JP2008501248A - 音響ミラー型薄膜弾性波共振器、ならびにそれを備えるフィルタ、共用器、および通信機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】共振特性に優れた音響ミラー型薄膜弾性波共振器を提供すること。
【解決手段】本発明の薄膜弾性波共振器507bは、基板101bと、基板101b上に配置されており、高音響インピーダンスと低音響インピーダンスとを交互に有する複数のインピーダンス層502b、503bから構成される音響ミラー層508bと、音響ミラー層508b上に配置されており、下部電極504b、圧電薄膜105b、および上部電極506bから構成される圧電薄膜振動子509bとを備える。下部電極504bの膜厚と上部電極506bの膜厚とを足し合わせた膜厚が、圧電薄膜振動子509b全体の膜厚に対して、5%以上60%以下であり、かつ、下部電極504bの膜厚が上部電極506bの膜厚よりも大きい。
【選択図】図12
【解決手段】本発明の薄膜弾性波共振器507bは、基板101bと、基板101b上に配置されており、高音響インピーダンスと低音響インピーダンスとを交互に有する複数のインピーダンス層502b、503bから構成される音響ミラー層508bと、音響ミラー層508b上に配置されており、下部電極504b、圧電薄膜105b、および上部電極506bから構成される圧電薄膜振動子509bとを備える。下部電極504bの膜厚と上部電極506bの膜厚とを足し合わせた膜厚が、圧電薄膜振動子509b全体の膜厚に対して、5%以上60%以下であり、かつ、下部電極504bの膜厚が上部電極506bの膜厚よりも大きい。
【選択図】図12
Description
本発明は、無線機器などの高周波回路に使用される共振器に関し、より特定的には、音響ミラー構造を有する薄膜弾性波共振器、ならびにそれを備えるフィルタ、共用器、および通信機器に関する。
近年、無線通信機器の小型化、低コスト化が進むにつれて、搭載されるフィルタの小型化、集積化が求められている。これらを実現するために開発されてきたのが、誘電体フィルタ、積層フィルタ、弾性波フィルタなどである。弾性波フィルタの一つに、圧電体薄膜を利用した薄膜弾性波共振器がある。
薄膜弾性波共振器は、圧電薄膜を2つの電極によって挟み込んだ構成をしている。薄膜弾性波共振器の両電極間に電圧を印加すると、それに応じて誘起される圧電効果によって機械的な圧電振動(弾性振動)が発生する。
薄膜弾性波共振器の一つに、音響ミラー効果を利用したミラー構造を有する音響ミラー型の薄膜弾性波共振器がある。図28は、従来の音響ミラー型の薄膜弾性波共振器の断面図である。図28において、音響ミラー型薄膜弾性波共振器907aは、基板901aと、音響ミラー層902a,903aと、下部電極904aと、圧電薄膜905aと、上部電極906aとを備える。
音響ミラー層902a,903aは、基板901a上に形成されている。音響ミラー層902a,903aは、複数の異なった音響インピーダンスの材料を組み合わせることにより構成される。下部電極904aと上部電極906aとに挟まれた圧電薄膜905aからなる圧電薄膜振動子909aは、音響ミラー層902a、903aの上に配置される。
一般的に、音響ミラー層は高い音響インピーダンスをもつ材料(ここでは音響ミラー層902a)と低い音響インピーダンスをもつ材料(ここでは音響インピーダンス903a)とを交互に配置することで、各層の境界面にインピーダンス不整合面を形成する。また、各音響ミラー層の膜厚は、圧電薄膜振動子909aの自由空間上での共振周波数から算出される音響波長の4分の1の大きさと等しい。この音響波長の4分の1の大きさは、各音響ミラー層902a,903aに使用する材料中の音速vと圧電薄膜振動子909aの共振周波数frまたは反共振周波数faとによって、次式の関係式から求められる。
λ(波長)/4=v/(4・fr),またはv/(4・fa)
これにより、圧電薄膜振動子909aで誘起された振動波(音波)は、各音響ミラー層を伝搬し、各層の境界面(インピーダンス不整合面)において反射される。反射された振動波は、共振周波数(反共振周波数)において同相に合成され、共振特性を向上させる。また、インピーダンス不整合率を大きく、すなわち高インピーダンス層と低インピーダンス層とのインピーダンス比を大きくすることによって、共振特性のもつ共振帯域幅を大きくすることができる。また、音響ミラー層の層数を増加させることで、圧電薄膜振動子からみた基板の音響インピーダンスを小さくすることができ、共振特性を向上させることができる。このことは、以前からよく知られていることである。ただし、従来、下部電極904aの厚み(C)に関しては、厳密な規定がされていなかった。
これにより、圧電薄膜振動子909aで誘起された振動波(音波)は、各音響ミラー層を伝搬し、各層の境界面(インピーダンス不整合面)において反射される。反射された振動波は、共振周波数(反共振周波数)において同相に合成され、共振特性を向上させる。また、インピーダンス不整合率を大きく、すなわち高インピーダンス層と低インピーダンス層とのインピーダンス比を大きくすることによって、共振特性のもつ共振帯域幅を大きくすることができる。また、音響ミラー層の層数を増加させることで、圧電薄膜振動子からみた基板の音響インピーダンスを小さくすることができ、共振特性を向上させることができる。このことは、以前からよく知られていることである。ただし、従来、下部電極904aの厚み(C)に関しては、厳密な規定がされていなかった。
従来技術として、以下のような文献に開示された技術がある。
特開平9−199978号公報
特開平6−295181号公報
特開2002−41052号公報
図29は、図28に示した音響ミラー型薄膜弾性波共振器907aにおける振動分布を示す図である。圧電薄膜905aに対して、上部電極906aおよび下部電極904aの膜厚が圧電薄膜905aの厚さに比べて非常に小さい場合、図29に示すように、圧電薄膜振動子909aでは、音響波長がλ/2となる。この場合、各ミラー層の膜厚を圧電薄膜振動子の共振周波数(または反共振周波数)における音響波長の4分の1にすることで、反射された振動波が同相で合成されて、共振特性を向上させることができた。
しかし、実際のデバイスでは、圧電薄膜の膜厚に対して、電極の膜厚は無視できない程度であることが多い。したがって、圧電薄膜振動子における振動分布は、λ/2とは異なるようになる。したがって、単純に各ミラー層の膜厚を共振周波数(または反共振周波数)における音響波長の4分の1となるように構成したのでは、厳密にはλ/4における反射とならない。結果、反射の周波数がずれることによって共振特性、とりわけ共振の帯域幅であるΔfが劣化してしまう。
それゆえ、本発明の目的は、共振特性に優れた音響ミラー型薄膜弾性波共振器を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の特徴を有する。本発明は、音響ミラー型の薄膜弾性波共振器であって、基板と、基板上に配置されており、高音響インピーダンスと低音響インピーダンスとを交互に有する複数のインピーダンス層から構成される音響ミラー層と、音響ミラー層上に配置されており、下部電極、圧電薄膜、および上部電極から構成される圧電薄膜振動子とを備え、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを足し合わせた膜厚が、圧電薄膜振動子全体の膜厚に対して、5%以上60%以下であり、かつ、下部電極の膜厚が上部電極の膜厚よりも大きい。
本発明によれば、下部電極の膜厚を上部電極の膜厚よりも大きくすることによって、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを同じにした場合に比べ、共振帯域幅を広げることができる。共振帯域幅を広げることによって、膜厚のばらつきによる共振特性の劣化を防止することができる。
好ましくは、複数のインピーダンス層は、交互に配置された複数の低音響インピーダンス層と複数の高音響インピーダンス層と含み、下部電極と当接する最上位の低音響インピーダンス層は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の膜厚を有するとよい。これにより、さらに共振帯域幅を広げることができる。
好ましくは、複数の低音響インピーダンス層は、それぞれ、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の膜厚を有するとよい。これにより、さらに振帯域幅をさらに広げることができる。
好ましくは、複数のインピーダンス層は、交互に配置された複数の低音響インピーダンス層と複数の高音響インピーダンス層と含み、下部電極と当接する最上位の低音響インピーダンス層は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1未満の膜厚を有するとよい。これにより、さらに共振帯域幅を広げることができる。
好ましくは、複数の低音響インピーダンス層は、それぞれ、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1未満の膜厚を有するとよい。これにより、さらに共振帯域幅を広げることができる。
好ましくは、複数のインピーダンス層は、交互に配置された複数の低音響インピーダンス層と複数の高音響インピーダンス層と含み、下部電極と当接する最上位の低音響インピーダンス層は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1よりも大きい膜厚を有するとよい。これにより、さらに共振帯域幅を広げることができる。
好ましくは、複数の低音響インピーダンス層は、それぞれ、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1よりも大きい膜厚を有するとよい。これにより、さらに共振帯域幅を広げることができる。
好ましくは、複数のインピーダンス層は、交互に配置された複数の低音響インピーダンス層と複数の高音響インピーダンス層と含み、複数の低音響インピーダンス層の内、少なくとも最上位の低音響インピーダンス層は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1と異なる膜厚を有しており、最上位の高音響インピーダンス層は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1と異なる膜厚を有するとよい。これにより、さらに共振帯域幅を広げることができる。
好ましくは、複数の高音響インピーダンス層は、それぞれ、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1と異なる膜厚を有するとよい。これにより、さらに共振帯域幅を広げることができる。
本発明は、ラダー型に接続された2つ以上の薄膜弾性波共振器を備えるフィルタであって、少なくとも一つの薄膜弾性波共振器は、基板と、基板上に配置されており、高音響インピーダンスと低音響インピーダンスとを交互に有する複数のインピーダンス層から構成される音響ミラー層と、音響ミラー層上に配置されており、下部電極、圧電薄膜、および上部電極から構成される圧電薄膜振動子とを含み、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを足し合わせた膜厚が、圧電薄膜振動子全体の膜厚に対して、5%以上60%以下であり、かつ、下部電極の膜厚が上部電極の膜厚よりも大きい。
