JP2008515388A - マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の診断方法と治療方法およびそのための試薬 - Google Patents

マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の診断方法と治療方法およびそのための試薬 Download PDF

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Abstract

本発明は、動物被験体(例えばヒト)のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症、およびかかる感染症に伴う症状(例えば結核症)のための診断、予後診断および治療用試薬を提供する。より詳細には、本発明は、抗体に基づく診断用途に有用な、「BSX」と命名したマイコバクテリウム・ツベルクローシスの組換えタンパク質(配列番号1)およびその免疫原性エピトープ、例えば配列番号34、25および45を含むものを提供する。本発明はまた、抗原に基づく診断および予後診断検査、ならびに治療およびワクチン製剤に有用なBSXおよびその免疫原性ペプチドに対する抗体を提供する。

Description

発明の分野
本発明は、動物被験体(例えばヒト)のマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)による感染症、およびかかる感染症に伴う症状(例えば結核症)のための新規診断、予後診断および治療用試薬に関する。より詳細には、本発明は、感染症の診断、予後診断および療法、ならびにワクチン開発のための免疫原性試薬(例えば抗原性タンパク質/ペプチドおよび/または抗体)の調製に適当な「BSX」と命名するマイコバクテリウム・ツベルクローシスのタンパク質(配列番号1)およびその免疫原性エピトープの感染被験体における発現の初めての実施可能な開示を提供する。
発明の背景
1.一般的情報
本明細書において用いる「由来」という用語は、特定した物質をある特定の供給源から取得することができるものの、必ずしもその供給源から直接取得しなければならないわけではないことを示すと理解すべきである。
文脈上そうはならないまたは特に断らない限り、単数形の整数、工程またはエレメントとして本明細書に列挙した本発明の整数、工程またはエレメントは、前記列挙した整数、工程またはエレメントの単数形および複数形の両方を明らかに包含する。
あらゆる単一の実施形態に関する、および特にマイコバクテリウム・ツベルクローシスの診断、予後診断もしくは治療法におけるあらゆるタンパク質またはその使用に関する本明細書記載の本発明の実施形態は、本明細書記載の本発明のあらゆる他の実施形態に準用されると理解すべきである。
個々の被験体について本明細書に記載した診断実施形態は、集団、人種集団もしくはサブグループの疫学に、または特定のMHC拘束を有する個体の診断または予後診断に明らかに準用される。かかる本発明のあらゆる変法は、当業者ならば本明細書に記載の内容に基づき容易に導くことができる。
本明細書全体に渡り、特に断らない限り、「含む」という単語、または「含んでなる」もしくは「含まれる」などの変形語は、記載された工程もしくはエレメントもしくは整数または工程もしくはエレメントもしくは整数の一群を包含するものの、あらゆる他の工程もしくはエレメントもしくは整数またはエレメントもしくは整数の一群を除外しないことを意味すると理解される。
本明細書に記載の本発明は、具体的に記載したもの以外の変法および改変を施すことができると当業者は理解するであろう。本発明には全てのかかる変法および改変が包含されると理解すべきである。本発明にはまた、本明細書に引用または記載の全ての工程、構成、組成物および化合物を、個別にまたは包括的に含み、また、あらゆるそして全ての組み合わせのまたは任意の2以上の前記工程または構成を含む。
本発明は本明細書に記載の具体的な実施例にその範囲を限定されるものではない。機能的に等価な産物、組成物、および方法は、本明細書に記載のように明らかに本発明の範囲内にある。
本発明は、特に断らない限り、分子生物学、微生物学、プロテオミクス、ウイルス学、組換えDNA技術、溶液中ペプチド合成、固相ペプチド合成、および免疫学の慣用技術を用いて、過度の実験を行うことなく実施される。かかる手法は、例えば次の教材に記載されており、これらを参照により本明細書に組み入れる。
1. Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, 第2版 (1989),第I, II, およびIII巻の全て;
2. DNA Cloning: A Practical Approach,第IおよびII巻 (D. N. Glover, 編,5 1985), IRL Press, Oxford, テキストの全内容;
3. Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach (M. J. Gait, 編, 1984) IRL Press, Oxford, テキストの全内容、および特にその中のGait, pp1-22; Atkinson ら, pp35-81; Sproat ら, pp 83-115;およびWu ら, pp 135-151による論文;
4. Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach (B. D. Hames & S. J. Higgins, 編, 1985) IRL Press, Oxford, テキストの全内容;
5. Immobilized Cells and Enzymes: A Practical Approach (1986) IRL Press, Oxford, テキストの全内容;
6. Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);
7. Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan, 編, Academic Press, Inc.), 全シリーズ;
8. J.F. Ramalho Ortigao, “The Chemistry of Peptide Synthesis” In: Knowledge database of Access to Virtual Laboratory website (Interactiva, Germany);
9. Sakakibara, D., Teichman, J., Lien, E. Land Fenichel, R.L. (1976). Biochem. Biophys. Res. Commun. 73 336-342
10. Merrifield, R.B. (1963). J. Am. Chem. Soc. 85, 2149-2154.
11. Barany, G. and Merrifield, R.B. (1979) in The Peptides (Gross, E. and Meienhofer, J. 編), 第2巻, pp. 1-284, Academic Press, New York.
12. Wunsch, E., 編 (1974) Synthese von Peptiden in Houben-Weyls Metoden der Organischen Chemie (Muler, E., 編),第15巻, 第4版, 第1および2部, Thieme, Stuttgart.
13. Bodanszky, M. (1984) Principles of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Heidelberg.
14. Bodanszky, M. & Bodanszky, A. (1984) The Practice of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Heidelberg.
15. Bodanszky, M. (1985) Int. J. Peptide Protein Res. 25, 449-474.
16. Handbook of Experimental Immunology, 第I-IV巻 (D. M. Weir and C. C. Blackwell, 編, 1986, Blackwell Scientific Publications).
17. Wilkins M. R., Williams K. L., Appel R. D. and Hochstrasser (編) 1997 Proteome Research: New Frontiers in Functional Genomics Springer, Berlin.
2.関連技術の説明
結核症は、一般にマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染により引き起こされる、慢性で伝染性の疾患である。結核症は発展途上国では大病であり、また世界の先進地域でもますます問題となっており、毎年約800万件の新症例と300万件の死亡例を伴う。感染症はかなりの期間にわたり無症状である場合もあるが、この疾患はほとんどの場合、肺の急性炎症として現れ、発熱と喀痰を伴う咳を引き起こす。未処置のまま放置すると、マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症は、肺の一次感染部位から体のあらゆる臓器へと進行し、一般に深刻な合併症、さらには死をももたらす。
急速に増加する結核症の世界的罹患率および微生物耐性の問題は、医療業界の多数の従事者により頻繁に記載されており、当該分野における当業者に周知である。特に、新しい診断薬、薬物およびワクチンが切望されているという認識が広がりつつある。
マイコバクテリウム・ツベルクローシスが宿主内で持続および増殖する免疫学的機構はほとんど解明されていない。そのため、結核症と宿主との免疫学的関連性に関するどのような新しい情報も、この疾患の診断、治療法および処置を改善するために多くの異なる方法で明らかに使用することができる。
結核症の発生は、後期AIDS 患者に特に一般的であり、その大半は結核症を罹患している。実際、HIV感染は、精製タンパク質誘導体(PPD)-ツベルクリン陽性被験体における活動的結核症発生の最も重要なリスクファクターであり、HIV感染した免疫抑制個体における結核感染の獲得リスクは、HIV感染していない個体と比較して著しく高まりうる。また、HIV-1とマイコバクテリウム・ツベルクローシスとの共感染は、HIV無症状期間の短縮を仲介し、被験体の生存期間を短縮する可能性が高い。これは、ウイルス複製とウイルス負荷の増大を引き起こし、その結果CD4+ T細胞の枯渇および免疫不全または免疫抑制を引き起こすことによるものかもしれない(Corbett ら 2003; Ho, Mem. Inst. Oswaldo Cruz, 91, 385-387, 1996)。
マイコバクテリウム・ツベルクローシスゲノムの配列決定は、論理的には該生物により発現されうるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの潜在的タンパク質を同定するための莫大な研究努力を促進した。しかしながら、配列データだけではin vivoでさえも該生物により特定のタンパク質が発現されていることを結論付けるには不十分であり、ヒトまたは他の動物被験体感染中については不十分であることは言うまでもない。また、マイコバクテリウム・ツベルクローシスゲノムのオープンリーディングフレームの解明は、該細菌によりコードされるまたは実際に発現される任意の特定タンパク質が、診断、予後診断および治療的免疫学的試薬の調製に必要な任意の免疫優性B細胞エピトープまたはT細胞エピトープを含むことを示唆しない。例えば、マイコバクテリウム・ツベルクローシスの特定タンパク質またはそれに由来するペプチド断片が、免疫アッセイフォーマットにおいて診断試薬として有効であるまたはワクチン製造における使用に適していると結論付けるためには、該タンパク質が該細菌の感染サイクル中に発現されること、および宿主生物がB細胞エピトープまたはT細胞エピトープ (例えばCD8+拘束CTLエピトープ)を含む該タンパク質および/またはペプチド断片に対する免疫応答を獲得することを示す必要がある。
マイコバクテリウム・ツベルクローシスを培地で増殖させることができるようになったことから、in vitroで発現される結核タンパク質を同定するための都合のよいモデルが提供された。しかしながら、培養環境は、マイコバクテリウム・ツベルクローシスがin vivoで存在するヒトのマクロファージ、肺または肺外部位の環境とは著しく異なる。最近の証拠は、細胞内寄生体(例えばマイコバクテリウム・ツベルクローシス)のタンパク質発現プロファイルが環境信号に応じて著しく変化し、そのためin vitroでの該生物の発現プロファイルがin situでの該生物の発現プロファイルを正確に反映するとは限らない、ということを示している。
マイコバクテリウム・ツベルクローシス桿菌での感染、または潜伏感染の再活性化は、宿主応答(感染部位への単球およびマクロファージの動員を含む)を誘発する。より多くの免疫細胞が蓄積するにつれて、マクロファージの細胞傷害性産物により破壊された宿主組織および免疫細胞を含む顆粒物の小塊が形成される。疾患が進行するにつれて、マクロファージ酵素はタンパク質、脂質および核酸の加水分解を引き起こし、結果として周辺組織の液化および肉芽種形成が生じる。最終的に病巣は破裂し、桿菌が周辺の肺、血液またはリンパ系に放出される。
この感染サイクル中に桿菌は4種の異なる宿主環境、すなわち肺胞マクロファージ、乾酪性肉芽種、細胞外肺および肺外部位(例えば腎臓または腹膜腔、リンパ液、骨または脊椎) にさらされる。
桿菌は程度が異なってもこれらの環境全てで複製することができると考えられている。しかしながら各部位の環境条件についてはほとんど分かっていない。4種の宿主環境はいずれも異なっており、このことは各環境におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの発現プロファイルが異なるであろうことを示唆する。
従って、対数増殖期培養物由来のマイコバクテリウム・ツベルクローシスタンパク質の同定は、in vivoにおいて各環境でどのタンパク質が発現するかまたは高度に免疫原性であるかを必ずしも示唆しない。同様に、in vitroで増殖させたマクロファージ中のマイコバクテリウム・ツベルクローシスタンパク質の同定は、乾酪性肉芽種、高度含気肺、または低酸素含量の肺外部位におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスのタンパク質発現プロファイルを必ずしも模倣しない。
その上、宿主内のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症は、宿主免疫系が継続的に感染されたマクロファージの破壊により桿菌を封入しようとしかつ破壊しようとする動的事象と見ることができる。その結果、マイコバクテリウム・ツベルクローシス桿菌は、細胞内増殖、破壊(このとき細胞内および分泌型細菌タンパク質の両方が曝露され破壊される)、および急速な細胞外繁殖というサイクルを経る。宿主および病原体相互作用は多くの因子の結果であり、これはin vitroで再現することができない。
従って、本発明以前には、in vivoであらゆる特定環境において、どのマイコバクテリウム・ツベルクローシスタンパク質が、最も高度に発現されるおよび/または高度に免疫学的に活性なもしくは免疫原性のマイコバクテリウム・ツベルクローシスタンパク質であるか明確ではなかった。
マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症および/またはそれに伴う疾患症状を判別するための迅速でコスト効率のよい診断および予後診断試薬が明らかになおも必要とされている。
発明の概要
本発明に至る研究において、本発明者らは、様々なin vivo環境でマイコバクテリウム・ツベルクローシスにより発現されるタンパク質の種類を解明し、そのことにより高度に発現されるおよび/または高度に免疫原性のマイコバクテリウム・ツベルクローシスタンパク質を同定しようとした。
本発明者らは、疾患患者コホートの体液(痰、胸膜液、血漿および血清を含む)中のマイコバクテリウム・ツベルクローシスタンパク質を同定するために、プロテオミック手法を用いた。高度に発現されるマイコバクテリウム・ツベルクローシスタンパク質が、マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染患者コホートのサンプルからin vivoで確認され、このタンパク質はマイコバクテリウム・ツベルクローシスゲノムにコードされると想定されるアミノ酸配列と高い配列同一性を有するものであった。本発明者らにより同定されたタンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む。集団検診では、TB陽性被験体の47%がこのタンパク質に対して抗体反応を生じることが示され、これに対してTB陰性被験体は6%のみが抗体反応を生じたにすぎず、このことはこのタンパク質の存在がTB診断と相互に関連することを示唆する。
配列番号1に記載のアミノ酸配列を「BSX」と命名した。配列解析は、マイコバクテリウム・ツベルクローシスタンパク質BSXの配列が、XREファミリー様タンパク質(すなわち特定の原核生物遺伝子(例えばCro、cl、HipB)の上流領域にあるシス作動性異物応答エレメントに結合する転写調節タンパク質)に存在するヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフを含むことを示した。
本発明者らはさらに配列番号1のアミノ酸配列をカバーする43種の重複する合成ペプチド(すなわち 配列番号2-44)を含むPEPSETを作製することにより、同定タンパク質が地理学的および人種的境界を越えて存在するか否かを決定し、また、その後のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体製造のためのB細胞エピトープを同定した。TB陰性血清およびTB陽性被験体(これにはヒト免疫不全ウイルス(HIV-1および/またはHIV-2)について血清反応陰性または血清反応陽性のTB患者、すなわちHIV+/TB+ およびHIV-/TB+ 被験体も含まれる)由来の血清を、PEPSET中の各ペプチドに対する抗体の存在についてスクリーニングした。これらのペプチドのうちの6種がTB陽性コホートで免疫原性であった。HIV-/TB+ 被験体のわずか25%と比較して、高い割合(80%)のHIV+/TB+ 被験体が、8種(8)のペプチドに対する抗体を保有した。これらのペプチド(配列番号14、20、21、22、24、25、および36)はいずれもコントロール群には出現せず、これらがマイコバクテリウム・ツベルクローシスの潜伏感染または活動的感染の診断指標として、特にHIV感染個体において、有用であることが示された。
さらに本発明者らは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはそのB細胞エピトープに対する抗体が、少なくとも1つの集団では、マイコバクテリウム・ツベルクローシス肺外感染において被験体中に存在することを示した。従って本発明者らは、かかる抗体の検出が、結核診断の適当なアッセイ読み取りであるかを検討した。この事に関して、本発明者らは、配列番号1に記載の配列を含む組換えBSXタンパク質および配列番号24-25内にある免疫優性B細胞エピトープを含むペプチド(例えば配列番号45に記載の配列を含むペプチド)が、抗体に基づく結核用診断検査(複数検体検査も含む)において、その高い感度と特異性故に、有用であることを見出した。BSXタンパク質の完全長配列由来の他のペプチド、例えば配列番号46および47に記載の配列を含むペプチドは、かかる検査において、その高い特異性故に、例えば複数被験体アッセイフォーマットにおいて第2のリガンドとして有用である。
本発明者らはまた、抗体に基づく診断および予後診断アッセイの開発のためのBSX由来ペプチドに対する抗体を作製した。選択したペプチドに対する抗体を発現する形質細胞腫を作製した。これらの細胞腫は、例えば患者サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシスBSXタンパク質のB細胞エピトープに結合しそのことにより該細菌を検出するモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマを作製するために使用することができる。血清中のマイコバクテリウム・ツベルクローシスBSXタンパク質をナノグラム/ml未満またはピコグラム/ml未満のレベルで患者血清から検出することのできる高親和性抗体を選択することを目的として、さらなる抗体も得た。
これらの知見は、被験体中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の検出のための新規診断薬、および感染症またはそれに伴う疾患状態の進行状況のための新規予後診断指標を作製するための手段を提供する。BSXタンパク質またはそのB細胞エピトープが、感染または疾患の初期診断に有用であることは好ましい。本明細書に記載のかかる予後診断指標が、結核症またはそれに伴う感染症のための治療的処置と併用して使用可能であることも、当業者には明らかであろう。
従って、本発明は、単独でBSXを検出することによるまたは複数検体検査の一部としての、被験体中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症検出用の新規診断薬および感染症またはそれに伴う疾患状態の進行状況のための新規予後診断指標を作製するための手段を提供する。BSXタンパク質またはそのB細胞エピトープが、感染症または疾患の初期診断に有用であることは好ましい。本明細書に記載のかかる予後診断指標が、結核症またはそれに伴う感染症のための治療的処置と併用して使用可能であることも、当業者には明らかであろう。
例えば本発明は、マイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープを提供する。
好ましくは、マイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むまたは配列番号1と少なくとも約95%同一なアミノ酸配列を有する。
好ましくは、免疫原性BSXペプチドは合成ペプチドである。好ましくはBSXペプチド、断片もしくはエピトープは、配列番号1に記載の配列の少なくとも約5連続アミノ酸残基、より好ましくは配列番号1に記載の配列の少なくとも約10連続アミノ酸残基、さらに好ましくは配列番号1に記載の配列の少なくとも約15連続アミノ酸残基、ならびに、さらに好ましくはそのN末端および/またはC末端において約1〜5個の追加アミノ酸残基と融合した配列番号1に記載の配列の少なくとも約5連続アミノ酸残基を含む。
特に好ましい実施形態において、BSXペプチド、断片もしくはエピトープは、配列番号2-53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、ならびに好ましくは配列番号14、20、21、22、24、25、36、45、46および47からなる群より選択される配列、ならびにより好ましくは配列番号24、25、45、46および47からなる群より選択される配列、ならびにさらに好ましくは配列番号25および配列番号45からなる群より選択される配列、または前記配列のいずれか1つと少なくとも約95%同一なアミノ酸配列を有する前記配列のいずれか1つの免疫学的交差反応性変異体を含む。
好適な免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープが、配列番号1の約残基65と約残基84との間に位置する少なくとも約5連続アミノ酸残基のアミノ酸配列、より好ましくは配列番号1の約残基65と約残基75との間に位置する少なくとも約5連続アミノ酸残基を含む、ということは本明細書の開示から明らかとなるであろう。さらに好ましくは、好適な免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープは、配列番号1の残基67と残基73との間に位置する少なくとも約5連続アミノ酸残基のアミノ酸配列(これは配列番号45に記載の配列の少なくとも5連続残基に対応する)を含む。これには、長さにして最大約5アミノ酸残基のN末端伸長および/または長さにして最大約5アミノ酸残基のC末端伸長を有するあらゆるペプチドが含まれる。
マイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープが、1以上の標識または検出可能部分を(例えば検出または単離または固定化を容易にするために)有することは、明確に本発明の範囲内に包含される。好ましい標識としては例えば、ビオチン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、FLAGエピトープ、ヘキサ-ヒスチジン、β-ガラクトシダーゼ、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ、ストレプトアビジンまたは金が挙げられる。
本発明はまた、本明細書記載の任意の実施形態における1以上の免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープを含む融合タンパク質を提供する。例えば、BSXタンパク質のN末端およびC末端部分は配列番号46に示されるように融合していてもよい。該配列では、7個のN末端残基と7個のC末端残基とが内部システイン残基を介して融合している。かかる内部架橋残基は任意選択的でありまたは好ましいものであり、融合タンパク質の製造または各使用に必須ではない、と当業者ならば理解するであろう。しかしながら、好ましい融合タンパク質は、免疫原性BSXペプチドと1以上の他のペプチド部分とを隔てるリンカー、例えば、単一アミノ酸残基(例えば、グリシン、システイン、リシン)、ペプチドリンカー(例えば、非免疫原性ペプチド、例えばポリリシンまたはポリグリシン)、最大約6または8または10または12炭素残基を含むポリカーボンリンカー、あるいは化学的リンカーを含みうる。かかるリンカーは、抗体生産またはワクチン製剤化を、例えば、脂質またはハプテンへの連結を可能にすることにより、またはリガンドへの架橋または結合を可能にすることにより促進しうる。融合体としてのタンパク質発現は、その溶解性を増強することもある。
好ましい融合タンパク質は、BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープと融合した、キャリアタンパク質、検出可能標識またはレポーター分子、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、FLAGエピトープ、ヘキサ-ヒスチジン、β-ガラクトシダーゼ、チオレドキシン(TRX) (La Vallie ら, Bio/Technology 11, 187-193, 1993)、マルトース結合タンパク質(MBP)、大腸菌(Escherichia coli)NusAタンパク質(Fayard, E.M.S., Thesis, University of Oklahoma, USA, 1999; Harrison, inNovations 11, 4-7, 2000)、大腸菌BFR (Harrison, inNovations 11, 4-7, 2000)および大腸菌GrpE (Harrison, inNovations 11, 4-7, 2000)を含むであろう。
本発明はまた、本明細書に記載の任意の実施形態の1以上の免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープを含む単離されたタンパク質会合体を提供する。好ましいタンパク質会合体は、タンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープと複合体形成した免疫グロブリン(例えばIgA、IgMまたはIgG)を、例えば循環免疫複合体(CIC)として、含むであろう。典型的タンパク質会合体は、例えば、被験体の抗体含有生物学的サンプル由来でありうる。
本発明はまた、被験体におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスによる過去もしくは現在の感染または潜伏感染を検出するための、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質または本明細書記載の任意の実施形態におけるその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープの使用であって、前記感染を、被験体から得られたサンプル中の抗体と、前記単離または組換え免疫原性BSXタンパク質または免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープとの結合により決定する前記使用を包含する。
本発明はまた、マイコバクテリウム・ツベルクローシスBSXに結合する抗体の産生を誘発するための、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープの使用を包含する。
本発明はまた、マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染から被験体を免疫するための医薬の製造における、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープの使用を包含する。
本発明はまた、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープを、製薬上許容される希釈剤(例えばアジュバント)と組み合わせて含んでなる医薬組成物を提供する。
本発明はまた、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープをコードする単離核酸を、例えば核酸に基づくワクチンの調製のために、またはさもなくば免疫原性ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープの発現のために、提供する。
本発明はまた、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープを発現する細胞を提供する。該細胞は好ましくは、マイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープを、例えばその表面上に、発現する抗原提示細胞(APC)からなる。
