JP2008291017A - Wip1発現増強剤及び癌治療増感剤 - Google Patents

Wip1発現増強剤及び癌治療増感剤 Download PDF

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Abstract

【課題】Wip1の発現を増強するWip1発現増強剤及びこのWip1発現増強剤を有する癌治療増感剤を提供する。
【解決手段】下記式(I)

に示す構造式の化合物を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、Wip1の発現を増強させるWip1発現増強剤、及びこのWip1発現増強剤を有する癌治療増感剤に係り、詳しくは、Wip1の発現の増強を介してガン治療増感効果を発揮し得るWip1発現増強剤、及びこのWip1発現増強剤を有する癌治療増感剤に関する。
ATM(ataxia−telangiectasia mutated)プロテインキナーゼ(以下、単にATMと称する。)、及びATR(ataxia telangiectasia and Rad−3−related)プロテインキナーゼ(以下、単にATRと称する。)は、細胞のDNA損傷に係る修復において、重要な役割を演じることが知られている(非特許文献1)。細胞は、紫外線(UV)や電離放射線(IR)照射により、DNA損傷を受け、チェックポイントシグナルカスケードが惹起され、DNA損傷を修復したりアポトーシスを起こすため、細胞周期をG1/S、中間S期及びG2/M期にアレスト(arrest)される。ATMを欠損するAT(ataxia−telangiectasia;血管拡張性失調症)患者由来の細胞は、G1/S及びG2/Mチェックポイントが欠落した発現型を示すため、IRに感受的である。従って、ATM及びATR並びにその下流経路は、染色体の維持に重要である。これらの事項が示すのは、ATM及び/又はATR活性の制御は、染色体の安定性を保持するのに必要であるのみならず、化学療法や放射線治療などの抗癌治療への適用が可能であるということである。従って、これらのシグナル伝達を制御することは、抗癌治療に有用であり、盛んに検討がなされている。
これらのシグナル経路を利用した抗癌治療への適用の例として、非特許文献2は、カフェイン(3,7−ジヒドロ−1,3,7−トリメチル−1H−プリン−2,6−ジオン)で補助した化学療法により、非増殖性の骨肉腫に係る腫瘍の切除が最小限ですむことを開示する。カフェインは、化学療法で惹起されたDNA損傷に反応してATMプロテインキナーゼ活性を阻害すると考えられる。また、近年、細胞にsiRNAをトランスフェクトしたり、リコンビナントのキナーゼからキナーゼ部位を欠落させたタンパク質を過剰発現させるなどして、ATMの主要な役割の解明がなされている(非特許文献3乃至5)。また、UVやIRの照射によりp53依存的に発現増強が観られるフォスファターゼ活性を有するWip1が、ATMのキナーゼ活性の活性中心である1981番目のセリン残基を脱リン酸化し、ATMの活性化を阻害することが報告されている(非特許文献6参照)。また、ATMの活性阻害剤であるカフェイン、ワートマンニンや、化学的にATM及びATRのプロテインキナーゼ活性を阻害する研究が広く行われているが、癌細胞の増殖を阻止し、抗癌治療に十分に適用し得る化合物が得られていないのが現状である。このことは、ATM及びATR並びにこれらを取り巻くシグナル伝達経路が複雑であることに起因するものであって、ATM及び/又はATRに特異的なこれらのシグナル伝達経路を有効に阻害して、上記の目的と達し得る薬物が望まれていた。
ATM及びATRは、細胞におけるDNA損傷に対する反応の間、p53の15番目のセリン残基を直接的かつ特異的にリン酸化する。p53は、DNA損傷で誘導されるG1/Sチェックポイントにおいて、中心的な役割を演じる。ATM及びATRは、近年の知見により、UV光の曝露やガンマ線照射(IR)に反応したp53の15番目のセリン残基のリン酸化に最も著明な役割を演じることが示唆されている。従って、p53の15番目のセリン残基のリン酸化は、UV又はIRで誘導したDNA損傷の後のG1/Sチェックポイントが機能しているかどうかを予測する妥当な指標である。また、このリン酸化は、UVやIRに対する損傷反応において、ATM及びATRの活性を反映するものである。G1/Sと同様にG2/Mチェックポイントは、DNA損傷細胞において、ATRとATMとで制御される。G2/Mチェックポイントは、非常に重要であり、p53欠損又は突然変異腫瘍などの多くのガン細胞において保存されている。特に、p53の機能を欠いた細胞もまた、G2/Mチェックポイントの欠損により、DNA損傷に対して感受的である。事実、G2/Mチェックポイントに関連するATM及びATRは、分化細胞の染色体維持に重要である。これらの結果により、ATMプロテインキナーゼ活性の阻害を含むG2/Mチェックポイントに係る一連のシグナルを阻害することが抗癌治療の候補になると示唆される。
一方、天然由来の種々の物質は、副作用が少なく、有用な抗癌剤の候補として研究が進められており、事実、現在用いられている抗ガン剤の70%以上は、天然由来又はその類縁物質である。なかでも、スクアレン(Squalene;SQ)は、サメの肝臓をはじめオリーブ油等を構成する化合物のひとつであり、近年はサプリメントとしても重用されている(例えば、サメミロン(商標登録)(日誠マリン社製))。スクアレンは、本来ヒトの組織中に微量ながら存在している未知なる機能を備える成分として期待されている。また、スクアレンは、抗ガン作用を有する旨の示唆が報告されているが、その分子レベルでの作用など、詳細な作用機序は、明らかになっていない。従って、スクアレンについて示唆されている抗ガン作用を発揮するに至る生体内での作用機序は、依然として明らかにされていないのが現状である。
