JP2008297161A - サイアロンセラミックスおよびその製造方法 - Google Patents

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健 廣田
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Abstract

【課題】より生産性が高く、更に常温および高温環境下における機械的特性に優れたサイアロンセラミックスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】サイアロンセラミックスであって、平均粒径P=500nm以下のSiと、平均粒径P=300nm以下のAlと、平均粒径P=1μm以下のAlNからなる出発原料より構成され、焼結体のβ−SiAlONとしての相対密度が95%以上であるものとする。さらに、上記組成からなる焼結体中に、サイアロンに対して内割りで3〜15vol.%のカーボンナノファイバーを略均質に分散させた状態で含むことがより好ましい。上記サイアロンセラミックスは、原料となる混合粉体を、放電プラズマ焼結法を用いて合成同時焼結することにより調製されることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、高温構造材料として有効に使用されるサイアロンセラミックスおよびその製造方法に関する。
サイアロン(Si6−zAl8−z,(zは、例えばz=0〜4.2))セラミックスは、高強度、高硬度であり、耐熱性や耐食性にも優れていることから、例えばエンジン部品等の高温構造材料として期待されているセラミックス材料である(特許文献1)。
ところで、これまでに得られてきたセラミックスは、金属材料などに比べて耐熱性、耐摩耗性、耐食性などに優れているが、「脆さ」という欠点があり、主として強度面における信頼性に問題を残していた。
そのため、セラミックスの実用化に当たっては、より生産性が高く、更に常温および高温環境下における機械的特性に優れた焼結体およびその製造方法を確立することが切望されている。
現在までに研究されている脆性の改善方法としては、セラミックス自身の焼結密度を製造工程の改善により向上させる外に、i)金属との複合化、ii)粒子分散、iii)繊維との複合化(強化)、等がある。
i)の方法は、複合化した金属の延性すなわち塑性変形を利用して高靭性化するもので、高温構造材料には不適当であり、
ii)の方法は、セラミックスマトリックス中に異種の粒子を分散させるものであり、
iii)は、各種の繊維をセラミックスマトリックスに複合化して高靭化しようとするもので、とりわけ軽量化に有効であって、
複合化する物質の選択の多様さおよび有効性の点からii)およびiii)の研究が現在盛んとなってきている。
これらの内、主相(マトリックス。母相とも言う。)および繊維を構成要素とする、iii)に係る繊維強化型セラミックスは、構成要素であるマトリックスおよび繊維を適当に組み合わせることによって、目的の性能をもつ複合セラミックスを創製することが可能なものであり、近年、特に注目されている。
なお、繊維強化セラミックスに使われる繊維は、耐熱性、高温強度およびマトリックスとの適合性などの条件を満たさなければならないとされる。
"セラミックスレビュー 窒化ケイ素とサイアロンの発展"、三友護著、セラミックス第38号、p.668−685、2003年
しかしながら、これまでの手法にて得られたサイアロンは、難焼結性であるために緻密な材料が得られなかった。
そのため、得られたセラミックスはいずれも破壊靭性値が低く(KIC=2.5〜4.0MPa・m1/2)、信頼性の向上が残された重要な課題となっていた。
また、電気的に絶縁性を示すので、高硬度の材料から精密な部品を作製する場合に用いる放電加工を採用することができず、加工性の向上も残された課題となっていた。
さらに、上記サイアロンをマトリックスとして創製されたセラミックス基複合材料に関しては、ii)粒子分散、およびiii)繊維との複合化(強化)共に、マトリックスに対して内割りで添加する粒子や繊維の分散性に難があり、出来上がった製品の均質性に問題があるだけでなく、強度になお問題があった。
上記各課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、本願発明者は、β−サイアロン(Si6−zAl8−z,(z=0〜4.2))の各構成材料となり得るSi,Al,AlNからなる混合物から緻密な成形体を作製し、これを放電プラズマ焼結法により加圧しながら加熱し、合成同時焼結させることにより、緻密(相対密度略99.9%)なサイアロンセラミックスが容易に作製できる事を見い出し、本発明を完成した。
また同時に、本願発明者は、高強度電気良導体のカーボンナノファイバー(CNF)を前述の混合原料成形体に均質に分散させてから、放電プラズマ焼結法により焼結させると、カーボンナノファイバーを分散させたサイアロンセラミックスが容易に製造できることをも見い出した。
このように、強化材としてカーボンナノファイバーを添加することにより、さらなる高靭性化を図ることが可能なほか、サイアロンに導電性を付与して放電加工を可能にすることを確認し、本発明の更なる改善を図った。
上記課題を解決可能な本発明のサイアロンセラミックスは、(1)サイアロンセラミックスであって、平均粒径P=500nm以下のSiと、平均粒径P=300nm以下のAlと、平均粒径P=1μm以下のAlNからなる出発原料より構成され、焼結体のβ−SiAlONとしての相対密度が95%以上であることを特徴とするものである。
又本発明は、(2)さらに、前記焼結体中にカーボンナノファイバーを略均質に分散させた状態で含むことを特徴とするサイアロンセラミックスである。このように、最終的にサイアロン中にCNFが分散した状態で得られるサイアロンセラミックスについては、CNF添加サイアロンコンポジットセラミックスとも称される。
ここで、(3)前記カーボンナノファイバーを、3〜15vol.%、サイアロンに対して内割りで含むことが好ましい。