本発明はまた、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体にに特異的に結合する単離または組換え抗体または抗体の免疫反応性フラグメントを提供する。好ましい抗体としては、例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体調製物が挙げられる。これはあらゆる単離された抗体産生細胞または抗体産生細胞集団、例えば、BSXタンパク質もしくはBSXタンパク質の免疫原性断片またはBSXタンパク質配列由来の配列を含む他の免疫原性ペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマまたは形質細胞腫にまで及ぶ。
本発明はまた、本明細書記載の任意の実施形態における単離または組換え抗体もしくはその免疫反応性フラグメントの医薬における使用を提供する。
本発明はまた、被験体におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスによる過去のもしくは現在の(すなわち活動性の)感染、または潜伏感染を検出するための本明細書記載の任意の実施形態における単離または組換え抗体もしくはその免疫反応性フラグメントの使用であって、前記感染を、該抗体またはフラグメントと、被験体から得られたサンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシスBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープとの結合により決定する前記使用を提供する。
本発明はまた、マイコバクテリウム・ツベルクローシス細菌もしくはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染細胞を同定するため、または該細菌もしくは該細胞を分類もしくはカウントするための本明細書記載の任意の実施形態における単離または組換え抗体もしくはその免疫反応性フラグメントの使用を提供する。
単離もしくは組換え抗体またはその免疫反応性フラグメントはまた、マイコバクテリウム・ツベルクローシスによる過去もしくは現在の感染または潜伏感染を検出するための治療、診断および研究用途に有用であり、該感染は、該抗体と、被験体由来の生物学的サンプル中に存在するマイコバクテリウム・ツベルクローシスBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープとの結合を測定すること(すなわち、抗原に基づく免疫アッセイ)により決定される。
被験体抗体の他の用途としては、診断/予後診断BSXタンパク質の精製と研究、マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染細胞の同定、またはかかる細胞の分類もしくはカウンティング手段が挙げられる。
抗体およびそのフラグメントはまた、治療(これには予防、診断または予後診断が含まれる)における使用、およびマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の治療用の医薬の製造におけるかかる抗体またはフラグメントの使用に有用である。例えば、BSXタンパク質またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスに、特にin vivoで、結合するまたはそれを中和する、特定のヒト化抗体またはリガンドを作製する。ヒト化抗体またはリガンドは、ヒト被験者におけるTB特異的疾患またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を治療する(例えば活動的なまたは慢性のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を治療する)ための医薬の製造において使用される。
本発明はまた、本明細書に記載の任意の実施形態の単離または組換え抗体、および、製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物を提供する。
本発明はまた、被験者における結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の診断方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプルから、免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに対する抗体を検出することを含み、該サンプル中の前記抗体の存在は感染を示す、前記方法を提供する。関連する実施形態において、サンプル中の前記抗体の存在は感染を示す。感染は過去のもしくは活動的な感染または潜伏感染でありうるが、しかしながらこのアッセイフォーマットは活動的感染および/または最近の感染を検出するのに特に有用である。
例えば、方法は免疫アッセイでありうる。該アッセイは一例として、被験体由来の生物学的サンプルと、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ(例えば、配列番号2〜53のいずれか1つの配列、ならびに好ましくは、配列番号14、20、21、22、24、25、36、45、46および47からなる群より選択される配列、ならびにより好ましくは配列番号24、25、45、46および47からなる群より選択される配列、ならびにさらに好ましくは配列番号25および配列番号45からなる群より選択される配列に記載のアミノ酸配列を含むペプチド、または該配列のいずれか1つと少なくとも約95%同一なアミノ酸配列を有する該配列のいずれか1つの免疫学的交差反応性変異体)とを、抗原抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下で接触させること、およびその後抗原抗体複合体の形成を検出することを含む。サンプルは、抗体含有サンプル、例えば被験体から得られた血液または血清または免疫グロブリン画分を含むサンプルでありうる。サンプルは、循環抗体をBSX抗原性断片との複合体の形態で含有しうる。一般にかかるアッセイフォーマットにおいて抗原抗体複合体は、患者の免疫グロブリン(例えば、抗ヒトIg抗体)に結合可能な抗体を使用して検出する。
このアッセイフォーマットに複数検体検査(これはBSXペプチドを用いて得る診断を確認するために複数の抗原性エピトープを使用するものである)を追加することは本発明の範囲にある。例えば、患者サンプルを、BSXまたは免疫原性BSXペプチドまたは断片もしくはエピトープと、およびマイコバクテリウム・ツベルクローシスグルタミンシンテターゼ(GS)タンパク質(例えば、SwissProt データベース登録番号第O33342番)またはそれ由来の免疫原性ペプチド、例えばGSタンパク質の表面に露出した領域由来のペプチド、または配列RGTDGSAVFADSNGPHGMSSMFRSFC(配列番号54)もしくはWASGYRGLTPASDYNIDYAIC(配列番号55)を有するペプチドと接触させることができる。結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を検出するための免疫原性マイコバクテリウム・ツベルクローシスGSおよびペプチド誘導体はまた、本出願人らの同時係属中の国際特許出願番号第PCT/AU2005/000930号(2005年6月24日に出願)に詳細に説明されており、該出願の開示の全内容を参照により本明細書に組み入れる。第2検体、例えばグルタミンシンテターゼに対する抗体についてのアッセイは、血清からBSXに対する抗体を検出するのと同様に行うと都合がよい。アッセイは同時にまたは異なる時点で、同じまたは異なる患者サンプルを用いて実施することができる。アッセイはまた同じ反応容器で行うこともできるが、これは異なる抗体を検出するために異なる検出系(例えば種々のレポーター分子、例えば色の異なる色素、蛍光プローブ、放射性ヌクレオチドまたは酵素、で標識された抗ヒトIg抗体)を用いる場合に限る。
本明細書に用いる「感染(感染症)」という用語は、微生物による侵食および/もしくは定着ならびに/または微生物の増殖、特に細菌またはウイルスの被験者気道における侵食および/または定着ならびに/または増殖を意味すると理解されたい。かかる感染症は、はっきり見えないことがある、または局所的細胞損傷をもたらすことがある。感染は、局所性、無症状および一時的でありうるか、あるいは拡大して拡散することにより慢性または急性の臨床感染症となりうる。感染症はまた、過去の感染、すなわち残留BSX抗原、あるいは単離されたBSXタンパク質またはペプチドに結合する反応性宿主抗体が宿主内に残っている過去の感染症でありうる。感染はまた潜伏感染でありうるが、この感染では被験者内に微生物は存在するものの、被験者は該生物に伴う疾患の症状を示さない。好ましくは、感染は肺または肺外マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染であり、より好ましくは肺外感染である。「肺」感染症とは、肺の気道の感染症、例えば肺組織、気管支、細気管支、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、または肺胞の感染症を意味する。「肺外」とは肺の外を意味し、これは例えば、腎臓、リンパ液、尿道、骨、皮膚、髄液、腸、腹膜腔、胸膜腔および心膜腔を包含する。
本発明はまた、被験体中の結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の診断方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプルから免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープを検出することを含み、該サンプル中の前記タンパク質または免疫原性断片もしくはエピトープの存在は疾患、疾患進行または感染症を示す、前記方法を提供する。関連する実施形態において、該サンプル中の前記タンパク質または免疫原性断片もしくはエピトープの存在は感染を示す。例えば、この方法は免疫アッセイ(例えば被験体由来の生物学的サンプルと、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに結合可能な1以上の抗体とを接触させること、および抗原抗体複合体の形成を検出することを含む)を含みうる。特に好ましい実施形態において抗体は、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離もしくは組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に特異的に結合する単離または組換え抗体または抗体の免疫反応性フラグメントである。本発明の診断アッセイは、免疫低下しているまたは免疫不全被験者(例えばHIV+被験者)中のTB検出に特に有用である。かかるアッセイを行うために使用するサンプルとしては、例えば (i)脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉、骨およびその混合物からなる群より選択される組織由来の抽出物、(ii) 痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液、ならびに(iii) 痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液由来のサンプルが挙げられる。
本発明はまた、結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を有する被験体の、前記結核症または感染症用治療化合物での治療に対する応答を決定する方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを検出することを含み、該タンパク質または断片もしくはエピトープのレベルが正常または健康被験体中で検出可能なそのタンパク質または断片もしくはエピトープのレベルと比較して増大していることは、該被験体が前記治療に応答していないまたは疾患もしくは感染症を免れていないことを示す、前記方法を提供する。例えば、方法は免疫アッセイ(例えば被験体由来の生物学的サンプルと、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに結合可能な1以上の抗体とを接触させること、および抗原抗体複合体の形成を検出すること)を含みうる。特に好ましい実施形態において、抗体は、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に特異的に結合する単離もしくは組換え抗体または抗体の免疫反応性フラグメントである。本発明の診断アッセイは、免疫低下しているまたは免疫不全被験者(例えばHIV+被験者)中のTB検出に特に有用である。かかるアッセイを実施するために使用するサンプルとしては、例えば (i)脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉、骨およびその混合物からなる群より選択される組織由来の抽出物、(ii) 痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液、ならびに(iii) 痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液由来のサンプルが挙げられる。
本発明はまた、結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を有する被験体の、前記結核症または感染症用治療化合物での治療に対する応答を決定する方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを検出することを含み、該タンパク質または断片もしくはエピトープのレベルが結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を罹患している被験体中で検出可能な該タンパク質または断片もしくはエピトープのレベルよりも低いことは、該被験体が前記治療に応答しているまたは疾患もしくは感染症を免れていることを示す、前記方法を提供する。例えば、方法は免疫アッセイ(例えば被験体由来の生物学的サンプルと、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに結合可能な1以上の抗体とを接触させること、および抗原抗体複合体の形成を検出すること)を含みうる。特に好ましい実施形態において、抗体は、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に特異的に結合する単離もしくは組換え抗体または抗体の免疫反応性フラグメントである。本発明の診断アッセイは、免疫低下しているまたは免疫不全被験者(例えばHIV+被験者)中のTB検出に特に有用である。かかるアッセイを実施するために使用するサンプルとしては、例えば (i)脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉、骨およびその混合物からなる群より選択される組織由来の抽出物、(ii) 痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液、ならびに(iii) 痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液由来のサンプルが挙げられる。
本発明はまた、被験体におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスによる疾患進行、治療応答性または感染状態のモニター方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープのレベルを異なる時点で測定することを含み、該BSXタンパク質、断片もしくはエピトープのレベル変化は被験体における疾患進行、治療応答性または感染状態の変化を示す、前記方法を提供する。好適な実施形態において、この方法は、BSXタンパク質、断片もしくはエピトープのレベルが経時的に増加するときに、結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の治療用化合物を投与することをさらに含む。例えば、方法は免疫アッセイ(例えば被験体由来の生物学的サンプルと、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに結合可能な1以上の抗体とを接触させること、および抗原抗体複合体の形成を検出すること)を含みうる。特に好ましい実施形態において、抗体は、本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に特異的に結合する単離もしくは組換え抗体または抗体の免疫反応性フラグメントである。本発明の診断アッセイは、免疫低下しているまたは免疫不全被験者(例えばHIV+被験者)中のTB検出に特に有用である。かかるアッセイを実施するために使用するサンプルとしては、例えば (i)脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉、骨およびその混合物からなる群より選択される組織由来の抽出物、(ii) 痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液、ならびに(iii) 痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液由来のサンプルが挙げられる。
特に好ましい実施形態においては、循環免疫複合体(CIC)を、抗原に基づくアッセイプラットフォームまたは抗体に基づくアッセイプラットフォームで検出する。抗原に基づくアッセイプラットフォームにおいて、CIC検出は、CICの免疫グロブリン部分を検出すること故に、循環液中の単独抗原の検出に比べて、著しいシグナル増幅をもたらしうる。この実施形態に関連して、捕捉試薬(例えば捕捉抗体)を使用して、被験体の循環液中の単独抗原に加えて、被験体の免疫グロブリンと複合体形成したBSX抗原(BSXポリペプチドまたはその免疫反応性断片もしくはエピトープ)を捕捉する。抗Ig抗体(場合により検出可能標識と結合している)を使用して、捕捉型CICに特異的に結合させ、そのことによりCIC患者サンプルを検出する。抗Ig抗体が、サンプル中のIgM、IgAまたはIgGに優先的に結合することは、本発明に包含される。特に好ましい実施形態において、抗Ig抗体は、ヒトIg、例えばヒトIgA、ヒトIgGまたはヒトIgMに結合する。抗Ig抗体は当技術分野で既知のどのような標準的検出可能標識と結合していてもよい。これは病原性因子(例えば細菌もしくはウイルス)による感染の検出、またはCICに関連するあらゆる疾患または障害の診断に特に有用である。従って、本明細書の任意の実施形態に記載の診断方法は改良するのに適当であり、すなわち該方法を、被験体由来サンプルが、マイコバクテリウム・ツベルクローシスのBSXタンパク質または1以上のその免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープに結合した免疫グロブリン(Ig)を含む1以上の循環免疫複合体を含み、かつ、抗原抗体複合体の形成を検出することが、抗Ig抗体と、該循環免疫複合体の免疫グロブリン部分とを、複合体形成に十分な時間および条件下で接触させること、およびその後結合型抗Ig抗体を検出することを含む方法へと改変することができる。
1以上の先の抗原に基づくアッセイフォーマットに複数検体検査(これは抗BSX抗体を用いて得る診断を確認するために特異性の異なる複数種の抗体を使用し、そのことにより特異性および/または選択性を強化するものである)を追加することも本発明の範囲にある。例えば、患者サンプルを、BSXまたは免疫原性BSXペプチドもしくは断片もしくはエピトープに対する抗体およびマイコバクテリウム・ツベルクローシスグルタミンシンテターゼ(GS)タンパク質(例えばSwissProtデータベース登録番号第O33342番)またはそれ由来の免疫原性ペプチドに対する抗体、例えばGSタンパク質の表面に露出された領域由来のペプチドまたは配列RGTDGSAVFADSNGPHGMSSMFRSFC(配列番号54)もしくはWASGYRGLTPASDYNIDYAIC(配列番号55)を有するペプチドに対して調製した抗体と接触させることができる。免疫原性マイコバクテリウム・ツベルクローシスGSペプチドに対する抗体はまた、本出願人らの同時係属中の国際特許出願番号第PCT/AU2005/000930号(2005年6月24日に出願)に詳細に説明されており、該出願の開示の全内容を参照により本明細書に組み入れる。形成された抗原抗体複合体はその後、各タンパク質検体に結合可能な抗体(例えば抗BSX抗体および抗GS抗体)を用いて、またはCIC検出の場合についてはヒト免疫グロブリンに結合可能な抗体を用いて検出する。アッセイは同時にまたは異なる時点で、同じまたは異なる患者サンプルを用いて実施することができる。アッセイはまた同じ反応容器で行うこともできるが、これは異なる抗原、または異なる抗原を含有するCICを検出するために異なる検出系(例えば種々のレポーター分子、例えば色の異なる色素、蛍光プローブ、放射性ヌクレオチドもしくは酵素など、で標識された抗ヒトIg抗体または区別をつけて標識した抗BSX抗体および抗GS抗体)を用いる場合に限る。本明細書に記載の他の免疫アッセイと同様に、二次抗体は場合により適当な検出可能標識、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはβ-ガラクトシダーゼまたはβ-グルコシダーゼ、コロイド状金粒子などとコンジュゲートしている。かかる標識を、形成された複合体の検出に用いるための標準方法は、当業者に明らかであろう。
本発明はまた、結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の治療方法であって、
(i) 本明細書に記載の任意の実施形態の診断方法を行いそのことにより被験体由来の生物学的サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染の存在を検出すること、および
(ii) 該被験体の肺、血液またはリンパ系中の病原性桿菌数を減少させるために治療上有効量の医薬組成物を投与すること、
を含む前記方法を提供する。
本発明はまた、結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の治療方法であって、
(i) 本明細書に記載の任意の実施形態の診断方法を行いそのことにより第1医薬組成物で治療中の被験体由来の生物学的サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染の存在を検出すること、および
(ii) 被験体の肺、血液またはリンパ系中の病原性桿菌数を減少させるために治療上有効量の第2医薬組成物を投与すること、
を含む前記方法を提供する。
本発明はまた、本明細書に記載の診断方法または予後診断方法を行うことを含む、被験体の結核症の治療方法を提供する。ある実施形態において、本発明は、
(i) 被験体由来の生物学的サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染の存在を検出すること、および
(ii) 被験体の肺、血液またはリンパ系中の病原性桿菌数を減少させるために治療上有効量の医薬組成物を投与すること、
を含む予防方法を提供する。
より詳細には、免疫原性BSXタンパク質または1以上のその免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープは、動物被験体に投与したときに、高力価抗体の特異的産生を誘発する。
従って、本発明はまた、マイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する抗体の産生を誘発する方法であって、免疫原性BSXタンパク質あるいは1以上のその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープを、抗体(例えば、マイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する中和抗体)の産生を誘発するのに十分な時間および条件下で前記被験体に投与すること、を含む前記方法を提供する。
本発明は、ヒトまたは他の動物被験体におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症に対する治療用または予防用サブユニットワクチンの調製における、免疫原性BSXタンパク質あるいは1以上のその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープの使用を明確に包含する。
従って、この発明はまた、免疫原性BSXタンパク質あるいは1以上のその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープを製薬上許容される希釈剤と組み合わせて含んでなるワクチンを提供する。好ましくは、該タンパク質またはそのペプチドもしくは断片もしくはエピトープを、適当なアジュバントと配合する。
あるいはまた、該ペプチドまたはその誘導体もしくは変異体は、その表面に該ペプチドを提示するようにin vitroで処理された、自己抗原もしくは同種抗原提示細胞(APC)または樹状細胞の投与を介する、細胞性ワクチンとして配合する。
核酸、例えば、免疫原性BSXタンパク質あるいは1以上のその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープをコードするDNAまたはRNAを適当なベクター(例えば牛痘、カナリア痘、アデノウイルスまたは他の真核性ウイルスベクター)にクローニングされて有する核酸に基づくワクチンもまた包含される。好ましくは、免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープをコードするDNAをDNAワクチンとして、例えば、現行のカルメット・ゲラン(BCG)または免疫アジュバント、例えば牛痘ウイルス、フロイントのアジュバントまたは別の免疫刺激物質と併用して、製剤化する。
本発明はさらに、被験体(例えば、HIV-1および/またはHIV-2感染被験体)における結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の予防または治療処置(これはヒト被験者における潜伏マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の治療的処置も含む)もしくは診断用の組成物の調製における、免疫原性BSXタンパク質または1以上のその免疫原性BSXペプチドもしくは1以上の免疫原性BSX断片もしくは1以上のエピトープの使用、を提供する。
別の実施形態において、本発明は、以前にHIV-1および/またはHIV-2に対する抗ウイルス療法を施した被験体の結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の予防または治療処置もしくは診断のための組成物の調製における、免疫原性BSXタンパク質または1以上のその免疫原性BSXペプチドもしくは1以上の免疫原性BSX断片もしくは1以上のエピトープの使用を提供する。
本発明はまた、生物学的サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症検出用キットであって、
(i) 本明細書記載の任意の実施形態におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離もしくは組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に特異的に結合する1以上の単離された抗体またはその免疫反応性フラグメント、ならびに
(ii) 抗原抗体複合体の形成を検出する手段、
を含み、使用説明書と一緒に包装されているまたはされていない、前記キットを提供する。
本発明はまた、生物学的サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症検出用キットであって、
(i) 請求項1〜16のいずれか1項に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ、ならびに
(ii) 抗原抗体複合体の形成を検出する手段、
を含み、使用説明書と一緒に包装されているまたはされていない、前記キットを提供する。
本明細書に記載のアッセイは、あらゆるアッセイフォーマットに適しており、特に固相ELISA、フロースルー免疫アッセイフォーマット、キャピラリーフォーマット、および免疫原性タンパク質、ペプチド、断片およびエピトープならびにCICの精製または単離に適している。
従って本発明はまた、本明細書に記載のいずれか1つの実施形態における単離または組換えBSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体を吸着させた固体マトリックスを提供する。例えば、固体マトリックスは膜、例えばナイロンまたはニトロセルロースを含みうる。あるいは、固体マトリックスはポリスチレン製またはポリカーボネート製マイクロウェルプレートまたはその一部(例えばマイクロタイタープレートの1以上のウェル)、ディップスティック、ガラス製支持体、またはクロマトグラフィー用樹脂を含みうる。
別の実施形態において本発明はまた、本明細書記載の任意の実施形態における単離もしくは組換えBSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に結合する抗体を吸着させた固体マトリックスを提供する。例えば、固体マトリックスは膜、例えばナイロンまたはニトロセルロースを含みうる。あるいは、固体マトリックスはポリスチレン製またはポリカーボネート製マイクロウェルプレートまたはその一部(例えばマイクロタイタープレートの1以上のウェル)、ディップスティック、ガラス製支持体、またはクロマトグラフィー用樹脂を含みうる。
かかる固体マトリックスが、本明細書に記載のアッセイを実施するために必要なさらなる抗原および/または抗体を含むことは明らかに本発明の範囲内にあり、これは特に複数種の抗原または複数種の抗体を用いる複数検体検査においてそうである。
好ましい実施形態の詳細な説明
単離または組換えBSXタンパク質ならびにその免疫原性断片およびエピトープ
本発明のある態様は、単離または組換えBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを提供する。
本発明のこの態様は、本明細書で言及したあらゆるBSXタンパク質由来の合成もしくは組換えペプチドを包含し、これには完全長BSXタンパク質、および/またはBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープの誘導体またはアナログが含まれる。
