JP2008517016A - 樹脂上ペプチド環化 - Google Patents

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Abstract

式Iの新規化合物が発明された。
【化10】

Description

本発明は、固相ペプチド合成(SPPS)におけるジスルフィド結合形成の方法に関する。
多くの種類の保護基、例えば、トリチル、アセトアミドメチル−、t−ブチル、トリメチルアセトアミドメチル、2,4,6−トリメトキシベンジル、メトキシトリチル、t−ブチルスルフェニルが、システイン残基の保護のために用いられうる。
最も一般的には、トリチル基がペプチド合成中の標準的なシステイン側鎖保護に用いられる。後でシスチンへと環化されるシステインの保護のためには、ヨウ素酸化を伴ったアセトアミドメチル(acm)保護基が、最も広く用いられている(非特許文献1、非特許文献2)。
ヨウ素以外の多数の酸化剤が、液相環化におけるシスチン生成を可能にするとして記載されている(非特許文献3中のAlbericio et al.からの例:水性緩衝液中のグルタチオン、DMSO、フェリシアン酸カリウム、エルマン試薬 5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)、ヨウ素、トリフルオロ酢酸タリウム(III)、アルキルトリクロロシランスルホキシド、強酸性媒質中でのトリフルオロメタンスルホン酸銀−DMSOを介した酸化)。
通常、それら全ての方法は、望ましくない複数の副生成物を生じさせ、最適な収率のためには10乃至20時間の範囲の延長された反応時間を必要とする。
Volkmer-Engertら(非特許文献4)は、水性溶媒中に溶解された酸素を用いることによるジスルフィド結合のチャコール触媒酸化的生成を記述している。注意深い制御は、水性媒質中に物理的に溶解された酸素のプールが、酸化のためにチャコールに酸素を担持させるのに必要且つ十分であることを証明すると述べられた。チャコールの使用は、触媒を用いない伝統的なエアースパージングと比べて、反応速度を劇的に加速した。
けれども、チャコールの使用は、このような反応を樹脂上ではなく均一溶液中で行うことを必然的に要求する;続く脱保護の反応工程は、ペプチド樹脂固相から取り除くことのできないチャコールが続けて存在していることを許容しないであろう。
特許文献1は、トリプトファンを含んだペプチドを、固相から放出した後で溶液中において環化することを記述している。そのペプチドは、側鎖のチオール官能が保護されていないC−末端システイニル−カルボキシアミドを有し、さらにそのN−末端は、3−スルフヒドリル−プロピオンアミド又は3,3’−ジチオ−(1−カルボキシ−プロピル)プロピオンアミド部位の何れかにより誘導体化されている。システインのアミド側鎖の保護及び/又は脱保護は、上記システイン側鎖のチオエステル結合を介した樹脂上へのペプチドの側鎖アンカリングによって不必要とされる。N−末端のジチオ−プロピオナトによる誘導体化は、樹脂からの切り離しの前に起こる。環化は、樹脂からの切り離しの後、したがって溶液中において、システインとチオプロピオンアミド部位との間のジスルフィド結合生成によって起こる。環化の前における固体支持体からの切り離しと、チオプロピオニル官能以外の包括的な(global)脱保護とは、このスキームにおいて必須である。
不利な点として、切り離し及び包括的な脱保護の間にチオプロピオンアミド部位を保持することを考慮して、最大限の注意が払われねばならない。Athertonら(非特許文献5)は、スカベンジャー及び樹脂からの切り離し用の酸分解促進剤の両者としての二重の機能を有しているチオアニソールの一般的な使用も、acm、tert−ブチル及びtert−ブチルスルフェニルにより保護されたシステインの部分的な早期の脱保護をもたらすことを報告した。−全体の合成経路は入り組んでおり、この方法で得られうる収率に否定的に影響する多くの工程が含まれている。環化は、二量化を避けるため、高度に希釈された溶液中で行われなければならない。得られた収率は、この記載においては全く明示されていない。
国際公開第03/093302号パンフレット Kamber et al., 1980, Helv. Chim. Acta 63, 899-915 Rietman et al., 1994, Int. J. Peptide Protein Res. 44, 199-206 Chan and White, eds. ‘FMOC Solid-phase Peptide Synthesis’, Oxford university Press 2000, p. 91 to 114 J. Peptide Res. 51, 1998, 365-369 J. Chem. Perkin Trans. I., 1985, 2065
本発明の目的は、固相合成によってジスルフィド結合された環状ペプチドを合成するための、よりシンプルで直接的な、異なった又は改善された方法を編み出すことにある。この目的は、本発明によると、以下の工程を具備したペプチド合成方法によって解決される:
a.固相に結合されたペプチドであって、そのペプチドは、少なくとも1つのシステイン、ホモ−又はノル−システイン残基を具備し、そのシステインは側鎖においてS−tert−ブチル−スルフェニル基によって保護されているペプチドを合成する工程、
b.N−末端で3,3’−ジチオ−(1−カルボキシ−プロピル)−プロピオニル−ラジカルを有している更なるアミノ酸とそのNα上でカップリングさせるか、任意に、N−末端アミノ酸のNαを脱保護し、そしてフリーのNαを3,3’−ジチオ−プロピオン酸イミドと反応させて対応するNα−3,3’−ジチオ−(1−カルボキシ−プロピル)−プロピオンアミドを生成するか、又は、N−末端アミノ酸のNαを脱保護し、フリーのNαを式IVの化合物、
7−S−S−[CH22−COOH (IV)
ここでRはアリール−、ヘテロ核アリールを含んだアリール−、又はアラルキル−、アルキルアリール−又はアルキル−であり、ハロゲノ、アミド、エステル及び/又はエーテルによってさらに置換されていてもよい、と反応させるかの何れかの工程、
c.ペプチドをさらにS−tert.ブチル−スルフェニル保護基除去試薬と、好ましくは、ペプチドを置換又は非置換トリスフェニルホスフィン又はトリスアルキルホスフィンと反応させる工程、
d.空気及び/又は酸素の存在下、形式的にはシステインとNα上の3−チオ−プロピオンアミド部位との間のジスルフィド結合の形成によってペプチドを環化する工程。