本発明は、送信フィルタと、受信フィルタとを備える共用器であって、送信フィルタおよび受信フィルタの内、少なくとも一つのフィルタは、ラダー型に接続された2つ以上の薄膜弾性波共振器を含むフィルタを備え、少なくとも一つの薄膜弾性波共振器は、基板と、基板上に配置されており、高音響インピーダンスと低音響インピーダンスとを交互に有する複数のインピーダンス層から構成される音響ミラー層と、音響ミラー層上に配置されており、下部電極、圧電薄膜、および上部電極から構成される圧電薄膜振動子とを有し、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを足し合わせた膜厚が、圧電薄膜振動子全体の膜厚に対して、5%以上60%以下であり、かつ、下部電極の膜厚が上部電極の膜厚よりも大きい。
本発明は、少なくとも一つの薄膜弾性波共振器を備える通信機器であって、少なくとも一つの薄膜弾性波共振器は、基板と、基板上に配置されており、高音響インピーダンスと低音響インピーダンスとを交互に有する複数のインピーダンス層から構成される音響ミラー層と、音響ミラー層上に配置されており、下部電極、圧電薄膜、および上部電極から構成される圧電薄膜振動子とを有し、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを足し合わせた膜厚が、圧電薄膜振動子全体の膜厚に対して、5%以上60%以下であり、かつ、下部電極の膜厚が上部電極の膜厚よりも大きい。
本発明によれば、下部電極の膜厚を上部電極の膜厚よりも大きくすることによって、共振帯域幅を広げることができる音響ミラー型薄膜圧電共振器、ならびにそれを備えるフィルタ、共用器、通信機器を提供することができる。また、共振帯域幅が広がることによって、低音響インピーダンス層の膜厚ばらつきによる共振特性の劣化を防止する音響ミラー型薄膜圧電共振器、ならびにそれを備えるフィルタ、共用器、通信機器を提供することができる。
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器の断面図である。図1において、音響ミラー型薄膜弾性波共振器107bは、基板101bと、高音響インピーダンス層102bと、低音響インピーダンス層103bと、下部電極104bと、圧電薄膜105bと、上部電極106bとを備える。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器の断面図である。図1において、音響ミラー型薄膜弾性波共振器107bは、基板101bと、高音響インピーダンス層102bと、低音響インピーダンス層103bと、下部電極104bと、圧電薄膜105bと、上部電極106bとを備える。
図1において、高音響インピーダンス層102bは、二層であるとしたが、一層であってもよいし、三層以上であってもよい。また、低音響インピーダンス層103bは、二層であるとしたが、一層であってもよいし、三層以上であってもよい。ただし、低音響インピーダンス層103bの最上位層は、下部電極104bに直下に形成されている。低音響インピーダンス層103bと高音響インピーダンス層102bとは、交互に形成されている。
基板101b上には、高音響インピーダンス層102bと低音響インピーダンス層103bとから構成される音響ミラー層108bが形成されている。音響ミラー層108b上には、下部電極104b、圧電薄膜105b、および上部電極106bから構成される圧電薄膜振動子109bが形成されている。
高音響インピーダンス層102bは、高い音響インピーダンスを持つ材料、例えば、タングステン:W、モリブデン:Mo等からなる。高音響インピーダンス層102bの膜厚(B)は、自由空間上での圧電薄膜振動子109bの共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさと等しい。
低音響インピーダンス層103bは、低い音響インピーダンスを持つ材料、例えば、二酸化シリコン:SiO2等からなる。低音響インピーダンス層103bの膜厚(A1)は、共振特性の帯域幅を最大限とする膜厚値と等しくされる。本発明者は、共振特性の帯域幅を最大限とする低音響インピーダンス層103bの膜厚(A1)は、自由空間上での圧電薄膜振動子109bの共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値であることを確かめた。
下部電極104bは、例えば、モリブデン:Mo、アルミニウム:Al、白金:Pt、金:Au等からなる。
圧電薄膜105bは、例えば、窒化アルミニウム:AlN、酸化亜鉛:ZnO等からなる。
上部電極106bは、例えば、モリブデン:Mo、アルミニウム:Al、白金:Pt、金:Au等からなる。
音響ミラー型薄膜弾性波共振器107bの製造工程において、基板101b、低音響インピーダンス層103b、および高音響インピーダンス層102bの表面のラフネスの影響を受けて、1チップ内での各音響ミラー層の膜厚には、ばらつきが生じる。
また、一方で、ウエハ上の位置により成膜条件がばらつくこととなるので、発生するチップ間のばらつきの影響を受け、複数のチップ間における各音響ミラー層の膜厚には、ばらつきが生じる。
ばらつきの大きさは、例えば、膜厚の大きさに対して最大1%程度である。
したがって、低音響インピーダンス層103bの膜厚(A1)は、ばらつきを考慮すると、自由空間での圧電薄膜振動子109bの共振周波数の4分の1より−1%以上小さいのが好ましい。
図2は、低音響インピーダンス層103bの膜厚以外の値を固定し、低音響インピーダンス層103bの膜厚を変化させたときの、共振帯域の変化を示すグラフである。ここでは、厚さ0.2μmのモリブデンMoからなる下部電極104b、厚さ2.0μmの窒化アルミニウムからなる圧電薄膜105b、および厚さ0.2μmのモリブデンMoからなる上部電極106bを用いることとする。
図2において、横軸は、圧電薄膜振動子109bの自由空間上での共振周波数によって算出された音響波長λの4分の1の大きさ(以下、「理想的なλ/4長」という)で低音響インピーダンス層103bの膜厚を規格化した値を示す。縦軸は、低音響インピーダンス層103bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの帯域幅(Δf)で共振帯域幅の変化を規格化した値を示す。ここで、横軸および縦軸の値(=1)は、低音響インピーダンス層103bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの値である。
図2より、共振帯域幅が最大となる低音響インピーダンス層103bの膜厚は、理想的なλ/4長の膜厚点Xよりも小さい点Yに存在していることがわかる。したがって、低音響インピーダンス層103bの膜厚は、圧電薄膜振動子109bの自由空間上での共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値であることが好ましいことが分かる。
また、例えば±1%の膜厚ばらつきがあるとした場合に、点Xにおける共振帯域幅の変化の度合いと、点Yにおける共振帯域幅の変化の度合いとを比較すると、変化の度合いは、点Yの方が明らかに小さいことが分かる。したがって、点Yを低音響インピーダンス層103bの膜厚(A’)として決定した方が、膜厚ばらつきに対する共振帯域の変化を少なくすることができる。これによって、膜厚ばらつきの影響を最小限にとどめることができる。
さらに、図2から分かるように、低音響インピーダンス層103bの膜厚が、理想的なλ/4長の0.8倍、すなわち、理想的なλ/4長の−20.0%よりも大きい場合、膜厚ばらつきに対する共振帯域の変化を少なくすることができることがわかる。したがって、膜厚ばらつきも考慮に入れると、低音響インピーダンス層103bの膜厚は、理想的なλ/4長の−1.0%〜−20.0%の範囲であることが好ましいと言える。
理想的なλ/4長の−1.0%〜−20.0%の範囲の内、最も好ましい低音響インピーダンス層103bの膜厚は、圧電薄膜振動子109bの条件によって異なる。
図3は、低音響インピーダンス層103bの最も好ましい膜厚が、圧電薄膜振動子109b条件によってどのように変わるかを説明するための図である。
図3では、圧電薄膜105bを窒化アルミ(AlN)からなるとし、下部電極104bおよび上部電極106bをモリブデン(Mo)からなるとして、圧電薄膜105bの厚みを2.0μmに固定し、下部電極104bおよび上部電極106bの厚みを0.01μm、0,2μmまたは0.5μmと条件設定したときに、低音響インピーダンス層103bの膜厚を変化させた場合の共振帯域Δfを比較している。
通常、スパッタ等の工法によって、電極材料を堆積する場合、最も薄い電極の厚みは、0.01μm程度と考えられる。この値において、低音響インピーダンス層103bの膜厚を変化させたような場合においても、図3に示すように、低音響インピーダンス層103bの膜厚が、理想的なλ/4長に対して、約−1%程度である場合でも、共振帯域Δfが理想的なλ/4長の場合よりも広くなっている。
したがって、図3から分かるように、低音響インピーダンス層103bの最も好ましい膜厚は、圧電薄膜振動子をどのような条件に設定した場合であっても、理想的なλ/4長の−1.0%〜−20.0%の範囲に含まれていることが分かる。
次に、低音響インピーダンス層103bの膜厚が、理想的なλ/4長よりも小さい値であることが好ましいことの原理について説明する。
音響ミラーを利用した薄膜弾性波共振器において、圧電薄膜105bは、一般的に、波長λ/2に対応する周波数で共振する。しかし、下部電極104bおよび上部電極106bの厚みは、圧電薄膜105bの厚みに対して無視できない程度に厚い。この上下電極の厚みは、振動分布に影響を及ぼす。
また、音響ミラー層108bの上部に、圧電薄膜振動子109bが堆積されるため、低音響インピーダンス層103bおよび高音響インピーダンス層102bには、質量負荷が掛かることとなる。この質量負担は、音響ミラー層内での、振動分布に影響を及ぼす。
以上の2点から、各音響ミラー層内での振動分布は、実質上、理想的なλ/4振動分布とは異なることとなる。よって、低音響インピーダンス層103bの最適な膜厚の大きさは、理想的なλ/4長よりも小さい値であることが分かる。
このように、第1の実施形態によれば、音響ミラー型薄膜弾性波共振器の音響ミラー層の内、低音響インピーダンス層の膜厚を、圧電薄膜振動子の自由空間での共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さくすることによって、共振帯域幅を広げることができる。共振帯域幅を広げることによって、低音響インピーダンス層の膜厚ばらつきによる共振特性の劣化を防止することができる。
なお、第1の実施形態では、各低音響インピーダンス層の膜厚が理想的なλ/4長よりも小さいとしたが、少なくとも一層の低音響インピーダンス層の膜厚が理想的なλ/4長よりも小さければ、同様の効果が得られる。
なお、第1の実施形態では、下部電極の直下が低音響インピーダンス層であるとして、そこから交互に高音響インピーダンス層および低音響インピーダンス層が形成されることとしたが、下部電極の直下が高音響インピーダンス層であるとして、そこから交互に交互に低音響インピーダンス層および高音響インピーダンス層が形成されることしてもよい。
