JP2008292108A - 冷却装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】飲料物を、確実に過冷却状態で保存し、確実に飲用時に凍結させることができる冷却装置を提供する。
【解決手段】制御部10は、飲料容器6内の飲料物の種類に応じて、温度切替室2の温度を制御して、飲料容器6内の飲料物を過冷却状態に保存する。したがって、飲料物を、その種類に関わらず、確実に過冷却状態で保存し、確実に飲用時に凍結させることができる。
【選択図】図1
【解決手段】制御部10は、飲料容器6内の飲料物の種類に応じて、温度切替室2の温度を制御して、飲料容器6内の飲料物を過冷却状態に保存する。したがって、飲料物を、その種類に関わらず、確実に過冷却状態で保存し、確実に飲用時に凍結させることができる。
【選択図】図1
Description
この発明は、飲料容器内の飲料物を過冷却状態にて保存する冷却装置に関する。
一般に、液体は凝固点にて液相から固相に相転移するが、凝固点を下回る温度であっても相転移を起こさず、液体のままの状態、すなわち過冷却状態を保持する場合がある。過冷却状態の液体は、エネルギー的に準安定状態にあるが、外部からの刺激などにより瞬時に固相に転移する。この特性を利用して、飲用時にグラスに注いだり、振動を与えたりすることで、飲料物を瞬時にシャーベット状に凍結させることのできる飲料過冷却用冷却装置が、例えば、特開平10−9739号公報(特許文献1)や、特開2003−214753号公報(特許文献2)に開示されている。
特開平10−9739号公報(特許文献1)に開示された従来の過冷却用冷却装置は、飲料収納時に、初期温度や数量、取出し時間を入力し、それらの値をもとにあらかじめ記憶している温度制御パターンにて飲料物を冷却することにより、過冷却状態の飲料物を提供するものである。
また、特開2003−214753号公報(特許文献2)に開示された従来の過冷却用冷却装置は、ダクトやファンの配置により、装置内の冷気の流れを略均等にし、飲料物をムラなく均一な温度分布になるように冷却することにより、過冷却状態の飲料物を提供するものである。
適当な冷却速度で温度分布が、均一になるように冷却すれば、液体を過冷却状態で保持することが可能であり、理論的には、凝固点0℃の水であっても、摂氏マイナス数十度で過冷却状態を維持できる。上記従来の過冷却用冷却装置でも、この装置内の温度制御や気流制御を行う構成を備え、飲料物を均一に冷却することのできる冷却装置として開示されている。
上述の通り、過冷却状態の液体は、エネルギー的に準安定状態にあるが、最安定状態である固相へのエネルギー障壁は、過冷却状態の液体温度と凝固点の差(過冷却度)が大きくなるにつれて低くなっていく。
すなわち、液体の過冷却度が大きいほど、より小さな刺激で過冷却を解除、凍結しやすい一方、過冷却度が小さいほど、振動や温度変動など多少の刺激を受けても過冷却状態を解除せず、瞬時の凍結も起こりにくくなる。
また、凝固点は飲料種類によって異なるため、同じ飲料温度でも、冷却装置から取り出した瞬間あるいは冷却中に飲料が凍結する場合や、振動などの刺激を与えても凍結しない場合がある。
つまり、冷却する飲料種類毎に過冷却保存に適した温度範囲が存在する。その上限温度は、その飲料物の凝固点であり、その下限温度は、ごくわずかの刺激で過冷却状態を解除する温度または冷却中に飲料が凍結しやすい温度であると考えられる。
特開平10−9739号公報
特開2003−214753号公報
しかしながら、上記従来の過冷却用冷却装置では、最適な保存温度範囲は示されておらず、条件によっては、装置内から取出した程度の刺激で過冷却状態を解除してしまう、あるいは冷却中に自然に過冷却状態を解除して凍結してしまう可能性があり、また、刺激を与えても凍結しない可能性もあり、使用性がよくないという課題があった。
そこで、この発明の課題は、飲料物を、確実に過冷却状態で保存し、確実に飲用時に凍結させることができる冷却装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の冷却装置は、
飲料容器が保存される保存室を有する冷却装置本体と、
上記飲料容器内の飲料物の種類に応じて、上記保存室の温度を制御して、上記飲料容器内の上記飲料物を過冷却状態に保存する制御部と
を備えることを特徴としている。
飲料容器が保存される保存室を有する冷却装置本体と、
上記飲料容器内の飲料物の種類に応じて、上記保存室の温度を制御して、上記飲料容器内の上記飲料物を過冷却状態に保存する制御部と
