インビボで固形腫瘍を選択的に標的にすることは非常に望ましいが、今までのところ癌治療にとっては手に入れにくい目標である(Dvorak, H. F.ら, (1991) Cancer Cells 3, 77-85; Auerbach, R. (1991) Int J Radiat Biol 60, 1-10; Burrows, F. J.およびThorpe, P. E. (1994) Pharmacol Ther 64, 155-74; Schnitzer, J. E. (1998) N Engl J Med 339, 472-4)。固形腫瘍の現在の治療法は、全身性副作用を回避するための、十分な腫瘍特異的標的が不足している(Burrows, F. J.およびThorpe, P. E. (1994) Pharmacol Ther 64, 155-74; Schnitzer, J. E. (1998) N Engl J Med 339, 472-4; Schnitzer, J. E. (2001) Adv Drug Deliv Rev 49, 265-80)。腫瘍細胞特異的抗体に結合する医薬は、腫瘍組織内の新生細胞を標的とするために「特効薬」として静脈注射されたときにインビトロで優れた特異的活性を示すが、接近性を制限し生物学的利用能および生物学的効能を減少する深刻な障壁にインビボで直面する(Dvorak, H. F.ら, (1991) Cancer Cells 3, 77-85)。
本発明の概要
本発明は、血管内皮、血管内皮中、および/または血管内皮を横切って、新生物特異的な様式で薬剤を送達する方法に関連する。本発明の方法において、該薬剤は、アネキシンA1、アネキシンA1の誘導体、アネキシンA1の特異的結合パートナー、またはアネキシンA1の誘導体の特異的結合パートナーに特異的に結合する薬剤に、脈管構造の管腔表面、または脈管構造の小胞を接触させることにより送達され;あるいは該薬剤は、アネキシンA1またはアネキシンA1の誘導体に、脈管構造の管腔表面、または脈管構造の小胞を接触させることにより送達される。
本発明のある態様において、該方法は個体にアネキシンA1治療剤を投与することにより、個体における新形成を処置するのに使用され得る。該アネキシンA1治療剤はアネキシンA1またはアネキシンA1の誘導体に対する抗体であり得;あるいは、該アネキシンA1治療剤はアネキシンA1受容体またはアネキシンA1結合剤であり得る。さらに、該アネキシンA1治療剤はまた、活性剤成分および標的化剤成分を有する薬剤であり得、該標的化剤成分は、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する薬剤(例えば、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に対する抗体);アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体;アネキシンA1の特異的結合パートナーもしくはアネキシンA1の誘導体の特異的結合パートナー;または、アネキシンA1の特異的結合パートナーもしくはアネキシンA1の誘導体の特異的結合パートナーに結合する薬剤である。これらの態様において、該活性剤成分は、例えば、放射性核種;化学療法薬;免疫刺激剤;抗新生物剤:抗炎症剤;アポトーシス促進剤;凝血原;毒素;抗生剤;ホルモン;酵素;タンパク質(例えば、組み換えタンパク質もしくは組み換え修飾タンパク質)担体タンパク質(例えば、アルブミン、修飾(modified)アルブミン);細胞融解剤;小分子;アプタマー;修飾した細胞を含む、細胞;ワクチンを誘導する、もしくは他の免疫細胞;ナノ粒子(例えば、アルブミンベースのナノ粒子);トランスフェリン;免疫グロブリン;多価抗体;脂質;リポタンパク質;リポソーム;改変天然リガンド;遺伝子もしくは核酸;RNA;siRNA;ウイルスもしくは非ウイルス遺伝子送達ベクター;プロドラッグ;またはプロ分子(promolecule)であり得る。本発明はさらに、アネキシンA1治療剤を組み込む生理学的組成物に関連する。
本発明はまた、アネキシンA1治療剤での処置前、および該アネキシンA1治療剤での処置中または後での個体からの試料中のアネキシンA1のレベルを評価し、そのレベルを比較することによる、アネキシンA1治療剤での処置への反応を評価する方法に関連し;治療前のアネキシンA1のレベルより有意に低い、処置中または後のアネキシンA1のレベルは、該アネキシンA1治療剤での処置の効能を示す。
本発明はさらに、標的化剤成分(上述のような)および画像化剤(imaging agent)成分を含む画像化剤を用いた、個体の身体的画像化を実行する方法に関連する。該画像化剤成分は、例えば、放射性剤、放射性同位体もしくは放射性医薬品;造影剤(contrast agent);磁気剤もしくは常磁性剤;リポソーム;超音波剤;ナノ粒子;検出剤を誘発する遺伝子ベクターもしくはウイルス;酵素;補欠分子族;蛍光物質;発光物質;または生物発光物質であり得る。投与の際、標的とされる画像化剤は、(該画像化剤のために計画された)従来の外部検出方法により非侵略的に視覚化され得、新生物内への優先的または特異的な蓄積を検出する。さらに本発明は、新生物特異的な様式でかかる画像化剤をインビボで送達し、ひいては該画像化剤の存在について生検試料を評価する方法に関連し、該方法はまた、新生物特異的な様式で組織試料に画像化剤を送達することに関連する。該方法はさらに、新生物の有無について個体を評価し、上述のように画像化剤成分および標的化剤成分を含む目的の薬剤を個体に投与し、目的の薬剤の集中の有無について個体を評価する方法に関連し、ここで目的の薬剤の集中が在ることは新生物が在ることを示す。
本発明はさらに、血管内皮、血管内皮中、および/または血管内皮を横切って、新生脈管構造特異的な様式で薬剤を送達する方法に関連する。本発明の方法において、該薬剤は、アネキシンA1、アネキシンA1の誘導体、アネキシンA1の特異的結合パートナー、またはアネキシンA1の誘導体の特異的結合パートナーに特異的に結合する薬剤に、脈管構造の管腔表面を接触させることにより送達され;あるいは該薬剤は、アネキシンA1またはアネキシンA1の誘導体に、該脈管構造の管腔表面を接触させることにより送達される。
本発明のある態様において、該方法はアネキシンA1治療剤を個体に投与することにより、個体における新生脈管構造(例えば、新脈管形成、望ましくない新生脈管構造の発達)を処置するのに用いられ得る。該アネキシンA1治療剤は、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体に対する抗体であり得;あるいは、該アネキシンA1治療剤はアネキシンA1受容体またはアネキシンA1結合剤であり得る。さらに、該アネキシンA1治療剤はまた、活性剤成分および標的化剤成分を有する薬剤であり得、該標的化剤成分は、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する薬剤(例えば、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に対する抗体);アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体;アネキシンA1の特異的結合パートナーもしくはアネキシンA1の誘導体の特異的結合パートナー;または、アネキシンA1の特異的結合パートナーもしくはアネキシンA1の誘導体の特異的結合パートナーに結合する薬剤である。これらの態様において、該活性剤成分は、例えば、放射性核種;化学療法薬;免疫刺激剤;抗新生物剤:抗炎症剤;炎症誘発剤;アポトーシス促進剤;凝血原;毒素;抗生剤;ホルモン;タンパク質;細胞融解剤;小分子;アプタマー;細胞;ナノ粒子;脂質;リポタンパク質;リポソーム;改変天然リガンド;遺伝子もしくは核酸;ウイルスもしくは非ウイルス遺伝子送達ベクター;プロドラッグ;またはプロ分子であり得る。
本発明のある他の態様において、該方法はアネキシンA1新生脈管構造剤を個体に投与することにより、個体における新生脈管構造を強化または増加するために用いられ得る。
また本発明は、新生脈管構造特異的な様式でかかる画像化剤をインビボで送達し、ひいては該画像化剤の存在について生検試料を評価する方法に関連し、該方法はまた、新生脈管構造特異的な様式で組織試料にかかる画像化剤を送達することに関連する。該方法はさらに、新生脈管構造の有無について個体を評価し、上述のように画像化剤成分および標的化剤成分を含む目的の薬剤を個体に投与し、目的の薬剤の集中の有無について個体を評価する方法に関連し、ここで目的の薬剤の集中が在ることは新生脈管構造が在ることを示す。
本発明はさらに、検査される薬剤の存在下および非存在下におけるアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性のレベルを評価することにより、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性を変える薬剤を特定する方法に関連し、ここで該薬剤の存在下におけるアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性のレベルが、統計的に有意な量で該薬剤の非存在下におけるアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性のレベルと異なる場合、該薬剤はアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性を変える薬剤である。これらの方法で特定可能である、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性を変える薬剤はまた、本発明により意図されている。
発明の詳細な説明
本発明の好ましい態様の説明は以下に続く。本発明は、固形腫瘍が、抗体が接近可能なAnnA1およびAnnA1の誘導体の転座を新生脈管構造の小胞において誘発するという発見に基づく。
血管内皮および腫瘍接近性
小胞と呼ばれる原形質膜の小水疱は、内皮細胞表面上に豊富にあり、栄養の選択的なエンドサイトーシスおよびトランスサイトーシスに機能し、内皮細胞に入る(エンドサイトーシス)手段および/または基礎をなす組織細胞への送達のために内皮細胞バリアに浸透する(トランスサイトーシス)手段を提供する。腫瘍中への乏しい浸透性の問題を回避するため、焦点は今や循環する血液に接触する血管内皮細胞表面にあり、この血管内皮細胞表面は本質的に接近可能、ひいては目標を定めることができる表面を提供する。腫瘍内に誘発され、正常な器官の内皮において発現または外面化されない静脈内に接近可能な新生血管標的は、この戦略に有用である。
過去の研究は、分子構造ならびに細胞表面および特に正常な血管内皮におけるその小胞の機能を、初めはラットの肺組織において、広範囲にマッピングし、特徴付けている(Schnitzer, J. E. および Oh, P. (1994) J Biol Chem 269, 6072-82; Schnitzer, J. E.ら, (1994) J Cell Biol 127, 1217-32; Schnitzer, J. E.ら, (1995) Science 269, 1435-9; Schnitzer, J. E.ら, (1996) [出版社の誤植表はScience 1996年11月15日;274(5290):1069に出ている]. Science 274, 239-42; Schnitzer, J. E.ら, (1995). J Biol Chem 270, 14399-404; Schnitzer, J. E.ら, (1995) Am J Physiol 268, H48-55; McIntosh, D. P. および Schnitzer, J. E. (1999) Am J Physiol 277, H2222-32)。腫瘍からの内皮小胞およびさらにヒトの小胞に対するこれらの正常なラットの肺内皮小胞の同等性の調査が始まっている。正常なラットの肺内皮小胞は、ニューロンへの発現が制限されると思われたアネキシンA1(AnnA1)ではなく、アネキシンA2(AnnA2)を含み、分泌細胞を選択する(McKanna, J. A. および Zhang, M. Z. (1997. J Histochem Cytochem 45, 527-38; Savchenko, V. L.ら, (2000) Neuroscience 96, 195-203; Naciff, J. M.ら, (1996) J Comp Neurol 368, 356-70; Eberhard, D. A.ら, (1994) Am J Pathol 145, 640-9)。通常AnnAlを含むアネキシン類は、カルシウム依存様式で脂質膜に結合し得る細胞質内タンパク質である(Gerke, V., および Moss, S.E.,. Physiol Rev 2002; 82:331-71)。細胞表面にあるとき、それらは通常、二重層の内側のリーフレットに結合して存在するが、いくつかのアネキシン類は外部表面の原形質膜に結合したままの脂質二重層を越えて転座し得る(Gerke, V. および Moss, S. E. (2002) Physiol Rev 82, 331-71)。
驚くべきことに、内皮およびその小胞のプロテオーム的マッピング(proteomic mapping)は、適例として記載されるように、固形腫瘍が、抗体が接近可能なアネキシンA1の34kDa-形態の転座を新生脈管構造の小胞において誘発することを明らかにした。アネキシンA1を介して腫瘍内皮小胞を標的とすることは、インビボおよびインビトロの固形腫瘍への特異的送達、浸透、固形腫瘍の画像化および破壊を可能にする。また、固形新生物の発達と持続において、新脈管形成および新生脈管構造の発達の役目を考慮して、アネキシンA1を介して内皮小胞を標的とすることはまた、インビボおよびインビトロの新生物および新生脈管構造への特異的送達、浸透、新生物および新生脈管構造の画像化および破壊を可能にする。さらに、新生物または新生脈管構造への送達、新生物および新生脈管構造の処置、および/もしくは画像化において使用する医薬の製造のために、記載の薬剤の使用が可能となる。
本発明の方法
この発見の結果、アネキシンA1、アネキシンA1の誘導体、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する薬剤を用いて、またはアネキシンA1の結合パートナーもしくはアネキシンA1の誘導体の結合パートナーに特異的に結合する薬剤を用いて、血管内皮、血管内皮中、および/または血管内皮を横切って、新生物特異的な様式で薬剤を送達する方法が、今や利用できる。新生物の血管内皮、血管内皮中、および/または血管内皮を横切っての送達は、新生物間質中への薬剤の送達を可能にし得、薬剤を新生物の全ての領域(腫瘍の内皮、間質、および他の部分を含む)に送達するのを可能にすると見られている。同様にこの発見の結果、アネキシンA1、アネキシンA1の誘導体、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する薬剤を用いて、またはアネキシンA1の結合パートナーもしくはアネキシンA1の誘導体の結合パートナーに特異的に結合する薬剤を用いて、血管内皮、血管内皮中、および/または血管内皮を横切って、新生脈管構造特異的な様式で薬剤を送達する方法が、今や利用できる。血管内皮、血管内皮中、および/または血管内皮を横切っての送達は、新生脈管構造を含む領域に薬剤を送達するのを可能にし得ると見られている。
本発明のある態様において、該方法は、血管内皮、血管内皮中、および/または血管内皮を横切って、新生物特異的な様式でアネキシンA1治療剤を送達する。これらの方法は、個体における新形成または他の疾患状態の処置に用いられ得る。用語「新生物」は本明細書で使用される場合、特に悪性新生物をいい、肉腫(例えば、線維肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、血管肉腫、中皮腫、白血病、リンパ腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫)だけでなく、癌腫(例えば、腺腫、乳頭状癌、嚢胞腺癌、黒色腫、腎細胞癌、肝臓癌、絨毛癌、精上皮腫)、ならびに混合の新生物(例えば、奇形腫)を含む。従って「新生物」は、固形腫瘍のみならず、いわゆる「軟性の」腫瘍も意図する。さらに「新生物」は、原発性の(primary)新生物のみならず、転移もまた意図する。代表的な態様において、標的とされ得る新生物は、脳、胸部、肺、腎臓、前立腺、卵巣、頭頚部および肝臓の腫瘍を含む。本発明の他の態様において、該方法は、血管内皮、血管内皮中、および/または血管内皮を横切って、新生物特異的な様式で画像化剤を送達する。
本発明のある他の態様において、該方法は、血管内皮、血管内皮中、および/または血管内皮を横切って、新生脈管構造特異的な様式でアネキシンA1治療剤を送達する。これらの方法は、個体における望ましくない新生脈管構造または他の疾患状態を処置するのに用いられ得る。本発明の他の態様において、該方法は、血管内皮、血管内皮中、および/または血管内皮を横切って、新生脈管構造特異的な様式で画像化剤を送達する。本発明のさらなる態様において、該方法は所望の場合、新生脈管構造を強化または増加するために、血管内皮、血管内皮中、および/または血管内皮を横切って、新生脈管構造特異的な様式でアネキシンA1治療剤を送達する。また利用できるのは、アネキシンA1またはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する薬剤を利用し、処置効果を評価ならびに疾患の予後を評価する方法を含む、インビボおよびエクスビボでの診断である。アネキシンA1の活性を変える薬剤を特定するスクリーニング方法もまた、本発明の該方法において用いられ得るアネキシンA1に対する抗体として記載される。
アネキシンA1の「誘導体」という用語は、本明細書中で使用される場合、アネキシンA1と(例えば、ヒトアネキシンA1、ラットアネキシンA1、ウシアネキシンA1と)有意な相同性を共有する変異型アネキシンA1ポリペプチドをいう。誘導体はフラグメントおよび/または配列変異体を包含し得る。変異体は生物における同じ遺伝子座、すなわち、対立遺伝子変異体、ならびに他のスプライシング変異体によってコードされる実質的に相同なポリペプチドを含む。変異体はまた、生物における他の遺伝子座に由来するが、実質的にアネキシンA1に相同性を有するポリペプチドを包含する。変異体はまた別の生物に由来するが、これらのポリペプチドと実質的に相同または同一なポリペプチド、すなわちオーソログを含む。変異体はまた、化学合成により生成される、これらのポリペプチドと実質的に相同または同一なポリペプチドを含む。変異体はまた、組み換え法により生成される、これらのポリペプチドと実質的に相同または同一なポリペプチドを含む。
本明細書中で使用される場合、2つのポリペプチド(またはポリペプチドの領域)は、アミノ酸配列が少なくとも約45-55%、典型的には少なくとも約70-75%、より典型的には少なくとも約80-85%、最も典型的には約90%以上、相同または同一であるとき、実質的に相同または同一である。2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列の相同性もしくは同一性の割合を測定するために、該配列は最適な比較目的のために整列される(例えば、他のポリペプチドまたは核酸分子との最適な整列のために、あるポリペプチドまたは核酸分子の配列中に隙間(gap)が挿入され得る)。対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドが、次いで比較される。ある配列の位置が、他の配列の対応する位置として、同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されるとき、該分子はその位置で相同である。本明細書中で使用される場合、アミノ酸または核酸「相同性」は、アミノ酸または核酸「同一性」と同等である。2つの配列の間の相同割合は、配列により共有される同一な位置の数の関数である(すなわち、相同割合は同一な位置の数/位置の総数に100を掛けた数に等しい)。
本発明はまた、より低い度合いの同一性を有するが、ポリペプチドにおいて所定のアミノ酸を似た特性の別のアミノ酸と同類的に(conservatively)入れ替える置換を有する誘導体等の、アネキシンA1により行われる一つ以上の同じ機能を行うために十分な類似を有する誘導体のポリペプチドを包含する。同類置換は、表現型の上では表立たない(silent)と思われる。典型的に同類置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの間での、別のものに対する一つの(one for another)置換、ヒドロキシル残基SerおよびThrの相互交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間での置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基PheおよびTyrの間での置換である。どのアミノ酸変化が表現型の上では表立たないと思われるかに関する手引きは、Bowieら、Science 247:1306-1310 (1990)に見出される。
誘導体アネキシンA1ポリペプチドは、一つ以上の置換、欠失、挿入、逆位、融合、および切断、またはこれらの任意の組み合わせによりアミノ酸配列において異なり得る。好ましい態様において、該アネキシンA1誘導体は該アネキシンA1の機能に不可欠なアミノ酸を含む。機能に不可欠なアミノ酸は、特定部位の突然変異誘発法またはアラニンスキャニング突然変異誘発法(Cunninghamら, Science, 244:1081-1085 (1989))等の当該分野に公知の方法により特定され得る。後者の手段は、単独のアラニン突然変異体を分子のあらゆる残基に導入する。得られた突然変異分子は、その後インビトロで生物学的活性、またはインビトロ増殖活性を検査される。ポリペプチド活性に重大な部位はまた、結晶化、核磁気共鳴、またはフォトアフィニティ・ラベリング等の構造解析によって決定され得る(Smithら, J. Mol. Biol., 224:899-904 (1992); de Vosら Science, 255:306-312 (1992))。
