アルコールは水分を含み易いため、アルコールとガソリンの混合液体には、通常水分が含まれている。従来の液体燃料性状検出方法においては、この水分がアルコール濃度センサの薄膜電極に付着するとその影響を受けてアルコール濃度検出の精度が低下する可能性がある。つまり、燃料中のアルコール分と水分とを合わせたものをアルコール濃度として検出するため、検出されたアルコール濃度は実際のアルコール濃度よりも高い値となる。したがて、検出されたアルコール濃度に基づいてエンジン制御を実施すると、エンジン性能、たとえば発生トルク、燃焼生成物量が変動する可能性がある。
また、従来の液体燃料性状検出方法に用いられるアルコール濃度センサは、燃料中に含まれる水分が付着することにより薄膜電極が劣化あるいは腐食して、正常な検出が困難になる可能性がある。
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、検出方法に工夫を凝らして、高精度でアルコール濃度検出が可能な液体燃料性状検出方法、およびこの液体燃料性状検出方法に用いられる液体燃料性状検出装置を提供することである。もう一つの目的は、高精度な検出機能を永続的に維持可能な液体燃料性状検出装置を提供することである。
上記目的を達成するための手段およびその作用効果について以下に説明する。
本発明の請求項1に記載の液体燃料性状検出方法は、化石燃料(ガソリン、軽油)に対する透過率とアルコールに対する透過率および水に対する透過率との差が大きい光である第1波長光を発する第1発光部から化石燃料(ガソリン、軽油)、エタノールおよび水の三成分が混合されてなる液体に光を照射して該液体を透過した透過光量を第1受光部で計測し、水に対する透過率と化石燃料に対する透過率およびアルコールに対する透過率との差が大きい光である第2波長光を発する第2発光部から液体に光を照射して液体を透過した透過光量を第2受光部で計測し、第2受光部により計測された透過光量に基づいて液体の水濃度を検出し、第1受光部により計測された透過光量および水濃度に基づいて液体のアルコール濃度を検出することを特徴としている。
上記構成の検出方法による、液体燃料性状検出の考え方について説明する。
上記構成の検出方法では、第1受光部で計測された透過光量に基づいて、燃料中の化石燃料(ガソリン、軽油)濃度と、アルコールおよび水を合わせた混合液体の濃度が検出される。一方、第2受光部で計測された透過光量に基づいて、燃料中の水濃度と、化石燃料(ガソリン、軽油)およびアルコールを合わせた混合液体の濃度が検出される。したがって、第1受光部で計測された透過光量に基づいて検出されたアルコールおよび水を合わせた混合液体の濃度および第2受光部で計測された透過光量に基づいて検出された水濃度に基づいて、燃料中に含まれるアルコールの真の濃度を検出することができる。すなわちアルコールおよび水を合わせた混合液体の濃度から水濃度を減じれば、燃料中に含まれるアルコールの真の濃度を検出することができる。これにより、高精度でアルコール濃度検出が可能な液体燃料性状検出方法を提供することができる。
本発明の請求項2に記載の液体燃料性状検出方法は、第1波長光は中心波長が1600から1800nmである光であり、第2波長光は中心波長が1400から1500nmである光であることを特徴としている。
図4に、化石燃料としてのガソリン、アルコールとであるエタノールおよび水の3種類の液体中における光の透過率と、当該光の波長との関係を表すグラフを示す。図4に示すように、光の波長が1200nm程度までは、各液体中の透過率はほとんど同じである。光の波長が1200nmよりも大きい領域では、図4に示すように、各液体中の透過率に大きい差が生じている。たとえば、波長が1400nmの光の場合、ガソリン中の透過率とエタノール中の透過率とは大きな差は無いが、水中の透過率は、ガソリン中の透過率およびエタノールの透過率と大きく異なっている。したがって、ガソリン、エタノールおよび水の3種類の液体を混合してなる燃料中に1400nmの光を照射し、その透過光量を測定すれば、燃料中の水濃度を検出することができる。たとえば、ガソリン、エタノールおよび水の3種類の液体を混合してなる燃料中の水濃度と波長が1400nmの光の透過率との関係を予め測定し、そのデータを記憶装置内に保持しておき、第2受光部で計測された透過光量と上述のデータとを参照して、燃料中の水濃度を検出することができる。