を備えることを特徴としている。
この発明の冷却装置によれば、上記制御部は、上記飲料容器内の上記飲料物の種類に応じて、上記保存室の温度を制御して、上記飲料容器内の上記飲料物を過冷却状態に保存するので、上記飲料物を、その種類に関わらず、確実に過冷却状態で保存し、確実に飲用時に凍結させることができる。
また、一実施形態の冷却装置では、上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度または糖濃度の少なくとも一方に基づいて、上記保存室の温度を制御する。
この実施形態の冷却装置によれば、上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度または糖濃度の少なくとも一方に基づいて、上記保存室の温度を制御するので、上記飲料物を、過冷却状態とし、飲用時に凍結させる確実性をより高めることができる。
また、一実施形態の冷却装置では、上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が1%未満であるときに、上記飲料物の温度が−7.0〜−3.0℃となるように、上記保存室の温度を制御する。
この実施形態の冷却装置によれば、上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が1%未満であるときに、上記飲料物の温度が−7.0〜−3.0℃となるように、上記保存室の温度を制御するので、アルコールを全く含まないあるいはほとんど含まない飲料物を、より確実に過冷却状態で保存し、より確実に飲用時に凍結させることができる。
また、一実施形態の冷却装置では、上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が1%以上であるときに、上記飲料物の温度が−10.5〜−8.5℃となるように、上記保存室の温度を制御する。
この実施形態の冷却装置によれば、上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が1%以上であるときに、上記飲料物の温度が−10.5〜−8.5℃となるように、上記保存室の温度を制御するので、アルコール飲料を、そのアルコール度数によらず、より確実に過冷却状態で保存し、より確実に飲用時に凍結させることができる。
また、一実施形態の冷却装置では、上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が1%以上10%未満であるときに、上記飲料物の温度が−10.0〜−6.0℃となるように、上記保存室の温度を制御する。
この実施形態の冷却装置によれば、上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が1%以上10%未満であるときに、上記飲料物の温度が−10.0〜−6.0℃となるように、上記保存室の温度を制御するので、低アルコール飲料を、より確実に過冷却状態で保存し、より確実に飲用時に凍結させることができる。
また、一実施形態の冷却装置では、上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が10%以上であるときに、上記飲料物の温度が−13.0〜−9.0℃となるように、上記保存室の温度を制御する。
この実施形態の冷却装置によれば、上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が10%以上であるときに、上記飲料物の温度が−13.0〜−9.0℃となるように、上記保存室の温度を制御するので、アルコール度数の高い飲料物を、より確実に過冷却状態で保存し、より確実に飲用時に凍結させることができる。
この発明の冷却装置によれば、上記制御部は、上記飲料容器内の上記飲料物の種類に応じて、上記保存室の温度を制御して、上記飲料容器内の上記飲料物を過冷却状態に保存するので、上記飲料物を、その種類に関わらず、確実に過冷却状態で保存し、確実に飲用時に凍結させることができる。
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、この発明の冷却装置の一実施形態である扉閉状態の正面図を示している。図2は、冷却装置の扉開状態の正面図を示している。図1と図2に示すように、本発明の冷却装置は、冷凍冷蔵庫であり、冷却装置本体としての冷蔵庫本体1と、この冷蔵庫本体1の開口部に取り付けられる扉とを有する。