なお、(4)上記のサイアロンセラミックス或いはCNF添加サイアロンコンポジットセラミックスは、原料となる混合粉体を、放電プラズマ焼結法を用いて合成同時焼結することにより調製されることが好ましい。
又本発明は、サイアロンセラミックスを製造するための方法であって、(5)平均粒径P=500nm以下のSiと、平均粒径P=300nm以下のAlと、平均粒径P=1μm以下のAlNからなる出発原料を秤量して準備する工程と、前記出発原料を水またはアルコール中に分散して湿式混合を行ったのち乾燥することにより混合粉を得る工程と、さらに、前記混合粉を放電プラズマ焼結法により加圧しながら加熱昇温し、前記混合粉から直接β−SiAlONを合成同時焼結することによって所望のサイアロンセラミックスを得る工程、を含むことを特徴とするものである。
このとき、(6)さらにサイアロンに対して内割りで3〜15vol.%のカーボンナノファイバーを、水またはメタノール中にて分散処理を行った後、前記出発原料に添加し、これらを水またはアルコール中に分散させて前記湿式混合を行ったのち乾燥することにより前記混合粉を得る工程としても構わない。
また、(7)前記放電プラズマ焼結法による加圧および加熱が、前記混合粉を、10Pa以下の略真空中で、10〜100MPaの圧力で加圧しながら、1,500〜1,800℃の温度、および1〜60分の条件で加熱する工程からなるものであればより好ましい。
[用語の定義]
本明細書中で「サイアロン」とは、Si6−zAl8−z,(zは、例えばz=0〜4.2)からなる所謂β−SiAlONセラミックスの事を指し示すものとする。
その中でも、z=2としたときのSiAlを、本明細書中では特にβ’−SiAlONセラミックスと称するものとする。
一般的に、セラミックス系複合材料においては、互いの熱膨張係数の差に起因すると思われる主相或いは母相(マトリックス)と繊維の「体積収縮の違い」が複合化を阻害すると考えられている。
しかしながら、
i)焼結段階において液相を生じるほか、
ii)熱膨張係数がカーボンナノファイバーに比べて低く、
iii)弾性率がカーボンナノファイバーと同程度、
であるサイアロンでは、上記体積収縮の違いの影響は少なく、したがってサイアロンは、カーボンナノファイバーを強化材とした複合材料に適したマトリックスだと思われる。
上記の通り、構造材料として使用する場合のサイアロンのメリットとしては、高強度、高硬度であり、耐熱性や耐食性、さらには高温強度に優れている点が挙げられる。その一方、破壊靭性値が低く、信頼性の向上が残された重要な課題となっていた。
本発明では、これより詳細を説明する通り、
・放電プラズマ焼結法を用いて結晶粒子の微細化、高密度化を図ったほか、
・合成同時焼結によるプロセスの短縮化を図り、さらに、
・カーボンナノファイバー添加による高強度、高靭性化を実現し、
上記の信頼性に関わる課題を一挙に解決した。
本明細書中で「カーボンナノファイバー」とは、強化繊維或いは複合材料として利用されているカーボンファイバーの中でも、直径がナノサイズの繊維を指し、特に繊維径150nmφ前後、繊維長4〜5μm前後、密度2.00Mg/m前後、また、機械的特性として引張り強度〜2.20GPa程度、弾性率100〜300GPa程度のものを指し示すものとする。
マトリックスに対してカーボンナノファイバーを添加するメリットとしては、結果として得られるコンポジット材料の高強度、高靭性化および軽量化が図れる点がまず挙げられる。このほか、特にマトリックスの単一相が絶縁体である場合には、これにカーボンナノファイバーを適宜添加することによって導電性が付加されるという作用効果を挙げることが出来る。
一例によれば、カーボンナノファイバーは、径方向と縦方向で膨張係数が異なり、径方向に比べ縦方向には相対的に伸び難く、引張りに強いという傾向がある。また、マトリックスと繊維の熱膨張係数の差がマイナスであるほどマトリックスに圧縮残留応力が、繊維との間に引っ張り残留応力が誘起され、マトリックスの亀裂発生を抑制する働きをする。
また、複合セラミックスの特性は、繊維の直径の大きさによっても変わり得る。
強化繊維として直径がナノサイズの繊維を用いた場合、強度と靭性の両方が同時に向上することが知られており、これらの材料は、一般にセラミックスナノコンポジットと呼ばれている。
その中でも、炭素材は、ナノテクノロジーを認識させた重要な対象物質であり、現在もナノテクノロジーに期待される高機能性への挑戦課題の中核を構成している。ナノ相炭素材としては、フラーレン、カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)およびカーボンナノファイバー(Carbon Nano Fiber:CNF)等が現在代表的なものとして挙げられる。
なお、高強度で軽量なカーボンファイバー自体の開発は40年以上前から行われ、航空機、スポーツ器具などには複合材料として利用されている。これらのファイバーは非常に大きな弾性率Eと引っ張り強度σ(ファイバー:2〜5GPa、ウィスカー:20GPa)をもっているが、格子欠陥が多いために理論最大強度よりも低い値に止まっている。
これに対して、構造完全性の高いCNTやCNFは、従来のファイバーをしのぐ引っ張り強度と弾性率を有するばかりでなく、ナノメートルスケールの細い円筒構造から優れた機械的強度を示す。
先に説明した通り、近年、セラミックスを種々の炭素繊維やセラミックス繊維で強化してセラミックス基複合材料(CMC)を作製し、高温環境下での破局的な破壊を防止する研究が行われている。一方、特異な物性を示すカーボンナノチューブ(CNT)の研究開発の延長上に見い出されたカーボンナノファイバー(CNF)は、優れた物理的性質・機械的強度を示すことから、ナノテクノロジーの中心材料の一つとして注目を集めているが、CNFの分散性の悪さやマトリックス界面での結合力の制御が困難であるため、CNFを添加分散させたCMCを得ることも、現状では実現が極めて困難であり、これまで実現されていなかった。
本明細書において、パルス通電加圧焼結(Pulsed Electric-current Pressure Sintering: PECPS)法または放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering :SPS)法とは、導電性の型内に原料粉末を充填した後、例えば一軸加圧状態においてOn−Off直流パルス電流を型内に流して加熱する焼結方法を指し示すものとする。