Shiloh Y著、"ATM and ATR: networking cellular responses to DNA damage"、Curr Opin.Genet.Dev.、2001年、11巻、p.71−77 Tsuchiya Hら著、"Caffeine−assisted chemotherapy and minimized tumor excision for nonmetastatic osteosarcoma."、Anticancer Res.、18巻、1998年、p.657〜666 Shackelford REら著、"The Ataxia telangiectasia gene product is required for oxidative stress−induced G1 and G2 checkpoint function in human fibroblasts."、J.Biol.Chem.、2001年、276巻、p.21951〜21959 Wright JAら著、"Protein kinase mutants of human ATR increase sensitivity to UV and ionizing radiation and abrogate cell cycle checkpoint control."、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、1998年、95巻、p.7445〜7450 Shigeta Tら著、"Defective control of apoptosis and mitotic spindle checkpoint in heterozygous carriers of ATM mutations."、Cancer Res.、1999年、59巻、p.2602〜2607 Shreeramら著、Molecular Cell、2007年、23巻、p.757−764 Sarkaria JNら著、"Inhibition of ATM and ATR kinase activities by the radiosensitizing agent, caffeine."、Cancer Res.、1999年、59巻、p.4375〜4382 Tibbettsら著、Gene & Development、2000年、14巻、p.2989〜3002
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、Wip1の発現を増強するWip1発現増強剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、このようなWip1の発現を増強するWip1発現増強剤を有する癌治療増感剤を提供することを目的とする。
本発明によるWip1発現増強剤は、下記の式(I)に示すスクアレンを有することを特徴とする。
また、本発明による癌治療増感剤は、上記式(I)に示すスクアレンを有することを特徴とする。
本発明によれば、Wip1の発現を増強することが可能となる。また、上記式(I)に示すスクアレンによるWip1の発現増強は、ATM及びATRを直接阻害することなく実現し得るものである。
また、Wip1の発現増強により、ATMプロテインキナーゼ活性を阻害することが可能となる。
さらに、本発明によれば、Wip1の発現増強を介して、癌治療の効果をさらに高めることが可能となる。
本発明者らは、抗ガン剤又は放射線や化学療法の抗癌治療補助薬という観点で、スクアレンをDNA損傷に係る反応におけるシグナル伝達経路に適用することを想到した。
本発明によるWip1発現増強剤としては、天然品など、種々の市販で利用可能なスクアレンを利用してもよく、さらにサメ肝臓やオリーブ油等から抽出/精製したスクアレンであってもよい。
本発明による癌治療増感剤は、上記のWip1発現増強剤を有する。本発明による癌治療増感剤において、このWip1発現増強剤としては、医薬的に許容可能な塩であってもよい。
本発明による癌治療増感剤は、癌の化学療法剤とともに用いられてもよい。この化学療法としては、本技術分野公知の種々の抗癌剤を用いたものであってもよく。このような抗癌剤としては、限定されないが、シクロフォスファミド、イホスファミド、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、カルボコン、ダカルバジン、塩酸ニムスチン、ラニムスチンなどのアルキル化剤;テガフール、メトトレキサート、メルカプトプリン、フルオロウラシル、カルモフール、ドキシフルリジン、カペシタビン、シタラビンオクホスファート、ヒドロキシカルバミド、シタラビン、塩酸ゲムシタビン、リン酸フルダラビン、エノシタビンなどの代謝拮抗剤;硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンデシン、ドセタキセル水和物、パクリタキセル、酒石酸ビノレルビンなどのアルカロイド系、塩酸ドキソルビシン、塩酸エピルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸イダルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸アムルビシン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、塩酸ブレオマイシン、塩酸ペプロマイシンなどの抗生物質抗癌剤;エトポシド、塩酸イリノテカン、塩酸ノギテカンなどのトポイソメラーゼ阻害薬;リン酸エストラムスチンナトリウム、フルタミド、ビカルタミド、酢酸ゴセレリン、酢酸リュープロレリン、クエン酸トレミフェン、塩酸ファドロゾール水和物、アナストロゾール、エキセメスタン、メピチオスタン、酢酸メドロキシプロフェステロンなどのホルモン製剤;シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチンなどの白金製剤;トラスツズマブ、リツキシマブ、メシル酸イマチニブ、ゲフィチニブなどの分子標的治療薬;クレスチン、レンチナン、シゾフィラン、抗悪性腫瘍溶連菌製剤、ウベニメクスなどの非特異的抗悪性腫瘍剤;
塩酸ミトキサントロン、塩酸プロカルバジン、ペントスタチン、クラドリビン、ソブゾキサン、トレチノイン、L−アスパラギナーゼ、アセグラトン、ミトタン、ポルフィマーナトリウム、タラポルフィンナトリウム、三酸化ヒ素などのその他の抗癌剤が挙げられる。なかでも、この化学療法剤としては、テガフールなどの核酸代謝拮抗剤が好ましい。
本発明による癌治療増感剤は、癌の放射線療法とともに用いられてもよい。
これら化学療法剤及び放射線療法などの各種抗癌療法は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いられてもよい。
本発明による癌治療増感剤は、ATR及びATMのキナーゼ活性を阻害しないものであってもよい。