本発明に係るペプチドは、例えば、ホモシステイン、ホモアルギニン、D−シクロヘキシル−アラニン、ペニシリンアミド(Pen)又はオルニシン(Orn)などの、天然又は非天然のアミノ酸を含んだどのようなペプチドであってもよい。ペプチド骨格又は主鎖、側鎖及び接頭辞‘ノル−’‘ホモ−’の用語は、IUPAC−IUB定義(Joint IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature ‘Nomenclature and symbolism for amino acids and Peptides’, Pure Appl. Chem., 56, 595-624 (1984) )に従って、本文脈において解釈される。そのより狭く好ましい意味では、‘ホモ−’は、側鎖部分におけるちょうど1つの余分なメチレン架橋基を意味する。
更なる側鎖の保護、特にペプチド配列中に含まれた更なるシステイン、ホモ−又はノル−システイン残基であって、環化反応の間は保護されたままで、環化反応に関与しないことを意図されているものを指すときには、特別の注意が払われなければならない。好ましくは、このような更なるスルフヒドリル部位を具備した残基は、トリアルキルホスフィンの影響を受けない保護基によって保護され、より好ましくは、そのような非感受性スルフヒドリル保護基は、トリチル−、tert.ブチル−、アセトアミドメチル−、アルキル化アセトアミドメチル−、アルキル化トリチル−保護基からなる群より選択される。一般的なレベルでは、当技術で通常用いられる側鎖の保護基(例えば、Bodansky, M., Principles of Peptide Synthesisを参照、下記参照)が、保護をしないとカップリング及び脱保護のサイクルにおいて変換されうる感受性の側鎖を保護することに使用されてもよい。感受性の側鎖を有しているアミノ酸の例は、Cys,Asp,Glu,Ser,Arg,Homo−Arg(Har),Tyr,Thr,Lys,Orn,Pen,Trp,Asn及びGlnである。あるいは、所望の側鎖を生成するために、ペプチドアミドの固相合成後の化学修飾が行われうる。例えば、別の文献(欧州特許第301850号明細書;Yajima et al., 1978, J. Chem. Cos. Chem. Commun., p.482;Nishimura et al., 1976, Chem. Pharm. Bull. 24:1568)に詳細に述べられているように、ホモアルギニンはペプチド鎖中に含まれたリシン残基のグアニデーションによって調製されるか、又は、アルギニンは、ペプチド鎖中に含まれたオルニシン残基のグアニデーションによって調製されうるが、これは、より好ましくなくより困難な選択肢に過ぎない。著しくは、例えばHarのカップリングは、延長されたカップリング時間及びカップリング試薬の補充を要する。本発明によると、Arg又はHarを、好ましくはそれぞれFMOC−Arg及びFMOC−Harとして使用されるときに、側鎖の保護基を使用しないでカップリングさせることは1つの好ましい態様である。これは、個々のArg又はHar残基のカップリングの後に、グアニジン部位が、あらゆる更なるカップリング反応に先立って定量的にプロトン化され、そして有機溶媒中のプロトンドナーと安定なイオン対を形成することを確実にすることによって達成されてもよい。これは、以下の実験項中において1つの好ましい態様としてより詳細に記載されるように、樹脂に結合したペプチドアミドを過剰の酸性カップリング補助剤BtOH又はその類似物で処理することによって、好ましくは達成される。グアニジニウム基の電荷をスカベンジする他の例は、米国特許第4954616号明細書に述べられているように、Fmocで保護されたHarのテトラフェニルボロン酸塩を合成のために使用することである。
本発明に係るペプチドの好ましい態様の中で見出される個々のアミノ酸側鎖のための好適な保護基の例は:
好ましくは、アルギニン側鎖は、合成中に、例えばトシル、ベンジルオキシカルボニル、ペンタメチレンクロマンスルホニル(Pmc)、ペンタメチルジヒドロベンゾフランスルホニル(Pbf)、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)及びその4−tbu−2,3,5,6−テトラメチル同族体(tart)、アダマンチルオキシカルボニル又はBocを用いて付加的に共有結合的に保護されてもよい。Pmc,Pbf,Mtr又はTartはArgの保護のために強く推奨され、最も好ましくは、それはPbfである。
Trpは、合成中、好ましくはBocを用いて保護される。任意に、それは、ホルミル又はsym−メシチレン−スルホニルによってN−保護されてもよい。
好適なカルボン酸側鎖の保護基は、側鎖のカルボキシ基のエステル化により、例えばアダマンチル、tert.ブチル、アリル、ベンジル(Z)であり、好ましくは、カルボキシ基はtert.ブチルエステルへの変換によって保護される。よく知られているように(Bodansky, M. 参照、下記)、上記の保護基の除去には、異なった脱保護の化学を必要とするかもしれないことは述べるまでもない。
固相支持体又は樹脂は、固相合成での使用に適した当技術において知られているあらゆる支持体でありうる。固相のこの定義は、ペプチドが機能的リンカー又はハンドル基を介して上記の固相又は樹脂に結合又はリンクされることを含んでおり、本文脈で「固相」と言うときにはこのようなリンカーが含意される。固相の例は、例えば、ポリスチレン支持体(例えばp−メチルベンジル−ヒドリルアミンによってさらに機能化されてもよい)、又は、珪藻土封入ポリジメチルアクリルアミド(ペプシンK)、シリカ又は微細孔性ガラスなどの剛直な機能化支持体である。固相の樹脂マトリクスは、両親媒性のポリスチレン−PEG樹脂(例えばTentagel、米国特許第4908405号明細書参照)又はPEG−ポリアミド又はPEG−ポリエステル樹脂(例えば、Kempe et al., J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 7083 参照;米国特許第5910554号明細書、米国特許出願公開第2003/078372号明細書)によって構成されてもよい。このような混合PEG樹脂上で得られた生成物の純度は、伝統的な樹脂上よりも優れているが、樹脂ローディングは、通常、より効率が悪く、及び/又は、特に酸性媒質中での化学的安定性は、しばしば充分でない。ポリスチレン−PEG樹脂はより高いローディングに達しているが、PEGの含有量が減少しているため、より低い両親媒性しか得られない。
好ましくは、固体支持体は、ポリスチレン、例えば、特には両親媒性PS−PEGなどのPEG又はポリジメチルアクリルアミド高分子マトリクス又は樹脂系である。