アネキシンA1誘導体としては、例えばシグナルペプチド、細胞外ドメイン、一つ以上の膜貫通型断片もしくはループ、リガンド結合領域、亜鉛フィンガードメイン、DNA結合ドメイン、アシル化部位、糖鎖付加部位、またはリン酸化反応部位の、周知の方法を用いるポリペプチド配列の分析により特定されている、ドメイン、断片、またはモチーフを含み得る活性フラグメント(例えば、6、9、12、15、16、20、30、35、36、37、38、39、40、50、100またはそれ以上の長さのアミノ酸であるペプチド)が挙げられる。フラグメントは分離(他のアミノ酸またはポリペプチドに融合しない)し得るか、またはより大きなポリペプチドの中にあり得る。
薬剤の送達
本発明の方法において、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する薬剤を利用して、またはアネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体を用いて、新生物特異的な様式または新生脈管構造特異的な様式で、薬剤が送達される。アネキシンA1に「特異的に結合する」薬剤(アネキシンA1結合パートナー)またはアネキシンA1の誘導体に「特異的に結合する」薬剤は、本明細書中で使用される場合、優先的にまたは選択的にアネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に結合する薬剤である。ある程度の非特異的な相互作用が特異的に結合する薬剤と該アネキシンA1の間で起こり得るが、それでもなお特異的結合は、全体または部分的に、アネキシンA1の特異的な認識を通じて媒介されているとして区別され得る。通常、特異的結合は、該薬剤と他のタンパク質、例えば他の血管のタンパク質との間よりもずっと強力な、該薬剤と該アネキシンA1の関連をもたらす。同族の薬剤の親和性定数(Kdと対立するものとしてKa)は、少なくとも106もしくは107、通常は少なくとも108、あるいは少なくとも109、あるいは少なくとも1010、またあるいは少なくとも1011Mである。「特異的」結合は、効果的に「特異的」であるために、十分に部位特異的な結合であり得ることもまた留意すべきである:例えば結合の度合いがより高い度合いでより大きい場合(例えば、10倍以上、20倍以上、またはさらに100倍以上)、該結合は、特定位置でのただ該標的タンパク質だけへの結合と機能上同等になり得る:方向性を有する(directed)有効な結合は、他の組織への送達が最低限起こるかまたは全く送達が起こらない。従って、特異的結合と機能上同等である量は、他の組織への結合が最低限であるかまたは結合が全くない状態で、薬剤の効果的な送達の目標が達成されるかどうかを評価することにより測定され得る。
特定の態様において、該薬剤はアネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する抗体であるか、もしくは含む、または抗体のフラグメント(例えば、Fabフラグメント)であるか、もしくは含む。あるいは、該薬剤はアネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する別の薬剤(別の「特異的結合パートナー」)であるか、または含む。代表的な特異的結合パートナーとしては、例えば、天然のリガンド、ペプチド、小分子(例えば、無機小分子、有機小分子、小分子の誘導体、複合小分子);アプタマー;細胞;ナノ粒子(例えば、脂質または非脂質を基礎とした製剤);脂質;リポタンパク質;リポペプチド;脂質誘導体;リポソーム;化学療法薬を運搬するのに用いられる修飾内因性血液タンパク質が挙げられる。
さらに別の態様において、該薬剤はアネキシンA1それ自体もしくはアネキシンA1の誘導体であるか、または含む。さらなる態様において、該薬剤はアネキシンA1の結合パートナーまたはアネキシンA1の誘導体の結合パートナーに特異的に結合する。該薬剤はまた上述のように、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体を標的とするか、またはアネキシンA1の結合パートナーを標的とする第1の成分、および活性成分である第2の成分(例えば以下に詳細に記載されるように、治療剤または画像化剤)を含み得る。該薬剤は、それ自体、または該薬剤を含む組成物(例えば医薬組成物または生理的組成物)で投与され得る。それはインビボ(例えば個体に)またはインビトロ(例えば組織試料に)投与され得る。本発明の該方法は、ヒトの個体に用いられ得るのみならず、獣医的用途(例えば、家畜を含む他の哺乳類(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ)および家畜ではない動物にもまた適用できる。
本発明の方法において、該薬剤は、それ自体、または該薬剤を含む組成物(例えば、生理的組成物または医薬組成物)で投与され得る。例えば該薬剤は、医薬組成物を調製するために、生理的に許容され得る担体または賦形剤と共に処方され得る。該担体および組成物は、無菌であり得る。剤形は投与の様式に適するべきである。
適切な医薬的に許容され得る担体としては、限定されないが、水、塩溶液(例えばNaCl)、生理食塩水、緩衝生理食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアガム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロースまたはデンプン等の糖質、ブドウ糖、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性(viscous)パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、等、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。該医薬製剤は、所望の場合、例えば該活性剤と有害的に反応しない潤滑油、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、緩衝液、着色料、調味料および/または芳香剤等の助剤と混合され得る。
該組成物はまた、所望の場合、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含み得る。該組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤、または粉剤であり得る。該組成物は、トリグリセリド等の従来の結合剤および担体を有する坐剤として製剤化され得る。経口製剤としては、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、等の標準的担体を含み得る。
これらの組成物の導入方法としては、限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、眼内、静脈内、皮下、局所、経口および鼻腔内が挙げられる。他の適切な導入方法としてはまた、充電式または生分解性の装置、粒子加速装置(「遺伝子銃」)および徐放性高分子装置が挙げられ得る。所望の場合、該組成物は、特定の組織に、または特定の組織に供給する(serving)血管(例えば、脳を標的とするために頸動脈)に投与され得る。該医薬組成物はまた、同時または近接して(例えば、数時間、数日、数週間、数ヶ月隔てられて)他の薬剤との組み合わせ治療の一部として投与され得る。該組成物の活性は、同時または近接して投与された他の薬剤により増強され得る。
該組成物は、ヒトや動物への投与に適合された医薬組成物としての常套な手順に従って、製剤化され得る。例えば、静脈内投与のための組成物は通常、滅菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要であれば、該組成物はまた、可溶化剤および注射部位の痛みを和らげるための局部麻酔薬を含み得る。一般的に原料は、別々に供給されるか、または例えば、活性剤の量を表示したアンプルまたはサシェ等の密封容器に入った凍結乾燥粉末または水分を含まない濃縮物として単位投薬形態で混合されて供給されるかのいずれかである。該組成物が輸液によって投与される場合、滅菌医薬品グレードの水、生理食塩水、またはブドウ糖/水を含む輸液瓶で投薬され得る。該組成物が注射によって投与される場合、投与の前に原料が混合され得るように、注射のための滅菌水または生理食塩水のアンプルが供給され得る。
局所使用のために、噴霧できない形態、局所使用に適合する担体を含み、好ましくは水より大きな動的粘度を有する粘性から半固体または固体形態が用いられ得る。適切な製剤としては、限定されないが、所望の場合、殺菌されるか、または例えば保存料、安定剤、湿潤剤、緩衝液、浸透圧に影響する塩等の助剤と混合される、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、軟膏、粉剤、浣腸器、ローション、ゾル、塗布薬、膏薬、エアロゾル等が挙げられる。該薬剤は化粧品処方に取り入れられ得る。局所使用のために、また適切なのは、好ましくは固体または液体の不活性担体物質と共に活性原料がプラスチック容器、または加圧揮発性で通常ガス状の高圧ガス、例えば加圧空気と混合されて詰められる噴霧可能なエアロゾル製剤である。
本明細書中で記載される薬剤は、中性または塩の形態で製剤化され得る。医薬的に許容し得る塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等から得られた遊離アミノ基で形成された塩、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から得られた遊離カルボキシル基で形成された塩が挙げられる。
新生物特異的な様式または新脈管形成もしくは新生血管特異的な様式で薬剤を送達する代表的な方法は、処置、画像化、および診断に関して以下に記載される。
治療
本発明の一態様において、アネキシンA1治療剤を投与することにより、個体における新生物または他の病変を処置するために方法が利用できる。用語「治療」は本明細書中で使用される場合、新生物または病変に関連する症状を改善すること;新生物の転移を減少、抑制もしくは遅らせること;一つ以上の新生物の数、体積、および/またはサイズを減少させること;および/または該新生物または病変の症状の重症度、存続期間または頻度を小さくすること、をいい得る。「アネキシンA1治療剤」は本明細書中で使用される場合、新生物(単数か複数)または他の病変を破壊するために標的とする薬剤(例えば、化学療法薬)、また他には新生物を処置する薬剤、または個体への新生物(単数か複数)または病変の影響を減少もしくは除去する薬剤をいう。アネキシンA1(またはアネキシンA1誘導体)は、新生脈管構造における外観に示されるように、新生物血管発達において重要と思われるので、アネキシンA1および/もしくはアネキシンA1誘導体を細胞表面から抑制または除去して新脈管形成を停止することにより、該新生物または病変を処置し得る。
本発明の別の態様において、アネキシンA1治療剤を投与することにより、個体における新脈管形成もしくは新生脈管構造の発達、または他の病変を処置するための方法が利用できる。本明細書に記載される該方法を用いて処置され得る代表的なさらなる病状としては、アテローム性動脈硬化、糖尿病および関連の続発症、黄斑変性、心臓疾患(例えば虚血から)、気腫、慢性閉塞性肺疾患、心筋炎、肺および全身性高血圧ならびにそれらの続発症、感染、ならびに本明細書に記載される病気等の、炎症、新脈管形成または新生脈管構造に関連するタンパク質の発現に関連する他の病状が挙げられる。新脈管形成に関連するタンパク質の発現は、様々な悪性、虚血性、炎症性、感染性および免疫性疾患の誘因である(例えば Carmeleit, P., Nature Medicine 9(6):653-660 (2003); Carmeliet, P.およびJain, R., Nature 407:249-257 (2000)を参照されたい)。従って、本明細書で「病変」と集合的にいわれるかかる病状に対して、該方法は同様に適用できる。
用語「処置」は本明細書で使用される場合、新脈管形成、新生脈管構造の発達、または他の病変に関連する症状を改善すること;新脈管形成または新生脈管構造の発達を減少、抑制もしくは遅らせること;新脈管形成または新生脈管構造の一つ以上の領域の数、体積、および/もしくはサイズを減少させること;および/または該新脈管形成、新生脈管構造もしくは他の病変の症状の重症度、存続期間もしくは頻度を小さくすること、をいい得る。従って、「アネキシンA1治療剤」もまた本明細書中で使用される場合、新脈管形成、新生脈管構造の発達、もしくは他の病変を破壊するために標的とする薬剤(例えば、化学療法薬)、また他には新脈管形成もしくは新生脈管構造を処置する薬剤、または個体への新脈管形成、新生脈管構造、もしくは他の病変の悪影響を減少もしくは除去する薬剤をいう。
本発明のさらなる態様において、アネキシンA1新生脈管構造剤を投与することにより、個体における新脈管形成もしくは脈管構造の発達を増強または増加するための方法が利用できる。「アネキシンA1新生脈管構造剤」は本明細書中で使用される場合、新脈管形成もしくは新生脈管構造の発達を増強または増加する薬剤、また他には増強または増加した新脈管形成もしくは増加した新生脈管構造の発達により改善され得る疾患または病状を処置する薬剤をいう。
一態様において、該アネキシンA1治療剤またはアネキシンA1新生脈管構造剤は、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する薬剤を含む。特定の態様において、該アネキシンA1治療剤またはアネキシンA1新生脈管構造剤は、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する抗体であるか、もしくは含む、または、抗体のフラグメント(例えばFabフラグメントもしくは他の抗原結合フラグメント)であるか、もしくは含む。「抗体」は液性応答のインビトロまたはインビボでの生成により得られる免疫グロブリン分子であり、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両者を含む。この用語はまた、キメラ抗体(例えばヒト化マウス抗体)、ヘテロ共役抗体(例えば二重特異性抗体)、および組み換え一本鎖Fvフラグメント(ScFv)等の遺伝子組み換え形態を含む。用語「抗体」はまた、多価抗体ならびにFab'、F(ab')2、Fab、Fv、rIgG、および逆位IgG等の抗体の抗原結合フラグメント、ならびに変異性重鎖ドメインおよび変異性軽鎖ドメインを含む。アネキシンA1またはアネキシンA1の誘導体と免疫学的に反応性のある抗体は、インビボで、またはファージもしくは類似のベクターにおける組み換え抗体のライブラリーの選定等の組み換え方法により産生され得る。例えばHuseら (1989) Science 246:1275-1281; およびWardら (1989) Nature 341:544-546; およびVaughanら (1996) Nature Biotechnology, 14:309-314を参照されたい。「抗原結合フラグメント」はアネキシンA1またはアネキシンA1の誘導体に結合する抗体の任意の部分を含む。抗原結合フラグメントは例えば、CDR領域を含むポリペプチド、またはアネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に対する親和性および特異性を保持する免疫グロブリン分子の他のフラグメントであり得る。代表的な抗体としては、(リンスコット要覧(Linscott's Directory)に列挙されるような)EH17A mAb (SCB); Zym RB pAb (Zymed); II-29 mAb (ICN biomedicals); 29 mAb (BD Transduction Labs); C19 pAb (SCB); N19 pAb (SCB); およびH65 pAb (SCB))等の市販の抗体が挙げられる。
別の態様において、上述されるように、アネキシンA1の他の特異的結合パートナーは、アネキシンA1またはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する薬剤として用いられ得る。さらに別の態様において、該アネキシンA1治療剤またはアネキシンA1新生脈管構造剤は、アネキシンA1自体もしくはアネキシンA1の誘導体であるか、または含む。別の態様において、該アネキシンA1治療剤またはアネキシンA1新生脈管構造剤は、アネキシンA1の結合パートナーもしくはアネキシンA1の誘導体の結合パートナーに特異的に結合する薬剤であるか、または含む。さらなる態様において、該アネキシンA1治療剤またはアネキシンA1新生脈管構造剤は、アネキシンA1の結合パートナーもしくはアネキシンA1の誘導体の結合パートナーであるか、または含む。
さらなる態様において、該アネキシンA1治療剤またはアネキシンA1新生脈管構造剤は、活性剤成分および標的化剤成分を含む。該標的化剤成分は、上述されるように、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する薬剤、もしくはアネキシンA1の結合パートナーに特異的に結合する薬剤であるか、または含む。所望の場合、該標的化剤成分はまた、一つより多い標的に(例えば、アネキシンA1およびアネキシンA1の誘導体に;アネキシンA1およびアネキシンA1の結合パートナーに)特異的に結合し得る。あるいは、該標的化剤自体は、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体、またはアネキシンA1の結合パートナーもしくはアネキシンA1の誘導体の結合パートナーであるか、または含む。アネキシンA1は、腫瘍内皮に現れる相互作用パートナーに結合する;相互作用部位が飽和しないとき、アネキシンA1(または誘導体)は該部位に帰り(home)、結合し得る。
ある代表的なアネキシンA1標的化剤において、多価抗体が用いられる。該多価抗体のある部分は該標的化剤成分としての役目を果たし得、該多価抗体の別の部分は該活性剤成分としての役目を果たし得る。
該標的化剤成分は該活性剤成分に連結される。例えば、それらはお互いに直接的に共有結合し得る。この2つが共有結合によりお互い直接的に結合する場合、該結合は各部分の活性基を介して適切な共有結合を形成することによって形成され得る。例えば、ある化合物の酸基は、他の化合物のアミン、酸、またはアルコールと縮合して、それぞれ対応するアミド、無水物、またはエステルを形成し得る。
標的化剤成分と活性剤成分との間の結合を形成するために、カルボキシル基、アミン基、およびヒドロキシル基、他の適切な活性基に加えて、スルホニル基、メルカプト基、ならびにハロゲン酸およびカルボン酸の酸無水誘導体が挙げられる。
他の態様において、該標的化剤成分および該活性剤成分は、中間リンカーを介してお互いに共有結合し得る。該リンカーは有利に2つの活性基を有し、そのうちの一方は該標的化剤成分の活性基に相補的で、他方は該活性剤成分の活性基に相補的である。例えば、両者が遊離のヒドロキシル基を有する場合、該リンカーは適切に両方の化合物と反応し2つの残基の間のジエーテル結合を形成し得る二価酸であり得る。医薬的に活性な部分間の結合を形成するために、カルボキシル基、アミン基、およびヒドロキシル基、他の適切な活性基に加えて、スルホニル基、メルカプト基、ならびにハロゲン酸およびカルボン酸の酸無水誘導体が挙げられる。
適切なリンカーは以下の表に示される。
適切な二価酸リンカーとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、フタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸が挙げられる。二価酸が挙げられるが、当業者はある状況において対応の酸ハロゲン化物または酸無水物(一方または双方のいずれか)が、リンカーリプロドラッグ(reprodrug)として好ましいことを認識するだろう。好ましい無水物はコハク酸無水物である。別の好ましい無水物はマレイン酸無水物である。他の無水物および/または酸ハロゲン化物は、良い効果のために当業者により用いられ得る。
適切なアミノ酸としては、-酪酸、2-アミノ酢酸、3-アミノプロパン酸、4-アミノブタン酸、5−アミノペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンが挙げられる。この場合もやはり、適切なアミノ酸の酸基は、リンカー基としての使用の前に無水物または酸ハロゲン化物形態に転化され得る。
適切なジアミンとしては、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサンが挙げられる。適切なアミノアルコールとしては、2-ヒドロキシ-1-アミノエタン、3-ヒドロキシ-1-アミノエタン、4-ヒドロキシ-1-アミノブタン、5-ヒドロキシ-1-アミノペンタン、6-ヒドロキシ-1-アミノヘキサンが挙げられる。
適切なヒドロキシアルキル酸としては、2-ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシプロパン酸、4-ヒドロキシブタン酸、5-ヒドロキシペンタン酸、5−ヒドロキシヘキサン酸が挙げられる。
当業者は適切な活性基を有する該標的化剤成分および活性剤成分の成分を選択することにより、および適切なリンカーにそれらを適合することにより、独創的な化合物の広大なパレットが、本発明の範囲内において、作成され得ることを認識するであろう。
さらに、様々なリンカー基は、リンカー官能基がスペーサーと極性脂質担体または生物学的活性化合物のいずれかの間に形成し得る共有結合の安定性に基づき「弱い」または「強い」のいずれかに指定され得る。弱い官能基としては、限定されないが、ホスホルアミド、ホスホエステル、炭酸塩、アミド、カルボキシルホスホリル無水物、エステル、およびチオエステルが挙げられる。強い官能基としては限定されないが、エーテル、チオエーテル、アミン、立体的に込み合った(hindered)アミドおよびエステルが挙げられる。スペーサー基と該化合物の間の弱いリンカー官能基の使用は、該標的部位での該化合物の放出を容易にするために作用し得る一方、スペーサー基と生物学的活性化合物の間の強いリンカー官能基の使用は、該標的部位で該化合物が放出され得る割合を減少させる傾向にあるであろう。
