JP2008515398A - 癌治療における治療の成功および再発しない生存を予測するための方法およびキット - Google Patents
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Abstract
本発明は、悪性腫瘍および乳癌の予測、診断、予後、予防、および処置のための新規な組成物、方法、および使用を提供する。本発明はさらに、正常な「健康」組織に対して、乳癌患者の乳房組織で差次的に発現される遺伝子に関する。化学療法に反応する可能性の高い患者を同定するための、差次的に発現されている遺伝子も提供する。
Description
(本発明の技術分野)
本発明は、癌治療における治療の成功を予測するための方法に関する。本発明の好ましい実施態様において、CMF(シクロフォオスファミド/メトトキサレート/フルオロウラシル)化学療法における治療の成功の予測方法に関する。本発明の方法は、抗癌化学療法の開始前に差次的に発現した84のヒト遺伝子の発現レベルの決定に基づくものである。本発明の方法および組成物は、乳癌およびCMF治療の調査において最も有用であるが、同様にその他の癌のタイプおよび治療方法の調査においてもまた有用である。
本発明は、癌治療における治療の成功を予測するための方法に関する。本発明の好ましい実施態様において、CMF(シクロフォオスファミド/メトトキサレート/フルオロウラシル)化学療法における治療の成功の予測方法に関する。本発明の方法は、抗癌化学療法の開始前に差次的に発現した84のヒト遺伝子の発現レベルの決定に基づくものである。本発明の方法および組成物は、乳癌およびCMF治療の調査において最も有用であるが、同様にその他の癌のタイプおよび治療方法の調査においてもまた有用である。
(本発明の背景および先行技術)
癌は、心臓血管疾患に次いで、米国で2番目に多い死亡原因である。米国人の3人のうち1人は、一生の間に癌になるであろう。そして、米国人の4人のうち1人は、癌によって死亡するであろう。より詳細には、米国のみでも毎年約40,000人の女性が乳癌によって生命を奪われ、約200,000人の女性が乳癌であると診断されている。通常、腫瘍は、腫瘍サイズ、浸潤状態、リンパ節の関与、転移、病理組織学、免疫組織学マーカー、および分子マーカーなどの様々なパラメータに基づいて分類される[WHO;疾患の国際分類法(1);Sabin and Wittekind, 1997(2)]。遺伝子チップ技術における近年の進歩に関して、研究者は、マーカー遺伝子の区別し得る発現を基にした腫瘍の分類に対してますます関心を注いでいる[Sorlie et al., 2001 (3): van 't Veer et al., 2002 (4)]。
癌は、心臓血管疾患に次いで、米国で2番目に多い死亡原因である。米国人の3人のうち1人は、一生の間に癌になるであろう。そして、米国人の4人のうち1人は、癌によって死亡するであろう。より詳細には、米国のみでも毎年約40,000人の女性が乳癌によって生命を奪われ、約200,000人の女性が乳癌であると診断されている。通常、腫瘍は、腫瘍サイズ、浸潤状態、リンパ節の関与、転移、病理組織学、免疫組織学マーカー、および分子マーカーなどの様々なパラメータに基づいて分類される[WHO;疾患の国際分類法(1);Sabin and Wittekind, 1997(2)]。遺伝子チップ技術における近年の進歩に関して、研究者は、マーカー遺伝子の区別し得る発現を基にした腫瘍の分類に対してますます関心を注いでいる[Sorlie et al., 2001 (3): van 't Veer et al., 2002 (4)]。
手術可能な初期乳癌に罹患した患者において、手術後に体系的なアジュバンドの処置により、疾患の再発や死亡のリスクが低下することは十分に確立された事実である。一般に、特定コホートのすべての患者が同じ治療を受けるが、その多くは、治療の成功には至らないであろう。腫瘍反応を反映するバイオマーカーは、長期結果に関する感度の高い短期的代用マーカーとして機能しうる。かかるバイオマーカーの使用により、個々の患者に対して化学療法をより有効なものとし、非反応性の腫瘍である場合に、早期の処方計画の変更を可能にするであろう。
個々の乳癌患者に最適な臨床治療方針を開発するために多くの努力がなされてきたが、特定の治療に対する個体の反応を予測することには、ごくわずかな進展しか得られなかった。通常、かかる予測は、腫瘍の病期(ステージ)および段階(グレード)、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PgR)の状態、成長速度、HER2/neuおよびp53発癌遺伝子の過剰発現などの標準的臨床パラメータに基づく。しかし、アジュバント内分泌化学療法の結果予測と、ERおよび/またはPgR遺伝子発現の関連性に関する証拠は、未だに議論の余地がある。乳癌患者のERおよびPgR遺伝子発現のレベルが、後続のアジュバント化学療法とは独立に、予後に重要であることが、複数の研究によって示されている。理論上の観点からは、乳癌を有する患者の治療応答が、ER/PgRの状態と独立しているとは予測されない。受容体発現の予後影響が、他のパラメータ、例えばERBB2受容体の影響に依存している可能性の方が高い。従来の生物学技法を用いてかかる因子を見出そうとしても、これらの分析はすべて一度に1つの遺伝子について調査するものなので、問題が起きる。
研究者は、マーカー遺伝子発現の区別し得る発現に基づいた腫瘍の分類にますます焦点を集めており、また1サンプル中の何千もの遺伝子の発現レベルを同時に定量測定するのにDNAマイクロアレイ技術は非常に有用となっている。これまでに、この技術は、癌組織、例えば乳房腫瘍の分類[(3), (22-2683)]、転移および患者の結果の予測[(4), (27-29)]、ならびに化学療法に対する腫瘍反応[(30-33)]に適用されている。
しかしそれにもかかわらず、化学療法は、依然として、乳癌罹患患者、特にその元の部位から転移した癌を有する患者に提供される治療計画のかなめである[Perez, 1999, (5)]。乳癌の処置で活性が実証されている化学療法薬がいくつかあり、最適な薬物および処方計画を決定するための研究が絶え間なく試みられている。しかし、異なる患者では、同じ治療計画に対しても異なる反応をする傾向がある。現在、特定の治療に対する個体反応は、以前の臨床試験のデータに基づいて、統計的に評価することしかできない。依然として、体系的化学療法から利益を得ない患者が多数いる。特に、乳癌は、進行性および処置反応が極めて不均一である。それらは、いくつかの薬剤に対する成長特徴および感受性に影響する異なった遺伝子変異および差異を含有している。そのため、各腫瘍の分子フィンガープリントの同定は、特に進行性の腫瘍を有する患者、または特定の有益な治療による処置を必要とする患者を分離する助けとなりうるであろう。遺伝子学に関する研究、および処置に対する反応に関連した研究が成熟するにつれ、標準手法は、疑いなくより個人化されるであろう。これは、医師が、最適な結果を確実にするために、腫瘍の遺伝子プロファイルに適合した特定の処方計画を提供するのを可能にする。これに代わる治療概念として、ネオアジュバント療法または初期全身療法(PST)を、より大きな手術不能な乳癌を有する患者または乳房保存手術に関心がある患者に提供することができる(91)。一般に、PSTは、標準的なアジュバント治療に優る生存上の利点を与えないが、病理学的に確認された完全奏功(CR)を有する患者を同定できる。この治療的背景において、奏功を予測し得るかかるバイオマーカーを、腫瘍応答に対して、遺伝子の発現を直接的に相関させることによって、イン・ビボにおいて測定することができる。
本発明は、アジュバンドCMF化学療法に十分反応しない患者に比べて、アジュバンドCMF化学療法に十分反応する患者の腫瘍組織で、84のヒト遺伝子が差次的に発現されるという予想外の新規の知見に基づいている。アジュバンド全身治療に対する反応は、初期腫瘍に対する術後の生存期間が再発せずに長くなるだけでなく、一生の生存時間に影響をもたらし得る。したがって、腫瘍手術と同時またはいずれかの外科的介入(例えば、パンチ生検サンプル)の前に、84の遺伝子の一つまたは幾つかにおいて、発現レベルが増強または低下したことは、化学療法に関する特定様式に関係なく遠位転移が進行する傾向があるかどうかについての価値のある情報を提供することが判った。これは、特定の時間枠内(例えば、5年間)において遠位転移が進行しないと予測された個体は、かかる化学療法計画から恩恵を受け、それらの腫瘍は薬物に反応することを意味する。本発明の好ましい実施態様において、該化学療法の特定の様式はCMF化学療法である。
本発明は、84のヒト遺伝子に関し、これらは、非反応性コホートにおいて遠位転移の開始によって決定される、アジュバンドCMF化学療法に十分反応しない患者と比べて、アジュバンドCMF化学療法に十分反応する患者の腫瘍組織において差次的に発現される。
本発明は、患者において、腫瘍切除時および抗癌化学療法の開始前に、84のヒト遺伝子グループの1つまたはいくつかの遺伝子の示差的発現を決定することによって、抗癌化学療法に対する患者の反応を検査する方法にも関連する。前記反応の検査は、術後直後または最初の生検時や病期に行うことができ、この段階では他の方法によっては、化学療法に対する患者の反応に関する必要な情報を提供できない。
従って、本発明は、化学療法の特定の様式が患者の健康に有益である傾向があるか否か、および/または化学療法処置の適用様式を維持すべきるか、または改変すべきか−腫瘍外科手術後すぐに−判定する手段を提供する。
本発明は、腫瘍性病変の改変された臨床挙動をもたらす、腫瘍細胞組織において差次的に発現される84のヒト遺伝子の同定に関する。これら84の遺伝子の差次的発現は、人体の特定の組織における特異的な腫瘍性病変に限定するものではない。
化学療法薬に対する反応として発現変化が起こる遺伝子は、その治療をモニターするマーカーとしてさらに働き、臨床成果と相関する場合、そのような遺伝子は有効なバイオマーカーとしても働きうる。
本発明の好ましい実施形態では、該腫瘍細胞病変は乳癌である。この癌は、女性に限定されるものではなく、男性においても診断および分析できる。
本発明は、乳癌の治療において治療の成功を予測するための様々な方法、試薬およびキットに関する。本明細書で使用される場合、「乳癌」には、癌腫(例えば、上皮内癌、浸潤癌、転移性癌)、前悪性状態、およびそれらの組織学的な起源(例えば、管、小葉、髄様、および混成由来)とは独立した新形態変化が含まれる。本発明の組成物、方法およびキットは、患者サンプルにおける、単一または複数(例えば、2、5、10、または50以上)の遺伝子(以下"マーカー遺伝子"、表1に記載、それらによってコードされる各ポリペプチド配列)のmRNA発現のレベルと、コントロールの対象(例えば、乳癌のないヒト対象)由来のサンプルにおけるマーカー遺伝子の平均発現レベルとを比較することを含む。1つまたはいくつかのマーカー遺伝子の発現レベルの比較は、その他の参照に対して行われ得る(例えば、反応性腫瘍由来の組織サンプル)。
本発明はさらに、特定の乳癌治療に対する、臨床的に測定可能な腫瘍治療反応を予測するための様々な組成物、方法、試薬、およびキットに関する。本発明の組成物および方法は、未分類の患者サンプルにおける単一または複数(例えば、2、5、10、または50以上)の乳癌マーカー遺伝子のmRNA発現レベルと、投与されたアジュバンド乳癌治療に対して異なった強度で反応する患者を含むサンプルコホートにおけるマーカー遺伝子の平均発現レベルとを比較することを含む。本発明の好ましい実施形態では、マーカー遺伝子の特異的発現を、化学療法の介入に基づくCMFに反応する者と反応しない者とを識別するために、利用することができる。
さらに好ましい実施形態では、mRNA発現のコントロールレベルは、数人の(例えば、2、3、4、5、8、10、12、15、20、30、または50人)のコントロールの対象から得たサンプルにおけるマーカー遺伝子の平均発現レベルである。これらのコントロールの対象も、乳癌に冒されていてもよく、かつそれらの臨床プロファイルによって分類されてもよく、必ずしもそれら個々の発現プロファイルよって分類されている必要はない。
以下に詳述する通り、コントロールレベルと比較して、患者サンプルにおける1つまたは複数のマーカー遺伝子(マーカー遺伝子のセット)の発現レベルの有意な変化は、患者における乳癌の状態と、化学療法、好ましくはCMF化学療法に対する反応性に関する重要な情報を提供する。本発明の組成物、方法およびキットでは、周知の乳癌マーカー遺伝子(例えば、CEA、マンマグロビン、またはCA15−3)と組み合わせて、表1に記載のマーカー遺伝子を使用できる。
本発明に従って、下記の状態:ステージ0乳癌患者、ステージI乳癌患者、ステージII乳癌患者、ステージIII乳癌患者、ステージIV乳癌患者、グレードI乳癌患者、グレードII乳癌患者、グレードIII乳癌患者、悪性乳癌患者、乳房原発癌患者、ならびに他のすべてのタイプの乳房関連の癌患者、悪性腫瘍患者、および乳房関連形質転換患者のいずれかにおいて、本発明の組成物、方法およびキットの陽性予測率が、少なくとも約10%、好ましくは約25%、より好ましくは約50%、そして、最も好ましくは約90%となるように、マーカー遺伝子およびマーカー遺伝子セットが選択される。
マーカー遺伝子発現の検出は、乳癌患者の1次病変、2次病変、または転移病変における検出に限定されるものではなく、乳癌細胞に冒されたリンパ節、または局部的に沈着(例えば、骨髄、肝臓、腎臓)しているか患者身体全体に自在に浮遊している微小残存病変細胞における検出でもよい。
本発明の組成物、方法、試薬およびキットの一実施形態では、分析されるサンプルが、吸引もしくは穿刺によって、切除によって、あるいは生検細胞物質もしくは切除細胞物質を得る他の任意の外科的方法によって採取された腫瘍性病変から得られた組織物質である。本発明の組成物、方法、およびキットの一実施形態では、該サンプルが患者から得られた細胞を含む。この細胞は、例えば、ニップル吸引、管洗浄、または細針生検によって収集された乳房細胞「塗抹」標本中、あるいは誘発性もしくは自発性の乳頭分泌物から得られた乳房細胞「塗抹」標本中に見出されるものでよい。別の実施形態では、該サンプルは体液である。そのような体液には、例えば、血液、リンパ液、腹水、婦人科的体液、または尿が含まれるが、これらの体液に限定されない。
本発明の組成物、方法およびキットでは、遺伝子発現の検定は、いかなる特定の方法にも限定されず、またmRNAの検出に限定されるものでもない。サンプル中のマーカー遺伝子の存在および/または発現レベルは、例えば下記のものを測定および/または定量化することによって評価することができる。
1)表1中のマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質、または表1中のマーカー遺伝子に対応するポリペプチドを含むタンパク質、または該タンパク質のプロセシングまたは分解から得られるポリペプチド(例えば、該タンパク質またはポリペプチドに特異的に結合する抗体、抗体誘導体、または抗体断片などの試薬を使用)
2)表1中のマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質、またはそれらにコードされたポリペプチドによって、直接的に(すなわち触媒された)または間接的に産生された代謝産物
3)表1中のマーカー遺伝子によってコードされるRNA転写物(例えば、mRNA、hnRNA)、または上記RNA転写物の断片(例えば、上記サンプルから得られたRNA転写物または上記転写産物から調製されたcDNAの混合物を、選択された位置で基質に固定された表1に記載の1つまたは複数のマーカー遺伝子の配列を含む核酸を有する基質と接触させることによって)。
これらの遺伝子のmRNA発現は、例えば、Affymetrix社または他の製造会社提供のDNAマイクロアレイを用いて検出することができる(米国特許第5556752号)。さらに別の実施形態では、Luminex社提供のものなどのビーズベースの直接蛍光測定技法を用いて、これらの遺伝子の発現を検出することができる(国際公開第97/14028号)。
1)表1中のマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質、または表1中のマーカー遺伝子に対応するポリペプチドを含むタンパク質、または該タンパク質のプロセシングまたは分解から得られるポリペプチド(例えば、該タンパク質またはポリペプチドに特異的に結合する抗体、抗体誘導体、または抗体断片などの試薬を使用)
2)表1中のマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質、またはそれらにコードされたポリペプチドによって、直接的に(すなわち触媒された)または間接的に産生された代謝産物
3)表1中のマーカー遺伝子によってコードされるRNA転写物(例えば、mRNA、hnRNA)、または上記RNA転写物の断片(例えば、上記サンプルから得られたRNA転写物または上記転写産物から調製されたcDNAの混合物を、選択された位置で基質に固定された表1に記載の1つまたは複数のマーカー遺伝子の配列を含む核酸を有する基質と接触させることによって)。
これらの遺伝子のmRNA発現は、例えば、Affymetrix社または他の製造会社提供のDNAマイクロアレイを用いて検出することができる(米国特許第5556752号)。さらに別の実施形態では、Luminex社提供のものなどのビーズベースの直接蛍光測定技法を用いて、これらの遺伝子の発現を検出することができる(国際公開第97/14028号)。
本発明の組成物、方法およびキットは、特定の化学療法に反応しない、再発性疾患が進行する患者を同定するのに特に有用である。この目的のために、該組成物、方法およびキットは、
a)患者サンプル中の単一または複数のマーカー遺伝子の発現レベル、
ここで上記マーカー遺伝子の少なくとも1つ(例えば、2、5、10、または50以上)は表1のマーカー遺伝子から選択されたものである、および
b)コントロールの対象における上記マーカー遺伝子の発現レベル、またはその他の参照発現パターン、を比較することを含む。
このコントロールの対象は、乳癌に罹っていないものであっても、特定の化学療法に対するそれらの臨床反応によって同定および分類されたものであってもよい。
a)患者サンプル中の単一または複数のマーカー遺伝子の発現レベル、
ここで上記マーカー遺伝子の少なくとも1つ(例えば、2、5、10、または50以上)は表1のマーカー遺伝子から選択されたものである、および
b)コントロールの対象における上記マーカー遺伝子の発現レベル、またはその他の参照発現パターン、を比較することを含む。
このコントロールの対象は、乳癌に罹っていないものであっても、特定の化学療法に対するそれらの臨床反応によって同定および分類されたものであってもよい。
「治療」とは、限定されるものではないが、化学療法、抗ホルモン療法、指向性抗体療法、放射線療法、および組織、例えば乳房腫瘍の外科的除去を含めた、乳癌を処置するためのあらゆる治療でありうると理解されよう。したがって、本発明の組成物、方法およびキットは、治療前、治療中、および治療後に患者を評価するために、例えば腫瘍組織担持量の低下を評価するために用いることができる。
別の態様では、本発明は、患者の乳癌を抑制するための治療計画(例えば、化学療法試薬の種類)をイン・ビトロで選択するための組成物、方法、およびキットを提供する。この組成物、方法、およびキットは、下記の工程を含む:
a)癌細胞を含むサンプルを患者から取得する工程、
b)様々な試験組成物の存在下に上記サンプルのアリコートを別々に維持する工程、
c)各アリコートにおいて、表1に記載のマーカー遺伝子から選択された単一または複数のマーカー遺伝子の発現を比較する工程、および
d)その試験組成物を含有するアリコートにおいて、他の試験組成物を含有するアリコートにおける各マーカー遺伝子の発現レベルと比較して、表1からの遺伝子のより低い発現レベルを誘導するおよび/または表1からの遺伝子のより高い発現レベルを誘導する、前記試験組成物の1つを選択する工程。
a)癌細胞を含むサンプルを患者から取得する工程、
b)様々な試験組成物の存在下に上記サンプルのアリコートを別々に維持する工程、
c)各アリコートにおいて、表1に記載のマーカー遺伝子から選択された単一または複数のマーカー遺伝子の発現を比較する工程、および
d)その試験組成物を含有するアリコートにおいて、他の試験組成物を含有するアリコートにおける各マーカー遺伝子の発現レベルと比較して、表1からの遺伝子のより低い発現レベルを誘導するおよび/または表1からの遺伝子のより高い発現レベルを誘導する、前記試験組成物の1つを選択する工程。
本発明は、さらに、患者が乳癌に罹っているかどうかを評価するのに有用な抗体を産生する単離ハイブリドーマを作製する組成物、方法、およびキットを提供する。組成物、方法、およびキットは、表1中に記載のマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質、または上記タンパク質のポリペプチド断片を単離する工程と、単離されたタンパク質またはポリペプチド断片を用いて哺乳類を免疫化する工程と、免疫化された哺乳類から脾細胞を単離する工程と、単離された脾細胞を不死化細胞株と融合させてハイブリドーマを形成させる工程、および個々のハイブリドーマを、上記タンパク質またはポリペプチド断片に特異的に結合する抗体の産生についてスクリーニングして、そのハイブリドーマを単離する工程を含む。本発明には、この方法によって産生された抗体も含まれる。かかる抗体は、表1に記載のポリペプチドを含む完全長または部分ポリペプチドに特異的に結合する。
本発明は、様々なキットも提供する。そのようなキットは、表1に記載のマーカー遺伝子から選択された単一または複数の遺伝子の発現を評価するための試薬を含む。
別の態様では、本発明は、乳癌細胞の存在を評価するためのキットを提供する。このキットは、表1中に記載のマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質、または上記タンパク質のポリペプチド断片に特異的に結合する抗体を含む。このキットは、表1中に記載のマーカー遺伝子セットの各マーカー遺伝子によってコードされるタンパク質に特異的に結合する複数の抗体を含んでもよい。