本発明によると、ペプチドは、アミノ酸側鎖、典型的にはC−末端アミノ酸(このようなアミノ酸がまさに本発明に係るS−tBu−スルフェニル保護されたシステイン残基でなければ)を介して、又はC−末端のα―カルボニル基を介して、エステル、チオエステル又はアミド結合によって、樹脂と結合されうる。その例は、例えば、アミノ−メチル、カルボキシル又はブロモメチル又はヨードメチルラジカルを有している固体支持体か、又は、その支持体が既知のリンカー若しくはハンドル、例えば、ワン(Wang)、トリチル、2−クロロ−トリチル、4−メトキシトリチル、‘リンク(Rink)アミド’、4−(2’,4’−ジメトキシベンジル−アミノメチル)−フェノキシ−、Sieber樹脂 9−アミノ−6−フェニルメトキシ−キサンテン−、4−ヒドロキシメチルフェノキシアセチル−又は4−ヒドロキシメチル安息香酸(後者は、感受性のアミノ酸、例えばTrp及び特にはシステイン、のラセミ化をもたらしうるp−ジメチルアミノピリジン触媒によるエステル化プロトコルによって第1のアミノ酸を結合させることを要する、Atherson, E. et al., 1981, J. Chem.Soc. Chem. Commun., p.336 ff.参照)リンカーにより誘導体化された支持体である。樹脂にチオエステル結合を提供する方法は、国際公開第04/050686号パンフレットにおいて詳細に開示され、さらに参照付けられている。本発明の1つの好ましい態様では、ペプチド部位の固相への結合のためのチオエステル結合は、20%ピペリジンに対して、さらにはトリフェニルホスフィンなどの求核剤を用いた処理に対して脆弱であるために放棄される。
リンクアミド、Sieber樹脂(Tetrahedron Lett. 1987, 28, 2107-2110)、又は類似の9−アミノ−キサンテニル型樹脂、PAL樹脂(Albericio et al., 1987, Int. J. Pept. Protein Research 30, 206-216)、又は、Meisenbach et al., 1997, Chem. Letters, p.1265 f.に従った特別に置換されたトリチルアミン誘導体は、樹脂又は固相からのペプチドの開裂に際してそこからCα―カルボキシアミドが生成又は遊離されるリンカー又はハンドルの例である。このようなアミドリンカーの使用が、実施される固相合成のタイプ、即ち、伝統的なBocか、カップリングのために使用される、現在では習慣的な直交性Fmoc保護化学かどうかに当然に依存していることは述べるまでもない;例えばBocに特異的なアミド樹脂リンカーはPAMである。従って、このようなリンカー基を具備している固相は、本文脈では、‘アミド生成固相’と称される。
好ましくは、ペプチドは、アミド結合かエステル結合かの何れかによって、C−末端を介して固相へとアンカーされる。より好ましくは、固相は、固相からのペプチジル部位の切断に関して酸−感受性又は酸−置換活性な固相であり、さらに好ましくは、アミドを生成する酸置換活性な固相である。このような酸置換活性な固相は、樹脂からの切断のために、極性非プロトン性溶媒中に、少なくとも0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)、より好ましくは、少なくとも0.5%のTFAを必要とする。最も好ましくは、固相は、弱酸性条件下で切断される酸感受性の固相であり、つまり、前記溶媒中0.1乃至10%のTFAが、室温における5時間以内のインキュベーションの際に少なくとも90%の切断効率を達成するのに充分である。このような高度に酸置換活性な固相は、例えば、2−クロロトリチル樹脂、Sieber樹脂、PAL樹脂又は4−(4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェノキシ)−酪酸(HMPB)樹脂であり、SieberとRinkは、酸分解に際してC−末端がアミド化されたペプチドを生じさせる。これらの酸置換活性な固相は、側鎖の保護基に対する樹脂上での脱保護の化学に特に脆弱であり、それゆえこれらの場合には特別な注意が払われなければならない。
C−末端のシステイン残基を介した固体支持体のハンドル基への側鎖アンカリングの場合には、リンクさせる結合は、チオエーテル又はチオエステル結合でなければならない。側鎖アンカリングのためのさらに好適な残基は、酸性側鎖中のカルボキシ基、ヒドロキシ基、特にはリシンのε−アミノ基である。側鎖アンカリングの場合は、一般的にC−末端フリーのカルボキシ基は、例えば側鎖のアミノ官能の固相への結合反応のためにFMOC−Lys−カルボキシアミドを使用することによって、第1のカップリング反応の実行に先立って、エステル化又はアミド化によって保護されねばならないことは述べるまでもない。
ある好ましい態様では、S−tert.ブチル−スルフェニルで保護されたシステインは、ペプチドのC−末端残基であり、そのカルボキシ末端を介してエステル結合又はアミド結合によって固相に結合されるが、前記リンク結合はベンジルエステル部位ではなく、好ましくは先に定義したような弱酸性反応条件下で切断される酸置換活性な樹脂であるという条件付きである。C−末端システインは、酸性条件においてラセミ化を特に受けやすい傾向がある。
3級ホスフィンとの反応を用いたS−tert.ブチル−スルフェニル保護基のシステインからの除去は、例えばトリブチルホスフィン(Atherton et al., 1985, J. Chem. Soc., Perkin I. 2057)及びトリエチルホスフィン(Huang et al., 1997, Int. J. Pept. Protein Res. 48, 290)を使用することによって、記載されている。同様の脱保護工程が、本発明によると、Nα−3,3’−ジチオ−(1−カルボキシプロピル)−プロピオンアミド、異なった数のメチレン基を有しているその同族体、又は式IVの化合物のジスルフィド結合を切断するために用いられる。tert−ブチルスルフェニル基は、最も多くの場合、例えばβ−メルカプト−エタノール又はジチオスレイトール(DTT)又は3級ホスフィン(Huang et al., 1997, Int. J. Pept. Protein. Res. 48, 290;Riemann et al., 1985, Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 1141)などのチオール試薬を用いて除去される。好ましくは、3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンであるか、又は、例えばトリ−(p−メトキシフェニル)−ホスフィンなどのアルキル化又はアルコキシ化されたトリフェニルホスフィンであるか、又は、さらにより好ましくは、トリアルキルホスフィンであって、そのアルキルは、同じであっても異なっていてもよいが、それぞれのアルキルはC1乃至C7アルキル、好ましくはC1乃至C4アルキルであり、分岐アルキル又は直鎖アルキルであってもよいトリアルキルホスフィンである。好ましくは、アルキルは直鎖である。その例は、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチルである。トリ−n−ブチル−ホスフィン及びトリ−エチルホスフィンは特に好ましい。アルキルは、任意に、ハロゲノ、メトキシ若しくはエトキシによって、又は、溶媒系に耐えられる場合は、カルボキシによってさらに置換されていてもよいが、好ましくは無置換である。驚くべきことに、本発明によると、ホスフィンによるジスルフィド切断は、例えばSieber又は2−CTC樹脂などの弱酸性条件において切断可能な非常に酸置換活性な樹脂にも使用されうること
