JP2008517045A - 癌の治療法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、癌の予防及び/又は治療のための医薬の製造における、クラスIIIのSLRPの活性を促進する作用物質の使用に関する。このような医薬は、無血管性腫瘍を含む腫瘍の治療で使用されうる。用いられる適切な作用物質として、好ましくはオプチシン、エピフィカン、又はミメカンなどのクラスIIIのSLRPが挙げられる。本発明は、癌の予防及び/又は治療方法をも提供する。

Description

発明の詳細な説明
本発明は、癌の治療及び/又は予防のための医薬品に関する。さらに詳しくは、本発明は、癌の早期治療、及び腫瘍細胞増殖の阻止のための医薬品に関する。
癌は、西半球における死亡率の最大の原因の1つを構成する。英国の成人の3人に1人はその生涯のある時点で癌を病むと推定されている。
約200種の異なるタイプの癌が認められている。これら異なるタイプの癌の有病率は広く変化し、肺癌、乳癌、腸癌及び前立腺が、すべての新しく診断される癌の半分以上を占める。
癌発達の進行は、一般的に2つの明確な段階、すなわち無血管段階と血管段階を通じて連続的に進行すると考えられる。無血管段階は、腫瘍発生の早期段階である。無血管段階の間、腫瘍は形質転換された細胞の核を含むが、血管は供給されない。無血管段階中に発達し得る腫瘍サイズは、酸素と窒素の摂取に対する要求によって制限され、拡散のみによって起こる。
そして、腫瘍の発達は血管段階に進行し得る。この段階内では、腫瘍は通常、既存の血管から血管形成出芽することよって腫瘍自体の血液供給を発達させる。形質転換された細胞の栄養と酸素の要求は癌に供給している新たな血管を通じて満たされるので、献身的な血液供給の発達が腫瘍サイズを顕著に大きくする。
腫瘍サイズの増大に加え、無血管段階から血管段階への遷移は、腫瘍転移の発生と腫瘍侵襲の増加と強く関係している。この転移性の表現型への変化が癌の進行の危険な発達を特徴づけることは容易に分かるだろう。
多くの現在の癌治療は、腫瘍の発生と進行を遅らせ又は阻止し得る手段としての腫瘍血管構造の開発を目標としている。従って、癌治療への抗新生血管及び抗血管形成アプローチという臨床適用に有意な関心がある。しかしながら、癌治療の最近の発展に照らしてさえ、既存の療法を置き換え、或いは増強し得るさらなる療法の開発に対する要求が未だに残っている。
さらに、血管段階への進行は転移と腫瘍の内転移(dissemination)に関連するので、血管段階に達する前に、発生している腫瘍を治療することが有利であることが分かるだろう。抗新生血管アプローチは血管発生と転移の阻止に役立ちうるが、転移の危険が生じる前に腫瘍を治療することが好ましいであろう。このような治療は、癌細胞の増殖及び/又は生存能に直接影響を与えて阻害することができ、相対的に低損傷の無血管段階の間には有効だろう。
上記段落に照らして、癌の予防及び/又は治療のための新しい医薬品と治療法の開発への揺るぎ無い必要性が存在することが分かるだろう。さらに、最も早期の可能な時点から治療を開始することによって転移の危険を低減するため、無血管段階の癌の予防及び/又は治療に適した医薬品と治療法に対する必要性が認められる。
本発明の第一の観点によると、癌の予防及び/又は治療のための医薬の製造における、クラスIIIのスモールロイシンリッチリピートタンパク質/プロテオグリカン(クラスIIIのSLRP)の活性を促進する作用物質の使用が提供される。
本発明の第二の観点によると、癌の予防及び/又は治療方法であって、治療上有効な量の、クラスIIIのスモールロイシンリッチリピートタンパク質/プロテオグリカン(クラスIIIのSLRP)の活性を促進する作用物質を該予防及び/又は治療が必要な個体に投与することを含む方法が提供される。
本発明者らは、オプチシン(opticin)(硝子体液中のコラーゲン原繊維に関連して最初に同定されたクラスIIIのSLRPであり、オキュログリカン(oculoglycan)としても知られている)、エピフィカン(epiphycan)、ミメカン(mimecan)(オステオグリシン(osteoglycin)としても知られている)などのクラスIIIのスモールロイシンリッチリピートタンパク質/プロテオグリカン(SLRP)ファミリーのメンバーが癌細胞の増殖及び/又は生存能を阻害でき、及び/又は癌細胞のアポトーシスを促進できるということを発見した。明らかなように、これら特性はこのような作用物質を癌の予防及び/又は治療に適するようにする。この知見は、線維肉腫、乳癌及び肺癌といったいくつかの異なった状況に由来する癌細胞で確立された。
本発明は、癌が無血管段階にあるときに癌の予防及び/又は治療を可能にするという点で特に有利である。従って、癌の発生の早期に、好ましくは血管段階(転移性の表現型の発生と関連する進行)に進行する前に癌を治療することができる。本発明の第一又は第2の観点によって治療される癌は腫瘍であることが好ましく、該腫瘍が無血管性腫瘍であることがさらに好ましい。
予防及び/又は治療される癌は、線維肉腫、神経膠腫、膵臓癌、膀胱癌、大腸癌、乳癌及び肺癌を含む群より適宜選択される。
本出願で用いられる「クラスIIIのSLRPの活性を促進する作用物質」という用語は、クラスIIIのSLRPそれ自体、クラスIIIのSLRPの生物学的に活性な断片、クラスIIIのSLRPの誘導体、及びクラスIIIのSLRPの活性を模倣する作用物質をも包含する。
オプチシン(ヒト及びウシの両方の形態)、エピフィカン及びミメカンのアミノ酸配列が図1に示されている。この図は、アミノ酸配列のアラインメントも示しており、クラスIIIのSLRPファミリーの異なるメンバー間の高度な類似性を図示している。
図2は、マトリックスメタロプロテイナーゼ2又は9(MMP-2又はMMP-9)によるクラスIIIのSLRPであるオプチシンの切断によって放出された、生物学的に活性な断片を(パネル2aで)図示している。パネル2bは、本発明の作用物質としての使用に好ましい、ヒト及びウシのオプチシンのNH末端領域内に由来するペプチド配列を示している。これらの配列は種間で高度に保存されており、この高度な保存は、前記配列の生物学的な機能を示している。図2のパネル2cは、異なる種(ウシ、イヌ、ヒト及びマウス)に由来するオプチシンのNH末端領域のアミノ酸残基のアラインメントを図示している。
クラスIIIのSLRP、クラスIIIのSLRPの改変型、及びこれらの生物学的に活性な断片は、癌細胞の増殖及び/又は生存能を阻害することができる。従って、クラスIIIのSLRP、その断片及び誘導体は、癌の予防及び/又は治療で有用である。どのような仮説によっても拘束されることを望まないが、クラスIIIのSLRPが、普通は高められ且つ全く制御されない増殖の性質を持つ癌細胞に、増殖を停止させ及び/又はアポトーシスを受けさせるように誘導することができると考えられる。
本発明の第一及び第二の観点で用いる作用物質はクラスIIIのSLRPの効果をin vivoで模倣するいずれの化合物又は組成物でもよい。しかし、作用物質は以下のものが好ましい:
(a)オプチシン(オキュログリカンとしても知られている);又は
(b)エピフィカン;又は
(c)ミメカン(オステオグリシンとしても知られている);又は
(d)前記(a)〜(c)のいずれかのエレメントを含むキメラ分子;
(e)前記(a)〜(d)のいずれかの改変型;又は
(f)前記(a)〜(e)のいずれかの生物学的に活性な断片若しくは誘導体。
本発明の使用の好適な作用物質は、クラスIIIのSLRPの活性を模倣できる分子を包含することが分かるだろう。このような分子は、クラスIIIのSLRPの結合活性を複製できる(例えば、クラスIIIのSLRPの結合を目標とする分子に結合できる)かもしれない。好ましい分子は、例えば、クラスIIIのSLRPの生物学的機能を果たすのに重要なクラスIIIのSLRPの部分のコンホメーションを複製し得る。クラスIIIのSLRPの活性を模倣できる好適な作用物質として、小型の可溶性分子が挙げられる。