粉体が高い電気伝導度を示すのであれば、電流は圧粉体中にも流れて粒子の隙間に放電プラズマが誘導され、粒子表面が局所的に極めて高温度にまで加熱される。さらに、粒子表面はこのプラズマ処理により活性化され焼結性が向上するため、難焼結性物質の緻密化、低温焼結が必要な粉体材料の固化、燃焼接合に応用されている。
従来法がヒーターなどにより外部から加熱するのに対し、上記の通りSPS法では対象粉末にパルス状の大電流(例えば数千アンペア等)を流し、粉末粒子同士の僅かな空隙の部分で放電を起こさせ、その際発生する熱を利用して加熱、焼結を行う。
そのため、このSPS法によれば、従来の電気炉焼結法、ホットプレス(HP)法等に比べて低温で迅速かつ均一な加熱・焼結が可能であることから、粒成長抑制や整粒等の微細組織の制御が可能であると言われる。
このように、SPS法は、高性能焼結体が作製可能な焼結方法である。
以下に説明する本発明の一実施例では、全て放電プラズマ焼結(SPS)法と称している。
本明細書中で「合成同時焼結」とは、出発原料の均質な混合物から緻密な化合物焼結体を作製することを指し示すものとする。
本明細書中で「パーコレーション理論」とは、或る性質がある系の中で連続しているかどうかの確率論を指し示すものとする。
本発明では、サイアロンにCNFの添加率を増やしてゆくことである浸透(パーコレーション)値以上の添加率に達すると、CNFが近接し合い、CNFと近接しているマトリックス表面間に導電パスが形成され、それが系全体で繋がる状態となることで導電化する(後に説明する図14その他参照)。
上記の通り放電プラズマ焼結法を用いて原料混合粉体から直接化合物を合成することにより、サイアロンセラミックスの焼結温度としては低温の1,700℃で短時間に緻密(相対密度略99.9%)に焼結されることによって調製されたサイアロンは、三点曲げ強度約450MPaという高強度を示す。
また、このサイアロンに5vol.%のカーボンナノファイバーを添加分散させたコンポジットセラミックスは、三点曲げ強度が約600MPaまで向上し、さらに電気抵抗率ρが無添加の〜1016Ω・mから約4.8×10−2Ω・mまで低下し、放電加工が可能となった。
以下、添付図面に基づき、本発明の一実施形態に付き説明する。
以下では、放電プラズマ焼結(SPS)法により本発明のサイアロンセラミックスを調製する場合について説明したのち、さらに出発原料にCNFを適量添加し、これを同様にSPS法を用いて焼結することにより強化したサイアロンコンポジットセラミックス(CNF添加サイアロンコンポジットセラミックス)を調製する場合について順次説明する。
まず最初に、夫々秤量した混合した所定の組成の混合粉体から本発明のサイアロンセラミックス焼結体を調製する要領について説明する。焼結温度或るいはCNFの添加量の変化に伴うサイアロンセラミックス或いはCNF添加サイアロンコンポジットセラミックスの諸特性については、実施例を用いて後に説明する。
図1は放電プラズマ焼結法により本発明のサイアロンセラミックスを調製するに当たっての工程図、図2は本発明のサイアロンセラミックスを製造するために用いる放電プラズマ焼結装置のシステム構成を示す概念図、図3および図4は本発明のサイアロンセラミックスの出発原料に当たるSi/Al/AlNの混合圧粉体を加圧昇温したとき或いは焼結したときにおけるXRDパターンを示す図、図5は種々の組成の混合圧粉体をSPS法により加圧昇温した際、混合圧粉体の所定温度における軸方向の変位を示す図、図6〜図8は本発明に係るサイアロンセラミックスについて得られる諸特性を示す図表であって、Si/Al/AlN=2:1:1モル比の出発原料組成の混合圧粉体をSPS法により焼結した際の、サイアロンセラミックスの相対密度および平均粒径並びに種々の機械的特性を示す図、図9はCNFの添加量を変化させた場合における、本発明のサイアロンコンポジットセラミックスのXRDパターンを示す図、図10および図11は本発明に係るサイアロンセラミックスの高温曲げ強度を示す図表である。図12〜図15はCNFを添加して得た本発明に係るサイアロンコンポジットセラミックスについて得られる諸特性を示す図表であって、図13は種々の機械的特性を、図14は導電機構および電気抵抗率を、そして図15は電気抵抗率を、それぞれ示している。
[第1実施形態]
はじめに、SPS法により本発明のサイアロンセラミックスを調製する要領に付き説明する。図1はSPS法により本発明のサイアロンセラミックスを調製するに当たっての工程図である。図中に記されている数値或いは焼結条件等は、次に説明する実施例1および2で用いた数値であり、本発明はこれらに何ら限定されない。
まず、出発原料の秤量からスタートする(S1)。本実施形態では、出発原料は平均粒径P=500nm以下のSiと、平均粒径P=300nm以下のAlと、平均粒径P=1μm以下のAlNより構成される。好ましくは、上記出発原料はSiとAlとAlNの2:1:1モル混合粉体とされる。
このとき、必要に応じ焼結助剤を含めても良い。この添加物は、イットリア等からなるものであって良い。
これらの出発原料は、水またはアルコール中に分散させて湿式混合(S2)を行ったのち乾燥(S3)される。これにより、焼結対象となる混合粉体が得られる。
なお、第2実施形態および実施例2として説明する通り、CNF強化サイアロンコンポジットセラミックスを得る場合には、さらに適量のCNFが添加される。
ステップS3で得られた焼結対象となる混合粉体は、必要に応じ圧縮成形(S4a)および静水圧プレス(S4b)が行われた後、SPS法により加圧しながら加熱昇温される(S5)。
なお、SPS法は、低電圧でパルス状直流大電流を投入し、火花放電現象により瞬時に高エネルギーを発生させ、急激なジュール加熱により溶解と高速拡散を起こす焼結手法であって、短時間、比較的低温で粒成長を抑制した緻密な焼結体が得られる手法である。
このほか、SPS法は、
・焼結することが難しい材料の焼結が可能、