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器の断面図である。図4において、音響ミラー型薄膜弾性波共振器207bは、基板101bと、高音響インピーダンス層202bと、低音響インピーダンス層203bと、下部電極104bと、圧電薄膜105bと、上部電極106bとを備える。図4において、第1の実施形態と同様の部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器の断面図である。図4において、音響ミラー型薄膜弾性波共振器207bは、基板101bと、高音響インピーダンス層202bと、低音響インピーダンス層203bと、下部電極104bと、圧電薄膜105bと、上部電極106bとを備える。図4において、第1の実施形態と同様の部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
図4において、高音響インピーダンス層202bは、二層であるとしたが、一層であってもよいし、三層以上であってもよい。また、低音響インピーダンス層203bは、二層であるとしたが、一層であってもよいし、三層以上であってもよい。ただし、低音響インピーダンス層203bの最上位層は、下部電極104bに直下に形成されている。低音響インピーダンス層203bと高音響インピーダンス層202bとは、交互に形成されており、同数である。
基板101b上には、高音響インピーダンス層202bと低音響インピーダンス層203bとから構成される音響ミラー層208bが形成されている。音響ミラー層208b上には、下部電極104b、圧電薄膜105b、および上部電極106bから構成される圧電薄膜振動子109bが形成されている。
高音響インピーダンス層202bは、高い音響インピーダンスを持つ材料、例えば、タングステン:W、モリブデン:Mo等からなる。高音響インピーダンス層202bの膜厚(B1)は、共振特性の帯域幅を最大限とする膜厚値と等しくされる。本発明者は、共振特性の帯域幅を最大限とする高音響インピーダンス層202bの膜厚(B1)は、自由空間上での圧電薄膜振動子109bの共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値であることを確かめた。
低音響インピーダンス層203bは、低い音響インピーダンスを持つ材料、例えば、二酸化シリコン:SiO2等からなる。低音響インピーダンス層203bの膜厚(A)は、自由空間上での圧電薄膜振動子109bの共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさと等しくされる。
音響ミラー型薄膜弾性波共振器207bの製造工程において、基板101b、低音響インピーダンス層203b、および高音響インピーダンス層202bの表面のラフネスの影響を受けて、1チップ内での各音響ミラー層の膜厚には、ばらつきが生じる。
また、一方で、ウエハ上の位置により成膜条件がばらつくこととなるので、発生するチップ間のばらつきの影響を受け、複数のチップ間における各音響ミラー層の膜厚には、ばらつきが生じる。
ばらつきの大きさは、例えば、膜厚の大きさに対して最大1%程度である。
したがって、高音響インピーダンス層202bの膜厚(B1)は、ばらつきを考慮すると、自由空間での圧電薄膜振動子109bの共振周波数の4分の1より−1%以上小さいのが好ましい。
図5は、高音響インピーダンス層202bの膜厚以外の値を固定し、高音響インピーダンス層202bの膜厚の値を変化させたときの、共振帯域の変化を示すグラフである。ここでは、厚さ0.2μmのモリブデンMoからなる下部電極104b、厚さ2.0μmの窒化アルミニウムからなる圧電薄膜105b、および厚さ0.2μmのモリブデンMoからなる上部電極106bを用いることとする。
図5において、横軸は、理想的なλ/4長で高音響インピーダンス層202bの膜厚を規格化した値を示す。縦軸は、高音響インピーダンス層202bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの帯域幅(Δf)で共振帯域幅の変化を規格化した値を示す。ここで、横軸および縦軸の値(=1)は、高音響インピーダンス層202bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの値である。
図5より、共振帯域幅が最大となる高音響インピーダンス層202bの膜厚は、理想的なλ/4長の膜厚点Xよりも小さい点Yに存在していることがわかる。したがって、高音響インピーダンス層202bの膜厚は、圧電薄膜振動子109bの自由空間上での共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値であることが好ましいことが分かる。
また、例えば±1%の膜厚ばらつきがあるとした場合に、点Xにおける共振帯域幅の変化の度合いと、点Yにおける共振帯域幅の変化の度合いとを比較すると、変化の度合いは、点Yの方が明らかに小さいことが分かる。したがって、点Yを高音響インピーダンス層202bの膜厚(B1)として決定した方が、膜厚ばらつきに対する共振帯域の変化を小さくすることができる。これによって、膜厚ばらつきの影響を最小限にとどめることができる。
さらに、図5から分かるように、高音響インピーダンス層202bの膜厚が、理想的なλ/4長の0.8倍、すなわち、理想的なλ/4長の−20.0%よりも大きい場合、膜厚ばらつきに対する共振帯域の変化を少なくすることができることがわかる。したがって、膜厚ばらつきも考慮に入れると、高音響インピーダンス層202bの膜厚は、理想的なλ/4長の−1.0%〜−20.0%の範囲であることが好ましいと言える。
高音響インピーダンス層202bの膜厚が、圧電薄膜振動子109bの自由空間での共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値であることが好ましいことの原理については、第1の実施形態と同様である。
このように、第2の実施形態によれば、音響ミラー型薄膜弾性波共振器の音響ミラー層の内、高音響インピーダンス層の膜厚を、圧電薄膜振動子の自由空間での共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さくすることによって、共振帯域幅を広げることができる。共振帯域幅を広げることによって、高音響インピーダンス層の膜厚ばらつきによる共振特性の劣化を防止することができる
なお、第2の実施形態では、各高音響インピーダンス層の膜厚が理想的なλ/4長よりも小さいとしたが、少なくとも一層の高音響インピーダンス層の膜厚が理想的なλ/4長よりも小さければ、同様の効果が得られる。
なお、第2の実施形態では、下部電極の直下が低音響インピーダンス層であるとして、そこから交互に高音響インピーダンス層および低音響インピーダンス層が形成されることとしたが、下部電極の直下が高音響インピーダンス層であるとして、そこから交互に交互に低音響インピーダンス層および高音響インピーダンス層が形成されることしてもよい。
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器の断面図である。図6において、音響ミラー型薄膜弾性波共振器307bは、基板101bと、高音響インピーダンス層302bと、低音響インピーダンス層303bと、下部電極104bと、圧電薄膜105bと、上部電極106bとを備える。図6において、第1の実施形態と同様の部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器の断面図である。図6において、音響ミラー型薄膜弾性波共振器307bは、基板101bと、高音響インピーダンス層302bと、低音響インピーダンス層303bと、下部電極104bと、圧電薄膜105bと、上部電極106bとを備える。図6において、第1の実施形態と同様の部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
図6において、高音響インピーダンス層302bは、二層であるとしたが、一層であってもよいし、三層以上であってもよい。また、低音響インピーダンス層303bは、二層であるとしたが、一層であってもよいし、三層以上であってもよい。ただし、低音響インピーダンス層303bの最上位層は、下部電極104bに直下に形成されている。低音響インピーダンス層303bと高音響インピーダンス層302bとは、交互に形成されており、同数である。
基板101b上には、高音響インピーダンス層302bと低音響インピーダンス層303bとから構成される音響ミラー層308bが形成されている。音響ミラー層308b上には、下部電極104b、圧電薄膜105b、および上部電極106bから構成される圧電薄膜振動子109bが形成されている。
高音響インピーダンス層302bは、高い音響インピーダンスを持つ材料、例えば、タングステン:W、モリブデン:Mo等からなる。高音響インピーダンス層302bの膜厚(B2)は、自由空間上での圧電薄膜振動子109bの共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値である。
低音響インピーダンス層303bは、低い音響インピーダンスを持つ材料、例えば、二酸化シリコン:SiO2等からなる。低音響インピーダンス層303bの膜厚(A2)は、自由空間上での圧電薄膜振動子109bの共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値である。
音響ミラー型薄膜弾性波共振器307bの製造工程において、基板101b、低音響インピーダンス層303b、および高音響インピーダンス層302bの表面のラフネスの影響を受けて、1チップ内での各音響ミラー層の膜厚には、ばらつきが生じる。
また、一方で、ウエハ上の位置により成膜条件がばらつくこととなるので、発生するチップ間のばらつきの影響を受け、複数のチップ間における各音響ミラー層の膜厚には、ばらつきが生じる。
ばらつきの大きさは、例えば、膜厚の大きさに対して最大1%程度である。
したがって、低音響インピーダンス層303bの膜厚(A2)および高音響インピーダンス層302bの膜厚(B2)は、ばらつきを考慮すると、自由空間での圧電薄膜振動子109bの共振周波数の4分の1より−1%以上小さいのが好ましい。
図7は、高音響インピーダンス層302bの膜厚と低音響インピーダンス層303bの膜厚を同時に同じ割合で変化させたときの、共振帯域の変化を示すグラフである。ここでは、厚さ0.2μmのモリブデンMoからなる下部電極104b、厚さ2.0μmの窒化アルミニウムからなる圧電薄膜105b、および厚さ0.2μmのモリブデンMoからなる上部電極106bを用いることとする。
図7において、横軸は、理想的なλ/4長で高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚を規格化した値である。縦軸は、高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの帯域幅(Δf)で共振帯域幅の変化を規格化した値を示す。ここで、横軸および縦軸の値(=1)は高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの値である。