さらに、本発明の使用に好適な合成又は天然の作用物質の結合特性は、該作用物質が置かれる用途に応じて改変されて、改変型作用物質が生成されることが分かるだろう。例えば、本発明の第一及び第二の観点で使用する作用物質を改変して、癌細胞に結合する能力を高めることができる。当業者には、癌細胞への作用物質のターゲティングに好適な多くの方法が知られており、これらの方法をクラスIIIのSLRPを含むか又はクラスIIIのSLRPをベースとした作用物質の開発、設計及び製造に適用することができる。このようなターゲティング法の例として、本発明の作用物質と、癌細胞と関係があるエピトープに特異的に結合できる抗体との併用が挙げられる。このようなエピトープの好適な例は、当業者には周知である。
同様に、本発明の第一及び第二の観点に従って使用するための作用物質を改変して、癌細胞と関係がある受容体と結合する能力を高めることができる。このようなターゲティング改変の基礎を形成し得る好適な受容体の例として、インテグリン、細胞表面プロテオグリカン及び増殖因子受容体が挙げられる。これらの各分類で好適な受容体は、当業者には容易に分かるだろう。
作用物質は、好ましくはヒトのクラスIIIのSLRP、又はその断片若しくは誘導体である。最も好ましくは、作用物質はヒトオプチシン又はその断片若しくは誘導体である。
作用物質が非ヒトのクラスIIIのSLRP、又はその断片若しくは誘導の場合、該作用物質を投与すべきヒト患者で充分に耐容性がある作用物質であることが好ましい。好適な非ヒト由来作用物質は、ヒト患者による該作用物質の拒絶に寄与し得るエピトープをほとんど含有しないように選択され、或いは、例えば対応するヒトのクラスIIIのSLRPの配列の部分を含むような改変によって「ヒト化」してもよい。このような非ヒトのクラスIIIのSLRP由来の作用物質の好ましい例は、ウシのクラスIIIのSLRP由来のもの、例えばウシオプチシンである。
クラスIIIのSLRPは、天然に存在する供給源から単離されたものであってもよい。一例として、クラスIIIのSLRPであるオプチシンは眼の硝子体液中に豊富に存在し、従って、この組織から濃縮及び単離されてもよい。あるいは、クラスIIIのSLRP及びそれらの誘導体が、組換えDNA技術を用いて産生されてもよい。好ましくは、本発明の作用物質が組換え型のクラスIIIのSLRP又はその断片若しくは誘導体であり得る。組換え型のクラスIIIのSLRP及びそれらの誘導体は、多数の代替供給源から産生されてもよく、一例としては、オプチシンのようなクラスIIIのSLRPのウシ組換え体が挙げられる。より好ましくは、そのような作用物質が、ヒトのクラスIIIのSLRP又はその断片若しくは誘導体の組換え体を含む。最も好ましくは、本発明の作用物質が組換え型ヒトオプチシン又はその断片若しくは誘導体である。
本発明に従って使用される「クラスIIIのSLRPの生物学的に活性な断片」という用語は、in vivo又はin vitroいずれかのアッセイによって評価される場合にSLRPの活性を(癌細胞の増殖及び/又は生存能を阻害し、好ましくは癌細胞のアポトーシスを誘発する能力の点に関して)複製し得る断片を包含する。同様に、本発明の作用物質の「改変型」との言及は、その必要な生物学的活性を保持している当該改変型に関する。
クラスIIIのSLRPの断片、誘導体又は改変型の生物学的活性(ひいては本発明に従って使うための該断片、誘導体又は改変型の適合性)を評価し得る適切なアッセイとして、以下の実施例セクションで述べるものが挙げられる。例えば、本発明に従って使うための該断片、誘導体又は改変型の好適な生物学的活性は、in vivo又はin vitroで腫瘍細胞の増殖を阻害できる当該断片、誘導体又は改変型に帰する。
クラスIIIのSLRPであるオプチシンは、アミノ末端(NH)ドメインに連結しているロイシンリッチリピート(LRR)が非共有結合的に連結することによって形成されているホモダイマーを含むことが知られている。LRRドメイン及びNHドメインは互いに酵素的に切断することができ、そのような酵素的に切断されたクラスIIIのSLRPの断片は、本発明の第一及び第二の観点の使用に好ましい作用物質を表す。オプチシンのようなクラスIIIのSLRPの好ましい酵素的切断は、マトリックスメタロプロテイナーゼMMP-2、MMP-9又はMMP-12を用いて行われてもよい。MMP-12は、腫瘍の成長と進行に関与することが分かっているマトリックスメタロプロテイナーゼである。一例として、ウシオプチシンのMMP-2切断又はMMP-9切断によって得られるNH末端断片のアミノ酸配列が、図2に示されている。当業者は、同様の切断生成物がヒトのクラスIIIのSLRPの酵素処理で生成され得ることを、理解するであろう。
酵素的に切断したクラスIIIのSLRPのNHドメイン断片は、可溶性であり、本発明の使用に適する好ましい作用物質を表す。NHドメインは、好ましくはオプチシンのNHドメインであり得る。
あるいは、酵素的消化以外の手段によって得られるクラスIIIのSLRPのN末端断片も、本発明の作用物質として使用され得る。N末端断片とは、クラスIIIのSLRPのN末端に位置する65アミノ酸のうちの少なくとも連続する7アミノ酸残基、好ましくは少なくとも連続する12アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも連続する24アミノ酸残基を含む断片のいずれをも意味する。
本発明の使用に適する好ましいN末端断片は、オプチシンのヒト型形態及びウシ型形態から抜粋される次のアミノ酸配列:
ヒトオプチシン由来: DNYGEVIDLSNYEELTDYGDQLPE
ウシオプチシン由来: DNYDEVIDPSNYDELIDYGDQLPQ
の一つを含んでいてもよい。
上記配列は種間で高度に保存されており、クラスIIIのSLRPの生物学的活性を媒介することにおけるこれらアミノ酸残基の重要性を示している。
酵素的切断によって得られるもの以外のクラスIIIのSLRPの断片は、例えば、本技術分野で既知の適切なペプチド合成方法論のいずれかによって生成され得る。そのような合成された断片の構成成分のアミノ酸は、クラスIIIのSLRP配列の好ましい一部分を含むように選択されてもよい。そのような合成された断片の可能な配列はクラスIIIのSLRP内の酵素切断部位の位置に制約されないことから、クラスIIIのSLRPの酵素的に得られたのでない断片として考えられる範囲が、酵素消化によって得られ得る断片として考えられる範囲よりも広いことは、当業者に理解されるであろう。
クラスIIIのSLRPのLRR領域も本発明の使用に適する作用物質を表し得ることは、理解されるであろう。LRR領域は、適切には、クラスIIIのSLRPのLRR領域を含む断片の形態で利用され得る。そのような断片は、適切なクラスIIIのSLRPのC末端部分に由来する更なるアミノ酸残基を更に含んでいてもよい。これらの断片は、上で考察されるのと同様に、酵素的に又は他の手段によって得ることができる。
好ましくは、LRRドメインがオプチシンのLRRであるが、エピフィカン及びミメカンのLRRドメインがグリコシル化されており且つ比較的高い可溶性を有することも知られていることから、エピフィカン及びミメカンのLRRドメインも同様に本発明の使用に適切な作用物質を表す。個々のクラスIIIのSLRPのLRR領域は、図1に示す配列アラインメントデータに図示されているように互いに高度の類似性を共有しており、従って、特定のクラスIIIのSLRPのLRR領域に関連する生物学的活性がこのファミリーの他のメンバーに共通していると予測できることを、当業者は認識するであろう。
本発明の作用物質としての使用に適する好ましいキメラ分子は、上記段落で考察した問題の断片、ドメイン又は領域の1つ以上を含む当該キメラ分子でよいことが分かるだろう。本発明で使用するためのこのようなキメラ分子の適合性を示す生物学的活性を有することは、本明細書の別の箇所で詳述する技術を用いて調査される。
癌細胞の増殖を阻害する本発明の作用物質の能力は、当業者に周知の方法を用いて容易に評価される。好適な方法として、推定上の活性物質の存在下又は非存在下で成長する癌細胞集団における増殖速度を比較することが挙げられる。このような試験集団によって示される増殖速度の比較は、推定上の活性物質の、癌細胞の増殖を阻害する能力の容易な評価を可能にするだろう。
