幅されるゲノム配列は、本出願の範囲内のマーカーと同様に用いることが出来る。
さらに別の態様において、本発明は、表1または2からの配列から選択されるポリペプチドを含むポリペプチドの活性を制御する薬剤のスクリーニング方法を提供する。被験化合物は、表1または2からの配列から選択されるポリペプチドを含むポリペプチドと接触される。被験化合物のポリペプチドへの結合が検出される。該ポリペプチドに結合する被験化合物はしたがって、悪性腫瘍、より具体的には乳癌の治療のための治療薬剤候補として同定される。
さらに別の態様において、本発明は、表1または2からの配列から選択されるポリペプチドを含むポリペプチドの活性を制御する薬剤の別のスクリーニング方法を提供する。被験化合物は、表1または2からの配列から選択されるポリペプチドを含むポリペプチドと接触される。該ポリペプチドによって媒介される生理活性が検出される。該生理活性を低下させる被験化合物はしたがって、悪性腫瘍、特に乳癌において、表1または2からの配列から選択されるポリペプチドを含むポリペプチドによってコードされるポリペプチドの活性を低下させるための治療薬剤候補として同定される。生理活性を上昇させる被験化合物はしたがって、悪性腫瘍 、特に乳癌において、表1または2からの配列を有するポリペプチドの一つから選択されるポリペプチドによってコードされるポリペプチドの活性を上昇させるための治療薬剤候補として同定される。
一つの態様において、本発明は、表1または2からの配列から選択されるポリペプチドを含む全長または部分ポリペプチドに特異的に結合し、悪性腫瘍 、特に乳癌の予測、予防、診断、予後および治療に用いられる抗体を提供する。
本発明のさらに別の態様は、単独でまたは担体と共に、表1または2からの配列から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドに特異的に結合する試薬の、悪性腫瘍 、特に乳癌の治療用医薬の調製における使用である。
さらに別の態様は、表1または2からの配列から選択されるポリペプチドを含むポリペプチドの活性または安定性を調節する試薬の、悪性腫瘍 、特に乳癌の治療用医薬の調製における使用である。
一つの態様において、表1、2または3からの配列またはそれに相補的な配列から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの細胞における発現レベルを変化させる試薬が、細胞を提供すること、細胞を被験試薬で処理すること、表1、2または3からの配列またはそれに相補的な配列から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの該細胞における発現レベルを測定すること、および処理細胞における該ポリヌクレオチドの発現レベルと非処理細胞におけるポリヌクレオチドの発現レベルを比較することによって同定され、ここで、非処理細胞におけるポリヌクレオチドの発現レベルと比較しての処理細胞における該ポリヌクレオチドの発現レベルの変化は、細胞における該ポリヌクレオチドの発現レベルを変化させる薬剤であることを示す。
本発明はさらに、この方法によって同定される試薬を含む医薬組成物を提供する。
本発明のさらなる態様は、表1または2からの配列から選択されるポリペプチドを含むポリペプチドを含有する医薬組成物である。
本発明のさらなる態様は、表1、2または3からの配列から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2における対応するポリヌクレオチドと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含む医薬組成物である。本発明において有用な医薬組成物は、表1または2からの配列から選択されるポリペプチド、またはその断片、抗体、または抗体断片を含む融合タンパク質をさらに含みうる。
発明の詳細な説明
定義
利便性のため、本明細書、実施例および請求の範囲に用いられる特定の用語および表現の意味を以下に示す。さらに、定義はそれ自体、本発明のさらなる背景の説明をも意図している。
本明細書において用いる、「示差的発現」は、異なる発達および/または腫瘍成長に依存する遺伝子の発現パターンにおける定量的差異および定性的差異の両方を意味する。示差的に発現する遺伝子は、「マーカー遺伝子」および/または「標的遺伝子」を表しうる。本明細書に開示する、示差的に発現する遺伝子の発現パターンは、予後判断的または診断的乳癌評価の一部として利用されうる。あるいは、本明細書に開示する、示差的に発現する遺伝子は、乳癌の治療のための、試薬および化合物の同定方法およびかかる試薬および化合物の使用ならびに治療方法において利用されうる。
「生理活性」または「生物活性」または「活性」または「生理機能」は互換的に用いられ、本明細書において、ポリペプチド (その未変性または変性立体配置のいずれであってもよい)、またはそのいずれかの断片によって、インビボまたはインビトロで直接的または間接的に発揮される、エフェクターまたは抗原性機能を意味する。生理活性としてはこれらに限定されないが、ポリペプチドへの結合、その他のタンパク質または分子への結合、酵素活性、シグナル伝達、DNA結合タンパク質、転写制御因子としての活性、損傷DNAに結合する能力などが挙げられる。生物活性は、対象ポリペプチドに直接影響を与えることによって調節することができる。あるいは、生物活性は、ポリペプチドのレベルを調節することによって、例えば、対応する遺伝子の発現を調節することによって、変化させることが出来る。
「マーカー」または「バイオマーカー」という用語は、その存在または濃度が検出でき、疾患状態などの既知の状態と関連している、核酸、ペプチド、ホルモン等の生体分子をいう。
本明細書において用いる「マーカー遺伝子」とは、その発現パターンが、悪性腫瘍または乳癌評価の予測、予後判断または診断の一部として用いることが出来るか、あるいは、悪性腫瘍、特に乳癌の治療または予防に有用な化合物の同定方法に用いることが出来る、示差的に発現する遺伝子をいう。マーカー遺伝子はまた、標的遺伝子の特徴も有しうる。
本明細書において用いる、「標的遺伝子」とは、標的遺伝子の発現レベルまたは標的遺伝子産物の活性の調節が、悪性腫瘍 、特に乳癌の症状を寛解させるように作用しうるように、乳癌に関係する、示差的に発現する遺伝子をいう。標的遺伝子はまた、マーカー遺伝子の特徴も有しうる。
本明細書において用いる、「生物学的サンプル」という用語は、生物または生物の成分(例えば、細胞)から得られるサンプルをいう。サンプルは、生物組織または生体液のいずれのものであってもよい。サンプルはしばしば患者由来のサンプルである「臨床サンプル」である。かかるサンプルとしてはこれらに限定されないが、痰、血液、血液細胞(例えば、白血球)、組織または穿刺細胞診サンプル、細胞含有体液、遊離浮遊核酸、尿、腹水、および胸水、またはそれら由来の細胞が挙げられる。生物学的サンプルにはまた、組織切片、例えば、組織学的目的のために採種された凍結切片も含まれうる。
「アレイ」または「マトリックス」は、アドレス可能な位置の配列またはデバイス上の「アドレス」をいう。位置は、二次元アレイ、三次元アレイ、またはその他のマトリックス形式にて配列していてもよい。位置の数は数個から少なくとも数十万個の範囲であり得る。もっとも重要なことに、各位置は完全に独立した反応部位を表す。アレイとしてはこれらに限定されないが、核酸アレイ、タンパク質アレイおよび抗体アレイが挙げられる。「核酸アレイ」は、核酸プローブ、例えば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは遺伝子のより大きい部分を含む、アレイをいう。アレイ上の核酸は好ましくは一本鎖である。プローブがオリゴヌクレオチドであるアレイは「オリゴヌクレオチドアレイ」または「オリゴヌクレオチドチップ」と称される。本明細書において、「マイクロアレイ」は、「バイオチップ」または「生物学的チップ」とも称され、分離した領域が少なくとも約 100/cm2、好ましくは少なくとも約 1000/cm2の密度を有する領域のアレイである。マイクロアレイにおける領域の典型的な大きさは、例えば、直径が、約 10-250 μmの範囲であり、アレイにおける別の領域からおよそ同じ距離離れている。「タンパク質アレイ」は、ポリペプチドプローブまたはタンパク質プローブを含むアレイであり、これらプローブは未変性形態であっても変性形態であってもよい。「抗体アレイ」は、抗体を含むアレイであり、抗体としてはこれらに限定されないが、モノクローナル抗体(例えばマウス由来)、キメラ抗体、ヒト化抗体またはファージ抗体および一本鎖抗体ならびに抗体由来の断片が挙げられる。
本明細書において用いる、「アゴニスト」という用語は、タンパク質の生物活性を模倣または上方制御(例えば、増強または補強)する薬剤をいう。アゴニストは野生型タンパク質であってもよいし、野生型タンパク質の少なくとも1つの生物活性を有するその誘導体であってもよい。アゴニストは、遺伝子の発現を上方制御するか、またはタンパク質の少なくとも1つの生物活性を上昇させる化合物でもあり得る。アゴニストはまた、ポリペプチドと別の分子、例えば、標的ペプチドまたは核酸との相互作用を上昇させる化合物でもあり得る。
本明細書において用いる、「アンタゴニスト」という用語は、タンパク質の少なくとも1つの生物活性を下方制御する(例えば、抑制または阻害する)薬剤をいう。アンタゴニストは、タンパク質と別の分子、例えば、標的ペプチド、リガンドまたは酵素基質との相互作用を阻害または低下させる化合物でありうる。アンタゴニストはまた、遺伝子の発現を下方制御する、または、存在する発現したタンパク質の量を低下させる化合物でもあり得る。
本明細書において用いる、「低分子」は、分子量が約 5 kD未満、もっとも好ましくは 約 4 kD未満である物質(composition)をいう。低分子は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、炭水化物、脂質またはその他の有機(炭素含有)または無機分子でありうる。多くの製薬会社は、化学的および/または生物学的混合物、しばしば、真菌、細菌、または藻類抽出物の大規模なライブラリーを有しており、かかるライブラリーを本発明のアッセイのいずれかによりスクリーニングして、生物活性を調節する化合物を同定することが出来る。
本明細書において用いる、「調節された」または「調節」または「制御された」または「制御」および「示差的に制御された」という用語は、上方制御 (即ち、活性化または刺激 (例えば、アゴナイズまたは増強による)と下方制御 [即ち、阻害または抑制 (例えば、アンタゴナイズまたは低下または阻害による)]との両方をいう。
「転写制御単位」とは、それらが作動可能に連結しているタンパク質コード配列の転写を誘導または制御する、DNA配列、例えば、開始シグナル、エンハンサーおよびプロモーターをいう。好ましい態様において、遺伝子の一つの転写は、発現が意図される細胞タイプにおける組換え遺伝子の発現を制御するプロモーター配列 (またはその他の転写制御配列) の制御下にある。組換え遺伝子は、ポリペプチドの天然形態の転写を制御する配列と同一であるかまたは異なっている転写制御配列の制御下にあり得ることも理解されるであろう。
「誘導体」という用語は、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の化学的修飾をいう。ポリヌクレオチド配列の化学的修飾には、例えば、水素の、アルキル、アシル、またはアミノ基による置換が含まれ得る。誘導体ポリヌクレオチドは、天然分子の少なくとも1つの生物学的または免疫学的機能を保持するポリペプチドをコードする。誘導体ポリペプチドは、 グリコシル化、ペグ化、またはそれが由来するポリペプチドの少なくとも1つの生物学的または免疫学的機能を保持するいずれかの類似の工程により修飾されたものである。
「ヌクレオチドアナログ」という用語は、天然のヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとは少なくとも一つの特徴において異なるが、それぞれの天然のヌクレオチドの機能的特徴を示し (例えば、 塩基対形成、ハイブリダイゼーション、コード情報)、かつ、該組成物のために利用することが出来る、オリゴマーまたはポリマーをいう。ヌクレオチドアナログは、非天然塩基またはポリマー骨格からなるものであってもよく、その例としては、LNA、PNAおよびモルホリノ(Morpholino)が挙げられる。ヌクレオチドアナログは、その天然の対応物または同等物とは異なる少なくとも1つの分子を有する。
本明細書において用いる1または複数の「乳癌遺伝子」は、表1、2または3からのポリヌクレオチド配列、ならびにその誘導体、断片、アナログおよびホモログをいい、それによってコードされるポリペプチドは、表1または2からの配列のポリペプチドならびにその誘導体、断片、アナログおよびホモログであり、対応するゲノム転写単位は当該技術分野において周知の標準的技術を用いて誘導または同定することが出来る。ポリヌクレオチド配列のLocuslink ID および Locuslink Symbol、ならびにRefSeq 受入番号が表1および2に示され、遺伝子の説明または遺伝子機能が表1または2に示されている。
本明細書において用いる「染色体領域」という用語は、染色体上の連続DNAストレッチであって、細胞遺伝学的またはその他の遺伝マーカー、例えば、制限断片長多型(RFLP)、一塩基多型(SNP)、発現遺伝子配列断片(EST)、配列タグ部位(STS)、マイクロサテライト、タンデムリピート数(VNTR) および遺伝子によって規定しうるものである。典型的には、染色体領域は、2 メガベース(MB)まで、4 MBまで、6 MBまで、8 MBまで、10 MBまで、20 MBまでまたはそれを超えるMBからなる。
「変化した染色体領域」または「異常な染色体領域」という用語は、染色体組成およびDNA配列の構造変化であって、以下の事象によって起こりうるものをいう: 増幅、欠失、逆位、挿入、転座および/またはウイルス組込み。所与の細胞が3コピー以上の染色体を担持する場合、倍数性は、染色体または染色体領域の「増幅」という用語の意味に含まれる。
本発明の別の側面は、規定されたゲノム領域内における隣接遺伝子が連関(linked)しているという観察に基づき、これはそれらが互いの機能に直接的または間接的に機能的に相互作用し、影響を及ぼしていることを意味する。腫瘍性病変において共増幅および共発現される機能的に相互作用する遺伝子をコードするゲノム領域を「ARCHEON」と定義する(ARCHEON = Altered Region of Changed Chromosomal Expression Observed in Neoplasms)。染色体変化はしばしば二以上の遺伝子に影響を及ぼす。これは、増幅、重複、挿入、組込み、逆位、転座および欠失についても当てはまる。これらの変化は一または複数の遺伝子の発現レベルに影響を及ぼしうる。癌の診断および治療の分野において非常に一般的に、発現レベルの変化は、単一の推定関連標的遺伝子、例えば、 MLVI2 (5p14)、NRASL3 (6p12)、EGFR (7p12)、c-myc (8q23)、Cyclin D1 (11q13)、IGF1R (15q25)、HER-2/neu (17q21)、PCNA (20q12)について調べられてきた。しかしながら、一つのゲノム領域内にある複数の (即ち2以上の)遺伝子の発現レベルと互いの相互作用の変化は調べられていなかった。ARCHEONの遺伝子は組織特異的発現パターンを示す遺伝子クラスターを形成する。ARCHEONを表すと考えられるかかる遺伝子クラスター内の個々の遺伝子の相互作用の様式は、タンパク質-タンパク質またはタンパク質-核酸相互作用のいずれかであり得、これは以下の例によって限定的ではないが例示されうる: ARCHEON遺伝子相互作用は、同じシグナル伝達経路内にあり得、リガンド結合に対する受容体、受容体キナーゼおよびSH2またはSH3結合、プロモーター結合に対する転写因子、転写因子結合に対する核内ホルモン受容体、リン酸基供与 (例えば、キナーゼ)および受容 (例えば、リン酸化タンパク質)、mRNA 安定化タンパク質結合および転写プロセスであり得る。対遺伝子および/またはそれによってコードされるタンパク質またはより高次のグループの個々の活性および特異性は、当業者によって公共のデータベースに公表または寄託された文献から容易に推定することが出来る。しかし、ARCHEONに関しては、ARCHEONの一部であるメンバーの相互作用はその単一の機能を増強、誇張または低下させる。それゆえ、隣接遺伝子は、機能的関連がある場合、互いに連関している(linked)と称される。連関している(linked)遺伝子はマーカーセットにおいて組み合わせることが出来るだけでなく、互いに置換することが出来る。この相互作用はそれらが通常共発現している規定された正常組織において重要である。それゆえ、これらクラスターは進化の過程で一般に保存されてきた。(特にそれらが正常では発現していない組織における)腫瘍性病変におけるこれらARCHEONのメンバーの異常な発現は、しかしながら、腫瘍特徴、例えば、増殖、侵襲性および薬剤応答性に対して影響を有する。これら隣接遺伝子の相互作用により、調節解除事象に関与するARCHEONのメンバーを決定することは重要である。この点で、腫瘍性病変における増幅および欠失事象は特に重要である。
さらなる態様において、変化(増幅または欠失)される染色体領域に位置する遺伝子の機能的関係が確立される。変化した染色体領域は、その領域に位置する遺伝子が機能的に相互作用する場合にはARCHEONと定義される。
本発明は、(a)個々のmRNA種の相対的mRNA存在量を測定すること、または(b) 定量的 PCRによって1以上の染色体領域のコピー数を決定することによる染色体変化の検出方法に関する。一つの態様において、染色体領域のゲノム構成および空間的制御に関する情報が、ヒトゲノム (UCSC、NCBI)の配列情報のバイオインフォマティクス分析により評価され、GeneChip(商標) DNA-Array(Affymetrix) からのRNA 発現データおよび/またはRNA-サンプルまたはゲノムDNAからの定量的 PCR (TaqMan)と組み合わされる。
本発明は、ポリヌクレオチド配列およびそれによってコードされるタンパク質、ならびにポリヌクレオチド配列に由来するプローブ、コードされるタンパク質に対する抗体、および、悪性腫瘍、特に乳癌の危険があるか、または罹患している個体のための予測、予防、診断、予後判断および治療のための使用を提供する。本明細書に開示する配列は乳癌からのサンプルにおいて増幅されていることが判明した。
本発明は、乳癌の臨床上の証拠のある患者の腫瘍組織診において増幅されている60の遺伝子の同定に基づき、それらの疾患についての重要性が本明細書において実施例において記載される。これら遺伝子の共増幅という特徴決定は、乳癌において新たに同定された役割を提供する。遺伝子名、データベース受入番号 (GenBank) およびコードされるタンパク質の推定または既知の機能が表1および2または遺伝子の説明において与えられる。遺伝子増幅に用いたプライマー配列を表3に示す。
いずれかの状況において、これら遺伝子の増幅または発現の検出は、悪性腫瘍、特に乳癌の診断の基礎を提供する。さらに、臨床試験における化合物の効力の試験において、これら遺伝子の発現レベルの低下は、疾患状態から正常状態への回復に対応し、したがって化合物の正の効果を示す。
ARCHEONの一部である生物学的関連遺伝子
ARCHEON内の遺伝子相互作用
ゲノム変化(増幅、挿入、転座、欠失等)に関与する遺伝子は、その発現パターンにおいて変化を示す。特に興味深いのは、細胞当たり2を超える遺伝子コピー数の原因である遺伝子増幅または細胞当たり2を下回る遺伝子コピー数の原因である欠失である。それぞれの遺伝子の遺伝子コピー数および遺伝子発現は常に関連している必要はない。転写的過剰発現には、染色体座における制御領域(プロモーター、エンハンサーおよびサイレンサー)により判定してインタクトな転写関係にある必要があり、十分な量の転写制御因子が有効な組合せで存在する必要がある。これは特に特定の組織または特定の発達段階において発現が厳密に制御されているゲノム領域について当てはまる。ARCHEONは、直接に隣接しているか染色体上の順にあって最大10、好ましくは 7、より好ましくは 5 または少なくとも 1遺伝子の散在によって分断されている2以上の遺伝子の遺伝子クラスターにより特定される。散在遺伝子も共増幅されるが、それはARCHEONと直接相互作用しない。かかるARCHEONは最大20、より好ましくは 10または5 メガベースの染色体領域に広がり得、または少なくとも2つの遺伝子を含み得る。ARCHEONの性質は特定の組織、細胞タイプ、細胞または発達状態または時点における含まれる遺伝子の同時増幅および/または欠失および相関する発現 (即ち、それぞれ上方制御または下方制御)によって特徴づけられる。かかるARCHEONは細胞発達において重要な役割を果たすため一般に進化の過程で保存されている。このようなARCHEONの場合、自己制御フィードバックループを担持するため遺伝子クラスター全体が増幅の際に過剰発現し、該フィードバックループは異常な生物学的環境においても遺伝子発現および/または生物学的エフェクター機能を安定化し、即ち非常に類似した転写因子の組合せによって制御され、特定の発達段階での特定の組織におけるそれらの同時機能を反映する。それゆえ、遺伝子コピー数は、特にARCHEONとして機能する遺伝子クラスターにおける遺伝子については発現レベルと相関する。腫瘍性病変における異常遺伝子発現の場合、自己制御フィードバックループがARCHEON遺伝子メンバーの生理活性を決定するために、保存されているか否かを知ることが非常に重要である。
ARCHEONにおける遺伝子の間の強力な相互作用により、規定された染色体位置における該遺伝子産物の複数の相互作用が異常組織におけるそれぞれの変化によって起こるという本発明の発見が見いだされ、それは予測、診断、予後判断および/または予防および治療的価値を有する。これら相互作用は、それぞれの遺伝子が、相互接続または独立のシグナル伝達ネットワークの一部であるか、または、相乗的、拮抗的または独立的に細胞挙動 (分化状態、増殖および/またはアポトーシス能力、侵襲性、薬剤応答性、免疫調節活性)を制御するという事実によって直接的または間接的に媒介される。ARCHEON内の遺伝子の共増幅は、それぞれの遺伝子産物の共発現を導きうることが見いだされた。該遺伝子のいくつかは、また、かかるARCHEONの発癌能力に十分であるさらなる突然変異または特定のパターンの多型を示す。ARCHEONのどのメンバーが腫瘍形成(例えば、増幅および欠失事象)の際に保存されているかはかかる単位複製配列の重要な特徴の一つであり、それによってそれら遺伝子が診断マーカー遺伝子と規定される。さらに、ARCHEON内の特定の遺伝子の発現はARCHEONの別のメンバーによって影響を与えられる可能性もあり、それによって治療介入のための標的遺伝子としての制御遺伝子および制御される遺伝子が決定される。
ポリヌクレオチド
「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖であり得、「乳癌遺伝子」ポリペプチドのコード配列またはコード配列の相補鎖を含む。ヒト「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする縮重ヌクレオチド配列および該ヌクレオチド配列に対して少なくとも約 50、55、60、65、70、好ましくは 約 75、90、96、または98%同一である相同的ヌクレオチド配列であってもよい。2つのポリヌクレオチドの配列の間のパーセント配列同一性はコンピュータプログラム、例えば、ALIGNを用いて判定でき、かかるプログラムは、ギャップ開始ペナルティ-12とギャップ伸長ペナルティ-2とを用いるアフィンギャップサーチを使用するFASTA アルゴリズムを用いる。生物学的に活性の 「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドの相補的 DNA (cDNA) 分子、種ホモログ、および変異体もまた「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドである。
ポリヌクレオチドの調製
天然の「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドは、その他の細胞成分、例えば、膜成分、タンパク質および脂質を含まないよう単離され得る。ポリヌクレオチドは細胞により作られ得、標準的核酸精製技術を用いて単離することが出来るし、あるいは増幅技術、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)を用いて、または自動合成機を用いて合成することが出来る。ポリヌクレオチドを単離する方法は当該技術分野において常套的であり、知られている。ポリヌクレオチドを得るためのかかる技術のいずれを用いて、単離「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドを得てもよい。例えば、制限酵素およびプローブを用いて、「乳癌遺伝子」ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド断片を単離することが出来る。単離ポリヌクレオチドは、その他の分子を全くまたは少なくとも 70、80、または90%非含有である調製物中にある。
「乳癌遺伝子」cDNA 分子は「乳癌遺伝子」 mRNAを鋳型として用いて標準的分子生物学技術によって作ることが出来る。mRNAの単離に対して選択しないいずれのRNA 単離技術を用いてもかかるRNA サンプルを精製することができる。例えば、そのいずれも本明細書にその内容全体を引用により含める、Sambrook et al.、1989;および Ausubel、F. M. et al.、1989を参照されたい。さらに、多数の組織サンプルを当業者に周知の技術、例えば、その内容全体を引用により本明細書に含める、Chomczynski、P.の一工程RNA 単離プロセス(1989、米国特許第4,843,155号)を用いて容易に処理することが出来る。
「乳癌遺伝子」 cDNA 分子はその後、当該技術分野において知られており、教科書、例えば、 Sambrook et al.、1989に開示されている分子生物学技術を用いて複製することが出来る。増幅技術、例えば、PCRを用いて、本発明のポリヌクレオチドのさらなるコピーを、ヒトゲノムDNAまたはcDNAを鋳型として用いて得ることが出来る。
あるいは、化学合成技術を用いて「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドを合成することも出来る。遺伝コードの縮重により、「乳癌遺伝子」ポリペプチドまたはその生物学的に活性の変異体をコードする別のヌクレオチド配列の合成も可能となる。
ポリヌクレオチドの伸長
全長遺伝子配列の同定およびクローニングのためのかかる手順の一つの態様において、RNAは標準的手順を用いて、適当な組織または細胞ソースから単離することが出来る。逆転写反応を増幅断片に対応するmRNAに相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてRNAに対して行って、第一鎖合成を開始させうる。プライマーはmRNAに対して逆平行であるので、伸長はmRNAの5'末端にむかって進行する。その結果得られる RNA ハイブリッドに標準的末端トランスフェラーゼ反応を用いてグアニンにより「テイル付加」し、ハイブリッドをRNase Hで消化し、第二鎖合成を次いでポリ-C プライマーにより開始させるとよい。2つのプライマーを用いて、遺伝子の5' 部分がPCRを用いて増幅される。得られた配列を次いで単離し、以前に単離した配列と組み換えて本発明の示差的に発現する遺伝子の全長 cDNAを作ることが出来る。クローニング戦略と組換えDNA 技術の概説として、例えば、Sambrook et al.;およびAusubel et alを参照されたい。
様々な PCRに基づく方法を用いて本明細書に開示するポリヌクレオチド配列を伸長させて、上流配列、例えば、プロモーターおよび制御要素を検出することが出来る。例えば、制限部位 PCRはユニバーサルプライマーを使用して、既知の座に隣接する未知の配列を探索する[Sarkar、1993]。ゲノムDNAは、リンカー配列に対するプライマーおよび既知の領域に特異的なプライマーの存在下でまず増幅される。増幅配列は次いで、同じリンカープライマーと第一のものの内部にある別の特異的プライマーとを用いる第二ラウンドの PCRに供される。各ラウンドの PCR産物を適当な RNA ポリメラーゼにより転写し、逆転写酵素を用いて配列決定する。