また、波長が1700nmの光の場合、エタノール中の透過率と水中の透過率とは大きな差は無いが、ガソリン中の透過率は、エタノール中の透過率および水中の透過率とは大きく異なっている。したがって、ガソリン、エタノールおよび水の3種類の液体を混合してなる燃料中に1700nmの光を照射し、その透過光量を測定すれば、燃料中のガソリン濃度を検出することができる。たとえば、ガソリン、エタノールおよび水の3種類の液体を混合してなる燃料中のガソリン濃度と波長が1700nmの光の透過率との関係を予め測定し、そのデータを記憶装置内に保持しておき、第1受光部で計測された透過光量と上述のデータとを参照して、燃料中のガソリン濃度を検出することができる。すなわち、1からガソリン濃度を減じれば、エタノールと水の混合液の濃度が検出できる。この場合、0<各濃度<1である。したがって、第1受光部で計測された透過光量に基づいて検出されたエタノールと水の混合液濃度から第2受光部で計測された透過光量に基づいて検出された水濃度を減じることにより、エタノール濃度を検出することができる。
以上から、第1波長光として中心波長が1700nmの光を、第2波長光として中心波長が1400nmの光をそれぞれ照射することにより、高精度でアルコール濃度検出が可能な液体燃料性状検出方法を提供することができる。
本発明の請求項3に記載の液体燃料性状検出装置は、請求項1に記載の液体燃料性状検出方法の実施に用いられる液体燃料性状検出装置であって、化石燃料(ガソリン、軽油)、アルコールおよび水の三成分が混合されてなる液体が通過する通路と、通路内の液体に向けて光を照射可能に配置され第1波長光を出射する第1発光部と、液体を透過した第1波長光を選択的に受光可能に配置された第1受光部と、通路内の液体に向けて光を照射可能に配置され第2波長光を出射する第2発光部と、液体を透過した第2波長光を選択的に受光可能に配置された第2受光部とを備え、第1波長光の化石燃料(ガソリン、軽油)に対する透過率とアルコールに対する透過率および水に対する透過率との差が大きく、第2波長光の水に対する透過率と化石燃料(ガソリン、軽油)に対する透過率およびアルコールに対する透過率との差が大きいことを特徴としている。
上記構成の液体燃料性状検出装置を用いることにより、第1受光部で計測された透過光量に基づいて検出されたアルコールと水の混合液濃度から第2受光部で計測された透過光量に基づいて検出された水濃度を減じることにより、アルコール濃度を検出することができる。したがって、高精度でアルコール濃度検出が可能な液体燃料性状検出装置を提供することができる。
また、上記構成の液体燃料性状検出装置では、各発光部から液体に光を照射し、液体中を透過した光を各受光部で計測している。したがって、各発光部の液体が通過する通路に光を照射する部分および各受光部の透過光を受光する部分、つまり各発光部および各受光部の液体に直接触れる部分は、透光性材質から形成されている。ここに用いられる透光性材質は、たとえば無色透明の樹脂材料あるいはガラス等である。これらの材質は、化石燃料、アルコールおよび水の3種類の液体に対して安定している。したがって、各発光部および各受光部の液体に直接触れる部分が燃料に含まれる成分により腐食したり劣化したりすることがない。これにより、高精度な液体燃料性状検出機能を永続的に維持可能な液体燃料性状検出装置を提供することができる。
本発明の請求項4に記載の液体燃料性状検出装置は、第1波長光は中心波長が1700nmである光であり、第2波長光は中心波長が1400nmである光であることを特徴としている。
図4に、化石燃料としてのガソリン、アルコールとであるエタノールおよび水の3種類の液体中における光の透過率と、当該光の波長との関係を表すグラフを示す。図4に示すように、光の波長が1200nm程度までは、各液体中の透過率はほとんど同じである。光の波長が1200nmよりも大きい領域では、図4に示すように、各液体中の透過率に大きい差が生じている。たとえば、波長が1400nmの光の場合、ガソリン中の透過率とエタノール中の透過率とは大きな差は無いが、水中の透過率は、ガソリン中の透過率およびエタノールの透過率と大きく異なっている。したがって、ガソリン、エタノールおよび水の3種類の液体を混合してなる燃料中に1400nmの光を照射し、その透過光量を測定すれば、燃料中の水濃度を検出することができる。たとえば、ガソリン、エタノールおよび水の3種類の液体を混合してなる燃料中の水濃度と波長が1400nmの光の透過率との関係を予め測定し、そのデータを記憶装置内に保持しておき、第2受光部で計測された透過光量と上述のデータとを参照して、燃料中の水濃度を検出することができる。