同様に、癌細胞の生存能を低減する本発明の作用物質の能力は、当業者に周知の技術を用いて調査される。例えば、癌細胞を本発明の推定上の作用物質と接触させてよく、トリパンブルー排除アッセイを用いて癌細胞の生存能を評価することもできる。このようにして得られる癌細胞の生存能の値を標準値と比較して、癌細胞の生存能の低減におけるその推定上の作用物質の有効性を評価することができる。
癌細胞のアポトーシスを促進する本発明の作用物質の能力も、当業者に周知の技術を用いて容易に評価される。癌細胞のin vitro又はin vivo集団を推定上の活性物質に曝露して、存在するアポトーシスの度合を適切な技術を用いて調査することができる。アポトーシスを調査し得る技術の例は、アクリジンオレンジのような組織学的染色、又はTUNEL(Transfer-mediated dUTP Nick-End Labelling)のような標識技術である。
クラスIIIのSLRPの誘導体又はそれらの断片は、クラスIIIのSLRPのin vivoの半減期を増加させた又は減少させたクラスIIIのSLRPの誘導体を含み得る。半減期を増加させたクラスIIIのSLRP又はクラスIIIのSLRPの断片の誘導体の例としては、アミノ酸の欠失及び/又は置換によって酵素切断モチーフが除去された改変クラスIIIのSLRP、クラスIIIのSLRPのペプチド誘導体、クラスIIIのSLRPのD-アミノ酸誘導体、並びにペプチド-ペプトイド混成体が挙げられる。
天然のクラスIIIのSLRP、改変型のクラスIIIのSLRP又はそれらの断片などの作用物質は、幾つかの手段(例えば、生物学的な系でのプロテアーゼ活性)によって分解されてもよい。そのような分解は、クラスIIIのSLRP(又はそれらの断片)の生体利用効率を制限し、よって、癌を予防及び/又は治療するクラスIIIのSLRPの能力を制限することができる。生物学的状況において安定性を高めたペプチド誘導体を設計及び生成できる充分に確立された手法の例が、数多く存在する。このようなペプチド誘導体は、プロテアーゼ媒介性の分解に対する抵抗性の増加の結果として、改善された生体利用効率を有し得る。
好ましくは、本発明の使用に適するペプチド誘導体又はペプチドアナログは、それらの起源のペプチド(又は糖タンパク質)よりも、よりプロテアーゼ抵抗性である。プロテアーゼ抵抗性を与え得る適切な方法としては、クラスIIIのSLRPに存在するセリン又はトレオニン残基の保護、置換又は改変が挙げられる。ペプチド誘導体及びその起源のペプチド(又は糖タンパク質)のプロテアーゼ抵抗性は、周知のタンパク質分解アッセイを用いて評価され得る。そして、ペプチド誘導体及びペプチド(又は糖タンパク質若しくはプロテオグリカン)について、プロテアーゼ抵抗性の相対値を比較し得る。
本発明の作用物質のペプトイド誘導体は、クラスIIIのSLRPの構造の知識から容易に設計され得る。充分に確立されたプロトコールに従い、商業的に入手可能なソフトウエアを用いて、ペプトイド誘導体を開発し得る。
レトロペプトイド(全てのアミノ酸が、逆の順序でペプトイド残基によって置き換えられている)も、高親和性の結合性タンパク質を模倣することができる。レトロペプトイドは、ペプチド又は1つのペプトイド残基を含むペプトイド-ペプチド混成体と比べて、リガンド結合溝で逆方向に結合することが予測される。結果として、ペプトイド残基の側鎖は、本来のペプチドの側鎖と同じ方向を向くことができる。
本発明の使用に適するクラスIIIのSLRPの改変型の更なる態様は、D-アミノ酸を含む。この場合のアミノ酸残基の順序は、天然のクラスIIIのSLRPに認められるものと比較して、逆転している。
本発明の使用に適するクラスIIIのSLRPの誘導体が、対応する天然のクラスIIIのSLRPのものと比べてアミノ酸配列を変更されたクラスIIIのSLRPの改変型又はそれらの断片も含むことは、理解されるであろう。このようなクラスIIIのSLRPの改変型又は変異型は、天然の分子に存在する1又は2以上のアミノ酸残基を付加、除去又は置換することによって生成することができる。そのような付加、除去又は置換によって変種を生成し得る適切な方法は、当業者に周知であり、また数多くの刊行物の主題であり、それらの刊行物は用いることができる実験プロトコールの詳細を提供する。行われるアミノ酸置換の性質は、達成されることが所望される効果に関連して決定される。
例えば、上で考察したように、酵素切断部位を取り除くようにクラスIIIのSLRPの改変型が設計して、それによって酵素分解を減少させてin vivoの半減期を増加させることができる。様々なタンパク質分解酵素によって消化されるアミノ酸モチーフに関する公的に利用可能な情報が大量に存在しており、当業者であれば、そのようなモチーフの存在を天然のクラスIIIのSLRP分子内で容易に認識できるであろう。次いで、切断部位を中断するためにアミノ酸が付加、除去又は置換されたクラスIIIのSLRPの改変版を生成することは、簡単なことである。
クラスIIIのSLRPの改変型を、局所的な環境と有利に相互作用して所望の効果を達成することができるアミノ酸配列を含むように生成することもできる。一例を挙げると、改変型のクラスIIIのSLRPの細胞外マトリックス(ECM)の成分への結合を促進するためにアミノ酸配列を導入し、それによって、改変型のクラスIIIのSLRPの活性に影響を及ぼされることが望まれる細胞の近くに、利用可能な改変型のクラスIIIのSLRPの蓄積を提供することができる。例えば、当業者は、癌細胞と腫瘍発生に関連しているECM構成成分に対して改変分子の接着を促進するアミノ酸配列を含むように、クラスIIIのSLRPを改変することができる。
アミノ酸の付加又は置換によるクラスIIIのSLRP配列の好ましい改変は、変異型の三次構造が、その変異型の起源である天然のクラスIIIのSLRPの三次構造から著しく変更されてはいないような、保存的改変であってもよい。保存的な付加又は置換を用いた改変ペプチドの生成において、当業者を助ける豊富な情報が科学文献に存在しており、そのような保存的改変を達成するのに適切なアミノ酸残基の選択は、一部の熟練した技術者の発明力の施用を必要としない。
好ましくは、クラスIIIのSLRPの変異型が、その変異型の起源である天然のクラスIII SLRの対応する部分と少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を共有し得る。より好ましくは、同一性の程度が少なくとも60%又は70%であってもよく、最も好ましくは、前記変異型がその変異型の起源である天然のペプチドの配列の対応する部分と少なくとも80%、90%又は95%の相同性を共有し得る。クラスIIIのSLRPの変異型と天然分子とのアミノ酸配列の類似性は、自由に利用可能な比較ソフトウエアを用いて容易に決定することができる。
本発明の作用物質が単剤治療に使用できること(すなわち、本発明の作用物質の、癌を予防及び/又は治療するための、単独での使用)は、理解されるであろう。
あるいは、本発明の作用物質が、補助剤として、又は癌の予防及び/又は治療の既知の治療法と併せて、用いることができる。癌細胞の阻害又は破壊をもたらすことができる複数の経路を活性化することが有利であると一般的に考えられるので、本発明の作用物質の他の治療法と併せての使用が好ましい。このような併用療法の利点として、癌の予防及び/又は治療のより迅速な解決、転移性表現型発生の危険の減少、及び癌細胞が治療に対する抵抗性を発生する危険の減少が挙げられる。
本発明の作用物質との併用で使用し得る癌の予防及び/又は治療のための既知の好適な療法として、化学療法、放射線療法、タキソール等の作用物質を利用する療法、及び抗血管形成療法(有利には、治療すべき腫瘍の血管段階への進行を阻止又は遅らせ得る)が挙げられる。