さらに別の態様では、本発明は、乳癌細胞の存在を評価するためのキットを提供し、このキットは核酸プローブを含む。このプローブは、表1中に記載のマーカー遺伝子のRNA転写物、または上記転写産物のcDNAに特異的にハイブダイズする。このキットは、複数のプローブを含んでもよく、上記プローブのそれぞれは、表1に記載のマーカー遺伝子対のマーカー遺伝子の1つのRNA転写物に特異的にハイブリッド形成する。
本発明の組成物、方法またはキットは、既知の乳癌マーカー遺伝子を含む既知の癌マーカー遺伝子を包含し得ることが理解されよう。これらの組成物、方法およびキットは、乳癌以外の癌を同定するためにも使用できることがさらに理解されよう。
定義
「差次的発現」または「発現」は、本明細書で使用される場合、少なくとも2つの異なる個体または各個体から採取したサンプルにおいて観察される遺伝子の発現パターンにおける双方の量、定量的な相違を示す。差次的発現は、腫瘍細胞の異なった発生、腫瘍細胞の異なった遺伝的背景および/または組織環境に対する腫瘍の反応に依存し得る。差次的に発現される遺伝子は、「マーカー遺伝子」および/または「標的遺伝子」となりうる。本明細書に開示する差次的に発現される遺伝子の発現パターンは、乳癌の予後評価または診断評価の一部として利用できる。
「差次的発現」または「発現」は、本明細書で使用される場合、少なくとも2つの異なる個体または各個体から採取したサンプルにおいて観察される遺伝子の発現パターンにおける双方の量、定量的な相違を示す。差次的発現は、腫瘍細胞の異なった発生、腫瘍細胞の異なった遺伝的背景および/または組織環境に対する腫瘍の反応に依存し得る。差次的に発現される遺伝子は、「マーカー遺伝子」および/または「標的遺伝子」となりうる。本明細書に開示する差次的に発現される遺伝子の発現パターンは、乳癌の予後評価または診断評価の一部として利用できる。
「発現パターン」という用語は、例えば、参照遺伝子(例えばハウスキーパー遺伝子)または計算された平均発現値(例えばDNAチップ分析)いずれかと比較された遺伝子発現の測定レベルを意味する。パターンは、2つの遺伝子の比較に限定されないで、むしろ参照遺伝子またはサンプルに対する複数遺伝子の多重比較に関するものである。特定の「発現パターン」は、以下に開示するいくつかの遺伝子の比較および測定によっても生じ得るし、また決定され得る、そして互いに対するこれらの転写物の相対量を提示する場合もある。
あるいは、本明細書に開示する差次的に発現される遺伝子は、乳癌処置用の試薬および化合物の同定、これらの試薬および化合物の使用、ならびに治療の方法において使用できる。遺伝子の差次的調節とは、特定の癌細胞型またはクローンに限定されず、むしろ癌細胞、筋肉細胞、ストロマ細胞、結合組織細胞、他の上皮細胞、内皮細胞および血管、ならびに免疫系の細胞(例えば、リンパ球、マクロファージ、キラー細胞)の相互作用を表す。
「発現レベルの参照パターン」とは、本発明の意味において、発現レベルの他のパターンと比較するために使用できる発現レベルのあらゆるパターンでえると解される。本発明の好ましい実施態様において、発現レベルの参照パターンは、例えば、参照グループとして機能する、健康または罹患個体のグループにおいて観察される発現レベルの平均パターンである。
「プライマー対およびプローブ」とは、本発明の意味において、分子生物学分野での当業者には周知であるこの用語の通常の意味を示す。本発明の好ましい実施態様において、「プライマー対およびプローブ」は、配列の同一性、相補性、相同性、または検出または定量すべき標的ポリヌクレオチドの領域の相補物との相同性を有する、ポリヌクレオチド分子として解される。
「個々に標識されたプローブ」とは、本発明の意味において、プローブの検出または定量における助けとなるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドおよび標識を含む分子プローブであると解される。好ましい標識は、蛍光標識、発光性標識、放射性標識および染量である。
「アレイプローブ」とは、本発明の意味において、固定化プローブ、好ましくは規則的な配列の収積物として解される。本発明の好ましい実施態様において、個々の「アレイプローブ」は、固体支持体上の各位置、例えば「チップ」によって同定され得る。
「腫瘍反応」、「治療の成功」または「治療に対する反応」とは、本発明の意味において、アジュバンド化学療法の設定において、定義された腫瘍がないか、無再発生存期間(例えば、2年、4年、5年、10年)の所見を示す。この無病生存期間は、大部分再発が生じる平均期間よりも十分に長いが様々な腫瘍において変化し得る。ネオアジュバンド治療様式において、反応は、腫瘍主要部のアポトーシスおよび壊死に起因する腫瘍の縮小を測定することによってモニターされ得る。
用語は「再発」または「再発疾患」は、初期診断および腫瘍治療の後何年も経過してから出現する遠位転移、または局所的リンパ節への腫瘍の浸潤などの局所的事象、あるいは適切な時間内で元々の同一部分および元々の臓器で腫瘍細胞の出現を包含する。
「再発の予測」または「成功の予測」は、本明細書に記載した方法および組成物を示すものである。ここで腫瘍試料はその遺伝子発現について分析され、参照サンプルから得られた既知の遺伝子発現に対する発現パターンの相関性に基づいてさらに分類される。この分類は、かかる所定の腫瘍が再発を進行させ、そのために特定の治療に対して「非反応性」腫瘍として見なされると言う説明をもたらすか、または治療時間後に停止した疾患のない腫瘍として分類されるかいずれであってもよい。
「生物学的活性」または「生物活性」または「活性」または「生物学的機能」は、本明細書において互換的に用いられ、ポリペプチド(その本来のまたは変性後のコンフォメーションのいずれにおいても)、またはその任意の断片により、イン・ビボまたはイン・ビトロで、直接または間接的に発揮されるエフェクター機能または抗原性機能を意味する。生物学的活性には、ポリペプチドとの結合、他のタンパク質または分子との結合、酵素活性、シグナル伝達、DNA結合タンパク質としての活性、転写レギュレーターとしての活性、損傷したDNAと結合する能力などが挙げられるが、これらに限定するものではない。別法として、生物活性は、ポリペプチドのレベルを調節すること、たとえば対応する遺伝子の発現を調節することにより変化させることができる。
「マーカー」または「バイオマーカー」なる用語は、その存在または濃度が検出可能であり、かつ既知の状態、たとえば疾患状態と関連する生物学的分子、たとえば核酸、ペプチド、ホルモンなどを意味する。
本明細書において用いられる「マーカー遺伝子」とは、その発現パターンを、悪性腫瘍または乳癌評価における予測、予後予測または診断過程の一部として利用できるか、または別法として悪性腫瘍、特に乳癌の処置または予防に有用な化合物を同定する方法において用いることができる、差次的に発現する遺伝子を意味する。マーカー遺伝子は、標的遺伝子の特徴を有していてもよい。
本明細書において用いられる「標的遺伝子」とは、標的遺伝子発現または標的遺伝子産物活性のレベルの調節が悪性腫瘍、特に乳癌の症状を緩和するように作用し得るような様式で乳癌に関与する差次的に発現する遺伝子を意味する。標的遺伝子は、マーカー遺伝子の特徴を有していてもよい。
「腫瘍性病変」、「腫瘍性疾患」、または「腫瘍」という用語は、それらの組織学的な起源(例えば、管、小葉、髄様、および混成由来)にかかわらず、癌腫(例えば、上皮内癌、浸潤癌、転移性癌)、前悪性状態、および腫瘍性変化を含めた癌組織を指す。「癌」という用語は、患部組織または細胞集合のいかなるステージ、グレード、組織形態学的特徴、侵襲性、または悪性度にも限定されない。特に、ステージ0乳癌、ステージI乳癌、ステージII乳癌、ステージIII乳癌、ステージIV乳癌、グレードI乳癌、グレードII乳癌、グレードIII乳癌、悪性乳癌、原発性乳房癌、ならびに他のすべてのタイプの乳房関連の癌、悪性腫瘍、および形質転換が含まれる。「腫瘍性病変」、「腫瘍性疾患」、「腫瘍」または「癌」という用語は、いかなる組織または細胞型にも限定されない。それらには、癌患者の1次病変、2次病変、または転移病変が含まれ、また癌細胞に罹ったリンパ節、または局部的沈着(例えば、骨髄、肝臓、腎臓)しているか患者身体全体に自在に浮遊している微小残存病変細胞も含まれる。
さらに、「腫瘍性疾患の状態を特徴付けること」という用語は、以下の状態、すなわち、腫瘍のタイプ、組織形態学的外観、外部のシグナル(例えば、ホルモン、成長因子)への依存性、侵襲性、運動性、TNM(2)などによる状態、侵攻性、悪性度、転移能、および特定の治療に対する反応性のうちの1つまたは複数の測定および評価に関するが、これらに限定されない。
「生物サンプル」という用語は、本明細書で使用される場合、生物または生物の構成要素(例えば細胞)から得られたサンプルを指す。サンプルは、いかなる生物組織のものでも、あるいは体液のものでもよい。サンプルは、多くの場合、患者から得られたサンプルである「臨床標本」であろう。そのようなサンプルには、痰、血液、血球(例えば白血球)、組織サンプルもしくは細針生検サンプル、細胞含有体液、浮遊核酸、尿、腹腔液、および胸水、あるいはそれらから得られた細胞が含まれるが、これらに限定されない。生物サンプルには、組織学的な目的で採取された凍結切片または固定切片などの組織切片も含まれる場合がある。分析される生物サンプルは、吸引もしくは穿刺によって、切除によって、あるいは生検細胞物質もしくは切除細胞物質を得る他の任意の外科的方法によって採取された腫瘍性病変から得られた組織物質である。そのような生物サンプルは、患者から得られた細胞も含みうる。これらの細胞は、例えば、ニップル吸引、管洗浄、または細針生検によって収集される、あるいは誘発性もしくは自発性の乳頭分泌物から得られた乳房細胞「塗抹」標本中に見出されるものでよい。別の実施形態では、上記サンプルは体液である。そのような体液には、例えば、血液、リンパ液、腹水、婦人科的体液、または尿が含まれるが、これらの体液に限定されない。
「治療様式」、「治療モード」、「処方計画」または「化学療法計画」という用語、および「治療計画」という用語は、癌治療のための、抗腫瘍および/もしくは免疫刺激性および/もしくは血球増殖性の薬剤、ならびに/または放射線療法、ならびに/または高熱療法、および/またはならびに/または全身低体温法の逐次投与または同時投与を意味する。これらの投与は、アジュバントおよび/またはネオアジュバントモードで行うことができる。かかる「プロトコル」の組成により、単剤の用量、投与の時間枠および特定の治療ウィンドウ内での投与の頻度を変更し得る。現在、様々な薬物および/または物理的方法の様々な組合せ、様々なスケジュールが調査中である。
「アレイ」または「マトリックス」は、装置上でのアドレス可能な位置すなわち「アドレス」の配置を意味する。それらの位置は、2次元配列、3次元アレイ、または他のマトリックスフォーマットで配置することができる。その位置の数は、数箇所から少なくとも数十万にまで及ぶことがある。最も重要なことは、各位置が完全に独立した反応位置を表すことである。アレイには、核酸アレイ、タンパク質アレイおよび抗体アレイが含まれるが、これらに限定されない。「核酸アレイ」は、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは遺伝子のさらに大きな部分などの核酸プローブを含有するアレイを指す。アレイ上の核酸は一本鎖であることが好ましい。プローブがオリゴヌクレオチドであるアレイは、「オリゴヌクレオチドアレイ」または「オリゴヌクレオチドチップ」と呼ばれる。「マイクロアレイ」は、本明細書では「バイオチップ」または「生物学的チップ」とも呼ばれ、個別の領域の密度が少なくとも約100/cm2、好ましくは少なくとも約1000/cm2である複数の領域のアレイである。マイクロアレイ中の領域は、典型的な寸法、例えば直径が約10〜250μmの範囲にあり、アレイ中の他の領域とは、ほぼ同じ距離離れている。「タンパク質アレイ」は、非変性形態にあるか、もしくは変性した、ポリペプチドプローブまたはタンパク質プローブを含有するアレイを指す。「抗体アレイ」は、抗体を含有するアレイを指し、上記抗体には、モノクローナル抗体(例えばマウス由来のもの)、キメラ抗体、ヒト化抗体またはファージ抗体および一本鎖抗体、ならびにこれらの抗体由来の断片が含まれるが、これらに限定されない。
「アゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質の生物活性を模倣または上方制御(例えば増強または補充)する薬剤を指すものとする。アゴニストは、野生型タンパク質または野生型タンパク質の少なくとも1つの生物活性を有するその誘導体でありうる。アゴニストは、遺伝子の発現を上方制御する化合物、またはタンパク質の少なくとも1つの生物活性を増強する化合物でもあり得る。アゴニストは、別の分子、例えば標的ペプチドまたは標的核酸との、ポリペプチドの相互作用を増強する化合物である可能性もある。
「アンタゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質の少なくとも1つの生物活性を下方制御(例えば抑制または阻害)する薬剤を指すものとする。アンタゴニストは、タンパク質と別の分子、例えば標的ペプチド、リガンドまたは酵素基質との相互作用を抑制または低下する化合物でありうる。アンタゴニストは、遺伝子の発現を下方制御する化合物、または発現されたタンパク質の存在量を低下させる化合物でもあり得る。
「小分子」は、本明細書で使用される場合、「小分子」は、本明細書で使用される場合、分子量が約5kD未満、最も好ましくは約4kD未満である組成物を指すものとする。小分子は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチドミメティック、糖質、脂質または他の有機分子(炭素を含有する)、または無機分子でありうる。多くの薬品会社は化学物質および/または生物物質の混合物(該物質は、真菌、細菌または藻類の抽出物であることが多い)の大規模なライブラリー持っており、本発明の任意のアッセイを用いてスクリーニングし、生物活性を調節する化合物を同定することができる。
「加減された」または「加減」または「調節された」または「調節」、および「差次的に調節された」という用語は、本明細書で使用される場合、上方制御(すなわち活性化または刺激(例えば、アゴニスト作用または増強)による)および下方制御[すなわち阻害または抑制(例えば、アンタゴニスト作用、低下または抑制による)]の両方を意味する。
「転写調節単位」とは、それらが作動可能に連結されたタンパク質コード配列の転写を誘導または制御するDNA配列、例えば、開始シグナル、エンハンサーおよびプロモーター、を意味する。好ましい態様において、ある遺伝子の転写は、発現が意図される細胞タイプにおける組換え遺伝子の発現を制御するプロモーター配列(または他の転写調節配列)の制御下にある。組換え遺伝子は、天然に存在する形態のポリペプチドの転写を制御する配列と同じ転写調節配列の制御下にあっても、異なる転写制御配列の制御下にあってもよい。
「誘導体」という用語は、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の化学修飾を意味する。ポリヌクレオチド配列の化学修飾には、例えばアルキル、アシルまたはアミノ基による水素の置換が含まれうる。誘導体ポリヌクレオチドは、天然分子の少なくとも1つの生物学的または免疫学的機能を保持するポリペプチドをコードする。誘導体ポリペプチドは、それが得られるポリペプチドの少なくとも1つの生物学的または免疫学的機能を保持する、グリコシル化、ペグ化または任意の同様な過程によって修飾されたものである。「誘導体」という用語は、さらに、ポリペプチド配列またはタンパク質のリン酸化形態も意味する。
「ヌクレオチドアナログ」なる用語は、少なくとも1つの性質に天然において存在するヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと異なるが、それぞれの天然に存在するヌクレオチドの機能的特徴(たとえば、塩基対形成、ハイブリダイゼーション、コード情報)を示し、前記組成物に使用可能なオリゴマーまたはポリマーを意味する。ヌクレオチドアナログは、天然に存在しない塩基またはポリマー骨格を含んでもよく、その例は、LNA、PNAおよびモルホリノである。該ヌクレオチドアナログは、その天然に存在する対応物または等価物とは異なる少なくとも1つの分子を有する。
「乳癌遺伝子」は、本明細書で使用される場合、表1に記載のポリヌクレオチド、ならびにそれらの誘導体、断片、類似体、およびその相同体と、それらによってコードされるポリペプチド、ならびに、それらの誘導体、断片、類似体、および相同体と、表1から4に開示された情報を用いて、当技術分野で周知の標準的な技法によって誘導または同定できる対応するゲノム転写ユニットとを指す。遺伝子シンボル(Gene symbol)、遺伝子の説明(Gene Description)、参照、locus link ID、Unigene IDおよびOMIM番号を、表1に示す。
本明細書で使用される「キット」という用語は、本発明で開示する少なくとも1つのマーカー遺伝子、具体的には表1に記載の遺伝子の発現を特異的に検出するための、少なくとも1種類の試薬、例えばプローブを含む任意の製品(例えば、診断用または研究用製品)を意味し、該製品は、本発明の方法を実施するための1ユニットとして販売、配布、および/または販売促進される。表1に記載の遺伝子によってコードされたポリペプチドを含むマーカー遺伝子産物それぞれの存在、安定性、活性、複雑さを検出する試薬(例えばイムノアッセイ)も、上記キットの構成要素と考えられる。加えて、本発明で開示される核酸およびタンパク質検出のいかなる組合せも、キットと見なされる。
本発明は、ポリヌクレオチド配列およびこれによりコードされるタンパク質、並びにポリヌクレオチド配列に由来するプローブ、コードタンパク質に対する抗体、ならびに悪性腫瘍、特に乳癌の危険性があるかまたは罹患している個体に対する予測、予防、診断、予後予測および治療的使用を提供する。本発明において開示される配列が、乳癌から得られるサンプルにおいて差次的に発現することが判った。
本発明は、乳癌の臨床的徴候を示す患者の腫瘍生検において特異的に調節(上方または下方調節)される84の遺伝子の同定に基づく。これらの遺伝子いくつかの共発現の特徴決定により、乳癌における新たに同定された役割が提供された。
あるヌクレオチド配列に対する参照(reference)は、前記ヌクレオチド配列によってコードされる関連タンパク質配列に対する参照を包含すると意図するということは、当業者には明らかであろう。
第1の配列の、第2の配列に対する「%同一性」は、本発明の意味する範囲内では、下記の通りに計算された%同一性を意味する:最初に、2つの配列間の最適な全域アラインメントを、CLUSTALW アルゴズム[Thomson JD, Higgins DG, Gibson TJ. 1994. ClustalW: Improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, positions-specific gap penalties and weight matrix choice. Nucleic Acids Res., 22: 4673-4680],バージョン1.8を用い、次のコマンドライン構文:./clustalw -infile=./infile.txt output= -outorder=aligned pwmatrix=gonnet pwdnamatrix=clustalw pwgapopen=10.0 pwgapext=0.1 matrix=gonnet gapopen=10.0 gapext=0.05 gapdist=8 hgapresidues=GPSNDQERK maxdiv=40を適用して決定した。CLUSTAL W アルゴリズムの実行は、例えばhttp://www.ebi.ac.ukを含めたインターネット上の多数のサイトで容易に利用できる。その後、アラインメント中の一致数を、並べられたそれぞれの位置で同一のヌクレオチド(またはアミノ酸残基)の数を数えることによって決定する。最後に、2つの配列のうち長い方のヌクレオチド(またはアミノ酸残基)数で、一致総数を割り、100を掛けて、第2の配列に対する第1の配列の%同一性を計算する。
本発明は、下記に関する:
1.乳癌罹患患者における特定の処置様式の治療の成功を予測するための方法であって、次の工程;
(i) 表1に挙げたマーカー遺伝子のグループに含まれる、少なくとも6、8、10、15、20、30または84のマーカー遺伝子の発現レベルのパターンを決定すること、
(ii) (i)で決定した発現レベルのパターンを、1つまたはいくつかの発現レベルの参照パターンと比較する工程、
(iii) 工程(ii)における比較の結果から、該患者における特定の処置様式の治療の成功を予測する工程、を含む方法。
1.乳癌罹患患者における特定の処置様式の治療の成功を予測するための方法であって、次の工程;
(i) 表1に挙げたマーカー遺伝子のグループに含まれる、少なくとも6、8、10、15、20、30または84のマーカー遺伝子の発現レベルのパターンを決定すること、
(ii) (i)で決定した発現レベルのパターンを、1つまたはいくつかの発現レベルの参照パターンと比較する工程、
(iii) 工程(ii)における比較の結果から、該患者における特定の処置様式の治療の成功を予測する工程、を含む方法。
2.上記1の方法であって、該特定の処置様式は、
(i)細胞増殖に作用する、および/または
(ii)細胞生存に作用する、および/または
(iii)細胞運動性に作用する、
(iv)化学療法剤の投与を含む。
(i)細胞増殖に作用する、および/または
(ii)細胞生存に作用する、および/または
(iii)細胞運動性に作用する、
(iv)化学療法剤の投与を含む。
3.特定の処置様式がCMF(シクロフォオスファミド、メトトキサレート、フルオロウラシル)化学療法である上記1または2の方法。