本明細書において用いる「BSX」という用語は、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する、あらゆるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を意味すると理解すべきである。好ましくは、BSXタンパク質と配列番号1の同一性パーセンテージは、少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは少なくとも約95%およびさらに好ましくは少なくとも約99%である。本発明は、例証したマイコバクテリウム・ツベルクローシスBSXタンパク質の使用に限定されるものではない。なぜならば、当業者に明らかなように、例証したマイコバクテリウム・ツベルクローシスBSXタンパク質の領域と配列同一性および免疫学的同等性を有するタンパク質の断片を過度の実験なしに特定することができるからである。
2種のアミノ酸配列が上記の所定同一性パーセンテージ範囲内に収まるか否かを決定するためには、アミノ酸配列の並列比較を行うことができる、と当業者ならば気が付くであろう。かかる比較またはアライメントにおいて、当該アライメントを実行するために用いるアルゴリズムに応じて同一ではない残基の位置決めに差異が生じる。本明細書の文脈において、2以上のアミノ酸配列間の同一性および類似性パーセンテージとは、当業者に既知の任意の標準的アルゴリズムを用いて決定する前記配列同士の同一および類似残基の数をそれぞれ言うと理解すべきである。特に、アミノ酸同一性および類似性は、the Computer Genetics Group, Inc., University Research Park, Maddison, Wisconsin, United States of Americaのソフトウェアを使用して計算し、例えばNeedleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 443-453, 1970のアルゴリズムを利用するDevereaux ら, Nucl. Acids Res. 12, 387-395, 1984のGAPプログラムを用いて計算する。あるいは、アライメント中の同一/類似残基の数を最大化し、かつ配列ギャップの数および/または長さを最小化することが必要または望ましいときにはThompson ら, Nucl. Acids Res. 22, 4673-4680, 1994のCLUSTAL Wアルゴリズムを用いて複数の配列のアライメントを取得する。アミノ酸配列アライメントはまた、種々の他の市販の配列解析プログラム、例えば、NCBIから入手可能なBLASTプログラムを用いて実行することができる。
特に好適な断片としては、エピトープ、特にB細胞エピトープまたはT細胞エピトープを有するエピトープが挙げられる。
B細胞エピトープは、免疫原性BSXタンパク質のアミノ酸配列から都合良く誘導される。それに対する免疫応答の望まれるイディオタイプ型および抗イディオタイプ型B細胞エピトープは特別に本発明に包含され、同様に脂質修飾B細胞エピトープまたはグループBタンパク質も特別に本発明に包含される。好適なB細胞エピトープは、哺乳動物に投与したときに、抗体、好ましくはマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する中和抗体、およびより好ましくは高力価中和抗体の産生を誘発する能力を有する。ペプチド合成を容易にするためには短いB細胞エピトープが好ましい。好ましくはB細胞エピトープの長さは長さにして約30アミノ酸を超えない。より好ましくは、B細胞エピトープ配列は、完全長グループBタンパク質の配列由来の約25アミノ酸残基以下、およびより好ましくは20アミノ酸残基未満、およびさらに好ましくは長さにして約5〜20アミノ酸残基からなる。
CTLエピトープもまたBSXタンパク質の完全長アミノ酸配列から都合良く誘導され、これは一般に前記BSXタンパク質の少なくとも約9連続アミノ酸からなり、かつMHCクラスIアレルと有意のレベルで相互作用するアミノ酸配列を有し、相互作用は例えばMHCクラスI結合エピトープを決定する予測アルゴリズム(例えばthe University of Tuebingen, GermanyのSYFPEITHIアルゴリズムまたはthe BioInformatics and Molecular Analysis Section (BIMAS) of the National Institutes of Health of the Government of the United States of AmericaのHLA Peptide Binding Predictionsプログラムのアルゴリズム)を用いて決定する。より好ましくは、CTLエピトープは、抗原提示細胞(APC)の表面上でMHCクラスI分子を結合および/または安定化するアミノ酸配列を有する。さらに好ましくは、CTLエピトープは、記憶CTL応答を誘発する、またはT細胞(例えばCD8+ T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL))によるIFN-γ発現を誘発する配列を有する。さらに好ましくは、CTLは、標準細胞傷害性アッセイにおいてCTL活性を刺激する配列を有する。BSXタンパク質の特に好適なCTLエピトープは、ヒト細胞または組織中でマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する細胞性免疫応答を誘発することができるが、これは例えばマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染ヒト細胞を認識することおよび溶解させることによるものであり、そのことによりマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する細胞性免疫を提供または増強する。
適当な断片は、長さにして少なくとも約5、例えば10、12、15または20アミノ酸である。断片はまた、長さにして200、100または50アミノ酸未満でありうる。
好ましくは、BSXの免疫原性断片またはエピトープは、配列番号2〜53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、ならびに好ましくは、MRQLAERSGVSNPYL(配列番号14)、ERGLRKPSADVLSQI(配列番号20)、LRKPSADVLSQIAKA(配列番号21)、PSADVLSQIAKALRV(配列番号22)、SQIAKALRVSAEVLY(配列番号24)、AKALRVSAEVLYVRA (配列番号25)、VRAGILEPSETSQVR(配列番号29)、TAITERQKQILLDIY(配列番号36)、SQIAKALRVSAEVLYVRAC(配列番号45)、MSSEEKLCDPTPTDD(配列番号46)およびVRAGILEPSETSQVRC(配列番号47)からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するその免疫原性断片またはエピトープを有する。
より好ましくは、マイコバクテリウム・ツベルクローシスのBSXタンパク質の免疫原性断片は、SQIAKALRVSAEVLY(配列番号24)、AKALRVSAEVLYVRA (配列番号25)、SQIAKALRVSAEVLYVRAC(配列番号45)、MSSEEKLCDPTPTDD(配列番号46)およびVRAGILEPSETSQVRC(配列番号47)からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびにさらに好ましくはSQIAKALRVSAEVLY(配列番号24)、AKALRVSAEVLYVRA (配列番号25)、およびSQIAKALRVSAEVLYVRAC(配列番号45)からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。
BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープのアミノ酸配列は、その免疫機能に悪影響を及ぼすことなく当業者に周知の方法により特定の目的のために改変することができる。例えば、特定ペプチド残基を誘導化または化学修飾することにより、免疫応答を強化する、または該ペプチドと他の物質(特に脂質)とのカップリングを可能にすることができる。ペプチドの全体構造もしくは抗原性を乱すことなく、該ペプチド内の特定アミノ酸を変更することも可能である。かかる変更は従って「保存的」変更と呼ばれ、その残基の親水性または極性に依存する傾向がある。アミノ酸側鎖の大きさおよび/または電荷も、どういった置換が保存的であるかを判別するための関連要因である。
本発明は、1以上の免疫原性BSXペプチドの共有結合型融合体を明確に包含し、これには1種のペプチドのホモダイマー、ホモトリマー、ホモテトラマーまたはより高次のホモ多量体、または2種以上の異なる免疫原性ペプチドを有するヘテロダイマー、ヘテロトリマー、ヘテロテトラマーもしくはより高次のヘテロ多量体が含まれる。
本発明はまた、1以上の免疫原性BSXペプチドの非共有結合型会合体、例えばイオン性相互作用、静力学的相互作用および当技術分野で周知のまたは本明細書に記載の他の相互作用により一緒に維持される非共有結合型会合体を包含する。
生物学的機能等価タンパク質の定義には、分子内の所定部分において変更がなされ、なおも許容可能なレベルの等価生物学的活性を有する分子を生じる変更の数には限りがある、という考えが含まれることは当業者に周知である。このことから本明細書において生物学的機能等価タンパク質は、特定アミノ酸が置換されているタンパク質と定義される。特定の実施形態は、ペプチドのアミノ酸配列中に1、2、3、4、5またはそれより多い変更を有する変異体を包含する。もちろん、異なる置換を有する複数の異なるタンパク質/ペプチドが、本発明に従って容易に作製可能でありかつ使用可能である。
当業者は次の置換が可能な保存的置換であることを周知している: (i)アルギニン、リシンおよびヒスチジンに関する置換、(ii)アラニン、グリシンおよびセリンに関する置換、ならびに(iii)フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンに関する置換。かかる保存的置換を内包する誘導体を本明細書において生物学的または免疫学的機能等価物と定義する。
タンパク質に相互作用性生物学的機能を付与する疎水親水アミノ酸指数の重要性は、当技術分野で広く知られている(Kyte & Doolittle, J. Mol. Biol. 157, 105-132, 1982)。特定アミノ酸を疎水親水指数またはスコアの類似するアミノ酸と置換し、なおも類似の生物学的活性を保持することができることが知られている。機能的等価分子を生じる保存的置換を決定する際に、アミノ酸の疎水親水指数を考慮してもよい。各アミノ酸には、その疎水性および荷電特性に基づき、次のような疎水親水指数が割り当てられている:イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、トレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸(-3.5)、アスパラギン(-3.5)、リシン(-3.9)、およびアルギニン(-4.5)。疎水親水指数に基づき変更を行う場合、疎水親水指数が+/- 0.2未満のアミノ酸置換が好ましい。より好ましくは、置換は、+/- 0.1未満およびより好ましくは約+/- 0.05未満の疎水親水指数のアミノ酸に関する。
類似アミノ酸の置換は親水性に基づいて効果的に成され、特にそのことにより創作される生物学的機能等価タンパク質またはペプチドの免疫学的実施形態における使用が意図される(本発明がそうである)場合に効果的であることも当技術分野では知られている(米国特許第4,554,101号)。実際に、タンパク質の最大局所平均親水性はその隣接アミノ酸の親水性により支配され、その免疫原性および抗原性と相関する。米国特許第4,554,101号に詳細に記載されているように、次の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0 +/- 0.1)、グルタミン酸(+3.0 +/- 0.1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、トレオニン(-0.4)、プロリン(-0.5 +/- 0.1)、アラニン(-0.5)、ヒスチジン(-0.5)、システイン(-1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン (-1.5)、ロイシン (-1.8)、イソロイシン(-1.8)、チロシン(-2.3)、フェニルアラニン(-2.5)、トリプトファン(-3.4)。類似する親水性値に基づく変更を行うにあたり、互いに約+/- 0.2未満、より好ましくは約+/- 0.1未満、およびさらに好ましくは約+/- 0.05未満の親水性値を有するアミノ酸を置換することが好ましい。
エピトープを有するBSXポリペプチドまたはそのペプチド断片は、標準技術(例えばMerrifield合成法(Merrifield, J Am Chem Soc, 85,:2149-2154, 1963)およびその技術の無数の利用可能な改良)を用いて容易に合成される(例えばSynthetic Peptides: A User's Guide, Grant,編 (1992) W.H. Freeman & Co., New York, pp. 382; Jones (1994) The Chemical Synthesis of Peptides, Clarendon Press, Oxford, pp. 230.); Barany, G. and Merrifield, R.B. (1979) in The Peptides (Gross, E. and Meienhofer, J. 編), 第2巻, pp. 1-284, Academic Press, New York; Wunsch, E.,編 (1974) Synthese von Peptiden in Houben-Weyls Metoden der Organischen Chemie (Muler, E., 編),第15巻, 第4版, 第1および2部, Thieme, Stuttgart; Bodanszky, M. (1984) Principles of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Heidelberg; Bodanszky, M. & Bodanszky, A. (1984) The Practice of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Heidelberg; Bodanszky, M. (1985) Int. J. Peptide Protein Res. 25, 449-474.d/を参照のこと)。
当技術分野で周知のように、完全長BSXタンパク質由来の断片またはB細胞エピトープの配列に、追加の親水性N末端および/またはC末端アミノ酸を付加することにより、合成ペプチドを製造することができる。これは例えば合成を促進するためまたはペプチド溶解性を向上させるためである。この目的のためにはグリシンおよび/またはセリン残基が特に好ましい。本明細書に例示するように、配列番号2〜44に記載の各ペプチドは、BSX断片に隣接する付加されたスペーサー配列を有し、前記スペーサーはグリシンおよびセリンを含んでなるヘテロポリマー(トリマーまたはテトラマー)を有する。
本発明のペプチドは、診断目的のために容易に修飾され、該修飾は例えば、天然または合成ハプテン、抗生物質、ホルモン、ステロイド、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、酵素、酵素基質、酵素阻害剤、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ポリエチレングリコール、ペプチド性ポリペプチド部分(例えばタフトシン、ポリリシン)、蛍光マーカー(例えばFITC、RITC、ダンシル、ルミノールまたはクマリン)、生体発光マーカー、スピン標識、アルカロイド、生体アミン、ビタミン、毒素(例えばジゴキシン、ファロイジン、アマニチン、テトロドキシン)、あるいは複合体形成物質の付加による。
別の実施形態においては、BSXタンパク質を組換えタンパク質として産生する。
組換え手法によりタンパク質を発現させるためには、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、無細胞系または細胞系での発現を調節することのできるプロモーターまたは他の調節配列と機能的に連結するように配置する。本発明のある実施形態においては、適当なプロモーター配列に機能的に連結されたBSXタンパク質またはそのエピトープをコードする配列を含む核酸を、適当な細胞中で発現がもたらされるために十分な時間および条件下で発現させる。BSXタンパク質をコードする核酸は、公に入手可能なアミノ酸配列から容易に導かれる。
別の実施形態においては、BSXタンパク質を組換え融合タンパク質として産生するが、これは例えば抽出および精製を助けるためである。融合ポリペプチドを産生するためには、オープンリーディングフレームを同じ読み枠内に共有結合するように連結させ(これには例えば、Ausubel ら (Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, ISBN 047150338, 1992)に記載のような標準クローニング手法を用いる)、その後プロモーターの制御下で発現させる。融合タンパク質パートナーの例としては、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、FLAG (Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys)、ヘキサ-ヒスチジン、GAL4 (DNA結合ドメインおよび/または転写活性化ドメイン)ならびにβ-ガラクトシダーゼが挙げられる。融合タンパク質配列を除去できるように、融合タンパク質パートナーと対象タンパク質配列の間にタンパク質分解切断部位を追加することも都合がよい場合がある。好ましくは融合タンパク質はBSXタンパク質の免疫機能を損なうものではない。
本明細書において「プロモーター」と言うとき、それは最も広範なその意味に理解すべきであり、これには、正確な転写開始に必要なTATAボックスを有し、CCAATボックス配列ならびに発達および/もしくは外部刺激に応答して、または組織特異的様式で遺伝子発現を変更する追加の調節エレメント(すなわち上流活性化配列、エンハンサーおよびサイレンサー)を伴うまたは伴わない、古典的ゲノム遺伝子の転写調節配列が含まれる。本文脈において、「プロモーター」という用語はまた、それが機能的に連結されておりかつ該ポリペプチドまたはペプチド断片をコードする核酸分子の発現を付与する、活性化する、または促進する組換え、合成、または融合分子もしくは誘導体を表すのに用いられる。好適なプロモーターは、前記核酸分子の発現をさらに促進するためならびに/または空間的発現を変更するおよび/もしくは時間的発現を変更するために、追加の1以上のコピーの特定の調節エレメントを含有してもよい。
核酸分子を、プロモーター配列の調節制御下に配置すること、すなわち「機能的に連結すること」は、該プロモーター配列により発現が制御されるように前記分子を配置することを意味する。プロモーターは一般にそれが制御するコード配列の5'側(上流)に配置される。
大腸菌のような細菌中で原型を保ったポリペプチドやペプチドを産生させるための必要条件は、効果的なリボソーム結合部位を有する強力なプロモーターを使用することである。大腸菌のような細菌細胞中での発現に適した典型的なプロモーターは、限定するものではないが、laczプロモーター、温度感受性λL もしくはλR プロモーター、T7プロモーターまたはIPTG誘導tacプロモーターが挙げられる。大腸菌中で本発明の核酸分子を発現させるための多数の他のベクター系が当技術分野で周知であり、例えば、Ausubel ら (Current Protocols in Molecular Biology. Wiley Interscience, ISBN 047150338, 1987中)またはSambrook ら (Molecular cloning, A laboratory manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989中)に記載されている。効率的リボソーム結合部位を有しかつ細菌中での発現のための適当なプロモーター配列を有する多数のプラスミドが記載されており、例えばpKC30 (λL: Shimatake and Rosenberg, Nature 292, 128, 1981)、pKK173-3 (tac: Amann and Brosius, Gene 40, 183, 1985)、pET-3 (T7: Studier and Moffat, J. Mol. Biol. 189, 113, 1986)、アラビノース誘導性プロモーターを含有するpBAD/TOPOもしくはpBAD/Thio-TOPO系列のベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA) (後者は発現タンパク質の溶解性を向上するためにチオレドキシンとの融合タンパク質を産生するようにさらに設計されている)、pFLEX系列の発現ベクター (Pfizer Inc., CT, USA)、またはpQE系列の発現ベクター (Qiagen, CA)などがある。
真核細胞のウイルスおよび真核細胞中での発現に適当な典型的プロモーターとしては、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーターおよびサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、CMV IE (サイトメガロウイルス前初期)プロモーターなどが挙げられる。哺乳動物細胞(例えば293, COS, CHO, 10T細胞、293T 細胞)中での発現に好適なベクターとしては、限定するものではないが、Invitrogenにより提供されるpcDNAベクター一式、特にCMVプロモーターを有しかつC末端6xHisおよびMYCタグをコードするpcDNA 3.1 myc-His-tag、ならびにレトロウイルスベクターpSRαtkneo (Muller ら, Mol. Cell. Biol., 11, 1785, 1991)が挙げられる。ベクターpcDNA 3.1 myc-His (Invitrogen)は、293T 細胞中でBSXタンパク質またはその誘導体を分泌型として発現するために特に好ましく、このとき、発現ペプチドまたはタンパク質は、ニッケルカラムを利用する標準的親和性技術を用いてHisタグを介して該タンパク質を結合することにより、同種タンパク質を含まないように精製することができる。
本発明の診断用タンパク質またはその免疫学的誘導体(例えばエピトープまたは他の断片)を発現するのに適当な多種のさらなる宿主/ベクター系は、公に入手可能であり、また、例えばSambrook ら (Molecular cloning, A laboratory manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989中)に記載されている。
単離核酸分子またはそれを含む遺伝子構築物を発現させるために細胞に導入するための手段は、当業者に周知である。所定の生物に使用する技術は既存の成功した技術によって決める。動物細胞内に組換えDNAを導入する手段としては、マイクロインジェクション法、DEAEデキストラン仲介トランスフェクション法、リポソーム仲介トランスフェクション法(例えばリポフェクタミン(Gibco, MD, USA)および/またはセルフェクチン(Gibco, MD, USA)を使用する)、PEG仲介DNA取込法、エレクトロポレーション法および微粒子放射法(例えばDNAをコートしたタングステン粒子または金粒子を使用する(Agracetus Inc., WI, USA))、などが挙げられる。
本発明のタンパク質は、単離された形態で、好ましくは同じ生物のタンパク質を実質的に含むことなく産生することができる。単離されたタンパク質の産生には抗体および他の親和性リガンドが特に好ましい。好ましくは、タンパク質は、調製物中のタンパク質の約90%(例えば95%、98%もしくは99%)より多くがBSXタンパク質またはそのエピトープである調製物中のものである。
BSXタンパク質またはそのエピトープに結合する抗体
本発明の第2の態様は、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに特異的に結合する抗体、例えば本明細書に記載のアッセイに使用するのに適当なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体調製物を提供する。
本明細書における抗体(または複数種の抗体)には、単独または他の部分とコンジュゲートされている、完全ポリクローナルおよびモノクローナル抗体ならびにその一部分が含まれる。抗体部分としてはFabおよびF(ab)2フラグメントおよび一本鎖抗体が挙げられる。抗体は、適当な実験動物中でin vivo産生することができ、または改変抗体(一本鎖抗体すなわちSCABSなど)についてはin vitroで組換えDNA技術を用いて産生することができる。
本発明のこの態様に従い、被験体を免疫する目的で抗体を産生してもよく、その場合、B細胞エピトープに結合する高力価抗体または中和抗体が特に好ましい。免疫に適した被験体は、もちろん、免疫抗原または抗原性B細胞エピトープに依存する。本発明は、多種の動物の免疫化に応用可能であることが考慮され、動物は例えば、家畜動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウなど)、実験動物(例えばラット、マウス、モルモット、ウサギ)、飼い慣らされた動物(ネコ、イヌ、トリなど)、野生動物または野生外来動物(例えばフクロネズミ、ネコ、ブタ、バッファロー、野生犬など)およびヒトである。
あるいはまた、抗体は商用または診断用のものであってもよく、その場合、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを投与する被験体は実験動物または家畜動物となる可能性が高い。多種の動物が抗血清の産生のために使用される。典型的には抗血清産生のために使用する動物は、ウサギ、マウス、ウサギ、ラット、ハムスター、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ウマ、またはニワトリである。ウサギとヒツジは比較的血液容量が大きいことから、ポリクローナル抗体産生の好適な選択対象である。しかしながら、当業者に明らかなように、マウスのような小動物と対照的に、大きな動物から多くの抗体を得るには多量の免疫原が必要となる。そのような場合には、抗体を免疫した動物から単離することが望ましい。
好ましくは、抗体は高力価抗体である。「高力価」とは、診断または治療用途に使用するのに適するほど十分高力価であることを意味する。当技術分野で知られているように、なにをもって「高力価」とするかには多少のばらつきがある。ほとんどの用途については、少なくとも約103〜104の力価が好ましい。より好ましくは、抗体力価は約104 〜約105 、さらに好ましくは約105 〜約106である。
病原体、ウイルスまたは細菌由来のB細胞エピトープの場合については、抗体は中和抗体である(すなわち該抗体はB細胞エピトープの誘導される生物の感染能を中和する能力を有する)ことがより好ましい。
抗体を製造するためには、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを、場合により任意の適当なまたは所望の担体、アジュバント、BRMまたは製薬上許容される賦形剤とともに製剤化したものは、注入可能組成物の形態で都合良く投与する。注入は鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹腔内または他の既知経路によるものであってもよい。静脈内注射については、1以上の流体および栄養補給剤が含まれることが望ましい。抗体を調製および特徴付けするための手段は当技術分野で周知である。(例えばANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988,を参照されたい。参照によりこれを本明細書に組み入れる)。
ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を製造するために好適な免疫原性ペプチドは、配列表に記載の群から選択される。ある実施形態においては、免疫原性ペプチド(例えば、配列番号24、25、45もしくは46に記載のアミノ酸配列を含む免疫原性ペプチドまたはその免疫原性断片)を、免疫原性キャリアタンパク質(例えばジフテリア毒素(DT)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイド(TT)またはインフルエンザウイルスの核タンパク質(NP))と共有結合するようにカップリングさせるが、これには当技術分野で周知の多数のコンジュゲート化学の1種を使用する。このことは、あるいは動物(例えばマウス、ラット、ニワトリなど)中で高度に免疫原性ではないペプチドの免疫原性を増強する。
かかるカップリング用のキャリアタンパク質の調製方法は当技術分野で周知である。例えばDTは好ましくは、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)の培養物から該毒素を精製し、その後化学的解毒を行うことにより製造するが、別の方法として該毒素の組換えもしくは遺伝的解毒済みアナログ(例えば、CRM197、または米国特許第4,709,017号、第5,843,711号、第5,601,827号および第5,917,017号に記載の他の変異体)の精製により製造する。好ましくは、トキソイドは最大6個の炭素の架橋をスペーサーとして使用して誘導体化するが、これは例えばジフテリアトキソイド(D-AH)のアジピン酸ヒドラジド誘導体の使用によりもたらされる。