本発明の第三の観点では、クラスIIIのSLRPの活性を促進できる作用物質と、更なる癌治療作用物質との組合せが提供される。好ましくは、更なる癌治療作用物質は化学療法作用物質、抗血管形成作用物質又はタキソールでよい。本発明の作用物質と更なる癌治療作用物質との組合せは、混合物の形態で、又は別個の剤形で提供され得る。
本発明の作用物質は、インテグリンの機能を阻害し得る物質と併せて用いることができる。そのような物質としては、インテグリンに結合し得る中和抗体が挙げられる。好ましくは、機能を阻害されるインテグリンが、α4、α5、αV、β1及びβ3を含む群から選択され得る。
本発明の作用物質は、複数の異なる形態を有する組成物中に組み込まれてもよく、前記形態は、特に前記組成物が使用される方法に依存する。従って、例えば、前記組成物は、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、軟膏剤、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル、経皮パッチ若しくはリポソームの形態であってもよく、又はヒト若しくは動物へ投与できるその他適切ないずれかの形態であってもよい。本発明の組成物のビヒクルが、そのビヒクルを投与される対象者に充分に耐容性のあるものとすべきことは、理解されるであろう。
本発明の作用物質を含む組成物は、複数の方法で使用できる。一例を挙げると、全身投与が必要とされ得る場合、そのような化合物が、例えば錠剤、カプセル剤又は液剤の形態で経口的に摂取され得る組成物中に含まれ得る。あるいは、該組成物が血流内への注射によって投与されてもよい。注射は、静脈内注射(ボーラス投与若しくは注入)であってもよく、又は皮下注射(ボーラス投与若しくは注入)であってもよい。該組成物が、吸入によって(例えば、鼻腔内へ)投与されてもよい。該吸入は、肺癌の予防及び/又は治療の場合に好ましい投与経路である。
本発明の作用物質を含む組成物を用いて眼癌を予防及び/又は治療することができる。そのような組成物は、眼それ自体への注射(例えば、硝子体内注射)又は眼の周囲への注射(例えば、眼窩周囲注射)のいずれかに調剤され得る。あるいは、該化合物が眼の局所使用又は灌注のために、例えば目薬の形態に調剤されてもよい。注射又は局所使用に適切な組成物の製剤形態は、当業者には周知であろう。
イオン浸透療法は、本発明の作用物質を所望の組織に送達し得る別の経路を表す。イオン浸透療法は、癌の予防及び/又は治療が望まれる部位に非侵襲的に作用物質を導入し得る好ましい方法を提供することができる。
緩慢放出デバイス内又は遅延放出デバイス内に作用物質を組み込まれていてもよい。そのようなデバイスは、例えば、皮膚上若しくは皮膚下に又は他の組織に挿入されてもよく、また該化合物が数週間にわたって又は数ヶ月間かけて放出されてもよい。そのようなデバイスは、本発明の作用物質を用いる長期的な治療が必要とされる場合、また頻繁な投与が通常必要とされる場合に(例えば、少なくとも毎日の注射が必要とされる場合)、特に有利であり得る。
必要とされる作用物質の量は、生物学的活性、並びに投与の様式、使用される作用物質の物理化学的特性及び作用物質が単剤治療として使用されるのか又は併用療法に使用されるのかに順番に依存する生体利用効率によって決定されることは、理解されるであろう。投与の頻度も、上述する要因、特に治療を受ける対象者体内での作用物質の半減期によって、影響されるであろう。
投与される最適投薬量は、当業者により決定することができ、使用される特定の作用物質、製剤の力価、投与の様式及び疾患症状の進行に伴って変動するであろう。特に、投薬量は、治療すべき腫瘍のサイズ及び/又は治療すべき腫瘍の数に関連して決定され得る。治療を受ける特定の対象者に依存する付加的な要因(例えば対象者の年齢、体重、性別、食餌及び投与時間が挙げられる)は、結果として投薬量を調整する必要があるであろう。
医薬業界により通常使用されているような既知の手法(例えば、生体内実験、臨床試験など)を用いて、本発明の作用物質の具体的な製剤形態と適確な治療計画(例えば、該化合物の1日量及び投与の頻度など)とを確立することができる。
一般的には、体重の0.01 μg/kg〜1.0 g/kgの1日量で本発明の作用物質を用いて癌を予防及び/又は治療することができ、その量は、使用される具体的な作用物質によって決まる。より好ましくは、1日量が体重の0.01 mg/kg〜100 mg/kgである。
1日量は、単回投与として与えられてよい(例えば、毎日1回の注射又は経口投与)。あるいは、使用される作用物質が、1日のうちに2又は3回以上の投与を必要としてもよい。一例として、本発明の作用物質は、10 μg〜5000 mgの用量で毎日2回(又は症状の重度に依存して3回以上)注射の形態で投与されてもよい。治療を受ける患者は、起床のときに第一の用量を服用して、次に第二の用量を夜に(2回投与計画の場合)又は服用後3〜4時間おきに間隔をあけて服用してもよい。あるいは、緩慢放出デバイスを使用して、反復する用量を投与する必要なしに、患者に最適用量を提供してもよい。
本発明の第一、第二又は第三の観点によると、癌を予防及び/又は治療できる本発明の作用物質の適切な量は、約0.01 mg〜約800 mgを含み得る。別の態様では、本発明の作用物質の量は約0.01 mg〜約250 mgである。別の態様では、本発明の作用物質の量は約0.01 mg〜約250 mgである。別の態様では、本発明の作用物質の量は約0.1 mg〜約100 mgである。別の態様では、本発明の作用物質の量は約0.1 mg〜約20 mgである。
オプチシンのようなクラスIIIのSLRPの1〜25 μg/mLの投与は、癌の予防及び/又は治療に特に有効であることが分かった。オプチシンのようなクラスIIIのSLRPは1〜25 μg/mLの濃度、好ましくは1〜10 μg/mL、1〜5 μg/mLの濃度でさえ投与され得る。
オプチシン以外のクラスIIIのSLRPの好ましい用量は、実施例で使用するのと同様な方法を用いて決定できることは理解されるであろうが、そのような化合物は1〜25 μg/mLの濃度での投与が治療上の効果を達成し得ることが予見される。
本発明の第二の観点によれば、治療上有効な量の本発明の作用物質と、医薬として許容されるビヒクルとを含む医薬組成物の形態で、クラスIIIのSLRP活性を促進できる作用物質を投与することができる。「治療上有効な量」とは、対象者に投与された場合に癌を予防及び/又は治療できる本発明の作用物質のいずれもの量である。「対象者」は、脊椎動物、哺乳動物、家畜又は人間である。
本明細書で言及される「医薬として許容されるビヒクル」とは、当業者に公知で、医薬組成物を調剤するのに有用な、いずれもの生理学上のビヒクルである。
好ましい態様では、医薬上のビヒクルが液体であり、医薬組成物が液剤の形態である。別の態様では、医薬として許容されるビヒクルが固体であり、医薬組成物が散剤又は錠剤の形態である。更なる態様では、医薬上のビヒクルがゲルであり、医薬組成物がクリーム剤などの形態であり得る。
固体ビヒクルは、香味剤、滑沢剤、安定剤、懸濁剤、増量剤、滑剤(glidant)、圧縮助剤、結合剤又は錠剤崩壊剤としても役立ち得る1又は2以上の物質を含むこともでき、またカプセル化材料であってもよい。散剤では、ビヒクルは、細粒状の(finely divided)活性な作用物質と混合されている細粒状の固体である。錠剤では、活性な作用物質が、必要な圧縮特性を有するビヒクルと適切な割合で混合されて、所望の形状及びサイズに成形される。散剤及び錠剤は、好ましくは99%まで活性な作用物質を含む。適切な固体ビヒクルとしては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス及びイオン交換樹脂が挙げられる。