図7より、共振帯域幅が最大となる高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚は、理想的なλ/4長の膜厚点Xよりも小さい点Yに存在していることがわかる。したがって、高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚は、圧電薄膜振動子109bの自由空間上での共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値であることが好ましいことが分かる。
また、例えば±1%の膜厚ばらつきがあるとした場合に、点Xにおける共振帯域幅の変化の度合いと、点Yにおける共振帯域幅の変化の度合いとを比較すると、変化の度合いは、点Yの方が明らかに小さいことが分かる。したがって、点Yを高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚(A2,B2)と決定した方が、膜厚ばらつきに対する共振帯域の変化を小さくすることができる。これによって、膜厚ばらつきの影響を最小限にとどめることができる。
さらに、図7から分かるように、高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚の最適値は、理想的なλ/4長の−1.0%〜−20.0%の範囲内に存在すると言える。
高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚が、圧電薄膜振動子109bの自由空間での共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値であることが好ましいことの原理については、第1の実施形態と同様である。
さらに、本発明者は、上下電極の膜厚が厚くなるほど、本発明の効果が得られることを確かめた。図8は、上下電極の膜厚が厚くなるほど、本発明の効果が得られること説明するためのグラフである。
図8では、高音響インピーダンス層302bの膜厚および低音響インピーダンス層303bの膜厚を同時に同じ割合で変化させた場合において、モリブデン(Mo)からなる下部電極104bおよびモリブデン(Mo)からなる上部電極106bの厚みを、共振周波数から算出される音響波長の1.25×10‐4倍、0.25倍、0.63倍と同時に変化させた場合の共振帯域Δfを比較している。
図8において、横軸は、理想的なλ/4長で高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚を規格化した値である。縦軸は、高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの帯域幅(Δf)で共振帯域幅の変化を規格化した値である。横軸および縦軸において、値(=1)は、高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの値である。
図8に示すように、下部電極104bおよび上部電極106bの膜厚を厚くすると、高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bにおいて、共振帯域幅が最も広くなるときの膜厚は、理想的なλ/4長のときよりも小さくなることが確認された。さらに、共振帯域幅が最も広くなるときの膜厚は、下部電極104bおよび上部電極106bの膜厚が厚くなるほど、理想的なλ/4長に対して小さくなることが確認された。共振帯域幅が最も広くなるときの膜厚は、理想的なλ/4長に対して−20.0〜−1.0%の範囲に存在することが分かった。
さらに、本発明者は、低音響インピーダンス層303bの音響インピーダンスに対する高音響インピーダンス層302bの音響インピーダンスの倍率(高音響インピーダンス層302bの音響インピーダンス÷低音響インピーダンス層303bの音響インピーダンス)が大きくなるほど、本発明の効果が得られることと確かめた。図9は、低音響インピーダンス層の音響インピーダンスに対する高音響インピーダンス層の音響インピーダンスの倍率が大きくなるほど、本発明の効果が得られることを説明するためのグラフである。
図9では、高音響インピーダンス層302bの膜厚および低音響インピーダンス層303bの膜厚を同時に同じ割合で変化させた場合において、音響ミラー層の高音響インピーダンス層302bの音響インピーダンスZhと低音響インピーダンス層303bの音響インピーダンスZlとの比Zh/Zlを2.21(高音響インピーダンス層302bにAlNを用い、低音響インピーダンス層303bにMoを用いる場合)、3.46(高音響インピーダンス層302bにSiO2を用い、低音響インピーダンス層303bにMoを用いる場合)、4.82(高音響インピーダンス層302bにSiO2を用い、低音響インピーダンス層303bにWを用いる場合)へと変化させた場合の3つの結果が比較されている。
図9において、横軸は、理想的なλ/4長で高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚を規格化した値である。縦軸は、高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの帯域幅(Δf)で共振帯域幅の変化を規格化した値である。横軸および縦軸において、値(=1)は、高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの値である。
図9に示すように、音響インピーダンスの比を大きくするにつれ、高音響インピーダンス層302bおよび低音響インピーダンス層303bの膜厚変化に対する共振帯域劣化の割合が小さくなることが確認された。
このように、第3の実施形態によれば、高い音響インピーダンス比を有するように、高音響インピーダンス層および低音響インピーダンス層の材料を選択し、かつ、高音響インピーダンス層および低音響インピーダンス層の膜厚を共振帯域が最大となる点Yにおいて決定することで、より膜厚ばらつきによる共振帯域の劣化を小さくすることが可能となる。
なお、第3の実施形態では、下部電極の直下が低音響インピーダンス層であるとして、そこから交互に高音響インピーダンス層および低音響インピーダンス層が形成されることとしたが、下部電極の直下が高音響インピーダンス層であるとして、そこから交互に交互に低音響インピーダンス層および高音響インピーダンス層が形成されることしてもよい。
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器の断面図である。図10において、音響ミラー型薄膜弾性波共振器407bは、基板101bと、高音響インピーダンス層102bと、最上位低音響インピーダンス層403bと、下位低音響インピーダンス層403cと、下部電極104bと、圧電薄膜105bと、上部電極106bとを備える。図10において、第1の実施形態と同様の部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
図10は、本発明の第4の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器の断面図である。図10において、音響ミラー型薄膜弾性波共振器407bは、基板101bと、高音響インピーダンス層102bと、最上位低音響インピーダンス層403bと、下位低音響インピーダンス層403cと、下部電極104bと、圧電薄膜105bと、上部電極106bとを備える。図10において、第1の実施形態と同様の部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
図10において、高音響インピーダンス層102bは、二層であるとしたが、三層以上であってもよい。また、最上位低音響インピーダンス層403bおよび下位低音響インピーダンス層403cは、合わせて二層であるとしたが、合わせて三層以上であってもよい。ただし、最上位低音響インピーダンス層403bは、下部電極104bに直下に形成されている。
基板101b上には、高音響インピーダンス層102b、最上位低音響インピーダンス層403b、および下位低音響インピーダンス層403cから構成される音響ミラー層408bが形成されている。音響ミラー層408b上には、下部電極104b、圧電薄膜105b、および上部電極106bから構成される圧電薄膜振動子109bが形成されている。
最上位低音響インピーダンス層403bは、低い音響インピーダンスを持つ材料、例えば、二酸化シリコン:SiO2等からなる。最上位低音響インピーダンス層403bの膜厚(A3)は、自由空間上での圧電薄膜振動子109bの共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値である。
下位低音響インピーダンス層403cは、低い音響インピーダンスを持つ材料、例えば、二酸化シリコン:SiO2等からなる。下位低音響インピーダンス層403cの膜厚(A)は、自由空間上での圧電薄膜振動子109bの共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさと等しい。
図11は、最上位低音響インピーダンス層403bの膜厚以外の値を固定し、最上位低音響インピーダンス層403bの膜厚の値を変化させたときの、共振帯域の変化を示すグラフである。図11において、横軸は、理想的なλ/4長で最上位低音響インピーダンス層403bの膜厚を規格化した値を示す。縦軸は、最上位低音響インピーダンス層403bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの帯域幅(Δf)で共振帯域幅の変化を規格化した値を示す。ここで、横軸および縦軸の値(=1)は最上位低音響インピーダンス層403bの膜厚を理想的なλ/4長と等しくしたときの値である。
図11より、共振帯域幅が最大となる最上位低音響インピーダンス層403bの膜厚は、理想的なλ/4長の膜厚点Xよりも小さい点Yに存在していることがわかる。したがって、最上位低音響インピーダンス層403bの膜厚は、圧電薄膜振動子109bの自由空間上での共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値であることが好ましいことが分かる。
また、例えば±1%の膜厚ばらつきがあるとした場合に、点Xにおける共振帯域幅の変化の度合いと、点Yにおける共振帯域幅の変化の度合いとを比較すると、変化の度合いは、点Yの方が明らかに小さいことが分かる。したがって、点Yを最上位低音響インピーダンス層403bの膜厚(A3)として決定した方が、膜厚ばらつきに対する共振帯域の変化を小さくすることができる。これによって、膜厚ばらつきの影響を最小限にとどめることができる。
さらに、図11から分かるように、最上位低音響インピーダンス層403bの膜厚の最適値は、理想的なλ/4長の−1.0%〜−20.0%の範囲内に存在すると言える。
最上位低音響インピーダンス層403bの膜厚が、圧電薄膜振動子109bの自由空間での共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値であることが好ましいことの原理については、第1の実施形態と同様である。