逆 PCRも、既知の領域に基づく様々なプライマーを用いた配列の増幅または伸長に利用することが出来る [Triglia et al.、1988]。プライマーは市販のソフトウェア、例えば、 OLIGO 4.06 プライマー分析ソフトウェア (National Biosciences Inc.、Plymouth、Minn.)を用いて設計することが出来、例えば長さが2230 ヌクレオチドであって GC含量が50%以上であって標的配列に約 68-72℃の温度でアニーリングするプライマーを設計できる。該方法は遺伝子の既知の領域における好適な断片を作成するために数個の制限酵素を用いる。断片を次いで分子内ライゲーションにより環状にし、PCR 鋳型として用いる。
利用可能なさらなる方法は捕獲 PCRであり、これはヒトおよび酵母人工染色体 DNAの既知の配列に隣接するDNA 断片のPCR 増幅を伴う[Lagerstrom et al.、1991]。この方法において、複数の制限酵素消化およびライゲーションを用いて操作された二本鎖配列をDNA 分子の未知の断片に配置させ、その後PCRを行うことができる。
さらに、PCR、ネステッドプライマーおよびPROMOTERFINDER ライブラリー (CLONTECH、Palo Alto、Calif.)を用いてゲノムDNA (CLONTECH、Palo Alto、Calif.)を歩行することが出来る。このプロセスではライブラリーをスクリーニングする必要が無く 、イントロン/エキソン接合部を見いだすのに有用である。
同定された遺伝子の配列を標準的技術を用いて、遺伝子地図上、例えば、マウスおよびヒト遺伝子地図に遺伝子を位置づけることが出来る。かかるマッピング情報により、例えば、既知の遺伝子乳癌傾向が位置づけされている遺伝子領域の近くに位置する遺伝子を同定することにより、ヒト疾患に対する遺伝子の重要性に関する情報を得ることが出来る。
共増幅遺伝子の同定
ゲノム変化 (増幅、挿入、転座、欠失等)に関与する遺伝子はデータベース分析と組み合わせてPCRに基づく核型分析により同定される。特に興味深いのは、細胞当たり2を超える遺伝子コピー数の原因である遺伝子増幅である。それぞれの遺伝子の遺伝子コピー数および遺伝子発現はしばしば相関する。それゆえ遺伝子増幅により同時に過剰発現している遺伝子のクラスターは、DNA-チップ技術または定量的 RT-PCRを介した発現分析により同定することが出来る。例えば、遺伝子コピー数の上昇または低下による遺伝子の変化した発現は、例えばAffymetrix のGeneArray(商標) 技術またはTaqMan またはiCycler システムによるqRT-PCRによって判定することが出来る。さらにRNA とDNA分析の組合せにより、組織または単一細胞サンプルにおける様々な長さの複数のゲノム領域の高度に並行化した自動化特徴決定が高解像度で可能になる。さらにこれらアッセイにより、標的遺伝子の遺伝子コピー数に対する遺伝子転写の相関決定も可能となる。発現レベルと遺伝子コピー数との直線相関は必要ではなく、特定の遺伝子クラスターにおいて相乗的または拮抗的作用が存在するため、RNA-レベルに関する同定はより簡単であり、特に腫瘍組織における変化の生物学的結果におそらくより関連する。
悪性腫瘍における共増幅遺伝子の検出
染色体変化は一般的にFISH (=蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)およびCGH (=比較ゲノムハイブリダイゼーション)により検出される。ゲノム領域遺伝子または遺伝子間領域の定量のために利用できる。かかる定量は複数の遺伝子の互いの相対的存在量を測定する(例えば、標的遺伝子-対-セントロメア領域またはハウスキーピング遺伝子)。相対的存在量の変化はRNAまたはゲノムDNAの抽出の後であってもパラフィン包埋材料中で検出することが出来る。ゲノムDNAの測定は、DNAの安定性のためにRNA-分析と比較して、遡及研究を行い、標準化および正確な計算のための複数の内部コントロール(変化、増幅または検出されない遺伝子)を与える可能性の原因となる利点を有する。さらに、ゲノムDNAのPCR-分析は、遺伝子間の、高度に可変性の領域またはSNP(=一塩基多型)、RFLP、VNTRおよびSTR(一般的多型マーカーにおける)の組合せの研究のための利点を与える。規定されたゲノム領域内のSNPまたは多型マーカーの判定(例えば、「Pyrosequecing(商標)」によるSNP 分析)はゲノム変化の表現型に対して影響を有する。例えば、増幅対立遺伝子の部分である遺伝子の生物学的能力を特徴づけるために、多型またはハプロタイプの組合せを判定することは有益である。特に興味深いのは、切断点領域、コード領域または遺伝子または遺伝子間領域の制御領域における多型マーカーである。規定された生物学的または臨床的結果についての予測ハプロタイプを決定することにより患者からの非腫瘍サンプルについての診断および予後判断アッセイの確立が可能となる。好ましくは一方の対立遺伝子または両方の対立遺伝子が同じ程度増幅されるかに依存して(= 線形または非線形増幅) ハプロタイプを決定することが出来る。遺伝子増幅による細胞または組織における特定の多型マーカーの組合せの過剰出現はハプロタイプ決定を容易にする。というのは例えば、一の患者の正常組織、体液または生物学的サンプルから単離された核酸におけるヘテロ接合性多型マーカーの組合せはほとんどその同じ患者の腫瘍組織においてホモ接合性となるからである。この「ホモ接合性の獲得」は、増幅事象に起因する変化したゲノム領域の測定に対応し、腫瘍における「機能獲得型」変化の同定に好適であり、「機能獲得型」変化の結果、発癌または増殖促進活性が起こる。一方、「ヘテロ接合性の喪失」の検出は、発癌活性を抑制し、細胞増殖プロセスを負に制御する、癌抑制遺伝子、ゲートキーパー遺伝子またはチェックポイント遺伝子の同定に有用である。この固有の差異は明らかに、腫瘍発達についてのそれぞれのゲノム領域の影響に反対し、「ホモ接合性の獲得」測定の重要性を強調するものである。SNPについての分析に加えて、血液白血球 DNAと腫瘍 DNAとのVNTR 検出に基づく比較アプローチにより、先に記載したARCHEONの存在を明らかにすることができる。かかる多型マーカーの検出、定量およびサイズ決定は、当業者に知られた方法により達成することが出来る。PCRを好ましくは線形増幅範囲 (低サイクル数)において標準的プロトコールによって行うとよく、CEによる検出は、供給元のプロトコールによって行う(例えば、Agilent)。しかしながら検出は、高度に濃縮されたアガロースまたはポリアクリルアミドからなるスラブゲルで単色(monochromal)DNA染色を用いて行うことも出来る。解像度の向上は適当なプライマー設計および長さの変動により達成することが出来、その結果良好な多重PCRが得られる。
変化したゲノム領域内のDNA (例えば、メチル化)または関連クロマチン (例えば、関連タンパク質のアセチル化またはメチル化)の、遺伝子の転写活性に影響を与える共有修飾を判定することも興味深い。一般に、複数の短い配列(60-300 bp)を測定することにより、これらの技術は、常套方法、例えば、 FISH 分析(2-100 kb)によっては得られない標的領域の高解像度分析を可能とする。さらに、PCRに基づくDNA 分析技術は、感受性、特異性、多重化、消費時間および必要な患者材料の量が少ないことに関する利点を提供する。これら技術は、分析のためのより純粋な出発材料を得るためにマイクロダイセクションまたはマクロダイセクションと組合せることによって最適化することができる。
示差的発現の同定
収集されたRNA サンプル内にあり、示差的に発現する遺伝子によって産生されたRNA を表す転写産物は、当業者に周知の様々な方法を用いることによって同定することが出来る。例えば、その内容全体を引用により本明細書に含める、ディファレンシャルスクリーニング、サブトラクティブハイブリダイゼーション、および好ましくは、ディファレンシャルディスプレーを用いて、示差的に発現する遺伝子由来のポリヌクレオチド配列を同定することが出来る。
ディファレンシャルスクリーニングは1コピーのライブラリーが1つの細胞タイプのmRNA 集団に対応する全細胞 cDNA プローブによりスクリーニングされ、複製コピーのcDNA ライブラリーが、第二の細胞タイプのmRNA 集団に対応する全cDNA プローブによりスクリーニングされる、cDNA ライブラリーの二重スクリーニングを伴う。例えば、1つのcDNA プローブがコントロール対象由来の細胞タイプの全細胞 cDNA プローブに対応し得、第二のcDNA プローブが、実験対象由来の同じ細胞タイプの全細胞 cDNA プローブに対応しうる。一方のプローブにハイブリダイズするが、他方にはハイブリダイズしないクローンは、コントロール対実験対象において興味のある細胞タイプにおいて示差的に発現している遺伝子由来のクローンを表す可能性がある。
サブトラクティブハイブリダイゼーション技術は一般に2種類のソース、例えば、コントロールおよび実験組織、から採取したmRNAの単離、mRNAまたは単離されたmRNAから逆転写された一本鎖cDNAのハイブリダイゼーション、および、ハイブリダイズした、それゆえ二本鎖のすべての配列の除去を伴う。残りのハイブリダイズしなかった一本鎖cDNAは、2つのmRNAソースにおいて示差的に発現している遺伝子由来のクローンを表す可能性がある。かかる一本鎖cDNAを次いで示差的に発現する遺伝子由来のクローンを含むライブラリーの構築のための出発材料として用いる。
ディファレンシャルディスプレー技術は周知のポリメラーゼ連鎖反応を用いる手順を記載し (PCR; Mullis、K. B.、1987、米国特許第4,683,202号に示される実施態様)、示差的に発現する遺伝子由来の配列の同定を可能とする。まず、単離されたRNAを当業者に周知の標準的技術を用いて逆転写して一本鎖cDNAとする。逆転写酵素反応のためのプライマーとしてはこれらに限定されないが、オリゴ dT-含有プライマーが挙げられ、好ましくはリバースプライマー型の以下に記載するオリゴヌクレオチドである。次いで、この技術は以下に記載するようなPCR プライマー対を用い、これにより、所与の細胞内に存在するRNA 転写産物のランダムサブセットを表すクローンの増幅が可能となる。異なるプライマー対を用いることにより、細胞に存在する各mRNA 転写産物の増幅が可能となる。かかる増幅された転写産物から、示差的に発現する遺伝子から産生されたものが同定されうる。
プライマー対のリバースオリゴヌクレオチドプライマーはその5'末端に、好ましくは 11ヌクレオチド長のヌクレオチドのオリゴ dT ストレッチを含み得、それは、mRNAのポリ(A) テイルまたはmRNAのポリ(A) テイルから逆転写されたcDNAの相補鎖にハイブリダイズする。第二に、リバースプライマーの特異性を向上させるために、プライマーは、1以上の、好ましくは2の、さらなるヌクレオチドをその3'末端に含んでいてもよい。なぜならば、統計的には、興味あるサンプルに存在する配列由来のmRNAのサブセットのみがかかるプライマーにハイブリダイズし、さらなるヌクレオチドはプライマーが興味あるサンプルに存在する配列由来のmRNAのサブセットのみを増幅することを可能にするからである。これは、それによって、増幅配列を表す各バンドのより正確かつ完全な可視化および特徴決定が可能となるという点で好ましい。
フォワードプライマーは興味ある組織由来のcDNA配列にハイブリダイズする能力を有すると統計的に予測されるヌクレオチド配列を含んでいてもよい。ヌクレオチド配列は任意のものであってよく、フォワードオリゴヌクレオチドプライマーの長さは約 9〜約 13 ヌクレオチドの範囲で変動し得、約 10 ヌクレオチドが好ましい。任意のプライマー配列は、増幅されて生じる部分cDNAの長さを様々にし、それによって、異なるクローンを、標準的変性配列決定ゲル電気泳動の使用により分離することを可能にする。PCR 反応条件は増幅産物の収率および特異性を最適にするよう選択すべきであり、そしてさらに、標準的ゲル電気泳動技術を用いて解像できる長さの増幅産物を生じるように選択すべきである。かかる反応条件は当業者に周知であり、重要な反応パラメーターとしては、例えば、上記のオリゴヌクレオチドプライマーの長さおよびヌクレオチド配列、ならびにアニーリングおよび伸長工程の温度および反応時間が挙げられる。2つの異なる細胞タイプのmRNAの逆転写および増幅の結果得られたクローンのパターンは、配列決定ゲル電気泳動によって示され、比較される。2つのバンドパターンにおける差異は示差的に発現する遺伝子である可能性を示す。
全長 cDNAをスクリーニングする場合、より大きいcDNAを含むようにサイズ選択されたライブラリーを使用するのが好ましい 。ランダムにプライミングされたライブラリーが好ましい。というのは、それらは遺伝子の5' 領域を含むより多くの配列を含むであろうからである。ランダムにプライミングされたライブラリーの使用は、オリゴ d(T) ライブラリーにより全長 cDNAが得られない状況において特に好ましいであろう。ゲノムライブラリーは配列の5' 非転写制御領域への伸長に有用であり得る。
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて PCRまたは配列決定産物のサイズを分析することが出来、あるいはそのヌクレオチド配列を確認することが出来る。例えば、キャピラリー配列決定は、電気泳動分離のための流動性を有するポリマー、レーザーにより活性化される4種類の蛍光色素 (各ヌクレオチドにつき1種類)、および電荷結合素子カメラによる放射波長の検出を用い得る。出力/光強度を適当なソフトウェア (例えば、GENOTYPER およびSequence NAVIGATOR、Perkin Elmer; ABI)を用いて電気信号に変換することが出来、サンプルのローディングからコンピュータ分析および電子データ表示までの全プロセスをコンピュータ制御することが出来る。キャピラリー電気泳動は、特定のサンプル中に制限された量しか存在しないであろうDNAの小片の配列決定に特に好ましい。
いったん示差的に発現する可能性のある遺伝子配列が、例えば、上記のようなバルク技術により同定されたら、かかる示差的に発現すると推定される遺伝子の示差的発現を確証すべきである。確証は、例えば、ノザン分析および/またはRT-PCRなどの周知技術によって達成しうる。確証されたら、その示差的に発現する遺伝子をさらに特徴付け、以下に記載するようにして、標的および/またはマーカー遺伝子として同定するとよい。
また、例えば、ディファレンシャルディスプレーにより得られた示差的に発現する遺伝子の増幅配列を用いて、対応する遺伝子の全長クローンを単離することが可能である。遺伝子の全長コード部分は、過度な実験を強いることなく、当該技術分野において周知の分子生物学的技術によって容易に単離することが出来る。例えば、単離した示差的に発現した増幅断片を標識してcDNA ライブラリーのスクリーニングに用いることが出来る。あるいは、標識断片を用いてゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。
同定された遺伝子により産生されるmRNAの組織分布分析は、当業者に周知の標準的技術を用いて行うことが出来る。かかる技術としては、例えば、ノザン分析およびRT-PCRが挙げられる。かかる分析は同定された遺伝子が乳癌に寄与していると予測される組織において発現しているか否かについての情報を提供する。かかる分析はまた、定常状態 mRNA 制御に関する定量的情報も提供し得、同定された遺伝子のどれが、好ましくは、乳癌に寄与していると予測される組織における高レベルの制御を示しているかに関するデータを提供しうる。
かかる分析はまた、所与の組織由来の特定の細胞タイプの単離細胞集団に対して行うことも出来る。さらに、標準的インサイチュハイブリダイゼーション技術を用いて、所与の組織内のどの細胞が同定された遺伝子を発現しているかに関する情報を提供することが出来る。かかる分析は、組織内の細胞のサブセットのみが乳癌に関連すると考えられる状況において、乳癌に関する同定された遺伝子の生理機能に関する情報を提供しうる。
ポリヌクレオチド変異体およびホモログまたはスプライス変異体の同定
上記の「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドの変異体およびホモログもまた、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドである。典型的には、相同的 「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチド配列は当該技術分野において知られているようなストリンジェントな条件下での既知の「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドとの候補ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって同定することが出来る。例えば、2 X SSC (0.3 M NaCl、0.03 M クエン酸ナトリウム、pH 7.0)、0.1% SDS、室温 2回、各30 分間; 次いで2 X SSC、0.1% SDS、50 EC 1回、30 分間; 次いで2 X SSC、室温2回、各10 分間の洗浄条件の使用により、多くとも 約 25-30%の塩基対ミスマッチを含む相同的配列を同定することが出来る。より好ましくは、相同的ポリヌクレオチド鎖は15-25%の塩基対ミスマッチを含み、より好ましくは 5-15%の塩基対ミスマッチを含む。
本明細書に開示する「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドの種ホモログは、好適なプローブまたはプライマーを作成し、その他の種、例えば、マウス、サルまたは酵母からのcDNA 発現 ライブラリーをスクリーニングすることにより同定することも出来る。「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドのヒト変異体は、例えば、ヒト cDNA 発現ライブラリーをスクリーニングすることによって同定することが出来る。二本鎖 DNAのTmは、相同性が1%低下する毎に1-1.5℃低下することが周知である [Bonner et al.、1973]。ヒト「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドまたはその他の種の「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドの変異体はそれゆえ、推定相同的「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドを本出願にて言及するそれぞれのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドまたはその相補鎖とハイブリダイズさせて被験ハイブリッドを形成させることによって同定することが出来る。被験ハイブリッドの融解温度を完全に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含むハイブリッドの融解温度と比較し、被験ハイブリッド内の塩基対ミスマッチの数またはパーセントを算出する。
以下のストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件で「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドまたはその相補鎖にハイブリダイズするヌクレオチド配列もまた、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドである。ストリンジェントな洗浄条件は周知であり、当該技術分野において理解されており、例えば、Sambrook et al.に開示されている。典型的には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件については、温度および塩濃度の組合せは被験ハイブリッドの計算Tmよりもおよそ 12-20℃低くなるよう選択すべきである。本出願において言及するそれぞれのヌクレオチド配列またはその相補鎖を有する「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドとかかるヌクレオチド配列と少なくとも約 50、好ましくは 約 75、90、96、または98% 同一であるポリヌクレオチド配列の間のハイブリッドのTmは、例えば、下記式を用いて算出されうる [Bolton and McCarthy、1962]:
Tm = 81.5℃ - 16.6(log10[Na+]) + 0.41(%G + C) - 0.63(%ホルムアミド) - 600/l)、
(式中、l =塩基対中のハイブリッドの長さ)。
ストリンジェントな洗浄条件は、例えば、4 X SSC、65℃、または50% ホルムアミド、4 X SSC、28℃、または0.5 X SSC、0.1% SDS、65℃が挙げられる。高度にストリンジェントな洗浄条件としては、例えば、0.2 X SSC、65℃が挙げられる。
同定された遺伝子の生理機能は、関連するインビボおよびインビトロ系を用いることにより、より直接的に評価することが出来る。インビボ系としてはこれらに限定されないが、天然に乳癌素因を示す動物系、またはかかる症状を操作されて示すようになったもの、例えばこれらに限定されないが、 apoE-欠損悪性腫瘍マウスモデルが挙げられる[Plump et al.、1992]。
同じプレmRNAによってコードされる、同じゲノム領域由来のスプライス変異体は、ホモロジーサーチについての上記のハイブリダイゼーション条件によって同定することが出来る。同じプレ転写産物のスプライス変異体によってコードされる変異体タンパク質の特定の特徴は異なり得、開示したようにアッセイすることができる。それゆえ本出願において言及するヌクレオチド配列を有する「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドまたはその相補鎖は、全配列の部分において異なり得る。スプライシング事象の予測およびプレmRNA内の用いられた受容および供与部位の同定はコンピュータによって行うことが出来 (例えば、ソフトウェアパッケージGRAILまたは GenomeSCAN)、当業者によりPCR 方法によって確認することができる。
アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のDNAまたはRNA 配列に相補的なヌクレオチド配列である。いったん細胞に導入されると、相補的ヌクレオチドは細胞によって産生される天然の配列と一緒になって複合体を形成し、転写または翻訳を阻害する。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも 6 ヌクレオチド長であるが、少なくとも 7、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、または50あるいはそれ以上のヌクレオチド長であってもよい。より長い配列を用いることも出来る。アンチセンスオリゴヌクレオチド分子はDNA コンストラクト中に提供でき、上記のように細胞に導入でき、細胞における「乳癌遺伝子」遺伝子産物のレベルを低下させうる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA;米国特許第5,714,331号に記載)、ロックされた(locked)核酸 (LNA; WO 99/12826に記載)またはそれらの組合せのいずれであってもよい。オリゴヌクレオチドは手動で合成することも出来るし、自動合成機によって合成することも出来、1つのヌクレオチドの5'末端ともう1つのヌクレオチドの3'末端を非ホスホジエステルヌクレオチド間連結、例えば、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、アルキルホスホネート、ホスホラミダート、リン酸エステル、カルバメート、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル、カーボネートおよびホスフェートトリエステルにより共有結合させることによって合成できる。
「乳癌遺伝子」発現の修飾は「乳癌遺伝子」の調節領域、5'領域、または制御領域と二本鎖を形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することにより得ることが出来る。転写開始部位由来のオリゴヌクレオチド、例えば、開始部位から位置10と+10との間のオリゴヌクレオチドが好ましい。同様に、阻害は「三重ヘリックス」塩基対形成法を用いて達成することが出来る。三重ヘリックス対形成は、ポリメラーゼ、転写因子、またはシャペロンに結合するのに十分に開裂する二本鎖の能力の阻害をもたらすために有用である。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、転写産物のリボゾームへの結合を阻止することによってmRNAの翻訳を阻害するように設計してもよい。
正確な相補性が、アンチセンスオリゴヌクレオチドと「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドの相補的配列との間の複合体形成の成功に必要なわけではない。隣接「乳癌遺伝子」ヌクレオチドと相補的ではない連続ヌクレオチドのストレッチによってそれぞれ分断されている、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドに対して正確に相補的な連続ヌクレオチドの、例えば、2、3、4、または 5以上のストレッチを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドが、「乳癌遺伝子」 mRNAに対する十分な標的化特異性を提供しうる。好ましくは、相補的連続ヌクレオチドの各ストレッチは、少なくとも 4、5、6、7、または8以上のヌクレオチド長である。非相補的介在配列は、好ましくは 1、2、3、または4 ヌクレオチド長である。当業者であれば、アンチセンス-センス対の計算融点を用いて容易に特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドと特定の「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチド配列の間に許容されるミスマッチの程度を判定できるであろう。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドにハイブリダイズするその能力に影響を与えることなく修飾することができる。かかる修飾はアンチセンス分子の内部にあっても一方または両方の末端にあってもよい。例えば、ヌクレオシド間ホスフェート連結は、アミノ基と末端リボースの間に様々な数の炭素残基を有するコレステリルまたはジアミン部分を付加することによって修飾することができる。修飾される塩基および/または糖、例えば、リボースの代わりにアラビノース、または3' ヒドロキシル基または5' リン酸基が置換されている3',5' 置換オリゴヌクレオチドも、修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて用いることが出来る。かかる修飾オリゴヌクレオチドは当該技術分野において周知の方法によって調製することが出来る。
リボザイム
リボザイムは触媒活性を有するRNA 分子である[Cech、1987; Cech、1990、および Couture & Stinchcomb、1996]。リボザイムは当該技術分野において知られているように、遺伝子機能をRNA 配列を切断することによって阻害するのに用いることが出来る(例えば、Haseloff et al.、米国特許第5,641,673号)。リボザイム作用の機構は、リボザイム分子の相補的標的 RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、次いで、ヌクレオチド鎖切断を伴う。例としては、特定のヌクレオチド配列のヌクレオチド鎖切断を特異的かつ有効に触媒しうる操作されたハンマーヘッドモチーフリボザイム分子が挙げられる。
「乳癌遺伝子」の転写配列を用いて、「乳癌遺伝子」ゲノム座から転写されたmRNAに特異的に結合するリボザイムを作成することができる。トランスに高度に配列特異的にその他のRNA 分子を切断しうるリボザイムを設計および構築する方法が開発されており、当該技術分野で記載されている [Haseloff et al.、1988]。 例えば、リボザイムの切断活性を別の「ハイブリダイゼーション」領域をリボザイム内に操作することによって特定のRNAに標的化することができる。ハイブリダイゼーション領域は標的 RNAに相補的な配列を含み、したがって標的に特異的にハイブリダイズする [例えば、Gerlach et al.、EP 0 321201を参照]。