本発明による癌治療増感剤は、上記の化学療法剤をさらに有してもよい。また、本発明による癌治療増感剤は、この他、医薬的に許容可能な種々の成分を有してもよく、このような成分としては、キャリア、アジュバント、ビヒクルが挙げられ、このようなキャリア、アジュバント、ビヒクルとしては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝液物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸エステル、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられる。
本発明による癌治療増感剤の形態としては、固形状でも、液状でもよく、懸濁液であってもよい。この懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤および懸濁剤を用いて、当該技術分野で公知の方法に従って、調製されてもよい。また、本発明による癌治療増感剤は、無菌で調製されてもよく、注射用として調製されてもよい。このような液状の癌治療増感剤に用いるビヒクル、溶媒としては、例えば、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウムが挙げられる。また、本発明による癌治療増感剤は、固体状の希釈剤を用いてもよく、このような希釈剤としては、合成のモノグリセリドやジグリセリド、脂肪酸(例えば、オレイン酸)やそのグリセリド誘導体、長鎖アルコール希釈剤や分散剤が挙げられる。
本発明による癌治療増感剤の投与形態としては、経口的であっても、非経口的であってもよい。経口的に投与される場合、本発明による癌治療増感剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒、細粒、トローチ、エリキシル剤、懸濁液、溶液の各形態であってもよい。また、非経口的に投与される場合、本発明による癌治療増感剤は、注射剤、輸液、点眼剤、経皮パッチ、座剤、浣腸、軟膏、ローション、クリーム、エアロゾルの各形態であってもよい。これらの製剤は、本技術分野公知の賦形剤及び/又は希釈剤を有してもよく、限定されないが、例えば、錠剤用キャリア(ラクトースおよびコーンスターチ)、錠剤用潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム)、カプセル剤用希釈剤(ラクトースおよび乾燥コーンスターチ)、懸濁液用乳化剤及び懸濁剤、座剤用賦形剤(ココアバター、蜜ろう、およびポリエチレングリコール)、外用キャリア(鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水)、ローション又はクリーム用キャリア(鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス(cetyl esters wax)、セテアリールアルコール(cetearyl alcohol)、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水)が挙げられる。また、本発明による癌治療増感剤には、その他の成分を添加してもよく、例えば、防腐剤(ベンジルアルコニウムクロライド、ベンジルアルコール)、吸収促進剤、可溶化剤(フルオロカーボン)、分散剤、甘味料、香料、着色剤が挙げられる。
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
(実施例1−1)
ヒト肺ガン細胞株A549細胞(American Tissue Type Collection社製)を、10%のウシ胎児血清(FBS)、100μg/mLのストレプトマイシン及び100ユニット/mLのペニシリンを含有するDMEM培地(以下、増殖培地と称する。)中で500個/60mmディッシュとなるように播種して、一昼夜培養した後、2μM〜200μMの最終濃度となるように培地中にスクアレン(日誠マリン社製;50mMとなるようにスクアレン含有メタノール溶液を調製し、培地中で最終濃度となるように添加して用いた。以下、同様。)を添加した。その後、14日間の培養を行い、2%のメチレンブルーの50%メタノール溶液によりコロニーを染色し、生細胞数をカウントした。その結果を図1Aに示す。縦軸は、未処理細胞に対する処理細胞における生細胞の比率を百分率で示し、横軸は、スクアレンの濃度(μM)を示す。
(実施例1−2)
実施例1−1と同様に播種し1日培養し増殖培地を除いて得たA549細胞について、10μM及び100μMの最終濃度のスクアレンで1時間処理した。この処理した細胞に、Stratalinker(Stratagene社製)を用いて25、50及び100J/mの紫外線(波長254nmを用いた。UV照射とも称する。以下同様)を照射し、この細胞にそれぞれ同様の最終濃度のスクアレンを有する増殖培地(以下、スクアレン含有培地と称する。)を添加して、上述と同様に14日間培養を行った。得た細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、上述と同様にクローン形成法に従って、生細胞数をカウントした。その結果を図1Bに示す。図1B中、横軸は、照射したUVの照射強度(J/m)を示し、縦軸は、未処理細胞群に対する処理細胞群における生細胞の比率を百分率で示す。また、図1B中、○印は、スクアレンを処理しない群を示し、△印は、10μMのスクアレンで処理した群を示し、■印は、100μMのスクアレンで処理した群を示す。また、各印及び各印におけるバーは、平均±標準誤差(n=4)を示す。
(実施例1−3)
実施例1−2において、10μM及び100μMの最終濃度のスクアレンに代えて、30μM及び100μMのスクアレンを用い、25、50及び100J/mのUV照射に代えて、増殖培地を除かずに2及び6グレイ(Gy)のγ線(137Csに由来するもの;以下、同様。)の照射を行った以外は、実施例1−2と同様に行った。その結果を、図1Cに示す。図1C中、横軸は、γ線照射(以下、IR照射とも称する。)の照射線量(Gy)を示し、縦軸は、未処理細胞群に対する処理細胞群における生細胞の比率を百分率で示す。また、図1C中、○印は、スクアレンを処理しない群を示し、▲印は、30μMのスクアレンで処理した群を示し、■印は、100μMのスクアレンで処理した群を示す。
(実施例2−1)
A549細胞を増殖培地で3万個/cmとなるように10cmディッシュに播種し、一昼夜培養した後、10又は100μMの最終濃度となるように培地中にスクアレンを添加した。培養3時間後、細胞を回収し培地を除去し、下述のFACS分析法に従って、細胞周期分布割合を測定した。その結果を図2Aに示す。