このように、第4の実施形態によれば、音響ミラー型薄膜弾性波共振器の音響ミラー層の内、最上位の低音響インピーダンス層の膜厚を、共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さくすることによって、共振帯域幅を広げることができる。共振帯域幅を広げることによって、最上位の低音響インピーダンス層の膜厚ばらつきによる共振特性の劣化を防止することができる。
(第5の実施形態)
図12は、本発明の第5の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器の断面図である。図12において、音響ミラー型薄膜弾性波共振器507bは、基板101bと、高音響インピーダンス層502bと、低音響インピーダンス層503bと、下部電極504bと、圧電薄膜105bと、上部電極506bとを備える。図12において、第1の実施形態と同様の部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
図12は、本発明の第5の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器の断面図である。図12において、音響ミラー型薄膜弾性波共振器507bは、基板101bと、高音響インピーダンス層502bと、低音響インピーダンス層503bと、下部電極504bと、圧電薄膜105bと、上部電極506bとを備える。図12において、第1の実施形態と同様の部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
図12において、高音響インピーダンス層502bは、二層であるとしたが、一層であってもよいし、三層以上であってもよい。また、低音響インピーダンス層503bは、二層であるとしたが、一層であってもよいし、三層以上であってもよい。ただし、低音響インピーダンス層503bの最上位層は、下部電極504bに直下に形成されている。低音響インピーダンス層503bと高音響インピーダンス層102bとは、交互に形成されており、同数である。
基板101b上には、高音響インピーダンス層502bと低音響インピーダンス層503bとから構成される音響ミラー層508bが形成されている。音響ミラー層508b上には、下部電極504b、圧電薄膜105b、および上部電極506bから構成される圧電薄膜振動子509bが形成されている。
低音響インピーダンス層503bは、低い音響インピーダンスを持つ材料、例えば、二酸化シリコン:SiO2等からなる。低音響インピーダンス層503bの膜厚(A4)は、自由空間上での圧電薄膜振動子509bの共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値、または音響波長の4分の1の大きさよりも大きい値、または音響波長の4分の1の大きさと同じである。
高音響インピーダンス層502bは、高い音響インピーダンスを持つ材料、例えば、タングステン:W、モリブデン:Mo等からなる。高音響インピーダンス層502bの膜厚(B)は、自由空間上での圧電薄膜振動子509bの共振周波数(反共振周波数)から算出される音響波長の4分の1の大きさよりも小さい値、または音響波長の4分の1の大きさよりも大きい値、または音響波長の4分の1の大きさと同じである。
下部電極504bは、例えば、モリブデン:Mo、アルミニウム:Al、白金:Pt、金:Au等からなる。
上部電極506bは、例えば、モリブデン:Mo、アルミニウム:Al、白金:Pt、金:Au等からなる。
下部電極504bの膜厚(C)は、上部電極506bの膜厚(D)よりも大きい。すなわち、C/D>1.0である。以下、下部電極504bの膜厚と上部電極の膜厚との比(C/D)を上下比と呼ぶ。
本発明者は、下部電極504bの膜厚(C)と上部電極506bの膜厚(D)とを足し合わせた大きさ(C+D)が、圧電薄膜振動子509b全体の膜厚(C+D+E)に対して、どのような割合である場合に、共振帯域幅を広げることができるかを調べた。当該割合は、(C+D)/(C+D+E)である。以下、当該割合(C+D)/(C+D+E)を電極比率と呼ぶ。
図13は、電極比率を10%にしたときの比帯域を示すグラフである。図13において、横軸は、低音響インピーダンス層503bの膜厚を、理想的なλ/4長からの補正量で示す。横軸において、“0”は、低音響インピーダンス層503bがλ/4の厚さを有するときを示す。横軸上、“−10”、“−20”、および“−30”は、それぞれ、低音響インピーダンス層503bがλ/4から−10%、−20%、および−30%の厚さを有するときを示す。横軸上、“10”、および“20”は、それぞれ、低音響インピーダンス層503bがλ/4から+10%、および+20%の厚さを有するときを示す。縦軸は、比帯域を示す。比帯域は、共振周波数frに対する帯域幅Δfの比(Δf/fr)である。比帯域が大きい程、同周波数において帯域幅Δfは大きい。図13において、点線は、第1〜第4の実施形態のように、下部電極の厚さ(C)と上部電極の厚さ(D)とが等しい場合、すなわち、下部電極の厚さと上部電極の厚さとの比(C/D)が1.0である場合を示す。実線は、下部電極の厚さが上部電極の厚さの1.5倍である場合、すなわち、C/Dが1.5である場合を示す。
上部電極の厚さと下部電極の厚さとを等しくした場合(C/D=1.0)、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長よりも+5%厚くしたら、比帯域が最大となる(点P参照)。一方、下部電極の厚さを上部電極の厚さの1.5倍にした場合(C/D=1.5)、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長であったとしても、C/D=1.0の場合に比べて、比帯域が大きくなっている(点Q参照)。したがって、低音響インピーダンス層の厚さを調整することなく、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合は、低音響インピーダンス層の厚さのみを最適な厚さに調整した場合に比べて、比帯域が大きくなることが分かる。
図13に示すように、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長に対して、−5%から+12%の範囲であれば、下部電極の厚さを上部電極の厚さと同じにした場合に比べて、比帯域が大きくなる。
したがって、好ましくは、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくして、さらに、低音響インピーダンス層の厚さを大きくすれば、比帯域を大きくすることができる。
図14は、電極比率を14%にしたときの比帯域を示すグラフである。上部電極の厚さと下部電極の厚さとを等しくした場合(C/D=1.0)、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長よりも+4%厚くしたら、比帯域が最大となる(点P参照)。一方、下部電極の厚さを上部電極の厚さの1.5倍にした場合(C/D=1.5)、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長であったとしても、C/D=1.0の場合に比べて、比帯域が大きくなっている(点Q参照)。したがって、低音響インピーダンス層の厚さを調整することなく、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合は、低音響インピーダンス層の厚さのみを最適な厚さに調整した場合に比べて、比帯域が大きくなる。
図14に示すように、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長に対して、−11%から+12%の範囲であれば、下部電極の厚さを上部電極の厚さと同じにした場合に比べて、比帯域が大きくなる。
図15は、電極比率を20%にしたときの比帯域を示すグラフである。上部電極の厚さと下部電極の厚さとを等しくした場合(C/D=1.0)、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長よりも+1.5%厚くしたら、比帯域が最大となる(点P参照)。一方、下部電極の厚さを上部電極の厚さの1.5倍にした場合(C/D=1.5)、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長であったとしても、C/D=1.0の場合に比べて、比帯域が大きくなっている(点Q参照)。したがって、低音響インピーダンス層の厚さを調整することなく、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合は、低音響インピーダンス層の厚さのみを最適な厚さに調整した場合に比べて、比帯域が大きくなる。
図15に示すように、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長に対して、−17%から+12%の範囲であれば、下部電極の厚さを上部電極の厚さと同じにした場合に比べて、比帯域が大きくなる。
図16は、電極比率を30%にしたときの比帯域を示すグラフである。上部電極の厚さと下部電極の厚さとを等しくした場合(C/D=1.0)、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長よりも−2.5%の大きさにしたら、比帯域が最大となる(点P参照)。一方、下部電極の厚さを上部電極の厚さの1.5倍にした場合(C/D=1.5)、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長であったとしても、C/D=1.0の場合に比べて、比帯域が大きくなっている(点Q参照)。したがって、低音響インピーダンス層の厚さを調整することなく、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合は、低音響インピーダンス層の厚さのみを最適な厚さに調整した場合に比べて、比帯域が大きくなる。
図16に示すように、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長に対して、−25%から+12%の範囲であれば、下部電極の厚さを上部電極の厚さと同じにした場合に比べて、比帯域が大きくなる。
したがって、好ましくは、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくして、さらに、低音響インピーダンス層の厚さを小さくすれば、比帯域を高くすることができる。
図17は、電極比率を40%にしたときの比帯域を示すグラフである。上部電極の厚さと下部電極の厚さとを等しくした場合(C/D=1.0)、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長よりも−5%の大きさにしたら、比帯域が最大となる(点P参照)。一方、下部電極の厚さを上部電極の厚さの1.35倍にした場合(C/D=1.35)、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長であったとしても、C/D=1.0の場合に比べて、比帯域が大きくなっている(点Q参照)。したがって、低音響インピーダンス層の厚さを調整することなく、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合は、低音響インピーダンス層の厚さのみを最適な厚さに調整した場合に比べて、比帯域が大きくなる。