4.予測アルゴリズムが使用される、上記第1点から第3点までのいずれかの方法。
5.患者における腫瘍疾患の処置方法であって、
(i) 上記1〜4のいずれかの方法によって乳癌罹患患者における特定の処置様式のための治療の成功を予測すること、
(ii) 該処置様式が成功すると予測される場合に、該処置様式によって該患者における該腫瘍疾患を処置すること、を含む方法。
(i) 上記1〜4のいずれかの方法によって乳癌罹患患者における特定の処置様式のための治療の成功を予測すること、
(ii) 該処置様式が成功すると予測される場合に、該処置様式によって該患者における該腫瘍疾患を処置すること、を含む方法。
6.腫瘍疾患に罹患した患者に対する治療様式を選択する方法であって、
次の工程;
(i) 該患者由来の生物学的サンプルを得る工程、
(ii) 該サンプルから、上記1〜4のいずれかの方法によって、複数の個々の処置様式について乳癌罹患患者について治療の成功を予測する工程、
(iii) 工程(ii)において成功することが予測される処置様式を選択する工程、
を含む方法。
次の工程;
(i) 該患者由来の生物学的サンプルを得る工程、
(ii) 該サンプルから、上記1〜4のいずれかの方法によって、複数の個々の処置様式について乳癌罹患患者について治療の成功を予測する工程、
(iii) 工程(ii)において成功することが予測される処置様式を選択する工程、
を含む方法。
7.上記1〜6のいずれかに記載の方法であって、発現レベルが、
(i) ハイブリダイゼーションを基にした方法を用いて、または
(ii) アレイプローブを利用するハイブリダイゼーションを基にした方法を用いて、または
(iii) 個々に標識プローブを利用するハイブリダイゼーションを基にした方法を用いるか、あるいは
(iv) リアルタイムリアルタイムPCRによって、または
(v) ポリペプチド、タンパク質またはその誘導体の発現を評価することによって、または
(vi) ポリペプチド、タンパク質またはその誘導体の量を評価することによって、
決定される方法。
(i) ハイブリダイゼーションを基にした方法を用いて、または
(ii) アレイプローブを利用するハイブリダイゼーションを基にした方法を用いて、または
(iii) 個々に標識プローブを利用するハイブリダイゼーションを基にした方法を用いるか、あるいは
(iv) リアルタイムリアルタイムPCRによって、または
(v) ポリペプチド、タンパク質またはその誘導体の発現を評価することによって、または
(vi) ポリペプチド、タンパク質またはその誘導体の量を評価することによって、
決定される方法。
8. 少なくとも6、8、10、15、20、30または84のプライマー対および表1に挙げたマーカー遺伝子のグループに含まれるマーカー遺伝子に適当なプローブを含む、キット。
9.表1に挙げた配列のいずれかと配列相補性を各々有する少なくとも6、8、10、15、20、30または84の個々の標識プローブを含むキット。
10.表1に挙げた配列のいずれかと配列相補性を各々有する少なくとも6、8、10、15、20、30または84のアレイプローブを含むキット。
遺伝子の発現を決定するために、該遺伝子の一部および断片が代わりに使用できるということは、当業者には明らかであろう。
本発明もまた、乳癌罹患患者において特定の処置様式の適用の成功に関する可能性を決定するための方法に関する。表1の配列に相同である配列が使用される。好ましい相同体は、元々の配列に対して80、90、95または99%配列同一性を有する。該相同物は、元々の分子が持つのと同じ生物学的活性および/または機能を依然として有するものが好ましい。
実験方法および設定
本発明は、これらの個体が疾病を再発しないような癌患者に対する特定の処置様式に関する適用の成功を予測することに関する。本発明の好ましい実施態様において、該処置様式がCMF(シクロフォオスファミド、メトトキサレート、フルオロウラシル)化学療法である。
本発明は、これらの個体が疾病を再発しないような癌患者に対する特定の処置様式に関する適用の成功を予測することに関する。本発明の好ましい実施態様において、該処置様式がCMF(シクロフォオスファミド、メトトキサレート、フルオロウラシル)化学療法である。
シクロフォオスファミド、メトトキサレートおよびフルオロウラシルが、進行性および転移性乳癌に共通する治療である。これらの化合物は、1970年代に乳癌を処置するための薬物の治療道具のなかでは重要な化学療法剤として確立されており、依然として使用されている。56の処置前の生検サンプルの発現プロファイルは、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(Affymetrix)の使用によって得られた。
実施例3〜5に記載の統計学的方法によって56サンプルに対するデータを分析して、我々は、表1に挙げた84の顕著に差次的に発現した遺伝子を同定した。
本発明の一部である遺伝子の生物学関連性
表1に挙げたいくつかの遺伝子は、生物学的、細胞性プロセスを示し、遺伝子の類似した調節によって特徴づけられる。下記の実施例に限定しないで説明する目的で、表1から得たいくつかの特徴的な遺伝子を後記で詳細に説明する。
表1に挙げたいくつかの遺伝子は、生物学的、細胞性プロセスを示し、遺伝子の類似した調節によって特徴づけられる。下記の実施例に限定しないで説明する目的で、表1から得たいくつかの特徴的な遺伝子を後記で詳細に説明する。
CCNB1:
サイクリンBは、細胞分裂のG2/M 期において優先的に発現すると報告されている。この遺伝子産物は、p34(cdc2)と複合体を形成し、有糸分裂促進因子(MPF)を形成する。マウスのゲノムにおける複数のサイクリンB1-関連配列および複数のサイクリンB1 mRNAは、見かけ上余剰のサイクリンB遺伝子が発生上のおよび/または細胞型特異的機能を有するという可能性を増強する。
サイクリンBは、細胞分裂のG2/M 期において優先的に発現すると報告されている。この遺伝子産物は、p34(cdc2)と複合体を形成し、有糸分裂促進因子(MPF)を形成する。マウスのゲノムにおける複数のサイクリンB1-関連配列および複数のサイクリンB1 mRNAは、見かけ上余剰のサイクリンB遺伝子が発生上のおよび/または細胞型特異的機能を有するという可能性を増強する。
5q12に対するヒトCCNB1遺伝子マップは、ヒト/チャイニーズハムスター体細胞ハイブリッドパネルのサザンブロッド分析によって示されるとおりである。脊椎動物細胞において、前期のMPFの核移行は、M期事象の誘導および協調のために重要であると考えられる。サイクリンB1のリン酸化は、その核移行に対する中心的役割である。HeLa細胞における細胞周期の進行中、S147および/またはS133に対する外来PLK1のキナーゼ活性における変化は、細胞抽出物中のキナーゼ活性と相関した。2つのB型サイクリン、すなわちB1およびB2は哺乳動物において同定された。増殖性細胞は、両方のサイクリンを発現し、これはp34(CDC2)と結合して活性化する。2B型サイクリンが異なる役割を有するかどうかを試験するために、遺伝子組換えマウス系を作成した。一つはサイクリンB1を欠くもので、もう一つはB2を欠くものであった。サイクリンB1は重要な遺伝子であることが証明された;同型のB1を含まない子犬は産まれなかった。このような所見から、サイクリンB1が突然変異のマウスではサイクリンB2の損失を補償でき、そしてサイクリンB1はサイクリンB2の重要な基質にp34(CDC2)キナーゼを標的化できることを意味することが示唆された。高等真核生物において、細胞周期のS期およびM期は、様々なサイクリン依存性キナーゼ(CDK)によって誘発される。例えば、カエルの卵抽出物であるCdk1サイクリンBは、DNA複製の引き金にはならないが、有糸分裂への移行を触媒する。
DUSP9
二重特異的フォスファターゼタンパク質ファミリーのメンバーは、重要なスレオニンおよびチロシン残基の脱リン酸化を介してMAPキナーゼを不活性化する。DUSP9の予測された384アミノ酸タンパク質の配列は、DUSP6に対して57%同一である。その他の二重特異的フォスファターゼ類と同様、DUSP9のN末端領域は、CDC25フォスファターゼの活性化部位を挟む(フランキングする)CH2ドメインとして知られるセグメントと相同である2つのドメインを含有する。DUSP9のイン・ビトロでの発現により、SDS−PAGEにて41.8kDの量を有するタンパク質を産生した。DUSP9は、イン・ビトロおよび哺乳類細胞で発現された時の両方でMAPキナーゼを不活性化する。DUSP6同様、DUSP9は、MAPキナーゼのERKファミリーのメンバーを選択的に示した。点状の核染色パターン、PMLとの共局在化を、細胞の10〜20%で観察した。ノーザンブロット分析から、DUSP9が、胎盤、腎臓および胎児肝臓中でのみ2.5kb mRNAとして発現したことが明らかになった。
二重特異的フォスファターゼタンパク質ファミリーのメンバーは、重要なスレオニンおよびチロシン残基の脱リン酸化を介してMAPキナーゼを不活性化する。DUSP9の予測された384アミノ酸タンパク質の配列は、DUSP6に対して57%同一である。その他の二重特異的フォスファターゼ類と同様、DUSP9のN末端領域は、CDC25フォスファターゼの活性化部位を挟む(フランキングする)CH2ドメインとして知られるセグメントと相同である2つのドメインを含有する。DUSP9のイン・ビトロでの発現により、SDS−PAGEにて41.8kDの量を有するタンパク質を産生した。DUSP9は、イン・ビトロおよび哺乳類細胞で発現された時の両方でMAPキナーゼを不活性化する。DUSP6同様、DUSP9は、MAPキナーゼのERKファミリーのメンバーを選択的に示した。点状の核染色パターン、PMLとの共局在化を、細胞の10〜20%で観察した。ノーザンブロット分析から、DUSP9が、胎盤、腎臓および胎児肝臓中でのみ2.5kb mRNAとして発現したことが明らかになった。
RFC4;A1
DNAポリメラーゼ・デルタおよびDNAポリメラーゼ・イプシロンによるプライムド(primed)DNAテンプレートの伸張には、2つのアクセサリータンパク質、増殖性細胞核抗原(PCNA)およびアクチベーター1の作用を必要とする。A1は、140、40、38、37、および36kDの5つの異なるサブユニットを含有する酵素である。推定アミノ酸配列は、A1の40kDサブユニットに対して高い相同性を示したが、40kDタンパク質ではない37kDの発現タンパク質はATPに結合しなかった。その他の知見から、A1の37および40kDのサブユニットの両方は、A1の生物学的役割に必要であって、それらはこの過程では異なって機能し得ることが示唆された。
DNAポリメラーゼ・デルタおよびDNAポリメラーゼ・イプシロンによるプライムド(primed)DNAテンプレートの伸張には、2つのアクセサリータンパク質、増殖性細胞核抗原(PCNA)およびアクチベーター1の作用を必要とする。A1は、140、40、38、37、および36kDの5つの異なるサブユニットを含有する酵素である。推定アミノ酸配列は、A1の40kDサブユニットに対して高い相同性を示したが、40kDタンパク質ではない37kDの発現タンパク質はATPに結合しなかった。その他の知見から、A1の37および40kDのサブユニットの両方は、A1の生物学的役割に必要であって、それらはこの過程では異なって機能し得ることが示唆された。
免疫沈降および質量分析析によって、BRCA1関連タンパク質を同定することを試みた。BRCA1は、腫瘍サプレッサーのラージマルチサブユニットタンパク質複合体、DNA損傷センサーおよびシグナル伝達物質の一部であることが判った。この複合体BASCを「BRCA1関連ゲノムサーベイランス複合体」と名付けた。この複合体において同定されたDNA修復タンパク質うちの一つは、ATM、BLM、MSH2、MSH6、MLH1、RAD50 MRE11-NBS1複合体およびRFC1-RFC2-RFC4複合体であった。BASCが、異常なDNA構造のセンサーおよび/または複製後の修復過程の調節物質として機能でき、そして細胞修復および増殖に関与することが示唆された。
ポリヌクレオチド
「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖であってよく、「乳癌遺伝子」ポリペプチドに対するコード配列または「乳癌遺伝子」ポリペプチドに対するコード配列の相補体を含むことができる。ヒト「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする縮重ヌクレオチド配列、ならびに表1のヌクレオチド配列と少なくとも約50、55、60、65、70、好ましくは約75、90、96、または98%同一性を有する相同なヌクレオチド配列も、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドである。
「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖であってよく、「乳癌遺伝子」ポリペプチドに対するコード配列または「乳癌遺伝子」ポリペプチドに対するコード配列の相補体を含むことができる。ヒト「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする縮重ヌクレオチド配列、ならびに表1のヌクレオチド配列と少なくとも約50、55、60、65、70、好ましくは約75、90、96、または98%同一性を有する相同なヌクレオチド配列も、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドである。
差次的発現の同定
収集されたRNAサンプル中にある、差次的に発現された遺伝子によって産生されたRNAを代表する転写産物は、当業者に周知な様々な方法を利用して同定することができる。例えば、差次的スクリーニング[Tedder, T. F. et al., 1988, (8)]、サブトラクティブハイブリダイゼーション[Hedrick, S. M. et al., 1984, (9)]および、好ましくは差次的スクリーニング(Liang, P., and Pardee, A. B., 1993, U.S. Pat. No. 5,262,311、出典明示により本明細書の一部とする)は、差次的に発現した遺伝子から得られるポリヌクレオチド配列を同定するために利用され得る。
収集されたRNAサンプル中にある、差次的に発現された遺伝子によって産生されたRNAを代表する転写産物は、当業者に周知な様々な方法を利用して同定することができる。例えば、差次的スクリーニング[Tedder, T. F. et al., 1988, (8)]、サブトラクティブハイブリダイゼーション[Hedrick, S. M. et al., 1984, (9)]および、好ましくは差次的スクリーニング(Liang, P., and Pardee, A. B., 1993, U.S. Pat. No. 5,262,311、出典明示により本明細書の一部とする)は、差次的に発現した遺伝子から得られるポリヌクレオチド配列を同定するために利用され得る。
差次的スクリーニングは、cDNAライブラリーの二重スクリーニングを包含し、そこでライブラリーのうちの一つのコピーは、ある細胞型のmRNA集団に対応する全細胞cDNAプローブでスクリーニングし、一方でそのcDNAライブラリーの複製であるコピーは、第二の細胞型のmRNA集団に対応する全cDNAプローブを用いてスクリーニングされる。例えば、一つのcDNAプローブは、コントロールの対象から得られた細胞型の全細胞cDNAプローブに対応するものでよく、第2のcDNAプローブは、実験対象から得られた同一細胞型の全細胞cDNAプローブに対応するものでよい。一方のプローブにハイブリダイズするが他方とはハイブリダイズしないクローンは、コントロール対象と実験対象において目的の細胞型で差次的に発現された遺伝子から得られたクローンを示す可能性がある。
サブトラクティブハイブリダイゼーション技法は、通常、2種類の異なった起源、例えばコントロール組織および実験組織から採取されるmRNAの単離、mRNAまたは単離されたmRNAから逆転写された一本鎖cDNAのハイブリダイゼーション、および全てのハイブリッドの除去、つまり二本鎖になった配列の除去を含む。残存するハイブリダイズされていない一本鎖cDNAは、2つのmRNA供給源において差次的に発現される遺伝子から得られるクローンを示す可能性がある。そのような一本鎖のcDNAは、その後、差次的に発現した遺伝子から得られるクローンを含むライブラリーの構築用出発物質として用いられる。
ディファレンシャルディスプレイ技術は、既知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR; Mullis, K. B., 1987, 米国特許第4,683,202号に記載された実施例)を用いるもので、差次的に発現された遺伝子から得られた配列の同定を可能にする方法である。最初に、当業者に既知の標準的な技法を用いて、単離されたRNAを一本鎖cDNAに逆転写する。
逆転写酵素反応用のプライマーには、オリゴdT含有プライマー、好ましくは、以下に記述する逆方向プライマータイプのオリゴヌクレオチドが含まれうるが、これらに限定されない。次に、この技法は、後述するように、任意の特定の細胞内に存在するRNA転写物のランダムなサブセットを表すクローンの増幅を可能にするPCRプライマー対を用いる。異なるプライマー対を利用することで、細胞内に存在するmRNA転写物それぞれの増幅を可能にする。そのように増幅された転写産物の中から、差次的に発現した遺伝子から産生された転写産物を同定することが可能である。
逆転写酵素反応用のプライマーには、オリゴdT含有プライマー、好ましくは、以下に記述する逆方向プライマータイプのオリゴヌクレオチドが含まれうるが、これらに限定されない。次に、この技法は、後述するように、任意の特定の細胞内に存在するRNA転写物のランダムなサブセットを表すクローンの増幅を可能にするPCRプライマー対を用いる。異なるプライマー対を利用することで、細胞内に存在するmRNA転写物それぞれの増幅を可能にする。そのように増幅された転写産物の中から、差次的に発現した遺伝子から産生された転写産物を同定することが可能である。
上記プライマー対の逆方向オリゴヌクレオチドプライマーは、mRNAのポリ(A)末、またはmRNAポリ(A)末から逆転写されたcDNAの相補鎖にハイブリッド形成するヌクレオチドのオリゴdT領域、好ましくは11個のヌクレオチド長を含有し得る。第2に、逆方向プライマーの特異性を増強するために、その3’末端に1または複数、好ましくは2つのヌクレオチドの追加ヌクレオチドを含有し得る。統計的に、目的のサンプル中に存在するmRNA由来の配列の一部のみが、そのようなプライマーにハイブリダイズするために、この付加ヌクレオチドにより、該プライマーが、目的とするサンプル中に存在するmRNA由来の配列の一部のみを増幅させることが可能となる。これは、増幅された配列を表す各バンドのより正確かつ完全な可視化と、特性付けとを可能にする点で好ましい。
順方向プライマーは、目的の組織から得られるcDNA配列にハイブリダイズする能力を有すると統計学的に考えられるヌクレオチド配列を含有し得る。このヌクレオチド配列は任意の配列でよく、順方向オリゴヌクレオチドプライマーの長さは、約9から約13ヌクレオチドまでの範囲であってよく、約10ヌクレオチドが好ましい。任意のプライマー配列は、産生される増幅された部分的cDNAの長さが多様となり、そのため、標準的な変性配列決定用ゲル電気泳動の使用によって、異なるクローンを分離できる。PCR反応条件は増幅産物の収率および特異性を最適にするPCR反応条件を選択し、さらに標準的ゲル電気泳動技術を用いて解析できる長さの増幅産物を産生するべきである。このような反応条件は当業者らにはよく知られており、また、重要な反応パラメータには、たとえば、前記のオリゴヌクレオチドプライマーの長さとヌクレオチド配列、およびアニーリングおよび伸長工程の温度および反応時間が含まれる。2つの異なる細胞タイプのmRNAの逆転写および増幅から得られるクローンのパターンは、配列決定用ゲル電気泳動により表示され、比較される。2つのバンドパターンの相違が、差次的に発現する可能性のある遺伝子を示す。
完全長cDNAをスクリーニングする場合、比較的大きなcDNAを含むように、サイズ選択されたライブラリーを用いることが好ましい。ランダム・プライム・ライブラリー(Randomly-primed libraries)が好ましく、遺伝子の5’領域を含む配列をより多く含む点で好ましい。ランダム・プライム・ライブラリーの使用は、オリゴd(T)ライブラリーによって完全長cDNAが産生されない状況で特に好ましい。ゲノムライブラリーは5’非転写制御領域へと配列を伸長するのに有用である。
PCRまたはシークエンス産物のヌクレオチド配列を分析または確認するのに、市販のキャピラリー電気泳動システムを用いることができる。例えば、キャピラリーシーケンシングは、電気泳動分離用の流動可能なポリマー、レーザーで活性化される4つの異なる蛍光色素(それぞれのヌクレオチドについて一つ)、および電荷結合素子カメラによる発光波長の検出を用いることができる。出力/光強度は、適切なソフトウェア(例えば、GENOTYPER および Sequence NAVIGATOR, Perkin Elmer; ABI)を用いて電気信号に変換でき、サンプルの添加からコンピューター解析および電子データ表示までの全過程を、コンピューター制御させることができる。キャピラリー電気泳動は、特定のサンプル中に限られた量しか存在しないDNAの小片のシーケンシングに特に好ましい。
差次的に発現されている可能性のある遺伝子配列が、例えば上述のものなど、大量処理技法によって同定されれば、差次的に発現した可能性のある遺伝子に関する差次的発現を確証すべきである。確証は、例えばノーザン分析および/またはRT−PCRなどの周知の技法を介して達成することができる。確証の際、差次的に発現する遺伝子をさらに特徴決定し、後述する標的および/またはマーカー遺伝子として同定することができる。