・焼結時間が短い、
・硬度等の機械的特性が向上する、
・焼結体の微細組織の制御が行いやすい、
・焼結できる材料範囲が広い、
・被対象物に導電性が無くても適用可能、
等の特徴を有する有用な手法である。
放電プラズマ焼結装置の概要に関しては図2に示す通りである。ここで、図2に示す通り、図1の1a〜1c(1d)の各原料からなる圧縮成形粉体Pは、真空チャンバー1内に設置された、カーボンよりなるモールド型6にセットされる。
図2に示す放電プラズマ焼結装置10は、真空チャンバー1と、パルス電流発生器9と、一部真空チャンバー1内に設置され、パルス電流発生器9に夫々接続される上方および下方の電極4,5と、上方および下方の電極4,5を夫々押圧し、プランジャ7を介して圧縮成形粉体Pを加圧する加圧手段8と、モールド型6内にセットされた圧縮成形粉体Pに加圧手段8からの押圧力を伝達するプランジャ7と、から構成される。
本実施例では、モールド型6とプランジャ7はカーボンより構成される。真空チャンバー1と、電極4,5は、それぞれ水冷され得る。また、加圧手段8は、一例ではロードセルからなる。さらに、真空チャンバー1には、真空/空気/Arガスの雰囲気制御ユニット2が、導入管3を介して接続されており、内部の気圧等を自在に制御し得る様構成されている。
上で説明した通り、SPS法は、一例では黒鉛型に材料を挿入して加圧しつつ、例えば10V程度の電圧と数百A以上の電流をパルス状に流すことによって対象物を焼結するものである。このとき、黒鉛型が加熱されるとともに、粉体粒子同士の接触部に放電プラズマが発生して焼結を促進するとされる。
本法をセラミックスの調製に適用すると、通常の電気炉加熱等に比べて200〜500℃も低い温度で、かつ数分〜数十分の短時間で焼結できる。さらに、互いの焼結性が良くない相が組み合わさったコンポジットの焼結にも適用できる。このように、本法は焼結組織のナノサイズ化やナノコンポジットの合成に有効な手法である。
上記SPS法による加圧および加熱の条件は、混合粉体の量、質その他によっても変動するが、予め得られた上記混合粉体を、10Pa以下の略真空中で、10〜100MPaの圧力で加圧しながら、1,700〜1,800℃の温度、および1〜60分の条件で加熱することが好ましい。
以上の工程から、予め準備したSiと、Alと、AlNを主成分とする混合粉体から直接サイアロンを合成同時焼結することによって、本発明に係るサイアロンセラミックス焼結体を調製することができる。
本実施形態によれば、最終的に焼結体のβ−サイアロンとしての相対密度が90%以上のサイアロンセラミックスが得られる。得られたサイアロンセラミックスに係る機械的特性ついての評価(S6)については、後記実施例にて説明する。
[第2実施形態]
又以下では、さらに出発原料にCNFを適量添加することによって得られるCNF強化サイアロンコンポジットセラミックスを調製する要領に付き説明する。工程図および放電プラズマ焼結装置の概要に関しては、先に説明した図1および図2に示す通りであり、詳細な説明はここでは省略する。
本実施形態では、出発原料である第1実施形態記載の粉体に、さらに内割りで3〜15vol.%のCNFを強化剤として添加する処理を行った。このとき、CNFについては、超音波ホモジナイザーその他の手段により水またはメタノール中にて分散処理を行った後(S2’)、第1実施形態記載の粉体に添加した。
次に、CNFを含む粉体を、ステップS2にて水またはアルコール中に分散させて湿式混合を行ったのち、乾燥(S3)することにより、焼結対象となる混合粉体を得た。
得られた混合粉体は、第1実施形態と同様に、必要に応じて圧縮成形(S4a)および静水圧プレス(S4b)した後、SPS法を用いて合成同時焼結される(S5)。これにより、所望の焼結体が調製される。
このように、本実施形態によれば、カーボンナノファイバーを略均質に分散させた状態で含むサイアロンセラミックス焼結体(CNF添加サイアロンコンポジットセラミックス)を得ることが出来る。
以下、一実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。実施例1ではSPS法により本発明のサイアロンセラミックスを実際に調製した一例について説明し、実施例2では、出発原料にCNFを適量添加し、これを同様にSPS法を用いて合成同時焼結することにより強化したサイアロンセラミックス(CNF添加サイアロンコンポジットセラミックス)を実際に調製した一例について説明する。
ここで、図3〜図8はSPS法を用い、種々の焼結温度の下で得られる本発明のサイアロンセラミックスに係る諸特性を示す図表である。実施例1の解説で更に用いる、製造方法に係る図1および図2の説明については前記の通りである。
[単一相サイアロンセラミックスの合成同時焼結と機械約特性]
上記した通り、サイアロンは絶縁性で導電性が無く、放電加工を採用することは難しいほか、理論密度に焼結させることが難しく、これまで、
・より高密度で機械的特性の優れた焼結体の作製、
・および、そうして得られたより高硬度の材料から精密な部品の作製、
を目指して多種多様な焼結および加工方法の改良が行われてきた。
本実施例では、SPS法を用いて、合成同時焼結により緻密な単一相サイアロンセラミックスを作製することを試み、その生成過程並びに機械的特性について評価を行った一例につき説明する。なお次の実施例2では、実施例1の出発原料にさらにCNFを適量添加し、補強すると同時に導電性を付与したサイアロンセラミックス(CNF添加サイアロンコンポジットセラミックス)につき説明する。
[粉体および焼結体の調製]
はじめに、出発原料としてSi(宇部興産、SN−E10、純度99.9%、粒子径P〜500nm)、Al(住友化学、AKP−30、純度99.9%、粒子径P〜300nm)、AlN(トクヤマ、Fグレード、純度99.9%、粒子径P〜1.0μm)を用い、一般式Si6−zAl8−zにおいてzの値が2のβ’−サイアロン(SiAl)となるように各粉末を秤量した(図1の1a〜1c)。
これらの秤量粉末を、Si/Al/AlN=2:1:1モルの組成として得た混合粉体を、メタノール中に添加し、そして遊星ボールミル(ジルコニアボール(2mmφ))を用いて湿式混合した(図1のS1、S2)。