図17に示すように、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長に対して、−27%から+9%の範囲であれば、下部電極の厚さを上部電極の厚さと同じにした場合に比べて、比帯域が大きくなる。
したがって、好ましくは、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくして、さらに、低音響インピーダンス層の厚さを小さくすれば、比帯域を高くすることができる。
図18は、電極比率を50%にしたときの比帯域を示すグラフである。上部電極の厚さと下部電極の厚さとを等しくした場合(C/D=1.0)、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長よりも−9%の大きさにしたら、比帯域が最大となる(点P参照)。一方、下部電極の厚さを上部電極の厚さの1.3倍にした場合(C/D=1.3)、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長であったとしても、C/D=1.0の場合に比べて、比帯域が大きくなっている(点Q参照)。したがって、低音響インピーダンス層の厚さを調整することなく、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合は、低音響インピーダンス層の厚さのみを最適な厚さに調整した場合に比べて、比帯域が大きくなる。
図18に示すように、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長に対して、−28%から+5%の範囲であれば、下部電極の厚さを上部電極の厚さと同じにした場合に比べて、比帯域が大きくなる。
したがって、好ましくは、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくして、さらに、低音響インピーダンス層の厚さを小さくすれば、比帯域を高くすることができる。
図19は、電極比率を60%にしたときの比帯域を示すグラフである。上部電極の厚さと下部電極の厚さとを等しくした場合(C/D=1.0)、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長よりも−11%の大きさにしたら、比帯域が最大となる(点P参照)。一方、下部電極の厚さを上部電極の厚さの1.22倍にした場合(C/D=1.22)、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長であったとしても、C/D=1.0の場合と同程度の比帯域が得られる(点Q参照)。したがって、下部電極を上部電極よりも厚くすることのみによって得られる効果は、電極比率が60%よりも大きいと、もはや得られなくなる。
ただし、図19に示すように、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長に対して、−28%から0%の範囲であれば、下部電極の厚さを上部電極の厚さと同じにした場合に比べて、比帯域が大きくなる。したがって、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくして、さらに、低音響インピーダンス層の厚さを小さくすれば、比帯域を高くすることができることが分かる。
図20は、電極比率を70%にしたときの比帯域を示すグラフである。上部電極の厚さと下部電極の厚さとを等しくした場合(C/D=1.0)、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長よりも−14%の大きさにしたら、比帯域が最大となる(点P参照)。一方、下部電極の厚さを上部電極の厚さの1.15倍にした場合(C/D=1.15)、低音響インピーダンス層の厚さが理想的なλ/4長であるときの比帯域は、C/D=1.0の場合の最大の比帯域に比べて、小さくなっている(点Q参照)。したがって、電極比率が70%の場合、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくしただけでは、比帯域を大きくすることができない。しかし、図20に示すように、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくし、さらに、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長に対して、−28%から−5%の範囲にすれば、下部電極の厚さを上部電極の厚さと同じにした場合に比べて、比帯域が大きくなる。したがって、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくして、さらに、低音響インピーダンス層の厚さを小さくすれば、比帯域を大きくすることができることが分かる。
図21は、電極比率を80%にしたときの比帯域を示すグラフである。図21に示すグラフでは、上部電極の厚さと下部電極の厚さとを等しくした場合(C/D=1.0)、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長よりも−15%の大きさにしたら、比帯域が最大となる(点P参照)。一方、下部電極の厚さを上部電極の厚さの1.5倍にした場合(C/D=1.5)、または、0.8倍にした場合(C/D=0.8)、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長とすると、C/D=1.0よりも大きい比帯域を得ることはできない。したがって、電極比率が80%の場合、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくしただけでは、または、小さくしただけでは、比帯域を大きくすることができない(点Q、R参照)。
図21に示すように、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも大きくした場合、または、下部電極の厚さを上部電極の厚さよりも小さくした場合、低音響インピーダンス層の厚さを調整しても、C/D=1.0の場合の最大比帯域を超える条件を得ることができない。従って、電極比率が80%の場合、下部電極の厚さを上部電極の厚さより大きくしたり、または下部電極の厚さと上部電極の厚さよりも小さくしたりすることによっては、比帯域を大きくすることはできない。しかし、下部電極の厚さと上部電極の厚さとを等しくし、且つ、低音響インピーダンス層の厚さを調整することによって比帯域を大きくすることができる。従って、電極比率の上限値は、80%であると推測される。
図22は、上下比の最適値を示すグラフである。図22において、横軸は、電極比率を示す。縦軸は、横軸に示す電極比率を用いた際の上下比の最適値を示す。縦軸に示す上下比の最適値は、低音響インピーダンス層の厚さを調整することによって最大の比帯域を得ることができる上下比の値である。たとえば、図20に示すように、電極比率が70%の場合、上下比を1.15とし、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長から約−15%程度にすることによって、最大の比帯域を得ることができる。図22では、このときの上下比が示されている。図22では、電極比率が10%、14%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%の際の上下比の最適値を菱形でプロットし、当該菱形を補完するようにして最適値を示す曲線が描かれている。
図22に示すように、電極比率が80%の場合、最適な上下比は、1.0である。図21および図22によって、電極比率が80%の場合、下部電極の膜厚を調整しても比帯域を大きくすることができず、下部電極の厚さと上部電極の厚さを等しくし、且つ、低音響インピーダンス層の厚さを調整することによって、比帯域を大きくすることができるということが分かる。したがって、図19から図21によると、電極比率が60%以上でかつ80%未満である場合、下部電極の厚さだけの調整では、比帯域を大きくすることができず、下部電極が上部電極よりも厚くなるようにし、かつ低音響インピーダンス層の厚さを調整することによって、比帯域を大きくすることができる。
図23は、電極比率を5%にしたときの比帯域を示すグラフである。図23に示すグラフでは、上部電極の厚さと下部電極の厚さとを等しくした場合(C/D=1.0)の比帯域と、下部電極の厚さを上部電極の厚さの1.5倍にした場合(C/D=1.5)の比帯域とが示されている。C/D=1.0の場合、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長よりも+9%にしたら、比帯域が最大となる(点P参照)。同様に、C/D=1.5の場合、低音響インピーダンス層の厚さを理想的なλ/4長よりも+9%にしたら、比帯域が最大となる(点P参照)。したがって、電極比率が5%およびC/D=1.5の場合、C/D=1.0のときの最大比帯域を超える条件が存在しない。よって、電極比率が5%の場合、下部電極を厚くしたり、低音響インピーダンス層の厚さを調整することによっては、比帯域を大きくすることができないことが分かる。したがって、電極比率の下限値は、5%であると推測される。
第1〜第5の実施形態より以下のことが分かる。
図13〜図19の点Qおよび図23の点Pに示すように、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを足し合わせた膜厚が、圧電薄膜振動子の膜厚に対して、5%以上60%以下であり、かつ、下部電極の膜厚が上部電極の膜厚よりも大きい薄膜弾性波共振器は、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を有する。
図13〜図19の点Qおよび図23の点Pに示すように、電極比が5%以上60%以下である場合、全ての低音響インピーダンス層の膜厚をλ/4としても、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。この場合、第4の実施形態における図11に示すように、最上位の低音響インピーダンス層のみの膜厚をλ/4としても、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができると推測される。
図13〜図19に示すように、電極比が5%以上60%以下である場合、全ての低音響インピーダンス層の膜厚をλ/4未満としても、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。図15〜図19に示すように、低音響インピーダンス層の膜厚をλ/4未満とすることによって、低音響インピーダンス層の膜厚をλ/4とした場合に比べて、高い比帯域を得ることができる場合がある。この場合、第4の実施形態における図11に示すように、最上位の低音響インピーダンス層のみの膜厚をλ/4未満としても、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができると推測される。