また、例えばディファレンシャルディスプレイにより得られる差次的に発現した遺伝子の増幅された配列を、対応遺伝子の完全長クローンを単離するために使用することができる。該遺伝子の完全長コード部分は、当技術分野で周知の分子生物学的技法によって、過度の実験をしないでも容易に単離することができる。例えば、単離した差次的に増幅した断片を標識して、ゲノムライブラリーをスクリーニングするのに用いることもできる。別法として、標識された断片を、ゲノムライブラリーをスクリーニングするために用いることができる。
当業者に周知な標準的な技法を用いて、同定された遺伝子によって産生されたmRNAの組織分布の分析を行うことができる。そのような技法には、例えば、ノーザン分析およびRT−PCRが含まれうる。そのような分析は、同定された遺伝子が、乳癌に関与すると考えられる組織で発現されているかどうかに関する情報を提供する。そのような分析は、定常状態mRNA制御に関する定量的情報を提供し、同定された遺伝子のうちのいずれが、高レベルの制御を、好ましくは乳癌に関与すると考え得る組織において示すかに関するデータをもたらすことができる。
そのような分析は、特定の組織から得られる特定の細胞型の単離された細胞集団で行ってもよい。加えて、標準的なイン・サイチュ・ハイブリダイゼーション技術を用いて、特定の組織内のいずれの細胞が、同定された遺伝子を発現するかについて情報を得ることができる。そのような分析は、組織内の細胞の部分集団のみが乳癌に関連していると考えられる場合、乳癌に関連する同定された遺伝子の生物機能に関する情報を提供できる。
ポリヌクレオチド変異体およびホモログまたはスプライス変異体の同定
上記の「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドの変異体およびホモログもまた、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドである。典型的には、相同な「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチド配列は、当業者には既知のストリンジェントな条件下で既知の「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドと候補ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより同定できる。例えば、次の洗浄条件:2XSSC(0.3MのNaCl、0.03Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.1%のSDS、室温で2回、それぞれ30分;次いで2XSSC、0.1%SDS、50EC,1回、30分;次いで2XSSC、室温で2回、10分、を使用して、最大で約25〜30%塩基対ミスマッチを含むそれぞれの相同配列を同定することができる。さらに好ましくは、相同なポリヌクレオチド鎖は15−25%の塩基対ミスマッチを含み、さらにいっそう好ましくは5−15%の塩基対ミスマッチを含んでいる。
上記の「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドの変異体およびホモログもまた、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドである。典型的には、相同な「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチド配列は、当業者には既知のストリンジェントな条件下で既知の「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドと候補ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより同定できる。例えば、次の洗浄条件:2XSSC(0.3MのNaCl、0.03Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.1%のSDS、室温で2回、それぞれ30分;次いで2XSSC、0.1%SDS、50EC,1回、30分;次いで2XSSC、室温で2回、10分、を使用して、最大で約25〜30%塩基対ミスマッチを含むそれぞれの相同配列を同定することができる。さらに好ましくは、相同なポリヌクレオチド鎖は15−25%の塩基対ミスマッチを含み、さらにいっそう好ましくは5−15%の塩基対ミスマッチを含んでいる。
適当なプローブまたはプライマーを作成し、マウス、サル、または酵母菌などの他の種からのcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることによって、本発明において開示される「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドの種のホモログを同定できる。「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドのヒト変異体は、たとえばヒトcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることにより同定できる。1%低下するごとに対して1〜1.5℃低下することはよく知られている[Bonner et al., 1973, (10)]。ヒト「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチド変異体または他の種の「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドは、推定の相同な「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドを表1またはその相補体の一つのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにハイブリダイズさせて、テストハイブリッドを形成することにより同定できる。テストハイブリッドの融点は、完全に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含むハイブリッドの融点と比較され、テストハイブリッドの中の塩基対のミスマッチの数またはパーセントが計算される。
ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件の後に、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドまたはその相補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列もまた「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドである。ストリンジェントな洗浄条件は当該分野において周知であり、かつ理解されており、例えば、Sambrook et al.,(6), Ausubel (7)において開示されている。典型的には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件について、温度と塩濃度の組み合わせを選択しなければならず、すなわち、研究対象のハイブリッドのTm計算値の約12−20℃下である。表1の配列の一つのヌクレオチド配列またはその相補体を有する「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドと、これらのヌクレオチド配列の一つと少なくとも約50、好ましくは75、90、96、または98%の同一性を有するポリヌクレオチド配列とのハイブリッドのTmは、例えば下記の式を用いて計算できる:
Tm=81.5℃−16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−600/l)、式中l=ハイブリッドの長さ(塩基対)である
[Bolton and McCarthy,1962,(11)]。
Tm=81.5℃−16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−600/l)、式中l=ハイブリッドの長さ(塩基対)である
[Bolton and McCarthy,1962,(11)]。
ストリンジェントな洗浄条件は、例えば、65℃で4×SSC、または50%ホルムアミド、28℃で4×SSC、または65℃で0.5×SSC、0.1%SDSを含む。高ストリンジェントな洗浄条件は、例えば65℃で0.2×SSCを含む。
ポリペプチド
本発明の「乳癌遺伝子」ポリペプチドには、表1のペプチド、またはその誘導体、断片、アナログおよびホモログが含まれる。したがって、本発明の「乳癌遺伝子」ポリペプチドは、「乳癌遺伝子」ポリペプチドのすべてまたは一部を構成する部分、完全長または融合タンパク質であり得る。
本発明の「乳癌遺伝子」ポリペプチドには、表1のペプチド、またはその誘導体、断片、アナログおよびホモログが含まれる。したがって、本発明の「乳癌遺伝子」ポリペプチドは、「乳癌遺伝子」ポリペプチドのすべてまたは一部を構成する部分、完全長または融合タンパク質であり得る。
生物学的に活性な変異体
生物学的に活性な、すなわち「乳癌遺伝子」活性を保持する「乳癌遺伝子」ポリペプチド変異体も、「乳癌遺伝子」ポリペプチドとみなされる。好ましくは、天然または非天然の「乳癌遺伝子」ポリペプチド変異体は、表1の遺伝子によってコードされたポリペプチドのアミノ酸配列、または表1のポリヌクレオチドのいずれかによりコードされたペプチドまたはその断片のアミノ酸配列と少なくとも約60、65、または70、好ましくは約75、80、85、90、92、94、96または98%の同一であるアミノ酸配列を有する。
生物学的に活性な、すなわち「乳癌遺伝子」活性を保持する「乳癌遺伝子」ポリペプチド変異体も、「乳癌遺伝子」ポリペプチドとみなされる。好ましくは、天然または非天然の「乳癌遺伝子」ポリペプチド変異体は、表1の遺伝子によってコードされたポリペプチドのアミノ酸配列、または表1のポリヌクレオチドのいずれかによりコードされたペプチドまたはその断片のアミノ酸配列と少なくとも約60、65、または70、好ましくは約75、80、85、90、92、94、96または98%の同一であるアミノ酸配列を有する。
パーセント(%)同一性の差異は、例えば、アミノ酸置換、挿入または欠失によるものでありうる。アミノ酸置換は、1対1のアミノ酸置換として定義する。置換されたアミノ酸が、類似した構造的および/または化学的特性を有する場合、それらの性質が保存される。イソロイシンもしくはバリンによるロイシンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、またはセリンによるトレオニンの置換が保存的置換の例である。
アミノ酸挿入またはアミノ酸欠失は、アミノ酸配列への、あるいはアミノ酸配列内の変化である。それらは、通常、約1から5アミノ酸の範囲にある。「乳癌遺伝子」ポリペプチドの生物学的または免疫学的活性を損なわずに、どのアミノ酸残基を置換、挿入、または除去できるかを決定する際のガイドラインは、DNASTARソフトウェアなどの当該分野においてよく知られているコンピュータープログラムを用いて見いだすことができる。アミノ酸変化の結果、生物学的に活性な「乳癌遺伝子」ポリペプチドが得られるかどうかは、例えば下記の特定の実施例に記載する「乳癌遺伝子」活性のアッセイによって容易に判定することができる。より大きな挿入または欠失も、選択的スプライシングによって引き起こすことができる。タンパク質の主な活性を変えないで、タンパク質ドメインを挿入または欠失させることができる。
発現および遺伝子産物の検出
マーカー遺伝子発現の存在は、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドも存在していることを示唆するが、その存在および発現は確認される必要があるかもしれない。例えば、もし「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする配列がマーカー遺伝子配列中に挿入されるなら、「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする配列を含む形質転換された細胞はマーカー遺伝子機能の欠如により同定することができる。別法として、マーカー遺伝子は、一つのプロモーターの制御下で、「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする配列と一列に配置することができる。誘発または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は、通常「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドの発現を示す。
マーカー遺伝子発現の存在は、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドも存在していることを示唆するが、その存在および発現は確認される必要があるかもしれない。例えば、もし「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする配列がマーカー遺伝子配列中に挿入されるなら、「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする配列を含む形質転換された細胞はマーカー遺伝子機能の欠如により同定することができる。別法として、マーカー遺伝子は、一つのプロモーターの制御下で、「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする配列と一列に配置することができる。誘発または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は、通常「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドの発現を示す。
別法として、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドを含み、「乳癌遺伝子」ポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者らに公知の多様な方法によって同定することができる。これらの方法は、ポリヌクレオチドまたはタンパク質の検出および/または定量のための膜、溶液、またはチップに基づく技術を包含するDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションおよびタンパク質バイオアッセイあるいはイムノアッセイを包含するが、これらに限定されるわけではない。例えば、「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の存在は、「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプローブまたは断片を使用して、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションまたは増幅により検出できる。核酸増幅に基づく分析は、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドを含む形質転換体を検出するために、「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする配列から選択されたオリゴヌクレオチドの使用を含む。
「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを用いて、「乳癌遺伝子」ポリペプチドの発現を検出し測定するためのいろいろなプロトコルが当分野においてよく知られている。その例には、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光標示式細胞分取器(FACS)が包含される。「乳癌遺伝子」ポリペプチド上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いる二部位(two-site)モノクローナルに基づくイムノアッセイを用いることができるか、または競合結合アッセイを用いることができる。これらおよび他のアッセイは、Hampton et al.,(12)に記載されている。
広範な標識技法および結合技法が当業者に知られており、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイでそれらを用いることができる。「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関連した配列の検出に用いる標識ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識、ニックトランスレーション法、末端標識法または標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅が含まれる。別法として、「乳癌遺伝子」ポリペプチドをコードする配列を、mRNAプローブの産生のためにベクターにクローニングすることもできる。かかるベクターは、当技術分野で知られており、商業的に入手可能であって、標識ヌクレオチドおよびT7、T3またはSP6のような適切なRNAポリメラーゼの添加によってイン・ビトロでRNAプローブを合成するために用いることができる。これらの手順は、様々な市販キット(Amersham Pharmacia Biotech, Promega, and US Biochemical) を用いて実施できる検出を容易にするために用いることができる適当なリポーター分子または標識には、放射性核種、酵素および蛍光、化学発光法、または、色素産生剤、ならびに基質、補助因子、阻害剤、磁気粒子などが含まれる。
予測、診断、および予後判定アッセイ
本発明は、開示されたバイオマーカー、即ち開示された表1のポリヌクレオチドマーカーを検出することによって、特に癌を有する対象において特定の処置様式の適用の成功に関する見込みを決定するための組成物、方法、およびキットを提供する。
本発明は、開示されたバイオマーカー、即ち開示された表1のポリヌクレオチドマーカーを検出することによって、特に癌を有する対象において特定の処置様式の適用の成功に関する見込みを決定するための組成物、方法、およびキットを提供する。
臨床用途では、生物学的サンプルを、本発明において同定されたバイオマーカーの存在および/または不在に関してスクリーニングすることができる。このようなサンプルは、例えば針生検コア、外科切除サンプル、または体液(例えば、血清、細針ニップル吸引物および尿など)である。例えば、これらの方法には生検を得ることが含まれ、その生検は所望によりクリオスタット切断により細分され細胞集団全体のおよそ80%に疾患細胞が濃縮される。特定の実施形態では、当技術分野で周知の技法を用いて、これらのサンプルから抽出されたポリヌクレオチドを増幅することができる。検出された選択マーカーの発現レベルは、統計的に有効な疾患および健康なサンプルグループと比較される。
一実施形態では、上記組成物、方法およびキットは、例えばノーザンブロット分析、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)イン・サイチュ・ハイブリダイゼーション、免疫沈降、ウェスタンブロットハイブリダイゼーションまたは免疫組織化学により、対象における開示のマーカーのmRNAおよび/またはタンパク質レベルが異常であるかどうかを判定することを含む。この方法によれば、細胞を対象から得て、開示されたバイオマーカーのレベル、タンパク質またはmRNAレベルを測定し、健康な対象におけるこれらのマーカーのレベルと比較する。異常なレベルのバイオマーカーポリペプチドまたはmRNAレベルは乳癌などの悪性腫瘍を示している可能性が高い
別の実施形態では、上記組成物、方法およびキットは、例えば、サザンブロット分析、ドットブロット分析、蛍光または比色イン・サイチュ・ハイブリダイゼーション、比較ゲノムハイブリダイゼーションまたは定量的PCRによって、対象における前記遺伝子または前記ゲノム座のDNA含有量が異常かどうか決定することを含む。通常、これらのアッセイは、代表的なゲノム領域由来のプローブの使用を含む。該プローブは、前記ゲノム領域または前記領域に対する相補的もしくは類似の配列の少なくとも一部分を含有している。特に、前記遺伝子またはゲノム領域の遺伝子間または遺伝子内領域である。該プローブは、ハイブリダイゼーションによって、標的領域に結合できるヌクレオチド配列または類似した機能の配列(例えば、PNA、モルフィリノオリゴマー)からなるものでありうる。一般に、前記患者サンプルにおいて変化したゲノム領域は、非罹患コントロールサンプル(同一または異なる患者から得た正常な組織、周囲の非罹患組織、末梢血)または前記変化を有さず、そのため内部コントロールとしての働き得る同一サンプルのゲノム領域と比較される。好ましい態様において、同じ染色体上に位置する領域が使用される。別法として、ゴノソーム領域および/またはサンプル中で量が可変的な特定の領域を使用する。ある好ましい態様において、DNA含量、構造、組成または修飾を別のゲノム領域内のものと比較する。特に好ましいのは、標的領域の量が増幅およびまたは欠失により変化した前記サンプルのDNA含量を検出する方法である。別の実施形態では、診断、予後予測または治療的価値がある、臨床面に関して前記サンプル中の細胞を罹患させるかまたは罹患しやすくする多型(例えば、一塩基多型または突然変異)の存在について標的領域を分析する。好ましくは、配列変異の同定は、前記臨床態様を有する前記サンプルの特徴的挙動をもたらすハプロタイプを定義するために使われる。
DNAアレイ技術
一態様では、本発明は、ポリヌクレオチドプローブが、組織化されたアレイにおいてDNAチップ上に固定されている方法も提供する。オリゴヌクレオチドは、リソグラフィーを含む様々な方法により固体支持体に結合させることができる。例えば、チップは最大410000までのオリゴヌクレオチドを保持できる(GeneChip, Affymetrix)。本発明は、一つのチップ上にポリヌクレオチドマーカーのアレイを提供することによって試験の信頼度が増大するので、乳癌などの悪性腫瘍に関する現在利用可能な試験より有意に優れた利点を提供する。