(実施例2−2)
実施例2−1と同様にスクアレンを培地に添加して3時間培養して得たA549細胞に、25又は100J/mの照射強度を有するUVを用いて照射を行った後、これに新鮮な増殖培地を添加してさらに1時間培養した。この細胞を回収し、下述のヒストンH3リン酸化量の測定に従って、解析を行った。結果を図2Bに示す。図2B中、丸で囲った部分は、M期の細胞群を示し、その上方に記載の数値は、解析した全細胞数に対するM期の細胞群の数の割合を示す。また、図2Cは、図2Bを数値化したグラフであり、各処理毎に3枚の独立したディッシュで処理して得た細胞群についてそれぞれ解析して統計的に処理したものである。図2Cに記載の4つのUV照射群のそれぞれのバーのうち、左のバーは、コントロールを示し、中央のバーは、10μMのSQで処理した群を示し、右のバーは、100μMのSQで処理した群を示す。統計処理は、SASとダンカンの多群比較検定により行い、P値が1%未満となる場合にのみ有意差を有する群として*印を付した。
(実施例2−3)
実施例2−2において、10又は100μMの最終濃度のスクアレンを有するスクアレン含有培地に代えて、100μMのスクアレン含有培地を用い、25又は100J/mの照射強度を有するUVに代えて、6GyのIR照射を行った以外は、実施例2−2と同様に行った。その結果を図2Dに示す。また、図2Eは、図2Dを数値化したグラフであり、上述と同様である。
(実施例3)
A549細胞を増殖培地で3万個/cmとなるように10cmディッシュに播種し、一昼夜培養した後、3、10、30又は100μMの最終濃度となるように培地中にスクアレンを添加した。培養1時間後、培地を除去し、10Gyの照射強度を有するIRを用いて照射を行った後、さらに3時間培養した。その後、下述の蛋白調製に準じて細胞中の蛋白質を抽出した後、下述のイムノブロット分析に準じて、SMC1蛋白の966番目のセリン残基のリン酸化体(P−SMC1(Ser966))、p53蛋白の15番目のセリン残基のリン酸化体(P−p53(Ser15))及びチューブリン(Tublin)について、イムノブロット分析を行った。その結果を図3に示す。
(実施例4)
基質として1μgのリコンビナントPHAS−Iタンパク(Alexis Biochemicals社製)を、下述のリン酸化反応用ATR混液及びATM混液の調製に従って得たリン酸化反応用ATR混液及びATM混液に添加するとともに、適当な濃度の32P−ATPを有する300μMのATPを添加して、30℃で20分間反応させた。この反応液の4倍濃度のSDSサンプルローディングバッファー(200mMのTris−HCl(pH6.8)、400mMのDTT及び8%のSDS)を反応液に25%の容量で添加して反応を停止し、この混液を12%SDS−PAGEにかけ、ゲルを乾燥後、上述の混液中の32P−PHAS−Iに対応するバンドに関し、オートラジオグラフィーで、β線量をカウントした。結果を図4A及び図4Bに示す。図4A及び図4Bは、それぞれATM及びATRの相対活性を示し、横軸は、スクアレンの濃度を示し、縦軸は、スクアレン無添加に対するカウントの相対値を示す。
(実施例5)
A549細胞を増殖培地で3万個/cmとなるように10cmディッシュに播種し、一昼夜培養した後、3、10、30、100又は300μMの最終濃度となるように培地中にスクアレンを添加した。培養3時間後、下述の蛋白調製に準じて細胞中の蛋白質を抽出した後、下述のイムノブロット分析に準じて、Wip1の発現について、イムノブロット分析を行った。その結果を図5に示す。
(実施例6)
7週齢のオスのBALB/c系マウス(24匹)の下肢足底部に、マウス結腸癌細胞株であるColon26細胞を移植し、移植8日目から、1日おきに、TS−1(大鵬薬品社製)を15mg/kgで経口投与するとともに、100重量%のSQ(以下、単にSQとも称する。)(日誠マリン工業社製)(15μL)を皮下投与した。細胞移植後5日目から、細胞の移植部位から癌組織を外科的に採取し、その容量を定法に従って計測した。その結果を図6に示す。なお、図6において、縦軸は、細胞を移植した部位から採取した癌組織の容積(mm)を示し、横軸は、動物に細胞を移植してからの日数を示す。全ての実験区でガン細胞を同じ手順で移植して実験に供した。「コントロール(CT)」は、対象群であって、TS−1及びSQの代わりに、PBSを投与及び注射した群を示し、「TS−1」は、上記のTS−1の投与のみを行った群を示し、「SQ」は、上記のSQの投与のみを行った群を示し、「SQ+TS−1」は、上記のTS−1の投与及びSQの投与を行った群を示す。また、各点のバーは、平均±標準偏差を示す。
(実施例7)
実施例6において、BALB/c系マウスに代えて、重度複合免疫不全マウスであるSCID(Sevefe Combined ImmunoDeficiency)マウスを用い、Colon26細胞に代えて、poorly differentiated adenocarcinoma由来のヒト胃癌細胞株であるMKN45細胞を用い、TS−1を投与する代わりに、3GyのX線(IR)を下肢に直接照射し、15μLのSQの代わりに、30μLのSQを用い、細胞移植後5日目から投与等を行った代わりに、12日目から投与等を行った以外は、実施例6と同様に行い、癌組織の容積を計測した。その結果を図7に示す。なお、図7の縦軸及び横軸並びに各点のバーは、図6のものと同様である。
(実施例8)
実施例7において、X線を照射する代わりに、TS−1(大鵬薬品社製)を15mg/kgで経口投与した以外は、実施例7と同様に行い、癌組織の容積を計測した。その結果を図8に示す。なお、図8の縦軸及び横軸並びに各点のバーは、図6のものと同様である。
(実施例9)
実施例8において、細胞移植後23日目に細胞の移植部位から組織を採取した。この採取した組織について、実施例3に準じたp53蛋白の15番目のセリン残基のリン酸化体(P−p53(Ser15))及びSMC1蛋白の966番目のセリン残基のリン酸化体(P−SMC1(Ser966))に係るイムノブロット分析、並びに実施例5に準じたWip1発現に係るイムノブロット分析を行った。その結果を図9に示す。
(FACS分析)
