JP2008505111A - パクリタキセルの単離方法 - Google Patents
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Abstract
ポリアミド固定相、及び移動相としてジアルキルケトンとより極性が小さい溶媒を含む混合物を使用して、パクリタキセルを順相クロマトグラフィーを含む方法によって単離する。適切なジアルキルケトンは、アセトンまたはメチルイソブチルケトンを含む。適切なより極性の小さい共溶媒は、(C5-C8)脂肪族炭化水素、(C6-C8)芳香族炭化水素、(C1-C4)ジアルキルエーテルまたはそれらの混合物を含む。
Description
本発明は、パクリタキセルを含む混合物からパクリタキセルをクロマトグラフィーによって精製するための方法に関する。
パクリタキセルは、元来"タキソール"として公知であり、ヒト卵巣腫瘍、乳房腫瘍、及び 肺腫瘍の治療に有用である重要な化学療法剤である。それは多くのヒトの癌への期待を示し、そしてその臨床での使用は、いくつかの論文(Rowinsky, E. K., Ann. Rev. Med. 48:353 1997; Van Hoff, D. D., Semin. Oncol. 24:3 (1997); DeFuria, M. D., Phytomedicine 4:273 (1997);及びEisenhauer, E. A., Vermorken, J. B., Drugs 55:5 (1998)等)で報告されている。
パクリタキセルは天然の化合物であり、Wani,等により太平洋イチイ(Taxus brevifolia)の木の皮から最初に単離された(J. Am. Chem. Soc. 93:2325 (1971))。その時から、研究者たちは、パクリタキセルが、ヨーロッパイチイ(Taxus baccata)、ヒマラヤイチイ(Taxus Wallichiana)、中国イチイ(Taxus celebita)、日本イチイ(Taxus cuspidata)、カナダイチイ(Taxus canadensis)、メキシコイチイ(Taxus globosa)、フロリダイチイ(Taxus floridana)及び観賞用イチイ(Taxus media)、並びにそれらの雑種及び品種の全てを含む、全ての他のタクスス(Taxus)属において存在することを認識してきた。
全てのタイプの可能性のある植物起源からのパクリタキセルの単離は、或る程度はバイオマス中のその非常に低い濃度により、及びある程度はパクリタキセルと同様の特質を有する他の化合物(主にタキサン)の存在により、複雑且つ困難である。その高い要求及び低い入手可能性のために、パクリタキセルの工業生産に関する更なる可能性のある発生源は、多く探索された(Cragg, G.M.,等., J. Nat. Prod. 56:1657 (1993))。それらの起源のいくつかは、タクスス(Taxus)属(葉、刈り取ったもの、及び水耕栽培の植物全体)由来の全てのタイプの植物の部分を再生可能にすること、タクスス組織培養を発酵させること、タクスス等に寄生する真菌を発酵させること、を含む。
典型的に、パクリタキセルは適切な溶媒と共にバイオマスを最初に抽出することによって単離され、液体-液体抽出手順によってラフィネートした抽出物が得られる。当該抽出手順の後、パクリタキセルの単離は、通常、逆相クロマトグラフィーステップによって継続する。この技術の多数の例は:Dauh-Rurng Wu,等, J. Chrom. A, 702:233 (1995);Koppaka V. Rao,等, Pharm. Res. 12:1003 (1995);及びXuefeng Yang,等.,J. Chrom. A, 813:201(1998)を含む文献中に見出すことができる。更に逆相クロマトグラフィーは、いくつかの特許(例えば:米国特許No.5,279,949;米国特許No.5,380,916;及び米国特許No.5,969,165等)においてパクリタキセルの最終精製に関して発表されている。更に連続工程もシミュレートした移動層逆相クロマトグラフィー手順をもとに開発された(Dauh-Rurng Wu,等, J. Chrom. A, 855:71 (1999))。しかしながら、逆相クロマトグラフィーを使用する欠点は、所望されない7-epi-パクリタキセルへのパクリタキセルの異性化を不利に引き起こし得る溶媒を含む水を必要とすることである。