上記冷蔵庫本体1は、複数の飲料容器6が保存される保存室としての温度切替室2を有する。この温度切替室2には、温度切替室扉3が取り付けられている。
上記温度切替室扉3には、制御部10が設けられ、この制御部10は、上記飲料容器6内の飲料物の種類に応じて、上記温度切替室2の温度を制御して、上記飲料容器6内の上記飲料物を過冷却状態に保存する。
上記制御部10は、操作ボタン4および操作モニター5を有し、この操作ボタン4および操作モニター5を操作することで、上記冷蔵庫本体1に設けられた(図示しない)冷却機構および加熱機構が制御され、上記温度切替室2の室温を、約−18℃から約60℃の間の数段階で切り替えられる。
飲料物の過冷却保存時の上記温度切替室2内の温度は、投入する飲料物の種類に応じて、ソフトドリンクモード、ワイン・カクテルモード、および、アルコールモードの3段階から選ぶことができる。
各モードで飲料温度は、それぞれ、順に、−7.0〜−3.0℃、−10.0〜−6.0℃、および、−13.0〜−9.0℃となるように、上記温度切替室2内の雰囲気温度は、それぞれ、−8.5〜−4.5℃、−12.0〜−8.0℃、および、−14.0〜−10.0℃の範囲で、冷却機構および加熱機構によって、制御される。
つまり、上記制御部10は、上記飲料物のアルコール濃度に基づいて、上記温度切替室2の温度を制御する。
そして、上記制御部10は、上記飲料物のアルコール濃度が1%未満であるときに(ソフトドリンクモードであるときに)、上記飲料物の温度が−7.0〜−3.0℃となるように、上記温度切替室2の温度を制御する。
また、上記制御部10は、上記飲料物のアルコール濃度が1%以上10%未満であるときに(ワイン・カクテルモードであるときに)、上記飲料物の温度が−10.0〜−6.0℃となるように、上記温度切替室2の温度を制御する。
また、上記制御部10は、上記飲料物のアルコール濃度が10%以上であるときに(アルコールモードであるときに)、上記飲料物の温度が−13.0〜−9.0℃となるように、上記温度切替室2の温度を制御する。
なお、上記制御部10は、上記飲料物のアルコール濃度が1%未満であるときに、上記飲料物の温度が−7.0〜−3.0℃となるように、上記温度切替室2の温度を制御する一方、上記飲料物のアルコール濃度が1%以上であるときに、上記飲料物の温度が−10.5〜−8.5℃となるように、上記温度切替室2の温度を制御するようにしてもよい。
そして、上記飲料容器6の過冷却保存時には、飲料物のアルコール度数に応じて、上記温度切替室2内の温度を上記操作ボタン4と上記操作モニター5にて設定し、上記飲料容器6を投入する。すると、投入する飲料物の初期温度や庫内の温度、および、冷蔵庫の運転状況にもよるが、およそ3〜6時間以上保存しておけば、飲料物は、最適に過冷却状態を呈する。
なお、冷蔵庫の一冷却室の容積(例えば20〜25L)程度であれば、精密な温度分布や気流の制御を特別に行わなくても上述の温度範囲で推移したが、冷却速度や温度分布が均一になるよう精密に制御すれば、飲料物をより確実に最適に過冷却状態で保存できる。
ここで、適当な冷却速度で温度分布が均一になるように冷却すると、飲料物は、凝固点以下の温度でも凍結しない過冷却状態に至るが、この凝固点は、飲料物の種類によって異なる。
飲料物は、水に糖分や炭酸ガス、ミネラル分、アルコール、色素成分等が溶解した水溶液であり、このような水溶液は、凝固点が純粋な水の凝固点である0℃より下回る。これを、凝固点降下という。
溶媒1kgに溶質1molを溶解したときの凝固点降下度、すなわちモル凝固点降下Kは、次式(1)で表される。
K = RT2/1000H ・・・式(1)
ただし、
R = 気体定数、T = 溶媒の凝固点、H = 溶媒1gあたりの凝固熱(融解熱)
である。
ただし、
R = 気体定数、T = 溶媒の凝固点、H = 溶媒1gあたりの凝固熱(融解熱)
である。
溶媒が水の場合、
R = 8.31(J/mol・K)、T = 273(K)、H = 334(J/g)
であるから、式(1)より、
K = 1.85(K・kg/mol)
となる。
R = 8.31(J/mol・K)、T = 273(K)、H = 334(J/g)
であるから、式(1)より、
K = 1.85(K・kg/mol)
となる。
このKの値から、飲料物に含まれる成分のうち、特に濃度が高いと考えられるアルコール(エタノール)と砂糖(ショ糖)が水に溶解したときの理論的な凝固点を算出すると、表1のようになる。