また、波長が1700nmの光の場合、エタノール中の透過率と水中の透過率とは大きな差は無いが、ガソリン中の透過率は、エタノール中の透過率および水中の透過率とは大きく異なっている。したがって、ガソリン、エタノールおよび水の3種類の液体を混合してなる燃料中に1700nmの光を照射し、その透過光量を測定すれば、燃料中のガソリン濃度を検出することができる。たとえば、ガソリン、エタノールおよび水の3種類の液体を混合してなる燃料中のガソリン濃度と波長が1700nmの光の透過率との関係を予め測定し、そのデータを記憶装置内に保持しておき、第1受光部で計測された透過光量と上述のデータとを参照して、燃料中のガソリン濃度を検出することができる。すなわち、1からガソリン濃度を減じれば、エタノールと水の混合液の濃度が検出できる。この場合、0<各濃度<1である。したがって、第1受光部で計測された透過光量に基づいて検出されたエタノールと水の混合液濃度から第2受光部で計測された透過光量に基づいて検出された水濃度を減じることにより、エタノール濃度を検出することができる。
以上から、第1波長光として中心波長が1700nmの光を、第2波長光として中心波長が1400nmの光をそれぞれ照射することにより、高精度でアルコール濃度検出が可能な液体燃料性状検出装置を提供することができる。
本発明の請求項5に記載の液体燃料性状検出装置は、第1発光部および第2発光部は一体的に樹脂成型された第3発光部として形成され、第1受光部および第2受光部は第1波長光および第2波長光を計測可能な第3受光部として一体的に樹脂成型により形成されたことを特徴としている。
上述の構成によれば、第3発光部が第1波長光を発射したときには第3受光部により第1波長光の透過光量が計測され、第3発光部が第2波長光を発射したときには第3受光部により第2波長光の透過光量が計測される。すなわち、1個の発光部および1個の受光部を用いて、2種類の波長光の透過光量を計測することができる。これにより、構成部品点数を減らすことができ、液体燃料性状検出装置の体格を小型化することができる。
本発明の請求項6に記載の液体燃料性状検出装置は、第3発光部は、第1波長光および第2波長光を交互に発光するように駆動制御されることを特徴としている。
上述の構成によれば、1個の第3発光部から2種類の波長光、つまり第1波長光および第2波長光をそれぞれ単独で出射させて、2種類の波長光の透過光量を確実に計測することができる。
以下、この発明に係る液体燃料性状検出方法を具体化した実施形態について、各図に基づき説明する。
本実施形態は、この発明に係る燃料性状検出装置を、自動車のエンジンを制御するエンジン制御システムにおいてエンジンに供給される燃料中のアルコールであるエタノール濃度検出に用いられるエタノール濃度センサに適用したものである。
エンジン制御システム1は、エンジン100への燃料供給量および吸入空気量を運転条件に対応して最適に制御する、すなわち所望のトルクを発生しつつ燃費を良好にし且つ排気中の有害排出物量をできるだけ少なくするように制御するものである。燃料噴射システム1は、図1に示すように、エンジン100の燃焼室に臨んで配置され燃焼室に燃料を供給するインジェクタ2、インジェクタ2に燃料を供給するデリバリパイプ3、燃料タンク5からデリバリパイプ3へ燃料を供給するための燃料配管7、燃焼室内に配置された点火プラグ6、エンジン100の吸気管101途中に設けられたスロットルバルブ8および制御装置4等から構成されている。制御装置4は、マイクロコンピュータ等から構成され、インジェクタ2による燃料噴射量および噴射時期制御、点火プラグ6の点火時期制御、スロットルバルブ8開度調節による吸入空気量制御等を行っている。
エンジン100の燃料としては、化石燃料としてのガソリン、アルコールとしてのエタノール、およびその混合液体である液体燃料が用いられている。すなわち、エンジン100は、ガソリン、エタノール、およびその混合液体のいずれによっても運転可能である。当該自動車の運転者は、燃料補給時にガソリンおよびエタノールのどちらかを自由に選択して給油できる。このため、当該自動車の燃料タンク5内には、ガソリンとエタノールの混合液体が常時存在する。そして、燃料タンク5内の混合液体、つまり燃料中におけるエタノール濃度は、当該自動車の燃料補給前後で変化する。たとえば、燃料タンク5内燃料のエタノール濃度が或る値のときに、ガソリンが補給されると補給後の燃料中のエタノール濃度は低下する。一方、エタノールが補給されると補給後の燃料中のエタノール濃度は上昇する。