更に順相クロマトグラフィーの使用は、パクリタキセルの単離に関して公知である。しかしながら、この工程は、アルキルフェニルとペンタフルオロフェニル相等の高価な固定相を使用する(Dauh-Rurng Wu,等., J. Chrom. A. 702:233 (1995))。パクリタキセルを単離するためのより最近の方法は、込み入った勾配溶出手順、または多様な移動相組成物を用いるいくつかのクロマトグラフィーステップ、または順相及び逆相クロマトグラフィーの組合せに基づく。例えばYoung Kwang Park,等., J. Liq. Chrom. & Rel. Technol. 22(18):2755 (1999); Jun Xue,等., J. Liq. Chrom. & ReI. Technol. 23(16):2499 (2000);米国特許No. 5,478,736を参照)。他のアプローチは、吸着剤としてアルミナを使用する順相クロマトグラフィーの使用である。あいにく塩素化有機溶媒は、しばしばアルミナによる移動相として使用される。更に、パクリタキセルのエピ化及び化学的分解は、溶出時間に依存して、共にこの系において起こる(Zhiqiang Z., Zhiguo S. J., Liq. Chrom. & ReI. Technol. 23(17):2683 (2000))。
近年、シリカ固定相とカルボン酸エステル移動相を使用するパクリタキセルの順相クロマトグラフィーの単離は、米国特許No.6,333,419で開示された。ここで開示された方法は、セファロマンニンからパクリタキセルを分離するためにデザインされた。
しかしながら、簡易で有効な精製操作によってパクリタキセルを多様な所望されない成分から大規模で分離するための必要性は、なお継続して存在している。
発明の概要
本発明の利点は、高純度のパクリタキセルの大規模単離及び生産のための簡易、安価及び有効な方法である。
本発明の利点は、高純度のパクリタキセルの大規模単離及び生産のための簡易、安価及び有効な方法である。
それら及び他の利点は、ポリアミドを基礎とした化合物に基づく順相クロマトグラフィーを使用してパクリタキセル混合物からパクリタキセルを単離する方法によって少なくとも部分的に満たされている。当該方法は、パクリタキセルを含む出発混合物を、ポリアミドを基礎とした化合物を含む容器に適用すること、そしてその後、1以上のジアルキルケトンをより極性の小さい溶媒と共に含む溶液を、当該容器に適用すること、を含んで成る。当該溶液を付加して当該溶液と当該混合物の成分をもたらすために、当該容器から溶出させる。その後、パクリタキセルを含む溶出溶液の1以上のフラクションを収集する。
当該方法は、パクリタキセルの大規模精製のために都合よく使用することができる。出発パクリタキセル材料は、パクリタキセルといくつかの所望されない成分を含む任意の起源由来であってよい。例えば、出発混合物は、植物起源から、または細胞培養もしくは菌種を抽出することにより得られた粗抽出物または精製抽出物であり得る。当該出発混合物は、制限されずに、パクリタキセル、セファロマンニン及び他のタキサンの混合物であり得る。
本発明の態様は、重量で約1部の出発混合物を、重量で約20部超のポリアミドを基礎とする化合物(例えば、ポリカプトラクタム、ポリウンデカノラクタム、ポリラウリルラクタム、またはポリ(ヘキサメチレンアジパミド-co-カプロラクタム)を充填したカラム等の容器に適用すること;ジアルキルケトンのようなアセトン、及びより極性の小さな溶媒としてのトルエンまたはヘキサンを含む溶液を適用し;そして当該溶液を当該容器に適用する間に、より極性の小さい溶媒に対するジアルキルケトンの濃度を増加させること、を含む。その後、純粋なパクリタキセルまたはパクリタキセル濃縮物を蒸発及び結晶化により、最も高い濃度のパクリタキセルを含む適当なフラクションから単離することができる。
本発明の更なる利点は、後述の詳細な説明から当業者に容易に理解され、ここでは本発明の好適な態様のみが、単に本発明の実施を意図したベストモードの説明の方法によって提示及び説明されるだろう。本発明は他の態様及び多様の態様が可能であること、そして本発明のいくつかの詳細は、本発明から逸脱せずに多様な明白な観点において修飾することができることが理解されるだろう。本発明は、いくつかのまたは全てのそれらの特定の詳細な説明なしでも実施され得る。他の例では、本発明を不必要にあいまいにしないために、周知のプロセス操作を詳細に記載していない。従って、図面及び説明は、事実上説明に役立つものであり、限定的でないと見なされる。
発明の詳細な説明