カップリングについては、完全長BSXタンパク質由来ペプチドを化学合成するまたは組換え発現手法により生成すること、遊離スルフヒドリル基を形成するためにヒドロキシルアミン処理すること、および、該遊離スルフヒドリル基を介してマレイミド修飾ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドもしくはインフルエンザNPタンパク質または他のキャリアー分子に架橋することができる。最も特異性と信頼性の高いコンジュゲート化学の1種は、ペプチド中のシステイン残基とキャリアタンパク質に付加されたマレイミド基とを使用して、安定なチオエーテル結合を形成する (Lee, A.C., ら, Mol. Immunol. 17, 749-756 1980)。例えば、ペプチド中にスルフヒドリル基が存在しない場合、先にBSX由来ペプチドを、C末端システイン残基付加(例えば配列番号45)または内部システイン残基付加(例えば配列番号46)により改変して、この手法を促進することができる。免疫原性BSXペプチドは、好ましくは非変性条件下で産生し、ヒドロキシルアミン、チオール還元剤、または酸もしくは塩基加水分解で処理して遊離スルフヒドリル基を生成し、その後遊離スルフヒドリル含有ペプチドを、該遊離スルフヒドリル基を介する化学結合により、キャリアにコンジュゲートさせる。かかるコンジュゲーションは、適当なビス-マレイミド化合物の使用によるものでありうる。あるいはまた、HA タンパク質のコンジュゲーションは、マレイミド修飾キャリアタンパク質(例えばジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドもしくはインフルエンザ(NP)タンパク質)または炭水化物、例えばアルギン酸、デキストラン、またはポリエチレングリコールとのコンジュゲーションでありうる。かかるマレイミド改変型キャリア分子は、キャリア分子と、マレイミド-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル型のヘテロ二官能性架橋剤との反応により形成することができる。かかる二官能性エステルの例としては、マレイミド-カプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MCS)、マレイミド-ベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、マレイミド-ベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(スルホ-MBS)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、スクシンイミジル-4-(p-マレイミド-フェニル)ブチレート(SMPP)、スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)およびスルホスクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(スルホ-SMPP)が挙げられる。N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステル部分は、キャリアタンパク質のアミン基と反応して、マレイミド部分が自由に抗原のスルフヒドリル基と反応できるようにし、その結果架橋物質が形成する。
このようにして製造したコンジュゲート分子を精製して免疫原性組成物に使用することにより、宿主に投与したときに、BSXペプチド単独と比較して強化された、BSXペプチドに対する免疫応答を誘発することができる。
ジフテリアトキソイドは市販のものを購入するかまたは標準法により液内培養で増殖させたジフテリア菌から調製することができる。ジフテリアトキソイドの製造は、5段階、すなわち使用種菌の維持、ジフテリア菌の増殖、ジフテリア毒素の回収、ジフテリア毒素の解毒、およびジフテリアトキソイドの濃縮に分けられる。調製物中でキャリアとして使用する精製ジフテリアトキソイド(DT)は、好ましくは、例えば水溶性カルボジイミド縮合法を用いて付加したスペーサー分子(例えばアジピン酸ジヒドラジド(ADH))により修飾(誘導体化)された市販のトキソイドである。その後、修飾済みトキソイド(典型的にはアジピン酸ヒドラジド誘導体D-AH)を未反応ADHから除く。
BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープの抗体産生効率は、動物(例えばマウス、ニワトリ、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギまたはブタ)に、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを含む製剤を注射すること、およびその後実施例に記載のように該B細胞エピトープに対する免疫応答をモニターすることにより決定する。一次および二次免疫応答の両方をモニターする。抗体力価は、任意の慣用免疫アッセイ、例えばELISAまたは放射免疫アッセイ法を用いて測定する。
ポリクローナル抗体の産生は、免疫後に種々の時点における免疫動物の血液をサンプリングすることによりモニターすることができる。所望の抗体力価を達成するために必要であれば、2回目の、ブースター注射を施してもよい。適当な力価を達成するまで、ブースター注射と力価測定(titering)を繰り返す。所望レベルの免疫原性が達成されたら、免疫動物を出血させて、血清を分離して貯蔵する、および/または該動物をモノクローナル抗体(Mab)製造に使用する。
モノクローナル抗体は特に好ましい。モノクローナル抗体 (Mab)の製造については、多数の周知技術のいずれか1つを使用することができ、一例として米国特許第4,196,265号に例証された手法がある。参照によりこれを本明細書に組み入れる。
例えば、適当な動物を、抗体産生細胞を刺激するのに十分な条件下で、有効量のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープで免疫する。齧歯類、例えばウサギ、マウスおよびラットは好ましい動物であるが、一方、ヒツジまたはカエル細胞の使用も可能である。ラットの使用は特定の利点をもたらすが、マウスまたはウサギが好適であり、中でもBALB/cマウス(これは最も普通に使用されかつ一般に安定な融合体を生じるパーセンテージが高い動物である)が最も好ましい。ウサギは高親和性モノクローナル抗体を提供することで知られている。
免疫後、抗体を産生する潜在力のある体細胞、具体的にはBリンパ球(B 細胞)を、MAb製造プロトコルに使用するために選択する。これらの細胞は、脾臓、扁桃腺もしくはリンパ節の生検材料、または末梢血サンプルから得ることができる。脾臓細胞および末梢血細胞が好ましいが、前者が好ましいのは分裂形質芽球ステージにある抗体産生細胞の豊富な供給源であるためであり、後者が好ましいのは末梢血が容易に得られるからである。多くの場合、動物のパネルを免疫し、最も抗体力価の高い動物の脾臓を取り出す。脾臓リンパ球は、脾臓をシリンジを用いてホモジェナイズすることにより得る。典型的には、免疫マウス由来の脾臓は、約5 x 107 〜2 x 108個のリンパ球を含有する。
免疫動物由来のB細胞を次に、不死骨髄腫細胞と融合させるが、該不死細胞は一般にBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープで免疫した動物と同種の生物由来である。ハイブリドーマ作製融合手法に使用するのに適当な骨髄腫細胞系は、好ましくは非抗体産生性であり、融合効率が高く、特定の選択培地(所望の融合細胞またはハイブリドーマのみ生育可能な培地)では生育できないようになる酵素欠陥を有する。多種の骨髄腫細胞のいずれも使用可能であり、これらは当業者に周知である(例えばマウスP3-X63/Ag8、X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7およびS194/5XX0、またはラットR210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210、ならびにU-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2およびUC729-6)。好適なマウス骨髄腫細胞は、NS-1 骨髄腫細胞系(P3-NS-1-Ag4-1とも呼ばれる)であり、これはNIGMS Human Genetic Mutant Cell Repositoryから受託番号第GM3573番として容易に取得可能である。あるいはまた、8-アザグアニン-耐性のマウス骨髄腫SP2/0 非産生性細胞系を使用する。
抗体産生脾臓細胞またはリンパ節細胞と骨髄腫細胞とのハイブリッド体を作製するために、体細胞を骨髄腫細胞と、それぞれ約20:1〜約1:1の比率で、細胞膜の融合を促進する物質または複数の物質(化学的もしくは電気的)の存在下で混合する。センダイウイルスを用いた融合法は、Kohler and Milstein, Nature 256, 495-497, 1975、およびKohler and Milstein, Eur. J. Immunol. 6, 511-519, 1976に記載されている。ポリエチレングリコール(PEG)、例えば37%(v/v) PEGを使用する方法は、Gefter ら, Somatic Cell Genet. 3, 231-236, 1977に詳細に記載されている。電気的誘発融合法の使用もまた適当である。
ハイブリッド体は、組織培養培地中でのヌクレオチドのde novo合成を遮断する薬剤を含む選択培地中で培養することにより増幅する。典型的および好ましい薬剤は、アミノプテリン、メトトレキセートおよびアザセリンである。アミノプテリンとメトトレキセートはプリンおよびピリミジンの両方のde novo合成を遮断するのに対して、アザセリンはプリン合成のみを遮断する。アミノプテリンまたはメトトレキセートを使用する場合には培地にヒポキサンチンおよびチミジンをヌクレオチド供給源として補給する(HAT培地)。アザセリンを使用する場合には、培地にヒポキサンチンを補給する。
好適な選択培地はHATである。なぜならばHAT培地ではヌクレオチドサルベージ経路を機能させることができるハイブリドーマのみが生育可能であり、これに対して骨髄腫細胞は該サルベージ経路のキー酵素(例えばヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼすなわちHPRT)が欠損しており生存することができない。B細胞はこのサルベージ経路が機能するが、該細胞は培地中での寿命が有限であり、一般に約2週間以内に死滅する。従って選択培地中で生存可能な細胞は、骨髄腫とB細胞から形成されたハイブリッド体のみである。
増幅したハイブリドーマを、抗体特異性および/または抗体力価に対する機能的選択に供するが、選択には例えば免疫アッセイ(例えば放射免疫アッセイ、酵素免疫アッセイ、細胞毒性アッセイ、プラークアッセイ、ドット免疫アッセイなど)を用いる。
選択したハイブリドーマを連続希釈して単一の抗体産生細胞系へとクローン化し、次いで該クローンを無制限に増殖してMAbを得る。該細胞系は2種の基本的方法によりMAb産生に利用することができる。元の融合体のための体細胞および骨髄腫細胞を用意するために使用した動物種と組織適合性の動物の腹膜腔内に、ハイブリドーマのサンプルを注射する。注射した動物には、融合細胞ハイブリッド体により産生される固有のモノクローナル抗体を分泌する腫瘍が形成する。その後動物の体液(例えば血清または腹水)を取得して高濃度のMAbを用意することができる。個々の細胞系をin vitro培養することも可能であり、その場合MAbは自然に培地に分泌され、そこから容易に高濃度でMAbを得ることができる。いずれの方法で産生したMAbも所望であればさらに精製可能であり、精製には濾過、遠心分離および種々のクロマトグラフィー手法(HPLCもしくはアフィニティークロマトグラフィーなど)が使用される。
あるいはまた、ABL-MYC技術(NeoClone, Madison WI 53713, USA)を使用して、免疫原性BSXペプチド抗原に対するモノクローナル抗体 (mAb)を分泌する細胞系を作製する。この手法では、BALB/cByJ雌マウスをある量のペプチド抗原で約2〜約3月の期間に渡り免疫する。この期間中に、検査用出血物を通常の間隔で免疫マウスから取得し、標準ELISAにおける抗体応答を評価する。少なくとも約1,000の抗体力価を有するマウスの脾臓を用いて、その後、癌遺伝子v-ablおよびc-mycを有する複製欠陥型レトロウイルスを用いたABL-MYC感染を行う。脾臓細胞をナイーブマウスに移植すると、次にそれらはBSXペプチド抗原に対するモノクローナル抗体 (mAb)を産生する細胞系を含有する腹水を生じる。mAbは、mAbのアイソタイプに応じてプロテインGまたはプロテインA(例えば固体マトリックスに結合させてある)を用いて腹水から精製する。ハイブリドーマ融合が行われないことから、ABL-MYC手法の利点は、従来のmAb製造法よりも速く、コスト効率がよく、高収率であることである。さらにこの手法により作製される2倍体形質細胞腫は、倍数体ハイブリドーマよりも本質的に安定である。なぜならばABL-MYCレトロウイルスは、免疫抗原により刺激された脾臓中細胞にしか感染しない。ABL-MYCはその後そうした活性化B細胞を不死の、mAb産生型形質細胞(形質細胞腫と呼ぶ)へと形質転換する。「形質細胞腫」は、制御されない細胞分裂能力のある不死化形質細胞である。形質細胞腫は1つの細胞を起源とすることから、そこから生じた全ての形質細胞腫は同一であり、その上同じ所望の「モノクローナル」抗体を産生する。その結果、望ましくない細胞系の分類は不要である。ABL-MYC技術は、一般に次の開示に詳細に記載されており、それらを参照により本明細書に組み入れる。
1. Largaespada ら, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 166, 91-96. 1990、
2. Weissinger ら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 8735-8739, 1991、
3. Largaespada ら, Oncogene, 7, 811-819, 1992、
4. Weissinger ら, J. Immunol. Methods 168, 123-130, 1994、
5. Largaespada ら, J. Immunol. Methods. 197(1-2), 85-95, 1996、および
6. Kumar ら, Immuno. Letters 65, 153-159, 1999。
本発明のモノクローナル抗体には、当技術分野の周知技術により産生される抗イディオタイプ抗体も含まれる。本発明のモノクローナル抗体はまた、モノクローナルヘテロコンジュゲート体(すなわち2種以上の抗体分子のハイブリッド体)であってもよい。別の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体はキメラモノクローナル抗体である。ある手法において、キメラモノクローナル抗体は、マウスの抗PSA産生細胞由来のプロモーター配列、リーダー配列、および可変領域配列、ならびにヒト抗体遺伝子由来の定常領域エクソンを含む組換えDNAをクローニングすることにより遺伝子操作される。かかる組換え遺伝子によりコードされる抗体はマウス-ヒトキメラである。その抗体特異性は、マウス配列由来の可変領域により決定される。定常領域によって決定されるそのアイソタイプはヒトDNA由来である。
別の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体は、「ヒト化」モノクローナル抗体であり、多数の当技術分野の周知技術の1つにより産生される。すなわち、マウス相補性決定領域(「CDR」)を、マウスIg の重鎖および軽鎖V鎖からヒトVドメインへと移植し、その後フレームワーク領域中のいくつかのヒト残基をそのマウス対応残基で置換する。本発明の「ヒト化」モノクローナル抗体は、in vivo診断法および治療法での使用に特に適している。
上記のように、本発明のモノクローナル抗体およびそのフラグメントは、当技術分野の周知技術によりin vitroおよびin vivoで増幅される。in vitro増幅は、ダルベッコ改変イーグル培地またはRPMI 1640培地などのような適当な培地で行い、場合により哺乳動物血清(ウシ胎仔血清など)または微量元素および増殖維持添加物、例えばフィーダー細胞、例えば正常マウス腹腔滲出細胞、脾臓細胞、骨髄マクロファージなどを補給する。in vitro産生は相対的に純粋な抗体調製物をもたらし、スケールアップして所望の抗体を大量に得ることが可能である。組織培養条件下での大規模ハイブリドーマ培養技術は当技術分野で知られており、これには均一懸濁培養(例えば通気反応槽または連続撹拌反応槽、または固定化もしくは封入細胞培養)が含まれる。
ハイブリドーマ細胞をin vivoで増殖させることにより、大量の本発明のモノクローナル抗体を得ることもできる。細胞クローンを、親細胞と組織適合性である哺乳動物(例えば同系マウス)に注射して、抗体産生腫瘍の増殖を引き起こす。場合により、注射前に該動物を炭化水素、特に油(プリスタンすなわちテトラメチルペンタデカンなど)で予備刺激(prime)しておく。
本発明において、本発明のモノクローナル抗体のフラグメントは、酵素(ペプシンまたはパパインなど)消化および/または化学反応によるジスルフィド結合切断を含む方法を用いて、上記のように産生したモノクローナル抗体から得る。あるいはまた、本発明に包含されるモノクローナル抗体フラグメントは、自動ペプチド合成機を用いて合成する、または当技術分野の周知技術を用いて手動で製造してもよい。
本発明のモノクローナルコンジュゲート体は当技術分野の周知技術により調製する。一例としてそれらは上記のように調製したモノクローナル抗体と、例えば酵素とを、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩などのカップリング剤の存在下で反応させることにより調製する。フルオレセインマーカーとのコンジュゲート体は、こうしたカップリング剤の存在下で、またはイソチオシアネートとの反応により調製する。金属キレート剤とのコンジュゲート体も同様に作製する。抗体をコンジュゲートすることのできる他の部分としては、放射性核種、例えば、3H、125I、32P、35S、14C、51Cr、36Cl、57Co、58Co、59Fe、75Se、および152Euなどが挙げられる。
放射活性標識された本発明のモノクローナル抗体は当技術分野の周知技術により製造する。例えばモノクローナル抗体を、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウム、および化学的酸化剤(次亜塩素酸ナトリウムなど)または酵素酸化剤(ラクトペルオキシダーゼなど)との接触させによりヨウ素化する。本発明のモノクローナル抗体は、リガンド交換手法によりテクネチウム99で標識することができる。これは例えば、過テクネチウム酸をスズ溶液で還元すること、該還元済みテクネチウムをSephadexカラムにキレート結合させること、および抗体をこのカラムに適用することにより、または直接標識技術(例えば過テクネチウム酸、SNCl2などの還元剤、フタル酸ナトリウムカリウム溶液などの緩衝溶液、および抗体をインキュベートすること)により行う。
BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープによる抗体産生をモニターするためには、どのような免疫アッセイ法を使用してもよい。免疫アッセイは、最も単純で直接的な意味では、結合アッセイである。特定の好ましい免疫アッセイは、当技術分野で周知の様々な種類の酵素連結免疫吸着アッセイ法(ELISA)および放射免疫アッセイ法(RIA)である。組織切片を用いた免疫組織化学検出も特に有用である。しかしながら、検出がかかる技術に限定されないこと、およびウェスタンブロット法、ドットブロット法、FACS分析法なども使用可能であることは容易に理解されるであろう。
アッセイは定量的な結果が得られるものが最も好ましい。
例えば、抗体を単純競合アッセイで検査する。B細胞エピトープに結合する既知抗体調製物および検査抗体を、該B細胞エピトープ(このましくは天然抗原の形)を含む抗原組成物とインキュベートする。本明細書において用いる「抗原組成物」は、B細胞エピトープの何らかのバージョンを接触可能な形で含有するあらゆる組成物を意味する。ELISAプレートの抗原でコーティングしたウェルは特に好ましい。ある実施形態において、既知抗体を種々の量の検査抗体(例えば1:1、1:10および1:100)と一定時間予備混合してから、抗原組成物を適用する。既知抗体の1種が標識されていれば、抗原に結合した標識を直接検出することが可能である。未混合サンプルアッセイとの比較から、検査抗体による競合を、従って交差反応性を決定する。あるいはまた、既知抗体または検査抗体のいずれかに特異的な二次抗体を用いることにより、競合を測定することができる。
抗原組成物に結合する抗体は、既知抗体の結合と効果的に競合することができ、そのことにより後者の結合を著しく減少させることができる。あらゆる検査抗体の不在下での既知抗体の反応性が対照となる。検査抗体の存在下での著しい反応性の低減は、B細胞エピトープに結合する検査抗体を示す(すなわち該抗体は既知抗体と交差反応する)。
ある典型的ELISAにおいては、BSXタンパク質または免疫原性断片またはB細胞エピトープに対する抗体を、タンパク質親和性を示す選択表面、例えばポリスチレンマイクロタイタープレートのウェルに固定化する。その後、ウェルにB細胞エピトープを含むペプチドを含有する組成物を添加する。結合、および非特異的結合免疫複合体を除去するための洗浄の後に、結合したエピトープを検出することができる。検出は一般に、B細胞エピトープに結合することが知られておりかつ検出可能な標識に連結されている第2抗体を加えることにより行われる。この種類のELISAは単純「サンドイッチELISA」である。検出はまた、前記第2抗体の添加に続き、第2抗体に対する結合親和性を有しかつ検出可能標識に連結されている第3抗体を添加することにより行うこともできる。
フロースルーELISAおよび固相ELISAの両方に応用可能な別の典型的免疫アッセイフォーマットにおいて、免疫原性BSXタンパク質または免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはB細胞エピトープに結合する抗体を、タンパク質親和性を示す選択表面、例えばポリスチレンマイクロタイタープレートのウェルまたはカラムに固定化する。抗体の結合するB細胞エピトープを含む免疫原性BSXタンパク質または免疫原性ペプチドまたは免疫原性断片を含むサンプルを、抗原抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下で添加する。この場合、添加したBSXタンパク質、ペプチドまたは断片はヒトIgと複合体形成する。患者血清の場合には、例えば、ペプチドは好ましくは、患者のマイコバクテリウム・ツベルクローシスBSXタンパク質に対する免疫応答故に、ヒトIgと複合体形成する。結合および非特異的結合免疫複合体を除去するための洗浄の後に、免疫複合体中のヒトIgに結合することが知られておりかつ検出可能標識に連結している第2抗体を添加することにより、結合エピトープを検出する。これは改変型「サンドイッチELISA」である。検出はまた、前記第2抗体を添加し、その後第2抗体に対する結合親和性を有しかつ検出可能標識に連結している第3抗体を添加することにより行うこともできる。
本発明は、マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症診断用の複数検体検査を明確に包含する。例えば、マイコバクテリウム・ツベルクローシスBSXタンパク質に対する抗体を検出するアッセイを、マイコバクテリウム・ツベルクローシスグルタミンシンテターゼ(GS)に対する抗体を検出するアッセイと併用することができる。このことに関して、本発明者らはまた、GSの免疫原性断片またはペプチドまたはエピトープに結合するモノクローナル抗体を産生する形質細胞腫を作製した。ここでの該GSの免疫原性断片またはペプチドまたはエピトープは、完全長GSの約残基265〜約残基300、より好ましくはGSの約残基270〜約残基295、およびさらに好ましくはGSの残基271〜残基295に位置する少なくとも約5連続アミノ酸残基のアミノ酸配列、ならびに特別にアミノ酸配列RGTDGSAVFADSNGPHGMSSMFRSF(配列番号54)内の少なくとも5連続残基を含む。このことから抗体は、基となるペプチドの免疫原性に悪影響を及ぼさないN末端およびC末端伸長をさらに含む配列番号54の配列の5または6または7または8または9または10または11または12または13または14または15または16または17または18または19または20または21または22または23または24または25連続アミノ酸残基に結合する。
本発明の抗体を、固体支持体に結合させてもよいおよび/または適当な容器内のキットに、適当な試薬、コントロール、説明書などとともに包装してもよい。
結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を検出するための診断/予後診断方法
1. 抗原に基づくアッセイ
本発明は、被験体における結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の診断方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中の、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを検出することを含み、前記サンプル中の前記タンパク質または免疫原性断片もしくはエピトープの存在は感染症を示す、前記方法を提供する。
マイコバクテリウム・ツベルクローシス抗原を検出する利点の1つは、抗体に基づくアッセイとは対照的に、ひどく免疫低下した患者は検出可能レベルで抗体を産生しないことがあり、あらゆる患者中の抗体レベルは必ずしも桿菌負荷を反映しない可能性がある、ということである。一方、抗原レベルは桿菌負荷を反映するはずであり、桿菌の産物であることから、桿菌の存在を検出する直接法である。
本発明の診断アッセイのある実施形態において、被験体由来の生物学的サンプルと、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに結合可能な抗体とを接触させること、およびおよび抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、被験体におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染の検出方法を提供する。
別の実施形態において、本発明の診断アッセイは、被験体における結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の進行を決定するのに有用である。こうした本発明の予後診断用途において、生物学的サンプル中のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープのレベルは、感染状態と正に相関する。例えば、BSXタンパク質またはその免疫原性断片のレベルが結核症または感染症の症状を罹患している被験体から検出されるBSXタンパク質または断片のレベル未満であることは、該被験体が感染から回復していることを示す。同様に、健康な個体と比較して被験体由来サンプル中のタンパク質または断片のレベルが高いことは、該被験体が疾患または感染症から免れていないことを示す。
従って、本発明のさらなる実施形態は、結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を有する被験体の、前記結核症または感染症用治療化合物での治療に対する応答を決定する方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを検出することを含み、該タンパク質または断片もしくはエピトープのレベルが正常または健康被験体中で検出可能なそのタンパク質または断片もしくはエピトープのレベルと比較して増大していることは、該被験体が前記治療に応答していないまたは疾患もしくは感染症を免れていないことを示す、前記方法を提供する。
別の実施形態において、本発明は、結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を有する被験体の、前記結核症または感染症用治療化合物での治療に対する応答を決定する方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを検出することを含み、該タンパク質または断片もしくはエピトープのレベルが結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を罹患している被験体中で検出可能な該タンパク質または断片もしくはエピトープのレベルよりも低いことは、該被験体が前記治療に応答しているまたは疾患もしくは感染症を免れていることを示す、前記方法を提供する。BSXタンパク質またはその断片もしくはエピトープのレベルが被験体から検出できない場合、明らかにその被験体は治療に応答した。
さらなる実施形態においては、患者由来生物学的サンプル中のBSXタンパク質量を、同じ患者から以前に得られた生物学的サンプルから検出される同一タンパク質の量と比較する。当業者に明らかなように、この方法は、潜伏感染を有する患者または結核症を発症した患者を継続的にモニターするために使用することができる。こうすることで、患者を感染症または疾患の発症または進行についてモニターすることができ、その目的は感染症が確立される前に、特にHIV+個体において、治療を開始することである。
別の方法として、またはそれに加えて、結核症を有する被験体由来の生物学的サンプルから検出されるタンパク質量を参照サンプルと比較することもでき、参照サンプルは、感染症もしくは疾患を罹患していない1以上の結核症患者、あるいは、最近感染症治療が成功した1以上の結核症患者、および/または結核症を有さずかつ感染症もしくは疾患を罹患していない1以上の被験体由来のものである。
ある実施形態において、BSXタンパク質またはその免疫原性断片が参照サンプルから検出されず、しかし、前記BSXタンパク質またはその免疫原性断片が患者サンプルから検出されることは、該サンプルの由来する患者が結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を罹患しているまたはこれから急性感染症を発症することを示す。
あるいはまた、BSXタンパク質またはその免疫原性断片の量が、参照サンプルから検出されるレベルと比較して患者サンプルにおいて増大していることがありうる。このこともやはり、前記生物学的サンプルの単離された患者が結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を罹患しているまたはこれから急性感染症を発症することを示す。
本明細書に記載の診断/予後診断方法のある実施形態において、生物学的サンプルは以前に被験体から得られたものである。かかる実施形態において、予後診断または診断方法は生体外(ex vivo)で行う。
さらなる実施形態において、被験体診断/予後診断方法は、被験体由来サンプルを処理して検体(例えば胸膜液または痰)を含む誘導物または抽出物を得ることをさらに含む。