細胞をPBSで洗浄した後、70%氷冷エタノールで固定した。遠心分離により回収したペレットにPBSを用いて洗浄した後、再度遠心分離を行った。ペレットを最終濃度100μMのPropidium Iodide(Sigma社、以下PI)と40μg/mlのRNaseAを含む溶液(PI Solution)で懸濁し30分間室温にて培養した。その後フローサイトメトリー(Beckman−Coulter社製)で細胞周期の解析を行った。
(ヒストンH3リン酸化量の測定)
細胞をPBSで洗浄した後、70%氷冷エタノールで固定した。これに、0.25%Triton X−100含有PBSを添加し、氷上で30分間載置した後、細胞を回収し、遠心分離(500×g、5分間)して得た細胞ペレットに、1%のウシ血清アルブミン(BSA)及び1μgの抗ウサギ血清(ヒストンH3の10番目のセリン残基のリン酸化体に特異的なもの)含有PBS(100μL)を添加して、室温で4時間載置した。その後、これを1%BSA含有PBSで洗浄し、1%BSA含有PBSで100倍に希釈したFITCでコンジュゲートしたヤギ抗ウサギIgG抗体を添加し、暗所で30分間、載置した。さらに、上述のFACS分析に準じてPI染色を行った後、フローサイトメトリー(Beckman−Coulter社製)でリン酸化ヒストンH3量を測定した。
(イムノブロット分析)
50μgの蛋白(下述の蛋白調製に準じて調製したもの)をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(12.5%)を行い、泳動後の各蛋白を、定法に従いニトロセルロース膜に転写し、5%スキムミルク及び0.1%Triton X−100含有トリス緩衝生理食塩水(TBS−T)を用い、室温で1時間、ブロッキング反応を行った。得た膜を、下記の所望の抗体で4℃16時間インキュベートし、その後、西洋わさび由来ペルオキシダーゼでコンジュゲートした二次抗血清(下述の所望の抗体の由来動物に対するもの)で、室温1時間インキュベートした。その後、標的蛋白を、ECL reaction kit(Amersham社製)及びchemiluminescence film(Amersham社製)で可視化して、蛋白像を得た。
<抗体>
p53抗体(Calbiochem社製)
リン酸化p53抗体(15番目のセリン残基がリン酸化されているものに対するもの)(Cell signaling technology社製)
リン酸化SMC1抗体(966番目のセリン残基がリン酸化されているものに対するもの)(Bethyl社製)
リン酸化ATM抗体(1981番目のセリン残基がリン酸化されているものに対するもの)(Rockland社製)
ATM抗体(ポリクローナルウサギIgG抗体;H−300;Santa Cruz社製)
ATR抗体(ポリクローナルウサギIgG抗体;Bethyl社製)
チューブリン抗体(Sigma社製)
Wip1抗体(ポリクローナルウサギIgG抗体;H−300;Santa Cruz社製)
(蛋白調製)
細胞を、氷冷PBSで培養ディッシュから剥離し、冷PBSで2回洗浄した後、遠心分離して得た細胞ペレットに、下述のUTB緩衝液で可溶化して、細胞由来の蛋白混合物を調製した。蛋白量は、Protein Assay Kit(Bio−Rad社製)で測定した。
<UTB緩衝液>
8mM 尿素
150mM 2−メルカプトエタノール
50mM Tris(pH 7.5)
(リン酸化反応用ATR混液及びATM混液の調製)
リン酸化反応用ATR混液には、非特許文献8等の公知の方法を用いて製造されたFlagでタグ付けしたATRを用いた。詳しくは、非特許文献8に開示の方法は、ATR遺伝子(配列番号1)のBamH1−SwaIフラグメント(1kb)を、Flag(DYKDDDDK)をN末端に有するATRに対応する遺伝子に置き換えてPCRで増幅させた遺伝子産物を、pcDNA3.1に導入したプラスミドから合成する方法である。また、リン酸化反応用ATM混液には、非特許文献7の公知の方法及び抗ATM抗体を用いて得たATMを用いた。
Flagでタグ付けしたATRプラスミド(配列番号1)を、下述のリン酸カルシウム法に準じて、293T細胞(ATCC番号CRL−11268)にトランスフェクトし、2日間培養した。一方、ATMの精製には、何も処理を行わず培養しフラスコを満たしたA549細胞を用いた。その後、上述のUTB緩衝液を下述のIP緩衝液に変更して行った上述の蛋白調製に準じて得た蛋白混合物5mgを、4℃4時間、20μgの抗Flag−M2モノクローナル抗体(Sigma社製)又は抗ATM抗体で、免疫沈降させた。これと、4℃1時間、プロテインGセファロース(Amersham社製)でコンジュゲートしたビーズとをインキュベートした。得た免疫複合体を、下述のTGN緩衝液で2回洗浄し、さらに、下述のキナーゼ緩衝液で1回洗浄し、リン酸化反応用ATR混液及びATM混液(配列番号2及び3)を得た。
<IP緩衝液>
10mM Tris(pH7.5)
1mM EDTA
1mM EGTA
150mM NaCl
0.5% NP−40
1% Triton X−100
1mM フェニルメタンスルフォニルフルオライド(PMSF)
2μg/mL ペプスタチン
2μg/mL アプロチニン
1mM p,p’−ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)
<TGN緩衝液>
50mM Tris(pH7.4)
50mM グリセロリン酸
150mM NaCl
1% Tween20
10% グリセロール
<キナーゼ緩衝液>
10mM Hepes(pH7.5)
50mM グリセロリン酸
50mM NaCl
10mM MgCl
10mM MnCl
<リン酸カルシウム法>
293T細胞を増殖培地中で2×10個/cmとなるように10cmディッシュに播種して一昼夜培養した。その後、上述のFlag−ATM及びFlag−ATRを最終濃度25mMのBES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)と25mMのCaClとに混合して、細胞にトランスフェクトさせた。一晩培養後、新鮮な増殖培地に交換して2日間培養した。
(考察)