一態様では、本発明は、ポリヌクレオチドプローブが、組織化されたアレイにおいてDNAチップ上に固定されている方法も提供する。オリゴヌクレオチドは、リソグラフィーを含む様々な方法により固体支持体に結合させることができる。例えば、チップは最大410000までのオリゴヌクレオチドを保持できる(GeneChip, Affymetrix)。本発明は、一つのチップ上にポリヌクレオチドマーカーのアレイを提供することによって試験の信頼度が増大するので、乳癌などの悪性腫瘍に関する現在利用可能な試験より有意に優れた利点を提供する。
この方法には、生物サンプルの取得を含み、罹患者の生検を得ること(これは所望によりクリオスタットで切断することによって細分されて、罹患細胞集団が全細胞集団の約80%となるように濃縮される)、および体液、たとえば血清または尿、液体を含む血清または細胞(例えば、細針吸飲物から得られる)の使用を含む。その後、DNAまたはRNAを抽出し、増幅し、DNAチップを用いて分析して、マーカーポリヌクレオチド配列が存在するか、存在しないか判定する。一実施形態では、ポリヌクレオチドプローブを2次元マトリックスまたはアレイにおいて基体上にスポットする。ポリヌクレオチドのサンプルは標識して、その後ポリヌクレオチドサンプルは、上記プローブにハイブリッド形成させることができる。プローブポリヌクレオチドに結合した標識サンプルポリヌクレオチドを含む二本鎖ポリヌクレオチドは、サンプル中にある結合しなかった部分が洗い流された後に検出できる。
プローブポリヌクレオチドは、ガラス、ニトロセルロースなどを含めた基質上にスポットすることができる。プローブは、共有結合によって、あるいは、疎水性相互作用などの非特異的な相互作用によって基質に結合させることができる。サンプルポリヌクレオチドは、放射性標識、蛍光色素、発色団などを用いて標識することができる。アレイを構築する技法、これらのアレイを使用する方法は、EP 0799 897;WO 97/29212; WO 97/27317; EP 0 785 280; WO 97/02357; U.S. Pat. No. 5,593,839; U.S. Pat. No. 5,578,832; EP 0 728 520; U.S. Pat. No. 5,599,695; EP 0 721 016; U.S. Pat. No. 5,556,752; WO 95/22058;および U.S. Pat. No. 5,631,734に記載されている。さらに、アレイは、遺伝子の差次的発現を検査するのに用いることができ、遺伝子機能を測定するのに用いることができる。例えば、本発明のポリヌクレオチド配列のアレイは、いずれのポリヌクレオチド配列が正常細胞と疾患細胞間で差次的に発現するかを決定するために用いることができる。対応する正常なサンプルにおいて観察されない罹患サンプルにおける特定のメッセンジャーの高い発現は、乳癌特異的タンパク質を示すことができる。
したがって、一態様では、本発明は、表1のポリヌクレオチド配列に特異的なプローブとプライマーを提供する。
一実施態様において、上記組成物、方法、およびキットは、患者から得た組織中に悪性癌、特に乳癌細胞が存在するかどうか決定するための、ポリヌクレオチドプローブの使用を含む。特にこの方法は下記の工程を含む:
1)表1のポリヌクレオチドから選択されたポリヌクレオチドのコード配列の一部に相補的な長さが、少なくとも12ヌクレオチド、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは25ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも40ヌクレオチド、そして、最大、上記コード配列のすべてもしくはほとんどすべてまでのヌクレオチド配列またはそれに相補的な配列を含むポリヌクレオチドプローブを準備する工程;
2)悪性腫瘍を有する患者から組織サンプルを取得する工程、
3)悪性腫瘍をもたない患者からの第2の組織サンプルを準備する工程、
4)上記ポリヌクレオチドプローブを、第1および第2の組織サンプルそれぞれのRNAとストリンジェントな条件下で接触させる(例えば、ノーザンブロットまたはイン・サイチュ・ハイブリダイゼーションアッセイで)工程、および
5)(a)第1の組織サンプルのRNAとの上記プローブのハイブリダイゼーション量と、(b)第2の組織サンプルのRNAとのプローブのハイブリダイゼーションの量とを比較する工程を含み、
この方法では、第1の組織サンプルのRNAとのハイブリダイゼーションの量と、第2の組織サンプルのRNAとのハイブリダイゼーションの量と比較して、統計的な有意の差異がある場合、それは第1の組織サンプルにおいて悪性腫瘍、特に乳癌の存在を示す。
1)表1のポリヌクレオチドから選択されたポリヌクレオチドのコード配列の一部に相補的な長さが、少なくとも12ヌクレオチド、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは25ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも40ヌクレオチド、そして、最大、上記コード配列のすべてもしくはほとんどすべてまでのヌクレオチド配列またはそれに相補的な配列を含むポリヌクレオチドプローブを準備する工程;
2)悪性腫瘍を有する患者から組織サンプルを取得する工程、
3)悪性腫瘍をもたない患者からの第2の組織サンプルを準備する工程、
4)上記ポリヌクレオチドプローブを、第1および第2の組織サンプルそれぞれのRNAとストリンジェントな条件下で接触させる(例えば、ノーザンブロットまたはイン・サイチュ・ハイブリダイゼーションアッセイで)工程、および
5)(a)第1の組織サンプルのRNAとの上記プローブのハイブリダイゼーション量と、(b)第2の組織サンプルのRNAとのプローブのハイブリダイゼーションの量とを比較する工程を含み、
この方法では、第1の組織サンプルのRNAとのハイブリダイゼーションの量と、第2の組織サンプルのRNAとのハイブリダイゼーションの量と比較して、統計的な有意の差異がある場合、それは第1の組織サンプルにおいて悪性腫瘍、特に乳癌の存在を示す。
データ分析法
1つ以上の「乳癌遺伝子」の発現レベルと参照発現レベルとの比較、例えば乳癌疾患細胞または正常な対応細胞における発現レベルの比較は、好ましくはコンピューターシステムを使って行なわれる。一実施形態では、2つの細胞で発現レベルを取得し、これら2セットの発現レベルを、比較用のコンピューターシステムに導入する。好ましい実施形態では、1セットの発現レベルは、すでにコンピューターシステム内に存在する値、または後にコンピューターシステムに入力するコンピューター読みとり可能な形態の値と比較するためにコンピューターシステムに入力される。
1つ以上の「乳癌遺伝子」の発現レベルと参照発現レベルとの比較、例えば乳癌疾患細胞または正常な対応細胞における発現レベルの比較は、好ましくはコンピューターシステムを使って行なわれる。一実施形態では、2つの細胞で発現レベルを取得し、これら2セットの発現レベルを、比較用のコンピューターシステムに導入する。好ましい実施形態では、1セットの発現レベルは、すでにコンピューターシステム内に存在する値、または後にコンピューターシステムに入力するコンピューター読みとり可能な形態の値と比較するためにコンピューターシステムに入力される。
一態様では、本発明は、本発明の遺伝子発現プロファイルデータ、または疾患細胞における少なくとも1つの「乳癌遺伝子」の発現レベルに対応する値のコンピューターの読み込み可能な形態を提供する。この値は、実験、例えばマイクロアレイ分析から得られるmRNA発現レベルであり得る。この値はまた、その発現が様々な条件下で多数の細胞において一定である参照遺伝子、例えばGAPDHに関して標準化されたmRNAレベルであり得る。他の実施形態では、コンピューター内にある値が、異なるサンプル間の標準化または非標準化mRNAレベルの比または相違である。
遺伝子発現プロファイルデータは、Excelの表など、表の形態であり得る。データは単独であるか、または例えばより大きなデータベースの一部、例えば他の発現プロファイルを含むものの一部でもよい。例えば、本発明の発現プロファイルデータは、公開データベースの一部でもよい。コンピューター読みとり可能な形態は、コンピューター内に存在できる。別の実施形態では、本発明は、遺伝子発現プロファイルデータを表示するコンピューターを提供する。
一実施形態では、本発明は、第1の細胞、例えば対象の細胞における、1つまたは複数の「乳癌遺伝子」の発現レベルと、第2の細胞における発現レベルとの間の類似性を判定する方法を提供し、この方法は、第一の細胞における1以上の「乳癌遺伝子」の発現レベルを得ること、およびこれらの値をコンピューターに入力することを含むものであって、該コンピューターは、第二の細胞における1以上の「乳癌遺伝子」の発現レベルに対応する値を含んでいる記録を含むデータベースを含み、該コンピューターに保存されているデータとの比較のために1以上の値の選択を受容できるユーザーインターフェースなどのプロセッサインストラクションを含む。該コンピューターは、さらに比較データをダイアグラムまたはチャートまたは他の種類の出力に変換する手段を含むことができる。
別の実施形態では、「乳癌遺伝子」の発現レベルを表す値は、1以上の細胞から得られた参照発現レベルについて1つ以上のデータベースを含むコンピューターシステムに入力される。例えば、コンピューターは、疾患細胞および正常細胞の発現データを含む。命令がコンピュータに与えられ、コンピューターは、入力されたデータが正常細胞または罹患細胞のいずれに類似するかを決定するために、コンピューター内のデータと入力されたデータとを比較することができる。
さらに別の態様において、コンピューターは、異なる段階の乳癌患者の細胞における発現レベルの値を含み、該コンピューターは、保存されているデータと、このコンピューターに入力された発現データを比較することができ、対象の乳癌の段階を判定するなど、コンピューター内の発現プロファイルのどれに、入力されたデータが最も類似しているかを示す結果をもたらす。
さら別の態様において、コンピューターにおける参照発現プロファイルは、1以上の対象の乳癌細胞由来の発現プロファイルであり、その細胞は乳癌の治療のために用いられる薬剤によりイン・ビボまたはイン・ビトロで処置される。薬剤によりイン・ビボまたはイン・ビトロで処置された対象の細胞の発現データを入力すると、該コンピューターは、入力されたデータをコンピューター内のデータと比較するように命令され、コンピューターに入力された発現データが、上記薬物に反応している対象の細胞のデータにより類似しているか、あるいは薬剤に反応していない対象の細胞のデータにより類似しているかを示す結果を提供する。従って、その結果は対象がその薬剤を用いた処置に対して反応する可能性が高いか、あるいはそれに反応する可能性が低いかを示すものである。
一実施形態では、本発明は、1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現データを受容する手段;前記の1つまたは複数の遺伝子それぞれから得られた遺伝子発現データを、一般的な参照フレームと比較する手段;比較の結果を表示する手段とを含むシステムを提供する。このシステムはさらにデータをクラスター化するための手段を含むことができる。
さらに、我々は、サンプルを分ける主要構成要素の同定と、2つの治療結果によって古典的なPCAアルゴリズムを試みた。
さらに別の態様において、本発明は、(i)複数の遺伝子についての入力遺伝子発現データとして受容するコンピューターコードおよび(ii)前記の複数の遺伝子のそれぞれから得られる前記遺伝子発現データを一般的な参照フレームと比較するコンピューターコードを含む遺伝子発現データを分析するためのコンピュータープログラムを提供する。
本発明はまた、次の工程:(i)クエリー細胞における、乳癌に特徴的な1つまたは複数の遺伝子の発現レベルに対応する複数の値を、1つまたは複数の参照細胞の参照発現または発現プロファイルデータおよび細胞型のアノテーションを含む記録を含むデータベースと比較する工程;および(ii)発現プロファイルの類似性に基づいてどの細胞と目的の細胞が最も類似しているかを示す工程を実行するためのプログラムインストラクションを含む機械読み取り可能またはコンピューター読み取り可能な媒体を提供する。参照細胞は、乳癌の異なった段階にある対象から得られた細胞でよい。参照細胞はまた、特定の薬物療法に反応する、または反応しない対象から得られた細胞であって、所望によりその薬剤を用いてイン・ビトロまたはイン・ビボでインキュベートされた細胞であってもよい。
参照細胞は、いくつかの異なった処置に対して反応性または非反応性の対象から得られた細胞でもよく、コンピューターシステムが、その対象に好ましい処置を示す。したがって、本発明は、乳癌罹患患者の治療を選択する方法を提供し、この方法は、(i)患者の疾患細胞における、乳癌に特徴的な1つまたは複数の遺伝子の発現レベルを提供する工程;(ii)それぞれが治療と関連する複数の参照プロファイルを提供する工程、ここで対象の発現プロファイルおよび各参照プロファイルは複数の値を有し、各値は乳癌に特徴的な遺伝子の発現レベルを示す;および(iii)対象の発現プロファイルに最も類似した参照プロファイルを選択し、これにより前記患者のための治療を選択することを含む方法を提供する。好ましい態様において、工程(iii)はコンピューターによって行なわれる。最も類似した参照プロファイルは、対応する発現データに関連する重み値(weight value)を用いて、複数の比較値を重み付けすることによって選択できる。
2つの生物学的サンプルにおけるmRNAの相対量は、摂動(perturbation)およびその測定規模(すなわち、試験されるmRNAの2つの供給源で存在量が異なる)として、あるいは無摂動(すなわち、相対的量が同じである)として記録できる。様々な実施形態で、2つのRNA供給源相互の相違の係数が少なくとも約25(一方の供給源からのRNAが、もう一方の供給源からのRNAより25%多い)、さらに一層頻繁には約2倍(2倍豊富)、3倍(3倍豊富)、または5倍(5倍豊富)になる場合に、その相違を摂動として記録する。摂動を、コンピューターにより計算および発現比較に用いることができる。
好ましくは、摂動を陽性または陰性と判断することに加えて、摂動の大きさを決定することは有利である。これは、前記のように、差次的標識に用いられる2つの蛍光体の発光比を計算することにより、または当業者には容易に理解される類似した方法により、実行することができる。
コンピューター読み取り可能な媒体は、乳癌の病期の記述または乳癌に対する処置の指針をさらに含むことができる。
操作において、本発明のシステムとの関連で、遺伝子発現データを受容する手段、遺伝子発現データを比較する手段、提示するための手段、標準化するための手段、およびクラスター化するための手段は、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェア;コンピュータープログラムによって指示される、本明細書で具体的に特定される操作を行う、プログラムされたコンピューターの論理回路または他の構成要素;または本明細書に記載した特定の様式においてコンピューターを機能させるコンピュータープログラムを表す実行可能な命令でコードされたコンピュータメモリー、において実行される本明細書に記載するそれぞれの機能を備えたプログラムされたコンピューターと関与し得る。
本発明のシステムおよび方法は、MS-DOSまたはMicrosoft Windowsを実行するIBM互換性パーソナルコンピューターを含む様々なシステムに適用できることを当業者は理解するであろう。
コンピューターは、外部構成要素に連結された内部構成要素を有してもよい。内部構成要素は、メインメモリーに相互接続されたプロセッサーエレメントを含んでもよい。コンピューターシステムは、200MHzまたはより大きなクロックレートを有し、32MB以上のメインメモリーを備えたIntel Pentium(登録商標)に基づくプロセッサであり得る。外部構成要素は、大容量記憶装置を含んでもよく、それは1つまた複数のハードディスク(これは、通常プロセッサおよびメモリーと共にパッケージされている)でありうる。このようなハードディスクは、典型的には1GB以上の記憶容量のものである。他の外部構成要素には、入力装置と共にユーザーインタフェース装置が含まれ、ユーザーインタフェース装置はモニターでよく、入力装置は、「マウス」、または他のグラフィック入力装置、および/またはキーボードでよい。印刷装置もコンピューターに取り付けることができる。
通常、コンピューターシステムは、ネットワークリンクにも連結される、それは他のローカルコンピューターシステム、リモートコンピューターシステム、またはインターネットなどの広域通信網ネットワークへのイーサネットリンクの一部であり得る。このネットワークリンクは、他のコンピューターシステムとデータおよびプロセシングタスクを共有するコンピューターシステムを可能にする。
このシステムの操作中にいくつかのソフトウェア構成要素がメモリーにロードされ、これには当該分野で標準的なものも本発明に特別なものもある。これらのソフトウェア構成要素は、集合的にコンピューターシステムを本発明の方法に従って機能させる。これらのソフトウェア構成要素は、通常大容量記憶装置で保存される。ソフトウェア構成要素はオペレーティングシステムを表し、オペレーティングシステムは、コンピューターシステムとそのネットワーク相互接続を管理する役割を有する。このオペレーティングシステムは、Microsoft社のWindowsファミリーの、例えばWindows95、Windows98、またはWindowsNTなどでよい。ソフトウェア構成要素は、本発明に特異的な方法を実施するプログラムを補助する該システム上に好都合に存在する共通言語および機能を表す。多くの高または低レベルのコンピューター言語を、本発明の分析法をプログラムするために用いることができる。インストラクションを実行時間中に解釈するかまたはコンパイルすることができる。好ましい言語には、C/C++、およびJava(登録商標)が含まれる。最も好ましくは、本発明の方法は、使用されるアルゴリズムを含めたプロセシングの高レベルな特異化を可能にする数学的ソフトウェアパッケージにおいてプログラムされ、これにより使用者は手続き個々の方程式またはアルゴリズムをプログラムする必要がなくなる。このようなパッケージには、Mathworksから得られるMatlab(Natick Mass.)、Wolfram Researchから得られるMathematica(Champaign, III)、またはMath Softから得られるS-Plus(Cambrige, Mass)が含まれる。したがって、ソフトウェア構成要素は、手続き型言語または記号パッケージでプログラムされた本発明の分析方法を示す。好ましい実施態様において、コンピューターシステムはまた、乳癌に特徴的な1以上の遺伝子の発現のレベルを表す値を含むデータベースも含んでいる。このデータベースは、異なる細胞における乳癌に特徴的な1以上の遺伝子の発現プロファイルを含んでもよい。
例示的実施態様では、本発明の方法を実施するためには、使用者は最初にコンピューターシステムに発現プロファイルデータをロードする。これらのデータはモニターとキーボードから、またはネットワーク接続によってリンクされた他のコンピューターシステムから、あるいはCD−ROMまたはフロッピーディスクのような取外し可能な記憶装置媒体上に、またはネットワークを通して、直接使用者が入力することができる。次に使用者は、例えば、同時変動する遺伝子グループにクラスタリングして、比較工程を実行する発現プロファイル分析ソフトウェアの実行をもたらす。
別の例示的な実施態様では、米国特許第6203987号に記載の方法を用いて発現プロファイルを比較する。ユーザは、最初に発現プロファイルデータをコンピューターシステムにロードする。プロファイルの定義を、記憶媒体またはリモートコンピューターから、好ましくはダイナミック・ジーンセット・データベースシステム(dynamaic geneset database system)からネットワークを介してメモリーにロードする。次に使用者は、発現プロファイルを予測発現プロファイルに変換する工程を実行する予測ソフトウェアを実行する。その後、予測発現プロファイルが示される。
さらに別の例示的実施態様では、使用者は、最初に記憶装置中に予測プロファイルを導入する。使用者は次いで、記憶装置の中に参照プロファイルをロードする。次に、使用者は客観的にプロファイルを比較する工程を実行する比較ソフトウェアを実行する。
イン・サイチュ・ハイブリダイゼーション
一態様では、本発明の方法は、特定のマーカーポリヌクレオチドから得られるプローブとのイン・サイチュ・ハイブリダイゼーションを含み、該配列は、表1に記載した遺伝子のポリヌクレオチド配列またはこれに相補的な配列から選択される。該方法は、悪性腫瘍、特に乳癌を有する可能性のある患者から得られる特定のタイプの組織、および悪性腫瘍がない個人から得られる正常な組織のサンプルを、標識されたハイブリダイゼーションプローブと接触させ、プローブが正常な組織が標識される程度よりも有意に異なる程度(例えば、係数が少なくとも2、係数が少なくとも5、係数が少なくとも20、または係数が少なくとも50)に患者の組織を標識するかどうかを決定することを含む。イン・サイチュ・ハイブリダイゼーションは、組織中の前記細胞の核にあるDNAに対して行っても、転写活性を染色するために細胞質中のmRNAに対して行ってもよい。
一態様では、本発明の方法は、特定のマーカーポリヌクレオチドから得られるプローブとのイン・サイチュ・ハイブリダイゼーションを含み、該配列は、表1に記載した遺伝子のポリヌクレオチド配列またはこれに相補的な配列から選択される。該方法は、悪性腫瘍、特に乳癌を有する可能性のある患者から得られる特定のタイプの組織、および悪性腫瘍がない個人から得られる正常な組織のサンプルを、標識されたハイブリダイゼーションプローブと接触させ、プローブが正常な組織が標識される程度よりも有意に異なる程度(例えば、係数が少なくとも2、係数が少なくとも5、係数が少なくとも20、または係数が少なくとも50)に患者の組織を標識するかどうかを決定することを含む。イン・サイチュ・ハイブリダイゼーションは、組織中の前記細胞の核にあるDNAに対して行っても、転写活性を染色するために細胞質中のmRNAに対して行ってもよい。