「乳癌遺伝子」RNA 標的内の特定のリボザイム切断部位は標的分子を以下の配列を含むリボザイム切断部位について走査することによって同定することが出来る: GUA、GUU、および GUC。いったん同定されると、切断部位を含む標的 RNAの領域に対応する15〜 20 リボヌクレオチドの短いRNA配列を標的を作動不可能にしうる二次構造的特徴について評価するとよい。候補 「乳癌遺伝子」 RNA 標的の好適性は、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションへの到達性を試験することによっても評価することが出来る。より長い相補的配列を用いて標的についてのハイブリダイゼーション配列の親和性を上昇させることが出来る。リボザイムのハイブリダイズ領域と切断領域を、相補的領域を介して標的 RNAにハイブリダイズした際に、リボザイムの触媒領域が標的を切断しうるように統合するように関連させるとよい。
リボザイムは細胞にDNA コンストラクトの一部として導入することが出来る。機械的方法、例えば、 マイクロインジェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、エレクトロポーレーション、またはリン酸カルシウム沈降を用いて、リボザイム-含有DNA コンストラクトを「乳癌遺伝子」 発現の低下が望まれる細胞に導入することが出来る。あるいは、細胞が安定にDNA コンストラクトを保持するのが望ましい場合、当該技術分野において知られているようにして、コンストラクトをプラスミド上に提供して、分離要素として維持するか、または細胞のゲノムに組み込むとよい。リボザイムをコードするDNA コンストラクトは細胞におけるリボザイムの転写の制御のために、転写制御要素、例えば、プロモーター要素、エンハンサーまたはUAS 要素、および 転写終結シグナルを含んでいてもよい。
Haseloff et al.、米国特許第5,641,673号において教示されるように、リボザイムをリボザイム発現が標的遺伝子の発現を誘導する因子に応答して起こるように操作してもよい。リボザイムはまた、リボザイムと標的遺伝子との両方が細胞において誘導された場合にのみmRNAの破壊が起こるようにさらなるレベルの制御を提供するよう操作してもよい。
ポリペプチド
本発明による「乳癌遺伝子」ポリペプチドは本出願において言及する配列番号またはその誘導体、断片、アナログおよびホモログから選択されるポリペプチドを含む。本発明の「乳癌遺伝子」ポリペプチドはそれゆえ「乳癌遺伝子」ポリペプチドの全部または一部を含む、部分、全長、または融合タンパク質であってもよい。
タンパク質精製
「乳癌遺伝子」ポリペプチドは「乳癌遺伝子」発現コンストラクトでトランスフェクトされた宿主細胞を含む、タンパク質を発現するあらゆる細胞から精製することが出来る。乳房組織は「乳癌遺伝子」ポリペプチドの特に有用なソースである。精製「乳癌遺伝子」ポリペプチドは細胞において「乳癌遺伝子」ポリペプチドと通常関連しているその他の化合物、例えば、特定のタンパク質、炭水化物または脂質から、当該技術分野において周知の方法によって分離されたものである。かかる方法としてはこれらに限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム分画、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、および分取ゲル電気泳動が挙げられる。精製「乳癌遺伝子」ポリペプチド調製物は少なくとも 80% 純粋であり; 好ましくは、調製物は90%、95%、または 99%純粋である。調製物の純度は当該技術分野において知られているあらゆる手段、例えば、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって評価することが出来る。
ポリペプチドの取得
「乳癌遺伝子」ポリペプチドは、例えば、ヒト細胞からの精製、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドの発現、または直接的化学的合成によって取得することが出来る。
生物学的に活性の変異体
生物学的に活性の「乳癌遺伝子」ポリペプチド変異体、即ち、「乳癌遺伝子」 活性を保持している変異体もまた、「乳癌遺伝子」ポリペプチドである。好ましくは、天然または非天然の「乳癌遺伝子」ポリペプチド変異体は、本出願において言及するポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも約 60、65、または70、好ましくは 約 75、80、85、90、92、94、96、または 98%同一であるアミノ酸配列を有する。推定 「乳癌遺伝子」ポリペプチド変異体の間のパーセント同一性は当業者に知られている常套方法によって判定される。当業者であれば2つのアミノ酸配列をアラインするために利用できる多くの確立されたアルゴリズムが存在することを理解している。Pearson & Lipmanの「FASTA」 類似性サーチアルゴリズムは、本明細書に開示するアミノ酸配列と推定変異体のアミノ酸配列によって共有される同一性のレベルを調べるための好適なタンパク質アラインメント方法である。
アミノ酸挿入または欠失はアミノ酸配列に対するまたはアミノ酸配列内の変化である。それらは典型的には約 1〜5 アミノ酸の範囲内である。「乳癌遺伝子」ポリペプチドの生物学的または免疫学的活性を失わせることなく、どのアミノ酸残基を置換、挿入または欠失させうるかの判定についてのガイダンスは当該技術分野において周知のコンピュータプログラム、例えば、 DNASTAR ソフトウェアを用いて見いだすことが出来る。アミノ酸変化が生物学的に活性の「乳癌遺伝子」ポリペプチドをもたらすか否かは、例えば、以下の特定の実施例に記載のように、「乳癌遺伝子」 活性についてアッセイすることによって容易に判定することが出来る。より大きい挿入または欠失はまた選択的スプライシングによって起こりうる。タンパク質ドメインを、タンパク質の主な活性を変化させることなく挿入または欠失させることができる。
融合タンパク質
融合タンパク質は、「乳癌遺伝子」ポリペプチドアミノ酸配列に対する抗体の作成および様々なアッセイ系における使用に有用である。例えば、融合タンパク質は、「乳癌遺伝子」ポリペプチドの部分と相互作用するタンパク質の同定に利用することが出来る。タンパク質アフィニティークロマトグラフィーまたはタンパク質-タンパク質相互作用についてのライブラリーに基づくアッセイ、例えば、酵母ツーハイブリッドまたはファージディスプレー系は、この目的に利用することが出来る。かかる方法は当該技術分野において周知であり、薬物スクリーニングとしても利用することが出来る。
「乳癌遺伝子」ポリペプチド融合タンパク質は、ペプチド結合によって互いに融合した2つのポリペプチドセグメントを含む。第一のポリペプチドセグメントは、本出願において言及するポリヌクレオチド配列のいずれかまたは例えば上記の生物学的に活性の変異体によってコードされるアミノ酸配列の少なくとも 25、50、75、100、150、200、300、400、500、600、700または750の連続アミノ酸を含む。第一のポリペプチドセグメントは全長 「乳癌遺伝子」を含むものであってもよい。
第二のポリペプチドセグメントは全長タンパク質またはタンパク質断片であってよい。融合タンパク質構築に一般的に用いられるタンパク質としては、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質 (GFP)、自己蛍光タンパク質、例えば、青色蛍光タンパク質 (BFP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)、ルシフェラーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ (HRP)、および クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ (CAT)が挙げられる。 さらに、エピトープタグが融合タンパク質構築に用いられ、例えば、ヒスチジン (His) タグ、FLAG タグ、インフルエンザ赤血球凝集素 (HA) タグ、Myc タグ、VSV-G タグ、およびチオレドキシン (Trx) タグが挙げられる。 その他の融合構築物はマルトース結合タンパク質 (MBP)、S-タグ、Lex DNA 結合ドメイン (DBD) 融合、GAL4 DNA 結合ドメイン融合および単純ヘルペスウイルス (HSV) BP16 タンパク質融合を含みうる。融合タンパク質はまた、「乳癌遺伝子」ポリペプチド-コード配列と異種タンパク質配列との間に位置する切断部位を含むように操作して、「乳癌遺伝子」ポリペプチドが異種部分から切断されて精製され得るようにしてもよい。
融合タンパク質は当該技術分野において知られているように化学的に合成することができる。好ましくは、融合タンパク質は2つのポリペプチドセグメントの共有結合によって、または、分子生物学分野における標準的手順によって産生される。組換え DNA 方法を用いて融合タンパク質を調製してもよく、例えば、第二のポリペプチドセグメントをコードするヌクレオチドと、正しい読み枠にて本出願において言及するポリヌクレオチド配列のいずれかから選択されるコード配列を含むDNA コンストラクトを作ること、および当該技術分野において知られているように宿主細胞にてDNA コンストラクトを発現させることによって調製することが出来る。融合タンパク質を構築するための多くのキットが、例えば、 Promega Corporation (Madison、WI)、Stratagene (La Jolla、CA)、CLONTECH (Mountain View、CA)、Santa Cruz Biotechnology (Santa Cruz、CA)、MBL International Corporation (MIC; Watertown、MA)、および Quantum Biotechnologies (Montreal、Canada; 1-888-DNA-KITS)などの会社から市販されている。
種ホモログの同定
ヒトの「乳癌遺伝子」ポリペプチドの種ホモログは、当該技術分野において知られているように、その他の種、例えば、マウス、サルまたは酵母からのcDNA 発現 ライブラリーのスクリーニングのための好適なプローブまたはプライマーを作るために「乳癌遺伝子」ポリペプチドポリヌクレオチド (以下に記載)を使用すること、「乳癌遺伝子」ポリペプチドのホモログをコードするcDNAを同定すること、および、該cDNAを発現させることによって得ることが出来る。
予測、診断および予後判断アッセイ
本発明は、特に1以上の開示されたDNA、RNAまたはポリペプチドマーカーを検出することによる、腫瘍性疾患の診断、予測、予後、予防および治療のための方法および組成物を提供する。実施例にて言及するマーカーを組み合わせて実施例にて言及するマーカーのセットとすることが出来る。実施例によるとマーカーのセットには、2、3または4以上のマーカーが存在し得る。最良のマーカーセットの同定方法もまた実施例に示されている。特に興味深いのは例えばタキソール(商標)またはタキソテール(商標)といったタキサンまたはその他のタキサンに基づく誘導体を含む、様々な治療計画に対する腫瘍性病変の応答予測である。本発明は、腫瘍組織において増幅および/または過剰発現し、診断マーカーおよび治療標的として有用な遺伝子を開示する。本発明はさらに、治療予後に関連する増幅されるおよび増幅されない遺伝子または遺伝子のセットを開示する。タキソール耐性、タキソールによる利益または有害なタキソール反応に関連し、治療決定の指針の補助として用いうる、染色体性に増幅される遺伝子および増幅されない遺伝子も開示する。腫瘍性疾患を予測、診断および予後判定ならびに予防および治療する方法も開示される。
臨床応用において、生物学的サンプルを本明細書において同定されたバイオマーカーの存在および/または非存在についてスクリーニングすることができる。かかるサンプルは、例えば 針生検コア、外科的切除サンプルまたは体液、例えば、血清、細針乳頭吸引液および尿である。さらなる態様において、本発明者らは、ホルマリン固定およびパラフィン包埋腫瘍材料におけるマーカーの検出を記載する。これらの方法は、組織診を得ることを含み、これはクリオスタット切片法によって分画して全細胞集団の約 80%が疾患細胞となるよう濃縮したものであってもよい。特定の態様において、これらのサンプルから抽出したポリヌクレオチドを当該技術分野において周知の技術を用いて増幅してもよい。検出された選択されたマーカーの発現レベルを疾患および健康サンプルの統計的に有効な群と比較するとよい。
一つの態様において、診断方法は、対象が該遺伝子または該ゲノム座の異常 DNA内容物を有しているか否かを、例えば、サザンブロット分析、ドットブロット分析、蛍光または 比色インサイチュハイブリダイゼーション、比較ゲノムハイブリダイゼーション、VNTRによる遺伝子型同定、STS-PCRまたは定量的 PCRによって判定することを含む。一般にこれらのアッセイは、代表的なゲノム領域からのプローブの使用を含む。プローブは該ゲノム領域または該領域に相補的または類似の配列の少なくとも部分を含む。具体的には、該遺伝子またはゲノム領域の遺伝子内または遺伝子間領域である。プローブはハイブリダイゼーションによって標的領域に結合することが出来るヌクレオチド配列または類似の機能の配列 (例えば、PNA、モルホリノオリゴマー)からなるものであり得る。一般に該患者サンプルにおいて変化しているゲノム領域が、変化を受けていないコントロールサンプル (同じまたは異なる患者からの正常組織、周辺の変化を受けていない組織、末梢血液) または該変化を有さないために内部コントロールとして作用しうる同じサンプルのゲノム領域と比較される。好ましい態様において同じ染色体に位置する領域が用いられる。あるいは、ゴノソーマル(gonosomal)領域および/またはサンプルにおける規定された変動する量を有する領域が用いられる。一つの好ましい態様において、DNA含量、構造、組成または修飾が、別のゲノム領域にあるものと比較される。特に好ましいのは該サンプルのDNA含量を検出する方法であり、ここで標的領域の量が増幅および/または欠失によって変化している。別の態様において、標的領域は、臨床的側面に関して該サンプルにおける細胞を、診断、予後判断または治療的価値のあるものにならしめるまたはしやすくする多型 (例えば、一塩基多型または突然変異)の存在について分析される。好ましくは、配列変動の同定は該臨床的側面で該サンプルの特徴的挙動を与えるSNP、SNPのセットまたはハプロタイプを規定するために用いられる。
別の態様において、診断方法は、開示されたマーカーの異常 mRNA および/またはタンパク質レベルを対象が有しているか否かを、例えば、ノザンブロット分析、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (RT- PCR)、インサイチュハイブリダイゼーション、免疫沈降、ウェスタンブロットハイブリダイゼーション、または免疫組織化学によって判定することを含む。該方法によると、細胞を対象から得て、開示されたバイオマーカーのレベル、タンパク質またはmRNA レベルを測定し、健康対象におけるこれらマーカーのレベルと比較する。バイオマーカーポリペプチドまたはmRNA レベルの異常レベルはおそらく悪性腫瘍 、例えば、乳癌を示す。
以下の遺伝子の例は例示のために記載し、限定する意図はない。
本発明の一つの態様は、1、2、3または20までのマーカー、好ましくは2〜15のマーカー、最も好ましくは2〜10のマーカーの検出による悪性腫瘍の予測、診断または予後判断方法であり、ここで、マーカーは、悪性腫瘍において変化している遺伝子またはその断片および/またはゲノム核酸配列である。
一つの態様において、悪性腫瘍、特に乳癌の予測、診断または予後判断方法は生物学的サンプルにおける:
(a)表1または2からの配列のポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチド;
(b)表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする(a) において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;
(c)表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする遺伝コードの発生(generation)によりその配列が(a)および(b) において特定したポリヌクレオチドとは異なるポリヌクレオチド;
(d) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチド;
の、以下の工程を含む検出によって行われる:
(a)〜(d) において特定したポリヌクレオチドまたは類似のオリゴマーと生物学的サンプルのポリヌクレオチド材料とのハイブリダイズ工程、それによるハイブリダイゼーション複合体の形成工程;および該ハイブリダイゼーション複合体の検出工程。
別の態様において、悪性腫瘍の予測、診断または予後判断方法は上記のように行われるが、ここでハイブリダイゼーションの前に、生物学的サンプルのポリヌクレオチド材料が増幅される。
別の態様において、悪性腫瘍 、特に乳癌の診断または予後判断方法は:
(a)表1または2からの配列のポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチド;
(b)表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、(a) において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;
(c)その配列が、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする遺伝コードの発生(generation)により(a)および(b) において特定したポリヌクレオチドとは異なるポリヌクレオチド;
(d) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチド;
(e) (a)〜(d) において特定したポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;
(f)表1または2からの配列のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチド;
の検出によって行われ、生物学的サンプルと、(a)〜(d) において特定したポリヌクレオチドまたは(e) において特定したポリペプチドと特異的に相互作用する試薬とを接触させる工程を含む。
DNA アレイ技術
一つの態様において、本発明は、ポリヌクレオチドプローブが組織化されたアレイにおけるDNAチップに固定化されている方法も提供する。オリゴヌクレオチドは固体支持体に様々なプロセスによって結合していてもよく、例えば、リソグラフィーが挙げられる。例えばチップは410,000ものオリゴヌクレオチドを担持出来る(GeneChip、Affymetrix)。本発明は、悪性腫瘍、例えば、乳癌についての入手可能な試験に比べてかなりの利点を提供する。なぜなら、本発明は、単一のチップ上のポリヌクレオチドマーカーのアレイを提供することにより、試験の信頼性を高めるからである。
該方法には、患者の組織診を得ることが含まれ、組織診は疾患細胞が全細胞集団の約 80%となるように濃縮されるようクリオスタット切片法により分画されていてもよく、体液、例えば、 血清または 尿、血清または細胞含有液の使用も含まれる(例えば、細針吸引液からのもの)。DNAまたはRNAは抽出され、増幅され、マーカーポリヌクレオチド配列の存在または非存在の判定のためにDNAチップを用いて分析される。一つの態様において、ポリヌクレオチドプローブは二次元マトリックスまたはアレイにおける基体上にスポッティングされる。ポリヌクレオチドのサンプルは標識してもよく、その後プローブとハイブリダイズされる。プローブポリヌクレオチドに結合した標識サンプルポリヌクレオチドを含む二本鎖ポリヌクレオチドは、サンプルの非結合部分が洗浄されたら検出することが出来る。
プローブポリヌクレオチドは、基体、例えば、ガラス、ニトロセルロース等にスポッティングされていてもよい。プローブは、共有結合または非特異的相互作用、例えば、疎水性相互作用によって基体に結合しうる。サンプルポリヌクレオチドは、放射標識、フルオロフォア、発色団などを用いて標識することが出来る。さらに、アレイは遺伝子の示差的発現を調べるために利用できるし、遺伝子機能の判定のためにも利用できる。例えば、本発明のポリヌクレオチド配列のアレイを用いて、例えばポリヌクレオチド配列が正常細胞と疾患細胞との間で示差的に発現しているかを調べることが出来る。疾患サンプルにおける特定のメッセンジャーの対応する正常サンプルでは観察されない高発現は、乳癌特異的タンパク質を示しうる。
したがって、一つの側面において、本発明は、本明細書に開示する特有のポリヌクレオチドマーカーに特異的なプローブおよびプライマーを提供する。
一つの態様において、該方法は特に患者からの組織における悪性または乳癌細胞の存在を判定するためのポリヌクレオチドプローブの使用を含む。具体的には、該方法は以下を含む:
1)表1または2からの配列またはそれに相補的な配列のポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチドのコード配列の一部に相補的であるコード配列の少なくとも 12 ヌクレオチド長、好ましくは 少なくとも 15 ヌクレオチド長、より好ましくは、25 ヌクレオチド長、およびもっとも好ましくは 少なくとも 40 ヌクレオチド長、すべてまたはほとんどすべてを含むヌクレオチド配列を含む、
2) 悪性腫瘍、例えば、乳癌において示差的に発現しているポリヌクレオチドプローブを提供すること;
3)悪性腫瘍患者からの組織サンプルを得ること;
4)悪性腫瘍ではない患者からの第二の組織サンプルを提供すること;
5)該第一および第二の組織サンプルのそれぞれのRNAにストリンジェントな条件下で該ポリヌクレオチドプローブを接触させること(例えば、ノザンブロットまたはインサイチュハイブリダイゼーションアッセイにおいて);および、
6) (a)第一の組織サンプルのRNAとプローブとのハイブリダイゼーションの量と、 (b)第二の組織サンプルのRNAとプローブとのハイブリダイゼーションの量を比較すること;
ここで、第二の組織サンプルのRNAとのハイブリダイゼーション量と比較しての第一の組織サンプルのRNAとのハイブリダイゼーションの量における統計的有意差は、第一の組織サンプルにおける悪性腫瘍 、特に乳癌を示す。
データ解析方法
1以上の「乳癌遺伝子」の発現レベルと参照発現レベル、例えば、乳癌の疾患細胞または正常対応物細胞における、発現レベルの比較は、好ましくはコンピュータシステムを用いて行う。一つの態様において、2つの細胞にて得られた発現レベルおよびかかる2セットの発現レベルを比較のためにコンピュータシステムに入力する。好ましい態様において、1セットの発現レベルをコンピュータシステムに既に存在している値との比較のためにコンピュータシステムに入力するか、またはコンピュータ読み取り可能形態にしてからコンピュータシステムに入力する。
一つの態様において、本発明は、本発明の遺伝子発現プロファイルデータまたは疾患細胞における少なくとも1つの 「乳癌遺伝子」の発現レベルに対応する値のコンピュータ読み取り可能形態を提供する。値は実験、例えば、マイクロアレイ分析から得られたmRNA 発現レベルであってよい。値はまた、その発現が様々な条件下で様々な細胞において一定である参照遺伝子、例えば、GAPDHと比較して規準化したmRNA レベルであってもよい。別の態様において、コンピュータにおける値は、異なるサンプルにおける規準化または非規準化mRNA レベルの間の比または差異である。
遺伝子発現プロファイルデータは表、例えば、Microsoft Excel(商標)からの表計算ソフトの表の形態であってもよい。データは単独であってもよいし、より大きいデータベース、例えば、その他の発現プロファイルを含むデータベースの一部であってもよい。例えば、本発明の発現プロファイルデータは公共のデータベースの一部であってよい。コンピュータ読み取り可能形態はコンピュータ中におけるものであってよい。別の態様において、本発明は、遺伝子発現プロファイルデータを表示するコンピュータを提供する。
一つの態様において、本発明は、第一の細胞、例えば対象の細胞における1以上の「乳癌遺伝子」の発現レベルと、第二の細胞における1以上の「乳癌遺伝子」の発現レベルとの類似性を判定する方法を提供し、該方法は、第一の細胞における1以上の「乳癌遺伝子」の発現レベルを得ること、これらの値を第二の細胞における1以上の「乳癌遺伝子」の発現レベルに対応する値を含む記録を含むデータベース、およびプロセッサ指示を含むコンピュータに入力することを含み、プロセッサ指示は例えば、ユーザーインターフェイスであって、コンピュータに保存されているデータとの比較のために1以上の値の選択を受容することが出来る。コンピュータはさらに比較データの図または表またはその他のタイプの出力への変換手段を含んでいてもよい。
別の態様において、「乳癌遺伝子」の発現レベルを表す値を2以上の細胞から得た参照発現レベルを含む1以上のデータベースを含むコンピュータシステムに入力する。例えば、コンピュータは疾患細胞および正常細胞の発現データを含む。指示がコンピュータに提供され、コンピュータは入力したデータとコンピュータにあるデータとを比較して入力したデータが正常細胞または疾患細胞のいずれとより類似しているか否かを判定することが出来る。
別の態様において、コンピュータは乳癌の様々な段階の対象の細胞における発現レベルの値を含み、コンピュータは、コンピュータに入力した発現データと保存されたデータとを比較して、コンピュータにあるどの発現プロファイルに対して入力データがもっとも類似しているかを示す結果を生じさせて、例えば、対象における乳癌の段階を判定することが出来る。
さらに別の態様において、コンピュータにおける参照発現プロファイルは、その細胞が乳癌の治療に用いられる薬剤でインビボまたはインビトロで処理されている1以上の対象の乳癌細胞からの発現プロファイルである。薬剤でインビボまたはインビトロで処理された対象の細胞の発現データを入力すると、コンピュータは入力したデータとコンピュータにあるデータとを比較するよう指示され、コンピュータに入力された発現データが、薬剤に応答性である対象の細胞の発現データとより類似しているか、または薬剤に非応答性の対象の細胞の発現データとより類似しているかを示す結果を提供する。したがって、結果は対象が薬剤による治療に応答しそうであるか、または応答しそうでないかを示す。
一つの態様において、本発明は、以下を含むシステムを提供する:1または複数の遺伝子の遺伝子発現データを受容する手段;該1または複数の遺伝子のそれぞれからの遺伝子発現データと共通参照フレームとを比較する手段;および比較結果を提示する手段。このシステムはさらにデータをクラスタリングする手段を含んでいてもよい。
別の態様において、本発明は、以下を含む遺伝子発現データを分析するためのコンピュータプログラムを提供する: (i)複数の遺伝子についての入力遺伝子発現データを受容するコンピュータコード、および (ii)該複数の遺伝子のそれぞれからの該遺伝子発現データを共通参照フレームと比較するコンピュータコード。
本発明はまた、以下の工程を実行するためのプログラム指示を含む機械-読み取り可能またはコンピュータ-読み取り可能媒体を提供する: (i)クエリー細胞における乳癌に特徴的な1以上の遺伝子の発現レベルに対応する複数の値と、1以上の参照細胞の参照発現または発現プロファイルデータおよび細胞のタイプのアノテーションを含む記録を含むデータベースとを比較する工程;および(ii)発現プロファイルの類似性に基づいてクエリー細胞がどの細胞にもっとも類似するかを示す工程。参照細胞は、乳癌の様々な段階における対象からの細胞であってよい。参照細胞は特定の薬物治療に応答するかまたは応答しない対象からの細胞であってよく、所望により該薬物とインビトロまたはインビボでインキュベートされたものであってよい。