ATM(ataxia telangiectsia mutated)及びATR(ataxia telangiectasia and Rad−3−related)は、細胞周期のDNA損傷に対する反応に係るシグナル伝達において、重要な役割を演じる。ATM及びATRは、Chk1、p53、NBS1、Brca1、SMC1などのいわゆるチェックポイント・タンパク質群や転写因子をリン酸化する。発癌の原因ともなる次の世代へのDNA損傷の持ち越しを防ぐために、上述のチェックポイントシグナルは、細胞周期全体を制御している。ATM又はATRの不全は、UV若しくはIR照射又は障害誘導性薬剤により誘導されたDNA損傷により、細胞の生存率を低下させる。このことは、損傷を受けたDNAの修復、維持及び管理において、ATM及びATRが必要であることを示す。本発明において、本願出願人は、in vivoでのDNA損傷反応におけるチェックポイントシグナル伝達経路に対してスクアレンが阻害効果を有することを示す。
ガン細胞に対するスクアレン自体の影響を調べるため、UVやIRの照射を行わないで、A549細胞の生存率に及ぼすスクアレンの濃度依存性を検討した。その結果、図1Aに示すとおり、200μMの濃度まで若干低下する傾向が認められたが、その減少は、10%程度と極めて弱いことが分かった。このことから、スクアレンは、μMオーダーの濃度では、細胞毒性を示さないと言える。
また、UV及びIR照射で惹起されるA549細胞の細胞死に及ぼすスクアレンの影響を調べた。その結果、図1Bに示すように、25、50及び100J/mの照射強度を有するUVで照射を行ったところ、細胞は、照射強度依存的に細胞死が起こった。一方、予め10及び100μMのスクアレンで処理した細胞群では、UV照射した細胞群に比して、生存率が顕著に低下した。特に、50及び100J/mで照射した群では、顕著であった。さらに、図1Cに示すように、同様の結果が、IR照射を行った群においても、確認された。
まとめると、照射強度の弱いUV照射では、その差が顕著ではなかったが、比較的高強度のUV照射又はIR照射において、スクアレンによるガン細胞生存率の低下が認められた。このことは、DNAの一本鎖切断を主に認識し作用するATRより、むしろ二本鎖切断を主に認識するATMの作用をスクアレンが弱めている可能性が示唆された。
次に、これらの細胞毒性が、細胞周期の活動とどのように関連しているかを検討した。ガン細胞の細胞周期に対するスクアレンの影響を検討することで、スクアレンが細胞周期の速度調節を行っているか否かを判断することができる。もし、スクアレン自体が細胞周期の速度を調節する作用を有するとすると、ガン細胞を一時的に特定の細胞周期に留める(アレストする)ことで細胞の増殖を抑制したり、特定の細胞周期に見られる一過性のタンパク質発現を誘導することになったり、G2/MチェックポイントなどのDNA損傷に係るチェックポイントへの作用を詳細に調べる上で障害となる。ところが、ガン細胞をスクアレン単独で処理した場合、図2Aに示すように、スクアレンは、細胞を特定の細胞周期に一時的に蓄積させないことが分かった。従って、スクアレンは、細胞周期の速度調節作用を有さないことが証明された。
ヒストンH3は、正常な分裂細胞においてその10番目のセリン残基がリン酸化されるが、DNA損傷により、リン酸化ヒストンH3陽性細胞の割合は減少する。図2B及び2Cによると、10、25及び100J/mのUV照射によりリン酸化ヒストンH3の割合がUVの照射強度に依存して減少した。一方、25J/mのUV照射では有意ではなかったが、100J/mのUV照射により、スクアレンは、G2/Mチェックポイントを顕著に崩壊させた。事実、高線量のUV照射において、DNA損傷に対する反応中、スクアレンは、G2/Mチェックポイントを完全に無効にした。一方、図2D及び2Eによると、A549細胞にIR照射した場合、G2/Mチェックポイントを有意に崩壊させた。図1B及び1Cでも観察されたように、図2B及び2C並びに図2D及び2Eに示すように、比較的強い照射強度でUV又はIR照射を行った時にスクアレンがチェックポイント活性を阻害したことは、G2/Mチェックポイントにおいて、スクアレンが、ATRよりもむしろATMの活性に直接的に及び/又は間接的に阻害する効果を有することが示唆された。
そこで、in vivo(細胞内)においてATMキナーゼ活性に及ぼすスクアレンの阻害活性を検証するため、UV又はIR照射により誘導されるDNA損傷の後のp53リン酸化を検討した。p53は、in vivoにおいて、種々のプロテインキナーゼにより、複数の部位でリン酸化を受けることが知られている。事実、p53は、細胞がUV照射、IR照射及びメチル化剤により障害された際、15番目のセリン残基においてATR及びATMにより特異的にリン酸化を受ける。本発明において、A549細胞に対してIR照射を行った場合、SMC1とp53のいずれも強くリン酸化された。このリン酸化レベルは、予めスクアレンで処理した場合、弱まることが分かった。しかも、このリン酸化のシグナルは、スクアレンの濃度依存的に減弱することも確認された。一方、細胞をスクアレン単独で処理しても、図2Aに示すように、細胞周期の局所的な蓄積や偏りは、認められなかった。これらのことは、スクアレンによるG1期で一過性に増加するp53のタンパク質量の増加に例えられるような特定の細胞周期への蓄積によるチェックポイント分子のリン酸化によるものではなく、ATMやATRなど、チェックポイントの上流に位置するキナーゼ活性が著しく損なわれた結果によるものであると考えられた。
そこで、本発明者らは、スクアレンがATM及びATRの活性を酵素的に直接阻害している可能性について検討した。非特許文献7は、A549アデノカルシノーマ細胞におけるATM及びATRプロテインキナーゼに対するカフェインの阻害効果を開示する。本発明者らは、この文献と同一の方法により、in vitroにおけるATMおよびATRのプロテインキナーゼ活性に及ぼすスクアレンの影響を検討した。その結果、図4A及び4Bに示すように、スクアレンをキナーゼ緩衝液とインキュベートしても、ATM及びATRのいずれの活性も阻害されることが確認されなかった。これらの結果から、スクアレンは、ATM及びATRに直接作用してそのキナーゼ活性を阻害するのではなく、in vivoにおいて、ATM又はATRに影響を及ぼす他のシグナル関連分子に作用することで、ATM及びATRの活性を阻害し、それにより、p53などの下流のチェックポイント分子の活性制御を行っているものと示唆された。
スクアレンは、in vivoにおいて、ATMキナーゼ活性に対して阻害効果を有することが図1B及び1C並びに図2A乃至2Eの結果から、明らかとなったが、一方で、スクアレンは、図4A及び4Bの結果から、ATM及びATRの分子に直接作用して、阻害効果を惹起しているのではないことが明らかとなった。そこで、スクアレンがどのようにATR及び/又はATMのキナーゼ活性を制御しているかについて、検討した。上述したように、非特許文献6(Wip1−Chk1)は、Wip1が脱リン酸化酵素としてATMの活性を制御していることを開示した。そこで、スクアレンがWip1の発現を促進することによりATMの活性を負に制御しているか否かをウェスタンブロッティングで確認した。