表1.アルコール水溶液と砂糖水の凝固点降下
※エタノール C2H6O 46g/mol
ショ糖 C12H22O11 342g/mol
表1.アルコール水溶液と砂糖水の凝固点降下
※エタノール C2H6O 46g/mol
ショ糖 C12H22O11 342g/mol
表1から、飲料物の凝固点降下度は、アルコール濃度が大きく影響するといえる。また、糖分についても、その濃度が高い場合は少なからず影響があるといえる。成分はよって、保存する飲料物を、より確実に過冷却状態で保存し、より確実に飲用時に凍結させるには、主にアルコール濃度によって温度帯を設定してやればよいと考えることができる。
そこで、アルコールを含まない飲料物(以下、ソフトドリンクとする)とアルコールを含む飲料物の保存状態について、それぞれ雰囲気温度を変化させて確認実験を行った。
図3は、ソフトドリンクについて、冷却実験時の平均飲料温度と、そのときの飲料物の状態を示すグラフである。本実験では、約5℃の未開封の市販飲料を、あらかじめ冷却した保存室内に投入し、投入から24時間後の保存状態の確認と、振動を加えるまたは開封するなどしたときの凍結状態の確認を行った。なお、実験には代表的な5種別19銘柄のPETボトル入り市販ソフトドリンクを使用した。また、平均飲料温度は、飲料物が十分略一定温度といえる冷却開始後12時間〜24時間の飲料物の温度を平均して求めた。
図3より、ソフトドリンクは飲料物の温度約0℃〜−10℃の広範囲で最適に過冷却状態を維持できることが分かった(図中の●)。しかし、飲料温度が高い範囲では過冷却状態にならない飲料(図中の□)や、飲料温度の低い範囲では、自然に過冷却状態を解除して凍結してしまうあるいは過冷却状態に至ることなく凍結してしまう飲料(図中の☆)も多く、より精密な温度制御を行う必要がある。
そこで、図3で過冷却状態を最適に維持したときの飲料温度の平均値、−5.0℃をセンター値として、飲料温度の変動量を変化させて冷却実験を行い、飲料温度の変動量と過冷却維持率の関係を求めた。結果を図4に示す。なお、本実験でも代表的な未開封の5種別19銘柄の市販飲料(初期温度約5℃)を、あらかじめ冷却した保存室内に投入し、投入から24時間後の保存状態の確認と、衝撃を与えるまたは開封するなどしたときの凍結状態の確認を行った。
図4より、飲料物の温度の変動が±2.0℃までの範囲では、過冷却維持率100%であるが、温度変動がさらに大きくなると、次第に過冷却維持率が低下している。よって、ソフトドリンクを最適に過冷却状態で維持するには、飲料物の温度が−7.0〜−3.0℃となるよう装置内温度(上記温度切替室2の温度)の制御を行えばよいといえる。
さらに、ソフトドリンクについては、図5に示すように、異なる温度で過冷却状態を維持させたPETボトルの飲料容器6に加速度センサー20を取りつけたものを、それぞれ高さを変化させて自由落下させ、過冷却状態を解除する時の振動加速度を計測する実験を行い、過冷却時の飲料温度と過冷却解除に必要な力(振動加速度)の関係を求めた。これを図6に示す。
図6のプロットは、未開封の5種別の市販飲料を用いて求めた実験結果を示す。この実験結果と、過冷却度が大きくなるにつれて解除力が小さくなっていること、および凝固点の温度で過冷却解除力が∞である(すなわち瞬間凍結しない)ことから、過冷却時の飲料温度と過冷却解除に必要な力(振動加速度)は、図6のA〜Eのような曲線を描くと考えられる。なお、曲線Aは、ミネラルウォーターの場合を示し、曲線Bは、緑茶飲料物の場合を示し、曲線Cは、コーヒー飲料物の場合を示し、曲線Dは、スポーツ飲料物の場合を示し、曲線Eは、炭酸飲料物の場合を示す。
一方、本発明の冷却装置としての冷蔵庫の使用に際して、飲料物の冷却保存時や取出し時など、使用者の意図しない状況で飲料物に衝撃が加わり、過冷却状態を解除してしまうことが考えられる。そこで、飲料物に衝撃が加わりうる状況と、その状況下で飲料物に加わる力(振動加速度)を測定した。この結果を表2に示す。
表2.飲料に加わりうる衝撃(振動加速度)の大きさ
※ ここで、ドアとは、ヒンジ式ドアを示す。
表2.飲料に加わりうる衝撃(振動加速度)の大きさ
※ ここで、ドアとは、ヒンジ式ドアを示す。
表2より、通常の使用状況でも飲料物に約10m/s2前後の振動加速度が加わりうることが分かる。よって、安全率を考慮すると、ソフトドリンクの場合、約15m/s2前後でも過冷却状態を解除しないことが望ましいといえる。
ここで、図6より、過冷却解除力が約15m/s2となるのは、飲料温度が約−7〜−8℃を下回るときであり、すなわち、飲料温度が約−7〜−8℃を下回らないようにする必要がある。