参照細胞は、いくつかの異なる治療に応答するかまたは応答しない対象からの細胞であってもよく、コンピュータシステムは対象にとって好ましい治療を示す。したがって、本発明は、乳癌患者の治療法を選択する方法を提供し、該方法は以下を含む: (i)患者の疾患細胞における乳癌に特徴的な1以上の遺伝子の発現レベルを提供する工程; (ii)それぞれが治療法に関連する複数の参照プロファイルを提供する工程、ここで、対象発現プロファイルおよび各参照プロファイルは複数の値を有し、各値は乳癌に特徴的な遺伝子の発現レベルを表す;および(iii) 対象発現プロファイルにもっとも類似する参照プロファイルを選択し、それによって該患者のための治療法を選択する工程。 好ましい態様において、工程 (iii)はコンピュータによって行われる。もっとも類似する参照プロファイルは、対応する発現データに関連する重み値を用いて複数の比較値を重みづけることによって選択してもよい。
2つの生物学的サンプルにおけるmRNAの相対的存在量は摂動(pertubation)としてスコアづけされ、その大きさを決定することができ(即ち、存在量が試験した mRNAの2つのソースにおいて異なる)、あるいは摂動しないものとされることもできる (即ち、相対的存在量が同じである)。様々な態様において、RNAの2つのソースの間の、少なくとも 約 25%倍 (1つのソースからのRNAが1つのソースにおいて他方のソースよりも25%豊富)、より通常は約 50%倍であり、さらに頻繁には約 2倍(2倍豊富)、3倍(3倍豊富)または5倍(5倍豊富)である差異は摂動としてスコアづけられる。摂動は計算および発現比較のためにコンピュータにより利用できる。
好ましくは、摂動を正または負であると同定することに加えて、摂動の大きさを判定するのが有益である。これは、上記のように、示差標識に用いた2つのフルオロフォアの発光の比を計算することにより、または当業者に明らかな類似の方法により、行うことが出来る。
コンピュータ読み取り可能媒体はさらに乳癌の段階の記述子または乳癌のための治療に対するポインタを含んでいてもよい。
本発明のシステムとの関連にて、作動において、遺伝子発現データを受容する手段、遺伝子発現データを比較する手段、提示する手段、規準化する手段、およびクラスタリングする手段は以下を含んでいてもよい:ハードウェア またはハードウェアおよびソフトウェアにて実行される、本明細書において記載するそれぞれの関数を備えるプログラムされたコンピュータ; コンピュータプログラムに指示されて、プログラムされたコンピュータの論理回路 またはその他の成分であって本明細書において具体的に同定される動作を行うもの;または本明細書において記載する特定の様式にてコンピュータを機能させうるコンピュータプログラムを表す実行可能な指示をコードされたコンピュータメモリ。
コンピュータは外側成分にリンクした内側成分を有していてもよい。内側成分はメインメモリと相互接続されたプロセッサ要素を含みうる。コンピュータシステムは200 MHzまたはより大きいクロック速度であって 32 MBまたはそれ以上のメインメモリを備えたIntel Pentium(登録商標)に基づくプロセッサであり得る。外側成分はマスストレージを含み得、これは1以上のハードディスクであってよい(これは典型的にはプロセッサおよびメモリとともにパッケージ化されている)。かかるハードディスクは典型的には1 GBまたはそれ以上の記憶容量である。その他の外側成分としては以下が含まれる:モニターであってよいユーザーインターフェイスデバイス、そして、「マウス」、またはその他のグラフィック入力デバイス、および/またはキーボードであってよい入力デバイス。印刷デバイスをコンピュータに連結してもよい。
典型的には、コンピュータシステムはまたネットワークリンクにもリンクしており、これはその他のローカルコンピュータシステムにリンクしたイーサネット(登録商標)の一部であってもよく、リモートコンピュータシステム、または広域コミュニケーションネットワーク、例えば、インターネットであってもよい。このネットワークリンクによりコンピュータシステムはその他のコンピュータシステムとデータおよびプロセッシングタスクを共有することが可能となる。
いくつかのソフトウェア成分がこのシステムの作動の際にメモリにロードされ、それらは当該技術分野において標準的であり、かつ、本発明に特有のものである。これらのソフトウェア成分は共同で本発明の方法にしたがってコンピュータシステムを機能させる。これらソフトウェア成分は典型的にはマスストレージに保存される。ソフトウェア成分は、コンピュータシステムおよびそのネットワーク相互接続の管理に必要な作動システムを表す。この作動システムは、例えば、Microsoft Windowのファミリー、LINUXに基づくシステムまたはその他であってよい。ソフトウェア成分は共通語を表し、機能は本発明に特有の方法を実行するプログラムを支援するこのシステムに便宜に存在する。多くの高または低レベルコンピュータ言語を本発明の分析方法をプログラムするのに利用できる。指示はランタイムの際に解釈されてもよいし、コンパイルされてもよい。好ましい言語としては、C/C++、およびJAVA(登録商標)が挙げられる。もっとも好ましくは、本発明の方法は式の記号入力およびプロセッシングの高レベル特定を可能とする数学的ソフトウェアパッケージにプログラムされ、これは用いるアルゴリズムを含み、それによって必要とするユーザーが、個々の式またはアルゴリズムを手続的にプログラムするのが自由となる。かかるパッケージとしてはMathworks (Natick、Mass.)からのMatlab、Wolfram Research (Champaign、Ill.)からのMathematica、またはMath Soft (Cambridge、Mass.)からのS-Plusが挙げられる。したがって、ソフトウェア成分は本発明の分析方法を手続的言語または記号パッケージにおいてプログラムされたものとして表す。好ましい態様において、コンピュータシステムはまた、乳癌に特徴的な1以上の遺伝子の発現レベルを表す値を含むデータベースも含む。該データベースは様々な細胞における乳癌に特徴的な遺伝子の1以上の発現プロファイルを含みうる。
例示的な態様において、本発明の方法を実施するために、ユーザーはまず発現プロファイルデータをコンピュータシステムにロードする。かかるデータはモニターおよびキーボードからユーザーが直接的に入力してもよいし、ネットワーク通信によりリンクしたその他のコンピュータシステムからのものでもよいし、リムーバブル保存媒体、例えば、CD-ROMまたはフロッピーディスク(登録商標)上のものでもよいし、ネットワークを介したものでもよい。次に、ユーザーは、比較および、例えば、共に変動する遺伝子を遺伝子群にクラスタリングする工程を行う発現プロファイル分析ソフトウェアを実行させる。
別の例示的な態様において、発現プロファイルは米国特許第6,203,987号に記載の方法を用いて比較される。ユーザーはまず発現プロファイルデータをコンピュータシステムにロードする。遺伝子セットプロファイル定義を、保存媒体またはリモートコンピュータ、好ましくはダイナミック遺伝子セットデータベースシステムからネットワークを介して、メモリにロードする。次にユーザーは発現プロファイルを予測発現プロファイルに変換する工程を行う予測ソフトウェアを実行させる。予測発現プロファイルを次いで表示する。
さらに別の例示的な態様において、ユーザーはまず予測プロファイルをメモリにロードする。ユーザーは次いで参照プロファイルをメモリにロードさせる。次に、ユーザーは、客観的にプロファイルを比較する工程を行う比較ソフトウェアを実行させる。
変異体ポリヌクレオチド配列の検出
さらに別の態様において、本発明は、対象が疾患の発症のリスクにある、例えば、悪性腫瘍、例えば乳癌を発症する素因があるかを判定する方法を提供し、それは、表1または2の配列のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのいずれかの異常な活性に関連するものであり、ここでポリペプチドの異常な活性は以下の少なくとも1つを特徴とする遺伝子病変の存在または非存在の検出によって特徴づけられる:
(i)マーカーポリペプチドをコードする遺伝子の完全性に影響を与える変化、または、
(ii) コードするポリヌクレオチドの異所性発現。
例えば、かかる遺伝子病変は以下の少なくとも1つの存在を確認することによって検出できる:
I.1以上のヌクレオチドのポリヌクレオチド配列からの欠失
II.1以上のヌクレオチドのポリヌクレオチド配列への付加
III.ポリヌクレオチド配列の1以上のヌクレオチドの置換
IV. ポリヌクレオチド配列の全体的染色体再配列
V.ポリヌクレオチド配列のメッセンジャー RNA 転写産物のレベルの全体的変化
VI.ポリヌクレオチド配列の異常修飾、例えば、ゲノムDNAのメチル化パターンの異常
VII.遺伝子のメッセンジャー RNA 転写産物の非野生型スプライシングパターンの存在
VIII.マーカーポリペプチドの非野生型レベル
IX. 遺伝子の対立遺伝子欠失
X. 遺伝子の対立遺伝子獲得
XI. マーカーポリペプチドの不適当な翻訳後修飾。
本発明は、コードするポリヌクレオチド配列における突然変異を検出するアッセイ技術を提供する。かかる方法としてはこれらに限定されないが以下が挙げられる:配列分析、サザンブロットハイブリダイゼーション、制限酵素部位マッピングを含む方法、および、分析すべきポリヌクレオチドとプローブとの間のヌクレオチド対形成の非存在の検出を含む方法。
特定の疾患または障害、例えば、遺伝的疾患または障害は、突然変異タンパク質を必ずしもコードしているわけではない特定の遺伝子の多型領域の特定の対立遺伝子変異体に関連する。したがって、対象における遺伝子の多型領域の特定の対立遺伝子変異体の存在により、対象は特定の疾患または障害を罹患しやすくなりうる。遺伝子における多型領域は、個体の集団における遺伝子のヌクレオチド配列を決定することにより同定することが出来る。多型領域が同定されると、特定の疾患との関連を、個体、例えば、特定の疾患、例えば、乳癌を発症している個体の特定の集団を研究することにより判定することが出来る。多型領域は遺伝子のいずれの領域にも位置する可能性があり、例えば、エキソン、エキソンのコードまたは非コード領域、イントロンおよびプロモーター領域に位置する可能性がある。
例示的な態様において、遺伝子またはその天然の突然変異体のセンスまたはアンチセンス配列、または対象遺伝子またはその天然の突然変異体に天然に関連する5'または3' 隣接配列またはイントロン配列にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列の領域を含むポリヌクレオチドプローブを含むポリヌクレオチド組成物が提供される。細胞のポリヌクレオチドはハイブリダイゼーションに利用できるようになり、プローブがサンプルのポリヌクレオチドと接触され、プローブのサンプルポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが検出される。かかる技術を用いて、ゲノムまたは mRNA レベルでの病変または対立遺伝子変異体、例えば、欠失、置換等を検出することが出来るし、mRNA 転写産物レベルを判定することも出来る。
好ましい検出方法は突然変異または多型部位とオーバーラップし、突然変異または多型領域の周囲に約 5、10、20、25、または30 ヌクレオチドを有するプローブを用いるアレル特異的ハイブリダイゼーションである。本発明の好ましい態様において、対立遺伝子変異体に特異的にハイブリダイズすることができるいくつかのプローブを、固相支持体、例えば、「チップ」に結合させる。一つの態様において、チップは遺伝子の少なくとも1つの多型領域のすべての対立遺伝子変異体を含む。固相支持体を次いで被験ポリヌクレオチドと接触させ、特異的プローブへのハイブリダイゼーションを検出する。したがって、1以上の遺伝子の多数の対立遺伝子変異体の実体が、簡便なハイブリダイゼーション実験において同定することが出来る。
特定の態様において、病変の検出は、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) (例えば、米国特許第4,683,195号および第4,683,202号を参照)、例えば、 アンカー PCRまたはRACE PCR、あるいは、リガーゼ連鎖反応 (LCR)におけるプローブ/プライマーの利用を含み、後者は遺伝子における点突然変異の検出に特に有用であり得る。単に例示的である態様において、方法は以下の工程を含む: (i)患者から細胞のサンプルを収集する工程、(ii) ポリヌクレオチド (例えば、ゲノム、mRNA またはその両方)をサンプルの細胞から単離する工程、(iii)ポリヌクレオチドサンプルと、ポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする1以上のプライマーとを、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよび増幅が(存在するならば)起こる条件下で接触させる工程、および (iv)増幅産物の存在または非存在を検出する工程、または増幅産物のサイズを検出し、コントロールサンプルと長さを比較する工程。本明細書において記載する突然変異を検出するために用いる技術のいずれかと組み合わせて、予備的増幅工程として用いるのにPCR および/または LCRが望ましいであろうことが予測される。
別の増幅方法としては以下が挙げられる: 自律的配列複製、転写増幅システム、Q ベータレプリカーゼ、またはその他のいずれかのポリヌクレオチド増幅方法。その後、増幅された分子を当業者に周知の技術を用いて検出する。これら検出スキームは、分子が非常に少数しか存在しない場合、ポリヌクレオチド分子の検出に特に有用である。
対象アッセイの好ましい態様において、サンプル細胞からの遺伝子における突然変異または遺伝子の対立遺伝子変異体は、制限酵素切断パターンにおける変化によって同定される。例えば、サンプルおよびコントロール DNAを単離し、(所望により)増幅し、1以上の制限エンドヌクレアーゼで消化し、断片長サイズをゲル電気泳動によって測定する。さらに;配列特異的リボザイムの使用をリボザイム切断部位の発生または喪失によって特定の突然変異の存在についてのスコア付けに利用することが出来る。
インサイチュハイブリダイゼーション
一つの側面において、方法は、所与のマーカーポリヌクレオチド由来のプローブを用いるインサイチュハイブリダイゼーションを含み、その配列は表1または2の配列またはそれに相補的な配列のポリヌクレオチド配列のいずれかから選択される。方法は、標識化ハイブリダイゼーションプローブと、所与のタイプの悪性腫瘍 、特に乳癌を有する可能性がある患者からの組織および悪性腫瘍ではないヒトからの正常組織のサンプルとを接触させる工程、および正常組織が標識される程度と比較して有意に異なる程度(例えば、少なくとも2倍または少なくとも5倍または少なくとも20倍または少なくとも50倍)に患者の組織をプローブが標識するか否かを判定する工程を含む。
ポリペプチド検出
本発明はさらに、以下の工程を含む、対象から得た細胞サンプルが異常量のマーカーポリペプチドを有するか否かを判定する方法を提供する:(a) 対象から細胞サンプルを得る工程、(b)そうして得られたサンプルにおけるマーカーポリペプチドの量を定量的に測定する工程、および(c)そうして測定したマーカーポリペプチドの量を既知の標準と比較し、それによって対象から得た細胞サンプルが異常量のマーカーポリペプチドを有するか否かを判定する工程。かかるマーカーポリペプチドは免疫組織化学アッセイ、ドットブロットアッセイ、ELISA 等によって検出することが出来る。
抗体
「乳癌遺伝子」ポリペプチドのエピトープに特異的に結合する、当該技術分野において知られているあらゆるタイプの抗体が作成可能である。本明細書において用いる抗体には、インタクトな免疫グロブリン分子、および「乳癌遺伝子」ポリペプチドのエピトープに結合することが出来るその断片、例えば、 Fab、F(ab)2、およびFvが含まれる。典型的には、少なくとも 6、8、10、または12の連続アミノ酸がエピトープの形成に必要である。 しかし、非連続アミノ酸を含むエピトープは、より多く、例えば少なくとも 15、25、または50 アミノ酸を必要としうる。
「乳癌遺伝子」ポリペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体は治療に用いることが出来、および免疫化学アッセイ、例えば、ウェスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学アッセイ、免疫沈降、またはその他の当該技術分野において知られている免疫化学アッセイにおいても利用できる。様々な免疫アッセイを用いて所望の特異性を有する抗体を同定することができる。競合結合または免疫放射線アッセイのための多数のプロトコールが当該技術分野において周知である。かかる免疫アッセイは典型的には、免疫原と、免疫原に特異的に結合する抗体との複合体形成の測定を含む。
典型的には、免疫化学アッセイに用いる場合、 「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、その他のタンパク質により得られる検出シグナルよりも少なくとも 5-、10-、または 20-倍高い検出シグナルを与える。好ましくは、「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する抗体は免疫化学アッセイにおいてその他のタンパク質を検出せず、「乳癌遺伝子」ポリペプチドを溶液から免疫沈降させることができる。
「乳癌遺伝子」ポリペプチドを用いて、哺乳類、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、またはヒトを免疫し、ポリクローナル抗体を産生することが出来る。所望により、「乳癌遺伝子」ポリペプチドをキャリアタンパク質、例えば、 ウシ血清アルブミン、チログロブリン、およびキーホールリムペットヘモシアニンと結合させてもよい。宿主の種に応じて、様々なアジュバントを、免疫応答を上昇させるのに用いることが出来る。かかるアジュバントとしてはこれらに限定されないが、フロイントアジュバント、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、および界面活性剤(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリムペットヘモシアニン、およびジニトロフェノール)が挙げられる。ヒトに用いられるアジュバントのなかでは、BCG (bacilli Calmette-Guerin)および リネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)が特に有用である。
「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体は培養中の連続細胞株によって抗体分子の産生を提供するあらゆる技術を用いて調製することが出来る。かかる技術としてはこれらに限定されないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBV ハイブリドーマ技術が挙げられる。
さらに、キメラ抗体の産生のため、マウス抗体遺伝子のヒト抗体遺伝子へのスプライシングにより適当な抗原特異性および生理活性を有する分子を得るために開発された技術も利用できる。モノクローナルおよびその他の抗体はまた、ヒト化することもでき、それにより、抗体が治療に用いられた場合に、抗体に対する免疫応答が上昇してしまうことから患者を守ることが出来る。かかる抗体は治療法に直接用いられるヒト抗体と十分に類似の配列のものであってもよいし、いくつかの鍵となる残基の変化を要求するものであってもよい。げっ歯類抗体とヒト配列との間の配列の差異はヒト配列におけるものと異なる残基を個々の残基の部位特異的突然変異誘発により置換することにより、または相補性決定領域を完全に移すことによって最小にすることが出来る。あるいは、ヒト化抗体は組換え方法を用いて産生することもできる。
あるいは、一本鎖抗体の産生について記載されている技術を、当該技術分野において知られている方法を用いて、「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する一本鎖抗体の産生に適合させることも出来る。関連する特異性を有するが、イディオタイプ組成が異なる抗体をランダムコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーから鎖シャッフリングによって作成することが出来る。
一本鎖抗体はまた、DNA 増幅方法、例えば、ハイブリドーマ cDNAを鋳型として用いるPCRを用いて構築することもできる。一本鎖抗体は一特異的または二特異的であり得、二価または四価であり得る。四価の二特異的一本鎖抗体または二価の二特異的 一本鎖抗体の構築も可能である。
一本鎖抗体をコードするヌクレオチド配列は手動または自動 ヌクレオチド合成を用いて構築でき、標準的組換え DNA 方法を用いて発現コンストラクトにクローニングされ、細胞に導入されて以下に記載するようにコード配列を発現する。あるいは、一本鎖抗体は、例えば、糸状ファージ技術を用いて直接的に産生することもできる。
「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する抗体はまた、リンパ球集団におけるインビボ産生の誘導または免疫グロブリン ライブラリーまたは高度に特異的な結合試薬のパネルのスクリーニングによっても産生することができる。
その他のタイプの抗体も構築でき、本発明の方法において治療に用いることが出来る。例えば、キメラ抗体または結合タンパク質を構築できる。
本発明による抗体は、当該技術分野において周知の方法によって精製することが出来る。例えば、抗体は、「乳癌遺伝子」ポリペプチドが結合しているカラムを通すことによりアフィニティー精製することができる。結合した抗体を次いで高塩濃度のバッファーを用いてカラムから溶出することが出来る。
免疫アッセイは一般的に、細胞サンプル中のタンパク質レベルを定量するのに用いられており、多くのその他の免疫アッセイ技術が当該技術分野において知られている。本発明は特定のアッセイ手順に限定されず、それゆえ同種および異種手順の両方を含む意図である。本発明により実施されうる例示的な免疫アッセイとしては、蛍光偏光免疫アッセイ (FPIA)、蛍光免疫アッセイ (FIA)、酵素免疫アッセイ (EIA)、比濁分析阻害免疫アッセイ (NIA)、酵素結合免疫測定アッセイ (ELISA)、およびラジオイムノアッセイ (RIA)が挙げられる。指標部分、即ち標識基を対象抗体に結合させることが出来、アッセイ設備と適合性の免疫アッセイ手順の利用可能性によってしばしば指示される方法の様々な使用の必要を満たすように選択される。上記の様々な免疫アッセイの実施に用いられる一般的技術は当業者に知られている。
別の態様において、表1の配列のいずれかのポリヌクレオチド配列によってコードされる少なくとも1つの 産物または表1または2 またはそれに相補的な配列の配列から選択されるポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも 2つの産物の、患者の生物学的液体 (例えば、血液または尿)中のレベルは、その患者の細胞中のマーカーポリヌクレオチド配列の発現レベルをモニターすることによって測定することが出来る。かかる方法は以下の工程を含むであろう:患者から生物学的液体のサンプルを得る工程、サンプル (またはサンプルからのタンパク質)をコードされるマーカーポリペプチドに特異的な抗体と接触させる工程、および抗体による免疫複合体形成の量を測定する工程、ここで免疫複合体形成の量はサンプル中のマーカーにコードされる産物のレベルを示す。この判定は正常個体から採取したコントロールサンプルまたは同じヒトから以前にまたは以後に得た1以上のサンプルにおける同じ抗体による免疫複合体形成の量と比較した場合に特に有意義である。
別の態様において、方法は細胞に存在するマーカーポリペプチドの量の測定に有用であり得、したがって障害、例えば、プラーク形成の進行に関連しうる。マーカーポリペプチドのレベルを予測に用いて、細胞のサンプルが、プラーク関連細胞であるかそれになりやすい細胞を含むかを評価することが出来る。マーカーポリペプチドレベルの観察を用いて、例えば、より厳密な治療の使用に関する決定を行うことが出来る。
上記のように、本発明の一つの側面は、患者から単離した細胞に関して、マーカーポリペプチドのレベルがサンプル細胞中において有意に低下しているか否かを判定するための診断アッセイに関する。「有意に低下」という用語は、類似の組織起源の正常細胞と比較してマーカーポリペプチドの細胞内含量が低下している細胞の細胞表現型をいう。例えば、細胞は正常コントロール細胞のマーカーポリペプチドの約 50%、25%、10%、または5%未満を有しうる。特に、該アッセイは、被験細胞におけるマーカーポリペプチドのレベルを評価し、好ましくは、測定されたレベルを少なくとも1つのコントロール細胞、例えば、正常細胞および/または既知の表現型の形質転換細胞において検出されたマーカーポリペプチドと比較する。
本発明において特に重要なのは、正常または異常マーカーポリペプチドレベルに関連する細胞数によって判定したマーカーポリペプチドのレベルを定量する能力である。特定のマーカーポリペプチド表現型を有する細胞数は、患者の予後に関連しうる。本発明の一つの態様において、病変のマーカーポリペプチド表現型は組織診における異常に高い/低いレベルのマーカーポリペプチドを有することが見いだされた細胞のパーセンテージとして測定される。かかる発現は免疫組織化学アッセイ、ドットブロットアッセイ、ELISA 等によって検出されうる。
免疫組織化学
組織サンプルが用いられる場合、免疫組織化学染色をマーカーポリペプチド表現型を有する細胞数の測定に用いることができる。かかる染色のために、複数ブロック(multiblock)の組織を組織診またはその他の組織サンプルから採取し、プロテアーゼ Kまたはペプシンなどの試薬を用いてタンパク分解加水分解に供する。特定の態様において、サンプル細胞から核画分を単離し、核画分におけるマーカーポリペプチドのレベルを検出するのが望ましいこともある。
組織サンプルは、試薬、例えば、ホルマリン、グルタルアルデヒド、メタノール等による処理により固定される。サンプルは次いで、マーカーポリペプチドに対する結合特異性を有する抗体、好ましくは 、モノクローナル抗体とインキュベートされる。この抗体は後の結合の検出のための標識と結合していてもよい。サンプルは免疫複合体の形成に十分な時間インキュベートされる。抗体の結合を次いでこの抗体に結合した標識によって検出する。抗体が標識されていない場合、例えば、抗マーカーポリペプチド抗体のアイソタイプに特異的な標識化二次抗体を使用すればよい。利用可能な標識の例としては、放射性核種、蛍光、化学発光、および酵素が挙げられる。
酵素を用いる場合、酵素の基質をサンプルに添加して着色または蛍光産物を生じさせるとよい。接合体における使用に好適な酵素の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ等が挙げられる。市販されていない場合、かかる抗体-酵素接合体は当業者に知られた技術によって容易に産生される。
一つの態様において、アッセイはドットブロットアッセイとして行う。ドットブロットアッセイは特にあらかじめ決定された数の細胞から産生された細胞非含有抽出物中のマーカーポリペプチドの量と相関させることによって、単一の細胞に関連するマーカーポリペプチドの平均量を判定するために組織サンプルが用いられる用途に有用である。
さらに別の態様において、本発明は、本発明の1以上のマーカーポリペプチドに対して作成された1以上の抗体の使用を考慮し、該ポリペプチドは表1または2の配列のポリヌクレオチド配列のいずれかによってコードされる。かかる抗体のパネルは、信頼できる乳癌の診断用プローブとして利用できる。本発明のアッセイは、細胞、例えば、マクロファージを含有する組織診サンプルと、1以上のコードされる産物に対する抗体のパネルとを接触させ、マーカーポリペプチドの存在または非存在を判定することを含む。
本発明の診断方法は、治療決定における指針または治療の追跡として利用することが出来る。例えば、マーカーポリペプチドのレベルの定量は、悪性腫瘍 、特に乳癌の現在または以前に用いられた治療の有効性および患者の予後に対するかかる治療の効果の指標となりうる。
上記の診断アッセイは予後判断アッセイとしての使用にも適合し得る。かかる適用は腫瘍の特徴的段階に起こる事象に対する本発明のアッセイの感受性に利点を有する。例えば、所与のマーカー遺伝子は非常に初期の段階で上方または下方制御され得るが、他のマーカー遺伝子はより後期の段階においてのみ特徴的に上方または下方制御されうる。かかる方法は、被験細胞のmRNAと悪性腫瘍進行の様々な段階において乳癌組織細胞にて異なる特徴的レベルにて発現する所与のマーカーポリヌクレオチド由来のポリヌクレオチドプローブとを接触させる工程、および、プローブの細胞のmRNAへのハイブリダイゼーションのおおよその量を判定する工程を含み、かかる量は細胞における遺伝子の発現レベルの指標となり、したがって細胞の疾患進行の段階の指標となる; あるいは、アッセイは被験細胞のタンパク質と接触させた、所与のマーカーポリヌクレオチドの遺伝子産物に特異的な抗体を用いて行うことが出来る。一連のかかる試験は、特定の疾患の進行の存在を示すだけでなく、臨床家が疾患にもっとも適当な治療方法を選択すること、および治療の成功の可能性を予測することを可能にする。