適当なサンプルとしては、脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉および骨組織などの組織、または痰、血清、血漿、全血液、複数種の血清もしくは胸膜液などの体液由来の抽出物が挙げられる。
好ましくは、生物学的サンプルは、唾液、血漿、血液、血清、痰、尿、および肺からなる群より選択される体液または組織サンプルである。他種のサンプルは除外されない。
好適なサンプルは、BSXタンパク質またはその断片とヒト免疫グロブリンとが複合体形成した循環免疫複合体を含みうる、ということは本明細書の記載から明らかであろう。かかる免疫複合体の検出は明らかに本発明の範囲内にある。この実施形態に関連して、捕捉試薬(例えば捕捉抗体)を使用して、被験体の循環液中の単離抗原に加えて、被験体の免疫グロブリンと複合体形成したBSX抗原(BSXポリペプチドまたはその免疫活性断片もしくはエピトープ)を捕捉する。抗Ig抗体(場合により検出可能標識と結合している)を使用して、捕捉型CICに特異的に結合させ、そのことによりCIC患者サンプルを検出する。抗Ig抗体が、サンプル中のIgM、IgAまたはIgGに優先的に結合することは本発明の範囲に包含される。特に好ましい実施形態において、抗Ig抗体は、ヒトIg、例えばヒトIgA、ヒトIgGまたはヒトIgMに結合する。抗Ig抗体は当技術分野で既知のどのような標準的検出可能標識と結合していてもよい。これは病原性因子(例えば細菌もしくはウイルス)による感染の検出、またはCICに関連するあらゆる疾患または障害の診断に特に有用である。従って、本明細書の任意の実施形態に記載の診断方法は改良することができ、すなわち該方法は、被験体由来サンプルが、マイコバクテリウム・ツベルクローシスのBSXタンパク質または1以上のその免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープに結合した免疫グロブリン(Ig)を含む1以上の循環免疫複合体を含み、かつ、抗原抗体複合体の形成を検出することが、抗Ig抗体と、該循環免疫複合体の免疫グロブリン部分とを、複合体形成に十分な時間および条件下で接触させること、およびその後結合型抗Ig抗体を検出することを含む方法へと改変することができる。
2. 抗体に基づくアッセイ
本発明は、被験体における結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の診断方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中の、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに対する抗体を検出することを含み、該サンプル中の前記抗体の存在は感染症を示す、前記方法を提供する。感染は過去もしくは現在の感染、または潜伏感染でありうる。
抗体に基づくアッセイは主に活動的なマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の検出に使用する。マイコバクテリウム・ツベルクローシスによるごく最近のまたは慢性の感染症により持続しうる残留抗体レベル故に、被験体の臨床履歴を考慮することが好ましい。
このフォーマットは安価かつ高感度であるが、しかし免疫低下した個体における感染症検出には抗原に基づくアッセイフォーマットほど有用ではない。しかしながら、抗体に基づくアッセイは、免疫低下していないHIV-またはHIV+個体のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症検出には明らかに有用である。
ある別の実施形態において、本発明は、被験体におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の検出方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプルとBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープとを接触させること、および抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、前記方法を提供する。
別の実施形態において、本発明の診断アッセイは、被験体における結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の進行を決定するのに有用である。こうした本発明の予後診断用途においては、被験体由来の血液または血清または免疫グロブリン画分中のBSXタンパク質または断片もしくはエピトープに対する抗体の量は、感染状態と正の相関がある。例えば、その中の抗BSX抗体レベルが、結核症または感染症の症状を罹患している被験体から検出される抗BSX抗体レベル未満であることは、該被験体が感染症から回復していることを示す。同様に、被験体由来のサンプル中の抗体レベルが、健康な個体と比較して高いことは、該被験体がその疾患または感染症から免れていないことを示す。
本発明の更なる実施形態は、結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を有する被験体の、前記結核症または感染症用治療化合物での治療に対する応答を決定する方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに対する抗体を検出することを含み、抗体のレベルが正常または健康被験体から検出可能な抗体のレベルと比較して増大していることは、該被験体が前記治療に応答していないまたは疾患もしくは感染症を免れていないことを示す、前記方法を提供する。
別の実施形態において、本発明は、結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を有する被験体の、前記結核症または感染症用治療化合物での治療に対する応答を決定する方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに対する抗体を検出することを含み、該抗体レベルが結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を罹患している被験体中で検出可能な抗体レベルよりも低いことは、該被験体が前記治療に応答しているまたは疾患もしくは感染症を免れていることを示す、前記方法を提供する。
結核症を有する被験体由来の生物学的サンプルから検出されるBSXタンパク質または断片に対する抗体量を、参照サンプルと比較することができるが、ここでの参照サンプルとは、以前にマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染していないまたは最近マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染していない1以上の健康な被験体由来のものである。かかるネガティブ・コントロール被験体は、循環抗体力価が低く、そのため抗体に基づくアッセイフォーマットにおいて適当な標準物質となる。例えば、BSXタンパク質またはその免疫原性断片に対する抗体が、参照サンプルからは検出されず、患者サンプルのみから検出されることは、そのサンプルの由来する患者が結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を罹患しているまたは急性感染症を発症することを示す。
本明細書に記載の診断/予後診断方法の実施形態において、生物学的サンプルは以前に被験体から得られたものである。かかる実施形態において、予後診断または診断方法は生体外(ex vivo)で行う。
さらなる実施形態において、被験体診断/予後診断方法は、被験体由来サンプルを処理して検体(例えば血液、血清または任意の免疫グロブリン含有サンプル)を含む誘導物または抽出物を得ることをさらに含む。
適当なサンプルとしては、例えば免疫グロブリンを含む組織、例えば血液、骨、または体液、例えば血清、血漿、全血液、血清の免疫グロブリン含有画分、血漿の免疫グロブリン含有画分、血液の免疫グロブリン含有画分、由来の抽出物が挙げられる。
3. 検出系
本発明に包含される好適な検出系には、ヒト被験者から単離された生物学的サンプル中のタンパク質または抗体を検出するための任意の既知のアッセイが含まれ、例えば、SDS/PAGE、等電点電気泳動、SDS/PAGEおよび等電点電気泳動を含む2次元ゲル電気泳動、免疫アッセイ、タンパク質の抗体または非抗体型リガンド、例えば、小分子(例えばタンパク質の化合物、アゴニスト、アンタゴニスト、アロステリック調節因子、競合阻害剤、または非競合阻害剤)を使用する検出に基づく系が挙げられる。こうした実施形態において、抗体または小分子は、タンパク質検出に適している任意の標準固相または溶液相アッセイフォーマットに使用することができる。光学検出または蛍光検出、例えば質量分析、MALDI-TOF、バイオセンサー技術、一過性ファイバーオプティクス、または蛍光共鳴エネルギー転移、を使用する検出は明確に本発明に包含される。多数のサンプルの高スループットスクリーニング、特に高スループット分光学共鳴法(例えばMALDI-TOF、エレクトロスプレーMSまたはナノエレクトロスプレーMS)の使用に適したアッセイ系が特に考慮される。
免疫アッセイフォーマットは特に好適であり、例えば、免疫ブロット法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)、放射免疫アッセイ法(RIA)、酵素免疫アッセイ法からなる群より選択される。改変型免疫アッセイであって、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、同位元素コード型親和性タグ(ICAT)、マトリックス支援レーダー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF)、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)、バイオセンサー技術、一過性ファイバーオプティクス技術またはタンパク質チップ技術を利用するアッセイもまた有用である。
アッセイは半定量アッセイまたは定量アッセイであることが好ましい。
標準固相ELISAフォーマットはさまざまな患者サンプル由来のタンパク質または抗体の濃度を測定するのに特に有用である。
ある形態において、かかるアッセイは、抗BSX抗体を含む生物学的サンプル、またはBSXタンパク質もしくはその免疫原性断片を、固体マトリックス、例えばポリスチレンもしくはポリカーボネート製マイクロウェルまたはディップスティック、膜、またはガラス製支持体(例えばスライドガラス)上に固定化することを伴う。
抗原に基づくアッセイにおいては、BSXタンパク質に特異的に結合する固定化抗体を生物学的サンプルと直接接触させ、前記サンプル中に存在するそのあらゆる標的タンパク質と直接結合を形成させる。抗体に基づくアッセイにおいては、固定化した単離または組換えBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを生物学的サンプルと接触させる。溶液中の添加する抗体またはタンパク質は、一般に検出可能レポーター分子、例えば、蛍光標識(例えばFITCもしくはTexas Red)または酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)もしくはβ-ガラクトシダーゼ)で標識する。これとは別に、またはそれに加え、第1抗体または単離/組換えBSX抗原に結合する標識済み第2抗体を使用することができる。洗浄することによりあらゆる未結合抗体または未結合BSX抗原を除去した後、標識を、蛍光標識の場合は直接検出してもよく、または基質、例えば過酸化水素、TMB、もしくはトルイジン、または5-ブロモ-4-クロロ-3-インドール-β-D-ガラクトピラノシド(x-gal)の添加により検出してもよい。
かかるELISAに基づくアッセイ系は、サンプル中のタンパク質または抗体の量を(例えば、検出系を既知量の標準物質に対して校正する(calibrate)ことにより)定量するために特に適当である。
別の形態においては、ELISAは、BSXタンパク質に特異的に結合する抗体を固体マトリックス、例えば、膜、ポリスチレンもしくはポリカーボネート製マイクロウェル、ポリスチレンもしくはポリカーボネート製ディップスティックまたはガラス製支持体に固定化することからなる。次に患者サンプルを前記抗体と物理的に接触させ、サンプル中の抗原が結合するまたは「捕捉される」。その後、結合タンパク質を標識抗体を用いて検出することができる。例えばタンパク質をヒトサンプルから捕捉する場合、捕捉タンパク質を検出するためには抗ヒト抗体を使用する。
ある例において、本発明は次のステップを含む:
(i) 本発明の免疫原性BSXペプチド(例えば配列番号2〜53のいずれか1以上に記載の配列を含むペプチド)に特異的に結合する抗体を、固体マトリックスまたは支持体に固定化すること、
(ii) 結合抗体と被験体から得られたサンプル(好ましくは血液、血清またはそのIg含有画分などの抗体含有サンプル)とを、前記固定化抗体が該サンプル中のGSタンパク質またはその断片に結合するのに十分な時間および条件下で接触させ、そのことにより抗原抗体複合体を形成させること、ならびに
(iii) 前記複合体とヒトIgを認識する抗体とを接触させること(前記ヒトIgの存在は患者サンプルにおけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスの存在を示す)を含む工程で形成された抗原抗体複合体を検出すること。
この実施形態において、固定化抗体の特異性は、抗体の認識するエピトープを含む単離されたまたは免疫複合体形成したBSXタンパク質またはその断片のみが実際に結合することを保証し、これに対して抗ヒトIgの特異性は、免疫複合体形成したBSXタンパク質またはその断片のみが検出されることを保証する。この文脈において、「免疫複合体形成する」という用語は、患者サンプル中のBSXタンパク質またはその断片が、ヒトIg(例えばヒトIgAもしくはヒトIgMもしくはヒトIgGなど)と複合体形成することを意味すると理解されたい。従って、この実施形態は、被験体において免疫応答を生じさせたマイコバクテリウム・ツベルクローシスまたはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の存在を検出するために特に有用である。検出抗体(例えば抗ヒトIgAまたは抗ヒトIgGまたは抗ヒトIgM) を適切に選択することにより、被験体の免疫応答をアイソタイプ化することがさらに可能である。かかるヒトIgA、IgMおよびIgGに対する検出抗体は当技術分野で公に入手可能である。
先の実施形態とは別にまたはそれらに加えて、第2(検出)抗体に結合する第3標識済み抗体を使用することができる。
本明細書に記載のアッセイフォーマットが高スループットフォーマット(例えばスクリーニング工程の自動化、またはMendoza ら, Biotechniques 27(4): 778-788, 1999に記載のマイクロアレイフォーマット)に適していることは当業者に明らかであろう。その上、上記アッセイの変法、例えば競合ELISAなどは当業者に明らかであろう。
あるいはまた、抗BSX抗体またはBSXタンパク質もしくはその免疫原性断片の存在を、放射免疫アッセイ(RIA)を用いて検出する。アッセイの基本原理は抗体抗原相互作用を検出するために放射標識抗体または抗原を使用することにある。例えば、BSXタンパク質に特異的に結合する抗体を固体支持体に結合させ、生物学的サンプルと前記抗体とを直接接触させることができる。結合抗原を検出するために、放射標識された単離および/または組換え型抗原を前記抗体と接触させる。洗浄を行った後、結合した放射活性量を測定する。生物学的サンプル中の抗原が放射標識された抗原の結合を阻害することから、検出された放射活性量はサンプル中の抗原量と反比例する。かかるアッセイは定量化することもでき、これは単離抗原の既知濃度を増加させながら作製した標準曲線を使用することにより行う。
かかるアッセイはどのようなレポーター分子(例えば酵素または蛍光分子)を放射活性標識の代わりに用いるように改変することもできる、ということは当業者に明らかであろう。
ウェスタンブロット法もまた、BSXタンパク質またはその免疫原性断片を検出するために有用である。かかるアッセイでは、生物学的サンプル由来のタンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を使用して、当技術分野の周知技術(例えば、Scopes (Protein Purification: Principles and Practice, 第3版, Springer Verlag, 1994中)に記載)を用いて分離する。分離タンパク質をその後、固体支持体、例えば膜またはより詳細にはPVDF膜に転写する。これは当技術分野の周知技術、例えば電気転写(electrotransfer)を使用して行う。次にこの膜をブロッキングし、その後BSXタンパク質に特異的に結合する標識抗体またはリガンドでプローブする。あるいは、標識した二次またはさらには三次抗体もしくはリガンドを使用して特異的一次抗体の結合を検出することができる。
抗BSX抗体またはBSXタンパク質もしくはその免疫原性断片の存在または不在を検出するための高スループット法は特に好ましい。
ある実施形態においては、一次元または二次元ゲル電気泳動で分離したタンパク質の迅速な同定のために、MALDI-TOFを使用する。それ故、対象のタンパク質に特異的に結合する抗体またはリガンドを使用してタンパク質を検出する必要はない。そうではなく、生物学的サンプル由来のタンパク質をゲル電気泳動を用いて当技術分野の周知技術を使用して分離し、その後ほぼ合致する分子量および/または等電点にあるタンパク質をMALDI-TOFを用いて分析し、対象のタンパク質の存在または不在を決定する。
あるいは、MALDIまたはESIまたは手法の組み合わせを使用して、生物学的サンプル(例えば痰)中の特定タンパク質の濃度を決定する。かかるタンパク質は、分子量や等電点などのパラメーターについてあらかじめ詳しく特徴決定しておくことが好ましい。
バイオセンサー装置は一般に、電極表面と電流または電気抵抗測定要素との組み合わせを装置内に組込んであり、これとアッセイ基質とを組み合わせて使用する(例えば米国特許第5,567,301号に記載のように)。好ましくは対象のタンパク質に特異的に結合する抗体またはリガンドをバイオセンサー装置表面に組み込み、その後患者から単離された生物学的サンプル(例えば本明細書に記載の方法を用いて可溶化させた痰)を前記装置と接触させる。バイオセンサー装置により検出された電流または電気抵抗の変化は、タンパク質の前記抗体またはリガンドへの結合を示す。当技術分野で既知のバイオセンサーの一部の種類はまた、タンパク質相互作用を検出するために表面プラズモン共鳴に基づき、そこでは反射表面の表面プラズモン共鳴変化が、タンパク質の前記抗体またはリガンドへの結合を示す(米国特許第 5,485,277号および第5,492,840号)。
バイオセンサーは、かかるシステムをマイクロまたはナノスケールへと容易に応用することができることから、高スループット分析に特に有用である。その上、かかるシステムは、複数の検出試薬を組み入れるように応用するのにも都合がよく、このことから単一バイオセンサーユニット内で診断試薬の多重化が可能である。このことは少量の体液からの複数種のエピトープの同時検出を可能にする。
対象のタンパク質の検出の前に生物学的サンプルを予備処理する必要がないことから、一過性バイオセンサーも好ましい。一過性バイオセンサーは一般に、蛍光分子(例えばプローブ表面付近に結合させた蛍光抗体)と相互作用する所定波長の光に基づき、診断タンパク質と抗体またはリガンドの結合により異なる波長の蛍光を放射する。
タンパク質チップを作製するためには、対象の特定抗体またはタンパク質と結合することのできるタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、抗体またはリガンドを固体支持体、例えばガラス、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、酸化ケイ素、金属または窒化ケイ素に結合させる。この固定化は直接的(例えば共有結合により、例えば、シッフ塩基形成、ジスルフィド結合、またはアミド結合もしくは尿素結合形成により)または間接的である。タンパク質チップの作製方法は当技術分野で知られており、例えば米国特許出願番号第20020136821号、第20020192654号、第20020102617号および米国特許第6,391,625号に記載されている。タンパク質を固体支持体に結合させるためには、固体支持体を(例えばアルデヒド含有シラン試薬で)処理してその表面に化学的反応基を創出する必要があることが多い。あるいは抗体またはリガンドを微細加工ポリアクリルアミドゲルパッド上に捕捉し、マイクロ電気泳動を用いてゲル内に加速させることもできる(Arenkov ら Anal. Biochem. 278:123-131, 2000に記載)。
タンパク質チップは、複数種のタンパク質、リガンドまたは抗体が前記チップ上に配置されるように作製するのが好ましい。このフォーマットはサンプル中の複数種のタンパク質の存在の同時スクリーニングを可能にする。
あるいは、タンパク質チップは1種のみのタンパク質、リガンドまたは抗体を含み、1種類の対象のポリペプチドの存在について1以上の患者サンプルをスクリーニングするために使用することができる。かかるチップは対象のポリペプチドについて患者サンプルのアレイを同時にスクリーニングするために使用することもできる。
好ましくは、タンパク質チップを用いて分析するサンプルは、当技術分野の周知技術を用いて検出することのできるレポーター分子(例えば、蛍光分子、放射活性分子、酵素、または抗体)に連結されたものである。それに応じて、タンパク質チップを標識サンプルと接触させ、その後あらゆる未結合タンパク質を除去するために洗浄し、当技術分野の周知方法を用いて、例えばDNAマイクロアレイリーダーを用いて、結合タンパク質の存在を検出する。
あるいは、生体分子相互作用分析型質量分析(BIA-MS)を使用して、複合生物学的サンプル中に存在するタンパク質を、低フェムトモル(fmol)〜サブフェムトモルレベルで迅速に検出および特徴付けする(Nelson ら Electrophoresis 21: 1155-1163, 2000)。タンパク質チップの解析に有用な技術の一つは、表面増強型レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF-MS)技術であり、タンパク質チップに結合したタンパク質を特徴決定する。あるいは、ESIを用いてタンパク質チップを解析する(米国特許出願第20020139751号に記載)。
タンパク質チップが検出試薬の多重化に特に適していることは当業者に明らかであろう。この場合、各々が異なるペプチドまたはタンパク質に特異的に結合することのできる複数種の抗体またはリガンドを前記タンパク質チップの異なる領域に結合させることができる。前記チップを使用した生物学的サンプルの分析は、複数種の対象のタンパク質、または複数種のBSXタンパク質のB細胞エピトープの検出を可能にする。診断用および予後診断用マーカーの多重化を本発明は特に考慮する。
さらなる実施形態において、実質的に米国出願第20020076739号に記載のように、ICATを用いてサンプルを分析する。このシステムは、ある供給源(すなわち健康な個体)由来のタンパク質サンプルを試薬で標識すること、および別の供給源(すなわち結核症患者)由来のタンパク質サンプルを第1試薬と化学的には同一であるが同位体組成故に質量の異なる第2試薬で標識することに基づく。第1試薬と第2試薬がビオチン分子をも有することは好ましい。次にこの2種のサンプルを等濃度で混合し、その後アビジンアフィニティークロマトグラフィーでペプチドを回収する。その後サンプルを質量分析を用いて分析する。重いおよび軽いペプチドイオンのピーク高のどのような差異も、生物学的サンプル中のタンパク質存在量の差異と直接相関する。その後、当技術分野の周知技術、例えばMALDI-TOFまたはESIなどを用いてかかるタンパク質の正体を確認することができる。
特に好ましい実施形態においては、抗BSX抗体またはBSXタンパク質もしくはその免疫原性断片を含む生物学的サンプルを2次元ゲル電気泳動に供する。この実施形態においては、電気泳動前に例えば、遠心分離、濾過または遠心分離と濾過の組み合わせにより、サンプルから特定の粒状物質を除去することが好ましい。その後、生物学的サンプル中のタンパク質を分離する。例えば、タンパク質を等電点電気泳動を用いて荷電に基づき、および/または分子量に基づき、分離することができる。分子量の類似するタンパク質をその電荷によっても分離することから、2次元分離はタンパク質の種々のアイソフォームの同定を可能にする。質量分析を用いることにより、対象のタンパク質が患者サンプル中に存在するか否かを決定することができる。
本明細書に記載の診断または予後診断アッセイが多重アッセイでありうることは当業者に明らかであろう。本明細書において用いる「多重」という用語は、同一サンプル中の2種以上の診断または予後診断マーカーの同時検出を意味するのみならず、単一サンプル中の2種以上の診断または予後診断マーカーの逐次検出、相異なるがマッチさせたサンプル中の2種以上の診断または予後診断マーカーの同時検出、および相異なるがマッチさせたサンプル中の2種以上の診断または予後診断マーカーの逐次検出をも包含すると理解すべきである。本明細書において用いる「マッチさせたサンプル」という用語は、同じ最初の生物学的サンプル由来の2以上のサンプル、または同じ時点で単離された2種以上の生物学的サンプルを意味すると理解すべきである。
従って、多重アッセイは複数種の抗BSX抗体および/もしくはBSXエピトープを同じ反応においてかつ同時に検出する、または1以上の抗BSX抗体および/もしくはBSXエピトープに加えて、他の1以上の抗原/抗体を検出するアッセイを含みうる。
本発明は明らかに、BSX抗体およびエピトープを検出する、ならびにCD4+ Tヘルパー細胞表面の1以上の受容体および/または1以上のHIV-1および/もしくはHIV-2抗原を介して該細胞を検出するための多重アッセイを考慮する。かかるアッセイは、マイコバクテリウム・ツベルクローシスおよびHIV-1および/もしくはHIV-2の共感染に関する情報を同時に得るため、および/またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスを有する被験体が免疫低下しているか否かを判別するために特に有用である。明らかに、かかる多重アッセイフォーマットは、HIV+/TB+個体の健康をモニターするのに有用である。
かかるアッセイが抗体またはリガンドに基づく場合、抗体は両方ともに同じ条件下で機能しなければならないことは当業者に明らかであろう。
4. 生物学的サンプルおよび参照サンプル
好ましくはBSXタンパク質または抗BSX抗体を検出する生物学的サンプルは、次からなる群より選択されるサンプルである:肺、肺と結び付いたリンパ系組織、副鼻腔、気管支、細気管支、肺胞、気道の線毛粘膜上皮、気道の粘膜上皮、気管支肺胞洗浄液(BAL)、肺胞内面液、痰、粘液、唾液、血液、血清、血漿、尿、腹水、心嚢液、胸膜液、気道の扁平上皮細胞、肥満細胞、杯細胞、肺胞細胞(1型もしくは2型)、上皮内樹状細胞、PBMC、好中球、単球、または任意の1以上の前記組織、液体もしくは細胞の任意の免疫グロブリン含有画分。
ある実施形態において、生物学的サンプルは患者から以前に得たものである。
ある実施形態において、生物学的サンプルは、次からなる群より選択される方法により被験体から得られる:手術または他の切除法、例えば高張食塩水またはプロピレングリコール型の体液の吸引、気管支肺胞洗浄、気管支鏡検査、ガラス管を用いた唾液採取、salivette(Sarstedt AG, Sevelen, Switzerland)、Ora-sure (Epitope Technologies Pty Ltd, Melbourne, Victoria, Australia)、omni-sal (Saliva Diagnostic Systems, Brooklyn, NY, USA)および当技術分野の任意の周知技術を用いた(例えばシリンジを用いた)血液採取。
生物学的サンプルが、例えばGershman, N.H. ら, J Allergy Clin Immunol, 10(4): 322-328, 1999に記載の方法を用いて、患者の肺から単離された痰であることは特に好ましい。
別の好ましい実施形態において、生物学的サンプルは、当技術分野の周知技術を用いて患者から採取した血液から分離された血漿である。
ある実施形態においては、生物学的サンプルを処理して、前記サンプル中の細胞を溶解させる。かかる方法には、界面活性剤、酵素の使用、前記細胞の凍結と解凍の反復、ガラスビーズの共存下での前記細胞の超音波処理またはボルテックス処理(vortexing)などが含まれる。
別の実施形態においては、生物学的サンプルを処理して前記サンプル中に存在するタンパク質を変性させる。タンパク質を変性させる方法には、サンプルを加熱すること、サンプルを2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール(DTT)、界面活性剤または他の化合物、例えばグアニジンもしくは尿素で処理することが含まれる。例えば、痰を液化するにはDTTの使用が好ましい。
さらなる実施形態においては、生物学的サンプルを処理して前記サンプル中のタンパク質を濃縮する。タンパク質濃縮方法としては、沈降法、凍結乾燥法、漏斗管ゲルの使用 (TerBush and Novick, Journal of Biomolecular Techniques, 10(3); 1999)、限外濾過法または透析法が挙げられる。
本発明の提供する診断方法および予後診断方法は、感染症または疾患において診断的または予後診断的なタンパク質量を決定するためにある程度の定量化を必要とすることは明らかであろう。かかる定量は、本明細書に記載のアッセイに適当な参照サンプルを追加することにより測定することができ、ただし前記参照サンプルは健康または正常な個体由来である。
ある実施形態において、参照サンプルは例えば、以前にまたは最近感染されておらず、かつ感染症または疾患を罹患していない健康被験体由来の細胞、液体または組織を含む。かかる参照サンプルが、取得するために手術切除または手術介入を必要としない液体または組織由来であることは都合がよい。従って、体液およびその誘導物は好ましい。非常に好ましい参照サンプルには、痰、粘液、唾液、血液、血清、血漿、尿、BAL液、腹水、心嚢液、胸膜液、PBMC、好中球、単球または前記組織、体液、もしくは細胞の任意の1以上の任意の免疫グロブリン含有画分が含まれる。
参照サンプルおよび検査サンプル(つまり患者サンプル)の両方を処理、分析またはアッセイし、その後、参照サンプルおよび検査サンプルについて得られたデータを比較する。ある実施形態において、参照サンプルおよび検査サンプルを同時に処理、分析またはアッセイする。別の実施形態においては、参照サンプルおよび検査サンプルを異なる時点で処理、分析またはアッセイする。