図13〜図19に示すように、電極比が5%以上60%以下である場合、全ての低音響インピーダンス層の膜厚をλ/4よりも大きくしても、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。図13に示すように、低音響インピーダンス層の膜厚をλ/4よりも大きくすることによって、低音響インピーダンス層の膜厚をλ/4とした場合に比べて、高い比帯域を得ることができる場合がある。この場合、最上位の低音響インピーダンス層のみの膜厚をλ/4よりも大きくしても、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができると推測される。
図13〜図16に示す例では、低音響インピーダンス層の膜厚を調整する場合を示した。しかし、電極比が5%以上60%以下であり、かつ下部電極の膜厚が上部電極の膜厚よりも大きい場合、第2の実施形態に示すように、高音響インピーダンス層の膜厚をλ/4未満にすることによって、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。さらに、図13の例から、高音響インピーダンス層の膜厚をλ/4よりも大きくにすることによっても、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。したがって、高音響インピーダンス層の膜厚がλ/4と異なっていたとしても、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。高音響インピーダンス層の膜厚がλ/4と異なる場合、低音響インピーダンス層の膜厚がλ/4と異なっていればよいことが、第3の実施形態から分かる。この場合、少なくとも最上位の低音響インピーダンス層の膜厚がλ/4と異なっていればよい。
図13より、電極比率が10%の場合、上下比を1.5とし、低音響インピーダンス層の膜厚をλ/4に対して−5%以上12%以下とすれば、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。
図14より、電極比率が14%の場合、上下比を1.5とし、低音響インピーダンス層の膜厚がλ/4に対して−11%以上12%以下とすれば、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。
図15より、電極比率が20%の場合、上下比を1.5とし、低音響インピーダンス層の膜厚がλ/4に対して−17%以上12%以下とすれば、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。
図14および図15に示すように、電極比率が14%〜20%の薄膜弾性波共振器は、低音響インピーダンス層の厚さを調整することによって、比帯域を0.0208以上にすることができ、好適な比帯域が得られる。
図16より、電極比率が30%の場合、上下比を1.5とし、低音響インピーダンス層の膜厚がλ/4に対して−25%以上12%以下とすれば、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。
図17より、電極比率が40%の場合、上下比を1.35とし、低音響インピーダンス層の膜厚がλ/4に対して−27%以上9%以下とすれば、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。
図18より、電極比率が50%の場合、上下比を1.3とし、低音響インピーダンス層の膜厚がλ/4に対して−28%以上5%以下とすれば、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。
図19より、電極比率が60%の場合、上下比を1.22とし、低音響インピーダンス層の膜厚がλ/4に対して−28%以上0%以下とすれば、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。
図20より、電極比率が70%の場合、上下比を1.15とし、低音響インピーダンス層の膜厚がλ/4に対して−28%以上−5%以下とすれば、下部電極の膜厚と上部電極の膜厚とを等しくした薄膜弾性波共振器によって得られる最大の比帯域以上の比帯域を得ることができる。
図21より、電極比率が80%の場合、上下比を1.0とし、かつ、低音響インピーダンス層の厚さを、理想的なλ/4長よりも大きくしたり、小さくしたりして調整することによって、比帯域を大きくすることができる。
さらに、本発明の実施形態は以下のような概念も含んでいる。
音響ミラー層を構成する複数のインピーダンス層の内、少なくとも一層のインピーダンス層の膜厚は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1未満であるとよい。
これにより、インピーダンス層の少なくとも一層が圧電膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1未満となるので、共振帯域幅を広げることができる。共振帯域幅を広げることによって、インピーダンス層の膜厚ばらつきによる共振特性の劣化を防止することができる。
複数のインピーダンス層が交互に配置された複数の低音響インピーダンス層と複数の高音響インピーダンス層とを含む場合、最上位の低音響インピーダンス層は、下部電極と当接しており、その膜厚が圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1未満であるとよい。これにより、より効果的に、共振帯域幅を広げることができる。
最上位の低音響インピーダンス層の膜厚は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の大きさに対して、−1.0%以下であるとよい。これにより、膜厚のばらつきの影響を受けることなく、共振帯域幅を広げることができる。
最上位の低音響インピーダンス層の膜厚は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の大きさに対して、−20.0%以上であるとよい。これにより、膜厚のばらつきの影響を受けることなく、共振帯域幅を広げることができる。
各低音響インピーダンス層は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1未満の膜厚を有するとよい。これにより、より効果的に、共振帯域幅を広げることができる。
各低音響インピーダンス層の膜厚は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の大きさに対して、−1.0%以下であるとよい。これにより、膜厚のばらつきの影響を受けることなく、共振帯域幅を広げることができる。
各低音響インピーダンス層の膜厚は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の大きさに対して、−20.0%以上であるとよい。これにより、膜厚のばらつきの影響を受けることなく、共振帯域幅を広げることができる。
各高音響インピーダンス層は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1未満の膜厚であるとよい。これにより、より効果的に、共振帯域幅を広げることができる。
各高音響インピーダンス層の膜厚は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の大きさに対して、−1.0%以下であるとよい。これにより、膜厚のばらつきの影響を受けることなく、共振帯域幅を広げることができる。
各高音響インピーダンス層の膜厚は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の大きさに対して、−20.0%以上であるとよい。これにより、膜厚のばらつきの影響を受けることなく、共振帯域幅を広げることができる。
各低音響インピーダンス層は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1未満の膜厚を有しおり、かつ、各高音響インピーダンス層は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1未満の膜厚を有しているとよい。これにより、より効果的に、共振帯域幅を広げることができる。
各高音響インピーダンス層および各低音響インピーダンス層の膜厚は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の大きさに対して、−1.0%以下であるとよい。これにより、膜厚のばらつきの影響を受けることなく、共振帯域幅を広げることができる。
各高音響インピーダンス層および各低音響インピーダンス層の膜厚は、圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の大きさに対して、−20.0%以上であるとよい。これにより、膜厚のばらつきの影響を受けることなく、共振帯域幅を広げることができる。
各高音響インピーダンス層の音響インピーダンス(Zh)と各低音響インピーダンス層の音響インピーダンス(Zl)との比(Zh/Zl)は、4.82以上であるとよい。これにより、より効果的に共振帯域幅を広げることができる。
各高音響インピーダンス層は、二酸化シリコンからなり、各低音響インピーダンス層は、タングステンからなるとよい。
(音響ミラー型薄膜弾性波共振器を用いたフィルタの実施例)
図24Aおよび図24Bは、本発明の音響ミラー型薄膜弾性波共振器を用いたフィルタの実施例を示す図である。図24Aに示すフィルタ7は、本発明の第1〜第5の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器のいずれかを、L型接続した1段のラダーフィルタである。第1の音響ミラー型薄膜弾性波共振器71は、直列共振器として動作するように接続される。すなわち、入力端子73と出力端子74との間に直列に接続される。第2の音響ミラー型薄膜弾性波共振器72は、並列共振器として動作するように接続される。すなわち、入力端子73から出力端子74へ向かう経路と接地面との間に接続される。ここで、第1の音響ミラー型薄膜弾性波共振器71の共振周波数を第2の音響ミラー型薄膜弾性波共振器72の共振周波数よりも高く設定すれば、帯域通過特性を有するラダーフィルタを実現することができる。好ましくは、第1の音響ミラー型薄膜弾性波共振器71の共振周波数と第2の音響ミラー型薄膜弾性波共振器72の反共振周波数とを、実質上一致又は近傍に設定することにより、より通過帯域の平坦性に優れるラダーフィルタを実現することができる。
図24Aおよび図24Bは、本発明の音響ミラー型薄膜弾性波共振器を用いたフィルタの実施例を示す図である。図24Aに示すフィルタ7は、本発明の第1〜第5の実施形態に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器のいずれかを、L型接続した1段のラダーフィルタである。第1の音響ミラー型薄膜弾性波共振器71は、直列共振器として動作するように接続される。すなわち、入力端子73と出力端子74との間に直列に接続される。第2の音響ミラー型薄膜弾性波共振器72は、並列共振器として動作するように接続される。すなわち、入力端子73から出力端子74へ向かう経路と接地面との間に接続される。ここで、第1の音響ミラー型薄膜弾性波共振器71の共振周波数を第2の音響ミラー型薄膜弾性波共振器72の共振周波数よりも高く設定すれば、帯域通過特性を有するラダーフィルタを実現することができる。好ましくは、第1の音響ミラー型薄膜弾性波共振器71の共振周波数と第2の音響ミラー型薄膜弾性波共振器72の反共振周波数とを、実質上一致又は近傍に設定することにより、より通過帯域の平坦性に優れるラダーフィルタを実現することができる。