本発明の方法は、所与の乳癌素因の臨床経過の追跡に用いることも出来る。例えば、本発明のアッセイは患者からの血液サンプルに適用できる;乳癌について患者を治療した後、別の血液サンプルを採取し、試験を繰り返す。治療の成功の結果、乳癌組織細胞に特徴的な示差的発現を示さなくなり、おそらく正常レベルに近づくかまたはより優れたものとなるであろう。
ポリペプチド活性
一つの態様において、本発明は、1以上の 「乳癌遺伝子」ポリペプチドの活性を調節する候補治療薬剤のスクリーニング方法を提供し、それによって、悪性腫瘍、特に乳癌を罹患しているかその危険がある対象において「乳癌遺伝子」の上方制御の結果としてポリペプチドの活性が上昇していると、治療物質は悪性腫瘍または特に乳癌に罹患していないかその危険にないが、治療薬剤によって治療されていない対象におけるいくらかのポリペプチドの活性と比較して、ポリペプチドの活性を低下させるであろう。同様に、ポリペプチドの活性が「乳癌遺伝子」の下方制御の結果、悪性腫瘍または特に乳癌に罹患しているかその危険がある対象において低下している場合、治療薬剤は、悪性腫瘍または特に乳癌に罹患していないかその危険にないが、治療薬剤によって治療されていない対象における同じポリペプチドの活性と比較して、ポリペプチドの活性を上昇させるであろう。
表1または2に示す「乳癌遺伝子」ポリペプチドの活性は、当業者に知られた、特定のポリペプチドによって発揮される活性のタイプに特有のあらゆる手段により測定できる。
a)DNA結合タンパク質および転写因子
一つの態様において、「乳癌遺伝子」は、DNA結合タンパク質または転写因子をコードしうる。かかるDNA結合タンパク質または転写因子の活性は、例えば、プロモーターアッセイにより測定でき、該アッセイは、DNA結合タンパク質、または転写因子が、特定のプロモーターに連結した被験配列の転写を開始させる能力を測定するものである。一つの態様において、本発明は、かかるDNA結合タンパク質または転写因子の活性を調節する能力について被験化合物をスクリーニングする方法を提供し、それは、転写因子に応答性のプロモーターにより制御される被験遺伝子の発現における変化を測定することによる。
b)プロモーターアッセイ
プロモーターアッセイは、 対象の遺伝子 (例えば、甲状腺ホルモン)に制御されるプロモーターの制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子で安定にトランスフェクトされたヒト肝細胞癌細胞 HepG2を用いて確立された。トランスフェクションに使用されたベクター 2xIROlucは、tk最小プロモーターの前の8 bpスペーサーによって分断された2つの12 bp 逆方向回分構造の甲状腺 ホルモン応答性要素 (TRE)とルシフェラーゼ遺伝子を担持する。 被験培養物が、グルタミン、トリシン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、インスリン、セレン(selen)、トランスフェリンを追加した血清非含有イーグル最小必須培地中で96 ウェルプレートに播種され、加湿雰囲気中10 % CO2 で37℃にて培養された。 48 時間のインキュベーションの後、被験化合物または参照化合物 (例えば、L-T3、L-T4)の段階希釈および適当であれば補助刺激分子(終濃度 1 nM)を細胞培養物に添加し、インキュベーションを至適時間 (例えば、さらに 4-72 時間)継続した。細胞をTriton X100およびルシフェリンを含有するバッファーの添加により溶解し、T3 またはその他の化合物により誘導されるルシフェラーゼの発光をルミノメーターで測定した。各濃度の被験化合物について4連の試験を行った。各被験化合物についてのEC50 値をGraph Pad Prism Scientific ソフトウェアを用いて算出した。
スクリーニング方法
本発明は、「乳癌遺伝子」ポリペプチドまたは「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドと結合するか、その活性を調節する被験化合物のスクリーニングのためのアッセイを提供する。 被験化合物は好ましくは「乳癌遺伝子」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合する。より好ましくは、被験化合物は「乳癌遺伝子」 活性を被験化合物の非存在下と比較して少なくとも約 10、好ましくは 約 50、より好ましくは 約 75、90、または100%上昇または低下させる。
被験化合物
被験化合物は既に当該技術分野において知られている薬理学的薬剤でもよいし、薬理活性を有することが以前に知られていない化合物であってもよい。化合物は天然のものでもよいし、実験室で設計したものであってもよい。それらは、微生物、動物または植物から単離されたものであってもよいし、組換え産生されたものでもよいし、または当該技術分野において知られている化学的方法によって合成されたものでもよい。所望により、被験化合物は当該技術分野において知られている多数のコンビナトリアルライブラリー方法のいずれかを用いて得ることも出来る。例えばこれらに限定されないが、生物学的ライブラリー、空間的アドレス可能平行固相または液相ライブラリー、逆重畳を必要とする合成ライブラリー方法、1ビーズ1化合物ライブラリー方法、およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー方法が挙げられる。生物学的ライブラリーアプローチはポリペプチドライブラリーに限定されるが、それ以外の4つのアプローチは、ポリペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の低分子ライブラリーに適用できる。
分子ライブラリーの合成方法は当該技術分野において周知である。化合物のライブラリーは溶液中、またはビーズ上、DNAチップ、細菌または胞子、プラスミドまたはファージで提示することが出来る。
ハイスループットスクリーニング
被験化合物は、「乳癌遺伝子」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合する、または「乳癌遺伝子」 活性または「乳癌遺伝子」 発現に影響を与える能力について、ハイスループットスクリーニングを用いてスクリーニングすることができる。ハイスループットスクリーニングを用いることにより、多くの異なる化合物を平行に試験することが出来、それによって多数の被験化合物を迅速にスクリーニングすることができる。最も広く確立した技術は96-ウェル、384-ウェルまたは1536-ウェル マイクロタイタープレートを用いる。マイクロタイタープレートのウェルは典型的には5〜500μlの範囲のアッセイ容積を必要とする。プレートに加えて、多くの装置、材料、ピペッター、ロボット工学、プレート洗浄機、およびプレートリーダーがマイクロウェル形式に適合するように市販されている。
あるいは、遊離形式アッセイ、即ちサンプルの間に物理的障壁を有さないアッセイを利用できる。例えば、コンビナトリアルペプチドライブラリーのための単純な同種アッセイにおいて色素細胞 (メラノサイト) を用いるアッセイを利用することが出来る。細胞は培養皿中のアガロースの下に配置され、コンビナトリアル化合物を担持するビーズがアガロースの表面に配置される。コンビナトリアル化合物は部分的に化合物をビーズから遊離させる。活性化合物は暗色色素領域として可視化できる。というのは、化合物はゲルマトリックスに局所的に拡散し、活性化合物が細胞の色を変化させるからである。
遊離形式アッセイの別の例はアガロースゲルの内側の炭酸脱水酵素についての簡便な同種酵素アッセイであり、ゲル中の酵素はゲル全体の色変化をもたらしうる。その後、フォトリンカーを介してコンビナトリアル化合物を担持するビーズをゲルの内側に配置し、化合物をUV光により部分的に遊離させた。酵素を阻害した化合物は色変化が少ない阻害の局所領域として観察された。
別の例において、コンビナトリアルライブラリーは寒天中で増殖する癌細胞に対する細胞毒性効果を有する化合物についてスクリーニングされた [Salmon et al.、1996]。
別のハイスループットスクリーニング方法は多孔性マトリックス上の被験サンプルを用いる。1以上のアッセイ成分を、マトリックス 、例えば、ゲル、プラスティックシート、フィルター、またはその他の形態の容易に操作できる固体支持体の内側、表面または底面に位置させる。サンプルを多孔性マトリックスに導入すると、それは十分にゆっくりと拡散するため、アッセイは、被験サンプルを共にランさせなくても行うことが出来る。
結合アッセイ
結合アッセイのための被験化合物は好ましくは、例えば、酵素のATP/GTP 結合部位または「乳癌遺伝子」ポリペプチドの活性部位に結合し、それを占有する低分子であって、それによって正常の生理活性が妨げられるものである。かかる低分子の例としてはこれらに限定されないが小ペプチドまたはペプチド様分子が挙げられる。
結合アッセイにおいて、被験化合物または「乳癌遺伝子」ポリペプチドのいずれかが、検出可能な標識、例えば、蛍光、放射性同位体、化学発光、または酵素標識、例えば、 セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼを含みうる。「乳癌遺伝子」ポリペプチドに結合した被験化合物の検出は、例えば、放射能放出の直接カウンティング、シンチレーションカウンティング、または適当な基質の検出可能な産物への変換の測定により達成することが出来る。
あるいは、被験化合物の「乳癌遺伝子」ポリペプチドへの結合は相互作用物のいずれにも標識せずに測定することが出来る。例えば、ミクロメーター(microphysiometer)を用いて、被験化合物と「乳癌遺伝子」ポリペプチドとの結合を検出することが出来る。ミクロメーター(例えば、CytosensorJ)は、光アドレス可能な電位差測定センサー (LAPS)を用いて細胞がその環境を酸性化する速度を測定する分析装置である。この酸性化速度変化を、被験化合物と「乳癌遺伝子」ポリペプチドとの相互作用の指標として利用することが出来る[McConnell et al.、1992]。
被験化合物が「乳癌遺伝子」ポリペプチドに結合する能力の測定は、例えば、 リアルタイム生物分子相互作用分析 (BIA) [Sjolander & Urbaniczky、1991、およびSzabo et al.、1995]といった技術を用いても達成することが出来る。BIAは、生物特異的相互作用をリアルタイムに、相互作用物のいずれも標識せずに研究する技術である(例えば、BIAcore(商標))。光学的現象である鏡面プラズモン共鳴 (SPR)の変化を生体分子間のリアルタイム反応の指標として利用できる。
本発明のさらに別の側面において、「乳癌遺伝子」ポリペプチドは、ツーハイブリッドアッセイまたはスリーハイブリッドアッセイにおける「ベイト タンパク質」として、「乳癌遺伝子」ポリペプチドに結合または相互作用して、その活性を調節するその他のタンパク質の同定に用いることが出来る [例えば、米国特許第5,283,317号およびBrent WO 94/10300を参照]。
ツーハイブリッド システムは、多くの転写因子の分離可能な DNA-結合ドメインと活性化ドメインからなるモジュール性に基づく。簡単に説明すると、アッセイは2つの異なる DNA コンストラクトを用いる。例えば、1つのコンストラクトにおいて、「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、既知の転写因子 (例えば、GAL4)のDNA 結合ドメインをコードするポリヌクレオチドに融合させるとよい。他方のコンストラクトにおいて、未同定タンパク質 (「プレイ」または「サンプル」)をコードする DNA配列を既知の転写因子の活性化ドメインをコードするポリヌクレオチドと融合させるとよい。「ベイト」および「プレイ」 タンパク質がインビボで相互作用してタンパク質依存的複合体を形成することが出来ると、転写因子 のDNA-結合ドメインと活性化ドメインが近接する。この近接により、転写因子に応答性の転写制御部位に作動可能に連結したレポーター遺伝子 (例えば、LacZ)の転写が可能となる。レポーター遺伝子の発現が検出でき、機能的な転写因子を含む細胞コロニーを単離して、「乳癌遺伝子」ポリペプチドと相互作用する タンパク質をコードするDNA配列を得るのに利用することが出来る。
「乳癌遺伝子」ポリペプチド (またはポリヌクレオチド)または被験化合物のいずれかを固定化して、相互作用物の一方または両方の非結合形態から結合形態を分離するのを促進し、およびアッセイの自動化を行うのが望ましい場合もあり得る。したがって、「乳癌遺伝子」ポリペプチド (またはポリヌクレオチド)または被験化合物のいずれかを固体支持体に結合させてもよい。好適な固体支持体としてはこれらに限定されないが、ガラスまたはプラスティックスライド、組織培養プレート、マイクロタイターウェル、チューブ、シリコンチップ、または粒子、例えば、 ビーズ (例えばこれらに限定されないが、ラテックス、ポリスチレン、またはガラスビーズ)が挙げられる。当該技術分野において知られているあらゆる方法を「乳癌遺伝子」ポリペプチド (またはポリヌクレオチド) または被験化合物を固体支持体に結合させるのに用いることが出来、例えば、共有および非共有結合の使用、受動的吸着、それぞれポリペプチド (またはポリヌクレオチド)または被験化合物と固体支持体とに結合させた結合 部分の対が挙げられる。被験化合物は好ましくはアレイ中の固体支持体に結合させ、個々の被験化合物の位置を追跡可能とする。被験化合物の「乳癌遺伝子」ポリペプチド (またはポリヌクレオチド)への結合は反応物を含むのに好適ないずれの容器中で行ってもよい。かかる容器の例としては、マイクロタイタープレート、試験管および微量遠心管が挙げられる。
一つの態様において、「乳癌遺伝子」ポリペプチドは、「乳癌遺伝子」ポリペプチドを固体支持体に結合させるドメインを含む融合タンパク質である。例えば、グルタチオン S-トランスフェラーゼ融合タンパク質をグルタチオンセファロースビーズ (Sigma Chemical、St. Louis、Mo.)またはグルタチオン誘導化マイクロタイタープレートに吸着させ、これを次いで被験化合物または被験化合物と非吸着「乳癌遺伝子」ポリペプチドと合わせる;混合物を次いで複合体形成可能な条件下で インキュベートする(例えば、塩およびpHについて 生理的条件)。インキュベーションの後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄し、非結合成分を除去する。相互作用物の結合は上記のように直接的または間接的に測定できる。あるいは、結合の測定の前に複合体を固体支持体から解離させる。
タンパク質またはポリヌクレオチドを固体支持体に固定化するその他の技術も本発明のスクリーニングアッセイに用いることができる。例えば、「乳癌遺伝子」ポリペプチド (またはポリヌクレオチド)または被験化合物のいずれかを、ビオチンとストレプトアビジンとの接合を利用して固定化することができる。ビオチン化 「乳癌遺伝子」ポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または被験化合物は当該技術分野において周知の技術を用いてビオチン NHS (N-ヒドロキシスクシンイミド)から調製することが出来(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、Rockford、Ill.)、ストレプトアビジン-被覆96 ウェルプレートのウェルに固定化することが出来る(Pierce Chemical)。あるいは、「乳癌遺伝子」ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは被験化合物に特異的に結合するが、所望の結合部位、例えば、「乳癌遺伝子」ポリペプチドのATP/GTP 結合部位または活性部位に干渉しない抗体を、プレートのウェルに誘導体化してもよい。非結合標的またはタンパク質は抗体結合によってウェルに捕捉されうる。
かかる複合体を検出する方法としては、上記の GST-固定化複合体に加えて、「乳癌遺伝子」ポリペプチドまたは被験化合物に特異的に結合する抗体を用いる複合体の免疫検出、「乳癌遺伝子」ポリペプチドの活性の検出に依存する酵素結合アッセイ、および非還元条件下でのSDS ゲル電気泳動が挙げられる。
「乳癌遺伝子」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合する被験化合物のスクリーニングは、インタクトな細胞において行うことも出来る。「乳癌遺伝子」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む細胞はいずれも細胞に基づくアッセイ系において利用できる。「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドは細胞中の天然のものであってもよいし、例えば上記の技術を用いて導入したものであってもよい。被験化合物の「乳癌遺伝子」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドへの結合は上記のように測定される。
遺伝子発現の調節
別の態様において、「乳癌遺伝子」 発現を上昇または低下させる被験化合物が同定される。「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドを被験化合物と接触させ、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドのRNAまたはポリペプチド産物発現を測定する。被験化合物の存在下での適当な mRNAまたはポリペプチドの発現レベルを、被験化合物の非存在下でのmRNAまたはポリペプチドの発現レベルと比較する。被験化合物を次いでこの比較に基づいて発現の調節因子として同定することが出来る。例えば、mRNAまたはポリペプチドの発現が被験化合物の存在下での方がその非存在下よりも多い場合、被験化合物はmRNAまたはポリペプチド 発現の刺激因子またはエンハンサーとして同定される。あるいは、mRNAまたはポリペプチドの発現が被験化合物の存在下での方がその非存在下よりも少ない場合、被験化合物はmRNAまたはポリペプチド 発現の阻害因子として同定される。
細胞中の「乳癌遺伝子」mRNAまたはポリペプチド 発現のレベルは、mRNAまたはポリペプチドの検出のための当該技術分野において周知の方法によって測定することが出来る。定性的または定量的方法のいずれも利用できる。「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドのポリペプチド産物の存在は、当該技術分野において知られている様々な技術を用いて測定でき、例えば、免疫化学的方法、例えば、 ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロッティングおよび免疫組織化学が挙げられる。あるいは、ポリペプチド合成は、細胞培養物中でインビボで測定できるし、標識アミノ酸の「乳癌遺伝子」ポリペプチドへの取り込みの検出によりインビトロ 翻訳 システムにおいても測定できる。
かかるスクリーニングは細胞非含有アッセイ系またはインタクトな細胞のいずれにおいて行ってもよい。「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドを発現するいずれの細胞も細胞に基づくアッセイ系において利用できる。「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドは細胞中の天然のものであってもよいし、例えば上記の技術を用いて導入したものであってもよい。初代培養または樹立細胞株、例えば、 CHOまたはヒト 胚腎臓 293 細胞をいずれも利用することが出来る。
治療指標および方法
乳癌治療のための治療方法は主に、細胞増殖、細胞成長または血管新生に対する介入に有効な化学療法薬に依存する。ゲノムに基づく分子標的同定の出現により、治療介入のための新規な乳癌特異的標的を同定する可能性が拓け、悪性腫瘍患者、特に乳癌患者のより安全かつ、より有効な治療が提供されるようになった。したがって、新しく発見された乳癌関連遺伝子およびその産物を、革新的治療法の開発の手段として利用できる。例えば、Her2/neu 受容体キナーゼの同定は、特定のサブセットの腫瘍患者の上記のような治療のための革新的な新い機会を提供する。上記の生理的プロセスのいずれかにおいて重要な役割を果たす遺伝子は、乳癌標的として特徴づけることが出来る。ゲノムを介して同定された遺伝子または遺伝子断片は容易に1以上の異種発現 システムによって発現させ、機能的組換えタンパク質を産生することができる。これらタンパク質はその生化学的性質についてインビトロ で特徴決定され、その生化学的活性の化学的調節因子を同定するためのハイスループット分子スクリーニングプログラムにおける手段として利用される。標的遺伝子発現またはタンパク質活性の調節因子はこのようにてして同定でき、次いで、細胞モデルおよびインビボ疾患モデルにおいて治療活性について試験される。生物学的 モデルにおける反復試験によるリード化合物の最適化および詳細な薬動力学的および毒素学的分析は創薬の基礎およびヒトでの次なる試験の基礎を形成する。
本発明はさらに上記のスクリーニングアッセイによって同定される新規薬剤の使用に関する。したがって、適当な動物モデルにおける本明細書に記載のように同定された被験化合物の使用は、本発明の範囲内である。例えば、本明細書に記載のように同定される薬剤(例えば、調節剤、アンチセンスポリヌクレオチド分子、特異的抗体、リボザイム、またはヒト 「乳癌遺伝子」ポリペプチド結合分子)を動物モデルにおいて用いてかかる薬剤を用いた治療の効力、毒性または副作用を判定することが出来る。あるいは、本明細書に記載のように同定される薬剤を動物モデルにおいて用いてかかる薬剤の作用機構を判定することが出来る。さらに、本発明は、本明細書に記載の治療のための上記スクリーニングアッセイによって同定される新規薬剤の使用にも関する。
ヒト 「乳癌遺伝子」 活性に影響を与える試薬をヒト細胞に、インビトロまたはインビボで投与して、ヒト 「乳癌遺伝子」活性を上昇または低下させることが出来る。試薬は好ましくはヒト 「乳癌遺伝子」の発現産物に結合する。発現産物がタンパク質であれば、試薬は好ましくは抗体である。ヒト細胞のエキソビボでの治療のために、抗体を体から取り出した幹細胞の調製物に添加してもよい。クローン増殖を伴ってまたは伴わずに、当該技術分野において知られているように、細胞を次いで同じまたは別のヒトの体に戻すことができる。
一つの態様において、試薬はリポソームを用いて送達される。好ましくは、リポソームはそれが投与される動物において少なくとも約 30 分間、より好ましくは少なくとも約 1 時間、さらにより好ましくは少なくとも約 24 時間安定なものである。リポソームは、試薬、特にポリヌクレオチドを、動物、例えば、ヒトにおける特定の部位に標的化することができる脂質組成を含む。好ましくは、リポソームの脂質組成は、動物の特定の器官、、例えば、肺、肝臓、脾臓、心臓、脳、リンパ節および皮膚に標的化できるものである。
本発明に有用なリポソームは、その成分が細胞に送達される標的化細胞の原形質膜と融合することができる脂質組成を含む。好ましくは、リポソームのトランスフェクション効率は約 0.5 μg DNA/16 nmolの約 106 細胞に送達されたリポソーム、より好ましくは 約 1.0 μg DNA/16 nmolの約 106 細胞に送達されたリポソーム、さらにより好ましくは 約 2.0 μg DNA / 16 nmolの約 106 細胞に送達されたリポソームである。好ましくは、リポソーム は約 100 〜 500 nm、より好ましくは約 150 〜450 nm、さらにより好ましくは約 200〜400 nmの直径である。
本発明における使用に好適なリポソームには、例えば、当業者に知られた遺伝子送達方法において通常用いられるリポソームが含まれ、より好ましいリポソームには、ポリカチオン性脂質組成を有するリポソームおよび/またはポリエチレングリコールに接合したコレステロール骨格を有するリポソームが含まれる。所望により、リポソームはリポソームを特定の細胞タイプに対して標的化することができる化合物を含み、例えば、リポソームの外側表面に露出された細胞特異的リガンドが挙げられる。
リポソームと試薬 、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムとの複合体形成は当該技術分野において標準的な方法を用いて達成することが出来る(例えば、米国特許第5,705,151号参照)。好ましくは、約 0.1 μg 〜約 10 μgのポリヌクレオチドを約 8 nmolのリポソーム、より好ましくは約 0.5 μg〜 約 5 μg のポリヌクレオチドと約 8 nmolのリポソーム、さらにより好ましくは 約 1.0 μg のポリヌクレオチドを約 8 nmol リポソームと組み合わせる。
別の態様において、抗体を受容体-媒介標的化送達および受容体-媒介DNA 送達を用いてインビボで特定の組織に送達することができる。
治療有効用量の決定
治療有効用量の決定は当業者の能力の範囲内である。治療有効用量とは、治療有効用量の非存在下で起こるヒト 「乳癌遺伝子」活性と比較してヒト 「乳癌遺伝子」活性を上昇または低下させる活性成分の量をいう。
いずれの化合物についても、治療有効用量はまず、細胞培養アッセイまたは動物モデル、通常、マウス、ウサギ、イヌまたはブタにおいて最初に評価できる。動物モデルはまた、適当な濃度範囲および投与経路の判定にも利用できる。かかる情報を用いてヒトにおける有用な用量および投与経路を決定できる。
治療効力および毒性、例えば、ED50 (集団の50%において治療上有効な用量) およびLD50 (集団の50%に致死的な用量)は、細胞培養物または実験動物において標準的薬学的手順によって測定できる。治療効果に対する毒性効果の用量比は治療係数であり、比、LD50/ED50として表すことが出来る。
治療係数が大きい医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物実験から得たデータを用いてヒトへの使用のための範囲の用量を製剤する。かかる組成物に含まれる用量は好ましくは循環濃度範囲内であって、これは毒性がほとんどまたは全くないをED50含む。用量は用いられる用量形態、患者の感受性、および投与経路に依存してこの範囲内で変動する。
正確な用量は治療を必要とする対象に関する因子を鑑みて医師によって決定される。用量および投与は、十分なレベルの活性成分を提供するよう、または所望の効果を維持するように調整される。考慮されうる因子としては、疾患状態の重篤度、対象の全体的健康、対象の年齢、体重、および性別、食事、投与時間および頻度、薬物組合せ、反応感受性、および治療法に対する耐性/応答が挙げられる。長期作用性医薬組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて、3〜4日毎、1週間毎、または2週間に1回投与することが出来る。
通常の用量は0.1〜100,000 マイクログラムで総用量約 1 gまでで、投与経路に応じて変動し得る。特定の用量および送達方法についてのガイダンスは文献に記載されており、一般に当該技術分野における医師に入手可能である。当業者であれば、ヌクレオチドについては、タンパク質またはその阻害因子とは異なる製剤を使用するであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、症状、位置等に特有であろう。
試薬が一本鎖抗体である場合、抗体をコードするポリヌクレオチドを構築し、エキソビボまたはインビボでよく確立された技術を用いて細胞に導入することが出来る。かかる技術としては、例えばこれらに限定されないが、トランスフェリン-ポリカチオン-媒介 DNA トランスファー、裸(naked)またはカプセル封入された(encapsulated)核酸のトランスフェクション、リポソーム媒介細胞融合、DNA-被覆ラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、エレクトロポーレーション、遺伝子銃、およびDEAE-またはリン酸カルシウム媒介トランスフェクションが挙げられる。