次に、得られた混合粉体を室温で乾燥後、一軸金型成形(98MPa)、静水圧プレス処理(245MPa)してから、図2に示す放電プラズマ焼結装置(住友石炭鉱業,SPS−510A)内に設置したカーボン製モールド(40φ−15φ−40mm)内に充填した(図4のS3、S4a、S4b)。
その後、真空中(〜10Pa)一軸加圧(30MPa)しながらDCパルス電流(ON/OFF=12:2)を流し、昇温速度100℃/min,1,500〜1,800℃の温度範囲で10min保持後、降温速度〜50℃/minの条件で焼結した(図1のS5)。
なおここで、図2のモールド6に外部より、混合圧粉体Pから〜5mmの位置まで〜3mmφの孔を開け、その孔底部の温度を単色温度計を用いて測定し、また、加圧昇温中の圧粉体の加圧軸(Z軸)方向の収縮量を測定した。さらに、昇温中の試料を急冷して取り出し、X線回折(XRD、(リガク、Rint2000、CuKα1))による生成相の同定、および微細構造のSEM観察(FE−SEM、(日本電子、JSM7000))を行った。
[粉体および焼結体の評価]
得られた焼結体についてSEM写真によりその表面を観察したところ、組成i)サイアロンのみ,およびサイアロン+CNFの混合圧粉体を1,600℃で熱処理して得られたセラミックスに関し、i)サイアロンのみの混合粉体からは粒子の粗大化が起こって緻密化しなかったが、ii)サイアロン+CNF組成では(CNFの働きにより)高密度に焼結した。
図3および図4に示すXRDパターンを参照すると、焼結温度が上がるほどにサイアロン以外のピークはなくなり、1,700℃ではSiAl単一相が生成していることが見て取れる。なお、図3は昇温中の試料を急冷して取り出したもののXRDパターンを観察したものであって、(a)が室温(R.T.)、(b)が1,400℃、(c)が1,500℃、(d)が1,600℃、そして(e)が1,700℃におけるXRDパターンを示している。一方、図4は異なる温度でそれぞれ10分間焼結して得られた試料のXRDパターンを観察したものであって、(a)が1,500℃、(b)が1,600℃、そして(c)が1,700℃で焼結した試料のXRDパターンを示している。
次に、組成i)Si/Al/AlN=2:1:1モル、ii)Si/Al/AlN=2:1:1モル+CNF5vol.%の混合圧粉体を室温(R.T.)から1,800℃まで加圧昇温する際のZ軸の変位を図5(a),(b)に、温度を(c)に示す。図5(a)がサイアロン単一相を、(b)がCNF5vol.%添加したCNF添加サイアロンコンポジットセラミックスを表している。
上記i)、ii)何れの組成のものに関しても、〜600℃付近から圧粉体の膨張が始まり、1,200〜1,600℃にかけては急激な収縮が起きている。
また、僅かながら図5(c)の曲線にもこの温度付近で、試料の発熱によるプログラムされた昇温速度からの偏り(温度上昇)が認められる。
前述の収縮は、OとNの影響によりAl/AlNが先ず液化する現象に対応するので、これら一連の現象はSPS加熱昇温時1,200〜1,600℃という比較的低温度でAl/AlNの液化、そして引き続けてSi/Al/AlNよりサイアロンの自己燃焼合成(SHS)が起こっていると推定される。
SPSプロセスでは、加熱と同時に混合圧粉体の粒子間にDC大電流のON/OFFパルスが誘導されるので、生成時に発熱反応を示す高融点無機化合物についても持続的にSHSが生じると考えられる。この混合粉体からのβ−サイアロンの直接生成は、通常のホットプレスではこの様な低温では生成しない。
[焼結体の微細構造]
図6〜図8に、放電プラズマ焼結法を用い、種々の焼結温度の下で得られる本発明のサイアロンセラミックスに係る諸特性を示す図表を示す。
図6は、組成i)Si/Al/AlNの混合圧粉体を1,500〜1,800℃の温度範囲でSPS処理して得られたサイアロンセラミックスの相対密度と機械的特性と平均粒子径Gの温度変化を図表に纏めたものである。
また、図7に、上記i)に係るSi/Al/AlN組成の混合圧粉体をSPS法により焼結した際における、サイアロンセラミックスの相対密度および平均結晶粒径の変化をグラフ化して示す。図7の(a)が相対密度の変化を、(b)が平均結晶粒径の変化を示している。
まず、各温度(1,500℃、1,600℃、1,700℃、1,800℃)における焼結体の平均結晶粒径Gを、焼結体破面のSEM写真からインターセプト法により求めた結果につき説明する。焼結体の平均結晶粒径Gは、図6および図7(b)に示す通り、温度上昇に伴い0.5μmを下回る径から2.0μm近くまで増加した。
相対密度に関して順に説明すると、破面のSEM写真より、1,500℃の温度で焼結した試料の微細組織には、SiAlON粒子の粒成長は認められず、連結した大きな空洞(Voids)が多数観察された。そのため、図6および図7(a)に示す通り、焼結体の相対密度は80%程度に留まっている。
しかし、SPS温度が1,550℃に達すると微細組織は大幅に変化し、結晶粒界にのみ気孔が存在する高密度で均質な組織が観察され、図6および図7(a)に示す通り、1,600℃を超えると相対密度が98%以上になり、1,800℃では、99%以上に達した。
このように、上記i)に係るSi/Al/AlN組成に関し、SPS(1,800℃/30MPa/10min)処理して得られた焼結体のβ−サイアロンとしての相対密度は99%以上に達した(焼結温度1,800℃)。
[焼結体の常温での機械的特性]
図8(a)に3点曲げ強度σ、(b)にビッカース硬度Hおよび(c)に破壊靭性値KICの焼結温度依存性を示す。データは測定試料数10個の平均値を示している。セラミックスの組成は先程と同様、上記i)に係るSi/Al/AlN組成からなるサイアロンである。これらの機械的特性値は、図6にも記載している。
本実施例で得られたサイアロンセラミックスのビッカース硬度Hは、図8(b)に示す様に、1,500℃焼結試料の11.3GPaから温度の上昇とともに緩やかに増加し、1,700℃焼結体で最高値17.7GPaを示した。この温度依存性は、図7(a)に示した相対密度の増加傾向と概略一致する。このHの最高値は、従来報告されている値よりも格段に向上している。