本発明はパクリタキセルの大規模単離のための方法の研究において開発された。実験及び研究の末、固定相がポリアミドを基礎とした吸着剤を含む場合、且つ移動相が1種以上のジアルキルケトンを他のより極性の小さい共溶媒との混合物で含む場合、パクリタキセルがクロマトグラフィーによって効果的に精製され得ることが発見された。本発明は、除去することが困難であるが、パクリタキセル混合物と通常は付随する他のタキサン不純物を含む混合物からパクリタキセルを都合よく分離することができる。
本発明はパクリタキセルの大規模単離のための方法の研究において開発された。実験及び研究の末、固定相がポリアミドを基礎とした吸着剤を含む場合、且つ移動相が1種以上のジアルキルケトンを他のより極性の小さい共溶媒との混合物で含む場合、パクリタキセルがクロマトグラフィーによって効果的に精製され得ることが発見された。本発明は、除去することが困難であるが、パクリタキセル混合物と通常は付随する他のタキサン不純物を含む混合物からパクリタキセルを都合よく分離することができる。
本明細書中で言及される特許、公開された出願、及び科学文献は、当業者の知識を構築し、そして参照よって組み入れられた個々について詳細且つ個別に提示されているのと同一の範囲である参照によってそれらの全体が本明細書に組み入れられている。本明細書で引用された任意の参照、及び本明細書の特定の教示の間の任意の矛盾点(conflict)は、後者を支持して解決するものとする。同様に、従来から理解されてきた語または句の定義と本明細書で詳細に教示した語または句の定義の間の任意の矛盾点は、後者を支持して解決するものとする。
本明細書で使用される単数形"a"、"an"及び"the"は、その内容が明確に指定されない限り、特にそれらを言及する複数形も包含する。
本明細書で使用される用語"約(about)"は、大雑把に(roughly)、または前後(around)の範囲にある、おおよそ(approximately)を意味する。用語"約(about)"が数値範囲との結合で使用される場合、発表された下限及び上限の数値を広げることによりその範囲は修正される。一般的に、本明細書で使用される用語"約(about)"は、20%分散で、下の表示数値及び上の表示数値を修正する。
移行句(transitional phrase)または特許請求の範囲の本体を問わず、本明細書で使用される、用語"含む(comprise(s))"及び"含んでいる(comprising)"とは、限定のない意味を有すものとして解釈される。即ち、当該用語は、句"少なくとも有している"または"少なくとも含んでいる"と同義的に解釈される。本明細書においてプロセスで使用される場合の用語"含んでいる(comprising)"とは、当該プロセスが、少なくとも挙げられたステップを含むが、更なるステップも含み得ることを意味する。本明細書において化合物または組成物で使用される場合の用語"含んでいる(comprising)"とは、当該化合物または組成物が少なくとも挙げられた特徴または成分を含むが、更なる特徴または成分も含み得ることを意味する。
本明細書で使用される変数の数値域の詳述は、本発明がその範囲内の任意の数値と同等の変数で実行され得ることを伝えることを意図する。従って、本質的に別個である変数に関しては、当該変数は当該範囲のエンドポイントを含む数値域の任意の整数値と同等であり得る。同様に、本質的に連続的である変数に関しては、当該変数は当該範囲のエンドポイントを含む数値域の任意の実数値と同等であり得る。例として、0〜2の数値を有するとして記載された変数は、本質的に別個である変数に関しては0、1または2であってよく、そして本質的に連続的である変数に関しては、0.0、0.1、0.01、0.001、または任意の他の実数値であってよい。
特に断わりのない限り、本明細書において使用される語"または(or)"は、"及び/または"を意味する"を含めた(inclusive)"において使用され、且つ"どちらか一方/または(either/or)"を意味する"排他的(exclusive)"なものではない。
本発明の特定の態様に対する言及は、以下の詳説中にされている。本発明は、これらの特定の態様との結合を発表するが、かかる特定の態様に本発明が限定されることを意図するものではないことが理解されるだろう。それどころか、本発明の精神、及び添付の特許請求の範囲によって定義される発明の範囲の中に含まれ得るような代替物、修正品、及び同等物を補うことが意図される。以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が発表されている。本発明は、いくつかのまたは全てのこれらの特定の詳細なしで実行され得る。他の例では、周知のプロセス操作は、本発明を不必要にあいまいにしないために、詳細には発表されていない。