液体ビヒクルは、液剤、懸濁剤、乳濁剤、シロップ剤、エリキシル剤及び加圧組成物に使用される。活性な作用物質は、水、有機溶媒、それらの混合物、又は医薬として許容される油類若しくは油脂類のような医薬として許容される液体ビヒクル中に、溶解されても又は懸濁されてもよい。液体ビヒクルは、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味料、香味剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定剤又は浸透圧調整剤などの他の適切な医薬添加剤を含んでいてもよい。経口投与及び非経口投与に適する液体ビヒクルの例としては、水(部分的に上述する添加剤、例えばセルロース誘導体を含み、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液)、アルコール類(一価アルコール類及び多価アルコール類、例えばグリコール類を含む)及びそれらの誘導体、並びに油類(例えば、分留したココナツ油及びラッカセイ油)が挙げられる。非経口投与については、ビヒクルは、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルのような油性エステルであってもよい。無菌液体ビヒクルは、非経口投与用の無菌液剤形態の組成物に有用である。加圧組成物用の液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素又は他の医薬として許容される高圧ガス(propellant)であってもよい。
無菌の溶液又は懸濁液である液状医薬組成物は、例えば、筋肉内、くも膜下腔内、硬膜外、腹腔内、皮下及び特に静脈内の注射に利用され得る。本発明の化合物は、投与時に滅菌水、生理食塩水又は他の適切な無菌注射用媒体を用いて溶解又は懸濁され得る、無菌固形組成物として調製されてもよい。ビヒクルは、必要且つ不活性な、結合剤、懸濁剤、滑沢剤、香味剤、甘味料、保存料、色素及びコーティング剤を含むように意図される。
本発明の作用物質は、他の溶質類又は懸濁剤(例えば、溶液を等張性にするのに十分な生理食塩水又はグルコース)、胆汁酸塩、アカシア、ゼラチン、ソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80(エチレンオキシドと共重合されたソルビトールのオレイン酸エステル類及びその無水物)などを含む無菌の溶液又は懸濁液の形態で経口的に投与されてもよい。
本発明の作用物質は、液体又は固体いずれかの組成物の形態で経口的に投与されてもよい。経口投与に適する組成物としては、ピル、カプセル剤、顆粒剤、錠剤及び散剤などの固体形態、並びに溶液、シロップ剤、エリキシル剤及び懸濁剤などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、無菌の溶液、乳濁液及び懸濁液が挙げられる。
本発明の使用に適する作用物質がクラスIIIのSLRP(及びそれらの誘導体)をコードする作用物質をも包含することは、当業者には理解されるであろう。例えば、考えられる作用物質は、クラスIIIのSLRPをコードする核酸分子を含む。このような核酸は、好ましくは適切なベクター中で投与される。
本発明は、癌の予防及び/又は治療のための医薬の製造で使うためのクラスIIIのSLRP活性を促進する作用物質として、以下の(a)〜(f)を含む群より選択される分子をコードするベクターの使用を提供する:
(a)オプチシン;又は
(b)エピフィカン;又は
(c)ミメカン(オステオグリシンとしても知られている);又は
(d)前記(a)〜(c)のいずれかのエレメントを含むキメラ分子;又は
(e)前記(a)〜(d)のいずれかの改変型;又は
(f)前記(a)〜(e)のいずれかの生物学的に活性な断片若しくは誘導体。
さらに、このようなベクターは遺伝子治療で使うために適した作用物質を提供し得ることが分かるだろう。
この態様の使用に適切なベクターの例は、E1/E3欠失Ad5ゲノムを含有するプラスミドに挿入されたオプチシンcDNAを含む(すなわち、アデノウイルス由来のベクター)。発明者らは、このベクター(「アデノ-オプチシン」と称する)が腫瘍のin vivo成長の予防又は阻害に有効であることを見出した。少なくとも10、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも50、なおさらに好ましくは少なくとも100、最も好ましくは100を超える感染多重度(MOI、細胞に対する感染ウイルス粒子の比の指数)でアデノ-オプチシンを提供することができる。
発明者らは、アデノ-オプチシンの腫瘍内投与(例えば、200mm3の腫瘍体積当たり108プラーク形成単位の濃度での注射によって)が腫瘍の成長及び/又は進行を防止又は阻害できることをも見出した。本発明の作用物質の単回の腫瘍内投与でも癌の治療に有効であり得るが、複数回の投与を果たすことが好ましいだろう。このような投与の回数と持続時間は、責任のある臨床医によって決められるが、2、3、4又は5日以上の間隔での反復投与を含んでよい。
癌を予防及び/又は治療し得る便利な方法は、治療上有効な量の本発明の作用物質を、遺伝子治療で該作用物質が必要な部位に与えることである。本発明のこの態様によれば、作用物質は、好ましくは上記段落で述べたようなベクターを含み得る。
本発明の第四の観点によると、遺伝子治療技術での使用のために送達システムが提供され、その送達システムは本発明の作用物質をコードする核酸分子を含み、前記核酸分子は、選択された作用物質の発現をもたらすことができる。好ましくは、前記核酸分子は、転写されて、選択された作用物質の発現をもたらすことができるDMA分子である。
本発明の第五の観点によると、癌の予防及び/又は治療に用いる医薬の製造に用いる、上記段落で規定したとおりの送達システムの使用が提供される。
本発明の第六の観点によると、癌を予防及び/又は治療する方法が提供され、その方法は、予防及び/又は治療を必要とする患者に対して、本発明の第四の観点で規定される送達システムを治療上有効な量で投与することを含む。
遺伝コードの縮重のため、本発明の使用に適する作用物質をコードする核酸配列は、コードされている生成物の配列に実質的に影響することなく変動又は変化して、その機能的変種を提供し得ることは明白である。本発明の使用に適する作用物質は、例えば、癌細胞の増殖及び/又は生存能を阻害することによって、及び/又は癌細胞のアポトーシスを促進することによって、癌を予防及び/又は治療する能力を保持するべきである。
本発明の作用物質(クラスIIIのSLRP、それらの断片及び誘導体を含む)をコードする適切なヌクレオチドは、例えばサイレント変化の生成のように、配列内では同じアミノ酸をコードする別個のコドンの置換によって変更された配列を有するヌクレオチドを含む。他の適切な変種は、相同なヌクレオチド配列を有するが、その配列の全部又は一部が種々のコドンの置換によって変更されているものであり、前記コドンは、置換するアミノ酸に類似する生物物理的特性の側鎖を有するアミノ酸をコードして、保存的変化を生成する。例えば、小型で非極性の疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン及びメチオニンが挙げられる。大型で非極性の疎水性アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンが挙げられる。有極性の中性アミノ酸としては、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン及びグルタミンが挙げられる。正電荷を有する(塩基性)アミノ酸としては、リジン、アルギニン及びヒスチジンが挙げられる。負電荷を有する(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。
本発明の送達システムは、癌を予防及び/又は治療することが望まれる部位で、多くの通常の送達システムに可能であるよりも長い期間にわたって、本発明の作用物質レベルの持続を達成するのに非常に適する。例えば、癌の予防及び/又は治療に適する本発明の作用物質は、本発明の第四の観点で開示される核酸分子で形質転換された細胞によって(好ましくは、治療すべき癌がある部位で)連続的に発現され得る。従って、本発明の作用物質がin vivoで非常に短い半減期を有していても、治療上有効な量の前記作用物質が、その処置された組織から連続的に発現され得る。