が思いがけなくも発見された。−チオール試薬は、自らがジスルフィド生成物を形成することによって、ジスルフィドを還元、したがって切断してしまうことは、しばしば見過ごされる。DTTの場合は、分子内閉環が有利であるが、β−メルカプトエタノールの場合は、例えばジスルフィド交換反応による、あらゆる分子内反応生成物が可能である。さらには、新たに生成したジスルフィドでさえも、更なる交換反応を被ってもよい。チオール試薬の広範な使用は、3級ホスフィン試薬を用いるときの例えば樹脂からの漏出などの副反応のおそれを、明らかに負う。
ペプチド合成のためのカップリング試薬は、当技術においてよく知られている(Bodansky, M., Principles of Peptide Synthesis, 2nd ed. Springer Verlag Berlin/Heidelberg, 1993;そこでのカップリング添加剤又は補助剤の役割についての議論も参照)。カップリング試薬は、混合無水物(例えば、T3P:プロパンリン酸無水物)又は活性化エステル又はハロゲン化酸(例えば、ICBF、イソブチル−クロロホルミエート)のような他のアシル化剤であってもよく、又は、カルボジイミド(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド)、活性化されたベンゾトリアジン誘導体(DEPBT:3−(ジエトキシホスフォリルオキシ)−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン)又はベンゾトリアゾールのウロン酸若しくはリン酸塩であってもよい。
最良の収率、短い反応時間及び鎖伸長中のラセミ化に対する保護のためには、カップリング試薬が、フリーのカルボン酸官能の活性化が可能なベンゾトリアゾールのウロン酸塩及びリン酸塩からなる群より選択されるとともに、反応は塩基存在下で実施されることがより好ましい。このようなウロン酸又はリン酸カップリング塩の好適且つ同様に好ましい例は、例えば、HBTU(O−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロン酸ヘキサフルオロリン酸塩、BOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩)、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩)、PyAOP、HCTU(O−(1H−6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロン酸ヘキサフルオロリン酸塩)、TCTU(O−1H−6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロン酸テトラフルオロホウ酸塩)、HATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロン酸ヘキサフルオロリン酸塩)、TATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロン酸テトラフルオロホウ酸塩)、TOTU(O−[シアノ(エトキシカルボニル)メチレンアミノ]−N,N,N’,N’−テトラメチルウロン酸テトラフルオロホウ酸塩)、HAPyU(O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)オキシビス−(ピロリジノ)−ウロン酸ヘキサフルオロリン酸塩)である。
DEPBT又は類似物、ウロン酸又はリン酸塩試薬を使用するときには、好ましくは、カップリング工程を実施するために更なる即ち第2の弱塩基試薬が必要とされる。これには、ペプチド又はアミノ酸又はアミノ酸誘導体のα―アミノ官能を除いた、共役酸がpKa7.5乃至15の、より好ましくはpKa7.5乃至10のpKa値を有している塩基が適合し、この塩基は、好ましくは、3級の立体的に嵩高いアミンである。このさらに好ましい例は、Hunig塩基(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)、N,N’−ジアルキルアニリン、2,4,6−トリアルキルピリジン又はN−アルキル−モルフォリンであって、アルキルは直鎖又は分岐鎖のC1乃至C4アルキルであり、より好ましくは、N−メチルモルフォリン又はコリジン(2,4,6−トリメチルピリジン)であり、最も好ましくはコリジンである。C1乃至C4アルキルの例は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert.ブチル、イソブチルである。
カップリング添加剤、特にはベンゾトリアゾール型のカップリング添加剤の使用も知られている(Bodansky、上記参照)。それらの使用は、高活性な前述のウロン酸塩又はリン酸塩カップリング試薬を用いるときに特に好ましい。したがって、カップリング試薬添加剤は、活性化エステルを形成できる求核的なヒドロキシ化合物であることがさらに好ましく、より好ましくは、酸性で求核的なN−ヒドロキシ官能を有しており、ここでNはイミド又はN−アシル又はN−アリール置換トリアゼノであり、最も好ましくは、カップリング添加剤は、N−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール誘導体(即ち1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール誘導体)又はN−ヒドロキシ−ベンゾトリアジン誘導体である。このようなカップリング添加剤N−ヒドロキシ化合物は、国際公開第94/07910号パンフレット及び欧州特許第410182号明細書において、大きく且つ広く記述されており、それらの各々の開示は、参照によってここに組み込まれる。例としては、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、及びN−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)が挙げられる。N−ヒドロキシ−ベンゾトリアジン誘導体が特に好ましく、最も好ましい態様では、カップリング試薬添加剤は、ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジンである。
カップリング添加剤のアンモニウム塩化合物は既知であり、それらのカップリング化学における使用は、例えば米国特許第4806641号明細書中に記載されている。