ガソリンとエタノールとでは、揮発性、発熱量等が異なっている。また、両者の混合液体では、その揮発性や発熱量は、エタノール濃度に応じて変化する。燃料中のエタノール濃度がいかなる値のときにおいてもエンジン100を最適状態で運転する、つまり低燃費且つ燃焼排出物量が最小限度であるような状態で運転するためには、燃料中のエタノール濃度を検出して、検出されたエタノール濃度に基づいて、燃料噴射量および噴射時期、点火時期、吸入空気量制御を最適に制御する必要がある。本発明の一実施形態によるエタノール濃度センサ10は、上述した要求を満足させるべく、エンジン制御システム1において、燃料中のエタノール濃度検出のために用いられている。
ここで、当該自動車の燃料補給時には、ガソリンまたはエタノールのどちらかが補給される。エタノールは水分を含み易いため、給油施設のタンク中において既に幾らかの水分を含んでいる。したがって、当該自動車の燃料タンク内に貯蔵される燃料にも水分が含まれている。つまり、当該自動車の燃料は、ガソリン、エタノールおよび水の三種類の液体の混合液体である。
本発明の一実施形態による燃料性状検出装置としてのエタノール濃度センサ10は、図1に示すように、燃料配管7の途中のディバリパイプ3側端部近傍、つまり、デリバリパイプ3の入口近くに配置されている。インジェクタ2を複数個備えるエンジンの場合、各インジェクタ2は1個の共通のデリバリパイプ3に個別に接続されている
以下に、エタノール濃度センサ10の構成について説明する。
エタノール濃度センサ10は、大きくは、図2に示すように、その内部に燃料が通過する通路18aを備えたボディ18内に、通路18a内の燃料へ向けて光を照射可能に配置された発光ダイオード11および発光ダイオード12、通路18a内の燃料中を透過した各発光ダイオード11、12からの光を受光可能に配置されたフォトトランジスタ13およびフォトトランジスタ14を収容保持して形成されている。
ボディ18は、非透光性材質、たとえば金属材料あるいは樹脂材料から形成されている。ボディ18の中央部には、図2に示すように、燃料が流れる通路18aが貫通孔状に形成されている。ボディ18における通路18aの両端部分には、図2に示すように、燃料配管7がそれぞれ接続されている。液体である燃料は、図2中において白抜き矢印で示す方向に流れている。つまり、図2において、通路18aの左側が燃料タンク5に接続され、通路18aの右側がデリバリパイプ3に接続されている。ボディ18には、通路18aに連通する窓孔18bが4個設けられている。すなわち、一対の窓孔18bが、図2に示すように、通路18aを挟んで対向し且つ同軸上の位置関係で形成されている。そして、このような2個の窓孔18bからなる窓孔18b対が、図2に示すように、通路18aの軸方向に2対並んで形成されている。
各窓孔18bには、図2示すように、窓部材15が嵌合固定されている。窓部材15は透光性材質、たとえば無色透明のガラスあるいは樹脂材料から形成されている。窓部材15は、ボディ18に対して、通路18a内の燃料に対して十分な気密性を確保できるように取り付けられている。
2対の窓孔18b対のうち、通路17の上流側(図2中において左側)の窓孔18b対の一方の窓孔18bには、図2に示すように、第1発光部である発光ダイオード11がその発光面を窓孔18bに密着させて配置されている。これにより、発光ダイオード11から発せられた光は、窓部材15を透過して通路18a内へ、つまり燃料中へ出射される。発光ダイオード11からは、第1波長光としての波長が1700nmの光が発せられる。発光ダイオード11から発せられる光は、波長が1700nm前後である光の成分も含むが、最も発光輝度が高い波長である中心波長は1700nmである。
通路17の上流側(図2中において左側)の窓孔18b対の他方の窓孔18bには、図2に示すように、第1受光部であるフォトトランジスタ13がその受光面を窓孔18bに密着させて配置されている。これにより、発光ダイオード11から発せられ燃料中を透過してきた光は、図2中の矢印で示すように進行して、窓部材15を透過してフォトトランジスタ13に入射する。フォトトランジスタ13としては、第1波長光である波長が1700nmの光を選択的に受光するもの、つまり1700nmの光に対する感度が突出して高いものが用いられている。フォトトランジスタ13は、発光ダイオード11の発する波長が1700nmの光を受光してその受光量に応じた大きさの検出信号を出力する。