当業者に公知の任意の適切な材料及び/または方法は、本発明の実施において利用することができる。しかしながら、好適な材料及び方法は記載されている。特に断りのない限り、後の記載及び実施例でなされる言及の材料、試薬等は、市販元から入手できる。
出発パクリタキセル混合物は、パクリタキセルといくつかの所望されない成分を含む任意の起源由来であり得る。本発明の実施において、任意の出発パクリタキセル混合物を使用することができる。例えば、出発混合物は、制限されずにパクリタキセル、セファロマンニン及び他のタキサンの混合物であってよい。更に出発混合物は、植物、例えばタクスス植物を含むパクリタキセルの生もしくは乾燥樹皮、根、葉及び/または枝葉、或いは植物全体の抽出物によるような通常の起源から得ることができるパクリタキセルの粗抽出物または部分的に精製された抽出物であってもよい。更にパクリタキセルの他の起源は、本発明の実施において使用することが意図され、栽培されたタクスス植物の細胞培養、タキサン産生真菌の培養によって調製された発酵ブロス;パクリタキセル産生のために遺伝子操作された菌種の培養によって調製された発酵ブロス等から得られた粗抽出物または精製抽出物を含む。
本発明で使用されるパクリタキセル混合物は、多様な起源であってよく、そして幅広いパクリタキセル濃度範囲を含み得る。高い含有量でパクリタキセルと他のタキサン(セファロマンニン、ジヒドロセファロマンニン、タキソールC、7-epi-パクリタキセル等)を有する明確な混合物は、一般的に粗結晶性パクリタキセルまたは結晶性パクリタキセル濃縮物として言及され、ポリアミドを基礎とした吸着剤を採用する本質的に単一ステップのクロマトグラフィープロセスにより都合よく精製することができる。出発材料は、パクリタキセル含有バイオマスから公知の手順によって調製された任意のパクリタキセル濃縮物であってよい。複合的な出発材料を用いる場合、精製プロセスは、タキサンでない不純物の存在によって、複雑化され得る。複合的なパクリタキセル混合物での出発は、所望されるより低い純度でパクリタキセルの単離をもたらし得る。従って、本発明は、2つ以上の精製ステップを意図し、パクリタキセルを反復のクロマトグラフィーステップまたは結晶化ステップ等で精製する。
本発明の1つの観点では、パクリタキセルは順相クロマトグラフィーによって所望されない成分から分離される。順相クロマトグラフィーでは、精製される混合物は、吸着剤を有するカラムまたは容器に適用される。溶媒または溶媒混合物、即ち移動相をカラムに連続して適用し、カラムを通過し溶出して、当該混合物の構成成分をもたらす。移動相は、重力供給であってよく、または機械ポンプ及び/またはバルブを採用することによって適用でき、クロマトグラフィー技術における公知の方法をより正確に制御することを維持する。適切な条件下で、当該混合物の構成成分は、分離され、多様な時間間隔でカラムの末端から溶出する。
本発明の態様の実施において、パクリタキセル混合物は、ポリアミドを基礎とした化合物を含む容器(例えばカラム)に適用され、当該混合物の精製が開始される。本発明において使用されるポリアミドを基礎とした化合物は、吸着原理によって多様な構成成分の分離を促進すると信じられているが、それらに制限されず、または必ずしもそれらに付随して作用しなければならないものではない。パクリタキセルが本発明に係る混合物から分離される原理は、任意の理論に拘束されるものではない。
順相クロマトグラフィーにおける固定相としてのポリアミドを基礎とした吸着剤の使用は、一般的ではないと信じられている。しかしながら、ポリアミドは、広範な有機溶媒において化学的及び物理的な安定性を示し、混合物の成分の分離においてその使用が容易であると信じられている。本発明の態様に従い、クロマトグラフィーのプロセスは、固定相としてのポリアミドに基づく。ポリアミド構造の化学組成中には、多くの可能性のあるバリエーションが存在するが、中心構造単位-アミド結合(-CO-NH-)-は、全てのケースにおいて存在している。2つのアミド結合間のメチレン単位のオーダー及び数は、特定のポリアミドポリマーの分離能を担うと信じられている。