さらに特に好ましい態様では、ウロン酸又はリン酸カップリング試薬は、ウロン酸塩試薬であり、好ましくは、HCTU,TCTU又はHBTUであり、より好ましくは、HCTU又はTCTUであり、そして最も好ましくは、それはN−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン又はその塩とともに反応において使用される。この態様は、塩基置換活性なNα保護基の除去後のペプチド合成における鎖伸長での使用に主には好ましいが、側鎖の環化中のラクタム化反応に使用されてもよい。
本発明の文脈では、HCTU及びTCTUは、これらの化合物及びその可能な類似体は、ウロン酸部位よりむしろイソニトロソ部位を含有することが結晶構造解析によって示されており(O. Marder, Y. Shvo, and F. Albericio “HCTU and TCTU: New Coupling Reagents: Development and Industrial Applications”, Poster, Presentation Gordon Conference February 2002)、代わりにヘテロ環コア上のN−アミジノ置換基はグアジニウム構造をもたらすにもかかわらず、「ウロン酸塩試薬」という用語によって包含されると定義されていることは注意されるべきである。本文脈では、このような部類の化合物は、本発明に係るウロン酸塩試薬の「グアジニウム型サブクラス」と称される。
塩基置換活性なNαの脱保護は、当技術でルーチン的にされているように、例えばFmoc化学の場合にはN−メチルモルフォリン中の20%ピペリジンを用いて実施されてもよい。最も広範には、N−末端に対するFmoc又はBoc保護化学が固相合成においてルーチン的に適用されているが、更なる任意のNα保護化学が当技術において知られており、樹脂共役ペプチドのジスルフィド含有ペプチド環化を案出する本発明に干渉しないときには、それらが適用されうる。
前記カップリング化学は、先に定義した式IVの化合物、R7−S−S−[CH22−COOHのカップリングにも用いられうる。この化合物は、例えば、各々の対称カルボン酸イミドを、例えばアルカノール又はアルキルアミンと反応させることにより、容易に製造されうる。
環化は、本発明に従って、極性非プロトン性有機溶媒中、第1の弱塩基存在下で実施される。環化を媒介する酸化剤は、Chan and White, eds., ‘FMOC Solid-phase Peptide Synthesis’ Oxford university Press 2000, p. 91 to 114 で言及されているどのようなものであってもよい:水性緩衝液中のグルタチオン、DMSO、フェリシアン酸カリウム、エルマン試薬 5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)、ヨウ素、トリフルオロ酢酸タリウム(III)、アルキルトリクロロシランスルホキシド、強酸性媒質中でのトリフルオロメタンスルホン酸銀−DMSOを介した酸化、ここで強酸性媒質は、チャコールを介した酸化がそうであるように、保護されたペプチドを溶媒和するための更なる有機溶媒系中で、樹脂上環化において使用することに全く非実用的というわけではない。別の一般的な方法は、ジスルフィド結合形成のための塩化カルボエトキシスルフェニルの使用である(Le-Nguyen, D., 1986, Int. J. Peptide Protein Res. 27, 285-292)。溶媒系の理由のために、1つの好ましい態様では、環化は、例えば米国特許第5144006号明細書においてより詳細に記載されているように、DMSOを酸化剤及び下記の溶媒に加えた混和性共溶媒として、結局は少量の水の存在下で、DMSOを介した酸化によって実施される。DMSOは、許容できるほどに速い反応速度を提供し、変性させる共溶媒であり、ペプチド基質を溶解させるのを助ける。そのメチオニン側鎖への酸化効果を考慮すれば、アミノ酸側鎖の脱保護に先立った樹脂上環化におけるその使用は、溶液中での脱保護されたペプチドとの通常の使用よりも、ずっと便利である。
最も好ましい態様では、前記環化は空気及び/又は酸素の存在中で、しかし特には、ジスルフィド結合を形成するためのチオール基の酸化を達成するための不均一系反応速度加速触媒無しで実施される。好ましくは、環化は、実質上触媒フリーで、即ち触媒的に有効な又は充分な量の不均一系触媒なしで、実施される。
本発明によると、そして特には酸化剤としての空気及び/又は酸素とともに、より好ましくは、前記の不均一系つまり固相触媒なしで空気/酸素とともに実施されるときには、本発明に係る環化の工程は著しく効率的であり、0.5乃至2時間の反応時間しか要さず、非常に穏和な反応条件(典型的には周囲温度、適切な温度範囲は10℃乃至80℃であるが、もちろん、溶媒の還流温度も考慮に入れられなければならない)下で、抽出物から所望の生成物への文字通り定量的で完全な変換が可能となる。先例のないことに、それでもまだ、変換は完全である。これは際立った達成であり、ジスルフィド結合方式のペプチド環化においては未だ達成されていないし、このようなシンプルで穏和で高速な環化反応の条件は以前には発明されていない。不均一系触媒のための厄介な混合及び分離の問題は決して起こらない。それでもなお、反応速度は、従来技術における触媒有りでの反応の速度に匹敵する。まっすぐな反応経路のために、副生成物の生成はほぼ完全に避けられる。
好適な極性非プロトン性溶媒は、例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフランである。このような溶媒は、水とは対照的に、以前に水性触媒系について記述されてきたように、通常は、ジスルフィド結合の酸化的生成をもたらすために妥当な量の酸素を物理的に溶解させないかもしれない。
従って、空気、空気/酸素又は純酸素の供給には、注意が払われなければならない。空気/酸素は、徹底的な攪拌、ボルテックシング、攪拌のために使用されるプロペラの特別な設計、液体中へのガススパージングによって供給されてもよい。ガスは、空気か純酸素か酸素富化された空気かであってもよい。1つの特に好ましい態様では、反応容器の底面及び/又は壁面の大きな表面領域に、徹底的な攪拌下でガスを液体中にスパージングするために孔があけられる。
本発明のあるペプチドに対して、システインのための異なった保護形式が使用されることも可能である。例えば、ペプチド鎖中の更なるシステインは、樹脂からの除去の後に及び本発明に係る樹脂上での最初のジスルフィド結合が生じた後に、溶液中での標準的なヨウ素酸化による内部システインの間の更なる位置特異的なジスルフィド結合を供給するために、伝統的にacm保護基によって、保護されても良い。