まず、A549細胞を3〜300μMの濃度のスクアレンで処理したところ、図5に示すように、Wip1の発現は、スクアレンの濃度依存的に顕著に増加した。一方、A549細胞をγ線照射したところ、図3に示すように、SMC1及びp53のリン酸化体(P−SMC1(Ser966);SMC1の966番目のセリン残基がリン酸化されたもの、P−p53(Ser15);p53の15番目のセリン残基がリン酸化されたもの)は、顕著に増加したが、スクアレンの濃度増加にともない減少した。つまり、Wip1の発現増強と、SMC1及びp53のリン酸化体の蓄積とが、反比例していることが明らかとなった。本発明に用いたSMC1及びp53のリン酸化部位は、ATMの活性化により引き起こされることを考え併せると、これらの結果から、スクアレンは、非特許文献6にも示されている、ATMの特異的脱リン酸化酵素であるWip1の発現を増強することにより、ATMの活性を間接的に阻害していることが証明された。
スクアレンは、上記の通り、株化した癌細胞において、ATMの特異的脱リン酸化酵素であるWip1の発現を増強することにより、ATMの活性を間接的に阻害していることを示した。そこで、このようなスクアレンの効果が癌のモデル動物においても同様に得られるかどうか、検討した。その結果、図6に示すように、BALB/c系マウスにマウス結腸癌細胞株であるColon26細胞を移植して作成した癌のモデル動物において、化学療法剤の一種であるTS−1(テガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウムを含有)を経口投与したところ、移植部位である下肢において形成された癌組織の容積は、減少し、また、スクアレンを皮下投与した場合も、移植部位である下肢において形成された癌組織の容積は、減少した。一方、このモデル動物において、TS−1とスクアレンとを併用投与した場合、移植部位である下肢において形成された癌組織の容積は、TS−1又はスクアレンの単独投与群と比較して、顕著に減少した。また、このような併用投与による顕著な減少は、投与後、経時的にさらに促進された。このことは、化学療法剤であるTS−1の単独でのマウスにおける癌増殖抑制作用が、スクアレンにより増感されたことを示すものである。このようなスクアレンによる増感の傾向は、重度複合免疫不全マウスであるSCIDマウスにヒト胃癌細胞株であるMKN45細胞を移植して作成したモデル動物においても、観察された(図8)。
一方、図7に示すように、重度複合免疫不全マウスであるSCIDマウスにヒト胃癌細胞株であるMKN45細胞を移植して作成したモデル動物において、移植部位である下肢にX線を照射したところ、癌組織の容積は、それほど顕著に減少しなかったが、スクアレンの単独投与により、一定程度の容積の減少が観察された。また、このモデル動物において、X線の照射とともにスクアレンを投与したところ、癌組織の容積は、コントロールと比較して、顕著に減少した。この減少は、X線の照射のみを行った群に対しても、スクアレンを単独で投与した群に対しても、顕著なものであった。また、このような併用投与による顕著な減少は、照射又は投与後、経時的にさらに促進された。
このような併用投与による各種抗癌療法による増感作用が、実施例3及び5で示した培養細胞で見られたWip1の発現及びその下流のシグナルの増減等を介して発現されたものであるか否かを検討した。その結果、図9の一段目に示すように、Wip1の発現は、コントロールと比較して、SQの投与によって増加した。一方、図9の二段目及び三段目にそれぞれ示すように、p53蛋白の15番目のセリン残基のリン酸化体(P−p53(Ser15))及びSMC1蛋白の966番目のセリン残基のリン酸化体(P−SMC1(Ser966))は、コントロールと比較して、増加が認められなかった。また、図9の一段目に示すように、Wip1の発現は、コントロールと比較して、TS−1の投与によって、増加するとともに、図9の二段目及び三段目にそれぞれ示すように、p53蛋白の15番目のセリン残基のリン酸化体(P−p53(Ser15))及びSMC1蛋白の966番目のセリン残基のリン酸化体(P−SMC1(Ser966))は、増加した。さらに、SQとTS−1とを併用投与した群では、図9の一段目に示すように、Wip1の発現は、TS−1のみの投与群と同様であり、一方で、p53蛋白の15番目のセリン残基のリン酸化体(P−p53(Ser15))及びSMC1蛋白の966番目のセリン残基のリン酸化体(P−SMC1(Ser966))は、TS−1のみの投与群と比較して、減少した。このようなWip1の発現及びその下流のシグナル増減の傾向は、上記の実施例3及び5で示した培養細胞で観察された傾向を生体においてもほぼ再現したものである。
つまり、スクアレンの単独投与区において、コントロールと比較して、Wip1タンパク質の発現が誘導されたことから、この誘導は、DNA損傷を検知した結果によるものではなく、スクアレン自身が誘導した結果であると考えられる。一方、TS−1の単独投与区では、Wip1タンパク質発現の増加とともにp53およびSMC1のリン酸化レベルが上昇していた。これら2つのリン酸化部位はATMまたはATRによる特異的なリン酸化であるため、このリン酸化レベルの上昇は、腫瘍組織におけるDNA損傷の誘導を介した、ATM若しくはATRのいずれか、又は両者の活性化によるものと考えられる。さらに、スクアレンおよびTS−1を処理したマウスの腫瘍組織においてもWip1のタンパク質レベルの上昇が確認された。しかし、p53とSMC1のリン酸化レベルはTS−1単独と比べて弱かった。これはスクアレンによるWip1タンパク質の増加にともなって活性阻害を受けたATMではなく、ATRのみがTS−1によるDNA損傷シグナルを下流の分子であるp53とSMC1に伝達しているためと考えられる。
実際に、ATMとATRはDNA損傷チェックポイントシグナルにおいて、互いに協調して作用することが分かっている(非特許文献1)。したがって、腫瘍組織中の損傷修復メカニズムにおいて、スクアレンがWip1の発現を増強したことは、TS−1による腫瘍の成長抑制を効率的にした結果であることが示唆された。