さらに、本発明の送達システムを用いて、軟膏剤又はクリーム剤で必要とされるか、あるいは本発明に従って使用され得るような通常の医薬的ビヒクルを使用する必要なく、核酸分子を(また、それにより、本発明の作用物質を)提供することができる。
本発明の送達システムは、該核酸分子が発現されて(送達システムが患者に投与されるときに)、癌の予防及び/又は治療のための活性を直接的又は間接的に有する本発明の作用物質を生成することができるようなものである。「直接的に」とは、遺伝子発現の産物それ自体が、必要な活性を有することを意味する。「間接的に」とは、遺伝子発現の産物が、少なくとも一つの更なる反応を受けて又は媒介して(例えば、酵素として)、必要な活性を有する活性な作用物質を提供することを意味する。
核酸分子は、適切なベクター内に収容されて、組換えベクターを形成し得る。ベクターは、例えばプラスミド、コスミド又はファージであってもよい。このような組換えベクターは、本発明の送達システムにおいて、該核酸分子を用いて細胞をトランスフォームするのに非常に有用である。
組換えベクターは、他の機能的エレメントを含んでいてもよい。一例を挙げると、組換えベクターは、ベクターが細胞の核内で自立的に複製するように設計され得る。この場合、組換えベクター中にDNAの複製を誘導するエレメントが必要とされてもよい。あるいは、組換えベクターが、ベクター及び組換えDNA分子が細胞のゲノム中に組み込まれるように設計され得る。この場合、DNA配列は、標的化した組込みに有利に働く(例えば、相同組換えによって)ものであることが望ましい。組換えベクターは、クローニング過程で選択マーカーとして使用され得る遺伝子をコードするDNAを有していてもよい。
組換えベクターは、必要に応じて、遺伝子の発現を制御するプロモーター又はレギュレーターを更に含んでいてもよい。
本発明の使用に適するDNA分子は、治療される対象者の細胞のDNAに組み込まれるものであってもよい(が、組み込まれることが必須ではない)。未分化細胞は、遺伝的に改変された娘細胞の産生をもたらすように、安定に形質転換され得る。このような場合は、例えば特異的な転写因子若しくは遺伝子アクチベータを用いて、又は、より好ましくは腫瘍部位若しくは予防及び/又は治療すべき癌がある他の部位で特異的に認められるシグナルに応答して遺伝子を転写する誘導性プロモーターを用いて、対象者における発現の調節が必要とされてもよい。あるいは、送達システムが、治療される対象者の分化した細胞の不安定な又は一過性の形質転換に有利に働くように設計されてもよい。この例では、形質転換した細胞が死んだ場合又はタンパク質の発現を停止した場合に(理想的には、癌がうまく予防及び/又は治療された場合に)該DNA分子の発現が停止するであろうことから、発現の調節はあまり重要でないかもしれない。
本送達システムは、核酸分子をベクター中に組み込むことなく対象者に提供することができる。一例を挙げると、核酸分子は、リポソーム内又はウイルス粒子内に組み込まれていてもよい。あるいは、「裸の」核酸分子が、適切な手段、例えば直接的エンドサイトーシス取り込みによって、対象者の細胞に挿入されてもよい。
核酸分子は、トランスフェクション、インフェクション、マイクロインジェクション、細胞融合、プロトプラスト融合又は弾道衝撃(ballistic bombardment)によって、治療される対象者の細胞に移動させられてもよい。例えば、コーティングした金粒子を用いる弾道トランスフェクション、核酸分子を含むリポソーム、ウイルスベクター(例えば、上述したようなアデノウイルス)、及び例えばプラスミドDNAの使用により直接的核酸取り込み(例えば、エンドサイトーシス)を提供する手段によって、癌が予防及び/又は治療される部位に、直接的に(例えば、局所的に又は注射によって)移動させられ得る。
DNA分子から発現される本発明の作用物質は、クラスIIIのSLRPであってもよく、又はその生物学的に活性な断片若しくは誘導体であってもよい。
本発明の方法は、本発明の作用物質の細胞内発現の増加を誘導してから、必要な癌の予防及び/又は治療をもたらすことによって、実現することができる。このような本発明の作用物質の治療的発現は、前記作用物質の天然に存在する発現(例えば、天然に存在するクラスIIIのSLRPの天然の発現)を増加させることによって達成されてもよく、前記作用物質の自然でない発現の誘導(例えば、クラスIIIのSLRPを天然に発現しない細胞による、クラスIIIのSLRP発現の誘導)によって達成されてもよく、又は前記作用物質の過剰発現の誘導によって達成されてもよい。オプチシンなどのクラスIIIのSLRPの内因性発現の増加は、オプチシンをコードする遺伝子の転写を増加し得る薬剤の投与によって容易に達成できることが理解されるであろう。
本発明の第七の観点によると、癌を予防及び/又は治療する能力について被検化合物をスクリーニングする方法が提供され、その方法は、
(i) 被検化合物の非存在下で、クラスIIIのSLRPとクラスIIIのSLRPの基質との間の結合の程度を評価する工程;
(ii) 被検化合物の存在下で、クラスIIIのSLRPとクラスIIIのSLRPの基質との間の結合の程度を評価する工程;
(iii) 工程(i)で生じる結合の程度を、工程(ii)で生じる結合の程度と比較する工程;を含み、
ここで、工程(ii)で生じる結合の程度が工程(i)で生じる結合の程度よりも弱い場合は、被検化合物は癌を予防及び/又は治療することができる。
本発明のスクリーニング方法で同定された化合物は、癌細胞の増殖及び/又は生存能を阻害し、及び/又は癌細胞のアポトーシスを促進すると予測され得る。
基質は、ヘパリン若しくはヘパラン硫酸であってもよく、又は増殖因子(特にVEGF、FGFなどの増殖因子)、又は増殖因子受容体(特にEGF受容体又はFGF受容体)であってもよい。あるいは、基質は、予防及び/又は治療すべき癌に関連する型の癌細胞を含み得る。基質は、クラスIIIのSLRPに結合される細胞受容体、好ましくは癌細胞によって発現される細胞受容体であってもよい。そのような受容体の例として、VEGF及びFGFに対する細胞受容体が挙げられる。
オプチシンなどのクラスIIIのSLRPと同様の細胞受容体結合プロフィールを有する他の作用物質が、クラスIIIのSLRPに示されるものに類似する生物学的作用を有すると予測できることは、理解されるであろう。従って、本発明の第八の観点では、クラスIIIのSLRPと実質的に同じ受容体結合プロフィールを有する作用物質の、癌の予防及び/又は治療のための薬物の製造における使用が提供される。
これら分子の生物学的ふるまいを媒介することにおけるクラスIIIのSLRPの受容体結合プロフィールの重要性の認識が、クラスIIIのSLRP活性を模倣できる(例えば、癌細胞の増殖及び/又は生存能を阻害し、及び/又は癌細胞のアポトーシスを促進することによって)作用物質を同定し得る手段を提供することは、理解されるであろう。
従って、本発明は、クラスIIIのSLRP活性を模倣できる被検化合物をスクリーニングする方法を提供し、その方法は、被検化合物の受容体結合プロフィールをクラスIIIのSLRPの受容体結合プロフィールと比較することを含み、ここでクラスIIIのSLRPと実質的に同じ受容体結合プロフィールを有することは、被検化合物がクラスIIIのSLRP活性を模倣できることを示す。
クラスIIIのSLRPに特有の受容体結合プロフィールは、当業者に周知の実験方法及びプロトコールを用いて、容易に決定することができる。
以下の実施例で、添付図面を参照して本発明を更に詳述する。
〔実施例〕
以下の実験例によって、癌細胞に対するクラスIIIのSLRPの効果を調べた。以下に概要を述べる実験は、癌細胞に対する次の処理の効果を実証する:
(i)クラスIIIのSLRPをコードするウイルスベクター
(ii)ウイルスベクターに感染した細胞によって発現及び分泌されたクラスIIIのSLRP;及び
(iii)精製された組換え型のクラスIIIのSLRP。
1.クラスIIIのSLRPをコードするウイルスベクターによる感染の効果−パートI