別の実施形態においては、アッセイに参照サンプルを追加しない。その代わり、参照サンプルは、以前に作製した確立されたデータセットから導出することができる。従って、ある実施形態において、参照サンプルは、健康個体のサンプル集団調査由来のデータ(例えば、検査する対照(integer)の健康範囲について統計的に有意なデータ)を含む。検査サンプルの処理、分析またはアッセイにより導出されたデータを、その後サンプル集団について得たデータと比較する。
集団を表すのに十分に大きな数の参照サンプルから得られたデータは、特定のパラメーターの平均レベルを決定するためのデータセットの作成を可能にする。従って、感染症または疾患について診断的または予後診断的なタンパク質量を、どのような個体集団について、および前記個体由来のどのようなサンプルについても決定することができるが、これはその後アッセイするサンプルについて決定された発現産物のレベルと比較するためである。かかる正規化データセットを当てにする場合、好ましくは行う各アッセイについて内部コントロールを追加して、ばらつきを制御する。
診断アッセイキット
本発明は、生物学的サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の検出キットを提供する。ある実施形態において、キットは、
(i) BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに結合する1以上の単離された抗体、および
(ii) 抗原抗体複合体の形成を検出する手段、
を含む。
別の実施形態において、キットは、
(i) 単離または組換えBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープ、および
(ii) 抗原抗体複合体の形成を検出する手段、
を含む。
対象キットの抗体、免疫原性BSXペプチド、および検出手段は好ましくは本明細書で先に記載の抗体および免疫原性BSXペプチドから選択され、そうした実施形態はここに明細書を参照したことにより組み入れられたものとする。任意のアッセイフォーマットについての適合キット成分の選択は、本明細書の記載から当業者に容易に明らかとなるであろう。
特に好ましい実施形態において、対象キットは、
(i) 配列番号24、25および45からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単離または組換えまたは合成ペプチドに結合する抗体、および
(ii) 抗ヒトIg、
を含む。
好ましくは、キットはさらに、配列番号2〜23、26〜44および46〜55からなる群より選択されるアミノ酸配列をそれぞれ含むある量の1以上の別のペプチド、または前記ペプチドのいずれか2以上の融合体を含む。
場合により、キットはさらに、抗体、その断片またはリガンドのBSXタンパク質への結合を検出する手段を含む。かかる手段としてはレポーター分子、例えば酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)、基質、補因子、阻害剤、色素、放射性ヌクレオチド、発光基、蛍光基、ビオチンまたはコロイド状粒子例えばコロイド状金もしくはコロイド状セレンが挙げられる。かかるレポーター分子が抗体またはリガンドと直接結合していることは好ましい。
さらなる実施形態において、キットはさらに参照サンプルを含みうる。かかる参照サンプルは、例えば、1以上の結核症被験体から単離された生物学的サンプル由来のタンパク質サンプルでありうる。あるいは、参照サンプルは1以上の正常健康個体から単離された生物学的サンプルを含みうる。かかる参照サンプルは、診断または予後診断アッセイ用のキットに場合により追加される。
別の実施形態において、参照サンプルは、抗体またはリガンドにより検出されるペプチドを含む。好ましくはペプチドは既知濃度のものである。かかるペプチドは標準物質として特に有用である。従って、かかるペプチドの種々の既知濃度を、本明細書に記載の予後診断または診断アッセイを用いて検出することができる。
さらなる実施形態において、キットは場合により、サンプル調製手段、例えば細胞溶解手段を含む。好ましくはかかる手段は痰を可溶化するための手段、例えば、界面活性剤(例えばトリブチルホスフィン、C7BZO、硫酸デキストラン、またはポリオキシエチレンソルビンタンモノラウレート)である。
さらなる実施形態において、キットは、タンパク質単離手段(Scopes (In: Protein Purification: Principles and Practice, 第3版, Springer Verlag, 1994)を含む。
予防方法および治療方法
BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープは、動物被験体に投与した場合に高力価抗体特異的産生を誘発することができる。
従って、本発明は、マイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する抗体の産生を誘発する方法であって、単離されたBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを、抗体(例えば、マイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する中和抗体)の産生を誘発するのに十分な時間および条件下で被験体に投与することを含む前記方法を提供する。
中和抗体は高力価中和抗体であることが好ましい。
抗体を産生するためのBSXタンパク質またはエピトープの有効量は、免疫原性B細胞エピトープの性質、投与経路、免疫に使用した動物、および所望の抗体の性質に応じて変化する。かかる変動はいずれも、当技術分野で知られた手段により経験的に決定される。
好適な実施形態において、本発明は、被験体におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する免疫を惹起する方法であって、単離または組換えBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを、前記単離または組換えBSXタンパク質または免疫原性断片もしくはエピトープに対する液性免疫応答を惹起するのに十分な時間および条件下で、前記被験体に投与することを含む前記方法を提供する。
免疫抗原を、本明細書に記載の任意の都合よい剤形で投与することができる。
「液性免疫応答」とは、マイコバクテリウム・ツベルクローシスによる感染を予防するのに十分な、免疫抗原に対する二次免疫応答が生じることを意味する。
好ましくは、生じる液性免疫は、免疫抗原中のB細胞エピトープに対する抗体を持続するレベルで被験体中で誘導することを含む。「持続するレベルの抗体」とは、マイコバクテリウム・ツベルクローシスによる感染を予防するのに十分なレベルのB細胞エピトープに対する循環抗体を意味する。
好ましくは、抗体レベルは、少なくとも約6月または9月または12月または2年持続する。
別の実施形態において、本発明は、被験体の免疫系を増強する方法であって、免疫学的に活性なBSXタンパク質もしくはそのエピトープまたは前記BSXタンパク質もしくはエピトープを含んでなるワクチン組成物を、前記被験体にマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する耐性を付与または増強するのに十分な時間および条件下で投与することを含む前記方法を提供する。
「耐性を付与または増強する」とは、前記被験体中で以下からなる群より選択されるマイコバクテリウム・ツベルクローシス特異的免疫応答が生じることを意味する:
(i) 前記被験体中でマイコバクテリウム・ツベルクローシスのBSXタンパク質または前記タンパク質のエピトープに対する抗体が産生する、
(ii) 前記被験体中でマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する中和抗体が産生する、
(iii) 被験体中でマイコバクテリウム・ツベルクローシスのBSXタンパク質に特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)および/またはCTL前駆細胞が活性化される、および
(iv) 被験体が以後のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症または潜伏マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の再活性化に対して増強された免疫を有する。
本発明は、未感染ヒト被験者におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する免疫を提供または増強する方法であって、前記被験体に、免疫学的に活性なBSXタンパク質もしくはそのエピトープまたは前記BSXタンパク質もしくはエピトープを含んでなるワクチン組成物を、マイコバクテリウム・ツベルクローシスによる将来の感染に対する免疫学的記憶を付与するのに十分な時間および条件下で投与することを含む前記方法を包含すると理解される。
本発明は、本明細書に記載の診断方法または予後診断方法を実施することを含む、被験体における結核症の治療方法を提供する。
ある実施形態において、本発明は、
(i) 被験体由来の生物学的サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染の存在を検出すること、および
(ii) 被験体の肺、血液またはリンパ系中の病原性桿菌数を減少させるために治療上有効量の医薬組成物を投与すること、
を含む予防方法を提供する。
BSXタンパク質もしくはエピトープまたはワクチンを、潜伏性または活動性のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を有する被験体に投与することは好ましい。
なんら特定の理論または作用機序に限定されるものではないが、治療方法は、T細胞がマイコバクテリウム・ツベルクローシスを保持する細胞を認識し溶解する能力を増強する、またはT細胞がマイコバクテリウム・ツベルクローシスの抗原のT細胞エピトープを認識する能力が、一過的にまたは持続的に増強される。同様に、T細胞集団の再活性化は、潜伏型マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の活性化に続き、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスによる再感染に続き、または以前に感染していた被験体の本発明のBSXタンパク質もしくはエピトープまたはワクチン組成物を用いた免疫に続き、生じうる。標準方法(例えば、細胞傷害性アッセイ、ELISPOTの使用、または被験体のPBMC中のIFN−γ産生の決定)を用いて、被験体中でCTL活性化が起きたか否かを決定することができる。
好ましくは、ペプチドまたは誘導体または変異体またはワクチン組成物は、CD8+ T細胞の増殖を誘発または増強するのに十分な時間および条件下で投与する。さらに好ましくは、ペプチドまたは誘導体または変異体またはワクチン組成物は、マイコバクテリウム・ツベルクローシス特異的細胞仲介免疫(CMI)が被験体中で増強されるのに十分な時間および条件下で投与する。
「マイコバクテリウム・ツベルクローシス特異的CMI」とは、活性化CTLおよびクローンとして増殖したCTLが、MHC拘束されておりかつ本発明のCTLエピトープについて特異的であることを意味する。CTLは抗原特異性およびMHC拘束に基づいて分類される(すなわち非特異的CTLおよび抗原特異的、MHC拘束型CTLがある)。非特異的CTLは、種々の細胞型(これにはNK細胞および抗体依存性細胞傷害性細胞も含まれる)により構成され、かつ抗原特異的応答が確立中の間にも、免疫応答の極初期に機能して病原体負荷を減少させることができる。対照的にMHC拘束型CTLは、非特異的CTLよりも後の、一般に抗体産生の前に、最適活性をもたらす。抗原特異的CTLはマイコバクテリウム・ツベルクローシスの拡散を阻害または低減させ、好ましくは感染を終結させる。
CTL活性化、クローン増殖、またはCMIは、全身的にまたは区画局所化的に誘導されうる。区画局所的作用については、その区画への投与のために適当に製剤化されたワクチン組成物を利用することが好ましい。一方、被験体において全身的にCTL活性化、増殖またはCMIを誘導するに当たってのこのような厳しい要件は存在しない。
CTL活性化、クローン増殖、またはCMIを誘発するための、単独またはワクチン組成物として投与するBSXタンパク質またはそのエピトープの有効量は、免疫原性エピトープの性質、投与経路、免疫する被験体の体重、年齢、性別または全身的健康、および所望のCTL応答の性質に応じて変化する。かかる変動はいずれも、当技術分野で知られた手段により経験的に決定される。
BSXタンパク質またはそのエピトープを、場合により任意の適当なまたは所望の担体、アジュバント、BRM、または製薬上許容可能な賦形剤とともに製剤化したものは、都合良く注入可能組成物の形態で投与する。注入は、鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、または他の既知経路によるものでありうる。静脈内注射については、1以上の流体および栄養補給剤が含まれることが望ましい。
最適投与量および好ましい投与経路は、動物モデルを用いて、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギまたはブタにペプチドを含む製剤を注入すること、およびその後任意の慣用アッセイを用いてエピトープに対するCTL免疫応答をモニターすることにより構築する。
受動移入技術もまた、マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症に対する耐性を付与または増強するため、または再活性化する潜伏感染を予防するまたはその重症度を低減するために使用することができる。従って、関連する実施形態において、未感染ヒト被験者におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する免疫を増強または付与する方法であって、ヒト被験者由来のT細胞と、免疫学的に活性なBSXタンパク質もしくはそのエピトープまたは前記タンパク質もしくはエピトープを含むワクチン組成物とを、前記T細胞にマイコバクテリウム・ツベルクローシス活性を付与するのに十分な時間および条件下で、生体外(ex vivo)で接触させることを含む前記方法を提供する。
好適な実施形態において、本発明は、ヒト被験者のマイコバクテリウム・ツベルクローシス特異的細胞仲介免疫を増強する方法であって、
(i) ヒト被験者由来のT細胞と、免疫学的に活性なBSXタンパク質もしくはそのCTLエピトープまたは前記タンパク質もしくはエピトープを含むワクチン組成物とを、前記T細胞にマイコバクテリウム・ツベルクローシス活性を付与するのに十分な時間および条件下で、生体外(ex vivo)で接触させること、および
(ii) 該活性化T細胞を被験体に自己移入すること、または別のヒト被験者に同種異系移入すること、
を含む前記方法を提供する。
T細胞はCTL細胞またはCTL前駆細胞でありうる。
T細胞を得るヒト被験者は、処置する被験体と同じ被験体または異なる被験体であってもよい。処置する被験体は、潜伏性もしくは活動性マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を有する、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染もしくはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染再活性化のリスクを有するあらゆるヒト被験者、またはさもなくばマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対するワクチン摂取を施す必要のある、もしくはマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対するワクチン摂取を望んでいる人である。
かかる受動移入は、好ましくは実質的にEinsele ら, Blood 99, 3916-3922, 2002に記載のように行われ(参照によりその手法を本明細書に組み入れる)、その後マイコバクテリウム・ツベルクローシス反応性をアッセイする。
「マイコバクテリウム・ツベルクローシス活性」とは、T細胞が本明細書に先に定義したように活性化されうる(すなわちT細胞が、マイコバクテリウム・ツベルクローシスを保持する細胞を認識し溶解する、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスの抗原のT細胞エピトープを一過的にまたは持続的に認識することができるように活性化されうる)ことを意味する。従って、T細胞がCTL前駆細胞であることは特に好ましく、そのことにより本発明の方法は、マイコバクテリウム・ツベルクローシスを保持する細胞を認識し溶解することができる、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスの抗原のT細胞エピトープを一過的にまたは持続的に認識することができるようになる。
かかる生体外(ex vivo)用途において、T細胞は好ましくは、ヒト被験者から得られた生物学的サンプル、例えば一次すなわち中枢リンパ器官(例えば骨髄もしくは胸腺)または二次すなわち末梢リンパ器官(例えば血液、PBMCもしくはそれ由来の軟膜画分)を含む生検試料中に含まれるものである。
好ましくは、T細胞またはT細胞を含む試料はヒト被験者から以前に(例えば、試料を分析してもらうために病理検査室に問い合わせた顧問医師により)得たものである。
好ましくは、対象の方法はさらに、被験体のT細胞を含むサンプルを得ること、およびより好ましくは前記サンプルを前記被験体から得ることを含む。
製剤
本発明は、ヒトまたは他の動物被験体におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症に対する治療用または予防用サブユニットワクチンの調製におけるBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープの使用を明らかに考慮する。
従って、本発明は、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを製薬上許容される希釈剤と組み合わせて含む医薬組成物またはワクチンを提供する。
BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープは、製薬上許容される賦形剤または希釈剤、例えば水性溶媒、非水性溶媒、無毒性賦形剤、例えば塩、保存剤、緩衝剤などに都合よく配合される。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油および注入可能有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性溶媒としては、水、アルコール性/水性溶液、生理食塩水溶液、非経用口ビヒクル、例えば塩化ナトリウム、リンガーデキストロースなどが挙げられる。保存剤としては抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスが挙げられる。医薬組成物のpHおよび種々の成分の厳密な濃度は当技術分野のルーチン技術により調整される。
特定の状況では、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープをアジュバントと配合してB細胞エピトープに対する免疫応答を増強することもまた望ましい。この場合もやはり、厳密に言えばこれは必須ではない。かかるアジュバントには、全ての許容可能な免疫刺激性化合物、例えばサイトカイン、毒素、または合成組成物が含まれる。典型的アジュバントとしては、IL-1、IL-2、BCG、水酸化アルミニウム、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thur-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11637、nor-MDPと呼ぶ)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン ((CGP) 1983A、MTP-PEと呼ぶ)、リピドA、MPLおよびRIBI(これは2%スクアレン/Tween 80 エマルジョン中に細菌から抽出した3成分であるモノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含有するものである)が挙げられる。
マイコバクテリウム・ツベルクローシスに対するワクチンに使用するための特に好ましいアジュバントは、例えばElhay and Andersen Immunol. Cell Biol. 75, 595-603, 1997; またはLindblad ら, Infect. Immun. 65, 1997に記載されている。
生物学的応答調節剤(BRM)をBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープと共投与して、サプレッサーT細胞活性をダウンレギュレートすることが望ましいことがある。典型的BRMとしては、限定するものではないが、シメチジン(CIM; 1200 mg/d) (Smith/Kline, PA, USA)、インドメタシン (IND; 150 mg/d) (Lederle, NJ, USA)、または低用量シクロホスファミド(CYP; 75、150または300 mg/m.sup.2) (Johnson/Mead, NJ, USA)が挙げられる。
BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープ投与用の好ましいビヒクルとしてはリポソームが挙げられる。リポソームとは水性区画を囲む1以上の脂質二重層からなる微小ビヒクルである。(Bakker-Woudenberg ら, Eur. J. Clin. Microbiol. Infect. Dis. 12(Suppl. 1), S61 (1993); およびKim, Drugs 46, 618 (1993))。リポソームは細胞膜と組成が似ており、その結果リポソームは一般に投与が安全であり、生分解性である。
リポソームの調製技術および種々の分子(ペプチドおよびオリゴヌクレオチドを含む)とリポソームとの配合(例えば封入)は、当業者に周知である。
調製方法に応じて、リポソームは単層または多層型であり、またその大きさも直径が0.02μm〜10μm以上へと変化しうる。様々な物質がリポソーム内に封入される。疎水性物質は二重層に分配され、親水性物質は内側の水性空間に分配される (Machy ら, LIPOSOMES IN CELL BIOLOGY AND PHARMACOLOGY (John Libbey 1987)、およびOstro ら, American J. Hosp. Pharm. 46, 1576 (1989))。
リポソームはまた実質的にどのような種類の細胞にも吸着可能であり、その後封入物質を放出する。あるいは、リポソームは標的細胞と融合し、そのことによりリポソームの内容物が標的細胞内へと流入する。あるいは、吸着したリポソームは食作用性の細胞によって取り込まれ(endocytose)うる。エンドサイトーシスに続き、リポソーム脂質のリソソーム内分解および封入物質が放出される(Scherphof ら, Ann. N.Y. Acad. Sci. 446, 368 (1985))。本明細書の文脈において、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープはリポソーム表面に局在化されてもよく、リポソームの崩壊またはエンドサイトーシスなしに抗原提示を促進する。しかしながら機構または送達にかかわらず、結果は付随するBSXタンパク質または免疫原性断片もしくはエピトープの細胞内配置である。
リポソームベクターはアニオン性またはカチオン性でありうる。アニオン性リポソームベクターとしては、エンドサイトーシスおよびエンドソーム酸性化に続き崩壊するまたはエンドソーム膜と融合するpH感受性リポソームが挙げられる。カチオン性リポソームはin vitroでの哺乳動物細胞トランスフェクションの仲介、または核酸の一般的な送達に好適であるが、それにとどまらず他の治療剤(例えばペプチドまたはリポペプチド)の送達にも使用される。
カチオン性リポソーム調製物は慣用の方法論により作製される(Feigner ら, Proc. Nat'l Acad. Sci USA 84, 7413 (1987); Schreier, Liposome Res. 2, 145 (1992))。市販の調製物、例えばリポフェクチン(Life Technologies, Inc., Gaithersburg, Md. USA)は容易に入手可能である。投与するリポソーム量は用量応答曲線に基づいて最適化する。Feigner ら, 上記。
本発明の方法に使用する他の適当なリポソームとしては、多層型小胞 (MLV)、オリゴ層型小胞(OLV)、単層型小胞 (UV)、小型単層型小胞(SUV)、中型単層型小胞(MUV)、大型単層型小胞(LUV)、巨大単層型小胞(GUV)、多小胞体型小胞 (MVV)、逆相蒸発法により作製した単層またはオリゴ層型小胞 (REV)、逆相蒸発法により作製した多層型小胞(MLV-REV)、安定な多数層型小胞(SPLV)、凍結および解凍されたMLV (FATMLV)、押出法により調製した小胞 (VET)、フレンチプレスにより調製した小胞 (FPV)、融合により調製した小胞 (FUV)、脱水-再水和型小胞(DRV)、およびバブルソーム(bubblesomes) (BSV)が挙げられる。こうしたリポソームを調製する技術は当技術分野で周知であると当業者ならば認識するであろう。(COLLOIDAL DRUG DELIVERY SYSTEMS, 第66巻, J. Kreuter,編, Marcel Dekker, Inc. 1994を参照されたい)。
他の形態の送達粒子、例えばミクロスフェアなどもまた、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープ送達について考慮される。
適当な製剤および製薬上効果的なビヒクルの調製の指針は、例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 第83-92章, 1519-1714ページ (Mack Publishing Company 1990) (Remington's)に見られ、ここに参照により本明細書に組み入れる。
あるいは、ペプチドまたは誘導体または変異体は、ペプチドをその表面に提示するようにin vitro処理された自己または同種異系の抗原提示細胞(APC)または樹状細胞の投与を介する細胞性ワクチンとして製剤化することができる。
核酸、例えば免疫学的に活性なBSXタンパク質またはエピトープをコードしかつ適当なベクター(例えばワクシニア、カナリア痘、アデノウイルス、または他の真核ウイルスベクター)にクローニングされたDNAまたはRNAを含む核酸に基づくワクチンもまた包含される。好ましくは、BSXタンパク質をコードするDNAは、例えば現行のカルメット・ゲラン(BCG)または免疫アジュバント、例えばワクシニアウイルス、フロイントのアジュバントまたは別の免疫刺激物質と併用して、DNAワクチンに配合する。
本発明を以下の非限定的実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
プロテオミック分析用血清の調製
HIV+ かつマイコバクテリウム・ツベルクローシス培養陽性血清、ならびにHIV+ マイコバクテリウム・ツベルクローシス培養陰性血清を独立に解凍し処理した。CHAPSを最終濃度0.5%(w/v)となるように添加した。その後サンプルを9部分量の冷却(-20℃)アセトンと混合し、ついで-20℃で約1時間沈降させた。沈殿を4℃で20分間5000 gでペレット化し、ついで10部分量の7M尿素、2Mチオ尿素、CHAPS 2%、5 mM Tris中で渦巻き状に激しく撹拌して再懸濁した。懸濁物を5 mM トリブチルホスフィンで室温で1時間還元し、その後15 mMヨードアセトアミド(300 mM溶液として新しく調製したヨードアセトアミド)で1時間アルキル化した。
実施例2
分析方法
複数区画型電気泳動(Multi Compartmental Electrophoresis MCE)
MCE膜は、pH 3、 5.5、 6.3および10.5で、2.5μl TEMED、5μlと40%のAPSをimmobiline溶液と一緒にし、その後マイクロファイバーガラス濾紙をこの溶液で浸し、その後50℃で1時間放置して乾燥させることにより調製した。乾燥したら、膜を4回、7M尿素で30分間洗浄した。
還元しアルキル化したサンプルをMCEの中央チャンバーに適用した。中央チャンバーに隣接するチャンバーには、7M尿素、2Mチオ尿素およびCHAPS 2%を適用した。末端の酸性チャンバーには7M尿素、2Mチオ尿素およびオルトリン酸(最終濃度0.28%v/v)を適用した。酸性チャンバー溶液のpHは約2.5であり、隣接チャンバーのpHよりも約0.5 pH単位低くなるようにオルトリン酸で調整した。末端のアルカリ性チャンバーには7M尿素、2Mチオ尿素および約7 mM水酸化ナトリウム(10 Mストックから希釈)を適用した。アルカリ性チャンバー溶液のpHは、隣接チャンバーのpHよりも約0.5 pH単位高い約pH 11に調整した。各チャンバーを実験中激しく撹拌した。
サンプルをMCE中で、40〜48時間、600〜800ボルトの高電圧と一定ワット数1でフォーカシングした。サンプルを装置から移し、1 mlアリコートへとピペッティングし、-80℃で貯蔵した。それぞれの大スケールMCE実行は、3つの画分、すなわち酸(pI 3-5.5)、アルブミン(5.5-6.3)およびアルカリ(6.3-10.5)画分を生じた。
一次元電気泳動:
実験の目的に応じて、サンプルを7 cm または11 cm IPG 細片でフォーカシングした。7 cm細片は45,000〜50,000 Vhでフォーカシングを行い、11 cm細片は約110,000 Vhでフォーカシングを行った。
二次元電気泳動:
全ての細片はInvitrogen NuPage Bis-Tris 4〜12%、1.5 mm、2Dミニゲルまたは、Proteome Systems 11 cm ゲルチップを用いて電気泳動した。Invitrogen NuPage Bis-Trisゲルに用いた11 cm細片については、IPG細片を半分に切断した。各半分を別のゲルに適用した。IPG細片を、1 x MOPSゲル泳動バッファー中で調製する0.5%アガロースに埋め込んだ(Invitrogenの説明書のように)。ゲル泳動工程は5 mA/ゲルで30分、10 mA/ゲルで30分、および30 mA/ゲルで追跡用色素がゲル底の手前約3 mmに達するまで行った。Proteome Systems ゲルチップは、50 mM Tris、50 mM トリシン、1%SDSを用いて、ゲル当たり50mAで1.1〜1.3時間泳動した。ゲルを、G-250コロイド状クーマシーブルーまたはSyproRubyまたは銀で染色した。SyproRubyで染色するゲルは、最初に7%酢酸および10%メタノールを2回交換して固定し、染色し、その後同じ試薬で一晩脱染色した。