第1の弱塩基は、その共役酸がpKa7.5乃至15、より好ましくはpKa8乃至10のpKaを有しており、好ましくは3級の立体的に嵩高いアミンである。このような及びさらに好ましい例は、Hunig塩基(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)、N,N’−ジアルキルアニリン、2,4,6−トリアルキルピリジン又はN−アルキル−モルフォリンであり、アルキルはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチルなどの直鎖又は分岐鎖のC1乃至C4アルキルであり、最も好ましくは、N−メチルモルフォリン、コリジン(2,4,6−トリメチルピリジン)又はHunig塩基である。
好ましくは、ジスルフィド保護基の事前の除去、とりわけS−tert.ブチルスルフェニル基の除去は、少しの酸分解による樹脂からの漏出のあらゆるリスクを回避するための第1の弱塩基試薬の存在下で、つまり7.5乃至12の、より好ましくは8乃至11のpHにおいて実施される。任意に、THFやアセトニトリルなどの水と自由に混和する極性非プロトン性溶媒を使用することによって、例えば水溶液中の酢酸ナトリウムなどの塩基性塩がその目的のために使用されてもよい。この態様は、前記のジスルフィド基の切断又は除去の工程のために3級ホスフィンが使用されるとき特に好ましい。このようなジスルフィド保護基の除去に付随して適当な酸素供給を組み合わせることによって、本発明の別の態様において、例えば極性非プロトン性有機溶媒と酸素供給とを3級アミンの存在中に使用するとき、及び、酸素に対して不活性な3級ホスフィンを脱保護のために使用するときには、ジスルフィドの脱保護及び環化を、ワンポッド反応でだけでなく単一の反応工程として実行することが可能かもしれない。
本方法は樹脂上での環化を可能とするので、さらに、分子間環化よりも分子内環化を有利にするために従来技術で記載されているほとんどの方法で以前は必要であった、面倒であり且つ収率を減少させるペプチドの高度希釈を必要としない。
本発明の樹脂上での操作方式は、二量化の機会を全く与えず、高速且つ効率的な分子内環化のみを可能とする。
さらに好ましい態様では、ペプチドは式Iのペプチドである。保護基という用語は、所定の側鎖の官能性のための保護基か、又は、保護基が標準的なtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)又は9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)固相ペプチド合成で使用される特定の側鎖のための保護基であると解釈されるべきである。このような保護基及び特定の側鎖の官能性のために特定の保護基を使用することは、当技術においてよく知られており、またルーチンである(上記 Chan et al., ed.;上記 Bodansky et al. 参照)。
1つのさらに可能な態様では、ペプチドは、任意に、固相へのペプチジル部位の永続的で共有結合的な接着によってではなく、たんぱく質の精製に用いられる確立されたヘキサ−Hisタグ技術に類似した、安定な金属キレート錯体による固相への非共有的で可逆な接着(Lonza AG, Basel,スイスとAplaGen GmbH, Baesweiler,ドイツとの共同による製品ニュース、2004年10月)によって合成されてもよい。このような非共有的固相結合又は類似の未来の態様は、本発明によって同様に包含され、上記及び下記の本発明の好ましい実施形態は、この態様についても同様に適用される。
適切な固相に共役され有利に環化された先に記載のペプチド、及び、それらの上記及び下記に引用された好ましい態様との組み合わせは、本発明の更なる目的である。
第1の目的は、式Iのペプチドである。
Figure 2008517016
ここで、R4,R5はH又はArg−保護基であり、R2はカルボン酸保護基であり、R3はTrp保護基であり、そしてR1はペプチド骨格へのチオエステル、エステル又はアミド結合中の固相である。
好ましくは、このようなペプチドにおいて、R4,R5はHであり、R3はN−ベンジルオキシカルボニルであり、R2は3級ブチルである。
好ましくは、前記固相は、Sieber樹脂、又は、アミド生成リンカー又はハンドルを具備し、結果的にペプチド骨格とアミド結合接続する他の樹脂である。
第2の目的は、好ましくは少なくとも1つのアミノ酸側鎖保護基を具備したペプチドであって、そのペプチドはC−末端残基又はアミノ酸側鎖を介して固相に結合され、そのペプチドは式IIの部位を具備した環状ペプチドであることを特徴とする。
Figure 2008517016
ここで、n,mは1乃至10の範囲から独立に選択され、好ましくはn=2及びm=1(システイニル部位を与える)であり、Nαはペプチド骨格のN−末端窒素、そしてCはペプチド骨格のアミノ酸残基のCαであり、また、R6はN−末端であり、前記Nα及びR5で終端しているペプチド骨格の環の半分は固相に結合されるペプチド骨格のC−末端の半分であるが、N≠Nαという条件付きであり、好ましくは、R6は少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つの介在するアミノ酸残基を含む。はっきりさせるためには、R5は、CH(−CO−NH−R’)又はCH(−CO−O−R’)又は最後にはCH(−CO−S−R’)を意味すると解釈されるべきであり、ここでR’は、リンカー又はハンドル、R5、及び、任意に前記固相に結合された幾つかのアミノ酸残基を含みうる固相を具備している。好ましくは、R5及びR6は、200個までの、より好ましくは100個までの、最も好ましくは50個までのアミノ酸残基を具備している。
更なる目的は、好ましくはシステイン、ホモ−又はノル−システイン残基上にS−tert.ブチル−スルフェニル基以外の少なくとも1つのアミノ酸側鎖保護基を具備しているペプチドであって、そのペプチドはC−末端残基を介して固相に結合されており、そのペプチドはS−tert.ブチル−スルフェニル基によって側鎖において保護された少なくとも1つのシステイン、ホモ−又はノル−システインを具備していることを特徴とし、NαにおいてN−末端置換されて式IIIのアミド部位を構成するペプチドである。
Figure 2008517016
ここで、n=1乃至10、好ましくはn=2である。
重ねて、更なる目的は、好ましくはシステイン、ホモ−又はノル−システイン残基上にS−tert.ブチル−スルフェニル基以外の少なくとも1つのアミノ酸側鎖保護基を具備しているペプチドであって、そのペプチドはC−末端残基を介して固相に結合されており、そのペプチドは側鎖にフリーのチオール基を有している少なくとも1つのシステイン、ホモ−又はノル−システインを具備していることを特徴とし、NαにおいてN−末端置換されて式IIIのアミド部位を構成するペプチドである。
Figure 2008517016
ここで、n=1乃至10、好ましくはn=2である。