ポリペプチドの検出
本発明はさらに、対象から得られる細胞サンプルが異常な量のマーカーポリペプチドを有するかどうかを決定する方法を提供するものであって、(a)対象から細胞サンプルを得ること、(b)この得られたサンプルにおけるマーカーポリペプチドの量を定量的に決定すること、および(c)このマーカーポリペプチドの量を既知の標準と比較すること、対象から得られる細胞サンプルが異常な量のマーカーポリペプチドを有するかどうかを決定すること、を含む方法を提供する。このようなマーカーポリペプチドは、免疫組織化学的分析、ドット・ブロット分析、ELISAなどにより検出できる。
本発明はさらに、対象から得られる細胞サンプルが異常な量のマーカーポリペプチドを有するかどうかを決定する方法を提供するものであって、(a)対象から細胞サンプルを得ること、(b)この得られたサンプルにおけるマーカーポリペプチドの量を定量的に決定すること、および(c)このマーカーポリペプチドの量を既知の標準と比較すること、対象から得られる細胞サンプルが異常な量のマーカーポリペプチドを有するかどうかを決定すること、を含む方法を提供する。このようなマーカーポリペプチドは、免疫組織化学的分析、ドット・ブロット分析、ELISAなどにより検出できる。
抗体
当技術分野で知られているいかなるタイプの抗体も、「乳癌遺伝子」ポリペプチドのエピトープに特異的に結合するように生成され得る。本明細書において用いられる抗体は、インタクトな免疫グロブリン分子、ならびにその断片、例えばFab、F(ab)2およびFvを含み、これらは「乳癌遺伝子」ポリペプチドのエピトープに結合できる。通暁、少なくとも6、8、10、または12の連続したアミノ酸がエピトープを形成するために必要とされる。しかし、非連続的なアミノ酸を含むエピトープは、より多くのアミノ酸、例えば少なくとも15、25、または50アミノ酸を必要としうる。
当技術分野で知られているいかなるタイプの抗体も、「乳癌遺伝子」ポリペプチドのエピトープに特異的に結合するように生成され得る。本明細書において用いられる抗体は、インタクトな免疫グロブリン分子、ならびにその断片、例えばFab、F(ab)2およびFvを含み、これらは「乳癌遺伝子」ポリペプチドのエピトープに結合できる。通暁、少なくとも6、8、10、または12の連続したアミノ酸がエピトープを形成するために必要とされる。しかし、非連続的なアミノ酸を含むエピトープは、より多くのアミノ酸、例えば少なくとも15、25、または50アミノ酸を必要としうる。
「乳癌遺伝子」ポリペプチドのエピトープと特異的に結合する抗体は、治療的に、治療、ならびにウェスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学アッセイ、免疫沈降反応、または当技術分野で知られている他の免疫化学アッセイなどの免疫化学アッセイに用いることができる。様々なイムノアッセイは、望ましい特異性を有する抗体を同定するために用いることができる。競合的結合またはイムノラジオメトリックアッセイを行うための、多数のプロトコルが当技術分野で周知である。このようなイムノアッセイは、通常、免疫原と、この免疫原に特異的に結合する抗体との間の複合体形成を測定するものである。
通常、「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、免疫化学アッセイで使用した際に、他のタンパク質に関して提供される検出シグナルよりも少なくとも5倍、10倍、または20倍高い検出シグナルを提供する。好ましくは、「乳癌遺伝子」ポリペプチドと特異的に結合する抗体は、免疫化学的アッセイにおいて他のタンパク質を検出せず、溶液から「乳癌遺伝子」ポリペプチドを免疫沈降させ得る。
「乳癌遺伝子」ポリペプチドは、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、またはヒトなどの哺乳類を免疫化して、ポリクローナル抗体を産生させるのに用いることができる。望ましい場合には、「乳癌遺伝子」ポリペプチドは、ウシ血清アルブミン、チログロブリン、およびスカシガイヘモシアニンなどの担体タンパク質に結合できる。宿主種によって、免疫応答を増強するのに種々のアジュバントを用いることができる。このようなアジュバントには、フロイントのアジュバント、ミネラルゲル例えば、水酸化アルミニウム、および界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、スカシガイヘモシアニンおよびジニトロフェノール)が含まれるが、これらに限定されない。ヒトで使用されているアジュバントの中では、BCG (bacilli Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブムは特に有用である。
「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体は、培養中の継代細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技法を用いて調製できる。これらの技法には、ハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法、およびEBVハイブリドーマ技法が含まれるが、これらに限定されない[Kohler et al., 1985, (13)]。
加えて、キメラ抗体の産生のために開発された技術、適切な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得るためのヒト抗体遺伝子に対するマウス抗体遺伝子のスプライシングを用いることができる[Takeda et al., 1985, (14)]。治療的に用いられる場合に、患者が抗体に対して免疫反応を起こすのを防止するために、モノクローナル抗体および他の抗体をヒト化することもできる。このような抗体は、治療において直接使用するためにヒト抗体に対して配列が十分類似している場合、またはいくつかの重要な残基の変化を必要とする場合がある。個々の残基の部位指向性突然変異誘発によるかまたは全体的な相補決性定領域のグレーティング(grating)により、ヒト配列と異なる残基を置換することにより、齧歯類抗体とヒト配列との間の配列の違いを最小限にすることができる。別法として、GB2188638Bにおいて記載されるように、組換え法を用いてヒト化抗体を産生させることもできる。「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、米国特許第5565332号に開示されている通り、部分的または完全にヒト化された抗原結合部位を含有できる。
別法として、当技術分野で知られている方法を用いて、一本鎖抗体の産生に関して記載されている技法を適合させることによって、「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する一本鎖抗体を産生させることができる。関連した特異性を有しているが、別のイディオタイプ組成を有する抗体は、ランダムなコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーからの鎖シャッフリンブによって生成することができる[Burton, 1991, (15)]。
一本鎖抗体はまた、鋳型としてハイブリドーマcDNAを用いて、PCRなどのDNA増幅法を用いて構築することができる[Thirion et al., 1996, (16)]。一本鎖抗体は一重または二重特異性であり、二価または三価であり得る。四価二重特異性一本鎖抗体の構築は、例えば、Coloma & Morrison, (17)に教示されている。二価二重特異性一本鎖抗体の構築は、Mallender & Voss, (18)に教示されている。
一本鎖抗体をコードするヌクレオチド配列は、手動または自動化ヌクレオチド合成を用いて構築し、標準的な組換えDNA法を用いて発現構築体にクローニングし、下記の通り、コード配列を発現する細胞の中に導入することができる。別法として、例えば線維状ファージ技術を用いて、一本鎖抗体を直接産生させることもできる[Verhaar et al., 1995, (19)]。
「乳癌遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、リンパ球集団でイン・イボ産生を誘導することによっても、あるいは文献に開示されている通り、免疫グロブリンライブラリーまたは高特異性結合試薬のパネルをスクリーニングすることによっても産生できる[Orlandi et al., 1989, (20)]。
他のタイプの抗体も構築でき、本発明の方法で治療に使用することができる。例えば、国際公開第93/03151に開示されるようにキメラ抗体を構築することができる。国際公開第94/13804号に記載の抗体など、免疫グロブリンから得られる多価、多重特異性の結合タンパク質も、調製することができる。
本発明の抗体は、当技術分野で周知の方法によって精製することができる。例えば、「乳癌遺伝子」ポリペプチドが結合するカラムに抗体を通すことによって、抗体をアフィニティー精製することができる。結合した抗体は次に高い塩濃度を有する緩衝液を使ってカラムから溶出させることができる。
イムノアッセイは、細胞サンプル中のタンパク質レベルを定量化するのに一般的に使用されており、多くの他の免疫測定法技術が当該分野で知られている。本発明は、特定のアッセイ方法に限定されず、それゆえ同種のおよび異種の両方の方法を含むことを意図される。本発明に従って実施できる免疫学的検定の例には、蛍光偏光免疫測定法(FPIA)、蛍光免疫検定法(FIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、比濁抑制イムノアッセイ(NIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、およびラジオイムノアッセイ(RIA)が含まれる。インジケーター部分または標識基を対象の抗体に結合でき、分析装置および適合性免疫学的検定法の利用可能性により決まることが多い様々な方法の使用の要件にあうように選択される。上述の様々なイムノアッセイを行う際に用いられる一般的技術は当業者には知られている。
特定のサンプル中にある特定のタンパク質、タンパク質断片、または改変タンパク質のレベルを定量化する他の方法は、フローサイトメトリー法に基づいたものである。フローサイトメトリーは、蛍光色素標識されたタンパク質特異抗体を用いて、あるいは、未標識の抗体を蛍光色素標識された2次抗体と組み合わせて、細胞内タンパク質ならびに細胞表面でのタンパク質の同定を可能にする。上述のフローサイトメトリーアッセイを行う際に用いるべき一般技法は当業者に知られている。同じ原則に基づいた特別な方法が、微粒子ベを基にしたフローサイトメトリーである。正確な量の蛍光色素と、特定の抗体で微粒子ビーズを標識する。そのような技法は、Luminex社、国際公開第97/14028号によって提供されている。別の実施形態では、特定のサンプル中にある特定のタンパク質もしくはタンパク質断片、または改変タンパク質のレベルを、2Dゲル電気泳動および/または質量分析によって測定できる。タンパク質の性質、配列、分子質量、および電荷量の決定が、1検出工程で実現できる。MALDI、TOF、またはこれらを組合せて、当業者に知られている方法で、質量分析を行うことができる。
別の実施形態では、患者の生物学的液体(例えば、血液または尿)において、コードされる産物のレベル、すなわち表1に挙げた遺伝子のポリヌクレオチド配列またはそれに相補的な配列のいずれかにコードされる産物のレベルを、その患者の細胞内にあるマーカーポリヌクレオチド配列の発現レベルをモニターすることによって決定することができる。このような方法は、患者から得られる生物学的液体のサンプルを得る工程、上記サンプル(または上記サンプルからのタンパク質)を、コードされるマーカーポリペプチドに特異的な抗体と接触させる工程、抗体による免疫複合体形成の量を決定する工程とを含み、免疫複合体形成の量が、サンプル中のマーカーにコードされる産物のレベルを示す。この決定は、正常な個体から得られるコントロールサンプルまたは同じ個人から事前にまたは後に得た1以上のサンプルにおいて同じ抗体による免疫複合体形成の量と比較する場合、特に有益である。
別の実施形態では、この方法は、細胞中に存在しているマーカーポリペプチドの量を決定するために用いることができ、これは次にプラーク形成などの障害の進行と相関させることができる。マーカーポリペプチドのレベルは、細胞のサンプルが、プラーク関連細胞であるか、またはそのような細胞になりやすい細胞を含むかどうかを予測的に評価するために用いることができる。マーカーポリペプチドレベルの観察は、例えばさらに厳密な治療を使用するかに関する決定に利用できる。
上述の通り、本発明の一態様は、患者から単離された細胞との関連において、マーカーポリペプチドレベルがサンプル細胞で有意に低下しているかどうか決定するための診断アッセイに関する。「有意に低下している」という用語は、類似した組織起源の正常細胞と比較して、上記細胞が保持しているマーカーポリペプチドの細胞量が低下している細胞表現型を意味する。例えば、細胞は、正常なコントロール細胞の約50%未満、25%未満、10%未満、または5%未満のマーカーポリペプチドを有する。特に、上記アッセイは、試験細胞のマーカーポリペプチドのレベルを評価し、好ましくは、測定されたレベルを、少なくとも1種類のコントロール細胞、例えば、正常細胞および/または既知の表現型の形質転換細胞において検出されるマーカーポリペプチドと比較する。
本発明について特に重要なのは、正常または異常なマーカーポリペプチドレベルに関連する細胞の数により決められるマーカーポリペプチドのレベルを定量化する能力である。特定のマーカーポリペプチド表現型を有する細胞の数は、次に患者予後と相関させることができる。本発明の一実施形態では、病変のマーカーポリペプチド表現型は、マーカーポリペプチドのレベルが異常に高いか、あるいは低いことが判明している、生検中の細胞のパーセンテージとして決定される。このような発現は、免疫組織化学アッセイ、ドットブロット分析、およびELISAなどによって検出できる。
免疫組織化学
組織サンプルが使用される場合、そのマーカーポリペプチド発現型を有する細胞の数を定量するために、免疫組織化学染色を用いることができる。このような染色に関して、組織のマルチブロックを生検または他の組織サンプルから取り出し、プロテアーゼKまたはペプシンなどの薬剤を用いてタンパク分解性の加水分解に供する。特定の実施形態では、サンプル細胞から核分画を単離して、核分画中のマーカーポリペプチドのレベルを検出することが望ましい場合もある。
組織サンプルが使用される場合、そのマーカーポリペプチド発現型を有する細胞の数を定量するために、免疫組織化学染色を用いることができる。このような染色に関して、組織のマルチブロックを生検または他の組織サンプルから取り出し、プロテアーゼKまたはペプシンなどの薬剤を用いてタンパク分解性の加水分解に供する。特定の実施形態では、サンプル細胞から核分画を単離して、核分画中のマーカーポリペプチドのレベルを検出することが望ましい場合もある。
組織サンプルは、ホルマリン、グルタルアルデヒド、メタノールなどの試薬で処理することによって固定される。その後、マーカーポリペプチドに対する結合特異性を有する抗体、好ましくはモノクローナル抗体と共に、サンプルをインキュベートする。この抗体は、その後の結合の検出のために標識と結合させることができる。サンプルは、免疫複合体の形成に十分な時間インキュベートする。次に抗体の結合をこの抗体に結合した標識により検出する。抗体が標識されていない場合、標識された第二の抗体、例えば、抗マーカーポリペプチド抗体のアイソタイプに特異的な抗体を利用してもよい。使用される標識の例には、放射性核種、蛍光、化学ルミネセンスおよび酵素が含まれる。
酵素を用いる場合、その酵素の基質をサンプルに添加して、有色または蛍光の産物を生成させることができる。結合体で使用するのに適した酵素の例には、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼなどが含まれる。市販されていない場合には、そのような抗体酵素結合体は、当業者に知られている技法によって容易に作成される。
一実施形態では、このアッセイをドットブロットアッセイとして行う。ドットブロットアッセイは、あらかじめ決められた数の細胞から産生された無細胞抽出物中のマーカーポリペプチドの量を相関させることによって、一つの細胞と関連するマーカーポリペプチドの平均量の決定が可能となるので、組織サンプルが使用される場合に、特別の適用が見出される。
さらに別の態様において、1以上の本発明のマーカーポリペプチドに対して生成される1以上の抗体を使用することを包含し、該ポリペプチドは表1からの遺伝子のポリヌクレオチド配列のいずれかにコードされる。このような抗体のパネルは、乳癌についての信頼できる診断プローブとして使用できる。本発明のアッセイは、細胞、例えばマクロファージを含有する生検サンプルを、1つまたは複数のコードされる産物に対する抗体のパネルと接触させて、マーカーポリペプチドの存在または不在を決定することを含む。
本発明の診断法は、処置の追跡としても用いることができ、例えばマーカーペプチドのレベルの定量は、悪性腫瘍、特に乳癌について現在または以前に用いられた治療の有効性、および患者の予後予測に際してのこれらの治療の効果を示す。
上記診断アッセイは、予後予測法として使用するためにも適合できる。このような用途は、悪性腫瘍の場合にプラーク生成の進行において特徴的なステージで起こる事象に対して本発明のアッセイの感度を利用する。例えば、特定のマーカー遺伝子は、非常に早いステージで、おそらく細胞が泡沫細胞へと進行する前に上方または下方調節される可能性があり、一方、別のマーカー遺伝子は、はるかに後のステージでのみ特徴的に上方または下方調節される可能性がある。このような方法は、試験細胞のmRNAを、悪性腫瘍進行の異なる段階の乳癌組織細胞において異なる特徴的なレベルで発現する所定のポリペプチドに由来するポリヌクレオチドプローブと接触させる工程、および該細胞のmRNAに対するプローブのハイブリダイゼーションの概算量を定量する工程を含み、かかる量は上記細胞内の上記遺伝子の発現レベルに関する指標であり、従って上記細胞の疾患進行のステージに関する指標である;別法として、上記試験細胞のタンパク質と接触した所定のマーカーポリヌクレオチドの遺伝子産物に特異的な抗体を用いてアッセイを実施することができる。一連のそのような試験は、特定の腫瘍性病変の存在を明らかにするだけでなく、臨床医が、その疾患に最も適した処置方法を選択し、処置の成功率を予測できるようにする。
本発明の方法は、所定の乳癌素因の臨床的経過を追跡するためにも用いることもできる。例えば、本発明のアッセイを、患者から得た血液サンプルに適用することができる;乳癌についての患者を処置した後、別の血液サンプルを採取し、試験を繰り返す。処置が成功すると、乳癌組織細胞に特徴的な明らかに異なる発現が除かれ、おそらくは正常なレベルに近づくか、または正常なレベルを越える。
遺伝子発現の加減
別の実施形態では、「乳癌遺伝子」の発現を増強または低下させる試験化合物を同定する。以下に記載する適切な発現試験システム、または細胞システムにおいて、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドを試験化合物と接触させ、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドのRNAまたはポリペプチド産物の発現を決定する。試験化合物の存在下での適当なmRNAまたはポリペプチドの発現のレベルを、試験化合物の非比存在下でのmRNAまたはポリペプチドの発現のレベルと比較する。該試験化合物はこの比較に基づいて発現のモジュレーターとして同定され得る。例えば、mRNAまたはポリペプチドの発現が、試験化合物の存在下で、非存在下より大きい場合には、この試験化合物は、そのmRNAまたはポリペプチドの発現の増強物質として同定される。あるいは、mRNAまたはポリペプチドの発現が、試験化合物の存在下で、非存在下より低い場合には、この試験化合物は、そのmRNAまたはポリペプチドの発現の抑制物質として同定される。
別の実施形態では、「乳癌遺伝子」の発現を増強または低下させる試験化合物を同定する。以下に記載する適切な発現試験システム、または細胞システムにおいて、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドを試験化合物と接触させ、「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドのRNAまたはポリペプチド産物の発現を決定する。試験化合物の存在下での適当なmRNAまたはポリペプチドの発現のレベルを、試験化合物の非比存在下でのmRNAまたはポリペプチドの発現のレベルと比較する。該試験化合物はこの比較に基づいて発現のモジュレーターとして同定され得る。例えば、mRNAまたはポリペプチドの発現が、試験化合物の存在下で、非存在下より大きい場合には、この試験化合物は、そのmRNAまたはポリペプチドの発現の増強物質として同定される。あるいは、mRNAまたはポリペプチドの発現が、試験化合物の存在下で、非存在下より低い場合には、この試験化合物は、そのmRNAまたはポリペプチドの発現の抑制物質として同定される。