抗体の有効なインビボ用量は約 5 μg〜約 50 μg/kg、約 50 μg〜約 5 mg/kg、約 100 μg〜約 500 μg/kg患者体重、および約 200〜約 250 μg/kg 患者体重の範囲である。一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドの投与については、有効なインビボ 用量は、約 100 ng〜約 200 ng、500 ng〜約 50 mg、約 1 μg〜約 2 mg、約 5 μg〜約 500 μg、および約 20 μg〜約 100 μg のDNA の範囲である。
発現産物がmRNAである場合、試薬は好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムである。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを発現するポリヌクレオチドを、細胞に上記の様々な方法によって導入することが出来る。
好ましくは、試薬は、「乳癌遺伝子」遺伝子発現または「乳癌遺伝子」ポリペプチド活性を試薬の非存在下と比較して少なくとも約 10、好ましくは 約 50、より好ましくは 約 75、90、または100%低下させる。「乳癌遺伝子」遺伝子の発現レベルまたは「乳癌遺伝子」ポリペプチドの活性を低下させるのに選択された機構の有効性は、当該技術分野において周知の方法を用いて評価することが出来る。かかる方法としては、例えば、ヌクレオチドプローブの「乳癌遺伝子」-特異的 mRNAへのハイブリダイゼーション、定量的 RT-PCR、「乳癌遺伝子」ポリペプチドの免疫学的検出または「乳癌遺伝子」 活性の測定が挙げられる。
上記のいずれの態様においても、本発明の医薬組成物のいずれも、その他の適当な治療薬と組合せて投与することが出来る。組合せ治療法において使用するための適当な薬剤の選択は、当業者が 常套の医薬慣行にしたがって行うことが出来る。治療薬の組合せは、上記の様々な障害の治療または予防に有効に相乗的に作用しうる。このアプローチを用いて、各薬剤のより少ない用量により治療効力を達成することが出来、したがって有害な副作用の可能性を低下させることが出来る。
上記の治療方法のいずれも、かかる治療法を必要とするあらゆる対象に適用することが出来、対象としては、例えば、鳥類および哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ、サルが挙げられ、もっとも好ましくは、ヒトである。
この開示において引用したすべての特許および特許出願は本明細書において引用により明らかに含まれる。上記開示は一般に本発明を説明するものである。より完全な理解は以下の具体的な実施例を参照することによって得られ、これは本発明を例示するために提供されたものであり、本発明の範囲を限定する意図はない。
医薬組成物
本発明はまた、治療効果を達成するために患者に投与されうる医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、例えば、「乳癌遺伝子」ポリペプチド、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチド、リボザイムまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド、「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する抗体、または「乳癌遺伝子」ポリペプチド活性の模倣体、アゴニスト、アンタゴニストまたは阻害因子を含みうる。組成物は単独でまたは少なくとも1つのその他の物質と組合せて投与することが出来、例えば、いずれかの無菌の生体適合性の医薬用キャリア中で投与されうる安定化化合物が挙げられ、キャリアとしては例えばこれらに限定されないが、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、および水が挙げられる。組成物は患者に単独でまたはその他の薬剤、薬物またはホルモンと組合せて投与することが出来る。
活性成分に加えて、これら医薬組成物は好適な医薬上許容されるキャリアを含んでいてもよく、例えば賦形剤および補助剤が挙げられ、これらは活性化合物の医薬的に用いられ得る調製物への加工を促進する。本発明の医薬組成物はあらゆる投与経路で投与することが出来、例えばこれらに限定されないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下または直腸手段が挙げられる。経口投与用の医薬組成物は当該技術分野において周知の医薬上許容されるキャリアを用いて経口投与に好適な用量にて製剤できる。かかるキャリアは医薬組成物の、患者により摂取される、錠剤、丸薬、キャンデー、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等としての製剤を可能とする。
経口使用のための医薬調製物は、活性化合物と固体賦形剤の組合せによって得られ、所望により結果として得られる混合物を粉砕し、顆粒混合物を、好適な補助剤の添加後に所望により加工し、錠剤またはキャンデーコアを得る。好適な賦形剤は、炭水化物またはタンパク質充填剤であり、例えば、以下が挙げられる:糖、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、または ソルビトール; トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモまたはその他の植物由来のデンプン; セルロース、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはナトリウムカルボキシメチルセルロース; ゴム、例えば、アラビアおよびトラガカント; およびタンパク質、例えば、ゼラチンおよびコラーゲン。 所望により、崩壊剤または可溶化剤を添加してもよく、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムが挙げられる。
キャンデーコアは好適なコーティングと共に用いてもよく、例えば、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタンを含んでいてもよい濃糖類溶液、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物が挙げられる。製品の同定または活性化合物の量、即ち、用量を特徴づけるために、色素またはピグメントを錠剤またはキャンデーコーティングに添加してもよい。
経口的に使用できる医薬調製物は、ゼラチン製の押し込み型カプセル、および軟らかい、ゼラチンおよびコーティングで出来た密封カプセルを含み、例えばコーティングとしては、グリセロールまたはソルビトールが挙げられる。押し込み型カプセルは、充填剤または結合剤、例えば、ラクトースまたはデンプン、滑沢剤、例えば、 タルク またはステアリン酸マグネシウム、および所望により、安定化剤と混合して活性成分を含んでいてもよい。軟カプセルにおいて、活性化合物は、安定化剤とともにまたはそれを含まず、好適な液体、例えば、脂肪油、液体または液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁されていてもよい。
非経口投与に好適な医薬製剤は、水溶液、好ましくは生理的に適合性のバッファー、例えば、 ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理的緩衝食塩水中に製剤すればよい。水性注入懸濁液は、懸濁液の粘度を上昇させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランを含んでいてもよい。さらに、活性化合物の懸濁液は適当な油性注入懸濁液として調製してもよい。好適な親油性溶媒または媒体としては、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、 オレイン酸エチルまたはトリグリセリド、またはリポソームが挙げられる。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーも送達に有用で有り得る。所望により、懸濁液は好適な安定化剤または化合物の溶解度を高める薬剤を含んでいてもよく、それによって高度に濃縮された溶液の調製物が得られる。局所または経鼻投与のために、特定の障壁の浸透に適当な浸透剤を製剤に使用する。かかる浸透剤は一般に当該技術分野において知られている。
本発明の医薬組成物は当該技術分野において知られているようにして、例えば、常套の混合、溶解、顆粒化、キャンデー製造、粉砕、乳化、カプセル封入、封入、または凍結乾燥プロセスの手段によって製造できる。医薬組成物は塩として提供してもよく、多くの酸を用いて形成でき、例えばこれらに限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを用いることが出来る。塩は、水性またはその他のプロトン性溶媒に、対応する遊離塩基形態よりも溶解しやすい傾向がある。別の場合において、好ましい調製物は凍結乾燥粉末であり得、これは以下のいずれかまたはすべてを含んでいてもよい: 150 mM ヒスチジン、0.1%2% スクロース、および27% マンニトール、pH範囲、4.5〜 5.5、これはバッファーに使用前に混合する。
医薬組成物が調製された後、それらは適当な容器に入れ、意図される症状の治療用であると標識すればよい。かかる標識には投与量、頻度、方法が含まれる。
材料および方法
本発明の一部として、方法を例示のために、限定のためでなく記載し、以下の側面の少なくとも一部を示す。
乳癌または癌に関与する遺伝子を同定する一つの戦略は一般に、染色体性に増幅された遺伝子の検出である。以下のサブセクションに多数の実験系を記載し、これを染色体性に増幅された遺伝子の検出に用いることが出来る。一般に、増幅された遺伝子または染色体座の検出は、分析されるサンプル中の腫瘍細胞の量に依存する。例えば、サンプルが100 % 腫瘍細胞を含む場合、対立遺伝子の一方または両方のいずれが増幅されたかに応じて、少なくとも3または4コピーの増幅された染色体領域を検出するであろう。より多くの増幅も可能である (5コピー、10コピーまたは数百コピーまで)。サンプルが100 %未満の腫瘍細胞を含む場合、または腫瘍が不均一な場合、コピー数は3、4 、5、6などといった整数にはならず、コピー数は小数値、例えば3.7または6.4等となろう。様々な腫瘍サンプルにおける染色体性に増幅された遺伝子の検出を以下により詳細に記載する。
本発明は1以上のマーカーの検出による悪性腫瘍の診断、予後、予測、予防または治療の補助のための方法に関し、ここでマーカーは悪性腫瘍において変化している1(またはそれ以上)の染色体領域に位置する遺伝子またはその断片またはゲノム核酸配列である。
本発明はさらに、以下である1以上のマーカーの検出による悪性腫瘍の診断、予後、予測、予防または治療の補助のための方法に関する:
a)悪性腫瘍において変化している1以上の染色体領域に位置する遺伝子;および、
b)
(i)受容体およびリガンド/または
(ii)同じシグナル伝達経路のメンバー;または
(iii)相乗的シグナル伝達経路のメンバー; または
(iv)拮抗的シグナル伝達経路のメンバー;または
(v)転写因子および転写因子結合部位。
本発明は側面 1または2の方法に関し、ここで、悪性腫瘍は、乳癌、卵巣癌、胃癌、大腸癌、食道癌、間葉癌、膀胱癌または非小細胞肺癌である。
本発明は少なくとも1つのマーカーの検出による悪性腫瘍の予測、診断または予後判断方法を提供し、ここでマーカーはVNTR、SNP、RFLPまたはSTSであり、マーカーは増幅により悪性腫瘍において変化している1つの染色体領域に位置し、マーカーは同じ個体の癌および/または 非癌組織または生物学的サンプルにおいて検出されることを特徴とする。
特に本発明は、少なくとも1つのマーカーの検出による悪性腫瘍の診断、予後、予測、予防または治療の補助のための方法を提供し、以下から選択されるマーカーが検出されることを特徴とする:
a)少なくとも1つの表1または2の配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
b) (a) において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2のそれぞれの 配列において特定されたものと同じ生理機能を発揮するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
c) (a)および(c) において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生(generation)によって異なる配列であり、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
d) (a)〜(d) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
e) (a)〜(e) において特定したポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ 配列によってコードされる精製ポリペプチド;
f)少なくとも1つの表1または2の配列を含む精製ポリペプチド。
本発明の別の目的は少なくとも 2つのマーカーの検出により、悪性腫瘍の診断、予後、予測、予防または治療の補助のための方法を提供することであり、ここで以下の群から選択される少なくとも2つのマーカーが検出される:
a)少なくとも1つの表1または2の配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
b) (a) において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2のそれぞれの配列について特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
c) (a)および(b) において特定したポリヌクレオチドとは、遺伝コードの発生(generation)のために異なる配列であり、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
d) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
e) (a)〜(d) において特定したポリヌクレオチド配列またはポリヌクレオチドアナログによってコードされる精製ポリペプチド;
f)少なくとも1つの表1または2の配列を含む精製ポリペプチド。
したがって、本発明は1〜8のいずれかの側面の方法にも関し、ここで検出方法はPCR、アレイまたはビーズの使用を含み、 診断用キットは側面1〜9のいずれかの方法を実施する指示を含む。
本発明はさらに、以下を含む悪性腫瘍の診断、予後、予測、予防または治療の補助のための組成物を含む:
a)以下のための検出薬剤:
i)少なくとも1つの表1または2の配列を含むいずれかのポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
ii)(a) において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、いずれかのポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
iii) (a)および(b) において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生(generation)のために異なる配列であって、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
iv) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
v) (a)〜(d) において特定したポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ 配列によってコードされるポリペプチド;
vi)少なくとも1つの表1または2の配列を含むポリペプチド;
または、
b)以下から選択される少なくとも2つのマーカーのための少なくとも2つの検出薬剤:
i)少なくとも1つの表1または2の配列を含むいずれかのポリヌクレオチド;
ii) (a) において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、いずれかのポリヌクレオチド;
iii) (a)および(b) において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生(generation)のために異なる配列であって、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
iv) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチド
v) (a)〜(d) において特定したポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;
vi)少なくとも1つの表1または2の配列を含むポリペプチド。
別の側面において、本発明は複数のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログを含むアレイに関し、ここで以下から選択される各ポリヌクレオチドが固体支持体に結合される:
a)少なくとも1つの表1または2の配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
b) (a)において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
c) (a)および(b)において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生(generation)により異なる配列であり、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
d) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ。
さらなる側面において、本発明は以下からなる群から選択されるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログによってコードされるポリペプチドの活性を制御する薬剤のスクリーニング方法に関する:
a)少なくとも1つの表1または2の配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
b) (a)において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
c) (a)および(b)において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生(generation)により異なる配列であり、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
d) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
該方法は以下の工程を含む:
i)被験化合物と(a)〜(d) において特定したポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1つのポリペプチドとを接触させる工程 ;および、
ii)被験化合物のポリペプチドへの結合を検出する工程、ここで、ポリペプチドに結合した被験化合物は、悪性腫瘍の予防または治療のためにポリペプチドの活性を調節する治療薬剤候補として同定される。
別の側面において、本発明は、以下からなる群から選択されるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログによってコードされるポリペプチドの活性を制御する薬剤のスクリーニング方法に関する:
a)少なくとも1つの表1または2の配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
b) (a)において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
c) (a)および(b)において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生(generation)により異なる配列であり、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
d) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表す、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ:
該方法は以下の工程を含む:
i) 被験化合物と(a)〜(d) において特定したポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1つのポリペプチドとを接触させる工程; および、
ii) 表 2または 3のそれぞれの 配列について特定されるポリペプチドの活性を検出する工程、ここで、活性を上昇させる被験化合物は悪性腫瘍におけるポリペプチド活性を上昇させる候補予防または治療薬として同定され、ポリペプチドの活性を低下させる被験化合物は、悪性腫瘍におけるポリペプチド活性を低下させる治療薬剤候補として同定される。
本発明はまた、以下からなる群から選択されるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログの活性を制御する薬剤のスクリーニング方法を提供する;
a)少なくとも1つの表1または2の配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
b) (a)において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
c) (a)および(b)において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生(generation)により異なる配列であり、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
d) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
該方法は以下の工程を含む:
i)被験化合物と(a)〜(d) において特定した少なくとも1つのポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログとを接触させる工程、および、
ii)被験化合物のポリヌクレオチドとの結合を検出する工程、ここで、ポリヌクレオチドに結合した被験化合物は、悪性腫瘍におけるポリヌクレオチドの活性を制御する候補予防または治療薬として同定される。
別の側面において、本発明は以下の、悪性腫瘍の診断、予後、予測、予防または治療の補助のための組成物または治療薬の調製における使用に関する:
a)少なくとも1つの表1または2の配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
b) (a) において特定したポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
c) (a)および(b)において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生(generation)により異なる配列であり、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
d) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表す、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
e) (a)〜(d) において特定したポリヌクレオチド配列の1つを特異的に標的化するアンチセンス分子;
f) (a)〜(d) において特定したポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ 配列によってコードされる精製ポリペプチド;
g) (a)〜(d) において特定したポリヌクレオチドまたは (f) において特定したポリペプチドの一つに結合することができる抗体;
h) (a)〜(d) において特定したポリヌクレオチド配列または(f) において特定したポリペプチドの量または活性を調節する側面 11〜13の方法のいずれかによって同定される試薬。
本発明はまた側面 14の使用に関し、ここで疾患は、乳癌である。
本発明の使用において、以下からなる群から選択されるポリペプチドの活性を制御する試薬を同定する:
a)少なくとも1つの表1または2の配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログのいずれかによってコードされるポリペプチド;
b)少なくとも1つの表1または2の配列を含むいずれかのポリヌクレオチド にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするか、または、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログのいずれかによってコードされるポリペプチド;
c) (a)および(b)において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生(generation)により異なる配列であり、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログのいずれかによってコードされるポリペプチド;
d) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表し、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログのいずれかによってコードされるポリペプチド;
ここで、該試薬は側面11〜13のいずれかの方法によって同定される。
かかる試薬は以下からなる群から選択されるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログの活性を制御する試薬である:
a)表1または2の少なくとも1つの配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
b) (a)において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
c) (a)および(b)において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生(generation)により異なる配列であり、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
d) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表す、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
ここで該試薬は側面11〜13のいずれかの方法によって同定される。
かかる試薬を用いて以下、または、側面 16または17の試薬および医薬上許容される キャリアを含む医薬組成物を作ることが出来る:
a)以下からなる群から選択される少なくとも1つの ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログを含む発現ベクター:
i) 少なくとも1つの表1または2の配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
ii) (a)において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
iii.) (a)および(b)において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生(generation)により異なる配列であり、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
iv) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表す、表1または2におけるそれぞれの配列において特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ。