以上より、上述のように、ソフトドリンクを飲料温度−7.0〜−3.0℃となるよう装置内温度の制御を行えば、使用性の面からも飲料物を最適に過冷却状態で保存できるということになる。つまり、図6の斜線で示された範囲である。
図7は、アルコールについて、冷却実験時の平均飲料温度と、そのときの飲料物の状態を示すグラフである。本実験では、ソフトドリンクと同様、約5℃の未開封の市販飲料をあらかじめ冷却した保存室内に投入し、投入から24時間後の保存状態の確認と、振動を加えるまたは開封するなどしたときの凍結状態の確認を行った。なお、実験には代表的な4種別8銘柄のガラスビン入り市販アルコール飲料を使用した。また、平均飲料温度は、飲料物が十分略一定温度といえる冷却開始後12時間〜24時間の飲料温度を平均して求めた。
図7より、ソフトドリンクと同様、アルコール飲料も飲料温度約−5℃以下の広範囲で最適に過冷却状態を維持できることが分かった(図中の●)が、特にアルコール飲料の場合、容器がガラスビンのものも多く、万一凍結した場合には容器を破損する可能性があるため、より精密に飲料温度を制御し、より高い確率で過冷却状態を維持する必要がある。
そこで、図7で過冷却状態を最適に維持したときの飲料温度の平均値、−9.5℃をセンター値として、飲料温度の変動量を変化させて冷却実験を行い、飲料温度の変動量と過冷却維持率の関係を求めた。この結果を図8に示す。なお、本実験でも、代表的な未開封の4種別8銘柄の市販飲料(初期温度約5℃)を、あらかじめ冷却した保存室内に投入し、投入から24時間後の保存状態の確認と、衝撃を与えるまたは開封するなどしたときの凍結状態の確認を行った。
図8より、飲料温度の変動が±1.0℃までの範囲では過冷却維持率100%であるが、温度変動さらに大きくなると、次第に過冷却維持率が低下している。よって、アルコール飲料を最適に過冷却状態で維持するには、飲料温度が−10.5〜−8.5℃となるよう装置内温度(上記温度切替室2の温度)の制御を行えばよいといえる。
しかし、例えば、冷蔵庫で飲料物を過冷却保存する場合、霜取運転や扉の開閉の頻度、冷蔵庫が設置される場所の雰囲気温度、個体差による冷却能力の違いなど、庫内の温度変動をもたらす要因が多数あり、上記温度範囲を逸脱しないためには、非常に精密な運転制御が必要と考えられる。また、そのような運転制御を行うには、場合によっては冷却機構の運転率を高める必要があり、消費電力が大きくなる可能性も考えられる。
そこで、保存するアルコール飲料物のアルコール度数によって、保存する温度帯設定を2段階に切替えるようにしてもよい。
図7において、各飲料種別ごとの実験結果とそのアルコール濃度から、ワインやカクテルのようにアルコール度数がおよそ10%までの場合(最適温度約−6℃〜−11℃)と、日本酒や梅酒のようにアルコール度数がおよそ10%を超える場合(最適温度約−9℃以下)で、最適な飲料温度範囲を大きく分けることができる。
そこで、上述と同様、図7で過冷却状態を最適に維持したときの飲料温度の平均値、−8.0℃(アルコール度数約10%以下)または−11.0℃(アルコール度数約10%以上)をセンター値として、飲料温度の変動量を変化させて冷却実験を行い、飲料温度の変動量と過冷却維持率の関係を求めた。この結果を、図9と図10に示す。
図9より、アルコール度数約10%以下の場合、飲料温度の変動が約±2.0℃までの過冷却維持率100%であるが、温度変動がさらに大きくなると、次第に過冷却維持率が低下している。よって、アルコール度数がおよそ10%までの飲料物を最適に過冷却状態で維持するには、飲料温度が−10.0〜−6.0℃となるよう装置内温度(上記温度切替室2の温度)の制御を行えばよいといえる。
また、図10より、アルコール度数約10%以上の場合、飲料温度の変動が約±2.0℃までの範囲では過冷却維持率100%であるが、温度変動がさらに大きくなると、次第に過冷却維持率が低下している。よって、アルコール度数がおよそ10%を超える飲料物を最適に過冷却状態で維持するには、飲料温度が−13.0〜−9.0℃となるよう装置内温度(上記温度切替室2の温度)の制御を行えばよいといえる。
以上より、保存する飲料物をより確実に過冷却状態とし、飲用時により確実に瞬時に凍結させるには、飲料温度が−7.0〜−3.0℃、および、−10.5〜−8.5℃の2段階で、または、−7.0〜−3.0℃、−10.0〜−6.0℃、および、−13.0〜−9.0℃の3段階で装置の冷却制御を行うことが好ましいといえる。