なお、上記実施例では、L型構成のラダーフィルタを例示して説明を行ったが、その他のT型構成やπ型構成のラダーフィルタや、格子型構成のラダーフィルタでも同様の効果を得ることができる。また、ラダーフィルタは、図24Aのように1段構成であっても、図24B等のように多段構成であってもよい。少なくとも一つの薄膜弾性波共振器が第1〜第5の実施形態のいずれかに示す特徴を有していれば、広帯域化の効果を得ることができるフィルタが提供される。
(音響ミラー型薄膜弾性波共振器を用いた装置の第1実施例)
図25は、本発明の音響ミラー型薄膜弾性波共振器を用いた装置の第1実施例を示す図である。図25に示す装置9aは、図24Bのフィルタを用いた共用器である。この装置9aは、複数の音響ミラー型薄膜弾性波共振器で構成されるTxフィルタ(送信フィルタ)91と、複数の音響ミラー型薄膜弾性波共振器で構成されるRxフィルタ(受信フィルタ)92と、2つの伝送線路で構成される移相回路93とからなる。Txフィルタ91及びRxフィルタ92は、最適な周波数配置を有するフィルタであるので、低損失等の特性の優れた共用器を得ることができる。なお、フィルタの数やフィルタを構成する音響ミラー型薄膜弾性波共振器の段数等は、図25に例示したものに限られず自由に設計することが可能である。なお、Txフィルタ91およびRxフィルタ92の内、少なくとも一つのフィルタがラダー型に接続された2つ以上の薄膜弾性波共振器を含むフィルタであり、少なくとも一つの薄膜弾性波共振器が第1〜第5の実施形態のいずれかの特徴を有していればよい。
図25は、本発明の音響ミラー型薄膜弾性波共振器を用いた装置の第1実施例を示す図である。図25に示す装置9aは、図24Bのフィルタを用いた共用器である。この装置9aは、複数の音響ミラー型薄膜弾性波共振器で構成されるTxフィルタ(送信フィルタ)91と、複数の音響ミラー型薄膜弾性波共振器で構成されるRxフィルタ(受信フィルタ)92と、2つの伝送線路で構成される移相回路93とからなる。Txフィルタ91及びRxフィルタ92は、最適な周波数配置を有するフィルタであるので、低損失等の特性の優れた共用器を得ることができる。なお、フィルタの数やフィルタを構成する音響ミラー型薄膜弾性波共振器の段数等は、図25に例示したものに限られず自由に設計することが可能である。なお、Txフィルタ91およびRxフィルタ92の内、少なくとも一つのフィルタがラダー型に接続された2つ以上の薄膜弾性波共振器を含むフィルタであり、少なくとも一つの薄膜弾性波共振器が第1〜第5の実施形態のいずれかの特徴を有していればよい。
(音響ミラー型薄膜弾性波共振器を用いた装置の第2実施例)
図26は、本発明の音響ミラー型薄膜弾性波共振器を用いた装置の第2実施例を示す図である。図26に示す装置9bは、図25の共用器を用いた通信機器である。この装置9bは、アンテナ101と、2つの周波数信号を分離するために用いられる分波器102と、2つの共用器103及び104とを備える。共用器103又は共用器104のいずれかが、図25で示した共用器となる。このように、低損失等の特性の優れた共用器を用いれば、低損失な通信機器を実現することができる。
図26は、本発明の音響ミラー型薄膜弾性波共振器を用いた装置の第2実施例を示す図である。図26に示す装置9bは、図25の共用器を用いた通信機器である。この装置9bは、アンテナ101と、2つの周波数信号を分離するために用いられる分波器102と、2つの共用器103及び104とを備える。共用器103又は共用器104のいずれかが、図25で示した共用器となる。このように、低損失等の特性の優れた共用器を用いれば、低損失な通信機器を実現することができる。
(音響ミラー型薄膜弾性波共振器を用いた装置の第3実施例)
図27は、本発明の音響共振器を用いた装置の第3実施例を示す図である。図27に示す装置9cは、図24Aや図24Bのフィルタを用いた通信機器である。この装置9cは、2つのアンテナ111及び112と、2つの周波数信号を切り替えるためのスイッチ113と、2つのフィルタ114及び115とで構成される。図27の通信機器が図26の通信機器と異なる点は、分波器102の代わりにスイッチ113を、共用器103及び104の代わりにフィルタ114及び115を用いている点である。このように構成しても、低損失な通信機器を実現することができる。本発明の通信機器は、図26および図27の例に限定されるものではなく、本発明の弾性波共振器を少なくとも一つ備える通信機器であればよい。
図27は、本発明の音響共振器を用いた装置の第3実施例を示す図である。図27に示す装置9cは、図24Aや図24Bのフィルタを用いた通信機器である。この装置9cは、2つのアンテナ111及び112と、2つの周波数信号を切り替えるためのスイッチ113と、2つのフィルタ114及び115とで構成される。図27の通信機器が図26の通信機器と異なる点は、分波器102の代わりにスイッチ113を、共用器103及び104の代わりにフィルタ114及び115を用いている点である。このように構成しても、低損失な通信機器を実現することができる。本発明の通信機器は、図26および図27の例に限定されるものではなく、本発明の弾性波共振器を少なくとも一つ備える通信機器であればよい。
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
本発明に係る音響ミラー型薄膜弾性波共振器、ならびにそれを備えるフィルタ、共用器、および通信機器は、共振帯域幅を広げることができ、音響ミラー層の膜厚ばらつきによる共振特性の劣化を防止することができ、無線機器等に有用である。
Claims (12)
- 音響ミラー型の薄膜弾性波共振器であって、
基板と、
前記基板上に配置されており、高音響インピーダンスと低音響インピーダンスとを交互に有する複数のインピーダンス層から構成される音響ミラー層と、
前記音響ミラー層上に配置されており、下部電極、圧電薄膜、および上部電極から構成される圧電薄膜振動子とを備え、
前記下部電極の膜厚と前記上部電極の膜厚とを足し合わせた膜厚が、前記圧電薄膜振動子全体の膜厚に対して、5%以上60%以下であり、かつ、前記下部電極の膜厚が前記上部電極の膜厚よりも大きい、薄膜弾性波共振器。 - 前記複数のインピーダンス層は、交互に配置された複数の低音響インピーダンス層と複数の高音響インピーダンス層と含み、
前記下部電極と当接する最上位の低音響インピーダンス層は、前記圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の膜厚を有する、請求項1に記載の薄膜弾性波共振器。 - 前記複数の低音響インピーダンス層は、それぞれ、前記圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1の膜厚を有する、請求項2に記載の薄膜弾性波共振器。
- 前記複数のインピーダンス層は、交互に配置された複数の低音響インピーダンス層と複数の高音響インピーダンス層と含み、
前記下部電極と当接する最上位の低音響インピーダンス層は、前記圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1未満の膜厚を有する、請求項1に記載の薄膜弾性波共振器。 - 前記複数の低音響インピーダンス層は、それぞれ、前記圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1未満の膜厚を有する、請求項4に記載の薄膜弾性波共振器。
- 前記複数のインピーダンス層は、交互に配置された複数の低音響インピーダンス層と複数の高音響インピーダンス層と含み、
前記下部電極と当接する最上位の低音響インピーダンス層は、前記圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1よりも大きい膜厚を有する、請求項1に記載の薄膜弾性波共振器。 - 前記複数の低音響インピーダンス層は、それぞれ、前記圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1よりも大きい膜厚を有する、請求項6に記載の薄膜弾性波共振器。
- 前記複数のインピーダンス層は、交互に配置された複数の低音響インピーダンス層と複数の高音響インピーダンス層と含み、
前記複数の低音響インピーダンス層の内、少なくとも最上位の低音響インピーダンス層は、前記圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1と異なる膜厚を有しており、
最上位の高音響インピーダンス層は、前記圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1と異なる膜厚を有する、請求項1に記載の薄膜弾性波共振器。 - 前記複数の高音響インピーダンス層は、それぞれ、前記圧電薄膜振動子の自由空間上での共振周波数から定められる音響波長の4分の1と異なる膜厚を有する、請求項8に記載の薄膜弾性波共振器。
- ラダー型に接続された2つ以上の薄膜弾性波共振器を備えるフィルタであって、
少なくとも一つの前記薄膜弾性波共振器は、
基板と、
前記基板上に配置されており、高音響インピーダンスと低音響インピーダンスとを交互に有する複数のインピーダンス層から構成される音響ミラー層と、
前記音響ミラー層上に配置されており、下部電極、圧電薄膜、および上部電極から構成される圧電薄膜振動子とを含み、
前記下部電極の膜厚と前記上部電極の膜厚とを足し合わせた膜厚が、前記圧電薄膜振動子全体の膜厚に対して、5%以上60%以下であり、かつ、前記下部電極の膜厚が前記上部電極の膜厚よりも大きい、フィルタ。 - 送信フィルタと、受信フィルタとを備える共用器であって、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタの内、少なくとも一つのフィルタは、ラダー型に接続された2つ以上の薄膜弾性波共振器を含むフィルタを備え、
少なくとも一つの前記薄膜弾性波共振器は、
基板と、
前記基板上に配置されており、高音響インピーダンスと低音響インピーダンスとを交互に有する複数のインピーダンス層から構成される音響ミラー層と、
前記音響ミラー層上に配置されており、下部電極、圧電薄膜、および上部電極から構成される圧電薄膜振動子とを有し、
前記下部電極の膜厚と前記上部電極の膜厚とを足し合わせた膜厚が、前記圧電薄膜振動子全体の膜厚に対して、5%以上60%以下であり、かつ、前記下部電極の膜厚が前記上部電極の膜厚よりも大きい、共用器。 - 少なくとも一つの薄膜弾性波共振器を備える通信機器であって、
前記少なくとも一つの薄膜弾性波共振器は、
基板と、
前記基板上に配置されており、高音響インピーダンスと低音響インピーダンスとを交互に有する複数のインピーダンス層から構成される音響ミラー層と、
前記音響ミラー層上に配置されており、下部電極、圧電薄膜、および上部電極から構成される圧電薄膜振動子とを有し、
前記下部電極の膜厚と前記上部電極の膜厚とを足し合わせた膜厚が、前記圧電薄膜振動子全体の膜厚に対して、5%以上60%以下であり、かつ、前記下部電極の膜厚が前記上部電極の膜厚よりも大きい、通信機器。
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