質量分析:
二次元(2D)ゲルを、AlphaInnotechゲルイメージャーで撮像したおよび/またはHP Scanjet 5200Cを用いてスキャンしファイルした。2Dゲル由来のタンパク質スポットを切り出して、150μl 50%v/v アセトニトリル(MeCN)に浸し、テープで密封し、ついで30℃で1時間インキュベートしてクーマシー染色を除去した。MeCNを除去し、ついでゲル片をさらに20分間オーブンで乾燥させた。30μlの50 mM NH4HCO3中の5μg/mlトリプシンバッファーをゲル片に加え、一晩30℃で消化させた。一晩のトリプシン消化後、ペプチドを抽出し、MAP II/8を用いて標的プレートに自動的に適用した。これらの工程の後、残留タンパク質抽出物をありうるさらなる分析のために-20℃で貯蔵した。材料が、MALDIまたはMALDI PSD 分析ではなくLC MS-MS分析を意図したものであれば、最後のMAP II/8工程は省略することができることに留意されたい。このことから、実験の目的に応じて、推定上の同定物(putative identification)を、i)同定するまたはii)確認するために、MALDI-MS-TOF、MALDI-MS-TOF-PSD、およびLC MS-MS(ナノスプレーLC-MS-MSも含む)のMS技術をどのような組み合わせでも使用することができる。MALDI分析については、Shimadzu Kratos Axima-CFRまたはBruker Biflex III装置を使用した。
バイオインフォマティック解析:
質量分析ピークの自動取得に次いで、データを以下のように処理した。全てのスペクトルを最初にペプチド質量の校正が正しいかチェックした。その後、スペクトルを処理して、バックグラウンドノイズ(トリプシンピークおよびマトリックスに対応する質量も含む)を除いた。次にデータを、Proteome Systems サーチエンジンIonIQ v69を用いて、公に利用可能なSwissProtデータベースおよびTrEMBLデータベースに対して検索した。PSDデータは、インハウス型サーチエンジンFragmentastIQを用いて、同じデータベースに対して検索した。LC MS-MSデータはまた、SEQUESTサーチエンジンソフトウェアを用いてこれらのデータベースに対して検索した。
実施例3
マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の診断マーカーの同定
等電点約5.23および分子量約15356 ダルトンのタンパク質を、TB+/HIV+ サンプル (ゲル番号P802、タンパク質スポット17)から同定した。6種のペプチド(配列番号48〜53を含め)がMALDI-TOFデータからのこのタンパク質とマッチし、うち2種に1つの切断がなく、また、うち4種にミスした切断は無かった。GenBank 登録番号第O53759番(配列番号1)のタンパク質の、これら6種のペプチド(配列番号48〜53)によるパーセントカバー範囲は32.1%であり、このことはこれらのペプチド断片が同じタンパク質マーカー由来であることを示唆する。2種のペプチドはメチオニンスルホキシド修飾されていた。これらのデータは表1に示してあり、PMFデータを解析するために使用したIonIQ データベースから取得した。
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する同定されたタンパク質を、XREファミリー様タンパク質(すなわち、特定の原核生物遺伝子(例えばCro、cl、HipB)の上流領域に存在するシス作動性異物応答エレメントに結合する転写調節タンパク質)に通常存在するヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフの存在に基づき、「BSX」と命名した。
配列番号1に記載のアミノ酸配列は、マイコバクテリウム・ツベルクローシスゲノムのオープンリーディングフレームをコンピューター内(in silico)で翻訳することにより同定された、マイコバクテリウム・ツベルクローシスの仮想タンパク質に対応する。従って、このことはマイコバクテリウム・ツベルクローシスのBSXタンパク質が、ヒト宿主における活動的な結核症感染中に発現されることの最初の開示を提供する。これらのデータは、TB+/HIV+血清中から同定されたマイコバクテリウム・ツベルクローシスBSXタンパク質が、結核症のための診断用および治療用試薬の調製の有力な候補タンパク質であることを示唆する。
Figure 2008515388
実施例4
マイコバクテリウム・ツベルクローシスのBSXタンパク質のB細胞エピトープマッピング
1. 合成ペプチド
BSXタンパク質の免疫原性エピトープを同定するために、配列番号1に記載の一次アミノ酸配列から、合成ペプチドのセット(PEPSET)を作製した。これらの合成ペプチドは、配列番号2〜44に記載のアミノ酸配列に、配列番号1中の対応する断片の配列と比較して、追加のN末端および/またはC末端配列伸長を付加した配列を有する。
特に、表2中の#1の合成ペプチドは、配列番号1のN末端15残基とC末端伸長Gly-Ser-Glyからなるように作製した。このペプチドの基となったペプチド配列を配列番号2に示す。PEPSET中の残りの合成ペプチド(すなわち表2中の#2〜#43)は、それぞれ、配列番号3〜44に示す基となったBSXペプチド配列に、N末端伸長Ser-Gly-Ser-Glyを付加した配列を有する。
ペプチドの構造を表2に示す。基となったペプチド配列、すなわち配列番号1由来の配列ならびにN末端および/またはC末端配列伸長を含む配列の他に、表2に示す構造には、各ペプチドのN末端および/またはC末端に付加した標識(例えばビオチン、BioCytAm)も含まれる。標識は免疫アッセイ(例えばELISA)におけるペプチドの使用を促進するためのものである。これに対して配列番号2〜44に記載の配列は、基となったペプチド、すなわち配列番号1由来の配列ならびにN末端および/またはC末端配列伸長を含む配列を示すのみであり、修飾残基は含まれていない。当業者ならば、ペプチド合成およびタンパク質の免疫学的検出の標準法を用いてかかる修飾物を容易に追加することができるであろう。
Figure 2008515388
2. 血清サンプル
合計30個のTB陽性サンプルおよび52個のTB陰性サンプルを、PEPSETのペプチドでスクリーニングした。これらには南アフリカ(S.A.)黒人TB陽性個体、S.A.黒人TB陰性個体、S.A.白人TB陰性個体、人種不明の世界保健機関(WHO)TB陽性個体、人種不明のWHO TB陰性個体、およびオーストラリア白人TB陰性対照個体由来の血清、ならびに中国人TB陽性個体および中国人TB陰性個体由来の血漿が含まれる。
サンプルを、以下に説明するように構築したELISA系を用いて抗体の存在についてスクリーニングした。
3. ELISAアッセイ
Nunc-Immuno module maxisorp ウェルを、室温で一晩または4℃で週末にかけて、milli-Q水で希釈した5μg/ml ストレプトアビジンで100μl/ウェルでコーティングした。ストレプトアビジンをウェルから除き、その後各ウェルを、ウェル当たり1.0%(w/v)カゼイン、0.1%(v/v) Tween 20 および0.1%(w/v) アジ化合物(ブロッキング試薬)を含有する200μl リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でブロッキングした。1時間後に、ブロッキング試薬を除き、その後各ウェルを、100μlのブロッキング試薬中のビオチン化ペプチドで1時間、プレートを揺らしながらコーティングした。その後、各ウェルをPBS/0.1%Tween 20で5回洗浄し、吸収紙で乾燥させ、次いで乾燥剤と共に4℃で貯蔵するかまたは直ちに使用した。これをその後、ブロッキング試薬で1:50に希釈した50μlの患者血清または血漿と、揺らしながら1時間インキュベートした。このインキュベーション後、全てのウェルは、PBS/0.1%Tween 20を用いて層流で5回洗浄し、次いでタップして乾燥させた。その後、100μlのヒツジ抗ヒトIgG セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートを各ウェルに添加した。コンジュゲートを、PBS/0.1%(w/v)カゼイン/0.1%(v/v) Tween 20/0.1%(w/v) チメロサール中で1:10,000 (v/v)に希釈し、その後揺らしながら1時間インキュベートした。次いで各ウェルを、PBS/0.1%(v/v) Tween 20を用いて4回洗浄し、その後PBSを用いて2回洗浄した。最後に、100μlの液体TMB基質に基づくシステム(Sigma)を各ウェルに添加し、その後ウェルを暗条件で20分間室温でインキュベートした。100μlの0.5M 硫酸の添加により反応を停止させた。各ペプチドを二重反復してアッセイし、二重反復物に再現性がないようであればさらに繰り返した。
患者サンプルと平行して、4種のコントロールサンプルもまた次のように検査した:
1. ネガティブコントロール: ストレプトアビジン/ペプチド24/血清無しまたは血漿無し/コンジュゲート、
2. ペプチドコントロール: ストレプトアビジン/ペプチド無し/患者血清または血漿/コンジュゲート、
3. ポジティブコントロール: ストレプトアビジン/ペプチド24/S.A.血清7/コンジュゲート、および
4. 血清バックグラウンド: ストレプトアビジン無し/ペプチド無し/患者血清または血漿/コンジュゲート。
ポジティブコントロールにはS.A.血清7を使用した。これは予備ELISA実験において見られたその一貫して再現性のよい陽性結果ゆえである。
4. データ解析
免疫原性ペプチドは、ペプチド吸収の分布における外れ値として表され、これらは、ロバストM推定から推定される平均値および標準偏差を用いた正規スコア統計の計算による対数変換正規化の後に検知する。
5. 結果
TB陽性およびTB陰性サンプルの、BSXペプチドに対する抗体の存在についてのマススクリーニングは、TB陽性サンプルの47%が抗BSX抗体を有することを実証した(表3)。何らかのBSXペプチドに対して陽性と検査されたTB陰性患者には、1人の中国人、1人のS.A.白人および1人のオーストラリア白人個体が含まれた。
Figure 2008515388
HIV状態を追加して患者集団全体を差別化することにより、TB/HIV相関が明らかになった。このとき、抗BSX抗体を有するTB陽性サンプルの76%がHIV+でもあった(表3)。このことはS.A.群のサンプルにおいてさらに実証され、その集団ではスクリーニングしたS.A. TB陽性/HIV+ サンプルの80%がBSXに対する抗体を有した(表4)。
Figure 2008515388
表5は、S.A. TB陽性/HIV+ 集団中に存在する抗BSX抗体の特異性と再発頻度を示す。合計8種のBSXペプチドがスクリーニングしたS.A. TB陽性/HIV+ 血清サンプルに固有のものであった。抗BSX24抗体(BSX24は配列番号25に記載の基となったペプチドを含有する)は9/12症例に存在し、続いて抗BSX23(BSX23は配列番号24に記載の基となったペプチドを含有する)抗体は3/12症例に生じ、抗BSX20 (BSX20は配列番号21に記載の基となるペプチドを含有する)抗体および抗BSX35(BSX35は配列番号36に記載の基となったペプチドを含有する)抗体は2/12症例に存在し、また、抗BSX13(BSX13は配列番号14に記載の基となったペプチドを含有する)抗体、抗BSX19 (BSX19は配列番号20に記載の基となったペプチドを含有する)抗体、抗BSX21 (BSX21は配列番号22に記載の基となったペプチドを含有する)抗体および抗BSX42 (BSX42は配列番号43に記載の基となったペプチドを含有する)抗体は1/12症例にしか存在しなかった。
Figure 2008515388
反対に、BSXについてスクリーニングした全ての中国人血漿はHIV- であり、その肺診断に基づいて分類した(表6)。肺外または肺TB陽性血漿はいずれもBSXに対する抗体を含有せず、一方、スクリーニングしたTB陰性血漿の1つのみが1種のBSXペプチドに対する抗BSX抗体を含有した。
Figure 2008515388
抗BSX抗体についてスクリーニングした最後のTB陽性群は、由来人種不明の4つのWHO血清サンプルであった。サンプルのうち2つがTB陽性/HIV+であり、そのうちの1つはBSX、特に配列番号25に記載の基となったペプチドを含むBSX24に対する抗体が陽性と検査された。
BSXに対する抗体は3つのTB陰性サンプルから同定されたが、しかしながら、そのいずれも由来する人種と無関係のTBにユニークな8種の候補ペプチドに対する抗体を有しなかった。この8種とは配列番号14、20、21、22、24、25、29および36である。
6. 考察
TB陽性およびTB陰性血清または血漿のELISA分析は、マイコバクテリウム・ツベルクローシスの完全長BSXタンパク質のB細胞エピトープを含有する多数の免疫原性BSXペプチドの同定をもたらした。
ペプチドBSX24(配列番号25)は、検査したいずれのコントロールTB陰性血清またはコントロール血漿においても免疫原性であることはなかった。また、8種のユニークな候補ペプチドのいずれもTB陰性S.A.黒人被験者由来の血清中で免疫原性であることはなかった。これらのことは、BSXおよび/またはその任意のペプチドの診断試薬としての、ならびに、マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症のための抗原に基づくアッセイに使用するのに適当なモノクローナル抗体の調製における免疫源としての適合性を強化する。
その上、BSXペプチド24(配列番号25)の血清学的反応性に関するHIV状態とTB状態の相関性には多くの治療的利点、例えばTBおよびHIV状態を検知する能力および/またはHIV+ 個体におけるTB状態をモニターすることなどの利点がある。TBとHIVとの相関性をさらに強調するためには、検査した全ての中国人サンプルがHIV-陰性であったことに留意することが重要である。
中国人コホート中の患者由来の血漿からBSXに対する抗体が検出されないことは、肺性TBが肺に限定されることに関連するのかもしれない。これに対して南アフリカ人患者ではHIV陽性状態は多くの場合、肺外疾患と関連しており、より全身性である。あるいはまた、BSXは南アフリカ人TB患者と比較して中国人患者ではさほど高発現されないのかもしれない。
実施例5
BSXタンパク質(配列番号1)由来合成ペプチドに対するTBおよび非TB血清のスクリーニング
1. 合成ペプチド
3種のペプチドをPbsXファミリーの転写調節因子のアミノ酸配列(SwissProt登録番号O53759)から合成し、TB陽性血清中でのヒト免疫グロブリンGの捕捉物質として評価した。BSX(23-24)ペプチド(配列番号45)と命名した1種のペプチドは、先の実施例で同定した配列番号25に記載の高免疫原性ペプチド配列、および完全長タンパク質(配列番号1)においてこの配列に連結されている追加のN末端およびC末端配列を含み、かつC末端側でシステイン残基にコンジュゲートされている。N-C末端(配列番号46)と命名した別のペプチドは、配列番号1のN末端7残基と配列番号1のC末端7残基とが介在するシステイン残基により融合された配列を含む。ペプチド28(配列番号47)と命名した第3のペプチドは、配列番号29に記載の配列がC末端側でシステイン残基にコンジュゲートされた配列を含む。これら3種のさらなるペプチドの配列を以下の表7に示す。
Figure 2008515388
ELISAフォーマットにおいては、配列番号45〜47に記載のペプチドは、先の実施例で説明したように、基となるペプチドに対するN末端リンカー(Ser-Gly-Ser-Gly)をさらに有する。これはペプチドの固体マトリックスへの結合を促進するためである。
C末端システイン残基と内部システイン残基は、その後の抗体産生のためのペプチドの架橋を促進するために追加した。
2. 血清
血清は、各実験において41〜44のTB陽性患者(すなわち、TB陽性血清)、および51の健康コントロール被験者(すなわち非TB血清)から得られた血清のパネルである。
3. ELISAアッセイ
配列番号45〜47の配列を有するペプチドを3 μg/mLとなるように、5 μg/mLのストレプトアビジン基剤を用いてELISAトレイにコーティングし、ついで(ブロッキング後)非TBコントロール血清および既知TB陽性血清でプローブした。血清を使用前に1/50 (v/v)希釈した。ヒトIgGの捕捉は、酵素連結ヒツジ抗HuIgG/テトラメチルベンジジン(TMB)基質を用いて追跡した。
4. 統計分析
感度および特異性は、(コンジュゲートしたペルオキシダーゼ/TMB反応からの)平均基質産物OD値を取得し、ついで平均よりも2標準偏差大きい、および平均よりも3標準偏差大きい場合(すなわちそれぞれ95%および99.7%の有意性レベル)における有意性についてのカットオフ値を計算することにより解析した。コントロール血清については、1つのサンプルからディクソンの外れ値試験(Dixon's outlier test)が外れ値OD値を生じた(N = 30)。分析を、この外れ値を含めてまたは除外して比較した。
本明細書において用いる「感度」という用語は、診断/予後診断アッセイの文脈においては、特定のアッセイ法を用いて診断されるTB陽性被験者の比率(すなわち「真の」陽性)を意味すると理解される。従って、感度の高いアッセイは、感度の低いまたは低下したアッセイよりも、より高い比率のTB感染被験者を検出することができる。
本明細書において用いる「特異性」という用語は、診断/予後診断アッセイの文脈においては、特定のアッセイ法を用いることにより陽性の結果を示さない非TB性被験者(すなわち非感染被験者)の比率(すなわち「真の」陰性)を意味すると理解される。従って、特異性の高いまたは増強されたアッセイは、特異性の低いアッセイと比較して、間違った陽性結果を示すことが少ない、またはより精密に感染被験者と非感染被験者を識別することができる。
5. 結果
a) BSX(23-24)ペプチド(配列番号45)
BSX(23-24)ペプチド配列は、確認済みのTB陽性血清に対して著しい結合を示した。感度および特異性データをまとめたものを表8に示す。表8中の各被験者について提供したデータは、配列番号45に記載の配列を含むペプチドが患者血清中からマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する抗体を選択的に同定することを示す。データはまた、こうした修正基準値を用いる感度および特異性が外れ値を除外するか否かにかかわらずさほど変わらないことを示すが、しかしながら3標準偏差レベルでは感度が僅かに上昇した。
Figure 2008515388
b) N-C末端(配列番号46)およびペプチド28(配列番号47)
この2種のペプチドは、確認済みのTB陽性血清群に対して弱い相互作用しか示さなかった。表9および表10に示すように、これらのペプチドを用いたアッセイは高感度ではなかったが、それらは間違った陽性検知を除外する限りにおいては特異的であった。
Figure 2008515388
Figure 2008515388
表8〜10に示すデータは、BSX(23-24)ペプチド(配列番号45)が、患者サンプル、特に血清から結核を検出するための抗体に基づくアッセイにおいて有用であることを示す。この実施例で試した他の2種のペプチド(配列番号46および/または47)もまた、例えば配列番号45と平行して行う複数検体検査の一部として、間違った陽性検出を消去するために有用でありうる。この知見は、ペプチド23および24(すなわちそれぞれ配列番号24および25)ならびに特に配列番号45の配列に含まれる配列番号25が完全長BSXタンパク質の免疫原性B細胞エピトープからなるまたはそれを含むことを実証した先の実施例に示したデータに照らして特に驚くことではない。
実施例6
組換え完全長BSXタンパク質(配列番号1)に対するTBおよび非TB血清のスクリーニング
1. 血清
血清パネルは、44のTB陽性(塗抹陽性または培養陽性)中国人および南アフリカ人患者(すなわちTB陽性血清)、ならびに44の健康コントロール被験者(すなわち非TB血清)由来である。
2. ELISAアッセイ
組換えBSXタンパク質(配列番号1)を、5 μg/mLでELISAトレイ上に直接コーティングし、ついで(ブロッキング後)バッファー中で1/100 (v/v)希釈した非TBコントロール血清および既知TB陽性血清でプローブした。ヒトIgGの捕捉は、酵素連結ヒツジ抗HuIgG/テトラメチルベンジジン(TMB)基質を用いて追跡した。
3. 統計分析
感度および特異性は、(コンジュゲートしたペルオキシダーゼ/TMB反応からの)平均基質産物OD値を取得し、ついで平均よりも2標準偏差大きい、および平均よりも3標準偏差大きい場合(すなわちそれぞれ95%および99.7%の有意性レベル)における有意性についてのカットオフ値を計算することにより解析した。
4. 結果
表11に示すように、こうした条件下でアッセイした組換えBSXタンパク質は、TB陽性血清検出に高度に特異的であった。検査した集団に対するアッセイ感度は、配列番号45および配列番号46〜47のそれの中間であった。
一方、南アフリカ人TB血清塗抹陽性体または培養陽性体におけるアッセイの感度は、全体の感度よりも高い(すなわち3標準偏差カットオフ値における25%と比較して35%であった)。中国人塗抹または培養TB血清を用いると、アッセイ感度は、全体の感度よりも低下する(すなわち3標準偏差カットオフ値における25%と比較して11%)。中国人および南アフリカ人集団の両方において、アッセイの特異性は100%であり、このパラメーターのロバスト性を示す。
Figure 2008515388
実施例7
HIV状態に基づくTBおよび非TB血清のスクリーニング
1. 血清
血清は以下の被験者由来の血清のパネルである:
(i) 5個のTB陽性かつHIV陰性塗抹または培養南アフリカ人患者(すなわちTB+ HIV-血清)、
(ii) 21個のTB陽性かつHIV陽性塗抹または培養南アフリカ人患者(すなわちTB+ HIV+血清)、および
(iii) 20個のTB陰性かつHIV陰性塗抹または培養被験者 (すなわち健康コントロール血清)。
2. ELISAアッセイ
組換えBSXタンパク質(配列番号1)またはBSX(23-24)ペプチド(配列番号45)を5 μg/mLでELISAトレイ上に直接コーティングし、ついで(ブロッキング後)バッファー中で1/100 (v/v)希釈した非TBコントロール血清および既知TB陽性血清でプローブした。これとは別に、BSX(23-24)ペプチドを先の実施例に記載のように使用した。ヒトIgGの捕捉は、酵素連結ヒツジ抗HuIgG/テトラメチルベンジジン(TMB)基質を用いて追跡した。
3. 統計分析
感度および特異性は、(コンジュゲートしたペルオキシダーゼ/TMB反応からの)平均基質産物OD値を取得し、ついで平均よりも2標準偏差大きい、および平均よりも3標準偏差大きい場合(すなわちそれぞれ95%および99.7%の有意性レベル)における有意性についてのカットオフ値を計算することにより解析した。
4. 結果
表12に示すように、こうした条件下でアッセイした組換えBSXタンパク質は、TB陽性血清検出に高度に特異的であった。検査した集団に対するアッセイの感度もHIV+ 患者についてはかなり高かった。BSX(23-24)ペプチドを用いた場合も類似の結果が得られた。このことから、完全長組換えBSXタンパク質およびBSX(23-24)ペプチドは別々にTB+ HIV+被験者の約40〜45%を検出し、また、複数検体検査においてTB+HIV+被験者の約65%〜 70%を検出し、このとき間違った陽性検出はわずかに約5%である。
一方、南アフリカ人TB血清塗抹陽性体または培養陽性体におけるアッセイの感度は、全体の感度よりも高い(すなわち3標準偏差カットオフ値における25%と比較して35%であった)。中国人塗抹または培養TB血清を用いると、アッセイ感度は、全体の感度よりも低下する(すなわち3標準偏差カットオフ値における25%と比較して11%)。中国人および南アフリカ人集団の両方において、アッセイの特異性は完全、すなわち100%であり、このパラメーターのロバスト性を示す。
Figure 2008515388
これらのデータは、完全長BSXタンパク質(例えば組換えタンパク質として発現)を、本明細書に同定した主要B細胞エピトープを含む合成ペプチド(例えばペプチド24(配列番号25)またはBSX(23-24)ペプチド(配列番号45))と併用して、マイコバクテリウム・ツベルクローシスによる活動的な感染症またはごく最近の感染症の存在を診断することができることを示す。
例えば、組換え完全長BSX(配列番号1)およびBSX(23-24)ペプチドを両方ともビオチン化し、マイクロタイタープレートのウェルに予備吸着させておいたストレプトアビジン基剤(5μg/ml)上に固定化する。標準ELISA反応を、(i) 患者血清およびコントロール血清をそれぞれバッファー中で1/100 (v/v)に希釈して、別々のウェルに加えること、および(ii)固定化タンパク質およびペプチドによる血清中のヒトIgG捕捉を、酵素連結ヒツジ抗HuIgGを使用してテトラメチルベンジジン(TMB)基質を用いて追跡すること、により行う。

Claims (131)

  1. マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)の単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  2. 配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、または配列番号1に少なくとも約95%同一なアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質。
  3. 前記ペプチドが合成ペプチドである、請求項1に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  4. 前記ペプチド、断片もしくはエピトープが、配列番号1に記載の配列の少なくとも約5連続アミノ酸残基を含む、請求項1に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  5. 前記ペプチド、断片もしくはエピトープが、配列番号1に記載の配列の少なくとも約10連続アミノ酸残基を含む、請求項1に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  6. 前記ペプチド、断片もしくはエピトープが、配列番号1に記載の配列の少なくとも約15連続アミノ酸残基を含む、請求項1に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  7. 前記ペプチド、断片もしくはエピトープが、配列番号1に記載の配列の少なくとも約5連続アミノ酸残基のN末端および/またはC末端に融合した約1〜5個の追加アミノ酸残基を有する、請求項1に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  8. 前記ペプチド、断片もしくはエピトープが、配列番号2〜53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または前記配列のいずれか1つと少なくとも約95%同一なアミノ酸配列を含む前記配列のいずれか1つの免疫学的交差反応性変異体を含む、請求項7に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  9. 前記ペプチド、断片もしくはエピトープが、配列番号1の約残基65と約残基84との間に位置する少なくとも約5連続アミノ酸残基のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  10. 前記ペプチド、断片もしくはエピトープが、配列番号1の約残基65と約残基75との間に位置する少なくとも約5連続アミノ酸残基を含む、請求項9に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  11. 前記ペプチド、断片もしくはエピトープが、配列番号1の残基67と残基73との間に位置する少なくとも約5連続アミノ酸残基を含む、請求項9に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  12. 前記ペプチド、断片もしくはエピトープが、配列番号45に記載の配列の少なくとも5連続残基を含む、請求項1に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  13. 長さにして最大約5アミノ酸残基のN末端伸長および/または長さにして最大約5アミノ酸残基のC末端伸長をさらに含む、請求項9に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  14. 配列番号24、25もしくは45に記載のアミノ酸配列、または配列番号24、25もしくは45と少なくとも約95%同一なアミノ酸配列を含むその免疫学的交差反応性変異体を含む、請求項1に記載の免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  15. 前記タンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープが、検出または単離または固定化を促進するための1以上の標識または検出可能部分を含む、請求項1に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  16. 標識がビオチン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(BSXT)、FLAGエピトープ、ヘキサ-ヒスチジン、またはβ-ガラクトシダーゼである、請求項15に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ。
  17. 1以上の請求項1に記載の免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープを含む、融合タンパク質。
  18. グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(BSXT)、FLAGエピトープ、ヘキサ-ヒスチジン、またはβ-ガラクトシダーゼを含んでなる、請求項17に記載の融合タンパク質。