実験に基づき、ポリラクタム、及び特にポリカプロラクタムは、採用する条件下で最良の分離特質を示すことが究明された。これらの材料は、クロマトグラフィー操作を繰り返した後、それらの分離能において顕著な変化なしで、高度な安定性を示した。安定性及び分離能は、勾配溶出ステップが用いられる場合(例えば、カラムへの溶液の付加及びカラムからの溶液の溶出の間により極性が小さい溶媒に対してジアルキルケトンの濃度が増加する場合)でさえ、変化しなかった。ポリアミド固定相の特質は、無機性固定相(例えばシリカ)の特質とは対照的である。例えば、極性移動相から非極性移動相への切り替えは、活性中心から極性溶媒を除去するための大量の非極性移動相を必要とせず、または固定相の乾燥を必要とせずに、非常に迅速になし得る。順相クロマトグラフィーにおけるポリアミドの使用は、水含有移動相による逆相クロマトグラフィーにおけるその使用と比較して、より低い且つ不変の膨張能を導く。
ポリアミドは、広範な粒子径において工業規模で製造される。工業規模での分離に最適な粒子径は、約0.05-0.16 mmであり、それは低圧滴下で移動相の高速処理を可能にする。パクリタキセルの良好な分離は、ポリアミドの約20重量部のみが、出発材料の約1部のために使用される場合でさえ達成された。それでもなお固定相の量は、出発材料の組成物と最終パクリタキセル製品の所望される純度に依存する。本発明の実施において使用することができる適切なポリアミドは、ポリカプロラクタム、ポリウンデカノラクタム、ポリラウリルラクタム、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド-co-カプロラクタム)等を含む。
ポリアミド固定相上で材料を含むパクリタキセルを分離することの他の利点は、温度を上昇させることにより観察される改良された分離選択性である。当該プロセスで高温を採用することは、特定のタキサン間での分離の改良を導くことが究明された。周囲温度超(例えば約40〜70℃)で固定相または移動相を維持することによって、非常に類似する分離挙動を示すパクリタキセルの類似物であるセファロマンニンからのパクリタキセルの分離が改善することが見出された。更に、より高い温度は移動相の粘性を低め、その結果、生産コストが低減するはずである。高温クロマトグラフィーの採用は、溶媒を含む水の中でのパクリタキセルのエピマー化のせいで、他の分離プロセス、特に逆相クロマトグラフィーを使用する分離プロセスに容易に適用されない。対照的に実質的に水またはアルコールを除去した溶液でのパクリタキセルのエピマー化はごくわずかなものであるので、より低温のプロセスを制限しない。
移動相のために適した溶媒の選定は、分離能に影響を及ぼす。材料を含む粗パクリタキセル中に存在する不純物からの最良のパクリタキセルの分離は、勾配溶出プロセスにより達成されることが見出された。本発明の1つの態様では、パクリタキセル混合物は、より極性が小さい溶媒中に低濃度のジアルキルケトンを含む最初の移動相によってポリアミド化合物に適用される(例えば、溶液が、より極性が小さい溶媒に対して、約5%(V/V)から約15%(V/V)の割合でジアルキルケトンを含む)。十分な量の最初の移動相をアイソクラチック条件下(即ち、溶媒組成物に変化がない条件下)でポリアミド化合物に適用した後、第2の移動相を勾配条件下(即ち、ジアルキルケトンの濃度が低濃度から高濃度に増加する条件下)で適用することができる。
アイソクラチック条件下では、全ての脂溶性物質が第1の移動相によりカラムから溶出すると信じられ、そして移動相中のジアルキルケトンの濃度が増加する時、全ての残存物質が溶出されると信じられている。このタイプの溶出プロファイルは、非タキサン物質のみを効果的に分離できるだけでなく、タキサン骨格を有する全ての物質の良好な分離も提供する。本発明の特定の態様の実施において、パクリタキセルは全ての一般的なタキサンからの最終物質として溶出することが観察された。これらの環境下では、パクリタキセルの移動能が発生すると信じられ、そしてパクリタキセルの溶出区域は、任意の既に溶出している物質と重複せずに明確であることが観察された。結果として、最終のタキサンとしてのパクリタキセルの溶出は、かつて問題となっていた"付きまとい(tag-along)"効果を排除することができる。