酵素の放出はまた起こり得るが、かかる酵素媒介様式の放出は、本発明のかかる態様における結合力と必ずしも相関しないであろう。タンパク質分解的切断部位をその中に有するペプチドを含むスペーサー基等の酵素活性部位認識基を含むスペーサー部分は、本発明の範囲内であると構想される。ある態様において、該リンカー部分は、該標的化剤成分からの該活性剤成分の加水分解的放出または酵素による放出を容易にしたスペーサー分子を含む。特に好ましい態様において、該スペーサー官能基は、標的血管組織において見られる酵素活性、好ましくはエステラーゼにより加水分解される。
該標的化剤成分に結合する該活性剤成分は、例えば以下のようなアネキシンA1治療剤もしくはアネキシンA1新生脈管構造剤のいずれかの活性剤成分として必要に応じて用いられ得る薬剤を含む、所望の治療結果を達成する任意の薬剤であり得るか、または含み得る:放射性核種(例えばI125、123、124、131もしくは他の放射性剤);化学療法薬(例えば抗生剤、抗ウイルス薬、抗真菌剤);免疫刺激剤(例えばサイトカイン);抗新生物剤:抗炎症剤;炎症誘発剤;アポトーシス促進剤(例えば免疫細胞を引き付けるおよび/もしくは免疫システムを刺激するペプチドもしくは他の薬剤);凝血原;毒素(例えばリシン、エンテロトキシン、LPS);抗生剤;ホルモン;タンパク質(例えば、組み換えタンパク質もしくは組み換え修飾タンパク質);担体タンパク質(例えば、アルブミン、修飾アルブミン);酵素;別のタンパク質(例えば界面活性剤タンパク質、凝固タンパク質);細胞融解剤;小分子(例えば無機小分子、有機小分子、小分子の誘導体、複合小分子);アプタマー;修飾した細胞を含む、細胞;ワクチン誘導性もしくは他の免疫細胞;ナノ粒子(例えば、脂質もしくは非脂質を基礎とした製剤、アルブミンを基礎とした製剤);トランスフェリン;免疫グロブリン;多価抗体;脂質;リポタンパク質;リポペプチド;リポソーム;脂質誘導体;天然リガンド;および改変タンパク質(例えば、該標的タンパク質への親和性を増加するために修飾されたアルブミンもしくは他の血液担体タンパク質をベースとした送達システム;オロソムコイド);該標的細胞の細胞外マトリクスを改変する薬剤;(アネキシンA1治療剤のために)血管構造の成長、移動、もしくは形成を阻害する薬剤;(アネキシンA1新生脈管構造剤のために)血管構造の成長、移動、もしくは形成を増強もしくは増加する薬剤;遺伝子もしくは核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドRNA;siRNA)ウイルスもしくは非ウイルス遺伝子送達ベクターもしくはシステム;またはプロドラッグもしくはプロ分子。
例えば、一態様において、放射性核種または他の放射性剤は該アネキシンA1治療剤の該活性剤成分として用いられ得る。該標的化剤成分は新生物特異的もしくは新生脈管構造特異的な様式で該放射性剤を送達し、局所的放射線損傷を可能にし、腫瘍の新生物細胞、間質細胞、および内皮細胞に含まれる新生物全て、または望ましくない新生脈管構造を有する領域全てに、放射線誘導性アポトーシスおよび壊死をもたらす。あるいは、別の態様において、新脈管形成または新生脈管構造の発達を刺激または増加する薬剤は、アネキシンA1新生脈管構造剤の活性剤成分として用いられ得る。該標的化剤成分は特異的な様式で該薬剤を送達し、アネキシンA1が存在する特異的部位での新脈管形成の増加または新生脈管構造の発達の増加をもたらす。
別の特定の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは他の薬剤は、新生物組織において過剰発現される遺伝子(例えばc-Jun、c-Fos、HER-2、E2F-1、RAS、FAS、NF、BRCA等の、癌遺伝子または癌腫と関連する遺伝子)、または新脈管形成において過剰発現される遺伝子等の、標的組織における遺伝子の産生を改変するため、特に阻害するために該活性剤成分として用いられ得る。あるいは、オリゴヌクレオチドまたは遺伝子は、アポトーシスを制御したり細胞成長を調節したりする遺伝子等の該標的組織におけるタンパク質の産生を改変するため、特に増強するために用いられ得る;オリゴヌクレオチドまたは遺伝子はまた、該標的組織において過小発現もしくは除去されるタンパク質を産生するため、または新生物に対して直接的もしくは間接的に破壊的な遺伝子産物を発現するために用いられ得る。
さらなる特定の態様において、抗炎症剤は該活性剤として用いられ得る。代表的な薬剤としては、非ステロイド性抗炎症剤;ステロイド性もしくはコルチコステロイド性抗炎症剤;または他の抗炎症剤(例えばヒスタミン)が挙げられる。あるいは、炎症誘発剤は活性剤として(例えば本明細書中で記載されるように、新脈管形成を増強するため、または新生脈管構造の発達を増加するために)用いられ得る。
別の特定の態様において、新生物疾患のための化学療法薬は該活性剤成分として用いられ得る。代表的な薬剤としては、アルキル化剤(ナイトロジェン・マスタード、エチレンイミン、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、およびトリアジン)、抗代謝剤(メトトレキサート、ピリミジンアナログ、およびプリンアナログ等の葉酸アナログ)、天然生成物およびそれらの誘導体(抗生剤、アルカロイド、酵素)、ホルモンおよびアンタゴニスト(コルチコステオロイド;副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン)および他の類似した薬剤が挙げられる。例えばある態様において、該化学療法薬は、非細胞傷害性(acytotoxic)または細胞増殖抑制薬物であり得る。化学療法薬はまた、転換された状態から区別化された状態への反転等の細胞に対する他の影響を有するもの、または細胞複製を抑制するものを含み得る。本発明において有用な公知の細胞増殖抑制剤の例は、例えばGoodmanら, "The Pharmacological Basis of Therapeutics," 第6版, A. G. Gilman ら, 編/Macmillan Publishing Co. New York, 1980に列挙される。これらはタクソール、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシル・マスタードおよびクロラムブシル等のナイトロジェン・マスタード;チオテパ等のエチレンイミン誘導体;ブスルファン等のスルホン酸アルキル;カルムスチン、ロムスチン、セムスチンおよびストレプトゾシン等のニトロソ尿素;ダカルバジン等のトリアジン;メトトレキサート等の葉酸アナログ;フルオロウラシル、シタラビンおよびアザリビン等のピリミジンアナログ;メルカプトプリンおよびチオグアニン等のプリンアナログ;ビンブラスチンおよびビンクリスチン等のビンカ・アルカロイド類;ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびマイトマイシン等の抗生剤;L-アスパラギナーゼ等の酵素;シスプラチン等の白金配位複合体;ヒドロキシ尿素等の置換尿素;プロカルバジン等のメチルヒドラジン誘導体;ミトーテン等の副腎皮質抑制剤;副腎皮質ステロイド(プレドニゾン)、プロゲスチン(カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール)、エストロゲン(ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、抗エストロゲン(タモキシフェン)、およびアンドロゲン(プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)等のホルモンおよびアンタゴニストが挙げられる。
細胞内のタンパク質合成を妨げる薬物もまた用いられ得る;かかる薬物は当業者に公知であり、プロマイシン、シクロヘキシミド、およびリボヌクレアーゼが挙げられる。
現在のところ癌の処置に用いられている化学療法薬の大部分は、標的化剤成分のアミン基またはカルボキシル基との直接的な化学的架橋結合に従順な官能基を有する。例えば、遊離のカルボン酸基は、メトトレキサート、メルファラン、およびクロラムブシルで得られる一方、遊離のアミノ基は、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シトシンアラビノシド、シス‐プラチン、ビンデシン、マイトマイシン、およびブレオマイシンで得られる。遊離のアミノ酸およびカルボン酸である、これらの官能基は、これらの薬物を遊離のアミノ基に直接架橋させ得る様々なホモ二官能性およびヘテロ二官能性の化学的架橋剤の標的である。
ペプチドおよびポリペプチド毒素はまた活性剤成分として有用で、本発明は該活性剤成分が毒素である態様について特に検討する。毒素は一般に細菌、植物、等を含む様々な生物の複雑な有毒生成物である。毒素の例としては、限定されないが:リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス体外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵臓リボヌクレアーゼ(BPR)、ヤマゴボウ抗ウイルス性タンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒液因子(CVF)、ゲロニン(gelonin)(GEL)、サポリン(SAP)、モデクシン、ビスクミンおよびボルケンシンが挙げられる。
本発明はまた、例えば光力学治療において用いられる色素、および適当な非電離放射線と併せて用いられる色素について検討する。本発明の方法における光とポルフィリンの使用がまた検討され、癌治療におけるそれらの使用が再検討されている。van den Bergh, Chemistry in Britain, 22: 430-437 (1986)、参照によって本明細書中にその全体が援用されている。
さらなる特定の態様において、抗炎症剤が活性剤として使用され得る。代表的な薬剤として、非ステロイド性抗炎症剤;ステロイド性もしくはコルチコステロイド性抗炎症剤;または他の抗炎症剤(例えばヒスタミン)が挙げられる。あるいは、炎症誘発剤が活性剤として(本明細書中に記載されるように、例えば新脈管形成を高めるか、または新生脈管構造の発達を増大させるために)使用され得る。
プロドラッグまたはプロ分子もまた活性剤として使用され得る。例えば、活性剤として使用されるプロドラッグはその後、適切な酵素の投与、または標的化組織における内因性酵素によって活性化(転化)され得る。あるいは活性化酵素は、本明細書中に記載されるように治療剤の一部としての別の活性剤として、同時投与され得るかもしくは連続して投与され得;またはプロドラッグもしくはプロ分子は、投与の際に生理的pHへのpHの変化によって活性化され得る。代表的なプロドラッグとして、ヌクレオチドアナログGCVを有する単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(HSV TK);シトシンデアミナーゼおよび(ans)t−フルオロシトシン;アルカリホスファターゼ/エトポシドホスフェート;ならびに他のプロドラッグ(例えばGreco ら, J. Cell. Phys. 187:22-36, 2001; および Konstantinos ら, Anticancer Research 19:605-614, 1999に記載されるもの; Connors, T.A., Stem Cells 13(5): 501-511, 1995; Knox, R.J., Baldwin, A. ら, Arch. Biochem. Biophys. 409(1): 197-206, 2003; Syrigos, K.N. および Epenetos, A.A., Anticancer Res. 19(1A): 605-613, 1999; Denny, W.A., JBB 1:48-70, 2003も参照)が挙げられる。
本発明の別の態様において、標的化剤成分および/または活性剤成分は、金属をキレート化するためのキレート部分、例えば放射性金属または常磁性イオンに対するキレーターを含む。好ましい態様において、キレーターは放射性核種に対するキレーターである。本発明の範囲内にある有用な放射性核種として、γ-エミッター、陽電子エミッター、オージェ電子エミッター、X線エミッターおよび蛍光エミッターが挙げられ、β-またはα-エミッターが治療用途に好ましい。放射線療法において毒素として有用な放射性核種の例として:32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、9OY、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb、121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biが挙げられる。好ましい治療用放射性核種として、188Re、186Re、203Pb、212Pb、212Bi、109Pd、64Cu、67Cu、9OY、125I、131I、77Br、211At、97Ru、105Rh、198Auおよび199Ag、166Hoまたは177Luが挙げられる。 キレーターが金属を配位結合させ得る条件が、例えばGansow ら, 米国特許第4,831,175号、4,454,106号および4,472,509号に記載される。
1つの態様において、例えば99mTcは、治療的および診断的応用のための放射性同位体として用いられ得(以下に記載されるように)、すべての核医学分野に対し容易に入手可能なので割安であり、最小患者放射線量(minimal patient radiation dose)を与え、かつ理想的な核画像化特性を有する。それは6時間の半減期を有し、このことはテクネチウム標識化抗体の急速な標的化が望ましいことを意味する。したがってある好ましい態様において、アネキシンA1治療剤はテクネチウム(technium)のキレート剤を含む。
アネキシンA1治療剤は、放射線増感剤(radiosensitizing agent)、例えば放射線に対し細胞の感受性を増大させる部分も含み得る。放射線増感剤の例として、ニトロイミダゾール、メトロニダゾールおよびミソニダゾール(参照:Harrison's Principles of Internal Medicine, p.68, McGraw- Hill Book Co., N. Y. 1983におけるDeVita, V. T. Jr.、これは参照によって本明細書中に援用される)が挙げられる。活性部分としての放射線増感剤を含むアネキシンA1治療剤が投与され、内皮細胞および/または新生物の任意の他の細胞中で局在化される。個体の放射線に対する曝露の際、放射線増感剤は「刺激」され、細胞の死を引き起こす。
キレート化リガンドとしての機能を果たし得、かつアネキシンA1治療剤の一部として誘導体化され得る広い範囲の部分が存在する。例えば、キレート化リガンドは1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンテトラ酢酸(DOTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)および1-p-イソチオシアナトベンジルメチル-ジエチレントリアミンペンタ酢酸(ITC-MX)の誘導体であり得る。これらのキレーターは典型的に、キレーターが標的化剤成分に結合するために使用され得る側鎖上の基を有する。かかる基として、例えばDOTA、DTPA、またはEDTAが、例えば阻害剤のアミン基に結合され得るベンジルイソチオシアネートを含む。
1つの態様において、該薬剤は「NxSy」キレート部分である。本明細書中で規定されるように、用語「NxSyキレート」とは、金属または放射性金属と配位結合が可能で、好ましくはN2S2またはN3Sコアを有する二官能性キレーターを含む。具体的なNxSyキレートは、例えばFritzbergら(1988) PNAS 85:4024-29;およびWeberら(1990) Bioconjugate Chem. 1 :431-37中に、ならびに本明細書中で引用されている参照中に記載されている。JacobsenらのPCT出願番号WO 98/12156は、金属原子に結合する化合物を同定するための方法および組成物、すなわち結合部分の合成ライブラリーを提供する。該刊行物に記載されるアプローチは、後にアネキシンA1治療剤中に取り込まれ得る結合部分を同定するために使用され得る。
放射線治療および放射線診断の応用における複合タンパク質の使用と頻繁に遭遇する問題は、腎臓での放射性同位体標識化部分フラグメントの潜在的に危険な蓄積である。結合体が酸に不安定なリンカーまたは塩基に不安定なリンカーを用いて形成されるとき、タンパク質からの放射性キレートの切断が有利に起こり得る。キレートが比較的低分子量である場合、それは腎臓で保持されず尿で排出され、それにより腎臓の放射能に対する曝露が減少する。しかしながらある例において、酸に不安定なリンカーまたは塩基に不安定なリンカーが標識化タンパク質に使用されてきたのと同様の理由で、主題のリガンドにおいてそれらを利用するのは有利であり得る。
他の適切な活性剤としては、脈管内凝固を誘発するかまたは内皮に損傷を与え、それによって凝固を引き起こし新生物または他の標的化された病状を効果的に梗塞(infracting)する薬剤を含む。さらに、所望の場合、他の薬剤(例えば、アビジンで活性化されたビオチン)で活性化された酵素が、活性剤としてまたは治療標的化剤の一部として使用され得る。
アネキシンA1治療剤は、当該分野で公知の標準的な方法(例えば、組み換えDNA技術または他の手段)によって合成され得、例えばリガンドのカルボニル基と酸に不安定な結合を形成し得る反応性官能基を提供する。好適な酸に不安定な結合の例として、ヒドラゾンおよびチオセミカルバゾン官能基が挙げられる。これらは、酸化した炭水化物をヒドラジド、チオセミカルバジド、およびチオカルバジド官能基をそれぞれ有するキレートと反応させることによって形成される。あるいは、腎臓からの放射性同位体標識の増大したクリアランスのために使用されてきた塩基切断可能リンカーが使用され得る。例えば、Weberら 1990 Bioconjug. Chem. 1:431を参照。ヒドラジド結合を介した二官能性キレートの結合が、リンカースペーサーアーム(linker spacer arm)の塩基感受性エステル部分に取り込まれ得る。かかるエステル含有リンカー単位は、エチレングリコルビス(スクシンイミジルスクシネート)、(EGS、Pierce Chemical Co., Rockford, IIIより入手可能)によって例示され、それは2つの1,4-二酪酸単位の2つの末端N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル誘導体を有し、その各々が2つのアルキルエステルにより単一のエチレングリコール部分に結合されている。1つのNHSエステルが好適なアミン含有BFC(例えば2-アミノベンジルDTPA)で置換され得るが、他のNHSエステルは限定量のヒドラジンと反応する。得られるヒラジド(hyrazide)は標的化剤成分に結合するために使用され、2つのアルキルエステル基を含有するリガンド-BFC結合を形成する。かかる結合体は生理的pHで安定であるが、塩基性pHで容易に切断される。
キレート化によって標識されたアネキシンA1治療剤を、キレーターの放射線誘導切断および配位複合体の解離による放射性同位体の損失に供する。いくつかの例において、複合体から解離された金属は再度複合体化され得、非特異的に局所化した同位体のより早いクリアランスを提供し、したがって非標的組織に対して毒性がより小さい。放出された放射性金属と結合し、かつ尿中の遊離放射性同位体の排出を促進するキレーターのプールを提供するために、例えば、EDTAまたはDTPA等のキレーター化合物を患者に注入し得る。
なお他の態様において、カルボラン等のホウ素の追加が用いられ得る。当該分野で周知のように、例えばカルボランはペンダント側鎖上のカルボキシル官能基と共に調製され得る。例えば標的化剤成分上に提供され得るような、かかるカルボランのアミン官能基への結合は、カルボランのカルボキシル基の活性化およびアミン基との縮合によって達成され得、結合体を生成する。かかる治療剤は中性子捕獲治療に用いられ得る。
さらなる態様において、RNAiが用いられる。「RNAi構築物」とは、小分子干渉RNA(siRNA)、ヘアピンRNA、および細胞の異常な部位へ送達され、酵素ダイサー(dicer)によって切断され、細胞中に遺伝子サイレンシング(gene silencing)を引き起こし得る他のRNA種を含む、本明細書を通して用いられる一般的用語である。用語「小分子干渉RNA」または「RNA」とは、約19-30ヌクレオチド長、より好ましくは21-23ヌクレオチド長の核酸をいう。RNAは二本鎖であり、両端に短い突出部を含み得る。好ましくは、突出部は3’末端にて1-6ヌクレオチド長である。RNAが化学的に合成され得るか、または酵素による消化により、より長い二本鎖RNAもしくはヘアピンRNA分子から誘導され得ることは、当該分野で公知である。効率よくするために、一般にRNAは標的遺伝子配列に対して有意な配列類似性を有する。任意に、RNA分子は3’ヒドロキシル基を含むが、該基は本明細書に記載されるように脂肪酸部分で修飾され得る。「RNAiを媒介する」という句は、RNA分子の、例えば配列非依存的二本鎖RNA反応、例えばPKR反応、の誘発の結果を指向し得る能力というよりもむしろ、配列特異的遺伝子サイレンシングを指向し得る能力をいう(示す)。
ある態様において、活性剤成分に用いられるRNAi構築物は、小分子干渉RNA(RNA)であり、好ましくは19-30塩基対長である。あるいは、RNAi構築物は細胞でプロセスされ、例えば配列特異的遺伝子サイレンシングを誘発するガイド(guide)配列を短くするために(19-22マー)プロセスされた細胞のような、RNA処理細胞と同じようにインビボで代謝産物を産生し得るヘアピンRNA(例えばダイサー基質)である。好ましい態様において、処置される動物はヒトである。