別の側面において、本発明は悪性腫瘍の危険にあるか罹患している対象からの細胞における以下を含むコンピュータ-読み取り可能媒体に関する:
a)表1の少なくとも1つのポリヌクレオチド配列の発現レベルを表す少なくとも1つの デジタルコード値;
b)表1または2から選択される少なくとも 2つのポリヌクレオチド配列の発現レベルを表す少なくとも2つのデジタルコード値。
さらに1以上の染色体領域のコピー数が定量的 PCRによって検出される、染色体変化の検出方法も記載される。
変化した染色体領域に位置する遺伝子によってコードされる個々の mRNAの相対的存在量が検出される、染色体変化の検出方法のさらなる詳細が与えられる。
実施例 1
定量的 PCRおよび発現プロファイリング
a)定量的 PCRおよび RT-PCR
定量的 PCR 方法による、遺伝子発現および染色体座のコピー数の評価の詳細な分析のために、興味あるゲノム領域に隣接するプライマーおよび中間に(in-between) ハイブリダイズする蛍光標識プローブを利用する。PE Applied Biosystems (Perkin Elmer、Foster City、CA、USA) のPRISM 7900 配列検出システムと蛍光レポーター色素およびクエンチャー色素の両方で標識されたオリゴヌクレオチドからなる蛍光発生プローブ技術を用いて、表1および 2に列挙する遺伝子を発現測定またはDNA 評価の実施により分析した。プローブ特異的産物の増幅により、プローブの切断が起こり、レポーター蛍光が上昇する。プライマーおよびプローブはPrimer Express ソフトウェアを用いて選択した (プライマーおよびプローブ配列については表3参照); RNA-特異的プライマーを可能であればmRNAには存在しない大きいイントロン配列の上に設計した。すべてのプライマー対は常套のPCR 反応によって特異性について確認した。サンプル DNAの量を標準化するためにMMP28 およびHNRPDLを参照遺伝子として選択し (ヒトゲノム中2コピー、一般に増幅されない)、 RNAについてはいくつかの参照遺伝子を選択した(GAPDH、RPL37A SRP14、NONO、FNTA、CD63、RPL9)。 TaqMan 確証実験を行ったところ、標的およびコントロール増幅の効率がおよそ同じであることが示され、これは当業者に知られた比較 ΔΔCT 方法による遺伝子発現の相対的定量に必要な条件である。
Perkin Elmerにより提供された技術と同様に、その他の技術装置、例えばRoche Inc.からのLightcycler (商標)またはStratagene Inc.からの iCyclerを用いることも出来る。
b) DNA マイクロアレイを利用する発現プロファイリング
発現プロファイリングはAffymetrix Array Technologyを用いて行うことが出来る。mRNAのかかるDNA-アレイまたはDNAチップへのハイブリダイゼーションにより、アレイの特定の位置のシグナル強度によって各転写産物の発現値を同定することができる。通常、これらのDNA-アレイはcDNA、オリゴヌクレオチドまたはサブクローニングされた DNA 断片のスポッティングにより生産される。Affymetrix 技術の場合、およそ410,000 個のオリゴヌクレオチド配列をシリコンウェハ表面の決まった位置に合成した。オリゴマーの最小の長さは12 ヌクレオチドであり、25 ヌクレオチドまたは問題の転写産物の全長が好ましい。発現プロファイリングは、ナイロンまたは ニトロセルロース 膜に結合したDNAまたはオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによって行うことも出来る。ハイブリダイゼーション由来のシグナルの検出は、比色、蛍光、電気化学的、電気的、光学的または放射性読み取りによって得られる。アレイ構築の詳細な説明は上記およびその他の引用特許に記載されている。分析すべき染色体領域の定量的および定性的変化を判定するためには、かかるゲノム変化を含むと考えられる腫瘍組織からのRNAを全トランスクリプトームについての発現プロファイルに基づき、良性組織 (例えば、上皮乳房組織、またはマイクロダイセクション管組織)から抽出したRNAと比較しなければならない。わずかに修飾を施し、サンプル調製プロトコールは Affymetrix GeneChip Expression Analysis Manual (Santa Clara、CA)にしたがった。腫瘍または良性組織、組織診、細胞単離物または細胞含有体液からの全 RNA 抽出および単離はTRIzol (Life Technology、Rockville、MD)および Oligotex mRNA Midi kit (Qiagen、Hilden、Germany)を用いて行うことが出来、エタノール沈殿工程を行って濃度1 mg/mlとしなければならない。5〜10 mgのmRNAをSuperScript System (Life Technology)による二本鎖 cDNAの作成に用いた。 第一鎖 cDNA 合成は T7-(dT24) オリゴヌクレオチドでプライムした。cDNAはフェノール/クロロホルムにより抽出でき、エタノール沈殿して終濃度1mg /mlとした。作成したcDNAから、cRNA はEnzo's (Enzo Diagnostics Inc.、Farmingdale、NY) インビトロ転写キットを用いて合成できる。同じ工程において、cRNAをビオチンヌクレオチドであるBio-11-CTP およびBio-16-UTP (Enzo Diagnostics Inc.、Farmingdale、NY) により標識できる。標識およびクリーンアップ (Qiagen、Hilden (Germany))の後、cRNAを次いで適当な断片化 バッファー (例えば、40 mM Tris-Acetate、pH 8.1、100 mM KOAc、30 mM MgOAc、35 分間 、94℃)中に断片化しなければならない。 Affymetrix プロトコールにしたがって、断片化したcRNA はHG_U133 アレイA および Bに24 時間、60 rpm、45℃ ハイブリダイゼーション オーブンでハイブリダイズさせなければならず、これらはそれぞれおよそ40.000のプローブされた転写産物を含む。ハイブリダイゼーション工程の後、チップ表面を洗浄し、ストレプトアビジン フィコエリトリン (SAPE; Molecular Probes、Eugene、OR)でAffymetrix 流体工学ステーション中で染色しなければならない。染色を増幅させるために、二次標識化工程を導入でき、これは推奨されるが強要はされない。ここでSAPE 溶液を2回抗ストレプトアビジン ビオチン化 抗体とともに添加しなければならない。プローブアレイへのハイブリダイゼーションは、蛍光定量スキャニング (Hewlett Packard GeneArray Scanner; Hewlett Packard Corporation、Palo Alto、CA)により検出することが出来る。
ハイブリダイゼーションおよびスキャニングの後、マイクロアレイイメージを質コントロールのために分析し、重大なチップ欠陥またはハイブリダイゼーションシグナルにおける異常を探すことができる。Affymetrix GeneChip MAS 5.0 ソフトウェア またはその他のマイクロアレイイメージ分析ソフトウェアのいずれも利用できる。一次データ解析は、製造業者によって供給されたソフトウェアによって行うべきである。
遺伝子分析の場合、本発明の一つの態様において、一次データはさらにバイオインフォマティクス手段およびさらなるフィルター基準によって分析した。バイオインフォマティクス分析は以下に詳細に説明する(データ解析)。
c)データ解析
Affymetrix 測定技術 (Affymetrix GeneChip Expression Analysis Manual, Santa Clara、CA)によると、1つのチップでの単一遺伝子発現測定により平均差異値および絶対スコア(absolute call)が得られる。各チップは遺伝子または cDNA クローン当たり16〜20のオリゴヌクレオチドプローブ対を含む。これらプローブ対は完全に一致したセットおよびミスマッチしたセットを含み、それらの両方が、平均差異、または発現値、各プローブ対についての強度差異の尺度の計算に必要であり、それはミスマッチ強度を完全一致強度から差し引くことによって計算される。これはプローブ対の間のハイブリダイゼーションの変動および蛍光強度に影響しうるその他のハイブリダイゼーションアーティファクトを考慮している。平均差異はその遺伝子の発現値を表すと考えられる数値である。絶対スコアは値、「A」(非存在)、「M」(わずか)、または「P」(存在) を取り得、一つのハイブリダイゼーションの質を示す。本発明者らは平均差異から得られる定量的情報と絶対スコアから得られる定性的情報の両方を用いて正常集団からの生物学的サンプルに比較して乳癌個体からの生物学的サンプルにおいて示差的に発現している遺伝子を同定した。Affymetrix以外のアルゴリズムを用いても、本発明者らは比較の際に同じ発現値および発現差異を表す異なる数値を得た。
正常集団または様々な処理群と比較した乳癌群の一つにおける示差的発現 E は以下のように計算した。乳癌集団におけるnの平均差異値、 d1、d2、...、dn および正常個体集団におけるmの平均差異値s c1、c2、...、cm が与えられると、それは下記式によって計算される:
Figure 2008524986
iおよびjの1以上の値についてdj<50またはci<50であれば、これらの特定の値ci および/または djを「人為的」発現値の50とする。これらEの特定の計算によりTaqMan 結果の正確な比較が可能となる。
Eが1.5以上であり、乳癌集団において絶対スコアが「P」である数がn/2より大きい場合、正常に対して乳癌においてある遺伝子は上方制御されているという。
Eが1.5以下であり、正常集団において絶対スコアが「P」である数がm/2より大きい場合、正常に対して乳癌においてある遺伝子は下方制御されているという。
示差的に制御される遺伝子の最終リストは、正常集団からの生物学的サンプルと比べて乳癌個体からの生物学的サンプルにおいて上方制御および下方制御されているすべての遺伝子からなる。医薬への適用にとって興味深いリスト上の遺伝子はTaqManによって最終的に確証した。転写産物の発現値/挙動間の良好な相関が両方の技術によって観察できた。
同定されたARCHEON内の単一の遺伝子の示差的発現の情報だけでなく、いくつかのメンバーの共制御の情報も、予測、診断、予防および治療目的に重要であるため、本発明者らは 発現データと公共データベースから得た染色体位置 (例えば、ゴールデンパス(golden path))上の情報とを組み合わせて所与の腫瘍サンプルの全トランスクリプトームの図を開発した。この技術によって既知または被疑ゲノム領域が調べられるだけでなく、より価値の高い、染色体連鎖(linkage)を伴う制御を失った新しい領域を同定することができる。これはその他のタイプの腫瘍またはウイルス組込みおよび染色体再配列において価値がある。SQLに基づくデータベース検索に基づき、発現、測定の定性的値 (Affymetrix MAS 5.0 ソフトウェアにより示される)、DNAチップハイブリダイゼーション以外の技術由来の発現値および染色体連鎖(linkage)に関する情報を検索することが出来る。
実施例 2
ARCHEONの同定
a) 染色体での関係およびヒトゲノムでの順序における遺伝子または遺伝子プローブの同定および局在決定 (例えば、いわゆるAffymetrix アレイ HG-U95A-E またはHG-U133A-B上のプローブセットにより表される)
上記に詳細に説明したものよりも大きな染色体変化または異常を同定するためには、十分な数の遺伝子、転写産物またはDNA-断片が必要である。アレイに基づくCGHを使用する場合、染色体領域をカバーするプローブの密度は転写される遺伝子に限定される必要はないが、RNAをプローブ材料として用いる場合、密度は染色体上の遺伝子の距離によって与えられる。Affymetrix Inc. によるDNA-マイクロアレイは例えば40.000 -60.000 プローブセットによって表される今まで既知のヒトゲノムからのすべての転写産物を含んでいる。これら短いDNA-オリゴマー配列の、California大学、Santa CruzまたはNCBIから得られるいわゆる「ゴールデンパス」により表されるヒトゲノムの公共配列へのBLASTマッピングおよびソーティングにより、組織試料の全ランスクリプトームの染色体表示が進展している。個々の染色体領域の図表示および参照トランスクリプトームと比較した過剰存在または過小存在転写産物の色識別により、DNA 獲得および喪失領域が同定できる。その他のDNA アレイも同様に利用でき、例えば、ユーザーがスポットするアレイも利用できる。
b) IHCと定量的 PCR (PCR 核型分析)の組合せまたは定量的 PCRによる直接的な遺伝子コピー数の定量
通常1つの5 μmの厚さのパラフィン包埋組織切片を用いてサンプルからのゲノムDNAを得る。組織切片が比色 IHCにより染色されている場合、脱パラフィンの後に、疾患関連細胞を含む領域を同定する。染色領域をメスによりマクロダイセクションし、微量遠心管に移す。これら単離組織切片のゲノムDNA を適当なバッファーを用いて抽出する。単離DNA を次いで適当なプライマーおよびプローブによる定量的 PCRに用いる。所望により 、IHC 染色は省略してもよく、ゲノムDNAをあらかじめ脱パラフィンをして、またはせずに、適当なバッファーを用いて直接的に単離してもよい。当業者であれば、以下に記載の条件およびバッファーを変化させて同等の結果を得ることが出来る。
DAKO (HercepTest Code No. K 5204)およびTaKaRaからの試薬を製造業者のプロトコールにしたがって用いた (Biomedicals Cat.: 9091) 。
染色の前に以下の試薬を調製するのが便利である:
溶液 No. 7
エピトープ修復溶液 (クエン酸バッファー + 抗菌剤) (10x濃度)
20 ml を200 ml 蒸留水に添加(1ヶ月2-8℃で安定)
溶液 No. 8
洗浄バッファー (Tris-HCl + 抗菌剤) (10 x濃度)
30 mlを 300 ml 蒸留水に添加(1ヶ月2-8℃で安定)
染色溶液: DAB
1 ml 溶液が10 スライドに十分である。溶液は使用直前に調製した:
1 ml DAB バッファー (基質バッファー溶液、pH 7.5、H2O2、安定化剤、エンハンサーおよび抗菌剤含有) + 1 滴 (25-3 μl)のDAB-色素原 (3,3’-ジアミノベンジジン色素原溶液)。この溶液は5 日間まで2-8℃で安定である。沈殿した物質は染色結果に影響を与えない。さらに以下が必要である:2 x およそ100 mlのキシロール、2 x およそ100 mlのエタノール 100%、2 x エタノール 95%、蒸留水。これら溶液は40回の染色まで利用できる。水浴がエピトープ修復工程に必要である。
染色手順:
すべての試薬は免疫染色の前に室温 (20-25℃)に予め温めておいた。同様にすべてのインキュベーションは室温で行った。エピトープ修復は例外であり、95℃で水浴で行った。工程の間に過剰の液体をリントレスティッシュ(Kim Wipe)でスライドから除いた。
脱パラフィン
スライドをキシレン浴に入れ、5 分間インキュベートした。 浴を変え、工程を一回反復した。過剰の液体を除き、スライドを無水エタノール中に3 分間入れた。浴を変え工程を一回反復した。過剰の液体を除き、スライドを95% エタノール中に3 分間入れた。浴を変え工程を一回反復した。過剰の液体を除き、スライドを蒸留水に最低30秒間入れた。
エピトープ修復
染色ジャーに希釈エピトープ修復溶液を満たし、水浴で95℃で予熱した。脱パラフィン切片を染色ジャー中の予熱した溶液に浸漬し、40 分間95℃でインキュベートした。ジャー全体を水浴から取り出し、室温で20 分間さました。エピトープ修復溶液をデカントし、切片を蒸留水ですすぎ、最後に洗浄バッファーに5 分間浸漬した。
ペルオキシダーゼブロッキング:
過剰のバッファーを除き、組織切片をDAKOペンで囲んだ。試料を3 滴 (100 μl)の ペルオキシダーゼブロッキング溶液で覆い、5 分間インキュベートした。スライドを蒸留水ですすぎ、新しい洗浄バッファー浴に入れた。
抗体インキュベーション
過剰の液体を除き、試料を3 滴(100 μl)の抗-Her-2/neu 試薬 (ウサギ 抗-ヒト Her2 タンパク質、0.05 mol/L Tris/HCl、0.1 mol/L NaCl、15 mmol/L pH7.2 NaN3 、安定化タンパク質含有中)またはネガティブコントロール試薬 (=正常ウサギ血清のIGG 画分、Her2 Abと同等のタンパク質濃度)で覆った。30 分間のインキュベーションの後、スライドを水ですすぎ、新しい水浴に入れた。
可視化
過剰の液体を除き、試料を3 滴 (100 μl)の可視化試薬で覆った。30 分間のインキュベーションの後、スライドを水ですすぎ、新しい水浴に入れた。過剰の液体を除き、試料を3 滴 (100 μl)の基質-色素原溶液 (DAB)で10 分間覆った。試料を蒸留水ですすいだ後、写真を常套の Olympus 顕微鏡で撮り、試料内の染色強度および腫瘍領域を記録した。所望によりヘマトキシリンによる対比染色を行った。
DNA 抽出
全試料または切開した亜領域を微量遠心管に移した。所望により少量 (10μl)の予熱したTaKaRa からのDEXPAT(商標) 溶液を試料の上に載せてメスによるサンプル移動を簡単にした。50〜150 μlのTaKaRa DEXPAT(商標) 溶液を選択した組織サンプルの大きさに応じてサンプルに添加した。サンプルをブロックヒーター中で100℃で10 分間インキュベートし、次いで微量遠心分離器で12.000 rpmで遠心分離した。上清をマイクロペットを用いて回収し、別の微量遠心管に入れた。脱パラフィン工程を行っていない場合、組織細片および樹脂を取り出さないように注意しなければならない。ペレットに残ったゲノムDNA は樹脂非含有 TaKaRa バッファーの添加およびさらなる加熱および遠心分離工程によって回収することが出来る。サンプルは-20℃で保存した。
様々な腫瘍細胞株 (MCF-7、BT-20、BT-474、SKBR-3、AU-565、UACC-812、UACC-893、HCC-1008、HCC-2157、HCC-1954、HCC-2218、HCC-1937、HCC1599、SW480)またはリンパ球からのゲノムDNAをQIAamp(登録商標) DNA Mini KitsまたはQIAamp(登録商標) DNA Blood Mini Kitsを用いて 製造業者のプロトコールにしたがって調製した。通常、 1ng〜1μgのDNA を1回の反応に用いた。
当業者であればその他のDNA 抽出手順、例えば 磁気ビーズに基づく技術も行うことが出来る。
RNA 抽出
ホルマリン-固定パラフィン包埋腫瘍からのRNA をBayer HealthCare Diagnoticsからの磁気ビーズに基づく実験方法によって抽出した。FFPE スライドをDNA 抽出について記載したようにキシロールおよびエタノール中で脱パラフィンした。ペレットをエタノール (無水)で洗浄し、55℃で10分間乾燥させた。
次いでペレットを溶解し、プロテイナーゼ Kを用いて55℃で一晩撹拌するか、または65℃で1-2時間タンパク質分解した。結合バッファー と磁気粒子(Bayer HealthCare Diagnotics Research、Leverkusen、Germany)を添加した後、核酸を粒子に15分間室温で結合させた。磁気スタンド上で上清を除き、ビーズを洗浄バッファーで数回洗浄できた。溶出バッファーを添加し、10分間70℃でインキュベートした後、上清を磁気スタンド上でビーズにふれずに取り出すことが出来た。通常の DNAse I 処理を30分間 37℃で行い、DNAse Iを不活性化した後、溶液をkRT-PCRに用いることが出来た。RNAの質および量を260 nm および 280 nmでの吸光度を測定することによって確認した。純粋なRNAは A260/A280 比が 1.9-2.0である。当業者であればその他の抽出方法を用いることも出来る。いくつかのホルマリン-固定パラフィン包埋腫瘍からのRNA 単離 キットが市販されている。
定量的 PCR
患者サンプル内の遺伝子の遺伝子コピー数を測定するために、それぞれのプライマー/プローブ (表3)を25 μlの 100 μM ストック溶液「上流プライマー」、25 μl の100 μM ストック溶液「下流プライマー」と 12,5 μlの100 μM ストック溶液 Taq Man プローブ (Quencher Tamra)とを混合することによって調製し、蒸留水で500 μlに調整した。
例示のために、サンプル中のADAM15の量を試験するために以下の表3のプローブを用いた:
Figure 2008524986
以下の表3からの上流プライマーを共に用いた:
Figure 2008524986
以下の表3からの下流プライマーを共に用いた:
Figure 2008524986
その他のTaqMan アッセイも同様に設定した: 表3に挙げる1つのプローブ 「X」は1つのフォワードプライマー 「Xfor」と1つのリバースプライマー 「Xrev」とともに用いた。各反応について、患者サンプルの1,25 μl DNA-抽出物または細胞株からの1,25 μl DNAを 8,75 μl ヌクレアーゼ非含有水と混合し、96 ウェル-光学反応 プレート (Applied BioSystems Part No. 4306737)の1つのウェルに添加した。1,5 μl プライマー/プローブ混合物、12、μl Taq Man Universal-PCR Mix (2x) (Applied BioSystems Part No. 4318157)および1 μl 水を次いで添加した。96 ウェルプレートを8 Caps/Strips (Applied BioSystems Part Number 4323032)で閉じ、3 分間遠心分離した。PCR 反応の測定は製造業者の指示にしたがって、Applied BioSystems (No. 20114)からのTaqMan 7900 HTを用いて適当な条件下で行った(2分50℃、10分95℃、0.15分95℃、1分60℃; 40サイクル)。Applied BioSystemsからのソフトウェアSDS 2.0をそれぞれの指示にしたがって用いた。CT-値を次いでさらに適当な ソフトウェア (Microsoft Excel(商標))を用いて分析した。したがって、反応は384-ウェルプレートについて10 μlにて設定できた。
定量的動力学的 RT-PCR
遺伝子の転写活性を定量的逆転写酵素 Taqman(商標) ポリメラーゼ連鎖反応 (RT-PCR) 分析を用いて評価した。RT-PCRは「定量的 PCR」の節で記載したものと類似であるが、ただし、RNAはまず酵素によりcDNAへと逆転写される。いくつかのキットが市販されており、当業者により利用できる。RNA 検出のために、標準的 RT-PCR 反応にて RNAのみを検出するようプライマーとプローブを設計するのが有用であり、それゆえ、プライマー設計はフォワードプライマーが1つのエキソン中に位置し、リバースプライマーが隣接するエキソン中に位置し、プローブは2つの隣接するエキソンのエキソン境界にわたって位置するように行った。本発明者らは40サイクルの核酸増幅を行い、ハウスキーピング遺伝子としてGAPDHおよびRPL37Aを用い、場合によっては CD63およびRPL9も用い、サイクル閾値 (CT)を28以下とした。本発明者らは RNA 転写レベルと比例関係にある規準化した「40-ΔCT」スコアを算出した。その他の理由のためには、「20-ΔCT」のスコアを用いた。しかし、「20-ΔCT」 値を「40-ΔCT」 値に、値20を加えることにより容易に変換できる。
実施例 3
臨床試験からの患者サンプルおよび遺伝子増幅の分析
E-T-CMF対E-CMF (エピルビシン、タキソール (+/-)、シクロホスファミド、メトトレキサート、および5-フルオロ-ウラシル)を含むアジュバント環境(setting)中で処理された乳癌患者の約280の 臨床サンプルを得た。これらのサンプルは原発腫瘍由来のホルマリンで固定およびパラフィン包埋試料であった。すべての患者の詳細な臨床報告が入手可能であった。匿名データには、すべての医学的、治療的、臨床的、組織および病理学的および追跡情報、例えば、再発または生存時間が含まれていた。
60を超える遺伝子を実施例1 および2に開示された方法にしたがって、ホルムアルデヒド-固定し、パラフィン包埋した組織スライドからの核酸抽出後に定量的 PCRを行うことによって分析した。分析した遺伝子の変化は、少なくとも2つの参照遺伝子との比較によって判定した。参照遺伝子には主にMMP28およびHNRPDLが含まれたが、HBB、B2M、SOD2も含まれた。しかし本発明において開示されたARCHEONに含まれないその他の遺伝子のいずれもARCHEON 特徴決定のための参照遺伝子として利用できる。参照遺伝子は腫瘍性病変において起こるARCHEON 変化から独立していなければならず、染色体変化、例えば、 増幅および欠失から影響を受けてはならない。非増幅遺伝子の遺伝子コピー数は、ゲノム不均衡、例えば、 異数性または倍数性により腫瘍性病変において上昇している可能性がある。それゆえ、ARCHEON遺伝子の各測定は複数の参照遺伝子と相関づけて相対的コピー数計算に対するゲノム 不均衡の影響を最小にした。さらに個々のプライマー/プローブ対の性能における差異に起因するわずかなシステムエラーを、コントロール組織(即ち、健康コントロールからの非腫瘍組織)および正倍数体 コントロール細胞株(例えば、HS68、ATCC #CRL1635)におけるプライマー/プローブ性能を測定することによって最小にした。さらに1つのよく特徴決定された、一つの染色体についての異数性を示すコントロール細胞株を用いた (即ち、Detroit、ATCC#CCL-54; 三染色体(trisomie) 21、例えば、DSCR8) 。 X-染色体に位置する遺伝子(例えば、SRY)、Y-染色体に位置する遺伝子(例えば、Xist)および染色体 21に位置する遺伝子を測定することにより、標準化のために各ランの際に規定された1、2および3の遺伝子コピー数を内部コントロールと決めた。さらに、合成標的をいくつかの反応にスパイクし、それは規準化すべき遺伝子のPCR フォワードおよびリバースプライマーの標的領域からなり、しかしその間は規準化すべき標的遺伝子の元のプローブ領域とは異なる合成プローブハイブリダイゼーション領域からなるものであった。これにより各個々のqPCR 反応の多重PCRによる内部標準化が可能となった。計算された性能の差異を標的組織内の測定についてのフィルターとして用いた。即ち、コントロール細胞および組織において示された各個々の遺伝子のプライマー/プローブ差異を標的組織において行われた各個々の遺伝子測定から差し引いた。その後、個々の、フィルターをかけたCT 値を様々な参照遺伝子に対して規準化した。プライマー/プローブ 性能差異のフィルターをかけた後に残っている、ARCHEON遺伝子および参照遺伝子の定量的 PCR 反応のCT 値の間の差異を測定し、「細胞当たりのコピー数」に変換した。これは標的遺伝子のCT 値を参照遺伝子のCT 値から差し引くことによって行った。参照遺伝子のΔCT 値がΔCT=0であることを「細胞当たり2 コピー」と規定し、その結果得られる ΔCT 値を次いで遺伝子コピー数に以下の式によって変換した: 2*(2^(ΔCT*(-1)))。すべての計算は標準的ソフトウェア (Microsoft Excel(商標))を用いて行った。
表 4に、270を超える乳癌サンプルの測定された集団における増幅された遺伝子のパーセンテージを要約する。この計算におけるカットオフは3.1に設定し、これはすべてのサンプルはコピー数が3.1を超える場合に増幅されたものとしてカウントされたことを意味する。コピー数が2であることは、男性のXおよびY-染色体を除いてはすべての染色体について正常である。ある遺伝子が二重の染色体ゲノムにおいて一つの対立遺伝子において一度増幅されると、コピー数は 3となる; 2つの対立遺伝子において増幅されるとコピー数は4となる。通常、パラフィンブロック中の腫瘍画分は 50〜70 %である。それゆえ 3付近のカットオフにより、50 % 腫瘍画分を有するサンプルにおいて2倍に増幅された遺伝子を有するサンプルが検出されることになる。スライドをマイクロディセクションし、腫瘍を切り出し、より均一な画分を得ることも出来る。非常に頻繁に、遺伝子はゲノム中で数回増幅される。本出願において開示された遺伝子の最大コピー数も表 4に示す。4つの遺伝子、即ち、FGF3、CCND1、FIP1L1および ERBB2 ではいくつかのサンプルにおいてコピー数が30を超え、20を超える遺伝子では10以上のコピー数を有していた。興味深いことに、「タキソール耐性関連遺伝子」と称される遺伝子であるTRAG3は低い程度にしか増幅されていない。本発明者らは、この遺伝子とタキソール耐性との強い相関を見いだした。