研究室での実験に基づき、パクリタキセルが、ポリアミドを基礎とした固定相を採用し、且つ移動相としてジアルキルケトンと極性がより小さい有機性共溶媒の混合物を使用するクロマトグラフィーによって、他の物質から効果的に分離され得ることが示された。本発明の実施において使用可能な適切なジアルキルケトンは、アセトン、メチルイソブチルケトン、2-ブタノン、メチルエチルケトン等を含む。アセトンとメチルイソブチルケトンは、ジアルキルケトン群の中でも最適である。それらは毒性がなく、安価である。しかしながら、それらは単一成分移動相として単独で使用するためには極性が大きすぎる傾向がある。従って、移動相の極性を、1種以上の極性がより小さい共溶媒、例えば脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、またはジアルキルエーテルを付加することによって減少させる。
本発明の態様では、移動相として使用する溶媒の沸点は、約130℃を下回るべきである。これは、製品は好適には蒸発によってクロマトグラフィーフラクションから回収されるからである。しかしながら溶媒の沸点が低すぎる場合は、溶媒の蒸発は環境問題を提起する。従って、好適には、本発明の態様の実施において使用されるより極性の小さい溶媒は、(C5-C8)脂肪族炭化水素、例えばヘキサンまたはヘプタン;(C6-C8)芳香族炭化水素、例えばトルエン;(C1-C4)ジアルキルエーテル、例えばジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、またはtert-ブチルメチルエーテル;またはそれらの混合物を含む。
多くの溶液の組合せは、適切な溶媒から作り出すことができる。当該プロセスの効果を改善することは、個々の溶媒が、蒸留等により分離プロセス後に回収され得ることである。蒸留によりそれらの分離を促進するために、それらの沸点において十分に大きな差異を有する溶媒の組合せを使用することが好適である。溶媒の沸点に基づくと、トルエンはより極性の小さい溶媒の群の中でもとりわけ好適な溶媒である。
移動相として使用する溶媒の選定に関する他の検討事項は、分離される材料に依存する。通常、低い含有量のパクリタキセルを有す複合混合物は、除去されるべきいくつかの非常に極性が大きい不純物も含む。これらの不純物は、最終的にカラムから流されなくてはならない。かかるパクリタキセル混合物は、移動相としてのアセトンとトルエンの組合せによって、より容易に分離されるようである。
その後、高濃度のパクリタキセルを含む溶出フラクションは、真空蒸発によって更に単離することができる。乾燥の程度は、製品が粘性残渣となるか、または固体結晶性塊となるかを指示するだろう。いずれの場合でも適切な溶媒から結晶化され、結晶形態にあるパクリタキセルを得ることができる。溶媒の迅速蒸発と完全に一緒になった有機溶媒系の使用は、所望されないパクリタキセルの7-epi-パクリタキセルへの異性化を都合よく減少または完全に排除する。これは公知の逆相クロマトグラフィーを基礎とする単離方法を越える他の利点を提供する。
実施例
以下の実施例は、本発明の所定の好適な態様を更に説明することを意図し、事実上制限するものではない。当業者は、通常の実験を用いるたけで、本明細書において発表された特定の物質及び手順に対する多数の同等物を認識または確定することができるだろう。
以下の実施例は、本発明の所定の好適な態様を更に説明することを意図し、事実上制限するものではない。当業者は、通常の実験を用いるたけで、本明細書において発表された特定の物質及び手順に対する多数の同等物を認識または確定することができるだろう。
約8.38 %のパクリタキセルと約2.23% のセファロマンニン(図1に示す)を含む約0.71gの粗混合物を、10:90 (V/V)比率でアセトンとトルエンを含む約10 mLの混合物に溶かした。当該溶液を約45 gのポリアミドを基礎とした吸着剤(Polyamide Roth,粒子径約50〜160μm)で充填したカラムにかけた。その後、当該カラムを約600 mLの10:90(V/V)のアセトンとトルエン溶液で溶出した。その後、約1200 mLのアセトンとトルエンの溶液をカラムに加え、その間、10:90(V/V)の出発比率から100:0(V/V)の最終比率までアセトン勾配が線形的に増加した。移動相の流動は、全溶出手順の間に約50 mL/分で維持された。溶出溶液のフラクションを注入時から勾配溶出の終了時までおよそ50 mLずつ採取し、そしてHPLCで分析した。パクリタキセルを含む溶出溶液のフラクションを蒸発し、乾燥させて、約37.54%のパクリタキセルと約6.80%のセファロマンニンを含む約0.14 gの製品を得た(HPLC分析を図2に示す)。