細胞における「乳癌遺伝子」mRNAまたはポリペプチドの発現レベルは、当技術分野では既知のmRNAまたはポリペプチドを検出する方法で決定することができる。定性的方法も、定量的方法も使用できる。「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドのポリペプチド産物の存在を、例えば免疫化学法、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット法、免疫組織化学などを含めた当技術分野で知られている様々な技法を用いて測定することができる。別法として、「乳癌遺伝子」ポリペプチド中への標識アミノ酸の組み込みを検出することによって、ポリペプチド合成を、イン・ビボ、細胞培養物中、またはイン・ビトロ翻訳システムにおいて決定することができる。
このようなスクリーニングは、無細胞アッセイまたはインタクトな細胞のいずれかにおいて実施することができる。「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドを発現する任意の細胞を細胞に基づくアッセイシステムにおいて用いることができる。「乳癌遺伝子」ポリヌクレオチドは、細胞内に自然発生するものでも、前記のような技術を用いて導入したものでもよい。初代培養、またはCHOもしくはヒト胚腎臓293細胞などの樹立細胞系のいずれかを使用することができる。
乳癌に関与している遺伝子を同定するための一つの方法は、疾患関連状態と非疾患関連状態または治療反応関連条件の下で差次的に発現する遺伝子を検出することである。以下の小区分で、そのような差次的に発現されている遺伝子をするために用いることができた多くの実験システムについて記述する。一般に、これらの実験システムは、対象またはサンプルが乳癌と関連する方法において処置される少なくとも1つの実験条件、およびそれに加えてこのような疾患に関連する処置を欠くか、またはかかる処置に反応しない少なくとも1つの実験コントロール条件を含む。差次的に発現されている遺伝子は、以下に記述する通り、実験条件と、コントロール条件との間の遺伝子発現パターンを比較することによって検出される。
特定の遺伝子がかかる実験の1つを用いることにより同定されると、別の実験でその発現を研究することによって、その発現パターンはさらに特徴付けることができ、その知見は独立した技術によって実証できる。このような複数の実験の使用は、乳癌およびその処置における特定の遺伝子の役割と相対的重要度とを識別する際に有用でありうる。乳癌患者から得られる細胞における遺伝子発現パターンを、イン・ビトロ細胞培養モデルにおけるパターンと比較する複合的アプローチにより、乳癌の発症および/または進行に関与している経路に関して重要なヒントが得られる。それは、特定の治療薬(例えば化学療法薬)に対する寛容または非感受性の開発におけるかかる遺伝子の役割を解明することもできる。
悪性腫瘍および乳癌に関与する差次的に発現した遺伝子の同定のために利用できる実験の中には、シグナル伝達に関与する遺伝子を分析するために設計された実験もある。そのような実験は、細胞の増殖に関与する遺伝子を同定するのに役立つかもしれない。
以下は、乳癌に関与する遺伝子を同定するために記載された方法である。この代表的な遺伝子は、それらの正常、非乳癌状態または臨床知見に基づいた実験的操作後の発現と比較して、乳癌状態において差次的に発現されている遺伝子を表す。このような差次的に発現する遺伝子は、「標的」および/または「マーカー」遺伝子を表す。このような差次的に発現する遺伝子のさらなる特徴決定のための方法、および標的および/またはマーカー遺伝子としての同定のための方法を以下に記載する。
別法として、差次的に発現する遺伝子は、正常状態と乳癌状態、またはコントロール条件と実験条件下で、制御された、すなわち量的に増大または低下され得る発現を有する。発現が正常と乳癌またはコントロール状態と実験状態において異なる程度は、例えば下記に記載のディファレンシャルディスプレイ技法などの標準的な特徴決定技術により可視化するのに十分な大きさであればよい。発現の差を可視化できる他のこのような標準的特徴決定技術には、当業者に周知のものである定量的RT−PCRおよびノーザン分析が含まれるが、これらに限定されない。
上述の実験に加えて、データの評価および分類、ならびにコントロールサンプルの状況でそれまで分類されていない生物サンプルの反応予測に使用できるアルゴリズムおよび統計的分析を下記に説明する。以下に記載する予測的アルゴリズムおよび方程式は、個々の癌を細分するそれらの能力を既に示している。
実施例1
定量的動的RT−PCRを用いた発現のプロファイリング
定量的PCR法による遺伝子発現の詳細な分析のために、目的とするゲノム領域を挟むプライマーおよびその間にハイブリダイズする蛍光標識プローブを利用する。PE Applied Biosystems(Perkin Elmer, Foster City, CA, USA) のPRISM7700配列検出システムと蛍光リポーター色素およびクエンチャー色素の両方で標識されたオリゴヌクレオチドからなる蛍光原プローブの技術を用いて、このような発現測定を行なうことができる。プローブ特異的産物の増幅はプローブの切断を引き起こし、リポーター蛍光の増加を生み出す。プライマーおよびプローブはPrimer Expressソフトウェアを用いて選択され、主にコード配列の3’領域中または3’非翻訳領域中に局在する。プライマーの設計および適切な領域の選択は、当業者には既知である。表1に挙げた遺伝子に対する所定のプライマーおよびプローブは、供給会社として例えばPE Applied Biosystemsなどから得ることができる。全てのプライマー対を、従来のPCR反応およびゲル電気泳動によって特異性について確認した。GAPDHは分析したサンプルにおいて差次的に制御されていないので、サンプルRNAの量を標準化するためにGAPDHを参照として選択した。生体サンプル中の遺伝子のこのような発現分析を行うために、25μlの100μMストック溶液「上流プライマー」、25μlの100μMストック溶液「下流プライマー」を、12.5μlの100μMストック溶液TaqMan−プローブ(FAM/Tamra)と混合し、蒸留水で500μlに調節することによって、それぞれのプライマー/プローブを調製した(プライマー/プローブミックス)。各反応について、1.25μlの患者サンプルのcDNAを、8.75μlのヌクレアーゼを含まない水と混合し、96ウェルのOptical Reaction Plate(Applied Biosystems Part No.4306737)の1つのウェルに加えた。次いで、1.5μlの上述のプライマー/プローブミックス、12.5μlのTaq Man Universal-PCRミックス(2×)(Applied Biosystems Part No. 4318157) および1μlの水を加えた。96ウェルプレートを、8Caps/Strips (Applied Biosystems Part Number 4323032) で閉じ、3分間遠心分離した。PCR反応の測定は、製造者の指示に従って、Applied Biosystems (No. 20114)のTaqMan 7700を用いて、適切な条件下(50℃で2分間、95℃で10分間、95℃で0.15分間、60℃で1分間;40サイクル)で行った。これまでに未分類の生物学的サンプルを測定する前に、コントロール実験、例えば細胞系、健康なコントロールサンプル、定義された治療応反応のサンプルを用いて実験条件の標準化を行うことができる。
定量的動的RT−PCRを用いた発現のプロファイリング
定量的PCR法による遺伝子発現の詳細な分析のために、目的とするゲノム領域を挟むプライマーおよびその間にハイブリダイズする蛍光標識プローブを利用する。PE Applied Biosystems(Perkin Elmer, Foster City, CA, USA) のPRISM7700配列検出システムと蛍光リポーター色素およびクエンチャー色素の両方で標識されたオリゴヌクレオチドからなる蛍光原プローブの技術を用いて、このような発現測定を行なうことができる。プローブ特異的産物の増幅はプローブの切断を引き起こし、リポーター蛍光の増加を生み出す。プライマーおよびプローブはPrimer Expressソフトウェアを用いて選択され、主にコード配列の3’領域中または3’非翻訳領域中に局在する。プライマーの設計および適切な領域の選択は、当業者には既知である。表1に挙げた遺伝子に対する所定のプライマーおよびプローブは、供給会社として例えばPE Applied Biosystemsなどから得ることができる。全てのプライマー対を、従来のPCR反応およびゲル電気泳動によって特異性について確認した。GAPDHは分析したサンプルにおいて差次的に制御されていないので、サンプルRNAの量を標準化するためにGAPDHを参照として選択した。生体サンプル中の遺伝子のこのような発現分析を行うために、25μlの100μMストック溶液「上流プライマー」、25μlの100μMストック溶液「下流プライマー」を、12.5μlの100μMストック溶液TaqMan−プローブ(FAM/Tamra)と混合し、蒸留水で500μlに調節することによって、それぞれのプライマー/プローブを調製した(プライマー/プローブミックス)。各反応について、1.25μlの患者サンプルのcDNAを、8.75μlのヌクレアーゼを含まない水と混合し、96ウェルのOptical Reaction Plate(Applied Biosystems Part No.4306737)の1つのウェルに加えた。次いで、1.5μlの上述のプライマー/プローブミックス、12.5μlのTaq Man Universal-PCRミックス(2×)(Applied Biosystems Part No. 4318157) および1μlの水を加えた。96ウェルプレートを、8Caps/Strips (Applied Biosystems Part Number 4323032) で閉じ、3分間遠心分離した。PCR反応の測定は、製造者の指示に従って、Applied Biosystems (No. 20114)のTaqMan 7700を用いて、適切な条件下(50℃で2分間、95℃で10分間、95℃で0.15分間、60℃で1分間;40サイクル)で行った。これまでに未分類の生物学的サンプルを測定する前に、コントロール実験、例えば細胞系、健康なコントロールサンプル、定義された治療応反応のサンプルを用いて実験条件の標準化を行うことができる。
TaqMan確認実験を行い、標的およびコントロールの増幅の効率はほぼ等しいことを示したが、このことは当業者に公知の比較ΔΔCT法による遺伝子発現の相対的定量化のために必須条件である。したがって、Applied BiosystemsのソフトウェアSDS2.0をそれぞれの指示書に従って使用することができる。その後、統計ソフトウェアパッケージ(SAS)の適切なソフトウェア(Microsoft ExcelTM)を用いてCT値をさらに分析する。
Perkin Elmerによって提供される上記した技術と共に、RT−PCR反応のリアルタイム検出が可能な、Roche Inc.のLightcyclerTMまたはStratagene Inc.のiCyclerなどの他の技術手段を使用し得る。
表1:差次的発現し、治療の成功を予測し得る84の遺伝子
DNAマイクロアレイを利用した発現プロファイリング
発現プロファイリングは、Affymetrixアレイ技法を用いて実施することができる。mRNAがこのようなDNAアレイまたはDNAチップにハイブリダイゼーションすることによって、アレイの特定の位置におけるシグナル強度による各転写物の発現値を同定することが可能となる。通常、これらのDNAアレイはcDNA、オリゴヌクレオチドまたはサブクローニングしたDNA断片をスポッティングすることによって作製する。Affymetrix技術の場合、約400,000個の個別のオリゴヌクレオチド配列をシリコンウエハーの表面上の個々の位置で合成した。オリゴマーの最小の長さは12個のヌクレオチド、好ましくは25個のヌクレオチドまたは調査中の転写物の完全長である。また、発現プロファイリングは、ナイロンまたはニトロセルロース膜に結合したDNAもしくはオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによっても実施し得る。ハイブリダイゼーションから得られるシグナルの検出は、比色的、蛍光的、電気化学的、電気的、光学的、または放射性の読取りによって得られ得る。アレイの構築体の詳細な説明は上記および引用した他の特許文献中に言及されている。特定の乳癌の標本の遺伝子発現における定量的および定性的変化を決定するためには、あらゆる化学療法前に抽出した腫瘍組織由来のRNAは、互いに個々の間でおよび/または全トランスクリプトームの発現プロファイルに基づいて良性組織(例えば上皮乳房組織、または顕微解剖した乳管組織)から抽出したRNAと比較されなければならない。軽微な変更を行ったが、サンプルの調製方法はAffymetrix GeneChip Expression Analysis Manual (Santa Clara, CA)に従った。腫瘍もしくは良性組織、生検、細胞単離物または体液を含む細胞からの全RNAの抽出および単離はTRIzol (Life Technologies, Rockville, MD)ならびにOligotex mRNA Midi kit (Qiagen, Hilden, Germany)を用いて行うことができ、濃度を1mg/mlにするためにエタノール沈殿工程を実施すべきである。5〜10mgのmRNAを用いて、SuperScript系(Life Technologies)によって二本鎖cDNAを作製する。第一鎖cDNAの合成はT7−(dT24)オリゴヌクレオチドを用いて開始した。フェノール/クロロホルムでcDNAを抽出し、エタノールで1mg/mlの最終濃度まで沈殿させることができる。生じたcDNAから、Enzo(Enzo Diagnostics Inc., Farmingdale, NY)のイン・ビトロの転写キットを用いてcRNAを合成することができる。同じ工程内で、cRNAをビオチンヌクレオチドBio-11-CTPおよびBio-16-UTP (Enzo Diagnostics Inc., Farmingdale, NY)で標識することができる。標識およびクリーンアップ後(Qiagen, Hilden (Germany)、cRNAを適切な断片化緩衝液(例えば、40mMのトリス−酢酸、pH8.1、100mMのKOAc、30mMのMgOAc、94℃で35分間)中で断片化すべきである。Affymetrixプロトコルのように、断片化されたcRNAをそれぞれ約40,000個のプロービングした転写物を含むHG_U133アレイ上で(本明細書中で使用した通り)、24時間、60rpmで、45℃のハイブリダイゼーションオーブン内でハイブリダイズさせるべきである。ハイブリダイゼーション工程の後、チップの表面を洗浄して、Affymetrix fluidics stationsにおいてストレプトアビジンフィコエリスリン(SAPE;Molecular Probes, Eugene, OR)で染色しなければならない。染色を増強するために、第2の標識工程を導入することができ、これは推奨されるが強制的ではない。ここでは、SAPE溶液を2回、抗ストレプトアビジンビオチン標識した抗体と共に加えるべきである。プローブアレイへのハイブリダイゼーションは、蛍光分析スキャン(Hewlett Packard Gene Array Scanner; Hewlett Packard Corporation, Palo Alto, CA)によって検出し得る。
発現プロファイリングは、Affymetrixアレイ技法を用いて実施することができる。mRNAがこのようなDNAアレイまたはDNAチップにハイブリダイゼーションすることによって、アレイの特定の位置におけるシグナル強度による各転写物の発現値を同定することが可能となる。通常、これらのDNAアレイはcDNA、オリゴヌクレオチドまたはサブクローニングしたDNA断片をスポッティングすることによって作製する。Affymetrix技術の場合、約400,000個の個別のオリゴヌクレオチド配列をシリコンウエハーの表面上の個々の位置で合成した。オリゴマーの最小の長さは12個のヌクレオチド、好ましくは25個のヌクレオチドまたは調査中の転写物の完全長である。また、発現プロファイリングは、ナイロンまたはニトロセルロース膜に結合したDNAもしくはオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによっても実施し得る。ハイブリダイゼーションから得られるシグナルの検出は、比色的、蛍光的、電気化学的、電気的、光学的、または放射性の読取りによって得られ得る。アレイの構築体の詳細な説明は上記および引用した他の特許文献中に言及されている。特定の乳癌の標本の遺伝子発現における定量的および定性的変化を決定するためには、あらゆる化学療法前に抽出した腫瘍組織由来のRNAは、互いに個々の間でおよび/または全トランスクリプトームの発現プロファイルに基づいて良性組織(例えば上皮乳房組織、または顕微解剖した乳管組織)から抽出したRNAと比較されなければならない。軽微な変更を行ったが、サンプルの調製方法はAffymetrix GeneChip Expression Analysis Manual (Santa Clara, CA)に従った。腫瘍もしくは良性組織、生検、細胞単離物または体液を含む細胞からの全RNAの抽出および単離はTRIzol (Life Technologies, Rockville, MD)ならびにOligotex mRNA Midi kit (Qiagen, Hilden, Germany)を用いて行うことができ、濃度を1mg/mlにするためにエタノール沈殿工程を実施すべきである。5〜10mgのmRNAを用いて、SuperScript系(Life Technologies)によって二本鎖cDNAを作製する。第一鎖cDNAの合成はT7−(dT24)オリゴヌクレオチドを用いて開始した。フェノール/クロロホルムでcDNAを抽出し、エタノールで1mg/mlの最終濃度まで沈殿させることができる。生じたcDNAから、Enzo(Enzo Diagnostics Inc., Farmingdale, NY)のイン・ビトロの転写キットを用いてcRNAを合成することができる。同じ工程内で、cRNAをビオチンヌクレオチドBio-11-CTPおよびBio-16-UTP (Enzo Diagnostics Inc., Farmingdale, NY)で標識することができる。標識およびクリーンアップ後(Qiagen, Hilden (Germany)、cRNAを適切な断片化緩衝液(例えば、40mMのトリス−酢酸、pH8.1、100mMのKOAc、30mMのMgOAc、94℃で35分間)中で断片化すべきである。Affymetrixプロトコルのように、断片化されたcRNAをそれぞれ約40,000個のプロービングした転写物を含むHG_U133アレイ上で(本明細書中で使用した通り)、24時間、60rpmで、45℃のハイブリダイゼーションオーブン内でハイブリダイズさせるべきである。ハイブリダイゼーション工程の後、チップの表面を洗浄して、Affymetrix fluidics stationsにおいてストレプトアビジンフィコエリスリン(SAPE;Molecular Probes, Eugene, OR)で染色しなければならない。染色を増強するために、第2の標識工程を導入することができ、これは推奨されるが強制的ではない。ここでは、SAPE溶液を2回、抗ストレプトアビジンビオチン標識した抗体と共に加えるべきである。プローブアレイへのハイブリダイゼーションは、蛍光分析スキャン(Hewlett Packard Gene Array Scanner; Hewlett Packard Corporation, Palo Alto, CA)によって検出し得る。
ハイブリダイゼーションおよびスキャンの後、品質管理のためにマイクロアレイ画像を分析することができ、主要なチップの欠陥またはハイブリダイゼーションシグナルの異常を探す。したがって、Affymetrix GeneChip MAS 5.0 ソフトウェアまたは他のマイクロアレイ画像分析ソフトウェアのいずれかを利用することができる。1次データ分析は製造者によって提供されたソフトウェアによって実施するべきである。本発明の実施態様における遺伝子分析の場合には、一次データ分析は、別の生物情報工学的ツールおよび実施例3で説明したさらなる選別条件追加基準によって分析される。
実施例3
発現プロファイリング実験からのデータ分析
Affymetrix測定技法(Affymetrix GeneChip Expression Analysis Manual, Santa Clara, CA)によれば、1つのチップでの1回の遺伝子発現測定により平均差値および絶対コールが得られる。それぞれのチップは、遺伝子またはcDNAクローンにつき16〜20個のオリゴヌクレオチドプローブ対を含む。これらのプローブ対には、完全にマッチした組およびミスマッチの組が含まれ、これらはどちらも、各プローブ対の強度の差の尺度である平均差値、すなわち発現値の計算に必要であり、これはミスマッチの強度を完全マッチの強度から引き算することによって計算される。これは、プローブ対の間におけるハイブリダイゼーションのばらつきおよび蛍光強度に影響を与える可能性がある他のハイブリダイゼーション人工産物を考慮に入れている。差平均は該遺伝子の発現値を表すと思われる数値である。絶対的コールは、「A」(存在しない)、「M」(境界値)、または「P」(存在する)の値をとることができ、1回のハイブリダイゼーションの品質を表す。本発明者らは差平均によって与えられる量的情報と絶対コールによって与えられる質的情報の両方を用いて、正常集団由来の生物学的サンプルに対して乳癌を有する個体由来の生物学的サンプルにおいて差次的に発現する遺伝子を同定した。Affymetrix以外の他のアルゴリズムでは、比較により同じ発現値および発現差を表す様々な数値が得られた。
発現プロファイリング実験からのデータ分析