以上のことから、スクアレンは細胞レベルだけでなく、動物レベルの実験においてもWip1の発現増強を介して、各種抗癌療法の増感作用を示したことが分かった。
このように、スクアレンは、癌のモデル動物においても、癌組織の容積を低下させ(図6〜図8)、このような効果は、マウスばかりでなく(図6)、ヒトのガン細胞を用いたモデルにおいても(図7及び図8)、観察された。また、スクアレンは、各種抗癌療法による効果をさらに促進する増感作用を有することも観察され(図6及び図8)、このような増感作用は、化学療法であっても(図6及び図8)、放射線療法であっても(図7)、観察され、各種療法による効果が顕著である場合(図7)も、それほど顕著でない場合(図6及び図8)も、発揮された。
本発明において、細胞に対するUV照射で誘導されるDNA損傷応答反応におけるスクアレンの効果を示した。ATMの表現型として知られるAT患者の細胞では、先天的なATMの欠損により、DNA損傷に対する反応機構(細胞周期チェックポイント)に問題を抱えている。同時に、AT患者は、放射線治療に対して異常に高い感受性を示すことも知られている。これらは、腫瘍発生を含む増殖期の細胞において、ATMプロテインキナーゼが大変重要であることを示している。スクアレンは、患者におけるDNA損傷チェックポイントをWip1の発現誘導を介して阻止し得る。従って、本発明の知見により、放射線療法や化学療法などの抗癌治療に利点をもたらし得る。放射線治療や抗ガン剤治療において問題となるのは、ガン細胞の過半数において、p53を欠損していることであるが、スクアレンによるATMの阻害作用は、p53が担当しているG1/S期のチェックポイントだけでなく、S期やG2/M期など、他のチェックポイントにおいても重要な役割を演じていることが知られている。事実、G2/M期チェックポイントは、p53に変異や欠損を持ったガン細胞において、最も重要なチェックポイント機構であることが近年の研究成果により明示されている。ところで、カフェインも、ATMの活性阻害作用を持つことで知られている。臨床における結果からも、カフェインを投与することは、放射線誘導性死滅に対して、感受的ではあるが、カフェインは、ATMだけでなくATRやDNA−PKなど、多くのPI3キナーゼに対して非特異的な阻害作用を示すため、ATMの活性阻害のみを介した作用とは言い難く、その他の副作用も指摘されていることから、ATM特異的な新たな阻害剤、又は間接的にATMを阻害する副作用の少ない新たな薬剤が望まれている。
スクアレンは、ヒトの体内でも微量ながら合成されており、生命活動でも必須の生体成分である。本発明の図1Aにおいても、ヒトの細胞に対して極めて毒性が低いことを確認している。従って、副作用が少ない点で大きな利点となり得る。また、DNA損傷チェックポイントへの作用が、Wip1というATMの脱リン酸化酵素の発現を介した作用であることから、スクアレンのATM以外の分子への非特異的作用は期待できない。従って、ガン治療に対するスクアレンの効果としては、これらが大きな利点となると考えられる。
非特許文献2は、化学療法剤又は放射線治療の補助として、臨床上で試験的にカフェインを適用することを報告する。ここでは、カフェインで補助した治療により化学療法剤又は放射線療法を個々に処理するよりも、骨肉腫の寸法を減少かつ最小限化した。この結果が示すのは、カフェインは、ATM及びATRプロテインキナーゼ活性を阻害することであり、増殖する腫瘍の細胞周期のいずれにおいても、DNA損傷に係るチェックポイントの阻止をもたらす。このことにより、スクアレンで補助した化学療法及び放射線療法として、スクアレンを臨床上で試験的に適用し得る可能性がある。さらなる検討に関して、カフェインの臨床試験可能性に、腫瘍を消失又は最小限化させ得るかどうかについて、患者に対してスクアレンの効果を試験する必要がある。特に、スクアレンは、患者において、副作用が全くないか、ほとんどないことが期待される体内で生合成される成分である。上述の補助物は、低投与量で化学療法/放射線療法の有効性を増加させることが期待されるので、化学療法/放射線療法に対してスクアレンが患者に対して副作用が少なく、化学療法/放射線療法に係る投与量/照射量を減少させることが、同等かそれ以上に期待される。
スクアレンの細胞毒性を示すグラフである。 UV照射により発生する細胞のDNA損傷時の生存率に対するスクアレンの影響である。 IR照射により発生する細胞のDNA損傷時の生存率に対するスクアレンの影響である。 細胞周期に対するスクアレンの影響である。 UV照射時のG2/Mチェックポイントに対するスクアレンの影響を示す図である。 図2Bを数値化したグラフである。 γ線照射時のG2/Mチェックポイントに対するスクアレンの影響を示す図である。 図2Dを数値化したグラフである。 G1/S期及びS期チェックポイントに対するスクアレンの影響を示す図である。 組換えATMの活性に対するスクアレンの影響である。 組換えATRの活性に対するスクアレンの影響である。 Wip1の発現とチェックポイント活性との関係に及ぼすスクアレンの影響を示すイムノブロット像を示す。 実施例6で得た、腫瘍の容積の経時変化である。 実施例7で得た、腫瘍の容積の経時変化である。 実施例8で得た、腫瘍の容積の経時変化である。 実施例9で得たウェスタンブロット像である。

Claims (7)

  1. 下記式(I)

    に示す構造式の化合物を有することを特徴とするWip1発現増強剤。
  2. 当該Wip1発現増強剤は、in vitroにおいて、ATR及びATMのキナーゼ活性を阻害しないことを特徴とする請求項1に記載のWip1発現増強剤。
  3. 下記式(I)

    に示す構造式の化合物を有することを特徴とする癌治療増感剤。
  4. 癌の化学療法剤とともに用いることを特徴とする請求項3に記載の癌治療増感剤。
  5. 前記化学療法剤は、核酸代謝拮抗剤であることを特徴とする請求項4に記載の癌治療増感剤。
  6. 癌の放射線療法とともに用いることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の癌治療増感剤。
  7. 当該癌治療増感剤は、ATR及びATMのキナーゼ活性を阻害しないことを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の癌治療増感剤。
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