同様に、本発明の最後の及び最後から2番目の目的のペプチドは、再び、好ましくは200個までの、より好ましくは100個までの、最も好ましくは50個までのアミノ酸残基を具備している。たとえ100アミノ酸残基又はそれ以上のペプチドを合成するための必須条件ではないにせよ、非常に長いペプチドを合成するときには、樹脂の選択も得られる収率に影響することは述べるまでもない。例えばPEG樹脂は、通常、このために良い選択であるかもしれない。さらに、ペプチドの個々のアミノ酸配列は、所定のペプチドで得られうる最長の鎖長及びカップリング効率に影響するかもしれないことは述べるまでもない;広く知られた例は、ベータシート形成及び鎖間結合による、線状合成中のペプチドスレッドの好ましくない鎖間凝集である。
実験
本発明の新規で改善された方法を案出することを目指して、樹脂上での環化のための保護されたモデルペプチドとして、Eptifibatideが選択された;eptifibatideのための固相合成法は、すでに米国特許第5318899号明細書に記載されている。
全体の合成戦略は、下の表1に示される:
Figure 2008517016
1.1 線状ペプチド Gly−Asp(tBu)−Trp(Boc)−Pro−Cys(S−tBu)−Sieber のFMOC SPPS
FMOC−Cys(S−tBu)−OHの合成は、既に記載されている(Rietman et al., 1994, Synth. Commun.v24, p. 1323 f)。Sieber樹脂は、Novabiochemの製品であり、Calbiochem-Novabiochem(EMD Biosciences、カリフォルニア/米国に属する)から購入された。FMOC−Cys(S−tBu)−OH(cat. No. B-1530)を含めた全てのFMOCアミノ酸は、Bachem AG(Bubendorf,スイス)から購入された。
樹脂のロ−ディングは0.52mmol/gであり、全量では10gのSieber樹脂であった。ローディングのためのカップリング時間は、標準的なカップリング時間の2倍、即ち全体で60分であった。カップリングは、各々2当量の各アミノ酸を用いて、各々1当量の6−クロロ−HOBt、TCTU、Hunig塩基(ジイソプロピルアミン)の存在下、ジクロロメタン中で行われた。洗浄は、N−メチル−ピロリドン(NMP)によって行った。
FMOCの脱保護は、ピペリジンの10%N−メチル−ピロリドン溶液に15分間の3サイクルで行われた;切断の効率及び合成の完了は、それぞれニンヒドリン反応及び逆相HPLCによって分析された。
1.2 1.1からHar−Gly−Asp(tBu)−Trp(Boc)−Pro−Cys(S−tBu)−Sieberへのペプチドの伸長
FMOC−Har残基(Bachem, Burgendorf, スイス)のカップリングは、アミノ酸1当量に対して1当量のHOBtの存在下で(グアニジノ基をプロトン化されたままにするために)行われた;FMOCアミノ酸は、HOBt及びNMP中の1当量のジイソプロピルカルボジイミドとともに事前にインキュベートされ、その後樹脂と混合された。Harカップリングは、180分を要し(他のアミノ酸:30分)、その後、補充された試薬を用いて、約60分間、第2サイクルが続いた。このようにして、他の残基に対してのように、標準的な99.8%のカップリング効率がかなえられた。
FMOCの除去は、前のように行われた。特に、FMOCの除去及びその次のNMP洗浄の後、樹脂の更なる膨潤を妨げるため、HOBtによって何度も洗浄された。
注意:TCTUを用いた延長されたカップリングは、上記のHOBtとのイオン対生成以外には保護基を用いないArgカップリングに対して可能である。HOBtとの更なるイオン対生成は、脱保護の間の副反応に関して問題を含むかもしれない例えばPbfなどのArgのための共有的に結合された保護化学を用いる場合と比べて、好ましい態様である。
1.3 1.2から(Mpa)2−Har−Gly−Asp(tBu)−Trp(Boc)−Pro−Cys(S−tBu)−Sieberへのペプチド樹脂の誘導体化
氷浴中で10℃より低くまで冷却されたDMF中で、3,3’−ジチオプロピオンイミド(Novabiochem)との反応が行われた。1当量のジイソプロピル−カルボジイミドが、10分間に亘って、攪拌しながら、温度が15乃至20℃以下に留まるように制御しつつ、反応混合物中に添加された。その後、反応混合物は、1.2節からの脱保護され樹脂に結合したペプチド生成物中に添加された。カップリングは、周囲温度で6時間進行させられた。
反応生成物の一定分量は、60%TFAによって樹脂から切断され、LC−(エレクトロスプレー)MSによって分析された。2つの主生成物ピークが検出された(<25%の副生成物:ジペプチド)ものの、変換は定量的であった。故に、この工程の収率は>75%であった。
1.4 Bu3Pによる脱保護
樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)中で3回、懸濁及び洗浄された。反応は、室温で1時間、19%(v/v)PBu/77%(v/v)THF/4%(v/v)酢酸ナトリウム飽和水溶液として調製された50当量のトリブチルホスフィンを用いて行われ、沈殿した塩は使用前に濾過された。反応は一様に進行し、1つの主要な生成物ピークを与えた。収率は逆相HPLCにより決定され、98.9%の純粋な生成物に達することが分かった。
1.5
Figure 2008517016
を生成するための環化
1.4からのペプチド−樹脂共役は洗浄で膨潤させられ、そして、NMP中で3回洗浄された。環化は、樹脂を1時間、室温でNMP中の6%DIEA(Hunig塩基)とともにインキュベートすることによりなされた;反応は、水平に二分する封入されたG3(16乃至40μm)ガラスフリットを下方部分に具備した鉛直ガラス容器中で行われた。ガラスフリット又はフリット板は下方からの空気によって孔あけされ、フリット上方の溶媒で覆われた反応物空間の断面全体を横切る空気バブリングを可能とし、そこでは、下方からのバブリング空気によって樹脂が浮かんでいた。厳密に純粋で均一な生成物が得られ、はっきりとした又は断片的な副生成物が、この反応工程後に現れることはなかった。逆相HPLC及びLC−MSにより独立に決定された生成物への変換は100%であった。RP−HPLCは、Hypersil-KeystoneTM Betabasic(Thermo Electron Corp., Waltham Mass./U.S.A.)C18 150x4.6 mm カラム上で、35℃のカラム温度において、15μlの注入体積及び262nmでの検出によって行われた。勾配ランは、
Figure 2008517016
1.6 包括的な脱保護
包括的な脱保護は、樹脂をジクロロメタン(DCM)中で3回膨潤させることにより調製された。切断反応相混合物は、以下から成るようにして調製された。
Figure 2008517016