2対の窓孔18b対のうち、通路17の下流側(図2中において右側)の窓孔18b対の一方の窓孔18bには、図2に示すように、第2発光部である発光ダイオード12がその発光面を窓孔18bに密着させて配置されている。これにより、発光ダイオード12から発せられた光は、窓部材15を透過して通路18a内へ、つまり燃料中へ出射される。発光ダイオード12からは、第2波長光としての波長が1400nmの光が発せられる。発光ダイオード12から発せられる光は、波長が1400nm前後である光の成分も含むが、最も発光輝度が高い波長である中心波長は1400nmである。
通路17の下流側(図2中において左側)の窓孔18b対の他方の窓孔18bには、図2に示すように、第2受光部であるフォトトランジスタ14がその受光面を窓孔18bに密着させて配置されている。これにより、発光ダイオード12から発せられ燃料中を透過してきた光は、図2中の矢印で示すように進行して、窓部材15を透過してフォトトランジスタ14に入射する。フォトトランジスタ13としては、第2波長光である波長が1400nmの光を選択的に受光するもの、つまり1400nmの光に対する感度が突出して高いものが用いられている。フォトトランジスタ14は、発光ダイオード12の発する波長が1400nmの光を受光してその受光量に応じた大きさの検出信号を出力する。
これらの発光ダイオード11、12およびフォトトランジスタ13、14は、チップタイプのものが用いられている。発光ダイオード11、12は、図2に示すように、共通の回路基板16に実装されている。一方、フォトトランジスタ13、14も、図2に示すように、共通の回路基板17に実装されている。両回路基板16、17は、図示しない電気コネクタを介して外部の図示しない電気配線に接続され、この電気配線を介して制御装置4に電気的に接続されている。すなわち、エタノール濃度センサ10は、その発光ダイオード11、12が制御装置4により点灯駆動されるとともに、フォトトランジスタ13、14の出力信号が制御装置4に入力されている。
ボディ18には、図2に示すように、カバー19が取り付けられている。カバー19は、金属あるいは樹脂等から形成され、ボディ18に収容されている発光ダイオード11、12およびフォトトランジスタ13、14を気密的に保護している。
次に、本発明の一実施形態による燃料性状検出装置であるエタノール濃度センサ10を用いたエタノール濃度検出方法について説明する。このエタノール濃度検出動作は、制御装置4内において実行されている。
運転者によりイグニッションスイッチがONされると、制御装置4が作動を開始し、エンジン制御システム1が作動状態となる。制御装置4はエンジンに係る複数の制御を同時に処理するが、ここでは、エタノール濃度検出動作について説明する。
エタノール濃度検出動作が開始されると、制御装置4は、先ずステップS1の初期化処理を実行する。
続いて、制御装置4は、ステップS2の処理として、各発光ダイオード11、12を点灯駆動する。
続いて、制御装置4は、ステップS3の処理として、フォトトランジスタ13の検出信号に基づいて計測された受光量に基づいて、1700nm波長光の測定対象である燃料中の透過率を算出する。
続いて、制御装置4は、ステップS4の処理として、ステップS3で算出された1700nm波長光の透過率に基づいてガソリンの濃度を算出する。
ここで、ステップS4におけるガソリン濃度の算出について説明する。フォトトランジスタ13は、発光ダイオード11の発する1700nm波長光を受光してその受光量に応じた大きさの検出信号を出力する。この1700nm波長光のエタノール中の透過率と水中の透過率とは大差無いが、図4に示すように、ガソリン中の透過率は、エタノール中の透過率および水中の透過率と比べて高くなっている。すなわち、1700nm波長光に対しては、ガソリン、エタノールおよび水の3成分の混合液体は、ガソリンと、エタノールおよび水との2成分の混合液体と見做すことができる。本発明の一実施形態によるエタノール濃度検出方法においては、ガソリン、エタノールおよび水の3成分の混合液体について、そのガソリン濃度と1700nm波長光の透過率との関係を予め測定し、両者の関係をマップとして制御装置4内の記憶手段に記憶させている。したがって、フォトトランジスタ13により測定された透過率と上述のマップとから、燃料中のガソリン濃度を算出することができる。
続いて、制御装置4は、ステップS5の処理として、算出されたガソリン濃度に基づいて、燃料中のエタノールと水の混合液体の濃度を算出する。これは、1からガソリン濃度を減じる演算により求められる。ここで、0<各濃度<1である。