また、曲げ強度σと破壊靭性値KICについては、それぞれ1,700℃焼結体で最高値450MPa、4.1MPa・m1/2を示した。
このように、本実施例では1,700℃で作製されたサイアロンセラミックスが最も高い機械的特性、すなわち、曲げ強度σ(450MPa)、ビッカース硬度H(17.7GPa)および破壊靭性値KIC(4.1MPa・m1/2)を示すことが明らかとなった。
なお、本実施例にて得られたサイアロンセラミックスの高温強度特性に関しては、実施例2の項にて図11を用いて纏めて説明する。
又以下では、より優れた特性を実現するために、上記手法にて作製するサイアロンセラミックスにさらに、カーボンナノファイバー(CNF)を添加してCNF添加サイアロンコンポジットセラミックスを合成同時焼結によって得る実施例につき説明する。
ここで、図10〜図15はCNF添加量の多寡に応じたCNF添加サイアロンコンポジットセラミックスの諸特性の変化を示す図表である。実施例2の解説で更に用いる図1および図2の説明については上記した通りである。
先に説明した通り、近年、セラミックスを種々の炭素繊維やセラミックス繊維で強化してセラミックス基複合材料(CMC)を作製し、高温環境下での破局的な破壊を防止する研究が行われている。
本実施例では、実施例1に記載の粉体に、更に強化材としてCNFを添加し、SPSを用いて、合成同時焼結により緻密なCNF添加サイアロンコンポジットセラミックスを作製することを試みた。以下では、その生成過程並びに機械的特性について説明する。
[粉体および焼結体の調製]
本実施例では、出発原料として、実施例1に記載の粉体に、更に強化材のCNF(VGCF−H,昭和電工,純度99%,直径≦150nm,長さ4〜5μm)を追加している。
CNFの添加量は3〜15vol.%とすることが好ましい。本実施例では、3〜15vol.%をサイアロンに対して内割りで添加した。
まず、CNFをメタノール中で超音波ホモジナイザー(周波数20kHz、出力300W)を用いて30min分散処理を行う。
その後、実施例1に係る出発原料の混合粉のスラリーに上記処理を行ったCNFを3〜15vol.%添加し、同様に湿式混合して30minの分散処理を行った。
これらの混合粉体を、実施例1と同様にSPS法を用いて、昇温速度100℃/min、1,500〜1,800℃の温度範囲で10min保持後、降温速度〜50℃/minの条件で焼結した。
[粉体および焼結体の評価]
得られたSiAlON+5vol.%CNF組成の焼結体破面のSEM写真から、CNFはナノ形状、構造を維持しながら良好に分散した状態で緻密化(相対密度:99%以上)している様子が確認された。なお、一般に、繊維強化セラミックスの考え方として、繊維を複合させた時、繊維とマトリックスがその界面では強く結合し、繊維は構造を維持することが望ましいと考えられる。
また、図9に示すXRD解析結果からも明かな通り、得られた試料からはSiAlONとCNFの回折ピークのみ観察され、他の生成物は認められなかった。なお、図9はCNFの内割り添加量を変化させつつ、1,700℃で焼結して得たCNF/SiAlONコンポジットのXRDパターンを示す図であって、(a)がCNF添加量0vol.%、(b)が1vol.%、(c)が3vol.%、(d)が5vol.%、(e)が7vol.%、そして(f)が10vol.%のときのXRDパターンを示している。
次に、図5(b)に、SiAlON+5vol.%CNF(成形嵩密度1.58g/cm、相対密度47.8%)の混合圧粉体を室温(R.T.)から1,700℃まで加圧昇温した際のZ軸の変位を示す。
上記実施例1の場合と同様、本実施例においても、〜600℃付近から圧粉体の膨張が始まり、1,200〜1,600℃にかけては急激な収縮が起きている。
したがって、本実施例の場合も、これら一連の現象はSPS加熱昇温時1,200〜1,600℃という低温度で、Al/AlNの液化に相当する収縮、そして引き続けてSi/Al/AlNよりサイアロンの自己燃焼合成(SHS)が起こっていると推定される。
[焼結体の機械的特性]
図10、12および14に、CNF添加量の多寡に応じたサイアロンコンポジットセラミックスの諸特性の変化を示す図表を示す。同様に、図11、13および15に、CNF添加量の多寡に応じたサイアロンコンポジットセラミックスの電気抵抗、および種々の機械的特性の変化をグラフ化して示す。
はじめに、図6および図8に示す通り、i)Si/Al/AlN混合粉体をSPS(1,700℃/30MPa/10min)処理して得られた、先の実施例1に係る単一相サイアロンセラミックスの室温での機械的特性は、3点曲げ強度σ=約450MPa、荷重19.8N−15sで測定したビッカース硬度H=約17.7GPa、IF法で評価した破壊靭性値KIC=約4.1MPa・m1/2、平均結晶粒径Gは約1.62μmであった。
その一方、本実施例では、図10〜図13に示す通り、Si/Al/AlN混合粉体に対するCNF添加量を変えることで機械的特性等も変化し、ii)CNFをSi/Al/AlNに3〜15vol.%添加した複合体の室温での曲げ強度σは、x=5vol.%の時最高値約590MPaを示した。このように、CNFを添加した場合、常温でも約30%の曲げ強度向上効果が得られる。
この理由は、CNFが均一に分散することで、サイアロン単体に比べて粒成長が抑制されて微細(G〜0.94μm)かつ緻密な組織が実現できたこと、さらに曲げ強度測定時にCNFの引っ張り強度が大きい(〜2.20GPa)ため、複合体が破断する時に応力をCNFが負担したこと等によるものと考えられる。
[焼結体の高温強度特性]
また高温曲げ強度は、5vol.%CNF添加サイアロンコンポジットセラミックスと単一相サイアロンセラミックスを比較した。図10および図11に各試料の3点曲げ強度σの温度依存性を示す。図11の白プロットは単一相サイアロンセラミックス、黒プロットは5vol.%CNF添加サイアロンコンポジットセラミックスに関する特性である。