実施例 4
データ解析および遺伝子相関、アルゴリズム
本研究の2つの治療群の疾患を有さない生存または全生存と遺伝子変化とを相関づけるためにKaplan-Meier 計算を行った。Kaplan-Meier 計算は当業者に周知である。本発明者らは、Graphpad Prism(商標) 4および本発明者らがMicrosoft Excel(商標)に作成した類似のプログラムを用いた。これにより単一の遺伝子変化からのKM-プロットだけでなく、2、3または4以上の遺伝子変化の組合せからのKM-プロットをともに算出することが可能となった。疾患を有さない生存データを調べ、遺伝子コピー数情報とともに2つの治療群と相関づけた。かかる分析の一例を図 1a-dに示す。図 1aおよび1bは、タキソール治療に対して、および遺伝子増幅の存在に対しての(この場合GSTP1またはBANF1) 疾患を有さない生存比率を示す。2つの曲線から理解されるように、タキソールで治療され、増幅された遺伝子を有していた患者は、増幅を有さない、またはタキソールで治療されていない患者と比較して、非常に有意により低い、疾患を有さない生存を有していた(p-値0.0054および0.0065)。図 1cおよび1d は遺伝子組合せに関する生存曲線を示す。図 1cは、例えば、Banf1またはGSTP1のいずれかが患者において増幅されている場合に何が起こるかという問いに答える。そしてKM-計算からの結果は、そのゲノムにおいて2つの遺伝子が増幅されている場合、より多くの、タキソール治療により利益を受けないであろう患者が同定されるというものである(非常に有意な相関: p-値 0.0049)。この組合せを3、4または5以上の遺伝子に拡張することが出来る。図 1dは3つの遺伝子の例である:上記2つの遺伝子とCYP11B1を組み合わせた結果、タキソール治療により利益を受けないであろう患者の比率がより高くなった(非常に有意なp-値0.006)。
図2a-cは、遺伝子増幅または遺伝子増幅の組合せを有する患者がタキソール治療により利益を受けるであろうという例を示す。この例において、ErbB4 およびVEGFは、単独でまたは2つの遺伝子のマーカーセットとして存在する。表 5aはさらに2つのマーカーの組合せのより詳細な概要を示すが、この例に限定されるものではない。驚くべきことに、2つのマーカーの組合せはしばしば相乗効果をもたらす (単なる相加効果ではない)。 この例によると、より多くの遺伝子をタキソール耐性または有害なタキソール反応についてのマーカーとして利用できる可能性がある; より少ない遺伝子をタキソールによる利益を予測することができるマーカーとして利用できる可能性がある。さらなる例を表 5bに示し、これは上記のKaplan-Meier プロットの結果として得られた2つのマーカーの組合せのp-値とマーカータイプ (タキソールによる利益または耐性)を要約する。これは同じタイプからのマーカーが組み合わされた場合に組合せの相乗効果がみられることを教示する例である。例えば、表 5aにおいて: BOP1 (++) が GSTP1 (+)と組み合わされた場合、組み合わせたマーカーは、スコア(+++)を有し、これはp-値が0.001未満であることを示し、一方BOP1がNCOA3 (0)と組み合わされた場合、組み合わせたマーカーはスコア (-)を有し、これはp-値が0.05を超えることを意味するということを参照されたい。
より多数の遺伝子のさらなる組合せの例を表6 および7に示し、ここで3つおよび4つのマーカーの組合せが示される。この例は、増幅された遺伝子がアルゴリズムにおいて組み合わされた場合に、より多くの患者がサブコホート(subcohorts)において記載されうるという正の効果を示す。より多くの遺伝子を表1または2から組み合わせることが出来る。ここに示す詳細は上記の組合せに限定されるわけではない。さらに、遺伝子に基づくマーカーをアルゴリズム中で医学的および臨床的パラメーター、例えば、結節状態、腫瘍サイズ、年齢、エストロゲン受容体状態、プロゲステロン受容体状態、Her2/neu 受容体状態または予後または腫瘍進行に影響を与えるその他のパラメーターと組み合わせることが出来る。
図面の簡単な説明:
図 1a-d: Kaplan-Meierによる生存プロット
説明: 図 1a-dは遺伝子コピー数に対しての2つの治療群の疾患を有さない生存のKaplan-Meier 計算およびプロットを含む。本発明者らは、 Graphpad Prism(商標) 4 および類似の本発明者らがMicrosoft Excel(商標)に作成したプログラムを使用し、単一の遺伝子のコピー数からのKM-プロットだけではなく、2、3またはより多くの遺伝子の組合せからのKM-プロットをともに算出することができた。これにより疾患を有さない生存データを調べ、2つの治療群と遺伝子コピー数情報に相関づけた。図 1aおよび1bは、タキソール治療および遺伝子増幅の存在 (GSTP1またはBANF1)に対する疾患を有さない生存比率を示す。2つの曲線から理解されるように、タキソールで治療され、増幅された遺伝子を有していた患者は、増幅を有さない、またはタキソールで治療されていない患者と比べて、非常に有意により低い疾患を有さない生存を有していた(p-値0.0054および0.0065)。図中の説明は括弧内に各群の患者数を示す: 「high +」は、増幅された遺伝子およびタキソールで治療されたことを意味する; 「high -」は増幅された遺伝子およびタキソールで治療されていないことを意味する; 「low +:」は増幅されていない遺伝子およびタキソールで治療されたことを意味する; 「low -」は増幅されていない遺伝子およびタキソールで治療されていないことを意味する。図 1cおよび1d は遺伝子組合せに対する生存曲線を示す。図 1cにおいては、Banf1またはGSTP1 が患者において増幅されている;そしてKM-計算からの結果として、2つの遺伝子がそのゲノムにおいて増幅されている場合、タキソール治療により利益を受けないであろうより多くの患者が同定される(非常に有意な相関: p-値 0.0049)。図 1dは3つの遺伝子組合せの例である:上記2つの遺伝子とCYP11B1とを組み合わせた結果、タキソール治療により利益を受けないであろう患者の比率がより高くなった(非常に有意なp-値0.006)。
図2a-cは、遺伝子増幅または遺伝子増幅の組合せを有する患者がタキソール治療により利益を受けるであろうという例を示す。この例において、 ErbB4 およびVEGFは単独でまたは2つの遺伝子のマーカーセットとして存在する。
表1: 遺伝子およびタンパク質リスト、受入番号
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説明:表1の上側部分は参照遺伝子を含む、乳癌において増幅される遺伝子のリストを含む。 列 1は座記号を含み、これはそれぞれの遺伝子、タンパク質の特有の識別子である。遺伝子/タンパク質の記号は変化することもあるが、遺伝子/タンパク質は列 2の座 IDまたは列 4のRefSeq (NCBI 参照 配列)あるいは別名により同定することができる。情報は例えばインターネット: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez または http://www.ncbi.nlm.nih.gov/LocusLink;において見いだすことが出来る。当業者であれば同様の情報をその他のサーバーで見いだすことが出来、 あるいはNCBI サーバーのリンクが将来変化した場合でもhttp://www.google.com. といったサーチエンジンによって見いだすことが出来る。列 3は、遺伝子が位置している染色体および染色体バンドに関する情報を含む。
表1の下側部分は、参照遺伝子を含む乳癌において増幅される遺伝子のリストを含む。列 1 は座記号を含み、これはそれぞれの遺伝子、タンパク質の特有の識別子である。遺伝子/タンパク質の記号は変化することもあるが、遺伝子/タンパク質は列 2のタンパク質 RefSeq (NCBI 参照 配列)あるいは別名により同定することができる。情報は例えばインターネット: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez または http://www.ncbi.nlm.nih.gov/LocusLink; において見いだすことが出来る。当業者であれば同様の情報をその他のサーバーで見いだすことが出来、あるいはNCBI サーバーのリンクが将来変化した場合でもhttp://www.google.com. といったサーチエンジンによって見いだすことが出来る。 列 3はタンパク質の説明を含む。
表 2: 遺伝子およびタンパク質リスト、受入番号
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説明: 表 2の上側部分は参照遺伝子を含む、乳癌において増幅される遺伝子のリストを含む。 列 1は座記号を含み、これはそれぞれの遺伝子、タンパク質の特有の識別子である。遺伝子/タンパク質の記号は変化することもあるが、遺伝子/タンパク質は列 2の座 IDまたは列 4のRefSeq (NCBI 参照 配列)あるいは別名により同定することができる。情報は例えばインターネット: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez またはhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/ LocusLink;において見いだすことが出来る。当業者であれば同様の情報をその他のサーバーで見いだすことが出来、 あるいはNCBI サーバーのリンクが将来変化した場合でもhttp://www.google.com. といったサーチエンジンによって見いだすことが出来る。列 3は、遺伝子が位置している染色体および染色体バンドに関する情報を含む。
表 2の下側部分は、参照遺伝子を含む乳癌において増幅される遺伝子のリストを含む。列 1 は座記号を含み、これはそれぞれの遺伝子、タンパク質の特有の識別子である。遺伝子/タンパク質の記号は変化することもあるが、遺伝子/タンパク質は列 2のタンパク質 RefSeq (NCBI 参照 配列)あるいは別名により同定することができる。情報は例えばインターネット: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez またはhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/LocusLink; において見いだすことが出来る。当業者であれば同様の情報をその他のサーバーで見いだすことが出来、あるいはNCBI サーバーのリンクが将来変化した場合でもhttp://www.google.com. といったサーチエンジンによって見いだすことが出来る。 列 3はタンパク質の説明を含む。
表3: プライマーおよびTaqMan プローブ
TaqMan プローブ
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上流または (5' ) PCR プライマー
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下流または(3') PCR プライマー
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*** =ヒトゲノム中3 コピー
**** =ヒトゲノム中4 コピー
***** =ヒトゲノム中5 コピー
DNA プライマーおよびプローブ:
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5' フォワードまたは上流プライマー
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3' リバースまたは下流プライマー
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RNA プライマーおよびプローブ:
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5' フォワードまたは上流プライマー
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3' リバースまたは下流プライマー
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説明: 表3は、qRT-PCRによるDNA 増幅検出およびRNA 検出のために本出願において用いたPCR プライマーおよびTaqMan プローブを含む。プライマーおよびプローブはPrimer Express(商標) ソフトウェアを用いて選択した。すべてのプライマー対は常套の PCR 反応により特異性について確認した。列 1はLocusLink IDを含み、列 2は内部命名(internal nomenclature)およびプライマーがフォワードかリバースプライマーかの情報を含む。列 3は、5' →3'方向でのオリゴヌクレオチド配列を含む。表3の上側部分は列 3 に5'末端をFAM (フルオロフォア)で3'末端をTAMRA (クエンチャー)で標識した TaqMan プローブの配列を含む。表3の中部分は列 3にフォワードプライマー配列を含み、表3の下部分は列 3にリバースプライマー 配列を含む。
表 4:乳癌患者のホルマリン固定およびパラフィン包埋 スライドからのTaqMan 結果
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説明: 表 4 は染色体増幅について試験された約60の遺伝子についての乳癌患者のホルマリン固定およびパラフィン包埋 スライドからのTaqMan 結果を含む。コピー数評価は増幅されなかったハウスキーピング遺伝子に対して規準化した。表は列 3において、270を超える乳癌 サンプルの測定した集団における増幅された遺伝子のパーセンテージを要約する。この計算におけるカットオフは3.1に設定し、これはコピー数が3.1より大きいすべてのサンプルを増幅されたものとしてカウントしたことを意味する。コピー数が2であることは、男性のXおよびY-染色体を除くすべての染色体について正常であることを示す。二重の染色体ゲノムにおいてある遺伝子が1つの対立遺伝子において一度増幅されている場合、コピー数は3である; それが2つの対立遺伝子において増幅されている場合、コピー数は4である。通常パラフィンブロック中の腫瘍画分は50〜70 %である。それゆえ3付近のカットオフにより、50 %の腫瘍画分を有するサンプルにおいて2回増幅された遺伝子を有するサンプルが検出されるであろう。ゲノム中で数回ある遺伝子が増幅されることは非常に頻繁に起こる。遺伝子の最大コピー数も列 4に示す。
表 5a: Kaplan-Meier 計算(DFS)のクロス集計表- 2つのマーカーの組合せ
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説明: 表 5aは2つのマーカーの組合せの詳細な概要を示す。2つのマーカーの組合せはしばしば相乗効果をもたらす。この例によると、多くの遺伝子が、タキソール耐性 (TR)またはタキソールによる有害薬物反応についてのマーカーとして利用できる;タキソールによる利益 (TB)を予測できるマーカーとして利用できる遺伝子はより少ない。
表 5b: 2つのマーカーの組合せ(先の表からの異なる計算)
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説明: 表 5bは別の2つのマーカー遺伝子の組合せの要約を示す。TB = タキソールによる利益; TR = タキソール耐性または有害なタキソール反応
表 6: 3つのマーカーの組合せ
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説明: 表 6はp-値とともに3つのマーカーの組合せの要約を示す。
表 7:4つのマーカーの組合せ
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説明: 表 7はp-値および各群における患者数ともに4つのマーカーの組合せの要約を示す。
表 8: DNA および/または RNA 起源のマーカーの組合せ
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表 8の説明: 表 8はDNAまたはRNAである遺伝子1および遺伝子2の2変数マーカーの組合せを含む。遺伝子名は、座 ID、下線およびDNAについては DそしてRNA マーカーについてはRで示す。閾値はそれぞれの患者においてそれぞれのマーカーのマーカー値 (DNAについてはコピー数およびRNAについては相対発現値)を低(L)または高(H)に分ける。「四分類(Quadrant)」は表において示す「利益」が何に所属するかの定義を与える(IN: タキソール利益 またはOUT:タキソール 利益、常に利益のこともある)。IN-群には四分類 (HH = 両マーカー高、閾値を超える、HL = 第一のマーカー高、第二のマーカー低、LH = 第一のマーカー低、第二のマーカー高、LL =両マーカー低)が与えられ、OUT-群はそれぞれのマーカーの組合せがその他の3つの四分類であることを示す。図示については図 3を参照されたい。表 8はすべての患者 (ALL)の2変数 マーカーの分析も挙げる。表 8に示すp 値は+(プラス) タキソール群および-(マイナス)タキソール群について計算した ( - (log(p 値 T+) + log(p 値 T-)というスコアは、 マーカーの組合せのよりよい評価のために両方の値を組み合わせたものである。
実施例 5
データの別の計算方法は、超幾何学的分位(quantil)計算またはオッズ比の計算などの統計的方法の使用である。かかる分析は、例えばMATLAB(商標) (The Mathworks、Inc.) またはその他の当業者に知られた統計プログラムにより行うことが出来る。これらの方法は生化学的および遺伝的マーカーの多変量解析に有用である。図 3はかかる計算の一例を示す。
図 3の説明:2つのマーカーの組合せの一例を表し、ここで両マーカーはDNA であり両マーカーはそれらが「high」である場合に(四分類: HH)、予測タキソールによる利益値を有し、これは両マーカーが増幅されていることを意味する。上側の2つのプロットはタキソール治療および非治療群についての患者の「IN-群」を示す(右上四分類)。遺伝子1は常にx軸にあり、遺伝子2はy軸にある。「OUT-群」は常に表に示されていないその他の3つの四分類である。この例においてそれは四分類HL、LH およびLLである。図 3の下側部分はこの例のそれぞれの Kaplan-Meier プロットを含む。下の表は一例として対応する図に対する一つの列を示す。この例は表 8から得られる。
さらなる二変数解析の例はエストロゲン 受容体陽性 (ESR+)または陰性(ESR-) 患者コホート、グレード 1 および2 (GR1+2)または グレード 3および4 (GR3+4) 患者コホートといった患者の亜群において行うことが出来る。表 8は患者コホートのそれぞれの亜群を含む; 各列は分析したマーカーの組合せを表す。 例えば表 8の列 3はマーカーFLT1_D (遺伝子1)およびErbB4_D (遺伝子2)を含む。遺伝子名は座 ID、下線および DNAについてはDそしてRNA マーカーについてはRから構成される。閾値によりそれぞれの患者におけるそれぞれのマーカーのマーカー値(DNAについてはコピー数およびRNAについては相対発現値)を低(L)または高(H)に分けた。「四分類」は表に示す「利益」が何に所属するかの定義を与える(IN: タキソール 利益またはOUT: タキソール 利益、常に利益の場合もある)。IN-群は四分類によって示され (HH = 両マーカー高、閾値を超える、HL = 第一のマーカー高、第二のマーカー 低、LH = 第一のマーカー低、第二のマーカー高、LL = 両マーカー低)、OUT-群はすべてそれぞれの マーカーの組合せのその他の3つの四分類である。図示のために図 3も参照されたい。表 8はすべての患者 (ALL)における2変数 マーカーの分析も挙げる。表 8に示すp 値は+(プラス) タキソール群および -(マイナス) タキソール群について計算した。 ( - (log(p 値 T+) + log(p 値 T-)であるスコア はマーカーの組合せのよりよい評価のために両方の値を組み合わせたものである。
分析はこれらの例に限定されない。より多数のマーカーの組合せの(多変量) 分析を行うことが出来る。
要約すると、本発明者らはタキサン 応答の予測のためにDNA 増幅が単独でまたは組合せでマーカーとして利用できるだけでなく、増幅された遺伝子のRNAの転写の変化もタキサン 応答についてのマーカーであり得ることを示した。さらに本発明者らは変化したRNA 転写は同じ遺伝子のDNA 増幅と独立であり得、タキサン応答についてのマーカーとして利用できることを示した。本発明者らはこれらマーカーを組み合わせて2、3、4または5以上のマーカーのマーカーセットとすることにより、単一のマーカーよりも統計的により有意なものとするとが出来ることを示した。これらの組合せはDNA、RNA間のものであってもよいし、両方のタイプの核酸間のものであってもよい。
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図 1a-d: Kaplan-Meierによる生存プロット 説明: 図 1a-dは遺伝子コピー数に対しての2つの治療群の疾患を有さない生存のKaplan-Meier 計算およびプロットを含む。本発明者らは、 Graphpad Prism(商標) 4 および類似の本発明者らがMicrosoft Excel(商標)に作成したプログラムを使用し、単一の遺伝子のコピー数からのKM-プロットだけではなく、2、3またはより多くの遺伝子の組合せからのKM-プロットをともに算出することができた。これにより疾患を有さない生存データを調べ、2つの治療群と遺伝子コピー数情報に相関づけた。図 1aおよび1bは、タキソール治療および遺伝子増幅の存在 (GSTP1またはBANF1)に対する疾患を有さない生存比率を示す。2つの曲線から理解されるように、タキソールで治療され、増幅された遺伝子を有していた患者は、増幅を有さない、またはタキソールで治療されていない患者と比べて、非常に有意により低い疾患を有さない生存を有していた(p-値0.0054および0.0065)。図中の説明は括弧内に各群の患者数を示す: 「high +」は、増幅された遺伝子およびタキソールで治療されたことを意味する; 「high -」は増幅された遺伝子およびタキソールで治療されていないことを意味する; 「low +:」は増幅されていない遺伝子およびタキソールで治療されたことを意味する; 「low -」は増幅されていない遺伝子およびタキソールで治療されていないことを意味する。図 1cおよび1d は遺伝子組合せに対する生存曲線を示す。図 1cにおいては、Banf1またはGSTP1 が患者において増幅されている;そしてKM-計算からの結果として、2つの遺伝子がそのゲノムにおいて増幅されている場合、タキソール治療により利益を受けないであろうより多くの患者が同定される(非常に有意な相関: p-値 0.0049)。図 1dは3つの遺伝子組合せの例である:上記2つの遺伝子とCYP11B1とを組み合わせた結果、タキソール治療により利益を受けないであろう患者の比率がより高くなった(非常に有意なp-値0.006)。 図2a-cは、遺伝子増幅または遺伝子増幅の組合せを有する患者がタキソール治療により利益を受けるであろうという例を示す。この例において、 ErbB4 およびVEGFは単独でまたは2つの遺伝子のマーカーセットとして存在する。 図 3の説明:2つのマーカーの組合せの一例を表し、ここで両マーカーはDNA であり両マーカーはそれらが「high」である場合に(四分類: HH)、予測タキソールによる利益値を有し、これは両マーカーが増幅されていることを意味する。上側の2つのプロットはタキソール治療および非治療群についての患者の「IN-群」を示す(右上四分類)。遺伝子1は常にx軸にあり、遺伝子2はy軸にある。「OUT-群」は常に表に示されていないその他の3つの四分類である。この例においてそれは四分類HL、LH およびLLである。図 3の下側部分はこの例のそれぞれの Kaplan-Meier プロットを含む。下の表は一例として対応する図に対する一つの列を示す。この例は表 8から得られる。

Claims (13)

  1. 1以上のマーカーの検出による癌治療に対する応答の予測または悪性腫瘍の診断または予後判断のための方法であって、該マーカーが表1に挙げる遺伝子およびその断片またはゲノム核酸配列であることを特徴とする方法。
  2. 表1からの細胞発生バンドの隣接遺伝子が含められる請求項1の方法であって、該隣接遺伝子が表1の遺伝子と連関していることを特徴とする方法。
  3. 治療が、タキサンに基づく治療、抗体治療、抗ホルモン治療、抗成長因子治療、アントラサイクリンに基づく治療、プラチナ塩に基づく治療またはその他の癌に対する治療である、請求項1および2の方法。
  4. 少なくとも1つのマーカーの検出による悪性腫瘍の予測、診断または予後判断方法であって、マーカーが以下から選択されることを特徴とする方法:
    a)表1の少なくとも1つの配列または表3からのそれぞれのプライマーおよびプローブ配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
    b)(a)において特定したポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、表1のそれぞれの配列について特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
    c) (a)および(b)において特定したポリヌクレオチドとは遺伝コードの発生により異なる配列であり、表1のそれぞれの 配列について特定したものと同じ生理機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
    d) (a)〜(c) において特定したポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ;
    e) (a)〜(d) において特定したポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログ配列によってコードされる精製ポリペプチド。
  5. 悪性腫瘍が、乳癌、卵巣癌、胃癌、大腸癌、食道癌、間葉癌、膀胱癌、頭頸部癌、膵臓癌、前立腺癌、または非小細胞肺癌である、請求項1〜4のいずれかの方法。
  6. 1以上の染色体領域のコピー数が定量的 PCRによって検出されることを特徴とする、 染色体変化の検出方法。
  7. 検出方法が、PCR、アレイ、ビーズまたは配列決定方法の使用を含む、請求項1〜6のいずれかの方法。
  8. マーカーがVNTR、SNP、RFLPまたはSTSである少なくとも1つのマーカーの検出による悪性腫瘍の予測、診断または予後判断方法であって、マーカーが増幅により悪性腫瘍において変化する1つの染色体領域に位置し、マーカーが同じ個体の癌および非癌組織または生物学的サンプルにおいて検出されることを特徴とする方法。
  9. 変化した染色体領域に位置する遺伝子によってコードされる個々のmRNAの相対的存在量が検出されることを特徴とする、染色体変化の検出方法。
  10. マーカーが医学的または臨床的パラメーターとアルゴリズムにおいて組み合わされる、請求項 1〜9のいずれかの方法。
  11. マーカーが、表 2に挙げられる遺伝子およびその断片またはゲノム核酸配列であって、表1に挙げられる遺伝子およびその断片またはゲノム核酸配列と組み合わされたもの(複数マーカー)である、請求項1〜10のいずれかの方法。
  12. マーカーがホルマリン固定およびパラフィン包埋組織から検出される、請求項1〜11のいずれかの方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかの方法を行うための診断用キット。
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