ウシのクラスIIIのSLRPであるオプチシンの構成的発現についてコードする第1世代E1/E3欠失アデノウイルス5型ベクター(「アデノ-オプチシン」と称するベクター)を用いて、クラスIIIのSLRPをコードするウイルスベクターによる癌細胞に対する効果を調べた。対応する「空の」ベクターをコントロール(対照)として用いて、観察された効果が、コードされたクラスIIIのSLRPの活性に起因することを立証した。
いくつかの異なる感染多重度(MOI、感染ウイルス粒子の細胞に対する比の指数)にてアデノ-オプチシンベクターでヒト線維肉腫細胞株HT1080の細胞を感染させ、感染3日後に、この感染の細胞生存能に対する効果を測定した。この調査の結果を図3に示す。
図3は、明らかに、アデノ-オプチシンベクターによるHT1080腫瘍細胞の感染が、細胞増殖の減少と、細胞生存能の有意な低減につながる細胞死の増加とをもたらしたことを示している。生存能損失の増加は、増加MOIで観察され、400のMOI(試験した最高用量)は、腫瘍細胞の生存能の80%の損失をもたらすことができた。
2.クラスIIIのSLRPをコードするウイルスベクターによる感染の効果−パートII
クラスIIIのSLRPをコードするウイルスベクターによる感染の癌細胞に対する効果を、大腸癌由来の細胞株HCT116について更に調べた。
HCT116細胞を培養し、上述したアデノ-オプチシンベクターの増加MOIによる感染にさらした。この研究の結果を図4に示す。
図4のパネルAは、0、20、50及び100のMOIにてアデノ-オプチシンで感染させたHCT116培養細胞の顕微鏡写真を示す。これら顕微鏡写真は、細胞に施されたアデノ-オプチシンのMOIが増加すると、細胞の“丸み”が増すこととなり、順次、細胞生存能の低減を示すことを実証している。実際に、100のMOIにてアデノ-オプチシンで感染させたHCT116を示す顕微鏡写真では、ほんの少ししか生きた細胞が存在しないことが分かる。
これら結果は、図4のパネルBに示される写真でも実証されており、この場合もHCT116細胞の感染の増加が感染細胞の生存能の低減をもたらすことを示している(コントロール細胞集団の生存能と比較した場合)。
3.ウイルスベクターで感染された細胞によって発現及び分泌されたクラスIIIのSLRPによる処理の効果−パートI
オプチシンのようなクラスIIIのSLRPは、それらが発現される細胞によって分泌される。以下の研究は、被処理癌細胞以外の細胞集団によって発現されたオプチシンの、癌細胞に対する効果を調べた。
上述したアデノ-オプチシン感染HT1080細胞由来のオプチシン含有上清を、オプチシン特異性抗体OPT-A(発明者らによって製造され、“Le Goff et al. J. Biol. Chem. 2003: 278: 45280-45287”に記載されている)を用いるウエスタンブロットに供して、培地中のオプチシンの存在を確認した。
上述したように収集したオプチシン含有上清を3種の異なる腫瘍細胞株上に乗せた。選択された細胞株は肺癌細胞株(A549)と2種の乳癌細胞株(T47D及びMDA468)を含んでいた。これら癌細胞株の生存能に対するオプチシンの効果を図5に示す。
図5は、多様な組織バックグラウンド由来の腫瘍細胞株が、クラスIIIのSLRPであるオプチシンの存在下で顕著に成長が阻害されたことを実証している。これら結果は、クラスIIIのSLRPが多くの組織由来の癌を予防及び/又は治療できることと、被処理細胞以外の細胞によって発現及び分泌されたクラスIIIのSLRPによっても癌細胞の生存能を阻害し得ることの両方を示している。
4.ウイルスベクターで感染された細胞によって発現及び分泌されたクラスIIIのSLRPによる処理の効果−パートII
上で詳述した研究の発展では、オプチシン含有上清を多数の癌由来細胞株上に乗せた。この発展した研究で用いた細胞株は、線維肉腫(HT1080)、神経膠腫(U87)、膵臓癌(L3.6)、肺癌(Calu6とA549)、膀胱癌(RT112)、乳癌(T47DとMDA468)及び大腸癌(HT29とHCT116)を含んでいた。
上記細胞株をオプチシン含有上清(100のMOIのアデノ-オプチシンによるHT1080細胞の感染によって生成された)と共に72時間インキュベートした。
この研究の結果を図6の表に示す。表にはクラスIIIのSLRPであるオプチシンに対する細胞株の感受性の順に(MTTアッセイで決定した)細胞株を並べてある。表中、「+++」は50%より高い阻害を示し、「++」は25%より高い阻害を示し、「+」は10〜25%の阻害を示す。
試験したすべての癌由来細胞株がクラスIIIのSLRPであるオプチシンの抗増殖作用に感受性であったことに気付くだろう。さらに、試験したサブセットの細胞株はクラスIIIのSLRPであるオプチシンの抗増殖作用に特に顕著な感受性を示した。これには大腸癌(HCT116、HT29)、乳癌(MDA468、T47D)及び肺癌(A549)由来の細胞が含まれ、従って、これらの癌は、本発明の治療に特に好ましい癌であることを示している。
5.精製された組換え型のクラスIIIのSLRPによる処理の効果
精製された組換え型のクラスIIIのSLRPによる癌細胞の処理の効果を以下のように調べた。
4種の癌細胞株(上述したとおりのT47D、A549、MDA468及びHT1080)を精製された組換え型のクラスIIIのSLRPであるオプチシンと共にインキュベートした。これら細胞の増殖と生存能に対するオプチシンの効果を図7に示す。
図7は、組換え型のクラスIIIのSLRPであるオプチシンによる処理が、多様な腫瘍タイプ由来の4種の細胞株の増殖と生存能を阻害できることを示している。これらデータに基づいた計算は、IC50が約5 μg/mlのオプチシンであることを示した。この結果は、組換え型の精製されたクラスIIIのSLRPが、いくつかのタイプの組織の癌を効率的に予防及び/又は治療できることを実証している。
6.in vivoでの腫瘍の成長に対するクラスIIIのSLRPの効果
異種移植片モデルを用いて、in vivoでの腫瘍の成長と増殖を直接阻害するクラスIIIのSLRPの能力を調べた。
HCT116細胞をヌードマウスに皮内移植し、腫瘍のサイズを200mm3まで成長させた。このサイズは、触知できる腫瘍塊であることが分かっており、未処理のままの場合、形成される腫瘍は、4〜5日までに体積が二倍になり(相対腫瘍体積RTV2と呼ぶ)、8〜9日までにRTV3に達すると予測することができる。
108プラーク形成単位の単回腫瘍内注射としてアデノ-オプチシンを実験用HCT116腫瘍(n=6;処理サイズ範囲192〜225mm3)に投与した。アデノ-オプチシンベクターは組み込まれていないので、感染細胞によって発現されるオプチシンのピークは注射の24〜36時間後に生じ、その後発現は減少していくと予測できる。
この研究の結果は図8に示され、比較的控え目な用量のウイルスベクターアデノ-オプチシンによってでさえin vivoでの腫瘍の処理が腫瘍の進行を有意に阻害するのに十分であることを実証している。
図8のパネルAは、ウイルスベクターアデノ-オプチシン(黒四角)を介してクラスIIIのSLRPであるオプチシンで処理したHCT116腫瘍、「空の」ウイルスベクター(白色三角で示される「アデノ-コントロール」)及び未処理腫瘍(白色菱形)の体積(mm3で)を示す。オプチシンによる単回処理は、初めに腫瘍の成長を停止し(2〜4日にわたって)、次いで5〜8日にわたって有意に腫瘍の成長を阻害することが分かる。
この結果は、図8にさらに示され、8日目に(この日までにコントロール腫瘍は三倍拡張「RTV3」を受けた)オプチシン処理した腫瘍はコントロールより52%小さかったことを実証している。このオプチシン処理によって引き起こされるHCT116腫瘍の成長の減少は、未処理コントロールに比し、有意な5.8日という成長の遅延をもたらす(ノンパラメトリックなMann-Whitney U 試験で決定した場合p=0.005)。
〔要約〕
上述した実験結果は、オプチシンのようなクラスIIIのSLRPが、多くの異なる組織由来の癌を、直接癌細胞の増殖及び/又は生存能を阻害することによって、予防及び/又は治療し得ることを実証している。