RNAi構築物は、阻害されるべき遺伝子(すなわち「標的」遺伝子)に対するmRNA転写物の少なくとも一部分のヌクレオチド配列に対して、細胞の生理的条件下でハイブリダイズされるヌクレオチド配列を含有する。二本鎖RNAは、それがRNAiを媒介する能力を有する天然RNAに十分に類似であることのみが必要とされる。かくして本発明は、遺伝子突然変異、株の多型性または進化的分岐によって予測され得る配列のバリエーションを許容し得る利点を有する。標的配列およびRNAi構築物配列間の許容されるヌクレオチドのミスマッチの数は、5塩基対中で1、または10塩基対中で1、または20塩基対中で1、または50塩基対中で1にすぎない。siRNA二本鎖の中心におけるミスマッチは最も重大であり、標的RNAの切断を本質的に破壊し得る。対照的に、標的RNAに対して相補的であるRNA鎖の3’末端ヌクレオチドは、標的認識の特異性に有意には寄与しない。
配列同一性は、配列比較および当該分野で公知のアラインメントアルゴリズム(GribskovおよびDevereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991,ならびに本明細書中で引用された参考文献を参照)ならびにヌクレオチド配列間の相違の割合を、例えばデフォルトパラメータ(例えば、ウィスコンシン大学遺伝子計算グループ)を用いたBESTFITソフトウェアプログラムで実行されるようなSmith-Watermanアルゴリズムによって計算することで最適化され得る。阻害RNAおよび標的遺伝子の一部の間で90%よりも大きい配列同一性、またはさらに100%配列同一性が好ましい。あるいは、RNAの二本鎖領域は、標的遺伝子の転写物の一部とハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列として機能的に規定され得る(例えば、12〜16時間の400mM NaCl、40 mM PIPES pH 6.4、1 mM EDTA、5O℃または7O℃でのハイブリダイゼーション;その後洗浄)。
RNAi構築物の生成は、化学合成法または組み換え核酸技法によって行なわれ得る。処理された細胞の内因性RNAポリメラーゼがインビボでの転写を媒介し得るか、またはクローン化RNAポリメラーゼがインビトロでの転写のために用いられ得る。
RNAi構築物は、例えば細胞ヌクレアーゼに対する感受性を減少させ、生物学的利用能を改善し、製剤特徴を改善し、および/または他の薬物動力学特性を変えるためにリン酸−糖骨格またはヌクレオシド等に対するような他の修飾を含み得る。例えば、天然RNAのホスホジエステル結合は、少なくとも1つの窒素または硫黄へテロ原子を含むように修飾され得る。RNA構造における修飾は、特異的遺伝子阻害が可能となるように調整(tailor)され得るが、一方ではdsRNAに対する一般の細胞応答(「PKR媒介応答」)を回避する。同様に塩基は、アデノシンデアミナーゼの活性をブロックするために修飾され得る。RNAi構築物は、酵素によるかまたは部分的/全体的な有機合成によって生成され得、任意の修飾されたリボヌクレオチドがインビトロの酵素または有機合成によって誘導され得る。
他のRNA分子の化学的修飾方法は、修飾するRNAi構築物に適合し得る(例えば、Heidenreich ら (1997) Nucleic Acids Res, 25:776-780; Wilson ら (1994) J MoI Recog 7:89-98; Chen ら (1995) Nucleic Acids Res 23:2661-2668; Hirschbein ら (1997) Antisense Nucleic Acid Drug Dev 7:55-61を参照)。例証するのみであるが、RNAi構築物の骨格は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、キメラメチルホスホネート−ホスホジエステル、ホスホルアミデート、ボラノホスフェート、ホスホトリエステル、ホルムアセタール、3’-チオホルムアセタール、5’-チオホルムアセタール、5’-チオエーテル、カーボネート、5’-N-カルバメート、スルフェート、スルホネート、スルファメート、スルホンアミド、スルホン、サルファイト、スルホキシド、スルフィド、ヒドロキシルアミン、メチレン(メチルイミノ)(MMI)、メチレンオキシ(メチルイミノ)(MOMI)結合、ペプチド核酸、5’-プロピニル-ピリミジン含有オリゴマーまたは糖修飾物(例えば、2’-置換リボヌクレオシド、a-配置)で修飾され得る。
二本鎖構造は、単一自己相補RNA鎖または2つの相補RNA鎖で形成され得る。RNA二本鎖形成は、細胞の内側または外側かのいずれかで開始し得る。
ある態様において、不要の免疫刺激を減少させるために、RNAi構築物は、例えばB細胞媒介免疫監視の刺激を防止するための、グアニンの5’側に生じる非修飾シトシンを含まないように設計される。
RNAiが局所治療効果のために送達されるべきある態様において、目的の組織(例えば新生物)において効果的となるためにヌクレアーゼ感受性を滴定するならば、RNAiが十分にヌクレアーゼ耐性となるよう骨格結合は選択され得るが、あまりヌクレアーゼ耐性ではないために、有意量の構築物が分解されない組織を逃れ得る。この戦略を用いると、RNAi構築物は目的の組織における遺伝子サイレンシングに利用可能であるが、それらはより広範囲な循環に入り得る前に分解される。
RNAは、1細胞あたり少なくとも1つのコピーの送達を可能にする量で導入され得る。二本鎖物質のより高い用量(例えば、1細胞につき少なくとも5、10、100、500、または1000コピー)は、より効果的な阻害をもたらし得るが、一方、より低い用量もまた特異的な応用に有用であり得る。RNAの二本鎖領域に対応するヌクレオチド配列が遺伝子的阻害に対し標的とされる点において、阻害は配列特異的である。
ある態様において、主題のRNAi構築物はsiRNAである。これらの核酸は、例えばより長い二本鎖RNAのヌクレアーゼ「ダイシング(dicing)」により生じたフラグメントに長さが対応する、約19-30ヌクレオチド長、さらにより好ましくは21-23ヌクレオチド長である。siRNAはヌクレアーゼ複合体を補充(recruit)し、かつ特異的配列と対形成することで該複合体を標的mRNAへ誘導(guide)することが理解されている。結果として、標的mRNAはタンパク質複合体中のヌクレアーゼによって分解される。特定の態様において、21-23ヌクレオチドsiRNA分子は3’ヒドロキシル基を含む。
本発明のsiRNA分子は、当業者に公知のいくつかの技法を用いて得られ得る。例えばsiRNAは、当該分野で公知の方法を用いて、化学的に合成され得るか、または組み換え的に産生され得る。例えば、短いセンスおよびアンチセンスRNAオリゴマーを合成およびアニーリングし、両端に2-ヌクレオチドの突出部を有する二本鎖RNA構造を形成し得る(Caplen ら (2001) Proc Natl Acad Sci USA, 98:9742-9747; Elbashir ら (2001) EMBO J, 20:6877-88)。次いで、これらの二本鎖siRNA構造は、受動的な摂取かまたは以下に記載されるようなえり抜きの送達系のいずれかによって、細胞へ直接誘導され得る。
ある態様において、siRNA構築物は例えば酵素ダイサーの存在下、より長い二本鎖RNAのプロセシングによって生成され得る。1つの態様において、インビトロ系でキイロショウジョウバエが用いられる。この態様において、dsRNAはキイロショウジョウバエの幼胚由来の可溶性抽出物と組み合わされ、それにより組み合わせ(combination)が生成される。該組み合わせは、dsRNAが約21〜約23ヌクレオチドのRNA分子へプロセスされる条件下で維持される。
siRNA分子は、当業者に公知のいくつかの技法を用いて精製され得る。例えば、ゲル電気泳動はsiRNAを精製するために用いられ得る。あるいは、非変性カラムクロマトグラフィ等の非変性方法が、siRNAを精製するために使用され得る。さらに、クロマトグラフィ(例えば、サイズ排除クロマトグラフィ)、グリセロール勾配遠心分離、抗体を用いた親和性精製がsiRNAを精製するために使用され得る。
脂肪酸によるsiRNA分子の修飾は、前駆体のレベルで、またはより実用的にはRNAが合成された後に行われ得る。後者は、リンカー脂肪酸部分を形成するための官能基を含むポリマーの合成において、ヌクレオシド前駆体を使用するある例で達成され得る。
ある好ましい態様において、siRNA分子の少なくとも1本の鎖が、2〜4ヌクレオチド長であり得るにもかかわらず、約1〜約6ヌクレオチド長で3’突出部を有する。より好ましくは、3’突出部は1〜3ヌクレオチド長である。ある態様において、一つの鎖は3’突出部を有し、もう一つの鎖は平滑末端であるかまたは突出部を同様に有する。突出部の長さは、同一であるかまたは各々の鎖で異なり得る。siRNAの安定性をさらに高めるために、3’突出部は分解に対して安定化され得る。1つの態様において、RNAはアデノシンまたはグアノシンヌクレオチド等のプリンヌクレオチドを含むことで安定化される。あるいは、修飾アナログによるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば2’-デオキシチミジン(deoxythyinidine)によるウリジンヌクレオチド3’突出部の置換は許容され、RNAiの有効性に影響を与えない。2’ヒドロキシルの非存在は、組織培養培地において突出部のヌクレアーゼ耐性を有意に高め、インビボで有益であり得る。
他の態様において、RNAi構築物は長い二本鎖RNAの形態である。ある態様において、RNAi構築物は少なくとも25、50、100、200、300または400塩基である。ある態様において、RNAi構築物は400〜800塩基長である。二本鎖RNAは細胞内で消化され、例えば細胞中でsiRNA配列を生成する。しかし、おそらく配列非依存性(independent)dsRNA芯答により引き起こされ得る有害な効果のために、インビボで長い二本鎖RNAを使用することは必ずしも実用的でない。かかる態様において、局所送達系および/またはインターフェロンもしくはPKRの効果を減少させる薬剤の使用が好ましい。
ある態様において、RNAi構築物はヘアピン構造(ヘアピンRNAと命名される)の形態である。ヘアピンRNAは外因的に合成され得るか、またはインビボのRNAポリメラーゼIIIプロモータから転写されることによって形成され得る。哺乳動物の細胞における遺伝子サイレンシングに対し、かかるヘアピンRNAを生成し使用する例は、例えばPaddison ら、 Genes Dev, 2002, 16:948-58; McCaffrey ら、 Nature, 2002, 418:38-9; McManus ら、 RNA, 2002, 8:842-50; Yu ら、 Proc Natl Acad Sci U S A, 2002, 99:6047-52)に記載される。好ましくは、かかるヘアピンRNAは細胞中または動物中で操作され(engineer)、所望の遺伝子の継続的かつ安定した抑制を確実なものとする。siRNAが細胞中のヘアピンRNAをプロセシングすることで生成され得ることは当該分野で公知である。
アネキシンA1治療剤を、単独かまたは組成物中に治療有効量で投与するが、それは新生物を処置するために、または新脈管形成もしくは新生脈管構造の不要な発達を処置するために使用される量である。治療有効である量は、新生物、新生脈管構造または新脈管形成の性質、疾患および/または転移の程度、ならびに他の要因に依存し、そして標準的な臨床技法で決定され得る。さらに、インビトロまたはインビボアッセイは、最適な用量範囲を同定する助けとなるために、任意に使用され得る。製剤中に使用される正確な用量もまた、投与経路および症状の重篤度に依存し、実施者の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系からの用量応答曲線から推定され得る。
上記の態様は望ましくない新脈管形成、新生脈管構造の発達、または他の病状の処置を記載するが、該方法はまた、新脈管形成または新生脈管構造の発達が望ましい状況(例えば、以前重篤であった(severed)身体の一部の再付着(reattachment)後の血管の再生;心筋梗塞後のダメージを受けた血管を補償するための血管の発達;または血流、組織修復、新生脈管構造の発達および新脈管形成を改善することにより処置される他の損傷もしくは疾患)に対しても適用し得る。本態様において、アネキシンA1新生脈管構造剤は、新脈管形成または新生脈管構造の発達を高める化合物を(例えば、活性剤成分として)含む。この特定の態様に用いられる場合、用語「処置」とは、新脈管形成または新生脈管構造を増強することまたは増大させることをいう。該薬剤は、上記したもの等の医薬組成物を用いて、上記した方法で投与され得る。
さらに、本発明のさらなる態様において、本明細書中に記載されるようにアネキシンA1は、患者自身の免疫系アネキシンA1アネキシンA1(annexin A1 annexin A1)による免疫攻撃を成し遂げるために、免疫刺激の焦点として用いられ得る。1つの態様において、細胞はアネキシンA1を産生するために修飾され得る:例えば、個体由来の樹状細胞が単離され得、次いでアネキシンA1または標的化タンパク質の抗原性フラグメントが接種され得、次いでアネキシンA1に対する免疫攻撃を始めるために該樹状細胞が個体に再度投与され得る。さらに、ワクチン接種によって誘導された細胞を含む、アネキシンA1またはそのフラグメントに対して特異的であるT細胞は、単離され得、かつ免疫学的に新生物を攻撃するために直接使用され得る。あるいは、内皮細胞表面上で発現する標的化タンパク質を含むアネキシンA1治療剤が、免疫応答を生ずるために投与され得る。免疫系攻撃を刺激する他の標準的な技法も同様に使用され得る。この様式において、各患者のための「個人用薬物」が設計され得、特定の個人の新生物または他の病状を標的とする。かくして、アネキシンA1を含むアネキシンA1治療剤を個人に投与することにより、および標的化タンパク質に対する免疫応答を生ずることにより、個体中の新生物を処置する方法が現在利用可能である。
インビボ画像化および診断法
本発明はまた、身体的画像化のための、例えば原発性および/または二次的(転移)新生物を含む新生物の存在に対して個体を評価するのに使用するための画像化剤を新生物特異的様式で送達する方法、ならびに身体的画像化に使用される医薬の製造のための記載された薬剤の使用にも関する。本発明の方法において、該画像化剤は、目的の薬剤による新生物特異的様式で血管内皮へ、血管内皮中へおよび/または血管内皮を横切って送達される。「新生物特異的」とは、薬剤が優先的にまたは選択的に新生物に結合することを示す。本発明はまた、身体的画像化のための、例えば新脈管形成または新生脈管構造の存在に対して個体を評価するのに使用するための画像化剤を、新生脈管構造特異的様式で送達する方法にも関する。本発明の方法において、該画像化剤は、目的の薬剤による新生脈管構造特異的様式で血管内皮へ、血管内皮中へおよび/または血管内皮を横切って送達される。「新生脈管構造特異的」とは、薬剤が優先的にまたは選択的に新血管増殖に結合することを示す。新血管、「新生脈管構造」は発達の種々の段階であり得、かつ成熟の異なる段階であり得ることに注目されたい;本出願の目的のために、「新生脈管構造」とは、通常の脈管構造と段階、成熟または他の関連する特徴のいずれかにおいて異なる新血管増殖をいう。
目的の薬剤は、標的化剤成分および画像化剤成分を含む。1つの態様において、標的化剤成分は、上記したようにアネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する薬剤であり得る。特定の態様において、標的化剤成分は、アネキシンA1もしくはアネキシンA1の誘導体に特異的に結合する抗体であり得るか、または抗体のフラグメント(例えばFab’ フラグメント)である。所望の場合、抗体はヒト化抗体であり得る。代表的な抗体としては上記したものが挙げられる。別の態様において、アネキシンA1の他の特異的結合パートナーが、アネキシンA1またはアネキシンA1の誘導体(例えば天然リガンド、ペプチド)と特異的に結合する薬剤を含む標的化剤成分として使用され得る。さらに別の態様において、標的化剤成分はアネキシンA1それ自体またはアネキシンA1の誘導体である;あるいは標的化剤成分は、アネキシンA1の結合パートナーまたはアネキシンA1の誘導体の結合パートナーに特異的に結合する薬剤であり得る。
画像化剤成分(画像化剤、および必要な場合、画像化剤成分と標的化剤成分とを結合するための手段などの他の成分を含む)は、例えば放射性剤(例えば放射性ヨウ素(125I、131I);テクネチウム;イットリウム;35Sまたは3H)または他の放射性同位体もしくは放射性医薬品;造影剤(例えばガドリニウム;マンガン;硫酸バリウム;ヨウ素化または非ヨウ素化剤;イオン性剤または非イオン性剤);磁気剤もしくは常磁性剤(例えばガドリニウム、酸化鉄キレート);リポソーム(例えば放射性剤、造影剤、または他の画像化剤を運搬する);超音波剤(例えばマイクロバブル放出剤);ナノ粒子;検出剤(例えば、ルシフェラーゼまたは他の蛍光性ポリペプチドを含む)を誘導する遺伝子ベクターもしくはウイルス;酵素(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼ);補欠分子族(例えば、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン);蛍光性物質(例えばウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリン);発光物質(例えばルミノール);生物発光物質(例えばルシフェラーゼ、ルシフェリン、イクオリン);または画像研究に使用され得る任意の他の画像化剤(例えばCT、X線透視検査、SPECT画像化、視像化、PET、MRI、ガンマ画像化)であり得る。
画像化剤は、個体の身体的画像化を行う方法に使用され得る。本明細書中で使用される場合、「身体的画像化」とは、(例えば上記した画像化研究方法による)個体の身体の全部または一部の画像化をいう。身体的画像化のこれらの方法は、例えば原発性および/もしくは転移性新生物を含む、新生物の有無もしくは程度に対して(例えば「ポジティブ」画像化によって)個体を評価するために、または新脈管形成もしくは新生脈管構造の有無もしくは程度に対して個体を評価するために使用され得る。好ましい態様において、身体的画像化は「ポジティブ」であり得、つまり新生物、新脈管形成、または新生脈管構造の存在を検出するために使用され得る。身体的画像化は、異常な病状、または新脈管形成、または新生脈管構造の視覚化および/または検出を可能とし、新生物または新血管増殖の程度、大きさ、位置、および/またはタイプの数を定量化するかまたは測定するために使用され得る。かくして、疾患の程度の評価をなし得、例えば臨床的診断および/または予後を容易にする。
身体的画像化のために、画像化剤を、それ自体もしくは生理的に許容され得る担体のいずれかで、画像化剤が内皮細胞表面と(例えば静脈内)接触することを可能にする手段により、個体に投与する;投与の際、標的化画像化剤は、(画像化剤のために計画される)従来の外部検出手段により非侵襲的に視覚化され得、新生物における目的の薬剤の集中の優先的または特異的蓄積を検出する。本明細書中で使用される場合、「集中」とは、個体における目的の薬剤の単なる循環もしくは拡散から予測されるものよりもはるかに大きい、個体の体内の特定の場所での目的の薬剤の量である。集中は、目的の薬剤が新生物または新血管に結合することを示し、かくして新生物または新脈管形成もしくは新生脈管構造の存在を示す。これらの方法は、原発性新生物のみならず転移の有無にも対して、ならびに新脈管形成もしくは新生脈管構造に対して個体を評価するために使用され得る。代表的な新血管増殖としては、例えば、アテローム硬化症、黄斑変性もしくは糖尿病網膜症、または急性もしくは慢性炎症を含む、種々の疾患と関連した増殖が挙げられる。インビボの画像化の別の態様において、本明細書中に記載されるように、画像化剤は、新生物の外科的除去または望ましくない新血管増殖の外科的除去等の、画像化補助治療を促進するために使用され得る。
インビボの画像化の別の態様において、本明細書中に記載されるように、画像化剤は、新生物の外科的除去を促進するため、または望ましくない新血管増殖の外科的除去を促進するために使用され得る。例えば、発光成分を含む画像化剤等の画像化剤を、該造影剤が個体中の新生物(単数か複数)または新血管増殖を標的とするような様式で、個体に投与する。次いで外科医は画像化剤の存在を(例えば発光により)同定し得、したがって画像化剤でタグ化された新生物組織または新血管増殖(新脈管形成組織)をより容易に除去し得る。
さらに、新生物の増殖、回帰(regression)または転移、および新血管の増殖または回帰は、この様式において個体の連続画像化により評価され得る;各々の画像化セッションは新生物(単数か複数)もしくは新血管の程度、大きさ、位置、および/または数の視察を提供する。
所望の場合、画像化剤はさらに治療剤を含み得る。本明細書中で使用される場合、「治療剤」とは新生物(単数か複数)、新血管(新脈管形成組織)もしくは破壊(例えば化学療法薬)するための他の病状を標的とするか、またはそうでなければ個体上の新生物(単数か複数)、新脈管形成組織、もしくは病状の効果を減少させるか除去する薬剤をいう。治療剤のさらなる使用は、治療に関して上記される。
上記態様は望ましくない新脈管形成または新生脈管構造の画像化を記載するが、該方法は、新脈管形成または新生脈管構造の発達が望ましい状況に対し同等に適用可能である(例えば、処置に関して上記されるように)。これらの方法において、新脈管形成または新生脈管構造は、上記のような画像化剤の投与で同様に評価される。所望の場合、画像化剤は、治療に関して上記されるように、新脈管形成または新生脈管構造の発達を増強する/増大させる、アネキシンA1新生脈管構造剤等の治療剤をさらに含み得る。