Affymetrix測定技法(Affymetrix GeneChip Expression Analysis Manual, Santa Clara, CA)によれば、1つのチップでの1回の遺伝子発現測定により平均差値および絶対コールが得られる。それぞれのチップは、遺伝子またはcDNAクローンにつき16〜20個のオリゴヌクレオチドプローブ対を含む。これらのプローブ対には、完全にマッチした組およびミスマッチの組が含まれ、これらはどちらも、各プローブ対の強度の差の尺度である平均差値、すなわち発現値の計算に必要であり、これはミスマッチの強度を完全マッチの強度から引き算することによって計算される。これは、プローブ対の間におけるハイブリダイゼーションのばらつきおよび蛍光強度に影響を与える可能性がある他のハイブリダイゼーション人工産物を考慮に入れている。差平均は該遺伝子の発現値を表すと思われる数値である。絶対的コールは、「A」(存在しない)、「M」(境界値)、または「P」(存在する)の値をとることができ、1回のハイブリダイゼーションの品質を表す。本発明者らは差平均によって与えられる量的情報と絶対コールによって与えられる質的情報の両方を用いて、正常集団由来の生物学的サンプルに対して乳癌を有する個体由来の生物学的サンプルにおいて差次的に発現する遺伝子を同定した。Affymetrix以外の他のアルゴリズムでは、比較により同じ発現値および発現差を表す様々な数値が得られた。
正常な集団と比較した乳癌グループの1つにおける差次的発現Eは次のようにして計算される:乳癌集団におけるn個の平均差分値d1、d2、・・・、dnと正常個体集団におけるm個の平均差分値c1、c2、・・・、cmが与えられると、次式によりコンピューターで計算される:
(式1)
もしiとjの1つ以上の値についてdj<50またはci<50であるならば、これらの特定の値ciおよび/またはdjは「人工の」発現値50に設定される。これらのEの特定の計算によりTaqManの結果を正しく比較できる。
もしiとjの1つ以上の値についてdj<50またはci<50であるならば、これらの特定の値ciおよび/またはdjは「人工の」発現値50に設定される。これらのEの特定の計算によりTaqManの結果を正しく比較できる。
このE≧が表2に示した平均変化因子であり、そして乳癌集団において「P」に等しい絶対コールの数字がn/2以上である場合に、化学療法に対して応答するかまたは応答しない組織中の乳癌において遺伝子は上方調節されているという。表2に示した平均倍数変化因子は、所定の化学療法にもかかわらず遠位転移を進行する腫瘍集団(サンプルグループ1)、最初の治療50ヶ月後にて遠位転移を進行しない腫瘍集団(サンプルグループ3)、または腫瘍のあらゆる病理学的シグナルがない組織(サンプルグループ1)を示す。1を超える倍数変化は、最初に指定された組織サンプル中の遺伝子発現の第二のものと比較した増加することをいう。この制御因子は平均値であり、個別に異なり得る。ここでは、クラスター分析または主成分分析(PCA)について表1に記載した84の遺伝子すべての合わせたプロファイルが、このようなサンプルについての分類グループを示す(84の遺伝子および3つの分類による代表的なPCAについて図1を参照されたい)。PCAによって、分析されたサンプルを区別する主要な構成成分[固有遺伝子(Eigengenes)または固有ベクター(Eigenvectors)]を同定する。
上記したように、E≦は表2に示した最小変化因子であり、かつ乳癌集団において「P」に等しい絶対コールの数値がn/2よりも大きい場合、遺伝子は別のまたは正常な乳房組織に対して、ある乳癌分類において下方調節されているという。1よりも小さい値は、所定の遺伝子の低下した発現を説明するものである。
表2に示した平均倍数変化因子は、腫瘍の存在を暗示するそれらの遺伝子の相対的な上方および下方調節を示すものである。差次的調節された遺伝子の最終的なリストは、乳癌を有する個体由来の生体サンプルに対して正常集団由来の生体サンプルにおけるすべての上方調節された遺伝子およびすべての下方調節された遺伝子からなるか、または個別の応答パターンからなる。最後に、定量的なリアルタイムRT−PCRによって、このリストに記載されている診断上または製薬上の用途に興味深い遺伝子の評価を行った(実施例1参照)。転写物の発現値/挙動の間の良好な相関関係が両方の技術で確認できれば、そのような遺伝子を表1に示す。
データ選別:
原データを、AffymetrixのMicrosuite 5.0 softwareを用いて獲得し、一般的な任意(arbitrary)値に対するあらゆる遺伝子のシグナル強度の平均をスケーリングする標準的な演習後に標準化される。Affymetrix コントロール(ハウスキーピング遺伝子など)に対応する59の遺伝子を分析から除く。唯一の例外は、GAPDHおよびβアクチンに対する遺伝子について為され、この発現レベルは標準化の目的のために使用された。HG-U133A および HG-U133B GeneChipsの間を標準化するために慣習的に使用される100個の遺伝子の発現レベルを分析から除いた。絶対的発現値が低い遺伝子(全実験を通じて発現レベルが30 RLU (TGT=100)を達成しなかった遺伝子)について観察される潜在的にノイズのレベルが高い遺伝子(81個のプローブ対)を、このデータセットから除く。残っている遺伝子を、シグナル強度がそれらのバックグラウンドレベルとの違いが有意でない、即ち全ての実験でAffymetrix MicroSuite 5.0によって「不在」として標識される遺伝子(3196プローブ対)を除去するために前処理した。我々は、サンプルの少なくとも10%に存在しなかった遺伝子(3841プローブ対)を除去した。残っている15006プローブ対に対するデータを、その後統計学的方法によって分析した。
原データを、AffymetrixのMicrosuite 5.0 softwareを用いて獲得し、一般的な任意(arbitrary)値に対するあらゆる遺伝子のシグナル強度の平均をスケーリングする標準的な演習後に標準化される。Affymetrix コントロール(ハウスキーピング遺伝子など)に対応する59の遺伝子を分析から除く。唯一の例外は、GAPDHおよびβアクチンに対する遺伝子について為され、この発現レベルは標準化の目的のために使用された。HG-U133A および HG-U133B GeneChipsの間を標準化するために慣習的に使用される100個の遺伝子の発現レベルを分析から除いた。絶対的発現値が低い遺伝子(全実験を通じて発現レベルが30 RLU (TGT=100)を達成しなかった遺伝子)について観察される潜在的にノイズのレベルが高い遺伝子(81個のプローブ対)を、このデータセットから除く。残っている遺伝子を、シグナル強度がそれらのバックグラウンドレベルとの違いが有意でない、即ち全ての実験でAffymetrix MicroSuite 5.0によって「不在」として標識される遺伝子(3196プローブ対)を除去するために前処理した。我々は、サンプルの少なくとも10%に存在しなかった遺伝子(3841プローブ対)を除去した。残っている15006プローブ対に対するデータを、その後統計学的方法によって分析した。
統計学的分析:
非応答腫瘍サンプルの予測を至適化するために、トレーニングコホート由来のこの分類を使用して、ノンパラメトリック・ウイルコクソンの順位和検定、2サンプルの独立スチューデントt検定、またはウェルチ検定、コルモゴルフ・スミルノフ検定(分散ついて)、および順位和検定(表3を参照されたい)を含むグループ比較に適当な多重統計学的試験を行い得る。表2に記載したとおりに、転移グループ対非転移グループにおける差次的発現および0.05以下の有意レベル(p値)を有する遺伝子を同定できる。ここで、我々は表1に示した84の有意な示差的に調節された遺伝子を同定した。
非応答腫瘍サンプルの予測を至適化するために、トレーニングコホート由来のこの分類を使用して、ノンパラメトリック・ウイルコクソンの順位和検定、2サンプルの独立スチューデントt検定、またはウェルチ検定、コルモゴルフ・スミルノフ検定(分散ついて)、および順位和検定(表3を参照されたい)を含むグループ比較に適当な多重統計学的試験を行い得る。表2に記載したとおりに、転移グループ対非転移グループにおける差次的発現および0.05以下の有意レベル(p値)を有する遺伝子を同定できる。ここで、我々は表1に示した84の有意な示差的に調節された遺伝子を同定した。
さらに、Benjamini-Hochbergなどの多重検定エラーについての訂正を適用してもよいし、ブートストラップまたはジャック・ナイフ・アルゴリズムを用いる順列などの過誤検出(False Discovery Detection)について検定を用いてもよい。
実施例4
50ヶ月以内で遠位転移が進行しない乳癌と比較した、遠位転移が進行する乳癌において差次的に発現した84の遺伝子の統計学的妥当性
実施例3に記載したそれらのアルゴリズムは、その特異的遺伝子発現に従って特定カーネル法(kernel)を行って2分類にサンプルを分類できるが、一方で別の方法を行い、k−NN分類を行うことによって分類構成因子を予測することができる。T. M. CoverおよびP. E. Hartによって提案された最近接近傍法(k−NN)、すなわちノンパラメトリックな分類に対して重要な方法は、非常に簡易であり、かつ有効である。部分的に、その完全な数学理論のため、NN方法は、いくつかの変差を生じさせる。十分に知られているように、非常に多くのサンプルポイントがある場合、密度推定は実際の密度関数に収束する。大規模なサンプルが提供されれば、この分類子はベイズ識別子になる。しかし、実際には小規模なサンプルが提供されるので、ベイズ識別子は通常高次元空間では特定のベイズエラーの推定ができない、これは次元の災害と言われている。従って、k−NN方法は、サンプルスペースが十分に広くなければならないという非常に残念な点を有する。
50ヶ月以内で遠位転移が進行しない乳癌と比較した、遠位転移が進行する乳癌において差次的に発現した84の遺伝子の統計学的妥当性
実施例3に記載したそれらのアルゴリズムは、その特異的遺伝子発現に従って特定カーネル法(kernel)を行って2分類にサンプルを分類できるが、一方で別の方法を行い、k−NN分類を行うことによって分類構成因子を予測することができる。T. M. CoverおよびP. E. Hartによって提案された最近接近傍法(k−NN)、すなわちノンパラメトリックな分類に対して重要な方法は、非常に簡易であり、かつ有効である。部分的に、その完全な数学理論のため、NN方法は、いくつかの変差を生じさせる。十分に知られているように、非常に多くのサンプルポイントがある場合、密度推定は実際の密度関数に収束する。大規模なサンプルが提供されれば、この分類子はベイズ識別子になる。しかし、実際には小規模なサンプルが提供されるので、ベイズ識別子は通常高次元空間では特定のベイズエラーの推定ができない、これは次元の災害と言われている。従って、k−NN方法は、サンプルスペースが十分に広くなければならないという非常に残念な点を有する。
k最近接近傍分類において、トレーニングデータセットは「標的」データセットの各メンバーを分類するために使用される。該データの構成は、所定の分類(カテゴリー化)変数[例えば、「転移性乳癌」(サンプルグループ2)または「非転移性乳癌」(サンプルグループ3)]、および別の多くの予測的変数(遺伝子発現値)である。概して、このアルゴリズムは次の通りである:
1.分類されるべきデータセットにおける各サンプルに対して、トレーニングデータセットのk最近接近傍にある。ユークリッド距離の尺度または相関分析を使用して、トレーニングセットの各メンバーが試験されるべき標的サンプルと、どの程度密接であるかを計算できる。
2.k最近接近傍の検定−それらの大部分のものはこの分類のいずれに属するのか?
3.このカテゴリーを試験されるサンプルに割り当てる。
4.標的セットにおいて残っているサンプルに対して、この方法の工程1〜3を繰り返す。
1.分類されるべきデータセットにおける各サンプルに対して、トレーニングデータセットのk最近接近傍にある。ユークリッド距離の尺度または相関分析を使用して、トレーニングセットの各メンバーが試験されるべき標的サンプルと、どの程度密接であるかを計算できる。
2.k最近接近傍の検定−それらの大部分のものはこの分類のいずれに属するのか?
3.このカテゴリーを試験されるサンプルに割り当てる。
4.標的セットにおいて残っているサンプルに対して、この方法の工程1〜3を繰り返す。
もちろん、この計算時間はkが上がると長くなるが、しかしこの利点は、kに関するより高い値が、トレーニングデータにおけるノイズに対する脆弱性に低下させるスムージングを提供することである。実際の適用において、通常kは100または1000というよりも1〜数10である。この明細書において、我々はk=3を使用した。
考慮されるベクトルおよび距離の尺度が示される場合に、「最近接近傍」が決定される。サンプルの特定数について発現値のトレーニングセット
T={(x1,y1), (x2,y2),・・・・,(xm,ym)}、
を与えて、インプットベクトルxの分類を決定する。
T={(x1,y1), (x2,y2),・・・・,(xm,ym)}、
を与えて、インプットベクトルxの分類を決定する。
最も特別な事例は、k−NN方法であり、k=1(一つの最近接近傍を探索する):
j=argmin//x−xi//、
その後、(x,yj)が解である。
j=argmin//x−xi//、
その後、(x,yj)が解である。
この分類の誤差率に対する推定のために、下記の検討が為され得る:
k−NN方法の誤差率がd%(ここでd%が、独立実験からの実験的誤差率である)である場合に、
トレーニングセット
T={(x1,y1),(x2,y2),・・・,(xm,ym)}
は(k,d%)−安定である。データのクラスター化は非常に確かなものであり(この分類距離は、分類に関する重大な基準である)、従ってkは小さいはずである。d%がより大きな閾値である場合に、最小のkを選ぶことは重要な見解である。
k−NN方法の誤差率がd%(ここでd%が、独立実験からの実験的誤差率である)である場合に、
トレーニングセット
T={(x1,y1),(x2,y2),・・・,(xm,ym)}
は(k,d%)−安定である。データのクラスター化は非常に確かなものであり(この分類距離は、分類に関する重大な基準である)、従ってkは小さいはずである。d%がより大きな閾値である場合に、最小のkを選ぶことは重要な見解である。
このk−NN方法は、最近傍のkの近隣を集めて、それらを選択させる−最も近隣の分類が成功する。理論的には、近接が近ければ近い程、生じる誤差率が小さくなると考えられる。一般的な事例はもう少し複雑である。想像ではあるが、Nが決まっていれば、kが高ければ高い程、PBayes(e)に漸近的に結合する上限が低くなることは事実である。
本発明により表1に示された遺伝子に基づいてサンプルの特定のコホートを、分類および交差確認(cross validate)に使用できる。最も望ましくは、この分類は、表1に示した遺伝子の発現レベルに基づいて行われるが、例えばかかる腫瘍組織のTNM状態または生物化学的特性などのデータを採点して、それらが連続的様式(例えば免疫組織化学データ)で測定される場合に限って臨床病理学データと組み合わることもできる。
k=3および>100の反復法によって、2つの分類「転移性乳癌」(サンプルグループ2)または「非転移性乳癌」(サンプルグループ3)による交差確認実験について下記に図示した分類を得ることができる。親和性は、所定の分類(表4を参照されたい)について−1から1の範囲である。
いくつかのサンプルの誤分類または分類できないサンプルは、標本の腫瘍量が少ないためであるかもしれない。
予測遺伝子セットのモデル作成および交差確認の処理は、図2に概略した経路に従うことができ、ここで所定のサンプルコホートを2つのセット、いわゆるトレーニングセットとテストセットに分ける。かかるトレーニングセットに基づいて、遺伝子を選抜し、予備的モデルを評価し、さらにかかるモデルをテストセットのコホートから採取したサンプルを用いて評価できる。これらの2つの独立したサンプルの分類から、新しく独立した腫瘍サンプルにさらに適用され得る最終モデルとなる(例えば、KNNアルゴリズムおよびマトリクス)。
予測遺伝子セットのモデル作成および交差確認の処理は、図2に概略した経路に従うことができ、ここで所定のサンプルコホートを2つのセット、いわゆるトレーニングセットとテストセットに分ける。かかるトレーニングセットに基づいて、遺伝子を選抜し、予備的モデルを評価し、さらにかかるモデルをテストセットのコホートから採取したサンプルを用いて評価できる。これらの2つの独立したサンプルの分類から、新しく独立した腫瘍サンプルにさらに適用され得る最終モデルとなる(例えば、KNNアルゴリズムおよびマトリクス)。
実施例5:
遺伝子の発現レベルに基づいて化学療法に対する反応について最も正確な予測を得るために、表1に挙げた。非転移性腫瘍の分類(予後良好グループ;サンプルグループ3)と最も高い親和性(例えば、k−NN分類)を有するそれらの個体(腫瘍組織)をまず同定して、段階的な分類モデル(例えば、決定木)を行い得る。非分類腫瘍サンプルがこの分類に属さない限り、表1由来の遺伝子の発現レベルおよびいくつかの確立された臨床学的パラメーター(例えば、ホルモン受容体状態、年齢、TNM分類およびSt. Gallenコンセンサス会議またはNHIコンセンサス会議で確立されたようなリスク基準)をもちいて、第二の分類工程を行うことができる。しかしながら、表1に記載の遺伝子による分類は、再発および/または遠位転移に対する全ての高リスク患者を同定するのに十分である。
遺伝子の発現レベルに基づいて化学療法に対する反応について最も正確な予測を得るために、表1に挙げた。非転移性腫瘍の分類(予後良好グループ;サンプルグループ3)と最も高い親和性(例えば、k−NN分類)を有するそれらの個体(腫瘍組織)をまず同定して、段階的な分類モデル(例えば、決定木)を行い得る。非分類腫瘍サンプルがこの分類に属さない限り、表1由来の遺伝子の発現レベルおよびいくつかの確立された臨床学的パラメーター(例えば、ホルモン受容体状態、年齢、TNM分類およびSt. Gallenコンセンサス会議またはNHIコンセンサス会議で確立されたようなリスク基準)をもちいて、第二の分類工程を行うことができる。しかしながら、表1に記載の遺伝子による分類は、再発および/または遠位転移に対する全ての高リスク患者を同定するのに十分である。
文献
特許文献
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U.S. 5,578,832
U.S. 5,556,752
U.S. 5,631,734
U.S. 5,599,695
U.S. 4,683,195
U.S. 6,203,987
WO 97/29212
WO 97/27317
WO 95/22058
WO 97/02357
WO 94/13804
WO 97/14028
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EP 0 799 897
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EP 0 721 016
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(明細書中に該当箇所なし)
Claims (10)
- 乳癌罹患患者における特定の処置様式の治療の成功を予測するための方法であって、
(i) 表1に挙げたマーカー遺伝子のグループに含まれる、少なくとも6、8、10、15、20、30または84のマーカー遺伝子の発現レベルのパターンを決定する工程、
(ii) (i)で決定した発現レベルのパターンを、1つまたはいくつかの発現レベルの参照パターンと比較する工程、
(iii) 工程(ii)における比較の結果から、該患者における特定の処置様式の治療の成功を予測する工程、
を含む方法。 - 請求項1の方法であって、
該特定の処置様式は、
(i) 細胞増殖に作用する、および/または
(ii) 細胞生存に作用する、および/または
(iii) 細胞運動性に作用する、および/または
(iv) 化学療法剤の投与を含む。 - 特定の処置様式がCMF(シクロフォオスファミド、メトトキサレート、フルオロウラシル)化学療法である、請求項1または2の方法。
- 予測アルゴリズムが使用される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 患者における腫瘍疾患の処置方法であって、
(i) 請求項1〜4のいずれかの方法によって乳癌罹患患者における特定の処置様式のための治療の成功を予測すること、
(ii) 該処置様式が成功すると予測される場合に、該処置様式によって該患者における該腫瘍疾患を処置すること、
を含む方法。 - 腫瘍疾患罹患患者に対する治療様式を選択する方法であって、
下記工程、
(i) 該患者由来の生物学的サンプルを得る工程、
(ii) 該サンプルから、請求項1〜4のいずれかの方法によって、複数の各処置様式について乳癌罹患患者における治療の成功を予測する工程、
(iii) 工程(ii)において成功することが予測される処置様式を選択する工程、
を含む方法。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の方法であって、
発現レベルが、
(i) ハイブリダイゼーションを基にした方法を用いて、または
(ii) アレイプローブを利用するハイブリダイゼーションを基にした方法を用いて、または
(iii) 個々に標識されたプローブを利用するハイブリダイゼーションを基にした方法を用いるか、あるいは
(iv) リアルタイムPCRによって、または
(v) ポリペプチド、タンパク質またはその誘導体の発現を評価することによって、または
(vi) ポリペプチド、タンパク質またはその誘導体の量を評価することによって、
決定される方法。 - 少なくとも6、8、10、15、20、30または84のプライマー対および表1に挙げたマーカー遺伝子のグループに含まれるマーカー遺伝子に適当なプローブを含む、キット。
- 表1に挙げた配列のいずれかと配列相補性を各々有する少なくとも6、8、10、15、20、30または84の個々の標識プローブを含むキット。
- 表1に挙げた配列のいずれかと配列相補性を各々有する少なくとも6、8、10、15、20、30または84のアレイプローブを含むキット。
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