続いて、制御装置4は、ステップS6の処理として、フォトトランジスタ14の検出信号に基づいて計測された受光量に基づいて、1400nm波長光の測定対象である燃料中の透過率を算出する。
続いて、制御装置4は、ステップS7の処理として、ステップS6で算出された1400nm波長光の透過率に基づいて、燃料中の水濃度を算出する。
ここで、ステップS7における水濃度の算出について説明する。フォトトランジスタ14は、発光ダイオード12の発する1400nm波長光を受光してその受光量に応じた大きさの検出信号を出力する。この1400nm波長光のガソリン中の透過率とエタノールの透過率とは大差無いが、図4に示すように、水中の透過率は、ガソリン中の透過率およびエタノール中の透過率と比べて低くなっている。すなわち、1400nm波長光に対しては、ガソリン、エタノールおよび水の3成分の混合液体は、水と、ガソリンおよびエタノールとの2成分の混合液体と見做すことができる。本発明の一実施形態によるエタノール濃度検出方法においては、ガソリン、エタノールおよび水の3成分の混合液体について、その水濃度と1400nm波長光の透過率との関係を予め測定し、両者の関係をマップとして制御装置4内の記憶手段に記憶させている。したがって、フォトトランジスタ14により測定された透過率と上述のマップとから、燃料中の水濃度を算出することができる。
続いて、制御装置4は、ステップS8の処理として、ステップS5で算出した燃料中のエタノールと水の混合液体の濃度と、ステップS7で算出したが燃料中の水濃度とに基づいて、燃料中のエタノール濃度を算出する。これは、エタノールと水の混合液体の濃度から水濃度を減じる演算により求められる。
以上説明した手順により、燃料中のエタノール濃度が検出される。
上記構成のエタノール濃度検出方法によれば、ガソリン、エタノールおよび水の3成分の混合液体である燃料に、波長が異なる2種類の光、すなわちガソリンに対する透過率と残りの2成分に対する透過率との差が大きい第1波長光である1700nm波長光と、水に対する透過率と残りの2成分に対する透過率との差が大きい第2波長光である1400nm波長光とを照射し、各波長光の燃料中の透過光量を第1、第2受光素子であるフォトトランジスタ13、14でそれぞれ受光することにより、計測された各透過率に基づき、水分を含まないエタノールのみの濃度を検出することができる。従来のアルコール濃度センサを用いたアルコール濃度検出方法により検出されたアルコール濃度は、実際にはアルコールおよび水の混合液体の濃度となっている。したがって、従来のアルコール濃度検出方法により検出されたアルコール濃度に基づいてエンジン制御を実施した場合、エンジンを最適状態で運転する、つまり低燃費且つ燃焼排出物量が最小限度であるような状態で運転することが困難になる可能性がある。たとえば、燃費率、燃焼生成物量等が最適状態から外れる可能性がある。
これに対して、本発明の一実施形態によるエタノール濃度センサ10を用いたエタノール濃度検出方法によれば、ガソリン、エタノールおよび水の3成分の混合液体である燃料中のエタノール濃度を高精度で検出することができる。すなわち、水を含まない純粋にエタノールのみの濃度を検出できる。したがって、本発明の実施形態によるエタノール濃度検出方法により検出されたエタノール濃度に基づいてエンジン制御を実施すれば、エンジンを容易に最適状態で運転する、つまり低燃費且つ燃焼排出物量が最小限度であるような状態で運転することが可能となる。
また、従来のアルコール濃度センサは、絶縁基板上に静電容量を形成するように一対の薄膜電極を配置してなるものである。この薄膜電極を燃料中に浸漬して、アルコール濃度変化を静電容量変化として検出している。アルコールが水分を含む場合は、アルコールと水の混合液体の濃度が検出されてしまい、アルコール濃度を高精度で検出することが困難であった。さらに、燃料中の水分が薄膜電極に付着して薄膜電極が劣化あるいは腐食して、正常な検出が困難になる可能性があった。
これに対して、本発明の一実施形態によるエタノール濃度センサ10は、燃料に光を照射し、この光の燃料中の透過光量を計測する構成となっている。したがって、エタノール濃度センサ10において直接燃料に接触する部分は窓部材15である。窓部材15は、透光性部材、たとえばガラス、樹脂等であり、これらの材質は、ガソリン、エタノールおよび水の3成分からなる燃料に対して安定性が高く、腐食されることはない。これにより高精度な検出機能を永続的に維持可能なエタノール濃度センサ10を実現することができる。