エクスビボ画像化および診断法
別の態様において、本発明は、例えば組織試料または細胞試料の分析のためのエクスビボでの使用のための画像化剤を、新生物特異的様式、または新生脈管構造特異的様式で送達する方法に関する。本明細書中で使用される場合、用語「組織試料」とは、組織(例えば皮膚、脳、乳房、肺、腎臓、前立腺、卵巣、頭頸部、肝臓または他の器官)由来の試料だけでなく、血液試料もまたいう。該組織は正常組織、良性もしくは悪性、またはその組み合わせ(例えば生検試料)であり得、状態(正常、良性または悪性)が未知である組織も含み得る。
本発明の1つの態様において、上記したように、画像化剤はエクスビボ画像化を行うために使用される。本明細書中で使用される場合、「エクスビボ画像化」とは、(例えば、新生物試料または細胞試料等の組織試料の外科的除去によって;静脈穿刺によって;または他の手段で)個体の身体から取り除かれた組織試料または細胞試料の画像化をいう。該画像化は異常な病状(例えば新生物または新脈管形成組織(新血管増殖))の視覚化および/または検出を可能にし、試料中の新生物(単数か複数)または新血管増殖の程度、大きさ、位置および/またはタイプの数を定量化するか測定するために使用され得る。かくして、疾患の程度の評価がなされ得、例えば臨床的診断および/または予後を容易にする。
1つの態様において、エクスビボ画像化のために、画像化剤が上記のように個体に投与される。次いで、生検試料が個体から採取され得、次いで、生検試料は目的の薬剤の集中の有無に対して評価され得る。あるいは、エクスビボ画像化の別の態様において、画像化剤が組織試料に応用される。次いで、組織試料が目的の薬剤の集中の有無に対して評価され得る。本明細書中で使用される場合、「集中」とは、試料における目的の薬剤の単なる拡散から予測されるものよりもはるかに大きい目的の薬剤の量である。集中は、目的の薬剤の結合を示し、かくして新生物または新生物(neoplasm or neoplasm)または新血管増殖(新脈管形成または新生脈管構造)の存在を示している。これらの方法は、生検試料または組織試料を評価するために使用され得、新生物が悪性(すなわちアネキシンA1の集中に対応する、目的の薬剤の集中を実証する)もしくは良性かどうか、または新血管増殖の存在があるかどうかを決定する。好ましい態様において、エクスビボ画像化に使用される組織試料は生検試料である。エクスビボ画像と関連して本明細書中で使用される場合、集中とは、試料内もしくは試料における目的の薬剤の単なる循環または拡散から予測されるものよりもはるかに大きい、試料中の特定の位置での目的の薬剤の量である。集中は、目的の薬剤が新生物に結合することを示し、かくして新生物の存在を示す。これらの方法は、原発性新生物のみならず転移または新血管増殖(新脈管形成もしくは新生脈管構造)の有無に対して個体を評価するために使用され得る。
上記態様はエクスビボの望ましくない新脈管形成または新生脈管構造の画像化を記載するが、該方法は、処置およびインビボ画像化に関して上記されるように、新脈管形成または新生脈管構造が望ましい状況に対し同等に適用可能である。
処置効能および予後の評価
アネキシンA1は通常、水溶液中に容易に存在し得る細胞質ゾルタンパク質であるので、血液中でのその存在は、内皮細胞表面での結合と平衡状態となる。これは、内皮細胞表面でのアネキシンA1またはその誘導体の存在が、脂質および/またはタンパク質との特異的相互作用を可能とすることを示し、したがって、アネキシンA1治療剤または他の治療剤による処置前および処置中の双方または処置後の、個体由来の血液試料または血清試料におけるアネキシンA1のレベルの評価が、アネキシンA1の減少した量で示される場合、該処置が首尾よく新生物、新脈管形成または新生脈管構造を減少させたかどうかを示し得る。あるいは、上記したインビトロおよび/またはエクスビボ診断方法は、患者の処置効能を評価する方法において使用され得る。かくして、本発明はまた、上記したような治療標的化剤等の治療剤、または他の治療剤での処置に対する、個体の応答をモニタリングする方法にも関係し、ならびに処置前および処置中の双方または処置後の新生物もしくは新血管増殖(新脈管形成または新生脈管構造)の量、程度、大きさ、および/または数を比較することによって、処置の効能を測定する。
例えば、本発明の1つの局面において、異なる組織、細胞および/または体液における個体のアネキシンA1レベルを検査することによって、個体は、アネキシンA1治療剤または他の治療剤による処置への応答について評価され得る。アネキシンA1の血液、血清、血漿もしくは尿レベル、またはアネキシンA1のエクスビボ生成は、組織中のアネキシンA1のレベルとして(as can levels)、アネキシンA1治療剤もしくは他の治療剤による処置前、処置中または処置後で測定され得る。処置前のレベルは、処置中または処置後のレベルと比較される。処置の効能は、アネキシンA1の利用能または生成の減少で示される:処置前のレベルよりも有意に低い処置中または処置後のアネキシンA1のレベルは、効能を示す。処置中もしくは処置後でより低いレベルは、例えば、アネキシンA1の減少した血漿レベルもしくは尿レベル、またはアネキシンA1の減少したエクスビボ生成で示めされ得る。本明細書中で使用される場合、「有意により低い」レベルとは、対照個体(単数か複数)または対照試料(単数か複数)中に典型的に見出される量よりも少ないレベルか、あるいはより低い測定のバンド(band)(例えば平均値またはメジアン、他の四分位数(quartile);他の五分位数(quintile))と比較した他の測定のバンド(例えば平均値またはメジアン、最も高い四分位数または最も高い五分位数)と関連のある集団の疾患の比較においてより小さいレベルである。
例えば、アネキシンA1のレベル(例えば血液もしくは血清試料、または組織試料において)は、アネキシンA1治療剤または他の治療剤での処置前、およびアネキシンA1治療剤または他の治療剤での処置中または処置後の個体由来の試料中で評価され、該レベルが比較される。処置前のアネキシンA1のレベルよりも有意に低い処置中または処置後のアネキシンA1のレベルは、アネキシンA1治療剤または他の治療剤で処置の効能を示す。別の局面において、アネキシンA1の生成は、個体由来の第一の試験試料で分析され、処置中または処置後、個体由来の第二の試験試料でも測定され、第一の試験試料中での生成レベルは、第二の試験試料中での生成レベルと比較される。第一の試験試料のレベルよりも有意に低い第二の試験試料のレベルは、処置の効能を示す。
別の態様において、上記したようなインビボ方法が、アネキシンA1治療剤または他の治療剤による処置前および処置後の画像を比較するために使用され得る。処置前のインビボでの新生物または新脈管形成もしくは新生脈管構造の程度、大きさ、位置および/または数は、処置中または処置後の程度、大きさ、位置および/または数と比較される。処置の効能は、新生物の程度、大きさ、位置および/もしくは数の減少、または画像化剤の減少した集中によって示されるような新血管増殖(新脈管形成または新生脈管構造)の程度の減少により示される。あるいは、上記したようなエクスビボ方法は、アネキシンA1治療剤または他の治療剤による処置前および処置後、生検試料を比較するために使用され得る。処置前の試料中の新生物または新脈管形成もしくは新生脈管構造の程度、大きさ、位置および/または数は、処置中もしくは処置後、試料中の程度、大きさ、位置および/または数と比較される。処置の効能は、新生物の程度、大きさ、位置および/もしくは数の減少、または画像化剤の減少した集中によって示されるような、新血管増殖(新脈管形成または新生脈管構造)の大きさ、位置(単数か複数)の減少により示される。別の態様において、上記したようなインビボ方法は、アネキシンA1治療剤または他の治療剤による処置前、処置中および処置後を画像化するために使用され得る。例えば、新生物、新脈管形成または新生脈管構造の程度、大きさ、位置および/または数は、インビボ画像化で評価され得、次いで治療剤(アネキシンA1治療剤または他の治療剤等)が個体に投与される。個体の連続した(continued)、継続的な(continuous)または続いて起こる(subsequent)画像化は、リアルタイム標的化および新生物細胞または新血管増殖の破壊を明らかにし得る。
本発明の別の態様において、アネキシンA1のレベルが、侵攻性疾患の存在に対する試料を評価するために、および/または組織試料を得た患者に対する予後を評価するために使用され得る。腫瘍内皮中のアネキシンA1の存在が新脈管形成を示すので、アネキシンA1の量が疾患の侵攻度を示す:アネキシンA1の量が多いほどより高い新脈管形成を示し、それは同様により不十分な予後と対応する。侵攻性疾患は、より低い侵攻性の疾患と比較して、腫瘍におけるアネキシンA1の増加した量を示す。例えば、本発明の1つの局面において、個体は、異なる組織、細胞および/または体液中におけるアネキシンA1レベルを測定するために評価され得る。アネキシンA1の血液、血清、血漿または尿レベル、またはアネキシンA1のエクスビボ生成が評価され得る。有意により高いアネキシンA1のレベルは侵攻性疾患、および/またはより不十分な予後を示す。本明細書中で使用される場合、「有意により高い」レベルとは、対照個体(単数か複数)または対照試料(単数か複数)中に典型的に見出される量よりも大きいレベルか、より低い測定のバンド(例えば平均値またはメジアン、他の四分位数;他の五分位数)と比較した他の測定のバンド(例えば平均値またはメジアン、最も高い四分位数または最も高い五分位数)と関連のある集団の疾患の比較においてより大きいレベルである。あるいは上記したように、インビボ画像化によるインビボでのアネキシンA1レベルを測定するために、個体が評価され得る。
上記したこれらの態様は、同様に、新脈管形成または新生脈管構造の発達を増強するための処置の評価に使用され得る。これらの態様において、画像化剤の増大した集中により示されるように、効能が新脈管形成または新生脈管構造の発達の増加したレベルで示されることを除いて、該方法は記載されるように行われる。
アネキシン活性を改変する薬剤のスクリーニングアッセイ
別の態様において、本発明は、本明細書中に記載されるようにアネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体の活性を改変する(例えば、増加させるか減少させる)か、またはそうでなければ、アネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体と相互作用する薬剤(例えば、融合タンパク質、ポリペプチド、ペプチド模倣体、プロドラッグ、受容体、結合剤、抗体、小分子もしくは他の薬物、またはリボザイム)の同定方法を提供する。例えば、かかる薬剤は、アネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体に結合する薬剤;例えば、アネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体活性に対して刺激効果もしくは阻害効果を有する薬剤;アネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体の結合パートナー(例えば、受容体または他の結合剤)と相互作用する能力を変化(例えば、増強するか阻害する)させる薬剤;または、アネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体の翻訳後プロセシングを改変する薬剤(例えば、タンパク質分解的プロセシング(proteolytic processing)を改変し、ポリペプチドを通常それが合成される場所から細胞表面等の細胞中の別の位置へ指向する薬剤;より活性なポリペプチドが細胞から放出されるようにタンパク質分解的プロセシングを改変する薬剤、等)であり得る。
1つの態様において、本発明は、アネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体に結合するか、またはそれらの活性を調節する候補物または試験剤をスクリーニングするアッセイ、ならびに該アッセイで同定可能な薬剤を提供する。試験剤は、生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な(addressable)平行固相または溶液相(solution phase)ライブラリー;デコンボルーション(deconvolution)を必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」(one-bead one-compound)ライブラリー法;および、アフィニティクロマトグラフィ選択を用いる合成ライブラリー法を含む、当該分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法の任意の多数のアプローチを使用して得られ得る。生物学的ライブラリーのアプローチは、ポリペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ポリペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の小分子ライブラリーに適用可能である(Lam, K.S. (1997) Anticancer Drug Des., 12:145)。
1つの態様において、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性(機能を含む)を変更する薬剤を同定するために、アネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体を含むもしくは発現する細胞、細胞溶解物または溶液が、試験されるべき薬剤と接触され得;代わりに、ポリペプチドが試験されるべき薬剤と直接接触され得る。アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性のレベル(量)が評価され(例えば、活性のレベル(量)が直接的または間接的のいずれかで測定される)、対照における活性のレベル(すなわち、試験されるべき薬剤の非存在下でのアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性のレベル)と比較される。薬剤の存在下での活性のレベルが統計的に有意な量で薬剤の非存在下での活性のレベルと異なる場合、該薬剤は、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性を変更する薬剤である。対照に比べての活性のレベルの増加は、薬剤が活性を増加する(活性のアゴニストである)薬剤であることを示す。同様に、対照に比べての活性のレベルの減少は、該薬剤が活性を阻害する(活性のアンタゴニストである)薬剤であることを示す。別の態様において、試験されるべき薬剤の存在下でアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性のレベルは、以前に確立された対照レベルと比較される。薬剤の存在下で統計的に有意な量で対照レベルと異なる活性のレベルは、薬剤が活性を変更することを示す。
本発明はまた、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体をコードする遺伝子または核酸の発現(例えば、転写または翻訳)を変更(例えば、増加または減少)するアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の発現を変更する薬剤(例えば、アンチセンス核酸、融合タンパク質、ポリペプチド、ペプチド模倣体、プロドラッグ、受容体、結合剤、結合パートナー、抗体、小分子もしくは他の薬物、またはリボザイム)ならびにアッセイによって同定可能な薬剤を同定するためのアッセイに関する。例えば、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体をコードする核酸を含む溶液は、試験されるべき薬剤と接触され得る。例えば、溶液は、核酸を含む細胞または核酸を含む細胞溶解物を含み得;あるいは溶液は、核酸の転写/翻訳に必要な要素を含む別の溶液であり得る。溶液に懸濁されない細胞はまた、所望される場合使用され得る。アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体発現のレベルおよび/またはパターン(例えば、異なるスプライシングバリアントのレベルおよび/またはパターンのような、発現されたmRNAまたはタンパク質のレベルおよび/またはパターン)が評価され、対照における発現のレベルおよび/またはパターン(すなわち、試験されるべき薬剤の非存在下での発現のレベルおよび/またはパターン)と比較される。薬剤の存在下でのレベルおよび/またはパターンが統計的に有意な量または様式で薬剤の非存在下でのレベルおよび/またはパターンと異なる場合、該薬剤は、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の発現を変更する薬剤である。発現の増加は、薬剤が活性のアゴニストであることを示す。同様に、発現の阻害は、薬剤が活性のアンタゴニストであることを示す。
本発明の別の態様において、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体をコードする遺伝子または核酸の発現を変更する薬剤は、レポーター遺伝子に作動可能に連結したアネキシンA1遺伝子のプロモータ領域をコードする核酸を含む細胞、細胞溶解物または溶液を使用して同定され得る。試験されるべき薬剤と接触した後、レポーター遺伝子の発現のレベル(例えば、発現されたmRNAまたはタンパク質のレベル)が評価され、対照における発現のレベル(すなわち、試験されるべき薬剤の非存在下でのレポーター遺伝子の発現のレベル)と比較される。薬剤の存在下でのレベルが統計的に有意な量または様式で薬剤の非存在下でのレベルと異なる場合、アネキシンA1プロモータに作動可能に連結された遺伝子の発現を変更する能力によって示されるように、該薬剤は、アネキシンA1の発現を変更する薬剤である。レポーターの発現の増加は、薬剤が活性のアゴニストであることを示す。同様に、レポーターの発現の阻害は、薬剤が活性のアンタゴニストであることを示す。別の態様において、試験されるべき薬剤の存在下でのレポーターの発現のレベルは、以前に確立された対照レベルと比較される。薬剤の存在下で統計的に有意な量または様式で対照レベルと異なるレベルは、薬剤がアネキシンA1発現を変更することを示す。
本発明の他の態様において、アッセイは、上記されるようにアネキシンA1結合パートナーに関してアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性に対する試験薬剤(test agent)の影響を評価するために使用され得る。例えば、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体と相互作用する化合物を発現する細胞は、試験薬剤の存在下でアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体と接触され、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体とアネキシンA1結合パートナーとの間の相互作用を変更する試験薬剤の能力が決定される。あるいは、アネキシンA1結合パートナーを含む細胞溶解物または溶液が使用され得る。アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体またはアネキシンA1結合パートナーに結合する薬剤は、アネキシンA1結合パートナーに結合、会合、またはそうでなければ相互作用するアネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体の能力に干渉もしくは増強することによって相互作用を変更し得る。試験薬剤のアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体またはアネキシンA1結合パートナーに結合する能力を決定することは、ポリペプチドへの試験薬剤の結合が直接的または間接的のいずれかで125I、35S、14Cまたは3Hで標識されたものを検出することによって、および放射放出の直接計数またはシンチレーション計数によって検出される放射性同位元素を検出することによって決定され得るように、例えば、試験薬剤を放射性同位元素または酵素標識と結合することによって達成され得る。あるいは、試験薬剤は、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼを用いて酵素的に標識され得、酵素標識は、適切な基質の生成物への転化を決定することによって検出される。いずれの反応体の標識もなしにアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体と相互作用する試験薬剤の能力を決定することはまた、本発明の範囲内である。例えば、ミクロフィジオメーター(microphysiometer)は、試験薬剤、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体またはアネキシンA1結合パートナーのいずれも標識することなしに、試験薬剤のアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体またはアネキシンA1結合パートナーとの相互作用を検出するために使用され得る。McConnell, H.M. ら (1992) Science, 257:1906-1912。本明細書中で使用する場合、「ミクロフィジオメーター」(例えば、CytosensorTM)は、光アドレス可能な電位差計センサー(LAPS)を使用して細胞がその環境を酸性化する速度を測定する分析機器である。この酸性化速度の変化は、リガンドとポリペプチドとの間の相互作用の指標として使用され得る。