反応は、ゆっくりと回転するオービタル振動装置上で2時間、15℃において行われた。樹脂を濾過した後、tert.ブチル酸メチスエステルの滴下によって、反応は停止され、生成物は沈殿された。−生成物は、均一なピークであり;主要な副生成物は検出されえなかった。−上の包括的な脱保護の条件は、対照について試験され、ペプチド中の前もって形成されたジスルフィド結合に影響しないことが分かった。この最終工程の変換は、上の1.5で詳しく述べたようにしてRP−HPLC及びLC−MSにより決定したところ、>99%であった。

Claims (16)

  1. ペプチド合成方法であって、
    a.固相に結合されたペプチドを合成する工程であって、前記ペプチドは、少なくとも1つのシステイン、ホモ−又はノル−システイン残基を具備し、前記システインは、その側鎖中においてS−tert.ブチル−スルフェニル基によって保護されている工程、
    b.3,3’−ジチオ−(1−カルボキシ−プロピル)−プロピオニル−ラジカルを有する更なるアミノ酸をN末端にカップリングさせるか、又は、そのN−末端アミノ酸のNαを脱保護して、フリーのNαと3,3’−ジチオ−プロピオン酸イミドとを反応させて対応するNα−3,3’−ジチオ−(1−カルボキシ−プロピル)−プロピオンアミドを生成するか、そのN−末端アミノ酸のNαを脱保護して、フリーのNαと式IVの化合物とを反応させるかの何れかの工程であって、
    7−S−S−[CH22−COOH (IV)
    ここで、R7はヘテロ核アリールを含めたアリール−、又はアラルキル−、アルキルアリール−又はアルキル−、さらにハロゲノ、アミド、エステル、カルボキシ又はエーテルによって置換されていてもよい工程、及び、
    c.ペプチドをS−tert.ブチル−スルフェニル−保護基除去試薬と反応させる工程、及び、
    d.ジスルフィド結合形成によって前記ペプチドを環化する工程、好ましくは空気及び/又は酸素の存在下で前記ペプチドを環化する工程
    を含んだ方法。
  2. 前記システインは、前記ペプチドのN−末端アミノ酸残基から、少なくとも3アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも5アミノ酸残基離れていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記固相樹脂は2−クロロ−トリチル(CTC)又はアミド生成樹脂から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 前記ペプチドは、別々に保護された更なる複数のシステイン、ホモ−又はノル−システインを含んだ少なくとも1つの更なる側鎖保護基を有していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 前記システインは、最後のC−末端残基であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 少なくとも前記S−tert.ブチル−スルフェニル基の除去は、前記ペプチドをトリアルキルホスフィンと反応させることによって達成されることを特徴とする請求項1又は6に記載の方法。
  7. 前記ペプチドは、極性非プロトン性溶媒中、弱塩基の存在下で環化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  8. 前記ペプチドの前記固相への結合は、酸置換活性であり、好ましくは室温でジクロロメタン中の60%TFAにおいて置換活性であることを特徴とする請求項1又は7に記載の方法。
  9. 前記樹脂はSieber樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  10. 前記ペプチドは、続く工程において、好ましくは包括的な脱保護によって、樹脂から切り離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  11. R4,R5はH又はArg−保護基、R2はカルボン酸保護基であり、R3はTrp−保護基であり、R1は前記ペプチド骨格と結合するチオエステル、エステル又はアミド結合中の固相である式Iのペプチド。
    Figure 2008517016
  12. R4,R5はHであり、R3はN−ベンジル−カルボニルであり、R2は3級ブチルである請求項11に記載のペプチド。
  13. 前記固相は、結果として前記ペプチド骨格と結合するアミド結合となるSieber樹脂であることを特徴とする請求項12に記載のペプチド。
  14. 好ましくは少なくとも1つのアミノ酸側鎖保護基を具備し、C−末端残基又はアミノ酸側鎖を介して固相に結合されているペプチドであって、前記ペプチドは式IIの部位を具備した環状ペプチドであり、
    Figure 2008517016
    ここで、n,mは1乃至10の範囲から独立に選択され、Nαは前記ペプチド骨格のN−末端窒素であり、そしてCは前記ペプチド骨格の1つのアミノ酸残基のCαであり、また、R6はN−末端の前記Nαで終端している前記ペプチド骨格の環の半分であり、R5は前記固相に結合されるペプチド骨格のC−末端の半分であるが、N≠Nαという条件付きであり、好ましくは、R6は少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つの介在アミノ酸残基を含んでいることを特徴とするペプチド。
  15. 好ましくはシステイン、ホモ−又はノル−システイン残基上にS−tert.ブチル−スルフェニル基以外の少なくとも1つのアミノ酸側鎖保護基を具備しているペプチドであって、そのペプチドはC−末端残基を介して固相に結合されており、そのペプチドはS−tert.ブチル−スルフェニル基によってその側鎖において保護された少なくとも1つのシステイン、ホモ−又はノル−システインを具備し、そのNαにおいてN−末端置換されて式IIIのアミド部位を構成し、
    Figure 2008517016
    ここで、n=1乃至10であり、好ましくはn=2であることを特徴とするペプチド。
  16. 好ましくはシステイン、ホモ−又はノル−システイン残基上にS−tert.ブチル−スルフェニル基以外の少なくとも1つのアミノ酸側鎖保護基を具備しているペプチドであって、そのペプチドはC−末端残基を介して固相に結合されており、そのペプチドは側鎖にフリーのチオール基を有している少なくとも1つのシステイン、ホモ−又はノル−システインを具備し、そのNαにおいてN−末端置換されて式IIIのアミド部位を構成し、
    Figure 2008517016
    ここで、n=1乃至10であり、好ましくはn=2であることを特徴とするペプチド。
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