次に、本発明の一実施形態の変形例によるエタノール濃度センサ30について説明する。
エタノール濃度センサ30は、図5示すように、第3発光部としての発光ダイオード31、第3受光部としてのフォトトランジスタ32、その内部に燃料が通過する通路33aを備えたボディ33内等から構成されている。発光ダイオード31とフォトトランジスタ32とは、発光ダイオード31から発せられた光が燃料を透過してフォトトランジスタ32に入射可能に通路33aを挟んで対向して配置されている。
発光ダイオード31は、中心波長が1600から1800nmである第1波長光としての中心波長が1700nmの光を発する第1発光部である発光ダイオード部31aと、中心波長が1400から1500nmである第2波長光としての中心波長が1400nmの光を発する第2発光部である発光ダイオード部31bと、を一体的に形成したものである。発光ダイオード31は、図6に示すように、発光ダイオード部31aおよび発光ダイオード部31bを透光性樹脂31cによりモールド成型して、1個の素子部品として形成されている。発光ダイオード部31aは、その2つの電極31aa、31abに電圧を印加すると1700nmの光を発し、発光ダイオード部31bは、その2つの電極31ba、31bbに電圧を印加すると1400nmの光を発する。つまり、発光ダイオード31は、2つの電極31aa、31abに電圧を印加すると、本発明の一実施形態によるエタノール濃度センサ10における発光ダイオード11として機能し、2つの電極31ba、31bbに電圧を印加すると、本発明の一実施形態によるエタノール濃度センサ10における発光ダイオード12として機能する。
フォトトランジスタ32としては、1400から1700nmの光を受光したときの出力信号レベルが突出して高いような特性を有するものが用いられている。これにより、発光ダイオード31の発光ダイオード部31aが発光駆動されたとき、および発光ダイオード31の発光ダイオード部31bが発光駆動されたときのいずれの場合においても、フォトトランジスタ32は、受光量に応じた出力信号を出力する。
次に、本発明の一実施形態の変形例によるエタノール濃度センサ30を用いたエタノール濃度検出方法について説明する。このエタノール濃度検出動作は、発明の一実施形態によるエタノール濃度センサ10の場合と同様に、制御装置4内において実行されている。濃度センサ30を用いたエタノール濃度検出方法は、本発明の一実施形態によるエタノール濃度センサ10を用いたエタノール濃度検出方法と基本的には同じである。すなわち、1700nm波長光の受光量から1700nm波長光の透過率を算出し、1400nm波長光の受光量から1400nm波長光の透過率を算出し、両透過率に基づいてエタノール濃度を判定している。以下に、濃度センサ30を用いたエタノール濃度検出方法の特徴である、発光ダイオード31の駆動方法について説明する。
制御装置4は、図7(a)、図7(b)のタイミングチャートに示すように、発光ダイオード31の発光ダイオード部31aおよび発光ダイオード部31bを交互に点灯駆動している。つまり、発光ダイオード部31aに電圧が印加されて点灯しているときに、発光ダイオード部31bには電圧が印加されず消灯している。反対に、発光ダイオード部31bに電圧が印加されて点灯しているときに、発光ダイオード部31aには電圧が印加されず消灯している。フォトトランジスタ32からは、これに対応して、図7(c)のタイミングチャートに示すように、出力信号が出力される。すなわち、発光ダイオード部31aが点灯しているときには、図7(c)に示すように、フォトトランジスタ32の出力電圧は電圧E1であり、発光ダイオード部31bが点灯しているときには、図7(c)に示すように、フォトトランジスタ32の出力電圧は電圧E2である。各発光ダイオード部31a、31bへの電圧印加切替え時においては、図7に示すように、どちらにも電圧印加されないデッドタイムTdが設けられている。制御装置4は、発光ダイオード部31aへ電圧印加中におけるフォトトランジスタ32の出力電圧を1700nm波長光の受光量として処理し、発光ダイオード部31bへ電圧印加中におけるフォトトランジスタ32の出力電圧を1400nm波長光の受光量として処理する。