本発明の別の態様において、アッセイは、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体と相互作用するポリペプチドを同定するために使用され得る。例えば、FieldsおよびSong (Fields, S.およびSong, O., Nature 340:245-246 (1989))によって記載されたもののような酵母ツーハイブリッド(two-hybrid)系は、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体と相互作用するポリペプチドを同定するために使用され得る。かかる酵母ツーハイブリッド系において、ベクターは、2つの機能性ドメイン(DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメイン)を有する転写因子の柔軟性に基づいて構築される。2つのドメインが分離されるが互いに相互作用する2つの異なるタンパク質に融合される場合、転写活性化が達成され得、転写の特異的なマーカー(例えば、HisおよびAdeのような栄養マーカーまたはlacZのような色マーカー)の転写は、相互作用および転写活性化の存在を同定するために使用され得る。例えば、本発明の方法において、DNA結合ドメインおよびアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体もまたコードする核酸を含む第一のベクターが使用され、転写活性化ドメインをコードする核酸およびアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体と潜在的に相互作用し得るポリペプチド(例えば、アネキシンA1結合パートナーまたは受容体)をコードする核酸もまた含む第二のベクターが使用される。第一のベクターおよび第二のベクターを含む酵母の適切な条件(例えば、ClontechからのMatchmakerTM系において使用されるような交配条件)下でのインキュベーションは、目的のマーカーを発現するコロニーの同定を可能にする。これらのコロニーは、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体と相互作用する単一または複数のポリペプチドを同定するために試験され得る。かかるポリペプチドは、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の発現の活性を変更する薬剤として有用であり得る。
上記アッセイ方法の1つより多い態様において、アネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体もしくはアネキシンA1結合パートナーまたはアッセイの他の成分のいずれかを固体支持体に固定することは、ポリペプチドの複合体化されない形態から複合体化された形態の分離を容易にするため、およびアッセイの自動化に適応するために望ましくあり得る。試験薬剤のアネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体への結合またはアネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体の試験薬剤の存在下および非存在下での結合パートナーとの相互作用は、反応物を含むのに適した任意の容器中で達成され得る。かかる容器の例としては、マイクロタイタープレート、試験管、および微小遠心管が挙げられる。1つの態様において、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体またはアネキシンA1結合パートナーがマトリクスまたは他の固体支持体に結合することを可能にするドメインを付加する融合タンパク質(例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質)が提供され得る。
さらに別の態様において、本発明は、本明細書中に記載されるようにアネキシンA1結合パートナーの活性を変更(例えば、増加または減少)する薬剤(例えば、融合タンパク質、ポリペプチド、ペプチド模倣体、プロドラッグ、受容体、結合剤、結合パートナー、抗体、小分子もしくは他の薬物、またはリボザイム)を同定するための方法を提供する。例えば、かかる薬剤は、例えば、アネキシンA1結合パートナーの活性に対する刺激もしくは阻害効果を有する薬剤;アネキシンA1結合パートナー(例えば、受容体または他の結合剤)のアネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体と相互作用する能力を変化(例えば、増加または阻害)する薬剤;またはアネキシンA1結合パートナーの翻訳後プロセシングを変更する薬剤(例えば、タンパク質分解的プロセシングを変更し、アネキシンA1結合パートナーを通常合成される場所から、例えば細胞表面のような細胞内の別の位置に指向させる薬剤;変更された量の活性なアネキシンA1結合パートナーが細胞から放出されるようにタンパク質分解的プロセシングを変更する薬剤など)であり得る。
例えば、本発明は、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性を調節するスクリーニング剤に対するアッセイに関して、上記に類似する方法を使用してアネキシンA1結合パートナーに結合するかまたはその活性を調節する候補もしくは試験薬剤、およびアッセイによって同定可能な薬剤をスクリーニングするためのアッセイを提供する。上記されるように、試験薬剤は、生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な平行固相ライブラリーまたは液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティクロマトグラフィ選択を使用する合成ライブラリー法を含む、当該分野で公知であるコンビナトリアルライブラリー法における多くのアプローチのいずれかを使用して得られ得る。生物学的ライブラリーアプローチは、ポリペプチドライブラリーに限定され、その一方で、他の4つのアプローチは、ポリペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の小分子ライブラリーに適用され得る(Lam, K.S. (1997) Anticancer Drug Des., 12:145)。
1つの態様において、アネキシンA1結合パートナーの活性を変更する薬剤を同定するために、アネキシンA1結合パートナーを含むもしくは発現する細胞、細胞溶解物または溶液は、試験されるべき薬剤と接触され得;あるいは、アネキシンA1結合パートナーは、試験されるべき薬剤と直接接触され得る。アネキシンA1結合パートナー活性のレベル(量)が評価され(例えば、アネキシンA1結合パートナー活性のレベル(量)が直接的または間接的のいずれかで測定される)、対照における活性のレベル(すなわち、試験されるべき薬剤の非存在下でのアネキシンA1結合パートナーまたはそのフラグメントもしくは誘導体の活性のレベル)と比較される。薬剤の存在下での活性のレベルが統計的に有意な量で薬剤の非存在下での活性のレベルと異なる場合、該薬剤は、アネキシンA1結合パートナーの活性を変更する薬剤である。対照と比較してアネキシンA1結合パートナー活性のレベルの増加は、該薬剤がアネキシンA1結合パートナー活性を増加する(そのアゴニストである)薬剤であることを示す。同様に、対照と比較してアネキシンA1結合パートナー活性のレベルの減少は、薬剤がアネキシンA1結合パートナー活性を阻害する(そのアンタゴニストである)薬剤であることを示す。別の態様において、試験されるべき薬剤の存在下でのアネキシンA1結合パートナーまたはその誘導体もしくはフラグメントの活性のレベルは、以前に確立された対照レベルと比較される。統計的に有意な量で対照レベルと異なる、薬剤の存在下での活性のレベルは、薬剤がアネキシンA1結合パートナー活性を変更することを示す。
本発明はさらに、上記されたスクリーニングアッセイによって同定される新規の薬剤に関する。したがって、適切な動物モデルにおいて本明細書中に記載されるように同定される薬剤をさらに使用することは本発明の範囲内である。例えば、本明細書中に記載されるように同定される薬剤(例えば、調節剤(modulating agent)、アンチセンス核酸分子、特異的な抗体またはポリペプチド結合剤(polypeptide-binding agent)である試験薬剤)は、動物モデルにおいて使用され、かかる薬剤を用いる処置の効力、毒性または副作用を決定し得る。あるいは、本明細書中に記載されるように同定される薬剤は、動物モデルにおいて使用され、かかる薬剤の作用の機構を決定し得る。さらに、本発明は、本明細書中に記載されるような処置のための上記されるスクリーニングアッセイによって同定される新規の薬剤の使用に関する。さらに、本明細書中に記載されるように同定される薬剤は、本明細書中に記載されるように同定される薬剤と、アネキシンA1、アネキシンA1誘導体またはアネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体をコードする遺伝子または核酸を接触させる(あるいはアネキシンA1、アネキシンA1誘導体またはアネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体をコードする遺伝子または核酸を含む細胞を接触させる)ことによって、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体の活性を変更するために使用され得る。
アネキシンA1結合パートナーに対するスクリーニングアッセイ
別の態様において、本発明は、本明細書中に記載されるようにアネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体に結合するかまたはそうでなければアネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体と相互作用する薬剤(例えば、融合タンパク質、ポリペプチド、ペプチド模倣体、プロドラッグ、受容体、結合剤、結合パートナー、抗体、小分子もしくは他の薬物、またはリボザイム)を同定する方法を提供する。結合パートナーは、例えば、標的化剤として(例えば、本明細書中に記載される方法において)使用され得る。
1つの態様において、本発明は、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体を結合する候補または試験薬剤、およびアッセイによって同定され得る薬剤をスクリーニングするためのアッセイを提供する。試験薬剤は、生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な平行固相ライブラリーまたは溶液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティクロマトグラフィ選択を使用する合成ライブラリー法を含む、当該分野で公知であるコンビナトリアルライブラリー法における多くのアプローチのいずれかを使用して得られ得る。生物学的ライブラリーアプローチは、ポリペプチドライブラリーに限定され、その一方で、他の4つのアプローチは、ポリペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の小分子ライブラリーに適用され得る(Lam, K.S. (1997) Anticancer Drug Des., 12:145)。国立衛生研究所はまた、かかる方法を使用するスクリーニングに利用可能な化合物のライブラリーを有する。化合物のライブラリーがまた評価され得る。ペプチドまたは抗体またはこれらの誘導体を提示するファージのライブラリーもまた、ライブラリーが異なるペプチドを提示するように操作されたウイルス、ナノ粒子またはタンパク質を有し得るようにスクリーニングされ得る。
1つの態様において、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体に結合する薬剤を同定するために、アネキシンA1もしくはアネキシンA1誘導体を含むもしくは発現する細胞、細胞溶解物または溶液が試験されるべき薬剤と接触され得;あるいは、ポリペプチドが試験されるべき薬剤と直接接触され得る。アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体への結合のレベル(量)が評価される(例えば、活性のレベル(量)が、直接的または間接的のいずれかで測定される)。本発明の別の態様において、酵母ツーハイブリッドアッセイは、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体に結合するポリペプチドを同定するために使用され得る。例えば、FieldsおよびSong (Fields, S.およびSong, O., Nature 340:245-246 (1989))によって記載されるような酵母ツーハイブリッド系が使用され、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体と相互作用するポリペプチドを同定し得る。かかる酵母ツーハイブリッド系において、ベクターは、2つの機能性ドメイン(DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメイン)を有する転写因子の柔軟性に基づいて構築される。2つのドメインは分離されるが互いに相互作用する2つの異なるタンパク質に融合される場合、転写活性化は達成され得、特異的マーカー(例えば、HisおよびAdeのような栄養マーカーまたはlacZのような色マーカー)の転写は、相互作用および転写活性化の存在を同定するために使用され得る。例えば、本発明の方法において、DNA結合ドメインおよびアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体もまたコードする核酸を含む第一のベクターが使用され、転写活性化ドメインをコードする核酸およびアネキシンA1またはアネキシンA1誘導体と潜在的に相互作用し得るポリペプチド(例えば、アネキシンA1結合パートナーまたは受容体)をコードする核酸もまた含む第二のベクターが使用される。第一のベクターおよび第二のベクターを含む酵母の適切な条件(例えば、ClontechからのMatchmakerTM系において使用されるような交配条件)下でのインキュベーションは、目的のマーカーを発現するコロニーの同定を可能にする。これらのコロニーは、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体と相互作用する単一または複数のポリペプチドを同定するために試験され得る。
本発明の別の態様において、小分子のライブラリーがスクリーニングされ、アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体に結合する分子に対して評価し得る。アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体に結合する小分子薬剤に対するスクリーニングのための多くのアプローチが存在する。種々のアッセイ形式は十分であり、本開示を考慮して、本明細書中に明確に記載されないアッセイは、それにもかかわらず当業者に理解される。アネキシンA1またはアネキシンA1誘導体への結合能力について試験されるべき薬剤は、例えば、細菌、酵母、植物もしくは他の生物体(例えば、天然産物)によって生成されるか、化学的に合成されるか(例えば、ペプチド模倣体を含む小分子)、または組み換え的に生成され得る。本発明によって企図される試薬薬剤としては、非ペプチド有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、糖、ホルモンおよび核酸分子(核酸アプタマーのような)が挙げられる。好ましい態様において、試験薬剤は、約2500ダルトンより小さい分子量を有する有機小分子である。
試験薬剤は、単一の実体、別個の実体としてまたはコンビナトリアル化学によって作成されるようなより大きな複雑なライブラリーにおいて提供され得る。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテルおよび他のクラスの有機化合物を含む。試験化合物の試験系への提示は、特に、最初のスクリーニング工程において、単離された形態かまたは化合物の混合物としてのいずれかであり得る。
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、ハイスループットアッセイが所定の期間に調査される化合物の数を最大にするために望ましい。精製されたタンパク質または半精製されたタンパク質に由来し得るような、無細胞系において実施されるアッセイは、しばしば試験化合物によって媒介される分子標的における変更の迅速な開発および比較的容易な検出を可能にするために生成され得る「一次」スクリーンとして好ましい。さらに、試験化合物の細胞傷害性および/または生物学的利用能の効果は、一般的にインビトロ系において無視され得、代わりにアッセイは、分子標的に対する薬物の効果に主に集中する。
本発明の抗体
別の局面において、本発明は、例えば本発明の方法において使用され得るアネキシンA1に対する抗体を提供する。用語「抗体」は上記される。本発明は、アネキシンA1またはアネキシンA1の誘導体に結合するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、アネキシンA1またはアネキシンA1の誘導体の特定のエピトープと免疫反応し得るただ1種の抗原結合部位を含む抗体分子の集団をいう。
ポリクローナル抗体は、所望される免疫原、例えばアネキシンA1またはその誘導体で適切な被験体を免疫にすることによって上記されるように調製され得る。免疫にされた被験体における抗体力価は、固定されたポリペプチドを使用する酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)を用いるような標準的な技術によって経時的にモニターされ得る。所望の場合、アネキシンA1に対して指向される抗体分子は哺乳類から(例えば血液から)単離され、プロテインAクロマトグラフィのような周知の技術によってさらに精製され、IgG画分を得ることができる。例えば、抗体力価が最も高い場合、免疫後適切な時間で抗体産生細胞が被験体から得られ、最初にKohlerおよびMilstein (1975) Nature, 256:495-497に記載されるようなハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、(1983) Immunol. Today, 4:72)、EBVハイブリドーマ技術(Coleら、(1985), Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)、またはトリオーマ技術のような標準的な技術によってモノクローナル抗体を調製するために使用され得る。ハイブリドーマを産生するための技術は周知である(一般的にCurrent Protocols in Immunology (1994) Coliganら(編) John Wiley & Sons, Inc., New York, NYを参照)。簡単に、不死化細胞株(典型的にはミエローマ)が、上記されるように免疫原で免疫にされた哺乳類由来のリンパ球(典型的には脾臓細胞)に融合され、得られたハイブリドーマ細胞の培養上清がスクリーンされ、本発明のポリペプチドを結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定する。
リンパ球および不死化細胞株を融合するために使用される多くの周知のプロトコルのいずれかは、アネキシンA1に対するモノクローナル抗体を産生する目的に対して適用され得る(例えば、Current Protocols in Immunology,上述; Galfreら、(1977) Nature, 266:55052; R.H. Kenneth, in Monoclonal Antibodies: A New Dimension In Biological Analyses, Plenum Publishing Corp., New York, New York (1980);およびLerner (1981) Yale J. Biol. Med., 54:387-402を参照)。さらに、当業者は、有用でもあるかかる方法の多くのバリエーションが存在することを認識する。
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製する代わりに、アネキシンA1に対するモノクローナル抗体が同定され、アネキシンA1またはアネキシンA1の誘導体を用いて組み換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングすることによって単離され、それによってアネキシンA1に結合する免疫グロブリンライブラリーのメンバーを単離し得る。ファージディスプレイライブラリーを生成およびスクリーニングするためのキットが市販される(例えば、the Pharmacia Recombinant Phage Antibody System, Catalog No. 27-9400-01;およびthe Stratagene SurfZAPTM Phage Display Kit, Catalog No. 240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーの生成およびスクリーニングにおける使用に特に影響を受けやすい方法および試薬の例は、例えば、米国特許第5,223,409号; PCT公開番号WO 92/18619; PCT公開番号WO 91/17271; PCT公開番号WO 92/20791; PCT公開番号WO 92/15679; PCT公開番号WO 93/01288; PCT公開番号WO 92/01047; PCT公開番号WO 92/09690; PCT公開番号WO 90/02809; Fuchsら、(1991) Bio/Technology, 9:1370-1372; Hayら、(1992) Hum. Antibod. Hybridomas, 3:81-85; Huseら、(1989) Science, 246:1275-1281; Griffithsら、(1993) EMBO J., 12:725-734に見出され得る。