約1.99%のパクリタキセル及び約0.89%のセファロマンニンを含む約0.75 gの粗混合物(図3に示す)を15 mLのアセトンとトルエン10:90(V/V)の混合物に溶解した。当該溶液を約45 gのポリアミド(Polyamide Roth、粒子径約50〜160μm)を充填したカラムにかけた。その後、当該カラムを、約40℃の温度を維持しながら、600 mLの10:90(V/V)アセトン対トルエン溶液で溶出した。およそ1200 mLのアセトンとトルエンの組合せを付加し、その間、10:90(V/V)の出発比率から100:0(V/V)の最終比率までアセトン勾配が線形的に増加した。溶出溶液のフラクションを、それぞれ50 mLずつ採取した。当該フラクションをHPLCで分析した。同一の出発材料による同一の実験は、カラムを約50℃、60℃、または70℃で維持した以外は、同一の条件下で実施した。全4つの分離からのパクリタキセルを含む対応のフラクションは、パクリタキセルとセファロマンニン含有量の両方が評価された。温度の上昇は、40℃で約3.89:1の比率(HPLC分析は図4に示す)から70℃で約5.31:1の比率(HPLC分析は図5に示す)でこれらの2つの物質間の分離の改良を導くことが見出された。
約7.3%のパクリタキセルと約2.3%のセファロマンニンを含む約198.0 gの粗パクリタキセル混合物(図6に示す通り、パクリタキセル/セファロマンニンの最初の比率はHPLC分析によれば約3.17:1であった)を4 Lのアセトンとトルエン(10:90 V/V)に溶かした。溶液を約6830 gのポリアミド(Polyamide Roth, 粒子径約50〜160μm)を充填したカラムにかけた。その後、カラムを100 Lのアセトンとトルエン(10:90 V/V)で溶出した。更に200 Lのアセトンとトルエンの混合物で溶出し、その間、出発比率の10:90(V/V)から最終比率の100:0(V/V)までアセトン勾配が線形的に増加した。溶出溶液のフラクションをそれぞれ20 Lずつ採取し、HPLCで分析した。純粋なパクリタキセルを含むフラクションを蒸発し、乾燥させて約60.5%のパクリタキセルと約1.3%のセファロマンニンを含む約22.42 gの製品を得た(HPLC分析は図7に示す)。アセトンとヘキサン(50:50 V/V)の混合物からの結晶化の後のパクリタキセルの純度は、約98.9%であった(HPLC分析は図8に示す)。
約55.0 %のパクリタキセルと約19.0 %のセファロマンニンを含む約68.3 gの粗結晶性パクリタキセル(図9に示すHPCL分析によるとパクリタキセル/セファロマンニンの最初の比率は、およそ2.89:1であった)を2 Lのアセトンとトルエン(10:90 V/V)に溶かした。その後、溶液を約6830 gのポリアミド(Polyamide Roth, 粒子径50〜160μm)を充填したカラムにかけた。その後、当該カラムを5O℃で、100 Lのアセトンとトルエン(10:90 V/V)で溶出し、そして200 Lのアセトンとトルエンで更に溶出し、その間、10:90 (V/V)の出発比率から100:0 (V/V)の最終比率までアセトンの勾配が線形的に増加した。フラクションをそれぞれ20 Lずつ採取し、そしてHPLCで分析した。純粋なパクリタキセルを含むフラクションを蒸発し、乾燥させて、約83.1%のパクリタキセルと約1.0%のセファロマンニンを含む約28.61 gの製品を得た(HPLC分析は図10に示す)。
約15.28%のパクリタキセルと約3.35%のセファロマンニンを含む約0.33 gの粗パクリタキセル混合物(図11に示す)を8 mLのアセトンとヘキサン31:69(V/V)に溶かした。その後、溶液を約45 gのポリアミド(Polyamide Roth, 粒子径約50〜160μm)で充填したカラムにかけた。その後、当該カラムを600 mLのアセトンとヘキサンの混合物20:80(V/V)で溶出した。その後、更に当該カラムを1200 mLのアセトンとヘキサンで溶出し、その間、アセトン勾配が20:80(V/V)の出発比率から100:0 (V/V)の最終比率へ線形的に増加した。溶出溶液のフラクションをそれぞれ50 mLずつ採取し、そしてHPLCで分析した。純粋なパクリタキセルを含むフラクションを蒸発し、乾燥させて、約29.7%のパクリタキセル及び約3.5%のセファロマンニンを含む約0.07 gの製品を得た(HPLC分析を図12に示す)。