データは、以下のような少なくとも4つのメカニズムによって、クラスIIIのSLRPを用いた癌の有効な予防及び/又は治療がもたらされ得ることを示している。
(i)癌は、被処理癌細胞による、オプチシンのようなクラスIIIのSLRPの発現によって予防及び/又は治療され得る。このような発現は、選択されたクラスIIIのSLRPをコードするベクターの使用によって適切に誘導され得る。
(ii)癌は、被処理癌細胞以外の細胞によって発現及び分泌されたクラスIIIのSLRPによって予防及び/又は治療され得る。予防及び/又は治療すべき癌の周囲の領域にある細胞内でクラスIIIのSLRPの発現が誘導され得ること、あるいは、その発現及び分泌されたクラスIIIのSLRPが引き続き該癌細胞の活性に影響を及ぼし得る(例えば、癌細胞の増殖及び/又は生存能を阻害し、及び/又はそのアポトーシスを刺激することによって)ことを条件に、その癌と離れた部位で発現が誘導され得ることが理解されるだろう。
(iii)癌は、精製された組換え型のクラスIIIのSLRPに癌細胞を曝露することによって予防及び/又は治療され得る。このような曝露は、精製された組換え型のクラスIIIのSLRPの、治療すべき腫瘍中への注射又は他の導入によってもたらされ得る。
(iv)癌は、クラスIIIのSLRPの発現を誘導できるクラスIIIのSLRP又は作用物質の腫瘍内投与によって予防及び/又は治療され得る。結果は、この腫瘍内投与が腫瘍の成長及び/又は進行の阻害又は防止に特に有効であることを実証している。
当業者は、クラスIIIのSLRP自体の導入又は発現の代替として、クラスIIIのSLRPをベースとする小型の分子を導入又は発現させて同様の効果を生じさせ得ることを容易に理解するだろう。抗癌剤の市場は非常に大きく、また、癌の治療で天然に存在する分子を用いることに、その毒性のリスクが低いことから多くの関心がある。
腫瘍の治療において、抗癌活性を有するウイルス送達される作用物質の使用にもかなりの関心があり、また、上述した結果は、明らかに、クラスIIIのSLRPが、癌の予防及び/又は治療で使用できる該作用物質の好適な例を表すことを実証している。
成熟型のヒトオプチシン、ウシオプチシン、ヒトエピフィカン及びヒトミメカンの完全長アミノ酸配列を示し、またヒトのクラスIIIのSLRP類のロイシンリッチリピート領域間のアミノ酸アラインメントも図示する。 パネル2aでは、メタロプロテイナーゼMMP2又はMMP9を用いた消化によって遊離されるウシオプチシンNH末端断片のアミノ酸配列を、パネル2bでは、ヒトオプチシン及びウシオプチシンの好ましい断片のアミノ酸配列を、パネル2cでは、異なる種由来のオプチシンNH末端配列間のアミノ酸アラインメントを示す。 線維肉腫由来のHT1080細胞の腫瘍細胞生存能に対する、クラスIIIのSLRPであるオプチシンをコードするウイルスベクターの感染の効果(増加MOIを用いて)を示す。 大腸癌由来のHCT116細胞の腫瘍細胞生存能に対する、クラスIIIのSLRPであるオプチシンをコードするウイルスベクターの感染の効果(増加MOIを用いて)を示し、パネル4Aは増加MOIを用いた感染を受けて培養したHCT116細胞の顕微鏡写真を示し、パネル4Bは感染が増加すると生存能が低減することを示すグラフの形態のデータを表す。 いくつかの多様な癌細胞株の生存能に対する、分泌されたクラスIIIのSLRPであるオプチシンによる処理の効果を示す棒グラフを示す。 多数の癌細胞株の生存能に対する、分泌された組換え型のクラスIIIのSLRPであるオプチシンによる処理の効果を示す表を示す。 いくつかの多様な癌細胞株の生存能に対する、精製された組換え型のクラスIIIのSLRPであるオプチシン(5μg/mlの濃度で)による処理の効果を示す棒グラフである。 異種移植片モデルにおけるHCT116ベース腫瘍の体積に対する、クラスIIIのSLRPであるオプチシンをコードするベクターの腫瘍内注射の効果を示し、パネル8Aは処理した腫瘍、コントロール及び未処理腫瘍の体積の経時的な進行を示し、パネル8Bは処理した腫瘍、コントロール及び未処理腫瘍の体積の8日後における比較を示す。

Claims (23)

  1. クラスIIIのSLRPの活性を促進する作用物質の、癌の予防及び/又は治療のための医薬品の製造における使用。
  2. 癌が腫瘍である、請求項1に記載の使用。
  3. 腫瘍が無血管性腫瘍である、請求項2に記載の使用。
  4. 癌が線維肉腫である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
  5. 癌が乳癌である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
  6. 癌が肺癌である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
  7. 癌が神経膠腫である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
  8. 癌が膵臓癌である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
  9. 癌が膀胱癌である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
  10. 癌が大腸癌である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
  11. 作用物質がクラスIIIのSLRPである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
  12. 作用物質が以下の(a)〜(f)を含む群より選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用:
    (a)オプチシン;
    (b)エピフィカン;
    (c)オステオグリシンとしても知られる、ミメカン;
    (d)前記(a)〜(c)のいずれかのエレメントを含むキメラ分子;
    (e)前記(a)〜(d)のいずれかの改変型;及び
    (f)前記(a)〜(e)のいずれかの生物学的に活性な断片若しくは誘導体。
  13. 生物学的に活性な断片がN末端断片である、請求項12に記載の使用。
  14. 生物学的に活性な断片がロイシンリッチリピート断片である、請求項12に記載の使用。
  15. 誘導体が増加したin vivoでの半減期を有する、請求項12に記載の使用。
  16. 誘導体がペプトイド誘導体である、請求項15に記載の使用。
  17. 誘導体がD-アミノ酸誘導体である、請求項15に記載の使用。
  18. 誘導体がペプチド-ペプトイド混成誘導体である、請求項11に記載の使用。
  19. 作用物質が以下の(a)〜(f)を含む群より選択される分子をコードするベクターである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用:
    (a)オプチシン;
    (b)エピフィカン;
    (c)オステオグリシンとしても知られる、ミメカン;
    (d)前記(a)〜(c)のいずれかのエレメントを含むキメラ分子;
    (e)前記(a)〜(d)のいずれかの改変型;及び
    (f)前記(a)〜(e)のいずれかの生物学的に活性な断片若しくは誘導体。
  20. 生物学的に活性な断片若しくは誘導体が請求項13〜18のいずれか1項に規定される生物学的に活性な断片若しくは誘導体である、請求項19に記載の使用。
  21. ベクターがオプチシンをコードするアデノウイルスベクターである、請求項19に記載の使用。
  22. クラスIIIのSLRPの活性を促進する作用物質の、癌細胞のアポトーシスを促進するための医薬品の製造における使用。
  23. 作用物質が請求項12〜20のいずれか1項に規定される作用物質である、請求項21に記載の使用。
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