さらに、標準的な組み換えDNA技術を使用して作製され得るヒト部分および非ヒト部分の両方を含むキメラおよびヒト化モノクローナル抗体のような組み換え抗体は、本発明の範囲内である。かかるキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当該分野で公知の組み換えDNA技術によって産生され得る。
一般的に、本発明の抗体(例えば、モノクローナル抗体)は、本発明の方法において使用され得る。例えば、アネキシンA1に特異的な抗体は、新生物の存在量および位置を評価するために、腫瘍または新生物を画像化するための本発明の方法において使用され得る。抗体はまた、例えば、上記されるように処置養生法の前後の画像化によって所定の処置養生法の効力を測定するために診断的に使用され得る。
他のアネキシンの使用
本発明がアネキシンA1の使用によって例示され、その一方で、本明細書中に記載される方法が、他のアネキシンに対して類似する様式において適用され得る。アネキシンは、カルシウム依存性様式で脂質膜を結合し得る細胞質ゾルタンパク質であること(Gerke, V.およびMoss, S.E.,. Physiol Rev 2002; 82:331-71)および一般に二重層の内部リーフレットに結合して存在していること(Gerke, V.およびMoss, S. E. (2002) Physiol Rev 82, 331-71)を含む共通したいくつかの性質を有する。他のアネキシンは、アネキシン治療剤の標的として;インビボまたはインビトロいずれかでの画像化のための標的として;診断のために;および、また処置効力の評価または疾患の予後のために同様に使用され得る。アネキシンA1のように他のアネキシンはまた、原形質膜を含む膜に向かって、および膜を横切って動き、露出され、したがってあらかじめ細胞に入ることのできない薬剤を含む広く種々の薬剤に接近可能になり得る。特定の態様において、アネキシンA2またはアネキシンA8は、本明細書中に記載されるようなアネキシンA1に類似する様式で使用される。例えば、薬剤(例えば、画像化剤、治療剤)は、脈管構造の管腔表面または脈管構造の小胞をアネキシンに(またはアネキシンの誘導体に)特異的に結合する薬剤か、またはアネキシンの特異的結合パートナーに(またはアネキシンの誘導体の特異的結合パートナーに)接触させることによって、新生物特異的様式に脈管内皮、脈管内皮中および/または脈管内皮を横切って送達され得る。特定の態様において、例えば、画像化剤または治療剤の標的化剤成分は、アネキシンを特異的に結合する薬剤であり得る。薬剤の新生物特異的送達のための他のアネキシンを含む他のタンパク質の使用に関するさらなる情報は、Attorney Docket No. 3649.1001-000で2004年6月2日に出願された、「TUMOR-SPECIFIC IMAGING AND THERAPEUTIC AGENTS TARGETING PROTEINS EXPRESSED ON TUMOR ENDOTHELIAL CELL SURFACE」と題されるものおよびAttorney docket No. 3649.1001-003で、本明細書と同じ日に出願された「IMAGING AND THERAPEUTIC AGENTS TARGETING PROTEINS EXPRESSED ON ENDOTHELIAL CELL SURFACE」と題されるものにより詳細に記載される。これらの教示は、その全体を参照によって本明細書中に援用される。
本発明は、以下の実施例によってさらに示され、この実施例はいずれの方法によっても限定することを意図されない。
実施例
本明細書中に記載されるように内皮およびその小胞のプロテオーム的マッピングは、固形腫瘍が新生脈管構造の小胞においてAnnA1の抗体接近可能な転座を誘導することを明らかにする。AnnA1を介して腫瘍内皮小胞を標的化することは、インビボでの固形腫瘍への特異的な送達、固形腫瘍の処置および固形腫瘍の画像化を可能にする。
実施例1: 材料および方法
材料:以下の抗体を入手した:Santa Cruz Biotechnology (Santa Cruz, CA)からAnnAl、AnnA3、AnnA5、AnnA7、AnnA8、カベオリン-1、E-カドヘリンおよびVE-カドヘリン;AnnA2、AnnA4およびAnnA6は、BD Biosciences (San Diego, CA)からであった; -actinは、Sigma (Saint Louis, MO)からであった; VEGF R2は、Zymed Lab, Inc. (San Francisco, CA)からであった;マウスIgGは、Southern Biotech (Birmingham, AL)からであった; VEGF受容体1は、Dr. D. Sanger, Beth Israel Deaconess Medical Center (Boston MA)の好意によるものであった; ガレクチン1は、Dr. M. Huflejt, Sidney Kimmel Cancer Center (San Diego, CA)の好意によるものであった; ポドカリキシンは、研究室で産生した。
AnnA1 cDNAのクローニングおよび抗体産生:モノクローナル抗体を、免疫原として精製された組み換えAnnA1を使用する標準的な体細胞ハイブリダイゼーションによって産生し、96ウェルトレー上に吸着されたPを用いてELISAによってスクリーンした。
管腔内皮細胞膜および小胞の単離:管腔内皮細胞膜およびその小胞を、記載されるように組織から直接単離した(Schnitzer, J. E., McIntosh, D. P., Dvorak, A. M., Liu, J.およびOh, P. (1995) Separation of caveolae from associated microdomains of GPI-anchored proteins. Science 269, 1435-9; Oh, P.およびSchnitzer, J.E. Isolation and subfractionation of plasma membranes to purify caveolae separately from glycosyl-phosphatidylinositol-anchored protein microdomain. in Cell Biology: A Laboratory Handbook, 第2巻 (Celis, J.編) 34-36 (Academic Press, Orlando, 1998) Schnitzer, J.E.ら、J. Biol Chem. 270:14399-14404 (1995))。
腫瘍モデル:雌のFisherラット(100〜150gms)に、13762の乳腺癌細胞の細胞懸濁物を、尾静脈を介して注射し、肺において十分に良好な限局性があり、かつ高度に脈管化された腫瘍を生じた。肺において明確に可視である直径3〜8mmの最大密度の腫瘍損傷を作製するために、5×105 13762細胞を、灌流および腫瘍保持肺Pの単離の14〜15日前に注射した。直径3〜6mmのいくつかの良好な限局性の腫瘍を得るために、1×105細胞を、画像化実験を実施する21日前に注射した。マウスにおける皮下(s.c.)胸部腫瘍モデルをヌードマウスの背中に1.8×107 MDAMB435細胞をs.c.注射することによって作製し、画像化研究の前12日間増殖させた。
質量スペクトル分析:AnnA1をPおよびVから単離されたタンパク質から切り出した;タンパク質を1Dまたは2Dゲル電気泳動によって分離した。さらに、AnnA1を、記載されるようにAnnA1 mAbを使用してPから免疫沈降させた(Oh, P.およびSchnitzer, J. E. (2001) Segregation of heterotrimeric G proteins in cell surface microdomains: Gq binds caveolin to concentrate in caveolae whereas Gi and Gs target lipid rafts by default. Mol. Biol. Cell 12, 685-698)。免疫沈降された物質は、SDS-PAGEによって分析され、単一の34kDaバンド(Western分析によってAnnA1に対応する)をゲルから切り出した。切り出されたゲルバンドまたは点(spot)を、MS分析の前にインゲルトリプシン消化に供した。複雑なペプチド混合物を、逆相C18物質で充填されHPLC溶媒送達システムに連結された微小カラムを使用して分離し、次いで2元グラジエント(binary gradient)を介して60分間にわたって、m/z400〜1600の記録された質量スペクトルを提供するエレクトロスプレーイオントラップ(electrospray ion trap)質量分析計(LCQ Deca, ThermoFinnigan, San Jose, CA)に直接溶出した。イオンスペクトルの自動化分析を、得られたMS/MSスペクトルと利用可能な公的データベース中の公知のタンパク質のスペクトルとの広範囲な比較を実施して公知のタンパク質を同定するSEQUESTソフトウェアを使用して実施した。
組織染色:凍結したラット組織を、Microm HM505Eクライオミクロトーム上で切断(5μm)した。切片を、室温で5分間中性緩衝化されたホルマリンで固定し、次いで、室温で1時間ブロッキング溶液(PBS中5%FBS、0.1%Tween20)中でインキュベートした。一次抗体(ブロッキング溶液中に希釈された)中での室温で2時間のインキュベーションの後、切片を洗浄し、次いで、室温で1時間適切なビオチン結合体化二次抗体(KPL Laboratories, Gaithersburg, MD)で処理し、再度洗浄し、次いで、室温で1時間ストレプトアビジン結合体化ホースラディッシュペルオキシダーゼ(KPL Laboratories, Gaithersburg, MD)で処理した。免疫複合体を、BioGenex (San Ramon, CA)からのLiquid DAB染色キットを使用して検出した。ホルマリン固定パラフィン包埋切片(5μm)をMicrom HM340Eミクロトーム上で切断した。抗原回復を標準的な手順に従って酸性クエン酸バッファを使用して実施した。切片を水中で洗浄し酸性クエン酸バッファを除去した後、ブロックし、上記のように免疫染色した。
動物使用:動物実験は、Sidney Kimmel Cancer Center動物保護および使用委員会による再審理および認可の後、連邦の手引きに従った。
γシンチグラフィ画像化および生体分布分析:モノクローナル抗体をGammaBind Plus Sepharose (Amersham, Piscataway, NJ)を使用して単離し、記載されるようにヨードゲン(Iodogen)を使用して125Iに結合体化した(McIntosh, D. P., Tan, X.-Y., Oh, P.およびSchnitzer, J. E. (2002) Targeting endothelium and its dynamic caveolae for tissue-specific transcytosis in vivo: A pathway to overcome cell barriers to drug and gene delivery. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 1996-2001)。生体分布分析を、記載されるように実施した(同上)。画像化をA-SPECTを使用して実施し(McElroy, D., MacDonald, L., Beekman, F., Wang, Y., Patt, B., Iwanczyk, J., Tsui, B.およびHoffman, E. (2002) Performance evaluation of A-SPECT: A high resolution desktop pinhole SPECT system for imaging small animals. IEEE Trans Nucl Sci NS 49, 2139-2147)、平行孔コリメーターでフィットした。正常および腫瘍保持雌Fisherラットに麻酔し、尾静脈を介して125I標識モノクローナル抗体を注射し(5μg IgG;10μCi/μg)、その後、10分間にわたって捕捉される平面γシンチグラフィ画像化に供した。全身画像化後、いくつかの場合において、肺を10分間にわたってエクスビボ捕捉される平面画像化のために摘出した。
実施例2: 結果および考察
過去の研究は、正常な脈管内皮、主としてラット肺組織における細胞表面、特にその小胞の分子構成(molecular architecture)および機能を広範囲にマッピングし、特徴付けた(Schnitzer, J. E.およびOh, P. (1994) Albondin-mediated capillary permeability to albumin. Differential role of receptors in endothelial transcytosis and endocytosis of native and modified albumins. J Biol Chem 269, 6072-82; Schnitzer, J. E., Oh, P., Pinney, E.およびAllard, J. (1994) Filipin- sensitive caveolae-mediated transport in endothelium: reduced transcytosis, scavenger endocytosis, and capillary permeability of select macromolecules. J Cell Biol 127, 1217-32; Schnitzer, J. E., McIntosh, D. P., Dvorak, A. M., Liu, J.およびOh, P. (1995) Separation of caveolae from associated microdomains of GPI-anchored proteins. Science 269, 1435-9; Schnitzer, J. E., Oh, P.およびMcIntosh, D. P. (1996) Role of GTP hydrolysis in fission of caveolae directly from plasma membranes [出版社の誤植表は、Science 1996年11月15日;274(5290):1069に出ている]. Science 274, 239-42; Schnitzer, J. E., Liu, J.およびOh, P. (1995) Endothelial caveolae have the molecular transport machinery for vesicle budding, docking, and fusion including VAMP, NSF, SNAP, annexins, and GTPases. J Biol Chem 270, 14399-404; Schnitzer, J. E., Allard, J.およびOh, P. (1995) NEM inhibits transcytosis, endocytosis, and capillary permeability: implication of caveolae fusion in endothelia. Am J Physiol 268, H48-55; McIntosh, D. P.およびSchnitzer, J. E. (1999) Caveolae require intact VAMP for targeted transport in vascular endothelium. Am J Physiol 277, H2222-32)。
細胞下分画を使用して、前に記載されるように組織から小胞(V)および/またはシリカコートされた管腔内皮細胞膜(P)を単離し(Schnitzer, J. E., McIntosh, D. P., Dvorak, A. M., Liu, J.およびOh, P. (1995)Separation of caveolae from associated microdomains of GPI-anchored proteins. Science 269, 1435-9; Schnitzer, J. E., Oh, P.およびMcIntosh, D. P. (1996) Role of GTP hydrolysis in fission of caveolae directly from plasma membranes [出版社の誤植表は、Science 1996年11月15日;274(5290):1069に出ている]. Science 274, 239-42; Schnitzer, J. E., Liu, J.およびOh, P. (1995) Endothelial caveolae have the molecular transport machinery for vesicle budding, docking, and fusion including VAMP, NSF, SNAP, annexins, and GTPases. J Biol Chem 270, 14399-404; Schnitzer, J. E., Allard, J.およびOh, P. (1995) NEM inhibits transcytosis, endocytosis, and capillary permeability: implication of caveolae fusion in endothelia. Am J Physiol 268, H48-55; McIntosh, D. P.およびSchnitzer, J. E. (1999) Caveolae require intact VAMP for targeted transport in vascular endothelium. Am J Physiol 277, H2222-32; Oh, P.およびSchnitzer, J. E. Isolation and subfractionation of plasma membranes to purify caveolae separately from glycosyl-phosphatidylinositol-anchored protein microdomain. in Cell Biology: A Laboratory Handbook, 第2巻 (Celis, J.編) 34-36 (Academic Press, Orlando, 1998))、腫瘍内皮由来およびさらにヒト試料由来の小胞に対する正常ラット肺内皮小胞の可能な均等物を試験した。正常ラット肺内皮小胞は、アネキシンA2(AnnA2)を含んだが、前は神経細胞および選択分泌細胞に対する発現に制限されると考えられていたアネキシンA1(AnnA1)を含まなかった (McKanna, J. A.およびZhang, M. Z. (1997) Immunohistochemical localization of lipocortin 1 in rat brain is sensitive to pH, freezing, and dehydration. J Histochem Cytochem 45, 527-38; Savchenko, V. L., McKanna, J. A., Nikonenko, I. R.およびSkibo, G. G. (2000) Microglia and astrocytes in the adult rat brain: comparative immunocytochemical analysis demonstrates the efficacy of lipocortin 1 immunoreactivity. Neuroscience 96, 195-203; Naciff, J. M., Kaetzel, M. A., Behbehani, M. M.およびDedman, J. R. (1996) Differential expression of annexins I-VI in the rat dorsal root ganglia and spinal cord. J Comp Neurol 368, 356-70; Eberhard, D. A., Brown, M. D.およびVandenBerg, S. R. (1994) Alterations of annexin expression in pathological neuronal and glial reactions. Immunohistochemical localization of annexins I, II (p36 and p11 subunits), IV, and VI in the human hippocampus. Am J Pathol 145, 640-9)。
本明細書中で記載される分析は、今回は腫瘍を含む種々のヒト組織由来の小胞中のAnnA2の発現を確認した。予想どおり、AnnA1は、正常なヒト組織由来の小胞において検出されなかったが、驚いたことに、複数のヒト固形腫瘍(腎臓、肝臓、肺、脳、胸部および前立腺;例えば、ヒト小胞を単離するための方法について米国特許第6,737,516号を参照)から単離された小胞中の34kDaバンドとして親和性精製ポリクローナル抗体(C19)によって容易に検出された。
これらの結果は、複数のラット腫瘍モデル(ラット尾静脈に注射された線維肉腫(MR7)および乳腺癌(13762およびMTLn3)細胞によって誘導された)から単離された小胞のプロテオーム的分析によって確証された。34kDaタンパク質バンドからのトリプシンペプチドの質量スペクトル的(MS)分析は、肺腫瘍小胞のSDS-PAGEゲルにおいて直ちに明らかであるが、AnnA1としてタンパク質を同定した複数のペプチド配列を提供される正常肺小胞において明らかではない。これまでは、AnnA1に対して約55%の配列適用範囲(coverage)を提供する30ペプチドは、複数のサンプルに対してMS分析を実施することによって同定されている:I)1Dゲル分析によって腫瘍において見出されるが正常小胞において見出されない削除された34kDaのバンドとして;ii)腫瘍から単離されるが正常組織からは単離されない小胞由来の2Dゲル上のスポットとして;iii)腫瘍から単離されたP由来のAnnA1免疫沈降において、およびiv)ラット腫瘍から単離されたPおよびVのMudPIT分析。