約65.78%のパクリタキセルと約2.08%のtaxol Cを含む約0.35 gのパクリタキセル濃縮物(図13に示す)を20 mLのアセトンとトルエン(15:85 V/V)に溶かした。その後、溶液を約35 gのポリアミド(Polyamide Roth, 粒子径315μm)を充填したカラムにかけた。その後、当該カラムを750 mLのアセトンとトルエンの混合物15:85(V/V)で溶出した。更に750 mLのアセトンとトルエンの混合物で溶出し、その間、15:85 (V/V)の出発比率から50:50(V/V)の最終比率までアセトン勾配が線形的に増加した。溶出溶液のフラクションをそれぞれ50 mLずつ採取し、そしてHPLCで分析した。純粋なパクリタキセルを含むフラクションを蒸発し、乾燥させて、約68.63%のパクリタキセルと約0.63%のtaxol Cを含む約0.25gの製品を提供した(HPLC分析は図14に示す)。
ここでの開示では、本発明の好適な態様及びほんの数例の汎用の実施例のみが発表される。本発明は多様な他の組合せ及び環境において使用することができ、且つ本明細書において示されたような本発明の概念の範囲内で改変または修飾することができることが理解される。従って、例えば、当業者は通常の実験を用いるたけで、本明細書で発表された特定の物質及び手順に対する多数の同等物を認識または確定することができるだろう。かかる同等物は本発明の範囲内にあるとみなされ、且つ特許請求の範囲で保護される。
Claims (17)
- パクリタキセルを精製するための方法であって、以下のステップ:
a)パクリタキセルを含む出発混合物を、ポリアミドを基礎とした化合物を含む容器に適用し;
b)より極性が小さい溶媒と混合された1種以上のジアルキルケトンを含む溶出溶液を該容器に適用し;
c)該出発混合物を溶出し;そして
d)パクリタキセルを含む溶出溶液の1以上のフラクションを収集すること、
を含んで成る方法。 - 前記出発混合物がタクスス植物全体、それらの生の樹皮もしくは乾燥樹皮、根、葉または枝から成る群からの抽出によって得られた粗抽出物または精製抽出物である、請求項1に記載の方法。
- 前記出発混合物がタクスス植物から得られた細胞培養を抽出することによって得られた粗抽出物または精製抽出物である、請求項1に記載の方法。
- 前記出発混合物がタキサン産生真菌の培養によって調製された発酵ブロスの抽出によって得られた粗抽出物または精製抽出物。
- 前記出発混合物がパクリタキセル産生のために遺伝子修飾された特定の菌種の培養によって調製された発酵ブロスの抽出によって得られた粗抽出物または精製抽出物である、請求項1に記載の方法。
- 前記出発混合物がパクリタキセル、セファロマンニン、及び他のタキサンの混合物である、請求項1に記載の方法。
- 前記1種以上のジアルキルケトンがアセトン、2-ブタノン、またはメチルイソブチルケトンから成る群から選定される、請求項1に記載の方法。
- 前記のより極性が小さい溶媒が、(C5-C8)脂肪族炭化水素、(C6-C8)芳香族炭化水素、及び(C1-C4)ジアルキルエーテルまたはそれらの混合物から成る群から選定される、請求項1に記載の方法。
- 前記(C5-C8)脂肪族炭化水素がヘキサンまたはヘプタンである、請求項8に記載の方法。
- 前記(C6-C8)芳香族炭化水素がトルエンである、請求項8に記載の方法。
- 前記(C1-C4)ジアルキルエーテルが、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、及びtert-ブチルメチルエーテルから成る群から選定される、請求項8に記載の方法。
- 前記出発混合物の重量の約1部が、前記ポリアミドを基礎とした化合物の重量の約20部超を充填したカラムに適用される、請求項1に記載の方法。
- 前記ポリアミドが、ポリカプロラクタム、ポリウンデカノラクタム、及びポリラウリルラクタムから成る群から選定される、請求項1に記載の方法。
- 前記ポリアミドがポリ(ヘキサメチレンアジパミド-co-カプロラクタム)である、請求項1に記載の方法。
- 前記溶液が前記1種以上のジアルキルケトンを前記のより極性の小さい溶媒の約5%(V/V)から約100%(V/V)の比率で含んで成る、請求項1に記載の方法。
- 前記溶液が前記1種以上のジアルキルケトンとしてアセトン、及び前記のより極性の小さい溶媒としてトルエンまたはヘキサンを含んで成る、請求項15に記載の方法。
- 前記容器に前記溶液を適用させる間に、前記のより極性の小さい溶媒に対する前記ジアルキルケトンの濃度を上昇させることを更に含んで成る、請求項1または16に記載の方法。
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