単一相サイアロンセラミックスは1,200℃までほぼ一定の強度(σ〜430MPa)を示した一方、CNF添加サイアロンコンポジットセラミックスのσは、室温で強度の向上(590MPa、約30%)が確認された。
[実施例1および2で得られた試料の対比評価]
[組織の均一性、緻密性について]
焼結体のXRDパターンを図3、4および9に示す。
i)SiAl(z=2,β’−サイアロン)単一相が1,700℃で生成し、
ii)また、カーボンナノファイバーを添加した試料においては、SiAlとCNFの回折ピークのみが観察された。
次に、i)モノリシック(単一相)およびii)カーボンナノファイバーを5vol.%添加した複合体の破面のSEM写真を観察した結果、カーボンナノファイバーによる緻密化阻害の影響は無く、いずれも相対密度略99%以上の緻密な焼結体が得られた。
カーボンナノファイバーを5vol.%添加した試料では、カーボンナノファイバーが均一に分散し、かつ、マトリックスの粒成長が抑制された緻密な焼結体が得られた。
これに対して、カーボンナノファイバーを10vol.%添加した試料では、粒成長が顕著に抑制された箇所が偏在し、組織の均一性が失われていた。換言すれば、粒成長の抑制効果が見られない箇所も一部に存在するということであり、カーボンナノファイバーの添加比率については或る一定の範囲で有用な効果が認められるものと考察される。
[三点曲げ強度(σ)について]
図12および図13に、三点曲げ強度(σ)の測定結果を示す。
三点曲げ強度(σ)は、カーボンナノファイバーの添加量が増加するにしたがって増大し、CNF無添加でσ=約450MPaであったものが、カーボンナノファイバーを5vol.%添加した試料では、最高値約590MPaが得られた。
しかし、カーボンナノファイバーを10vol.%添加した試料では、σ=約450MPaに低下しており、組織の均一性、緻密性の考察結果と同様にカーボンナノファイバーの添加比率について或る一定の範囲で有用な効果が認められるものと考察される。
[電気抵抗率(ρ)について]
図14および図15に、電気抵抗率(ρ)の測定結果を示す。
電気抵抗率(ρ)については、上記三点曲げ強度(σ)とは異なり、カーボンナノファイバーの添加量が増加するにしたがって低下する結果となった。
すなわち、CNF無添加でρ=約1016Ω・mであったものが、カーボンナノファイバーを5vol.%添加した試料では、ρ=4.8×10−2Ω・mの値が得られた。
そこで、得られたCNF添加サイアロンコンポジットセラミックスの、CNFの電気伝導機構につき検討する。先ず、夫々の電気抵抗につき考察すると、サイアロンの電気抵抗がlogρ>16Ω・mの一方、CNFの電気抵抗はlogρ≒−5.0Ω・mである。
ここで、図14および図15からも明らかな通り、CNFの添加率を増やしてゆくことである浸透(パーコレーション)値以上の添加率に達すると、CNFが近接しあいCNFと近接している表面間のトンネル電流によって導電パスが形成され、それが系全体で繋がることで導電化するものと考察される(図14(A)、(B)参照)。
図14(A)、(B)は、マトリックスに対するCNFの添加率の多寡を図に表現して模式化したものであり、(A)がCNFの添加率が僅かなものを、(B)がCNFの添加率を増したものを表している。
なお、電気抵抗率(ρ)は、パーコレーション理論に基づき、以下の式に従う。
・ρ=ρ(SiAlON)×(1−φ/φ
文献値ρ(SiAlON):1016Ω・mと本実験で得られたρを用いて算出した結果、
臨界体積率φ:0.020、臨界指数t:3.51
が得られる。
これらの結果からも、CNFの均一分散がマクロで起きていることがわかる。
この実施例2によれば、CNF5vol.%以上において1×10Ω・mの低電気抵抗率が必要となる放電加工の利用が可能となる。
このように、本発明に係るサイアロンセラミックスについては、カーボンナノファイバーの添加比率を増すことで、導電性が付与された新たな構造材料となり得る可能性が示された。
[将来の可能性]
このように、本発明によれば、i)放電プラズマ焼結法を用いて原料混合粉体から直接化合物を合成することにより、高密度で緻密な微細構造を有する焼結体を作製することができる。
また、ii)強化材であるカーボンナノファイバーを添加することにより、さらなる高靭性化を図ることが可能なことも確認された。
さらに、本発明によれば、iii)化学プラントの精密部品等、耐食性が要求される用途への展開の可能性も拡大する。
具体的には、例えば以下の様な製品への応用展開が期待される。
i)エンジン燃焼副室(燃焼を助けるため、燃料と空気を一度高温の部位に導き、気化と混合を十分に行わせるための装置: 高温、急熱急冷、爆圧、機械的応力に耐える性能が求められ、熱応力は最大約300MPa程度。)
ii)バルブ(エンジンのシリンダーヘッドに搭載され,燃焼室を密閉する装置: 高温、急熱急冷、反応性ガスとの接触、そして微粒子による摩擦に耐える性能が求められ、エンジン始動時と運転中時で約500℃の温度変化に晒される。)
iii)ターボチャージャー(出力向上のために利用される装置: 遠心力、熱応力、高速粒子との衝突、そして磨耗に耐える性能が求められ、翼端の周速約500m/sで受ける力は約350〜400MPa程度。)
iv)ガスタービン(高出力系エンジンに用いられる: エンジン出力は概ね300〜400馬力で、高温強度が求められる。タービン入口温度は1,270℃〜1,350℃)
[まとめ]
本願発明につき、これまでの成果を纏めると次の通りである。
・はじめに、放電プラズマ焼結法で1,700℃ 、10min保持によって、緻密なSiAlの単一相が生成されることが確認された。
・次に、三点曲げ強度および破壊靭性値については、CNFを5vol.%添加した場合に、それぞれ約590MPa、4.5MPa・m1/2と最高値を示すことが確認された。
・また、SiAlON単体は粒界にガラス相が存在せず、窒素雰囲気中1,600℃まで強度の大幅な低下は見られなかった。
・さらに、CNFをわずか3vol.%添加することでサイアロンは低電気抵抗率を示し、5vol.%以上で放電加工が可能な1×10Ω・m以下を示した。
[変形例]