AnnA1ポリクローナル抗体を使用したこれらのラット肺腫瘍モデルからの組織部分分画のWestern分析はまた、腫瘍保持肺由来の小胞において富化されるが正常肺においてはされない単一の34kDaのバンドを明らかにし、それによって単離された小胞において濃縮され、かつ腫瘍によって血管細胞表面上に明らかに誘導されたAnnA1発現を確認した。小胞構造タンパク質、カベオリン−1およびAnnA2は、報告されるようにV画分中に富化された(Schnitzer, J. E., McIntosh, D. P., Dvorak, A. M., Liu, J.およびOh, P. (1995) Separation of caveolae from associated microdomains of GPI-anchored proteins. Science 269, 1435-9; Oh, P.およびSchnitzer, J. E. (1999) Immunoisolation of caveolae with high affinity antibody binding to the oligomeric caveolin cage. Toward understanding the basis of purification [公表された誤植表はJ Biol Chem 1999年10月8日;274(41):29582に出ている]. J Biol Chem 274, 23144-54)。対照的に、それぞれ腫瘍細胞およびGolgi/エンドソームのどこかで発現されることが公知であるGal-1およびβ-COPの検出はなかった(Perillo, N. L., Marcus, M. E.およびBaum, L. G. (1998) Galectins: versatile modulators of cell adhesion, cell proliferation, and cell death. J Mol Med 76, 402-12; Griffiths, G., Pepperkok, R., Locker, J. K.およびKreis, T. E. (1995) Immunocytochemical localization of beta-COP to the ER-Golgi boundary and the TGN. J Cell Sci 108 ( Pt 8), 2839-56)。また、ACE、VEGF-R1およびVEGF-R2は、単離された管腔内皮細胞膜において正常肺および腫瘍肺の両方からは濃縮されるが小胞からは濃縮されなかった。したがって、AnnA1は、ラットおよびヒト固形腫瘍の新生脈間構造の内皮細胞小胞において誘導されるように見える。
AnnA1が腫瘍血管の内皮細胞表面上での発現においてアネキシンの中で特有であるかどうかを決定するために、Western分析を、種々のアネキシンタンパク質を認識する抗体を使用してラット由来の複数の正常な器官ならびに腫瘍保持肺由来の組織ホモジネート(H)およびPにおいて実施した。ラット肺腫瘍からは単離されるが正常組織からは単離されないPにおいて富化されているAnnA1を容易に検出した。対照的に、AnnA2を、正常肺、肝臓、腎臓および心臓からのPにおいて容易に検出し;アネキシンA5を正常肺および脳Pにおいて検出し;ならびにアネキシンA8を正常肺Pにおいて検出した。アネキシンA4、A6およびA7は、さらにより広く分布された。アネキシンA3抗体は、局在化を正確に評価するために十分明瞭なシグナルは生じなかった。
AnnA1発現の腫瘍特異性をさらに評価するために、種々のラットおよびヒトの正常組織および腫瘍組織を免疫染色した。AnnA1抗体は、ヒト前立腺腫瘍、肝臓腫瘍、腎臓腫瘍、胸部腫瘍、結腸腫瘍、脳腫瘍および肺腫瘍の血管を染色したが、正常な組織には適合しなかった。ヒト転移性腫瘍(肺への結腸転移および脳への胸部転移)はまた、血管におけるAnnA1発現を示した。全内皮マーカーであるPECAMに対する抗体は、正常血管および腫瘍血管の両方を染色した。複数の正常器官の組織切片の脈管内皮におけるAnnA1発現の欠損は、以前に報告された(McKanna, J. A.およびZhang, M. Z. (1997) Immunohistochemical localization of lipocortin 1 in rat brain is sensitive to pH, freezing, and dehydration. J Histochem Cytochem 45, 527-38; Eberhard, D. A., Brown, M. D.およびVandenBerg, S. R. (1994) Alterations of annexin expression in pathological neuronal and glial reactions. Immunohistochemical localization of annexins I, II (p36 and p11 subunits), IV, and VI in the human hippocampus. Am J Pathol 145, 640-9; Dreier, R., Schmid, K. W., Gerke, V.およびRiehemann, K. (1998) Differential expression of annexins I, II and IV in human tissues: an immunohistochemical study. Histochem Cell Biol 110, 137-48; Ahn, S. H., Sawada, H., Ro, J. Y.およびNicolson, G. L. (1997) Differential expression of annexin I in human mammary ductal epithelial cells in normal and benign and malignant breast tissues. Clin Exp Metastasis 15, 151-6)。したがって、AnnA1発現は、Western分析ならびにラット肺腫瘍モデルの新生脈管構造および複数のヒト固形腫瘍の両方において誘導される組織免疫染色によって明らかになった。
市販の抗体のいくつかは、アネキシンA1の34kDa形態と選択的に反応するように見え、腫瘍脈管構造における発現の明瞭なシグナルを生じたが、AnnA1発現をよりよく特徴付けるため、およびインビボで標的化するインビボ標的化の可能性を試験するために、さらに高い親和性の特異的なプローブを使用した。市販のAnnA1モノクローナル抗体(mAb)を試験した後、複数の種由来のAnnA1を認識するmAbのパネルを生成することを決定した。ラット、マウスおよびヒトAnnA1 cDNAを、PCRによってクローン化した。cDNAクローンを検証するために、培養された細胞を、cDNAを含む哺乳類発現ベクターでトランスフェクトし、Western分析および免疫蛍光顕微鏡法によってAnnA1反応性対非トランスフェクション細胞について試験した。これらのcDNAを使用して、組み換えタンパク質を免疫原として3種の各々から産生し、ラット、マウスおよびヒトAnnA1を認識するmAbのパネルを生成した。
AnnA1を含むアネキシンは、普通は、カルシウム依存性様式で通常二重層の内部リーフレットで細胞膜を結合し得る細胞質ゾルタンパク質である(Schnitzer, J. E. (2001) Caveolae: from basic trafficking mechanisms to targeting transcytosis for tissue-specific drug and gene delivery in vivo. Adv Drug Deliv Rev 49, 265-80)。しかし、いくつかのアネキシンは、脂質二重層を越えて転座し、外部細胞表面上の原形質膜に結合したまま残り得る(Gerke, V.およびMoss, S. E. (2002) Annexins: from structure to function. Physiol Rev 82, 331-71)。
腫瘍内皮細胞表面上に誘導されたAnnA1が、循環する抗体に曝露されるかどうかを試験するために、AnnA1抗体を、正常および腫瘍保持ラット肺に灌流し、次いで脈管構造を洗浄し、未結合の抗体を除去した。AnnA1抗体は、腫瘍保持肺から単離されるが正常肺からは単離されないPにおけるWestern分析によって容易に検出され、その一方で、対照APP抗体は正常肺Pに結合された。組織切片の免疫組織化学的染色はまた、AnnA1抗体が腫瘍の脈管内皮に結合するが正常な肺の脈管内皮には結合しないことを検出した。したがって、管腔内皮細胞膜の外側リーフレット上に結合されるAnnA1は、外面化し露出されていなければならず、したがって、循環する抗体に容易に接近可能でなければならない。
小胞中のAnnA1が十分IV接近可能であり、腫瘍血管に特異的であり、インビボでの有意な腫瘍標的化を可能にするかどうかを試験するために、上記されるようにラット組織においてそれぞれ腫瘍特異的発現、制限された発現、および広い発現を示すAnnA1、AnnA2およびAnnA4に対する放射性ヨウ素化mAbを注射した後、生体分布分析を実施した。60分後、腫瘍を有する全肺を含む複数の器官を摘出し、重量を測り、放射能を計数した。AnnA1抗体は、1% ID/g組織未満の他の器官に比べて腫瘍保持肺のグラムあたりの注射された投与量(ID)の約15%のレベルで腫瘍保持肺に有意かつ特異的に蓄積した。腫瘍を有さない動物において、AnnA1抗体は、1%未満のID/gが検出された肺の特異的な標的化は示さなかった。AnnA2は、正常組織におけるきわめて低い蓄積(1%未満のID/g)に比べて腫瘍肺において4.22% ID/gで、腫瘍肺における中程度だが有意な蓄積を生じるラット肺腫瘍においてIV接近可能な露出のいくつかの証拠を示した。AnnA4抗体は、血液中に残存する抗体のほとんどと特異的な腫瘍標的化を示さず、このタンパク質の予想される細胞内分布と一致する。経時変化研究において、AnnA1抗体の有意な蓄積は、30分(7% ID/g)で観察され、2時間で最大(17% ID/g)に達し、少なくとも24時間維持された。腫瘍を正常な肺組織から切り離して放射能を計数した場合、腫瘍標的化は、30分で腫瘍の11.5% ID/g蓄積でさらにより著しく、2時間で腫瘍の33% ID/gの最大に達した。これらのデータは、腫瘍内皮細胞小胞においてAnnA1(および低い程度のAnnA2まで可能であるがAnnA4ではない)が細胞の外側に露出され、インビボ腫瘍選択送達のためのIV注射によって容易に接近可能であることを示す。
見込みのある(promising)腫瘍標的化を示す生体分布分析を考慮すれば、腫瘍標的化は、肺腫瘍保持ラットの高解像度ピンホールミクロSPECT画像化によってインビボでさらに試験された。125I−AnnA1 mAbを、鎮静剤を飲まされたラットの尾静脈に注射し、4時間後に捕捉された画像は、肺において異なる大きさの放射能が増加した(「ホットスポット」)いくつかの異なる病巣を示した。これは、複数の腫瘍を有する肺がエクスビボで画像化される場合、特に明らかであり、その結果、腫瘍はホットスポットと直接重なって見られ得た。SPECT推測の3Dムービーは、標的化をさらに示した。さらに、腫瘍における125I−AnnA1 mAb蓄積は、非標識AnnA1 mAbの30倍過剰の共注射(過剰の非標的化非標識IgGではないが)が腫瘍AnnA1 mAb結合と競合したので特異的であった。125I−AnnA1 mAbをまた、皮下胸部腫瘍モデルを保持するマウスの尾静脈に注射し、3時間後にマウスを画像化した。外的に明らかな腫瘍の明瞭で特異的な標識が生じた。非標的化125I標識IgGは、通例低いレベルの拡散「血液プール」画像を反映するシグナルを有する特定の組織をどれも標的化しなかった。したがって、SPECT画像化は、腫瘍であってその他の場所ではないものにおける125I−AnnA1 mAbの特異的な蓄積を示し、このことは、AnnA1 mAbがラットおよびマウスモデルにおいて複数の腫瘍を特異的に標的化したことを示す。
抗体標的化小胞は、内皮細胞障害を越えて組織実質に輸送され得る(McIntosh, D. P., Tan, X.-Y., Oh, P.およびSchnitzer, J. E. (2002) Targeting endothelium and its dynamic caveolae for tissue-specific transcytosis in vivo: A pathway to overcome cell barriers to drug and gene delivery. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 1996-2001)。特異的腫瘍内皮細胞表面結合の後、AnnA1抗体の腫瘍への可能な貫通を評価するために、AnnA1 mAbを肺において増殖する転移性胸部腫瘍を保持するラットの尾静脈に注射した。4時間後、肺腫瘍を保持する肺を洗浄し、摘出し、切片にし、HRP結合体化二次抗体を使用してAnnA1 mAbの存在について染色した。AnnA1 mAb結合を腫瘍肺内皮上で検出したが正常な肺内皮では検出せず、腫瘍の微小新生脈管構造における内皮細胞表面でのAnnA1 mAbの特異的な結合をさらに確認した。さらに、血管から組織への発散する「ハロ」の茶色のシグナルが連続して観察され、そのことが微小新生脈管構造に近接する腫瘍組織へのAnnA1 mAbの浸透を示す。この腫瘍間隙への抗体浸透は、注射後1時間では容易に検出されない。したがって、AnnA1を認識するmAbが、ラットおよびマウスモデルにおける複数の腫瘍型において血管を特異的に標的化し、かつ横切り、4時間以内に腫瘍間隙に到達する。
125I−AnnA1抗体生体分布および画像化実験を実施する一方で、125I−AnnA1抗体をIV注射された腫瘍保持ラットが非注射動物および、また非標的化対照抗体(125I−IgG)を注射された動物より長く生存したことが注目された。注射3日後の125I−AnnA1抗体処置動物由来の腫瘍保持肺の切片対、対照動物由来の腫瘍保持肺の切片の組織学的組織試験は、処置された動物においてかなりより広範な腫瘍壊死が明らかになった。近接する正常肺組織および体の他の主要な器官は、損傷を受けていないように見えた。125I−AnnA1抗体処置動物における腫瘍は有意により小さかった(直径で約50%小さかった)。
生存研究を実施した。図1は、Kaplan−Meier生存曲線上にプロットされた生存を示す。雌Fisherラットに腫瘍を誘導するために13762細胞をIV注射した(第0日)。腫瘍細胞接種15日後に125I−AnnA1抗体を注射した腫瘍保持ラットの生存(50g、10Ci/g;赤線;n=10)対非標的化125I−IgGを注射した対照の生存(青線;n=10)対未処置動物の生存(緑線;n=3)を比較したKaplan−Meier生存曲線。図1は、Kaplan−Meier生存曲線上にプロットされた60日間の生存を示す。腫瘍保持ラットの有意に増加した生存が観察され、注射7日後の対照のラットの100%致死率に比べて80%の動物が注射の後8日以上生存した。125I−AnnA1抗体を注射されたラットを画像化し、ラット肺腫瘍の予想される分布および腫瘍における125I−AnnA1抗体蓄積の両方を示した。さらに、全てのラットの体重は、第8日に正常な体重から離れ始め、腫瘍細胞のIV接種の後10日で実際に減少し始めた。未処置ラットおよび125I標識非標的化対照抗体を注射されたラットの両方は、正常より25〜30%低い体重で死ぬまで体重を減少し続けた。対照的に、125I−AnnA1抗体で処置されたラットは、処置後3日以内に体重減少を停止し、次いで、体重が増え、処置後20日で正常な体重に到達した。この生存の大幅な増加は、動物の処置のときの死ぬ前わずか2日以内であり、その結果、内皮細胞および腫瘍細胞に対して任意の広く行きわたった放射線障害から利益を受けるのに十分な時間を欠如し得るので、驚くべきことであった。そのときまでに全ての対照動物が死んだ注射後最初の一週間ラットが生存し得た場合、生存率は90%に達した。2週間後に死んだ1匹のラットは、注射部位で発達した足腫瘍および大きな尾腫瘍のために安楽死させられなければならなかった。従って、125I−AnnA1抗体の単回注射は、実際安全であると思われるのと同時に、進行した疾患においてさえ有意な寛解を引き起こした。
組み換えAnnA1(rAnnA1)および本出願人らの新規のAnnA1 mAbを作製する一方で、38kDaの分子量がSDS-PAGEによってrAnnA1について観察され、一次配列データからの37kDaの分子量と一致し、文献(Chapman, L., Nishimura, A., Buckingham, J. C, Morris, J. F.およびChristian, H. C. (2002) Externalization of annexin I from a folliculo-stellate-like cell line. Endocrinology 143, 4330-8)に報告される通りであった。腫瘍保持肺の部分画分が分析された場合、AnnA1 mAbは、rAnnA1を使用して観測された大きさと一致する正常Hにおいて38kDaのバンドを検出した。しかし、腫瘍肺PのWestern分析は、組織において、38kDaの期待される大きさで移動するのではなく、AnnA1バンドが約34kDaで移動するように見えたことを示した。34kDaのバンドは本当にAnnA1であり、なぜなら:I)MS分析は、34kDaおよび38kDaで切り取られたSDS−PAGEゲル切片中にAnnA1を同定した;ii)AnnA1 mAbを使用する腫瘍肺ホモジネートの免疫沈降はまた、MS分析によってAnnA1と同定された34kDaおよび38kDaのバンドを生じたからである。AnnA1の切断された32〜34kDa形態が報告されている(Taylor, A. D., Cowell, A. M., Flower, J.およびBuckingham, J. C. (1993) Lipocortin 1 mediates an early inhibitory action of glucocorticoids on the secretion of ACTH by the rat anterior pituitary gland in vitro. Neuroendocrinology 58, 430-9; Philip, J. G., Flower, R. J.およびBuckingham, J. C. (1997) Glucocorticoids modulate the cellular disposition of lipocortin 1 in the rat brain in vivo and in vitro. Neuroreport 8, 1871-6; Croxtall, J. D.およびFlower, R. J. (1992) Lipocortin 1 mediates dexamethasone-induced growth arrest of the A549 lung adenocarcinoma cell line. Proc Natl Acad Sci U S A 89, 3571-5; Taylor, A. D., Christian, H. C, Morris, J. F., Flower, R. J.およびBuckingham, J. C. (1997) An antisense oligodeoxynucleotide to lipocortin 1 reverses the inhibitory actions of dexamethasone on the release of adrenocorticotropin from rat pituitary tissue in vitro. Endocrinology 138, 2909-18)。本明細書中のデータは、それが肺腫瘍内皮細胞の小胞において特異的に存在するこのより小さな形態であることを示す。面白いことに、C19抗体は、AnnA1の34kDa形態を好むように見える。
AnnA1の34kDa形態が本当に内皮細胞の表面上で血流に露出されるタンパク質の形態であるかどうかを決定するために、ビオチン化されたAnnA1 mAbが肺腫瘍を保持するラットにIV注射され、肺動脈へのDTSSPの灌流を介する化学的架橋の前2時間循環させた。腫瘍Pの単離の後、細胞表面AnnA1を、ストレプトアビジン磁気ビーズを使用して沈殿させた。AnnA1 mAb免疫沈澱を非還元条件下で分離した後、約180kDaのバンドを抗IgGおよびAnnA1抗体の両方によって認識する。還元条件下で、抗IgG抗体は、それぞれ免疫グロブリン軽鎖および重鎖に対応する25kDaおよび50kDaの2つのバンドを検出し、その一方で、AnnA1抗体は、主に34kDaで単一のバンドを認識する。免疫沈降されたAnnA1抗体反応性バンドの供給源を確認するために、SDS-PAGEゲルをクマシー染色し、試料中に存在する全てのタンパク質を可視化した。このバンド由来のトリプシンペプチドのMS分析は、AnnA1としてその同一性を確認する(データは示さず)。従って、AnnA1の34kDa形態は、本当に小胞の内皮細胞表面上に外面化されるAnnA1の優先的形態である。
接近可能な脈管腫瘍標的として主に34kDa切断形態のAnnA1の発見は、組織細胞下分画、ゲル電気泳動、質量スペクトル分析、組織免疫染色およびSPECT画像化を含むプロテオーム的ツールおよび分子画像化ツールの組み合わせを使用して達成された。
本発明は、その好ましい態様に関して特に示し記載してきており、その一方で、形態および詳細の種々の変化が添付の特許請求の範囲によって含まれる本発明の範囲から逸脱することなくその中になされ得ることが当業者に理解される。