  19. 1以上の請求項1に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離もしくは組換え免疫原性BSXタンパク質、または1以上のその免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープを含む、単離されたタンパク質会合体。
  20. 免疫グロブリンを含む、請求項19に記載の単離されたタンパク質会合体。
  21. 被験体におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスによる過去の感染、活動性感染、または潜伏感染を検出するための請求項1に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープの使用であって、前記感染を、被験体から得られたサンプル中の抗体と、前記単離または組換え免疫原性BSXタンパク質または免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープとの結合により決定する前記使用。
  22. マイコバクテリウム・ツベルクローシスグルタミンシンテターゼに結合する抗体の産生を誘発するための、請求項1に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープの使用。
  23. マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染から被験体を免疫するための医薬の製造における、請求項1に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープの使用。
  24. 請求項1〜16のいずれか1項に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質もしくはタンパク質会合体に特異的に結合する単離もしくは組換え抗体または抗体の免疫反応性フラグメント。
  25. 抗体がポリクローナル抗体である、請求項24に記載の単離された抗体。
  26. 抗体がモノクローナル抗体である、請求項24に記載の単離された抗体。
  27. 請求項26に記載のモノクローナル抗体を産生する、単離された抗体産生細胞または抗体産生細胞集団。
  28. 被験体におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスによる過去または現在の感染または潜伏感染を検出するための請求項24に記載の単離または組換え抗体またはその免疫反応性フラグメントの使用であって、前記感染を、前記抗体またはフラグメントと被験体から得られた生物学的サンプル中に存在するマイコバクテリウム・ツベルクローシスBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープとの結合により決定する、前記使用。
  29. マイコバクテリウム・ツベルクローシス細菌もしくはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染細胞を同定するため、または前記細菌もしくは前記細胞を分類もしくはカウントするための、請求項24に記載の単離または組換え抗体またはその免疫反応性フラグメントの使用。
  30. 医薬における請求項24に記載の単離または組換え抗体またはその免疫反応性フラグメントの使用。
  31. 請求項24に記載の単離または組換え抗体、および製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物。
  32. 被験体における結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の診断方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中の、免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに対する抗体を検出することを含み、該サンプル中の前記抗体の存在は感染症を示す、前記方法。
  33. 被験体由来の生物学的サンプルと、請求項1に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープとを、抗原抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下で接触させること、およびその後抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、請求項32に記載の方法。
  34. 抗原抗体複合体の形成の検出が、該抗原抗体複合体中のヒト免疫グロブリンを検出することを含む、請求項33に記載の方法。
  35. ヒト免疫グロブリンを検出することが、前記抗原抗体複合体と抗ヒト免疫グロブリンを含む第2抗体とを、前記第2抗体が複合体中のヒト免疫グロブリンと結合するのに十分な時間および条件下で接触させること、およびその後結合抗ヒト免疫グロブリンを検出することを含む、請求項34に記載の方法。
  36. 第2抗体が検出可能マーカーまたはレポーター分子で標識されている、請求項35に記載の方法。
  37. 被験体由来の生物学的サンプルとマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質とを接触させる請求項33に記載の方法であって、前記タンパク質が配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、前記方法。
  38. 被験体由来の生物学的サンプルと、配列番号24、配列番号25または配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む免疫原性BSXペプチドとを接触させる、請求項33に記載の方法。
  39. 被験体由来の生物学的サンプルと、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む免疫原性BSXペプチドとを接触させる、請求項33に記載の方法。
  40. 被験体由来の生物学的サンプルと、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む免疫原性BSXペプチドおよび配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質とを、抗原抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下で接触させること、およびその後抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、請求項32に記載の方法。
  41. 被験体由来の生物学的サンプルと、単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ以外のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの免疫原性タンパク質またはペプチドとを接触させることをさらに含む、請求項33に記載の方法。
  42. マイコバクテリウム・ツベルクローシスの免疫原性タンパク質またはペプチドが、グルタミンシンテターゼタンパク質またはペプチドである、請求項41に記載の方法。
  43. 免疫原性ペプチドが配列番号54または55に記載のアミノ酸配列を含む、請求項42に記載の方法。
  44. 被験体が中国人または南アフリカ人である、請求項32に記載の方法。
  45. 被験体が免疫低下しているまたは免疫不全である、請求項32に記載の方法。
  46. 被験体がHIV+である、請求項32に記載の方法。
  47. サンプルが被験体から得られた血液または血清または免疫グロブリン画分を含む、請求項32に記載の方法。
  48. 被験体における結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の診断方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中の免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープを検出することを含み、該サンプル中の前記タンパク質または免疫原性断片もしくはエピトープの存在は疾患、疾患進行または感染症を示す、前記方法。
  49. 被験体由来の生物学的サンプルと、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに結合可能な1以上の抗体とを接触させること、および抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、請求項48に記載の方法。
  50. 抗体が、請求項1〜16のいずれか1項に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に特異的に結合する単離または組換え抗体もしくは抗体の免疫反応性フラグメントである、請求項49に記載の方法。
  51. 抗体がポリクローナル抗体である、請求項50に記載の方法。
  52. 抗体がモノクローナル抗体である、請求項50に記載の方法。
  53. 被験体が免疫低下しているまたは免疫不全である、請求項48に記載の方法。
  54. 被験体がHIV+である、請求項48に記載の方法。
  55. サンプルが、脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉、骨およびその混合物からなる群より選択される組織由来の抽出物を含む、請求項48に記載の方法。
  56. サンプルが、痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液を含む、請求項48に記載の方法。
  57. サンプルが、痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液由来である、請求項48に記載の方法。
  58. 被験体由来の生物学的サンプルと、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む免疫原性BSXペプチドに結合する抗体、および配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むマイコバクテリウム・ツベルクローシスの免疫原性BSXタンパク質に結合する抗体とを、抗原抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下で接触させること、およびその後抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、請求項48に記載の方法。
  59. 被験体由来の生物学的サンプルと、単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ以外のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの免疫原性タンパク質またはペプチドに結合する抗体とを接触させることをさらに含む、請求項49に記載の方法。
  60. 抗体が、グルタミンシンテターゼタンパク質またはペプチドに結合する、請求項59に記載の方法。
  61. 抗体が、配列番号54または55に記載のアミノ酸配列を含むグルタミンシンテターゼタンパク質またはペプチドに結合する、請求項60に記載の方法。
  62. 結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を有する被験体の、前記結核症または感染症用治療化合物での治療に対する応答を決定する方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを検出することを含み、該タンパク質または断片もしくはエピトープのレベルが正常または健康被験体中で検出可能なそのタンパク質または断片もしくはエピトープのレベルと比較して増大していることは、該被験体が前記治療に応答していないまたは疾患もしくは感染症を免れていないことを示す、前記方法。
  63. 被験体由来の生物学的サンプルと、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに結合可能な1以上の抗体とを接触させること、および抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、請求項62に記載の方法。
  64. 抗体が、請求項1〜16のいずれか1項に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に特異的に結合する単離または組換え抗体または抗体の免疫反応性フラグメントである、請求項63に記載の方法。
  65. 抗体がポリクローナル抗体である、請求項63に記載の方法。
  66. 抗体がモノクローナル抗体である、請求項63に記載の方法。
  67. 被験体が免疫低下しているまたは免疫不全である、請求項62に記載の方法。
  68. 被験体がHIV+である、請求項62に記載の方法。
  69. サンプルが、脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉、骨およびその混合物からなる群より選択される組織由来の抽出物を含む、請求項62に記載の方法。
  70. サンプルが、痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液を含む、請求項62に記載の方法。
  71. サンプルが、痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液由来である、請求項62に記載の方法。
  72. 被験体由来の生物学的サンプルと、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む免疫原性BSXペプチドに結合する抗体、および配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むマイコバクテリウム・ツベルクローシスの免疫原性BSXタンパク質に結合する抗体とを、抗原抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下で接触させること、およびその後抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、請求項62に記載の方法。
  73. 被験体由来の生物学的サンプルと、単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ以外のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの免疫原性タンパク質またはペプチドに結合する抗体とを接触させることをさらに含む、請求項63に記載の方法。
  74. 抗体が、グルタミンシンテターゼタンパク質またはペプチドに結合する、請求項73に記載の方法。
  75. 抗体が、配列番号54または55に記載のアミノ酸配列を含むグルタミンシンテターゼタンパク質またはペプチドに結合する、請求項74に記載の方法。
  76. 結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を有する被験体の、前記結核症または感染症用治療化合物での治療に対する応答を決定する方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープを検出することを含み、該タンパク質または断片もしくはエピトープのレベルが結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症を罹患している被験体中で検出可能な該タンパク質または断片もしくはエピトープのレベルよりも低いことは、該被験体が前記治療に応答しているまたは疾患もしくは感染症を免れていることを示す、前記方法。
  77. 被験体由来の生物学的サンプルと、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに結合可能な1以上の抗体とを接触させること、および抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、請求項76に記載の方法。
  78. 抗体が、請求項1〜16のいずれか1項に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に特異的に結合する単離または組換え抗体または抗体の免疫反応性フラグメントである、請求項77に記載の方法。
  79. 抗体がポリクローナル抗体である、請求項77に記載の方法。
  80. 抗体がモノクローナル抗体である、請求項77に記載の方法。
  81. 被験体が免疫低下しているまたは免疫不全である、請求項76に記載の方法。
  82. 被験体がHIV+である、請求項76に記載の方法。
  83. サンプルが脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉、骨およびその混合物からなる群より選択される組織由来の抽出物を含む、請求項76に記載の方法。
  84. サンプルが、痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液を含む、請求項76に記載の方法。
  85. サンプルが、痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液由来である、請求項76に記載の方法。
  86. 被験体由来の生物学的サンプルと、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む免疫原性BSXペプチドに結合する抗体、および配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むマイコバクテリウム・ツベルクローシスの免疫原性BSXタンパク質に結合する抗体とを、抗原抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下で接触させること、およびその後抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、請求項76に記載の方法。
  87. 被験体由来の生物学的サンプルと、単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ以外のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの免疫原性タンパク質またはペプチドに結合する抗体とを接触させることをさらに含む、請求項77に記載の方法。
  88. 抗体がグルタミンシンテターゼタンパク質またはペプチドに結合する、請求項87に記載の方法。
  89. 抗体が、配列番号54または55に記載のアミノ酸配列を含むグルタミンシンテターゼタンパク質またはペプチドに結合する、請求項88に記載の方法。
  90. 被験体におけるマイコバクテリウム・ツベルクローシスによる疾患進行、治療応答性または感染状態のモニター方法であって、前記被験体由来の生物学的サンプル中のBSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープのレベルを異なる時点で測定することを含み、該BSXタンパク質、断片もしくはエピトープのレベルの変化は被験体における疾患進行、治療応答性または感染状態の変化を示す、前記方法。
  91. BSXタンパク質、断片もしくはエピトープのレベルが経時的に増加するときに、結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の治療用化合物を投与することをさらに含む、請求項90に記載の方法。
  92. 被験体由来の生物学的サンプルと、BSXタンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープに結合可能な1以上の抗体とを接触させること、および抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、請求項90に記載の方法。
  93. 抗体が、請求項1〜16のいずれか1項に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に特異的に結合する単離または組換え抗体または抗体の免疫反応性フラグメントである、請求項92に記載の方法。
  94. 抗体がポリクローナル抗体である、請求項92に記載の方法。
  95. 抗体がモノクローナル抗体である、請求項92に記載の方法。
  96. 被験体が免疫低下しているまたは免疫不全である、請求項90に記載の方法。
  97. 被験体がHIV+である、請求項90に記載の方法。
  98. サンプルが脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉、骨およびその混合物からなる群より選択される組織由来の抽出物を含む、請求項90に記載の方法。
  99. サンプルが、痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液を含む、請求項90に記載の方法。
  100. サンプルが、痰、血清、血漿、全血液、唾液、尿、胸膜液およびその混合物からなる群より選択される体液由来である、請求項90に記載の方法。
  101. 被験体由来の生物学的サンプルと、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む免疫原性BSXペプチドに結合する抗体、および配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むマイコバクテリウム・ツベルクローシスの免疫原性BSXタンパク質に結合する抗体とを、抗原抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下で接触させること、およびその後抗原抗体複合体の形成を検出することを含む、請求項90に記載の方法。
  102. 被験体由来の生物学的サンプルと、単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ以外のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの免疫原性タンパク質またはペプチドに結合する抗体とを接触させることをさらに含む、請求項92に記載の方法。
  103. 抗体が、グルタミンシンテターゼタンパク質またはペプチドに結合する、請求項102に記載の方法。
  104. 抗体が、配列番号54または55に記載のアミノ酸配列を含むグルタミンシンテターゼタンパク質またはペプチドに結合する、請求項103に記載の方法。
  105. 被験体由来サンプルが、マイコバクテリウム・ツベルクローシスのBSXタンパク質または1以上のその免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープに結合した免疫グロブリン(Ig)を含む1以上の循環免疫複合体を含み、かつ、抗原抗体複合体の形成を検出することが、抗Ig抗体と、該循環免疫複合体の免疫グロブリン部分とを、複合体形成に十分な時間および条件下で接触させること、およびその後結合型抗Ig抗体を検出することを含む、請求項48に記載の方法。
  106. 被験体由来サンプルが、マイコバクテリウム・ツベルクローシスのBSXタンパク質または1以上のその免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープに結合した免疫グロブリン(Ig)を含む1以上の循環免疫複合体を含み、かつ、抗原抗体複合体の形成を検出することが、抗Ig抗体と、該循環免疫複合体の免疫グロブリン部分とを、複合体形成に十分な時間および条件下で接触させること、およびその後結合型抗Ig抗体を検出することを含む、請求項62に記載の方法。
  107. 被験体由来サンプルが、マイコバクテリウム・ツベルクローシスのBSXタンパク質または1以上のその免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープに結合した免疫グロブリン(Ig)を含む1以上の循環免疫複合体を含み、かつ、抗原抗体複合体の形成を検出することが、抗Ig抗体と、該循環免疫複合体の免疫グロブリン部分とを、複合体形成に十分な時間および条件下で接触させること、およびその後結合型抗Ig抗体を検出することを含む、請求項76に記載の方法。
  108. 被験体由来サンプルが、マイコバクテリウム・ツベルクローシスのBSXタンパク質または1以上のその免疫原性BSXペプチド、断片もしくはエピトープに結合した免疫グロブリン(Ig)を含む1以上の循環免疫複合体を含み、かつ、抗原抗体複合体の形成を検出することが、抗Ig抗体と、該循環免疫複合体の免疫グロブリン部分とを、複合体形成に十分な時間および条件下で接触させること、およびその後結合型抗Ig抗体を検出することを含む、請求項90に記載の方法。
  109. 結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の治療方法であって、
    (i) 請求項32に記載の方法を行いそのことにより被験体由来の生物学的サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染の存在を検出すること、および
    (ii) 該被験体の肺、血液またはリンパ系中の病原性桿菌数を減少させるために治療上有効量の医薬組成物を投与すること、
    を含む、前記方法。
  110. 結核症またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症の治療方法であって、
    (i) 請求項48に記載の方法を行いそのことにより第1医薬組成物で治療中の被験体由来の生物学的サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染の存在を検出すること、および
    (ii) 該被験体の肺、血液またはリンパ系中の病原性桿菌数を減少させるために治療上有効量の第2医薬組成物を投与すること、
    を含む、前記方法。
  111. 請求項1に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープを、製薬上許容される希釈剤と組み合わせて含む医薬組成物。
  112. アジュバントをさらに含む、請求項111に記載の医薬組成物。
  113. 請求項1に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープをコードする単離核酸。
  114. 請求項1に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープを発現する細胞。
  115. 前記細胞が、請求項1に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープをその表面上に提示する抗原提示細胞 (APC)である、請求項114に記載の細胞。
  116. 生物学的サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染検出用キットであって、
    (iii) 請求項1〜16のいずれか1項に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に特異的に結合する1以上の単離された抗体またはその免疫反応性フラグメント、ならびに
    (iv) 抗原抗体複合体の形成を検出する手段、
    を含み、使用説明書と一緒に包装されているまたはされていない、前記キット。
  117. 生物学的サンプル中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染検出用キットであって、
    (iii) 請求項1〜16のいずれか1項に記載のマイコバクテリウム・ツベルクローシスの単離または組換え免疫原性BSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドもしくは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ、ならびに
    (iv) 抗原抗体複合体の形成を検出する手段、
    を含み、使用説明書と一緒に包装されているまたはされていない、前記キット。
  118. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の単離または組換えBSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープ、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体を吸着させた固体マトリックス。
  119. 膜を含んでなる、請求項118に記載の固体マトリックス。
  120. 膜がナイロンまたはニトロセルロースを含む、請求項119に記載の固体マトリックス。
  121. ポリスチレン製またはポリカーボネート製マイクロウェルプレートを含んでなる、請求項118に記載の固体マトリックス。
  122. ディップスティックを含んでなる、請求項118に記載の固体マトリックス。
  123. ガラス製支持体を含む、請求項118に記載の固体マトリックス。
  124. クロマトグラフィー用樹脂を含んでなる、請求項118に記載の固体マトリックス。
  125. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の単離または組換えBSXタンパク質またはその免疫原性BSXペプチドまたは免疫原性BSX断片もしくはエピトープに、あるいは前記免疫原性BSXタンパク質、ペプチド、断片もしくはエピトープを含有する融合タンパク質またはタンパク質会合体に結合する抗体を吸着させた固体マトリックス。
  126. 膜を含んでなる、請求項125に記載の固体マトリックス。
  127. 膜がナイロンまたはニトロセルロースを含む、請求項126に記載の固体マトリックス。
  128. ポリスチレン製またはポリカーボネート製マイクロウェルプレートを含んでなる、請求項125に記載の固体マトリックス。
  129. ディップスティックを含んでなる、請求項125に記載の固体マトリックス。
  130. ガラス製支持体を含む、請求項125に記載の固体マトリックス。
  131. クロマトグラフィー用樹脂を含んでなる、請求項125に記載の固体マトリックス。
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