以上、本発明を実施例その他により詳細に説明したが、本発明は上記各例記載の構成および条件に何ら限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記各例では、Si/Al/AlNとからなる出発物質に加える添加物としてカーボンナノファイバーを用いたが、その他、公知の焼結助剤を添加しても構わない。
また、湿式混合を行うに当たり、上記各例ではメタノールを用いたが、その他のアルコール或いは水を用いても構わない。
さらに、上記各例では、出発原料をSi/Al/AlN=2:1:1モル比の混合粉体としたが、出発原料についてもこれに限定されず、サイアロン(Si6−zAl8−z)で、z=0〜4.2の値を採るβ−サイアロンであれば構わない。
上記各例では、放電プラズマ焼結法によりサイアロンセラミックスを得るに当たり、一軸金型成形により混合粉を加圧成形することによって成形体を得ていたが、成形体の形成手段は一軸金型成形に特に限定されない。
その他、各種原料の平均粒径や、放電プラズマ焼結を行う際の雰囲気、圧力、温度、電流、その他のパラメータに関しては、各例で挙げたものに何ら限定されない。
このように、本発明は上記実施形態等に記載の構成に限定されるものではなく、当業者であれば、以上に開示された基本的技術思想および教示に基づき、種々の変形例を導き出すことが出来る事は自明である。
以上に説明したとおり、本願発明は、より生産性が高く、更に常温および高温環境下における機械的特性に優れたサイアロンセラミックスおよびその製造方法を提供する新規かつ有用なるものであることが明らかである。
放電プラズマ焼結法により本発明のサイアロンセラミックスを調製するに当たっての工程図である。 本発明のサイアロンセラミックスを製造するために用いる放電プラズマ焼結装置のシステム構成を示す概念図である。 Si/Al/AlNの混合圧粉体を、室温(R.T.)から1,700℃まで加圧昇温した後、急冷したときにおけるXRDパターンを示す図である。 Si/Al/AlNの混合圧粉体を種々の温度で焼結して得られた焼結体のXRDパターンを示す図である。 種々の組成の混合圧粉体をSPS法により加圧昇温した際における、混合圧粉体の温度およびZ軸方向の変位を示す図である。 本発明に係るサイアロンセラミックスについて得られる諸特性を示す図表である。 Si/Al/AlN=2:1:1モル比の出発原料組成の混合圧粉体をSPS法により焼結した際における、サイアロンセラミックスの相対密度および平均粒径を示す図である。 Si/Al/AlN=2:1:1モル比の出発原料組成の混合圧粉体をSPS法により焼結した際における、サイアロンセラミックスの種々の機械的特性を示す図である。 1,700℃で焼結して得られたサイアロンコンポジットセラミックスについて、CNFの添加量を変化させた場合におけるXRDパターンを示す図である。 本発明に係るサイアロンセラミックスの高温曲げ強度を示す図表である。 本発明に係るサイアロンセラミックスの高温曲げ強度を示す図である。 CNFを添加して得た本発明に係るサイアロンコンポジットセラミックスについて得られる諸特性を示す図表である。 CNFを添加して得た本発明に係るサイアロンコンポジットセラミックスの種々の機械的特性を示す図である。 CNFを添加して得たサイアロンコンポジットセラミックスの電気伝導機構および電気抵抗率を示す図表である。 CNFを添加して得た本発明に係るサイアロンコンポジットセラミックスの電気抵抗率を示す図である。
符号の説明
P 圧縮成形粉体
1a〜1d 原料
1 真空チャンバー
2 雰囲気制御ユニット
3 導入管
4 電極
5 電極
6 モールド型
7 プランジャ
8 加圧手段
9 パルス電流発生器
10 放電プラズマ焼結装置

Claims (7)

  1. サイアロンセラミックスであって、
    平均粒径P=500nm以下のSiと、平均粒径P=300nm以下のAlと、平均粒径P=1μm以下のAlNからなる出発原料より構成され、
    焼結体のβ−SiAlONとしての相対密度が95%以上であることを特徴とするサイアロンセラミックス。
  2. さらに、前記焼結体中にカーボンナノファイバーを略均質に分散させた状態で含むことを特徴とする請求項1に記載のサイアロンセラミックス。
  3. 前記カーボンナノファイバーを、3〜15vol.%、サイアロンに対して内割りで含むことを特徴とする請求項2に記載のサイアロンセラミックス。
  4. 前記サイアロンセラミックスは、原料となる混合粉体を、放電プラズマ焼結法を用いて合成同時焼結することにより調製されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のサイアロンセラミックス。
  5. サイアロンセラミックスを製造するための方法であって、
    平均粒径P=500nm以下のSiと、平均粒径P=300nm以下のAlと、平均粒径P=1μm以下のAlNからなる出発原料を秤量して準備する工程と、
    前記出発原料を水またはアルコール中に分散させて湿式混合を行ったのち乾燥することにより混合粉を得る工程と、
    さらに、前記混合粉を放電プラズマ焼結法により加圧しながら加熱昇温し、前記混合粉から直接β−SiAlONを合成同時焼結することによって所望のサイアロンセラミックスを得る工程と、
    を含むことを特徴とするサイアロンセラミックスの製造方法。
  6. さらに、サイアロンに対して内割りで3〜15vol.%のカーボンナノファイバーを、水またはメタノール中にて分散処理を行った後、前記出発原料に添加し、
    これらを水またはアルコール中に分散させて前記湿式混合を行ったのち乾燥することにより前記混合粉を得る工程を含むことを特徴とする請求項5に記載のサイアロンセラミックスの製造方法。
  7. 前記放電プラズマ焼結法による加圧および加熱が、前記混合粉を、10Pa以下の略真空中で、10〜100MPaの圧力で加圧しながら、1500〜1900℃の温度、および1〜60分の条件で加熱する工程からなることを特徴とする請求項5または6に記載のサイアロンセラミックスの製造方法。
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