上記構成の冷却装置としての冷蔵庫によれば、上記制御部10は、上記飲料容器6内の上記飲料物の種類に応じて、上記温度切替室2の温度を制御して、上記飲料容器6内の上記飲料物を過冷却状態に保存するので、上記飲料物を、その種類に関わらず、確実に過冷却状態で保存し、確実に飲用時に凍結させることができる。
また、上記制御部10は、上記飲料物のアルコール濃度に基づいて、上記温度切替室2の温度を制御するので、上記飲料物を、過冷却状態とし、飲用時に凍結させる確実性をより高めることができる。
また、上記制御部10は、上記飲料物のアルコール濃度が1%未満であるときに、上記飲料物の温度が−7.0〜−3.0℃となるように、上記温度切替室2の温度を制御するので、アルコールを全く含まないあるいはほとんど含まない飲料物を、より確実に過冷却状態で保存し、より確実に飲用時に凍結させることができる。
また、上記制御部10は、上記飲料物のアルコール濃度が1%以上であるときに、上記飲料物の温度が−10.5〜−8.5℃となるように、上記温度切替室2の温度を制御するので、アルコール飲料を、そのアルコール度数によらず、より確実に過冷却状態で保存し、より確実に飲用時に凍結させることができる。
また、上記制御部10は、上記飲料物のアルコール濃度が1%以上10%未満であるときに、上記飲料物の温度が−10.0〜−6.0℃となるように、上記温度切替室2の温度を制御するので、低アルコール飲料を、より確実に過冷却状態で保存し、より確実に飲用時に凍結させることができる。
また、上記制御部10は、上記飲料物のアルコール濃度が10%以上であるときに、上記飲料物の温度が−13.0〜−9.0℃となるように、上記温度切替室2の温度を制御するので、アルコール度数の高い飲料物を、より確実に過冷却状態で保存し、より確実に飲用時に凍結させることができる。
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、本発明の冷却装置として、冷蔵庫以外に、クーラーボックスや、過冷却専用の装置であってもよい。また、制御部は、上記飲料物のアルコール濃度または糖濃度の少なくとも一方に基づいて、上記温度切替室の温度を制御するようにしてもよい。
1 冷蔵庫本体(冷却装置本体)
2 温度切替室(保存室)
3 温度切替室扉
4 操作ボタン
5 操作モニター
6 飲料容器
10 制御部
20 加速度センサー
2 温度切替室(保存室)
3 温度切替室扉
4 操作ボタン
5 操作モニター
6 飲料容器
10 制御部
20 加速度センサー
Claims (6)
- 飲料容器が保存される保存室を有する冷却装置本体と、
上記飲料容器内の飲料物の種類に応じて、上記保存室の温度を制御して、上記飲料容器内の上記飲料物を過冷却状態に保存する制御部と
を備えることを特徴とする冷却装置。 - 請求項1に記載の冷却装置において、
上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度または糖濃度の少なくとも一方に基づいて、上記保存室の温度を制御することを特徴とする冷却装置。 - 請求項2に記載の冷却装置において、
上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が1%未満であるときに、上記飲料物の温度が−7.0〜−3.0℃となるように、上記保存室の温度を制御することを特徴とする冷却装置。 - 請求項2または3に記載の冷却装置において、
上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が1%以上であるときに、上記飲料物の温度が−10.5〜−8.5℃となるように、上記保存室の温度を制御することを特徴とする冷却装置。 - 請求項2または3に記載の冷却装置において、
上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が1%以上10%未満であるときに、上記飲料物の温度が−10.0〜−6.0℃となるように、上記保存室の温度を制御することを特徴とする冷却装置。 - 請求項2、3および5の何れか一つに記載の冷却装置において、
上記制御部は、上記飲料物のアルコール濃度が10%以上であるときに、上記飲料物の温度が−13.0〜−9.0℃となるように、上記保存室の温度を制御することを特徴とする冷却装置。
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