以上説明したように、本発明の一実施形態の変形例によるエタノール濃度センサ30は、本発明の一実施形態によるエタノール濃度センサ10と同様に、高精度な検出機能を永続的に維持可能なエタノール濃度センサ10を実現することができる。さらに、測定光の透過率検出を2つの電子素子、つまり発光ダイオード31およびフォトトランジスタ32で行えるので、透過率検出に用いる電子素子の個数を減らしてエタノール濃度センサのコストを低減できると同時に、エタノール濃度センサの体格を小型化することができる。
図8に、本発明の一実施形態の他の変形例によるエタノール濃度センサ40の断面図を示す。本発明の一実施形態の他の変形例によるエタノール濃度センサ40では、第1発光部としての発光ダイオード11、第2発光部としての発光ダイオード12、第3受光部としてのフォトトランジスタ32、その内部に燃料が通過する通路41aを備えたボディ41等から構成されている。発光ダイオード11は、中心波長が1600から1800nmである第1波長光としての中心波長が1700nmの光を発するものである。発光ダイオード12は、中心波長が1400から1500nmである第2波長光としての中心波長が1400nmの光を発するものである。フォトトランジスタ32としては、1400から1700nmの光を受光したときの出力信号レベルが突出して高いような特性を有するものが用いられている。
発光ダイオード11は、図8に示すように、その発光面をプリズム42に密着させ且つプリズム42および通路41aを挟んでフォトトランジスタ32と対向して配置されている。すなわち、発光ダイオード11から発せられた光は、図8中において矢印で示すように、プリズム42内に入射するとそのまま直進し、通路41bで燃料を透過してフォトトランジスタ32に入射する。発光ダイオード12は、その発光面をプリズム42に密着させ且つ出射方向を発光ダイオード11の出射方向と直交するようにして配置されている。すなわち、発光ダイオード12から発せられた光は、図8中において矢印で示すように、プリズム42内に入射するとプリズム42が備える反射面42aで反射し、通路41bで燃料を透過してフォトトランジスタ32に入射する。
このように、本発明の一実施形態の他の変形例によるエタノール濃度センサ40では、2つの発光部および共通の1個の受光部を備えているので、エタノール濃度センサ40を用いたエタノール濃度検出方法は、先に説明した、本発明の一実施形態の変形例によるエタノール濃度センサ30を用いたエタノール濃度検出方法と同様の方法が採用されている。すなわち、発光ダイオード11および発光ダイオード12は交互に点灯駆動され、それに対応して、フォトトランジスタ32からは、発光ダイオード11からの光の受光量に係る信号および発光ダイオード12からの光の受光量に係る信号が交互に出力される。
本発明の一実施形態の他の変形例によるエタノール濃度センサ40によっても、透過率検出に用いる電子素子の個数を減らしてエタノール濃度センサのコストを低減できると同時に、エタノール濃度センサの体格を小型化することができる。
なお、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
本発明の一実施形態の変形例によるエタノール濃度センサ30、および本発明の一実施形態の他の変形例によるエタノール濃度センサ40において、フォトトランジスタ32として1400から1700nmの光を受光したときの出力信号レベルが突出して高いような特性を有するものを用いているが、中心波長が1600から1800nmである第1波長光を受光したときの出力信号レベルが突出して高いような特性を有する第1フォトトランジスタ部と、中心波長が1400から1500nmである第2波長光を受光したときの出力信号レベルが突出して高いような特性を有する第2フォトトランジスタ部と、を一体的に透光性樹脂によりモールド成型して1個の素子部品として形成されたものを用いてもよい。
上記実施形態において、受光素子としてフォトトランジスタ13、14、32を用いているが、他の種類の受光素子を用いても良い。たとえば、フォトダイオードをもちいても良い。
上記実施形態では、化石燃料としてガソリンを、アルコールとしてエタノールをそれぞれ用いているが、この組合せに限る必要はなく、化石燃料として軽油を、あるいはアルコールとして他の種類のアルコール、たとえばメタノールを用いてもよい。その場合、第1発光部および第2発光部としては、液体燃料の成分である化石燃料およびアルコールに対する透過率が異なり且つその差が大きいような波長光を発する発光部の組合わせとすれば、上記実施形態の場合と同様にアルコール濃度を高精度で検出することができる。